JP2009274549A - 車両の電源装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 主バッテリ101の劣化を考慮して副電源50を適切に充電して車両制御システムの性能を確保する。
【解決手段】 主電源100とモータ駆動回路30との間に蓄電装置である副電源50を並列に接続する。電源制御部62は、主バッテリ101の劣化度合いαを検出し、劣化度合いαに応じた副電源50の目標充電容量J*と上限充電電流isubmaxとを設定する。この場合、劣化度合いαが大きいほど増加する目標充電容量J*を設定し、劣化度合いαが大きいほど低下する上限充電電流isubmaxを設定する。これにより、副電源50からモータ駆動回路30に電源供給する能力が向上する。また、主バッテリ101の劣化進行を抑制することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 主電源100とモータ駆動回路30との間に蓄電装置である副電源50を並列に接続する。電源制御部62は、主バッテリ101の劣化度合いαを検出し、劣化度合いαに応じた副電源50の目標充電容量J*と上限充電電流isubmaxとを設定する。この場合、劣化度合いαが大きいほど増加する目標充電容量J*を設定し、劣化度合いαが大きいほど低下する上限充電電流isubmaxを設定する。これにより、副電源50からモータ駆動回路30に電源供給する能力が向上する。また、主バッテリ101の劣化進行を抑制することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、複数の車載電気負荷に電源供給する主電源と、主電源により充電される副電源とを備えた車両の電源装置に関する。
従来から、例えば、電動パワーステアリング装置においては、操舵ハンドルの回動操作に対して操舵アシストトルクを付与するように電動モータを備え、この電動モータの通電制御を行って操舵アシストトルクを調整する。こうした電動パワーステアリング装置は、その電源として車載電源(バッテリおよび発電機)を使用するが消費電力が大きい。そのため、例えば、特許文献1に提案された装置では、車載電源を補助する副電源を備えている。この副電源は、車載電源(以下、主電源と呼ぶ)からモータ駆動回路への電源供給ラインに並列に接続されて主電源により充電され、充電された電力を使ってモータ駆動回路へ電源供給できる構成になっている。
この特許文献1に提案された装置は、副電源からモータ駆動回路への給電/非給電を切り替えるためのスイッチを備え、電動モータを作動させる目標電力が閾値を上回ったときに給電用スイッチをオンして副電源からモータ駆動回路への電源供給回路を形成する。また、主電源から副電源への充電/非充電を切り替えるためのスイッチを備え、副電源の両端子間電圧に基づいて副電源が満充電状態でないと判断した場合に、充電用スイッチをオンして主電源の電力を副電源に充電する。
特開2007−91122
しかしながら、特許文献1に提案された装置は、単に、副電源の両端子間電圧が基準電圧よりも低下したときに副電源を充電するものであり、主電源と副電源とからなる電源装置全体のシステムとして考えた場合、最適な充電制御が行われているとは言えない。例えば、主電源のバッテリが劣化している場合には、電動パワーステアリング装置で大電力が必要となったとき、副電源から給電補助を受けても電力不足が発生する。つまり、特許文献1に提案された装置は、主電源のバッテリの劣化状態を全く考慮していないため、電動パワーステアリング装置などの車両制御システムの性能を維持しにくい。また、バッテリの劣化の進行を早めてしまうおそれもある。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、主電源のバッテリの劣化を考慮して副電源を適切に充電して車両制御システムの性能を確保することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、バッテリと発電機とを並列に接続して備えた主電源と、前記主電源と特定電気負荷との間に並列に接続され、前記主電源から出力される電力を充電し、充電した電力を使って前記特定電気負荷への電源供給を補助する副電源とを備えた車両の電源装置において、前記副電源に充電される充電容量が目標充電容量となるように前記副電源への充電を制御する充電制御手段と、前記バッテリの電源供給能力の低下を検出するバッテリ能力低下検出手段と、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されていない場合に比べて、前記充電制御手段の目標充電容量を増加させる目標充電容量変更手段とを備えたことにある。
この場合、例えば、目標充電容量変更手段は、バッテリの電源供給能力の低下度合いが大きいほど目標充電容量を増加させるようにするとよい。
この発明においては、主電源と特定電気負荷との間に副電源が並列接続されているため、主電源の電力は特定電気負荷だけでなく副電源にも供給される。副電源は、主電源から供給された電力を充電し、充電した電力を使って特定電気負荷への電源供給を補助する。充電制御手段は、副電源に充電される充電容量が目標充電容量となるように主電源から副電源への充電を制御する。例えば、副電源に充電される充電容量を検出する充電容量検出手段を備え、この検出した充電容量が目標充電容量となるように充電制御する。
主電源は、バッテリと発電機とを並列に接続して備えている。バッテリは、エンジンの駆動により作動する発電機により充電されるが、車両内の電力使用状況に応じて充電した電力を出力する。従って、バッテリの電源供給能力が低下した場合、例えば、バッテリが劣化した場合には、主電源から特定電気負荷へ供給可能な電力が低下し、特定電気負荷において電力不足が発生するおそれがある。
そこで、本発明においては、バッテリ能力低下検出手段がバッテリの電源供給能力の低下を検出する。そして、バッテリ能力低下検出手段によりバッテリの電源供給能力が低下していることが検出された場合には、目標充電容量変更手段が充電制御手段の目標充電容量を増加させる。この場合、発電機で出力した電力を副電源に充電することができるため、バッテリの電源供給能力が低下していても副電源の充電容量を増加させることができる。この結果、副電源側から特定電気負荷に電源供給する能力が向上する。従って、特定電気負荷で大電力が必要となった場合であっても、副電源からの電源供給補助により特定電気負荷を適正に作動することができ、車両性能を維持することが可能となる。
本発明の他の特徴は、前記副電源に流す充電電流を上限電流設定値以下に制限する充電電流制限手段と、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されていない場合に比べて、前記充電電流制限手段の制限する上限電流設定値を低下させる上限電流設定値変更手段とを備えたことにある。
この場合、例えば、上限電流設定値変更手段は、バッテリの電源供給能力の低下度合いが大きいほど上限電流設定値を低下させるようにするとよい。
バッテリが正常であれば、副電源を速く充電するためにバッテリから引き出す電流値(放電電流値)を高くしてもバッテリへの負担は少ない。しかし、バッテリが劣化している場合には、バッテリから引き出す電流値を高くしてしまうとバッテリの負担が大きくバッテリの劣化が一層進んでしまう。そこで、本発明においては、副電源に流す充電電流を上限電流設定値以下に制限する充電電流制限手段を備え、バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合には、正常時に比べて上限電流設定値を低く設定する。従って、バッテリの電源供給能力の低下時においては、主電源から引き出される電流が少なくなりバッテリの負担が軽くなる。このため、バッテリを保護することができる。
また、バッテリの正常時においては、電源供給能力の低下が検出されている場合に比べて副電源の目標充電容量が少なく設定されるが、上限電流設定値が高く設定されるため急速に副電源を充電することができ、副電源が充電不足となることを抑制できる。
本発明の他の特徴は、前記主電源は、前記バッテリの定格出力電圧に対して前記発電機の定格出力電圧が高く設定されており、前記上限電流設定値変更手段は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合、前記バッテリから電力が出力されていない場合に比べて前記バッテリから電力が出力されている場合の前記上限電流設定値を低く設定することにある。
この場合、例えば、前記バッテリから電力が出力されている場合には、前記上限電流設定値をゼロに設定して前記副電源への充電を禁止することもできる。
この発明においては、バッテリの定格出力電圧に対して発電機の定格出力電圧が高く設定されている。従って、主電源から車載電気負荷に供給する電力が発電機の発電電力以下であれば、バッテリから放電しない。そして、主電源から車載電気負荷に供給する電力が増大して発電機の発電電力を上回ると、発電機の出力電圧が低下していきバッテリからも電力が出力される。従って、主電源から車載電気負荷に供給する電力が発電機の発電電力よりも少ないときに主電源から副電源に充電すれば、バッテリを放電させることなく発電機にて副電源を充電することができる。
そこで本発明においては、バッテリから電力が出力されていない場合に比べてバッテリから電力が出力されている場合の上限電流設定値を低く設定するため、バッテリの電力を使った副電源への充電が抑制される。従って、バッテリの負担が軽くなり、バッテリを保護することができる。例えば、バッテリから電力が出力されている場合の上限電流設定値をゼロに設定すれば、バッテリから副電源に電力供給されなくなり、バッテリの放電を最小限に抑えることができる。
尚、バッテリから電力が出力されているか否かを判断する手段としては、バッテリの放電電流を検出する手段を採用することができる。また、主電源の電圧を検出して主電源電圧が予め設定した基準電圧より低下しているときにバッテリから電力が出力されていると判断する手段を採用することもできる。
本発明の他の特徴は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合には、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されていない場合に比べて、前記副電源から前記特定電気負荷に電源供給する負担率を増加させる電源供給負担率変更手段を備えたことにある。
この場合、前記電源供給負担率変更手段は、前記バッテリの電源供給能力の低下度合いが大きいほど、前記副電源から前記特定電気負荷に電源供給する負担率を増加させるようにしてもよい。
この発明においては、電源供給負担率変更手段が、バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合には正常時に比べて副電源から特定電気負荷に電源供給する負担率を増加させる。これにより、バッテリの電源供給能力の低下時には、バッテリから特定電気負荷への電源供給負担が低減される。従って、バッテリの劣化進行を抑えることができる。また、特定電気負荷に対しての電源供給が安定する。
本発明の他の特徴は、前記特定電気負荷は、運転者の操舵操作をアシストする操舵アシストトルクを発生する電気アクチュエータであることにある。
この発明は、運転者の操舵操作をアシストする操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置の電気アクチュエータを特定電気負荷としたものである。電動パワーステアリング装置においては、大きな操舵アシストトルクを発生させる必要から電気アクチュエータの消費電力が大きい。そこで、本発明においては、電気アクチュエータで大電力を消費するときに、副電源で電力供給を補助できるようにしている。そして、主電源のバッテリの電源供給能力が低下している場合には、副電源の目標充電容量を増加させるため、電気アクチュエータを安定して作動させることができる。従って、電動パワーステアリング装置の性能を維持することが可能となる。この結果、運転者に対して違和感を与えにくい。
本発明の他の特徴は、前記主電源の出力電圧を昇圧する昇圧回路を備え、前記昇圧回路から前記特定電気負荷への電源供給回路に前記副電源を並列に接続した電源供給回路を構成するとともに、前記充電制御手段は、前記昇圧回路の昇圧電圧を制御することにより前記副電源への充電を制御することにある。
この発明によれば、主電源の出力電圧が昇圧回路により昇圧され、昇圧された電力が特定電気負荷および副電源に供給される。この場合、副電源は、昇圧回路の昇圧電圧が副電源の出力電圧よりも高い場合に充電される。また、副電源への充電電流値も昇圧電圧により調整することができる。
一方、特定電気負荷への電源供給源に関しても、昇圧回路の昇圧電圧と副電源の出力電圧(電源電圧)とのバランス(電圧の大小関係)で自然に切り替わる。つまり、昇圧回路の昇圧電圧が副電源の出力電圧よりも高い場合には、昇圧回路の出力が特定車載電気負荷供給され、昇圧回路の昇圧電圧が副電源の出力電圧よりも低い場合には、副電源の出力が特定車載電気負荷に供給される。また、特定電気負荷への電源供給の負担率も昇圧電圧により調整することができる。従って、本発明によれば、副電源の充放電を簡単に制御することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る車両の電源装置について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態として車両の電源装置を備えた電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
この電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、主電源100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電源供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30との間の電源供給回路に並列接続される副電源50と、電動モータ20および昇圧回路40の作動を制御する電子制御装置60とを主要部として備えている。尚、本明細書においては、複数の実施形態を説明するが、それらは、電子制御装置60の制御処理が異なるだけであって、ハードウエアの構成については同一である。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ20が組み付けられている。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRに転舵力を付与して操舵操作をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTxと呼ぶ。操舵トルクTxは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。本実施形態においては、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクTxを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクTxを負の値で示す。従って、操舵トルクTxの大きさは、その絶対値の大きさとなる。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される。一方、この電動モータ20の回転角は、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。また、電動モータ20の回転角を時間微分した回転角速度は、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるため、操舵ハンドル11の操舵速度としても共通に用いられる。以下、回転角センサ22の出力信号により検出される操舵ハンドル11の操舵角の値を操舵角θxと呼び、その操舵角θxを時間微分して得られる操舵角速度の値を操舵速度ωxと呼ぶ。操舵角θxは、正負の値により操舵ハンドル11の中立位置に対する右方向および左方向の舵角をそれぞれ表す。本実施形態においては、操舵ハンドル11の中立位置を「0」とし、中立位置に対する右方向への舵角を正の値で示し、中立位置に対する左方向への舵角を負の値で示す。
モータ駆動回路30は、MOSFETからなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電源供給ライン37を引き出した構成を採用している。
モータ駆動回路30から電動モータ20への電源供給ライン37には、電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出(測定)し、その検出した電流値に対応した検出信号を電子制御装置60に出力する。以下、この測定された電流値を、モータ電流iuvwと呼ぶ。また、この電流センサ38をモータ電流センサ38と呼ぶ。
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートが電子制御装置60のアシスト制御部61(後述する)に接続され、アシスト制御部61からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置の電源装置は、主電源100と、主電源100の出力電圧を昇圧する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30とのあいだに並列に接続される副電源50と、電子制御装置60に設けられ昇圧回路40の昇圧電圧を制御する電源制御部62とを備える。こうした電源装置から電源供給される電動モータ20及びモータ駆動回路30が、本発明の特定電気負荷に相当する。
電動パワーステアリング装置の電源装置は、主電源100と、主電源100の出力電圧を昇圧する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30とのあいだに並列に接続される副電源50と、電子制御装置60に設けられ昇圧回路40の昇圧電圧を制御する電源制御部62とを備える。こうした電源装置から電源供給される電動モータ20及びモータ駆動回路30が、本発明の特定電気負荷に相当する。
主電源100は、定格出力電圧12Vの一般的な車載バッテリである主バッテリ101と、エンジンの回転により発電する定格出力電圧14Vのオルタネータ102とを並列接続して構成される。従って、主電源100は、14V系の車載電源を構成している。主バッテリ101が本発明のバッテリに相当し、オルタネータ102が本発明の発電機に相当する。
主電源100は、電動パワーステアリング装置だけでなく、ヘッドライト等の他の車載電気負荷への電源供給も共通して行う。主バッテリ101の電源端子(+端子)には、電源供給元ライン103が接続され、グランド端子には接地ライン111が接続される。この電源供給元ライン103と接地ラインとの間にオルタネータ102が接続される。
電源供給元ライン103には、オルタネータ102の電源端子(+端子)との接続点よりも主バッテリ101側に第1電流センサ51が設けられる。この第1電流センサ51は、主バッテリ101に流れる放電電流と充電電流とを区別してその電流値を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、この第1電流センサにて検出された電流の測定値を主バッテリ電流i1と呼ぶ。本実施形態においては主バッテリ101から負荷側に流れる主バッテリ電流i1(放電電流)については正の値で表し、主バッテリ101に流れ込む主バッテリ電流i1(充電電流)については負の値で表す。
また、電源供給元ライン103には、第1電圧センサ52が設けられる。第1電圧センサ52は、主電源100の出力電圧(電源供給元ライン103と接地ライン111との間の電圧)を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、この第1電圧センサ52にて検出された電圧の測定値を主電源電圧v1と呼ぶ。
電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、電子制御装置60のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン105は、モータ駆動回路30と電子制御装置60との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン104には、イグニッションスイッチ106が接続される。駆動系電源ライン105には、電源リレー107が接続される。この電源リレー107は、電子制御装置60のアシスト制御部61からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン104は、電子制御装置60の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ106よりも負荷側(電子制御装置60側)においてダイオード108を備えている。このダイオード108は、カソードを電子制御装置60側、アノードを主電源100側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
駆動系電源ライン105には、電源リレー107よりも負荷側において制御系電源ライン104と接続する連結ライン109が分岐して設けられる。この連結ライン109は、制御系電源ライン104のダイオード108接続位置よりも電子制御装置60側に接続される。また、連結ライン109には、ダイオード110が接続される。このダイオード110は、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、連結ライン109を介して駆動系電源ライン105から制御系電源ライン104には電源供給できるが、制御系電源ライン104から駆動系電源ライン105には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン105および接地ライン111は昇圧回路40に接続される。また、接地ライン111は、電子制御装置60の接地端子にも接続される。
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン112が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOSFETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路40は、電子制御装置60の電源制御部62により昇圧制御される。電源制御部62は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン112に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン112から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源100側へのノイズが除去される。
昇圧回路40の昇圧電圧(出力電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比の制御(PWM制御)により調整可能となっており、第2昇圧用スイッチング素子44のオンデューティ比(オンする時間の比率)が高いほど昇圧電圧は高くなる。本実施形態における昇圧回路40は、例えば、20V〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧電源ライン112は、昇圧駆動ライン113と充放電ライン114とに分岐する。昇圧駆動ライン113は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン114は、副電源50のプラス端子に接続される。
副電源50は、昇圧回路40から出力される電力を充電し、モータ駆動回路30で大電力を必要としたときに、主電源100を補助してモータ駆動回路30に電源供給する蓄電装置である。従って、副電源50は、昇圧回路40の昇圧電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。副電源50の接地端子は、接地ライン111に接続される。この副電源として、例えば、キャパシタ(電気二重層コンデンサ)を用いることができる。
副電源50は、電子制御装置60に対しても電源供給できるように構成されており、主電源100から電子制御装置60に電源供給を良好に行えなくなったときに、主電源100に代わって電子制御装置60に電源供給するように構成されている。尚、電子制御装置60は、副電源50から供給される電源の電圧を降圧する図示しない降圧回路(DC/DCコンバータ)を受電部に内蔵しており、この降圧回路により適正電圧に調整する。
昇圧回路の出力側には、第2電圧センサ53が設けられる。第2電圧センサ53は、昇圧電源ライン112と接地ライン111との間の電圧を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。この回路構成においては、昇圧電源ライン112に充放電ライン114が接続されるため、第2電圧センサ53により測定される測定値は、昇圧回路40の出力電圧(昇圧電圧)と副電源50の出力電圧(電源電圧)との高い方の電圧値となる。以下、第2電圧センサ53により測定された電圧値を出力電圧v2と呼ぶ。
また、充放電ライン114には、副電源50に流れる電流を検出する副電源電流センサ55が設けられる。副電源電流センサ55は、電流の向き、つまり、昇圧回路40から副電源50に流れる充電電流と、副電源50からモータ駆動回路30に流れる放電電流とを区別して、それらの大きさを測定し、測定値に応じた検出信号を電源制御部62に出力する。以下、この副電源電流センサ55にて検出された電流の測定値を副電源電流isubと呼ぶ。本実施形態において副電源電流isubは、充電電流として流れるときには正の値を使い、放電電流として流れるときには負の値を使って表す。
電子制御装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成され、その機能から、アシスト制御部61と電源制御部62とに大別される。アシスト制御部61は、操舵トルクセンサ21、回転角センサ22、モータ電流センサ38、車速センサ23を接続し、操舵トルクTx、操舵角θx、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部61は、これらのセンサ信号に基づいて、モータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して電動モータ20を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。
電源制御部62は、昇圧回路40の昇圧制御を行うことにより副電源50の充電と放電とを制御する。電源制御部62には、第1電流センサ51,第1電圧センサ52,第2電圧センサ53,副電源電流センサ55を接続し、主バッテリ電流i1,主電源電圧v1,出力電圧v2,副電源電流isubを表すセンサ信号を入力する。また、電源制御部62は、アシスト制御部61と相互に信号授受できるように構成されている。電源制御部62は、これらセンサ信号、および、アシスト制御部61に入力されたセンサ信号に基づいて、昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その出力電圧である昇圧電圧を変化させる。
次に、電子制御装置60のアシスト制御部61が行う操舵アシスト制御処理について説明する。図2は、アシスト制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。操舵アシスト制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部61は、まず、ステップS11において、車速センサ23によって検出された車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクTxとを読み込む。
続いて、ステップS12において、図3に示すアシストトルクテーブルを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクTxに応じて設定される基本アシストトルクTasを計算する。アシストトルクテーブルは、電子制御装置60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTxの増加にしたがって基本アシストトルクTasも増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図3のアシストトルクテーブルは、右方向の操舵トルクTxに対する基本アシストトルクTasの特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば同じである。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS13において、この基本アシストトルクTasに補償トルクを加算して目標指令トルクT*を計算する。この補償トルクは、例えば、操舵角θxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵速度ωxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算する。この計算に当たっては、回転角センサ22にて検出した電動モータ20の回転角(操舵ハンドル11の操舵角θxに相当)を入力して行う。また、操舵速度ωxについては、操舵ハンドル11の操舵角θxを時間で微分して求める。
次に、アシスト制御部61は、ステップS14において、目標指令トルクT*に比例した目標電流ias*を計算する。目標電流ias*は、目標指令トルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS15において、電動モータ20に流れるモータ電流iuvwをモータ電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS16において、このモータ電流iuvwと先に計算した目標電流ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)により目標指令電圧v*を計算する。
そして、アシスト制御部61は、ステップS17において、目標指令電圧v*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が制御されて、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、据え切り操作時や、低速走行でのハンドル操作時において大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に電源供給を補助する副電源50を備える。また、電動モータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力をモータ駆動回路30および副電源50に供給するシステムを構成している。
こうした電源供給システムを構成した場合、主電源100と副電源50との両方を使うことにより電動パワーステアリング装置の性能(アシスト性能)をフルに発揮できる。このため、本来のアシスト性能を確保するためには、副電源50の状態を良好に保つ必要がある。副電源50は、過剰に充電したり頻繁に充放電を繰り返したりすると、早く劣化してしまい寿命が短くなる。また、副電源50の充電容量が不足していている場合には、本来のアシスト性能を発揮できなくなる。
一方、主電源100の主バッテリ101が劣化している場合においても、大電力が必要となる操舵操作時に本来のアシスト性能が得られなくなってしまう。また、主バッテリ101の劣化の進行を早めてしまうことにもなる。そこで、電子制御装置60の電源制御部62は、副電源50の状態を良好に維持するだけでなく、主バッテリ101の劣化状態を検出し、劣化度に応じた最適な副電源50の充放電制御を行うことにより、電動パワーステアリング装置における操舵性能の確保、主バッテリ101の保護を図る。
まず、主バッテリ101の劣化検出処理について説明する。図4は、電源制御部62の行う主バッテリ劣化検出ルーチンを表すフローチャートである。主バッテリ劣化検出ルーチンは、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
主バッテリ劣化検出ルーチンが起動すると、電源制御部62は、まず、ステップS21において、第1電圧センサ52により検出される主電源電圧v1を読み込む。続いて、ステップS22において、主電源電圧v1が予め設定した劣化判定電圧v1refと等しいか否かを判断する。主電源電圧v1が劣化判定電圧v1refと異なる場合(S22:No)には、主バッテリ劣化検出ルーチンを一旦終了する。ステップS21の判断が繰り返され、主電源電圧v1が劣化判定電圧v1refと等しくなった場合(S22:Yes)には、ステップS23において、第1電流センサ51により検出される主バッテリ電流i1を読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS24において、主バッテリ電流i1に基づいて主バッテリ101の劣化度合いαを設定する。
一般的に、バッテリは、劣化してくると内部抵抗が増大して電圧−放電電流特性が変化する。図5は、バッテリの劣化度に応じた電圧−放電電流特性を簡単に表したものである。この特性図からわかるように、バッテリの劣化度合いが大きいほど、放電電流に対してバッテリ端子電圧が低下する。つまり、バッテリから同じ電流値の放電電流が流れた場合であっても、劣化度合いが大きいほどバッテリ端子電圧のドロップが大きい。そこで、本実施形態においては、主電源電圧v1(バッテリ端子電圧となる)が劣化判定電圧v1refになっているときの主バッテリ電流i1(放電電流値)に基づいて、主バッテリ電流i1が小さいほど劣化度合いが大きいものと判定する。
例えば、図5に示すように、主電源電圧v1が劣化判定電圧v1refにまで低下しているときの主バッテリ電流i1が正常判定電流i1ref1以上であれば、主バッテリ101は劣化していないと判定し、劣化度合いαを値ゼロ(α=0)に設定する。また、主電源電圧v1が劣化判定電圧v1refにまで低下しているときの主バッテリ電流i1が最大劣化判定電流i1ref2未満であれば、主バッテリ101はかなり劣化していると判定し、劣化度合いαを最大値1(α=1)に設定する。また、主バッテリ電流i1が正常判定電流i1ref1と最大劣化判定電流i1ref2との間をとる場合には、その値が大きいほど劣化度合いαが値0に近くなるように、その値が小さいほど劣化度合いαが値1に近くなるように、例えば、比例配分して劣化度合いαを設定する。
こうして劣化度合いαを設定すると、電源制御部62は、ステップS25において、劣化度合いαを電子制御装置60に設けた不揮発性メモリ(図示略)に記憶(上書き)して主バッテリ劣化検出ルーチンを一旦終了する。主バッテリ劣化検出ルーチンは所定の周期で繰り返し実行されることから、主電源電圧v1が劣化判定電圧v1refと等しくなるたびに、主バッテリ101の劣化度合いαが判定されることになる。
次に、電子制御装置60の電源制御部62が行う充放電御処理について説明する。図6は、電源制御部62により実施される充放電制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。充放電制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、まず、ステップS31において、副電源50に充電されている実充電容量Jxを表すデータを読み込む。この実充電容量Jxは、後述する実充電容量検出ルーチン(図9)により逐次算出されるものである。従って、このステップS31は、実充電容量検出ルーチンにより算出された最新の実充電容量Jxを表すデータの読み込み処理となる。
次に、電源制御部62は、ステップS32において、上述した主バッテリ劣化検出ルーチンにて検出されている最新の劣化度合いαを読み込む。この劣化度合いαを表すデータは、不揮発性メモリから読み出される。続いて、電源制御部62は、ステップS33において、劣化度合いαに応じた目標充電容量J*を設定する。この目標充電容量J*は、副電源50に充電すべき最適充電容量であって、図7に示すように、劣化度合いαが大きくなるにしたがって増加するように設定される。尚、副電源50は、目標充電容量J*の充電に対して過充電とならないような十分な電池容量を備えている。
続いて、電源制御部62は、ステップS34において、劣化度合いαに応じた上限充電電流値(以下、上限充電電流isubmaxと呼ぶ)を設定する。この上限充電電流isubmaxは、副電源50に充電するときの充電電流の上限を制限する値であり、図8に示すように、劣化度合いαが大きくなるにしたがって低下するように設定される。上限充電電流isubmaxは、本発明の上限電流設定値に相当する。
尚、図7に示す劣化度合いαと目標充電容量J*との関係、および、図8に示す劣化度合いαと上限充電電流isubmaxとの関係は、例えば、マップあるいは関数といった形で電子制御装置60のメモリ内に記憶されている。また、本実施形態においては、劣化度合いαに対して一次関数的に変化する目標充電容量J*および上限充電電流isubmaxを設定しているが、例えば、段階的に設定するものであってもよく、少なくとも、主バッテリ101の劣化が検出されている場合は、主バッテリ101の劣化が検出されていない場合に比べて、目標充電容量J*を増加させ、上限充電電流isubmaxを低下させるものであればよい。
続いて、電源制御部62は、ステップS35において、フラグFが「0」か否かについて判断する。フラグFは、後述する処理からわかるように、副電源50の充電の要否を表すもので、F=0で充電不要を表し、F=1で充電要を表す。尚、本充放電制御ルーチンの起動時においては「0」に設定されている。
電源制御部62は、フラグFが「0」の場合には(S35:YES)、その処理をステップS36に進めて、実充電容量Jxが目標充電容量J*未満であるか否かについて判断する。このステップS36は、副電源50の充電容量が不足したか否かを判断するもので、Jx<J*の場合には(S36:YES)、充電容量が不足していると判断して、ステップS37において、フラグFを「1」に設定する。一方、Jx≧J*の場合には(S36:NO)、充電容量が不足していないと判断してフラグFの設定変更を行わない。従って、フラグFが「0」に維持される。
また、ステップS35において、フラグFが「1」の場合には(S35:NO)、その処理をステップS38に進めて、実充電容量Jxが、目標充電容量J*に不感帯値A(正の値)を加算した充電容量(J*+A)にまで達したか否かについて判断する。このステップS38は、副電源50の充電不足が解消したか否かを判断するもので、Jx≧J*+Aの場合には(S38:YES)、充電不足が解消したと判断して、ステップS39において、フラグFを「0」に設定する。一方、Jx<J*+Aの場合には(S38:NO)、充電容量が不足していると判断して、フラグFの設定変更を行わない。従って、フラグFが「1」に維持される。
この不感帯値Aは、実充電容量Jxと目標充電容量J*との比較判定結果(充電の要否)が頻繁に変動しないように設定したものである。
こうしてフラグFが設定されると、ステップS40において、そのフラグFの設定状況が確認される。フラグFが「0」の場合(S40:NO)、つまり、副電源50の充電不要と判断される場合には、その処理をステップS41に進めて、目標充放電電流isub*をゼロ(isub*=0)に設定する。一方、フラグFが「1」の場合(S40:YES)、つまり、副電源50の充電容量が不足していると判断される場合には、その処理をステップS42に進めて、目標充放電電流isub*を以下のように計算により求める。
isub*=(Wmax−Wx)/v2
isub*=(Wmax−Wx)/v2
ここで、Wmaxは昇圧回路40の出力許容電力、Wxはモータ駆動回路30の消費電力、v2は第2電圧センサ53により検出される出力電圧である。出力許容電力Wmaxは、昇圧回路40の規格に基づいて予め設定されている値である。また、モータ駆動回路30の消費電力Wxは、第2電圧センサ53にて検出される出力電圧v2とモータ電流センサ38にて検出されたモータ電流iuvwとの積により算出される。従って、このステップS42における処理は、第2電圧センサ52による電圧測定値の読み込み処理と、モータ電流センサ38による電流測定値の読み込み処理とを含んだものとなっている。尚、モータ駆動回路30の消費電力Wxの算出に当たっては、昇圧駆動ライン113に流れる電流を測定する電流センサ(図示略)を設け、この電流センサにて検出した電流値と第2電圧センサ53により検出した出力電圧v2との積により求めても良い。
続いて、電源制御部62は、ステップS43において、目標充放電電流isub*が正の値か否かを判断する。上述したように目標充放電電流isub*は、昇圧回路40の出力許容電力Wmaxからモータ駆動回路30の消費電力Wxを減算し、その減算値を出力電圧v2で除算したものである。従って、電動モータ20の消費電力Wxが昇圧回路40の出力許容電力Wmax範囲内であればisub*>0(S43:YES)となり、逆に、モータ駆動回路30の消費電力Wxが昇圧回路40の出力許容電力Wmax以上となっている場合にはisub*≦0(S43:NO)となる。
目標充放電電流isub*がゼロ以下(isub*≦0)の場合は、ステップS41において、目標充放電電流isub*を新たにゼロ(isub*=0)に設定する。一方、目標充放電電流isub*が正の値(isub*>0)の場合は、次に、ステップS44において、この目標充放電電流isub*がステップS34にて設定した上限充電電流isubmaxを超えているか否かを判断する。目標充放電電流isub*が上限充電電流isubmaxを超えていなければ(S44:No)、先のステップS42にて計算された目標充放電電流isub*を変更しない。逆に、目標充放電電流isub*が上限充電電流isubmaxを超えている場合(S44:Yes)には、ステップS45において、最終的な目標充放電電流isub*を上限充電電流isubmaxに設定する(isub*←isubmax)。
電源制御部62は、こうして目標充放電電流isub*を設定すると、その処理をステップS46に進める。ステップS46においては、目標充放電電流isub*と副電源電流isubとの偏差に基づいて昇圧回路40の昇圧電圧をフィードバック制御する。つまり、目標充放電電流isub*と副電源電流isubとの偏差(isub*−isub)が少なくなるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。本実施形態においては、偏差(isub*−isub)に基づいたPID制御を行う。尚、このステップS46においては、副電源電流センサ55により検出される副電源電流isubを読み込む処理が含まれている。
電源制御部62は、昇圧回路40の第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源100から供給された電力を昇圧する。この場合、このパルス信号のデューティ比を変更することにより昇圧電圧を制御する。
電源制御部62は、ステップS46の処理を行うと、充放電制御ルーチンを一旦終了する。充放電制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実行される。
この充放電制御ルーチンによれば、目標充放電電流isub*が正の値であれば(isub>0)、副電源50に充電方向に向かって電流が流れるように、また、その大きさが目標充放電電流isub*となるように昇圧制御される。従って、昇圧回路40から出力される昇圧電圧は、副電源50の電源電圧よりも高くなるように制御される。つまり、実充電容量Jxが目標充電容量J*に満たない状態で、かつ、モータ駆動回路30の消費電力(電動モータ20を駆動するために消費される電力)に対して昇圧回路40の出力に余裕が有る場合には、主電源100の電力が昇圧回路40を介して副電源50に充電される。しかも、モータ駆動回路30への電力供給分を確保した上で、上限充電電流isubmaxを超えない範囲で、昇圧回路40の電源供給能力をフルに使って充電するように目標充放電電流isub*が設定されるため、副電源50を迅速に充電することができる。
一方、目標充放電電流isub*がゼロに設定されている場合には(isub*=0)、副電源50に充電電流も放電電流も流れないように昇圧回路40の昇圧電圧が制御される。従って、昇圧回路40の昇圧電圧は、副電源50の電源電圧と同じ電圧に制御されることになる。このため、副電源50は充電されない。また、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力を超えない範囲内では、副電源50から放電電流が流れないように昇圧電圧が維持され、モータ駆動回路30は昇圧回路40の出力電力のみで作動する。そして、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達すると、昇圧制御にかかわらず副電源50の放電電流をゼロに維持することができず昇圧電圧が低下する。これにより、副電源50から不足電力分がモータ駆動回路30に供給される。つまり、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力範囲内では副電源50の電力が使われず、出力能力を超える大電力が必要となったときのみ主電源100に加えて副電源50からモータ駆動回路30に電源供給される。
また、副電源50の充放電制御においては、主バッテリ101の劣化度合いαに応じて副電源50の目標充電容量J*と上限充電電流isubmaxとを設定しているため、電動パワーステアリング装置の適正な操舵アシスト性能を確保するとともに、主バッテリ101の劣化の進行を抑制することができる。
例えば、主バッテリ101の劣化度合いαが大きくなるほど、主電源100の電源供給能力が低下するため、操舵アシスト制御時に電力不足を招きやすい。そこで、本実施形態においては、劣化度合いαが大きくなるほど副電源50の目標充電容量J*を増加させるため、副電源50の電源供給能力が高められる。従って、副電源50を大電力消費時に備えて待機させることができる。例えば、据え切り操作時等において大電力が必要となった場合でも、副電源50から十分な電力供給を行うことができる。この結果、適正な操舵シスト性能を確保することができ、運転者に対して違和感を与えにくくすることができる。
また、主バッテリ101の劣化度合いαが大きくなるほど、副電源50の上限充電電流isubmaxを低下させるため、主バッテリ101から引き出す電流値を低く維持することができる。主バッテリ101が劣化していなければ、副電源50を速く充電するために主バッテリ101から引き出す電流値(放電電流値)を高くしても主バッテリ101への負担は少ない。しかし、主バッテリ101が劣化している場合には、主バッテリ101から引き出す電流値を高くしてしまうと負担が大きく主バッテリ101の劣化が一層進んでしまう。そこで、本実施形態においては、主バッテリ101の劣化度合いαが大きくなるほど、副電源50の上限充電電流isubmaxを低下させるため、主バッテリ101の劣化の進行を抑えて、主バッテリ101を保護することができる。
また、主バッテリ101の劣化度合いαが小さくなるほど副電源50の目標充電容量J*が少なく設定されるが、逆に、上限充電電流isubmaxが高く設定されるため急速に副電源50を充電することができ、副電源50が充電不足となることを抑制できる。
次に、実充電容量検出処理について説明する。図9は、電源制御部62により実施される実充電容量検出ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。実充電容量検出ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。この実充電容量検出ルーチンにより検出された実充電容量は、ステップS31にて読み込まれる実充電容量Jxとなる。
実充電容量検出ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS51において、副電源電流センサ55により検出される副電源電流isubを読み込む。続いて、ステップS52において、現時点の実充電容量Jxを以下のように計算により求める。
Jx=Jxn-1+isub
ここで、Jxn-1は前回実充電容量である。前回実充電容量とは、所定周期で繰り返される本実充電容量検出ルーチンにおける1周期前での実充電容量Jxを表す。
Jx=Jxn-1+isub
ここで、Jxn-1は前回実充電容量である。前回実充電容量とは、所定周期で繰り返される本実充電容量検出ルーチンにおける1周期前での実充電容量Jxを表す。
本実施形態においては、イグニッションスイッチ106のオフ操作時に副電源50に充電されている電荷を主バッテリ101に放電する。このため、本検出ルーチンの起動時においては、副電源50に充電されている実充電容量Jxは、ほぼ一定の低い値となっている。従って、前回実充電容量Jxn-1の初期値としては、予め設定した固定値(例えば、Jxn-1=0)が使われる。
続いて、電源制御部62は、ステップS53において、現時点の実充電容量Jxを前回実充電容量Jxn-1としてRAMに記憶し、実充電容量検出ルーチンを一旦終了する。実充電容量検出ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実行される。従って、今回算出した実充電容量Jxが、次回(1周期後)のステップS52における前回実充電容量Jxn-1として使用される。
電源制御部62は、イグニッションスイッチ106のオン期間中、こうした処理を繰り返すことにより、実充電容量Jxを副電源電流isubの積算値として求める。この場合、充電電流が流れている状態では副電源50の実充電容量Jxを増大させる側に、放電電流が流れている場合では副電源50の実充電容量Jxを減少させる側に積算する。従って、副電源50の保有する充電容量を適正に検出することができる。
次に、副電源50に充電された電荷の放電制御について説明する。副電源50としてキャパシタを用いたケースでは、長期間使用しない場合には電荷を放出した方が寿命が長くなる。また、上述したように副電源電流isubの積算値に基づいて副電源50の実充電容量Jxを検出する場合、車両起動時における充電容量初期値の推定が難しい。そこで本実施形態においては、イグニッションスイッチ106がオフしたときに、副電源50に充電されている電荷を昇圧回路40を経由して主バッテリ101に放電させる。以下、その制御処理について図10を用いて説明する。
図10は、電源制御部62により実施される終了時放電制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。終了時放電制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106のオフ操作を検出したときに起動する。本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS61において、昇圧回路40の第2昇圧用スイッチング素子44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して、第2昇圧用スイッチング素子44を所定のデューティ比でオンオフさせる。イグニッションスイッチ106がオフしている期間は操舵アシスト制御も終了しているため、モータ駆動回路30の各スイッチング素子31〜36はオフ状態に維持されている。従って、副電源50の電荷は、主バッテリ101に向かって放電される。この場合、第2昇圧用スイッチング素子44のデューティ比を適宜設定することで、副電源50から主バッテリ101に流れる放電電流の大きさを制限することができる。尚、第1昇圧用スイッチング素子43はオフ状態に維持される。
続いて、電源制御部62は、ステップS62において、副電源電流センサ55により測定された副電源電流isub(放電方向の電流値)を読み込み、ステップS63において、副電源電流isubが放電停止判定電流isubend以下にまで低下したか否かについて判断する。この放電停止判定電流isubendとしては、例えば、0アンペアが設定される。
副電源電流isubが放電停止判定電流isubend以下にまで低下しない間は、こうしたステップS61〜S63の処理が繰り返される。この間は、副電源50から主バッテリ101への放電が継続される。そして、副電源電流isubが放電停止判定電流isubend以下にまで低下すると(例えば、放電電流が流れなくなると)、ステップS64において第2昇圧用スイッチング素子44をオフして終了時放電制御ルーチンを終了する。
従って、終了時放電制御ルーチンによれば、副電源50の寿命を延ばすことができる。また、イグニッションスイッチ106がオンしてからの実充電容量の検出を精度良く行うことができる。つまり、実充電容量の検出にあたっては、副電源50に流れる充放電電流を積算して算出するが、スタート時における初期充電容量の推定が難しい。そこで、副電源50の電荷を放電させておいてから実充電容量検出処理を行うことにより、初期充電容量のばらつきによる検出誤差を抑えることができる。また、昇圧回路40を兼用して主バッテリ101への放電電流の大きさを制御することができるため、特別に放電用の回路を設ける必要がなくコストアップを招かない。
以上説明した第1実施形態によれば、主バッテリ101が劣化している場合には、その劣化度合いαが大きくなるにしたがって副電源50の目標充電容量J*を増加させるため、大電力消費時に備えて副電源50を高い電源供給能力にて待機させることができる。従って、適正な操舵アシスト性能を確保することができる。また、主バッテリ101の劣化度合いαが大きくなるにしたがって副電源50の上限充電電流isubmaxを低く設定するため、主バッテリ101の劣化進行を抑えることができる。
また、主バッテリ101の劣化が検出されていない場合には、副電源50の充電容量が十分であれば、目標充放電電流isub*をゼロ(isub=0)に設定するため、副電源50への充電が規制され過剰充電が防止される。これにより副電源50の寿命を延ばすことができる。また、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超えないあいだは副電源50からの電力供給が停止され、モータ駆動回路30の消費電力が昇圧回路40の出力能力限界を超える状態に達した場合にのみ、その不足電力分が副電源50から供給される。従って、副電源50の電力をできるだけ使わないようにして、副電源50を大電力消費時に備えて待機させることができる。従って、良好に操舵アシスト制御を行うことができる。
一方、実充電容量Jxが目標充電容量J*に達していなければ、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕があれば、正の目標充放電電流isub*が設定され、主電源100の電力が昇圧回路40を介して副電源50に充電される。この場合、モータ駆動回路30への電力供給分を確保した上で、昇圧回路40の電源供給能力をフルに使って充電するように目標充放電電流isub*が設定されるため、副電源50を迅速に充電することができる。また、実充電容量Jxが目標充電容量J*に達していなくても、モータ駆動回路30の消費電力に対して昇圧回路40の出力に余裕がない場合には、目標充放電電流isub*がゼロ(isub*=0)に設定される。従って、副電源50への充電が規制されるとともに、モータ駆動回路30への電力不足分だけが副電源50からモータ駆動回路30に供給される。従って、モータ駆動回路30への電力供給と、副電源50の電力消費抑制とを両立することができる。
また、副電源50に充電される実充電容量Jxと目標充電容量J*との比較にあたっては、不感帯が設けられているため、副電源50の充電と放電とが頻繁に繰り返されるといったハンチング現象を防止することができる。これにより、副電源50の寿命を一層延ばすことができる。
また、電動パワーステアリング装置への電源供給装置として、主電源100と副電源50とを使って操舵アシスト性能をフルに発揮できるようにしているため、主電源100の大容量化を抑制することができる。また、昇圧回路40により電動モータ20を効率よく駆動することができる。更に、この昇圧回路40を兼用して副電源50の充放電を制御することができるため、回路構成が複雑にならず、コストアップを抑制することができる。例えば、充放電を切り替えるための切り替え回路やスイッチ等が不要となる。
また、副電源50の充放電制御のために昇圧回路40の昇圧電圧が変動しても、アシスト制御部61がモータ駆動回路30をPWM制御するため、電動モータ20を適正に駆動制御することができる。
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主バッテリ101が劣化している場合には、主バッテリ101をできるだけ使わずにオルタネータ102の発電電力を使って副電源50を充電するようにしたものである。
上述したように、主電源100は、定格出力電圧12Vの主バッテリ101と、定格出力電圧14Vのオルタネータ102とを並列接続して構成される。従って、主電源100から車載電気負荷に供給する電力がオルタネータ102の発電電力以下であれば、主バッテリ101からは放電しない。そして、主電源100から車載電気負荷に供給する電力が増大してオルタネータ102の発電電力を上回ると、オルタネータ102の出力電圧が低下していき主バッテリ101からも電力が出力される。従って、主電源100から供給する電力がオルタネータ102の発電電力よりも少ないときに主電源100から副電源50に充電すれば、主バッテリ101を放電させることなくオルタネータ102の余っている出力のみで副電源50を充電することができる。
そこで第2実施形態は、主電源100から供給する電力がオルタネータ102の発電電力以下であるとき、つまり、主バッテリ101から電力が出力されていないときに、副電源50の充電を許可するように充電を制御する。図11は、第2実施形態における充放電制御ルーチンについて、第1実施形態の充放電制御ルーチンとの変更部分を表したフローチャートである。
この第2実施形態の充放電制御ルーチンは、第1実施形態の充放電制御ルーチンのステップS33からステップS35の間に、ステップS101〜S104を加えたもので他の処理については第1実施形態と同じである。
電源制御部62は、ステップS33において、目標充電容量J*を設定すると、続いてステップS101において、主バッテリ101の劣化度合いαがゼロ(α=0)か否かを判断する。劣化度合いαがゼロであれば(S101:Yes)、上述したステップS34に処理を進めて、劣化度合いαに応じた上限充電電流isubmaxを設定する。一方、劣化度合いαがゼロでない場合、つまり、主バッテリ101の劣化が検出されている場合には、ステップS102において、第1電流センサ51にて検出される主バッテリ電流i1を読み込む。
続いて、電源制御部62は、ステップS103において、主バッテリ電流i1の値が0より大きいか否か、つまり、主バッテリ101から放電電流が流れているか否かを判断する。主バッテリ101から放電電流が流れていない場合(S103:No)には、その処理をステップS34に進める。一方、主バッテリ101から放電電流が流れている場合には、ステップS104において、上限充電電流isubmaxをゼロ(isubmax=0)に設定する。
電源制御部62は、ステップS34あるいはステップS104にて上限充電電流isubmaxを設定すると、上述したステップS35からの処理を行う。
この第2実施形態の充放電制御ルーチンによれば、主バッテリ101が劣化している場合には(S101:No)、主バッテリ101から放電電流が流れているか否かを判断し(S103)、放電電流が流れている場合には、上限充電電流isubmaxをゼロに設定して、副電源50への充電を禁止する。主バッテリ101の劣化時においては、できるだけ主バッテリ101の電力消費を抑えて劣化の進行を抑えたい。そこで、オルタネータ102の出力に余裕がある状況、つまり、主バッテリ101から電力が出力されていない状況においてのみ、副電源50を充電するようにする。
この結果、主バッテリ101の劣化時においては、主バッテリ101から引き出される放電電流値を最小限に抑えることができ、主バッテリ101の劣化進行を抑制することができる。
尚、この第2実施形態においては、主バッテリ101から電力が出力されているか否かについての判断を、第1電流センサ51にて検出される主バッテリ電流i1に基づいて行っているが(S103)、その変形例として、第1電圧センサ52により検出される主電源電圧v1に基づいて判断することもできる。
図12は、この第2実施形態の変形例としての充放電制御ルーチンの一部を表したフローチャートである。この変形例としての充放電制御ルーチンは、第2実施形態のステップS102に代えてステップS102’の処理を、ステップS103に代えてステップS103’の処理を行うもので、他の処理については、第2実施形態と同一である。
電源制御部62は、劣化度合いαがゼロでない場合、つまり、主バッテリ101の劣化が検出されている場合には、ステップS102’において、第1電圧センサ52にて検出される主電源電圧v1を読み込む。続いて、ステップS103’において、主電源電圧v1が判定基準電圧v1refを下回っているかを判断する。主電源電圧v1が判定基準電圧v1refを下回っていない場合(S103’:No)には、その処理をステップS34に進める。一方、主電源電圧v1が判定基準電圧v1refを下回っている場合(S103’:Yes)には、主バッテリ101から電力が出力されていると判断して、ステップS104において、上限充電電流isubmaxをゼロ(isubmax=0)に設定する。
主電源100は、定格出力電圧12Vの主バッテリ101と、定格出力電圧14Vのオルタネータ102とを並列接続して構成されている。従って、主電源100から供給する電力がオルタネータ102の発電電力より少ないあいだは、主バッテリ101からは電力供給されない。このとき、オルタネータ102の出力電圧値が主電源電圧v1となる。そして、オルタネータ102の発電電力だけでは車両電気負荷への電力供給をまかなえなくなると、主電源電圧v1が低下して主バッテリ101からの電力供給が開始される。従って、第1電圧センサ52にて検出される主電源電圧v1が予め設定した判定基準電圧v1refを下回った場合に、主バッテリ101から電力が出力されていると判断することができる。この判定基準電圧v1refとしては、主バッテリ101の定格出力電圧より高く、オルタネータ102の定格出力電圧より低い値に設定するとよい。具体的には、13Vが好ましい。
尚、第2実施形態およびその変形例においては、主バッテリ101の劣化が検出され、かつ、主バッテリ101から電力を出力している場合に、上限充電電流isubmaxをゼロに設定しているが、必ずしもゼロにする必要はない。例えば、主バッテリ101の劣化が検出され、かつ、主バッテリ101から電力を出力している場合には、図8の関係から算出される上限充電電流isubmaxに低減係数K(1>K>0)を乗じるなど、主バッテリ101から電力を出力していない場合に比べて上限充電電流isubmaxを低く設定するものであればよい。
次に、第3実施形態について説明する。上述した第1,第2実施形態においては、モータ駆動回路30で消費される電力が昇圧回路40の出力許容電力Wmaxを上回らないあいだは副電源50からの放電を行わない構成であるが、この第3実施形態においては、主バッテリ101の劣化が検出されている場合には、モータ駆動回路30で消費される電力が昇圧回路40の出力許容電力Wmax未満であっても、副電源50からモータ駆動回路30への電源供給を補助するようにする。つまり、副電源50からモータ駆動回路30へ電源供給する負担率を増加させる構成を備えている。
図13は、第3実施形態の充放電制御ルーチンについて、第1実施形態の充放電制御ルーチンとの変更部分を表したフローチャートである。この第3実施形態の充放電制御ルーチンは、第1実施形態の充放電制御ルーチンのステップS40の前に、ステップS111〜S113を加えたもので他の処理については第1実施形態と同じである。
電源制御部62は、ステップS35〜S39においてフラグFを設定すると、次に、ステップS111において、主バッテリ101の劣化度合いαがゼロ(α=0)か否かを判断する。劣化度合いαがゼロであれば(S111:Yes)、上述したステップS40に処理を進める。一方、劣化度合いαがゼロでなければ、つまり、主バッテリ101の劣化が検出されていれば、ステップS112において、モータ駆動回路30の消費電力Wxがゼロでないか否かを判断する。つまり、モータ駆動回路30にて電力消費していないか否かを判断する。モータ駆動回路30の消費電力Wxがゼロであれば(S112:No)、その処理をステップS40に進める。
一方、モータ駆動回路30の消費電力Wxがゼロでなければ、電源制御部62は、ステップS113において、副電源50の目標充放電電流isub*を次式のように計算する。
isub*=(−α/2)・Wx/v2
v2は、昇圧回路40の昇圧電圧である。
isub*=(−α/2)・Wx/v2
v2は、昇圧回路40の昇圧電圧である。
目標充放電電流isub*は、正の値により充電電流が、負の値により放電電流が設定される。従って、このステップS113においては、目標充放電電流isub*として放電電流値が計算される。この式では、モータ駆動回路30の消費電力Wxのα/2を副電源50から電源供給するように目標充放電電流isub*を設定するものである。従って、副電源50からモータ駆動回路30への電源供給の負担率は、主バッテリ101の劣化度合いαが大きくなるにしたがって増加するように設定される。
例えば、主バッテリ101の劣化度合いαが最大となるとき(α=1)、モータ駆動回路30への電源供給の半分を副電源50にて負担する。図14は、劣化度合いαが1となるときの、主電源100と副電源50とからそれぞれモータ駆動回路30に供給する電力の負担分を表したグラフである。図示するように、主電源100と副電源50との電力供給割合は、モータ駆動回路30へ供給する電力が小さい場合でも、1:1となっている。
また、副電源50からモータ駆動回路30への電力供給割合(電源負担率)は、主バッテリ101の劣化度合いαが小さくなるにしたがって1/2から低減されていく。例えば、劣化度合いαが0.5(α=0.5)である場合には、モータ駆動回路30への供給電力の1/4を副電源50が負担することになる。尚、この例では、劣化度合いαが最大の時に電源負担率を50%としているが、それに限るものではなく、任意の負担率に設定できるものである。
電源制御部62は、ステップS113において、目標充放電電流isub*を設定すると、その処理を上述したステップS46に進める。
この第3実施形態の充放電制御ルーチンによれば、主バッテリ101が劣化している場合においては(S111:No)、モータ駆動回路30で消費される電力が昇圧回路40の出力許容電力Wmax未満であっても、副電源50からモータ駆動回路30への電源供給を補助し、しかも、劣化度合いαが大きくなるほど副電源50からモータ駆動回路30への電源供給の負担率を増大させる。従って、主バッテリ101の負担を軽くすることができ主バッテリ101の劣化進行を抑えることができる。また、据え切り操作等によりモータ駆動回路30での必要電力が急激に増大しても、副電源50の補助でモータ駆動回路30に安定的に電力供給することができる。尚、この第3実施形態は、第1実施形態の充放電制御ルーチン(図6)にステップS111〜S113を加えたものであるが、第2実施形態の充放電制御ルーチンにステップS111〜S113を加えたものであってもよい。
以上、本発明の実施形態としての電源装置を備えた電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、電源装置の適用は、電動パワーステアリング装置に限るものではなく、種々の装置に適用することができる。例えば、車両に搭載される装置として、電気制御式ブレーキ装置、電気制御式サスペンション装置、電気制御式スタビライザ装置など電気アクチュエータを備えた種々の車両制御システムに適用できる。また、車輪に転舵力を付与するステアリング装置として、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
また、本実施形態においては、副電源50に充電される充電容量を昇圧回路40の昇圧電圧の制御により調整する構成であるが、必ずしも昇圧回路40を用いる必要はない。例えば、充放電ライン114に副電源50の充電と放電とを切り替える入出力回路を設け、この入出力回路をマイクロコンピュータにて制御して副電源50の充電容量を調整する構成を採用することもできる。
また、本実施形態においては、電子制御装置60内に、電源装置の一部を構成する電源制御部62と、電動パワーステアリング装置の一部を構成するアシスト制御部61とを設けているが、両制御部61,62を別々のマイクロコンピュータにより構成するようにしてもよい。
尚、本実施形態における電源制御部62の充放電制御ルーチンを実行する機能部および昇圧回路40が本発明の充電制御手段に相当する。また、本実施形態における電源制御部62の主バッテリ劣化検出ルーチンを実行する機能部が本発明のバッテリ能力低下検出手段に相当する。また、本実施形態における充放電制御ルーチンのステップS32,S33の処理を実行する電源制御部62の機能部が本発明の目標充電容量変更手段に相当する。また、本実施形態における充放電制御ルーチンのステップS44,S45の処理を実行する電源制御部62の機能部が本発明の充電電流制限手段に相当する。また、本実施形態における充放電制御ルーチンのステップS32,S34の処理を実行する電源制御部62の機能部が本発明の上限電流設定値変更手段に相当する。また、本実施形態における充放電制御ルーチンのステップS111,S112,S113の処理を実行する電源制御部62の機能部が本発明の電源供給負担率変更手段に相当する。
10…ステアリング機構、20…電動モータ、30…モータ駆動回路、40…昇圧回路、50…副電源、51…第1電流センサ、52…第1電圧センサ、53…第2電圧センサ、55…副電源電流センサ、60…電子制御装置、61…アシスト制御部、62…電源制御部、100…主電源、101…主バッテリ、102…オルタネータ、FWL,FWR…左右前輪。
Claims (8)
- バッテリと発電機とを並列に接続して備えた主電源と、
前記主電源と特定電気負荷との間に並列に接続され、前記主電源から出力される電力を充電し、充電した電力を使って前記特定電気負荷への電源供給を補助する副電源と
を備えた車両の電源装置において、
前記副電源に充電される充電容量が目標充電容量となるように前記副電源への充電を制御する充電制御手段と、
前記バッテリの電源供給能力の低下を検出するバッテリ能力低下検出手段と、
前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されていない場合に比べて、前記充電制御手段の目標充電容量を増加させる目標充電容量変更手段と
を備えたことを特徴とする車両の電源装置。 - 前記副電源に流す充電電流を上限電流設定値以下に制限する充電電流制限手段と、
前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されていない場合に比べて、前記充電電流制限手段の制限する上限電流設定値を低下させる上限電流設定値変更手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両の電源装置。 - 前記主電源は、前記バッテリの定格出力電圧に対して前記発電機の定格出力電圧が高く設定されており、
前記上限電流設定値変更手段は、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合、前記バッテリから電力が出力されていない場合に比べて前記バッテリから電力が出力されている場合の前記上限電流設定値を低く設定することを特徴とする請求項2記載の車両の電源装置。 - 前記バッテリから電力が出力されている場合には、前記上限電流設定値をゼロに設定して前記副電源への充電を禁止することを特徴とする請求項3記載の車両の電源装置。
- 前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されている場合には、前記バッテリの電源供給能力の低下が検出されていない場合に比べて、前記副電源から前記特定電気負荷に電源供給する負担率を増加させる電源供給負担率変更手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項記載の車両の電源装置。
- 前記電源供給負担率変更手段は、前記バッテリの電源供給能力の低下度合いが大きいほど、前記副電源から前記特定電気負荷に電源供給する負担率を増加させる請求項5記載の車両の電源装置。
- 前記特定電気負荷は、運転者の操舵操作をアシストする操舵アシストトルクを発生する電気アクチュエータであることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項記載の車両の電源装置。
- 前記主電源の出力電圧を昇圧する昇圧回路を備え、前記昇圧回路から前記特定電気負荷への電源供給回路に前記副電源を並列に接続した電源供給回路を構成するとともに、
前記充電制御手段は、前記昇圧回路の昇圧電圧を制御することにより前記副電源への充電を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか一項記載の車両の電源装置。
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