JP2012024830A - ダイカスト金型、鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
可動金型2と固定金型3を備え、可動金型2の内部に取外し可能な可動側入子5と、固定金型3の内部に取外し可能な固定側入子7を備え、可動型2と固定型3が当接した状態で鋳造が行われるダイカスト金型1において、可動側入子5は、固定側入子7との当接する当接面5Aの外周に向けて突出した可動側入子突出部55を有する。さらに、可動側入子突出部55が、可動側入子5が熱膨張をすることで可動主型4に拘束された際に生じる応力を受ける。
【選択図】 図1
Description
図12に示す、ダイカスト金型100は、可動型101と固定型102を有する。
可動型101は、可動主型103の一部に可動入子104が嵌めこまれた形で形成されている。可動側入子104は、製品形状を型彫りされたキャビティ部105を有する。可動入子104は、可動主型103に形成された可動入子挿入孔112に嵌めこまれる。可動側入子104は、使用によりキャビティ部105が摩耗し数万回程度使用すると交換する交換部品である。
固定型102は、固定主型107と固定側入子108を有し、可動型101と向かい合うように設置される。
鋳造に際しては、可動型101と固定型102が当接するようにとじ合わせる。続いて、可動側入子104に溶解したアルミニウムを流し込み、アルミニウムを冷却させることで製品を製造する。
すなわち、可動側入子104は、溶けたアルミニウムが流れ込むことにより全体が加熱されて膨張する。可動側入子104が加熱され熱膨張した概略図を図15に示す。図15に示すように、可動側入子104は、熱膨張により元の形状から側面部110、及び底面部106の方向に大きく拡径する。
可動側入子104は、可動主型103の可動入子挿入孔112に挿入されている。そのため、熱膨張した可動側入子104は可動主型103によって拘束され、図13に示すように可動側入子104は可動主型103から内周方向に向かう矢印Sの応力を受ける。そのため、可動側入子104に内周方向に向かう応力が負荷される。
一方、可動側入子104には図示しない冷却孔、及び、鋳抜き穴が形成されている。したがって、可動側入子104に応力が負荷されることにより、図示しない冷却孔から割れが発生し、冷却水が製品部に漏れ型故障の原因となる。また、鋳抜き孔の変形も起こり、型故障の原因となる。
また、応力はキャビティ部105にも影響を与えるため、数万回程度使用を予定している可動側入子104を予定よりも少ない回数で交換しなければならなくなる。そのため、製造機械にコストが掛かり、最終製品のコストが高くなるため問題となる。
熱膨張分の隙間を設けることにより、入子の熱膨張により負荷される応力を軽減することができる。
なお、その他の関連技術として、特許文献2及び3が開示されている。
すなわち、特許文献1のダイカスト金型において、主型と入子の間に熱膨張分の隙間を設けること自体が困難であるという問題がある。
また、特許文献1のダイカスト金型では、負荷される応力を軽減することはできるが、キャビティ面の変形を吸収すること自体は回避できない。すなわち、隙間分以上に入子が熱膨張するため負荷される応力を軽減はできるが、回避することまではできない。そのため、キャビティ面の変形を防止することが難しく、予定している数万回程度の使用をできずに予定よりも少ない数千回の使用回数で交換しなければならなくなる。その結果、製造機械にコストが掛かり、最終製品のコストが高くなるため問題となる。
(1)第1金型と第2金型を備え、前記第1金型の内部に取外し可能な第1入子と、前記第2金型の内部に取外し可能な第2入子を備え、前記第1金型と前記第2金型が当接した状態で鋳造が行われるダイカスト金型において、前記第1入子は、前記第2入子との当接する当接面の外周に向けて突出した突出部を有すること、前記突出部が、前記第1入子が熱膨張をすることで前記第1金型に拘束された際に生じる応力を受けること、を特徴とするものである。
(2)(1)に記載するダイカスト金型において、前記第2入子は、前記第1入子との当接する当接面の外周に向けて突出した第2入子突出部を有すること、前記第2入子突出部が、前記第2入子が熱膨張をすることで前記第2金型に拘束された際に生じる応力を受けること、を特徴とするものである。
(3)(1)又は(2)に記載するダイカスト金型において、前記第1入子に、製品形状を形成した複数のキャビティ凸部が形成されていること、前記突出部の円周方向の長さが、前記複数のキャビティ凸部のうち最もキャビティ凸部の円周方向の長さが短いキャビティ凸部の長さよりも、長いこと、を特徴とするものである。
(4)(1)又は(2)に記載するダイカスト金型において、突出部は、第1入子に対してボルトで固定されていること、突出部は、ボルトを取り外すことで第1入子に対して取外し可能となること、を特徴とするものである。
(5)(1)乃至(4)に記載するいずれか一つのダイカスト金型において、前記突出部の厚みが、前記第1入子の厚みの5分の1であること、を特徴とするものである。
(6)(1)乃至(5)に記載するいずれか一つのダイカスト金型を用いて鋳造することを特徴とする。
(1)第1入子は、第2入子との当接する当接面の外周に向けて突出した突出部を有すること、突出部が、第1入子が熱膨張をすることで第1金型に拘束された際に生じる応力を受けることにより、第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。
すなわち、弱い部位に応力が掛かると、弱い部位は塑性変形をし、応力を受ける。そのため、応力を受ける第1入子のうち弱い部位に集中する。第1入子のうち外周に向けて突出した突出部は、第1入子から独立した部分であるため、弱い部位となる。したがって、弱い部位である突出部に応力が集中する。突出部に応力が集中することにより、それ以外の第1入子のキャビティ面への影響を軽減することができる。
その結果、キャビティ面の変形を防止することができ、予定している数万回程度の使用をすることができる。また、製造機械のコストを低減することができ、最終製品のコストを低減することができる。
また、突出部が第1入子と第1金型との間に金属が入り込むのを防止するため、金属が冷却孔等に漏れることを防止することができ、維持管理にコストを低減することができる。
(2)第2入子は、第1入子との当接する当接面の外周に向けて突出した第2入子突出部を有すること、第2入子突出部が、第2入子が熱膨張をすることで第2金型に拘束された際に生じる応力を受けることにより、第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。
すなわち、弱い部位に応力が掛かると、弱い部位は塑性変形をし、応力を受ける。そのため、応力を受ける第2入子のうち弱い部位に集中する。第2入子のうち外周に向けて突出した第2入子突出部は、第2入子から独立した部分であるため、弱い部位となる。したがって、弱い部位である第2入子突出部に応力が集中する。第2入子突出部に応力が集中することにより、それ以外の第2入子のキャビティ面への影響を軽減することができる。
その結果、キャビティ面の変形を防止することができ、予定している数万回程度の使用をすることができる。また、製造機械のコストを低減することができ、最終製品のコストを低減することができる。
また、第2入子突出部が第2入子と第2金型との間に金属が入り込むのを防止するため、金属が冷却孔等に漏れることを防止することができ、維持管理にコストを低減することができる。
(3)第1入子に、製品形状を形成した複数のキャビティ凸部が形成されていること、突出部の円周方向の長さが、複数のキャビティ凸部のうち最もキャビティ凸部の円周方向の長さが短いキャビティ凸部の長さよりも、長いことにより、突出部の体積が第1入子の体積と比較して小さくなる。突出部の体積が小さくなりが弱い部位となるため、突出部に応力が集中し、それ以外の第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。
また、突出部の円周方向の長さが、最もキャビティ凸部の円周方向の長さが短いキャビティ凸部の長さよりも、長いことにより、突出部の体積を確保することができる。突出部の体積を確保することにより、突出部が確実に応力を受けることができる。そのため、第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。突出部の円周方向の長さが、キャビティ凸部の長さよりも短くなると、突出部の体積がなく、突出部が弱くなり、突出部だけでは応力を受けられなくなる。突出部だけで応力を受けられなくなると、第1入子にまで応力が及ぶことになり、キャビティ面に大きな応力が掛かるためである。
(4)突出部は、第1入子に対してボルトで固定されていること、突出部は、ボルトを取り外すことで第1入子に対して取外し可能であることにより、突出部が第1入子と交換可能となる。突出部には大きな応力が掛かるため塑性変形する場合があるが、突出部を交換可能とすることにより、変形した突出部のみを交換し、変形をしていない第1入子のキャビティ面をそのまま使用することができる。そのため、第1入子の寿命を長くすることができる。したがって、製造コストを低減することができる。
また、第1入子の製造に掛かるコストを低減することができる。すなわち、突出部を形成するために切削加工を行うよりも、突出部のボルトを取り外すことにより突出部を後付けできる構成とする方がコストを抑えて製造することができるためである。
(5)突出部の厚みが、第1入子の厚みの5分の1以下であることにより、第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。
すなわち、弱い部位に応力が掛かると、弱い部位は塑性変形をし、応力を受ける。そのため、応力を受ける第1入子のうち弱い部位である突出部に応力が集中することにより、それ以外の第1入子のキャビティ面への影響を軽減することができる。
また、突出部の厚みが5分の1であると、突出部の体積が第1入子の体積と比較して小さくなり、突出部は弱い部位となる。したがって、突出部が応力を受けるため、第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。
また、突出部の厚みが、第1入子の厚みの5分の1以下でさらに、10分の1以上とすることにより、突出部の厚みを確保することができる。突出部の厚みを確保することにより、突出部が応力を十分に受けることができ、第1入子のキャビティ面への応力の影響を軽減することができる。すなわち、突出部の厚みが、第1入子の厚みの10分の1以下となると、突出部の厚みが足りず、突出部が弱くなり早期に塑性変形をする。塑性変形をした突出部は応力を吸収できない。そのため、第1入子にまで応力が及ぶことになり、キャビティ面に大きな応力が掛かるためである。
(6)上記するダイカスト金型を用いて鋳造する鋳造方法を用いることにより、製造コストを低減した鋳造品を製造することができる。
<ダイカスト金型の全体構成>
図4に、ダイカスト金型1の外観斜視図を示す。
図4に示すように、ダイカスト金型1は、固定型3及び可動型2等を有する。固定型3及び可動型2が当接することによりダイカスト金型1が形成される。
図6に、固定型3の外観斜視図を示す。
図6に示すように、固定型3は、固定主型6(請求項中の「第2金型」)及び固定側入子7(請求項中の「第2入子」)を有する。固定主型6は、固定側入子7を嵌めこみ保護するためのブロックである。
固定主型6のうち可動型2と当接する当接面6A側に、固定側入子7を挿入する固定側入子挿入孔6Bが形成されている。固定側入子7と固定側入子挿入孔6Bの隙間は、固定側入子7を固定主型6に挿入できる程度のクリアランスしか設けられていない。そのため、固定側入子7と固定主型6の隙間に金属(アルミニウム等)が漏れ出すことがない。
固定型外周面6Cには、固定側入子7を冷却するための冷却孔62が複数個形成されている。冷却孔62の一端は、図示しない冷却水を注入する冷却水供給路と連通している。一方、冷却孔62の他端は、固定側入子7内を冷却する固定側入子7の固定側入子冷却路71に連通している。
図3に、可動側入子5の外観斜視図を示す。図5に、可動型2の外観斜視図を示す。
図5に示すように、可動型2は、可動主型4(請求項中の「第1金型」)及び可動側入子5(請求項中の「第1入子」)を有する。可動主型4は、固定側入子5を嵌めこみ保護するためのブロックである。
可動主型4の固定型3と当接する当接面4A側に、可動側入子5を挿入する可動側入子挿入孔4Bが形成されている。可動側入子5と可動側入子挿入孔4Bの隙間は、可動側入子5を可動主型4に挿入できる程度のクリアランスしか設けられていない。また、可動側入子突出部55の突出端部55Bが可動側入子挿入孔4Bと当接しているため隙間はほとんどない。
図5に示すように、可動側入子本体部50のうち固定型3との当接面側に形成された可動側入子本体部表面50Aには、製品形状を型彫りされたキャビティであるキャビティ部51が形成されている。キャビティ部51は、製品形状に型彫りされているため、その形状は製品形状により異なる。
本実施形態においては、キャビティ部51を可動型2に形成するが、固定型3に形成することもできる。
可動側入子本体部50のうち可動側入子本体部表面50Aには、固定型3に形成された金属流入路61と連通する金属流入連通路52が形成されている。金属流入連通路52は、キャビティ部51に連通している。
また、可動側入子本体部裏面50Bから、キャビティ部51に連通する図示しない押出ピンを挿入する、押出ピン孔54が複数個形成されている。押出ピンを押出ピン孔54に挿入し押出ピンを押し出すことによりキャビティ部51に形成された製品を押し出すことができる。
図1に、ダイカスト金型1の一部拡大断面の概念図を示す。図2に、図1に応力が負荷された状態を示した一部拡大断面の概念図を示す。本実施形態においては、可動側入子突出部55の構成を可動側入子5についてのみ行う。他方、図示せず説明を省略するが固定側入子7にも可動側入子5と同様に固定側入子突出部が形成されている。
可動側入子本体部50の側面に可動側入子本体部側面50Cが形成されている。可動側入子本体部表面50A側であって、かつ可動側入子本体部側面50Cの外周に向けて突出するように、可動側入子突出部55が形成されている。
その理由は、金属流入連通路52付近は、図5に示すように、可動側入子本体部50の中でも薄い形状となっている。そのため、応力が掛かった場合にも、キャビティ部51に影響を与えず金属流入連通路52が影響を受けるだけであるためである。したがって、キャビティ部51に影響を与えることがないため3側面にわたり可動側入子突出部55を形成している。
可動側入子突出部55の外周端に突出端部55Bが形成されている。突出端部55Bに対して垂直に当接するように、可動側入子突出部55の側面に突出部側面55Aが形成されている。可動側入子5のうち表面側にでない突出部側面55Aと、可動側入子本体部側面50Cにより、側面凹部56が形成される。
可動側入子突出部55を後付けとすることにより、可動側入子突出部55が応力により変形した場合に、可動側入子突出部55を新たなものに付け替えることができる。付け替え可能とすることにより、可動側入子本体部50を再度使用することができる。そのため、可動側入子本体部50を長く使用することができる。
可動側入子5のうち、キャビティ部51が形成されている可動側入子本体部50は、製品形状を精度よく成型しなければならないため、製造にコストが掛かる。他方、可動側入子突出部55は、応力を受けるためだけに必要とされるものであり、応力を受けて変形したとしても最終製品に何ら影響を与えることがないため安価に製造することができる。
したがって、安価に製造することができる可動側入子突出部55を取りかえることで製造にコストが掛かる可動側入子本体部50を再度利用することができる。そのため、可動側入子5に掛かるコストを低減することができる。
図7に、可動側入子5の拡大断面の概念図を示す。
可動側入子突出部55の設計方法について説明する。そのため、図7において、可動側入子5の各部位の断面積及び長さを示す。
断面積M1は、断面積M2よりも小さくなるようにする。すなわち、断面積M1<断面積M2とする。それにより、断面積の小さい断面積M1に、応力が集中し断面積M2に応力が掛からない。そのため、断面積M2に係る部分であるキャビティ部51の形状が変形することを防止することができる。
長さN1は、長さN2よりも小さくする。さらに、長さN1を長さN2と比較して5分の1以下にすることが好ましい。なぜならば、長さN1が長さN2の5分の1以下であることにより、断面積M1が断面積M2よりも小さくなり、断面積の小さい断面積M1に、応力が集中し断面積M2に応力が掛からない。また、可動側入子突出部55が応力を十分に受け可動側入子本体部50に応力が掛からない分だけ可動側入子突出部55の断面積M1をとれるためである。
本実施形態においては、5分の1以下の6分の1である長さN1を50mmとし、長さN2を300mmとする。
なぜならば、可動側入子突出部55の長さN1が、可動側入子本体部50の長さN2の10分の1以下となると、可動側入子突出部55の体積M1が足りず、応力を受け切れず可動側入子突出部55が弱くなり早期に塑性変形をする。塑性変形をした可動側入子突出部55は応力を吸収できないため、可動側入子本体部50にまで応力が及ぶことになり、キャビティ部51に大きな応力が掛かるためである。
したがって、可動側入子突出部55の長さN1が、可動側入子本体部50の長さN2の5分の1以下でさらに、10分の1以上とすることにより、可動側入子突出部55の体積M1を確保することができる。可動側入子突出部55の体積M1を確保することにより、可動側入子突出部55が応力を十分に受けることができ、可動側入子本体部50のキャビティ部51への応力の影響を軽減することができる。
最小仕事の原理とは、構造解析に応用されるエネルギーの原理の一つであり、外力の作用を受けて釣り合い状態にある構造物のひずみエネルギーを、不静定力の関数として求めた場合に、この不静定力はひずみエネルギーを最小にするように働くという原理をいう。
σiは、各部位の応力を表す。εiは、各部位のひずみを表す。biは、外力(体積に働く力)を表す。tiは、外力(表面に働く力)を表す。uiは、各部位の変位置を表す。
式1の左辺は、各部位の応力と各部位のひずみの積をとり、体積で積分したものである。右辺の第1項は、体積に働く力の変位量を積分したものである。右辺の第2項は、表面に働く力の変位量を積分したものである。右辺は第1項と第2項の和である。
また、長さR1は、長さR3よりも大きくなるようにする。すなわち、長さR3<長さR1とする。なぜならば、長さR1が長さR3よりも小さいと、可動側入子突出部55の体積M1が小さくなり、体積M1も小さくなる。可動側入子突出部55が弱くなり応力を受け切れずに早期に塑性変形をする。塑性変形をした可動側入子突出部55は応力を吸収できないため、可動側入子本体部50にまで応力が及ぶことになり、キャビティ部51に大きな応力が掛かるためである。
長さR1が長さR3よりも大きくすることで、キャビティ部51に影響を与えないこと下記で説明するシミュレーション結果によってわかった。
図4に示す、ダイカスト金型1を予熱した状態で、金属流入路61に対して、図示しない650℃〜700℃程度に溶解したアルミニウムを金属供給路から流し込む。
金属供給路から流れ込んだアルミニウムは、金属流入路61を介して、可動型2の分流子41にぶつかり、金属流入連通路52へ流入する。金属流入連通路52を介して、アルミニウムは、キャビティ部51に流れ込む。
キャビティ部51に流れ込んだアルミニウムが流れ込んだ際には、可動側冷却水供給路53へ冷却水を流し込んでおく。冷却水が可動側入子本体部50に流れ込むことにより可動側入子本体部50が冷却される。冷却された可動側入子本体部50に触れたアルミニウムは、冷却され凝固し製品形状となる。
アルミニウムが凝固し製品形状となった状態で、可動型2を可動させ、固定型3と切り離す。切り離し後、図3に示す、可動側入子5の押出ピン孔54から図示しない押出ピンを挿入し、凝固したアルミニウムを押し出す。
キャビティ部51に、溶解したアルミニウムが流れ込むと、可動側入子5、及び固定側入子7の温度は、一時的に400℃〜500℃程になる。可動側入子5、及び固定側入子7の温度が400℃〜500℃になると、可動側入子5、及び固定側入子7の熱膨張する量が増加する。
図1に、可動型2の一部拡大概念図を示す。図2に、図1の可動型2に応力が負荷された状態を示した一部拡大概念図を示す。
図1に示す状態で、可動側入子5は、温度が400℃〜500℃に上昇し熱膨張により元の形状から可動側入子挿入孔4Bの側面方向に大きく拡径する。
しかし、可動側入子5は、可動入子挿入孔4Bに挿入されているため、可動主型4によって拘束され、図2に示すように可動側入子5は可動主型4から内周方向に向かう矢印Qの応力を受ける。そのため、可動側入子5に応力が負荷される。
なぜならば、可動側入子突出部55は、キャビティ部51の体積M2と比較して体積M1が少ない。応力は、体積が少ない部分で、弱い部分である可動側入子突出部55に集中する。体積M1の小さい可動側入子突出部55に応力が集中することにより、それ以外のキャビティ部51には、応力の影響が小さくなるためである。
また、可動側入子挿入孔4Bの壁面と接触するのは、可動側入子突出部55に限られるため、応力は可動側入子突出部55が受ける。なぜならば、可動側入子突出部55以外の可動側入子5は、側面凹部56が形成されているため可動側入子挿入孔4Bの壁面と接触することがないからである。
図8乃至図11は、ミーゼス応力の発生状態をシミュレーションにより求めたものである。ミーゼス応力とは、全ての方向の応力を加味した評価方法により求めることができる応力である。
図8及び図10に示す、濃淡分布は、応力が1600MPa以上の部分をS1とする。S1以降は、200MPa刻みに、S2、S3、S4・・・と続き、0MPaをS10とし、10段階に分類する。
図9及び図11に示す濃淡分布は、応力が−1600MPa以下の部分をT1とする。T1以降は、−200MPa刻みに、T2、T3、T4・・・と続き、0MPaをT10とし、10段階に分類する。
図8及び図10は圧縮応力を示すものであるため、図9及び図11のようにマイナスで示されるものであるが、絶対値であるミーゼス応力により求めているためプラスで示されている。他方、プラスで示しているが、実際の圧縮応力は、プラスをマイナスにしたものであるため、濃淡分布を同様の形とする。
図9に示すように、応力が集中し易いキャビティ部51の中心の凹部の応力集中部P14の応力が−1200MPa以下のT4が分布し、−1600MPa以下のT1が分布しないことを確認することができる。他方、可動側入子突出部55の応力集中部P12の応力が−1600MPa以下のT1が多く分布していることが分かる。また、キャビティ部51であっても、可動側入子突出部55に近い応力集中部P15、P16には、応力が−1600MPa以下のT1がわずかに分布していることもわかる。
最も応力を受けやすいキャビティ部51の中心の凹部に関して、応力を約20%程度低減することができた。
また、図9に示すように可動側入子突出部55のうち、応力は、下面である応力集中部P12に集中する。その理由は、キャビティ部51には、数多くの凹部があり、上面では凹部が塑性変形する程度に変形し応力を受けるため、可動側入子突出部55では下面に応力が集中する。
図9に示すように、可動側入子突出部55の長さR11は、キャビティ部51の凸部のうち最も幅が狭い部分である狭小凸部511の長さを示す長さR13よりも長い。その結果、可動側入子突出部55は、塑性変形をしないで、キャビティ部51に大きな応力が掛かることを防止することができる。
キャビティ部51に掛かる応力を減少させることができることにより、可動側入子本体部50に形成された冷却孔からの割れの発生を防止することができる。さらに、可動側入子本体部50に形成された鍛抜き孔の変形を防止し、号口の型故障の原因を防止することができる。
図11に示すように、従来技術に係る可動側入子200には、可動側入子突出部が形成されていない。そのため、キャビティ部201と端部の体積は一律であり変わらない。
図10に示すように、可動側入子200の端部に応力が掛かるため、端部の応力集中部P21の応力が1600MPa以上のS1が多く分布していることが分かる。
一方、可動側入子200のうち中心に近いキャビティ部201であっても、応力集中部P20に応力が1600MPa以上のS1の分布があることが分かる。
また、図11に示すように、可動側入子200の端部に応力が掛かるため、端部の応力集中部P24に応力が−1600MPa以下のT1が分布していることが分かる。
一方、可動側入子200のうち応力が集中し易いキャビティ部201の中心の凹部の応力集中部P22にも応力が−1600MPa以下のT1が分布していること、及び凹部のうち最も凹部の深い部分の応力集中部P23にもT1が分布していることが分かる。
応力を受けるための部分がないことにより、ひずみエネルギーに変換するのが端部だけではなく、中心部にあるキャビティ部201においても応力を受けひずみエネルギーに変換する。そのため、応力集中部P20のようにキャビティ部201の中心部においても大きな応力が掛かる。
従来技術においては、可動側入子200のキャビティ部201が応力を受けるため、キャビティ部201が応力により変形する恐れがあるため問題であった。
可動側入子5は、固定側入子7との当接する当接面5Aの外周に向けて突出した可動側入子突出部55を有する。さらに、可動側入子突出部55が、可動側入子5が熱膨張をすることで可動主型4に拘束された際に生じる応力を受ける。それにより、図9に示す、可動側入子5のキャビティ部51の応力集中部P14、P15のように応力を−1400MPa以上とすることができ応力の影響を軽減することができる。従来の場合は−1600MPa以下となっていたが、本実施形態においては、確実に−1400MPa以上とできるため、20%程度の応力の低減を図ることができた。これにより、数万回入子を使用することができるようになった。
すなわち、応力は、可動側入子5のうち弱い部位に集中して掛かる。そのため、可動側入子5のうち外周に向けて突出した可動側入子突出部55は、可動側入子5から独立した部分であるため、弱い部位となる。したがって、弱い部位である可動側入子突出部55の応力集中部P12のように応力が集中する。可動側入子突出部55の応力集中部P12に応力が集中することにより、可動側入子5のキャビティ部51の応力集中部P14、P15への影響を軽減することができる。
また、可動側入子突出部55の長さN11が、可動側入子本体部50のうち最も薄い厚さの長さN13の5分の1以下でさらに、厚さを10分の1以上とすることにより、可動側入子突出部55の長さN11を確保することができる。可動側入子突出部55の長さN11を確保することにより、可動側入子突出部55が確実に応力を受けることができる。具体的には、応力集中部P12が応力を受けている。そのため、可動側入子本体部50のキャビティ部51の応力集中部P14、P15への応力の影響を軽減することができる。
可動側入子突出部55の長さN11が、可動側入子本体部50の長さN13の10分の1以下となると、可動側入子突出部55の長さN11がなく、可動側入子突出部55が弱くなり、応力を受けられなくなる。可動側入子突出部55だけで応力を受けられなくなると、可動側入子本体部50にまで応力が及ぶことになり、キャビティ部51に大きな応力が掛かるためである。
また、可動側入子突出部55の体積を確保することができるにより、可動側入子突出部55が確実に応力を受けることができる。そのため、キャビティ部51への応力の影響を軽減することができる。可動側入子突出部55の円周方向の長さR11が、キャビティ凸部51Aの長さR13よりも短くなると、可動側入子突出部55の体積がなく、可動側入子突出部55が弱くなり、応力を受けられなくなる。可動側入子突出部55だけで応力を受けられなくなると、キャビティ部51に大きな応力が掛かるためである。
また、可動側入子突出部55には大きな応力が掛かるため変形する場合があるが、可動側入子突出部55を交換可能とすることにより、変形した可動側入子突出部55のみを交換し、変形をしていない可動側入子本体部50をそのまま使用することができる。そのため、可動側入子5の寿命を長くし長期間使用することができる。したがって、製造コストを低減することができる。
上記するダイカスト金型1を用いて鋳造する鋳造方法を用いることにより、製造コストを低減した鋳造品を製造することができる。
例えば、本実施形態においては、可動側入子突出部55を可動側入子本体50の3側面にわたり形成したが、全周にわたって形成することができる。全周にわたって形成することにより、可動側入子本体部50の全体に掛かる応力を軽減することができる。
2 可動型
3 固定型
4 可動主型
5 可動側入子
50 可動側入子本体部
55 可動側入子突出部
Claims (6)
- 第1金型と第2金型を備え、前記第1金型の内部に取外し可能な第1入子と、前記第2金型の内部に取外し可能な第2入子を備え、前記第1金型と前記第2金型が当接した状態で鋳造が行われるダイカスト金型において、
前記第1入子は、前記第2入子との当接する当接面の外周に向けて突出した突出部を有すること、
前記突出部が、前記第1入子が熱膨張をすることで前記第1金型に拘束された際に生じる応力を受けること、
を特徴とするダイカスト金型。 - 請求項1に記載するダイカスト金型において、
前記第2入子は、前記第1入子との当接する当接面の外周に向けて突出した第2入子突出部を有すること、
前記第2入子突出部が、前記第2入子が熱膨張をすることで前記第2金型に拘束された際に生じる応力を受けること、
を特徴とするダイカスト金型。 - 請求項1又は請求項2に記載するダイカスト金型において、
前記第1入子に、製品形状を形成した複数のキャビティ凸部が形成されていること、
前記突出部の円周方向の長さが、前記複数のキャビティ凸部のうち最もキャビティ凸部の円周方向の長さが短いキャビティ凸部の長さよりも、長いこと、
を特徴とするダイカスト金型。 - 請求項1又は請求項2に記載するダイカスト金型において、
前記突出部は、前記第1入子に対してボルトで固定されていること、
前記突出部は、前記ボルトを取り外すことで前記第1入子に対して取外し可能となること、
を特徴とするダイカスト金型。 - 請求項1乃至請求項4に記載するいずれか一つのダイカスト金型において、
前記突出部の厚みが、前記第1入子厚みの5分の1以下であること、
を特徴とするダイカスト金型。 - 請求項1乃至請求項5に記載するいずれか一つのダイカスト金型を用いて鋳造することを特徴とする鋳造方法。
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