JP2012036439A - 拡管性に優れた油井用鋼管の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油井用として、優れた溶接性と拡管性を具備する高強度鋼管を提供する。
【解決手段】C:0.04%未満、Si:0.5〜2.0%、Mn:2.0〜4.0%、P:0.07%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含む組成を有する鋼管を、加熱温度:800〜1050℃の範囲の温度に加熱したのち、空冷以上の冷却速度で冷却する第一の熱処理と、ついで、加熱温度:650〜750℃の範囲の温度に加熱し、300s以上保持したのち、室温まで空冷する第二の熱処理と、を施す。これにより、安定な残留オーステナイト相を適正量析出でき、拡管率が40%以上という苛酷な条件の拡管加工にも耐えられる、優れた拡管性を有し、かつ引張強さ:550MPa以上の強度を有し、しかも溶接性にも優れる鋼管とすることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、原油あるいは天然ガスの油井あるいはガス井(以下、単に「油井」と総称する)内で使用される鋼管に係り、とくに、油井内で拡管加工ができる、拡管性に優れた油井用鋼管の製造方法に関する。
近年、近い将来に予想される石油資源の枯渇という状況に鑑み、従来では省みられなかったような深層油田に対する開発が、世界規模で進められている。しかし、このような油田開発では、多大な掘削費用を必要とし、油田開発のコストが高騰するという問題があり、油井掘削費の削減が要求されている。最近では、このような油井掘削費の低減という要求から、油井掘削においては、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されているように、井戸内での押拡げ加工による拡管を用いた工法が開発されてきた。この工法、いわゆる拡管埋設工法によれば、ケーシングを地中に埋設したのち、坑井内においてケーシングを半径方向に膨張させ、多段構造とすることで、坑井上部のケーシングサイズを小さく抑えることができ、井戸の掘削にかかるコストを削減できるとしている。
このような拡管埋設工法を適用するためには、使用する油井管(ケーシング)用鋼管には、優れた拡管性を有することが要求されることになる。このような要求に対し、例えば特許文献3には、埋設拡管用油井管が記載されている。特許文献3に記載された埋設拡管用油井管は、C:0.05〜0.45%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜3.0%、sol.Al:0.001〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%を含み、固溶N量が40ppm以上200ppm以下である油井管であり、さらにNb:0.005〜0.03%、V:0.005〜0.2%、B:0.0005〜0.005%のうちの1種または2種以上、Cr:0.1〜1.5%およびMo:0.1〜1.0%のうちの1種または2種、Ca:0.001〜0.005%を含有してもよいとしている。これにより、坑井内で拡管しても、高靭性、高耐コラプス性を有しているため、信頼性の高い油井管となるとしている。
特表平7−567610号公報 国際公開WO98/00626号 特開2005−8912号公報
最近では、さらにケーシングサイズを小さくし、掘削コストが低減できるように、油井内で拡管率が30%、あるいは40%を超えるような拡管加工(押拡げ加工)が可能な油井用鋼管が要求されるようになってきた。しかしながら、特許文献3に記載された技術で製造された油井管では、このような最近の更なる拡管性の向上要求を満足させるに足る、十分な高延性を具備しているとは言い難く、厳しい拡管加工用の鋼管としては問題を残していた。
また、油井では、従来から、坑井の高深度位置まで達するように、油井管同士を、順次、ねじ継手で接続して使用していた。しかし、ねじ継手が、複雑で、拡管後のシール性に問題が発生するため、最近では、ねじ継手に代えて、油井管同士を溶接継手で接続して使用する方法が考えられるようになってきている。そこで、拡管性に優れるうえ、円周溶接が可能な、油井用鋼管が要望されている。
本発明は、このような従来技術の問題を有利に解決し、優れた溶接性を具備するとともに、油井用として、優れた拡管性を有する、安価な、油井用鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「優れた拡管性」とは、拡管率が40%以上である場合をいうものとする。また、拡管率は、割れを発生させずに拡管可能な限界拡管率をいうものとし、次式で定義される。
拡管率(%)=[(拡管後の管の内径)−(拡管前の管の内径)/(拡管前の管の内 径)]×100
また、ここでいう「優れた溶接性」とは、最高加熱温度:1350℃に加熱し、800℃〜500℃までの平均冷却速度:10〜100℃/sで冷却する再現熱サイクルを施したのちの、試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー値vE−20が50J以上である場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、鋼管の拡管性に及ぼす各種要因の影響について鋭意考究した。その結果、鋼管の拡管性を向上させるためには、鋼管のn値を適正範囲内でより大きくすることが重要であることに思い至った。そして、鋼管のn値が適正範囲内でより大きくするためには、安定度を向上させた残留オーステナイト(残留γ)を所定の適正範囲内の含有量に調整することが肝要であることを見出した。そしてさらに、所望の強度を具備し、かつ所望の優れた溶接性を具備できるように、C、Si、Mn等の合金元素量を適正範囲内に調整することにより、所望の優れた溶接性と、所望の強度と所望の優れた拡管性とを兼備した油井用鋼管とすることができることを新たに見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.04%未満、Si:0.5〜2.0%、Mn:2.0〜4.0%、P:0.07%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管に、加熱温度:800〜1050℃の範囲の温度に加熱したのち、200℃以下の温度まで空冷以上の冷却速度で冷却する第一の熱処理と、加熱温度:650〜750℃の温度域の温度に加熱し、該温度域で、保持時間:300s以上保持したのち、該温度域から、室温まで空冷する第二の熱処理と、を順次施し、拡管性に優れた鋼管とすることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、次a群〜d群
a群:Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、B:0.01%以下のうち から選ばれた1種または2種以上、
b群:Ca:0.0005〜0.01%
c群:Cu:3.5%以下、
d群:V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、 W:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
本発明によれば、拡管率が40%以上という苛酷な条件の拡管加工にも耐えられる、優れた拡管性と、かつ優れた溶接性を有し、油井管の溶接継手による接続が可能で、さらに引張強さ:550MPa以上の高強度を有する油井用鋼管を、安価にしかも容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
実施例で用いた拡管試験方法の概要を模式的に示す説明図である。
まず、本発明の鋼管の製造方法で素材として使用する鋼管の組成限定理由について説明する。なお、以下、とくに断わらない限り、mass%は単に%で記す。
C:0.04%未満
Cは、鋼管の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために、本発明では0.01%以上含有することが望ましい。一方、多量の含有は、溶接部を硬化させ、溶接割れ等を引き起こす悪影響を及ぼす。本発明では、溶接継手による接続を可能にするため、Cは0.04%未満に限定した。なお、好ましくは0.02%以上である。
Si:0.5〜2.0%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、残留オーステナイト相を安定化し、拡管性の向上に寄与する元素である。さらにSiは、熱処理時にγ相へのCの濃化を促進する作用を有する。このような効果は、0.5%以上の含有で顕著となる。一方、2.0%を超える含有は、上記した効果が飽和するうえ、靭性、熱間加工性を著しく低下させる。このため、Siは0.5〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.7〜1.8%である。
Mn:2.0〜4.0%
Mnは、鋼管の強度を増加させる作用を有し、さらに熱処理時にγ相に濃化して、残留γ相を安定化させ、鋼管のn値を向上させる作用を有する有用な元素である。このような効果を得るためには2.0%以上の含有を必要とする。一方、4.0%を超える含有は、製造時の焼割れを発生させ、靭性を低下させる等の悪影響を及ぼすことがある。このため、Mnは2.0〜4.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.5〜3.5%である。
P:0.07%以下
Pは、鋼管の強度を増加させる作用を有するが、粒界等に偏析しやすく、熱間加工性、耐硫化物応力腐食割れ性を低下させる。本発明ではPはできるだけ低減することが好ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。本発明では、Pは、熱間加工性や耐硫化物応力腐食割れ性を低下させない範囲であり、比較的安価に実施可能な0.07%を上限とした。なお、好ましくは0.05%以下である。
S:0.01%以下
Sは、鋼中では主としてMn系硫化物MnSとして、粗大で伸展した介在物を形成し、熱間加工性や、靭性や拡管性を著しく低下させるため、できるだけ低減することが好ましい。しかし、極端な低減は製造コストの高騰を招くため、本発明では通常工程による鋼管製造が可能なS含有量の上限である0.01%を上限とした。なお、好ましくは0.005%以下である。
Al:0.05%以下
Al は、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.05%を超えて含有すると、アルミナ系介在物が増加して、清浄度を低下させ、靭性、拡管性に悪影響を及ぼす。このため、Al は0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.03%である。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では基本の組成に加えてさらに、選択元素として、次a群〜d群
a群:Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、B:0.01%以下のうちか ら選ばれた1種または2種以上、
b群:Ca:0.0005〜0.01%、
c群:Cu:3.5%以下、
d群:V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、W: 1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することができる。
a群:Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
a群のCr、Ni、Mo、Bはいずれも、焼入れ性向上を介して鋼管の強度を増加させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Crは、強度を増加させるとともに、耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.1%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Crは2.0%以下に限定することが好ましい。
Niは、強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.1%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため経済的に不利となる。このため、含有する場合にはNiは2.0%以下に限定することが好ましい。
Moは、強度を増加させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには0.1%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため経済的に不利となる。このため、含有する場合にはMoは2.0%以下に限定することが好ましい。
Bは、少量の含有で焼入れ性を向上させ、鋼管の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.0005%以上含有することが望ましい。一方、0.01%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、Bは0.01%以下に限定することが望ましい。
b群:Ca:0.0005〜0.01%
b群のCaは、SをCaSとして固定し、硫化物系介在物を球状化する、介在物の形態制御に有効に寄与する元素である。介在物を球状化することにより、介在物周囲のマトリックスの格子歪が小さくでき、鋼の水素トラップ能を低下させることができ、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。このような効果を得るためには0.0005%以上含有することが好ましい。一方、0.01%を超える含有は、酸化物系介在物(CaO)量の増加を招き、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。
c群:Cu:3.5%以下
c群のCuは、保護皮膜を強化し鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上含有させることが望ましいが、3.5%を超えて含有すると、CuSが粒界に析出し、熱間加工性が低下する。このため、含有する場合には、3.5%以下に限定することが好ましい。
d群:V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、W:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
d群のV、Nb、Ti、Zr、Wはいずれも、固溶しあるいは炭化物、窒化物として析出し、鋼管の強度を増加させる作用を有するとともに、さらに耐応力腐食割れ性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。このような効果を得るためには、V:0.01%以上、Nb:0.01%以上、Ti:0.02%以上、Zr:0.01%以上、W:0.01%以上含有することが望ましい。一方、V:0.20%、Nb:0.20%、Ti:0.3%、Zr:0.20%、W:1.0%を、それぞれ超える含有は、靭性を劣化させる。このため、含有する場合には、それぞれ、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、W:1.0%以下に限定することが好ましい。
残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、N:0.01%以下、O:0.006%以下が許容できる。
Nは、過剰に含有すると粗大な窒化物を形成し、靭性や拡管性を低下させる。このため、0.01%以下に調整することが望ましい。
Oは、過剰に含有すると介在物が増加しすぎて、凝集し介在物として存在しやすくなり、靭性や拡管性を低下させる。このため、0.006%以下に調整することが望ましい。
本発明で素材として使用する鋼管の製造方法については、とくに限定する必要はないが、上記した組成を有し、通常公知の方法で製造された、溶接鋼管、継目無鋼管等がいずれも好適である。ここでは、継目無鋼管を例にとり、以下に、本発明の鋼管の製造方法を具体的に説明する。なお、本発明は継目無鋼管に、限定されないことは言うまでもない。
まず、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法等の通常公知の方法で、ビレット等の鋼管素材とする。ついで、これら鋼管素材を加熱し、マンネスマン−プラグミル方式、マンネスマン−マンドレルミル方式等の穿孔圧延装置を用い、造管して、所定寸法の継目無鋼管とする。なお、本発明で素材として使用する継目無鋼管は、上記した製造方法に限定されないことは言うまでもない。
本発明では、好ましくは上記した方法で製造された鋼管(継目無鋼管)に、第一の熱処理とそれに続く、第二の熱処理とを順次施し、油井用鋼管(継目無鋼管)とする。
第一の熱処理は、鋼管(継目無鋼管)を、加熱温度:800〜1050℃の範囲の温度に再加熱し、好ましくは所定の時間保持したのち、200℃以下の温度まで空冷以上の冷却速度で冷却する処理とする。
本発明における第一の熱処理では、組織を面積率で60%以上のマルテンサイト相を主体とした組織に調整する。鋼管組織を上記したマルテンサイト相を主体とした組織とすることができなければ、その後の第二の熱処理で、所望の強度を確保できないうえ、安定した残留オーステナイト相を適正量析出させることができない。
第一の熱処理における加熱温度が800℃未満では、十分なマルテンサイト相を主体とした組織とすることができない場合があり、所望の強度、拡管性を確保できなくなる。一方、1050℃を超えて高温となると、結晶粒が粗大化する傾向となり、靭性、延性が低下する。このようなことから、第一の熱処理における加熱温度は800〜1050℃の範囲の温度に限定した。なお、上記した加熱温度における保持時間は、300s程度以上とすることが好ましいが、保持なしでもなんら問題はない。
第一の熱処理においては、加熱し、好ましくは上記した所定時間保持したのち、200℃以下、好ましくは室温まで、空冷以上の冷却速度で冷却する。冷却速度が空冷未満では、冷却が遅すぎて、所望のマルテンサイト相を主体とした組織とすることができず、所望の強度と優れた拡管性を確保できなくなる。
上記した第一の熱処理を施された鋼管に、ついで、第二の熱処理として、加熱温度:650〜750℃の範囲の温度に加熱し、該温度域で、保持時間:300s以上保持したのち、該温度域から室温まで空冷する処理を施す。
第二の熱処理は、第一の熱処理で得られたマルテンサイト相を主体とする組織をベースとして、該組織を焼戻して所望の高強度を維持しつつ、安定した残留γ相を所定量析出させて、0.15以上という高いn値の鋼管とし、優れた拡管性を確保するための、重要な処理である。
第二の熱処理における加熱温度が650℃未満では、加熱温度が低く、加熱時に十分な量のオーステナイトが析出せず、その後の冷却で所定量の残留γ相を確保できない。一方、750℃を超えて高温となると、オ−ステナイト量が多くなりすぎ、適正量の安定した残留γ相を確保できない。このようなことから、第二の熱処理における加熱温度は650〜750℃の範囲の温度に限定した。
さらに、第二の熱処理においては、上記した温度域で、保持時間:300s以上保持する。該温度域での保持時間が300s未満では、析出したγ相への、C,Mn,Si等の合金元素の拡散が不十分となり、所望の残留γ相の安定性を確保できなくなる。
第二の熱処理では、ついで、上記した温度域から、室温まで空冷にて冷却する。これにより、所望量の安定な残留γ相を確保でき、優れた拡管性を確保できる。
上記した製造方法で得られる鋼管(継目無鋼管)は、上記した組成と、焼戻マルテンサイト相を主相とし、好ましくは体積率で、10〜25%の、安定な残留γ相を含む組織を有し、引張強さTS:550MPa以上の強度を有し、溶接性と、拡管性とに優れた鋼管(継目無鋼管)となる。なお、ここでいう「主相」とは、体積率で50%以上の相をいうものとする。マルテンサイト相以外の第2相は、残留γ相以外に、フェライト相を体積率で30%以下を含んでもよい。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、十分に脱ガス処理を行い、小型鋼塊(100キロ鋼塊)とした。ついで、これら鋼塊を加熱し、研究用モデルシームレス圧延機を用いて、継目無鋼管(外径:3.5in.φ×肉厚0.5in.)とした。
これら鋼管を素材とし、該素材から試験材(管材:長さ300mm)を採取し、該試験材に、表2に示す第一の熱処理および第二の熱処理を施した。熱処理済みの試験材について、組織観察、引張試験、拡管試験、溶接部靭性試験を行なった。試験方法は次のとおりである。
(1)組織観察
熱処理済みの試験材から、観察面が管軸方向断面(L断面)となるように、組織観察用試験片を採取し、研磨、腐食(ナイタール腐食)して、光学顕微鏡(倍率:400倍)および走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)を用いて、組織を観察し撮像して、画像解析装置により、組織の同定、および各相の組織分率(面積%)を求めた。なお、残留γ相は、X線回折により得られる、αとγの回折強度を用いて、定量した。
(2)引張試験
熱処理済みの試験材から、引張方向が管軸方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠してJIS 12B号試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、全伸びEl、一様伸びEl)を求めた。なお、同時に、全領域にわたり、真応力と真歪(対数歪)との関係を測定し、n値を算出した。なお、得られた真応力σと対数歪εの関係は、次式
σ=Cε
で近似し、σとεを両対数グラフにプロットし、その直線の傾きから、n値を求めた。
(3)拡管試験
熱処理済みの試験材(管材)について、押拡げ加工法による拡管試験を実施した。押拡げ加工法は、図1に示すように、プラグ2を試験材(管材1)の管内に挿入し、該プラグ2を機械的に引抜き方向3に引き抜き、試験材(管材1)の管径を押拡げる加工法である。挿入するプラグ2は、管材1の内径Dより大きい最大外径Dを有する。拡管率は、拡管前後の平均内径を使用して求めた。なお、プラグ2の最大外径Dは、拡管率が5%間隔で変化するように拡管した。管材1に亀裂が発生する最小の径を限界拡管径として、各鋼管の限界拡管率を求めた。
(4)溶接部靭性試験
熱処理済みの試験材から、再現熱サイクル試験片(大きさ:厚さ11mm×幅11mm×長さ120mm)を採取し、最高加熱温度(ピーク温度):1350℃、800〜500℃の冷却速度:40℃/sとする再現熱サイクルを付与した。得られた試験片からシャルピー衝撃試験片を採取し、−20℃で試験し、吸収エネルギーvE−20(J)を求めた。なお、試験は各3本とした。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2012036439
Figure 2012036439
Figure 2012036439
本発明例はいずれも、適正範囲の安定した残留オーステナイト量を確保でき、40%以上の高い限界拡管率を有し、拡管性に優れ、さらに溶接性にも優れた鋼管となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例では、所望の限界拡管率を確保できていないか、溶接性が低下している。
1 管材(試験材)
2 プラグ
3 引抜き方向

Claims (2)

  1. mass%で、
    C:0.04%未満、 Si:0.5〜2.0%、
    Mn:2.0〜4.0%、 P:0.07%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.05%以下、
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管に、加熱温度:800〜1050℃の範囲の温度に加熱したのち、200℃以下の温度まで空冷以上の冷却速度で冷却する第一の熱処理と、加熱温度:650〜750℃の温度域の温度に加熱し、該温度域で、保持時間:300s以上保持したのち、該温度域から、室温まで空冷する第二の熱処理とを、順次施し、拡管性に優れた鋼管とすることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、下記a群〜d群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の油井用鋼管の製造方法。

    a群:Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、B:0.01%以下のうちか ら選ばれた1種または2種以上、
    b群:Ca:0.0005〜0.01%
    c群:Cu:3.5%以下、
    d群:V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、W: 1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
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