JP2012033504A - Re123超電導薄膜テープ線材の製造方法およびre123超電導薄膜テープ線材 - Google Patents

Re123超電導薄膜テープ線材の製造方法およびre123超電導薄膜テープ線材 Download PDF

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Abstract

【課題】 超電導層全体の超電導結晶が高度に配向化する熱処理方法、つまりは高臨界電流値を有するRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 金属基板上に中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層上に原料を塗布して前駆体線材を形成する前駆体形成工程と前記前駆体線材を熱処理し、RE123超電導薄膜を形成する薄膜形成工程を備え、前記薄膜形成工程において、前記金属基板を誘導加熱法によって加熱し、熱が前記金属基板側から前記原料側に伝わるよう熱処理することを特徴とする。
【選択図】 図5

Description

本発明は、RE123超電導薄膜テープ線材の製造方法および超電導薄膜テープ線材に関し、詳しくは、高い臨界電流値を有するRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法、および前記製造方法により得られる高い臨界電流値を有する超電導薄膜テープ線材に関する。
現在、酸化物超電導材料を用いた超電導線材のひとつとしてRE123超電導薄膜テープ線材がある。RE123超電導薄膜テープ線材とは、NiあるいはNi合金からなる金属基板上に、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)やCeO等からなる中間層が形成され、その中間層上に気相法あるいは液相法で超電導層が形成された超電導線材である。ここで使用される酸化物超電導材料は、REBaCu(xは7に近い数:以下RE123とする)の化学式で表わされる酸化物超電導材料であり、RE(Rare Earth:レアアース)の部分にはY、Ho、Nd、Sm、Dy、Eu、La、Tm、Gd等の希土類元素の一つかあるいは、その混合体が配される。RE123超電導薄膜を用いた超電導線材の一層の普及のため、臨界電流密度(Jc)や臨界電流値(Ic)をより高めたRE123超電導薄膜テープ線材の研究が行われている。
RE123超電導薄膜テープ線材の製造方法の1つに、塗布熱分解法(Metal Organic Deposition、略称:MOD法)と言われる方法がある。この方法は、金属有機化合物溶液を基板に塗布した後、金属有機化合物を例えば500℃付近で仮焼して熱分解させ、得られた熱分解物(MOD仮焼膜)をさらに高温(例えば800℃付近)で熱処理(本焼)することにより結晶化を行って超電導体とするものであり、主に真空中で製造される気相法(蒸着法、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法等)に比較して製造設備が簡単で済み、また大面積や複雑な形状への対応が容易である等の特徴を有している。
しかし、結晶化の際、超電導体の結晶配向性が揃っていなければ、超電導電流はスムーズに流れず、臨界電流密度Jc(以下、単に、「Jc」とも言う)や臨界電流値Ic(Ic=Jc×膜厚×幅)(以下、単に、「Ic」とも言う)は低くなる。このため、結晶は配向基板の配向性を受け継ぐエピタキシャル成長をさせる必要があり、基板から膜表面へ向けて結晶成長を進める必要がある。
前述した本焼としては、例えば特許文献1では、600℃以上800℃以下の温度域、たとえば750℃においてAr(アルゴン)およびO2(酸素)の混合雰囲気中で有機金属塩溶液が塗布された金属配向基板が加熱されることにより、所望の有機金属堆積層である有機金属堆積HoBCO層が形成される。と記載されており、溶液が塗布された金属配向基板を一定温度の雰囲気中に置くことで熱処理を行っている。
特開2007−311234号公報
しかしながら、特許文献1に示された熱処理方法は、超電導層全体における超電導結晶の配向化が不十分で高いIcを得にくいという問題がある。
そこで本発明は、RE123超電導薄膜線材の製造方法として、超電導層全体の超電導結晶が高度に配向化する熱処理方法、つまりは高臨界電流値を有するRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法を提供し、また高臨界電流値を有するRE123超電導薄膜テープ線材を提供することを課題とする。
本発明のRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法は、金属基板上に中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層上に原料を塗布して前駆体線材を形成する前駆体形成工程と前記前駆体線材を熱処理し、RE123超電導薄膜を形成する薄膜形成工程を備え、前記薄膜形成工程において、前記金属基板を誘導加熱法によって加熱し、熱が前記金属基板側から前記原料側に伝わるよう熱処理することを特徴とする。
本発明では、原料を基材に塗布しそれを熱処理し、超電導層を形成する塗布熱分解法(以下、「MOD法」とも言う)を採用する。本発明は、誘導加熱法によって金属基板を加熱する。誘導加熱法を用いれば、金属基板のみを加熱することができる。熱源からの熱が金属基板を介して原料側に伝わるように熱処理することで、中間層側から結晶化が起こり、中間層の配向性を原料部分へ良好に伝達することができ、高い配向性を持つ超電導層が形成される。よって高い臨界電流値を持つRE123超電導薄膜テープ線材が得られる。配向化のメカニズムについては後述する。
本発明において、薄膜形成工程において、前記前駆体線材の前記金属基板側とは反対の面を冷却することが好ましい。このようにすれば、より中間層側からの結晶化が起こりやすい。
本発明のRE123超電導薄膜テープ線材は、上記の製造方法により製造される。これにより、高い臨界電流値をもつRE123超電導薄膜テープ線材が得られる。
本発明により、超電導層全体の超電導結晶を高度に配向化させることが可能である。それによって高臨界電流値を有するRE123超電導薄膜テープ線材を得ることができる。
RE123超電導薄膜線材の構成を模式的に示す部分断面斜視図である。 従来方法の本焼状況を模式的に表した断面図である。 従来方法で本焼した前駆体線材の、結晶化途中の状態を模式的に表した断面図である。 金属基板側から加熱した本焼状況を模式的に表した断面図である。 本発明の方法で本焼した前駆体線材の、結晶化途中の状態を模式的に表した断面図である。
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
(RE123超電導薄膜テープ線材の構成)
図1は、本発明の対象であるRE123超電導薄膜テープ線材の構成を模式的に示す部分断面斜視図である。図1を参照して、代表的なRE123超電導薄膜テープ線材の例について説明する。RE123超電導薄膜テープ線材10は、配向金属基板11と、配向金属基板11上に形成された中間層12と、中間層12上に形成された超電導薄膜層13と、超電導薄膜層13を保護するための安定化層14と、全体を保護し、かつ導電性をあげるための保護層15、16からなる。基本構成としては、配向金属基板11、中間層12、超電導層13からなり、安定化層14、保護層15、16は用途に応じてオプションとして設けられる。
配向金属基板11としては、例えばNi配向基板、Ni合金系の配向基板等を採用できる。中間層12は、CeOやYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)等の酸化物あるいはそれらの積層体で構成される。超電導薄膜層13としては例えばYBaCu(xは7に近い数)などの、RE123系超電導材料が選択される。安定化層14と保護層15、16としては、Ag(銀)やCu(銅)が用いられる。
(前駆体線材の作製)
まず、ベース材料として、Ni合金等の配向金属基板を準備する。この配向金属基板上に物理蒸着法等を用いて、CeOおよびYSZ等からなる中間層を積層する。この積層体を基材とする。基材の構成としては、例えばCeO/YSZ/CeO/Ni合金が好ましい。この基材上に、RE、Ba、Cu各元素の原料溶液、例えばフッ素フリーであるアセチルアセトナート錯体を、RE:Ba:Cuのモル比が1:2:3となるように調整して、溶媒に溶解した原料溶液を塗布する。
この原料を超電導層が形成された際の厚さが0.2−1.0μmとなるよう塗布する。この溶液塗布体に対し、有機物を熱分解するための仮焼を施す。仮焼は、大気雰囲気で400−500℃、1−2時間程度の条件で行う。
仮焼された溶液塗布体に中間熱処理を施してもよい。これは仮焼中生成した炭酸塩が超電導層の成長を阻害するため、続く本焼の前に、予め生成した炭酸塩を分解除去するために行われるものである。この中間熱処理は、酸素濃度が100ppm程度の雰囲気下、温度600−700℃、時間1−3時間の条件で行われる。ここまでで得られた物を前駆体線材とする。
(薄膜形成工程:本焼)
続いて、上で得られた前駆体線材に対し、超電導薄膜形成のために熱処理(本焼)を施す。この本焼により、塗布された原料が目的とするRE123超電導相へと変態する。この本焼の改良が本発明のポイントである。
RE123超電導薄膜テープ線材中には、高度に配向化した中間層が存在している。中間層は、その配向化した組織をテンプレートとして利用して超電導結晶を配列させることをひとつの目的として設けられている。もうひとつの目的は金属基板から超電導層への元素拡散を抑制するものである。高い臨界電流値を得るために、中間層の配向性をできるだけ超電導層で反映させることが重要である。本発明はこの点に着目してなされた。
図2は従来方法の本焼状況を模式的に表した断面図である。前駆体線材20は、配向金属基板11上に中間層12が設けられ、その上に原料21が塗布されている。これを管状炉や箱形炉の中に入れ、熱処理を行っている。例えば、管状炉ではヒーター等の熱源30は前駆体線材20に対して、等方的に配置され前駆体線材20に熱(図2中矢印)が各方向から、雰囲気ガスを介してあるいは輻射によって供給されるようになっている。また、熱源の配置が等方的でない場合でも、雰囲気ガスを介して、熱が前駆体線材20に伝達するため、前駆体線材20の全面から加熱されていることになる。
このような状況下で熱処理を行うと、原料21の結晶化が原料21の下面(中間層側)、上面(反対側)から始まる。図3は従来方法で本焼した前駆体線材の、結晶化途中の状態を模式的に表した断面図である。図3中、22a、22bは結晶化した部分を表す。上述したように、結晶化は雰囲気温度が結晶化開始温度に到達すると原料20の上面、下面からほぼ同時に始まる。中間層12側で結晶化した部分22aは、中間層12をテンプレートとして成長するため、配向性をもって結晶化する。一方、中間層12とは反対側で結晶化した部分22bは、テンプレートが存在しないため、ランダムすなわち配向性が乏しく結晶が成長する。この状態で本焼を続け、原料部全ての部分が結晶化すると、中間層12側から上面に向かって、配向性が徐々に悪くなった超電導層が得られてしまう。このような超電導層はその特性が低い。本発明は上記のような結晶化課程を回避することを目的としている。
図4は金属基板側から加熱した本焼状況を模式的に表した断面図である。前駆体線材20は配向金属基板11の原料21の存在しない面(下面)において熱源30と接触している。このように配置すれば、配向金属基板11は高温側、原料21は低温側となり熱(図4中矢印)が配向金属基板11側から原料21側へ伝わる。このような状況下では、結晶化は原料12の下面から始まる。図5は本発明の方法で本焼した前駆体線材の、結晶化途中の状態を模式的に表した断面図である。原料20中には、中間層12側で結晶化した部分22aしか存在しない。この結晶化部分は徐々に中間層12側から上面に広がっていく。この上面に向かって結晶化する際には、結晶化している下地部分をテンプレートとして成長する。つまり、中簡層12の接している部分の配向性が上へ上へと伝達され結晶が成長する。このようにすれば、超電導層全体が中間層の配向性をもって層を形成する。そのため層全体が高い超電導特性をもつことになる。
金属基板の加熱は誘導加熱法によっても可能である。誘導加熱法では導電性のよい材料のみを加熱することができる。本発明の場合、中間層や原料は導電性が乏しいので金属基板のみが加熱される。よって誘導加熱法であれば金属基板に熱源を接触させなくても本発明の状態を実現させることができる。
金属基板側からの結晶化をより確実にするために原料21の表面を冷却しながら、薄膜形成工程を行う。図3における中間層12とは反対側で結晶化した部分22bを発生させないよう当該部分を冷却するものである。そのため雰囲気ガス(アルゴン/酸素混合ガス)等を原料21の表面に直接吹きかけて冷却する。結晶化の初期段階では強く冷却し、結晶化が進んで表面側が結晶化する段階では冷却を弱めるか、冷却を停止するよう調整することが望ましい。
上記の本焼後得られるものがRE123超電導薄膜テープ線材である。本焼の条件としては、酸素濃度が100ppm程度の雰囲気下で行い。加熱方法は熱源を接触させる方法あるいは、誘導加熱法いずれであっても、前駆体線材の温度が700−750℃になるように設定される。時間的には1−2時間が適当である。このRE123超電導薄膜テープ線材に以下の酸素導入処理を施す。
(酸素導入処理)
超電導性向上のため酸素導入熱処理を行う。酸素導入熱処理は酸素濃度が超電導薄膜形成工程(本焼)より高い(例えば、500ppm)雰囲気下、温度500−600℃、時間30−120分の条件で行う。
以下に、実施例、参考例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお以下の実施例、参考例および比較例においては、RE123超電導薄膜の形成にはMOD法の内でも有害なHF等を発生するおそれがないフッ素フリーのMOD法を用いた。
基材として、幅1cmのCeO/YSZ/CeO/Ni合金の基板を用いる。中間層(CeO/YSZ/CeO)は、スパッタリング等の物理蒸着法で形成されており、高い配向組織をもっている。この基材上に、Y、Ba、Cuの各アセチルアセトナート錯体を、Y:Ba:Cuのモル比が1:2:3となるように調整して溶媒に溶解した。厚さとしては超電導層形成後の厚さが0.3μmとなるよう塗布した。これらの試料を複数個用意した。これら試料を大気雰囲気の下で20℃/分の昇温速度で500℃まで昇温して、2時間保持後炉冷し仮焼熱処理を施した。
ついでアルゴン/酸素混合ガス(酸素濃度:100ppm、CO濃度:1ppm以下)雰囲気の下、20℃/分の昇温速度で680℃まで昇温し、180分保持して中間熱処理を施した。
中間熱処理の後、いくつかの異なった条件で本焼を施した。本焼の雰囲気条件はいずれもアルゴン/酸素混合ガス(酸素濃度:20ppm)の雰囲気である。また下記の温度は、Ni合金に熱電対を接触させ測定したものである。
比較例:密閉された管状炉内の中央に試料を置き、20℃/分の昇温速度で750℃まで昇温し、90分保持した。
実施例1:密閉された容器の中に、銅線でソレノイドコイルを形成し、コイル内にアルミナの板材を配置して、その上に試料を置いた。コイルへの出力(周波数と電流値)を、20℃/分の昇温速度で750℃まで昇温し、その温度で90分保持となるよう調整した。
参考例1:密閉された容器の中に、シート状ヒーターを設置しその上に厚さ1mm、10cm角の銀板を載せる。ヒーターの加熱により、銀板は全面ほぼ一様な温度となっている。この銀板の上にNi合金側が接するように試料を配置した。ヒーターへの出力を、20℃/分の昇温速度で750℃まで昇温し、その温度で90分保持となるよう調整した。
参考例2:試料およびヒーター配置、温度プロファイルは参考例1と同じ条件で本焼を行った。但し、アルゴン/酸素混合ガス(酸素濃度:20ppm)を導管で加熱領域に導き、前駆体線材表面にかかるように流した。ガスの流量は昇温中および90分間の保持時間の内、初期の30分間は100cc/分、続く30分間は30cc/分、最後の30分間はガスを止めた。
上記の条件で塗布した原料を超電導体に変態、結晶化させY123超電導薄膜テープ線材を得た。これらに酸素導入熱処理を施した。条件は酸素濃度500ppmの雰囲気下、温度550℃、時間120分である。
上記で得られた試料の臨界電流値(Ic)を温度77K、自己磁場下で測定した。また、XRDにより超電導層の配向度を評価した。配向度の評価は、XRD得られた回折パターン中Y123相の(005)ピーク強度を用いて行う。すなわち(005)ピークの強度が強いほど、超電導層は高度に配向していることとする。臨界電流値、(005)ピーク強度の結果を表1に示す。
Figure 2012033504
表1からわかるように、従来の等方的に熱が前駆体線材に伝わるような熱処理方法(比較例)では、超電導層の配向性が悪く、臨界電流値も50A程度である。一方、金属基板側から原料側に熱が伝わるように熱処理された実施例1、参考例1、および参考例2では、超電導層の配向性も高く、それによって臨界電流値も100Aを超えるものとなっている。また前駆体線材表面側を冷却しながら、本焼をおこなった参考例2ではより高い臨界電流値が得られている。
今回開示された実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
10 RE123超電導薄膜テープ線材
11 配向金属基板
12 中間層
13 超電導薄膜層
14 安定化層
15 16 保護層
20 前駆体線材
21 原料
22a 中間層12側で結晶化した部分
22b 中間層12とは反対側で結晶化した部分
30 熱源

Claims (3)

  1. RE123超電導薄膜テープ線材の製造方法であって、
    金属基板上に中間層を形成する中間層形成工程と、
    前記中間層上に原料を塗布して前駆体線材を形成する前駆体形成工程と
    前記前駆体線材を熱処理し、RE123超電導薄膜を形成する薄膜形成工程を備え、
    前記薄膜形成工程において、前記金属基板を誘導加熱法によって加熱し、熱が前記金属基板側から前記原料側に伝わるよう熱処理することを特徴とするRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法。
  2. 前記薄膜形成工程において、前記前駆体線材の前記金属基板側とは反対の面を冷却することを特徴とする請求項1に記載のRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のRE123超電導薄膜テープ線材の製造方法により製造された、RE123超電導薄膜テープ線材。
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