JP5014831B2 - 拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管及びその製造方法 - Google Patents

拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、油井又はガス井(以下、これらを総称して単に「油井」という)に用いられる電縫鋼管に関し、詳細には、油井内で鋼管を拡管加工し、そのままケーシング、チュービングとして使用することができる、拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管に関するものである。
従来、油井の掘削は、地層の表層部から開始して、所定の深度に到達するとケーシングを挿入し、掘り進みながら外径の小さいケーシングの挿入を繰り返していた。そのため、深く掘削する必要がある場合は、油井の外径方向の掘削面積が広くなり、掘削費用および工期が嵩み、経済的に不利であった。近年、油井に挿入されたケーシングを油井内で拡管することによって、掘削面積を低減し、かつ掘削工期を大幅に短縮可能な工法が提案されている。
これはエクスパンダブル・チューブラと呼ばれる技術であり、ケーシングに好適な鋼管として、拡管性能及び耐食性に優れた鋼管が提案されている(例えば、特許文献1)。この鋼管は、結晶粒径と降伏強度との関係を適正な範囲としたものである。特許文献1は継目無鋼管の耐食性の向上を図る技術であり、電縫鋼管への適用も示唆されてはいるものの、電縫溶接部を有する電縫鋼管の拡管性能、更に拡管後の電縫溶接部の腐食環境における割れについて考慮されたものではない。
特開2002−266055号公報
本発明は、エクスパンダブル・チューブラのケーシングに使用される電縫鋼管、即ち、拡管性能に優れる拡管油井用電縫鋼管及びその製造方法を提供するものである。特に、拡管後に、油井内の腐食環境で使用されても、電縫溶接部に硫化物応力割れを生じることのない、耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管及びその製造方法を提供するものである。
本発明は、鋼の酸素量を制限し、Si量とMn量との比、更に、選択的にCrを含有する際のSi量とMn量及びCr量との比を特定の範囲として、電縫溶接部における酸化物の形態を制御し、優れた拡管性能を有し、更に、拡管後、油井内という厳しい腐食環境で使用された際の硫化物応力割れの発生を防止した電縫鋼管であり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.5〜2.0%、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.100%、Ca:0.0005〜0.0080%を含有し、P:0.10%以下、S:0.005%以下、O:0.0040%以下に制限し、Si/Mn:0.02〜1.50を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、電縫衝合部の溶接欠陥面積率が0.10%以下であることを特徴とする拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(2)質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.5〜2.0%、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.100%、Ca:0.0005〜0.0080%を含有し、P:0.10%以下、S:0.005%以下、O:0.0040%以下に制限し、更に、Cr:0.50%以下を含有し、Si/(Mn+Cr):0.02〜1.50を満足し、電縫衝合部の溶接欠陥面積率が0.10%以下であることを特徴とする拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(3)質量%で、B:0.0035%以下を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(4)質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(5)質量%で、Mo:1.00%以下、W :0.50%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(6)質量%で、REM:0.0005〜0.0100%を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(7)母材の金属組織のフェライト分率が50〜95%であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
(8)質量%で、V:0.005〜0.200%を含有することを特徴とする上記(7)に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
)上記(7)又は(8)に記載の電縫鋼管の製造方法であって、上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の成分又は上記(8)に記載の成分からなる鋼板を管状に成形して突き合わせ部を電縫溶接し、Ac変態点〜Ac変態点に加熱し、冷却することを特徴とする拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管の製造方法。
本発明によれば、高い拡管率での拡管が可能であり、拡管後、油井内という厳しい腐食環境で使用されても、電縫溶接部に硫化物応力割れを生じない、耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管及びその製造方法の提供が可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明者は、継目無鋼管よりも製造コストが安い電縫溶接鋼管を拡管油井用鋼管として使用する際に、特に問題になる拡管性能と、拡管後の電縫溶接部の腐食環境における割れについて検討を行った。先ず、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.5〜2.0%、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.10%、Ca:0.0005〜0.0080%を含有し、P:0.10%以下、S:0.005%以下、O:0.0040%以下に制限した鋼板、更に、Cr:0.50%以下を含有する鋼板を電縫溶接し、電縫鋼管を製造した。
次に、これらの電縫鋼管の端部に円錐状の試験治具を押し込み、拡管前後の鋼管端部の内径の変化率である拡管率を10%、17%、28%として拡管した。拡管後、鋼管の電縫溶接部の割れ、即ち、拡管割れの有無を目視により確認した。更に、電縫溶接部に割れが発生していない鋼管の端部から、周方向を長手方向とし、溶接部が中央になるように、試験片を採取した。試験片を、油井内の腐食環境を模擬した溶液中に浸漬し、硫化物応力割れの有無を確認した。
なお、油井内の腐食環境を模擬した溶液とは、5%のNaClを含む0.5%酢酸溶液に硫化水素ガスを分圧0.1MPaで飽和させたNACE環境である。また、硫化物応力割れの有無は、NACE環境中で397MPaの応力を負荷し、720時間保持した後に確認した。
図1及び2に、Si/(Mn+Cr)と、拡管割れの発生の有無、及び拡管後の電縫溶接部の硫化物応力割れ発生の有無を示す。図1及び2は、縦軸を拡管率、横軸をSi/(Mn+Cr)とし、拡管による割れが発生したものを×、拡管による割れの発生がなく、硫化物応力割れが発生したものを●、発生していないものを○で示している。なお、図1及び2において、Crを含有しない鋼のSi/(Mn+Cr)は、Crを0として、Si/Mnを求めた。
図1及び2は、拡管割れ、腐食環境中での硫化物応力割れを生じないSi/Mn又はSi/(Mn+Cr)の下限及び上限をそれぞれ示すものである。図1から、Si/Mn又はSi/(Mn+Cr)の下限を0.02以上とし、図2からSi/Mn又はSi/(Mn+Cr)の上限を1.50以下とすれば、拡管後、腐食環境中で硫化物応力割れを生じないことがわかる。更に、拡管割れの発生を抑制し、拡管性能を向上させるには、Si/Mn又はSi/(Mn+Cr)を0.03〜1.00とすることが好ましく、更に好ましい範囲は、0.05〜0.50であることがわかる。
拡管性能及び耐食性に及ぼすSi/Mn又はSi/(Mn+Cr)の影響を明確にするため、電縫鋼管の電縫溶接部の組織を光学顕微鏡で観察した。その結果、Crを含有しない鋼で、Si/Mnを0.02〜1.50とすれば、電縫溶接部へのSiO、MnOの2元系混合酸化物の残留を抑制できることがわかった。同様に、Crを含有する鋼では、Si/(Mn+Cr)を0.02〜1.50とすることにより、電縫溶接部へのSiO、MnO、Crの3元系混合酸化物の残留を抑制できることがわかった。
これは、Crを含有しない鋼は、Si/Mnを0.02〜1.50とすることにより、SiO、MnOの2元系混合酸化物の融点が低下して1600℃以下になり、電縫溶接の際に溶接部から液相として排出されるためである。同様に、Crを含有する鋼では、Si/(Mn+Cr)を0.02〜1.50とすることにより、SiO、MnO、Crの3元系混合酸化物の融点が1600℃以下になり、液相として電縫溶接部から排出され、酸化物の残留を抑制することができる。
また、Si/Mn、Si/(Mn+Cr)を更に好適な範囲に制御すると、酸化物の融点が低下し、電縫溶接部から酸化物を確実に排出することが可能になり、拡管性能が向上し、拡管率を高めても良好な耐食性を維持することができる。Si/Mn、Si/(Mn+Cr)を0.03〜1.00、更に好ましくは0.05〜0.50にすれば、電縫溶接部への酸化物の残留を確実に防止することが可能になり、拡管性能が向上する。
Si/Mn又はSi/(Mn+Cr)を適正な範囲に制御した電縫鋼管では、酸化物の残留が抑制されているので、酸化物に起因する欠陥の発生が抑制される。即ち、電縫溶接部への酸化物の残留は、電縫衝合部の溶接欠陥面積率によって判定することができる。電縫衝合部の割れは、酸化物に起因するものであり、溶接欠陥面積率が0.10%以下であれば、優れた拡管性能及び耐食性が得られる。したがって、溶接欠陥面積率は0.10%以下とする。また、溶接欠陥面積率が0.10%超の場合、電縫衝合部の機械的特性が十分満足せず、さらに種々の試験にて破裂する恐れもある。
電縫衝合部の溶接欠陥面積率の測定方法について説明する。破断面が溶接方向に平行になるように、電縫溶接部にノッチを設けたシャルピー衝撃試験片を作製し、延性破面率が100%となる温度でシャルピー衝撃試験を実施する。破断後のシャルピー試験片の破面を光学顕微鏡にて観察し、割れの面積を測定する。割れの面積を観察面の面積で除した値を百分率で表した数値が溶接欠陥面積率である。
以下、本発明の成分組成について説明する。
Cは、鋼の焼入れ性を向上させ、強度を高める基本元素であり、0.01%以上の添加が必要である。一方、C量が多すぎると、焼き割れを誘発するため、上限を0.30%以下とする。
Siは、脱酸元素であり、含有量が0.01%未満であると、鋼中の酸素量が増加して、電縫溶接部に粗大な酸化物系の介在物を生じる。一方、Si量が0.70%より多すぎても、溶接部に酸化物を生じて油井内での割れを発生させる。したがって、Si量を0.01〜0.70%とする。
Mnは、SをMnSとして無害化させる元素であり、焼入れ性の向上にも寄与する。この効果を得るためには、Mnを0.5%以上添加することが必要である。一方、Mnは耐硫化物応力割れ抵抗性に有害であるので、上限を2.0%以下とする。
Si及びMnは、上述のように、電縫溶接部の介在物の形態を制御するために極めて重要な元素であり、Si/Mnを0.02〜1.50の範囲とすることが必要である。また、耐食性を維持しながら、拡管性能を向上させるには、Si/Mnを0.03〜1.00とすることが好ましく、更に好適な範囲は0.05〜0.50である。
Nb及びTiは、炭化物、窒化物を生成し、特に適量を含有させることにより、TiN、NbCを形成し、電縫溶接部の結晶粒の粗大化を防止し、拡管性能及び拡管後の耐硫化物応力割れ性の向上に有効な元素である。一方、適正量を超えて過度に含有させると、炭化物、窒化物が粗大になり、靭性を損なう。したがって、Nb及びTiの添加量は、それぞれ、0.005〜0.100%及び0.005〜0.050%とする。
Alは、脱酸剤として使用される元素であり、酸素量を減少させて電縫溶接部への酸化物の生成を抑制するために、0.002%以上の添加が必要である。一方、0.100%を超える過剰なAlを含有させると粗大な介在物を生じて、拡管性能及び拡管後の耐硫化物応力割れ性の低下させるため、上限を0.100%以下とすることが必要である。
Caは、CaSを生成して硫化物の形態制御に寄与し、耐硫化物応力割れ性の向上に有効な元素である。この効果を得るには、Caを0.0005%以上含有させることが必要である。一方、0.0080%超えるCaを含有させると、介在物が多量に生成し、孔食の起点となり、耐食性が低下するため上限を0.0080%以下とする。
Sは、不純物であり、MnSを形成して耐硫化物応力割れ性を損なうため、上限を0.005%以下に制限する。
Pも不純物であり、粒界に偏析して耐硫化物応力割れ性を低下させるため、上限を0.10%以下に制限する。
Oは、特に、電縫溶接部に酸化物を発生させ、その結果溶接欠陥を形成させることによって耐硫化物応力割れ性を低下させるため、0.0040%以下に制限することが必要である。また、0.0040%超の酸素を含有すると、Sを固定するために添加したCaが酸化物となり、母材に、圧延方向に延伸した非金属介在物、例えば、MnSなどの硫化物が生じ、耐硫化物応力割れ性が低下する。酸素量を0.0025%以下に制限すると、母材に生成する非金属介在物の最大長径を小さくすることが可能になり、母材からの硫化物応力割れ性の発生を防止できる。したがって、酸素量は0.0025%以下に制限することが更に好ましい。
Crは、焼入れ性を向上させ、強度を確保するために有効な元素である。Crは、過剰に添加すると、HAZの靭性が劣化するため、上限を0.50%以下とすることが好ましい。また、Crを添加する場合には、電縫溶接部への酸化物の残留を抑制するため、Si/(Mn+Cr)を0.02〜1.50の範囲として、添加することが好ましい。また、Si/(Mn+Cr)を0.03〜1.00、更に好適には0.05〜0.50にすると、耐食性を維持しながら、拡管性能を向上させることができる。
更に、拡管性能を向上させるために、Bを添加しても良い。
Bは焼入性を高める元素であり、拡管性能の向上に有効であるが、0.0035%超を含有すると、靭性が劣化することがある。したがって、B添加量の上限は、0.0035%以下が好ましい。
更に、耐硫化物応力割れ性を向上させるために、Cu、Ni、Mo、W、V、REMの1種又は2種以上を添加しても良い。
Cu及びNiは、腐食環境下において硫化皮膜を形成し、これにより鋼中への水素侵入が抑制され、耐硫化物応力割れ性が向上する。一方、0.50%超を添加すると鋳片割れなど発生することがあるため、0.50%以下の添加が好ましい。
Moは、耐硫化物応力割れ性を高め、焼入れ性も向上させる元素であるが、1.00%を超えて添加しても効果が飽和する。また、0.50%超を添加すると、MoCが析出して靱性が劣化することがあるため、上限を0.50%以下とすることが好ましい。なお、耐硫化物応力割れ性を高めるには、0.15%以上の添加が好ましい。
Wは、炭化物を生じて拡散性水素を捕捉し、耐硫化物応力割れ性を高め、焼入性を向上させる元素であるが、0.50%超添加すると靭性が低下することがある。したがって、上限を0.50%以下とすることが好ましい。
Vは、微細な炭化物、窒化物を形成して拡散性水素を捕捉し、耐硫化物応力割れ性の向上に有効な元素である。この効果を得るには、Vを0.005%以上添加することが好ましい。一方、Vを0.200%超添加すると、炭化物、窒化物が粗大化して、靭性を損なうことがあるため、上限を0.200%以下とすることが好ましい。
REMは、不純物元素(P、S、O)とそれらの析出物(介在物)の形態の制御を目的として添加される元素である。不純物を安定で無害な析出物として固定し、強度と靭性を向上させるには、REMを0.0005%以上添加することが好ましい。一方、REMの添加量が0.0100%を超えると、介在物が増加して、靭性を損なうことがある。したがって、REMの含有量は0.0005〜0.0100%以下とすることが好ましい。
母材に存在する非金属介在物は機械的特性やSSCなどの耐食性試験時に破壊の起点となりうる。母材に存在する非金属介在物の単体の最大長径が300μm超では、腐食環境が厳しくなると、破壊発生の起点となり、耐応力腐食割れ性を損なうことがある。したがって、非金属介在物の最大長径は300μm以下とすることが好ましい。圧延方向に延伸する非金属介在物は、主にMnSであり、その最大長径は、CaSを生成させてSを有効に固定することにより、短くすることができる。したがって、非金属介在物の最大長径を300μm以下とするには、酸素量を0.0040以下に低下させて、Caを適正量添加すれば良い。
母材のフェライトの面積率は光学顕微鏡にて観察した組織を画像処理にて解析した。フェライト分率が50%未満の場合、一様で十分な拡管ができずに限界拡管率が低下することがある。またフェライト分率が95%超では油井管に必要な引張強度や圧縮強度が得られないことがある。したがって、フェライト分率は50〜95%であることが好ましい。母材のフェライト分率は、後述するように、電縫鋼管の熱処理条件によって50〜95%にすることができる。
次に、本発明の電縫鋼管の製造方法について説明する。
電縫鋼管の素材となる鋼板は、常法によって製造することができる。即ち、鋼の溶製及び鋳造を常法で行い、得られた鋼片を熱間圧延し、冷却して鋼板とする。なお、鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。熱間圧延の条件は、特に規定する必要はなく、素材である鋼片の形状及び厚みと熱間圧延後の鋼板の板厚、目的とする機械特性を考慮して、条件を決定すれば良い。熱間圧延後は空冷でも良いが、加速冷却を行うことが好ましい。加速冷却は、水冷、ミスト冷却、送風など、目的とする機械特性を考慮して、適宜選択することができる。
上述の方法によって得られた鋼板を造管し、突合せ部を電縫溶接して、電縫鋼管を製造する。電縫鋼管の造管では、熱延鋼板を、ロール成形などの冷間曲げ加工によって管状に成形し、入熱、鋼板の突き合わせ角度(V角)、鋼板の通板速度等を制御して、電縫溶接する。
更に、電縫鋼管には熱処理を施すことが好ましい。加熱温度は、鋼の組織がフェライトとオーステナイトの2相となる温度領域、即ち、Ac変態点からAc変態点の間とすることが好ましい。加熱温度によって、フェライト分率を調整することができ、Ac変態点からAc変態点の間に加熱すると、フェライト分率を50〜95%にすることができる。その後の冷却時には加熱、保持により生成したフェライト分率を維持するよう冷却すれば良い。そのため、加熱、保持後には、加速冷却を行うことが好ましい。加速冷却は、水冷、ミスト冷却、送風など、目的とする機械特性を考慮して、適宜選択することができる。
なお、Ac変態点及びAc変態点は、合金元素の含有量により、次の計算式によって求めることができる。
Ac=723−10.7Mn−16.9Ni+29.1Si+16.9Cr
+6.38W
Ac=910−203C1/2−15.2Ni+44.7Si+104V
+31.5Mo+13.1W
表1に示す化学成分の鋼を溶製し、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延して鋼板とし、更に、鋼板を管状に成形して突合せ部を電縫溶接した。表1の空欄は、選択元素が無添加であることを意味し、下線は、本発明の範囲外であることを意味する。表1の鋼番号がN〜Tの鋼は、選択的に添加されたCr、B、Cu、Ni、Mo、W、Vを過剰に含有する例である。また、Crの添加の有無に応じて、Si/Mn、Si/(Cr+Mn)の何れかを求め、表1に示した。表1において、Crを含有する鋼の「Si/Mn」欄、Crを含有しない鋼の「Si/(Cr+Mn)」欄には、「−」を示した。
得られた電縫鋼管の外径は193mmであり、これらを表2に示した温度に加熱し、冷却した。熱処理後の電縫鋼管から、電縫溶接部にノッチを設けたシャルピー衝撃試験片を採取し、延性破面率が100%となる温度でシャルピー衝撃試験を実施し、破断後のシャルピー試験片の破面を光学顕微鏡にて観察して、溶接欠陥面積率を測定した。また、母材の金属組織を光学顕微鏡によって観察し、延伸した非金属介在物の長径を測定し、最大値を求めて表2の「介在物長さ」欄に示した。
電縫鋼管の端部から、内面に円錐状の拡管用治具を挿入し、端部の拡管率を10%、17%、28%として拡管した。割れが発生しなかった最大の拡管率(限界拡管率という。)を、表2に「拡管率」として示した。表2に示した限界拡管率で拡管した鋼管の端部から、周方向を長手方向とし、母材から引張試験片を採取した。引張試験を行って、0.2%耐力を測定し、結果を表2の「拡管後YS」に示した。
更に、表2に示した限界拡管率で拡管した鋼管の端部から、周方向を長手方向とし、溶接部が試験片の中央部になるように、平行部の外径が6mmの定荷重SSC試験片を採取し、ゲージ長を30mmとして、定荷重SSC試験を行った。試験環境は上述のNACE環境とし、397MPaの応力を負荷して720時間保持し、破断の有無を評価した。表2の耐食性の欄に、720時間保持して破断しなかったものを「○」で示し、破断したものを「×」で示した。
表2に示したように、製造No.1〜13は本発明例であり、限界拡管率が17%以上と高く、拡管後YSが550MPa以上であり、かつ拡管後の耐食性、即ち耐応力腐食性が良好である。一方、製造No.14〜22は比較例であり、限界拡管率が低く、拡管後のSSC試験で、割れが生じており、耐食性も低下している。
Figure 0005014831
Figure 0005014831
耐硫化物応力割れ性が良好なSi/(Mn+Cr)の下限を示す図である。 耐硫化物応力割れ性が良好なSi/(Mn+Cr)の上限を示す図である。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C :0.01〜0.30%、
    Si:0.01〜0.70%、
    Mn:0.5〜2.0%、
    Nb:0.005〜0.100%、
    Ti:0.005〜0.050%、
    Al:0.002〜0.100%、
    Ca:0.0005〜0.0080%
    を含有し、
    P :0.10%以下、
    S :0.005%以下、
    O :0.0040%以下
    に制限し、
    Si/Mn:0.02〜1.50
    を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、電縫衝合部の溶接欠陥面積率が0.10%以下であることを特徴とする拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  2. 質量%で、
    C :0.01〜0.30%、
    Si:0.01〜0.70%、
    Mn:0.5〜2.0%、
    Nb:0.005〜0.100%、
    Ti:0.005〜0.050%、
    Al:0.002〜0.100%、
    Ca:0.0005〜0.0080%
    を含有し、
    P :0.10%以下、
    S :0.005%以下、
    O :0.0040%以下
    に制限し、更に、
    Cr:0.50%以下
    を含有し、
    Si/(Mn+Cr):0.02〜1.50
    を満足し、電縫衝合部の溶接欠陥面積率が0.10%以下であることを特徴とする拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  3. 質量%で、
    B :0.0035%以下
    を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  4. 質量%で、
    Cu:0.50%以下、
    Ni:0.50%以下
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  5. 質量%で、
    Mo:1.00%以下、
    W :0.50%以
    1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  6. 質量%で、
    REM:0.0005〜0.0100%
    を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  7. 母材の金属組織のフェライト分率が50〜95%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  8. 質量%で、
    V :0.005〜0.200%
    を含有することを特徴とする請求項7に記載の拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管。
  9. 請求項7又は8に記載の電縫鋼管の製造方法であって、請求項1〜6の何れか1項に記載の成分又は請求項8に記載の成分からなる鋼板を管状に成形して突き合わせ部を電縫溶接し、Ac変態点〜Ac変態点に加熱し、冷却することを特徴とする拡管性能及び耐食性に優れた拡管油井用電縫鋼管の製造方法。
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