JP2012174567A - 酸化物超電導線材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚膜化してもJcの低下を招くことがなく、厚膜化に比例して、充分に高いIcを有する酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材とその製造方法を提供する。
【解決手段】配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法であって、有機金属化合物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、塗膜に含有される有機成分を熱分解、除去して、仮焼膜を形成する仮焼熱処理工程と、仮焼膜を結晶化させて、本焼膜を形成する本焼熱処理工程とを備え、塗膜形成工程、仮焼熱処理工程および本焼熱処理工程を繰り返して、本焼膜を複数層積層させることにより、積層界面に欠陥層が設けられた酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法。塗布熱分解法により本焼膜が欠陥層を介して複数層積層されている酸化物超電導線材。
【選択図】なし
【解決手段】配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法であって、有機金属化合物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、塗膜に含有される有機成分を熱分解、除去して、仮焼膜を形成する仮焼熱処理工程と、仮焼膜を結晶化させて、本焼膜を形成する本焼熱処理工程とを備え、塗膜形成工程、仮焼熱処理工程および本焼熱処理工程を繰り返して、本焼膜を複数層積層させることにより、積層界面に欠陥層が設けられた酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法。塗布熱分解法により本焼膜が欠陥層を介して複数層積層されている酸化物超電導線材。
【選択図】なし
Description
本発明は、酸化物超電導線材とその製造方法に関し、詳しくは、塗布熱分解法により、臨界電流密度Jcや臨界電流値Icが優れた酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材とその製造方法に関する。
液体窒素の温度で超電導性を有する高温超電導体の発見以来、ケーブル、限流器、マグネットなどの電力機器への応用を目指した高温超電導線材の開発が活発に行われている。中でも、基板上に酸化物超電導層を形成させた酸化物超電導薄膜線材が注目されている。
このような酸化物超電導線材の製造方法の1つに、塗布熱分解法(Metal Organic Deposition、略称:MOD法)と言われる方法がある(特許文献1)。
この方法は、Y(イットリウム)、Gd(ガドリニウム)、Ho(ホルミウム)などのRE(希土類元素)およびBa(バリウム)、Cu(銅)の各有機金属化合物を溶媒に溶解して製造された原料溶液(MOD溶液)を基板に塗布して塗布膜を形成した後、例えば、500℃付近で仮焼熱処理して、有機金属化合物を熱分解させ、熱分解した有機成分を除去することにより酸化物超電導体の前駆体である仮焼膜を作製し、作製した仮焼膜をさらに高温(例えば750〜800℃付近)で本焼熱処理することにより結晶化を行って、REBa2Cu3O7−Xで表されるRE123超電導層を形成させて酸化物超電導線材を製造するものであり、主に真空中で製造される気相法(蒸着法、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法等)に比較して製造設備が簡単で済み、また大面積や複雑な形状への対応が容易である等の特徴を有しているため、広く用いられている。
このようなMOD法において、より高い臨界電流値Icを有する酸化物超電導線材が求められており、その手段として、酸化物超電導層を厚膜化して、Icを向上させる技術の開発が求められている。
MOD法を用いて、このような厚膜の酸化物超電導層を作製する方法として、一般的には、図2に示すように、MOD溶液の塗布(塗膜形成)とそれに続く仮焼(仮焼熱処理)を複数回繰り返し行って、複数の仮焼膜を積層して厚膜の仮焼膜を作製した後、本焼熱処理を施すことにより、厚膜の酸化物超電導層を形成させることが行われている。
しかし、上記した厚膜の仮焼膜に対して本焼熱処理を施す方法の場合、酸化物超電導体の結晶はc軸配向して成長しているものの、酸化物超電導層にピン(ピンニングセンター)が充分に形成されないために、電流パスを充分に確保することができず、結果的に、Jcの低下を招き、厚膜化に比例したIcの伸びを得ることができなかった。
そこで、従来は、例えば、Y2O3やY211粒子などの常電導相を析出させたり、酸化物超電導層の成膜手法を工夫することにより結晶欠陥(積層欠陥)を形成させたりして、酸化物超電導層にピンを導入し、臨界電流密度Jcの低下を抑制することが行われていた。
しかし、このような手段を用いても、電流パスを充分に確保することができなかったり、欠陥の導入が容易ではないなどのため、未だ、充分にはJcの低下を抑制できているとは言えず、厚膜化に比例した充分なIcの伸びを得ることができていなかった。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、厚膜化してもJcの低下を招くことがなく、厚膜化に比例して、充分に高いIcを有する酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、以下に示す手段により上記課題が解決できることを見出し本発明を完成させるに至った。以下、各請求毎に説明する。
請求項1に記載の発明は、
配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法であって、
前記有機金属化合物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜に含有される有機成分を熱分解、除去して、仮焼膜を形成する仮焼熱処理工程と、
前記仮焼膜を結晶化させて、本焼膜を形成する本焼熱処理工程とを備え、
前記塗膜形成工程、前記仮焼熱処理工程および前記本焼熱処理工程を繰り返して、前記本焼膜を複数層積層させることにより、積層界面に欠陥層が設けられた酸化物超電導層を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法である。
配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法であって、
前記有機金属化合物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜に含有される有機成分を熱分解、除去して、仮焼膜を形成する仮焼熱処理工程と、
前記仮焼膜を結晶化させて、本焼膜を形成する本焼熱処理工程とを備え、
前記塗膜形成工程、前記仮焼熱処理工程および前記本焼熱処理工程を繰り返して、前記本焼膜を複数層積層させることにより、積層界面に欠陥層が設けられた酸化物超電導層を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法である。
本発明者は、酸化物超電導層へのピンの導入方法について検討を行う中で、従来のように、複数の仮焼膜を積層した後、最後に1回だけ本焼熱処理を行うのではなく、塗膜形成工程、仮焼熱処理工程、本焼熱処理工程を繰り返すことにより、1層ずつ形成した本焼膜を積層させて厚膜の酸化物超電導層を形成させた場合、先に形成された本焼膜とその上に形成される次の本焼膜との界面に、欠陥層を形成することができ、この欠陥層をピンとして機能させることができることを見出した。そして、この場合、酸化物超電導体結晶のエピタキシャル成長が、積層された各本焼膜において妨げられることがないため、積層された次の本焼膜においても、充分にc軸配向させることができることが分かった。
このように、本請求項の発明においては、厚膜化された酸化物超電導層内にピンを確実に導入することができるため、厚膜化してもJcの低下を招くことがなく、厚膜化に比例して、充分に高いIcを有する酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材を提供することができる。
なお、本焼膜の1層当たりの厚みおよび積層数は、酸化物超電導層としての厚みや、所望するJc、Icを考慮して、適宜決定される。
即ち、1層あたりの本焼膜の厚みを薄くして積層数を多くした場合には、形成される欠陥が多くなりすぎて、超電導特性が失われる恐れがある。一方、1層あたりの本焼膜の厚みを厚くして積層数を少なくした場合には、形成される欠陥が少なく、間隔も広いため、ピンとしての機能を充分に発揮させることができない恐れがある。
また、本焼膜の1層当たり厚みを所望の厚みにするために、予め塗膜形成工程および仮焼熱処理工程を複数回繰り返して、複数層の仮焼膜を形成した後、本焼熱処理工程を行ってもよい。
請求項2に記載の発明は、
前記本焼膜の1層当たりの厚みが、2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
前記本焼膜の1層当たりの厚みが、2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
本焼膜の1層当たりの厚みが2μmを超える場合には、基板側からの配向成長と同時に、上面側からもランダムに結晶成長して無配向の大きな結晶が形成されるため、充分にc軸配向させることができず、却って、Jcの低下を招く恐れがある。
請求項3に記載の発明は、
前記本焼膜の1層当たりの厚みが、50〜1000nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
前記本焼膜の1層当たりの厚みが、50〜1000nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
本焼膜の1層当たりの厚みが薄いと、所望する厚みの酸化物超電導層を作製するためには、積層数を多くする必要があり、効率的でない。また、前記したように、形成される欠陥が多くなりすぎて、超電導特性が失われる恐れがある。一方、本焼膜の1層当たりの厚みが厚いと、ピンを適切に導入することができず、ピンとしての機能を充分に発揮させることができない恐れがある。好ましい厚みは、50〜1000nmであり、100〜500nmであるとより好ましい。
請求項4に記載の発明は、
前記本焼熱処理工程の昇温速度が、10℃/分以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
前記本焼熱処理工程の昇温速度が、10℃/分以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
本焼熱処理工程において、低温における保持時間が長くなると、好ましいc軸配向した結晶ではなく、a軸配向した結晶が生成し易い。このため、10℃/分以上の昇温速度であることが好ましい。30℃/分以上であると、より好ましい。
請求項5に記載の発明は、
前記有機金属化合物が、フッ素を含まない有機金属化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
前記有機金属化合物が、フッ素を含まない有機金属化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法である。
MOD法としては、原料溶液にフッ素を含む有機金属化合物を用いるTFA−MOD法(Metal Organic Deposition using TriFluoroAcetates)とフッ素を含まない有機金属化合物を用いるフッ素フリーMOD法(FF−MOD法)とがある。
TFA−MOD法を用いると、面内配向性に優れた酸化物超電導層を得ることができる。しかし、この方法では、溶液の酸性度が高いため、本焼膜の上に塗布した溶液が本焼膜の表面を溶かしてしまい、その後の本焼熱処理工程にて充分にc軸配向した膜を得ることができない。
これに対して、FF−MOD法は、溶液の酸性度が中性に近いため、下地となる本焼膜を溶かすことがなく、その結果、本焼時に下地の配向性を引き継いだエピタキシャル成長が進み、充分にc軸配向した膜を得ることができる。
請求項6に記載の発明は、
配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層が形成された酸化物超電導線材であって、
前記塗布熱分解法により本焼膜が欠陥層を介して複数層積層されていることを特徴とする酸化物超電導線材である。
配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層が形成された酸化物超電導線材であって、
前記塗布熱分解法により本焼膜が欠陥層を介して複数層積層されていることを特徴とする酸化物超電導線材である。
前記したように、欠陥層はピンとして作用する。このため、本請求項の発明に係る酸化物超電導線材は、厚膜化してもJcの低下を招くことがなく、充分に高いIcを有する酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材を提供することができる。
本発明によれば、厚膜化してもJcの低下を招くことがなく、厚膜化に比例して、充分に高いIcを有する酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材とその製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施の形態に基づき図面を用いて説明する。
(酸化物超電導層の形成)
始めに、酸化物超電導層の形成方法の概要を説明する。図1は、本実施の形態における酸化物超電導層の形成方法の概要を説明する図である。
(酸化物超電導層の形成)
始めに、酸化物超電導層の形成方法の概要を説明する。図1は、本実施の形態における酸化物超電導層の形成方法の概要を説明する図である。
1.配向金属基板の準備工程
最初に、基板を準備する。基板としては、c軸に2軸配向した配向金属基板が好ましく、具体的には、IBAD基材、Ni−W合金基材、SUS等をベース金属としたクラッドタイプの金属基板材等を用いることができる。配向金属基板上に形成する中間層としては、一般的には、CeO2、YSZ、Y2O3の他、安定化ジルコニア、BaZrO3(バリウムジルコネート)、LaAlO3(アルミン酸ランタン)、Gd2Zr2O7、SmGdO3、RE2O3(RE;Y、ランタノイド)等を用いることができ、格子整合性やJcが高く出るなどの観点から、CeO2が最上層に使用される(厚さとしては、通常、100nm以下)。
最初に、基板を準備する。基板としては、c軸に2軸配向した配向金属基板が好ましく、具体的には、IBAD基材、Ni−W合金基材、SUS等をベース金属としたクラッドタイプの金属基板材等を用いることができる。配向金属基板上に形成する中間層としては、一般的には、CeO2、YSZ、Y2O3の他、安定化ジルコニア、BaZrO3(バリウムジルコネート)、LaAlO3(アルミン酸ランタン)、Gd2Zr2O7、SmGdO3、RE2O3(RE;Y、ランタノイド)等を用いることができ、格子整合性やJcが高く出るなどの観点から、CeO2が最上層に使用される(厚さとしては、通常、100nm以下)。
2.塗膜形成工程
次に、配向金属基板上に、RE、Ba、Cuのアセチルアセトナート等の有機金属化合物を所定のモル比で溶解させたMOD溶液を、所定量塗布した後、乾燥して所定厚みの塗膜を形成する。
次に、配向金属基板上に、RE、Ba、Cuのアセチルアセトナート等の有機金属化合物を所定のモル比で溶解させたMOD溶液を、所定量塗布した後、乾燥して所定厚みの塗膜を形成する。
3.仮焼熱処理工程
次に、塗膜を仮焼して、有機金属化合物を分解させ、有機成分を除去して仮焼膜を形成する。具体的には、例えば、大気雰囲気下で500℃まで加熱し、そのまま120分間程度保持する。
次に、塗膜を仮焼して、有機金属化合物を分解させ、有機成分を除去して仮焼膜を形成する。具体的には、例えば、大気雰囲気下で500℃まで加熱し、そのまま120分間程度保持する。
なお、塗膜形成工程と仮焼熱処理工程を繰り返し行って仮焼膜を積層した積層タイプの仮焼膜とすることもできる。
4.本焼熱処理工程
次に、仮焼膜を本焼し、エピタキシャルに結晶を成長させて、c軸配向した酸化物超電導層が形成された本焼膜を形成する。具体的には、例えば、酸素濃度が100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃まで加熱し、そのまま90分間程度保持する。
次に、仮焼膜を本焼し、エピタキシャルに結晶を成長させて、c軸配向した酸化物超電導層が形成された本焼膜を形成する。具体的には、例えば、酸素濃度が100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃まで加熱し、そのまま90分間程度保持する。
本焼膜の1層当たりの厚みは、前記の通り、2μm以下であることが好ましく、ピンとして充分に作用する距離で欠陥層を形成させるためには、50〜1000nmであることがより好ましい。
5.酸化物超電導層の形成
上記の塗膜形成工程、仮焼熱処理工程、本焼熱処理工程を繰り返し行って、複数の本焼膜を積層(図1では4層)することにより、酸化物超電導層を形成する。本焼熱処理の際、積層させた本焼膜同士の界面に、ピンとして作用する欠陥層が形成される。積層数は作製しようとする酸化物超電導線材の仕様等に基づき適宜設定される。
上記の塗膜形成工程、仮焼熱処理工程、本焼熱処理工程を繰り返し行って、複数の本焼膜を積層(図1では4層)することにより、酸化物超電導層を形成する。本焼熱処理の際、積層させた本焼膜同士の界面に、ピンとして作用する欠陥層が形成される。積層数は作製しようとする酸化物超電導線材の仕様等に基づき適宜設定される。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例においては、FF−MOD法を用いて、Y123酸化物超電導層を形成させている。
(実施例1)
1.Y123酸化物超電導層の形成
(1)MOD溶液の作製
Y、Ba、Cuの各アセチルアセトナート錯体を、Y:Ba:Cuのモル比が1:2:3となるように調製して溶媒に溶解させてMOD溶液を作製した。なお、MOD溶液のY3+、Ba3+、Cu2+を合わせた総カチオン濃度は1mol/Lとした。
(1)MOD溶液の作製
Y、Ba、Cuの各アセチルアセトナート錯体を、Y:Ba:Cuのモル比が1:2:3となるように調製して溶媒に溶解させてMOD溶液を作製した。なお、MOD溶液のY3+、Ba3+、Cu2+を合わせた総カチオン濃度は1mol/Lとした。
(2)塗膜形成工程および仮焼熱処理工程
次に、作製したMOD溶液を、Y2O3、YSZ、CeO2を中間層に持つクラッドタイプの配向金属基板に塗布した後、乾燥し、塗膜を形成した。次に、大気雰囲気下で500℃まで昇温して、120分間保持後、冷却し、厚み0.15μmの仮焼膜を形成した。
次に、作製したMOD溶液を、Y2O3、YSZ、CeO2を中間層に持つクラッドタイプの配向金属基板に塗布した後、乾燥し、塗膜を形成した。次に、大気雰囲気下で500℃まで昇温して、120分間保持後、冷却し、厚み0.15μmの仮焼膜を形成した。
(3)本焼熱処理工程
次に、アルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃まで昇温し、そのまま90分間保持する。その後、520℃まで約3時間で降温しつつ、酸素濃度を100%に切り替え、この酸素濃度を保ちつつ、さらに5時間かけて室温まで冷却し、厚み0.125μmの本焼膜を形成した。
次に、アルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃まで昇温し、そのまま90分間保持する。その後、520℃まで約3時間で降温しつつ、酸素濃度を100%に切り替え、この酸素濃度を保ちつつ、さらに5時間かけて室温まで冷却し、厚み0.125μmの本焼膜を形成した。
(4)酸化物超電導層の作製
上記塗膜形成工程、仮焼熱処理工程および本焼熱処理工程を8回繰り返し行って、総厚1μmの厚膜化したY123酸化物超電導層を作製し、実施例1の酸化物超電導線材とした。
上記塗膜形成工程、仮焼熱処理工程および本焼熱処理工程を8回繰り返し行って、総厚1μmの厚膜化したY123酸化物超電導層を作製し、実施例1の酸化物超電導線材とした。
(実施例2〜5)
本焼膜1層当たりの厚み、繰り返し回数を、表1の実施例2〜5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表1の実施例2〜5に示す総厚のY123酸化物超電導層を作製し、実施例2〜5の酸化物超電導線材とした。
本焼膜1層当たりの厚み、繰り返し回数を、表1の実施例2〜5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表1の実施例2〜5に示す総厚のY123酸化物超電導層を作製し、実施例2〜5の酸化物超電導線材とした。
(比較例1)
前記の塗膜形成工程と仮焼熱処理工程とを繰り返して、8層の仮焼膜を積層した後、本焼熱処理工程を1回行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同じ総厚1μmの厚膜化されたY123酸化物超電導層を作製し、比較例1の酸化物超電導線材とした。
前記の塗膜形成工程と仮焼熱処理工程とを繰り返して、8層の仮焼膜を積層した後、本焼熱処理工程を1回行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同じ総厚1μmの厚膜化されたY123酸化物超電導層を作製し、比較例1の酸化物超電導線材とした。
(比較例2)
前記の塗膜形成工程と仮焼熱処理工程を経て1層の仮焼膜を作製した後、本焼熱処理工程を1回行ったこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚2.5μmのY123酸化物超電導層を作製し、比較例2の酸化物超電導線材とした。
前記の塗膜形成工程と仮焼熱処理工程を経て1層の仮焼膜を作製した後、本焼熱処理工程を1回行ったこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚2.5μmのY123酸化物超電導層を作製し、比較例2の酸化物超電導線材とした。
2.酸化物超電導線材の評価
(1)評価方法
イ.c軸配向性
各酸化物超電導線材について、表面SEM観察を行い、表面までc軸配向した組織が得られているかどうかを確認した。結果を、表面までc軸配向していた場合は「○」で示し、表面までc軸配向していなかった場合は「×」で、表1に示す。また、XRDによるY123(005)のピーク強度の測定結果も表1に示す。
(1)評価方法
イ.c軸配向性
各酸化物超電導線材について、表面SEM観察を行い、表面までc軸配向した組織が得られているかどうかを確認した。結果を、表面までc軸配向していた場合は「○」で示し、表面までc軸配向していなかった場合は「×」で、表1に示す。また、XRDによるY123(005)のピーク強度の測定結果も表1に示す。
ロ.Jc、Icの測定
各酸化物超電導線材について、超電導特性(Jc、Ic)を、77K、自己磁場下において測定した。結果を表1に示す。
各酸化物超電導線材について、超電導特性(Jc、Ic)を、77K、自己磁場下において測定した。結果を表1に示す。
ハ.欠陥層の形成の確認
TEMを用いて、各酸化物超電導線材における酸化物超電導層の断面を観察し、欠陥層が形成されているか否かを調べた。その結果、実施例1〜5においては、欠陥層の形成が確認された。これに対して、比較例1、2においては、欠陥層の形成が確認されなかった。
TEMを用いて、各酸化物超電導線材における酸化物超電導層の断面を観察し、欠陥層が形成されているか否かを調べた。その結果、実施例1〜5においては、欠陥層の形成が確認された。これに対して、比較例1、2においては、欠陥層の形成が確認されなかった。
表1に示すように、欠陥層が形成された実施例1の酸化物超電導線材は、膜厚が同じでありながら欠陥層の形成がない比較例1の酸化物超電導線材に比べ、Jc、Icが高い。そして、本焼膜1層当たりの厚みが50nm未満の実施例2や、1000nmを超える実施例5においては、欠陥層の形成が適切でないため、Jcの低下が見られ、Icが膜厚に対応して充分に伸びていない。本焼膜1層当たりの厚みが2μmを超える比較例2においては、膜がc軸配向せず、Jcが低くなっている。一方、実施例1や実施例3、4においては、欠陥層が適切に形成されているため、Jcが低下せず、膜厚に対応したIcを示している。
(実施例6、比較例3)
以下の実施例は、本焼熱処理工程の昇温速度を変えて酸化物超電導線材を作製し、特性を評価した例である。
以下の実施例は、本焼熱処理工程の昇温速度を変えて酸化物超電導線材を作製し、特性を評価した例である。
1.Y123酸化物超電導層の形成
本焼熱処理工程における昇温速度を、表2に示す昇温速度としたこと以外は、実施例1と同様にしてY123酸化物超電導層を作製し、実施例6、比較例3の酸化物超電導線材とした。
本焼熱処理工程における昇温速度を、表2に示す昇温速度としたこと以外は、実施例1と同様にしてY123酸化物超電導層を作製し、実施例6、比較例3の酸化物超電導線材とした。
2.酸化物超電導線材の評価
(1)評価方法
実施例1と同じ方法で評価した。
(2)評価結果
評価結果を実施例1と併せて表2に示す。
(1)評価方法
実施例1と同じ方法で評価した。
(2)評価結果
評価結果を実施例1と併せて表2に示す。
表2より、本焼熱処理工程の昇温速度が10℃/分以上に設定されて、a軸配向が抑制された実施例1、実施例6は、比較例3に比べ、Jc、Icが高く、より好ましいことが分かる。
以上のように、本発明によれば、厚膜化してもJcの低下を招くことがなく、厚膜化に比例して、充分に高いIcを有する酸化物超電導層が基板上に形成された酸化物超電導線材を提供することができる。
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
Claims (6)
- 配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層を形成する酸化物超電導線材の製造方法であって、
前記有機金属化合物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜に含有される有機成分を熱分解、除去して、仮焼膜を形成する仮焼熱処理工程と、
前記仮焼膜を結晶化させて、本焼膜を形成する本焼熱処理工程とを備え、
前記塗膜形成工程、前記仮焼熱処理工程および前記本焼熱処理工程を繰り返して、前記本焼膜を複数層積層させることにより、積層界面に欠陥層が設けられた酸化物超電導層を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。 - 前記本焼膜の1層当たりの厚みが、2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記本焼膜の1層当たりの厚みが、50〜1000nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記本焼熱処理工程の昇温速度が、10℃/分以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記有機金属化合物が、フッ素を含まない有機金属化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 配向金属基板上に、有機金属化合物を原料とし、塗布熱分解法により酸化物超電導層が形成された酸化物超電導線材であって、
前記塗布熱分解法により本焼膜が欠陥層を介して複数層積層されていることを特徴とする酸化物超電導線材。
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