JP2012062265A - 水中油型の皮膚化粧料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)成分:水溶性高分子化合物と(B)成分:多価アルコールの混合物とを混合して混合物を得る混合工程と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と(E)成分:水の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、前記混合物と、前記分散液と、前記(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、(C)成分:下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分を前記膨潤液に分散する乳化工程とを有し、前記混合工程では、前記(A)成分と前記(B)成分とを(A)成分/(B)成分=0.1〜0.2(質量比)で混合する。
(c1)成分:フィトステアリン酸エステル
(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油
【選択図】なし
Description
濡れ肌用の皮膚化粧料としては、タオルドライしない肌に塗布し、すすぎ流すものが一般的である。このような濡れ肌用の皮膚化粧料は、肌に塗布した後、すすぎ流されるため、皮膚への残存率が低いものであった。皮膚への残存率を高めるために、粘度を高めたりすると、皮膚に塗布しにくいと共に、べたつき感が生じるという問題があった。
また、例えば、ペースト状油と極性油とグリセリンと水溶性高分子化合物とを含有する水中油型ボディ化粧料が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2の発明によれば、濡れた肌への伸びが良好であると共に、塗布後にすすぎ流すことなく、タオルドライするだけでしっとり感、うるおい感、すべすべ感等の保湿効果が得られる。
そこで、良好なしっとり感を与え、かつ、濡れた肌に塗布しやすい水中油型の皮膚化粧料の製造方法を目的とする。
ところが、水溶性高分子化合物を油脂等の他の成分と共に水中に分散して乳化しようとすると、添加した水溶性高分子化合物の内、先に膨潤した水溶性高分子化合物が切断されたりして、所望の粘度にするために多量の水溶性高分子化合物が必要となる。
これらの知見に基づき、水溶性高分子化合物と多価アルコールとを特定の比率で混合した混合物を用いることで、しっとり感が向上することを見出し、本発明に至った。
(c1)成分:フィトステアリン酸エステル
(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油
前記(C)成分は、さらに下記(c3)成分を含有することが好ましい。
(c3)成分:(c1)成分を除く、25℃で液状の油
本発明の水中油型の皮膚化粧料(以下、単に皮膚化粧料ということがある)は、(A)成分:水溶性高分子化合物と、(B)成分:多価アルコールの混合物と、(C)成分:特定の油性成分と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(E)成分:水とを含有するものである。
本発明の皮膚化粧料は、入浴後等のボディケア、手洗い後のハンドケア、洗顔後のフェイスケア、足浴後のフットケア、あるいは洗濯、炊事等の家事後のハンドケアに用いられ、水滴が除去された肌、あるいは濡れた肌に塗布されるものである。
ローター:No.3、回転数:12rpm、測定サンプル温度:25℃、測定時間:60秒後の粘度
本発明の(A)成分は、水溶性高分子化合物である。「水溶性」とは、水に対する溶解度(20℃)が0.1g/水100g以上のものをいう。また「高分子」とは、重量平均分子量が1000以上のものをいう。
(A)成分の重量平均分子量は、GPC−MALLS(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−多角度光散乱検出器)を用い、0.5mol/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相とし、以下の方法で測定した値である。(A)成分の純分濃度が約1000質量ppmとなるように移動相で希釈した試料溶液について、TSK−GELαカラム(東ソー株式会社製)を用い、633nmの波長を多角度散乱検出器により測定する。標準品として、分子量既知のポリエチレングリコールを用いる。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の(B)成分は、分子内に水酸基を2個以上有する水溶性の多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等のポリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、フラクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール、エリスリトール、澱粉分解糖還元アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(C)成分は、下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分である。(C)成分は、(c1)成分、(c2)成分及び(c3)成分とからなるものが好ましい。さらに(c1)〜(c3)成分を併用することで、肌への伸びと、しっとり感とを相乗的に向上できる。
本発明の(c1)成分は、フィトステロールと下記一般式(1)で表される炭素数8〜22の一価脂肪酸とのエステルであり、フィトステアリン酸エステル(フィトステロール脂肪酸エステル)である。
(式中、Rは炭素数7〜21の一価炭化水素である。)
(c1)成分のフィトステロールと一価脂肪酸とは、それぞれ1種でも2種以上でもよく、これらの組み合わせによりフィトステロール脂肪酸エステルが構成される。
(c1)成分のフィトステロール部は、植物油脂から得られるステロール化合物であり、例えば、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等が挙げられ、植物ステロールと総称されている。フィトステロールは1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、混合物を用いてもよい。中でも、(c1)成分中、β−シトステロール由来の(c1)成分25〜75質量%、スチグマステロール由来の(c1)成分2〜45質量%、カンペステロール由来の(c1)成分12〜45質量%であることが、しっとり感の点で好ましい。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
50℃に加熱した試料10gをビーカーに秤り取り、デスパミキサーにて3000rpmで攪拌しながら、50℃の水を徐々に、水が試料から排液されるまで添加する。このとき、水が試料から排液する直前の水の添加量(水が排液されない最大量)を試料質量(10g)で除し、100倍して抱水力(%)とする(下記(2)式)。この抱水力が、100%以上であると自重と等量以上の質量の水を抱水することができる。
(c2)成分は、25℃でペースト状である炭化水素等の非極性油である。(c2)成分を含有することで、べたつき感が低減される。ここで、ペースト状とは、稠度100〜220のものをいう。中でも、(c2)成分としては、稠度130〜220のものが好ましく、190〜210のものがより好ましい。稠度130以上のものを用いることにより、肌なじみのよさをより向上でき、稠度220以下のものを用いることにより、べたつき感をより低減できる。「稠度」は、JIS K2235「石油ワックス」に準拠して測定し、試料を82℃に加熱溶融して、恒温水浴中で25℃に保った後、この試料中に質量の合計が150gとなる円錐を垂直に5秒浸入させたときの円錐の浸入した深さを0.1mm単位まで測定し、これを10倍した数値である。皮膚化粧料は、(c2)成分が25℃で液状であると、べたつき感を低減できず、25℃で固体であると、肌なじみ、肌への伸びが悪くなる。
例えば、稠度156のワセリン90質量部と流動パラフィン10質量部とを混合し、稠度176の(c2)成分として用いることができる。ただし、べたつき感の低減と経時安定性の点から、ワセリンを単体で用いることが好ましい。
(c2)成分は、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の(c3)成分は、(c1)成分を除く、25℃で液状の油である。(c3)成分は、(c1)成分及び(c2)成分の溶剤として機能するものであり、皮膚化粧料を肌に塗布した際の伸びの良さを向上できる。
「液状の油」とは、25℃における粘度が200mPa・s以下のものをいう。なお、本発明における液状油の粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
ローター:No.2(粘度500mPa・s未満)
回転数:60rpm、測定温度:25℃((c3)成分の温度)、測定時間:20秒後
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
皮膚化粧料中の(c2)成分と(c3)成分との質量比(c2/c3)は、0.09〜0.9が好ましく、0.2〜0.5がより好ましい。0.09以上であれば肌へのなじみが向上し、0.9以下であればべたつき感をより低減できる。
皮膚化粧料中の(c3)成分に対する(c1)成分と(c2)成分との合計量の質量比((c1+c2)/c3)は、0.3〜1.2が好ましく、0.4〜0.7がより好ましい。0.3以上であれば肌へのなじみが向上し、1.2以下であればべたつき感をより低減できる。
本発明の(D)成分は、水膨潤性粘土鉱物である。皮膚化粧料は、(D)成分を含有することで、べたつき感を低減すると共に、肌へのなじみ、しっとり感を向上できる。
(D)成分による上記効果付与のメカニズムは不明であるが、(D)成分は、抱水性が良好であり、かつ延展性に富むので、濡れた肌の上で、(c1)成分と共に抱水ベールを形成し、皮膚からの水分の蒸散を抑制すると共に、皮膚へ水を補給する働きをし、保湿効果を向上させると推定される。また、べたつき感を低減し、肌なじみのよさと伸びもよく、使用感を向上させる。さらに、(D)成分は、自身の肌付着性が高いだけでなく、油性成分等の保湿に有効な成分の肌への付着性が高めるので、タオルドライで拭き取った後の、(C)成分等の有効成分の肌残存率が向上し、保湿効果を向上させると推定される。
(D)成分としては、ポーラゲル(アメリカンコロイド社製)、ラポナイト(日本シリカ工業株式会社製)、ベンゲル(豊順鉱業社製)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社製)、クニピア(クニミネ工業株式会社製)、ベンクレイ(水澤化学工業株式会社製)、ビーガム(バンダービルト社製)等の商品名で市販されているものを使用することができる。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
皮膚化粧料中の(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)は、0.1〜2が好ましい。上記範囲内であれば、ヌルヌルするのとべたつきとを抑えることができる。
皮膚化粧料中の(D)成分と(C)成分との質量比(D/C)は、0.01〜0.04が好ましい。上記範囲内であれば、さっぱり感としっとり感とを両立できる。
皮膚化粧料中の(B)成分と(E)成分との質量比(B/E)は、0.1〜0.5が好ましい。上記範囲内であれば、しっとり感を付与でき、かつ皮膚化粧料の粘度をさらに適度なものにできる。
本発明の(E)成分は、水である。(E)成分は、特に限定されず、水道水、井水や、蒸留、イオン交換、ろ過又はこれらを組み合わせて処理した精製水等が挙げられる。
皮膚化粧料中の(E)成分の配合量は、(A)〜(D)成分の配合量や、用途等を勘案して決定できる。
皮膚化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせ、含有させることができる。任意成分としては、(C)成分以外の油性成分、乳化剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤、無機粉体、有機粉体等の水不溶性粉体、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、紫外線吸収剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、制汗剤、殺菌剤、消臭剤、防腐剤、包接化合物香料、色素等が挙げられる。
前記有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、即ち、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。
前記有機概念図とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は、「Pharmaceutical Bulletin」,1954,vol.2,2,p.163−173、「化学の領域」,1957,vol.11,10,p.719−725、「フレグランスジャーナル」,1981,vol.50,p.79−82等で説明されている。即ち、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物は全てメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、この値を有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等にも示されている。
本発明の皮膚化粧料の製造方法は、(A)成分と(B)成分とを混合して混合物を得る混合工程と、(D)成分と(E)成分の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、混合物と分散液と(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、(C)成分を膨潤液に分散する乳化工程とを有するものである。
混合工程は、(A)成分と(B)成分の一部又は全部とを混合して混合物を得る工程である。本工程においては、(A)成分が(B)成分で膨潤される程度に均一に、(A)成分を(B)成分中に分散する。(A)成分と(B)成分とを予め混合することで、(A)成分を(B)成分で分散又は微膨潤させ、後述する乳化工程のような高い剪断力を受ける時間を短くして、(A)成分の粘度低下を防止できる。このため、過剰の(A)成分を用いることなく、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできる。
また、混合工程において(B)成分の一部を用いた場合、(B)成分の残部を後述する膨潤工程又は乳化工程で添加することができる。(B)成分の残部を膨潤工程で添加する場合、予め(E)成分の残部と混合してもよいし、(D)成分、(E)成分と共に混合装置に投入してもよい。また、(B)成分の残部を乳化工程で添加する場合、予め膨潤液と混合してもよいし、(C)成分、膨潤液と共に混合装置に投入してもよい。
混合温度は、特に限定されず、例えば、5〜70℃とされる。5℃未満であると(B)成分が増粘し分散しにくくなり、70℃超であると(B)成分の粘度が低くなり(A)成分が沈殿しやすくなるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(A)成分が(B)成分で十分に膨潤する時間とされる。
分散工程は、(D)成分と(E)成分の一部とを混合し、(D)成分を(E)成分に分散した分散液を調製する工程である。分散工程を設けることで、皮膚化粧料の製造中に(D)成分がダマになるのを防止できる。皮膚化粧料の製造中に、(D)成分のダマが生じると、このダマを分散するために高い剪断力をかけて長時間混合する必要がある。この際、(A)成分が存在していると、膨潤した(A)成分に高い剪断力が加わり、高分子鎖や高分子同士の構造が切断されることで十分に増粘されない場合がある。このため、本工程を設け、事前に(D)成分の分散液を調製することで、(A)成分への負荷をできるだけ低減し、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできる。
本工程における混合温度は、特に限定されず、例えば、40〜80℃とされる。40℃未満であると膨潤させる際にまま粉が生成しやすく、80℃超であると溶媒の蒸発により気液界面で被膜を形成しやすいためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(D)成分が(E)成分中に十分に分散する時間とされる。
膨潤工程は、混合工程で得られた混合物と、分散工程で得られた分散液と、(E)成分の残部とを混合し、(D)成分を(E)成分で膨潤する工程である。本工程により(D)成分を(E)成分で十分に膨潤することで、皮膚化粧料を垂れにくいものにでき、かつ塗布直後及びタオルドライ後のしっとり感を向上できる。
本工程に用いる混合装置の例について、以下に図面を用いて説明する。図1は、混合装置の一例を示すバッチ式混合装置1の模式図である。バッチ式混合装置1は、撹拌槽10と、撹拌槽10の内面12を掻き取る略U字状のスクレーパー翼32に攪拌槽10の中心方向に突出する突出翼32が設けられた壁面掻取翼30と、攪拌槽10の略中心に上下方向に延びる攪拌軸22と、該攪拌軸22から内面12に向かって突設された攪拌翼20とで概略構成されている。
このバッチ式混合装置1においては、攪拌槽10内に混合物と分散液と(E)成分とを供給し、撹拌翼20及び壁面掻取翼30を回転させることで、供給された原料は、内面12と攪拌翼20との間で生じる剪断力を受けながら混合される。
このようなバッチ式混合装置としては、アジホモミキサー(株式会社エヌ・ピー・ラボ製)、ロボミクスホモミキサー(プライミクス株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)等が挙げられる。
この連続式混合装置100においては、ローター120を回転させながら吸入口112からハウジング110内に、混合物と分散液と(E)成分とを混合した流体を供給することで、供給された流体は攪拌翼122とステーター130の内面132との間で生じる剪断力を受けながら混合され、排出口114から装置外へ排出される。
このような連続式混合装置としては、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、ラインホモミキサー(プライミクス株式会社製)等が挙げられる。
本工程における剪断速度は、20000〜40000sec−1が好ましく、25000〜35000sec−1がより好ましい。剪断速度が20000sec−1未満であると、(D)成分を十分に膨潤できないおそれがあり、剪断速度が40000sec−1超であると、(A)成分への負荷が増大し、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできないおそれがある。
例えば、図1に示すバッチ式混合装置1における剪断速度は、攪拌翼20の先端24の先端速度と、先端24と攪拌槽10の内面12とのクリアランス(図1中のD1)とから算出できる。
また、図2に示す連続式混合装置100における剪断速度は、攪拌翼120の先端124の速度と、先端124とステーター130の内面132とのクリアランス(図2中のD2)とから算出できる。
なお、当該剪断速度は、混合装置の攪拌翼の回転速度又は攪拌翼と内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
循環回数=Nqd×r×d3×θ÷V ・・・(i)
(式(i)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、θ:攪拌時間(min)、V:内容液の体積(m3))
[式(ア)中、Qd:吐出流量(m3/min)、N:攪拌翼の回転数(rpm)、R:攪拌槽の内径(m)]
ここで、Qdは、攪拌翼の剪断速度に応じ、公知の方法により測定できる(参考文献1:佐藤忠正,谷山巌,「攪拌槽における吐出循環流量」,社団法人化学工学会,化学工学,第29巻,第3号,1965年、参考文献2:創業70周年記念事業特別委員会編,「乳化・分散の理論と実際」,特殊機化工業株式会社,1997年4月17日)。
例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、ディスプロ翼、ディスパー翼等、剪断速度5500sec−1未満の攪拌翼のQdは、図3に示す測定装置200を用いて測定することができる。
図3に示すように測定装置200は、攪拌槽202と、攪拌槽202内に設けられた攪拌翼230と、鏡240とを備えるものである。鏡240は、攪拌槽202の下方に、攪拌槽202の底面214に対し角度αの傾斜で設けられたものである。攪拌槽202は、略円筒形の水槽210と、水槽210の内周面に、開口部212から底面214に掛けて等間隔で設けられた2枚の邪魔板220とを備え、水槽210は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽210内部を鏡240で視認できる材質のものである。攪拌翼230は、攪拌軸232と接続され、攪拌軸232は、図示されない動力と接続されている。
d/R=0.25〜0.5、C/R=0.1〜0.8、W/R=0.1、α=45°
(dは攪拌翼の直径(m)、Cは攪拌翼の取付高さ(m)、Wは邪魔板の幅(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、αは攪拌槽の底面に対するミラーの角度(°)である。)
(式(イ)中、mqは通過回数、Vは内容液260の体積(m3)、TAは測定時間(min)を表す。)
図4に示すように測定装置300は、攪拌槽301と、攪拌槽301内に設けられた攪拌部304とを備えるものであり、攪拌部304は、タービン翼である攪拌翼302と、邪魔板の役目をするステーター303とで構成されている。攪拌翼302は、攪拌軸307と接続され、攪拌軸307は、図示されない動力と接続されている。攪拌槽301は、水槽305と、攪拌部304の上方に設けられた転流板306とで構成され、水槽305は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽305内部を視認できる材質とされている。
測定装置300は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.2〜0.3、z/Z=0.5〜0.7、l/L=0.5〜0.7
(dは攪拌翼の直径(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、z/Zは攪拌翼の取付位置(m/m)、l/Lは転流板の取付位置(m/m)である。)
式(ウ)中、Vは内容液260の体積(m3)、TBは混合時間(min)を表す。
なお、TBは、下記(エ)式により、求めることができる。
式(エ)中、T1は、g(t)分布のトップピークにあたるt軸をt1としたとき、t=0〜t1までの混合時間の平均を表す。T2は、g(t)分布トップピークにあたるt軸をt1としたとき、t=t1〜∞までの時間の平均を表す。t=0〜t1区間におけるg(t)、t=t1〜∞におけるg(t)は、g(t)軸のプロットを基に、近似式として求めることができる。
循環回数=Nqd×r×d3÷F ・・・(ii)
[式(ii)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、F:混合装置へ供給される流体の流量(m3/min)]
上記(II)において、Nqdは、(I)の場合と同様である。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(E)成分で(D)成分を十分に膨潤できる時間とされる。
溶解操作に用いる混合装置は、従来公知の混合装置を用いることができ、例えば、プロペラ翼を備えたベッセル、ニーダー等のバッチ式混合装置や、インラインミキサー等の連続式混合装置が挙げられる。また、上述した膨潤工程で用いる混合装置と同様のものを用いてもよい。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、水溶性の任意成分が(E)成分中に十分に溶解する時間とされる。
乳化工程は、膨潤操作で得られた膨潤液に(C)成分を分散し、水中油型の乳化物を得る工程である。本工程では、混合装置内に膨潤液と(C)成分とを投入し、次いで、これらを攪拌混合する。
本工程に用いる混合装置は、膨潤工程で用いる混合装置と同じである。このような高い剪断力を与える混合装置を用いることで、乳化状態の安定した乳化物を得ることができる。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、十分に乳化できる時間とされる。
本発明の粘土鉱物分散液の製造方法には、乳化工程の後段に冷却工程を設けることが好ましい。この冷却工程は、乳化工程で得られた乳化物を任意の温度まで冷却するものである。
冷却方法は、特に限定されず、例えば、攪拌しながら冷却する方法や、室温で静置する方法や、熱交換器に通流させる方法が挙げられ、中でも、攪拌しながら冷却する方法(攪拌冷却法)が好ましい。攪拌冷却法を用いることで、皮膚化粧料を保管した際、乳化が壊れて分離することを防止できる。加えて、乳化状態を安定できるため、べたつき感を防止し、しっとり感を向上できる。
攪拌冷却法における攪拌方法は、特に限定されないが、例えば、乳化工程で用いた混合装置を用い、好ましくは剪断速度20000〜40000sec−1、より好ましくは25000〜35000sec−1で攪拌する。循環回数は、4〜16が好ましく、6〜10がより好ましい。
このように、剪断力を与えながら冷却することで、乳化粒子の合一を抑制し、経時の分散安定性を高めることができる。
また、冷却速度は、0.1〜3℃/分とすることが好ましい。この範囲内であれば、水中油型の乳化状態が破壊されることなく、効率的に冷却できる。
(使用原料)
<(A)成分>
・キサンタンガム:エコーガムT(商品名)、大日本住友製薬株式会社製
・カルボキシメチルセルロースナトリウム:サンローズ F10LC(商品名)、日本製紙ケミカル株式会社製
・カルボキシビニルポリマー:カーボポール940(商品名)、BFグットリッチ社製
・1,3−ブチレングリコール:ダイセル化学工業株式会社製
・グリセリン:濃グリセリン、阪本薬品工業株式会社製
・ソルビトール:ソルビット、東和化成工業株式会社製
≪(c1)成分≫
・フィトステリルイソステアレート:タマ生化学株式会社製
≪(c2)成分≫
・ワセリン:サンホワイトP−200(商品名)、日興リカ株式会社製
≪(c3)成分≫
・流動パラフィン:流動パラフィン350−S(商品名)、三光化学工業株式会社製
・ベントナイト:クニピアF(商品名)、クニミネ工業株式会社製
・イソステアリン酸:イソステアリン酸EX(商品名)、高級アルコール工業株式会社製
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.):MYS−40V(商品名)、日光サーファクタント工業株式会社製
・トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(40E.O.):GWIS−340EX(商品名)、日本エマルジョン株式会社製
・セトステアリルアルコール:コノール30CK(商品名)、新日本理化株式会社製
・クエン酸:クエン酸結晶L(商品名)、扶桑化学工業株式会社製
・95%エタノール:純度95質量%、日本アルコール産業株式会社製
・セチルアルコール:カルコール6098(商品名)、花王株式会社製
・ジペンタエリトリット長鎖脂肪酸エステル:ユニスターH676(商品名)、日油株式会社製
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.):エマレックスHC−30(商品名)、日本エマルジョン株式会社製
・トリエタノールアミン:トリエタノールアミンCare(商品名)、BASFジャパン株式会社製
表1に示す組成の共通成分を用いた。表1中の共通成分の総量(27.015質量%)は、皮膚化粧料中の含有量である。なお、表2〜3中の共通成分の含有量は、混合工程で用いた(B)成分を除いた量を示す。
<垂れにくさの評価>
被験者男女20名が、石鹸で洗浄した前腕を40℃の湯に5分間浸漬した後に、濡れた状態の前腕内側部全体に各例の皮膚化粧料0.4gを手で塗り伸ばした。塗り伸ばした時の垂れにくさについて、下記評価基準に基づき官能評価を行い、被験者男女20名の評価点の平均点を算出した。
5点:非常に垂れにくい
4点:垂れにくい
3点:やや垂れにくい
2点:垂れやすい
1点:非常に垂れやすい
被験者男女20名が、石鹸で洗浄した前腕を40℃の湯に5分間浸漬した後に、濡れた状態の前腕内側部全体に各例の皮膚化粧料0.4gを手で塗り伸ばした。塗り伸ばした時の伸びのよさについて、下記評価基準に基づき官能評価を行い、被験者男女20名の評価点の平均点を算出した。
5点:非常によく伸びる
4点:よく伸びる
3点:やや伸びる
2点:伸びにくい
1点:非常に伸びやすい
被験者男女20名が、石鹸で洗浄した前腕を40℃の湯に5分間浸漬した後に、濡れた状態の前腕内側部全体に各例の皮膚化粧料0.4gを手で塗り伸ばし、タオルで拭いた。タオルで拭いた直後の前腕内側部のしっとり感、及びタオルドライした乾燥後1時間後の肌のしっとり感について、下記評価基準に基づき官能評価を行い、被験者男女20名の評価点の平均点を算出した。
5点:非常にしっとりする
4点:しっとりする
3点:ややしっとりする
2点:あまりしっとりしない
1点:しっとりしない
表2〜3の組成に従い、以下の手順で各例の皮膚化粧料を製造した。(A)成分及び(B)成分を25℃に加温しつつ、ビーカー中でプロペラ翼により、全体が流動する程度の攪拌回転数で混合し、混合物を得た(混合工程)。(D)成分0.5質量%相当量及び(E)成分13.5質量%相当量をビーカーに投入し、60℃に加温しつつプロペラ翼で30分間攪拌して分散液を得た(分散工程)。
図5に示す混合装置400と同様の混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)に、共通成分中の水性成分と(B)成分の残部と(E)成分の残部とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌し、60℃に加温した。次いで、混合物と分散液とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌して、膨潤液とした(膨潤工程)。
この混合装置400は、壁面掻取翼430と、中央翼420との回転により、攪拌槽410内の被混合物を流動させると共に、攪拌部440により被混合物に剪断力を与えるものである。
図中、符号D3は、攪拌翼444の先端とステーター442の内面とのクリアランスを表わし、符合d3は、攪拌翼444の直径を表わす。
なお、本実施例に用いた混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)は、図5中のD3=0.5mm、d3=48mm、吐出流量係数(Nqd)=0.1のものである。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。
(C)成分を除く各成分を混合装置(PVT−1−20型)に投入し、60℃に加温し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌して水相とした。70℃に加温した(C)成分を、前記の水相に添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に(B)成分及び(E)成分を投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、60℃に加温して水相とした。この水相に、70℃に加温した(C)成分を添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に60℃の(E)成分13.5質量%相当量と、(A)成分と、共通成分中の水性成分とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、60℃に加温した。次いで、(B)成分と、(E)成分の残部と、共通成分中の水性成分とを添加して水相とした。この水相に、70℃に加温した(C)成分と共通成分中の油性成分とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に、(A)成分と、(B)成分と、(E)成分と、共通成分中の水性成分とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、60℃に加温して、水相とした。次いで、(C)成分と共通成分中の油性成分とを混合し、60℃に加温して混合油性成分とした。水相に混合油性成分と(D)成分とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に、(B)成分と(E)成分とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、75℃に加温した。これに予め75℃にした(C)成分と、トリエタノールアミンを除くその他任意成分とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化した。さらに(A)成分とトリエタノールアミンとを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1、循環回数=20で攪拌し16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
一方、各成分を一括で混合して水相とし、この水相に(C)成分の添加した比較例1は、垂れにくさの評価が3.2、伸びやすさの評価が4.5であったものの、塗布直後のしっとり感の評価が3.3、塗布1時間後のしっとり感の評価が2.3であった。また、混合工程を設けていない比較例6は、実施例1と組成が同じであるものの、垂れにくさの評価が2.5、しっとり感の評価が塗布直後で3.0、塗布1時間後で2.5であった。また、比較例6は、伸びやすさの評価が2.8であり、伸びにくいものであった。
以上の結果から、混合工程を設けることで、垂れにくく、かつしっとり感の良好な皮膚化粧料を得られることが判った。
Claims (2)
- (A)成分:水溶性高分子化合物と、(B)成分:多価アルコールの混合物と、(C)成分:下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(E)成分:水とを含有する水中油型の皮膚化粧料の製造方法であって、
前記(A)成分と、前記(B)成分とを混合して混合物を得る混合工程と、
前記(D)成分と、前記(E)成分の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、
前記混合物と、前記分散液と、前記(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、
前記(C)成分を前記膨潤液に分散する乳化工程とを有し、
前記混合工程では、前記(A)成分と前記(B)成分とを(A)成分/(B)成分=0.1〜0.2(質量比)で混合することを特徴とする水中油型の皮膚化粧料の製造方法。
(c1)成分:フィトステアリン酸エステル
(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油 - 前記(C)成分は、さらに下記(c3)成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の水中油型の皮膚化粧料の製造方法。
(c3)成分:(c1)成分を除く、25℃で液状の油
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