JP4433589B2 - 高温超電導厚膜部材およびその製造方法 - Google Patents

高温超電導厚膜部材およびその製造方法 Download PDF

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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温超電導厚膜部材およびその製造方法に関し、より詳細には、優れた超電導特性を有し、組成および組織が均一で、かつ実用に値する大きな臨界電流を担い、長尺もしくは大面積が可能な、特に電力用途に適する高温超電導厚膜部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高温超電導薄膜は、スパッタリング法、熱共蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザー蒸着法などの従来の半導体産業で培われた物理蒸着技術の適用によって、実用化開発が進展している。特に臨界温度が90Kに達するY(イットリウム)123系構造またはRE(希土類)123系構造を有する高温超電導薄膜では、液体窒素温度(77K)を超える臨界温度や105A/cm2(77K、自己磁界下)を超える臨界電流特性が確認され、研究所レベルでは実用化の進んだBi(ビスマス)系銀被覆高温超電導線材を完全に凌駕する特性が確認されている。
【0003】
このような高温超電導薄膜を用いて、移動体の通信基地局に用いられるマイクロ波フィルタの実用化を目指した試作、SQUID(Super conducting Quantum Interference Device)現象を利用した心磁計などのプロトタイプの開発、ジョセフソン効果を利用した高速電子計算機を目指した要素開発などが急速に進展しており、コスト面での従来の常電導機器に比べて性能や長期信頼性が確認された後には、製品化が進むと期待されている。
【0004】
一方、超電導の「電気抵抗=0」現象を利用して、ケーブルやマグネットを限流器などのいわゆるパワー応用分野でもそのプロトタイプの開発が推進されている。高温超電導線材を用いた地中ケーブルが実現できれば、都心の地下に直径がメートル級のトンネルを新たに作製することなく、既存の小さい直径(150〜200mmφ程度)のトンネルに敷設可能なコンパクト・大容量ケーブルを構築することができる。これによって、従来の3倍以上の電力を送電でき、東京などの大都会では膨大なコストを要する地下工事費が不要になり、コストメリットが生じることから、開発が鋭意進められている。
【0005】
また、Y系およびRE系薄膜線材は、77Kの磁場特性がBi系銀被覆線材に比べて非常に優れている。このため、線材の長尺化が進み適正コストで所定の性能が達成できれば、たとえば金属系超電導線材で適用化が進んでいるMRI(Magnetic Resonance Imaging)やシリコン単結晶引上げ炉用超電導マグネット用の線材としてY系およびRE系薄膜線材は有力となる。また、薄膜を用いたSN転位型限流器の検討もなされており、マトリックスが安定化材となるBi系銀被覆線材では実現不可能なコンパクトで高性能な限流器が、Y系およびRE系薄膜において実現可能であるかについても検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
物理蒸着法は、原料ターゲットから成膜した高温超電導膜の組成ずれが少なく、気相成長法の中でも成膜速度が比較的速いという特徴を有している。このために、優れた特性を有する薄膜の原理検証の目的にスパッタ法やレーザー蒸着法が適用されている。しかしながら、現状のレーザーやスパッタ装置は薄膜超電導線材や大面積薄膜の量産を行なう上ではパワーが小さいという問題点がある。
【0007】
SQUIDや電子計算機などのエレクトロニクス応用では、高性能を有する膜を少量でも均一に作製できれば製品化が可能であるが、物理蒸着装置での製作コストが高いという、実用化にとって根本的な問題があった。
【0008】
一方、パワー応用分野では、特に大量に低コストで薄膜が作製できるプロセスが必要であるが、物理蒸着法は蒸着装置パワーの低出力によって原理検証の実験用の手法に限られていた。この原因は高温超電導薄膜の物理蒸着法に必要な大出力を有するレーザー源やスパッタ源が将来にわたっても高出力化の見通しが限定されることによる。
【0009】
現時点では、たとえばレーザー源としては出力が高々200W程度の産業用レーザーしか製品化できていない。このため、たとえば幅10mmのテープ基板上に、5μm以上の厚い超電導膜を10m/H以上の成膜速度で製作することは原理的に難しい。
【0010】
Y系超電導薄膜を大量に製作できる可能性のある手法として、たとえば特公平4−76324号公報、特公平4−76323号公報などに開示されている塗布熱分解法がある。この手法は、物理蒸着法よりも簡便な装置を用いて、線材上や単結晶基板上への厚膜が比較的容易に得られる利点を有しているが、この手法により作製された超電導膜では臨界電流密度が低いという抜本的な欠点を有している。
【0011】
たとえば、単結晶上では105〜106A/cm2(77K、0T)程度のJcが得られているが、大面積膜では膜のクラックや組成ずれなどが生じるため、大面積膜化が困難であった。クラックの発生は基板と超電導厚膜との熱膨張差や結晶のミスマッチに起因して生じる。また、組成ずれは基板上からエピタキシャル成長が不完全に生じることや熱処理によって単結晶化させる過程において不要な物質が気化する際に生じる穴の発生などに起因している。
【0012】
さらに、多結晶金属基板上では超電導膜が配向せず、104A/cm2(77K、0T)クラスのJcにとどまっていた。Jcの低い原因は、多結晶基板から成長した超電導厚膜が面内で1方向に配向しないことが原因である。これらの結果、高特性と厚膜や量産性を両立するY系超電導薄膜の手法は存在せず、超電導ケーブルや限流器などのパワー応用には、Y薄膜の適用は難しいと考えられていた。
【0013】
それゆえ本発明の目的は、従来困難であった高い超電導特性を有する長尺厚膜線材や大面積厚膜を可能とする高温超電導厚膜部材およびその製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の一の局面に従う高温超電導厚膜部材は、基板と、単結晶性の中間層と、単結晶性の超電導厚膜と、単結晶性の超電導種膜とを備えている。基板は、主表面を有し、かつ単結晶または多結晶よりなっている。中間層は、基板の主表面上に形成され、0.1μm以上3μm以下の厚みを有している。超電導厚膜は、中間層上に塗布熱分解法により形成され、0.5μm以上30μm以下の厚みを有している。超電導種膜は、中間層と超電導厚膜との間に形成されている。
【0015】
本発明の一の局面に従う高温超電導厚膜部材によれば、中間層を設けたことにより、この中間層の熱膨張係数を基板よりも超電導厚膜に近いものとすることができる。これにより、基板と超電導厚膜との熱膨張差を緩和することができ、膜のクラックを防止することが可能となり、大面積成膜が容易となる。
【0016】
また、中間層の格子定数を基板よりも超電導厚膜に近いものとすることができ、それにより基板と超電導厚膜との結晶のミスマッチによる格子歪みを緩和することができる。これによっても、膜のクラックを防止することができ、大面積成膜が容易となる。
【0017】
また、中間層を物理蒸着法などにより形成できるため、中間層の結晶配向性を良好にすることができる。このため、超電導厚膜を塗布熱分解法により形成しても、超電導厚膜の結晶配向性を良好にすることができ、大きな臨界電流密度を得ることができる。
【0018】
よって、従来困難であった高い超電導特性を有する長尺厚膜線材や大面積厚膜が可能となる。
また、超電導種膜はエピタキシャル成長する際の核生成の機能を果たすため、中間層上に超電導厚膜のエピタキシャル成長が可能となる。
【0019】
なお、中間層の厚みを0.1μm以上3.0μm以下としたのは、0.1μm未満では配向性の良い膜を得ることができず、3.0μmを超えると結晶配向性が低下してくるからである。また、超電導厚膜の厚みを0.5μm以上30μm以下としたのは、塗布熱分解法を用いれば0.5μm以上の膜厚を容易に形成でき、30μmを超えると結晶配向性が低下してくるからである。
【0020】
超電導薄膜を形成する場合、結晶軸は、「c軸の方向には揃いやすいが、面内ab軸の方向には揃いにくい」という性質がある。このため、本願において「単結晶性」の結晶とは、「c軸とともに面内ab軸も揃った、すなわちすべての結晶軸の方向が揃った」結晶を意味する。
【0021】
上記一の局面において好ましくは、中間層は、基板の熱膨張係数よりも超電導厚膜の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有しており、基板の格子定数よりも超電導厚膜の格子定数に近い格子定数を有している。
【0022】
これにより、上記と同様、従来困難であった高い超電導特性を有する長尺厚膜線材や大面積厚膜が可能となる。
【0025】
上記一の局面において好ましくは、中間層は、ジルコニウム、イッテルビウム、イットリウムおよびセリウムよりなる群から選ばれる1種以上の酸化物を含む単層または多層構造を有する。
【0026】
このように中間層の材質を適宜選択することができる。
上記一の局面において好ましくは、中間層は基板の主表面に対して10°以下の角度を持って斜めに傾いた結晶構造を有し、かつ面内の配向性が傾き角30°以下である。
【0027】
これにより良好な結晶配向性とすることができる。
本発明の他の局面に従う高温超電導厚膜部材は、基板と、単結晶性の超電導種膜と、単結晶性の超電導厚膜とを備えている。基板は、主表面を有し、かつ単結晶または多結晶よりなっている。超電導種膜は、基板の主表面上に形成されている。超電導厚膜は、超電導種膜上に塗布熱分解法により形成され、0.5μm以上30μm以下の厚みを有している。超電導種膜と超電導厚膜との材質は、REBCO123構造を有し、かつ互いに異なるRE元素を構成元素として含んでいる。
【0028】
本発明の他の局面に従う高温超電導厚膜部材によれば、塗布熱分解法では、複雑な熱処理方法が必要であるが、この超電導種膜を付与することによって、超電導種膜のない場合よりも組成ずれの少ない厚膜形成が容易になるとともに、結晶化プロセスの低温化も可能となる。さらには、複雑な熱処理による超電導厚膜の単結晶化も不要になる可能性も見出された。これにより、中間層がなくても超電導厚膜の組成ずれを防止できるため、大面積成膜が可能となる。
【0029】
よって、従来困難であった高い超電導特性を有する長尺厚膜線材や大面積厚膜が可能となる。
【0030】
上記において、超電導種膜と超電導厚膜との材質は、REBCO123構造を有し、かつ互いに異なるRE元素を構成元素として含んでいる。
【0031】
これにより、超電導種膜と超電導厚膜との超電導の組成や構成希土類元素を変えることで、超電導種膜の融点を高くしておけば、超電導厚膜を単結晶化する際の熱処理においても、種結晶は結晶分解を生じずに核生成の起点となり、超電導厚膜の単結晶化が容易になる。
【0032】
なお、本願明細書における「REBCO123構造」とは、RExBayCuz7-dにおいて、0.7≦x≦1.3、1.7≦y≦2.3、2.7≦z≦3.3であることを意味する。
【0033】
上記他の局面において好ましくは、超電導種膜の融点が超電導厚膜の融点より高い。
【0034】
これにより、超電導厚膜を単結晶化する際の熱処理においても、種結晶は結晶分解を生じずに核生成の起点となり超電導厚膜の単結晶化が容易となる。
【0035】
上記一および他の局面において好ましくは、単結晶の基板の材質は、サファイア、アルミン酸ランタン、酸化マグネシウムおよびチタン酸ストロンチウムよりなる群から選ばれる1種以上を含んでいる。
【0036】
このように基板の材質を適宜選択することが可能である。
上記一および他の局面において好ましくは、多結晶の基板の材質は、ステンレス、ハステロイ、ニッケル、銅およびアルミニウムよりなる群から選ばれる1種以上を含み、かつ200μm以下の厚みを有するフレキシブル金属である。
【0037】
このように多結晶の基板の材質を適宜選択することができる。
上記一および他の局面において好ましくは、超電導厚膜はREBCO123構造を有し、かつRE元素はホルミウムを含む。
【0038】
本発明の一の局面に従う高温超電導厚膜部材の製造方法は、以下の工程を備えている。
【0039】
まず単結晶または多結晶よりなる基板の主表面上に、0.1μm以上3μm以下の厚みを有する単結晶性の中間層が形成される。そして中間層上に、0.5μm以上30μm以下の厚みを有する単結晶性の超電導厚膜が塗布熱分解法を用いて形成される。そして、中間層の形成後であって超電導厚膜の形成前に単結晶性の超電導種膜が物理蒸着法により形成される。
【0040】
本発明の一の局面に従う高温超電導厚膜部材の製造方法によれば、中間層を設けたことにより、この中間層の熱膨張係数を基板よりも超電導厚膜に近いものとすることができる。これにより、基板と超電導厚膜との熱膨張差を緩和することができ、膜のクラックを防止することが可能となり、大面積成膜が容易となる。
【0041】
また、中間層の格子定数を基板よりも超電導厚膜に近いものにすることができ、それにより基板と超電導厚膜との結晶のミスマッチによる格子歪みを緩和することができる。よって、この点からも膜のクラックを防止することができ大面積成膜が容易となる。
【0042】
また、中間層を物理蒸着法などにより形成できるため、中間層の結晶配向性を良好にすることができる。このため、超電導厚膜を塗布熱分解法により形成しても、超電導厚膜の結晶配向性を良好にすることができ、大きな臨界電流密度を得ることができる。
【0043】
よって、従来困難であった高い超電導特性を有する長尺厚膜線材や大面積厚膜の製造が可能となる。
【0045】
この超電導種膜はエピタキシャル成長する際の核生成の機能を果たすため、中間層上に超電導厚膜のエピタキシャル成長が可能となる。
【0046】
上記一の局面において好ましくは、中間層は物理蒸着法により形成される。
これにより、中間層の結晶配向性を良好にすることができ、超電導厚膜を塗布熱分解法により形成しても超電導厚膜の結晶配向性を良好にすることができ、大きな臨界電流密度を得ることができる。
【0047】
上記一の局面において好ましくは、中間層は、原料にレーザー光を照射して原料から飛散した物質を基板の主表面上に蒸着させるレーザーアブレーション法により形成される。
【0048】
これにより、自己配向した中間層を得ることができる。
上記一の局面において好ましくは、中間層は、原料のレーザー光が照射される面に対して基板の主表面が傾いた状態でレーザーアブレーション法を行なうことにより形成される。
【0049】
このように基板傾斜成膜法(ISD:Inclined Substrate Deposition)の採用は、ランダムな結晶方位を有するさまざまな基板上においても超電導厚膜の形成を可能にするための単結晶性中間層の形成を可能とする。この場合、中間層は、結晶格子歪み緩和以外に、基板からの元素拡散の防止と超電導厚膜の結晶配向化という2つの新たな機能を果たす。
【0050】
上記一の局面において好ましくは、中間層は、塗布熱分解法単独により形成される、または塗布熱分解法により形成された後にレーザーアニール法で単結晶化されて形成される。
【0051】
この手法により、中間層を単結晶化して結晶配向性を良好にすることができる。
【0052】
上記一の局面において好ましくは、基板は線状の形態を有し、基板の一方端側が第1のロールに巻き付けられ、他方端側が第2のロールで巻き取られることにより、基板上に中間層と超電導厚膜とが順に形成される。
【0053】
これにより、線状の基板の長手方向に順に各膜を形成することが可能となる。
上記一の局面において好ましくは、基板の大きさは100cm2以上であり、基板を揺動または回転しながら中間層および超電導厚膜の少なくともいずれかが成膜される。
【0054】
これにより、100cm2以上という大面積基板に対しても各膜を形成することが可能となる。
【0055】
本発明の他の局面に従う高温超電導厚膜部材の製造方法は、以下の工程を備えている。
【0056】
まず単結晶または多結晶よりなる基板の主表面上に、単結晶性の超電導種膜が物理蒸着法により形成される。そして超電導種膜上に、0.5μm以上30μm以下の厚みを有する単結晶性の超電導厚膜が塗布熱分解法を用いて形成される。
【0057】
塗布熱分解法では、複雑な熱処理方法が必要であるが、この超電導種膜を付与することによって、超電導種膜のない場合より組成ずれの少ない超電導厚膜の形成が容易になるとともに、結晶化プロセスの低温化も可能となる。さらには、複雑な熱処理による超電導厚膜の単結晶化も不要になる可能性も見出された。これにより、中間層がなくても超電導厚膜の組成ずれを防止できるため、大面積成膜が可能となる。
【0058】
よって、従来困難であった高い超電導特性を有する長尺厚膜線材や大面積厚膜を製造することが可能となる。
【0059】
上記他の局面において好ましくは、基板は線状の形態を有し、基板の一方端側が第1のロールに巻き付けられ、他方端側が第2のロールで巻き取られることにより、基板上に超電導種膜と超電導厚膜とが順に形成される。
【0060】
これにより、線状の基板の長手方向に順に各膜を形成することが可能となる。
上記他の局面において好ましくは、基板の大きさは100cm2以上であり、基板を揺動または回転しながら超電導種膜および超電導厚膜の少なくともいずれかが成膜される。
【0061】
これにより、100cm2以上の大面積基板に対しても各膜を形成することが可能となる。
【0062】
上記一および他の局面において好ましくは、単結晶の超電導厚膜を塗布熱分解法を用いて形成する工程は、塗布熱分解法により超電導厚膜を形成した後にレーザーアニール法により単結晶化させる工程を有する。
【0063】
この手法により、超電導厚膜を単結晶化して結晶配向性を良好とすることもできる。
【0064】
上記一および他の局面において好ましくは、レーザーアニール法におけるアニール源は、0.1μm以上0.5μm以下の波長を有するエキシマレーザーまたは0.5μm以上2μm以下の波長を有するYAG(Yttrium-Aluminum Garnet)レーザーである。
【0065】
このようにアニール源を適宜選択することができる。
上記一および他の局面において好ましくは、超電導厚膜には、少なくとも仮焼結、本焼結、ポストアニールおよび酸素アニールの4つの処理が施される。
【0066】
これにより、高い超電導特性を有する超電導厚膜を得ることができる。
上記一および他の局面において好ましくは、塗布熱分解法における原料が有機金属原料を含む。
【0067】
有機金属原料では、超電導薄膜の形成に必要な原子・分子への乖離に必要なエネルギが、従来原料である炭酸塩や酸化物の混合物を焼結して形成した原料、またはそれらを溶融・凝固させた単結晶を含む原料に比較して飛躍的に小さい。このため、有機金属原料を用いることで、比較的簡易な熱処理プロセスで超電導厚膜の単結晶化が可能となる。なお、溶媒としては有機系の各種の酸を用いることが可能である。
【0068】
上記一および他の局面において好ましくは、超電導厚膜が基板の両面に形成される。
【0069】
これにより、長尺線材や大面積基板において両面で高い超電導特性を得ることができる。
【0070】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0071】
図1は、本発明の一実施の形態における高温超電導厚膜部材の構成を概略的に示す断面図である。図1を参照して、高温超電導厚膜部材5は、単結晶または多結晶よりなる基板1と、基板の主表面上に形成された単結晶性の中間層2と、中間層2上に形成された単結晶性の超電導厚膜3とを有している。
【0072】
中間層2は、0.1μm以上3μm以下の厚みT2を有し、超電導厚膜3は、0.5μm以上30μm以下の厚みT3を有している。超電導厚膜3は、塗布熱分解法により形成されている。
【0073】
中間層2は、基板1の熱膨張係数よりも超電導厚膜3の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有し、基板1の格子定数よりも超電導厚膜3の格子定数に近い格子定数を有している。
【0074】
中間層2は、基板1の主表面に対して10°以下の角度θを持って斜めに傾いた結晶2aよりなる構造を有している。また面内の配向性の傾き角が30°以下となっている。ここで「面内の配向性の傾き角」とは、「X線極点図測定におけるピーク半値幅」のことを意味しており、この値が小さいほどX線測定でのピークが鋭く、すなわち結晶の配向性が良いことになる。
【0075】
基板1が単結晶の場合、基板1の材質は、サファイア、アルミン酸ランタン、酸化マグネシウムおよびチタン酸ストロンチウムの単体もしくはこれらの任意の組合せであることが好ましい。また基板1が多結晶の場合、基板1の材質は、ステンレス、ハステロイ、ニッケル、銅およびアルミニウムの単体もしくはこれらの任意の組合せであり、かつ200μm以下の厚みを有するフレキシブル金属であることが好ましい。
【0076】
また中間層の材質は、ジルコニウム、イッテルビウム、イットリウムおよびセリウムから選択された単元素系酸化物またはそれらの複合酸化物の単層またはそれらの単元素系または多元素系物質の多層構造であることが好ましい。
【0077】
なお、図2に示すように中間層2と超電導厚膜3との間に、単結晶性の超電導種膜4が形成されていてもよく、また図3に示すように中間層2の代わりに基板1と超電導厚膜3との間に単結晶性の超電導種膜4が形成されていてもよい。
【0078】
図2および図3に示す超電導種膜4の材質と超電導厚膜3の材質とは、同じであってもよいが、共にREBCO123構造を有しかつ互いに異なるRE(希土類)元素を構成元素として含むことが好ましい。また超電導種膜4の融点が超電導厚膜3の融点よりも高くなるように超電導種膜4の材質が選ばれることが好ましい。
【0079】
また超電導厚膜3の材質は、REBCO123構造を有し、かつRE(希土類)元素がホルミウムを含むことが好ましい。
【0080】
次に本実施の形態の製造方法について説明する。
図4は、本発明の一実施の形態における高温超電導厚膜部材の製造方法を示す図である。図4を参照して、まず単結晶または多結晶よりなる基板1が準備され、その基板1上に、中間層2が形成される(ステップS1)。この後、塗布熱分解法により超電導厚膜3が形成されて高温超電導厚膜部材5が製造される。この塗布熱分解法では、まず有機金属原料である金属有機化合物を有機溶媒に溶かした溶液が調製される(ステップS2)。その後、その溶液を中間層2上に塗布した後に乾燥することで、金属含有化合物の厚膜が形成される(ステップS3)。この金属含有化合物の厚膜を加熱焼成することにより超電導厚膜3が形成されて(ステップS4)、高温超電導厚膜部材5が得られる。
【0081】
中間層2は、0.1μm以上3μm以下の厚みで形成され、超電導厚膜3は0.5μm以上30μm以下の厚みで形成される。
【0082】
なお、中間層2の形成工程(ステップS1)の後であって、超電導厚膜の形成工程(ステップS2〜S4)の前に、超電導厚膜3と異なる材質よりなる単結晶性の超電導種膜4が中間層2上に物理蒸着法により形成されることが好ましい。
【0083】
また中間層2は、物理蒸着法により形成されることが好ましく、この物理蒸着法は、原料にレーザー光を照射して原料から飛散した物質を基板の主表面上に蒸着させるレーザーアブレーション法であることが好ましい。さらに、このレーザーアブレーション法は、図5に示すように原料(ターゲット)11のレーザー光13が照射される面に対して基板11の主表面が所定角度αだけ傾いた状態で行なわれることが好ましい。この場合、基板1の所定部分がマスク12で覆われていてもよい。
【0084】
この基板傾斜レーザー蒸着法(図5)のプロセスとしては、たとえば100mTorr程度の低酸素雰囲気において、エキシマレーザーを用いて高密度のレーザー光を実現するために光学系でビームを絞り焼結体ターゲット11へ1〜5J/cm2のエネルギ密度でレーザー光13を照射することで、アブレーションを生じさせ、基板1を加熱させながらアブレーションで生じるプラズマを基板1に当てることによってアズデポ膜が生成され、成膜された時点で基本的な単結晶性構造が形成される。
【0085】
このような物理蒸着法を用いて中間層2を形成することにより、ハステロイや耐熱ステンレスなどの耐酸化性に優れたフレキシブルな金属基板1上にたとえばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)や酸化セリウム(CeO2)などの酸化物を成膜することができる。
【0086】
また、レーザー蒸着法以外の成膜方法以外に、スパッタや電子ビームなどの物理蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの化学蒸着法、MOD(Metal Organic Deposition)法などの溶液法などが用いられてもよい。また中間層2は、塗布熱分解法単独により形成されてもよく、または塗布熱分解法により形成された後にレーザーアニール法で単結晶化されて形成されてもよい。
【0087】
なお、図4において中間層2の代わりに超電導種膜4が形成されてもよく(ステップS1)、この場合には、超電導厚膜3は超電導種膜4上に形成されることになる(ステップS2〜S4)。
【0088】
この超電導種膜4の材質については、構成元素は限定されないが、77Kでの特性を考えた場合にはYBCO123構造またはREBCO123構造が最も好ましい適用対象となる。レーザー蒸着法のプロセスとしては、たとえばYBCO123構造およびREBCO123構造の超電導薄膜の場合では、100mTorr程度の低酸素雰囲気において、エキシマレーザーを用いて、高密度のレーザー光を実現するために光学系でビームを絞り焼結体ターゲットへ1〜5J/cm2のエネルギ密度でレーザーを照射することで、アブレーションを生じさせ、基板を600〜800℃程度に加熱させながらアブレーションで生じるプラズマを基板に当てることによってアズデポ膜が生成され、成膜された時点で基本的な超電導の結晶構造が形成される。
【0089】
なお単結晶の超電導厚膜を塗布熱分解法を用いて形成する方法として、塗布熱分解法により超電導厚膜を形成した後に、レーザーアニール法により単結晶化させる手法がとられてもよい。
【0090】
レーザーアニール法に用いられる具体的なレーザーの種類としては、エキシマレーザーやYAGレーザーであることが現実的である。エキシマレーザーの波長は、その利用するガスの種類によっても異なるが、0.1μm以上0.5μm以下である。詳しくは、F2で157nm、ArFで193nm、KrFで248nm、XeClで308nm、XeFで351nmが実現できており、出力の現状の最高値は150Wから200Wである。YAGレーザーの波長は、0.5μm以上2μm以下であり、典型的には1.06μmである。YAGレーザーは、近年半導体結晶の進展とともに、大出力化・長時間化発振の開発が急速に進んでおり、現時点でもLD励起で3kWの出力のものが販売されている。大出力レーザーとしては、もちろんYAGに限定されることはなく、炭酸ガスレーザー(10.6μm)などを適用することもできる。また、短波長レーザーもエキシマレーザーに限らず、0.5μm以下で数百Wクラスのレーザーが使用できれば、エキシマレーザーに限定されることはない。
【0091】
また基板1が線状(テープ状を含む)場合には、図6に示すように一方端側をロール21に巻付けて他方端側をロール22で巻取ることにより、チャンバ23内で中間層2もしくは超電導種膜4が基板1上に形成され、チャンバ24内で超電導厚膜3が形成されてもよい。
【0092】
また、基板1の大きさが100cm2以上の場合には、基板1を図7の矢印方向に示すように揺動させるか、または図8の矢印で示すように回転させながら中間層2または超電導種膜4と超電導厚膜3とが形成されることが好ましい。
【0093】
なお、超電導厚膜3には、少なくとも仮焼結、本焼結、ポストアニールおよび酸素アニールの4つの処理が施されることが好ましく、また超電導厚膜3は基板1の両面に形成されてもよい。
【0094】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0095】
(実施例1)
サファイア単結晶基板上に酸化セリウムの中間層をレーザーアブレーション法により形成した。中間層の厚みは1μmであった。
【0096】
この中間層上に塗布熱分解法でYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導厚膜を形成した。出発原料は、Y:Ba:Cuの組成比が1:2:3になるように各元素のナフテン酸塩をエタノール溶媒に溶かしたものを調合し、塗布、熱処理、酸素アニールを施すことで超電導厚膜を形成した。形成した超電導膜について、膜厚と臨界電流密度とを測定した。表1に超電導膜の膜厚と臨界電流密度との関係を示す。
【0097】
【表1】
Figure 0004433589
【0098】
表1の結果より、レーザーアブレーション法で所定の中間層を形成した後、塗布熱分解法で超電導厚膜を成膜すれば、0.5μm以上30μm以下の超電導厚膜において優れた超電導特性が得られることが明らかになった。
【0099】
(実施例2)
サファイア単結晶基板上に酸化セリウムの中間層をレーザーアブレーション法により形成した。中間層の厚みは、1μmであった。この中間層の上にレーザーアブレーション法を用いてYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導種膜を形成した。超電導種膜の膜厚は1μmであった。
【0100】
さらにこの超電導種膜の上に塗布熱分解法でYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導厚膜を形成した。出発原料は、Y:Ba:Cuの組成比が1:2:3になるように各元素のナフテン酸塩をエタノール溶媒に溶かしたものを調合し、塗布、熱処理、酸素アニールを施すことで超電導厚膜を形成した。形成した超電導膜について、膜厚と臨界電流密度とを測定した。表2に塗布熱分解法で形成した超電導膜の膜厚と臨界電流密度との関係を示す。
【0101】
【表2】
Figure 0004433589
【0102】
表2の結果より、レーザーアブレーション法で所定の中間層を形成した後、レーザーアブレーション法で超電導種膜を形成し、さらにその上に塗布熱分解法で超電導膜を成膜すれば、0.5μm以上30μm以下の超電導厚膜において優れた超電導特性が得られることが明らかになった。
【0103】
(実施例3)
サファイア単結晶基板上に酸化セリウムの中間層をレーザーアブレーション法により形成した。中間層の厚みは、1μmであった。この中間層の上にレーザーアブレーション法を用いてYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導種膜を形成した。超電導種膜の膜厚は1μmであった。
【0104】
この超電導種膜の上に、出発原料としてY:Ba:Cuの組成比が1:2:3になるように各元素のナフテン酸塩をエタノール溶媒に溶かした溶液を調合し、塗布した。さらにこの塗布した面にレーザーを照射すると、塗布面の溶媒が除去されて結晶化が起こり、超電導厚膜が形成できた。この時用いたレーザーは、波長248nmのKrFエキシマレーザーであり、レーザーエネルギ密度0.1J/cm2で塗布面に照射した。このレーザー照射により形成した超電導膜について、膜厚と臨界電流密度とを測定した。表3に超電導膜の膜厚と臨界電流密度との関係を示す。
【0105】
【表3】
Figure 0004433589
【0106】
表3の結果より、レーザーアブレーション法で所定の中間層を形成した後、レーザーアブレーション法で超電導種膜を形成し、さらにその上に超電導材料の溶液を塗布したものにレーザー照射して超電導膜を形成すれば、0.5μm以上30μm以下の超電導厚膜において優れた超電導特性が得られることが明らかとなった。
【0107】
(実施例4)
サファイア単結晶基板上にセリウムのナフテン酸塩をエタノール溶媒に溶かしたものを塗布し、熱処理、酸素アニール処理を施すことで酸化セリウムの中間層を形成した。中間層の厚みは、1μmであった。この中間層の上に、レーザーアブレーション法を用いてYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導種膜を形成した。超電導種膜の膜厚は1μmであった。
【0108】
この超電導種膜の上に、塗布熱分解法でYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導厚膜を形成した。出発原料はY:Ba:Cuの組成比が1:2:3になるように各元素のナフテン酸塩をエタノール溶媒に溶かしたものを調合し、塗布、熱処理、酸素アニールを施すことで超電導厚膜を形成した。塗布熱分解法で形成した超電導膜について、膜厚と臨界電流密度とを測定した。表4に超電導膜の膜厚と臨界電流密度との関係を示す。
【0109】
【表4】
Figure 0004433589
【0110】
表4の結果より、塗布熱分解法で所定の中間層を形成した後、レーザーアブレーション法で超電導種膜を形成し、さらにその上に塗布熱分解法で超電導膜を成膜することにより、0.5μm以上30μm以下の超電導厚膜において優れた超電導特性の得られることが明らかとなった。
【0111】
(実施例5)
アルミン酸ランタン単結晶基板上にレーザーアブレーション法を用いてYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導種膜を形成した。超電導種膜の膜厚は1μmであった。
【0112】
さらにこの超電導種膜の上に塗布熱分解法でYBa2Cu37-dの組成で表わされる超電導厚膜を形成した。出発原料はY:Ba:Cuの組成比が1:2:3になるように各元素のナフテン酸塩をエタノール溶媒に溶かしたものを調合し、塗布、熱処理、酸素アニールを施すことで超電導厚膜を形成した。形成した超電導膜について、膜厚と臨界電流密度とを測定した。表5に塗布熱分解法で形成した超電導膜の膜厚と臨界電流密度との関係を示す。
【0113】
【表5】
Figure 0004433589
【0114】
表5の結果より、レーザーアブレーション法で超電導種膜を形成し、さらにその上に塗布熱分解法で超電導膜を成膜することにより、0.5μm以上30μm以下の超電導厚膜において優れた超電導特性が得られることが明らかとなった。
【0115】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0116】
【発明の効果】
本発明の一および他の局面に従う高温超電導厚膜部材は、以上述べたように薄膜線材や大面積膜の量産効果を得るのに特に有効であるが、たとえば長尺イットリウム系線材のリペア技術にも適している。たとえば金属基板上に長尺線材を作製しても部分的に特性の低い箇所が生じるが、本発明を用いればその部分に超電導膜を形成可能であり、律速工程の改善にも本発明は有効である。
【0117】
また、限流器などへの適用には、大面積の膜が要求される。一般に物理蒸着法では一度に成膜できる面積が小さいため、工業的に低コストで均一な高特性を得るためには、蒸着面積を大きくする必要がある。本発明は、基板の揺動や回転を組合せることによって大面積膜の形成にも適した手法となる。
【0118】
本発明では、フレキシブルな金属基板上、もしくは単結晶または多結晶あるいは金属基板上に中間層を介して成膜された線材または大面積膜が好ましい対象となる。フレキシブル金属基板上の長尺線材で大電流を流すことができれば、ケーブルやマグネットなど産業用途に与えるインパクトは非常に大きい。また、ビスマス系銀被覆線材と比較しても、77Kの磁場下における臨界電流密度Jcは飛躍的に高く、また過冷却窒素や冷凍機の冷却で77K以下に冷却して使用する環境下であれば、磁場特性はビスマス系銀被覆線材に比較して磁場強度にもよるが一桁程度のオーダで大きい。このため、実用材料としてその量産性が可能になればコスト的に一桁程度ビスマス系銀被覆超電導線材を上回ってもコストメリットが出てくる。
【0119】
また、ビスマス系銀被覆線材では、達成できない機器応用も可能となる。たとえば、SN転位型限流器は、ビスマス系銀被覆線材では構築不可能であり、大面積を有するイットリウム系膜が低コストかつ高均一特性で大量生産が可能になれば、落雷などによる系統事故発生時のリスク分散が可能となることから、今後分散化が進む電力系統の信頼性は飛躍的に高まるばかりでなく、分散化電源の導入も効果的に促進され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態における高温超電導厚膜部材の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】 本発明の一実施の形態における高温超電導厚膜部材の他の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】 本発明の一実施の形態における高温超電導厚膜部材のさらに他の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】 本発明の一実施の形態における高温超電導厚膜部材の製造方法を示す図である。
【図5】 基板傾斜レーザー蒸着法を説明するための断面図である。
【図6】 基板が線状である場合の製造方法を説明するための図である。
【図7】 基板を揺動させる様子を示す斜視図である。
【図8】 基板を回転させる様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 基板、2 中間層、3 超電導厚膜、4 超電導種膜、5 高温超電導厚膜部材。

Claims (25)

  1. 主表面を有し、かつ単結晶または多結晶よりなる基板と、
    前記基板の主表面上に形成された、0.1μm以上3μm以下の厚みを有する単結晶性の中間層と、
    前記中間層上に塗布熱分解法により形成された、0.5μm以上30μm以下の厚みを有する単結晶性の超電導厚膜と、
    前記中間層と前記超電導厚膜との間に形成された単結晶性の超電導種膜とを備えた、高温超電導厚膜部材。
  2. 前記中間層は、前記基板の熱膨張係数よりも前記超電導厚膜の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有しており、前記基板の格子定数よりも前記超電導厚膜の格子定数に近い格子定数を有している、請求項1に記載の高温超電導厚膜部材。
  3. 前記中間層は、前記基板の主表面に対して10°以下の角度を持って斜めに傾いた結晶構造を有し、かつ面内の配向性の傾き角が30°以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高温超電導厚膜部材。
  4. 前記中間層は、ジルコニウム、イッテルビウム、イットリウムおよびセリウムよりなる群から選ばれる1種以上の酸化物を含む単層または多層構造を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高温超電導厚膜部材。
  5. 主表面を有し、かつ単結晶または多結晶よりなる基板と、
    前記基板の主表面上に形成された単結晶性の超電導種膜と、
    前記超電導種膜上に塗布熱分解法により形成された、0.5μm以上30μm以下の厚みを有する単結晶性の超電導厚膜とを備え
    前記超電導種膜と前記超電導厚膜との材質は、REBCO123構造を有し、かつ互いに異なるRE(希土類)元素を構成元素として含んでいる、高温超電導厚膜部材。
  6. 前記超電導種膜と前記超電導厚膜との材質は、REBCO123構造を有し、かつ互いに異なるRE(希土類)元素を構成元素として含んでいることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の高温超電導厚膜部材。
  7. 前記超電導種膜の融点が前記超電導厚膜の融点より高いことを特徴とする、請求項5または6に記載の高温超電導厚膜部材。
  8. 単結晶の前記基板の材質は、サファイア、アルミン酸ランタン、酸化マグネシウムおよびチタン酸ストロンチウムよりなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の高温超電導厚膜部材。
  9. 多結晶の前記基板の材質は、ステンレス、ハステロイ、ニッケル、銅およびアルミニウムよりなる群から選ばれる1種以上を含み、かつ200μm以下の厚みを有するフレキシブル金属であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の高温超電導厚膜部材。
  10. 前記超電導厚膜の材質は、REBCO123構造を有し、かつRE(希土類)元素はホルミウムを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の高温超電導厚膜部材。
  11. 単結晶または多結晶よりなる基板の主表面上に、0.1μm以上3μm以下の厚みを有する単結晶性の中間層を形成する工程と、
    前記中間層上に、0.5μm以上30μm以下の厚みを有する単結晶性の超電導厚膜を塗布熱分解法を用いて形成する工程と、
    前記中間層の形成後であって前記超電導厚膜の形成前に、単結晶性の超電導種膜を物理蒸着法により形成する工程とを備えた、高温超電導厚膜部材の製造方法。
  12. 前記中間層は物理蒸着法により形成されることを特徴とする、請求項11に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  13. 前記中間層は、原料にレーザー光を照射して前記原料から飛散した物質を前記基板の主表面上に蒸着させるレーザーアブレーション法により形成されることを特徴とする、請求項12に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  14. 前記中間層は、前記原料のレーザー光が照射される面に対して前記基板の主表面が傾いた状態で前記レーザーアブレーション法を行なうことにより形成されることを特徴とする、請求項13に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  15. 前記中間層は、塗布熱分解法単独により形成される、または塗布熱分解法により形成された後にレーザーアニール法で単結晶化されて形成されることを特徴とする、請求項11に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  16. 前記基板は線状の形態を有し、前記基板の一方端側が第1のロールに巻き付けられ、他方端側が第2のロールで巻き取られることにより、前記基板上に前記中間層と前記超電導厚膜とを順に形成することを特徴とする、請求項11に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  17. 前記基板の大きさは100cm2以上であり、前記基板は揺動または回転しながら前記中間層および前記超電導厚膜の少なくともいずれかを成膜されることを特徴とする、請求項11に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  18. 単結晶または多結晶よりなる基板の主表面上に、単結晶性の超電導種膜を物理蒸着法により形成する工程と、
    前記超電導種膜上に、0.5μm以上30μm以下の厚みを有する単結晶性の超電導厚膜を塗布熱分解法を用いて形成する工程とを備えた、高温超電導厚膜部材の製造方法。
  19. 前記基板は線状の形態を有し、前記基板の一方端側が第1のロールに巻き付けられ、他方端側が第2のロールで巻き取られることにより、前記基板上に前記超電導種膜と前記超電導厚膜とを順に形成することを特徴とする、請求項18に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  20. 前記基板の大きさは100cm2以上であり、前記基板は揺動または回転しながら前記超電導種膜および前記超電導厚膜の少なくともいずれかを成膜されることを特徴とする、請求項18または19に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  21. 単結晶の前記超電導厚膜を塗布熱分解法を用いて形成する前記工程は、前記塗布熱分解法により超電導厚膜を形成した後に、レーザーアニール法により単結晶化させることを特徴とする、請求項11または18に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  22. 前記レーザーアニール法におけるアニール源は、0.1μm以上0.5μm以下の波長を有するエキシマレーザーまたは0.5μm以上2μm以下の波長を有するYAGレーザーであることを特徴とする、請求項21に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  23. 前記超電導厚膜には、少なくとも仮焼結、本終結、ポストアニールおよび酸素アニールの4つの処理が施されることを特徴とする、請求項11または18に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  24. 前記塗布熱分解法における原料が有機金属原料を含むことを特徴とする、請求項11または18に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
  25. 前記超電導厚膜が前記基板の両面に形成される、請求項11または18に記載の高温超電導厚膜部材の製造方法。
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