本発明の光学フィルムは、高配向性樹脂と、有機無機複合粒子とを含んでいる。
高配向性樹脂は、それのみから公知の方法によってフィルムに成形した場合に、芳香環などを含む、配向性のモノマーユニットが一定方向に配向される樹脂と定義される。より具体的には、高配向性樹脂は、それを溶媒に溶解して調製した塗布液を塗布し、延伸することなく成膜したフィルムにおいて、配向性ユニットが一定方向に配向される樹脂と定義される。
なお、高配向性樹脂の配向性の程度、つまり、配向度は、高配向性樹脂から成膜されるフィルムの厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2、および、フィルムの面内方向(厚み方向に直交する方向)の複屈折ΔNxyによって示される。
上記したフィルムの厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2としては、例えば、1×10−3〜50×10−3、好ましくは、5×10−3〜25×10−3である。また、フィルムの面内方向の複屈折ΔNxyは、例えば、10×10−6〜50×10−6、好ましくは、12×10−6〜25×10−6である。
なお、ΔNxzは、フィルムの遅相軸方向(面内における屈折率が最大になる方向)xの屈折率nxと厚み方向zの屈折率nzとの差である。
また、ΔNyzは、フィルムの進相軸方向(面内方向において、遅相軸に垂直な方向)yの屈折率nyと厚み方向の屈折率nzとの差である。
また、ΔNxyは、フィルムの遅相軸方向xの屈折率nxと進相軸方向yの屈折率nyとの差である。
具体的には、高配向性樹脂から成膜されるフィルムでは、ΔNxzおよびΔNyzが、例えば、0.5×10−3〜50×10−3である。
なお、複屈折(ΔNxy、ΔNyzおよびΔNxz)は、偏光・位相差解析/測定システムにより測定される。
高配向性樹脂は、例えば、配向性のモノマーユニットとして芳香環を含有しており、そのような高配向性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族系ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリイミド樹脂としては、例えば、芳香族系ポリエーテルイミド樹脂、芳香族系ポリアミドイミド樹脂などの芳香族系ポリイミド樹脂が挙げられる。
高配向性樹脂としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、ポリエステル樹脂、とりわけ好ましくは、光学フィルムの機械強度および耐熱性の観点から、ポリアリレートが挙げられる。
ポリアリレートは、例えば、芳香族ジカルボン酸と2価フェノールとのエステル反応により得られるポリアリールエステルである。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、またはそれらの誘導体などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、単独使用または併用することができる。
2価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルメタンまたはそれらの誘導体などが挙げられる。2価フェノールは、単独使用または併用することができる。
エステル反応では、芳香族ジカルボン酸と2価フェノールとを、それらのモル数が実質的に同一となるように配合して、それらを公知の反応条件で反応させる。
有機無機複合粒子は、無機粒子の表面に有機基を有する粒子である。具体的には、有機無機複合粒子は、無機粒子が有機化合物により表面処理されることによって、得られる。
無機粒子を形成する無機化合物(無機原料)としては、例えば、酸化物、複合酸化物、炭酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
酸化物は、酸素と、酸素以外の1つの元素との化合物であって、酸素以外の1つの元素(酸素と化合する元素)としては、特に限定されず、例えば、Sc、YなどのIIIb属元素(長周期型周期表、以下同様。)、例えば、Ti、Zr、HfなどのIVb属元素、例えば、V、Nb、TaなどのVb属元素、例えば、Cr、Mo、WなどのVIb属元素、例えば、Mn、ReなどのVIIb属元素、例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、PtなどのVIIIb属元素、例えば、Cu、Ag、AuなどのIb属元素、例えば、Zn、Cd、HgなどのIIb属元素、例えば、B、Al、Ga、In、TlなどのIIIa属元素、例えば、Si、Ge、Sn、PbなどのIVa属元素、例えば、As、Sb、BiなどのVa属元素、例えば、Te、PoなどのVIa属元素、例えば、La、Ce、Pr、Ndなどのランタニド系列元素、例えば、Ac、Th、Uなどのアクチニウム系列元素などが挙げられる。
酸素以外の元素のうち、好ましくは、金属が挙げられ、さらに好ましくは、ランタニド系列元素が挙げられる。
酸化物として、例えば、酸化金属が挙げられ、好ましくは、酸化セリウム(二酸化セリウム、酸化セリウム(IV)、セリア:CeO2)などが挙げられる。
酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。
複合酸化物は、酸素と、酸素以外の複数の元素との化合物であって、酸素以外の複数の元素(酸素と化合する複数の元素)としては、上記した酸化物における酸素以外の元素、第I属元素、および、第II属元素からなる元素から選択される少なくとも2種以上の組合せが挙げられる。
第I元素としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属が挙げられる。また、第II属元素としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raなどのアルカリ土類金属が挙げられる。
酸素以外の複数の元素の組合せとして、好ましくは、第II属元素とIVb属元素との組合せ、第II属元素とVIIIb属元素との組合せ、第II属元素とIVa属元素との組合せなど、少なくとも第II属元素を含む組合せが挙げられる。
少なくとも第II属元素を含む複合酸化物としては、例えば、チタン酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アルカリ土類金属塩、鉄酸アルカリ土類金属塩、スズ酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
複合酸化物酸化物として、好ましくは、チタン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。
チタン酸アルカリ土類金属塩としては、例えば、チタン酸ベリリウム(BeTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ラジウム(RaTiO3)などが挙げられる。
複合酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。
炭酸塩は、炭酸イオン(CO3 2−)と、金属のカチオンとの化合物(より具体的には、炭酸(H2CO3)の水素原子が金属と置換した化合物)であって、炭酸塩に含まれる金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
金属のうち、好ましくは、アルカリ土類金属が挙げられる。
具体的には、炭酸塩としては、好ましくは、アルカリ土類金属を含む炭酸塩が挙げられ、そのような炭酸塩としては、例えば、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウムなどが挙げられ、好ましくは、炭酸ストロンチウムが挙げられる。
これら炭酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
硫酸塩は、硫酸イオン(SO4 2−)と、金属のカチオンとの化合物(より具体的には、硫酸(H2SO4)の水素原子が金属と置換した化合物)であって、硫酸塩に含まれる金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
金属のうち、好ましくは、アルカリ土類金属が挙げられる。
具体的には、硫酸塩としては、好ましくは、アルカリ土類金属を含む硫酸塩が挙げられ、そのような硫酸塩としては、例えば、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウムなどが挙げられ、好ましくは、硫酸バリウムが挙げられる。
これら硫酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
有機化合物(有機原料)は、例えば、無機粒子の表面に有機基を導入する(配置させる)するための有機基導入化合物であって、無機化合物の表面と結合可能な結合基と、結合基に結合される有機基とを含んでいる。
結合基としては、無機粒子の種類に応じて適宜選択され、例えば、カルボキシル基、リン酸基(−PO(OH)2、ホスホノ基)、アミノ基、スルホ基などの官能基が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基が挙げられる。
これら結合基は、有機化合物に1つあるいは複数含まれる。具体的には、結合基は、有機基が長鎖状である場合には、有機基の末端または側鎖に結合されている。
有機基は、例えば、疎水基および/または親水基を含んでいる。
疎水基として、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニルアルキレン基、アリール基、アラルキル基などの炭素数4〜20の炭化水素基が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルへキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシルなどの、炭素数4〜20の直鎖または分岐アルキル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数6〜18の直鎖アルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、イコセニルなどの炭素数4〜20のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニルなどの炭素数4〜20のアルキニル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどの炭素数4〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
シクロアルケニルアルキレン基としては、例えば、ノルボルネンデシル(ノルボネリルデシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル−デシル)などの炭素数7〜20のシクロアルケニルアルキレン基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、キシリル、ナフチル、ビフェニルなどの炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチル、フェニルヘキシル、フェニルヘプチル、ジフェニルメチルなどの炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
疎水基のうち、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基などが挙げられ、さらに好ましくは、アルキル基、アラルキル基が挙げられる。
有機基が疎水基を含んでいる場合には、有機化合物(有機基導入化合物)は、無機粒子に疎水性を付与する疎水化有機化合物として供される。
そのような疎水化有機化合物としては、例えば、脂肪酸が挙げられ、そのような脂肪酸としては、例えば、飽和脂肪酸(例えば、ヘキサン酸、デカン酸など)などのアルキル基含有化合物、例えば、不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸など)などのアルケニル基含有化合物が挙げられる。また、疎水化有機化合物としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば、6−フェニルヘキサン酸)などのアラルキル基含有化合物なども挙げられる。
有機基は、親水基を含んでいる場合には、その親水基と、親水基に結合される上記した炭化水素基とを含む親水基含有有機基である。
親水基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホ基、カルボニル基などが挙げられる。親水基は、有機化合物において1つあるいは複数含まれている。親水基は、炭化水素基の末端(結合に結合される一端と逆側の他端)および/または側鎖に結合されている。
親水基含有有機基としては、例えば、カルボキシル基含有有機基、ヒドロキシル基含有有機基、リン酸基含有有機基、アミノ基含有有機基、スルホ基含有有機基、カルボニル基含有有機基などが挙げられる。
カルボキシル基含有有機基としては、例えば、3−カルボキシプロピル、6−カルボキシヘキシルなどのカルボキシ炭化水素基などが挙げられる。
ヒドロキシル基含有有機基としては、4−ヒドロキシフェニル、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピルなどのヒドロキシ炭化水素基などが挙げられる。
リン酸基含有有機基としては、例えば、6−ホスホノヘキシルなどのホスホノ炭化水素基などが挙げられる。
アミノ基含有有機基としては、例えば、6−アミノヘキシルなどのアミノ炭化水素基などが挙げられる。
スルホ基含有有機基としては、例えば、6−スルホヘキシルなどのスルホ炭化水素基などが挙げられる。
カルボニル基含有有機基としては、例えば、4−オキソペンチルなどのオキソ炭化水素基などが挙げられる。
有機基が親水基および炭化水素基を含んでいる場合(つまり、親水基含有有機基である場合)には、有機化合物(有機基導入化合物)は、無機粒子に親水性を付与する親水化有機化合物として供される。
そのような親水化有機化合物としては、例えば、ジカルボン酸(例えば、プロパン二酸(マロン酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)など)などのカルボキシル基含有化合物、例えば、モノヒドロキシルカルボン酸(例えば、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸など)などのヒドロキシル基含有化合物、例えば、モノホスホノカルボン酸(例えば、6−ホスホノヘキサン酸など)などのリン酸基含有化合物、例えば、モノアミノカルボン酸(例えば、6−アミノヘキサン酸など)などのアミノ基含有有機化合物、例えば、モノスルホカルボン酸(例えば、6−スルホヘキサン酸など)などのスルホ基含有化合物、例えば、モノカルボニルカルボン酸(例えば、4−オキソ吉草酸など)などのカルボニル基含有化合物などが挙げられる。
上記した有機基は、有機無機複合粒子における無機粒子の表面に存在している。つまり、有機基は、無機粒子の表面を被覆している。
上記した有機無機複合粒子は、無機化合物と上記した有機化合物とを、反応処理、好ましくは、高温処理することによって得ることができる。
具体的には、無機化合物および有機化合物を水中で高圧下において高温処理する(水熱合成:水熱反応)か、または、無機化合物を有機化合物中で高温処理(有機化合物中での高温処理)することにより、有機無機複合粒子を得る。つまり、無機化合物により形成される無機粒子の表面を有機化合物で表面処理することにより、有機無機複合粒子を得る。
水熱合成では、例えば、上記した無機化合物と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる(第1の水熱合成)。
すなわち、まず、無機化合物、有機化合物および水を耐圧性の密閉容器に投入し、それらを加熱することにより、反応系を高温および高圧下に調製する。
無機化合物としては、上記した無機化合物と同様のものが挙げられ、好ましくは、酸化物または炭酸塩が挙げられる。
各成分の配合割合は、無機化合物100質量部に対して、有機化合物が、例えば、5〜160質量部、好ましくは、10〜110質量部であり、水が、例えば、100〜1000質量部、好ましくは、200〜700質量部である。
なお、有機化合物の密度が、通常、0.8〜1.1g/mLであることから、有機化合物の配合割合は、無機化合物100gに対して、例えば、10〜150mL、好ましくは、20〜100mLである。
また、有機化合物の配合モル数は、無機化合物1モルに対して、例えば、0.01〜1000モル、好ましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
また、水の密度が、通常、1g/mL程度であることから、水の配合割合は、無機化合物100gに対して、例えば、100〜1000mL、好ましくは、200〜700mLである。
水熱反応における反応条件は、具体的には、加熱温度が、例えば、100〜500℃、好ましくは、200〜400℃である。また、圧力が、例えば、10〜50MPa、好ましくは、20〜40MPaである。また、反応時間が、例えば、1〜200分間、好ましくは、3〜150分間である。
なお、上記の反応において、得られる反応物は、主に水中に沈殿する沈殿物と、密閉容器の内壁に付着する付着物とを含んでいる。
沈殿物は、例えば、反応物を、重力または遠心力場によって、沈降させる沈降分離によって得る。好ましくは、遠心力場によって沈降させる遠心沈降(遠心分離)によって、反応物の沈殿物として得る。
また、付着物は、例えば、へら(スパーテル)などによって、回収する。
これにより、有機無機複合粒子を得る。
また、上記した元素の水酸化物と、有機化合物とを水熱合成させることにより、無機化合物が酸化物である有機無機複合粒子を得ることができる(第2の水熱合成)。
水酸化物に含まれる元素(水酸化物イオン(OH−)と化合するカチオンを構成する元素。具体的には、金属。)としては、上記した酸化物における酸素以外の元素と同様の元素が挙げられ、好ましくは、IVb属元素、IIIa属元素、ランタニド系列元素が挙げられる。
水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化チタン(Ti(OH)4)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化セリウム(Ce(OH)4)などが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、上記した第1の水熱合成に用いられる有機化合物と同様のものが挙げられる。
そして、第2の水熱合成では、水酸化物と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
各成分の配合割合は、水酸化物100質量部に対して、有機化合物が、例えば、4〜550質量部、好ましくは、15〜330質量部であり、水が、例えば、50〜2500質量部、好ましくは、100〜500質量部である。
また、有機化合物の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、5〜500mL、好ましくは、20〜300mLであり、有機化合物の配合モル数は、水酸化物1モルに対して、例えば、0.01〜10000モル、好ましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
また、水の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、50〜2500mL、好ましくは、100〜500mLである。
第2の水熱合成における反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
これにより、有機無機複合粒子を得る。
また、上記した第2の水熱合成の処方において、各成分に加えて、炭酸源を配合することにより、無機化合物が炭酸塩である有機無機複合粒子を得ることもできる(第3の水熱合成)。
炭酸源としては、例えば、蟻酸および/または尿素が挙げられる。
水酸化物は、上記した第2の水熱合成で例示した水酸化物と同様のものが用いられる。また、有機化合物は、上記した第1の水熱合成で例示した有機化合物と同様のものが用いられる。
第3の水熱合成では、水酸化物と、炭酸源と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
炭酸源の配合割合は、水酸化物100質量部に対して、例えば、5〜140質量部、好ましくは、10〜70質量部である。
なお、炭酸源の密度が、通常、1.1〜1.4g/mLであることから、炭酸源の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、5〜100mL、好ましくは、10〜50mLである。また、炭酸源の配合モル数を、水酸化物1モルに対して、例えば、0.4〜100モル、好ましくは、1.01〜10.0モル、さらに好ましくは、1.05〜1.30モルに設定することもできる。なお、水酸化物、有機化合物および水の配合割合は、上記した第2の水熱合成のそれらの配合割合と同一である。
第3の水熱合成における反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
さらに、水酸化物と、金属錯体と、有機化合物とを水熱合成させることにより、無機化合物が炭酸塩である有機無機複合粒子を得ることもできる(第4の水熱合成)。
水酸化物としては、第2の水熱合成で例示した水酸化物と同様のものが挙げられる。また、有機化合物としては、第1の水熱合成で例示した有機化合物と同様のものが挙げられる。
金属錯体に含まれる金属元素は、上記した水酸化物に含まれる元素および酸素と複合酸化物を構成する元素であり、例えば、チタン、鉄、スズ、ジルコニウムなどの金属が挙げられる。好ましくは、チタンが挙げられる。
金属錯体の配位子としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸などのモノヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
金属錯体としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸チタネートなどが挙げられる。なお、金属錯体は、上記した金属元素および配位子から、公知の方法によって、得ることができる。
有機化合物は、上記した第1の水熱合成に用いられる有機化合物と同様のものが挙げられる。
そして、第4の水熱合成では、上記した水酸化物と、金属錯体と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
各成分の配合割合は、金属錯体100質量部に対して、水酸化物が、例えば、1〜50質量部、好ましくは、5〜30質量部であり、有機化合物が、例えば、4〜550質量部、好ましくは、15〜330質量部であり、水が、例えば、200〜1000質量部、好ましくは、300〜700質量部である。
なお、有機化合物の配合割合は、金属錯体100gに対して、例えば、5〜500mL、好ましくは、20〜300mLであり、有機化合物の配合モル数は、水酸化物1モルに対して、0.01〜1000モルに設定することもできる。
また、水の配合割合は、金属錯体100gに対して、例えば、200〜1000mL、好ましくは、300〜700mLである。
第4の水熱合成の反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
さらにまた、上記した水熱合成(第1〜第4の水熱合成)を、pH調整剤の存在下で実施することもできる。
pH調整剤としては、アルカリ、酸が挙げられる。
アルカリとしては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ、例えば、アンモニアなどの有機アルカリなどが挙げられる。また、酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸、例えば、蟻酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。
好ましくは、アルカリが用いられる。
pH調整剤によって、反応系のpHを、例えば、8〜12に設定する。
これによって、得られる有機無機複合粒子の最大長さの平均L(後述)を所望の範囲、より具体的には、より小さい値に設定することができる。そのため、サイズ(具体的には、後述する最大長さの平均L)が小さい有機無機複合粒子を、光学用途に好適に用いることができる。
有機化合物中で高温処理に供される無機化合物は、上記した無機化合物と同様のものが挙げられる。
有機化合物中での高温処理では、無機化合物と、有機化合物とを配合し、例えば、常圧下において、それらを加熱する。
有機化合物の配合割合は、無機化合物100質量部に対して、例えば、10〜10000質量部、好ましくは、100〜1000質量部である。また、有機化合物の体積基準の配合割合は、無機化合物100gに対して、例えば、10〜10000mL、好ましくは、100〜1000mLである。
加熱温度は、例えば、100℃を超過する温度、好ましくは、125℃以上、さらに好ましくは、150℃以上であり、通常、例えば、300℃以下、好ましくは、275℃以下である。加熱時間は、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間である。
その後、上記した第1〜第4の水熱合成または有機化合物中での高温処理により得られた有機無機複合粒子を、必要により、洗浄および/または湿式分級する。
有機無機複合粒子を洗浄するには、例えば、第1〜第4の水熱合成または有機化合物中での高温処理により得られた有機無機複合粒子に、溶媒を加えて未反応の有機化合物を洗浄し(つまり、有機化合物を溶媒に溶解させ)、その後、溶媒を除去して、回収(分離)する。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素(具体的には、アルカンなど)、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。好ましくは、アルコールが挙げられる。
洗浄後における有機無機複合粒子は、例えば、濾過、デカンテーションなどによって、溶媒(上澄み液)から分離して、回収する。その後、必要に応じて、回収物を、例えば、加熱または気流などにより乾燥する。
また、有機無機複合粒子を湿式分級するには、例えば、上記した第1〜第4の水熱合成または有機化合物中での高温処理により得られた有機無機複合粒子、または、上記した洗浄後の有機無機複合粒子に溶媒を加えて、それらを攪拌後、静置するか、あるいは、遠心沈降により、上澄みと沈殿物とに分離する。溶媒としては、上記と同様のものが挙げられ、好ましくは、ハロゲン化脂肪族炭化水素が挙げられる。
その後、上済みを回収する。
湿式分級では、回収後の上澄みをさらに濾過することもできる。濾過には、開口径が、例えば、500nm以下、好ましくは、400nm以下であり、通常、1nm以上のフィルターが用いられる。
その後、回収物から溶媒を除去して、有機無機複合粒子を得る。
湿式分級により、サイズが小さい有機無機複合粒子を得ることができる。
そして、上記により得られる有機無機複合粒子(1次粒子)の最大長さ(長手方向長さ)の平均Lは、350nm未満、好ましくは、300nm以下、さらに好ましくは、200nm以下、とりわけ好ましくは、100nm以下であり、また、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上である。また、有機無機複合粒子の最小長さ(短手方向長さ)の平均Sが、例えば、1nm〜100nm、好ましくは、5nm〜50nmである。
また、有機無機複合粒子の平均粒子径Dは、例えば、400nm以下、好ましくは、300nm以下、さらに好ましくは、200nm以下、とりわけ好ましくは、100nm以下であり、通常、例えば、1nm以上、好ましくは、2nm以上である。
また、有機無機複合粒子のアスペクト比Aは、例えば、1000以下、好ましくは、100以下、好ましくは、1.5未満であり、通常、1以上である。
有機無機複合粒子のサイズ(最大長さの平均L、最小長さの平均S、平均粒子径Dおよびアスペクト比A)は、公知の方法により測定され、具体的には、後の実施例で詳述するが、FE−TEMおよび/またはFE−SEMによって、測定される。
有機無機複合粒子の最大長さの平均Lが上記した特定範囲を超えると、高配向性樹脂の配向を低減および相殺することができない。また、高配向性樹脂と混合する際に有機無機複合粒子が破砕される場合がある。
一方、有機無機複合粒子の最大長さの平均Lが上記した特定範囲に満たないと、光学フィルムの物理強度が低下する場合がある。
また、有機無機複合粒子のアスペクト比Aが上記した範囲を超えると、有機無機複合粒子自身が配向性を生じ、光学フィルムの複屈折(配向)の制御が困難となる場合がある。
また、有機無機複合粒子(1次粒子)の形状(外形形状)は、特に限定されず、例えば、略立方体形状などの略直方体形状、例えば、略球形状、例えば、略長球(あるいは紡錘形状)、略扁球などの回転楕円体形状、例えば、針状形状または棒状形状である。好ましくは、略立方体形状、略球形状である。略立方体形状または略球形状であれば、アスペクト比Aを上記した範囲に確実に設定することができる。
また、有機無機複合粒子は、例えば、上記した外形形状の中実形状または中空形状(具体的には、中空略球形状、中空略立方体形状など)である。
このようにして得られる有機無機複合粒子は、乾燥状態で、凝集しにくくなっており、たとえ、乾燥状態で見かけ上凝集しても、次に説明する光学フィルムにおいて、凝集(2次粒子の形成)が確実に防止され、高配向性樹脂中に1次粒子としてほぼ均一に分散される。
そして、上記した各種の方法により得られる有機無機複合粒子の複屈折Δnは、特に限定されず、正である場合には、例えば、0.001〜0.200、好ましくは、0.010〜0.200であり、負である場合には、例えば、−0.200〜−0.001、好ましくは、−0.200〜−0.010である。
なお、有機無機複合粒子の複屈折Δnは、無機粒子の複屈折と実質的に同一であり、そのため、公知の文献(例えば、化学大辞典など)に記載される無機粒子の屈折率から算出されるか、あるいは、無機粒子の結晶構造から考察および算出される。
次に、本発明の光学フィルムを得るための、本発明の光学フィルムの製造方法の一実施形態について、説明する。
この方法では、まず、上記に従って、最大長さの平均Lが特定範囲である有機無機複合粒子を調製し、次いで、その有機無機複合粒子を高配向性樹脂に1次粒子として分散させて、粒子分散樹脂組成物を調製する。
有機無機複合粒子を高配向性樹脂に1次粒子として分散させるには、例えば、溶媒、有機無機複合粒子および高配向性樹脂を配合して、それらを攪拌する(溶液調製)。なお、このようにして調製される粒子分散樹脂組成物は、溶媒を含む粒子分散樹脂組成物のワニス(溶液)とされる。
溶媒としては、特に限定されず、例えば、上記した洗浄で例示した溶媒と同様の溶媒が挙げられ、さらには、それら以外に、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素(具体的には、シクロアルカンなど)、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、エチレングリコール、グリセリンなどのポリオール、例えば、N−メチルピロリドン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物などが挙げられる。
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。溶媒として、好ましくは、ケトン、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素などが挙げられる。
具体的に、粒子分散樹脂組成物を調製するには、まず、上記した溶媒と高配向性樹脂とを配合して、高配向性樹脂を溶媒中に溶解させて、樹脂溶液を調製する。その後、樹脂溶液と有機無機複合粒子とを配合して、それらを攪拌することによって、粒子分散樹脂組成物を調製する(第1の調製方法)。
粒子分散樹脂組成物において、有機無機複合粒子は、溶媒および高配向性樹脂中に1次粒子として分散されている。
高配向性樹脂の配合割合は、樹脂溶液100質量部に対して、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下であり、通常、1質量部以上である。
高配向性樹脂の配合割合が上記した範囲にあれば、樹脂溶液において高配向性樹脂を確実に溶解させることができる。
有機無機複合粒子の配合割合は、樹脂溶液の固形分(高配向性樹脂)100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部、好ましくは、40〜200質量部である。また、有機無機複合粒子の配合割合は、樹脂溶液の総量(高配向性樹脂および溶媒の総量)100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは、2〜35質量部でもある。
有機無機複合粒子の配合割合が上記した範囲に満たない場合には、高配向性樹脂の配向を十分に低減および相殺することができない場合がある。一方、有機無機複合粒子の配合割合が上記した範囲を超える場合には、有機無機複合粒子の分散性が低下する場合がある。
また、溶媒と有機無機複合粒子とを配合して、有機無機複合粒子を溶媒中に分散させて、粒子分散液を調製し、その後、粒子分散液と高配向性樹脂とを配合して、それらを攪拌することによって、粒子分散樹脂組成物を調製することもできる(第2の調製方法)。
粒子分散液において、有機無機複合粒子は、溶媒中に1次粒子として分散されている。
有機無機複合粒子の配合割合は、粒子分散液100質量部に対して、例えば、0.1〜50質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
有機無機複合粒子の配合割合が上記した範囲に満たない場合には、高配向性樹脂の配向を十分に低減および相殺することができない場合がある。一方、有機無機複合粒子の配合割合が上記した範囲を超える場合には、有機無機複合粒子の分散性が低下する場合がある。
高配向性樹脂の配合割合は、粒子分散液の固形分(有機無機複合粒子)100質量部に対して、例えば、100〜1000質量部、好ましくは、50〜200質量部である。
高配向性樹脂の配合割合が上記した範囲にあれば、有機無機複合粒子の高配向性樹脂および溶媒に対する良好な分散性を確保することができる。
さらに、例えば、溶媒と有機無機複合粒子と高配向性樹脂とを一度に配合して、それらを攪拌することにより、粒子分散樹脂組成物を調製することもできる(第3の調製方法)。
各成分の配合割合は、粒子分散樹脂組成物の総量100質量部に対して、有機無機複合粒子で、例えば、0.1〜60質量部、好ましくは、1〜40質量部であり、高配向性樹脂で、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下であり、通常、1質量部以上である。また、溶媒の配合割合は、粒子分散樹脂組成物における有機無機複合粒子および高配向性樹脂の残部である。
有機無機複合粒子の配合割合が上記した範囲に満たない場合には、高配向性樹脂の配向を十分に低減および相殺することができない場合がある。一方、有機無機複合粒子の配合割合が上記した範囲を超える場合には、有機無機複合粒子の分散性が低下する場合がある。
高配向性樹脂の配合割合が上記した範囲にあれば、有機無機複合粒子の高配向性樹脂および溶媒に対する良好な分散性を確保することができる。
さらにまた、粒子分散樹脂組成物を調製するには、例えば、溶媒を配合することなく、樹脂を加熱により溶融させて、有機無機複合粒子と配合することもできる(第4の調製方法)。
このようにして調製される粒子分散樹脂組成物は、溶媒を含まない粒子分散樹脂組成物の溶融物とされる。
有機無機複合粒子の、高配向性樹脂100質量部に対する配合割合は、例えば、10〜1000質量部、好ましくは、20〜500質量部である。
加熱温度は、高配向性樹脂の溶融温度と同一あるいはそれ以上であり、具体的には、200〜350℃である。
次いで、この方法では、粒子分散樹脂組成物から光学フィルムを成形する。
具体的には、粒子分散樹脂組成物を塗布することにより、光学フィルムを成膜する。
すなわち、粒子分散樹脂組成物が上記した第1〜第3の調製方法によって調製されている場合には、粒子分散樹脂組成物を、公知の支持板上に塗布して塗膜を作製し、この塗膜を乾燥することにより、粒子分散樹脂組成物をフィルムに成膜する。
粒子分散樹脂組成物の塗布では、例えば、スピンコータ法、バーコータ法などの公知の塗布方法が用いられる。なお、この粒子分散樹脂組成物の塗布において、塗布と同時にまたは直後には、溶媒が、揮発により除去される。なお、必要により、塗布後に、加熱により、溶媒を乾燥させることもできる。
また、塗膜は、延伸工程を実施することなく、フィルムに成膜される。
なお、粒子分散樹脂組成物が第4の調製方法によって調製されている場合には、粒子分散樹脂組成物を押出成形機などによって押出成形する溶融成形方法によって、粒子分散樹脂組成物をフィルムに成膜することもできる。粒子分散樹脂組成物は、延伸工程を実施することなく、フィルムに成膜される。
このようにして成形される光学フィルムの厚みdは、所望の光学特性(後述する位相差Rなど)に応じて、適宜設定され、例えば、1〜1000μm、好ましくは、5〜500μmである。光学フィルムの厚みdは、公知の膜厚計で測定される。
そして、このようにして成膜される光学フィルムでは、有機無機複合粒子が高配向性樹脂中に1次粒子として分散されているので、高配向性樹脂の配向を有機無機複合粒子によって乱す(阻害する)ことができ、これにより、高配向性樹脂の配向を低減または相殺することができる。そのため、複屈折性が性能低下の要因となる光学用途に好適に用いることができる。
すなわち、高配向性樹脂および有機無機複合粒子は、光学フィルムの複屈折が下記の範囲となるように、上記した例示から選択される。
面内方向の複屈折ΔNxy:例えば、200×10−6以下、好ましくは、100×10−6以下、好ましくは、50×10−6以下、さらに好ましくは、20×10−6以下、通常、0以上
厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2:例えば、12×10−3以下、好ましくは、10×10−3以下、さらに好ましくは、5.0×10−3以下、とりわけ好ましくは、2.0×10−3以下、もっとも好ましくは、1.0×10−3以下、通常、0以上
さらに、光学フィルムの複屈折が下記の値であれば、光学フィルムに、光学的等方性を付与することができる。
面内方向の複屈折ΔNxy:実質的に、0
厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2:実質的に、0
なお、実質的に0の複屈折を有する光学フィルムは、光学的等方性を示すことができ、そのような光学特性に実用上の影響を与えない性質を示す。
そのような範囲としては、具体的には、面内方向の複屈折ΔNxyで、例えば、20×10−3以下、厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2で、例えば、2.0×10−3以下である。
また、光学フィルムの面内方向の複屈折ΔNxyと、厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2とは、偏光・位相差解析/測定システムにより測定および算出される。
より具体的には、上記した複屈折は、偏光・位相差解析/測定システムにより測定される位相差Rと、光学フィルムの厚みdとから以下の式に従って算出される。
面内方向の複屈折ΔNxy=(面内方向の位相差Re)/(厚みd)
厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2=(厚み方向の位相差Rth)/(厚みd)
また、厚み10〜25μmにおける光学フィルムのヘイズは、例えば、3%以下、好ましくは、1.5%以下であり、通常、0.01%以上である。光学フィルムのヘイズが上記範囲を超える場合には、光学フィルムとして不適となる場合がある。
なお、ヘイズは、ヘイズメータを用いて測定される。
そして、この光学フィルムが用いられる光学用途としては、例えば、複屈折性が性能低下の要因となる光学用途であり、より具体的には、液晶ディスプレイなどが挙げられ、好ましくは、液晶パネルのセル基板、偏光板の透明保護フィルムなどが挙げられる。
光学用途としては、さらに好ましくは、光学的等方性が要求される光学用途であり、そのような光学用途としては、例えば、液晶基板のセル基板、偏光板の透明保護フィルムなどが挙げられる。
また、上記した光学フィルムでは、有機無機複合粒子は、最大長さの平均Lが上記した特定範囲であり、しかも、高配向性樹脂中に1次粒子として分散されているので、優れた透明性を確保することができる。
また、光学フィルムは、その製造工程において、粒子分散樹脂組成物を成形することにより得られるので、成形工程における延伸工程を不要としながら、優れた機械強度および耐熱性を確保することができる。
そのため、上記した方法によれば、粒子分散樹脂組成物を塗布し、延伸することなく成形することにより、得られる光学フィルムの複屈折を上記した所望の範囲に制御しながら、光学フィルムを簡易に製造することができる。また、光学フィルムの製造コストを低減することができる。
以下に調製例、比較調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
なお、有機無機複合粒子、無機粒子および光学フィルムの評価方法を以下に記載する。
(1)X線回折法(XRD)
有機無機複合粒子および無機粒子をガラスフォルダーにそれぞれ充填し、下記の条件でX線回折をそれぞれ実施する。その後、得られたピークから、データベース検索による無機化合物の成分を帰属する。
X線回折装置:D8 DISCOVER with GADDS、Bruker AXS社製
(入射側光学系)
・X線源:CuKα(λ=1.542Å)、45kV、360mA
・分光器(モノクロメータ):多層膜ミラー
・コリメータ直径:300μm
(受光側光学系)
・カウンタ:二次元PSPC(Hi−STAR)
・有機無機複合粒子(および無機粒子)およびカウンタ間距離:15cm
・2θ=20、50、80度、ω=10、25、40度、Phi=0度、Psi=0度
・測定時間:10分
・帰属(半定量ソフトウェア):FPM EVA、Bruker AXS社製
(2)フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR)
下記の装置を用いるKBr法によって、フーリエ変換赤外分光光度測定を実施する。
フーリエ変換赤外分光光度計:FT/IRplus、JASCO社製
(3)有機無機複合粒子および無機粒子の形状およびサイズ
(a)電解放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)
有機無機複合粒子および無機粒子をカーボン支持膜付きCuメッシュ上に分散し電解放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)によって写真撮影する。
そして、得られたFE−TEM写真から、有機無機複合粒子および無機粒子の形状を観察し、それらの最大長さの平均(L)および最小長さの平均(S)を測定するとともに、それらからアスペクト比(A)を算出する。
FE−TEM:HF2000、日立社製
加速電圧:200kV
(b)電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)
有機無機複合粒子および無機粒子を試料台の上にそれぞれ分散させ、その後、オスミウムコーティングして、サンプルを作製する。次いで、作製したサンプルを下記の電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によって写真撮影する。
そして、得られたFE−SEM写真から、有機無機複合粒子および無機粒子の形状を観察し、それらの最大長さの平均(L)および最小長さの平均(S)を測定するとともに、それらからアスペクト比(A)を算出する。
FE−SEM:JSM−7500F、日本電子社製
加速電圧:2kV
(4)透明性(ヘイズ)
光学フィルムのヘイズを、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定することにより、光学フィルムの透明性を評価する。
(5)光学フィルムの厚み
光学フィルムの厚み(d)を、膜厚計(DIGIMICRO、ニコン社製)によって、測定する。
(6)複屈折および位相差
(a)有機無機複合粒子および無機粒子の複屈折
有機無機複合粒子および無機粒子の複屈折(Δn)を、化学大辞典(共立出版社、1997年発行)に記載される無機粒子の屈折率から算出し、あるいは、無機粒子の結晶構造から算出する。
(b)光学フィルムの複屈折および位相差
実施例1〜5および比較例1、3、4の光学フィルムの複屈折(ΔN)および位相差(R)を、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axoacan、AXOMETRICS社製)によって、測定する。
なお、光学フィルムの面内方向の複屈折(ΔNxy)および厚み方向の複屈折((ΔNxz+ΔNyz)/2)は、下記式に基づいて算出する。
面内方向の複屈折ΔNxy=面内方向の位相差Re/厚みd
厚み方向の複屈折[(ΔNxz+ΔNyz)/2]=厚み方向の位相差Rth/厚みd
また、上記した面内方向の複屈折および厚み方向の複屈折に基づいて、光学特性(光学的等方性または一軸性)を評価する。
なお、比較例2の光学フィルムについては、無機粒子の凝集に起因して白濁しており、そのため、複屈折および位相差を測定および算出できなかった。
(有機無機複合粒子の調製)
調製例1
(第1の水熱合成)
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、炭酸ストロンチウム(本荘ケミカル社製)0.5g、6−フェニルヘキサン酸(東京化成社製)0.3503mLおよび純水3.403mLを仕込んだ。
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて300℃に加熱し、高圧反応器内を30MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した。この洗浄操作を5回繰り返して、残存する6−フェニルヘキサン酸を除去するとともに、沈殿物からエタノールを留去することにより、有機無機複合粒子を得た(洗浄工程)。
次いで、50mLのスクリュー管瓶に、洗浄後の有機無機複合粒子0.1gとクロロホルム30gとを仕込んだ。
次いで、スパーテルでそれらを攪拌した後、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、2000Gで5分間遠心分離することにより、上澄みと沈殿物に分離させた(遠心分離)。
続いて、上澄みを取り出し、取り出した上澄みを、開口径100nmのフィルターで濾過し、濾液を乾燥させることによって、粒子径が小さい有機無機複合粒子を得た。
その後、得られた有機無機複合粒子について、上記の(1)XRD、(2)FT−IR、(3)(b)FE−SEMおよび(6)(a)複屈折をそれぞれ評価した。
その結果、(1)XRDでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCO3であることを確認した。
また、(2)FT−IRでは、無機粒子の表面にアラルキル基(6−フェニルヘキシル基)が存在していることを確認した。
さらに、(3)(b)FE−SEMでは、有機無機複合粒子の形状が長球状または球状であり、有機無機複合粒子の最大長さの平均(L)が70nm、最小長さの平均(S)40nmであり、アスペクト比(A)が1〜2であった。
さらにまた、(6)(a)有機無機複合粒子の複屈折(Δn)は、化学大辞典(共立出版社、1997年発行)に記載される炭酸ストロンチウムの屈折率から、−0.14と算出した。
調製例2
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、酸化セリウム(和光純薬社製)0.545g、ヘキサン酸(和光純薬社製)0.1639mL、デカン酸(和光純薬社製)0.2591mLおよび純水1.649mLを仕込んだ。
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返して、残存するヘキサン酸およびデカン酸を除去するとともに、沈殿物からエタノールを留去することにより、有機無機複合粒子を得た。
次いで、50mLのスクリュー管瓶に、洗浄後の有機無機複合粒子0.1gとクロロホルム30gとを仕込んだ。
次いで、スパーテルでそれらを攪拌した後、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、2000Gで5分間遠心分離することにより、上澄みと沈殿物に分離させた(遠心分離)。
次に、上澄みを取り出し、これを乾燥させることによって、有機無機複合粒子を得た。
その後、得られた有機無機複合粒子について、上記の(1)XRD、(2)FT−IR、(3)(a)FE−TEMおよび(6)(a)複屈折をそれぞれ評価した。
その結果、(1)XRDでは、無機粒子を形成する無機化合物がCeO2であることを確認した。
また、(2)FT−IRでは、無機粒子の表面にアルキル基(ヘキシル基およびデシル基)が存在していることを確認した。
さらに、(3)(a)FE−TEMでは、有機無機複合粒子の形状が略直方体状であり、有機無機複合粒子の最大長さの平均(L)が6nm、最小長さの平均(S)が7nmであり、アスペクト比(A)が1〜2であった。
さらにまた、(6)(a)有機無機複合粒子の複屈折(Δn)は、酸化セリウムの結晶構造(立方晶系、蛍石構造)から、0と算出した。
調製例3
(第1の水熱合成)
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、硫酸バリウム0.5g、6−フェニルヘキサン酸(東京化成社製)0.3503mLおよび純水3.403mLを仕込んだ。
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて300℃に加熱し、高圧反応器内を30MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した。この洗浄操作を5回繰り返して、残存する6−フェニルヘキサン酸を除去するとともに、沈殿物からエタノールを留去することにより、有機無機複合粒子を得た(洗浄工程)。
次いで、50mLのスクリュー管瓶に、洗浄後の有機無機複合粒子0.1gとクロロホルム30gとを仕込んだ。
次いで、スパーテルでそれらを攪拌した後、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、2000Gで5分間遠心分離することにより、上澄みと沈殿物に分離させた(遠心分離)。
続いて、上澄みを取り出し、取り出した上澄みを、開口径100nmのフィルターで濾過し、濾液を乾燥させることによって、粒子径が小さい有機無機複合粒子を得た。
その後、得られた有機無機複合粒子について、上記の(1)XRD、(2)FT−IR、(3)(a)FE−TEMおよび(6)(a)複屈折をそれぞれ評価した。
その結果、(1)XRDでは、無機粒子を形成する無機化合物がBaSO4であることを確認した。
また、(2)FT−IRでは、無機粒子の表面にアラルキル基(6−フェニルヘキシル基)が存在していることを確認した。
さらに、(3)(a)FE−TEMでは、有機無機複合粒子の形状が長球状または球状であり、有機無機複合粒子の最大長さの平均(L)が30nm、最小長さの平均(S)10nmであり、アスペクト比(A)が1〜2であった。
さらにまた、(6)(a)有機無機複合粒子の複屈折(Δn)は、硫酸バリウムの結晶構造(斜方晶系)から、0.012と算出した。
(無機粒子の用意)
比較調製例1
調製例1で仕込んだ炭酸ストロンチウム(本荘ケミカル社製)を比較調製例1の無機粒子としてそのまま供した。
この無機粒子について、(3)(b)FE−SEMおよび(6)(a)複屈折を評価した。
その結果、(3)(b)FE−SEMでは、無機粒子の形状が針状であり、無機粒子の最大長さの平均(L)が350nm、最小長さの平均(S)が70nmであり、アスペクト比(A)が2〜8であった。
また、(6)(a)の無機粒子の複屈折(Δn)は、化学大辞典(共立出版社発行、1997年発行)に記載される炭酸ストロンチウムの屈折率から、−0.14と算出した。
調製例1〜3および比較調製例1の配合処方および評価を、表1に示す。
(光学フィルムの調製)
実施例1
(第1の調製方法)
表2に記載の配合処方に従って、溶媒、高配向性樹脂および有機無機複合粒子を配合して、粒子分散樹脂組成物を調製した。
すなわち、溶媒としての、シクロペンタノン42.5質量部およびトルエン42.5質量部と、ポリアリレート(品名:PAR T−6、日東電工社製)15質量部とを配合して、ポリアリレートを、シクロペンタノンおよびトルエン中に溶解させて樹脂溶液を調製した。その後、この樹脂溶液100質量部と、調製例1の有機無機複合粒子15質量部とを配合して、それらを超音波で攪拌することによって、粒子分散樹脂組成物のワニスを調製した。
その後、粒子分散樹脂組成物をバーコータ法によって支持板上に塗布し、その後、溶媒を自然乾燥することにより、光学フィルムを成膜した。
その後、得られた光学フィルムについて、上記の(4)透明性(ヘイズ)、(5)厚み、(6)(b)複屈折および位相差を測定した。
その結果を表2に示す。
実施例2〜5および比較例1〜4
実施例1と同様にして、表1に記載の配合処方に従って、粒子分散樹脂組成物を調製し、続いて、粒子分散樹脂組成物を塗布および乾燥することによって、光学フィルムを成膜した。
なお、比較例1については、有機無機複合粒子を配合することなく、溶媒と高配向性樹脂とを配合して、樹脂組成物のワニスを調製し、樹脂組成物を光学フィルムに成膜した。
その後、実施例2〜5および比較例1〜4の光学フィルムについて、実施例1と同様にして、(4)透明性(ヘイズ)、(5)厚み、(6)(b)複屈折および位相差を測定した。
なお、比較例2については、(4)透明性(ヘイズ)および(5)光学フィルムの厚み(d)を測定した。一方、比較例2の光学フィルムについて、(6)複屈折および位相差の測定を試みたが、無機粒子の凝集による白濁によって、測定できなかった。
それらの結果を、表2に示す。
表2の透明性の評価から分かるように、比較例2〜4の光学フィルムでは、いずれも、ヘイズが3%を超過するので、光学フィルムに不適である。
また、実施例1〜5および比較例1、3、4の光学フィルムの面内方向および厚み方向の複屈折の関係を、図1に示す。
図1から分かるように、実施例1〜5の光学フィルムは、比較例1の光学フィルムに比べて、厚み方向の複屈折(ΔNxz+ΔNyz)/2が低減されていることが分かる。
なお、実施例1〜5および比較例1の光学フィルムの面内方向の複屈折(ΔNxy)は、いずれも、200×10−6以下と低い値であることが分かる。