JP2012051544A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐空気透過性および屈曲疲労性などのインナーライナーの基本特性に優れ、かつ軽量化を達成し、さらに操縦安定性を改善された空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ内側に配置されるインナーライナーと、これに隣接して設けられ、ゴム層中にコードが埋設されてなるカーカスプライとを備え、該インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含む厚さ0.05〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含む厚さ0.01〜0.3mの第2層とからなるポリマー積層体で構成され、第2層はカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、コードの直径をDとするとき、該コードの断面中心を通る面から、第2層までの距離Lが0以上で(1+D/2)mm以下である空気入りタイヤである。
【選択図】図1

Description

本発明はポリマー積層体をインナーライナーに用いた空気入りタイヤに関する。
近年、車の低燃費化に対する強い社会的要請から、タイヤの軽量化が図られており、タイヤ部材のなかでも、タイヤの内部に配され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れの量(空気透過量)を低減して耐空気透過性を向上させる働きを担うインナーライナーにおいても、軽量化などが行われるようになってきた。
現在、インナーライナー用ゴム組成物には、たとえばブチルゴム70〜100質量%および天然ゴム30〜0質量%を含むブチル系ゴムが使用されており、このようなゴム組成物を用いてある程度の耐空気透過性を得ている。ブチル系ゴムを用いたインナーライナーは、通常、乗用車用タイヤでは0.6〜1.0mm、トラック・バス用タイヤでは1.0〜2.0mm程度の厚みが必要となるが、タイヤの軽量化を図るために、ブチル系ゴムより耐空気透過性に優れ、インナーライナー層の厚みをより薄くできるポリマーが要請されている。
たとえば特許文献1には、インナーライナー層とゴム層の接着性を改善するための積層体が開示されている。当該文献には、インナーライナー層の両側に接着層を設けることで、インナーライナー層の重ね合わせ部において接着層同士が接触するようになり、加熱によって強固に接着されるので、空気圧保持性を向上できることが記載されている。しかし、このインナーライナー層の重ね合わせのための接着層は、加硫工程においてブラダーと加熱状態で接触することになり、ブラダーに粘着、接着するという問題がある。
特許文献2には、熱可塑性樹脂フィルムとカーカスプライ層のコード横断面中心を通る面から上記熱可塑性樹脂フィルムまでのタイヤ径方向距離を所定の範囲とすることで、走行時にプライゴム層よりもヤング率の高い熱可塑性樹脂フィルムへ選択的にせん断力がかかるようにした空気入りタイヤが開示されている。しかし、この熱可塑性樹脂フィルムは加硫時の接着性が悪い上、走行時にはヤング率が高い熱可塑性樹脂フィルムに応力が集中してしまい、長期走行時には熱可塑性樹脂フィルムとカーカスプライとの剥離が生じたり、熱可塑性樹脂フィルムにクラックが発生したりする可能性がある。その結果、インナーライナーとしての機能が損なわれるおそれがある。
特許文献3は、空気圧低下の抑制、耐久性の向上および燃費の向上を同時に実現することが可能な空気入りタイヤとして、天然ゴムおよび/または合成ゴムからなるゴム成分の100質量部に対して、特定のエチレン−ビニルアルコール共重合体が15〜30質量部の範囲内で含有されたインナーライナー用ゴム組成物をインナーライナー層に用いてなる空気入りタイヤを開示している。しかし、当該空気入りタイヤにおいて、インナーライナー層の厚みは1mmと厚く、タイヤの軽量化という点で改善が十分でない。
特許文献4は、空気透過率の低いナイロンを用いてインナーライナー層を形成し、ゴム組成物であるタイヤ内面またはカーカス層との接着性を向上させることのできる空気入りタイヤを開示する。しかし、特許文献4の技術においては、ナイロンフィルム層を形成するために、ナイロンフィルムをRFL処理した後、ゴム組成物からなるゴム糊を塗布する必要があり、工程が複雑化するという問題がある。さらに、加硫工程では一般に、金型内に収容した未加硫タイヤ(生タイヤ)内にブラダー本体を挿入し、ブラダー本体を膨張させて未加硫タイヤの内側から金型内面に押し付けて加硫成形を行うタイヤ加硫方法が採用されているが、特許文献4のインナーライナー層では、ナイロンフィルム層とブラダーとが加熱状態で接触することになり、ナイロンフィルム層がブラダーに粘着、接着して破れてしまうという問題もある。
特開平9−19987号公報 特開2004−136766号公報 特開2007−291256号公報 特開平9−165469号公報
本発明は、インナーライナーを備えた空気入りタイヤにおいて、耐空気透過性および屈曲疲労性などのインナーライナーの基本特性に優れ、かつ軽量化を達成し、さらに操縦安定性を改善することを目的とする。
本発明は、タイヤ内側に配置されるインナーライナーと、該インナーライナーに隣接して設けられ、ゴム層中にコードが埋設されてなるカーカスプライとを備えた空気入りタイヤであって、該インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)を含み、厚さが0.05mm〜0.6mmである第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、該第2層は、カーカスプライのゴム層と接するように配置されており、上記コードの直径をDとするとき、該コードの断面中心を通る面から、第2層までの距離Lが0以上で(1+D/2)mm以下である空気入りタイヤを提供する。
本発明の好ましい実施形態において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる。本発明の他の好ましい実施形態において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体99〜70質量%およびエチレン−ビニルアルコール共重合体1〜30質量%からなる。該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン成分含有量が25〜50モル%であることが好ましい。
本発明のさらに他の好ましい実施形態において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体100質量部に対して、有機化合物がインターカレートされた層状粘土鉱物0.1〜50質量部をさらに含む。本発明のさらに他の好ましい実施形態において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体100質量部に対して、重量平均分子量が1×102〜1×106であり、軟化点が50℃〜150℃である粘着付与剤1〜100質量部をさらに含み、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体またはスチレン−イソブチレンジブロック共重合体20〜90質量%と、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体10〜80質量%とを含む。また、第1層とともに、第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体またはスチレン−イソブチレンジブロック共重合体とスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体との合計量100質量部に対して、重量平均分子量が1×102〜1×106であり、軟化点が50℃〜150℃である粘着付与剤1〜100質量部をさらに含むことが好ましい。
上記SIBSは、スチレン成分含有量が10〜30質量%であることが好ましい。上記SISは、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。
上記SIBは、直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。
また本発明において、インナーライナーを構成するポリマー積層体とカーカスプライのゴム層の境界面は、凹凸状を形成していることも好ましい。
本発明によれば、上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いているため、空気遮断性を維持しながら、その厚みを薄くでき、さらに隣接ゴム層との接着性を高めることができる。そしてこのポリマー積層体をインナーライナーに用いた空気入りタイヤにおいては、屈曲疲労性および操縦安定性が改善される。
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの右半分を示す模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤにおけるカーカスプライとインナーライナーとの境界近傍を拡大して示す模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤにおけるカーカスプライとインナーライナーとの境界近傍を拡大して示す模式的断面図である。 本発明の一実施の形態に係るインナーライナーの模式的断面図である。 本発明の一実施の形態に係るインナーライナーの模式的断面図である。 本発明の一実施の形態に係るインナーライナーの模式的断面図である。 本発明の一実施の形態に係るインナーライナーの模式的断面図である。
本発明は、タイヤ内側に配置されるインナーライナーと、該インナーライナーに隣接して設けられ、ゴム層中にコードが埋設されてなるカーカスプライとを少なくとも備える空気入りタイヤに関する。本発明の空気入りタイヤにおいてインナーライナーは、少なくとも2層のポリマー積層体で構成される。第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を含み、厚さが0.05mm〜0.6mmである。第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである。
第2層は、カーカスプライのゴム層と接するように配置されており、ゴム層中に埋設されるコードの直径をDとするとき、該コードの断面中心を通る面から、第2層までの距離Lは、0以上で(1+D/2)mm以下である。
本発明の空気入りタイヤについて図を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの右半分を示す模式的断面図であり、典型的には乗用車用空気入りタイヤとして用いられるものである。図1に示される空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2の両端からトロイド形状を形成するように配置されたサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部4(図示せず)に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに折り返して係止されるカーカスプライ6と、カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
上記ベルト層7は、通常、スチールコードまたはアラミド繊維等のコードよりなるプライの2枚をタイヤ周方向に対して、コードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。なお、ベルト層7の両端外側には、トッピングゴム層を設け、ベルト層7両端の剥離を軽減することができる。また、カーカスプライ6は、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維からなるコードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスプライ6とその折り返し部によって囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール部3方向に延びるビードエーペックス8が配置される。
カーカスプライ6のタイヤ半径方向内側には、一方のビード部4から他方のビード部4(図示せず)に亘ってインナーライナー9が配置される。
図2は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤにおけるカーカスプライとインナーライナーとの境界近傍を拡大して示す模式的断面図である。図2を参照して、本発明に係るインナーライナー9は、第1層IL1および第2層IL2を含むポリマー積層体で構成されている。第2層IL2は、カーカスプライ6を構成するゴム層6aと接しており、境界面Sを形成している。カーカスプライ6は、ゴム層6a中に複数のコードKが一定間隔に埋設されてなる。
ここで、本発明の空気入りタイヤにおいては、コードKの直径をDとするとき、コードKの断面中心を通る面(複数のコードKの断面中心を結んで形成される面)KCから第2層IL2までの距離L(すなわち、境界面Sまでの距離)は、0以上で(1+D/2)mm以下とされる。
第2層IL2を構成するSIS、SIBは、カーカスプライのゴム層6aよりも剛性が高い。したがって、上記距離Lを(1+D/2)mm以下と小さくすることで、第2層IL2のタイヤ周方向にせん断応力が作用し、タイヤ周方向のせん断剛性が向上する。その結果、空気入りタイヤの走行時の操縦安定性を向上させることができる。一方、距離Lが、0mmよりも小さい場合には、カーカスプライ6のコードK間の拘束力が低下し、コードK間隔が変動しやすくなり、タイヤ周方向の剛性が低下する。なお、距離Lが0mmよりも小さいとは、カーカスプライ6を構成するゴム層6aと第2層IL2との境界面Sが、コードKの断面中心を通る面KCよりもサイドウォール部3側に位置することを意味する。
図3は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤにおけるカーカスプライとインナーライナーとの境界近傍を拡大して示す模式的断面図である。図3に示されるように、ポリマー積層体の第2層IL2は、カーカスプライ6のコードとコードとの間に侵入することによって、第2層IL2とゴム層6aとの境界面Sが凹凸状を形成していてもよい。図3に示される実施形態においては、コードKの断面中心を通る面KCからゴム層6aと第2層IL2との境界面Sまでの距離Lは、実質的に0となっている。かかる構成によっても、タイヤ周方向のせん断剛性が向上し、その結果、空気入りタイヤの走行時の操縦安定性を向上させることができる。なお、境界面Sが凹凸形状を有する場合の距離Lは、ゴム層6aと第2層IL2との境界面Sまでの最短距離L’の平均値を意味する。
<インナーライナー(ポリマー積層体)>
本発明において、インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を含む厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む厚さ0.01mm〜0.3mmの第2層とからなるポリマー積層体から構成される。
〔第1層〕
(1)スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体
第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を含む。SIBSが有するイソブチレンブロックに起因して、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSを含む第1層を備えるインナーライナーを用いることにより、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
さらに、SIBSは芳香環以外の分子構造が完全飽和であるため、劣化硬化が生じにくく、優れた耐久性を有する。したがって、SIBSを含む第1層を備えるインナーライナーを用いることにより、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
上記のように、SIBSを含む第1層を備えるインナーライナーを適用した空気入りタイヤによれば、耐空気透過性を確保できる。したがって、ハロゲン化ブチルゴム等の、耐空気透過性を付与するために従来使用されてきた高比重のハロゲン化ゴムを使用する必要がなく、たとえこれを使用する場合にも、その使用量の低減が可能である。これによってタイヤの軽量化が可能となり、その結果、燃費の向上効果を得ることができる。
SIBSの分子量は特に制限されないが、SIBSのゴム弾性および流動性、インナーライナーへの成形加工性などの観点から、GPC測定による重量平均分子量が50,000〜400,000であることが好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると、SIBSのゴム弾性、引張強度および引張伸びが低下するおそれがある。また、400,000を超えると、SIBSの流動性の低下によりインナーライナーへの成形加工性(押出加工性など)が低下するおそれがある。SIBSは、耐空気透過性と耐久性をより良好にする観点から、SIBS中のスチレン成分の含有量が10〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、14〜23質量%であることがさらに好ましい。SIBSを構成するイソブチレン成分とスチレンとのモル比(イソブチレン/スチレン)は、SIBSのゴム弾性の観点から、40/60〜95/5であることが好ましい。
SIBSを構成する各ブロックの重合度は、SIBSのゴム弾性および取り扱い性(重合度が10,000未満では液状になる)の観点から、イソブチレンブロックが10,000〜150,000程度であることが好ましく、また、スチレンブロックが5,000〜30,000程度であることが好ましい。
SIBSは、リビングカチオン重合法などの一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。たとえば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル系化合物としてのイソブチレンおよび他の化合物をリビングカチオン重合することでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。このほかにも、リビングカチオン重合法によるビニル系化合物重合体の製造法が、たとえば、米国特許第4,946,899号、米国特許第5,219,948号、特開平3−174403号公報などに記載されている。
SIBSは、分子内に芳香環以外の二重結合を有していないために、分子内に二重結合を有している重合体、たとえばポリブタジエン、に比べて紫外線に対する安定性が高く、したがって耐候性が良好である。また、分子内に芳香環以外の二重結合を有しておらず、飽和系のゴム状ポリマーであるにも関わらず、波長589nmの光の20℃での屈折率(nD)は、ポリマーハンドブック〔1989年:ワイリー(Polymer Handbook, Willy,1989)〕によると、1.506である。これは他の飽和系のゴム状ポリマー、たとえば、エチレン−ブテン共重合体に比べて有意に高い。
(2)エチレン−ビニルアルコール共重合体
第1層は、SIBSのみからなることもできるが、SIBSとともにエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ともいう。)を含むことができる。第1層をSIBSおよびEVOHから構成することは、以下の点において有利である。
(a)空気入りタイヤのタイヤ周方向の剛性をより向上させることができ、これにより、空気入りタイヤの走行時の操縦安定性をより向上させることができる。
(b)インナーライナー(したがって、空気入りタイヤ)の耐空気透過性(空気遮断性)をより向上させることができる。これによりインナーライナーをさらに薄くすることができる。このことは、タイヤの軽量化、ひいては燃費の向上をもたらす。
(c)第1層と第2層との間の接着強度は、これらの層がともにスチレンブロックを有しているため、第1層がEVOHを含有しない場合においても高いが、第1層にEVOHを含有させることにより、第1層と第2層との間の接着強度をさらに向上させることができる。これにより、インナーライナーを薄くした状態においても、空気入りタイヤの操縦安定性をより向上させることができる。
(d)第1層を形成するためのSIBSを含むゴム組成物、ひいては第1層の粘着力がより向上する。これにより、タイヤ成形時に第1層を形成するゴム組成物層が脱落するなどの問題が生じにくくなり、空気入りタイヤの成形加工性をより向上させることができる。
EVOHのエチレン由来部位により、第1層を形成するためのゴム組成物に含まれる他の配合剤との相溶性が良好であるため、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体は、第1層中に微細なサイズの分散形態で存在することができる。一方、EVOHは、ビニルアルコ−ル由来部位の寄与により良好な空気遮断性を有する。したがって、第1層には、空気遮断性に優れるEVOHが微細なサイズで島状に分散されることとなり、これにより、インナーライナーの厚みが薄い場合においても、良好な空気遮断性が発現される。このことは、このことは、タイヤの軽量化、ひいては燃費の向上をもたらす。
第1層がSIBSとともにEVOHを含む場合、第1層中のEVOHの含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。EVOHの含有量が1質量%未満であると、上記(a)〜(d)に示されるEVOHによる効果が十分に得られない傾向がある。また、EVOHの含有量が30質量%を超えると、硬度が大きくなり、インナーライナーの屈曲疲労性が低下するおそれがある。
一方、第1層がSIBSとともにEVOHを含む場合、第1層中のSIBSの含有量は、99〜70質量%であることが好ましい。該含有量は、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下であり、また、より好ましくは80質量%以上である。SIBSの含有量が70質量%以上であることにより、優れた耐空気透過性と耐久性を有し、屈曲疲労性にも優れるインナーライナーを得ることができる。また、SIBSの含有量が99質量%以下であることにより、上記(a)〜(d)に示されるEVOHによる効果が十分に得られる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、下記一般式(I):
Figure 2012051544
(式中、mおよびnはそれぞれ独立して1〜100であり、xは1〜1000である。)で表わされるエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体であることが好ましい。
上記一般式(I)において、EVOHを構成するためにmおよびnは1以上とされる。一方、mおよびnがそれぞれ100以下であることにより、ゴム組成物中の他の配合剤との相溶性と空気遮断性とが両立されたエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体が得られる。ゴム組成物中の他の配合剤との相溶性がより良好になる点で、mは5以上であることがより好ましい。また、空気遮断性がより良好になる点で、nは5以上であることがより好ましい。一方、ビニルアルコール由来部位による空気遮断性の発現を損ない難いことから、mは95以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。また、エチレン由来部位によるゴム組成物中の他の配合剤との良好な相溶性の発現を損ない難いことから、nは95以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。
上記一般式(I)において、EVOHを構成するためにxは1以上とされる。一方、xが1000以下であることにより、第1層を形成するためのゴム組成物調製時の混練性が確保され、EVOHが均一に分散されたゴム組成物、ひいては第1層が得られる。ゴム組成物中の他の配合剤との相溶性および空気遮断性が良好に発現されることから、xは10以上であることが好ましく、混練性がより良好になることから、xは500以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
上記一般式(I)で表されるEVOHは、エチレン成分を25〜50モル%の範囲で含むことがSIBSとの相溶性の観点から好ましい。
第1層を構成するEVOHとして、上記一般式(I)で表されるEVOHを用いてもよい。このようなEVOHとしては、エチレン由来部位およびビニルアルコール由来部位に加えて、他の共重合成分に由来する部位を含むEVOHを挙げることができる。この場合における、第1層中のEVOHの含有量とは、エチレン由来部位およびビニルアルコール由来部位の合計含有量を意味する。
なお、EVOHの分子構造は、たとえば赤外吸収スペクトル(IR)や核磁気共鳴スペクトル(NMR)等により確認することができる。
(3)有機化処理粘土鉱物
第1層は、SIBSとともに、あるいはSIBSおよびEVOHとともに、有機化処理粘土鉱物を含むことができる。第1層に有機化処理粘土鉱物を含有させることにより、SIBSのゴム強度およびゴム剛性を大幅に向上させることができ、これにより、空気入りタイヤの走行時の操縦安定性をより向上させることができる。
第1層がSIBSとともに有機化処理粘土鉱物を含む場合、第1層中の有機化処理粘土鉱物の含有量は、SIBS100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。有機化処理粘土鉱物の含有量が、SIBS100質量部に対して0.1質量部未満であると、操縦安定性をより向上させる効果を十分に得ることができない。また、第1層を形成するためのゴム組成物の空気透過性および高温時の引張特性が低下する傾向にある。一方、有機化処理粘土鉱物の含有量が、SIBS100質量部に対して50質量部を超えると、ゴム組成物の硬度が大きくなりすぎて、インナーライナーの屈曲疲労性が低下する場合がある。
ここで、有機化処理粘土鉱物とは、有機化合物がインターカレートされた層状粘土鉱物をいう。有機化合物が層状粘土鉱物の層間にインターカレートされることにより、層間が広がり、ポリマーへの分散性が向上する。
層状粘土鉱物は、層状珪酸塩鉱物の一種であり、その結晶構造は珪酸四面体層−アルミナ八面体層−珪酸四面体層の3層が積み重なった構造であり、その単位層は厚さ約10Å(1nm)、広がり0.1〜1μmという極めて薄い板状になっている。
層状粘土鉱物の代表としてモンモリロナイトが挙げられる。モンモリロナイトは、結晶構造中のアルミナ八面体層の中心原子であるAlの一部がMgに置換されることで陽電荷不足となり、各結晶層自体は負に帯電しているが、結晶層間にNa+、K+、Ca2+、Mg2+などの陽イオンを取り込むことで電荷不足を中和し、安定状態となる。そのため、モンモリロナイトは結晶層が何層も重なり合った状態で存在している。
モンモリロナイトの板状結晶層表面に水が接触すると、層間の交換性陽イオンに水分子が水和し、層間が膨張する。また、モンモリロナイトの陽イオン交換性を利用して層間に有機化合物をインターカレートすることで、層間が広がり、有機溶媒やポリマーへの分散性が向上する。
本発明において使用できる層状粘土鉱物としては、たとえば、モンモリロナイト(特にナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイトおよびカルシウムモンモリロナイト)、ベントナイト、カオリナイト、ノンライト、バイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、ソボカイト、スティブンサイト、スビンフォルダイト、バーミキュライトなどのスメクタイト系粘土などといったフィロシリケート類、イライトおよびイライト/スメクタイトの混合物(レクトライト、タロソバイト、レディカイトおよび上記粘土化合物とイライトとの混合物)などの雲母鉱物類またはアタパルジャイトおよびセピオライトハイドロタルサイト系層状化合物などが挙げられる。なかでもスメクタイト系粘土が好ましく、特にモンモリロナイト系粘土が好ましい。また、スメクタイト系粘土鉱物を含むベントナイトを用いてもよい。これら層状粘土鉱物は、一般には天然鉱物を採取して所定の精製操作を経て得られる。これらの合成粘土は区別なく使用できる。
インターカラントとして使用できる有機化合物としては、イオン化しやすい極性基を分子内に有する有機化合物が挙げられる。極性基を有する有機化合物は、スメクタイト系粘土鉱物の酸素イオンなど負イオンで覆われた層の表面との間で強い相互作用を起こし、層状粘土鉱物の層間へ入り込み(インターカレートし)、層間を押し広げて膨張させるものと考えられている。
有機化合物としては、炭素原子を6個以上有するアルキル基を有し、末端にイオン化する極性基を有するものが好ましい。かかる有機化合物としては、たとえば、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するものや、アルデヒド類、アミン類、アミド類または4級アンモニウム塩が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する有機化合物としては、オクチルアルコール、ノニルアルコールなどの脂肪族アルコール;アルキル基を有する芳香族アルコールなどのアルコール類のほか、フェノール類などが挙げられる。
カルボキシル基を有する有機化合物としては、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸などの直鎖状脂肪酸、オレイン酸などの直鎖状アルケン酸、リノールエライジン酸などのジエン酸、トリエン酸などのポリ不飽和脂肪族酸などが挙げられる。アルデヒド類としてはヘキシルアルデヒドなどが挙げられる。
アミン類またはアミド類としては、1以上のアミンまたはアミドを有する極性有機化合物が挙げられ、具体例を挙げれば、たとえば、アルキルアミン、アミノシクロアルカン、アミノシクロアルカン置換体、環状脂肪族ジアミン、脂肪族アミン、アルキル芳香族アミン、アルキルジアリールアミン、脂肪族アミドなどである。アミン類またはアミド類は、一級、二級、三級アミンまたはアミドのいずれであってもよい。中でも、アルキルアミン、脂肪族アミン、アルキル芳香族アミン、アルキルジアリールアミンが好ましい。上記有機化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
好ましいアミン類としては、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、1−ノミルアミン、1−ドデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン、1−オクタデシルアミン、オレイルアミンなどの一級アミン;ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミンなどの二級アミン;ジメチル−n−オクチルアミン、ジメチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチルオレイルアミンなどの三級アミン;ジ−n−デシルメチルアミンジココアルキルメチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ヘキサデシルアミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。
好ましいアミド類としては、ヘキシルアミド、ヘプチルアミド、オクチルアミド、ノニルアミド、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステラミド、パルミアミド、オレアミド、リノレアミドなどが挙げられる。
また、極性基を有する有機化合物として、ニトリル基またはラクタム基を有するもの、ピリジン類、エステル類、界面活性剤類、エーテル類などを使用することもできる。
4級アンモニウム塩としては、たとえばジメチルジステアリルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルベンジルオクタデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
層状粘土鉱物に有機化合物をインターカレートする方法としては、公知の方法を採用することができる。たとえば、モンモリロナイト系粘土鉱物と有機化合物とを接触させるために、予め層状粘土鉱物にその質量の0.1倍から20倍程度の水を含ませて、その後有機化合物とモンモリロナイト系粘土鉱物とを接触させ、有機化処理粘土鉱物を得る方法がある。
有機化処理粘土鉱物中の有機化合物の陽イオン交換量は、50〜200meg/100gであることが好ましい。
(4)粘着付与剤
第1層は、SIBSとともに、あるいはSIBSならびにEVOHおよび/または有機化処理粘土鉱物とともに、粘着付与剤を含むことができる。第1層に粘着付与剤を含有させることにより、エアーインの防止により空気入りタイヤの外観を向上させることができるとともに、耐久性、走行時の操縦安定性、耐空気透過性(空気遮断性)、転がり抵抗などのタイヤ特性をより向上させることができる。特に、第1層と第2層との間および/または第2層とカーカスプライとの接着強度が改善されることにより、走行時の操縦安定性を飛躍的に向上させることができる。また、粘着付与剤の添加により、第1層を形成するためのSIBSを含むゴム組成物、ひいては第1層の粘着力がより向上する。これにより、タイヤ成形時に第1層を形成するゴム組成物層が脱落するなどの問題が生じにくくなり、空気入りタイヤの成形加工性をより向上させることができる。第1層および第2層の両方に粘着付与剤を含有させると、より顕著な効果を得ることができる。第2層への粘着付与剤の添加については後で詳述する。
また、インナーライナー(したがって、空気入りタイヤ)の耐空気透過性(空気遮断性)をより向上させることができることより、インナーライナーをさらに薄くすることができる。このことは、タイヤの軽量化、ひいては燃費の向上をもたらす。
第1層がSIBSとともに粘着付与剤を含む場合、第1層中の粘着付与剤の含有量は、SIBS100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。粘着付与剤の含有量が、SIBS100質量部に対して0.1質量部未満であると、上述した効果を十分に得ることができない。一方、粘着付与剤の含有量が、SIBS100質量部に対して100質量部を超えると、走行時の操縦安定性や耐空気透過性が逆に低下する傾向にある。
ここで、「粘着付与剤」とは、インナーライナーを形成するゴム組成物の粘着性を増進するための添加剤をいう。粘着付与剤は、GPC測定による重量平均分子量が1×102〜1×106であることが好ましく、また、軟化点が50℃〜150℃の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が1×102未満の場合、粘度が低すぎて、インナーライナーへの成形加工性の点で不利である。一方、重量平均分子量が1×106を超えると、第1層への粘着性付与が十分でなくなる傾向にある。また、軟化点が50℃未満の場合には、ゴム硬度が大幅に低下し、操縦安定性が低下する傾向があり、一方、150℃を超える場合には、粘着性付与効果が不十分となる傾向がある。なお、軟化点は、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の「DSC 2910」)を用いて測定される。
本発明において使用できる粘着付与剤としては、たとえば、次のものが例示される。
[C9石油樹脂]
C9石油樹脂とは、ナフサの熱分解物から、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの有用な化合物を取り去った残部であるC5〜C9留分(主としてC9留分)を混合状態のまま重合して得られる芳香族石油樹脂である。いずれも商品名で、アルコンP70、P90、P100、P115、P125、P140、M90、M100、M115、M135(いずれも荒川化学工業(株)社製、軟化点70〜145℃);アイマーブS100、S110、P100、P125、P140(いずれも出光石油化学(株)製、芳香族共重合系水添石油樹脂、軟化点100〜140℃、重量平均分子量700〜900、臭素価2.0〜6.0g/100g);ペトコールXL(東ソー(株)製)がある。
[C5石油樹脂]
C5石油樹脂とは、ナフサの熱分解物から、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの有用な化合物を取り去った残部であるC4〜C5留分(主としてC5留分)を混合状態のまま重合して得られる脂肪族石油樹脂である。いずれも商品名で、ハイレッツG100(三井石油化学(株)製、軟化点100℃);マルカレッツT100AS(丸善石油(株)製、軟化点100℃);エスコレッツ1102(トーネックス(株)製、軟化点110℃)がある。
[テルペン樹脂]
いずれも商品名で、YSレジンPX800N、PX1000、PX1150、PX1250、PXN1150N、クリアロンP85、P105、P115、P125、P135、P150、M105、M115、K100(いずれもヤスハラケミカル(株)製、軟化点75〜160℃)がある。
[芳香族変性テルペン樹脂]
いずれも商品名で、YSレジンTO85、TO105、TO115、TO125(いずれもヤスハラケミカル(株)製、軟化点80〜130℃)がある。
[テルペンフェノール樹脂]
いずれも商品名で、タマノル803L、901(荒川化学工業(株)製、軟化点120〜160℃);YSポリスターU115、U130、T80、T100、T115、T130、T145、T160(いずれもヤスハラケミカル(株)製、軟化点75〜165℃)がある。
[クマロン樹脂]
軟化点90℃のクマロン樹脂(神戸油化学工業(株)製)がある。
[クマロンインデンオイル]
商品名で、15E(神戸油化学工業(株)製、流動点15℃)がある。
[ロジンエステル]
いずれも商品名で、エステルガムAAL、A、AAV、105、AT、H、HP、HD(いずれも荒川化学工業(株)製、軟化点68〜110℃);ハリエスターTF、S、C、DS70L、DS90、DS130(いずれもハリマ化成(株)製、軟化点68〜138℃)がある。
[水添ロジンエステル]
いずれも商品名で、スーパーエステルA75、A100、A115、A125(いずれも荒川化学工業(株)製、軟化点70〜130℃)がある。
[アルキルフェノール樹脂]
商品名で、タマノル510(荒川化学工業(株)製、軟化点75〜95℃)がある。
[DCPD]
商品名で、エスコレッツ5300(トーネックス(株)製、軟化点105℃)がある。
上記の中でも、C9石油樹脂の完全水添系石油樹脂は、第1層を構成するSIBSに対する相溶性が良好であり、また、第1層の粘着力、ならびに、第1層と第2層との間および/または第2層とカーカスプライとの接着強度を向上させる効果が高いことから有利に用いられる。
第1層が粘着付与剤を含む場合、第2層は、そのポリマー成分がスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)またはスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)20〜90質量%と、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)10〜80質量%とから構成されることが好ましい。第2層のポリマー成分として、SISまたはSIBとともにSIBSを併用することによって、粘着付与剤の効果を十分に得ることができる。ただし、SIBSの含有量がポリマー成分中、80質量%を超えると、第2層とカーカスプライとの間の接着強度が低下する傾向にある。また、SIBSの含有量がポリマー成分中、10質量%未満であると、粘着付与剤の効果が十分に得られない傾向にある。
(5)第1層の厚さ
SIBSを含む第1層の厚さ(図1におけるT1)は、0.05〜0.6mmである。第1層の厚さT1が0.05mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第1層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じるおそれがある。一方、第1層の厚さT1が0.6mmを超えると、タイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。第1層の厚さT1は、好ましくは0.05〜0.4mmである。第1層は、SIBSおよび任意で添加される上述のEVOH、有機化処理粘土鉱物、粘着付与剤などの添加剤を含むゴム組成物を押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。上記ゴム組成物は、補強剤、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、カップリング剤などの他の添加剤を含有することができる。
〔第2層〕
(1)スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体
第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む。SISのイソプレンブロックおよびSIBのイソブチレンブロックはソフトセグメントであるため、SISまたはSIBを含むポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SISまたはSIBを含む第2層を備えるインナーライナーを用いることにより、インナーライナーとカーカスプライのゴム層との接着強度に優れる空気入りタイヤを得ることができる。これにより、空気入りタイヤの耐久性および走行時の操縦安定性を向上させることができる。
SISの分子量は特に制限はないが、SISのゴム弾性およびインナーライナーへの成形加工性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。重量平均分子量が100,000未満であると、SISのゴム弾性、引張強度が低下するおそれがある。また、290,000を超えると、SISの流動性の低下によりインナーライナーへの成形加工性(押出加工性など)が低下するおそれがある。SIS中のスチレン成分の含有量は、SISの粘着性およびゴム弾性、ならびに第1層およびカーカスプライに対する第2層の接着強度の観点から、10〜30質量%であることが好ましい。
SISを構成する各ブロックの重合度は、SISのゴム弾性および取り扱い性の観点から、イソプレンブロックが500〜5,000程度であることが好ましく、また、スチレンブロックが50〜1,500程度であることが好ましい。
SISは、リビングカチオン重合法などの一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。
SIBとしては、直鎖状のものを用いることがゴム弾性、ならびに第1層およびカーカスプライに対する第2層の接着強度の観点から好ましい。SIBの分子量は特に制限はないが、SIBのゴム弾性およびインナーライナーへの成形加工性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。重量平均分子量が40,000未満であると、SIBのゴム弾性、引張強度が低下するおそれがある。また、120,000を超えると、SIBの流動性の低下によりインナーライナーへの成形加工性(押出加工性など)が低下するおそれがある。SIB中のスチレン成分の含有量は、SIBの粘着性およびゴム弾性、ならびに第1層およびカーカスプライに対する第2層の接着強度の観点から、10〜35質量%であることが好ましい。
SIBを構成する各ブロックの重合度は、SIBのゴム弾性および取り扱い性の観点から、イソブチレンブロックが300〜3,000程度であることが好ましく、また、スチレンブロックが10〜1,500程度であることが好ましい。
SIBは、リビングカチオン重合法などの一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。たとえば、国際公開第2005/033035号には、攪拌機にメチルシクロヘキサン、n−ブチルクロライド、クミルクロライドを加え、−70℃に冷却した後、2時間反応させ、その後に大量のメタノールを添加して反応を停止させ、60℃で真空乾燥してSIBを得る方法が開示されている。
第2層は、SISおよびSIBの双方を含んでいてもよい。この場合において、第2層はSISおよびSIBの双方を含む単層構造であってもよいし、SISを含む層とSIB層を含む層との多層構造であってもよい。
第2層は、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)およびこれらの熱可塑性エラストマーにエポキシ基を導入したものからなる群から選択される1種以上の熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。第1層も同様である。エポキシ基を有する熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(具体例としては、エポキシ化SBS ダイセル化学工業(株)製「エポフレンド A1020」、重量平均分子量:10万、エポキシ当量:500等)などが挙げられる。
本発明におけるインナーライナー(ポリマー積層体)が採り得る形態の例を図4〜図7に示す。図4に示す例では、インナーライナーであるポリマー積層体10は、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIS層12から構成される。ポリマー積層体10は、そのSIS層12がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置される。これにより、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
図5に示す例では、ポリマー積層体10は、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIB層13から構成される。ポリマー積層体10は、そのSIB層13がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置される。これにより、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
図6に示す例では、ポリマー積層体10は、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIS層12およびSIB層13がこの順に積層されて構成される。ポリマー積層体10は、そのSIB層13がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置される。これにより、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
図7に示す例では、ポリマー積層体10は、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIB層13およびSIS層12がこの順に積層されて構成される。ポリマー積層体10は、そのSIS層12がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置される。これにより、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
第2層は、SISおよび/またはSIB、ならびに任意で添加される後述する添加剤を含むゴム組成物を押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
(2)添加剤
第2層は、第1層と同様に、EVOH、有機化処理粘土鉱物、粘着付与剤またはその他の添加剤(補強剤、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、カップリング剤など)を含むことができる。中でも、第2層は、粘着付与剤を含有することが好ましい。第2層に粘着付与剤を含有させることにより、第1層と第2層との間および第2層とカーカスプライとの接着強度が改善されることにより、走行時の操縦安定性をより向上させることができる。また、粘着付与剤の添加により、第2層を形成するためのゴム組成物、ひいては第2層の粘着力がより向上する。これにより、タイヤ成形時に第2層を形成するゴム組成物層が脱落するなどの問題が生じにくくなり、空気入りタイヤの成形加工性をより向上させることができる。また、インナーライナー(したがって、空気入りタイヤ)の耐空気透過性(空気遮断性)をより向上させることができることより、インナーライナーをさらに薄くすることができる。このことは、タイヤの軽量化、ひいては燃費の向上をもたらす。より好ましくは、第1層および第2層の両方に粘着付与剤が含有される。
第2層が粘着付与剤を含む場合、第2層中の粘着付与剤の含有量は、SISおよびSIBの合計量100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。粘着付与剤の含有量が、SISおよびSIBの合計量100質量部に対して0.1質量部未満であると、上述した効果を十分に得ることができない。一方、粘着付与剤の含有量が、SISおよびSIBの合計量100質量部に対して100質量部を超えると、走行時の操縦安定性や耐空気透過性が逆に低下する傾向にある。
第2層に含有される粘着付与剤は、上記と同様の理由から、GPC測定による重量平均分子量が1×102〜1×106であることが好ましく、また、軟化点が50℃〜150℃の範囲であることが好ましい。第2層に含有できる粘着付与剤の具体例は、第1層について上述したものと同様である。第1層に含有される粘着付与剤と第2層に含有される粘着付与剤とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(3)第2層の厚さ
第2層の厚さ(図1におけるT2)は、0.01〜0.3mmである。ここで、第2層の厚さT2とは、第2層がSIS層のみからなる場合は該SIS層の厚さを、第2層がSIB層のみからなる場合は該SIB層の厚さを、第2層がSIS層およびSIB層の2層構造など多層構造からなる場合は、多層構造の合計の厚さを意味する。第2層の厚さT2が0.01mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第2層がプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下するおそれがある。一方、第2層の厚さT2が0.3mmを超えると、タイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。第2層の厚さT2は、好ましくは0.05〜0.2mmである。
<ポリマー積層体の製造方法>
ポリマー積層体(未加硫のもの)は、第1層を形成するSIBSを含むゴム組成物と、SISおよびSIBの少なくともいずれかを含むゴム組成物とを用い、たとえば図4〜図7のいずれかに示された順序で、ラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。すなわち、上記ポリマー積層体10を空気入りタイヤ1の生タイヤのインナーライナーに適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体10を生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体10の第2層(SIS層12またはSIB層13など)が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、第2層とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
なお、本発明の空気入りタイヤに用いられるカーカスプライのゴム層の配合は、一般に用いられるゴム成分、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンーブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムなどに、カーボンブラック、シリカなどの充填剤を配合したものを用いることができる。
ここで、ポリマー積層体の第1層および/または第2層を構成するゴム組成物は、上記粘着付与剤を含む場合、加硫中の温度、たとえば150〜180℃において、金型内で軟化状態(固体と液体の中間状態)である。そのため、加硫後に金型を開放すると、当該ゴム組成物が軟化状態であるときには、ポリマー積層体の形状が変形してしまう。また、軟化状態時は固体状態時よりも反応性が高いため、隣接部材と粘着、接着してしまう場合がある。したがって、ポリマー積層体が粘着付与剤を含む場合には、加硫後に冷却工程を設けることが好ましい。冷却方法としては、たとえば、加硫後に10〜300秒の間に50〜120℃までブラダー内を急冷する方法を挙げることができる。冷却媒体としては、空気、水蒸気、水およびオイルより選択される1種以上を用いることができる。
上記冷却を行なう手法によれば、ゴム組成物が粘着付与剤を含むかどうかにかかわらず、インナーライナーの厚みをより小さくすることができ、たとえばインナーライナーの厚みを0.05〜0.6mm程度まで小さくすることができる。これは、冷却工程により、加硫して得られるタイヤの、ブラダーからの離型性が向上するためである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表1および表2に示される構成の実施例1〜11および比較例1〜5の空気入りタイヤを製造して、性能を評価した。
<実施例1>
(1)SIBの調製
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することにより、直鎖状のスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を得た。得られたSIBのスチレン成分含有量は15質量%であり、GPC測定による重量平均分子量は70,000であった。
(2)SIBSの準備
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)として、カネカ(株)社製のシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、GPC測定による重量平均分子量:100,000)を準備した。
(3)ポリマー積層体(未加硫)の作製
第1層を形成するポリマーとして上記SIBSおよび第2層を形成するポリマーとして上記SIBを用い、これらを2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)を用いてポリマー積層体を作製した。
(4)空気入りタイヤの製造
上記ポリマー積層体をインナーライナーに適用した図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズの生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成形して、空気入りタイヤを製造した。距離Lは0mmとした。インナーライナーの第1層および第2層の厚さはそれぞれ0.5mm、0.1mmであった。なお、ポリマー積層体を生タイヤに適用する際、第2層がカーカスプライに接するように配置した。
なお、カーカスプライのゴム層に用いたゴム組成物の配合は以下のとおりである。
天然ゴム(注1) 70質量部
SBR(注2) 30質量部
カーボンブラック(注3) 50質量部
プロセスオイル(注4) 10質量部
老化防止剤(注5) 2質量部
ステアリン酸(注6) 2質量部
酸化亜鉛(注7) 6質量部
硫黄(注8) 3質量部
加硫促進剤(注9) 1質量部
(注1)タイ製の「RSS#3」、
(注2)住友化学(株)社製の「住友SBR1502」、
(注3)三菱化学社製の「ダイヤブラック351H(窒素吸着比表面積:66m2/g」、
(注4)(株)ジャパンエナジー社製の「プロセスX−140」、
(注5)大内新興化学工業(株)社製の「ノクラック6C」、
(注6)日本油脂(株)社製の「ステアリン酸椿」、
(注7)三井金属工業(株)社製の「酸化亜鉛2種」、
(注8)日本乾溜(株)社製の「セイミ硫黄」、
(注9)大内新興化学工業(株)社製の「ノクセラーNS」。
また、カーカスプライのコードには、直径(D)が0.7mmのポリエステル1670dtexを用いた。
<実施例2〜3>
距離LをD/2または0.5+D/2に変更したこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。
<実施例4〜6>
第1層にSIBSを、第2層にSIS(スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体)を用い、距離Lを0〜0.5+D/2としたこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。ここで、コード直径(D)は、0.7mmである。SISには、クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、GPC測定による重量平均分子量:150,000)を用いた(以下の実施例および比較例で使用したSISもこれと同じものである)。
<実施例7〜11>
第1層にSIBSを、第2層にSIBを用い、これらの厚さを変更して、インナーライナーの厚さを変えたこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。実施例7の厚さは、0.6mmで最も厚く、実施例11の厚さが0.06mmで最も薄くなっている。
<比較例1>
次の配合成分をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して得られた厚さ1.0mmのポリマーフィルムAをインナーライナーとして用いたこと以外は実施例2と同様にして空気入りタイヤを製造した。
クロロブチル(注1) 90質量部
天然ゴム(注2) 10質量部
フィラー(注3) 50質量部
(注1)エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」、
(注2)TSR20、
(注3)東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
<比較例2>
上述と同様の方法で作製した厚さ0.6mmのSIBS層をインナーライナーとして用いたこと以外は実施例2と同様にして空気入りタイヤを製造した。
<比較例3>
次の組成を有する熱可塑性樹脂からなるポリマーフィルムBをインナーライナーとして用いたこと以外は実施例2と同様にして空気入りタイヤを製造した。
ナイロン6(注1) 25.2質量部
ナイロンM×D6(注2) 37.8質量部
ナイロン6/66/610(注3) 10.0質量部
Br−(ホ゜リイソフ゛チレン−p−メチルスチレン)(注4) 27.0質量部
(注1)東レ社製の「CM4061」、
(注2)三菱ガス化学社製の「レニー6002」、
(注3)東レ社製の「CM4001」、
(注4)エクソンケミカル社製の「EXXPRO89−4」。
<比較例4〜5>
距離Lを1.5+D/2または2.0+D/2に変更したこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。比較例4および5は、距離Lが1+D/2を超える例である。ここで、コード直径(D)は、0.7mmである。
(性能試験)
実施例および比較例で作製したポリマー積層体あるいはポリマーフィルム、または製造した空気入りタイヤについて、以下の性能試験を行った。試験結果を表1および表2に示す。
(1)剥離力試験
ポリマー積層体またはポリマーフィルムと、カーカス用ゴムシート(成分:天然ゴムおよびSBR)を重ねて170℃の条件下で12分間加圧加熱することによって加硫し、剥離用試験片を作製した。なお、ポリマー積層体は、第2層(SIS層またはSIB層等)がゴムシートと接触するように重ねた。得られた試験片を用いて、JIS K 6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」にしたがって剥離試験を行い、インナーライナーとカーカスプライとの間の剥離力(接着力)を測定した。試験片の大きさは25mm幅で、剥離試験は23℃の室温条件下で行った。比較例1の剥離力を基準として、下記式:
剥離力指数=(各実施例、比較例の剥離力)/(比較例1の剥離力)×100
に基づき、各実施例、比較例の剥離力を指数で表示した。剥離力指数が大きいほど、インナーライナーとカーカスプライとの間の剥離力(接着力)が大きいことを示す。インナーライナーとカーカスプライとの間の剥離力(接着力)は大きいほど好ましい。
(2)屈曲疲労性試験
JIS K 6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲き裂試験方法」に準じて、ポリマー積層体またはポリマーフィルムをゴムに貼り付けて加硫し、中央に溝のある所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。具体的には、雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の繰り返し回数を基準として、下記式:
耐屈曲疲労指数=(各実施例、比較例の繰り返し回数)/(比較例1の繰り返し回数)×100
に基づき、各実施例、比較例の耐屈曲疲労性を指数で表示した。耐屈曲疲労性指数が大きいほど、亀裂が成長しにくく良好である。
(3)静的空気圧低下率試験(タイヤエアリーク試験)
上述の方法で製造した各実施例、比較例のタイヤ(195/65R15スチールラジアルPCタイヤ)をJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算し、1ヶ月(30日)あたりの空気圧の低下率(単位:%/月)を算出した。静的空気圧低下率は小さいほど好ましい。
(4)操縦安定性試験
各実施例、比較例の空気入りタイヤを車輛(国産FF車 2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行し、ドライバーの官能評価により操縦安定性を評価した。10点を満点として、比較例1の操縦安定性を6点として相対評価を行った。数値が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
(5)インナーライナー重量測定試験
比較例1のインナーライナー(ポリマーフィルムA)の重量を基準として、下記式:
インナーライナー重量指数=(各実施例、比較例のインナーライナー重量)/(比較例1のインナーライナー重量)×100
に基づき、各実施例、比較例のインナーライナー重量を指数で表示した。インナーライナー重量指数が小さいほど、軽量化の達成度が高いことを示す。
Figure 2012051544
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(性能評価結果)
実施例1〜3では、インナーライナーに、第1層としてのSIBS層(厚さ0.5mm)および第2層としてのSIB層(厚さ0.1mm)からなるポリマー積層体を用いた。実施例4〜6では、インナーライナーに、第1層としてのSIBS層(厚さ0.5mm)および第2層としてのSIS層(厚さ0.1mm)からなるポリマー積層体を用いた。いずれの実施例においても、インナーライナーは、従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例1よりも薄いが、同等の剥離力を維持しながら、耐屈曲疲労性および静的空気圧低下率に優れ、さらに操縦安定性に優れていた。なお、距離Lの大きい比較例4および5では、操縦安定性が低下した。
実施例7〜11では、第1層としてのSIBS層(厚さ0.05〜0.5mm)および第2層としてのSIB層(厚さ0.01〜0.30mm)からなるポリマー積層体を用いた。いずれの実施例においても、インナーライナーは、従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例1よりも薄いにもかかわらず、同等の剥離力を維持しながら、耐屈曲疲労性および静的空気圧低下率が優れていた。さらに、操縦安定性に優れていた。また、実施例10および11では、インナーライナーを極薄の構成としており、空気入りタイヤの大幅な軽量化が達成できる。
なお、比較例1は天然ゴムおよびブチルゴムを含む、従来のインナーライナー用ゴム組成物を用いてインナーライナーを作製したものであり、基準として用いた。比較例2は、インナーライナーとして、SIBS層(厚さ0.6mm)のみからなるポリマーフィルムを用いた例である。耐屈曲疲労性および静的空気圧低下率は良好であるが、剥離力が大きく劣っていた。比較例3は、インナーライナーとして、従来のナイロンを主成分とするポリマーフィルム(厚さ0.6mm)を用いた例である。静的空気圧低下率および操縦安定性は良好であるが、剥離力および耐屈曲疲労性が劣っていた。
次に、EVOHの添加効果を検証するために、表3および表4に示される構成の実施例12〜24および比較例6〜9の空気入りタイヤを製造して、性能を評価した。
<実施例12>
第1層を形成するポリマーとして、実施例1で用いたのと同じSIBSと、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)〔クラレ(株)製「エバール E105」、上記一般式(I)で表されるエチレン−ビニルアルコール共重合体であり、エチレン成分含有量=44モル%である。〕とを85/15(SIBS/EVOH)の質量比で混合したゴム組成物を用い、また、第2層を形成するポリマーとして、実施例1で用いたのと同じSIBを用い、実施例1と同様にして未加硫のポリマー積層体を作製し、実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。距離Lは0mmとした。また、得られた空気入りタイヤにおけるインナーライナーの第1層および第2層の厚さはそれぞれ0.5mm、0.1mmであった。
なお、カーカスプライのゴム層に用いたゴム組成物の配合は実施例1と同じである。また、実施例1と同じく、カーカスプライのコードには、直径(D)が0.7mmのポリエステル1670dtexを用いた。
<実施例13〜24、比較例6〜9>
第1層におけるSIBS/EVOHの質量比、第2層を構成する共重合体の種類、第1層もしくは第2層の厚さ、距離Lまたはインナーライナーの構成を表3および表4に示されるとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。表3には、参考のため、上記実施例1のデータを併せて示している。比較例6および7はそれぞれ、距離Lを0mmとしたこと以外は上記比較例1および2と同様の例である。
(性能試験)
実施例および比較例で作製したポリマー積層体あるいはポリマーフィルム、または製造した空気入りタイヤについて、剥離力試験、屈曲疲労性試験、静的空気圧低下率試験、操縦安定性試験、粘着性試験およびインナーライナー重量測定試験を行った。剥離力指数、耐屈曲疲労指数およびインナーライナー重量指数の基準は比較例6である。試験結果を表3および表4に示す。粘着性試験以外の性能試験の試験方法は上述のとおりである。
粘着性試験は次の手順で行った。JIS T 9233に準じて、ピクマタックテスタ((株)東洋精機製作所製)を用いて、測定温度23℃、荷重4.9N、放置時間10秒、引き剥がし速度30mm/分の条件下で、インナーライナー(ポリマー積層体である場合には第1層)を形成するゴム組成物の粘着力(N)を測定した。比較例6の粘着力を基準として、下記式:
粘着力指数=(各実施例、比較例の粘着力)/(比較例6の粘着力)×100
に基づき、各実施例、比較例の粘着力を指数で表示した。粘着力指数が大きいほど、インナーライナー(またはポリマー積層体の第1層)の粘着力が高く、空気入りタイヤの成形加工性に優れる。
Figure 2012051544
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(性能評価結果)
実施例12〜17では、インナーライナーに、第1層としてのSIBS/EVOH層(厚さ0.5mm)および第2層としてのSIB層(厚さ0.1mm)からなるポリマー積層体を用いた。実施例18〜20では、インナーライナーに、第1層としてのSIBS/EVOH層(厚さ0.5mm)および第2層としてのSIS層(厚さ0.1mm)からなるポリマー積層体を用いた。いずれの実施例においても、インナーライナーは、従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例6よりも薄いにもかかわらず、十分な耐屈曲疲労性および粘着力を維持しながら、剥離力、静的空気圧低下率および操縦安定性に優れていた。また、EVOHを使用しない実施例1と比較して、剥離力、静的空気圧低下率および粘着力が向上した。ただし、EVOHの含有量が30質量%を超えると、耐屈曲疲労性が低下した。なお、距離Lの大きい比較例8および9では、操縦安定性が低下した。
実施例21〜24では、第1層としてのSIBS/EVOH層(厚さ0.05〜0.5mm)および第2層としてのSIB層(厚さ0.01〜0.30mm)からなるポリマー積層体を用いた。いずれの実施例においても、インナーライナーは、従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例6よりも薄いにもかかわらず、十分な剥離力、耐屈曲疲労性、操縦安定性および粘着力を維持しながら、静的空気圧低下率に優れていた。また、EVOHを使用しない実施例1と比較して、静的空気圧低下率および粘着力が向上した。また、実施例23および24では、インナーライナーを極薄の構成としており、空気入りタイヤの大幅な軽量化が達成できる。
次に、有機化処理粘土鉱物の添加効果を検証するために、表5および表6に示される構成の実施例25〜40および比較例10〜11の空気入りタイヤを製造して、性能を評価した。
<実施例25>
第1層を形成するポリマーとして、実施例1で用いたのと同じSIBSと、有機化処理粘土鉱物〔Pheox製の「BENTONE34」(層状粘土鉱物:ヘクトライト粘度鉱物、有機化合物:ジメチルジステアリルアンモニウム塩、有機化合物の陽イオン交換量:100meg/100g)〕とを100/30(SIBS/有機化処理粘土鉱物)の質量比で混合したゴム組成物を用い、また、第2層を形成するポリマーとして、実施例1で用いたのと同じSIBを用い、実施例1と同様にして未加硫のポリマー積層体を作製し、実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。距離Lは0mmとした。また、得られた空気入りタイヤにおけるインナーライナーの第1層および第2層の厚さはそれぞれ0.5mm、0.1mmであった。
なお、カーカスプライのゴム層に用いたゴム組成物の配合は実施例1と同じである。また、実施例1と同じく、カーカスプライのコードには、直径(D)が0.7mmのポリエステル1670dtexを用いた。
<実施例26〜40、比較例10〜11>
第1層におけるSIBS/有機化処理粘土鉱物の質量比、第2層を構成する共重合体の種類、第1層もしくは第2層の厚さ、距離L等を表5および表6に示されるとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。表5には、参考のため、上記実施例1、比較例6および7のデータを併せて示している。表5および6における粘土鉱物の質量部は、SIBS100質量部に対する値である。また、実施例29および30で用いた無機粘土鉱物は、クニミネ工業(株)製の「クニピアF」である。
(性能試験)
実施例および比較例で作製したポリマー積層体あるいはポリマーフィルム、または製造した空気入りタイヤについて、剥離力試験、屈曲疲労性試験、静的空気圧低下率試験、操縦安定性試験およびインナーライナー重量測定試験を行った。操縦安定性試験以外の性能試験の試験方法は上述のとおりである。剥離力指数、耐屈曲疲労指数およびインナーライナー重量指数の基準は比較例6である。試験結果を表5および表6に示す。操縦安定性試験に関しては、上述した操縦安定性試験における車輛として、国産FF車、1800cc、車輛重量約1200kg(操縦安定性試験A)と、国産FF車、1800cc、車輛重量約1500kg(操縦安定性試験B)とを用いた2つの試験を行った(表5および6における操縦安定性A、B)。
Figure 2012051544
Figure 2012051544
(性能評価結果)
実施例25〜28、31〜36では、インナーライナーに、第1層としてのSIBS/有機化処理粘土鉱物層(厚さ0.5mm)および第2層としてのSIB層またはSIS層(厚さ0.1mm)からなるポリマー積層体を用いた。いずれの実施例においても、インナーライナーは、従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例6よりも薄いにもかかわらず、操縦安定性AおよびBに優れていた。また、有機化処理粘土鉱物を使用しない実施例1と比較して、操縦安定性Aおよび/またはBが向上した。ただし、有機化処理粘土鉱物の含有量がSIBS100質量部に対して50質量部を超えると、耐屈曲疲労性および静的空気圧低下率が低下した。また、粘土鉱物として無機粘土鉱物を用いた場合にも、耐屈曲疲労性および静的空気圧低下率が低下した。なお、距離Lの大きい比較例10および11では、操縦安定性Aおよび/またはBが低下した。
実施例37〜40では、第1層としてのSIBS/有機化処理粘土鉱物層(厚さ0.05〜0.5mm)および第2層としてのSIB層(厚さ0.01〜0.30mm)からなるポリマー積層体を用いた。いずれの実施例においても、インナーライナーは、従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例6よりも薄いにもかかわらず、十分な剥離力、耐屈曲疲労性および静的空気圧低下率を維持しながら、操縦安定性AおよびBに優れていた。また、有機化処理粘土鉱物を使用しない実施例1と比較して、操縦安定性AおよびBが向上した。また、実施例39および40では、インナーライナーを極薄の構成としており、空気入りタイヤの大幅な軽量化が達成できる。
次に、粘着付与剤の添加効果を検証するために、表7〜表9に示される構成の実施例41〜64および比較例12の空気入りタイヤを製造して、性能を評価した。
<実施例41>
第1層を形成するポリマーとして、実施例1で用いたのと同じSIBSと、粘着付与剤Aとを100/1(SIBS/粘着付与剤A)の質量比で混合したゴム組成物を用い、また、第2層を形成するポリマーとして、実施例1で用いたのと同じSIBとSIBSとを90/10の質量比で混合したゴム組成物を用い、実施例1と同様にして未加硫のポリマー積層体を作製し、実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。距離Lは0mmとした。また、得られた空気入りタイヤにおけるインナーライナーの第1層および第2層の厚さはそれぞれ0.5mm、0.1mmであった。
なお、カーカスプライのゴム層に用いたゴム組成物の配合は実施例1と同じである。また、実施例1と同じく、カーカスプライのコードには、直径(D)が0.7mmのポリエステル1670dtexを用いた。
<実施例42〜64、比較例12>
第1層または第2層におけるSIBS/粘着付与剤の質量比、粘着付与剤の種類、第2層を構成する共重合体の種類および混合比、第1層もしくは第2層の厚さ、距離L等を表7〜表9に示されるとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。表7には、参考のため、上記実施例1、比較例6および7のデータを併せて示している。表7〜表9における粘着付与剤の質量部は、第1層についてはSIBS100質量部、第2層についてはSISまたはSIBとSIBSとの合計量100質量部に対する値である。表7〜表9における粘着付与剤A〜Cは下記のとおりである。
(1)粘着付与剤A:C9石油樹脂、アルコンP140(荒川化学工業(株)社製、軟化点:140℃、重量平均分子量:900)、
(2)粘着付与剤B:テルペン樹脂、YSレジンPX1250(ヤスハラケミカル(株)製、軟化点:125℃、重量平均分子量:700)、
(3)粘着付与剤C:水添ロジンエステル、スーパーエステルA125(荒川化学工業(株)製、軟化点:125℃、重量平均分子量:700)。
(性能試験)
実施例および比較例で作製したポリマー積層体あるいはポリマーフィルム、または製造した空気入りタイヤについて、剥離力試験、屈曲疲労性試験、静的空気圧低下率試験、操縦安定性試験、粘着力試験およびインナーライナー重量測定試験を行った。試験方法は上述のとおりである。剥離力指数、耐屈曲疲労指数、粘着力指数およびインナーライナー重量指数の基準は比較例6である。試験結果を表7〜表9に示す。
Figure 2012051544
Figure 2012051544
Figure 2012051544
(性能評価結果)
実施例41〜64では、インナーライナーが従来のインナーライナー用ゴム組成物からなる比較例6よりも薄いにもかかわらず、十分な粘着力を維持しつつ、多くの場合、剥離力、耐屈曲疲労性、静的空気圧低下率および操縦安定性が向上した。また、粘着付与剤を使用しない実施例1と比較して、多くの場合、剥離力、耐屈曲疲労性、静的空気圧低下率および粘着力が改善された。ただし、粘着付与剤の含有量が100質量部を超えると、静的空気圧低下率や操縦安定性が低下し、また、粘着力が過度に高くなった。また、第2層を構成するSIBSの含有量が90質量%まで高くなると、剥離力が低下した。
実施例62〜64は、インナーライナーの厚さをさらに小さくした例であるが、これらの実施例においても、優れたタイヤ性能が得られた。なお、距離Lの大きい比較例12では、操縦安定性が低下した。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りタイヤのほか、トラック・バス用、重機用等の空気入りタイヤとして用いることができる。
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6,61 カーカスプライ、6a ゴム層、7 ベルト層、8 ビードエーペックス、9 インナーライナー、10 ポリマー積層体、11 SIBS層、12 SIS層、13 SIB層、IL1 第1層、IL2 第2層、S カーカスプライを構成するゴム層とインナーライナーの第2層との境界面、K カーカスプライのコード、KC コードの断面中心を通る面、D コードの直径、L コードの断面中心を通る面から第2層までの距離。

Claims (11)

  1. タイヤ内側に配置されるインナーライナーと、前記インナーライナーに隣接して設けられ、ゴム層中にコードが埋設されてなるカーカスプライとを備えた空気入りタイヤであって、
    前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含み、厚さが0.05mm〜0.6mmである第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、
    前記第2層は、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置されており、
    前記コードの直径をDとするとき、前記コードの断面中心を通る面から、前記第2層までの距離Lが0以上で(1+D/2)mm以下である空気入りタイヤ。
  2. 前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体99〜70質量%およびエチレン−ビニルアルコール共重合体1〜30質量%からなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン成分含有量が25〜50モル%である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体100質量部に対して、有機化合物がインターカレートされた層状粘土鉱物0.1〜50質量部をさらに含む請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体100質量部に対して、重量平均分子量が1×102〜1×106であり、軟化点が50℃〜150℃である粘着付与剤1〜100質量部をさらに含み、
    前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体またはスチレン−イソブチレンジブロック共重合体20〜90質量%と、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体10〜80質量%とを含む請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体またはスチレン−イソブチレンジブロック共重合体とスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体との合計量100質量部に対して、重量平均分子量が1×102〜1×106であり、軟化点が50℃〜150℃である粘着付与剤1〜100質量部をさらに含む請求項6に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000である請求項1〜8のいずれか記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は、直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000である請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記インナーライナーを構成する前記ポリマー積層体と前記カーカスプライのゴム層の境界面は、凹凸状を形成している請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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