JP2012008419A - 光学素子の成形用金型、及び光学素子及びその製造方法 - Google Patents

光学素子の成形用金型、及び光学素子及びその製造方法 Download PDF

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【課題】反射防止構造が形成された自由曲面を有する光学素子を短い工程で精度良く製造する方法及びそれにより得られる光学素子を提供する
【解決手段】基材2の光学表面に反射防止構造31が設けられた自由曲面を有する部材3を形成して光学素子1を製造する方法であって、巨視的には自由曲面の反転形状を有し、微視的には反射防止構造31の反転形状を有する成形面を有する金型40を用いて、部材3の表面を自由曲面形状に成形すると同時に、部材3の表面に反射防止構造31を形成することを特徴とする方法。
【選択図】図1

Description

本発明は反射防止処理を施した光学素子及びその製造方法、及びかかる光学素子を成形するための金型に関する。
光学系において、球面形状を有するレンズ等の光学素子が従来用いられてきたが、近年の光学機器の多様化及び光学特性の高性能化に伴い、表面が球面以外の非球面等の種々の曲面(以下、「自由曲面」と言う。)を有する光学素子が用いられることが多くなってきている。例えば、非球面光学素子は、設計の自由度が高く、少ない組み合わせで高い光学特性が得られる利点を有する。
自由曲面を有する光学素子の製造方法としては、研削・研磨法、射出成形法、ガラスモールド成形法等の種々の方法があるが、平面、球面、円筒面等の単調な面形状を有する素子を成形した後、自由曲面形状を有する転写型を用いて部材を付加する複合法が提案されている。通常、部材は転写性の良い熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の樹脂で形成される。複合法は、製造工程が簡単であり、得られた光学素子は大部分がガラスで出来ているため熱及び湿度の影響が小さい等の利点を有することから、カメラレンズ等の高精度・高性能を安定して求められる光学系で用いられている。
一方、光学素子にはゴーストやフレアを防ぐための反射防止処理が施されており、反射防止処理としては光学素子の表面に反射防止膜を形成するのが一般的である。しかし、高性能化のためには膜の多層化をする必要があり、工程数、加工時間及びコストかかり、設計・製造が難しい上に、複合法で形成した光学素子に反射防止膜を施す場合、樹脂上に反射防止膜を形成するため、ガラス上への成膜と比べて成膜温度が低く、密着性が悪い。
近年、波長より小さい周期の微細な凹凸を表面に形成することにより、優れた反射防止効果が得られる反射防止構造が注目されている。しかし、自由曲面を有する光学素子に熱硬化性樹脂・光硬化性樹脂を用いて反射防止構造を付与すると、自由曲面を有する光学素子の形成とその表面への反射防止構造の付与という複雑な工程をそれぞれ別々に行う必要があるので、生産性が悪く、コストがかかる。
特開2006-53220号公報(特許文献1)は、アルミニウムの陽極酸化処理により成形面に微細周期凹凸部が形成されたガラス型に紫外線硬化樹脂を充填し、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることにより光学素子を製造する方法を開示している。しかし、自由曲面を有する光学素子の成形と微細な反射防止構造の形成とを同時に精度良く行うのは困難である上に、光学素子の材料が光硬化性樹脂に限定され、汎用性が低い。
特開2006-53220号公報
従って本発明の目的は、反射防止構造が形成された自由曲面を有する光学素子を短い工程で精度良く製造する方法及びそれにより得られる光学素子を提供することである。
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、一般的な面形状を有する基材に、光学素子に自由曲面を付与するための部材を形成する工程と、部材表面に反射防止構造を形成する工程とを一度で行なうことにより、反射防止構造が形成された自由曲面を有する光学素子を短い工程で精度良く得られることを発見し、本発明に想到した。
即ち、本発明の光学素子及びその製造方法は以下の特徴を有している。
(1) 基材の光学表面に反射防止構造が設けられた自由曲面を有する部材を形成して光学素子を製造する方法であって、巨視的には前記自由曲面の反転形状を有し、微視的には前記反射防止構造の反転形状を有する成形面を有する金型を用いて、前記部材の表面を前記自由曲面形状に成形すると同時に、前記部材の表面に前記反射防止構造を形成することを特徴とする方法。
(2) 上記(1)に記載の光学素子の製造方法において、前記反射防止構造は複数の微細凸部からなる二次元周期構造であるにことを特徴とする方法。
(3) 上記(2) に記載の光学素子の製造方法において、前記金型の成形面は前記二次元周期構造の反転形状の微細凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナからなることを特徴とする方法。
(4) 上記(2) 又は(3) に記載の光学素子の製造方法において、前記微細凸部の周期が50〜1000 nmであることを特徴とする方法。
(5) 上記(1)〜(4) のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記基材がガラスからなることを特徴とする方法。
(6) 上記(1)〜(5) のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記基材は平面、球面又は円筒面の表面形状を有することを特徴とする方法。
(7) 上記(1)〜(6) のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記基材はレンズであり、前記部材を前記レンズの光学表面の両面に形成することを特徴とする方法。
(8) 上記(1)〜(7) のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記部材が樹脂からなることを特徴とする方法。
(9) 上記(8) に記載の光学素子の製造方法において、前記部材が光硬化性樹脂からなることを特徴とする方法。
(10) 上記(8) に記載の光学素子の製造方法において、前記部材が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする方法。
(11) 上記(1)〜(10) のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記光学素子は非球面光学素子であることを特徴とする方法。
(12) 上記(1)〜(11) のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記光学素子がカメラレンズ、ピックアップレンズ又はfθレンズであることを特徴とする方法。
(13) 上記(1)〜(12) のいずれかに記載の光学素子の製造方法により得られた光学素子。
(14) 反射防止構造が設けられた自由曲面を有する光学素子を成形するため金型であって、巨視的には前記自由曲面の反転形状を有し、微視的には前記反射防止構造の反転形状を有する成形面を有することを特徴とする成形用金型。
(15) 上記(14) に記載の光学素子の成形用金型において、前記金型の成形面は前記二次元周期構造体の反転形状の微細凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナからなることを特徴とする成形用金型。
本発明によれば、カメラレンズ、ピックアップレンズ、fθレンズ等の自由曲面を有する光学素子を製造する方法において、平面、球面、円筒面等の一般的な面形状を有する基材に、自由曲面部材を成形するための成形面に反射防止構造の反転形状を有する金型を用いて、光学素子に自由曲面を付与するための部材の形成と反射防止構造の形成とを一度の工程で行っているので、反射防止構造が形成された自由曲面を有する光学素子を短い工程で精度良く形成することができる。
本発明の一実施例による光学素子を示す断面図である。 二次元周期構造体を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) は断面図である。 金型の製造方法を示す図である。 本発明の一実施例による光学素子の製造方法を示す図である。
[1] 光学素子
本発明の光学素子1は、図1に示すように、球面形状を有する基材2と基材2上に形成された巨視的に非球面形状を有する部材3とからなり、全体として巨視的に非球面状の表面を有する。同時に部材3の表面には、微視的に円柱状の微細凸部31aが二次元周期で配置された二次元周期構造体31が設けられている。微細凸部31aは、高さ方向に径がほぼ均一な円柱構造を有し、使用する光の波長以下の周期で配置されている。部材3は基材2の光学両面に設けても良い。本発明に用いる二次元周期構造体31は図1に示す物に限らず、反射防止効果を有するものであれば、円錐、円錐台、角錐等の先鋭状構造を有するものでも良い。
微細凸部31aを使用する光の波長以下の周期で二次元配置すると、二次元周期構造体31は、入射媒質の屈折率と部材3の屈折率との中間的な屈折率を有する反射防止膜として機能する。この屈折率を二次元周期構造体31の実効屈折率と呼ぶ。二次元周期構造体31の実効屈折率は、二次元周期構造体31における媒質と微細凸部31aとの体積比(微細凸部31aの体積占有率f)に相関する。また微細凸部31aが円柱状である場合は高さ方向の体積変化は無いものと見なせるため、体積占有率fは部材3の面方向における微細凸部31aの断面の面積占有率に比例する。微細凸部31aが完全に均一な二次元周期性を持たず多少のランダム性を持っていたとしても、微細凸部31aの周期や径のばらつきが小さければ、均一な二次元周期性を有しているとみなすことができ、周期構造体31の実効屈折率も部材3の面方向に均一であるとみなせる。このときの微細凸部31aの体積占有率は、微細凸部31aが図2(a) に示すように六方細密に配置していると想定し、微細凸部31aの平均的な周期及び径をそれぞれ平均周期及び平均太さとして求めることができる。
すなわち、微細凸部31aの体積占有率fは、図2(b) に示すように、微細凸部31aの平均太さをD(nm)とし、微細凸部31aの平均周期をp(nm)としたとき、下記式(1):
f=πD2/(2×√3×p2) ・・・(1)
から求められる。微細凸部31aの平均太さDと平均周期pとの比は
0.1〜1.0であるのが好ましい。
二次元周期構造体31の実効屈折率nは、光学素子1の部材3の屈折率をnmとし、入射媒質の屈折率をn0としたとき、下記式(2):
n=fnm+(1―f)n0 ・・・(2)
から求めることができる。また二乗平均をとって、下記式(3):
n=(fnm 2+(1―f)n0 21/2 ・・・(3)
から求めてもよい。
二次元周期構造体31の実効屈折率nは、下記式(4):
n=(n0nm)1/2 ・・・(4)
を満たすのが好ましい。二次元周期構造体31の実効屈折率nが式(4) を満たすとき、二次元周期構造体31と入射媒質との界面における反射光と二次元周期構造体31と基材部11との界面における反射光との干渉により、光学素子1の表面における入射光の反射を最小にできる。材料や製造上の制約によりこの条件が満たせない場合は、必ずしも条件を満たす必要は無いが、式(4)の条件に近いほうが反射防止効果は高く、式(4)の条件に近づけることが望ましい。微細凸部31aの平均周期pは、使用する光の波長に応じて適宜設定可能であるが、50〜1000 nmであるのが好ましく、100〜300 nmであるのがより好ましい。また微細凸部31aの平均周期pと使用する光の波長との比は0.1〜1.0であるのが好ましい。
微細凸部31aの平均高さh(nm)は、実質的に光学素子1の基材部11の表面に形成された反射防止膜の厚さとみなすことができ、使用する光の波長をλ(nm)とすると、下記式(5):
h=λ/4n ・・・(5)
を満たすのが好ましい。また使用する光の波長がλ1(nm)からλ2(nm)の範囲内であるとき、下記式(6):
λ1/4≦nh≦λ2/4 ・・・(6)
を満たすのが好ましい。例えば、光学素子が使用する光が可視光(波長はおよそ400〜700nm)である場合、100nm≦nh≦175nmを満たすのが好ましい。
微細凸部31aの周期、高さ及び太さを制御することにより、その構造体の実効屈折率及び光学厚さを制御することができるため、従来の反射防止膜と比べて自由度があり、入射媒質及び基材の種類にかかわらず良好な反射防止特性が得られる。従来の錐状微細構造と異なり、構造体の屈折率境界における光波の反射及びそれらの干渉現象を積極的に利用することにより、簡単な構造で光学素子1の反射率を抑えることができる。
光学素子1の分光反射率の極小値(ピーク反射率)を示す波長の少なくとも一つを使用する光の波長と一致させるのが好ましい。それにより反射防止特性が向上する。ピーク反射率を示す波長の少なくとも一つは、波長405 nm,660 nm又は780 nm付近であるのが好ましい。波長405 nmはBD、波長660 nmはDVD、波長780 nmはCDの光ピックアップ光学系で使用される光の波長に相当し、BD、DVD及びCDに使用される光学素子の表面にこのような構造体を形成することにより、非常に良好な反射防止特性が得られる。
基材2の形状は図1のものに限定されず、平面、球面、円筒面等の平面又は曲面の表面形状を有するものであるのが好ましい。基材2の材料は、光学素子に用いるものであれば特に限定されず、無機物、無機化合物でも有機ポリマーでもよい。例えばBK7、LASF016等の光学ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英、青板ガラス、白板ガラス、PMMA樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。中でも熱及び湿度による形状及び特性が安定しているガラスを用いるのが特に好ましい。
部材3の形状は図1のものに限定されず、光学素子1に種々の形状を付与するものを用いることができるが、非球面形状を付与するものであるのが好ましい。
部材3の材料は、光学系に使用可能なものであれば特に限定されないが、樹脂であるのが好ましい。二次元周期構造体31を樹脂で形成することにより、適度な硬さと弾力性を有することができる。具体的には、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。特に流動性及び形成性に優れた光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂であるのが好ましく、中でも、紫外線硬化性樹脂が特に好ましい。
光学素子1はカメラレンズ、ピックアップレンズ、fθレンズ等の非球面レンズとして好適であり、非球面部分に樹脂を用いているもののレンズの大部分がガラスから構成されているため、一般的な樹脂性レンズと比較して熱及び湿度による影響が非常に小さく、通常のガラスレンズと同様にカメラレンズ等の高精度・高性能な光学系で好適に用いることができる。図1に示す光学素子1は表面が非球面のものであるが、本発明の光学素子はこれに限らず、用途に応じて種々の自由曲面を有するものでも良い。また部材3を基材1の表面の一部に形成しても良い。平面又は曲面の表面形状を有する基材2に種々の形状の部材3を組み合わせることにより、光学素子1に種々の形状を付与することができる。
[2]成形用金型
本発明の成形用金型を図3(b) に示す。図3(b) に示す金型40の成形面は、巨視的には部材3の表面の反転形状を有し、微視的には部材3の周期構造体31の反転形状からなる細孔構造を有する。金型40の成形面は二次元周期構造体31の反転形状の微細凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナからなるのが好ましい。金型40の成形面を微細凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナで形成することにより、ばらつきの小さい所望のサイズの周期構造体31が得られる。
本発明の成形用金型の製造方法を図3を用いて以下説明する。図3(a) に示すように、部材3の表面のほぼ反転形状を有する基板41の表面に真空蒸着法、スパッタリング法等により高純度のアルミ膜42を形成する。基板41の材料は、金型として使用可能なものであれば、特に限定されないが、鋼やステンレス、ニッケル、アルミ合金等の金属材料や、石英、ガラス等が好ましい。アルミ膜42の材料は、陽極酸化処理が可能なものであれば特に限定されないが、不純物を含むと陽極酸化処理時にポーラス構造に大きな欠陥が生じることから、できるだけ純度の高いアルミニウムを用いるのが好ましい。具体的には、純度99%以上のものを用いるのが好ましい。
図3(b) に示すように、アルミ膜42に陽極酸化処理を施すことにより、二次元周期の細孔構造を有するポーラスアルミナ層43を形成する。陽極酸化処理に用いる電解質としてはシュウ酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。得られたポーラスアルミナ層43が形成された基板41を金型40とする。
ポーラスアルミナ層43の細孔の深さ及び周期は陽極酸化処理時の印加電圧、電流、処理時間、酸性電解液の酸の種類、濃度、温度、処理するアルミの表面積といった製造条件に相関する。そのため、これらの製造条件を調整することにより、ポーラスアルミナ層43の細孔の深さ及び周期を制御することができる。例えば、陽極酸化時に印加する電圧を高くすると周期が大きくなり、陽極酸化の処理時間を長くすると細孔の深さが大きくなる。陽極酸化処理後のポーラスアルミナ層の細孔径は小さいため、所望の細孔径となるようにポーラスアルミナ層43の細孔径を調節する処理を行っても良い。例えば、リン酸等の酸に浸漬することにより細孔径を大きくすることができる。このようにポーラスアルミナ層43の細孔の深さ、径及び周期を制御することにより、所望の実効屈折率及び高さを有する反射防止構造31が得られる。
陽極酸化処理によりポーラスアルミナを一旦形成し、クロム酸及びリン酸の混酸等の剥離液に浸漬してポーラスアルミナを剥離した後、再び陽極酸化処理を行ってポーラスアルミナ層43を形成しても良い。このような前処理を行うことにより、ポーラスアルミナ層43の表面状態及び細孔の周期性を整えることができる。
[3] 光学素子の製造方法
基材2に部材3を形成する方法を図4を参照して以下説明する。まず金型40を胴型50にセットする(工程1)。金型40のポーラスアルミナ層43が形成された面上に部材3の材料を供給し(工程2)、基材2を部材3の形成面を下にして胴型50に挿入し、金型40に部材材料を接触させて成形を行う(工程3)。部材3の成形後、金型40から離型させることにより、光学素子1が得られる(工程4及び5)。部材3の成形方法は、部材3の材料に応じて適宜選択可能であるが、部材3が熱硬化性樹脂である場合は加熱処理し、部材3が光硬化性樹脂である場合は光照射を行う。金型40と部材3との離型性を良くするために、フッ素系材料等からなる金型離型剤を金型40の表面に塗布しても良い。
本発明の光学素子の製造方法は、これに限らず、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の方法を用いることができる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
焼入れ鋼にNi無電界層を形成し、所望の非球面形状の基材2と近い曲率半径を有するようにNi無電界層を切削・研磨による非球面加工を施すことにより、所望の非球面形状を有する基板41を作製した。基板41に真空蒸着法により高純度アルミを蒸着し約500nmのアルミ42膜を形成した。シュウ酸に浸漬し、直流電源の陽極に接続して約40Vの電圧を印加することによって、陽極酸化処理によりポーラスアルミナ層を形成した。次にクロム酸とリン酸の混酸に浸漬し、形成されたポーラスアルミナを一旦剥離した後、同じ条件で再び陽極酸化処理を行って再度ポーラスアルミナ層を形成した。その後、リン酸に浸漬する処理を行って表面に形成した細孔の径を拡大した。これらの処理により、周期約100 nm、深さ約100 nm、幅約70 nmの細孔を有するポーラスアルミナ層43を形成し、反射防止構造を転写するための構造を有する金型40を製造した。
金型40と樹脂との離型性を高めるため、フッ素系材料からなる金型離型剤(DURASURF HD-1101, 株式会社ハーベス製)を金型40の表面に付与した。基材2としては
BK7からなり、所望の非球面形状に近い曲率を持つ球面ガラスを用いた。金型40を胴型50にセットし、金型40の表面に基材2の材料であるBK7と同等の屈折率を有する、部材3の材料である紫外線硬化型樹脂(PAK‐01/東洋合成工業株式会社)を適量塗布し、基材2を紫外線硬化型樹脂と密着後、所望のレンズ形状が得られるように金型40の位置を調整後、固定し、ガラス側から紫外線を照射し樹脂を十分硬化した後、離型し、非球面複合層を有するレンズ(光学素子)1を製造した。
レンズ1は、所望の非球面形状を示すとともに、その表面に、高さ約100nm、幅約70nmの円柱状の微細凸部が周期約100nmで二次元に配置された二次元周期構造体(反射防止構造)が形成されていた。レンズ1の波長500 nmの入射光の反射率は0.1%だった。
比較例1
アルミ膜の成膜および陽極酸化処理によるポーラスアルミナ層の形成は行わない非球面金型41を用いて、実施例1と同様に、球面ガラスからなる基材2に非球面部分である部材3を成形し、二次元周期構造体を形成しない以外は実施例1と同じレンズ1を製造した。波長500 nmの入射光の反射率を測定したところ、4.2%だった。
1・・・光学素子
2・・・基材
3・・・部材
31・・・二次元周期構造体
31a・・・微細凸部
40・・・金型
41・・・基板
42・・・アルミ膜
43・・・ポーラスアルミナ層
50・・・胴型

Claims (15)

  1. 基材の光学表面に反射防止構造が設けられた自由曲面を有する部材を形成して光学素子を製造する方法であって、巨視的には前記自由曲面の反転形状を有し、微視的には前記反射防止構造の反転形状を有する成形面を有する金型を用いて、前記部材の表面を前記自由曲面形状に成形すると同時に、前記部材の表面に前記反射防止構造を形成することを特徴とする方法。
  2. 請求項1に記載の光学素子の製造方法において、前記反射防止構造は複数の微細凸部からなる二次元周期構造であるにことを特徴とする方法。
  3. 請求項2に記載の光学素子の製造方法において、前記金型の成形面は前記二次元周期構造の反転形状の微細凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナからなることを特徴とする方法。
  4. 請求項2又は3に記載の光学素子の製造方法において、前記微細凸部の周期が50〜1000 nmであることを特徴とする方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記基材がガラスからなることを特徴とする方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記基材は平面、球面又は円筒面の表面形状を有することを特徴とする方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記基材はレンズであり、前記部材を前記レンズの光学表面の両面に形成することを特徴とする方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記部材が樹脂からなることを特徴とする方法。
  9. 請求項8に記載の光学素子の製造方法において、前記部材が光硬化性樹脂からなることを特徴とする方法。
  10. 請求項8に記載の光学素子の製造方法において、前記部材が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記光学素子は非球面光学素子であることを特徴とする方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の光学素子の製造方法において、前記光学素子がカメラレンズ、ピックアップレンズ又はfθレンズであることを特徴とする方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の光学素子の製造方法により得られた光学素子。
  14. 反射防止構造が設けられた自由曲面を有する光学素子を成形するため金型であって、巨視的には前記自由曲面の反転形状を有し、微視的には前記反射防止構造の反転形状を有する成形面を有することを特徴とする成形用金型。
  15. 請求項14に記載の光学素子の成形用金型において、前記金型の成形面は前記二次元周期構造体の反転形状の微細凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナからなることを特徴とする成形用金型。
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