JP2012057043A - 水性インキ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
紙などの吸収性基材だけでなく、ポリ塩化ビニルシート等の難吸収性基材に対してもIRランプや温風乾燥工程を使用する事無く直接印刷する事ができる、顔料を用いた水性インキ組成物、特にインクジェットインキ組成物の提供。
【解決手段】
顔料と顔料を分散させてなる分散剤と、常圧での沸点が100℃以上である1種類以上の水溶性有機溶剤と水を少なくとも含んでなる水性インキ組成物であって、前記水溶性有機溶剤が(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤とを含んでなる、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、紙などの吸収性基材だけでなく、ポリ塩化ビニルシート等の難吸収性基材に対してもIRランプや温風乾燥工程を使用する事無く直接印刷する事ができ、優れた印刷物耐性や良好な印刷安定性を実現し、且つ良好な保存安定性を具備する、顔料を用いた水性インキ組成物に関するものである。
従来、難吸収性基材を対象とした印刷方式として、軟包材用グラビア印刷、サニタリー用フレキソ印刷、金属版用シルクスクリーン印刷、屋内外広告用インクジェット印刷などが一般的に知られている。
なかでも、インクジェットヘッドのノズルから吐出された微小なインク滴によって、画像や文字を印刷するインクジェット印刷では、近年A−0サイズにも対応できるプリンターが開発され、屋外用ポスターなどの屋外用途での使用環境が増えた背景より、耐水性、耐候性、耐摩擦性に優れたインクジェット印刷用インクの開発が盛んに行われている。
特に、サイン業界向けに使用されているインクジェット印刷用インクでは、一般的な水に水溶性染料等の着色剤を加えた水性インクジェットインキに代わり、溶媒として有機溶剤を使用した顔料系溶剤インクジェットインキが主に使用されている。これは、屋外広告等の媒体として用いられている、ポリ塩化ビニルシート等の難吸収性基材表面に直接印刷をする性能が必要である為、耐候性に優れた顔料と、前記顔料を難吸収性基材表面に強固に密着させるバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂や難吸収性基材表面を溶解する事のできる有機溶剤を含むような顔料インク組成物が好適であると考えられているためである。
ただ溶剤の長期の使用は、VOC等の環境問題や、急性毒性,変異原性,発癌性,生殖毒性といった有害性の問題などが存在するため好ましくない。よって現在は、着色剤に顔料を用いた水性インクジェットインキの開発が進められている(特許文献1)。
しかしながら、開発された水性インクジェットインキは紙などの吸収性基材への直接印刷はできるものの、難吸収性基材表面には直接印刷ができず印刷物耐性も弱いため、屋外広告用途では使用されていないのが現状である(特許文献2)。原因としては2つ挙げられる。
1つは、水性インクジェットインキは溶剤インクジェットインキと違い、着弾した液滴が難吸収性基材上で濡れ広がり難い特徴があり、インキ液滴が乾燥しドット形成するまでに長い時間が必要となる。よって、時間差で吐出されたインキ液滴が基材上に着弾する際に、既に着弾しているインキ液滴が乾燥していない為ドット融着を起こし、画像の粒状感や滲みが発生する事により、綺麗な画像を形成する事が困難となる。また綺麗な画像を形成する為には、基材上に着弾したインキ液滴が乾燥する時間が必要となる為、極端に印刷物生産性能が低下してしまう。
乾燥方法を工夫する事で、基材上でのインキ液滴乾燥時間を短縮しドット融着する事無く、高い印刷物生産性能を維持する事も提案されている。その際に使用される乾燥方法としては、IRランプや温風乾燥等が挙げられているが、インクジェットヘッドノズル付近でインキが乾燥し、インキ粘度が上昇する事によりインクジェットヘッドからの安定吐出性能が低下する恐れがある。インクジェットヘッドからの安定吐出性能が低下しない為に、保湿剤としてポリオール系溶剤、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、窒素含有環状化合物等を添加している水性インクジェットインキも存在するが、印刷基材上での濡れ広がりも悪く、インキ液滴が乾燥するまでにより長い時間が必要となる為、好ましくない(特許文献3〜5)。
もう1つは、溶剤インクジェットインキのような難吸収性基材表面を溶解する事ができる水溶性溶剤を水性インキ中に一定量添加するだけでは、溶剤インクジェットインキとは違い基材表面を侵食する性能が大きく低下する。よって、溶剤インクジェットインキのように基材の表面を僅かに溶解させながらインキが乾燥し塗膜形成できない為、溶剤インクジェットインキと同様の印刷物塗膜耐性を得る事が困難である。
特開平11−183920号公報 特許公報第4148424号 特開2007−211081 特許公報第3937170号 特許公報第4125421号
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、水性インキ組成物中に常圧での沸点が100℃以上である1種類以上の水溶性有機溶剤として、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤を用いる事で、ポリ塩化ビニルシート等の難吸収基材上でのインキ液滴の濡れ広がりが改善する事を見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。したがって本発明は、紙などの吸収性基材だけでなく、ポリ塩化ビニルシート等の難吸収性基材に対してもIRランプや温風乾燥工程を使用する事無く直接印刷することができる、顔料を用いた水性インキ組成物、特にインクジェットインキ組成物の提供する事を目的とする。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
顔料と顔料分散剤と、常圧での沸点が100℃以上である1種類以上の水溶性有機溶剤と水を少なくとも含んでなる水性インキ組成物であって、前記水溶性有機溶剤が(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤とを含んでなる、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
更に前記(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤が、一般式(1)で表される溶剤である、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
(ORZOR・・・(1)
(式中、R2はエチレン基又はプロピレン基又はブチレン基、R1、R3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、Zは1〜6の整数を表す。)
更に前記アルコール溶剤が、表面張力が50mN/m以下のアルカンジオールである、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
更に前記アルカンジオールが、炭素数6以下の1,2−アルカンジオールである、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
更にバインダー樹脂をふくむ、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物
更に常圧での沸点が100℃以上である水溶性有機溶剤として、含窒素系または含硫黄系またはラクトン系の溶剤を少なくとも1つ以上含む、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物
更に、難吸収性基材印刷用のインクジェットインキである水性インキ組成物
本発明によれば、水性インキ組成物中に常圧での沸点が100℃以上である(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤を用いる事で、紙などの吸収性基材だけでなく、ポリ塩化ビニルシート等の難吸収性基材に対してもIRランプや温風乾燥工程を使用する事無く直接印刷する事ができる顔料を用いた水性インキ組成物、特にインクジェットインキ組成物が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明のインキ組成物は、少なくとも耐候性に優れた顔料と顔料を分散させてなる分散剤と、常圧での沸点が100℃以上である1種類以上の水溶性有機溶剤と水を少なくとも含んでなる水性インキ組成物である。本発明に使用する水溶性有機溶剤としては、常圧での沸点が100℃以上であるポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤を含む事が好ましく、常圧での沸点が100℃以上300℃以下が更に好ましく、常圧での沸点が180℃以上250℃以下が最も好ましい。常圧での沸点が100℃よりも低いと、インクジェットヘッドノズル上でインキが乾いてしまいインキ液滴の不吐出や印刷安定性の劣化を引き起こす。常圧での沸点が300℃より高いと、基材上でインキが乾燥しない為、印刷物のブロッキングが起こってしまう。
(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤
本発明において、前記(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤は、一般式(1)で表される溶剤であることが好ましい。
(ORZOR・・・(1)
(式中、R2はエチレン基又はプロピレン基又はブチレン基、R1、R3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、Zは1〜6の整数を表す。)
前記、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤を添加する理由としては、インキ自体の表面張力を下げることで、難吸収性基材上でのインキ液滴の濡れ広がりを改善する事が目的である。(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤は、表面張力が低い溶剤が多い為、界面活性剤を添加せずに少量の溶剤添加でインキの表面張力を下げる事が容易である。添加する(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤としては、溶剤自体の表面張力が35mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以下であることが最も好ましい。溶剤自体の表面張力が35mN/m以上であると、インキの表面張力を落とす為に必要な溶剤添加量が多くなると共に、インキ自体の乾燥性能が低下する為、ドット融着を引き起こし印刷物画質劣化に繋がる。
一般式(1)に該当する有機溶剤としては、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールジアルキルエーテル類、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル類、ペンタエチレングリコールジアルキルエーテル類、ヘキサエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールジアルキルエーテル類、テトラプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジブチレングリコールジアルキルエーテル類等のグリコールエーテル類であり、具体的にはエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジペンチルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジペンチルエーテル、トリエチレングリコールジヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル等がある。なかでも、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい溶剤である。
アルコール溶剤
前記アルコール溶剤を添加する理由としては、一般式(1)で表される(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤は水溶性溶剤ではあるものの曇点を有する溶剤が多く、インキ保存時にて溶剤と水の分離が見られる。そこで、アルコール溶剤を(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤と水を仲介する溶剤として添加する事により相溶化でき、分離現象を解決する事が出来る。
アルカンジオール溶剤
本発明において前記アルコール溶剤は、アルカンジオールを含むことが好ましい。アルカンジオールが好ましい理由としては、常圧での沸点が100℃以上で表面張力が低い溶剤が多い為である。トリオールやテトラオールでは常圧での沸点や溶剤自身の表面張力が高すぎる為、インキ液滴の乾燥性や難吸収基材上でのインキの濡れ広がり性能が悪化してしまいドット融着を引き起こしてしまう為、好ましくない。
更にアルカンジオールとしては、表面張力が50mN/m以下のアルカンジオールが好ましく、40mN/m以下のアルカンジオールが更に好ましく、35mN/m以下のアルカンジオールが最も好ましい。表面張力を低くする理由としては、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤を添加する理由と同様であり、インキ自体の表面張力を下げることで、難吸収性基材上でのインキ液滴の濡れ広がりを改善する事が目的である。溶剤自体の表面張力が50mN/m以上であると、インキの表面張力を落とす為に必要な溶剤添加量が多くなると共に、インキ自体の乾燥性能が低下する為、ドット融着を引き起こし印刷物画質劣化に繋がる。
前記アルカンジオールとして具体的には1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等がある。
本発明において前記アルカンジオールが、炭素数6以下のアルカンジオールであることが好ましく、2種以上併用して使用しても良い。炭素数が6以上だと、常圧での沸点が高すぎてしまうことから、インキ液滴の乾燥性が劣る傾向がある。
更に本発明において前記アルカンジオールが、1,2−アルカンジオールである事が最も好ましい。1,2−アルカンジオール以外のアルカンジオールは、水性インキの表面張力を下げる効果が弱いことから、難吸収性基材上での濡れ広がり性能が劣る傾向がある。
前記、常圧での沸点が100℃以上である(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤の添加比率としては、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤:アルコール溶剤=10:1〜1:10である事が好ましく、5:1〜1:5が特に好ましい。アルコール系溶剤の添加量が少なすぎると(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤の曇点問題が改善されず、添加量が多すぎると(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤の働きである難吸収性基材上での濡れ広がり性能が悪化する。
更に、インキ中に含まれる水溶性有機溶剤の添加量は50%以下が好ましい。50%以上になってしまうと水性インキの保存安定性が低下する為、好ましくない。
顔料
本発明において使用される顔料は、印刷インキ、塗料等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,149,168,177,178,179,206,207,209,242,254,255、269、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、213、ピグメントオレンジ36,43,51,55,59,61,71,74等があげられる。また、カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。顔料はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが望ましい。
顔料分散剤
本発明においては水性インキの保存安定性を向上させる為、顔料分散剤を含むことが好ましい。添加する顔料分散剤としては、活性剤や分散樹脂等が挙げられるが、分散樹脂が特に好ましく、重量平均分子量が2,000〜30,000の範囲であるものが最も好ましい。重量平均分子量が30,000以上だと、顔料分散体の粘度が高くなることでインキ粘度が高くなり吐出安定性が低下することや、分散自体ができず保存安定性の向上が見られないからである。
バインダー樹脂
本発明において使用する難吸収性基材表面に対する密着性に優れたバインダー樹脂としては、非水溶性樹脂エマルションまたは水溶性高分子化合物が好ましく、なかでも非水溶性樹脂エマルションが最も好ましい。非水溶性樹脂エマルションが最も好ましい理由としては、高樹脂固形分でありながら低粘度のインキを作成することができるため、インキ塗膜の耐性が良好であると共に、インクジェットヘッドからの吐出性能も良好だからである。
非水溶性樹脂エマルションとしては、塩化ビニル系樹脂エマルション・アクリル系樹脂エマルジョン・ポリプロピレン系樹脂エマルションが好ましく、なかでも乳化重合法によって得られたエマルションが最も好ましい。これは乳化分散法を使用する事により、高分子量,低酸価の塩化ビニル系樹脂を高固形分で乳化させることが可能であり、転相乳化法や乳化分散法にて得られたエマルションを使用したインキでは満たすことのできない非吸収性印刷媒体表面へのインキ塗膜密着性と耐性を実現できる為である。具体例としては、BASF社製ジョンクリルシリーズ、日信化学社製ビニブラン271、ビニブラン278、ビニブラン603、ビニブラン690、ビニブラン900、ビニブラン902、ビニブラン985、ダウケミカル社製UCAR AW−875、日本製紙ケミカル社製スーパークロンE−480T,スーパークロンE−503,スーパークロンE−604,スーパークロンS−4249,アウローレンAE−301,アウローレンS−6097が挙げられる。また、エマルション樹脂のガラス転移点(Tg)を高くする事で、インキ塗膜に耐擦過性、耐薬品性を付与できる事が一般的に知られている。その為、エマルション樹脂合成時のモノマー組成を変更する事で、樹脂Tgを容易に操作できるアクリル系樹脂エマルションは中でも特に好ましい。樹脂はインキ中に0.1〜40重量%含まれることが好ましく、3.0〜30重量%含まれることが特に好ましい。添加量がインキ中0.1重量%以下であると、印刷媒体表面への密着が悪く、塗膜の耐性が低下してしまい、40重量%以上になるとインキ粘度が高すぎるため、印刷適性が低下してしまうために好ましくない。
本発明では常圧での沸点が100℃以上である水溶性有機溶剤として、含窒素系または含硫黄系またはラクトン系の溶剤を少なくとも1つ以上含むことが好ましい。
前記常圧での沸点が100℃以上の含窒素系または含硫黄系またはラクトン系の溶剤を添加する理由としては、低温乾燥工程でも非吸収性基材上でインキ塗膜の物理的、化学的耐久性を溶剤インキ並みに向上する事が可能になるからである。
含窒素系または含硫黄系またはラクトン系溶剤に該当する有機溶剤としては、3−メチルオキサゾリジノン、3−エチルオキサゾリジノン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクトン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクトン、δ−バレロラクタム、ジメチルスルホキシドやβ−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミドをはじめとしたβ−アルコキシプロピオンアミド類がある。
本発明のインキ組成物は可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、活性剤、分散剤等の種々の添加剤を使用することができる。
また、水性インキ組成物として上記記載材料の他に水が含まれるが、インキ中の水添加量は40重量%以上が好ましい。
また、印刷基材としては吸収性基材、難吸収性基材問わず印刷する事が可能である。中でも難吸収性基材にて低温乾燥工程でも粒状感の無い画像形成を可能とし、難吸収性基材の具体例としては、屋外広告等の媒体として用いられているポリ塩化ビニルシートを始め、PET、PE、PP等の透明フィルム、ガラス板、商業印刷基材として頻繁に使用されているコート紙やアート紙等が代表例として挙げられる。
本発明のインキ組成物の印刷方式としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット印刷方式である。
本発明のインキ組成物は、まず始めにペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって、水もしくは水−有機溶剤混合溶媒中で顔料を分散し、得られた水性顔料分散体を、本発明の水,有機溶剤およびバインダー樹脂で希釈して製造されるものである。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」は「重量部」および「重量%」を表す。
[製造例1]
(顔料分散剤の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、顔料分散剤の溶液を得た。顔料分散剤の重量平均分子量は約16000であった。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。その後、水93.4部加え、100℃で水及びブタノールを留去する操作を2回繰り返し、溶媒を水に置換し水性化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、顔料分散剤の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
[製造例2]
(アクリル樹脂エマルション製造方法)
モノマーとしてアクリル酸:1.2部、サイラエース210(ビニルトリメトキシシラン チッソ社製):6.3部、メタクリル酸メチル:72.1部、アクリル酸2−エチルヘキシル:25.8部、アクリルアミド:1.0部、乳化剤としてアクアクロンKH−20(第一工業製薬社製 反応性乳化剤):1.5部、精製水:53.1部の混合物をバッチ式ホモミキサーで乳化しモノマープレエマルションを滴下槽に入れた。
還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口を具備する容積2Lの4つ口フラスコを反応容器とし、該反応容器にイオン交換水89.4部を入れ、窒素を導入しながら液温を60℃に温めた。次いで反応容器中に、アルキルフェノールエーテル系の反応性乳化剤としてアクアクロンKH−20(第一工業製薬社製 反応性乳化剤):0.5部添加し、同時に5.0%過硫酸アンモニウム水溶液:6.0部を添加した。
10分後、反応容器を70℃に保ち、滴下槽から上記モノマープレエマルションを5時間かけて連続的に滴下し、別の滴下槽から5.0%過硫酸アンモニウム水溶液:6.0部を5時間かけて断続的に滴下した。反応容器内は70℃に保ち3時間反応させた。その後50℃まで冷却し、アンモニア水を添加し、180メッシュ濾布で濾過し、固形分39.5%のアクリル樹脂エマルションを得た。理論Tgは45℃であった。
[製造例3]
(メトキシ‐N,N−ジメチルプロピオンアミドの製造)
攪拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた500mLセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド198.0g、メタノール96.0gを入れ、窒素ガスを導入しながら攪拌した。次に、ナトリウムメトキシド1.08gを含むメタノール溶液20mlをゆっくりと滴下し加えた。反応開始後30分で反応温度が38℃に達したところで水浴を使用し、反応温度を30〜40℃に調整し5時間反応を行った。加熱終了後、酢酸を加え中和した後、エバポレーターで未反応物を除き、メトキシ‐N,N−ジメチルプロピオンアミドを得た。
[製造例4]
(シアン顔料分散体Aの製造)
Lionogen Blue 7351(東洋インキ製造社製 フタロシアニン顔料):30.0部、製造例1にて合成した顔料分散剤(固形分20%):60.0部、精製水:10.0部をサンドミルに入れ4時間分散し、その後1μmおよび0.45μmのメンブランフィルターにて濾過してシアン顔料分散体Aを得た。
[製造例5]
(マゼンタ顔料分散体Bの製造)
FASTOGEN SUPER MAGENTA RGT(DIC社製 キナクリドン顔料):30.0部、製造例1にて合成した顔料分散剤(固形分20%):67.5部、精製水:2.5部をサンドミルに入れ4時間分散し、その後1μmおよび0.45μmのメンブランフィルターにて濾過してマゼンタ顔料分散体Bを得た。
[製造例6]
(イエロー顔料分散体Cの製造)
YELLOW PIGMENT E4GN(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料):30.0部、製造例1にて合成した顔料分散剤(固形分20%):52.5部、精製水:17.5部をサンドミルに入れ4時間分散し、その後1μmおよび0.45μmのメンブランフィルターにて濾過してイエロー顔料分散体Cを得た。
[製造例7]
(ブラック顔料分散体Dの製造)
Printex 85(エボニック・デグサ社製 カーボン顔料):30.0部、製造例1にて合成した顔料分散剤(固形分20%):60.0部、精製水:10.0部をサンドミルに入れ4時間分散し、その後1μmおよび0.45μmのメンブランフィルターにて濾過してイエロー顔料分散体Cを得た。
[実施例1]
(水性インクジェットインキ1の製造)
製造例4〜7にて作成した顔料分散体A〜Dを用い、下記載の処方にて4色のインクジェットインキを作成した。
顔料分散体:20.0部、顔料分散剤1(固形分20.0%):20.0部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル:20.0部、グリセリン:10.0部、プロキセルGXL(アビシア社製 防腐剤):0.1部、イオン交換水:29.9部をハイスピードミキサーにて攪拌混合し、その後、1μmおよび0.45μmのメンブランフィルターにて濾過し、水性インクジェットインキ1を得た。
[実施例2〜13、比較例1〜10]
表1にて記載した原料を成分とし、実施例1と同様の手順にて4色の水性インクジェットインキを作成した。
Figure 2012057043
表1中の略称,製品名は、以下に示す通りである。
(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤
・ DMTeG :テトラエチレングリコールジメチルエーテル
(沸点:275℃,表面張力:33.0mN/m)
・ DMDPG:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
(沸点:171℃,表面張力:29.1mN/m)
・ MBTG:トリエチレングリコールメチルブチルエーテル
(沸点:261℃,表面張力:28.7mN/m)
・ MBDG:ジエチレングリコールメチルブチルエーテル
(沸点:212℃,表面張力:26.7mN/m)
・ DEDG :ジエチレングリコールジエチルエーテル
(沸点:189℃,表面張力:26.7mN/m)

(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類
・ BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(沸点:230℃,表面張力:27.9mN/m)
・ MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
(沸点:249℃,表面張力:35.8mN/m)
・ BTG:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(沸点:271℃,表面張力:29.9mN/m)
アルコール溶剤
・ グリセリン(沸点:290℃,表面張力:62.0mN/m)
・ 1,3−プロパンジオール(沸点:214℃,表面張力:47.1mN/m)
・ 1,6−ヘキサンジオール(沸点:208℃,表面張力:41.2mN/m)
・ 1,2−プロパンジオール(沸点:187℃,表面張力:35.1mN/m)
・ 1,2−ヘキサンジオール(沸点:224℃,表面張力:25.9mN/m)

含窒素系,含硫黄系,ラクトン系溶剤
・ DMSO : ジメチルスルホキシド
評価方法について下記に示す。
[インキ分離評価]
実施例1〜13、比較例1〜10で得られたインキ組成物について、25℃環境下に1日放置した後、インキが溶剤層と水層に分離するかを確認した。分離しないものを『○』、分離するものを『×』とした。
[印刷実験 ドット径測定試験]
難吸収基材上での水性インキの濡れ広がり性能を確認する為、評価を実施。
25℃環境下で株式会社セイコーアイ・インフォテック社製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusに水性インキ組成物を4色充填し、印刷物生産性能16m/1Hモードにて、乾燥温度条件を変え、様々な基材上に画像を印刷した。その後、1ドットのドット径をキーエンス社製DIGITAL MICROSCOPE VHX−500、レンズはVH−Z250Rを用い、倍率500倍にて測定を行った。括弧内に記載された数値は、N=20にて実測したドット径の平均値である。溶剤インキ同等のドット径である、ドット径90μm以上を実現した場合を『◎』、80〜89μmの場合を『○』、70〜79μmの場合を『△』、70μm未満を『×』とした。インクジェットヘッドからインキが吐出できず、基材に印刷できなかった場合は『−』とした。
[印刷実験 印刷物乾燥性評価]
25℃環境下で株式会社セイコーアイ・インフォテック社製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusに水性インキ組成物を4色充填し、印刷物生産性能16m/1Hモードにて、乾燥温度条件を変え、様々な基材上に画像を印刷した。その後、画像を形成しているドットの観察を実施した。乾燥温度45℃以下印字した際にドット融着する事無く、綺麗な画像が得られた場合を『○』、乾燥温度45〜70℃にて印字した際にドット融着無く、綺麗な画像が得られた場合を『△』、乾燥温度70℃以上で印字した際に、ドット融着しビーディングが発生する事によって綺麗な画像を形成できない場合を『×』とした。インクジェットヘッドからインキが吐出できず、基材に印刷できなかった為に、評価ができなかったものは『−』とした。
今回評価に使用した印刷基材種の詳細を以下に示す。
・ ポリ塩化ビニルシート:MD5(METAMARK社製)
・ アート紙:特菱アート両面N(三菱製紙社製)
・ コート紙:OKトップコートプラス(王子製紙社製)
・ ポリオレフィン系シート:サントックス−CP K30(サン・トックス社製)
表1の結果より、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤を併用する事で、溶剤層と水層が分離せず、難吸収性基材上でも濡れ広がる水性インキを作成する事ができる(実施例1〜9)。また添加するアルコール溶剤に、表面張力が50mN/m以下のアルカンジオールを用いると難吸収基材上にてより濡れ広がる為、ドット径が広がり乾燥性も良化する事から、低温乾燥条件でもドット融着が起こらない為、ビーディングする事無く綺麗な印刷物を作成する事ができる(実施例6〜9)。なかでも、1,2−アルカンジオールを用いたインキは濡れ広がりが最も良い結果となった(実施例8〜9)。また、インキ中に含窒素系,含硫黄系またはラクトン系溶剤を併用する事で、乾燥温度条件が低くてもバインダー樹脂エマルジョンを溶解し皮膜形成できる為、ポリオレフィン系シートでもビーディングする事無く、印刷物を作成する事ができる(実施例10〜13)。

Claims (7)

  1. 顔料と顔料分散剤と、常圧での沸点が100℃以上である1種類以上の水溶性有機溶剤と水を少なくとも含んでなる水性インキ組成物であって、前記水溶性有機溶剤が(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤とアルコール溶剤とを含んでなる、難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
  2. 更に前記(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤が、一般式(1)で表される溶剤である、請求項1記載の難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
    (ORZOR・・・(1)
    (式中、R2はエチレン基又はプロピレン基又はブチレン基、R1、R3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、Zは1〜6の整数を表す。)
  3. 更に前記アルコール溶剤が、表面張力が50mN/m以下のアルカンジオールである、請求項1または2記載の難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
  4. 更に前記アルカンジオールが、炭素数6以下の1,2−アルカンジオールである、請求項1ないし3いずれか記載の難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
  5. 更にバインダー樹脂をふくむ、請求項1ないし4いずれか記載の難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
  6. 更に常圧での沸点が100℃以上である水溶性有機溶剤として、含窒素系または含硫黄系またはラクトン系の溶剤を少なくとも1つ以上含む、請求項1ないし5いずれか記載の難吸収性基材印刷用水性インキ組成物。
  7. 請求項1ないし6いずれか記載の難吸収性基材印刷用水性インクジェットインキ組成物。
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