JP4289109B2 - 耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管 - Google Patents

耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管 Download PDF

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この発明は、原油あるいは天然ガスの油井、ガス井に使用される油井用鋼管に係り、特に炭酸ガス(CO2)、塩素イオン(Cl-)などを含み極めて厳しい腐食環境の油井、ガス井用として好適な、優れた耐食性を有する油井用高強度ステンレス鋼管に関する。なお、この発明でいう「高強度」とは、降伏強さ:758MPa(110ksi)以上の強度を有するステンレス鋼管をいうものとする。
近年、原油価格の高騰や、近い未来に予想される石油資源の枯渇化に対処するため、従来は省みられなかったような深層油田や、開発が一旦は放棄されていた腐食性の強いサワーガス田等に対する開発が、世界的規模で盛んになっている。このような油田、ガス田は一般に深度が極めて深く、またその雰囲気は高温でかつ、CO2、Cl-等を含む厳しい腐食環境となっている。したがって、このような油田、ガス田の採掘に使用される油井用鋼管としては、高強度で、しかも耐食性に優れた材質を有する鋼管が要求される。
従来から、CO2、Cl-を含む環境下の油田、ガス田では、油井用鋼管として、耐CO2腐食性に優れた13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が使用されるのが一般的であった。しかし、通常のマルテンサイト系ステンレス鋼は、Cl-を多量に含み100℃を超える高温の環境下では、使用に耐えられなくなるという問題があった。そのため、耐食性が要求される井戸では、冷間加工を施された高価な二相ステンレス鋼管が用いられてきた。しかし、二相ステンレス鋼管は、合金元素量が多く、熱間加工性に劣り特殊な熱間加工法でしか製造できず、高価であるという問題がある。また、従来の13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管では降伏強さが654MPaを超えると靭性の低下が著しくなり、使用に耐えなくなるという問題もあった。
また、近年、寒冷地における油田開発も活発になってきており、高強度に加えて、優れた低温靭性を有することが要求されることも多い。
このようなことから、熱間加工性に優れ、安価である13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼をベースとした、降伏強さが654MPaを超える高強度で、かつ優れた耐CO2腐食性と、高靭性とを有する油井用高強度13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が強く望まれていた。
このような要求に対して、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5には、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼 (鋼管)の耐食性を改善した、改良型マルテンサイト系ステンレス鋼 (鋼管)が提案されている。
特許文献1に記載された技術は、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管の組成で、Cを0.005 〜0.05%と制限し、Ni:2.4 〜6%とCu:0.2 〜4%とを複合添加し、さらにMoを0.5 〜3%添加し、さらにNieqを10.5以上に調整した組成とし、熱間加工後に空冷以上の速度で冷却したのち、あるいはさらに(Ac3変態点+10℃)〜(Ac3変態点+200 ℃)の温度に加熱し、あるいはさらにAc1変態点〜Ac3変態点の温度に加熱し、続いて室温まで空冷以上の冷却速度で冷却し、焼戻しする、耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法である。特許文献1に記載された技術によれば、API−C95級以上の高強度と、180 ℃以上の高温でCO2 を含む環境における耐食性と、耐SCC性とを兼ね備えたマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管となるとしている。
特許文献2に記載された技術は、C:0.005 〜0.05%、N:0.005 〜0.1 %を含み、Ni:3.0 〜6.0 %、Cu:0.5 〜3%、Mo:0.5 〜3%に調整した組成の13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼を熱間加工し室温まで自然放冷したのち、(Ac1点+10℃)〜(Ac1点+40℃)に加熱し30〜60分間保持しMs 点以下の温度まで冷却し、Ac1点以下の温度で焼戻し、組織を焼戻しマルテンサイトと20体積%以上のオーステナイト(γ)相とが混在した組織とする耐硫化物応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法である。特許文献2に記載された技術によれば、γ相を20体積%以上含む焼戻しマルテンサイト組織とすることにより耐硫化物応力腐食割れ性が顕著に向上するとしている。
特許文献3に記載された技術は、10〜15%Crを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼の組成で、Cを0.005 〜0.05%と制限し、Ni:4.0 %以上、Cu:0.5 〜3%を複合添加し、さらにMoを1.0 〜3.0 %添加し、さらにNieqを−10以上に調整した組成とし、 組織を焼戻しマルテンサイト相、マルテンサイト相、残留オーステナイト相からなり、焼戻しマルテンサイト相、マルテンサイト相の合計の分率が60〜90%である、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性に優れたマルテンサイトステンレス鋼である。これにより、湿潤炭酸ガス環境および湿潤硫化水素環境における耐食性と耐硫化物応力腐食割れ性が向上するとしている。
特許文献4に記載された技術は、15%超19%以下のCrを含有し、C:0.05%以下、N:0.1 %以下、Ni:3.5 〜8.0 %を含み、さらにMo:0.1 〜4.0 %を含有し、30Cr+36Mo+14Si−28Ni≦455 (%)、21Cr+25Mo+17Si+35Ni≦731 (%)を同時に満足する鋼組成とする硫化物応力割れ性に優れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼材であり、これにより、塩化物イオン、炭酸ガスと微量の硫化水素ガスが存在する苛酷な油井環境中でも優れた耐食性を有する鋼材となるとしている。
特許文献5に記載された技術は、10.0〜17%のCrを含有し、C:0.08%以下、N:0.015 %以下、Ni:6.0 〜10.0%、Cu:0.5 〜2.0 %を含み、さらにMo:0.5 〜3.0 %を含有する鋼組成とし、35%以上の冷間加工と焼鈍により、平均結晶粒径が25μm以下、マトリックスに析出した粒径5×10-2μm以上の析出物を6×106 個/mm2 以下に抑えられた組織を有する強度および靭性に優れた析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼であり、微細な結晶粒と析出物の少ない組織とすることにより、高強度で靭性低下を引き起こさない析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼を提供できるとしている。
特開平8-120345号公報 特開平9-268349号公報 特開平10-1755 号公報 特許第2814528 号公報 特許第3251648 号公報
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載された技術で製造された改良型13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管は、CO2 、Cl- 等を含み、180 ℃を超える高温の苛酷な腐食環境下では、安定して所望の耐食性を示さないという問題があった。
本発明は、従来技術におけるかかる事情に鑑みて成されたものであり、安価で、熱間加工性に優れ、降伏強さが758MPa(110ksi)を超える高強度で、かつCO2 、Cl- 等を含む、230 ℃までの高温の苛酷な腐食環境下においても優れた耐CO2 腐食性を示す、耐食性に優れた、油井用高強度ステンレス鋼管を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成すべく、代表的なマルテンサイト系ステンレス鋼である13%Cr鋼の組成をベースとして、CO2、Cl-等を含む、高温の腐食環境下における耐食性に及ぼす各種要因の影響について鋭意、検討を重ねた。その結果、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼において、従来よりCを著しく低減し、さらにNi、Mo、Cuを適正量含有し、さらに、Nbおよび/またはTiを適正量含有する組成としたうえで、MC型炭窒化物を析出物全量に対しmass%で3.0%以上析出させた組織とすることにより、降伏強さが758MPa(110ksi)を超える高強度と、良好な熱間加工性と、さらに苛酷な環境下での耐食性が確保できることを見出し、本発明をなすに至ったのである。
すなわち、本発明の要旨は、つぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.05%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:14.0〜17.0%、Ni:5.0〜8.0%、Mo:1.0〜3.5%、Cu:0.5〜3.5%、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.03〜0.15%、O:0.006%以下を含み、さらにNb:0.2%以下、Ti:0.3%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる組成と、析出物中のMC型炭窒化物が全析出物量に対するmass%で3.0%以上存在する組織を有することを特徴とする高強度でかつ高耐食性を有する油井用高強度ステンレス鋼管。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有する組成とすることを特徴とする油井用高強度ステンレス鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用高強度ステンレス鋼管。
本発明によれば、降伏強さが758MPa(110ksi)を超える高強度で、CO2 、Clを含む高温の厳しい腐食環境下において充分な耐食性を有する、油井用高強度ステンレス鋼管を、安価にしかも安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明の油井用高強度ステンレス鋼管の組成限定理由について説明する。以下、組成におけるmass%は単に%で記す。
C:0.05%以下
Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の強度に関係する重要な元素であるが、本発明では、0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超えて含有すると、Ni含有による焼戻し時の鋭敏化が起こりやすくなる。この焼戻し時の鋭敏化を防止するために、0.05%以下に限定した。また、耐食性の観点からもCはできるだけ少ないほうが好ましい。なお、好ましくは0.01〜0.03の範囲である。
Si:0.50%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、通常の製鋼過程において必要であるが、0.50%を超える含有は、耐CO2腐食性を低下させ、さらには熱間加工性をも低下させる。このため、Siは0.50%以下に限定した。
Mn:0.10〜1.80%
Mnは、強度を増加させる元素であり、本発明における所望の強度を確保するために0.10%以上の含有を必要とするが、1.80%を超えて含有すると靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.10〜1.80%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.25〜0.80%である。
P:0.03%以下
Pは、耐CO2耐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物腐食割れ性をともに劣化させる元素であり、本発明では可及的に低減することが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。工業的に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2腐食性、耐CO応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させない範囲でPは0.03%以下とした。なお、好ましくは0.02%以下である。
S:0.005%以下
Sは、パイプ製造過程において熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、可及的に少ないことが望ましいが、0.005%以下に低減すれば通常工程でのパイプ製造が可能となることから、Sはその上限を0.005%とした。なお、好ましくは0.003%以下である。
Cr:14.0〜17.0%
Crは、保護皮膜を形成して耐食性を向上させる元素であり、とくに耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性の向上に寄与する有効な元素である。本発明では特に、高温における耐食性向上の観点からは14.0%以上の含有を必要とする。一方、17.0%を超える含有は熱間加工性を劣化させる。このため、Crは14.0〜17.0%の範囲に限定した。
Ni:5.0〜8.0%
Niは、保護皮膜を強固にして、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を高める作用を有し、さらに固溶強化により鋼の強度を増加させる元素である。このような効果は、5.0%以上の含有で認められる。一方、8.0%を超える含有は、マルテンサイト組織の安定性が低下し、強度が低下する。このため、Niは5.0〜8.0%の範囲に限定した。
Mo:1.0〜3.5%
Moは、Cl-による孔食に対する抵抗性を増加させる元素であり、本発明では、1.0%以上の含有を必要とする。Moが1.0%未満では高温環境下での耐食性が不十分となる。一方、3.5%を超える含有は、δ−フェライトの発生を招き、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性および熱間加工性が低下するとともに、製造コストの高騰を招く。このため、Moは1.0〜3.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.5〜2.5%である。
Cu:0.5〜3.5%
Cuは、保護皮膜を強固にして、鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める元素であり、0.5%以上の含有でその効果が発揮されるが、3.5%を超える含有は、CuSの粒界析出を招き、熱間加工性が低下する。このため、Cuは0.5〜3.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.5〜2.0%である。
Al:0.05%以下
Alは、強力な脱酸作用を有する元素であり、0.001%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
V:0.20%以下
Vは、強度を上昇させるとともに、耐応力腐食割れ性を改善する効果を有する。このような効果は、0.03%以上の含有で顕著となるが、0.20%を超えて含有すると、靭性が劣化する。このため、Vは0.20%以下に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.10%である。
N:0.03〜0.15%
Nは、耐孔食性を著しく向上させる元素であるが、このような効果は0.03%以上の含有で認められるが、0.15%を超える含有は、種々の窒化物を形成して靭性を劣化させる。このため、Nは0.03〜0.15%の範囲に限定した。なお、この好ましくは0.03〜0.08%である。
O:0.006%以下
Oは、鋼中では酸化物として存在し各種特性に大きな影響を及ぼすため、できるだけ低減することが好ましい。O含有量が0.006%を超えて多くなると、熱間加工性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性および靭性を著しく低下させる。このため、本発明では、Oは0.006%以下に限定した。なお、好ましくは0.004%以下である。
Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下のうちから選ばれた1種または2種
Nb、Tiは、いずれもMC型炭窒化物を形成し、強度の増加、および靭性の向上に寄与する元素であり、本発明では重要な元素で選択して1種または2種を含有する。このような効果を得るためには、Nb:0.02%以上、Ti:0.02%以上含有することが好ましいが、Nb:0.2%、Ti:0.3%を超える含有は靭性を低下させる。このため、Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下に限定した。なお、好ましくは、Nb:0.04〜0.12%、Ti:0.04〜0.15%である。
上記した基本組成に加えてさらに、必要に応じ、Ca:0.0005〜0.01%、および/またはZr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有できる。
Ca:0.0005〜0.01%
Caは、SをCaSとして固定し硫化物系介在物を球状化する作用を有し、これにより介在物周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、介在物の水素トラップ能を低下させる効果を有する。このような効果は0.0005%以上の含有で顕著となるが、0.01%を超える含有は、CaOの増加を招き、耐CO2腐食性、耐孔食性が低下する。このため、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.0005〜0.005%である。
Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上
Zr、B、Wは、いずれも強度を増加させる作用を有し、必要に応じ選択して1種または2種以上を含有できる。また、Zr、B、Wは、いずれも耐応力腐食割れ性を改善する作用も有している。このような効果は、Zr:0.02%以上、B:0.0005%以上、W:0.1%以上の含有で顕著となるが、Zr:0.2%、B:0.01%、W:3.0%をそれぞれ超える含有は、靭性を劣化させる。このため、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明の油井用高強度ステンレス鋼管は、上記した組成に加えて、析出物中のMC型炭窒化物が全析出物量に対するmass%で3.0%以上存在する組織を有する。MC型炭窒化物の全析出物量に対する存在比率がmass%で、3.0%未満では、鋼管強度(降伏強さ)を、安定的に758MPa以上の高強度とすることができない。本発明の油井用高強度ステンレス鋼管では、析出物としては、MC、M23、Mの3種類が主として存在する。この中でMC型の析出物が微細に分散しやすく、高強度化に最も効果がある。このようなことから、本発明では、MC型炭窒化物を、全析出物量に対するmass%で、3.0%以上に限定した。なお、MC型炭窒化物量は、電解抽出法で求めるものとする。
また、本発明のステンレス鋼管は、マルテンサイト相を主相とし、残留オーステナイト相を体積率で3〜30%含有する基地組織を有することが好ましい。ここでいう「主相」とは、体積率で50%を超えて存在する組織をいうものとする。残留オーステナイト相を体積率で3%以上含有することにより、高靭性を得ることができる。一方、30%を超える残留オーステナイト相の含有は強度を著しく低下させる。なお、体積率で3%以下のフェライト相を含有しても何ら問題はない。フェライト相が3%を超えると熱間加工性が劣化する。本発明のステンレス鋼管では、これらの基地組織中に上記した析出物を分散させた組織とすることが好ましい。
つぎに、本発明油井用高強度ステンレス鋼管の製造方法について継目無鋼管を例として説明する。
まず、上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法等通常公知の方法でビレット等の鋼管素材とすることが好ましい。ついで、これら鋼管素材を加熱し、通常のマンネスマン−プラグミル方式、あるいはマンネスマン−マンドレルミル方式の製造工程を用いて熱間加工し造管して、所望寸法の継目無鋼管とする。造管後継目無鋼管は、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却することが好ましい。
上記したこの発明範囲内の組成を有する継目無鋼管であれば、熱間加工後、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却することにより、マルテンサイト相を主相とする組織とすることができるが、本発明では、さらにAc3 変態点以上である850℃以上、好ましくは1100℃以下の温度に再加熱し、その温度に20min以上2h以下保持し、かつ次式
T(2.5+logt)/100≧43 ……(1)
(ここで、T:加熱温度(K)、t:保持時間(min))
を満足するように、加熱保持して所定量以上のMC型炭窒化物を析出させたのち、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却する焼入れ処理を行なうことが好ましい。
これにより、全析出物量に対しmass%で3.0%以上のMC型炭窒化物を析出させた、好ましくは適正量の残留オーステナイト相を含み、マルテンサイト相を主相とする、高靭性のマルテンサイト組織とすることができる。
焼入れ処理を施された継目無鋼管は、ついで、Ac1変態点以下の温度に加熱され焼戻処理を施されることが好ましい。Ac1変態点以下好ましくは400 ℃以上の温度に加熱し、焼戻しすることにより、組織は焼戻しマルテンサイト相、残留オーステナイト相、あるいはさらに少量のフェライト相とからなる組織となり、所望の高強度とさらには所望の高靭性、所望の優れた耐食性を有する継目無鋼管となる。
ここまでは、継目無鋼管を例にして説明したが、本発明鋼管はこれに限定されるものではない。上記した本発明範囲内の組成を有する鋼管素材を用いて、通常の工程に従い、電縫鋼管、UOE鋼管を製造し、油井用鋼管とすることも可能である。
上記した本発明範囲内の組成を有する鋼管素材を用いて、通常の製造工程にしたがい得られた継目無鋼管以外の鋼管、例えば電縫鋼管、UOE鋼管では、造管後の鋼管に、焼入れ処理と、ついでAc1変態点以下の温度で焼戻しする焼戻処理を施すことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を脱ガス後、100kgf鋼塊に鋳造し、モデルシームレス圧延機により熱間加工により造管し、造管後空冷し、外径3.3 in×肉厚0.5 inの継目無鋼管とした。
また、得られた継目無鋼管から、試験片素材を切り出し、表2に示す条件で焼入れ加熱保持したのち、空冷または水冷により焼入れした。さらに表2に示す条件の焼戻処理を施した。なお、採用した焼入れ温度はいずれの鋼においてもAc3 変態点以上である。
このように焼入れ−焼戻処理を施された試験片素材から、10×10×60mmの角型試験片を採取し、電解抽出法で析出物を採取し、析出物中のMC型炭窒化物の比率(mass%)を求めた。
また、焼入れ−焼戻処理を施された試験片素材から、API 弧状引張試験片を採取し、引張試験を実施し引張特性(降伏強さYS)を求めた。
さらに、焼入れ−焼戻処理を施された試験片素材から、厚さ3mm×幅30mm×長さ40mmの腐食試験片を機械加工によって作製し、腐食試験を実施した。
腐食試験は、オートクレーブ中に保持された試験液:20%NaCl水溶液(液温:230℃、30気圧のCO2 ガス雰囲気) 中に、腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を2週間として実施した。腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から計算した腐食速度を求めた。また、試験後の腐食試験片について倍率:10倍のルーペを用いて試験片表面の孔食発生の有無を観察した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0004289109
Figure 0004289109
本発明例はいずれも、鋼管表面の割れ発生は認められず、また降伏強さYS:758MPa以上の高強度を有し、腐食速度も小さく、孔食の発生も無く、熱間加工性およびCO2 を含み230 ℃という高温で苛酷な腐食環境下における耐食性に優れた鋼管となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、表面に割れが発生し熱間加工性が低下しているか、あるいは腐食速度が大きく、孔食が発生し耐食性が低下している。なお、(1)式が本発明の好適範囲を外れる場合には、微細な析出物が減少し強度が低下し、降伏強さYS:758MPa以上の高強度を満足できていない。

Claims (3)

  1. mass%で、
    C:0.05%以下、 Si:0.50%以下、
    Mn:0.10〜1.80%、 P:0.03%以下、
    S:0.005%以下、 Cr:14.0〜17.0%、
    Ni:5.0〜8.0%、 Mo:1.0〜3.5%、
    Cu:0.5〜3.5%、 Al:0.05%以下、
    V:0.20%以下、 N:0.03〜0.15%、
    O:0.006%以下
    を含み、さらにNb:0.2%以下、Ti:0.3%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる組成と、析出物中のMC型炭窒化物が全析出物量に対するmass%で3.0%以上存在する組織を有することを特徴とする高強度でかつ高耐食性を有する油井用高強度ステンレス鋼管。
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の油井用高強度ステンレス鋼管。
  3. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の油井用高強度ステンレス鋼管。
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