JP2012023391A - 結晶性半導体膜の作製方法 - Google Patents

結晶性半導体膜の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビームスポットの面積を飛躍的に広げ、結晶性の劣る領域の占める割合を低減することができるレーザ照射装置の提供を課題とする。また連続発振のレーザ光を用いつつ、スループットをも高めることができる、レーザ照射装置の提供を課題とする。さらに本発明は、該レーザ照射装置を用いたレーザ照射方法及び半導体装置の作製方法の提供を課題とする。
【解決手段】高調波のパルス発振の第1のレーザ光により溶融した領域に、連続発振の第2のレーザ光を照射する。具体的に第1のレーザ光は、可視光線と同程度かそれより短い波長(890nm以下程度)を有する。第1のレーザ光によって半導体膜が溶融することで、第2のレーザ光の半導体膜への吸収係数が飛躍的に高まり、第2のレーザ光が半導体膜に吸収されやすくなる。
【選択図】図15

Description

本発明は半導体膜の結晶化に用いられるレーザ照射装置に関する。また該レーザ照射装
置を用いたレーザ照射方法及び半導体装置の作製方法に関する。
多結晶半導体膜を用いた薄膜トランジスタ(多結晶TFT)は、非晶質半導体膜を用い
たTFTに比べて移動度が2桁以上高く、半導体表示装置の画素部とその周辺の駆動回路
を同一基板上に一体形成できるという利点を有している。多結晶半導体膜は、レーザアニ
ール法を用いることで、安価なガラス基板上に形成することができる。
レーザはその発振方法により、パルス発振と連続発振の2種類に大別される。エキシマ
レーザに代表されるパルス発振のレーザは、連続発振のレーザと比べて、単位時間あたり
のレーザ光の出力エネルギーが3〜6桁程度高い。よって、ビームスポット(被処理物の
表面において実際にレーザ光が照射される照射領域)を数cm角の矩形状や、長さ100
mm以上の線状となるように光学系にて成形し、半導体膜へのレーザ光の照射を効率的に
行ない、スループットを高めることができる。そのため、半導体膜の結晶化には、パルス
発振のレーザを用いるのが主流となりつつあった。
なお、ここでいう「線状」は、厳密な意味で「線」を意味しているのではなく、アスペ
クト比の大きい長方形(もしくは長楕円形)を意味する。例えば、アスペクト比が2以上
(好ましくは10〜10000)のものを線状と呼ぶが、線状が矩形状に含まれることに
変わりはない。
しかし、このようにパルス発振のレーザ光を用いて結晶化された半導体膜は、複数の結
晶粒が集合して形成されており、その結晶粒の位置と大きさはランダムなものである。結
晶粒内と比較して、結晶粒の界面(結晶粒界)は非晶質構造や結晶欠陥などに起因する再
結合中心や捕獲中心が無数に存在している。この捕獲中心にキャリアがトラップされると
、結晶粒界のポテンシャルが上昇し、キャリアに対して障壁となるため、キャリアの電流
輸送特性が低下するという問題がある。
上記問題が背景にあり、連続発振のレーザを一方向に走査させながら半導体膜に照射す
ることで、走査方向に向かって結晶を連続的に成長させ、該走査方向に沿って長く延びた
単結晶からなる結晶粒の集まりを形成する技術が、近年注目されている。上記方法を用い
ることで、少なくともTFTのチャネル方向には結晶粒界のほとんど存在しない半導体膜
が形成できると考えられている。
ところで、半導体膜に対するレーザ光の吸収係数が大きいほど、半導体膜の結晶化を効
率良く行なうことができるので、吸収係数は大きい方が好ましい。吸収係数は半導体膜の
材料によっても異なる。半導体装置に通常用いられる数十〜数百nm厚の珪素膜をYAG
レーザやYVO4レーザで結晶化させる場合、基本波よりも波長が短い第2高調波の方が
、吸収係数ははるかに高く、通常高調波を結晶化工程に適用し、基本波を用いることは殆
どない。
しかし高調波に変換されたレーザ光は、基本波の場合に比べてエネルギーが低く、ビー
ムスポットの面積を広げてスループットを高めることが難しい。特に連続発振のレーザは
、パルス発振のレーザに比べて、単位時間あたりのレーザ光の出力エネルギーが低いため
、この傾向が顕著である。例えばNd:YAGレーザの場合、基本波(波長:1064n
m)から第2高調波(波長:532nm)への変換効率は50%前後である。また、高調
波に変換する非線形光学素子のレーザ光に対する耐性が著しく低いため、例えば連続発振
のYAGレーザは、基本波を10kW出力できるのに対し、第2高調波の出力エネルギー
は10W程度しか得られない。そのため、半導体膜の結晶化に必要なエネルギー密度を得
るためにはビームスポットの面積を10-3mm2程度と小さくしなければならず、スルー
プットの面でパルス発振のエキシマレーザと比べ劣っている。
また、走査方向に対して垂直方向におけるビームスポットの両端には、ビームスポット
の中心と比較して結晶粒が著しく小さく、結晶性の劣っている領域が形成される。この領
域に半導体素子を形成しても高い特性は期待できない。よって、半導体素子のレイアウト
上の制約を緩和するために、レーザ光が照射された領域全体に占める、該結晶性の劣って
いる領域の割合を減らすことが重要である。
またビームスポットのエッジ近傍の微結晶が形成される領域は、その表面に半導体膜の
膜厚と同程度の高さの凹凸(リッジ)が形成される。そのため、例えばTFTの場合、活
性層に接して形成されるゲート絶縁膜の膜厚を均一に形成するのが難しく、ゲート絶縁膜
の薄膜化が困難になるため、TFTやその他の半導体素子の微細化が妨げられるという問
題がある。
本発明は上述した問題に鑑み、ビームスポットの面積を飛躍的に広げ、結晶性の劣る領
域の占める割合を低減し、リッジの形成を抑えることができるレーザ照射装置の提供を課
題とする。また連続発振のレーザ光を用いつつ、スループットをも高めることができる、
レーザ照射装置の提供を課題とする。さらに本発明は、該レーザ照射装置を用いたレーザ
照射方法及び半導体装置の作製方法の提供を課題とする。
本発明のレーザ照射方法は、高調波のパルス発振の第1のレーザ光により溶融した領域
に、連続発振の第2のレーザ光を照射する。具体的に第1のレーザ光は、可視光線と同程
度かそれより短い波長(780nm以下程度)を有する。第1のレーザ光によって半導体
膜が溶融することで、第2のレーザ光の半導体膜への吸収係数が飛躍的に高まり、第2の
レーザ光が半導体膜に吸収されやすくなる。
図8(A)に、レーザ光の波長(nm)に対する、非晶質珪素膜の吸収係数(cm-1
の値を示す。また図8(B)に、レーザ光の波長(nm)に対する、多結晶珪素膜の吸収
係数(cm-1)の値を示す。なお、測定は分光エリプソメーターで得られる消衰係数から
求めた。吸収係数が1×104cm-1以上であれば、第1のレーザ光により半導体膜を十
分溶融させることができるので、この数値範囲の吸収係数を得るためには、非晶質珪素膜
の場合、第1のレーザ光の波長を780nm以下とするのが望ましいと考えられる。なお
、第1のレーザ光の波長と吸収係数の関係は、半導体膜の材料および結晶性等などによっ
て異なる。よって第1のレーザ光の波長はこれに限定されず、吸収係数が1×104cm-
1以上となるように適宜第1のレーザ光の波長を設定すれば良い。
また本発明のレーザ照射装置は、可視光線以下の波長である第1のレーザ光をパルス発
振する第1のレーザ発振器と、基本波である第2のレーザ光を連続発振する第2のレーザ
発振器を有している。第1のレーザ光のビームスポットと第2のレーザ光のビームスポッ
トは、それぞれ対応する第1及び第2の光学系によって、その形状及び位置が制御される
。そして第1のレーザ光と第2のレーザ光は、上記2つの光学系によってビームスポット
が互いに重なっている。さらに本発明のレーザ照射装置は、第1のレーザ光のビームスポ
ット及び第2のレーザ光のビームスポットの被処理物に対する相対的な位置を制御する手
段を有している。
これにより、第1のレーザ光により溶融した部分が、連続発振である第2のレーザ光の
照射により溶融状態が維持されたまま半導体膜中で移動するので、走査方向に向かって連
続的に成長した結晶粒が形成される。該走査方向に沿って長く延びた単結晶の粒を形成す
ることで、少なくともTFTのチャネル方向には結晶粒界のほとんど存在しない半導体膜
の形成が可能となる。
溶融状態の維持できる時間はパルス発振のレーザと連続発振のレーザの出力のバランス
により決まる。溶融状態の維持できる時間内で、次のパルス発振のレーザが半導体膜に照
射されれば、前記溶融状態は保持されたまま半導体膜のアニールを続けることができる。
極端な場合、一旦パルスレーザで半導体膜を溶融させれば、その後は、基本波の照射のみ
で、溶融状態が維持できる条件もあり得る。この場合、パルスレーザは1ショットのみ照
射し、その後は連続発振のレーザで溶融状態を維持させればよい。
なお高次の高調波ほどエネルギーが低くなるため、第1のレーザ光は、その基本波の波
長が1μm程度である場合、第2高調波が最も望ましい。しかし本発明はこれに限定され
ず、第1のレーザ光は可視光線以下の波長を有していれば良い。また第2のレーザ光は、
第1のレーザ光に対するエネルギーの補助という目的からして、半導体膜への吸収係数よ
りも出力されるパワーが重要視される。よって、第2のレーザ光は基本波を用いるのが最
も望ましい。しかし本発明はこれに限定されず、第2のレーザ光は基本波であっても高調
波であってもよい。
第2のレーザ光に基本波を用いる場合、波長を変換する必要がないので、非線形光学素
子の劣化を考慮してエネルギーを抑えなくともよい。例えば第2のレーザ光は、連続発振
の可視光線以下のレーザ光と比較して出力が100倍以上(例えば出力1000W以上)
の出力とすることも可能である。よって非線形光学素子のメンテナンスの煩雑さをなくし
、半導体膜に吸収されるレーザ光のトータルのエネルギーを高めることができ、より大粒
径の結晶を得ることができる。
なお、パルス発振の第1のレーザ光によって得られる第1のビームスポットと、連続発
振の第2のレーザ光によって得られる第2のビームスポットとの重ね合わせ方は、そのビ
ームスポットの大小関係に注目すると、2通り考えられる。まず第1のビームスポット内
に第2のビームスポットが収まるように重ねる場合について説明する。
パルス発振は連続発振に比べて、発振されるレーザ光の単位時間あたりのエネルギーが
高い。また高調波と基本波では、高調波の方がエネルギーは低く、基本波の方がエネルギ
ーは高い。本発明では、高調波または可視光線以下の波長を有するレーザ光はパルス発振
とし、基本波のレーザ光は連続発振とする。そして、高調波の第1のビームスポット内に
基本波の第2のビームスポットが収まるように重ねることで、高調波と基本波を共に連続
発振とする構成や、高調波を連続発振とし基本波をパルス発振とする構成に比べて、高調
波と基本波のビームスポットが互いに重なり合う領域の広さを確保することができる。
例えば、連続発振のYAGレーザとパルス発振のエキシマレーザを例に挙げて、2つの
レーザによって形成される2つのビームスポットの重なりについて説明する。
図2(A)に、基本波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット10と、第2
高調波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット11を重ねている様子を示す。
基本波のYAGレーザは10kW程度の出力エネルギーを得ることができ、また、第2高
調波のYAGレーザは、10W程度の出力エネルギーを得ることができる。
そして、レーザ光のエネルギーは100%半導体膜に吸収されるものと仮定すると、各
レーザ光のエネルギー密度を0.01〜100MW/cm2とすることで、半導体膜の結
晶性の向上を図ることができる。よってここでは、エネルギー密度を1MW/cm2とす
る。
そして基本波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット10の形状を矩形と仮
定し、その短軸方向の長さをLX1、長軸方向の長さをLY1とすると、上記エネルギー密度
を満たすためには、LX1は20μm〜100μmとし、例えばLX1=20μmの場合だとLY
1=50mm程度、LX1=30μmの場合だとLY1=30mm程度とするのが適当である。
また高調波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット11の形状を矩形と仮定
し、その短軸方向の長さをLX2、長軸方向の長さをLY2とすると、上記エネルギー密度を
満たすためには、LX2は20μm〜100μmとし、例えばLX2=10μmの場合だとLY2
=100μm程度とするのが適当である。
基本波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット10と、第2高調波を有する
連続発振のYAGレーザのビームスポット11とが重なる領域の面積は、ビームスポット
11が完全にビームスポット10に重なっていると仮定すると、ビームスポット11の面
積に相当する。
次に、図2(B)に、基本波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット10と
、パルス発振のエキシマレーザのビームスポット12を重ねている様子を示す。パルス発
振のエキシマレーザは、1パルスあたり1J程度の出力エネルギーを得ることができる。
また、パルス幅を30nsec程度とすると、単位時間あたりの出力は30MWとなる。よっ
て、パルス発振のエキシマレーザのビームスポット12の形状を矩形と仮定し、その短軸
方向の長さをLX3、長軸方向の長さをLY3とすると、上記エネルギー密度を満たすために
は、LX3は20μm〜500μmとし、例えばLX3=400μmの場合だとLY3=300m
m程度とするのが適当である。
なお、各ビームスポットは、エネルギー密度や走査速度等の各種条件の最適化によって
は、その長軸を15cmや30cm程度まで長くすることができる。
基本波を有する連続発振のYAGレーザのビームスポット10と、パルス発振のエキシ
マレーザのビームスポット12とが重なる領域の面積は、ビームスポット10が完全にビ
ームスポット12に重なっていると仮定すると、ビームスポット10の面積に相当する。
よって、図2(A)のように第1のレーザ光と第2のレーザ光を共に連続発振とするより
も、図2(B)のように第1のレーザ光を連続発振、第2のレーザ光をパルス発振とした
ほうが、2つのレーザ光の重なる領域を大幅に広げることが可能であり、スループットを
より高めることができる。
次に、連続発振で出力された基本波の第2のビームスポット内に、パルス発振で出力さ
れた高調波の第1のビームスポットが収まるように重ね合わせる場合について説明する。
図1(A)に、第1のビームスポット901の形状と、該第1のビームスポット901
のみの走査により結晶化された半導体膜902の上面図と、第1のビームスポット901
の長軸方向において、半導体膜902に吸収されるレーザ光のエネルギーの分布とを示す
。なお半導体膜の結晶化は、白抜きの矢印で示すように、第1のビームスポット901を
長軸方向に対して垂直の方向に走査することで行なう。
図1(A)では第1のビームスポット901は矩形状であり、中心付近のある一定の範
囲においてそのエネルギーが一定の高さに保たれているが、例えば第1のビームスポット
の形状が楕円形状の場合は、エネルギー分布が正規曲線を描いている。いずれにしろ、第
1のビームスポット901のエネルギー分布は、通常エッジから中心に近くなるほど高く
なっている。そして、第1のビームスポット901のうち、半導体膜を溶融するのに必要
なエネルギーEAよりも高いエネルギーを有する領域と重なった部分において、半導体膜
902が結晶化されている。
そして図1(A)に示すように、第1のビームスポット901のみによって結晶化され
た半導体膜902は、複数の結晶粒が集合して形成されている。その結晶粒の位置と大き
さはランダムであるが、第1のビームスポット901の中心に近くなるほどエネルギーが
高い(具体的にはエネルギーEBより高い)ので、該中心付近の領域903では半導体膜
が完全に溶融し、粒径約1μm程度の結晶粒が得られる傾向にある。逆に、エッジ近傍の
エネルギーの低い領域904(ここではエネルギーEB以下の領域)においては、部分的
に溶融しきれない領域が残ることで、中心付近の領域903ほど粒径の大きい結晶粒は得
られず、粒径の比較的小さい結晶粒(微結晶)のみが形成される傾向にある。なおエネル
ギーEBの高さはエネルギーEAよりも高く、第1のビームスポット901内の最も高いエ
ネルギーECよりも低い。
エッジ近傍の微結晶が形成される領域904は、粒界の欠陥に起因する再結合中心や捕
獲中心によってキャリアの電流輸送特性が低く、半導体素子として用いるのに適さない。
よって、微結晶が形成される領域904は狭い方が、半導体素子のレイアウトの制約を緩
和することができるので望ましい。しかし第1のビームスポット901内には、エネルギ
ーがEAより高くEBより低い領域が存在しているため、光学系の調整のみで微結晶が形成
される領域904を小さくするのには限界がある。
次に図1(B)に、第1のビームスポット901及び第2のビームスポット911の形
状と、第1及び第2のビームスポット901、911を両方走査することにより結晶化さ
れた半導体膜912の上面図と、第1及び第2のビームスポット901、911の長軸方
向において、半導体膜912に吸収されるレーザ光のエネルギーの分布とを示す。なお半
導体膜912の結晶化は、白抜きの矢印で示すように、第1及び第2のビームスポット9
01、911を長軸方向に対して垂直の方向に走査することで行なう。
図1(B)では、第2のビームスポット911が第1のビームスポット901を完全に
覆うように重なっている。波長が1μm程度の基本波は固相の半導体膜に殆ど吸収されな
いが、液相の半導体膜に対する吸収係数は固相の1000倍であり、吸収されやすい。よ
って図1(B)の場合、第1のビームスポット901のうち、半導体膜を溶融するのに必
要なエネルギーEAよりも高いエネルギーの領域においてのみ、基本波である第2のレー
ザ光のエネルギーが半導体膜に吸収される。このため図1(B)において実線で示すよう
に、半導体膜912に吸収されるレーザ光のトータルのエネルギーは、第1のレーザ光の
エネルギーがEAよりも高い領域において、不連続的に他の領域より高くなる。
また第2のレーザ光は連続発振であるので、第1のレーザ光により溶融した部分が、連
続発振である第2のレーザ光の照射により、その溶融状態を維持したまま半導体膜中で移
動するので、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒が形成される。従って、半導体
膜912のうち、第1のビームスポット901の不連続的にエネルギーの高い領域があた
った部分に、大粒径の結晶粒を含む領域(大結晶領域)913を形成することができる。
具体的には、含まれる結晶粒の走査方向における幅が10〜30μm、走査方向に対して
垂直な方向における幅が1〜5μm程度の、大結晶領域913を形成することができる。
なお図1(B)の場合も図1(A)の場合と同様に、そのエッジ近傍に、大粒径の結晶
粒を含まず微結晶のみを含む領域914が形成される。この領域は、レーザ照射時におけ
る領域913からの熱伝導によって形成されるため完全に消滅させることはできないが、
レーザ光の照射条件を適切に選択することで、領域914を限りなく狭くすることができ
る。よって図1(A)の場合に比べ、大粒径の領域913の割合を高め、半導体素子のレ
イアウト上の制約を緩和することができる。
また、図1(A)におけるエッジ近傍の微結晶が形成される領域904は、その表面に
半導体膜の膜厚と同程度の高さの凹凸(リッジ)が形成される。本実施例ではエッジ近傍
の微結晶が形成される領域を限りなく狭くすることができ、またリッジの高さを膜厚の半
分以下、より最適な条件下では4分の1以下とすることができる。例えば、半導体膜の膜
厚が100nmの場合、リッジの高さを50nm以下、より最適な条件下では20nm以
下程度とすることができ、より優れた特性の半導体素子を作製することができる。
また、パルス発振のレーザ光のみで結晶化を行なった場合には、結晶の粒界において、
酸素、窒素、炭素等の不純物が偏析する傾向がある。レーザ光を用いた結晶化と触媒金属
を用いた結晶化とを組み合わせた場合は、ゲッタリングしきれなかった触媒金属が偏析す
ることがある。本発明では、第2のレーザ光により半導体膜に吸収されるレーザ光のトー
タルのエネルギーを高めることができるので、半導体膜が溶融してから固化するまでの時
間を長く保つことができる。よって帯域溶融法のごとく、偏析係数が正の不純物の偏析を
防ぎ、半導体膜の純化や溶質濃度の一様化を行なうことができる。したがって、該半導体
膜を用いた半導体素子の特性を高め、また特性のバラツキを抑えることができる。
上述したように、第1のビームスポットと第2のビームスポットの大小関係によって、
得られる効果が異なる。最も望ましいのは、第2のビームスポットの形状に合わせ、第1
のビームスポットを第2のビームスポット内にぎりぎり収まる程度に最大限に大きくし、
究極的には2つのビームスポットを完全に重ね合わせることである。これにより、両者の
メリットを享受することができる。
また、連続発振の第2のビームスポットを複数連ね、それをパルス発振の第1のレーザ
光と重ねることで、大粒径の結晶が得られる領域の、走査方向に対して垂直な方向におけ
る幅をさらに広げることができる。またパルス発振の第1のビームスポットを連ねるよう
にしても良い。上記構成により、半導体素子のレイアウト上の制約をより緩和することが
でき、なおかつレーザ光の結晶化におけるスループットをより高めることができる。
なおビームスポットを線状とすることで、走査方向に結晶化された結晶粒が集まってい
る領域の、前記ビームスポットの長軸方向における幅を、できるだけ広くとることができ
る。つまり、長軸の両端に形成される結晶性の劣った領域の、全ビームスポットに占める
面積の割合を、低減させることができると言える。しかし本発明においてビームスポット
の形状は線状に限定されず、矩形状や面状であっても被照射体に対して十分なアニールを
行なえるのであれば問題はない。
なお第1のレーザ光は、パルス発振のArレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、CO2
ーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、
ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは
金蒸気レーザを用いることで得られる。
また第2のレーザ光は、連続発振のArレーザ、Krレーザ、CO2レーザ、YAGレーザ、Y2
O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サフ
ァイヤレーザまたはヘリウムカドミウムレーザを用いることで得られる。
なお連続発振のレーザによる半導体膜の結晶化工程において、ビームスポットを一方向
に長い楕円状または矩形状に加工し、該ビームスポットの短軸方向に走査させて半導体膜
を結晶化させるとスループットを高めることができる。加工後のレーザビームの形状が楕
円状になるのは、元のレーザ光の形状が円形もしくはそれに近い形状であるからである。
レーザ光の元の形状が長方形状であれば、それをシリンドリカルレンズなどで1方向に拡
大することでさらに長軸がさらに長くなるように加工してから、用いても良い。また複数
のレーザビームをそれぞれ一方向に長い楕円状または矩形状に加工し、それらをつなげて
一方向にさらに長いビームを作って、スループットをより高めるようにしても良い。
本発明では、半導体膜に吸収されやすい可視光線以下の波長を有する、パルス発振の第
1のレーザ光を照射することで半導体膜を溶融し、基本波の吸収係数を高める。第1のレ
ーザ光をパルス発振とすることで、連続発振のときよりもビームスポットの面積を飛躍的
に広く取ることができる。そしてその溶融した状態で基本波を有する第2のレーザ光を照
射することで、基本波の吸収係数が高められた半導体膜に第2のレーザ光が効率良く吸収
される。よって、ビームスポットの長軸を長く取ることができるため、レーザ結晶化のス
ループットを高めることができ、またデザインルールの緩和に有効である。
また第1のレーザ光によって溶融し、吸収係数が高められた領域を、第2のレーザ光を
走査することで移動させることができ、該走査方向に結晶成長した結晶粒が敷き詰められ
た領域を形成することができる。さらに、第1のレーザ光の照射が途絶えた後も、その溶
融して吸収係数が高められた領域を、第2のレーザ光の走査によりある程度一方向に移動
させることができる。
また第2のレーザ光を基本波とすることで、高調波への変換に用いる非線形光学素子の
耐性を考慮する必要はなく、第2のレーザ光として、非常に大出力のレーザ、例えば高調
波の100倍以上のエネルギーのものを用いることができる。そして、非線形光学素子の
変質によるメンテナンスの煩雑さがなくなる。特に、メンテフリーの状態を長く保てると
いう固体レーザの利点を、生かすことができる。
また第1のビームスポットと、第2のビームスポットとの走査方向を揃え、第1のビー
ムスポットが第2のビームスポット内に収まるようにすることで、課題を解決するための
手段において説明したように、ビームスポットのエッジ近傍における微結晶領域を、激減
させるかもしくは消滅させることができる。
ビームスポットと、半導体膜の結晶状態と、エネルギー分布を示す図。 ビームスポットの大小関係を示す図。 本発明のレーザ照射装置の構成を示す図。 本発明のレーザ照射方法において、被処理物の走査経路を示す図。 本発明のレーザ照射装置の構成を示す図。 本発明のレーザ照射装置を用いて作製された発光装置の断面図。 図5に示すレーザ照射装置において用いられるビームスポットの形状を示す図。 レーザ光の波長と吸収係数の関係を示す図。 半導体装置の作製方法を示す図。 半導体装置の作製方法を示す図。 半導体装置の作製方法を示す図。 パターニング後にレーザ結晶化する場合の半導体装置の作製方法を示す図。 基板の位置を制御する手段の一実施例を示す図。 本発明のレーザ照射装置の構成を示す図。 ビームスポットの重ね合わせ方の一実施例を示す図。 本発明のレーザ照射装置の構成を示す図。
(実施の形態1)
図3を用いて、本発明のレーザ照射装置の構成について説明する。
101はパルス発振のレーザ発振器であり、本実施の形態では、6WのNd:YLFレーザを
用いる。レーザ発振器101は、TEM00の発振モードで、非線形光学素子により第2高
調波に変換されている。特に第2高調波に限定する必要はないがエネルギー効率の点で、
第2高調波の方が、さらに高次の高調波と比較して優れている。周波数は1kHz、パル
ス幅は60nsec程度である。本実施の形態では、出力が6W程度の固体レーザを使用する
が、出力が300Wに達するような大型レーザ、例えばXeCl、KrF、ArFエキシマレーザな
どを用いてもよい。例えばXeClエキシマレーザだと波長は308nm、KrFエキシ
マレーザだと波長248nmとなる。
なお非線形光学素子は、発振器が有する共振器内に設けていても良いし、基本波の共振
器の外に別途非線形光学素子を備えた共振器を設けていても良い。前者は装置が小型にな
り、共振器長の精密制御が不要になるという利点を有し、後者は基本波と高調波の相互作
用を無視できるという利点を有する。
非線形光学素子には、非線形光学定数の比較的大きいKTP(KTiOPO4)、BB
O(β−BaB24)、LBO(LiB35)、CLBO(CsLiB610)、GdY
COB(YCa4O(BO33)、KDP(KD2PO4)、KB5、LiNbO3、Ba2
NaNb515等の結晶が用いられており、特にLBOやBBO、KDP、KTP、KB
5、CLBO等を用いることで基本波から高調波への変換効率を高めることができる。
レーザ光は通常水平方向に射出されることから、レーザ発振器101から発振された第
1のレーザ光は、反射ミラー102にて、鉛直方向からの角度(入射角)がθ1となる方
向に、その進行方向が変換される。本実施の形態では、θ1=21°とする。進行方向が
変換された第1のレーザ光は、レンズ103によりそのビームスポットの形状が加工され
、被処理物104に照射される。図3では、反射ミラー102とレンズ103とが第1の
レーザ光のビームスポットの形状及び位置を制御する光学系に相当する。
図3では、レンズ103として平凹シリンドリカルレンズ103aと、平凸シリンドリ
カルレンズ103bを用いている。
平凹シリンドリカルレンズ103aは、曲率半径10mm、厚さ2mmであり、第1の
レーザ光の進行方向を光軸としたときに、被処理物104の表面から光軸に沿って29m
mの位置に配置されている。そして平凹シリンドリカルレンズ103aの母線と被処理物
104に入射する第1のレーザ光の入射面とを垂直とする。
平凸シリンドリカルレンズ103bは、曲率半径15mm、厚さ2mmであり、被処理
物104の表面から光軸に沿って24mmの位置に配置されている。そして平凸シリンド
リカルレンズ103bの母線は、被処理物104に入射する第1のレーザ光の入射面と平
行とする。
これにより、被処理物104において3mm×0.2mmのサイズの第1のビームスポ
ット106が形成される。
また110は、連続発振のレーザ発振器であり、本実施の形態では2kW、基本波(波
長1064nm)のNd:YAGレーザを用いる。レーザ発振器110から発振された第2のレ
ーザ光は、φ300μmの光ファイバー111により伝送される。光ファイバー111は
、鉛直方向に対する射出口の向きが角度θ2となるように配置されている。本実施の形態
ではθ2=45°とする。また光ファイバー111の射出口は、レーザ発振器110から
射出する第2のレーザ光の光軸に沿って被処理物104から105mmの位置に配置され
ており、該光軸は入射面に含まれるようにする。
光ファイバー111から出射した第2のレーザ光は、レンズ112によりそのビームス
ポットの形状が加工され、被処理物104に照射される。図3では、光ファイバー111
とレンズ112とが第2のレーザ光のビームスポットの形状及び位置を制御する光学系に
相当する。
図3では、レンズ112として平凸シリンドリカルレンズ112aと、平凸シリンドリ
カルレンズ112bを用いている。
平凸シリンドリカルレンズ112aは、曲率半径15mm、厚さ4mmであり、被処理
物104の表面から第2のレーザ光の光軸に沿って85mmの位置に配置されている。平
凸シリンドリカルレンズ112aの母線の方向は入射面と垂直とする。
平凸シリンドリカルレンズ112bは、曲率半径10mm、厚さ2mmであり、被処理
物104の表面から第2のレーザ光の光軸に沿って25mmの位置に配置されている。
これにより、被処理物104において、3mm×0.1mmのサイズの第2のビームス
ポット105が形成される。
本実施の形態では、被処理物104として半導体膜が成膜された基板を、水平面と平行
になるように設置する。半導体膜は例えば、ガラス基板の表面に成膜する。半導体膜が成
膜された基板は、厚さ0.7mmのガラス基板であり、レーザ照射の際に基板が落ちない
ように、吸着ステージ107に固定されている。
吸着ステージ107は、X軸用の一軸ロボット108とY軸用の一軸ロボット109に
より、被処理物104に平行な面内においてXY方向に移動が可能である。
なお、レーザ光に対して透光性を持つ基板上に成膜された半導体膜をアニールする場合
、均一なレーザ光の照射を実現するためには、照射面に垂直な平面であって、かつビーム
の形状を長方形と見立てたときの短辺を含む面または長辺を含む面のいずれか一方を入射
面と定義すると、前記レーザ光の入射角φは、入射面に含まれる前記短辺または前記長辺
の長さがW、前記照射面に設置され、かつ、前記レーザ光に対して透光性を有する基板の
厚さがdであるとき、φ≧arctan(W/2d)を満たすのが望ましい。複数のレーザ光を使用
する場合、この議論は個々のレーザ光について成り立つ必要がある。なお、レーザ光の軌
跡が、前記入射面上にないときは、該軌跡を該入射面に射影したときの入射角度をφとす
る。この入射角度φでレーザ光が入射されれば、基板の表面での反射光と、前記基板の裏
面からの反射光とが干渉せず、一様なレーザ光の照射を行なうことができる。以上の議論
は、基板の屈折率を1として考えた。実際は、基板の屈折率が1.5前後のものが多く、
この数値を考慮に入れると上記議論で算出した角度よりも大きな計算値が得られる。しか
しながら、ビームスポットのエネルギーはビームスポットの端に近づくに従い減衰がある
ため、この部分での干渉の影響は少なく、上記の算出値で十分に干渉減衰の効果が得られ
る。この議論は、第1のレーザ光に対しても、第2のレーザ光に対しても成り立ち両方と
も上記不等式を満たしているほうが好ましいが、エキシマレーザのように極端にコヒーレ
ント長の短いレーザに関しては、上記不等式を満たさなくても問題はない。上記のφに対
する不等式は、基板がレーザ光に対して透光性を有する場合にのみ適用される。
一般に、ガラス基板は波長が1μm程度の基本波や緑色の第2高調波に対して透光性を
有する。本レンズが不等式を満たすためには、平凸シリンドリカルレンズ103bと平凸
シリンドリカルレンズ112bの位置を入射面と垂直な方向にずらしてビームスポットの
短軸を含む被処理物104の表面に垂直な面内において入射角度φ1、φ2を持たせれば
よい。この場合、第1のビームスポット106においては、φ1=10°、第2のビーム
スポット105においてはφ2=5°程度の傾きがあれば、干渉は起こらない。
なお第1のレーザ光と第2のレーザ光は、安定形共振器から得られるTEM00モード(
シングルモード)であることが望ましい。TEM00モードの場合、レーザ光はガウス形の
強度分布を持ち、集光性に優れているため、ビームスポットの加工が容易となる。
被処理物104として半導体膜が成膜された基板を用いる場合、例えば、厚さ0.7m
mのガラス基板の片面に、厚さ200nmの酸化窒化珪素を成膜し、その上に半導体膜と
して、厚さ70nmの非晶質珪素(a-Si)膜をプラズマCVD法を用いて成膜する。さらに
半導体膜のレーザに対する耐性を高めるために、500℃、1時間の熱アニールを該非晶
質珪素膜に対して行なう。熱アニールの他に、触媒金属を用いた結晶化を施していてもよ
い。熱アニールを施した半導体膜でも、触媒金属を用いて結晶化された半導体膜でも、最
適なレーザ光の照射条件はほぼ同様である。
そして、Y軸用の一軸ロボット109を用いて第2のビームスポット105の短軸方向
に、被処理物104(半導体膜が成膜された基板)を走査する。このとき各レーザ発振器
101、110の出力は仕様値とする。この被処理物104の走査により、第1のビーム
スポット106及び第2のビームスポット105が、被処理物104の表面に対して相対
的に走査されることになる。
第1のビームスポット106が当たっている領域において半導体膜が溶融することで、
連続発振の第2のレーザ光の半導体膜への吸収係数が飛躍的に高まる。よって、走査方向
に延びた、第2のビームスポット105の長軸に相当する幅1mm〜2mmの領域に、該
走査方向に結晶成長した単結晶の結晶粒が敷き詰められた状態で形成される。
なお半導体膜のうち、第1のビームスポット106及び第2のビームスポット105が
重なって照射される領域は、第2高調波の第1のレーザ光によって吸収係数が高められた
状態が、基本波である第2のレーザ光によって維持されていることになる。よって、たと
え第2高調波の第1のレーザ光の照射が途絶えたとしても、その後基本波である第2のレ
ーザ光によって、半導体膜が溶融して吸収係数が高められた状態が維持される。したがっ
て、第2高調波の第1のレーザ光の照射が途絶えた後も、その溶融して吸収係数が高めら
れた領域を、走査によりある程度一方向に移動させることができ、これにより走査方向に
向かって成長した結晶粒が形成されることとなる。そして、吸収係数が高められた領域を
、走査の過程において連続して維持しつづけるために、第2高調波の第1のレーザ光を再
び照射し、エネルギーを補充するのが望ましい。
なお第1のビームスポット106及び第2のビームスポット105の走査速度は、数c
m/s〜数百cm/s程度が適当であり、ここでは50cm/sとする。
次に図4に、第1のビームスポット106及び第2のビームスポット105の、被処理
物104表面における走査経路を示す。被処理物104である半導体膜全面に第2のレー
ザ光を照射する場合、Y軸用の一軸ロボット109を用いて一方向への走査を行なった後
、X軸用の一軸ロボット108を用いて、Y軸用の一軸ロボット109による走査方向に
対して垂直の方向に、第1のビームスポット106及び第2のビームスポット105をス
ライドさせる。
例えば、Y軸用の一軸ロボット109により走査速度50cm/sにて、半導体膜を一
方向に走査する。図4において、該走査経路をA1で示す。次に、X軸用の一軸ロボット
108を用いて、走査経路をA1に対して垂直の方向に第1のビームスポット106及び
第2のビームスポット105をスライドさせる。該スライドによる走査経路をB1で示す
。次に、走査経路A1とは反対方向に向かって、Y軸用の一軸ロボット109により半導
体膜を一方向に走査する。該走査経路をA2で示す。次に、X軸用の一軸ロボット108
を用いて、走査経路をA2に対して垂直の方向に第1のビームスポット106及び第2の
ビームスポット105をスライドさせる。該スライドによる走査経路をB2で示す。この
ように、Y軸用の一軸ロボット109による走査とX軸用の一軸ロボット108による走
査とを順に繰り返すことで、被処理物104全面に第2のレーザ光または第1のレーザ光
を照射することができる。
なお、走査経路B1、B2…の長さは、第2のビームスポット105の長軸に相当する
幅1〜2mm分とするのが望ましい。
第2のレーザ光が照射され、走査方向に成長した結晶粒が形成されている領域は、結晶
性に非常に優れている。そのため、該領域をTFTのチャネル形成領域に用いることで、
極めて高い移動度や、オン電流を期待できる。しかし半導体膜のうち、そのような高い結
晶性が必要とされない部分が存在する場合、該部分にはレーザ光を照射しないようにして
も良い。もしくは、走査の速度を増加させるなど、高い結晶性が得られないような条件で
レーザ光の照射を行なうようにしても良い。
なおレーザ光の走査は、被処理物である基板を固定してレーザ光の照射位置を移動させ
る照射系移動型と、レーザ光の照射位置を固定して基板を移動させる被処理物移動型と、
上記2つの方法を組み合わせた方法とがある。本発明のレーザ照射装置は、第1のレーザ
光と第2のレーザ光の少なくとも2つのレーザ光を用いるので、光学系の構成が最も単純
にすることができる被処理物移動型とするのが適している。しかし本発明のレーザ照射装
置はこれに限定されず、光学系を工夫することで、照射系移動型としたり、被処理物移動
型と照射系移動型を組み合わせたりすることも不可能ではない。いずれの場合においても
、各ビームスポットの半導体膜に対する相対的な移動方向を制御できることが前提である
なお本発明のレーザ照射装置における、光学系は、本実施の形態で示した構成に限定さ
れない。
(実施の形態2)
次に図9を用いて、本発明のレーザ光の照射方法及び半導体装置の作製方法について説
明する。
まず図9(A)に示すように、基板500上に下地膜501を成膜する。基板500に
は、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、
石英基板、SUS基板等を用いることができる。また、PET、PES、PENに代表さ
れるプラスチックや、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上
記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るの
であれば用いることが可能である。
下地膜501は基板500中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が
、半導体膜中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。よっ
てアルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜への拡散を抑えることができる酸化珪素や
、窒化珪素、窒化酸化珪素などの絶縁膜を用いて形成する。本実施の形態では、プラズマ
CVD法を用いて窒化酸化珪素膜を10nm〜400nm(好ましくは50nm〜300
nm)の膜厚になるように成膜した。
なお下地膜501は単層であっても複数の絶縁膜を積層したものであっても良い。また
ガラス基板、SUS基板またはプラスチック基板のように、アルカリ金属やアルカリ土類
金属が多少なりとも含まれている基板を用いる場合、不純物の拡散を防ぐという観点から
下地膜を設けることは有効であるが、石英基板など不純物の拡散がさして問題とならない
場合は、必ずしも設ける必要はない。
次に下地膜501上に半導体膜502を形成する。半導体膜502の膜厚は25nm〜
100nm(好ましくは30nm〜60nm)とする。なお半導体膜502は、非晶質半
導体であっても良いし、多結晶半導体であっても良い。また半導体は珪素だけではなくシ
リコンゲルマニウムも用いることができる。シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマ
ニウムの濃度は0.01atomic%〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
次に図9(B)に示すように、本発明のレーザ照射装置を用いて半導体膜502に第1
及び第2のレーザ光を照射し、結晶化を行なう。
本実施の形態では第1のレーザ光として、エネルギー6W、1パルスのエネルギー6m
J/p、TEM00の発振モード、第2高調波(527nm)、発振周波数1kHz、パル
ス幅60nsecのYLFレーザを用いる。なお、第1のレーザ光を光学系により加工するこ
とで半導体膜502の表面に形成される第1のビームスポットは、短軸200μm、長軸
3mmの矩形状とし、エネルギー密度を1000mJ/cm2とする。
また本実施の形態では、第2のレーザ光としてエネルギー2kW、基本波(1.064
μm)のYAGレーザを用いる。なお、第2のレーザ光が発振されるレーザ発振器の出力
は、500W乃至5000Wであることが望ましい。第2のレーザ光を光学系により加工
することで半導体膜502の表面に形成される第2のビームスポットは、短軸100μm
、長軸3mmの矩形状とし、エネルギー密度を0.7MW/cm2とする。
そして、半導体膜502の表面において、第1のビームスポットと第2のビームスポッ
トを重ね合わせるように照射し、上記2つのビームを図9(B)に示した白抜きの矢印の
方向に向かって走査する。第1のレーザ光により溶融することで、基本波の吸収係数が高
められ、第2のレーザ光のエネルギーが半導体膜に吸収されやすくなる。そして連続発振
である第2のレーザ光の照射により溶融した領域が半導体膜中で移動するので、走査方向
に向かって連続的に成長した結晶粒が形成される。該走査方向に沿って長く延びた単結晶
の粒を形成することで、少なくともTFTのチャネル方向には結晶粒界のほとんど存在し
ない半導体膜の形成が可能となる。
なお、希ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中でレーザ光を照射するようにしても良い
。これにより、レーザ光照射による半導体表面の荒れを抑えることができ、界面準位密度
のばらつきによって生じる閾値のばらつきを抑えることができる。
上述した半導体膜502へのレーザ光の照射により、結晶性がより高められた半導体膜
503が形成される。
次に、図9(C)に示すように半導体膜503をパターニングし、島状の半導体膜50
7〜509が形成され、該島状の半導体膜507〜509を用いてTFTに代表される各
種の半導体素子が形成される。
図示しないが、例えばTFTを作製する場合、次に島状の半導体膜507〜509を覆
うようにゲート絶縁膜を成膜する。ゲート絶縁膜には、例えば酸化珪素、窒化珪素または
窒化酸化珪素等を用いることができる。また成膜方法は、プラズマCVD法、スパッタ法
などを用いることができる。
次に、ゲート絶縁膜上に導電膜を成膜しパターニングすることでゲート電極を形成する
。そして、ゲート電極や、あるいはレジストを成膜しパターニングしたものをマスクとし
て用い、島状の半導体膜507〜509にn型またはp型の導電性を付与する不純物を添
加し、ソース領域、ドレイン領域、さらにはLDD領域等を形成する。
上記一連の工程によってTFTを形成することができる。なお本発明の半導体装置の作
製方法は、島状の半導体膜の形成以降の、上述したTFTの作製工程に限定されない。本
発明のレーザ光の照射方法を用いて結晶化された半導体膜をTFTの活性層として用いる
ことで、素子間の移動度、閾値及びオン電流のばらつきを抑えることができる。
なお第1のレーザ光と第2のレーザ光は、本実施の形態で示した照射条件に限定されな
い。
例えば第1のレーザ光として、エネルギー4W、1パルスのエネルギー2mJ/p、T
EM00の発振モード、第2高調波(532nm)、発振周波数1kHz、パルス幅30ns
ecのYAGレーザを用いることもできる。また例えば、第1のレーザ光として、エネルギ
ー5W、1パルスのエネルギー0.25mJ/p、TEM00の発振モード、第3高調波(
355nm)、発振周波数20kHz、パルス幅30nsecのYVO4レーザを用いること
もできる。また例えば、第1のレーザ光として、エネルギー3.5W、1パルスのエネル
ギー0.233mJ/p、TEM00の発振モード、第4高調波(266nm)、発振周波
数15kHz、パルス幅30nsecのYVO4レーザを用いることもできる。
そして、第2のレーザ光として、例えばエネルギー500W、基本波(1.064μm
)のNd:YAGレーザを用いることができる。また例えば第2のレーザ光として、エネルギー
2000W、基本波(1.064μm)のNd:YAGレーザを用いることができる。
また、レーザ光による結晶化の前に、触媒元素を用いた結晶化工程を設けても良い。触
媒元素としては、ニッケル(Ni)を用いているが、その以外にも、ゲルマニウム(Ge
)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、
白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)といった元素を用いることができる。触媒元素を
用いた結晶化工程の後に、レーザ光による結晶化工程を行なうと、触媒元素による結晶化
の際に形成された結晶が、基板により近い側においてレーザ光の照射により溶融されずに
残存し、該結晶を結晶核として結晶化が進む。よってレーザ光の照射による結晶化は基板
側から半導体膜の表面に向かって均一に進みやすく、レーザ光による結晶化工程のみの場
合に比べて、より半導体膜の結晶性を高めることができ、レーザ光による結晶化後の半導
体膜表面の荒れが抑えられる。よって後に形成される半導体素子、代表的にはTFTの特
性のばらつきがより抑えられ、オフ電流を抑えることができる。
なお、触媒元素を添加してから加熱処理を行なって結晶化を促進してから、レーザ光の
照射により結晶性をより高めていても良いし、加熱処理の工程を省略しても良い。具体的
には、触媒元素を添加してから加熱処理の代わりにレーザ光を照射し、結晶性を高めるよ
うにしても良い。
なお本実施の形態では、半導体膜の結晶化に本発明のレーザ照射方法を用いた例を示し
たが、半導体膜にドーピングした不純物元素の活性化を行なうのに用いても良い。
本発明の半導体装置の作製方法は、集積回路や半導体表示装置の作製方法に用いること
ができる。特に、液晶表示装置、有機発光素子に代表される発光素子を各画素に備えた発
光装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、F
ED(Field Emission Display)等の半導体表示装置の画素部に設けられたトランジスタ
等の半導体素子に用いた場合、画素部において照射されたレーザ光のエネルギーの分布に
起因する横縞が、視認されるのを抑えることができる。
本実施例では、本発明のレーザ照射装置の一形態について説明する。
図5に本実施例のレーザ照射装置の構成を示す。本実施例では、パルス発振の可視光線
以下の波長を有する第1のレーザ光が、レーザ発振器1520から発振される。また連続
発振の第2のレーザ光が、2つのレーザ発振器1500、1501から発振されている。
なお本実施例では、レーザ発振器1520にエキシマレーザを用い、1パルスあたりの
出力エネルギーを1J、パルス幅を30nsec程度、従って単位時間あたりの出力を30M
Wとする。またレーザ発振器1500、1501には共にYAGレーザを用い、それぞれ
出力エネルギーを10kWとする。
レーザ発振器1520から発振される第1のレーザ光は、ミラー1523において反射
された後、光学系1524において矩形状、楕円形状または線状に集光され、被処理物1
514に照射される。なお本実施例では、レーザ発振器1520とミラー1523との間
に、第1のレーザ光を遮るシャッター1521が設けられているが、必ずしも設ける必要
はない。また光学系1524は、線状、矩形状または楕円形状にビームスポットを集光し
、エネルギー分布を均一にできるものであれば良い。
一方、レーザ発振器1500、1501から発振された第2のレーザ光は、それぞれビ
ームエキスパンダー1508、1560に入射する。本実施例では、レーザ発振器150
0、1501とビームエキスパンダー1508、1560との間に、第2のレーザ光を遮
るシャッター1502、1503がそれぞれ設けられているが、必ずしも設ける必要はな
い。
そして、ビームエキスパンダー1508、1560によって、入射してきた第2のレー
ザ光の広がりを抑え、なおかつ、ビームの断面形状の大きさを調整することができる。
ビームエキスパンダー1508、1560から出射した第2のレーザ光は、シリンドリ
カルレンズ1509、1561において、そのビームの断面形状が矩形状、楕円形状また
は線状になるようにそれぞれ伸長される。そして、該伸長された第2のレーザ光は、ミラ
ー1510、1562においてそれぞれ反射し、共にレンズ1511に入射する。入射し
たレーザ光はレンズ1511によって線状に集光され、レーザ照射室1513内の被処理
物1514に照射される。本実施例ではレンズ1511としてシリンドリカルレンズを用
いたが、ビームスポットを矩形状、楕円形状または線状にすることができるレンズであれ
ば良い。
本実施例においては、ミラー1523、光学系1524が第1のレーザ光に対応する光
学系に相当する。またビームエキスパンダー1508、1560、シリンドリカルレンズ
1509、1561、ミラー1510、1562が、第2のレーザ光に対応する光学系に
相当する。これら2つの光学系によって、第1のレーザ光により被処理物1514の表面
に形成される第1のビームスポットと、第2のレーザ光により被処理物1514の表面に
形成される第2のビームスポットとを重ね合わせることができる。
図7に、図5に示すレーザ照射装置において用いられる各ビームスポットの形状及びそ
の配置の一例を示す。図7において、1570は第1のビームスポットに相当し、157
1、1572はそれぞれ第2のビームスポットに相当する。図7では、第2のビームスポ
ット1571と1572を、その長軸が一致するように、互いに一部重ね合わされている
。そして、第2のビームスポット1571、1572を完全に覆うように、第1のビーム
スポット1570が重なっている。
本実施例では、第1のビームスポット1570の短軸方向の長さLX1570を400μm
、長軸方向の長さLY1570を110mmとし、エネルギー密度を25MW/cm2程度とす
る。1パルスあたりのエネルギー密度に換算すると100〜1000mJ/cm2程度が
適当である。また第2のビームスポット1572の短軸方向の長さLX1572を200μm
、長軸方向の長さLY1572を60mmとし、エネルギー密度を0.1MW/cm2とする。
そして第2のビームスポット1571、1572は、互いに20mm分重なっており、第
2のビームスポット1571、1572の長軸を連ねた長さが100mmとなるようにす
る。
このように第2のレーザ光を複数合成することで、第1のレーザ光と第2のレーザ光が
重なる領域を広げることができ、レーザ光が照射された領域全体に占める、該結晶性の劣
っている領域の割合を減らすことができる。
なお本実施例では2つのレーザ発振器を用いて、2系統の第2のレーザ光を被処理物に
照射しているが、本発明はこれに限定されず、3以上の複数の系統の第2のレーザ光を用
いるようにしても良い。また第1のレーザ光も複数の系統としても良い。
レーザ照射室1513内において、被処理物1514はステージ1515上に載置され
ており、該ステージ1515は3つの一軸ロボット1516〜1518によってその位置
が制御されている。具体的には、φ軸用の一軸ロボット1516により、水平面内におい
てステージ1515を回転させることができる。また、X軸用の一軸ロボット1517に
より、水平面内においてステージ1515をX軸方向に移動させることができる。また、
Y軸用の一軸ロボット1518により、水平面内においてステージ1515をY軸方向に
移動させることができる。各位置制御手段の動作は、中央処理装置1519において制御
されている。
Y軸方向に長く伸ばされた線状のビームスポットを照射しながら被処理物をX方向に走
査させることで、走査方向に沿って長く伸びた結晶粒の集まりを形成できる。走査の速度
は例えば10〜2000mm/s、好ましくは100〜1000mm/sとすれば良いが
、半導体膜の膜厚、材料等の条件により、走査速度の最適な範囲は前後する。これにより
、走査方向に延びた幅100mmの領域に、該走査方向に結晶成長した単結晶の結晶粒を
敷き詰めるように形成することができる。この走査方向に結晶成長した結晶粒が敷き詰め
られた領域は、単に連続発振のレーザ光のみを用いて結晶化を行なう従来技術の場合と比
較して、その幅が100倍程度と飛躍的に広い。
なお本実施例のように、CCD等の受光素子を用いたモニター1512を設け、被処理
物1514の位置を正確に把握できるようにしても良い。
図6を用いて、本発明のレーザ照射装置を用いて形成される半導体装置の1つである、
発光装置の画素の構成について説明する。
図6において、基板6000に、下地膜6001が形成されており、該下地膜6001
上にトランジスタ6002が形成されている。トランジスタ6002は活性層6003と
、ゲート電極6005と、活性層6003とゲート電極6005の間に挟まれたゲート絶
縁膜6004と、を有している。
活性層6003は、本発明のレーザ照射装置を用いることで結晶化された多結晶半導体
膜が用いられている。なお、活性層は珪素だけではなくシリコンゲルマニウムを用いるよ
うにしても良い。シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜
4.5atomic%程度であることが好ましい。また窒化炭素が添加された珪素を用いていて
も良い。
またゲート絶縁膜6004は、酸化珪素、窒化珪素または酸化窒化珪素を用いることが
できる。またそれらを積層した膜、例えばSiO2上にSiNを積層した膜を、ゲート絶
縁膜として用いても良い。またゲート電極6005として、Ta、W、Ti、Mo、Al
、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で
形成する。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半
導体膜を用いてもよい。また単層の導電膜ではなく、複数の層からなる導電膜を積層した
ものであっても良い。
またトランジスタ6002は、第1の層間絶縁膜6006で覆われており、第1の層間
絶縁膜6006上には第2の層間絶縁膜6007と、第3の層間絶縁膜6008とが積層
されている。第1の層間絶縁膜6006は、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、
酸化珪素、窒化珪素または酸化窒化珪素膜を単層でまたは積層して用いることができる。
また第2の層間絶縁膜6007は、有機樹脂膜、無機絶縁膜、シロキサン系材料を出発
材料として形成されたSi−O結合とSi−CHx結合手を含む絶縁膜等を用いることが
できる。本実施例では非感光性のアクリルを用いる。第3の層間絶縁膜6008は、水分
や酸素などの発光素子の劣化を促進させる原因となる物質を、他の絶縁膜と比較して透過
させにくい膜を用いる。代表的には、例えばDLC膜、窒化炭素膜、RFスパッタ法で形
成された窒化珪素膜等を用いるのが望ましい。
また図6において6010は陽極、6011は電界発光層、6012は陰極であり、陽
極6010と電界発光層6011と陰極6012が重なっている部分が発光素子6013
に相当する。トランジスタ6002の一つは、発光素子6013に供給する電流を制御す
る駆動用トランジスタであり、発光素子6013と直接、または他の回路素子を介して直
列に接続されている。電界発光層6011は、発光層単独かもしくは発光層を含む複数の
層が積層された構成を有している。
陽極6010は第3の層間絶縁膜6008上に形成されている。また第3の層間絶縁膜
6008上には隔壁として用いる有機樹脂膜6014が形成されている。なお本実施例で
は隔壁として有機樹脂膜を用いているが、無機絶縁膜、シロキサン系材料を出発材料とし
て形成されたSi−O結合とSi−CHx結合手を含む絶縁膜等を隔壁として用いること
ができる。有機樹脂膜6014は開口部6015を有しており、該開口部において陽極6
010と電界発光層6011と陰極6012が重なり合うことで発光素子6013が形成
されている。
そして有機樹脂膜6014及び陰極6012上に、保護膜6016が成膜されている。
保護膜6016は第3の層間絶縁膜6008と同様に、水分や酸素などの発光素子の劣化
を促進させる原因となる物質を、他の絶縁膜と比較して透過させにくい膜、例えばDLC
膜、窒化炭素膜、RFスパッタ法で形成された窒化珪素膜等を用いる。
また有機樹脂膜6014の開口部6015における端部は、有機樹脂膜6014上に一
部重なって形成されている電界発光層6011に、該端部において穴があかないように、
丸みを帯びさせることが望ましい。具体的には、開口部における有機樹脂膜の断面が描い
ている曲線の曲率半径が、0.2〜2μm程度であることが望ましい。上記構成により、
後に形成される電界発光層や陰極のカバレッジを良好とすることができ、陽極6010と
陰極6012が電界発光層6011に形成された穴においてショートするのを防ぐことが
できる。また電界発光層6011の応力を緩和させることで、発光領域が減少するシュリ
ンクとよばれる不良を低減させることができ、信頼性を高めることができる。
なお図6では、有機樹脂膜6014として、ポジ型の感光性のアクリル樹脂を用いた例
を示している。感光性の有機樹脂には、光、電子、イオンなどのエネルギー線が露光され
た箇所が除去されるポジ型と、露光された箇所が残るネガ型とがある。本発明ではネガ型
の有機樹脂膜を用いても良い。また感光性のポリイミドを用いて有機樹脂膜6014を形
成しても良い。ネガ型のアクリルを用いて有機樹脂膜6014を形成した場合、開口部6
015における端部が、S字状の断面形状となる。このとき開口部の上端部及び下端部に
おける曲率半径は、0.2〜2μmとすることが望ましい。
陽極6010は透明導電膜を用いることができる。ITOの他、酸化インジウムに2〜
20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いても良い。図6では陽極601
0としITOを用いている。また陰極6012は、仕事関数の小さい導電膜であれば公知
の他の材料を用いることができる。例えば、Ca、Al、CaF、MgAg、AlLi等
が望ましい。
なお図6では、発光素子から発せられる光が基板6000側に照射される構成を示して
いるが、光が基板とは反対側に向かうような構造の発光素子としても良い。また図6では
トランジスタ6002と発光素子の陽極6010が接続されているが、本発明はこの構成
に限定されず、トランジスタ6002と発光素子の陰極6012が接続されていても良い
。この場合、陰極は第3の層間絶縁膜6008上に形成される。そしてTiN等を用いて
形成される。
なお、実際には図6まで完成したら、さらに外気に曝されないように気密性が高く、脱
ガスの少ない保護フィルム(ラミネートフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)や透光性
のカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。その際、カバー材の内部を不
活性雰囲気にしたり、内部に吸湿性材料(例えば酸化バリウム)を配置したりするとOL
EDの信頼性が向上する。
なお、本実施例では半導体装置の一例として発光装置を例に挙げたが、本発明の作製方
法を用いて形成される半導体装置はこれに限定されない。
本実施例では実施の形態2とは異なり、本発明のレーザ照射装置による結晶化方法に、
触媒元素による結晶化方法を組み合わせた例について説明する。
まず、半導体膜502を成膜し、該半導体膜502に0族の元素のドーピングを行なう
工程まで、実施の形態2の図9(A)までを参照して行なう。次に図10(A)に示すよ
うに、半導体膜502の表面に、重量換算で1〜100ppmのNiを含む酢酸ニッケル
塩溶液をスピンコート法で塗布した。なお触媒の添加は上記方法に限定されず、スパッタ
法、蒸着法、プラズマ処理などを用いて添加しても良い。そして、500〜650℃で4
〜24時間、例えば570℃、14時間の加熱処理を行った。この加熱処理により、酢酸
ニッケル塩溶液が塗布された表面から、基板500に向かって縦方向に結晶化が促進され
た半導体膜520が形成される(図10(A))。
加熱処理には、例えば、ランプの輻射を熱源としたRTA(Rapid Thermal Anneal)、又
は加熱された気体を用いるRTA(ガスRTA)で設定加熱温度740℃、180秒のR
TAを行なう。設定加熱温度は、パイロメータで測る基板の温度であり、その温度を熱処
理時の設定温度としている。他の方法としては、ファーネスアニール炉を用いて550℃
にて4時間の熱処理があり、これを用いても良い。結晶化温度の低温化及び時短化は触媒
作用のある金属元素の作用によるものである。
なお、本実施例では触媒元素としてニッケル(Ni)を用いているが、その以外にも、
ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、
コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)といった元素を用いても良い
次に図10(B)に示すように、半導体膜520を本発明のレーザ照射装置を用いて結
晶化する。本実施例では、第1のレーザ光として、1パルスあたりのエネルギー1J程度
、周波数300kHz、パルス幅25nsec程度のパルス発振のエキシマレーザを用い、ま
た第2のレーザ光としてエネルギー500W、基本波(1.064μm)のNd:YAGレーザ
を用いた。
そして本実施例では、第1のレーザ光によって得られる第1のビームスポットと、第2
のレーザ光によって得られる第2のビームスポットとの走査方向を揃え、第1のビームス
ポットが第2のビームスポット内に収まるようにする。なおビームスポットの大小関係は
本実施例で示した構成に限定されない。本実施例のように、第2のビームスポットの方が
第1のビームスポットに比べて広くなるようにすることで、課題を解決するための手段に
おいて説明したように、ビームスポットのエッジ近傍における微結晶領域を、激減させる
かもしくは消滅させることができる。また逆に、該幅を、第1のビームスポットの方が第
2のビームスポットに比べて広くなるようにすることで、2つのレーザ光の重なる領域を
最大限に確保することができる。なお光学系による調整が可能であるならば、2つのビー
ムスポットの、走査方向に対して垂直の方向における幅を揃えることで、両方のメリット
を得ることができる。
上述した半導体膜520へのレーザ光の照射により、結晶性がより高められた半導体膜
521が形成される。なお、触媒元素を用いて結晶化された半導体膜521内には、触媒
元素(ここではNi)がおおよそ1×1019atoms/cm3程度の濃度で含まれていると考え
られる。次に、半導体膜521内に存在する触媒元素のゲッタリングを行なう。
まず、図10(C)に示すように半導体膜521の表面に酸化膜522を形成する。1
nm〜10nm程度の膜厚を有する酸化膜522を形成することで、後のエッチング工程
において半導体膜521の表面がエッチングにより荒れるのを防ぐことができる。酸化膜
522は公知の方法を用いて形成することができる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などと過
酸化水素水を混合させた水溶液や、オゾン水で、半導体膜521の表面を酸化することで
形成しても良いし、酸素を含む雰囲気中でのプラズマ処理や、加熱処理、紫外線照射等に
より形成しても良い。また酸化膜を別途、プラズマCVD法やスパッタ法、蒸着法などで
形成しても良い。
次に酸化膜522上に、希ガス元素を1×1020atoms/cm3以上の濃度で含むゲッタリ
ング用の半導体膜523を、スパッタ法を用いて25〜250nmの厚さで形成する。ゲ
ッタリング用の半導体膜523は、半導体膜521とエッチングの選択比を大きくするた
め、半導体膜521よりも膜の密度の低い方がより望ましい。希ガス元素としてはヘリウ
ム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe
)から選ばれた一種または複数種を用いる。
次にファーネスアニール法やRTA法を用いて加熱処理を施し、ゲッタリングを行なう
。ファーネスアニール法で行なう場合には、窒素雰囲気中にて450〜600℃で0.5
〜12時間の加熱処理を行なう。また、RTA法を用いる場合には、加熱用のランプ光源
を1〜60秒、好ましくは30〜60秒点灯させ、それを1〜10回、好ましくは2〜6
回繰り返す。ランプ光源の発光強度は任意なものとするが、半導体膜が瞬間的には600
〜1000℃、好ましくは700〜750℃程度にまで加熱されるようにする。
加熱処理により、半導体膜521内の触媒元素が、拡散により矢印に示すようにゲッタ
リング用の半導体膜523に移動し、ゲッタリングされる。
次にゲッタリング用の半導体膜523を選択的にエッチングして除去する。エッチング
は、ClF3によるプラズマを用いないドライエッチング、或いはヒドラジンや、テトラ
エチルアンモニウムハイドロオキサイド((CH34NOH)を含む水溶液などアルカリ
溶液によるウエットエッチングで行なうことができる。この時酸化膜522によって半導
体膜521がエッチングされるのを防ぐことができる。
次に酸化膜522をフッ酸により除去した後、半導体膜521をパターニングし、島状
の半導体膜524〜526を形成する(図10(D))。該島状の半導体膜524〜52
6を用いてTFTに代表される各種の半導体素子を形成することができる。なお、本発明
においてゲッタリング工程は、本実施例に示した方法に限定されない。その他の方法を用
いて半導体膜中の触媒元素を低減するようにしても良い。
本実施例の場合、触媒元素による結晶化の際に形成された結晶が、基板により近い側に
おいてレーザ光の照射により溶融されずに残存し、該結晶を結晶核として結晶化が進む。
よってレーザ光の照射による結晶化は基板側から表面に向かって均一に進みやすく、また
その結晶方位を揃えやすいため、実施の形態2の場合に比べて表面の荒れが抑えられる。
よって後に形成される半導体素子、代表的にはTFTの特性のばらつきがより抑えられる
なお本実施例では、触媒元素を添加してから加熱処理を行なって結晶化を促進してから
、レーザ光の照射により結晶性をより高めている構成について説明した。本発明はこれに
限定されず、加熱処理の工程を省略しても良い。具体的には、触媒元素を添加してから加
熱処理の代わりにレーザ光を照射し、結晶性を高めるようにしても良い。
本実施例では、本発明のレーザ照射装置による結晶化方法に触媒元素による結晶化方法
を組み合わせた、実施例3とは異なる例について説明する。
まず、半導体膜502を成膜し、該半導体膜502に0族の元素のドーピングを行なう
工程まで、実施の形態2の図9(A)までを参照して行なう。次に図11(A)に示すよ
うに、半導体膜502の上に開口部を有するマスク540を形成した。そして、半導体膜
502の表面に重量換算で1〜100ppmのNiを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピンコ
ート法で塗布した。なお触媒の添加は上記方法に限定されず、スパッタ法、蒸着法、プラ
ズマ処理などを用いて添加しても良い。塗布された酢酸ニッケル塩溶液は、マスク540
の開口部において半導体膜502と接する(図11(A))。
次に、500〜650℃で4〜24時間、例えば570℃、14時間の加熱処理を行っ
た。この加熱処理により、酢酸ニッケル塩溶液が塗布された表面から、実線の矢印で示し
たように結晶化が促進された半導体膜530が形成される(図11(A))。加熱処理の
方法はこれに限定されず、実施例3に示したその他の方法で行なっても良い。
なお、触媒元素は実施例3に列記したものを用いることができる。
次にマスク540を除去した後、図11(B)に示すように、半導体膜530を本発明
のレーザ照射装置を用いて結晶化する。本実施例では、第1のレーザ光として、エネルギ
ー6W、1パルスのエネルギー6mJ/p、第2高調波(527nm)、発振周波数1k
Hz、パルス幅60nsecのYLFレーザを用い、また第2のレーザ光としてエネルギー2
000W、基本波(1.064μm)のNd:YAGレーザを用いた。そして本実施例では、第
1のレーザ光によって得られる第1のビームスポットと、第2のレーザ光によって得られ
る第2のビームスポットとの走査方向を揃え、なおかつ走査方向に対して垂直な方向にお
ける幅を、第2のビームスポットの方が第1のビームスポットに比べて広くなるようにす
る。ビームスポットの幅の大小関係はこれに限定されない。
上述した半導体膜530へのレーザ光の照射により、結晶性がより高められた半導体膜
531が形成される。
なお図11(B)に示したように触媒元素を用いて結晶化された半導体膜531内には
、触媒元素(ここではNi)がおおよそ1×1019atoms/cm3程度の濃度で含まれている
と考えられる。次に、半導体膜531内に存在する触媒元素のゲッタリングを行なう。
まず図11(C)に示すように、半導体膜531を覆うように、マスク用の酸化シリコ
ン膜532を150nmの厚さで形成し、パターニングにより開口部を設け、半導体膜5
31の一部を露出させる。そして、リンを添加して、半導体膜531にリンが添加された
領域533を設ける。この状態で、窒素雰囲気中で550〜800℃、5〜24時間、例
えば600℃、12時間の熱処理を行なうと、半導体膜531にリンが添加された領域5
33がゲッタリングサイトとして働き、半導体膜531に残存していた触媒元素が、リン
の添加されたゲッタリング領域533に偏析する。
そして、リンが添加された領域533をエッチングで除去することにより、半導体膜5
31の残りの領域において、触媒元素の濃度を1×1017atms/cm3以下にまで低減させる
ことができる。次に、マスク用の酸化シリコン膜532を除去した後、半導体膜531を
パターニングし、島状の半導体膜534〜536を形成する(図11(D))。該島状の
半導体膜534〜536用いてTFTに代表される各種の半導体素子を形成することがで
きる。なお、本発明においてゲッタリング工程は、本実施例に示した方法に限定されない
。その他の方法を用いて半導体膜中の触媒元素を低減するようにしても良い。
本実施例の場合、触媒元素による結晶化の際に形成された結晶が、基板により近い側に
おいてレーザ光の照射により溶融されずに残存し、該結晶を結晶核として結晶化が進む。
よってレーザ光の照射による結晶化は基板側から表面に向かって均一に進みやすく、また
その結晶方位を揃えやすいため、実施の形態2の場合に比べて表面の荒れが抑えられる。
よって後に形成される半導体素子、代表的にはTFTの特性のばらつきがより抑えられる
なお本実施例では、触媒元素を添加してから加熱処理を行なって結晶化を促進してから
、レーザ光の照射により結晶性をより高めている構成について説明した。本発明はこれに
限定されず、加熱処理の工程を省略しても良い。具体的には、触媒元素を添加してから加
熱処理の代わりにレーザ光の照射を照射し、結晶性を高めるようにしても良い。
本実施例では、半導体素子の作製工程における、レーザ光の照射のタイミングについて
説明する。
実施の形態2において示した作製方法では、パターニングにより島状の半導体膜を形成
する前に、半導体膜にレーザ光を照射して結晶化を行なっている。しかし本発明の半導体
装置の作製方法はこれに限定されず、レーザ光の照射のタイミングは設計者が適宜決める
ことができる。
例えば、レーザ光の照射による結晶化は、半導体膜を島状にパターニングした後に行な
っても良い。図12(A)に、島状の半導体膜1101にレーザ光を照射する様子を示す
。1102はビームスポットに相当し、実際には第1のビームスポットと第2のビームス
ポットを重ね合わせることで形成されている。ビームスポット1102は、矢印で示す方
向に向かって、島状の半導体膜1101に対して相対的に移動する。
なお、島状の半導体膜にレーザ光を照射した後、再びパターニングしても良い。図12
(B)に、2回パターニングを行なう半導体装置の作製工程において、1回目のパターニ
ングの後にレーザ光を照射する様子を示す。1103は1回目のパターニングによって得
られた島状の半導体膜であり、島状の半導体膜1103内に点線で示す領域1104が、
結晶化後の2回目のパターニングによって島状の半導体膜となる領域に相当する。110
5はビームスポットに相当し、実際には第1のビームスポットと第2のビームスポットを
重ね合わせることで形成されている。ビームスポット1105は、矢印で示す方向に向か
って、島状の半導体膜1103に対して相対的に移動する。図12(B)の場合、レーザ
光による結晶化の後、2回目のパターニングを行ない、実際に半導体素子として用いる島
状の半導体膜を得ることができる。
本実施例では、基板の位置を制御する手段の一実施例について説明する。基板の位置を
制御する手段の断面図を図13(A)に、上面図を図13(B)に示す。601はステー
ジ、603はステージ601上において基板602を移動させるためのコンベヤー、60
4は基板602の一端をコンベヤーに固定するための基板固定手段、606はステージの
位置を制御するステージ搬送手段、607は基板の位置を認識するための手段(本実施例
ではCCDを備えたカメラを用いる)に相当する。
図13(C)は、図13(A)に示したステージ601の拡大図である。図13(C)
に示すように、本実施例ではステージ601の表面に設けられた孔605から空気、窒素
、酸素等のガスを噴出することで、ホバークラフトのように基板602をステージ601
から浮かして水平に保つことができる。そしてコンベヤー603で基板固定手段604の
位置を制御することで、基板602をステージ601において移動させることができる。
またステージ搬送手段606によって、コンベヤー603による基板固定手段604の
移動方向に対して交差する方向(好ましくは垂直の方向)に、ステージ601を移動させ
ることが可能である。そして図13(B)に示すように、コンベヤー603による固定手
段の移動方向と、ステージ601の移動方向とを垂直にすることで、基板602全面にレ
ーザ光を照射することが可能である。
なお、必ずしも基板の位置を認識するための手段を設ける必要はないが、該手段を設け
ることで、基板602におけるレーザ光の照射位置を精密に制御することができる。よっ
て、結晶化する必要のない領域はレーザ光の走査を省くことができる。例えば実施例5に
示した半導体装置の作製方法のように、パターニングにより島状の半導体膜を形成してか
らレーザ光による結晶化を行なう場合、島状の半導体膜が存在しないような領域はレーザ
光の走査を省くことができる。従って、基板1枚あたりにかかる処理時間を大幅に短縮す
ることができる。
本実施例では、第1のビームスポットと第2のビームスポットの重ね合わせ方の一実施
例について説明する。
図14(A)に、本実施例のレーザ照射装置の構成を示す。本実施例では4つの発振器
1401〜1404から得られる4つのレーザ光を重ね合わせている。発振器1401、
1403においては連続発振の基本波のレーザ光が得られ、発振器1402、1404に
おいてはパルス発振の高調波のレーザ光が得られる。発振器1401〜1404から発振
されたレーザ光は、それぞれ光学系1405〜1408においてそのビームスポットの形
状が制御され、基板1410に集光される。
図14(B)は、図14(A)に示したレーザ照射装置によって基板1410上に形成
されるビームスポットの形状を示す。図14(B)に示すビームスポットは、4つのレー
ザ光によって得られる4つのビームスポットを重ね合わせることで得られる。具体的には
、発振器1401から発振された連続発振の基本波のレーザ光は、1411に示す領域に
照射されている。発振器1402から発振されたパルス発振の高調波のレーザ光は、14
12に示す領域に照射されている。発振器1403から発振された連続発振の基本波のレ
ーザ光は、1413に示す領域に照射されている。発振器1404から発振されたパルス
発振の高調波のレーザ光は、1414に示す領域に照射されている。そして本実施例では
白抜きの矢印で示すように、各領域の長軸に対して垂直な方向に、ビームスポットの走査
方向を揃える。
なお、領域1412と領域1414が重なることで得られる第1の領域と、領域141
1と領域1413とが重なることで得られる第2の領域とが、さらに重なる領域において
、大粒径の結晶が得られる。本実施例では、領域1412と領域1414が重なることで
得られる第1の領域は、領域1411と領域1413とが重なることで得られる第2の領
域に含まれている。なお第1の領域と第2の領域の大小関係は本実施例で示した構成に限
定されない。基本波のレーザ光に対応する第2の領域の、走査方向と垂直な方向における
幅は、高調波のレーザ光に対応する第1の領域より、広くても良いし、逆に狭くても良い
。前者の場合、エッジ近傍における微結晶領域の形成を激減、もしくは消滅させることが
できる。後者の場合、大粒径の結晶が得られる領域を最大限に確保することができる。な
お、走査方向と垂直な方向における幅が、第1の領域と第2の領域で一致している場合、
上記両方のメリットを得ることができる。
本実施例では、第1のビームスポットと第2のビームスポットの重ね合わせ方の一実施
例について説明する。
本実施例では、パルス発振の高調波の第1のレーザ光と、連続発振の第2のレーザ光と
を重ね合わせることで得られるのビームスポットを、複数用い、レーザ光の照射を行なう
。図15に本実施例のビームスポットのレイアウトの一例を示す。図15では第1のレー
ザ光と第2のレーザ光を重ね合わせることで得られるビームスポットを4つ(1601〜
1604)用いているが、該ビームスポットの数はこれに限定されない。該4つのビーム
スポットの走査方向は、全て同じ方向に揃える。
具体的に各ビームスポット1601〜1604は、第2のレーザ光によって形成される
ビームスポットの中に、第1のレーザ光によって形成されるビームスポット(照射領域)
1611〜1614が重なるように形成する。よって本実施例では、第1のレーザ光のビ
ームスポット1611〜1614が、第1のレーザ光と第2のレーザ光が重なる領域に相
当する。第1のレーザ光の照射領域1611〜1614において大粒径の結晶粒が存在す
る領域1620を得ることができる。
本実施例では、4つのビームスポット1601〜1604の長軸は互いに一致していな
い。ただし、第2のレーザ光のビームスポット1601〜1604は、互いに隣りのビー
ムスポットと重ね合わせ、なおかつ第1のレーザ光の照射領域1611〜1614によっ
て結晶化される領域を、互いに重ねるようにする。本実施例では、ビームスポット160
1〜1604の、第1のレーザ光の照射領域1611〜1614とは重ならない領域にお
いては、レーザ光が半導体膜に吸収されにくいので、微結晶領域が形成されにくい。よっ
て、大粒径の結晶が存在する領域1620を連続するように形成することができる。そし
て4つのビームスポット1601〜1604の長軸は互いに一致させなくても良いので、
光学系の調整を比較的容易にすることができる。
本実施例では、本発明のレーザ照射装置が有する光学系の、一実施例について説明する
図16において、730は第1のレーザ光を発振するレーザ発振器であり、出力6W、
発振周波数1kHz、パルス幅60nsecの、第2高調波(波長532nm)を有する
パルス発振のYLFレーザを用いている。なお、図16では第2高調波を用いているが、
本発明はこれに限定されず、さらに高次の高調波を用いても良い。また731は第2のレ
ーザ光を発振するレーザ発振器であり、図16では、出力が2kWで、基本波(波長1.
064μm)を有する連続発振のNd:YAGレーザを用いる。各レーザ発振器730、731
から得られる第1及び第2のレーザ光は、TEM00モード(シングルモード)であること
が望ましい。
レーザ発振器730から発振された第1のレーザ光は、2枚のシリンドリカルレンズ7
33、734を用いたビームエキスパンダーによって楕円形状に整形され、ガルバノミラ
ー735において反射し、fθレンズ736において集光され、基板に成膜された半導体
膜737に照射される。
レーザ発振器731から発振された第2のレーザ光は、0.6mmφの光ファイバー7
38により伝送された後、凸レンズ739において楕円形状に集光され、基板に成膜され
た半導体膜737に照射される。
第1のレーザ光によって得られる第1のビームスポットと、第2のレーザ光によって得
られる第2のビームスポットとを重ねることで、1つのビームスポット740を得る。な
お入射角度を0度にせず50度以上とすることで、ビームスポットを楕円形状に集光する
ことができる。本実施例では第2のビームスポットは、例えば短軸0.6mm、長軸3m
mの楕円形状とし、第1のビームスポットは、例えば短軸0.2mm、長軸3mmとする
第2のビームスポットは、光ファイバー738と凸レンズ739を、矢印741で示す
向きに移動させることで、半導体膜737上をスキャンさせることができる。光ファイバ
ー738は可撓性を有しているので、光ファイバー738を変形させ、凸レンズ739に
対する光ファイバー738の射出口の向きや位置を固定したまま、射出口を含む光ファイ
バー738の一部と凸レンズ739と(破線743で示す部分)を、矢印741の方向に
移動させ、第2のビームスポットを矢印744の方向に沿って走査することができる。ま
た第1のビームスポットは、ガルバノミラー735の角度を変化させることで、矢印74
4の方向に沿って走査させることができる。またfθレンズ736を用いることで、ガル
バノミラー735の角度の変化に伴う第1のビームスポットの形状の変化を極力抑えるこ
とができる。上記構成によって、第1のビームスポットと第2のビームスポットによって
得られるビームスポット740を、半導体膜737に対して矢印744で示す方向に走査
することができる。
そして本実施の形態では、矢印744で示す方向への走査に加え、一軸ステージを用い
ることで半導体膜737にを白抜きの矢印745で示す方向に走査し、全面に第1のレー
ザ光及び第2のレーザ光を照射することができる。矢印744と白抜きの矢印745とは
、交差、より好ましくは直交させるようにする。本実施例では、第1及び第2のレーザ光
の走査速度を、例えば500mm/secとする。
なお本発明のレーザ照射装置に用いられる光学系は、本実施の形態で示した構成に限定
されない。
101 レーザ発振器
102 反射ミラー
103 レンズ
104 被処理物
105 第2のビームスポット
106 第1のビームスポット
107 吸着ステージ
108 X軸用の一軸ロボット
109 Y軸用の一軸ロボット
110 レーザ発振器
111 光ファイバー
112 レンズ

Claims (5)

  1. ガラス基板上に形成された半導体膜に、532nmの高調波を有するパルス発振された第1の線状レーザビームと、1064nmの基本波を有する連続発振された第2の線状レーザビームとを照射する際、
    前記第1の線状レーザビームは、前記半導体膜上で長軸方向には一致させずに、かつ互いの照射領域は重ねるように複数配置し、前記第2の線状レーザビームは、前記複数の第1の線状レーザビームをそれぞれ覆って複数配置し、かつ前記半導体膜上で重ねながら、前記半導体膜と、前記第1の線状レーザビーム及び前記第2の線状レーザビームとを相対的に移動させ、
    前記半導体膜において、前記第1の線状レーザビームにより溶融した部分の溶融状態を、前記第2の線状レーザビームにより維持させ、且つ前記相対的な移動方向に向かって結晶成長させることを特徴とする結晶性半導体膜の作製方法。
  2. ガラス基板上に形成された半導体膜に、532nmの高調波を有するパルス発振された第1の線状レーザビームと、1064nmの基本波を有する連続発振された第2の線状レーザビームとを照射する際、
    前記第1の線状レーザビームは、前記半導体膜上で互いに重ねるように複数配置し、前記第2の線状レーザビームは、前記複数の第1の線状レーザビームをそれぞれ覆って複数配置し、かつ前記半導体膜上で互いに重ねながら、前記半導体膜と、前記第1の線状レーザビーム及び前記第2の線状レーザビームとを相対的に移動させ、
    前記半導体膜において、前記第1の線状レーザビームにより溶融した部分の溶融状態を、前記第2の線状レーザビームにより維持させ、且つ前記相対的な移動方向に向かって結晶成長させることを特徴とする結晶性半導体膜の作製方法。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記第1の線状レーザビームは、パルス発振のYAGレーザ、Yレーザ、YVOレーザ、またはYAlOレーザを用いることを特徴とする結晶性半導体膜の作製方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
    第2の線状レーザビームは、連続発振のYAGレーザ、Yレーザ、YVOレーザ、またはYAlOレーザを用いることを特徴とする結晶性半導体膜の作製方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
    前記照射面は前記第1の線状レーザビームに対して透光性を有する厚さdの基板に成膜された膜であり、前記第1の線状ビームの長径または短径の長さをWとすると、前記第1の線状レーザビームの前記照射面に対する入射角度φは、
    φ≧arctan(W/2d)
    を満たすことを特徴とする結晶性半導体膜の作製方法。
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