JP2012056851A - 芳香族カルボン酸化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光照射により芳香族カルボン酸化合物(各種安息香酸誘導体)を得る芳香族カルボン酸化合物の製造方法において、所定のアントラキノン系化合物(2−クロロアントラキノン及び2−カルボキシアントラキノンなど)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、所定の芳香族化合物(4−t−ブチルトルエン及びベンジルアルコールなど)を反応させる。
【選択図】なし
Description
発明者らは、光照射下においてN−ブロモコハク酸イミド(以下「NBS」という)を触媒とし、酸素の存在下でトルエンメチル基をカルボン酸基へ変換する方法を示した(非特許文献1)。
更に、4−tert−ブチルトルエンを基質とし、酢酸エチル中、触媒量のLiBr存在下、紫外線照射することにより、基質のベンジル位が酸化されて4−tertブチル安息香酸を得ることを示した(非特許文献2)。
また、脂肪族アルコールを基質とし、臭化アルカリ触媒を用いて光酸素酸化を行うことで、対応する脂肪族カルボン酸が効率よく得られることを示した(非特許文献3)。更に、非特許文献3の反応を、メソポーラスシリカ、ゼオライト及びイオン交換樹脂等を担体とした触媒を用いることで促進できることを示した(非特許文献4)。
更に、より広範な基質をカルボン酸化合物の製造に利用できる光酸化触媒として、アントラセン及びアントラセン誘導体が有用であることを示した(特許文献1)。
また、光増感剤として9、10−ジシアノアントラセンを用い、紫外線照射下において各種の芳香族アルカンを分子状の酸素で酸化すると、芳香族アルカンが酸化されることが示されている(非特許文献5)。
〈1〉光照射により、下記式(11)で表される芳香族化合物から下記式(21)で表される芳香族カルボン酸化合物、又は、下記式(12)で表される芳香族化合物から下記式(22)で表される芳香族カルボン酸化合物、を得る芳香族カルボン酸化合物の製造方法であって、
下記式(3)で表されるアントラキノン系化合物と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、前記芳香族化合物を反応させることを特徴とする芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
〈2〉前記酸は、水に対する酸解離定数(pKa)が−15〜+5である前記〈1〉に記載の芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
〈3〉前記塩基は、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属の酢酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の酢酸塩の群から選ばれる少なくとも1種である前記〈1〉に記載の芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
〈4〉上記光は、波長300〜830nmの光を含む前記〈1〉乃至〈3〉のうちのいずれかに記載の芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
下記式(3)で表されるアントラキノン系化合物(以下、単に「アントラキノン系化合物(3)」ともいう)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、前記芳香族化合物を反応させることを特徴とする。
〈1〉光照射により、芳香族化合物(11)から芳香族カルボン酸化合物(21)を得る芳香族カルボン酸化合物(21)の製造方法であって、アントラキノン系化合物(3)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、芳香族化合物(11)を反応させることを特徴とする芳香族カルボン酸化合物(21)の製造方法。
〈2〉光照射により、芳香族化合物(12)から芳香族カルボン酸化合物(22)を得る芳香族カルボン酸化合物(22)の製造方法であって、アントラキノン系化合物(3)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、芳香族化合物(12)を反応させることを特徴とする芳香族カルボン酸化合物(22)の製造方法。
〈3〉光照射により、芳香族化合物(11)から芳香族カルボン酸化合物(21)を得るとともに、芳香族化合物(12)から芳香族カルボン酸化合物(22)を得る、芳香族カルボン酸化合物(21)及び芳香族カルボン酸化合物(22)の製造方法であって、アントラキノン系化合物(3)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、芳香族化合物(11)及び芳香族酸化合物(12)を共存させて、反応させることを特徴とする芳香族カルボン酸化合物(21)及び芳香族カルボン酸化合物(22)の製造方法。
但し、生成物の分離を要するため、通常、上記〈3〉を採用する必要はない。
本発明の芳香族カルボン酸化合物(2)の製造方法における芳香族化合物(1)は、基質である。本方法では、通常、アントラキノン系化合物(3)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、が同時に共存された環境下で、光照射により、芳香族化合物(1)を反応させて、芳香族カルボン酸化合物(2)を製造できる。この形態に加えて、更に、酸及び/又は塩基を除いた系、即ち、アントラキノン系化合物(3)及び酸素が存在し且つ酸及び塩基が存在しない環境下で、光照射により、芳香族化合物(1)を反応させて、芳香族カルボン酸化合物(2)となる中間体を生成した後、この中間体を含む系に対して酸及び/又は塩基を添加し、引き続き反応を行うことで芳香族カルボン酸化合物(2)を製造してもよい。このような後者の場合においても芳香族化合物(1)は基質である。
芳香族化合物(11)は、下記式(11)で表される化合物である。
より具体的には、芳香族化合物(11)におけるR3としてのハロゲン原子としては、塩素原子(Cl)又は臭素原子(Br)が好ましい。
また、芳香族化合物(11)におけるR3としての炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基が好ましく、なかでも、メチル基又はブチル基がより好ましく、更には、メチル基又はt−ブチル基がとりわけ好ましい。
更に、芳香族化合物(11)におけるR3としての炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基(−O−CH3)、エトキシ基(−O−C2H5)、プロポキシ基(−O−C3H7)等が挙げられる。これらのなかでも、メトキシ基が好ましい。
また、芳香族化合物(11)におけるR3としての炭素数6〜10のベンゼン骨格を有する芳香族基としては、フェニル基(−C6H5)、ベンジル基(−CH2−C6H5)、ナフチル基(−C10H7)等が挙げられる。これらのなかでも、フェニル基又はベンジル基が好ましい。
また、芳香族化合物(11)におけるR3の位置は、R11及びR21により構成される基とともに、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれであってもよいが、これらのなかでは、メタ位又はパラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。
芳香族化合物(12)は下記式(12)で表される化合物である。
尚、芳香族化合物(12)において、R12とR13とは同じであってもよく異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。更に、R22とR33とは同じであってもよく異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
更に、芳香族化合物(12)におけるR13とR23との組合せ(以下、R13とR23とにより構成される基を単に「R13R23基」という)は特に限定されないが、R12R22基と同様に、R13R23基がメチル基であるか、R13R23基がメチロール基であるか、R13R23基が炭素数2〜4のアルキル基であることが好ましい。
加えて、芳香族化合物(12)におけるR12R22基とR13R23基との組合せは特に限定されないものの、前述のように同じであることが好ましい。
従って、芳香族化合物(12)としては、R12R22基とR13R23基とが共にメチル基である芳香族化合物(12)、R12R22基とR13R23基とが共にメチロール基である芳香族化合物(12)、及び、R12R22基とR13R23基とが共に炭素数2〜4のアルキル基である芳香族化合物(12)が好ましい。
本方法で得られる芳香族カルボン酸化合物(21)は、下記式(21)で表される化合物である。
この芳香族カルボン酸化合物(21)は、芳香族化合物(11)を基質とする生成物である。芳香族カルボン酸化合物(21)におけるR3については、芳香族化合物(11)におけるR3と同様であり、その好ましい態様についても同様である。
尚、本方法においては、芳香族化合物(11)が有するR11R21基が優先して酸化され、R3は変化することなく、芳香族カルボン酸化合物(21)内に残存されることとなる。
本方法で用いられるアントラキノン系化合物(3)は、下記式(3)で表される化合物である。このアントラキノン系化合物(3)は、本方法における環境下において光増感し、芳香族化合物(1)を酸化して芳香族カルボン酸化合物(2)にするための触媒として機能するものと考えられる。
これらのアントラキノン系化合物(3)は、以下に示す各種のアントラキノン系化合物(3)のうちの1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、アントラキノン系化合物(3)におけるR1としての炭素数1〜6のアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等が含まれる。これらの基は各々、直鎖状のアルキル基であってもよく、分枝状のアルキル基であってもよい。即ち、分枝状のアルキル基としては、イソプロピル基、t−ブチル基等が上げられる。これらの各種基のなかでも、アントラキノン系化合物(3)におけるR1としての炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基又はt−ブチル基が好ましい。
本方法における反応系に存在する酸素は、通常、分子状の酸素(O2)であり、この酸素はどのように供給されてもよい。即ち、例えば、大気雰囲気下において反応を行うことにより空気中に含まれる酸素を利用することができる。更に、より積極的に酸素と接触できる環境を形成することもできる。このような環境の形成方法としては、即ち例えば、(1)大気を反応系に供給する方法(大気環境に開放、曝気及び大気バブリングなど)、(2)実質的に酸素のみからなる気体酸素を反応系に供給する方法(酸素ガス環境に開放、酸素バブリングなど)、(3)他の気体に酸素を混合してなり、大気よりも高濃度に酸素を含む気体を供給する方法(窒素酸素混合気体バブリングなど)、(4)酸素発泡剤を投入して酸素を系内で発生させる酸素供給、などの各種方法が挙げられる。これらの酸素供給方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本方法において酸及び塩基は、芳香族化合物(1)から芳香族カルボン酸化合物(2)を製造するうえで重要である。即ち、アントラキノン系化合物(3)及び酸素が存在するとともに酸及び塩基が存在しない環境下において、芳香族化合物(1)を基質として光照射により反応させても芳香族カルボン酸化合物(2)を得ることができる場合があるが、酸及び/又は塩基が存在することで、収率を効果的に向上させることができる。この効果は、例えば、酸及び塩基が存在しない場合に比べて、より短時間で反応を進行させることができたり、所定の芳香族カルボン酸化合物(2)又はこれに至る中間体が形成されて反応系が平衡に達した場合であっても、その平衡を芳香族カルボン酸化合物(2)の生成が促される方向へ移動させたりできるためであると考えることができる。
更に、これらの酸及び塩基は、その理由はより定かではないが、酸及び塩基のいずれか一方のみを利用することで収率を向上させることができるが、更に、酸及び塩基の両方を共存させても収率を向上させることができる。
本方法における酸の種類は特に限定されず、無機酸であってもよく、有機酸であってもよく、その他の形態の酸であってもよい。更に、反応系に添加されて実際に酸として機能することができれば、反応系へ添加される前の状態においては酸として機能するか否かは問わない。
上記無機酸(1)としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、テトラフルオロホウ酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素錯体、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、フルオロスルホン酸、炭酸などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本方法における塩基の種類は特に限定されず、無機塩基であってもよく、有機塩基であってもよく、その他の形態の塩基であってもよい。更に、反応系に添加されて実際に塩基として機能することができれば、反応系へ添加される前の状態においては塩基として機能するか否かは問わない。
上記無機塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属の酢酸塩;酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属の酢酸塩;などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、アルカリ金属の炭酸塩、及び、アルカリ金属の炭酸水素塩が好ましく、なかでも、炭酸カリウム及び炭酸リチウムが特に好ましい。
本方法では、その反応を、アントラキノン系化合物(3)と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で行えばよく、この反応系には、他の成分が存在しなくてもよいが、他の成分が存在してもよい。他の成分としては、反応溶媒が挙げられる。
反応溶媒の種類は特に限定されず、例えば、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、ニトリル、芳香族化合物、その他の化合物が挙げられる。これらの反応溶媒は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、上記エーテルとしては、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、2−メトキシ−2−メチルプロパン(t−ブチルメチルエーテル)、2−エトキシ−2−メチルプロパン(t−ブチルエチルエーテル)、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、上記ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、アセトニトリルが収率の観点から好ましい。
また、その他の化合物として、ヘキサン等の炭化水素(直鎖状アルカン)、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
水を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、通常、基質1モルに対して、1〜50が好ましく、1〜40がより好ましく、1〜30が更に好ましい。これらの範囲では、芳香族カルボン酸化合物(2)への変換効率に優れ、上記各好ましい範囲では各々より優れた収率を得ることができる。
本方法で用いる光照射における光の波長は特に制限されず、紫外線、可視光、赤外線などを用いることができる。更に、単一波長の光を用いてもよく、異なる複数の波長の光を含む混合光を用いてもよい。上記光のなかでも、特に、波長300〜830nmの光、又は、波長300〜830nmの光を含む光(混合光)が好ましい。以下、同様に、波長350〜800nmの光を含むことがより好ましく、波長360〜790nmの光を含むことが特に好ましく、
特に波長380〜780nmの光は、可視光であり、安全且つ容易に光反応を行うことができる。更に、光照射を行う間に反応系の温度を大きく変化させることもなく安定して反応させることができる。
尚、反応温度は特に限定されないが、例えば、15〜40℃とすることができる。
更に、光照射の照射時間、即ち、反応時間は特に限定されず、目的とする収率を得るように時間を変更できる。即ち、芳香族化合物(1)の種類、芳香族化合物(1)の反応系内における濃度、反応系の構成、光量、光の強さ等により適宜のものとすることが好ましい。より具体的には、例えば、0.1〜72時間とすることができる。
[1−1]実施例1−11及び比較例1
表1に示す各芳香族化合物(11)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、酸としてのトリフルオロ酢酸を芳香族化合物(11)に対して0.3当量(0.09mmol)と、純水(H2O)を75μLと、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて表1に示す各時間照射した。
その後、試験管中に得られた芳香族カルボン酸(21)の収率(%)を、1H−NMR分析(溶媒:CDCl3、日本電子社製「JMN−EX−400spectrometer」又は「JMN−AL−400spectrometer」)により分析した。その結果を表1に併記した。
表1に示す芳香族化合物(2)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(2)に対して0.16当量(0.048mmol)と、酸としてのトリフルオロ酢酸を芳香族化合物(2)に対して0.8当量(0.24mmol)と、純水(H2O)を100μLと、反応溶媒としての酢酸エチルを2mLとをパイレックス(登録商標)試験管に投入した。その他、上記[1−1]と同様にして光照射を行ったうえで、同様に得られた芳香族カルボン酸(21)の収率(%)を分析し、その結果を表1に併記した。
また、表1の欄「生成物・目的物」における「R11R21基」、「R12R22基」、「R13R23基」は、比較例1を除き、いずれも基質において対応する基を便宜的に示したものである。
表2に示す各芳香族化合物(11)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、酸としてのトリフルオロ酢酸を芳香族化合物(11)に対して0.4当量(0.12mmol)と、純水(H2O)を100μLと、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて表2に示す各時間照射した。
その後、試験管中に得られた芳香族カルボン酸(21)の収率(%)を、1H−NMR分析(溶媒:CDCl3、日本電子社製「JMN−EX−400spectrometer」又は「JMN−AL−400spectrometer」)により分析し、その結果を表2に併記した。
また、表2の欄「生成物・目的物」における「R11R21基」、「R12R22基」、「R13R23基」は、比較例2を除き、いずれも基質において対応する基を便宜的に示したものである。以下の表6及び表7においても同様である。
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを表3に示すように芳香族化合物(11)に対して0.06〜0.1当量(0.018〜0.03mmol)と、酸としてのトリフルオロ酢酸を表3に示すように芳香族化合物(11)に対して0.2〜0.4当量(0.06〜0.12mmol)と、純水(H2O)を表3に示すように50〜100μLと、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて24時間照射した。
その後、試験管の中の基質(未反応物)及び反応生成物の含有量を、1H−NMR分析(溶媒:CDCl3、日本電子社製「JMN−EX−400spectrometer」又は「JMN−AL−400spectrometer」)により分析した。その結果を表3に併記した。
芳香族化合物(11)としてのベンジルアルコール(R11R21基がメチロール基、R3基が水素原子)を用いて、表4に示す条件により、上記[1−4]と同様に24時間の光照射を行った。そして、上記[1−4]と同様に反応生成物の含有量を分析し、結果を表4に併記した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物との計4種の混合物であった。他の2種のうち、副生成物(C)はR11R21基が−CO−OOH、且つR3基が水素原子である化合物であり、副生成物(D)はR11R21基が−COH、且つR3基が水素原子である化合物であった。そして、これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表4に示した。但し、未反応の基質については表4より割愛している。
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−カルボキシアントラキノンを表5に示すように芳香族化合物(11)に対して0.08〜0.1当量(0.024〜0.03mmol)と、酸としての表5に示す各種酸を芳香族化合物(11)に対して0.3〜0.4当量(0.09〜0.12mmol)と、純水(H2O)を75μLと、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部には酸素ガスを充填した風船を取付け、試験管内を酸素雰囲気に維持した。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて表5に示すように24〜72時間照射した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(A)及び副生成物(B)}であった。そして、これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表5に示した。但し、未反応の基質については表5から割愛している。
[2−1]実施例56−66及び比較例3
表6に示す各芳香族化合物(11)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、塩基としての炭酸カリウムを芳香族化合物(11)に対して0.05当量(0.015mmol)と、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて表6に示す各時間照射した。
その後、試験管中に得られた芳香族カルボン酸(21)の収率(%)を、1H−NMR分析(溶媒:CDCl3、日本電子社製「JMN−EX−400spectrometer」又は「JMN−AL−400spectrometer」)により分析した。その結果を表6に併記した。
表7に示す各芳香族化合物(11)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、塩基としての炭酸カリウムを芳香族化合物(11)に対して0.05当量(0.015mmol)と、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて表7に示す各時間照射した。
その後、試験管中に得られた芳香族カルボン酸(21)の収率(%)を、1H−NMR分析(溶媒:CDCl3、日本電子社製「JMN−EX−400spectrometer」又は「JMN−AL−400spectrometer」)により分析し、その結果を表7に併記した。
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを表8に示すように芳香族化合物(11)に対して0.05〜0.1当量(0.015〜0.03mmol)と、塩基としての炭酸カリウムを表8に示すように芳香族化合物(11)に対して0.01〜0.1当量(0.003〜0.03mmol)と、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて24時間照射した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(A)及び副生成物(B)}との計4種の混合物であった。これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表8に示した。但し、未反応の基質については表3から割愛している。
芳香族化合物(11)としてのベンジルアルコール(R11R21基がメチロール基、R3基が水素原子)を用いて、表9に示す条件により、上記[2−4]と同様に24時間の光照射を行った。そして、上記[2−4]と同様に反応生成物の含有量を分析し、結果を表9に併記した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(C)及び副生成物(D)}との計4種の混合物であった。これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表9に示した。但し、未反応の基質については表9より割愛している。
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、塩基としての表10に示す各種塩基を芳香族化合物(11)に対して0.05当量(0.015mmol)と、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて24時間照射した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(A)及び副生成物(B)}との計4種の混合物であった。これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表10に示した。但し、未反応の基質及び副生成物(B)については表10から割愛している。
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、塩基としての表11に示す各種塩基を芳香族化合物(11)に対して表11に示す0.05〜0.1当量(0.015〜0.03mmol)と、純水(H2O)を75μLと、反応溶媒としての酢酸エチルを1mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて24時間照射した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(A)及び副生成物(B)}との計4種の混合物であった。これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表11に示した。但し、未反応の基質については表11から割愛している。
[3−1]参考例1−28
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、表12に示す各化合物を芳香族化合物(11)に対して0.1当量と、反応溶媒としての酢酸エチルを5mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は酸素ガスを充填した風船を取付け、試験管内を酸素雰囲気に維持した。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて10時間照射した。
芳香族化合物(11)としてのベンジルアルコール(R11R21基がメチロール基、R3基が水素原子)を用いた以外は、上記[3−1]と同様に10時間の光照射を行うとともに、同様に反応生成物の含有量を分析し、結果を表13に併記した。
[4−1]参考例57−63
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.1当量(0.03mmol)と、表14に示す各反応溶媒を5mLと、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は酸素ガスを充填した風船を取付け、試験管内を酸素雰囲気に維持した。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて10時間照射した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(A)及び副生成物(B)}であった。これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表14に示した。
芳香族化合物(11)としてベンジルアルコール(R11R21基がメチロール基、R3基が水素原子)を用い、アントラキノン系化合物(3)として2−カルボキシアントラキノンを、芳香族化合物(11)に対して0.1当量(0.03mmol)を用いた以外は、上記[5−1]と同様に10時間の光照射を行った。その後、同様に反応生成物{前述の副生成物(C)及び副生成物(D)}の含有量を分析し、結果を表14に併記した。
芳香族化合物(11)としての4−t−ブチルトルエン(R11R21基がメチル基、R3基がt−ブチル基、R11R21基とR3基とがパラ位)を0.3mmolと、アントラキノン系化合物(3)としての2−クロロアントラキノンを芳香族化合物(11)に対して0.08当量(0.024mmol)と、表15に示す酸、塩基及び水を各々表15に記載の量と、表15に示す各反応溶媒を表15に示す量と、をパイレックス(登録商標)試験管に投入した。試験管の開口部は大気に開放した状態に維持し、試験管内を大気雰囲気とした。そして、反応系の撹拌は行わず、試験管の外側に配設した蛍光灯(88W)から放射される可視光(波長380〜780nmの光)を、室温(25℃)にて表15に示す時間照射した。
尚、反応後の生成物は、目的物たる芳香族カルボン酸(21)と、未反応の基質{芳香族化合物(11)}と、他の2種の副生成物{前述の副生成物(A)及び副生成物(B)}であった。これらの計4種の化合物の合計を100モル%として、各化合物の含有量を算出して表15に示した。
Claims (4)
- 光照射により、下記式(11)で表される芳香族化合物から下記式(21)で表される芳香族カルボン酸化合物、又は、下記式(12)で表される芳香族化合物から下記式(22)で表される芳香族カルボン酸化合物、を得る芳香族カルボン酸化合物の製造方法であって、
下記式(3)で表されるアントラキノン系化合物と、酸素と、酸及び/又は塩基と、の存在下で、前記芳香族化合物を反応させることを特徴とする芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
- 前記酸は、水に対する酸解離定数(pKa)が−15〜+5である請求項1に記載の芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
- 前記塩基は、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属の酢酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の酢酸塩の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
- 上記光は、波長300〜830nmの光を含む請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の芳香族カルボン酸化合物の製造方法。
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