JP5083725B2 - カルボニル化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
この方法では、NBSから発生した臭素ラジカルが触媒的に作用し、分子状酸素によるトルエンメチル基のカルボン酸への酸化を促進すると推定される。しかし、収率や反応速度を上げるためにはNBSを比較的多量に使用しなければならず、製造コストが高くなり、反応生成物として生成するN−サクシンイミドの後処理も問題となる。
しかし、メソポーラスシリカやゼオライトやイオン交換樹脂は高価であり、製造コストが高騰化することとなる。
(1)三環以上の多環式芳香族化合物が光によって励起三重項状態となり、さらに励起三重項状態の多環式芳香族化合物から、分子状の酸素に、衝突、共鳴或いは発光・再吸収といった過程を経て励起エネルギーが移動し、励起状態の酸素(一重項酸素)となる。そして、励起された一重項酸素によって基質が酸化されてカルボン酸やケトンとなるという経路。
(2)三環以上の多環式芳香族化合物が光によって励起三重項状態となり、さらに励起三重項状態の多環式芳香族化合物が、基質から水素を引き抜くことによりラジカルが生成し、そのラジカルを分子状酸素がトラップしてパーオキシラジカルが生成する。その後ハイドロパーオキシドを経て最終生成物に変換される。この場合、水素を引き抜いた多環式芳香族化合物は、分子状酸素により再酸化されて元の化合物に戻ると考えられる。
1級アルカノールを基質とする場合には、水酸基がカルボキシル基となり、2級アルカノールを基質とする場合にはケトンとなる。これらのアルカノールは、直鎖構造であってもよいし、分枝構造であっても良い。また、本発明のカルボニル化合物の製造方法を行った場合において、反応を阻害することのない置換基が結合していても良い。
アルキル基やアルケニル基が結合した芳香族化合物を基質とする場合には、アルキル基やアルケニル基が切断されて安息香酸及びその誘導体が生成する。これらのアルキル基やアルケニル基には、直鎖構造であってもよいし、分枝構造であっても良い。本発明のカルボニル化合物の製造方法を行った場合において、反応を阻害することのない置換基が結合していても良い。また、芳香族環に置換基(例えばCl、CN、アルキル基、メトキシ基等)が結合していても良い。
(実施例1)
Pyrex(登録商標)試験管中で1-ドデカノール(0.3 mmol)をアセトニトリル(5 ml)に溶解し、アントラセン(0.1equiv.)を加える。そして、図1に示すように酸素風船1を取付け、高圧水銀ランプからの紫外光(400W) を10時間照射した。その後、反応溶媒を留去し、残査をエーテルに溶解し分液ロートに移した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて生成物を水層に移す。さらに、水層を塩酸酸性とした後エーテルで抽出し、目的のドデカノイック酸(収率38%)を得た。
実施例2では、多環式芳香族化合物としてアントラキノン(0.1equiv.)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的のドデカノイック酸(収率54%)を得た。
実施例3では、Pyrex(登録商標)試験管中で1-ドデカノール(0.3 mmol)を酢酸エチル(5 ml)に溶解し、アントラキノン(0.1equiv.)を加える。酸素雰囲気下(酸素風船)、蛍光灯からの可視光(22Wx4) を10時間照射した。その後、反応溶媒を留去し、残査をエーテルに溶解し分液ロートに移した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて生成物を水層に移す。水層を塩酸酸性とした後エーテルで抽出し、目的のドデカノイック酸(収率50%)を得た。
実施例4では、Pyrex(登録商標)試験管中で2-ドデカノール(0.3 mmol)を酢酸エチル(5 ml)に溶解し、アントラセン(0.1equiv.)を加える。酸素雰囲気下(酸素風船)、高圧水銀ランプからの紫外光(400W)を10時間照射した。その後、反応溶媒を留去し、残査を薄層クロマトグラフによる分離・精製を行い、目的の2-ドデカノン(収率21%)を得た。
実施例5では、多環式芳香族化合物としてアントラキノン(0.1equiv.)を用いた。その他については実施例4と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の2-ドデカノン(収率14%)を得た。
実施例6では、基質として4-tert-フ゛チルトルエン(0.3mmol)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-tert-フ゛チル安息香酸(48.0mg、収率90.0 %)を得た。
実施例7では、基質として4-メトキシトルエン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-メトキシ安息香酸(収率41%)を得た。
実施例8では、基質として4-クロロトルエン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-クロロ安息香酸(収率65%)を得た。
実施例9では、基質として4-シアノトルエン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-シアノ安息香酸(収率33%)を得た。
実施例10では、基質としてトルエン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の安息香酸(収率48%)を得た。
実施例11では、基質として4-tert-フ゛チルトルエン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例2と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-tert-フ゛チル安息香酸(収率75%)を得た。
実施例12では、基質として4-tert-フ゛チルトルエン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例3と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-tert-フ゛チル安息香酸(収率68%)を得た。
実施例13では、Pyrex試験管中で4-tert-フ゛チルヘ゛ンシ゛ルアルコール(0.3 mmol)をヘキサン(5 ml)に溶解し、アントラセン(0.1equiv.)を加える。そして、酸素雰囲気下(酸素風船)、高圧水銀ランプからの紫外光
(400W) を10時間照射した。その後、反応溶媒を留去し、残査をエーテルに溶解し分液ロートに移した後,水酸化ナトリウム水溶液を加えて生成物を水層に移す。さらに、水層を塩酸酸性とした後エーテルで抽出し,目的の4-tert-フ゛チル安息香酸(収率89%)を得た。
実施例14では、基質として4-メトキシヘ゛ンシ゛ルアルコール(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例13と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-メトキシ安息香酸(収率73%)を得た。
実施例15では、基質として4-クロロヘ゛ンシ゛ルアルコール(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例13と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-クロロ安息香酸(収率71%)を得た。
実施例16では、基質として4-tert-フ゛チルスチレン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-tert-フ゛チル安息香酸(収率59%)を得た。
実施例17では、基質として4-tert-フ゛チルスチレン(0.3 mmol)を用いた。その他については実施例2と同様であり、説明を省略する。こうして、目的の4-tert-フ゛チル安息香酸(収率49%)を得た。
実施例18では、Pyrex試験管中でp-キシレン(0.3 mmol)をアセトニトリル(5 ml)に溶解し、アントラセン (0.1 equiv.)を加える。そして、酸素雰囲気下(酸素風船)、高圧水銀ランプからの紫外光(400W) を10時間照射する。反応溶媒を留去,残査をPTLCにて精製し、4-メチル安息香酸(収率37%)およびテレフタル酸 (収率3%)を得た。
その結果、表1に示すように、アントラセンあるいはアントラキノンを触媒として用いた場合には、1級アルカノールである1−ト゛テ゛カノールや、2級アルカノールである2−ト゛テ゛カノールや、トルエン、4-tert-フ゛チルトルエン、4-メトキシトルエン、4-クロロトルエン、4-シアノトルエン、P-キシレン等の様々なアルキルベンゼン及びその誘導体、4-tert-フ゛チルスチレン等のアルケニルベンゼン類、4-tert-フ゛チルヘ゛ンシ゛ルアルコール、4-メトキシヘ゛ンシ゛ルアルコール、4-クロロヘ゛ンシ゛ルアルコール等のベンジル位に水酸基を有するアルコールを、相当するカルボン酸(ただし基質が2級アルカノールの場合にはケトン)に収率よく酸化できることが分かった。
実施例19〜23では、アセトニトリル溶媒中、基質として4-tert-ブチルトルエンを用い、いろいろな種類の三環以上の多環式芳香族化合物を基質1モルに対して0.1モル添加し、高圧水銀ランプで10時間照射した。その後、実施例1と同様の方法により、生成したカルボン酸を得た。
また、比較例1〜19では、三環以上の多環式芳香族化合物以外の光増感剤を触媒として用い、同様の条件で酸素酸化を行った。
実施例19〜23及び比較例1〜19で用いた触媒及び反応によって得られた相当するカルボン酸の収率を表2に示す。
その結果、表2に示すように、アントラセン誘導体(実施例20)や、アントラキノン誘導体(実施例21)や、四環式芳香族化合物であるピレン(実施例22)においても、カルボン酸が収率良く生成することが分かった。
一方、二環式以下の芳香族化合物を触媒として用いた場合、カルボン酸への酸素酸化の収率は低いことが分かった。
2…酸素風船
Claims (6)
- 置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルケニル基が芳香環に結合した芳香族化合物、ベンジル位に水酸基を有するアルコール、1‐ドデカノール、及び、2‐ドデカノールのいずれかを反応基質とし、アントラキノン、アントラセン、フェナンスレン、ナフタセン、及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の三環以上の多環式芳香族化合物の存在下で、金属元素を含有する触媒を使用することなく光を照射しながら酸素と接触させることを特徴とするカルボニル化合物の製造方法。
- さらに、前記多環式芳香族化合物以外の触媒を使用しないことを特徴とする請求項1記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 前記反応基質が、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルケニル基が芳香環に結合した芳香族化合物、及びベンジル位に水酸基を有するアルコール、のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 三環以上の多環式芳香族化合物はアントラセンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 三環以上の多環式芳香族化合物はアントラキノンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 反応溶媒としてニトリル及び/又はカルボン酸エステルを用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のカルボニル化合物の製造方法。
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