JP2012061893A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤ骨格部材が樹脂材料で形成された空気入りタイヤにおいて、タイヤ外側部の耐久性を向上する。
【解決手段】樹脂材料で形成されたタイヤ骨格部材12のタイヤ外側部に、加硫ゴム製のサイド被覆層36を設ける。耐外傷性、及び耐候性に優れた加硫ゴム製のサイド被覆層36で、タイヤ骨格部材12の外側部を覆うことで、縁石との接触等に起因するタイヤ外側部の外傷を抑えることが出来る。また、タイヤ骨格部材12の樹脂材料が加硫ゴム製のサイド被覆層36で覆われてタイヤ外側部に露出しないので、タイヤ外部からの太陽光、水等による樹脂材料の劣化が抑えられ、タイヤ外側部の耐候性が向上する。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに係り、特にタイヤ骨格部材が樹脂材料で形成された空気入りタイヤに関する。
近年、タイヤ骨格部材を樹脂材料で形成し、そのタイヤ骨格部材の外周にゴム製のトレッドを設けた、いわゆる樹脂タイヤが提案されている。
特開平05−116504号公報
しかしながら、従来の樹脂タイヤでは、サイド部、及びビード部といったタイヤ外側部がタイヤ骨格部材(タイヤケース、圧力容器等呼ばれる場合もある)そのものであり、樹脂材料がタイヤ外側部表面に露出している構成となっている。
空気入りタイヤでは、路面からの衝撃を吸収するための柔軟性(バネ性)、耐疲労性、耐外傷性、耐候性、耐摩耗性、耐発熱性等といった性能が部分毎に異なるため、現状のゴム製の空気入りタイヤには複数種類のゴム部材が使用されている。
樹脂材料としては種々の材料が市販乃至提案されているが、タイヤ外側部に必要な、耐外傷性、耐候性といった性能が現状の空気入りタイヤに使用されているゴム材料に匹敵していないのが実状であり、樹脂タイヤではタイヤ外側部の耐久性向上が求められている。
本発明は、上記事実を考慮して、タイヤ骨格部材が樹脂材料で形成された空気入りタイヤにおいて、タイヤ外側部の耐久性を向上することが目的である。
請求項1に記載の空気入りタイヤは、一対のビード部間を跨るようにトロイド状に形成された樹脂材料製のタイヤ骨格部材と、前記タイヤ骨格部材の外側部を覆うように設けられる被覆層と、を有する。
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、樹脂材料製のタイヤ骨格部材の外側部に被覆層が設けられているので、縁石との接触等に起因するタイヤ骨格部材のタイヤ外側部の外傷を抑えることが出来る。
また、タイヤ骨格部材の樹脂材料が被覆層で覆われて外部に露出していないので、タイヤ外部からの太陽光、水等による樹脂材料の劣化が抑えられ、タイヤ骨格部材のタイヤ外側部の耐候性が向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記被覆層は、加硫ゴムである。
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
被覆層を加硫ゴムとすることで、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同等の耐外傷性、及び耐候性をタイヤ外側部で得ることができる。
なお、被覆層に用いるゴムは、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤのサイドウォール、及びビード部の外側面に使用されているゴムと同様のゴムを用いることが好ましい。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記タイヤ骨格部材の外周面には、加硫ゴム製のトレッド層が設けられている。
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
請求項3に記載の空気入りタイヤでは、タイヤ骨格部材の外周面が加硫ゴム製のトレッド層で覆われ、タイヤ骨格部材の外側面(タイヤサイド)が加硫ゴム製の被覆層で覆われるため、タイヤ骨格部材のタイヤ外面全体が加硫ゴムで覆われることとなり、タイヤ外からの太陽光、水等による樹脂材料の劣化を抑えることができる。このため、請求項3の空気入りタイヤでは、タイヤ骨格部材の外面(外周面、及び外側面)において、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同等の耐候性を得ることができる。
なお、トレッド層に用いるゴムは、タイヤ骨格部材に用いている樹脂材料に比較して、少なくとも、耐摩耗性に優れているものを使用する。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド層と前記被覆層とが一体的に形成されている。
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
請求項4に記載の空気入りタイヤでは、加硫ゴム製の被覆層と加硫ゴム製のトレッド層とが一体的に形成されているため、被覆層とタイヤ骨格部材との継ぎ目が無く、長期の使用等によって継ぎ目が剥れる等の問題が根本的に生じることは無く、耐久性を向上することができる。また、空気入りタイヤの外面全体が加硫ゴムで覆われるため、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同様の外観品質を得ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記被覆層が、前記タイヤ骨格部材のビード部の外側面から内側面へ連続して延びている。
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
加硫ゴム製の被覆層をビード部の外側面から内側面へ連続して延ばすことで、加硫ゴム製の被覆層をリムに接触させることができ、ビード部とリムとの間のシール性が、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同様に確保できる。
請求項6に記載の発明は、請求項3または請求項4に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド層と前記被覆層とが、異なる種類のゴムで構成されている。
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
トレッド層と被覆層とを、異なる種類のゴムで構成することで、トレッド層にはトレッド層に適したゴム、被覆層にはタイヤ外側部に適したゴムを使用することができる。
例えば、トレッド層のゴムは、少なくとも、被覆層のゴムよりも耐摩耗性に優れたゴムを使用することができ、被覆層のゴムは、トレッド層のゴムよりも耐外傷性(亀裂が入り難く、亀裂が入ったとしても亀裂が進展し難いことが好ましい。)、及び耐候性に優れたゴムを使用することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記被覆層に、コード層または繊維層が含まれている。
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
被覆層にコード層または繊維層が含まれているので、タイヤ外側部の耐外傷性を更に向上することができる。
以上説明したように、請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、タイヤ外側部の耐久性を向上することができる。
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同等の耐外傷性、及び耐候性をタイヤ外側部で得ることができる。
請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同等のタイヤ外面(外側面、及び外周面)の耐候性を得ることができる。
請求項4に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、高い耐久性得ることができ、また、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと同様の外観品質を得ることができる。
請求項5に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ビード部とリムとの間のシール性を確保することができる。
請求項6に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、トレッド層、及びタイヤ外側部において、各々の部位においてゴム材料の特性を十分に発揮することができ、トレッド層、及びタイヤ外側部において従来のゴム製の空気入りタイヤと同様の性能を得ることができる。
請求項7に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、タイヤ外側部の耐外傷性を更に向上することができる。
空気入りタイヤの全体構成を示す一部を断面とした斜視図である。 空気入りタイヤの分解斜視図である。 エンベロープで覆った仮組品を示す斜視図である。 仮組品の一例を示す断面図である。 台車上の支持部材により支持した仮組品を加硫用の容器内に配置した例を模式的に示す断面図である。 仮組品の他の一例を示す断面図である。
図1乃至図5にしたがって、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10の構造を説明する。
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、樹脂材料を用いて形成され、一方のビード部28と他方のビード部28とをトロイド状に跨るタイヤ骨格部材12を備え、タイヤ骨格部材12の外周面にはトレッド層16が配置され、タイヤ骨格部材12の外側面にはサイド被覆層36が配置されている。
(タイヤ骨格部材)
本実施形態のタイヤ骨格部材12は、熱可塑性材料を用いて、例えば空気入りタイヤ10のクラウン部24に対応した形状と、このクラウン部24のタイヤ軸方向両側から夫々タイヤ径方向内側に連なるサイドウォール部26に対応した形状と、このサイドウォール部26のタイヤ径方向内側に連なるビード部28に対応した形状とを有するように、例えば、射出成形等で成型されている。
ビード部28には、ビードコア30が埋設されている。このビードコア30の材料には、例えば金属、有機繊維、有機繊維を樹脂で被覆したもの、又は硬質樹脂等を用いることができる。なお、ビード部28の剛性が確保され、リム(図示せず)との嵌合に問題がなければ、ビードコア30を省略してもよい。
タイヤ骨格部材12を構成する樹脂材料としては、ゴム様の弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)や熱硬化性樹脂等を用いることができるが、走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
また熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
更にこれらの熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏点伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
本実施形態のタイヤ骨格部材12は、まず、例えば空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向の中心部、即ちタイヤ赤道面CL、又はその近傍面を中心とした半割り形状に成型され、クラウン部24の端部同士を接合することにより構成される。この接合には、例えば同種又は異種の熱可塑性材料や溶融樹脂を用いた溶接法、あるいは、端部の間に熱板を挟みつけ、端部どうしを接近する方向に押付ながら熱板を除去して、端部において溶融状態になっている半割り形状品を溶着する熱板溶着方等により、接合してもよい。さらに、これらと併用して、接着剤等の接合部材34を用いてもよい。
タイヤ骨格部材12のクラウン部24には、補強用のコード32が例えば螺旋状に巻回されている。このコード32としては、例えばスチールコードや、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)を用いるとよい。コード32としてスチールコードを用いる場合、例えばクラウン部24のタイヤ直径方向外側に、熱可塑性材料からなるシート(図示せず)を貼り付けておき、コード32を加熱しながら、該シートに対してタイヤ周方向に螺旋巻きして埋設して行くことができる。このとき、コード32とシートの双方を加熱するようにしてもよい。
このように、クラウン部24に対して、補強用のコード32を、タイヤ周方向に螺旋巻きすることで、クラウン部24のタイヤ周方向の剛性を向上させると共に、クラウン部24の耐破壊性を向上させることができる。またこれによって、空気入りタイヤ10のクラウン部24における耐パンク性を高めることができる。なお、クラウン部24を補強するに際し、コード32をタイヤ周方向に螺旋状に巻回することが、製造上容易であるため好ましいが、コード32をタイヤ幅方向において不連続としてもよい。またタイヤ骨格部材12(例えば、ビード部28、サイドウォール部26、クラウン部24等)に、更なる補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布)を埋設配置してタイヤ骨格部材12を補強してもよい。
(トレッド層)
タイヤ骨格部材12の外周面には、クッションゴム14を介してトレッド層16が配置されている。
本実施形態のトレッド層16には、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのトレッドゴムや、更生タイヤ用のトレッドゴムと同様のゴムが使用されている。
クッションゴム14には、予めトレッド面が成型された加硫済みのゴムを貼り付けるプレキュア方式(コールド)更生タイヤを製造する際に用いられクッションゴムと同様のものを用いることができる。
なお、トレッド層16の踏面には、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、排水用の溝16Aが形成されている。また、トレッドパターンとしては、公知のものが用いられる。
(サイド被覆層)
タイヤ骨格部材12の外側面には、サイド被覆層36が配置されている。本実施形態のサイド被覆層36には、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのサイドウォール、及びビード部に用いられるゴムと同様のゴムが使用されている。
本実施形態のサイド被覆層36は、トレッド層16の端部からサイドウォール部26の外面、ビード部28の外面、及びビード部28の内端を介してビード部28の内面まで連続して延びている。
本実施形態では、クッションゴム14の厚さとサイド被覆層36の厚さとが略同一に設定されている。また、サイド被覆層36とクッションゴム14とが連続するように、サイド被覆層36のテーパー状に形成された端部とクッションゴム14のテーパー状に形成された端部とが接合されている。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ10では、タイヤ骨格部材12の外面全体が加硫ゴムによって完全に覆われている。
(空気入りタイヤの製造方法)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の製造方法を説明する。
(1) 先ず、樹脂材料からなるタイヤ骨格部材12、加硫済み又は半加硫状態のトレッド層16、及び加硫済み又は半加硫状態のサイド被覆層36を予め成形しておく。
なお、サイド被覆層36は、タイヤ骨格部材12の貼り付け部位に沿った形状に成形することが好ましい。
(2) 図2に示すように、タイヤ骨格部材12の外周面12Aに、未加硫ゴムの一例であるクッションゴム14を配置し、このクッションゴム14のタイヤ径方向外側に、加硫済み又は半加硫状態のトレッド層16を配置する。なお、トレッド層16をクッションゴム14の外周に配置するに際しては、例えば、帯状のトレッド層16をクッションゴム14の外周に円環状に巻き付けるようにしてもよいし、予め円環状に形成されたトレッド層16を用いてもよい。なお、トレッド層16の表面にはトレッドパターンが刻まれている。
タイヤ骨格部材12の外周面12Aに未加硫のクッションゴム14を配置する際、外周面12Aに例えば1層又は2層の接着剤40を塗布することが好ましい。この接着剤40の塗布は、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。接着剤40は、特定の種類に限定されるものではないが、例えばトリアジンチオール系のものを用いることができ、他には塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤等も用いることができる。
また、外周面12Aに接着剤40を塗布する前に、外周面12Aをサンドペーパーやグラインダ等でバフ掛けしておくことが好ましい。外周面12Aに接着剤40が付き易くなるからである。更に、バフ掛け後の外周面12Aをアルコール等で洗浄して脱脂しておくことが好ましい。またバフ掛け後の外周面12Aに対し、コロナ処理や紫外線照射処理を行うことが好ましい。
加硫済み又は半加硫状態のトレッド層16を、クッションゴム14のタイヤ直径方向外側に配置する際には、トレッド層16の裏面側やクッションゴム14の外周面側に、粘着性を有する部材、例えばゴムセメント組成物42を塗布しておくことが好ましい。これにより、トレッド層16がクッションゴム14に貼り付くことで仮止め状態となり、作業性が向上するからである。
トレッド層16の材質として、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)を用いる場合には、ゴムセメント組成物42として、例えばSBR系のスプライスセメントを用いることが好ましい。また、トレッド層16の材質として、NR(天然ゴム)の配合比の高いSBR系ゴムを用いる場合には、SBR系のスプライスセメントにBR(ブタジエンゴム)を配合したものを用いることが好ましい。この他、ゴムセメント組成物42として、液状BR等の液状エラストマーを配合した無溶剤セメントや、IR(イソプレンゴム)−SBRのブレンドを主成分とするセメントを用いることが可能である。
(3) 次に、タイヤ骨格部材12の外側面12Bに、加硫済み又は半加硫状態のサイド被覆層36を配置する。
タイヤ骨格部材12の外側面12Bにサイド被覆層36を配置する際、外側面12Bに、接着剤40またはゴムセメント組成物42を塗布する。外側面12Bに接着剤40またはゴムセメント組成物42を塗布する前に、外側面12Bをサンドペーパーやグラインダ等でバフ掛けしても良く、バフ掛け後の外側面12Bをアルコール等で洗浄して脱脂しても良く、バフ掛け後の外側面12Bに対し、コロナ処理や紫外線照射処理を行っても良い。なお、サイド被覆層36の外面には、メーカー名、商品名、タイヤサイズ等の表示(図示せず)が形成されている。
(4) 図3、及び図4に示すように、トレッド層16及びサイド被覆層36を配置したタイヤ骨格部材12の外面全体をエンベロープ18で覆い、リムに近い構造を有する一対の環状の支持部材66に組み付ける。なお、エンベロープ18のタイヤ径方向内側の端縁(図示せず)は、ビード部28とフランジ部66Fとの間に挟み込まれる。また、溝16Aには、溝16Aを埋めるように、ゴム等の弾性体で形成された押付部材90を一時的に配置する(押付部材90は加硫後に取り外される。)。
エンベロープ18は、気密性及び伸縮性を有し、熱及び化学的に適度に安定で、適度な強度を有する例えばゴム製の被覆部材である。エンベロープ18には、エンベロープ18で覆われた領域内を真空引きすることで、トレッド層16、及びサイド被覆層36をタイヤ骨格部材12側に押し付けるようにするためのバルブ64が設けられている。バルブ64は、真空引き後における外部からエンベロープ18内への空気の流入を防止するための弁機構(図示せず)を有していることが望ましい。
図4に示すように、タイヤ骨格部材12の内面側には拡縮可能な環状のブラダー70が配置されている。ブラダー70を膨らませることで、ブラダー70の外面でタイヤ骨格部材12の内面側を押圧することができる。これにより、サイド被覆層36のタイヤ径方向内側の端部付近をビード部28の内面に押圧することができ、また、タイヤ骨格部材12の形状を保つことができる。なお、ブラダー70には、内部に空気を出入りさせるための図示しないバルブが設けられている。
このようにして、トレッド層16及びサイド被覆層36を配置したタイヤ骨格部材12をエンベロープ18で覆うと共に、内側にブラダー70を配して支持部材66に組み付けて仮組品20を構成する。
(5) そして、図5に示すように、この仮組品20を容器22内に収容し、容器22内の加熱及び加圧を行って加硫を行う。この容器22は、所謂加硫缶であるが、仮組品20を収容する容量を有し、加硫時の加熱及び加圧に耐えうる容器であればよく、形式は問わない。
なお、タイヤ骨格部材12が熱可塑性樹脂であるため、タイヤ骨格部材12が溶融乃至軟化して変形しないように、加硫時の温度は熱可塑性樹脂の融点未満に設定される。
加硫の時間は、クッションゴム14が完全に加硫するに必要な時間とすることは勿論である。また、トレッド層16及びサイド被覆層36が半加硫品である場合、加硫の時間は、トレッド層16及びサイド被覆層36が完全に加硫するに必要な時間とすることは勿論である。加硫時間、及び加硫温度は、使用されるゴムによって適宜最適な値に設定される。
本実施形態では、加硫前、未加硫のゴムは薄いシート状のクッションゴム14のみであり、他のゴム、即ち、トレッド層16及びサイド被覆層36は半加硫、または完全に加硫されているものであるため、トレッド層16及びサイド被覆層36を未加硫ゴムとした場合に比較して、加硫時間を大幅に短縮することができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10の様に、タイヤを構成する部材に熱可塑性樹脂を用いている場合、熱可塑性樹脂で形成された部材(タイヤ骨格部材12)を変形させないようにするため、加硫温度を満足に上げられないという制限がある(熱可塑性樹脂を用いていない従来のゴム製の空気入りタイヤの加硫温度対比)。したがって、ゴムを完全に加硫させるためには、加硫時間を延長せざるを得ない(熱可塑性樹脂を用いていない従来のゴム製の空気入りタイヤの加硫時間対比)。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド層16及びサイド被覆層36は半加硫、または完全に加硫されているものであり、未加硫のゴムは薄いシート状のクッションゴム14のみであるため、上述した様に、トレッド層16及びサイド被覆層36を未加硫ゴムとした場合に比較して、加硫時間を大幅に短縮することができ、サイクルタイムの悪化を抑制することができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、熱可塑性樹脂で形成されたタイヤ骨格部材12の外側面がサイド被覆層36で覆われているので、タイヤ外側部に熱可塑性樹脂が露出している場合に比較して、例えば、縁石等の接触によるタイヤ外側部の耐外傷性、及び太陽光、水等に起因する耐候性を大幅に向上することができる。
また、サイド被覆層36が、リムと接触する部分、即ち、ビード部28の外面及び内端部分を覆っているため、リムとビード部28との間で、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様の高いシール性を得ることが出来る。
このように、本実施形態では、大型の加硫装置が必要となる加硫金型を用いずに、熱可塑性材料を用いたタイヤ骨格部材12にトレッド層16、及びサイド被覆層36を接合
して空気入りタイヤ10を製造することができるため、熱可塑性材料をタイヤ骨格部材12に用いた空気入りタイヤ10の製造コストを低減することができる。
容器22内の加圧は、必ずしも必須ではなく、加熱だけでも加硫を行うことは可能である。しかしながら、容器22内の加圧を行うことで、タイヤ骨格部材12に対するトレッド層16の接着性をより高めることができる。
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、サイド被覆層36とタイヤ骨格部材12との間に接着剤40またはゴムセメント組成物42のみを介在させたが、トレッド層16とタイヤ骨格部材12との間の様に、薄いシート状の未加硫ゴムシートを介在させても良い。
上記実施形態では、タイヤ骨格部材12に貼り付けるトレッド層16とサイド被覆層36とが別体として形成されていた、トレッド層16とサイド被覆層36とは一体的に形成されていても良い。
上記実施形態では、支持部材66、及びブラダー70を用いて加硫を行ったが、図6に示すように、上記支持部材66、及びブラダー70を用いずに、トレッド層16、サイド被覆層36及びタイヤ骨格部材12の外面側だけでなく、内面側までエンベロープ18で覆うようにしてもよい。
なお、トレッド層16、サイド被覆層36、及びタイヤ骨格部材12をエンベロープ18で覆う形態は、本実施形態及び図示の構成には限られない。また本実施形態に係るタイヤの製造方法における工程の順序は、適宜変更することが可能である。
上記実施形態では、サイド被覆層36の端部がビード部28の内面まで回り込んでいたが、リムに取り付けた状態で、少なくともタイヤ骨格部材12の外側面が露出しなければ良く、リムとのシール性に問題が無ければ、サイド被覆層36は、トレッド端からリムのフランジ部と接触する位置まで延びていれば良い。
上記実施形態では、サイド被覆層36の材料が加硫ゴムであったが、場合によっては樹脂材料であっても良い。サイド被覆層36の材料が樹脂材料の場合、タイヤ骨格部材12を構成している熱可塑性樹脂とは異なる樹脂材料とし、かつ、タイヤ骨格部材12を構成している熱可塑性樹脂よりも、耐外傷性、及び耐候性に優れている樹脂材料を用いることが必要である。
上記実施形態では、サイド被覆層36の材料が加硫ゴムのみであったが、場合によっては、耐外傷性を向上するために、例えば、無機繊維、有機繊維等からなるコード層や、不織布、織物等の繊維層等の補強層が埋設されていても良い。これにより、亀裂の進展等を抑制することができる。
なお、タイヤ骨格部材12の外側面に、無機繊維、有機繊維等からなるコード層や、不織布、織物等の繊維層等の補強層が貼り付けられ、その上からサイド被覆層36が貼り付けられても良い。
上記実施形態では、サイド被覆層36の材料が1種類の加硫ゴムのみであったが、場合によっては、異なる種類のゴムからなる2層以上の構成としても良い。
上記実施形態では、トレッド層16の材料が加硫ゴムであったが、場合によっては樹脂材料であっても良い。トレッド層16の材料が樹脂材料の場合、タイヤ骨格部材12を構成している熱可塑性樹脂とは異なる樹脂材料とし、かつ、タイヤ骨格部材12を構成している熱可塑性樹脂よりも、耐摩耗性に優れている樹脂材料を用いることが好ましい。
上記実施形態では、タイヤ骨格部材12の外周面に、タイヤ骨格部材12とは異なる材料からなるトレッド層16を設けたが、場合によっては、タイヤ骨格部材12のクラウン部24を厚く形成して、トレッド層16の代わりとしても良い。
なお、走行時の空気入りタイヤ10の屈曲変形により、サイド被覆層36とタイヤ骨格部材12とが剥離しないように、サイド被覆層36とタイヤ骨格部材12の硬さを同等に設定することが好ましい。
10 空気入りタイヤ
12 タイヤ骨格部材
16 トレッドゴム(トレッド層)
26 サイドウォール部(外側部)
28 ビード部(外側部)
36 サイド被覆層(被覆層)

Claims (7)

  1. 一対のビード部間を跨るようにトロイド状に形成された樹脂材料製のタイヤ骨格部材と、
    前記タイヤ骨格部材の外側部を覆うように設けられる被覆層と、
    を有する空気入りタイヤ。
  2. 前記被覆層は、加硫ゴムである、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記タイヤ骨格部材の外周面には、加硫ゴム製のトレッド層が設けられている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記トレッド層と前記被覆層とが一体的に形成されている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記被覆層が、前記タイヤ骨格部材のビード部の外側面から内側面へ連続して延びている、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記トレッド層と前記被覆層とが、異なる種類のゴムで構成されている、請求項3または請求項4に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記被覆層に、前記被覆層に、コード層または繊維層が含まれている、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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