JP2012017427A - 多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物 - Google Patents

多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物 Download PDF

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秀之 森
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Abstract

【課題】速硬化性を有し、ガラスや金属等の各種基材に対して、温水浸漬等の過酷な環境下においても接着力を保持し、ゴム物性も殆ど低下せず、良好な自己消炎性を有する多成分型室温硬化ポリオルガノシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】難燃性付与剤(ただし、カーボンブラックを除く)を含有することを特徴とする多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物であって、好ましくは、分子鎖末端にアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサンと補強性充填剤から少なくともなるシリコーンゴムベース組成物と架橋剤および硬化触媒としての有機スズ化合物から少なくともなる硬化剤組成物からなることを特徴とする多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物に関する。
特定の室温硬化性シリコーンゴム組成物を2液型などの多成分型として、大気中の湿分に依らずに、表層、内部とも全体がほぼ均一に硬化する特性を付与する、いわゆる深部硬化性に優れたシーリング材とすることはよく知られている。例えば、特開昭48−37452公報には、分子鎖末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンとフィラーからなるベース組成物と、アルキルシリケート、アミノ官能性シランおよび硬化触媒からなるキャタリスト組成物からなる、2液型室温硬化性シリコーンゴム組成物が記載されている。また、特開2007−119768号公報にはに、向上した長期間の接着耐水性および速硬化性を有する多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物が提案され、複層ガラスのシール材として使用できることが記載されている。
一方、防火用の複層ガラスにおいて、シール部が加熱された場合、シール材が燃焼したりシール材から可燃性分解ガスが発生したりして、十分な防火性を維持できない可能性があった(特許文献等3−7参照)。この問題を解決するため、難燃性のシリコーンシール材を使用することが提案されているが(特許文献等3−6参照)、従来公知の難燃性室温硬化性シリコーンゴム組成物では、硬化特性や接着耐水性などの点で複層ガラスのシール材として用いることは困難であった。また、従来公知の難燃性室温硬化性シリコーンゴム組成物は火炎にさらされた際に炭化層(チャー)やセラミック層を形成することで火炎の伝播を阻止して難燃性を発揮するが、ガラスや金属を介して伝播する熱による熱分解ガスの発生と着火については知見がなかった。
特開昭48−37452公報 特開2007−119768号公報 特開2001−012157号公報 特開2009−209040号公報 特開平07−237941号公報 特開平07−330386号公報 特開平08−067536号公報
本発明の目的は、速硬化性を有し、各種基材に対して良好な接着性が短時間で発現し、温水浸漬等の過酷な環境下においてさえその接着力を保持し、ゴム物性も殆ど低下せず、良好な自己消炎性を有し、火災などで間接的に高温にさらされても燃焼性の分解ガスの発生とその分解ガスが容易に着火しない多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物を提供することにある。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、難燃性付与剤(ただし、カーボンブラックを除く)を含有することを特徴とする。難燃性付与剤としては、白金系化合物、セリウム系化合物、酸化鉄微粉末および酸化防止剤からなる群から選択されることが好ましい。また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤および芳香族アミノ系酸化防止剤からなる群から選択されることが好ましい。
前記多成分方室温硬化性シリコーンゴム組成物は、分子鎖末端にアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサンと補強性充填剤から少なくともなるシリコーンゴムベース組成物と架橋剤および硬化触媒としての有機スズ化合物から少なくともなる硬化剤組成物からなることが好ましい。また、前記補強性充填剤は、炭酸カルシウム微粉末であることが好ましい。また、前記硬化剤組成物が難燃性付与剤を含有することが好ましい。
また、前記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物としては、(A)(A−1)分子鎖両末端がアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(20〜100質量部)と(A−2)一方の分子鎖末端のみがアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖され、分子鎖の他端がアルキル基またはアルケニル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(0〜80質量部)とからなる25℃に於ける粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)(B−1)ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)と
(B−2)アミノアルキル基含有アルコキシシランとエポキシ化合物との反応混合物と
(B−3)アミノアルキルメトキシシランとからなるメトキシ基含有含ケイ素化合物((B−1)成分は(A)成分100質量部に対して0.5〜15質量部となる量であり、(B−2)成分と(B−3)成分は、(A)成分100質量部に対して合計で0.1〜10質量部となる量であって(B−2)成分と(B−3)成分の比率は重量比で20:80〜80:20である。)
(C)硬化触媒として有機スズ化合物 0.001〜20質量部、および
(D)炭酸カルシウム微粉末 10〜200質量部
から少なくともなり、個別に保存される複数の組成物からなり、前記個別に保存される複数の組成物が前記(A)成分、(B)成分および(C)成分を同時には含まず、少なくとも一つの個別に保存される組成物が難燃性付与剤を含有することが好ましい。
前記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物において、(B−1)成分としては、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選択されるビス(メトキシシリル)アルカンが好ましく、(B−3)成分としては、N−(β−アミノアルキル)アミノアルキルオルガノジメトキシシランまたはN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシランが好ましい。
前記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物において、(B−2)成分としては、アミノアルキル基含有メトキシシラン1モルに対してグリシドキシアルキル基含有メトキシシラン0.5〜5モルを反応させた反応混合物であることが好ましく、メトキシ基含有カルバシラトランであることがより好ましい。
また、前記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物としては、(I)(A)成分および(D)成分からなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴム組成物と、(II)(B)成分と(C)成分からなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物であることが好ましい。
また、上記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、建設用シーリング材として好適に用いることができ、複層ガラスのガラス接着用シーリング材、特には二次シーリング材としても好適に用いることができる。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物用硬化剤組成物は、ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)、アミノアルキル基含有アルコキシシランとエポキシ化合物との反応混合物およびアミノアルキルメトキシシランからなるメトキシ基含有含ケイ素化合物、有機スズ化合物および難燃性付与剤を含んでなることを特徴とする。
本発明の方法は、分子鎖末端にアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサンと炭酸カルシウム微粉末とから少なくともなるシリコーンゴムベース組成物と前記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物用硬化剤組成物とを均一に混合し、得られた混合物で基材間の間隙をシールすることを特徴とする。本発明の方法は建築用部材や複層ガラスの製造に好適に用いることができる。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、多成分型であるので元来深部硬化性に優れるが、速硬化性を有するので、ガラス、プラスチック、金属等の各種基材に対して非常に短い時間で良好な接着性を発現することができる。硬化後は、長期の接着耐水性に優れ、温水浸漬等の苛酷な環境下においても接着力を保持し、ゴム物性も殆んど低下しないシリコーンゴムとなり得る。また、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物から得られる硬化物は、自己消炎性を有し、火災などで間接的に高温にさらされても燃焼性のガスが大量に連続的に発生したり、発生ガスが容易に着火したリすることがないので、難燃性や防火性が必要とされる部材用の接着剤やシール剤として好適に使用できる。
図1は実施例1−3、および実施例7の硬化物の熱重量分析結果である。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、個別に保存される、主剤である分子鎖末端にアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサンと補強性充填剤から少なくともなるシリコーンゴムベース組成物と架橋剤および硬化触媒から少なくともなる硬化剤組成物から少なくともなり、シリコーンゴムベース組成物、硬化剤組成物の何れかもしくは両方、または別の添加剤組成物中に難燃性付与剤(カーボンブラックを除く)を含有することを特徴とする。生産性や現場での作業性の点から硬化剤組成物が難燃性付与剤(カーボンブラックを除く)を含有することが好ましい。
前記難燃性付与剤としては、従来公知のシリコーンゴム組成物に用いられるカーボンブラック以外の難燃性付与剤、および主に炭化水素系の樹脂や油に用いられる酸化防止剤が好適に使用できる。
従来公知のシリコーンゴム組成物に用いられる、カーボンブラック以外の難燃性付与剤としては、白金系化合物、セリウム系化合物および酸化鉄微粉末が例示される。
前記白金系化合物としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルアルキルシロキサン錯体、白金のアルケニルアリールシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体およびこれらの白金系化合物を含む熱可塑性樹脂粉末やこれらの白金系化合物を粉末表面に担持した複合体が例示される。白金系化合物の配合量は、特に限定されないが、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物中に白金金属として0.1〜500ppmの範囲であることが好ましく、0.2〜100ppmの範囲であることがより好ましく、0.2〜50ppmの範囲であることが最も好ましい。
好適なセリウム系化合物としては、酸化セリウム微粉末、水酸化セリウム微粉末、有機カルボン酸セリウムなどの有機セリウム化合物、セリウム原子が酸素原子を介してケイ素原子と結合したセリウムシラノレートが例示され、中でも、保存安定性や分散性の点から酸化セリウム微粉末およびセリウムシラノレートが好適に使用される。
前記酸化セリウム微粉末としては、BET法比表面積が80m2/g以上であり、平均粒子径0.01〜10μmの範囲の酸化セリウム微粉末あることが好ましい。酸化セリウム微粉末は、あらかじめオルガノポリシロキサンに微分散させたペースト状物であることが、取扱い作業性や分散性の点で好ましい。ペースト状物中での酸化セリウム微粉末の含有量は特に限定されないが、取扱い作業性の点で10〜80重量%の範囲であることが好ましい。
前記セリウムシラノレートとしては、セリウム原子が酸素原子を介してケイ素原子と結合した単位を少なくとも1個有する含ケイ素化合物であり、含ケイ素化合物としては、オルガノシロキサンオリゴマーであることが好ましい。セリウム原子以外のケイ素原子結合有機基としては、一価炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルキル基であることがより好ましい。このようなセリウムシラノレートとしては、例えば特公昭61−24377号公報に記載されているような有機カルボン酸セリウム塩とオルガノシロキサン単位を有するアルカリ金属シラノレートとの反応生成物、特公昭53−980号公報に記載されているような塩化セリウムとオルガノシロキサン単位を有するアルカリ金属シラノレートとの反応生成物、特公昭53−12541号公報に記載されているような有機カルボン酸セリウム塩とアルカリ金属シラノレートとの反応生成物にチタンの有機カルボン酸塩もしくはアルコキシ化合物を配合してなる組成物が例示される。
セリウム系化合物の配合量は、特に限定されないが、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物中に0.01〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.05〜10質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることが最も好ましい。
前記酸化鉄微粒子の粒子形状は限定されず、球状、針状、斜方晶形、サイコロ状、不定形状のいずれでもよい。平均粒子径は0.01〜0.5μmの範囲内であることが一般的であるが、分散性や保存安定性の点から0.1〜0.4μmの範囲内であることが好ましい。また平均粒子径の異なる酸化鉄微粒子を二種類以上組み合わせてもよい。酸化鉄としては、例えば三酸化二鉄(赤色ベンガラ)、四酸化三鉄(黒色ベンガラ)が挙げられる。また酸化鉄微粒子表面を表面処理剤により表面処理したものであってもよい。酸化鉄微粉末は、あらかじめオルガノポリシロキサンの一部に微分散させたペースト状物であることが、取扱い作業性や分散性の点で好ましい。ペースト状物中での酸化鉄微粒子の含有量は特に限定されないが、取扱い作業性の点で10〜80重量%の範囲であることが好ましい。このようなペースト状物は、酸化鉄微粒子を所定量のオルガノポリシロキサンに配合し、例えば3本ロールを用いて均一に微分散させることで容易に得られる。
酸化鉄微粉末の配合量は、特に限定されないが、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物中に0.01〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.05〜10質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることが最も好ましい。
酸化防止剤としては、ラジカル捕捉作用を持つフェノール系酸化防止剤や芳香族アミン系酸化防止剤、過酸化物分解作用を持つ硫黄系酸化防止剤やリン系酸化防止剤が用いられる。中でも、フェノール系酸化防止剤および芳香族アミン系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤の配合量は、特に限定されないが、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物中に0.005〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.01〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜2質量%の範囲であることが最も好ましい。
前記フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が例示され、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。このようなフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、n−オクチル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロオキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4−ヒドロオキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−ハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニゾール、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロオキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2'−ヒドロオキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロオキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス−メチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロオキシ−ベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロオキシフェニル)プロピオネート]メタン、4−ヒドロオキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニルトリメトキシシラン、4−ヒドロオキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニルトリエトキシシラン、4−ヒドロオキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニルメチルジメトキシシラン、3−(4−ヒドロオキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(4−ヒドロオキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(4−ヒドロオキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニルオキシ)プロピルトリメトキシシランが例示される。
前記フェノール系酸化防止剤としては、ノクラック200(BHT)、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラックPBK、ノクラックNS−7,ノクラックDAH(いずれも、大内新興化学工業株式会社の商品名)、アデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、AO−330、AO−611、AO−612、AO−613、AO−616、AO−635、AO−658、A−15、AO−15、AO−18、AO−328、AO−37、AO−51(いずれも、株式会社アデカの商品名)、イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス1081、イルガノックス1135、イルガノックス1222、イルガノックス1330、イルガノックス3114、イルガノックス3790、イルガノックスL135(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)などの市販品を使用することができる。中でも、分散性の点から25℃で液状のフェノール系酸化防止剤、例えば、イルガノックスL135であることが好ましい。
前記芳香族アミン系酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;4,4'−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4'−ジオクチル・ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応生成品、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応生成品、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンの低温反応品、ジフェニルアミンとジイソブチレンの反応生成品、オクチル化ジフェニルアミン、置換ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミン誘導体等のジフェニルアミン系酸化防止剤;N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミンの混合品、フェニル・オクチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系酸化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミンとジフェニル−p−フェニレンジアミンの混合品、N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミンと6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの混合品等のアミン混合品が例示される。
前記芳香族アミン系酸化防止剤としては、具体的には、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のイルガノックス L06、イルガノックス L57及びイルガノックス L67;クロンプトン・コーポレーション製のNAUGALUBE AMS、NAUGALUBE438、NAUGALUBE438R、NAUGALUBE438L、NAUGALUBE500、NAUGALUBE640、NAUGALUBE680及びNAUGARD PANA;BFグッドリッチ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のGOODRITE3123、GOODRITE3190X36、GOODRITE3127、GOODRITE3128、GOODRITE3185X1、GOODRITE3190X29、GOODRITE3190X40、GOODRITE3191及びGOODRITE3192;R.T.ヴァンダービルト・カンパニー製のVANLUBE DND、VANLUBE NA、VANLUBE PNA、VANLUBE SL、VANLUBE SLHP、VANLUBE SS、VANLUBE81、VANLUBE848及びVANLUBE849がなどの市販品を使用することができる。中でも、分散性の点から25℃で液状の芳香族アミン系酸化防止剤、例えば、イルガノックスL57であることが好ましい。
次に、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物を詳細に説明する。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、
(A)(A−1)分子鎖両末端がアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(20〜100質量部)と(A−2)一方の分子鎖末端のみがアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖され、分子鎖の他端がアルキル基またはアルケニル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(0〜80質量部)とからなる25℃に於ける粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン100質量部、
(B)(B−1)ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)と
(B−2)アミノアルキル基含有アルコキシシランとエポキシ化合物との反応混合物と
(B−3)アミノアルキルメトキシシランとからなるメトキシ基含有含ケイ素化合物((B−1)成分は(A)成分100質量部に対して0.5〜15質量部となる量であり、(B−2)成分と(B−3)成分は、(A)成分100質量部に対して合計で0.1〜10質量部となる量であって(B−2)成分と(B−3)成分の比率は20:80〜80:20である。)
(C)硬化触媒として有機スズ化合物(0.001〜20質量部)、および
(D)炭酸カルシウム微粉末 10〜200質量部から少なくともなることを特徴とする。
(A)成分は、上記多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の主剤であり、(A−1)分子鎖両末端がアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと(A−2)一方の分子鎖末端のみがアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖され、分子鎖の他端がアルキル基またはアルケニル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンとからなるジオルガノポリシロキサンである。
(A)成分において、(A−2)成分が多すぎると硬化後のシリコーンゴムの強度が低下したり、基体と接着させた部材の温水浸漬後の接着性が低下したりする、すなわち、接着耐温水性が低下したりする傾向があるので、その混合比は、重量比で(A−1):(A−2)=(100:0)〜(20:80)の範囲にあることが好ましく、(A−1):(A−2)=(100:0)〜(60:40)の範囲であることがより好ましく、(A−1):(A−2)=(95:5)〜(70:30)の範囲であることが更に好ましく、(A−1):(A−2)=(95:5)〜(80:20)の範囲であることが最も好ましい。
また、(A−1)、(A−2)成分の粘度は低すぎると硬化後のシリコーンゴムの強度が低くなり、高すぎると製造時および使用時の作業性が低下するので、25℃における粘度が20〜1,000,000 mPa・sの範囲内にあることが必要であり、100〜100,000 mPa・sの範囲内にあることが好ましい。
好ましい(A−1)成分は一般式:
Figure 2012017427

で表されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1は水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエトキシ基などのアルコキシアルキル基から選択される基であり、水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。R2は一価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基およびシアノアルキル基から選ばれる基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルフロピル基等のアラルキル基;トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基であることが好ましい。なお、R1がアルキル基またはアルコキシアルキル基である場合は、aは0、1または2であり、R1が水素原子である場合は、aは2である。
Yは酸素原子、二価炭化水素基、または一般式:
Figure 2012017427
(式中、Rは前記と同じであり、Zは二価炭化水素基である。)で示される基である。二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキセン基などの炭素原子1〜のアルキレン基であることが好ましい。nは25℃に於ける粘度が20〜1,000,000 mPa・sとなるような数である。
(A−1)成分は周知の方法、例えば、特公平3−4566号公報、特開昭63−270762公報に記載された方法により製造することができる。
(A−2)成分は本発明組成物の硬化物であるシリコーンゴムのモジュラスを低くしたり、難接着性の基材への接着性を向上させたりする働きをする。好ましい(A−2)成分としては、一般式:
Figure 2012017427
で示されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1、R2、Y、aは前記と同じであり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基であり、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。mは25℃に於ける粘度が20〜1,000,000mPa・sとなるような数を表す。
(A−2)成分は周知の方法、例えば、特開平4−13767号公報、特開昭63−270762号公報に記載された方法により製造することができる。
(B)成分はメトキシ基含有含ケイ素化合物であり、(B−1)ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)と(B−2)メトキシ基含有カルバシラトラン誘導体と(B−3)アミノアルキルメトキシシランとからなることを特徴とする。(B)成分は、後述する(C)成分と併用することにより(A)成分と反応して本発明組成物を架橋硬化させる働きをすると同時に、本発明組成物に速硬化性と各種基材に対する接着性を付与し、特に、本発明組成物と基材とを接着させた部材を温水に浸漬した後の接着性の低下を抑制する、すなわち、接着耐温水性を付与する働きをする。
(B−1)成分はビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシランであり、後述する(C)成分の存在下(A)成分の架橋剤としての働きをする。上記ビス(メトキシシリル)アルカンと上記オルガノトリメトキシシランは、混合して使用してもよい。ただし、上記オルガノトリメトキシシランは、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランを含まない。
上記オルガノトリメトキシシランのメトキシ基以外のケイ素原子に結合する基は、炭素原子数1〜20の置換又は非置換の一価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であることが好ましい。ただし、前記メトキシ基以外のケイ素原子に結合する基は、アミノ基を含有しない。前記メトキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルフロピル基等のアラルキル基;トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基;上記基の水素原子が各種置換基で置換された基が例示される。中でも炭素原子数4〜20のアルキル基であることが好ましい。
好ましいオルガノトリメトキシシランとしては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアン酸エステルが例示される。
好ましいビス(メトキシシリル)アルカンとしては、一般式:
Figure 2012017427

で示される化合物が好ましい。式中、OMeはメトキシ基であり、Rは前記と同じであり、bは0または1であり、0であることが好ましい。Rは置換または非置換の炭素原子数は2〜10のアルキレン基であり、好ましくは、置換または非置換の炭素原子数は5〜10のアルキレン基である。具体的には、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基などのアルキレン基であり、その水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基によって置換されていてもよい。中でも、直鎖状の非置換の炭素原子数5〜10のアルキレン基であることが好ましい。入手が容易で、揮発性が低いことから作業性に優れ、安定した硬化性と接着性を発現するからである。
ビス(メトキシシリル)アルカンの具体例としては、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1−メチルジメトキシシリル−4−トリメトキシシリルブタン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1−メチルジメトキシシリル−5−トリメトキシシリルペンタン、1,5−ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカン、3,8−ビス(トリメトキシシリル)デカンが例示される。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を混合しても良い。中でも、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンが好ましく、特に1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンであることが好ましい。揮発性が低いことから、本発明多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物を混合して室温硬化性シリコーンゴム組成物とする際に脱泡操作を行っても硬化性や接着性に影響が無く、その作業性や施工性を向上させることができるからである。
ビス(メトキシシリル)アルカンは、ジエンとトリメトキシシランまたはオルガノジメトキシシランとをヒドロシリル化反応させるという周知の方法により製造することができる。
(B−1)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜15質量部であるが、(A)成分を示す一般式(1)中、R1が水素原子である場合は、(B−1)成分中のメトキシ基のモル数が(A)成分中のシラノール基のモル数を上回るような量とすることが好ましい。また(A)成分を示す一般式(1)中、R1がアルキル基またはアルコキシアルキル基である場合は、(B−1)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して2〜15質量部であることが好ましい。
(B−2)成分は、後述する(B−3)成分と共同して本発明組成物に接着性を付与する働きをし、接着耐水性または接着耐温水性を向上するという働きをする。(B−2)成分は、アミノアルキル基含有アルコキシシランとエポキシ化合物との反応混合物であるが、具体的には、例えば、一般式(5):
Figure 2012017427
で示されるメトキシ基含有カルバシラトラン誘導体であることが好ましい。式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基またはメトキシ基であり、R6は同じかまたは異なる一般式:
Figure 2012017427

(式中、R8は置換または非置換の炭素原子数は2〜10のアルキレン基、好ましくは、置換または非置換の炭素原子数は5〜7のアルキレン基またはメトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエトキシ基などのアルキレンオキシアルキレン基であり、OMe、R2、R4は前述の通りであり、cは0、1、または2である。)で表される基からなる群から選択される基であり、Rは同じかまたは異なる水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基である。
(B−2)成分のメトキシ基含有カルバシラトラン誘導体を製造する方法については、例えば、一般式:
Figure 2012017427

(式中、OMe、R、R、bは前述の通りである。)で表されるアミノ基含有アルコキシシラン1モルに対して一般式:
Figure 2012017427
(式中、R、Rは前述の通りである。)で表されるエポキシ化合物を1.5〜3.0モルとなるよう均一に混合して反応させることで製造することができる。前記の反応は均一に混合して室温で放置しておいてもよいが、必要に応じて加熱下で行ってもよい。
(B−3)成分は、前記(B−2)成分と共同して本発明組成物に接着性を付与する働きをし、中でも速硬化性を付与するという働きをする。(B−3)成分としては一般式(6):
Figure 2012017427
で示されるアミノアルキルメトキシシランが好ましい。式中、Xは水素原子またはアミノエチル基、アミノプロピル基などのアミノアルキル基である。OMe、R、R、bは前記のとおりである。(B−3)成分の具体例としては、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノアルキルオルガノジメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノアルキルトリメトキシシラン;N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルオルガノジメトキシシラン;N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシランが例示される。本発明組成物に配合した際、接着性の向上と速硬化性に優れることから、N−(β−アミノアルキル)アミノアルキルオルガノジメトキシシランまたはN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシランが好ましく、N−(β−アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシランであることがより好ましい。
(B−2)成分と(B−3)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して合計して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜5質量部である。これは上記配合量が上記範囲下限未満であると、本発明組成物に十分な接着性を付与することができず、上記範囲上限を超えると本発明組成物の硬化性が低下したり、硬化後のシリコーンゴムが固くなりすぎたりするためである。
(B−2)成分と(B−3)成分の比率は重量比で、20:80〜80:20であり、好ましくは30:70〜70:30であり、40:60〜70:30であることが最も好ましい。(B−2)成分の比率が上記範囲下限未満であると、本発明組成物の長期の接着耐水性が低下し、(B−2)成分の比率が上記範囲上限を超えると本発明組成物の速硬化性が損なわれたり、熱線反射金属薄膜が蒸着された基材などの難接着被着体への接着発現時間が遅延したりする。(B−3)成分の混合比が上記範囲下限未満であると本発明組成物の速硬化性が損なわれたり、熱線反射金属薄膜が蒸着された基材などの難接着被着体への接着発現時間が遅延したりする。(B−3)成分の混合比が上記範囲上限を超えると長期の接着耐水性が低下する。
(C)硬化触媒は、有機スズ化合物であり、具体例としては、ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジオクトエート、ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジネオデカノエートなどのジアルキルスズジカルボン酸;スタナスオクトエートなどのスズ有機酸塩が例示され、中でも、本発明組成物の速硬化性や深部硬化性などの硬化特性が優れることから、ジアルキルスズジカルボン酸であることが好ましく、特にはジメチルスズジカルボン酸塩であることが好ましい。その配合量は、(A)成分100質量部に対して0.001〜20質量部であるが、0.01〜5質量部の範囲が好ましい。
本発明組成物には、前記した(A)成分〜(C)成分に加えて沈降式シリカ、フュームドシリカ、およびこれらをシラン類、シラザン類、低重合度ポリシロキサン類などで表面処理したシリカなどのシリカ微粉末や炭酸カルシウム微粉末などの補強性充填剤を配合することが好ましい。
前記補強性充填剤としては、(D)炭酸カルシウム微粉末が、本発明組成物の深部硬化性をさらに向上し、本発明組成物の硬化物の機械的強度を向上させる点から好ましい。(D)成分としては、重質(または乾式粉砕)炭酸カルシウム微粉末、軽質(または沈降)炭酸カルシウム微粉末、これらの炭酸カルシウム微粉末を脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した粉末が例示され、好ましくは、軽質(または沈降)炭酸カルシウム微粉末であり、特に好ましくは、脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した軽質(または沈降)炭酸カルシウム微粉末である。(D)成分のBET比表面積は特に限定されないが、好ましくは5〜50m/gであり、特に好ましくは10〜50m/gである。
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して10〜200質量部の範囲内であることが好ましく、30〜150質量部の範囲内であることがより好ましい。これは、(D)成分の配合量が上記範囲の下限未満であると、所望の特性が向上しない傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、本発明組成物の取扱い作業性が損なわれたりする傾向があるからである。保存安定性の点から(D)成分は、個別に保存される複数の組成物のうちシリコーンゴムベース組成物に配合することが好ましい。
本発明組成物には、前記した(A)成分〜(C)成分、または、(A)成分〜(D)成分に加えて、室温硬化性シリコーンゴム組成物に添加配合することが公知とされる各種添加剤を配合することは本発明の目的を損なわない限り差支えない。このような添加剤としては、石英微粉末、ルチル型二酸化チタン粉末、ブルッカイト型二酸化チタン粉末、ケイソウ土粉末、タルク、粘土鉱物微粉末、およびこれらをシラン類、シラザン類、低重合度ポリシロキサン類などで表面処理した微粉末状の無機質充填剤が挙げられる。
中でも、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、アナターゼ型酸化チタン微粉末およびこれらをシラン類、シラザン類、低重合度ポリシロキサン類などで表面処理した難燃性付与助剤として働く無機質充填剤を配合することが好ましい。
このような無機質充填剤の配合量は(A)成分100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜150質量部である。保存安定性の点から無機質充填剤は、個別に保存される複数の組成物のうちシリコーンゴムベース組成物に配合することが好ましい。
その他の添加剤としては、硬化後のシリコーンゴムを低モジュラスにするための成分である、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン;可塑剤、チクソ性付与剤、防カビ剤、カーボンブラック、顔料(酸化鉄微粉末を除く)、有機溶剤などがある。
中でも、難燃性助剤として働くことが期待される、ジビニルジフェニルジメチルジシロキサンなどのアルケニルアリールオリゴシロキサン;リン酸シリル;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール化合物:ヒドラジド系化合物、アミノトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、メラミン系化合物、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体などの金属不活性化剤などを配合することが好ましい。金属不活性化剤としては、イルガノックス MD−1024(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製);アデカスタブCDA−1、アデカスタブCDA−6、アデカスタブZS−27(いずれもADEKA社製)などの市販品が使用できる。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、個別に保存される複数の組成物からなり、上記複数の組成物が(A)成分、(B)成分および(C)成分を同時に含まないことを特徴とする。個別に保存される複数の組成物からなる多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の形態とすることにより、深部硬化性と速硬化性に優れた室温硬化性シリコーンゴム組成物の製造を容易にし、その貯蔵安定性を飛躍的に向上させることができる。また、個別に保存される各組成物は(A)成分、(B)成分および(C)成分を同時に含まないことが必要である。これは、(A)成分、(B)成分および(C)成分を同時に配合すると架橋反応が自発的に始まり、その組成物の貯蔵安定性が失われるためである。
具体的には、(I)(A)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴムベース組成物と、(II)(B)成分と(C)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物;(I)(A)成分と(B)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(C)成分を含まないシリコーンゴムベース組成物と、(II)(C)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分と(B)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物;(I)(A)成分の一部と(B)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(C)成分を含まないシリコーンゴム組成物と、(II)(C)成分と残りの(A)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(B)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物;(I)(A)成分と(B)成分の一部および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(C)成分を含まないシリコーンゴム組成物と、(II)(C)成分と残りの(B)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物が例示される。
また、(I)(A)成分および必(D)成分を配合してなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴムベース組成物と、(II)(C)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分と(B)成分を含まない第1の硬化剤組成物、ならびに、(III)(B)成分および必要に応じてその他の添加剤を配合してなり、(A)成分と(C)成分を含まない第2の硬化剤組成物からなる3成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物;(I)(A)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴムベース組成物と、(II)(C)成分と(B)成分からなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物、ならびに、(III)その他の添加剤からなり、(A)成分、(B)成分および(C)成分を含まない添加剤組成物からなる3成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物;(I)一部の(A)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴムベース組成物と、(II)(C)成分と(B)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物、ならびに、(III)残りの(A)成分および必要に応じてその他の添加剤を配合してなり、(B)成分と(C)成分を含まない添加剤組成物からなる3成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物も例示される。
前記難燃性付与剤は、前記個別に保存されるシリコーンゴム組成物、硬化剤組成物または添加剤組成物のうちの少なくとも一つに配合される。
中でも、(I)(A)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴム組成物と、(II)(B)成分と(C)成分、前記難燃性付与剤および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物であることが好ましい。製造が容易であり、1種の組成物(I)と組成や配合比を変更した組成物(II)を組み合わせることで、用途や施工方法に応じた多様な硬化速度や接着性などの各種特性を備えた多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物を容易に得ることができるからである。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、使用に際して個別に保存される複数の組成物を混合して使用する。その混合方法としては、保存容器から計量ポンプを用いて多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の各成分をスタティックミキサーに導入して混合使用する方法が例示される。また、開放系のミキサーで多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の各成分を混合して使用する際には混合物を脱泡操作してから使用することが好ましい。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、速硬化性に優れる。ここで速硬化性とは、JIS K6253に規定されたタイプAデュロメーターによる硬化物の硬さが最終的な硬さの60%に達するまでに要する時間が、25℃において6時間以内であることを意味する。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、ガラス、陶磁器、モルタル、コンクリート、木、アルミニウム、銅、ステンレススチール、鉄、トタン、ブリキ、黄銅、亜鉛、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などからなる基体に良好に接着する。また、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂からなる基体にも接着する。さらに、これらの基体表面が熱反射などを目的として金属薄膜などによりコーティングされた場合は、一般に難接着性の基体となるが、例えば、(A)成分中の(A−1)成分と(A−2)成分の比率を(A−1):(A−2)=(95:5)〜(70:30)の範囲にすることで、良好な接着性を得ることができる。また、より強固な接着性が要求される場合は、これら基材表面に適当なプライマーを塗布し、そのプライマー塗布面に本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物を接着させてもよい。
以下、本発明を実施例により説明する。実施例において、部はいずれも質量部を意味する。なお、多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着耐水性、硬化性の評価は次に示す方法にしたがって行なった。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の硬化性の評価方法>
多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の個別に保存された組成物を混合した混合物を約6mmの厚さに打設し、打設後温度23℃、湿度50%RHの条件下に放置し、5時間後および24時間後にJIS K6253に規定されるタイプAデュロメーターを用いて硬さを測定することで、硬化性を評価した。
<室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着耐水性の評価方法>
JIS A1439に規定される方法に準じて接着耐水性試験体(多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の個別に保存された組成物を混合した混合物を2枚のフロートガラス板(JIS R3202に規定されたフロート板ガラス)の間に充填した通称H形試験体)を作成した。この接着耐水性試験体を温度23℃、湿度50%RHの条件下で7日間放置して組成物を硬化させた。得られた接着耐水性試験体について下記の項目を測定し、合わせてシリコーンゴムの破断状態を目視で観察して評価した。シリコーンゴムの破断状態は、破断面においてシリコーンゴムの凝集破壊が認められる面積の割合を目視で観察して、CF率として評価した。すなわち破断面全体がシリコーンゴムの凝集破壊である場合はCF率100%であり、破断面全体が界面剥離である場合は、CF率は0%である。また、長期間の接着耐水性の評価のための加速劣化試験として、この接着耐水性試験体を80℃の温水中に28日間浸漬した後、取り出し、下記の項目を測定し、上記と同様にしてシリコーンゴムの破断状態を観察した。
10%モジュラス(10%伸張時の引張応力) (N/mm
最大引張応力 (N/mm
最大荷重時の伸び (%)
<接着発現性の評価方法>
フロートガラスに、多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の個別に保存された組成物を混合した混合物をおよそ厚さ10mm、幅さ10mmで打設し、温度23℃、湿度50%RHの条件下に24時間または3日間放置して組成物を硬化させた。得られた試験体から硬化したシリコーンゴムを剥して、破断状態を目視で観察して評価した。シリコーンゴムの破断状態は、全破断面が凝集破壊である場合はCF;破断面に界面剥離が認められた場合はAF;シリコーンゴムの硬化が不十分で評価できない場合はNAと表記した。
<シート状硬化試験片>
多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物の個別に保存された組成物を混合した混合物を約3mmの厚さにフッ素樹脂フィルム上に塗布し、温度23℃、湿度50%RHの条件下に7日間放置してシート状硬化試験片を得た。
<熱重量分析による評価方法>
島津製作所製熱重量測定装置TGA−50を用い、空気雰囲気下で昇温速度20℃/minで700℃まで昇温し、前記方法で調製したシート状硬化試験片およそ18mgの熱重量減少を測定した。490℃に到達したとき、重量減少が初期重量との比率で30%未満であった場合を合格、重量減少が初期重量との比率で50%以上であった場合を不合格とした。
<自己消炎性の評価方法>
20mm×120mm×3mmの形状の前記方法で調製したシート状硬化試験片を水平に保持し、端部にブンゼンバーナーの炎を10秒間あてた後、炎を遠ざけた際に炎が消えた場合を自己消炎性ありと評価し、燃焼が持続し試験片が全焼した場合を自己消炎性なしと評価した。
<自然発火温度測定方法>
自然発火温度の測定は、JIS K7193に準拠し、前記方法で調製したシート状硬化試験片3±0.2g(およその形状は20mm×20mm×3mm)を用いて、空気流速25mm/sに設定した温度の高温空気炉の中に試料を入れ、炉内の温度変化を10分間観察し、10分以内に炉内で温度上昇が認められた際の設定温度を自然発火温度、炉内温度上昇が検知されるまでに要した時間を発火時間とした。10分間放置しても炉内温度に変化が認められなかった場合は、炉の温度設定を10℃上げ、試料を交換して測定を繰り返した。
[参考例1]<接着付与剤Aの調製>
還流冷却管を設けた1リットルのフラスコに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン179g(1.0モル)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン472g(2.0モル)、およびメタノール64g(2.0モル)を投入し、攪拌下に徐々に昇温して、メタノール還流温度において36時間反応させた。これを室温まで冷却し、メタノールを除去して得られた生成物を29Si−核磁気共鳴スペクトル分析したところ、−62.5ppm、−63.8ppm、および−64.9ppmにそれぞれ立体異性体に起因するピークを有する下式で表されるカルバシラトラン誘導体が生成していることが確認された。このカルバシラトラン誘導体の含有量は86重量%であった。本反応生成物を接着付与剤Aとする。
Figure 2012017427
[実施例1]
粘度12,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部と脂肪酸処理された炭酸カルシウム微粉末(白石工業株式会社製、商品名白艶華CCR、平均粒子径0.08μm)100部とを均一になるまで混合してシリコーンゴムベースを調製した。ジメチルポリシロキサンオイル(粘度12,000mm/s、分子鎖末端トリメチルシリル基封鎖)、カーボンブラック(アセチレンブラック)、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ジメチルスズジネオデカノエート、参考例1で調製した接着付与剤A、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランおよびセリウムシラノレート(粘度10mm/s、セリウム金属含有量およそ3%)を表1に示す割合で混合して硬化剤1を調製した。次いで、上記シリコーンゴムベースと硬化剤1とを100:7.7(重量比)の比率で混合し減圧下で脱泡した混合物を用いて、硬化特性、接着耐水性および接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性および接着発現性評価結果を表3に示した。また、前記混合物を用いて調製したシート状硬化試験片を用いて、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[実施例2]
実施例1において、セリウムシラノレートに替えてイルガノックス L57 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を使用して調製した表1に示す組成を有する硬化剤2を使用した以外は、実施例1と同様にして硬化特性、接着耐水性および接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性、接着発現性評価結果を表3に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[実施例3]
実施例1において、セリウムシラノレートに替えて白金のアルケニルシロキサン錯体のテトラメチルジビニルジシロキサン溶液(以下、白金錯体溶液。白金金属含有量約4%)を使用して調製した表1に示す組成を有する硬化剤3を使用した以外は、実施例1と同様にして硬化特性、接着耐水性および接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性および接着発現性評価結果を表3に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[実施例4]
実施例1において、セリウムシラノレートに替えてアデカスタブAO−30(ADEKA社製)を使用して調製した表1に示す組成を有する硬化剤4を使用した以外は、実施例1と同様にして硬化特性、接着耐水性および接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性および接着発現性評価結果を表4に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[実施例5]
実施例1において、セリウムシラノレートに替えて三酸化二鉄微粉末(バイフェロックス130Mとバイフェロックス140Mの混合物)を使用して調製した表1に示す組成を有する硬化剤5を使用した以外は、実施例1と同様にして硬化特性、接着耐水性および接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性、熱線反射樹脂フィルムおよび接着発現性評価結果を表4に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[実施例6]
実施例1において、セリウムシラノレートに替えて四酸化三鉄微粉末(戸田工業社製KN−320)を使用し、カーボンブラックを使用せずに調製した表1に示す組成を有する硬化剤6を使用した以外は、実施例1と同様にして硬化特性、接着耐水性および接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性および接着発現性評価結果を表4に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[実施例7]
25℃における粘度が4000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルポリシロキサン40部、脂肪酸処理された炭酸カルシウム(白石工業株式会社製、商品名白艶華CCR、平均粒子径0.08μm)20部、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて平均粒子径が1.0μmである水酸化アルミニウム30部、炭酸亜鉛2部、純度99.9%以上であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて平均粒子径が5μm以下の酸化セリウム6部および前記白金錯体溶液(白金金属含有量約4%)0.04部とを均一になるまで混合してシリコーンゴムベースを調製した。
実施例1において、セリウムシラノレートを配合しなかった以外は同様にして表1に示す組成を有する硬化剤7を調製した。次いで、上記シリコーンゴムベースとキャタリスト組成物とを100:7.7(重量比)の比率で混合した混合物を用いて、実施例1と同様にして硬化特性、接着耐水性、接着発現性を評価した。硬化特性評価結果、接着耐水性および接着発現性評価結果を表3に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
[比較例1]
実施例1において、セリウムシラノレートを配合しなかった以外は同様にして調製した表1に示す組成を有する硬化剤7を使用した以外は、実施例1と同様にして、硬化特性、接着耐水性、接着発現性を評価した。硬化特性評価結果を表3に、接着耐水性、接着発現性評価結果を表3に示した。また、実施例1と同様にして、熱重量分析、自己消炎性、自然発火温度を評価し結果を表2に示した。
Figure 2012017427
Figure 2012017427
Figure 2012017427
なお、比較例1のシート状硬化試験片の熱重量測定において重量減少率が60%を超えた(ほぼ100%)が、480℃到達以後に可燃性分解ガスが連続的に発生、これが発火して不燃物として残留するはずの無機物質とともに白金製試料皿から脱落したためと推測される。
本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、個別に保存される複数の組成物を混合後に脱泡操作を行っても硬化特性や接着性が低下せず、速硬化性を有し、ガラス、プラスチック、金属等の各種基材に対して非常に短い時間で良好な接着性を発現し、硬化後は、長期間の接着耐水性に優れ、温水浸漬等の苛酷な環境下においても接着力を保持し、ゴム物性も殆んど低下しないシリコーンゴムとなり得る。このような特性を有することから、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物は、水周りの部材や屋外で使用される建築用部材のシーリング材や接着剤として好適であり、これら部材の生産性を向上させることができる。また、本発明の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物から得られる硬化物は自己消炎性を有しており、火災などで間接的に高温にさらされても燃焼性のガスが大量に連続的に発生したり、発生ガスが容易に着火したリすることがないので、難燃性や防火性が必要とされる部材用の接着剤やシール剤として好適である。具体的には、複層ガラスユニットの二次シール材、特開平10−101381号公報に記載された中間プラスチックフィルムを有する複層ガラスユニット二次シール材およびエッジシーラント等のガラスの接着用シーリング剤として有用である。また、浴槽ユニットのシール材、自動車などの車両の照明部品用接着剤やシール材としても好適である。
ここで複層ガラスを説明すると、複層ガラスを構成する2枚のガラス板は通常その4辺の周辺部に、乾燥剤の入れられた金属スペーサーを配設し、ガラスと金属スペーサーの間にはブチル樹脂などの一次シール材を配置して水分の浸入を防止している。室温硬化性シリコーンゴム組成物などは、金属スペーサーの外周辺部と2枚のガラス板との間に二次シール材として打設され、スペーサーとガラス板とを接着固定して、一次シール材を保護する働きをする。このため二次シール材は高いモジュラスを有することが好ましいとされる。また、建物保証の長期化という要請もあって、使用される二次シールには、長期の接着耐久性、特に接着耐水性が要求される。サッシに覆われる用途でこの複層ガラスが使用されるときは、サッシ内の水抜きに支障があった場合、二次シールが水に浸漬する可能性があり、長期間浸水状態で屋外環境に放置される懸念があるからである。また、特開平10−101381号公報に記載された金属薄膜を蒸着した熱線反射中間プラスチックフィルムを有する複層ガラスユニットや、熱線反射ガラスを有する複層ガラスユニットにおいては、金属薄膜蒸着層を有する難接着基材への接着性も要求される。また、複層ガラスの製造工程において、二次シール材の硬化速度は製造工程時間に大きく寄与する。
その他にも、電気・電子部品のシーリング材、ポッティング材、コーティング材、接着剤として有用である。

Claims (20)

  1. 難燃性付与剤(ただし、カーボンブラックを除く)を含有することを特徴とする多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  2. 多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物が、分子鎖末端にアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサンと補強性充填剤から少なくともなるシリコーンゴムベース組成物と架橋剤および硬化触媒としての有機スズ化合物から少なくともなる硬化剤組成物からなることを特徴とする請求項1記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  3. 補強性充填剤が炭酸カルシウム微粉末であることを特徴とする請求項2に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  4. 硬化剤組成物が難燃性付与剤を含有することを特徴とする請求項2に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  5. 難燃性付与剤が、白金系化合物、セリウム系化合物、酸化鉄微粉末および酸化防止剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  6. 酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤および芳香族アミノ系酸化防止剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  7. 多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物が、
    (A)(A−1)分子鎖両末端がアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(20〜100質量部)と(A−2)一方の分子鎖末端のみがアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖され、分子鎖の他端がアルキル基またはアルケニル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(0〜80質量部)とからなる25℃に於ける粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100質量部、
    (B)(B−1)ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)と
    (B−2)アミノアルキル基含有アルコキシシランとエポキシ化合物との反応混合物と
    (B−3)アミノアルキルメトキシシランとからなるメトキシ基含有含ケイ素化合物((B−1)成分は(A)成分100質量部に対して0.5〜15質量部となる量であり、(B−2)成分と(B−3)成分は、(A)成分100質量部に対して合計で0.1〜10質量部となる量であって(B−2)成分と(B−3)成分の比率は重量比で20:80〜80:20である。)、および
    (C)硬化触媒として有機スズ化合物 0.001〜20質量部
    (D)炭酸カルシウム微粉末 10〜200質量部
    から少なくともなり、個別に保存される複数の組成物からなり、前記個別に保存される複数の組成物が前記(A)成分、(B)成分および(C)成分を同時には含まず、前記個別に保存される複数の組成物のうち少なくとも一つの組成物が難燃性付与剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  8. (B−2)成分が、アミノアルキル基含有メトキシシラン1モルに対してグリシドキシアルキル基含有メトキシシラン0.5〜5モルを反応させた反応混合物であることを特徴とする請求項7に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  9. (B−2)成分が、メトキシ基含有カルバシラトランであることを特徴とする請求項7に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  10. (B−1)成分が1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選択されるビス(メトキシシリル)アルカンである請求項7に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  11. (B−3)成分がN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルオルガノジメトキシシランまたはN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項7に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  12. (A−1)成分と(A−2)成分の比率が重量比で95:5〜70:30であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  13. (I)(A)成分および(D)成分からなり、(B)成分および(C)成分を含まないシリコーンゴム組成物と(II)(B)成分と(C)成分からなり、(A)成分を含まない硬化剤組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物であることを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  14. 建築用シーリング材である請求項1〜13のいずれか1項に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  15. 複層ガラスのガラス接着用シーリング材である請求項1〜14
    のいずれか1項に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  16. 複層ガラス用二次シーリング材である請求項15に記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物。
  17. ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)、アミノアルキル基含有アルコキシシランとエポキシ化合物との反応混合物およびアミノアルキルメトキシシランからなるメトキシ基含有含ケイ素化合物、有機スズ化合物および難燃性付与剤を含んでなる多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物用硬化剤組成物。
  18. 分子鎖末端にアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサンと炭酸カルシウム微粉末とから少なくともなるシリコーンゴムベース組成物と請求項17記載の多成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物用硬化剤組成物とを均一に混合し、得られた混合物で基材間の間隙をシールする方法。
  19. 請求項18に記載の方法で製造された建築用部材。
  20. 請求項18に記載の方法で製造された複層ガラス。
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