本発明は、電気アクチュエータへ電源供給を行う主電源装置と副電源装置とを備えた電源制御装置に関する。
従来から、例えば、電動パワーステアリング装置においては、操舵ハンドルの回動操作に対して操舵アシストトルクを付与するように電動モータを備え、この電動モータに流す電流を変化させる通電制御を行って操舵アシストトルクを調整する。こうした電動パワーステアリング装置は、その電源として車載バッテリを使用するが消費電力量が大きい。そのため、例えば、特許文献1に提案された装置では、車載バッテリを補助する副電源装置を備えている。この副電源装置は、車載バッテリ(以下、主電源装置と呼ぶ)からモータ駆動回路への電源供給ラインに並列に接続されて主電源装置により充電され、充電された電力を使ってモータ駆動回路へ電源供給できる構成になっている。また、副電源装置からモータ駆動回路への給電/非給電を切り替えるためのスイッチ、主電源装置から副電源装置への充電/非充電を切り替えるためのスイッチを備えている。
しかしながら、特許文献1に提案された装置は、スイッチにより主電源装置から副電源装置への充電と、副電源装置からモータ駆動回路への給電を切り替えようとするものであるが、この構成では副電源装置の充放電を良好に制御することができない。つまり、副電源装置の充放電ラインが主電源装置からモータ駆動回路への電源供給ラインに接続されているため、主電源装置と副電源装置との電圧バランスによって副電源装置の充放電が決まる。このため、例えば、副電源装置に充電しようとしても、主電源装置の電源電圧と副電源装置の電源電圧との電圧差が得られない場合には、副電源装置を充電できない。このことは、副電源装置からモータ駆動回路へ給電する場合においても同様である。この結果、副電源装置の充電状態を良好に維持することができない。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、副電源装置の充電状態を良好に維持することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、主電源装置と、上記主電源装置の出力電圧を昇圧し昇圧された電力を電気アクチュエータの駆動回路に出力する昇圧回路と、上記昇圧回路と上記駆動回路とのあいだに並列に接続され上記昇圧回路から出力された電力を充電するとともに充電された電力を使って上記駆動回路への電源供給を補助する副電源装置とを備えた電源制御装置において、上記副電源装置に充電された充電量を検出する充電量検出手段と、上記検出された充電量と目標充電量とに基づいて上記昇圧回路の昇圧電圧を制御することにより上記副電源装置の充放電を制御する充放電制御手段とを備えたことにある。
この発明によれば、主電源装置の出力電圧が昇圧回路により昇圧され、昇圧された電力が電気アクチュエータの駆動回路に供給される。昇圧回路から駆動回路への電源供給回路には副電源装置が並列に接続される。従って、副電源装置は、昇圧回路から出力された電力を充電するとともに、充電した電力を駆動回路に供給して主電源装置の電源供給を補助する。
駆動回路への電源供給源は、昇圧回路の昇圧電圧と副電源装置の電源電圧(出力電圧)とのバランス(電圧の大小関係)で自然に切り替わる。そこで、本発明においては、充放電制御手段が、昇圧回路の昇圧電圧を制御することにより副電源装置の充放電を制御する。この場合、充放電制御手段は、充電量検出手段により検出された副電源装置の充電量と目標充電量とに基づいて昇圧回路の昇圧電圧を制御する。従って、副電源装置の充電と放電とを適切に切り替えることが可能となり、副電源装置の充電状態を良好に維持することができる。尚、目標充電量は、予め定められた固定値であっても、使用条件等に応じて変更されるものであってもどちらでも良い。
また、本発明によれば、主電源装置の電圧を昇圧回路により昇圧して駆動回路に電源供給するため電気アクチュエータを効率良く駆動することができる。しかも、その昇圧回路を利用して副電源装置の充放電を制御することができるため、大がかりな構成の追加や大幅なコストアップを招かない。
本発明の他の特徴は、上記充放電制御手段は、上記検出された充電量が目標充電量未満の場合、上記昇圧電圧が上記副電源装置の電源電圧より高くなるように昇圧制御することにある。
この発明によれば、副電源装置に充電されている充電量が目標充電量未満である場合には、昇圧回路の昇圧電圧が副電源装置の電源電圧より高くなるように昇圧制御される。これにより、主電源装置の電力を副電源装置に充電することができ、副電源装置の充電量を補うことが可能となる。
本発明の他の特徴は、上記充放電制御手段は、上記検出された充電量が目標充電量未満で、かつ、上記駆動回路の消費電力が上記昇圧回路の出力許容電力以上となる場合、上記昇圧電圧が上記副電源装置の電源電圧と同じ電圧となるように昇圧制御することにある。
この発明によれば、副電源装置に充電されている充電量が目標充電量未満であっても駆動回路の消費電力(電気アクチュエータを駆動するために消費される電力)が昇圧回路の出力許容電力以上となる場合には、昇圧回路の昇圧電圧が副電源装置の電源電圧と同じ電圧となるように昇圧制御される。従って、主電源装置から副電源装置への充電が規制され、主電源装置と副電源装置とを使って駆動回路に電源供給できる。つまり、副電源装置への充電よりも駆動回路への電源供給が優先される。この結果、副電源装置の駆動回路への電源供給補助と電力消費抑制(放電抑制)とを両立することができる。
本発明の他の特徴は、上記充放電制御手段は、上記検出された充電量が目標充電量以上の場合、上記駆動回路への電源供給時に上記昇圧電圧が上記副電源装置の電源電圧と同じ電圧となるように昇圧制御することにある。
この発明によれば、副電源装置に充電されている充電量が目標充電量以上となる場合には、駆動回路への電源供給時に昇圧電圧が副電源装置の電源電圧と同じ電圧となるように昇圧制御される。このため、主電源装置から副電源装置への充電が規制され、副電源装置への過剰な充電を抑制することができる。これにより、副電源装置の寿命を延ばすことが可能となる。また、主電源装置と副電源装置とを使って駆動回路に適切に電源供給することができる。また、例えば、駆動回路に電源供給しないときには昇圧回路の昇圧作動を停止させて、副電源装置が充放電しないようにすることができる。この場合においては、昇圧作動に必要なエネルギー消費を抑制することができる。
本発明の他の特徴は、上記充放電制御手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量と目標充電量とに基づいて上記副電源装置に流す目標充放電電流を設定する目標充放電電流設定手段と、上記副電源装置に流れる充放電電流を検出する電流検出手段と、上記目標充放電電流設定手段により設定された目標充放電電流と上記電流検出手段により検出された充放電電流との差に基づいて上記昇圧回路の昇圧電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備えたことにある。
この発明においては、充放電制御手段が目標充放電電流設定手段と電流検出手段とフィードバック制御手段とを備えている。目標充放電電流設定手段は、充電量検出手段により検出された充電量と目標充電量とに基づいて副電源装置に流す目標充放電電流を設定する。電流検出手段は、副電源装置に流れる実際の充放電電流を検出する。フィードバック制御手段は、副電源装置に流れる実際の充放電電流と目標充放電電流との差に基づいて昇圧回路の昇圧電圧をフィードバック制御する。つまり、実際の充放電電流と目標充放電電流との差が少なくなるように昇圧制御する。尚、目標充放電電流設定手段により設定される目標充放電電流、および、電流検出手段により検出される充放電電流は、充電方向と放電方向とを区別した電流値、つまり通電方向を特定した電流値を表すものである。
例えば、フィードバック制御手段は、充電方向の目標充放電電流に対して検出された充電電流が大きい場合、昇圧回路の昇圧電圧を下げ副電源装置への充電電流を減少させる。また、フィードバック制御手段は、目標充放電電流がゼロに設定されているときに、副電源装置に充電電流が流れている場合には昇圧電圧を下げて副電源装置への充電を規制し、副電源装置から放電電流が流れている場合には昇圧電圧を上げて副電源装置からの放電を規制する。
従って、本発明によれば、副電源装置の充電状態を目標とする充電状態に良好に制御することが可能となり、副電源装置の過剰な充電や放電を抑制することができる。
本発明の他の特徴は、上記目標充放電電流設定手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量未満の場合、上記昇圧回路の出力許容電力と上記駆動回路の消費電力とに基づいて目標充電電流を設定することにある。
この発明によれば、副電源装置の充電量が目標充電量に達していない場合、昇圧回路の出力許容電力と駆動回路の消費電力とに基づいて目標充電電流(充電方向の目標充放電電流)が設定される。従って、昇圧回路の出力電力を使って適正に副電源装置を充電することができる。この場合、フィードバック制御手段は、副電源装置に目標充電電流が流れるように、昇圧回路の昇圧電圧を副電源装置の電源電圧より高い電圧にまで昇圧して副電源装置を充電する。
例えば、昇圧回路の出力許容電力から駆動回路の消費電力を引いた差分電力を副電源装置に供給するように目標充電電流を設定するとよい。この場合には、昇圧回路の出力能力の余剰分をフルに使って副電源装置を充電することができる。この結果、副電源装置を迅速に充電することが可能となり大電力消費に備えることができる。
本発明の他の特徴は、上記目標充放電電流設定手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量未満で、かつ、上記駆動回路の消費電力が上記昇圧回路の出力許容電力以上となる場合、上記目標充放電電流をゼロに設定することにある。
この発明によれば、副電源装置の充電量が目標充電量に達していない場合であっても、駆動回路の消費電力が昇圧回路の出力許容電力以上となる場合は、目標充放電電流がゼロに設定される。従って、主電源装置の電力を電気アクチュエータの駆動に優先して使用することができる。この場合、昇圧回路の昇圧電圧が副電源装置の電源装置と同じ電圧に制御されることになるが、駆動回路の消費電力が増大して電力供給不足が生じた場合には、昇圧制御に反して昇圧電圧がドロップして副電源装置の電源電圧を下回るため、それに応じて副電源装置から駆動回路へ電源供給することができる。つまり、主電源装置で不足する電力分だけ副電源装置から電源供給することが可能となる。この結果、駆動回路への電源供給補助と副電源装置の電力消費抑制(放電抑制)とを両立することができる。
本発明の他の特徴は、上記目標充放電電流設定手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量以上の場合、上記目標充放電電流をゼロに設定することにある。
この発明によれば、充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量以上であれば目標充放電電流がゼロに設定されるため、副電源装置に充電電流が流れず、副電源装置への過剰な充電を抑制することができる。従って、副電源装置の寿命を延ばすことが可能となる。また、副電源装置から駆動回路への電源供給についても、昇圧回路からの出力能力の範囲内においては行われない。従って、副電源装置を良好な充電状態に維持することができる。
駆動回路へ電源供給中においては、昇圧回路の昇圧電圧が副電源装置の電源装置と同じ電圧に制御されることになるが、駆動回路の消費電力が増大して電力供給不足が生じた場合には、昇圧制御に反して昇圧電圧がドロップする。これにより、副電源装置の電源電圧が昇圧電圧を上回り、副電源装置から駆動回路へ電源供給される。つまり、主電源装置で不足する電力分だけ副電源装置から駆動回路に電源供給される。この結果、駆動回路への電源供給補助と副電源装置の過剰充電抑制とを両立することができる。
また、例えば、駆動回路に電源供給しないときには昇圧回路の昇圧作動を停止させて、副電源装置に流れる充放電電流をゼロにすることができる。この場合には、昇圧作動に必要なエネルギー消費を抑制することも可能となる。
本発明の他の特徴は、上記充電量検出手段は、上記副電源装置に流れる充放電電流の積算値に基づいて上記副電源装置の充電量を検出することにある。
この発明においては、副電源装置に流れる充放電電流(充電電流と放電電流の測定値)を積算することにより副電源装置の充電量を検出する。この場合、充電電流が流れている状態では副電源装置の充電量を増大させる側に、放電電流が流れている場合では副電源装置の充電量を減少させる側に積算する。従って、副電源装置の保有する充電量を適正に検出することができる。
本発明の他の特徴は、上記充電量が上記目標充電量未満であると判断する場合には上記目標充電量として第1目標値を用い、上記充電量が上記目標充電量以上であると判断する場合には上記目標充電量として上記第1目標値より大きな第2目標値を用いることにある。
この発明においては、副電源装置の充電量と目標充電量とを比較するにあたり、目標充電量を第1目標値と第1目標値より大きな第2目標値とを選択的に用いて比較するため、副電源装置の充電量が第1目標値と第2目標値との間の値をとるときには、比較判断結果が反転しない。例えば、検出された充電量が第1目標値以上で第2目標値未満の場合には、直前の比較判断結果を継続する。従って、第1目標値と第2目標値との間に不感帯が設けられ、副電源装置の充電と放電とが頻繁に繰り返されるといったハンチング現象を防止することができる。これにより、副電源装置の寿命を延ばすことができる。
本発明の他の特徴は、上記昇圧回路の昇圧電圧を検出する昇圧電圧検出手段と、上記昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段と、上記昇圧回路の出力電力が上記昇圧回路の出力許容電力を上回らないように上記検出された出力電流に応じて上記昇圧制御回路により制御される昇圧電圧の上限値を設定する上限電圧設定手段とを備えたことにある。
この発明においては、昇圧電圧検出手段が昇圧回路の昇圧電圧(昇圧電圧値)を検出し、昇圧電流検出手段が昇圧回路の出力電流(出力電流値)を検出する。上限電圧設定手段は、昇圧回路の出力電力が昇圧回路の出力許容電力を上回らないように、検出された出力電流に応じて昇圧電圧の上限値を設定する。従って、昇圧回路の保護、昇圧効率低下の抑制を図ることができる。また、駆動回路で必要とされる電力が昇圧回路の出力許容電力を上回る場合には、昇圧電圧が上限値制限により低下する。これにより、昇圧電圧に対して副電源装置の電源電圧が上回り、副電源装置から駆動回路に確実に電源供給できるようになる。
本発明の他の特徴は、上記上限電圧設定手段は、上記検出された出力電流が基準電流以下の場合には一定の上限電圧を設定し、上記出力電流が上記基準電流を超える場合には上記検出された出力電流の増加に伴って減少する上限電圧を設定することにある。
この発明によれば、検出された出力電流が基準電流以下の場合には、一定の上限電圧が設定されるため、昇圧回路の保護、昇圧効率低下の抑制を図ることができる。また、出力電流が基準電流を超える場合、出力電流の増加に伴って減少する上限電圧が設定されるため、昇圧回路の保護、昇圧効率低下の抑制に加えて、副電源装置から駆動回路に確実に電源供給できるようになる。
また、例えば、出力電流が基準電流を超える場合には、検出された出力電流の増加に反比例して減少する上限電圧を設定するとよい。この場合には、昇圧回路の出力電力を一定の上限電力にて制限することができる。
本発明の他の特徴は、上記電気アクチュエータを作動させて車輪に転舵力を付与する車両のステアリング装置に使用されることにある。
この発明は、車輪に転舵力を付与する電気アクチュエータを備えたステアリング装置の電源制御装置に適用したものである。ステアリング装置としては、例えば、運転者の行った操舵操作を電気アクチュエータの作動によりアシストする電動パワーステアリング装置に適用することができる。こうしたステアリング装置においては、電気アクチュエータの消費電力が大きく、しかも、操舵操作状態や車両走行状態に応じて必要電力が大きく変動する。
従って、本発明を車両のステアリング装置の電源制御装置に適用することで、大電力が必要となるときに適切に副電源装置を使って電源供給することができる。これにより、電力不足で適切な操舵力が得られないといった不具合が抑制される。また、大電力が必要なときには副電源装置を用いて電源供給補助するため、主電源装置の大容量化を抑制することができる。
本発明の他の特徴は、上記電気アクチュエータは電動モータであり、上記駆動回路は供給された電源をスイッチング素子のデューティ制御により電圧調整して上記電動モータを駆動するブリッジ回路であることにある。
この発明が適用されるステアリング装置においては、電動モータをブリッジ回路により制御して車輪に転舵力を発生させる。ブリッジ回路は、昇圧回路あるいは副電源装置から電源供給され、その電源をデューティ制御により電圧調整して電動モータに出力する。従って、昇圧制御によりブリッジ回路に供給される電源電圧が変化しても、ブリッジ回路の電圧調整により電動モータを適正に駆動制御することができる。また、昇圧回路により昇圧した電力を用いて電動モータを駆動するため駆動効率を向上させることができる。尚、ブリッジ回路としては、3相インバータ回路やHブリッジ回路などを用いることができる。
本発明の他の特徴は、車速情報を取得する車速情報取得手段と、上記取得された車速情報に基づいて上記目標充電量を設定する目標充電量設定手段とを備えたことにある。
この発明が適用される車両のステアリング装置においては、電気アクチュエータを使って車輪に転舵力を付与する。この場合、車輪に転舵力を付与するために必要となる電力は、車速に応じて変化する。つまり、車速が低いほど電気アクチュエータに供給する必要電力が増大し、車速が高いほど電気アクチュエータに供給する必要電力が減少する。そこで、この発明では車速情報取得手段により車速情報を取得し、取得した車速情報に基づいて目標充電量設定手段が目標充電量を設定する。例えば、目標充電量設定手段は、車速情報に基づいて、車速の増大にしたがって減少する目標充電量を設定する。これにより目標充電量が適正に設定され、副電源装置の寿命を一層延ばすことができる。
本発明の他の特徴は、上記充電量検出手段は、車両のイグニッションスイッチのオン期間中に上記副電源装置に流れる充放電電流の積算値を求める充放電電流積算手段と、上記イグニッションスイッチのオフを検出して上記副電源装置に充電された電荷を上記主電源装置に放電させる終了時放電手段とを備えたことにある。
この発明においては、イグニッションスイッチのオン期間中に副電源装置に流れる充放電電流の積算値を充放電電流積算手段により求め、この積算値に基づいて副電源装置の充電量を検出する。車両の未使用期間が長い場合には、自然放電等により副電源装置の充電量が変動してしまう。そこで、この発明においては、イグニッションスイッチのオフ検出時に、終了時放電手段が副電源装置に充電された電荷を主電源装置に放電させる。従って、充放電電流の積算を開始するときの初期充電量がばらつきにくく、充電量を精度良く検出することができる。また、未使用時に電荷を放電させておくため、副電源装置として例えばキャパシタを用いた場合には寿命が向上する。
本発明の実施形態に係る電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。
アシストトルクテーブルを表すグラフである。
充放電制御ルーチンを表すフローチャートである。
車速と目標充電量との関係を表すグラフである。
実充電量検出ルーチンを表すフローチャートである。
消費電力の推移と、それに伴って変動する副電源装置の充放電状態、副電源装置の充電量、フラグFの設定状態を表したグラフである。
副電源装置に充電される充電電力の推移と、充電量の推移とを表したグラフである。
終了時放電制御ルーチンを表すフローチャートである。
変形例に係る充放電制御ルーチンの一部を表すフローチャートである。
変形例にかかる昇圧上限電圧特性を表すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る電源制御装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態として電源制御装置を備えた車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
本実施形態の車両の電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、主電源装置100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電源供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30との間の電源供給回路に並列接続される副電源装置50と、電動モータ20および昇圧回路40の作動を制御する電子制御装置60とを主要部として備えている。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ20が組み付けられている。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRに転舵力を付与して操舵操作をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTxと呼ぶ。操舵トルクTxは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される。一方、この電動モータ20の回転角は、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。また、電動モータ20の回転角を時間微分した回転角速度は、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるため、操舵ハンドル11の操舵角速度としても共通に用いられる。以下、回転角センサ22の出力信号により検出される操舵ハンドル11の操舵角の値を操舵角θxと呼び、その操舵角θxを時間微分して得られる操舵角速度の値を操舵角速度ωと呼ぶ。操舵角θxは、正負の値により操舵ハンドル11の中立位置に対する右方向および左方向の舵角をそれぞれ表す。
モータ駆動回路30は、MOSFETからなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電源供給ライン37を引き出した構成を採用している。
第1スイッチング素子31,第3スイッチング素子33,第5スイッチング素子35のドレインは、それぞれ後述する昇圧駆動ライン113に接続され、第2スイッチング素子32,第4スイッチング素子34,第6スイッチング素子36のソースは、それぞれ接地ライン111に接続される。モータ駆動回路30から電動モータ20への電源供給ライン37には、電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出(測定)し、その検出した電流値に対応した検出信号を電子制御装置60に出力する。以下、この測定された電流値を、モータ電流iuvwと呼ぶ。また、この電流センサ38をモータ電流センサ38と呼ぶ。
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートが電子制御装置60に接続され、電子制御装置60からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。
尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが逆並列方向に寄生している。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置は、主電源装置100から電源供給される。主電源装置100は、主バッテリ101と、エンジンの回転により発電するオルタネータ102とを並列接続して構成される。主バッテリ101としては、定格出力電圧が12Vの一般の車載バッテリが用いられる。
この主電源装置100は、電動パワーステアリング装置だけでなく他の車載電気負荷への電源供給も共通して行う。主バッテリ101の電源端子(+端子)に接続される電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、電子制御装置60のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン105は、モータ駆動回路30と電子制御装置60との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン104には、イグニッションスイッチ106が接続される。駆動系電源ライン105には、電源リレー107が接続される。この電源リレー107は、電子制御装置60からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン104は、電子制御装置60の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ106よりも負荷側(電子制御装置60側)においてダイオード108を備えている。このダイオード108は、カソードを電子制御装置60側、アノードを主電源装置100側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
駆動系電源ライン105には、電源リレー107よりも負荷側において制御系電源ライン104と接続する連結ライン109が分岐して設けられる。この連結ライン109は、制御系電源ライン104のダイオード108接続位置よりも電子制御装置60側に接続される。また、連結ライン109には、ダイオード110が接続される。このダイオード110は、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、連結ライン109を介して駆動系電源ライン105から制御系電源ライン104には電源供給できるが、制御系電源ライン104から駆動系電源ライン105には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン105および接地ライン111は昇圧回路40に接続される。また、接地ライン111は、電子制御装置60の接地端子にも接続される。
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン112が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOSFETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路40は、電子制御装置60の電源制御部62(後述する)により昇圧制御される。電源制御部62は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源装置100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン112に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン112から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源装置100側へのノイズが除去される。
昇圧回路40の出力電圧(昇圧電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比制御により調整可能となっており、第1昇圧用スイッチング素子43のオンデューティ比が高いほど昇圧電圧は高くなる。本実施形態における昇圧回路40は、例えば、20V〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧回路40の出力側となる昇圧電源ライン112には、昇圧回路40の出力電流を検出する電流センサ46と、昇圧回路40の出力電圧を検出する電圧センサ47とが設けられる。この電流センサ46と電圧センサ47とは、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、電源制御部62に対して測定値である電流i1および電圧v1を表す信号を出力する。以下、電流センサ46を主電流センサ46と呼び、電圧センサ47を主電圧センサ47と呼ぶ。尚、主電流センサ46に関しては、後述する変形例において使用されるものであって、この実施形態においては設けなくても良い。
昇圧電源ライン112は、昇圧駆動ライン113と充放電ライン114とに分岐する。昇圧駆動ライン113は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン114は、副電源装置50のプラス端子に接続される。
副電源装置50は、昇圧回路40から出力される電力を充電し、モータ駆動回路30で大電力を必要としたときに、主電源装置100を補助してモータ駆動回路30に電源供給する高圧蓄電装置である。従って、副電源装置50は、昇圧回路40の出力電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。この副電源装置50として、例えば、キャパシタ(電気二重層コンデンサ)を用いることができる。
副電源装置50の接地端子は、接地ライン111に接続される。また、充放電ライン114には、副電源装置50に流れる充放電電流を検出する電流センサ51が設けられる。電流センサ51は、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、電源制御部62に対して測定値である充放電電流i2を表す信号を出力する。電流センサ51は、電流の向き、つまり、昇圧回路40から副電源装置50に流れる充電電流と、副電源装置50からモータ駆動回路30に流れる放電電流とを区別して、それらの大きさを測定する。充放電電流i2は、充電電流として流れるときには正の値により、放電電流として流れるときには負の値により表される。以下、この電流センサ51を副電流センサ51と呼び、副電流センサ51により測定された電流値を実充放電電流i2と呼ぶ。
電子制御装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成され、その機能から、アシスト制御部61と電源制御部62とに大別される。アシスト制御部61は、操舵トルクセンサ21、回転角センサ22、モータ電流センサ38、車速センサ23を接続し、操舵トルクTx、操舵角θx、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部61は、これらのセンサ信号に基づいて、モータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して電動モータ20を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。
電源制御部62は、昇圧回路40の昇圧制御を行うことにより副電源装置50の充電と放電とを制御する。電源制御部62には、主電圧センサ47,主電流センサ46,副電流センサ51を接続し、昇圧回路の昇圧電圧v1,出力電流i1、充放電電流i2を表すセンサ信号を入力する。電源制御部62は、これらセンサ信号に基づいて、昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その出力電圧である昇圧電圧を変化させる。
次に、電子制御装置60のアシスト制御部61が行う操舵アシスト制御処理について説明する。図2は、アシスト制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。操舵アシスト制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部61は、まず、ステップS11において、車速センサ23によって検出された車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクTxとを読み込む。
続いて、ステップS12において、図3に示すアシストトルクテーブルを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクTxに応じて設定される基本アシストトルクTasを計算する。アシストトルクテーブルは、電子制御装置60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTxの増加にしたがって基本アシストトルクTasも増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図3のアシストトルクテーブルは、右方向の操舵トルクTxに対する基本アシストトルクTasの特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば同じである。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS13において、この基本アシストトルクTasに補償トルクを加算して目標指令トルクT*を計算する。この補償トルクは、操舵角θxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵角速度ωに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算する。この計算に当たっては、回転角センサ22にて検出した電動モータ20の回転角(操舵ハンドル11の操舵角θxに相当)を入力して行う。また、操舵角速度ωについては、操舵ハンドル11の操舵角θxを時間で微分して求める。
次に、アシスト制御部61は、ステップS14において、目標指令トルクT*に比例した目標電流ias*を計算する。目標電流ias*は、目標指令トルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS15において、電動モータ20に流れるモータ電流iuvwをモータ電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS16において、このモータ電流iuvwと先に計算した目標電流ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)により目標指令電圧v*を計算する。
そして、アシスト制御部61は、ステップS17において、目標指令電圧v*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が制御されて、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、据え切り操作時や、低速走行でのハンドル操作時において大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源装置100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源装置100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に電源供給を補助する副電源装置50を備える。また、電動モータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力をモータ駆動回路30および副電源装置50に供給するシステムを構成している。
こうした電源供給システムを構成した場合、主電源装置100と副電源装置50との両方を使うことにより電動パワーステアリング装置の性能(アシスト性能)をフルに発揮できる。このため、本来のアシスト性能を確保するためには、副電源装置50の状態を良好に保つ必要がある。副電源装置50は、過剰に充電したり頻繁に充放電を繰り返したりすると、早く劣化してしまい寿命が短くなる。また、副電源装置50の充電量が不足していている場合には、本来のアシスト性能を発揮できなくなる。
そこで、電子制御装置60の電源制御部62は、昇圧回路40を利用して昇圧電圧を制御することにより副電源装置50の充放電(充電と放電)を制御し、副電源装置50をできるだけ良好な状態に維持する。
以下、電子制御装置60の電源制御部62が行う充放電制御処理について説明する。図4は、電源制御部62により実施される充放電制御ルーチンを表し、電源制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。充放電制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS21において、副電源装置50に充電されている実充電量Jxを表すデータを読み込む。この実充電量Jxは、後述する実充電量検出ルーチン(図6)により逐次算出されるものである。従って、このステップS21は、実充電量検出ルーチンにより算出された最新の実充電量Jxを表すデータの読み込む処理となる。
次に、電源制御部62は、ステップS22において、車速センサ23により検出された車速Vxを読み込み、続いて、ステップS23において車速Vxに応じた目標充電量J*を設定する。この目標充電量J*は、副電源装置50に充電すべき最適充電量であって、図5に示すように、基準車速V0を境にして、車速Vxが基準車速V0未満であれば目標充電量Jhighが選択され、車速Vxが基準速度V0以上であれば目標充電量Jhighより小さな目標充電量Jlowが選択される。尚、副電源装置50は、目標充電量J*の充電に対して過充電とならないような十分な電池容量を備えている。
上述した操舵アシスト制御を行う場合、図3に示すように、車速Vxが小さいほど基本アシストトルクTasが高く設定されるため、駆動回路30の消費電力(電動モータ20を駆動するために消費される電力)が大きくなる。そこで、この充放電制御ルーチンでは、副電源装置50の目標充電量J*を車速Vxに応じて設定する。本実施形態においては、2段階設定しているが、3段階以上、あるいは車速に応じて連続的に設定されるものであっても良く、車速Vxの増大にしたがって減少する目標充電量J*を設定するものであればよい。尚、目標充電量J*は、固定値であってもよい。
電源制御部62は、目標充電量J*を設定すると、続いてステップS24において副電流センサ51により検出される実充放電電流i2を読み込む。次に、ステップS25において、フラグFが「0」か否かについて判断する。フラグFは、後述する処理からわかるように、副電源装置50の充電状態の良否を表すもので、F=0で充電良好(充電不要)を表し、F=1で充電不足(充電要)を表す。尚、本充放電制御ルーチンの起動時においては「0」に設定されている。
電源制御部62は、フラグFが「0」の場合には(S25:YES)、その処理をステップS26に進めて、実充電量Jxが目標充電量J*未満であるか否かについて判断する。このステップS26は、副電源装置50の充電量が不足したか否かを判断するもので、Jx<J*の場合には(S26:YES)、充電量が不足したと判断して、ステップS27において、フラグFを「1」に設定する。一方、Jx≧J*の場合には(S26:NO)、充電量が不足していないと判断してフラグFの設定変更を行わない。従って、フラグFが「0」に維持される。
また、ステップS25において、フラグFが「1」の場合には(S25:NO)、その処理をステップS28に進めて、実充電量Jxが、目標充電量J*に不感帯値A(正の値)を加算した充電量(J*+A)にまで達したか否かについて判断する。このステップS28は、副電源装置50の充電不足が解消したか否かを判断するもので、Jx≧J*+Aの場合には(S28:YES)、充電不足が解消したと判断して、ステップS29において、フラグFを「0」に設定する。一方、Jx<J*+Aの場合には(S28:NO)、充電量が不足していると判断して、フラグFの設定変更を行わない。従って、フラグFが「1」に維持される。
この不感帯値Aは、実充電量Jxと目標充電量J*との比較判定結果(充電の要否)が頻繁に変動しないように設定したものである。尚、目標充電量J*が本発明の第1目標値に相当し、目標充電量J*に不感帯値A(正の値)を加算した充電量(J*+A)が本発明の第2目標値に相当する。
こうしてフラグFが設定されると、ステップS30において、そのフラグFの設定状況が確認される。フラグFが「0」の場合(S30:NO)、つまり、副電源装置50の充電状態が良好と判断される場合には、その処理をステップS31に進めて、目標充放電電流i2*をゼロ(i2=0)に設定する。一方、フラグFが「1」の場合(S30:YES)、つまり、副電源装置50の充電量が不足していると判断される場合には、その処理をステップS32に進めて、目標充放電電流i2*を以下のように計算により求める。
i2*=(Wlim−Wx)/v1n-1
ここで、Wlimは昇圧回路40の出力許容電力、Wxはモータ駆動回路30の消費電力、v1n-1は前回昇圧電圧である。前回昇圧電圧とは、所定周期で繰り返される本制御ルーチンにおける1周期前での昇圧回路40の昇圧電圧を表す。この場合、前回昇圧電圧v1n-1は、主電圧センサ47にて検出した電圧v1であっても、後述するフィードバック制御上での制御値であってもよい。本制御ルーチンの起動時においては、前回昇圧電圧v1n-1として、予め設定した初期値(例えば、12V)が使用される。また、出力許容電力Wlimは、昇圧回路40の規格に基づいて予め設定されている値である。また、モータ駆動回路30の消費電力Wxは、主電圧センサ47にて検出された昇圧電圧v1とモータ電流センサ38にて検出されたモータ電流iuvwとの積により算出される。従って、このステップS32における処理は、主電圧センサ47による電圧測定値の読み込み処理と、モータ電流センサ38による電流測定値の読み込み処理とを含んだものとなっている。
続いて、電源制御部62は、ステップS33において、目標充放電電流i2*が正の値か否かを判断する。上述したように目標充放電電流i2*は、昇圧回路40の出力許容電力Wlimからモータ駆動回路30の消費電力Wxを減算し、その減算値を前回昇圧電力電圧v1n-1で除算したものである。従って、電動モータ20の消費電力Wxが昇圧回路40の出力許容電力Wlim範囲内であればi2*>0(S33:YES)となり、逆に、モータ駆動回路30の消費電力Wxが昇圧回路40の出力許容電力Wlim以上となっている場合にはi2*≦0(S33:NO)となる。
目標充放電電流i2*がゼロ以下(i2*≦0)の場合は、ステップS31において、目標充放電電流i2*を新たにゼロ(i2*=0)に設定する。一方、目標充放電電流i2*が正の値(i2*>0)の場合は、先のステップS32にて計算された目標充放電電流i2*を変更しない。
電源制御部62は、こうして目標充放電電流i2*を設定すると、その処理をステップS34に進める。ステップS34においては、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差に基づいて昇圧回路40の昇圧電圧をフィードバック制御する。つまり、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差(i2*−i2)が少なくなるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。本実施形態においては、偏差(i2*−i2)に基づいたPID制御を行う。
電源制御部62は、昇圧回路40の第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源装置100から供給された電源を昇圧するが、このパルス信号のデューティ比を変更することにより昇圧電圧を制御する。
この場合、目標充放電電流i2*が正の値であれば(i2>0)、副電源装置50に充電方向に向かって電流が流れるように、また、その大きさが目標充放電電流i2*となるように昇圧制御される。従って、昇圧回路40から出力される昇圧電圧は、副電源装置50の電源電圧よりも高くなるように制御される。つまり、実充電量Jxが目標充電量J*に満たない状態で、かつ、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕が有る場合には、主電源装置100の電力が昇圧回路40を介して副電源装置50に充電される。しかも、モータ駆動回路30への電力供給分を確保した上で、昇圧回路40の電源供給能力をフルに使って充電するように目標充放電電流i2*が設定されるため、副電源装置50を迅速に充電することができる。
一方、目標充放電電流i2*がゼロに設定されている場合には(i2=0)、副電源装置50に充電電流も放電電流も流れないように昇圧回路40の昇圧電圧が制御される。従って、昇圧回路40の昇圧電圧は、副電源装置50の電源電圧と同じ電圧に制御されることになる。このため、副電源装置50は充電されない。また、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力を超えない範囲内では、副電源装置50から放電電流が流れないように昇圧電圧が維持され、モータ駆動回路30は昇圧回路40の出力電力のみで作動する。そして、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達すると、昇圧制御にかかわらず副電源装置50の放電電流をゼロに維持することができず昇圧電圧が低下する。これにより、副電源装置50から不足電力分がモータ駆動回路30に供給される。つまり、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力範囲内では副電源装置50の電力が使われず、出力能力を超える大電力が必要となったときのみ主電源装置100に加えて副電源装置50からモータ駆動回路30に電源供給される。
本充放電制御ルーチンは、ステップS34のフィードバック制御を行うと一旦終了し、その後、所定の短い周期で繰り返し実施される。本実施形態においては、後述するように、イグニッションスイッチ106のオフ操作時に、副電源装置50に充電されている電荷を主バッテリ101に放電する制御(図9)が組み込まれている。従って、車両の起動時における実充電量Jxは、目標充電量J*に満たない。このため、本充放電制御ルーチンの起動時においては、ステップS26において「YES」と判定されて、フラグFが「1」に設定される。従って、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力許容電力を下回っているあいだは、昇圧回路40から出力された電力で副電源装置50が充電される。
充放電制御ルーチンの実行中においては、常に副電源装置50の充電状態が繰り返し判定される。こうした充放電制御により副電源装置50の充電量が増大し、検出された実充電量Jxが目標充電量J*に不感帯値Aを加算した充電量にまで達すると(S28:YES)、フラグFが「0」に設定され(S29)、目標充放電電流i2*がゼロに設定される。
フラグFが「0」に設定されているときは、副電源装置50への充電が必要なく、目標充放電電流i2*がゼロに設定されて昇圧回路40の昇圧電圧がフィードバック制御される。この場合、電動モータ20が駆動されていないときには、昇圧回路40からも副電源装置50からもモータ駆動回路30に電流が流れないため、昇圧回路40の昇圧動作を停止して副電源装置50に充放電電流が流れないようにすることができる。例えば、モータ電流センサ38により検出されるモータ電流iuvwが流れていないことを確認して、昇圧回路40の第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44をオフ状態に維持する。従って、昇圧動作に必要なエネルギー消費を抑えることができる。
この状態からモータ駆動回路30が作動を開始すると、副電源装置50からモータ駆動回路30に放電電流が流れる。従って、フィードバック制御により実充放電電流i2がゼロになるように昇圧回路40の昇圧動作が開始される。これにより、昇圧回路40の昇圧電圧が副電源装置50の電源電圧と同じ電圧に制御され、即座に副電源装置50の充放電が規制される。この場合においても、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超えないあいだは、副電源装置50からの電力供給が停止され、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達した場合にのみ、その不足電力分が副電源装置50から供給される。
また、副電源装置50に対して充電不要と判断された後であっても、副電源装置50の実充電量Jxが目標充電量J*を下回った場合には、フラグFが「1」に変更される。この場合、昇圧回路40の出力に余裕が有れば、正の目標充放電電流i2*が設定され、その余裕分の電力で副電源装置50が充電される。また、昇圧回路40の出力に余裕が無ければ、目標充放電電流i2*がゼロに設定され、副電源装置50の充電を規制するとともに、電力不足分を副電源装置50から電源供給する。
図7は、充放電制御を行っているときの、モータ駆動回路30の消費電力の推移と、それに伴って変動する副電源装置50の充放電状態、副電源装置50の充電量、フラグFの設定状態を表したものである。
次に、実充電量検出処理について説明する。図6は、電源制御部62により実施される実充電量検出ルーチンを表し、電源制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。実充電量検出ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。この実充電量検出ルーチンにより検出された実充電量は、ステップS21にて読み込まれる実充電量Jxとなる。
本検出ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS51において、副電流センサ51により検出された実充放電電流i2を読み込む。続いて、ステップS52において、現時点の実充電量Jxを以下のように計算により求める。
Jx=J(x-1)+i2
ここで、J(x-1)は前回実充電量である。前回実充電量とは、所定周期で繰り返される本実充電量検出ルーチンにおける1周期前での実充電量Jxを表す。
本実施形態においては、イグニッションスイッチ106のオフ操作時に副電源装置50に充電されている電荷を主バッテリ101に放電する。このため、本検出ルーチンの起動時においては、副電源装置50に充電されている実充電量Jxは、ほぼ一定の低い値となっている。従って、前回実充電量J(x-1)の初期値としては、予め設定した固定値(例えば、J(x-1)=0)が使われる。
続いて、電源制御部62は、ステップS53において、現時点の実充電量Jxを前回実充電量J(x-1)として記憶し、本検出ルーチンを一旦終了する。本検出ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実行される。従って、次の本検出ルーチン実行時においては、前回のステップS52にて算出された実充電量Jxに今回検出した実充放電電流i2を加算した値が実充電量Jxとなる。
電源制御部62は、イグニッションスイッチ106のオン期間中、こうした処理を繰り返すことにより、実充電量Jxを実充放電電流i2の積算値として求める。この場合、充電電流が流れている状態では副電源装置50の実充電量Jxを増大させる側に、放電電流が流れている場合では副電源装置50の実充電量Jxを減少させる側に積算する。従って、副電源装置50の保有する充電量を適正に検出することができる。図8は、副電源装置50に充電される充電電力の推移と、充電量の推移とを表したグラフである。図中のグラフ(A)において、負の値を示す充電電力は放電電力を表している。
次に、副電源装置50に充電された電荷の放電制御について説明する。副電源装置50としてキャパシタを用いたケースでは、長期間使用しない場合には電荷を放出した方が寿命が長くなる。また、上述したように実充放電電流i2の積算値に基づいて副電源装置50の充電量Jxを検出する場合、車両起動時における充電量初期値の推定が難しい。そこで本実施形態においては、イグニッションスイッチ106がオフしたときに、副電源装置50に充電されている電荷を昇圧回路40を経由して主バッテリ101に放電させる。以下、その制御処理について図9を用いて説明する。
図9は、電源制御部62により実施される終了時放電制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。終了時放電制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106のオフ操作を検出したときに起動する。本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS61において、昇圧回路40の第2昇圧用スイッチング素子44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して、第2昇圧用スイッチング素子44を所定のデューティ比でオンオフさせる。イグニッションスイッチ106がオフしている期間は操舵アシスト制御も終了しているため、モータ駆動回路30の各スイッチング素子31〜36はオフ状態に維持されている。従って、副電源装置50の電荷は、主バッテリ101に向かって放電される。この場合、第2昇圧用スイッチング素子44のデューティ比を適宜設定することで、副電源装置50から主バッテリ101に流れる放電電流の大きさを制限することができる。尚、第1昇圧用スイッチング素子43はオフ状態に維持される。
続いて、電源制御部62は、ステップS62において、副電流センサ51により測定された実充放電電流i2(放電方向の電流値)を読み込み、ステップS63において、実充放電電流i2が放電停止判定電流i20以下にまで低下したか否かについて判断する。この放電停止判定電流i20としては、例えば、0アンペアが設定される。
実充放電電流i2が放電停止判定電流i20以下にまで低下しない間は、こうしたステップS61〜S63の処理が繰り返される。この間は、副電源装置50から主バッテリ101への放電が継続される。そして、実充放電電流i2が放電停止判定電流i20以下にまで低下すると(例えば、放電電流が流れなくなると)、ステップS64において第2昇圧用スイッチング素子44をオフして終了時放電制御ルーチンを終了する。
従って、終了時放電制御ルーチンによれば、副電源装置50の寿命を延ばすことができる。また、次回イグニッションスイッチ106がオンしてからの実充電量の検出を精度良く行うことができる。つまり、実充電量の検出にあたっては、副電源装置50に流れる充放電電流を積算して算出するが、スタート時における初期充電量の推定が難しい。そこで、副電源装置50の電荷を放電させておいてから実充電量検出処理を行うことにより、初期充電量のばらつきによる検出誤差を抑えることができる。また、昇圧回路40を兼用して主バッテリ101への放電電流の大きさを制御することができるため、特別に放電用の回路を設ける必要がなくコストアップを招かない。
以上説明した本実施形態の電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置によれば、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差に基づいて昇圧回路40の昇圧電圧をフィードバック制御するため、副電源装置50の充電状態を簡単に制御することができる。しかも、実充電量Jxと目標充電量J*との大小関係、および、消費電力に対する昇圧回路40の電力供給能力に基づいて目標充放電電流i2*が設定されるため、副電源装置50の過剰な充電や放電を抑制することができる。
例えば、副電源装置50の充電量が十分であると判断されているとき(フラグF=0)には、目標充放電電流i2*をゼロ(i2=0)に設定するため、副電源装置50への充電が規制され過剰充電が防止される。これにより副電源装置50の寿命を延ばすことができる。また、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超えないあいだは副電源装置50からの電力供給が停止され、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達した場合にのみ、その不足電力分が副電源装置50から供給される。従って、副電源装置50の電力をできるだけ使わないようにして、副電源装置50を大電力消費時に備えて待機させることができる。従って、良好に操舵アシスト制御を行うことができる。更に、モータ駆動回路30が電力を必要としていないときには、昇圧回路40の昇圧動作を停止することができ、昇圧動作に必要なエネルギー消費を抑えることができる。
一方、実充電量Jxが目標充電量J*に達していないとき(フラグF=1)には、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕があれば、正の目標充放電電流i2*が設定され、主電源装置100の電力が昇圧回路40を介して副電源装置50に充電される。この場合、モータ駆動回路30への電力供給分を確保した上で、昇圧回路40の電源供給能力をフルに使って充電するように目標充放電電流i2*が設定されるため、副電源装置50を迅速に充電することができる。
また、実充電量Jxが目標充電量J*に達していないとき(フラグF=1)であっても、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕がない場合には、目標充放電電流i2*がゼロ(i2*=0)に設定される。従って、副電源装置50への充電が規制されるとともに、モータ駆動回路30への電力不足分だけが副電源装置50からモータ駆動回路30に供給される。従って、モータ駆動回路30への電力供給と、副電源装置50の電力消費抑制とを両立することができる。
更に、目標充電量J*を車速の増加にしたがって減少するように設定しているため、大電力消費が予測される状況においては副電源装置50の充電量が多くなって電源補助能力が増し、逆に、大電力消費が予測されない状況においては充電を抑制して副電源装置50の寿命を延ばすことができる。
また、副電源装置50に充電される実充電量Jxと目標充電量J*との比較にあたっては、不感帯が設けられているため、副電源装置50の充電と放電とが頻繁に繰り返されるといったハンチング現象を防止することができる。これにより、副電源装置50の寿命を一層延ばすことができる。
また、電動パワーステアリング装置への電源供給装置として、主電源装置100と副電源装置50とを使って操舵アシスト性能をフルに発揮できるようにしているため、主電源装置100の大容量化を抑制することができる。また、昇圧回路40により電動モータ30を効率よく駆動することができる。更に、この昇圧回路40を兼用して副電源装置50の充放電を制御することができるため、回路構成が複雑にならず、コストアップを抑制することができる。例えば、充放電を切り替えるための切り替え回路やスイッチ等が不要となる。
また、副電源装置50の充放電制御のために昇圧回路40の昇圧電圧が変動しても、アシスト制御部61がモータ駆動回路30をPWM制御するため、電動モータ20を適正に駆動制御することができる。
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。この変形例は、上記実施形態において更に昇圧回路40における昇圧電圧の上限値を設定したものである。具体的には、上述した充放電制御ルーチンのステップS34に代えて、図10に示す処理を行うもので、他の構成については先の実施形態と同一である。
実充放電電流i2と目標充放電電流i2*との偏差に基づいて昇圧電圧を制御した場合、昇圧電圧の上昇により、昇圧回路40からその定格許容電力を超える電力が出力されてしまうおそれがある。こうした場合、昇圧回路40の昇圧効率の低下を招く。また、昇圧回路40の耐久性を低下させるおそれもある。
そこで、この変形例においては、昇圧電圧の上限値を設け、昇圧回路40が上限値を超えてまで昇圧作動しないように規制する。
図10は、充放電制御ルーチンの一部を表すフローチャートであり、図4に示したステップS34の処理に代わる処理を表す。
電源制御部62は、ステップS32あるいはステップS31において目標充放電電流i2*を設定するとステップS35の処理を行う。ステップS35においては、主電流センサ46により検出された昇圧出力電流i1を読み込む。続いて、主電圧センサ47により検出された昇圧電圧v1を読み込む。
続いて、電源制御部62は、ステップS37において、昇圧上限電圧vlimを設定する。昇圧上限電圧vlimは、図11に示すように、昇圧出力電流i1が基準電流i10以下の場合には、一定の電圧vlimcに設定される。また、昇圧出力電流i1が基準電流i10を超える場合には、昇圧出力電流i1の増加に伴って反比例的に減少する上限電圧vlimf(i1)に設定される。この上限電圧vlimf(i1)は、昇圧出力電流i1と上限電圧vlimf(i1)との積である昇圧出力電力が一定となる等電力制御ラインを表す。また、この上限電圧vlimf(i1)で決定される昇圧上限電力は、昇圧回路40の定格許容電力と同じ値、あるいは、それより低い値に設定される。
電源制御部62は、昇圧出力電流i1に対する昇圧上限電圧vlimの関係を、参照テーブルあるいは関数としてROM内に記憶しており、ステップS37においては、この関係データを読み出して昇圧上限電圧vlimを設定する。
次に、電源制御部62は、ステップS38において、PID制御電圧vpidを算出する。PID制御電圧vpidは、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差に基づいてPID制御式により算出される目標昇圧電圧である。続いて、ステップS39において、PID制御電圧vpidが昇圧上限電圧vlimより大きいか否かを判断する。PID制御電圧vpidが昇圧上限電圧vlimより大きい場合には(S39:YES)、ステップS40において、PID制御電圧vpidを昇圧上限電圧vlimに変更する。つまり、PID制御式で算出されたPID制御電圧vpidを昇圧上限電圧vlimにまで下げる。一方、PID制御電圧vpidが昇圧上限電圧vlim未満である場合には(S39:NO)、PID制御電圧vpidを変更しない。
こうして最終的なPID制御電圧vpidが設定されると、ステップS41において、昇圧回路40の第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を調整して昇圧電圧をPID制御電圧vpidに制御する。この変形例における充放電制御ルーチンは、ステップS41の処理を行うと一旦終了し、その後、所定の周期でステップS21からの処理を繰り返す。
以上説明した変形例の充放電制御ルーチンによれば、昇圧回路40の昇圧出力電力がその定格許容電力以下に制限される。従って、昇圧回路40の昇圧効率低下を防止するとともに、耐久性を向上させることができる。また、モータ駆動回路30にて大電力が必要となっているときには、昇圧上限電圧vlimが昇圧出力電流i1の増加に伴って反比例的に減少するため、副電源装置50からモータ駆動回路30への電力供給を適切なタイミングにて確実に開始することができる。
以上、本発明の実施形態として電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においては、電流偏差(i2*−i2)に基づいて昇圧電圧をフィードバック制御するにあたりPID制御を採用しているが、比例項だけによるフィードバック制御や、比例項と積分項とによるフィードバック制御など種々のフィードバック制御を採用することができる。
また、電源制御装置の適用は、電動パワーステアリング装置に限るものではなく、種々の装置に適用することができる。例えば、車両に搭載される装置として、電気制御式ブレーキ装置、電気制御式サスペンション装置、電気制御式スタビライザ装置など種々のものに適用できる。また、車輪に転舵力を付与するステアリング装置として、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
尚、主電源装置100、昇圧回路40、電源制御部62、副電源装置50、副電流センサ51、主電流センサ46、主電圧センサ47からなる構成が本発明の実施形態としての電源制御装置に相当する。
10…ステアリング機構、20…電動モータ、23…車速センサ、30…モータ駆動回路、31〜36…スイッチング素子、38…モータ電流センサ、40…昇圧回路、41,45…コンデンサ、42…昇圧用コイル、43,44…昇圧用スイッチング素子、46…主電流センサ、47…主電圧センサ、50…副電源装置、51…副電流センサ、60…電子制御装置、61…アシスト制御部、62…電源制御部、100…主電源装置、101…主バッテリ、102…オルタネータ、106…イグニッションスイッチ、FWL,FWR…左右前輪。
本発明は、電気アクチュエータへ電源供給を行う主電源装置と副電源装置とを備えた電源制御装置に関する。
従来から、例えば、電動パワーステアリング装置においては、操舵ハンドルの回動操作に対して操舵アシストトルクを付与するように電動モータを備え、この電動モータに流す電流を変化させる通電制御を行って操舵アシストトルクを調整する。こうした電動パワーステアリング装置は、その電源として車載バッテリを使用するが消費電力量が大きい。そのため、例えば、特許文献1に提案された装置では、車載バッテリを補助する副電源装置を備えている。この副電源装置は、車載バッテリ(以下、主電源装置と呼ぶ)からモータ駆動回路への電源供給ラインに並列に接続されて主電源装置により充電され、充電された電力を使ってモータ駆動回路へ電源供給できる構成になっている。また、副電源装置からモータ駆動回路への給電/非給電を切り替えるためのスイッチ、主電源装置から副電源装置への充電/非充電を切り替えるためのスイッチを備えている。
しかしながら、特許文献1に提案された装置は、スイッチにより主電源装置から副電源装置への充電と、副電源装置からモータ駆動回路への給電を切り替えようとするものであるが、この構成では副電源装置の充放電を良好に制御することができない。つまり、副電源装置の充放電ラインが主電源装置からモータ駆動回路への電源供給ラインに接続されているため、主電源装置と副電源装置との電圧バランスによって副電源装置の充放電が決まる。このため、例えば、副電源装置に充電しようとしても、主電源装置の電源電圧と副電源装置の電源電圧との電圧差が得られない場合には、副電源装置を充電できない。このことは、副電源装置からモータ駆動回路へ給電する場合においても同様である。この結果、副電源装置の充電状態を良好に維持することができない。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、副電源装置の充電状態を良好に維持することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、主電源装置と、上記主電源装置の出力電圧を昇圧し昇圧された電力を電気アクチュエータの駆動回路に出力する昇圧回路と、上記昇圧回路と上記駆動回路とのあいだに並列に接続され上記昇圧回路から出力された電力を充電するとともに充電された電力を使って上記駆動回路への電源供給を補助する副電源装置と、上記副電源装置に充電された充電量を検出する充電量検出手段と、上記検出された充電量と目標充電量とに基づいて上記昇圧回路の昇圧電圧を制御することにより上記副電源装置の充放電を制御する充放電制御手段とを備えた電源制御装置であって、上記充放電制御手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量と目標充電量とに基づいて上記副電源装置に流す目標充放電電流を設定する目標充放電電流設定手段と、上記副電源装置に流れる充放電電流を検出する電流検出手段と、上記目標充放電電流設定手段により設定された目標充放電電流と上記電流検出手段により検出された充放電電流との差に基づいて上記昇圧回路の昇圧電圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備えたことにある。
この発明によれば、主電源装置の出力電圧が昇圧回路により昇圧され、昇圧された電力が電気アクチュエータの駆動回路に供給される。昇圧回路から駆動回路への電源供給回路には副電源装置が並列に接続される。従って、副電源装置は、昇圧回路から出力された電力を充電するとともに、充電した電力を駆動回路に供給して主電源装置の電源供給を補助する。
駆動回路への電源供給源は、昇圧回路の昇圧電圧と副電源装置の電源電圧(出力電圧)とのバランス(電圧の大小関係)で自然に切り替わる。そこで、本発明においては、充放電制御手段が、昇圧回路の昇圧電圧を制御することにより副電源装置の充放電を制御する。この場合、充放電制御手段は、充電量検出手段により検出された副電源装置の充電量と目標充電量とに基づいて昇圧回路の昇圧電圧を制御する。従って、副電源装置の充電と放電とを適切に切り替えることが可能となり、副電源装置の充電状態を良好に維持することができる。尚、目標充電量は、予め定められた固定値であっても、使用条件等に応じて変更されるものであってもどちらでも良い。
また、本発明によれば、主電源装置の電圧を昇圧回路により昇圧して駆動回路に電源供給するため電気アクチュエータを効率良く駆動することができる。しかも、その昇圧回路を利用して副電源装置の充放電を制御することができるため、大がかりな構成の追加や大幅なコストアップを招かない。
また、この発明においては、充放電制御手段が目標充放電電流設定手段と電流検出手段とフィードバック制御手段とを備えている。目標充放電電流設定手段は、充電量検出手段により検出された充電量と目標充電量とに基づいて副電源装置に流す目標充放電電流を設定する。電流検出手段は、副電源装置に流れる実際の充放電電流を検出する。フィードバック制御手段は、副電源装置に流れる実際の充放電電流と目標充放電電流との差に基づいて昇圧回路の昇圧電圧をフィードバック制御する。つまり、実際の充放電電流と目標充放電電流との差が少なくなるように昇圧制御する。尚、目標充放電電流設定手段により設定される目標充放電電流、および、電流検出手段により検出される充放電電流は、充電方向と放電方向とを区別した電流値、つまり通電方向を特定した電流値を表すものである。
例えば、フィードバック制御手段は、充電方向の目標充放電電流に対して検出された充電電流が大きい場合、昇圧回路の昇圧電圧を下げ副電源装置への充電電流を減少させる。また、フィードバック制御手段は、目標充放電電流がゼロに設定されているときに、副電源装置に充電電流が流れている場合には昇圧電圧を下げて副電源装置への充電を規制し、副電源装置から放電電流が流れている場合には昇圧電圧を上げて副電源装置からの放電を規制する。
従って、本発明によれば、副電源装置の充電状態を目標とする充電状態に良好に制御することが可能となり、副電源装置の過剰な充電や放電を抑制することができる。
本発明の他の特徴は、上記目標充放電電流設定手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量未満の場合、上記昇圧回路の出力許容電力と上記駆動回路の消費電力とに基づいて目標充電電流を設定することにある。
この発明によれば、副電源装置の充電量が目標充電量に達していない場合、昇圧回路の出力許容電力と駆動回路の消費電力とに基づいて目標充電電流(充電方向の目標充放電電流)が設定される。従って、昇圧回路の出力電力を使って適正に副電源装置を充電することができる。この場合、フィードバック制御手段は、副電源装置に目標充電電流が流れるように、昇圧回路の昇圧電圧を副電源装置の電源電圧より高い電圧にまで昇圧して副電源装置を充電する。
例えば、昇圧回路の出力許容電力から駆動回路の消費電力を引いた差分電力を副電源装置に供給するように目標充電電流を設定するとよい。この場合には、昇圧回路の出力能力の余剰分をフルに使って副電源装置を充電することができる。この結果、副電源装置を迅速に充電することが可能となり大電力消費に備えることができる。
本発明の他の特徴は、上記目標充放電電流設定手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量未満で、かつ、上記駆動回路の消費電力が上記昇圧回路の出力許容電力以上となる場合、上記目標充放電電流をゼロに設定することにある。
この発明によれば、副電源装置の充電量が目標充電量に達していない場合であっても、駆動回路の消費電力が昇圧回路の出力許容電力以上となる場合は、目標充放電電流がゼロに設定される。従って、主電源装置の電力を電気アクチュエータの駆動に優先して使用することができる。この場合、昇圧回路の昇圧電圧が副電源装置の電源装置と同じ電圧に制御されることになるが、駆動回路の消費電力が増大して電力供給不足が生じた場合には、昇圧制御に反して昇圧電圧がドロップして副電源装置の電源電圧を下回るため、それに応じて副電源装置から駆動回路へ電源供給することができる。つまり、主電源装置で不足する電力分だけ副電源装置から電源供給することが可能となる。この結果、駆動回路への電源供給補助と副電源装置の電力消費抑制(放電抑制)とを両立することができる。
本発明の他の特徴は、上記目標充放電電流設定手段は、上記充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量以上の場合、上記目標充放電電流をゼロに設定することにある。
この発明によれば、充電量検出手段により検出された充電量が目標充電量以上であれば目標充放電電流がゼロに設定されるため、副電源装置に充電電流が流れず、副電源装置への過剰な充電を抑制することができる。従って、副電源装置の寿命を延ばすことが可能となる。また、副電源装置から駆動回路への電源供給についても、昇圧回路からの出力能力の範囲内においては行われない。従って、副電源装置を良好な充電状態に維持することができる。
駆動回路へ電源供給中においては、昇圧回路の昇圧電圧が副電源装置の電源装置と同じ電圧に制御されることになるが、駆動回路の消費電力が増大して電力供給不足が生じた場合には、昇圧制御に反して昇圧電圧がドロップする。これにより、副電源装置の電源電圧が昇圧電圧を上回り、副電源装置から駆動回路へ電源供給される。つまり、主電源装置で不足する電力分だけ副電源装置から駆動回路に電源供給される。この結果、駆動回路への電源供給補助と副電源装置の過剰充電抑制とを両立することができる。
また、例えば、駆動回路に電源供給しないときには昇圧回路の昇圧作動を停止させて、副電源装置に流れる充放電電流をゼロにすることができる。この場合には、昇圧作動に必要なエネルギー消費を抑制することも可能となる。
本発明の実施形態に係る電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。
アシストトルクテーブルを表すグラフである。
充放電制御ルーチンを表すフローチャートである。
車速と目標充電量との関係を表すグラフである。
実充電量検出ルーチンを表すフローチャートである。
消費電力の推移と、それに伴って変動する副電源装置の充放電状態、副電源装置の充電量、フラグFの設定状態を表したグラフである。
副電源装置に充電される充電電力の推移と、充電量の推移とを表したグラフである。
終了時放電制御ルーチンを表すフローチャートである。
変形例に係る充放電制御ルーチンの一部を表すフローチャートである。
変形例にかかる昇圧上限電圧特性を表すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る電源制御装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態として電源制御装置を備えた車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
本実施形態の車両の電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、主電源装置100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電源供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30との間の電源供給回路に並列接続される副電源装置50と、電動モータ20および昇圧回路40の作動を制御する電子制御装置60とを主要部として備えている。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ20が組み付けられている。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRに転舵力を付与して操舵操作をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTxと呼ぶ。操舵トルクTxは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される。一方、この電動モータ20の回転角は、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。また、電動モータ20の回転角を時間微分した回転角速度は、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるため、操舵ハンドル11の操舵角速度としても共通に用いられる。以下、回転角センサ22の出力信号により検出される操舵ハンドル11の操舵角の値を操舵角θxと呼び、その操舵角θxを時間微分して得られる操舵角速度の値を操舵角速度ωと呼ぶ。操舵角θxは、正負の値により操舵ハンドル11の中立位置に対する右方向および左方向の舵角をそれぞれ表す。
モータ駆動回路30は、MOSFETからなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電源供給ライン37を引き出した構成を採用している。
第1スイッチング素子31,第3スイッチング素子33,第5スイッチング素子35のドレインは、それぞれ後述する昇圧駆動ライン113に接続され、第2スイッチング素子32,第4スイッチング素子34,第6スイッチング素子36のソースは、それぞれ接地ライン111に接続される。モータ駆動回路30から電動モータ20への電源供給ライン37には、電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出(測定)し、その検出した電流値に対応した検出信号を電子制御装置60に出力する。以下、この測定された電流値を、モータ電流iuvwと呼ぶ。また、この電流センサ38をモータ電流センサ38と呼ぶ。
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートが電子制御装置60に接続され、電子制御装置60からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。
尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが逆並列方向に寄生している。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置は、主電源装置100から電源供給される。主電源装置100は、主バッテリ101と、エンジンの回転により発電するオルタネータ102とを並列接続して構成される。主バッテリ101としては、定格出力電圧が12Vの一般の車載バッテリが用いられる。
この主電源装置100は、電動パワーステアリング装置だけでなく他の車載電気負荷への電源供給も共通して行う。主バッテリ101の電源端子(+端子)に接続される電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、電子制御装置60のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン105は、モータ駆動回路30と電子制御装置60との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン104には、イグニッションスイッチ106が接続される。駆動系電源ライン105には、電源リレー107が接続される。この電源リレー107は、電子制御装置60からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン104は、電子制御装置60の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ106よりも負荷側(電子制御装置60側)においてダイオード108を備えている。このダイオード108は、カソードを電子制御装置60側、アノードを主電源装置100側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
駆動系電源ライン105には、電源リレー107よりも負荷側において制御系電源ライン104と接続する連結ライン109が分岐して設けられる。この連結ライン109は、制御系電源ライン104のダイオード108接続位置よりも電子制御装置60側に接続される。また、連結ライン109には、ダイオード110が接続される。このダイオード110は、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、連結ライン109を介して駆動系電源ライン105から制御系電源ライン104には電源供給できるが、制御系電源ライン104から駆動系電源ライン105には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン105および接地ライン111は昇圧回路40に接続される。また、接地ライン111は、電子制御装置60の接地端子にも接続される。
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン112が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOSFETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路40は、電子制御装置60の電源制御部62(後述する)により昇圧制御される。電源制御部62は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源装置100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン112に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン112から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源装置100側へのノイズが除去される。
昇圧回路40の出力電圧(昇圧電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比制御により調整可能となっており、第1昇圧用スイッチング素子43のオンデューティ比が高いほど昇圧電圧は高くなる。本実施形態における昇圧回路40は、例えば、20V〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧回路40の出力側となる昇圧電源ライン112には、昇圧回路40の出力電流を検出する電流センサ46と、昇圧回路40の出力電圧を検出する電圧センサ47とが設けられる。この電流センサ46と電圧センサ47とは、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、電源制御部62に対して測定値である電流i1および電圧v1を表す信号を出力する。以下、電流センサ46を主電流センサ46と呼び、電圧センサ47を主電圧センサ47と呼ぶ。尚、主電流センサ46に関しては、後述する変形例において使用されるものであって、この実施形態においては設けなくても良い。
昇圧電源ライン112は、昇圧駆動ライン113と充放電ライン114とに分岐する。昇圧駆動ライン113は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン114は、副電源装置50のプラス端子に接続される。
副電源装置50は、昇圧回路40から出力される電力を充電し、モータ駆動回路30で大電力を必要としたときに、主電源装置100を補助してモータ駆動回路30に電源供給する高圧蓄電装置である。従って、副電源装置50は、昇圧回路40の出力電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。この副電源装置50として、例えば、キャパシタ(電気二重層コンデンサ)を用いることができる。
副電源装置50の接地端子は、接地ライン111に接続される。また、充放電ライン114には、副電源装置50に流れる充放電電流を検出する電流センサ51が設けられる。電流センサ51は、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、電源制御部62に対して測定値である充放電電流i2を表す信号を出力する。電流センサ51は、電流の向き、つまり、昇圧回路40から副電源装置50に流れる充電電流と、副電源装置50からモータ駆動回路30に流れる放電電流とを区別して、それらの大きさを測定する。充放電電流i2は、充電電流として流れるときには正の値により、放電電流として流れるときには負の値により表される。以下、この電流センサ51を副電流センサ51と呼び、副電流センサ51により測定された電流値を実充放電電流i2と呼ぶ。
電子制御装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成され、その機能から、アシスト制御部61と電源制御部62とに大別される。アシスト制御部61は、操舵トルクセンサ21、回転角センサ22、モータ電流センサ38、車速センサ23を接続し、操舵トルクTx、操舵角θx、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部61は、これらのセンサ信号に基づいて、モータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して電動モータ20を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。
電源制御部62は、昇圧回路40の昇圧制御を行うことにより副電源装置50の充電と放電とを制御する。電源制御部62には、主電圧センサ47,主電流センサ46,副電流センサ51を接続し、昇圧回路の昇圧電圧v1,出力電流i1、充放電電流i2を表すセンサ信号を入力する。電源制御部62は、これらセンサ信号に基づいて、昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その出力電圧である昇圧電圧を変化させる。
次に、電子制御装置60のアシスト制御部61が行う操舵アシスト制御処理について説明する。図2は、アシスト制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。操舵アシスト制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部61は、まず、ステップS11において、車速センサ23によって検出された車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクTxとを読み込む。
続いて、ステップS12において、図3に示すアシストトルクテーブルを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクTxに応じて設定される基本アシストトルクTasを計算する。アシストトルクテーブルは、電子制御装置60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTxの増加にしたがって基本アシストトルクTasも増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図3のアシストトルクテーブルは、右方向の操舵トルクTxに対する基本アシストトルクTasの特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば同じである。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS13において、この基本アシストトルクTasに補償トルクを加算して目標指令トルクT*を計算する。この補償トルクは、操舵角θxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵角速度ωに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算する。この計算に当たっては、回転角センサ22にて検出した電動モータ20の回転角(操舵ハンドル11の操舵角θxに相当)を入力して行う。また、操舵角速度ωについては、操舵ハンドル11の操舵角θxを時間で微分して求める。
次に、アシスト制御部61は、ステップS14において、目標指令トルクT*に比例した目標電流ias*を計算する。目標電流ias*は、目標指令トルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS15において、電動モータ20に流れるモータ電流iuvwをモータ電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS16において、このモータ電流iuvwと先に計算した目標電流ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)により目標指令電圧v*を計算する。
そして、アシスト制御部61は、ステップS17において、目標指令電圧v*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が制御されて、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、据え切り操作時や、低速走行でのハンドル操作時において大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源装置100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源装置100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に電源供給を補助する副電源装置50を備える。また、電動モータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力をモータ駆動回路30および副電源装置50に供給するシステムを構成している。
こうした電源供給システムを構成した場合、主電源装置100と副電源装置50との両方を使うことにより電動パワーステアリング装置の性能(アシスト性能)をフルに発揮できる。このため、本来のアシスト性能を確保するためには、副電源装置50の状態を良好に保つ必要がある。副電源装置50は、過剰に充電したり頻繁に充放電を繰り返したりすると、早く劣化してしまい寿命が短くなる。また、副電源装置50の充電量が不足していている場合には、本来のアシスト性能を発揮できなくなる。
そこで、電子制御装置60の電源制御部62は、昇圧回路40を利用して昇圧電圧を制御することにより副電源装置50の充放電(充電と放電)を制御し、副電源装置50をできるだけ良好な状態に維持する。
以下、電子制御装置60の電源制御部62が行う充放電制御処理について説明する。図4は、電源制御部62により実施される充放電制御ルーチンを表し、電源制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。充放電制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS21において、副電源装置50に充電されている実充電量Jxを表すデータを読み込む。この実充電量Jxは、後述する実充電量検出ルーチン(図6)により逐次算出されるものである。従って、このステップS21は、実充電量検出ルーチンにより算出された最新の実充電量Jxを表すデータの読み込む処理となる。
次に、電源制御部62は、ステップS22において、車速センサ23により検出された車速Vxを読み込み、続いて、ステップS23において車速Vxに応じた目標充電量J*を設定する。この目標充電量J*は、副電源装置50に充電すべき最適充電量であって、図5に示すように、基準車速V0を境にして、車速Vxが基準車速V0未満であれば目標充電量Jhighが選択され、車速Vxが基準速度V0以上であれば目標充電量Jhighより小さな目標充電量Jlowが選択される。尚、副電源装置50は、目標充電量J*の充電に対して過充電とならないような十分な電池容量を備えている。
上述した操舵アシスト制御を行う場合、図3に示すように、車速Vxが小さいほど基本アシストトルクTasが高く設定されるため、駆動回路30の消費電力(電動モータ20を駆動するために消費される電力)が大きくなる。そこで、この充放電制御ルーチンでは、副電源装置50の目標充電量J*を車速Vxに応じて設定する。本実施形態においては、2段階設定しているが、3段階以上、あるいは車速に応じて連続的に設定されるものであっても良く、車速Vxの増大にしたがって減少する目標充電量J*を設定するものであればよい。尚、目標充電量J*は、固定値であってもよい。
電源制御部62は、目標充電量J*を設定すると、続いてステップS24において副電流センサ51により検出される実充放電電流i2を読み込む。次に、ステップS25において、フラグFが「0」か否かについて判断する。フラグFは、後述する処理からわかるように、副電源装置50の充電状態の良否を表すもので、F=0で充電良好(充電不要)を表し、F=1で充電不足(充電要)を表す。尚、本充放電制御ルーチンの起動時においては「0」に設定されている。
電源制御部62は、フラグFが「0」の場合には(S25:YES)、その処理をステップS26に進めて、実充電量Jxが目標充電量J*未満であるか否かについて判断する。このステップS26は、副電源装置50の充電量が不足したか否かを判断するもので、Jx<J*の場合には(S26:YES)、充電量が不足したと判断して、ステップS27において、フラグFを「1」に設定する。一方、Jx≧J*の場合には(S26:NO)、充電量が不足していないと判断してフラグFの設定変更を行わない。従って、フラグFが「0」に維持される。
また、ステップS25において、フラグFが「1」の場合には(S25:NO)、その処理をステップS28に進めて、実充電量Jxが、目標充電量J*に不感帯値A(正の値)を加算した充電量(J*+A)にまで達したか否かについて判断する。このステップS28は、副電源装置50の充電不足が解消したか否かを判断するもので、Jx≧J*+Aの場合には(S28:YES)、充電不足が解消したと判断して、ステップS29において、フラグFを「0」に設定する。一方、Jx<J*+Aの場合には(S28:NO)、充電量が不足していると判断して、フラグFの設定変更を行わない。従って、フラグFが「1」に維持される。
この不感帯値Aは、実充電量Jxと目標充電量J*との比較判定結果(充電の要否)が頻繁に変動しないように設定したものである。尚、目標充電量J*が本発明の第1目標値に相当し、目標充電量J*に不感帯値A(正の値)を加算した充電量(J*+A)が本発明の第2目標値に相当する。
こうしてフラグFが設定されると、ステップS30において、そのフラグFの設定状況が確認される。フラグFが「0」の場合(S30:NO)、つまり、副電源装置50の充電状態が良好と判断される場合には、その処理をステップS31に進めて、目標充放電電流i2*をゼロ(i2=0)に設定する。一方、フラグFが「1」の場合(S30:YES)、つまり、副電源装置50の充電量が不足していると判断される場合には、その処理をステップS32に進めて、目標充放電電流i2*を以下のように計算により求める。
i2*=(Wlim−Wx)/v1n-1
ここで、Wlimは昇圧回路40の出力許容電力、Wxはモータ駆動回路30の消費電力、v1n-1は前回昇圧電圧である。前回昇圧電圧とは、所定周期で繰り返される本制御ルーチンにおける1周期前での昇圧回路40の昇圧電圧を表す。この場合、前回昇圧電圧v1n-1は、主電圧センサ47にて検出した電圧v1であっても、後述するフィードバック制御上での制御値であってもよい。本制御ルーチンの起動時においては、前回昇圧電圧v1n-1として、予め設定した初期値(例えば、12V)が使用される。また、出力許容電力Wlimは、昇圧回路40の規格に基づいて予め設定されている値である。また、モータ駆動回路30の消費電力Wxは、主電圧センサ47にて検出された昇圧電圧v1とモータ電流センサ38にて検出されたモータ電流iuvwとの積により算出される。従って、このステップS32における処理は、主電圧センサ47による電圧測定値の読み込み処理と、モータ電流センサ38による電流測定値の読み込み処理とを含んだものとなっている。
続いて、電源制御部62は、ステップS33において、目標充放電電流i2*が正の値か否かを判断する。上述したように目標充放電電流i2*は、昇圧回路40の出力許容電力Wlimからモータ駆動回路30の消費電力Wxを減算し、その減算値を前回昇圧電力電圧v1n-1で除算したものである。従って、電動モータ20の消費電力Wxが昇圧回路40の出力許容電力Wlim範囲内であればi2*>0(S33:YES)となり、逆に、モータ駆動回路30の消費電力Wxが昇圧回路40の出力許容電力Wlim以上となっている場合にはi2*≦0(S33:NO)となる。
目標充放電電流i2*がゼロ以下(i2*≦0)の場合は、ステップS31において、目標充放電電流i2*を新たにゼロ(i2*=0)に設定する。一方、目標充放電電流i2*が正の値(i2*>0)の場合は、先のステップS32にて計算された目標充放電電流i2*を変更しない。
電源制御部62は、こうして目標充放電電流i2*を設定すると、その処理をステップS34に進める。ステップS34においては、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差に基づいて昇圧回路40の昇圧電圧をフィードバック制御する。つまり、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差(i2*−i2)が少なくなるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。本実施形態においては、偏差(i2*−i2)に基づいたPID制御を行う。
電源制御部62は、昇圧回路40の第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源装置100から供給された電源を昇圧するが、このパルス信号のデューティ比を変更することにより昇圧電圧を制御する。
この場合、目標充放電電流i2*が正の値であれば(i2>0)、副電源装置50に充電方向に向かって電流が流れるように、また、その大きさが目標充放電電流i2*となるように昇圧制御される。従って、昇圧回路40から出力される昇圧電圧は、副電源装置50の電源電圧よりも高くなるように制御される。つまり、実充電量Jxが目標充電量J*に満たない状態で、かつ、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕が有る場合には、主電源装置100の電力が昇圧回路40を介して副電源装置50に充電される。しかも、モータ駆動回路30への電力供給分を確保した上で、昇圧回路40の電源供給能力をフルに使って充電するように目標充放電電流i2*が設定されるため、副電源装置50を迅速に充電することができる。
一方、目標充放電電流i2*がゼロに設定されている場合には(i2=0)、副電源装置50に充電電流も放電電流も流れないように昇圧回路40の昇圧電圧が制御される。従って、昇圧回路40の昇圧電圧は、副電源装置50の電源電圧と同じ電圧に制御されることになる。このため、副電源装置50は充電されない。また、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力を超えない範囲内では、副電源装置50から放電電流が流れないように昇圧電圧が維持され、モータ駆動回路30は昇圧回路40の出力電力のみで作動する。そして、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達すると、昇圧制御にかかわらず副電源装置50の放電電流をゼロに維持することができず昇圧電圧が低下する。これにより、副電源装置50から不足電力分がモータ駆動回路30に供給される。つまり、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力範囲内では副電源装置50の電力が使われず、出力能力を超える大電力が必要となったときのみ主電源装置100に加えて副電源装置50からモータ駆動回路30に電源供給される。
本充放電制御ルーチンは、ステップS34のフィードバック制御を行うと一旦終了し、その後、所定の短い周期で繰り返し実施される。本実施形態においては、後述するように、イグニッションスイッチ106のオフ操作時に、副電源装置50に充電されている電荷を主バッテリ101に放電する制御(図9)が組み込まれている。従って、車両の起動時における実充電量Jxは、目標充電量J*に満たない。このため、本充放電制御ルーチンの起動時においては、ステップS26において「YES」と判定されて、フラグFが「1」に設定される。従って、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力許容電力を下回っているあいだは、昇圧回路40から出力された電力で副電源装置50が充電される。
充放電制御ルーチンの実行中においては、常に副電源装置50の充電状態が繰り返し判定される。こうした充放電制御により副電源装置50の充電量が増大し、検出された実充電量Jxが目標充電量J*に不感帯値Aを加算した充電量にまで達すると(S28:YES)、フラグFが「0」に設定され(S29)、目標充放電電流i2*がゼロに設定される。
フラグFが「0」に設定されているときは、副電源装置50への充電が必要なく、目標充放電電流i2*がゼロに設定されて昇圧回路40の昇圧電圧がフィードバック制御される。この場合、電動モータ20が駆動されていないときには、昇圧回路40からも副電源装置50からもモータ駆動回路30に電流が流れないため、昇圧回路40の昇圧動作を停止して副電源装置50に充放電電流が流れないようにすることができる。例えば、モータ電流センサ38により検出されるモータ電流iuvwが流れていないことを確認して、昇圧回路40の第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44をオフ状態に維持する。従って、昇圧動作に必要なエネルギー消費を抑えることができる。
この状態からモータ駆動回路30が作動を開始すると、副電源装置50からモータ駆動回路30に放電電流が流れる。従って、フィードバック制御により実充放電電流i2がゼロになるように昇圧回路40の昇圧動作が開始される。これにより、昇圧回路40の昇圧電圧が副電源装置50の電源電圧と同じ電圧に制御され、即座に副電源装置50の充放電が規制される。この場合においても、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超えないあいだは、副電源装置50からの電力供給が停止され、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達した場合にのみ、その不足電力分が副電源装置50から供給される。
また、副電源装置50に対して充電不要と判断された後であっても、副電源装置50の実充電量Jxが目標充電量J*を下回った場合には、フラグFが「1」に変更される。この場合、昇圧回路40の出力に余裕が有れば、正の目標充放電電流i2*が設定され、その余裕分の電力で副電源装置50が充電される。また、昇圧回路40の出力に余裕が無ければ、目標充放電電流i2*がゼロに設定され、副電源装置50の充電を規制するとともに、電力不足分を副電源装置50から電源供給する。
図7は、充放電制御を行っているときの、モータ駆動回路30の消費電力の推移と、それに伴って変動する副電源装置50の充放電状態、副電源装置50の充電量、フラグFの設定状態を表したものである。
次に、実充電量検出処理について説明する。図6は、電源制御部62により実施される実充電量検出ルーチンを表し、電源制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。実充電量検出ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。この実充電量検出ルーチンにより検出された実充電量は、ステップS21にて読み込まれる実充電量Jxとなる。
本検出ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS51において、副電流センサ51により検出された実充放電電流i2を読み込む。続いて、ステップS52において、現時点の実充電量Jxを以下のように計算により求める。
Jx=J(x-1)+i2
ここで、J(x-1)は前回実充電量である。前回実充電量とは、所定周期で繰り返される本実充電量検出ルーチンにおける1周期前での実充電量Jxを表す。
本実施形態においては、イグニッションスイッチ106のオフ操作時に副電源装置50に充電されている電荷を主バッテリ101に放電する。このため、本検出ルーチンの起動時においては、副電源装置50に充電されている実充電量Jxは、ほぼ一定の低い値となっている。従って、前回実充電量J(x-1)の初期値としては、予め設定した固定値(例えば、J(x-1)=0)が使われる。
続いて、電源制御部62は、ステップS53において、現時点の実充電量Jxを前回実充電量J(x-1)として記憶し、本検出ルーチンを一旦終了する。本検出ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実行される。従って、次の本検出ルーチン実行時においては、前回のステップS52にて算出された実充電量Jxに今回検出した実充放電電流i2を加算した値が実充電量Jxとなる。
電源制御部62は、イグニッションスイッチ106のオン期間中、こうした処理を繰り返すことにより、実充電量Jxを実充放電電流i2の積算値として求める。この場合、充電電流が流れている状態では副電源装置50の実充電量Jxを増大させる側に、放電電流が流れている場合では副電源装置50の実充電量Jxを減少させる側に積算する。従って、副電源装置50の保有する充電量を適正に検出することができる。図8は、副電源装置50に充電される充電電力の推移と、充電量の推移とを表したグラフである。図中のグラフ(A)において、負の値を示す充電電力は放電電力を表している。
次に、副電源装置50に充電された電荷の放電制御について説明する。副電源装置50としてキャパシタを用いたケースでは、長期間使用しない場合には電荷を放出した方が寿命が長くなる。また、上述したように実充放電電流i2の積算値に基づいて副電源装置50の充電量Jxを検出する場合、車両起動時における充電量初期値の推定が難しい。そこで本実施形態においては、イグニッションスイッチ106がオフしたときに、副電源装置50に充電されている電荷を昇圧回路40を経由して主バッテリ101に放電させる。以下、その制御処理について図9を用いて説明する。
図9は、電源制御部62により実施される終了時放電制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。終了時放電制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106のオフ操作を検出したときに起動する。本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS61において、昇圧回路40の第2昇圧用スイッチング素子44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して、第2昇圧用スイッチング素子44を所定のデューティ比でオンオフさせる。イグニッションスイッチ106がオフしている期間は操舵アシスト制御も終了しているため、モータ駆動回路30の各スイッチング素子31〜36はオフ状態に維持されている。従って、副電源装置50の電荷は、主バッテリ101に向かって放電される。この場合、第2昇圧用スイッチング素子44のデューティ比を適宜設定することで、副電源装置50から主バッテリ101に流れる放電電流の大きさを制限することができる。尚、第1昇圧用スイッチング素子43はオフ状態に維持される。
続いて、電源制御部62は、ステップS62において、副電流センサ51により測定された実充放電電流i2(放電方向の電流値)を読み込み、ステップS63において、実充放電電流i2が放電停止判定電流i20以下にまで低下したか否かについて判断する。この放電停止判定電流i20としては、例えば、0アンペアが設定される。
実充放電電流i2が放電停止判定電流i20以下にまで低下しない間は、こうしたステップS61〜S63の処理が繰り返される。この間は、副電源装置50から主バッテリ101への放電が継続される。そして、実充放電電流i2が放電停止判定電流i20以下にまで低下すると(例えば、放電電流が流れなくなると)、ステップS64において第2昇圧用スイッチング素子44をオフして終了時放電制御ルーチンを終了する。
従って、終了時放電制御ルーチンによれば、副電源装置50の寿命を延ばすことができる。また、次回イグニッションスイッチ106がオンしてからの実充電量の検出を精度良く行うことができる。つまり、実充電量の検出にあたっては、副電源装置50に流れる充放電電流を積算して算出するが、スタート時における初期充電量の推定が難しい。そこで、副電源装置50の電荷を放電させておいてから実充電量検出処理を行うことにより、初期充電量のばらつきによる検出誤差を抑えることができる。また、昇圧回路40を兼用して主バッテリ101への放電電流の大きさを制御することができるため、特別に放電用の回路を設ける必要がなくコストアップを招かない。
以上説明した本実施形態の電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置によれば、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差に基づいて昇圧回路40の昇圧電圧をフィードバック制御するため、副電源装置50の充電状態を簡単に制御することができる。しかも、実充電量Jxと目標充電量J*との大小関係、および、消費電力に対する昇圧回路40の電力供給能力に基づいて目標充放電電流i2*が設定されるため、副電源装置50の過剰な充電や放電を抑制することができる。
例えば、副電源装置50の充電量が十分であると判断されているとき(フラグF=0)には、目標充放電電流i2*をゼロ(i2=0)に設定するため、副電源装置50への充電が規制され過剰充電が防止される。これにより副電源装置50の寿命を延ばすことができる。また、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超えないあいだは副電源装置50からの電力供給が停止され、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達した場合にのみ、その不足電力分が副電源装置50から供給される。従って、副電源装置50の電力をできるだけ使わないようにして、副電源装置50を大電力消費時に備えて待機させることができる。従って、良好に操舵アシスト制御を行うことができる。更に、モータ駆動回路30が電力を必要としていないときには、昇圧回路40の昇圧動作を停止することができ、昇圧動作に必要なエネルギー消費を抑えることができる。
一方、実充電量Jxが目標充電量J*に達していないとき(フラグF=1)には、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕があれば、正の目標充放電電流i2*が設定され、主電源装置100の電力が昇圧回路40を介して副電源装置50に充電される。この場合、モータ駆動回路30への電力供給分を確保した上で、昇圧回路40の電源供給能力をフルに使って充電するように目標充放電電流i2*が設定されるため、副電源装置50を迅速に充電することができる。
また、実充電量Jxが目標充電量J*に達していないとき(フラグF=1)であっても、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕がない場合には、目標充放電電流i2*がゼロ(i2*=0)に設定される。従って、副電源装置50への充電が規制されるとともに、モータ駆動回路30への電力不足分だけが副電源装置50からモータ駆動回路30に供給される。従って、モータ駆動回路30への電力供給と、副電源装置50の電力消費抑制とを両立することができる。
更に、目標充電量J*を車速の増加にしたがって減少するように設定しているため、大電力消費が予測される状況においては副電源装置50の充電量が多くなって電源補助能力が増し、逆に、大電力消費が予測されない状況においては充電を抑制して副電源装置50の寿命を延ばすことができる。
また、副電源装置50に充電される実充電量Jxと目標充電量J*との比較にあたっては、不感帯が設けられているため、副電源装置50の充電と放電とが頻繁に繰り返されるといったハンチング現象を防止することができる。これにより、副電源装置50の寿命を一層延ばすことができる。
また、電動パワーステアリング装置への電源供給装置として、主電源装置100と副電源装置50とを使って操舵アシスト性能をフルに発揮できるようにしているため、主電源装置100の大容量化を抑制することができる。また、昇圧回路40により電動モータ30を効率よく駆動することができる。更に、この昇圧回路40を兼用して副電源装置50の充放電を制御することができるため、回路構成が複雑にならず、コストアップを抑制することができる。例えば、充放電を切り替えるための切り替え回路やスイッチ等が不要となる。
また、副電源装置50の充放電制御のために昇圧回路40の昇圧電圧が変動しても、アシスト制御部61がモータ駆動回路30をPWM制御するため、電動モータ20を適正に駆動制御することができる。
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。この変形例は、上記実施形態において更に昇圧回路40における昇圧電圧の上限値を設定したものである。具体的には、上述した充放電制御ルーチンのステップS34に代えて、図10に示す処理を行うもので、他の構成については先の実施形態と同一である。
実充放電電流i2と目標充放電電流i2*との偏差に基づいて昇圧電圧を制御した場合、昇圧電圧の上昇により、昇圧回路40からその定格許容電力を超える電力が出力されてしまうおそれがある。こうした場合、昇圧回路40の昇圧効率の低下を招く。また、昇圧回路40の耐久性を低下させるおそれもある。
そこで、この変形例においては、昇圧電圧の上限値を設け、昇圧回路40が上限値を超えてまで昇圧作動しないように規制する。
図10は、充放電制御ルーチンの一部を表すフローチャートであり、図4に示したステップS34の処理に代わる処理を表す。
電源制御部62は、ステップS32あるいはステップS31において目標充放電電流i2*を設定するとステップS35の処理を行う。ステップS35においては、主電流センサ46により検出された昇圧出力電流i1を読み込む。続いて、主電圧センサ47により検出された昇圧電圧v1を読み込む。
続いて、電源制御部62は、ステップS37において、昇圧上限電圧vlimを設定する。昇圧上限電圧vlimは、図11に示すように、昇圧出力電流i1が基準電流i10以下の場合には、一定の電圧vlimcに設定される。また、昇圧出力電流i1が基準電流i10を超える場合には、昇圧出力電流i1の増加に伴って反比例的に減少する上限電圧vlimf(i1)に設定される。この上限電圧vlimf(i1)は、昇圧出力電流i1と上限電圧vlimf(i1)との積である昇圧出力電力が一定となる等電力制御ラインを表す。また、この上限電圧vlimf(i1)で決定される昇圧上限電力は、昇圧回路40の定格許容電力と同じ値、あるいは、それより低い値に設定される。
電源制御部62は、昇圧出力電流i1に対する昇圧上限電圧vlimの関係を、参照テーブルあるいは関数としてROM内に記憶しており、ステップS37においては、この関係データを読み出して昇圧上限電圧vlimを設定する。
次に、電源制御部62は、ステップS38において、PID制御電圧vpidを算出する。PID制御電圧vpidは、目標充放電電流i2*と実充放電電流i2との偏差に基づいてPID制御式により算出される目標昇圧電圧である。続いて、ステップS39において、PID制御電圧vpidが昇圧上限電圧vlimより大きいか否かを判断する。PID制御電圧vpidが昇圧上限電圧vlimより大きい場合には(S39:YES)、ステップS40において、PID制御電圧vpidを昇圧上限電圧vlimに変更する。つまり、PID制御式で算出されたPID制御電圧vpidを昇圧上限電圧vlimにまで下げる。一方、PID制御電圧vpidが昇圧上限電圧vlim未満である場合には(S39:NO)、PID制御電圧vpidを変更しない。
こうして最終的なPID制御電圧vpidが設定されると、ステップS41において、昇圧回路40の第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を調整して昇圧電圧をPID制御電圧vpidに制御する。この変形例における充放電制御ルーチンは、ステップS41の処理を行うと一旦終了し、その後、所定の周期でステップS21からの処理を繰り返す。
以上説明した変形例の充放電制御ルーチンによれば、昇圧回路40の昇圧出力電力がその定格許容電力以下に制限される。従って、昇圧回路40の昇圧効率低下を防止するとともに、耐久性を向上させることができる。また、モータ駆動回路30にて大電力が必要となっているときには、昇圧上限電圧vlimが昇圧出力電流i1の増加に伴って反比例的に減少するため、副電源装置50からモータ駆動回路30への電力供給を適切なタイミングにて確実に開始することができる。
以上、本発明の実施形態として電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においては、電流偏差(i2*−i2)に基づいて昇圧電圧をフィードバック制御するにあたりPID制御を採用しているが、比例項だけによるフィードバック制御や、比例項と積分項とによるフィードバック制御など種々のフィードバック制御を採用することができる。
また、電源制御装置の適用は、電動パワーステアリング装置に限るものではなく、種々の装置に適用することができる。例えば、車両に搭載される装置として、電気制御式ブレーキ装置、電気制御式サスペンション装置、電気制御式スタビライザ装置など種々のものに適用できる。また、車輪に転舵力を付与するステアリング装置として、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
尚、主電源装置100、昇圧回路40、電源制御部62、副電源装置50、副電流センサ51、主電流センサ46、主電圧センサ47からなる構成が本発明の実施形態としての電源制御装置に相当する。
10…ステアリング機構、20…電動モータ、23…車速センサ、30…モータ駆動回路、31〜36…スイッチング素子、38…モータ電流センサ、40…昇圧回路、41,45…コンデンサ、42…昇圧用コイル、43,44…昇圧用スイッチング素子、46…主電流センサ、47…主電圧センサ、50…副電源装置、51…副電流センサ、60…電子制御装置、61…アシスト制御部、62…電源制御部、100…主電源装置、101…主バッテリ、102…オルタネータ、106…イグニッションスイッチ、FWL,FWR…左右前輪。