JP4978070B2 - 拡管性に優れる油井用ステンレス鋼管 - Google Patents

拡管性に優れる油井用ステンレス鋼管 Download PDF

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Description

この発明は、原油あるいは天然ガスの油井、ガス井に使用される油井管用として好適な油井用ステンレス鋼管に係り、特に、炭酸ガス(CO2)、塩素イオン(Cl-)などを含む極めて厳しい腐食環境下における耐食性の向上と、拡管性の改善に関する。
近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油資源の枯渇化に対処するため、従来、省みられなかったような深層油田や、一旦は開発が放棄されていた腐食性の強いサワーガス田等に対する開発が、世界的規模で盛んになっている。このような油田、ガス田は一般に深度が極めて深く、またその雰囲気は高温でかつ、CO2、Cl-等を含む厳しい腐食環境となっている。したがってこのような油田、ガス田の採掘に使用される油井用鋼管としては、高強度で、しかも耐食性を兼ね備えた鋼管が要求される。また、最近では、寒冷地における油田開発も活発になってきており、高強度に加えて優れた低温靱性を有することが要求されることも多い。
従来から、CO2、Cl-等を含む環境下の油田、ガス田では、油井用鋼管として、耐CO2腐食性に優れた13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼菅が使用されてきた。しかし、通常のマルテンサイト系ステンレス鋼は、高強度とすると、靭性が低下して、使用に耐えられなくなるという問題があった。そのため、高強度が要求される油井では、冷間加工を施した二相ステンレス鋼管が使用されてきた。しかし、二相ステンレス鋼管は、合金元素量が多く高価であり、熱間加工性が劣り特殊な熱間加工法でしか製造できないという問題があった。また、近年、寒冷地における油田開発も活発化し、高強度に加えて、優れた低温靭性を有することが要求されることが多い。このため、熱間加工性に優れ、安価である13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼をベースとする、優れた耐CO2腐食性および高靭性を有する油井用高強度鋼管が強く望まれていた。
このような要求に対し、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性を改善した、改良型13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼(鋼管)が提案されている。しかしながら、改良型13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管においては、170℃を超える環境では充分な耐食性を有していないという問題があった。
また、特許文献4には、CO2、Cl-等を含む180℃を超える高温の腐食雰囲気下においても優れた耐CO2腐食性を有する油井用ステンレス鋼管が提案されている。特許文献4に記載されたステンレス鋼管は、Cr:14〜18%、Ni:5.0〜8.0%、Mo:1.5〜3.5%、Cu:0.5〜3.5%、を含み、かつCr、Ni、Mo、Cu、Cからなる特定関係およびCr、Mo、Si、C、Mn、Ni、Cu、Nからなる特定関係を満足するように含有する組成を有する鋼管であり、降伏強さ654MPa以上の高強度を確保でき、耐CO2腐食性に優れるとしている。
特開平8−120345号公報 特開平9−268349号公報 特開平10−1755号公報 再公表特許WO2004/001082公報
一方、深層油田の開発には、多大な掘削コストがかかるという問題があった。しかし、最近、細い鋼管を油井中で拡管させる技術が実用化され、この技術を用いることにより掘削断面積が減少し、掘削コストを低減することができるようになった。しかし、使用する鋼管に対しては、優れた拡管性を具備することが要求されることになった。
通常の焼入れ焼戻処理を施された13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼菅は、高強度であり、深層油田開発用として要求されるような、十分な拡管性を具備していないという問題があった。このため、油井中の拡管という新技術を適用するためには、耐CO2腐食性、拡管性がともに優れた油井用ステンレス鋼管が強く望まれていた。
この発明は、上記したような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、炭酸ガス(CO2)、塩素イオン(Cl-)等を含む苛酷な腐食環境下においても優れた耐CO2腐食性を有し、さらに優れた拡管性を兼備する、安価な油井用ステンレス鋼管を提供することを目的とする。なお、この発明が目的とする油井用ステンレス鋼管は、拡管を適用する油井用として、好適な強度である、654MPa未満の降伏強さを有する油井用ステンレス鋼管である。また、ここで「拡管性に優れる」とは、限界拡管率が25%以上である場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、13%Cr系鋼を基本組成として、降伏強度およびCO2、Cl-を含む環境下での耐食性に及ぼす各種合金元素の影響について鋭意研究した。その結果、Cを従来より著しく低減する一方で、Cr含有量を従来より増加し、さらにNi、Mo、Vを含有させたうえ、S、Si、Al、O含有量を低減した組成とすることにより、良好な熱間加工性を有するとともに、焼入れ焼戻処理後の組織が、焼戻マルテンサイト相とオーステナイト相を主体とし、フェライト相を所定量含む組織となり、優れた耐食性を有し、かつ拡管性が著しく改善されたステンレス鋼管となることを見出した。
(1)mass%で、C:0.05%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:14.5〜18.0%、Ni:2.0〜7.0%、Mo:3.5%以下、V:0.20%以下、N:0.040〜0.15%、O:0.008%以下、Al:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる組成と、焼戻マルテンサイト相とオーステナイト相を主体とし、かつ該オーステナイト相を、体積率でオーステナイト相含有量と焼戻マルテンサイト相含有量との比、(オーステナイト相含有量)/(焼戻マルテンサイト相含有量)が1/4以上となるように含み、さらに10体積%以上50体積%未満のフェライト相を含む組織を有し、降伏強さが654MPa未満であることを特徴とする拡管性に優れた油井用ステンレス鋼管。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下を含有することを特徴とする油井用ステンレス鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有することを特徴とする油井用ステンレス鋼管。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:3.5%以下を含有することを特徴とする油井用ステンレス鋼管。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする油井用ステンレス鋼管
この発明によれば、CO2、Cl-を含む高温の厳しい腐食環境下においても、十分な耐食性を有し、かつ厳しい拡管加工にも耐えうる、優れた拡管性を有する油井用鋼管を安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明鋼管の組成限定理由について説明する。以下、とくに断らないかぎり、mass%は%と記す。
C:0.05%以下
Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の強度に関係する重要な元素であり、所望の強度を確保するために、0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超えて多量に含有すると、Niの含有によって焼戻し時、鋭敏化が起こりやすくなる。このため、Cは0.05%以下に限定した。なお、耐食性の観点からCは少ないほうが望ましいため、好ましくは0.01〜0.03%の範囲である。
Si:0.50%以下
Siは、通常の製鋼過程において脱酸剤として有用な元素である。このような効果を得るために0.05%以上含有することが望ましいが、0.50%を超える含有は、耐CO2腐食性を低下させるとともに、熱間加工性をも低下させる。このため、Siは0.50%以下に限定した。
Mn:0.10〜1.80%
Mnは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、油井用マルテンサイト系ステンレス鋼管として所望の強度を確保するために0.10%以上の含有を必要とする。一方、1.50%を超える多量の含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.10〜1.80%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.20%〜1.00%である。
P:0.03%以下
Pは、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素であり、本発明ではその含有量は可及的に少ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。そのため、本発明ではPは、工業的に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を低下させない範囲である、0.03%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
S:0.005%以下
Sは、パイプ造管過程における熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、本発明ではその含有量は可及的に少ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。そのため、本発明ではSは、通常の工程でのパイプ製造が可能な範囲である0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Cr:14.5〜18.0%
Crは、所望の耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性を保持するために重要な元素であり、本発明が対象としている環境下における耐食性確保の観点からは、14.5%以上の含有を必要とする。一方、18.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Crは14.5〜18.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは15.0〜17.5%である。
Ni:2.0〜7.0%
Niは、保護皮膜を強固にして、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる作用を有するとともに、鋼の強度を増加させる作用を有する。このような効果を得るためには、2.0%以上の含有を必要とする。一方、7.0%を超える含有は、強度低下を引き起こす。このため、Niは2.0〜7.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.5〜4.5%である。
Mo:0.5〜3.5%
Moは、Cl-による孔食を抑制する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とするが、3.5%を超える含有は、材料コストの高騰を招くとともに、δ−フェライトが発生しやすくなり、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性および熱間加工性を低下させる。このため、Moは0.5〜3.5%に限定した。なお好ましくは、材料コストの観点から3.0%以下である。
V:0.20%以下
Vは、鋼の強度を増加させるとともに、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.02%以上含有することが望ましいが、0.20%を超える含有は、靱性を低下させる。このため、Vは0.20%以下に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.08%である。
N:0.040〜0.15
Nは、耐孔食性を著しく向上させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.15%を超える含有は、種々の窒化物を形成して靭性を低下させる。このため、Nは0.15%以下に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。
O:0.008%以下
Oは、鋼中では各種の酸化物を形成し、熱間加工性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性を著しく低下させるため、本発明鋼の性能を十分に発揮させるために、Oは可及的に低減することが極めて重要となる。しかし、極端なOの低減は精錬コストの高騰を招く。このため本発明ではOは、熱間加工性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性の低下が許容できる範囲である、0.008%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Al:0.05%以下
Alは、強力な脱酸剤として作用するとともに、Nと結合し結晶粒を微細化する作用を有する元素である。このような効果を安定して確保するために0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、上記した基本組成に加えてさらに、Nb:0.20%以下、および/または、Ca:0.0005〜0.01%、および/または、Cu:3.5%以下、および/または、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を、必要に応じて選択して含有できる。
Nb:0.20%以下
Nbは、鋼の強度増加、靱性向上に有効に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は0.02%以上の含有で顕著となるが、0.20%を超える含有は、靱性を低下させる。このため、Nbは0.20%以下とすることが好ましい。
Ca:0.0005〜0.01%
Caは、SをCaSとして固定しS系介在物を球状化する作用により、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、水素のトラップ能を下げる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は0.0005%以上の含有で顕著となるが、0.01%を超える含有は、CaOの増加を招き、耐CO2腐食性、耐孔食性を低下させる。このため、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001〜0.005%である。
Cu:3.5%以下
Cuは、保護皮膜を強固にして鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は0.2%以上の含有で顕著となるが、3.5%を超える含有は、高温で粒界にCuSが析出し、熱間加工性を低下させる。このため、Cuは3.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5〜2.5%である。
Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下
Ti、Zr、B、Wはいずれも、強度を増加させ、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。このような効果は、Ti:0.01%以上、Zr:0.01%以上、B:0.0005%以上、W:0.1%以上の含有で顕著となる。一方、Ti:0.3%、Zr:0.2%、B:0.01%、W:3.0%、をそれぞれ超える含有は、靱性を劣化させる。このため、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下にそれぞれ限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明鋼管は、上記した組成を有し、かつ、焼戻マルテンサイト相とオーステナイト相を主体とし、さらに10体積%以上50体積%未満のフェライト相からなる組織を有する。そして、本発明鋼管では、オーステナイト相を、体積率でオーステナイト相含有量と焼戻マルテンサイト相含有量との比、(オーステナイト相含有量)/(焼戻マルテンサイト相含有量)が1/4以上となるように含む。このような組織とすることにより、拡管性を安定して確保できる。
焼戻マルテンサイト相とオーステナイト相を主体とする組織とすることにより、所望の高強度を確保することができる。そしてさらに、オーステナイト相含有量を、体積率でオーステナイト相含有量と焼戻マルテンサイト相含有量との比、(オーステナイト相含有量)/(焼戻マルテンサイト相含有量)が1/4以上となるように調整することにより、所望の高強度と所望の高い拡管性を兼備させることができるようになる。オーステナイト相含有量と焼戻マルテンサイト相含有量との比が1/4未満では、拡管性が低下する。なお、オーステナイト相含有量の調整は、組成や、熱処理の調整により行なうことができる。
また、フェライト相を10体積%以上含む組織とすることにより、安定した拡管性を得ることができるようになる。一方、フェライト相が50体積%以上と多量になると、強度が低下しすぎて、所望の高強度を確保できなくなる。
このようなことから、本発明鋼管の組織を、焼戻マルテンサイト相とオーステナイト相を主体とし、さらに10体積%以上50体積%未満のフェライト相を含み、かつオーステナイト相を、体積率でオーステナイト相含有量と焼戻マルテンサイト相含有量との比が1/4以上となるように含む組織に限定した。
上記した組成と、上記した組織を有することにより、降伏強さ:654MPa未満の高強度を有し、耐食性と、拡管性に優れた油井用ステンレス鋼管となる。
つぎに、本発明鋼管の好ましい製造方法について説明する。
上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の通常の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法等の通常の方法でビレット等の鋼管素材とすることが好ましい。ついで、これら鋼管素材を加熱し、通常のマンネスマン−プラグミル方式、あるいはマンネスマン−マンドレルミル方式の製造工程を用いて熱間加工し造管して、所望の寸法の継目無鋼管とする。造管後、継目無鋼管は、通常工程と同様に、空冷程度の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却することが好ましい。
上記したこの発明範囲の組成を有する継目無鋼管であれば、熱間加工後、空冷程度の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却することにより、マルテンサイト相とフェライト相を主体とする組織とすることができるが、造管後、冷却に続いて、さらにAc3変態点以上の温度に加熱し続いて空冷以上の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却する焼入れ処理を施し、さらに550〜650℃の温度で焼戻処理を施すことが好ましい。これにより、上記した組織を安定して確保できる。
なお、上記した範囲の組成を有する鋼管素材を用いて、通常の工程に従い、電縫鋼管、UOE鋼管を製造し、油井用鋼管とすることも可能である。この場合は、造管後の鋼管に、Ac3変態点以上の温度に再加熱した後、続いて空冷以上の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却する焼入れ処理を施し、さらに550〜650℃の温度で焼戻処理を施すことが好ましい。
さらに、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、十分に脱ガスした後、100キロ鋼塊とし、研究用モデルシームレス圧延機により造管し、継目無鋼管(外径3.3in×肉厚0.5in)とした。なお、造管後、室温まで空冷とした。
次いで各鋼管から試験片素材(長さ300mm)を切り出し、表2に示す条件で、熱処理(焼入れ処理および焼戻処理)を施した。
上記した熱処理を施された試験片素材から、組織観察用試片を採取し、管長手方向断面を研磨して、腐食し組織観察に供した。組織観察は、走査型電子顕微鏡を用いて行った。組織を撮像(各5視野以上)し、各相の組織分率(体積%)を画像解析装置を用いて算出した。なお、オーステナイト相の組織分率は、X線回析により測定した。
また、上記した熱処理を施された試験片素材から、APIの規定に準拠して、引張試験片(弧状試験片)を切り出し、APIの規定に準拠して、引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。
また、上記した熱処理を施された試験片素材から、拡管試験片(鋼管:長さ400mm)を採取した。これら拡管試験片(鋼管)に、拡管試験片(鋼管)の内径より大きい各種外径を有するプラグを順次、プレスにより押し込み、亀裂が発生した時点のプラグ径を求め、次式で限界拡管率を算出した。
限界拡管率=[{(亀裂が発生したときのプラグ外径)−(試験片素材内径)}/(試験片素材内径)]×100(%)
なお、使用したプラグの外径は、拡管率が5%刻みとなるように配慮した。
また、上記した熱処理を施され、拡管率:15%の拡管加工を施された試験片素材から、腐食試験片(厚さ3mm×幅30mm×長さ40mm)を機械加工により採取した。腐食試験は、オートクレーブ中に保持された試験液:20%NaCl水溶液(液温:200℃、100気圧のCO2ガス雰囲気)に腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を2週間として実施した。腐食試験後の試験片重量を測定し、腐食試験による試験片の重量減を求め、腐食速度を算出した。また、腐食試験後の試験片表面について10倍のルーペ観察を行い、孔食発生の有無も調査した。得られた腐食速度および孔食発生の有無で、耐CO2腐食性を評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0004978070
Figure 0004978070
本発明例はいずれも、限界拡管率が25%以上と、優れた拡管性を有するとともに、腐食速度も0.127mm/y未満であり優れた耐CO2腐食性を有し、また孔食の発生もなく、優れた耐CO2腐食性を有する鋼管となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、限界拡管率が低く拡管性が低下しているか、あるいは腐食速度が大きく、あるいは孔食が発生し、耐CO2腐食性が低下している。

Claims (5)

  1. mass%で、
    C:0.05%以下、 Si:0.50%以下、
    Mn:0.10〜1.80%、 P:0.03%以下、
    S:0.005%以下、 Cr:14.5〜18.0%、
    Ni:2.0〜7.0%、 Mo:0.5〜3.5%、
    V:0.20%以下、 N:0.040〜0.15%、
    O:0.008%以下 Al:0.05%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる組成と、焼戻マルテンサイト相とオーステナイト相を主体とし、かつ該オーステナイト相を、体積率でオーステナイト相含有量と焼戻マルテンサイト相含有量との比、(オーステナイト相含有量)/(焼戻マルテンサイト相含有量)が1/4以上となるように含み、さらに10体積%以上50体積%未満のフェライトを含む組織を有し、降伏強さが654MPa未満であることを特徴とする拡管性に優れた油井用ステンレス鋼管。
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の油井用ステンレス鋼管。
  3. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の油井用ステンレス鋼管。
  4. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:3.5%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油井用ステンレス鋼管。
  5. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油井用ステンレス鋼管
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