本発明の詳細な説明を以下に与える。幾つかの実施例について説明するが、本発明はいずれか一つの実施例に制限されるものではなく、その代わりに、多数の代替例、修正例、及び均等例のみならす異なる実施例からの特徴の結合を包含するものであることを理解すべきである。更に、本発明の完全なる理解を与えるために、以下の説明においては多数の特定の詳細について記載するが、幾つかの実施例はこれらの詳細の全て又は幾つか無しで実施することが可能なものである。更に、説明の便宜上、関連技術において既知である或る技術的事項については本発明を不必要にぼかすことを回避するために詳細に説明していない。「レチクル」及び「マスク」という用語は、ここでは、交換可能に使用されており且つ他のパターン形成した物体を作成するためのマスターとして使用されるパターン形成した物体のことを意味している。
光学的フィールドは複素振幅で記述することが可能である。複素振幅は、カーテシアンにおいて又は極座標系において便利に表示することが可能である。それは、カーテシアン座標系においては実部と虚部とによって表され、且つ極座標系においては振幅と位相とによって表される。従って、「複素振幅」、「実部及び虚部」、「振幅及び位相」という用語は、ここにおいて使用される場合には互いに均等であり、且つこれらの3つの用語は均等的に取り扱われ且つ互いに交換することが可能である。
又、「光」という単語は、以下に説明するように、可能な波長の比較的広い範囲を持った電磁放射に対する省略形として使用されている。更に、反射の鏡面成分(specular component)は実際上「実質的に鏡面反射的(substantially specular)」であり、それは鏡面反射された光を包含するのみならず比較的少量の散乱光をも包含することを意味している。
I.欠陥信号式
第1原理から開始して、狭いテンポラル周波数帯域幅を具備する光線がウエハなどのサンプルに当たる場合に、その光の殆どは吸収されるか又は鏡面反射(即ち、分散されること無しに)され、且つ該光の小さな部分が該ウエハ内の回路パターン及び欠陥の両方によって散乱(即ち分散)される。該光線は幾つかの電界成分に分解される場合がある。該光線の各電界成分は以下の如くに定義される。
b≡|b|exp(iφb)
鏡面成分の複素振幅であり、尚φbは該信号式の一般性を失うこと無しにゼロに設定することが可能な鏡面成分の位相である。
a≡|a|exp(i(φa+φb))≡(ax+iay)exp(iφb)
その極性がbの極性と同じである回路パターンによって散乱された光線の部分の複素振幅であり、且つφaはbの位相と相対的なaの位相であり、且つax及びayは、夫々、実部軸がbの方向に向いている場合の、aの実部成分及び虚部成分である。
s≡|s|exp(i(φs+φb))≡(sx+isy)exp(iφb)
その極性が、信号とも呼称される、bの極性と同じである欠陥によって散乱された光線の部分の複素振幅であり、且つφsはbの位相と相対的なsの位相であり、且つsx及びsyは、夫々、実部軸がbの方向に向いている場合の、sの実部成分及び虚部成分である。
a+s=|a|exp(i(φa+φb))+|s|exp(i(φs+φb))
=((ax+sx)+i(ay+sy))exp(iφb)
qa≡|qa|exp(i(φqa+φb))
その極性がbの極性と直交する回路パターンによって散乱された光線の部分の複素振幅である。
qs≡|qs|exp(i(φqs+φb))
その極性がbの極性と直交する欠陥によって散乱された光線の部分の複素振幅である。
g≡|g|exp(i(φg+φb))
任意の存在する迷光の複素振幅である。迷光は不所望なイメージを形成することの無い光であり、それはレンズ表面及び機械的部品からの不所望な反射によって発生される。
イメージセンサーが検知する光強度は以下の如くに表すことが可能である。注意すべきことであるが、イメージングにおいて、狭いテンポラルな周波数帯域幅の光は同一の強度を有する単一のテンポラルな周波数の光のように取り扱うことが可能である。このことは直感的に正しいことばかりではなく、数学的に容易に立証することも可能である。
画像面において検知器要素によって検知される光強度Iは、鏡面成分と、散乱成分と、迷光成分に対する電界振幅の平方の和であり、次式によって与えられる。
尚、b*、a*及びs*は、夫々、b、a及びsの複素共役である。
鏡面成分bは式(1a)内において分離されているが、その理由は、それは瞳面における他の画像強度成分から物理的に分離することが可能だからである。注意すべきことであるが、全ての複素振幅はサンプル上の位置の関数である。更に、異なる成分間の相対的位相のみが重要である。従って、鏡面成分φbの絶対的位相は何ら役割を果たすものではなく且つ一般性を失うこと無しにゼロに設定することが可能である。又注意すべきことであるが、φbがゼロに設定されると、鏡面成分の複素振幅はここで使用される複素面座標系の実部軸の方向を定義する。
鏡面成分に関する迷光の光路長差は、照明光のコヒーレンス長よりも一層大きいものと仮定される。従って、式(1)において、その相対的な位相を考慮すること無しに、迷光はばらばらに加算される。
式(1c)は、画像が欠陥信号sのみならず多くのその他の不所望の成分を有していることを示している。欠陥を見つけ出すために、欠陥信号ではない成分は可能な限り除去することが必要である。このことは、例えば、現在のダイの画像から隣のダイの画像のダイ対ダイ減算によって通常行われる。注意すべきことであるが、一般的に、欠陥信号を正しく識別するためには、例えば、[(現在のダイの画像)−(左側のダイの画像)]及び[(現在のダイの画像)−(右側のダイの画像)]のような少なくとも二つのダイ対ダイ減算が必要とされる。両方の差分画像内に表れる欠陥は現在のダイに属している。該二つの差分画像の内の一つのみに表れる欠陥は隣のダイに属している。従って、二つの差分画像を比較することによって、どの欠陥がどのダイに属しているかを明確に告げることが可能である。メモリエリアインスペクションの場合に、ウエハパターンからノイズを最小化させるために、ダイ対ダイ画像減算ではなくセル対セル画像減算が実施される。この方法は効果的に動作する。何故ならば、2個の異なるダイ内の同じ位置に欠陥を有する可能性は無視可能な程度に小さいからである。ダイ対ダイ減算後の画像強度差は以下の如くに表すことが可能である。
式(2c)は一般的な欠陥信号式である。注意すべきことであるが、ここでの欠陥の定義は、関心の或る欠陥のみならず殆ど又はまったく関心の無い欠陥をも包含している。殆ど関心の無い欠陥の良い例はサンプルパターンノイズである。サンプルパターンノイズは、実際には、ノイズではなく、この用語がここで使用されているように欠陥である。即ち、欠陥信号sは、サンプルパターンノイズと、興味の或る欠陥信号とを包含している。サンプルパターンノイズに関する詳細な説明は後述する。式(2c)は、欠陥がある場合及び無い場合の2つの信号の比較は異なる信号成分の寄せ集めである、ことを示している。最初の4つの項は、ダークフィールド信号を構成している。何故ならば、それらは鏡面成分をフィルタ除去した場合であっても存在するからである(ここでは、それらは時折「ダークフィールド項」と呼称される)。ダークフィールドシステムは該信号のこの部分を検知する。注意すべきことであるが、生のダークフィールド信号、即ち式(1b)中の最初の4つの項は、常に正である。しかし、このことは関心の或る部分ではない。むしろ、欠陥を見つけ出すために使用されるのは差信号である式(2c)である。欠陥信号のダークフィールド部分、即ち式(2c)内の最初の4つの項は、正の項と負の項の両方の結合であり、それらの項の大きさは欠陥パターンのみならず欠陥周りの回路パターンにも依存する。従って、欠陥信号のダークフィールド部分は、欠陥周りの回路パターンに依存して、正であるか、負であるか、又はゼロのいずれかとなることが可能である。このことは、ダークフィールドシステムは一貫性をもって欠陥を検知することができないことを意味している。
更に、欠陥寸法が波長よりもかなり一層小さくなると、ダークフィールド信号の大きさは、ノイズによって容易に飲み込まれることが可能なほどに小さくなる。信号式内の最後の項は、干渉項である(ここでは、それは時折「干渉部分」と呼称される)。即ち、この最後の項は、欠陥信号振幅と鏡面成分との間の干渉から発生している。該干渉項の符号及び大きさは、鏡面成分の強度のみならず、欠陥信号振幅と鏡面成分との間の相対的位相にも依存する。欠陥信号と鏡面成分との間の位相差が±90゜である場合には、欠陥信号は検知されない場合がある。
現在のブライトフィールドシステムは、欠陥信号振幅と鏡面成分との間の相対的位相を制御すること無しに、ダークフィールド項と干渉項の両方を同時的に検知する。この場合に、欠陥信号は低いことがあるばかりか、ダークフィールド項及び干渉項は、欠陥自身及び周りの回路パターンの性質に依存して、互いに強めるか又は相殺する場合がある。このことは、現在のブライトフィールドシステムは一貫性のある欠陥検知性能を提供することができないことを意味している。
従って、現在のダークフィールド及びブライトフィールドシステムの両方は厳しく不利な立場に立たされている。更なる信号解析は、ブライトフィールドシステムは幾つかのタイプの欠陥に対して致命的に盲目的である場合があることを示している。このことは、高感度モードを説明する場合に後述する。
ここで説明する解決法は少なくとも理論的には信号式(2c)に関連して説明することが可能であるが、理論的な説明はこの特許明細書において開示される実施例の動作の実際的な側面を制限すべきものではない理想的な環境に関するものであることを理解すべきである。該信号式は、一貫性のある性能のためには、欠陥信号振幅と鏡面成分との間の相対的位相を制御することの重要性を示している。相対的位相を制御することにより、干渉項の符号及び大きさの両方を制御することが可能である。例えば、相対的位相をゼロに設定すると、干渉項の大きさは正の最大を取る。相対的位相を180°に設定すると、干渉項の大きさは最小(又は負の最大)を取る。従って、鏡面成分と散乱成分の間の相対的位相を制御することは、干渉項の大きさを最大化させるために使用することが可能であり、且つその符号を変化させるために使用することが可能である。理解すべきことであるが、この特許明細書において最大化に対する言及は、或るパラメータを望ましくは増加させることを意味しているが、必ずしもその実際的な最大のことではなく、且つ最小化に対する言及は、或るパラメータを望ましくは減少させることを意味しているが、必ずしもその実際的な最小のことではない。
相対的位相シフトを変えることにより符号を変化させる能力のために、干渉項の符号とダークフィールド項の符号とを常にマッチ即ち一致させることが可能である。干渉項の符号とダークフィールド項の符号が同じである場合には、それらは互いに強めあう。欠陥信号振幅と鏡面成分との間の相対的位相の制御を介して欠陥信号を最大化させることにより一貫性の或るシステム性能が得られる。式(2c)が示している別の重要な特徴は、各サンプルスキャンに対して異なる相対的位相値でサンプルを複数回スキャニングすることによって干渉項の振幅と位相の両方を決定することの可能性である。
干渉項の振幅と位相の両方の決定は、高い欠陥検知感度のみならず、一層より正確な欠陥分類をも容易化させる。例えば、欠陥寸法は、振幅情報から推測することが可能であり、且つ欠陥タイプは位相情報から決定することが可能である。注意すべきことであるが、欠陥の光学的信号振幅は欠陥の物理的寸法を直接的に与えるものではない。そうではなく、それは欠陥の「光学的寸法」を与えるに過ぎない。物理的寸法と光学的寸法との間の関係は複雑なものである場合があり、光学的信号振幅のみから正確に欠陥の物理的寸法を推測することを困難なものとさせる。しかしながら、実験又はシミュレーションを介して物理的寸法と光学的寸法との間の一般的な相関を確立することが可能である。次いで、欠陥の物理的寸法をその相関から近似的に推測することが可能である。蓋然性のある欠陥組成データ、レチクルパターンデータ等のその他のデータが付加的に使用される場合には、欠陥のより一層正確な特性付けが可能である。
欠陥のより一層正確な特性付けは、修復を必要とする蓋然性があるか否かについての一層正確な判別を行うことを可能とする。この可能性は、キャッチオールモード(Catch-all Mode)の後の部分において検討する。正確な欠陥の分類は、通常、信頼性のある欠陥の検知と同じく重要である。何故ならば、それは、半導体製造におけるより高価なプロセスの内の一つである欠陥レビュープロセスにおける時間を節約することが可能であるからである。
該相対的位相は、鏡面成分の位相か又は散乱成分の位相のいずれかを制御することによって制御することが可能である。しかしながら、それは、通常、鏡面成分の位相を制御することが一層容易である。何故ならば、鏡面成分のエテンデュー(etendue)は散乱成分のエテンデューよりもかなり一層小さいからである。散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相の制御は、ここに開示する干渉欠陥検知及び分類技術の重要な特徴の内の一つである。その重要性は後に例を挙げて示す。
該信号式は別の重要な事実を表しており、それは、干渉項、即ち2|b||s|cos(φs)が、実際には、鏡面成分bによって増幅されている欠陥信号であるということである。即ち、たとえオリジナルの欠陥信号が小さいものであったとしても、それは大きな量だけ鏡面成分によって増幅させることが可能である。何故ならば、鏡面成分は、通常、非常に強いからである。更に、この増幅プロセスは、ノイズレスとなる。この点については、Philip C. D. Hobbs、「電気光学システムの構築;全部動作するようにさせる(Building Electro-Optical Systems; Making it all work)」、ジョンワイリーアンドサンズ、インコーポレイテッド、2000年、30〜32頁及び123頁を参照するとよく、尚、これを引用によりここに取り込む。この信号増幅プロセスは非常に理想的なものであって、それは信号対雑音比を劣化させるものではなくむしろそれを維持する。この種類の増幅は、「ノイズレスパラメトリック増幅(noiseless parametric amplification)」と呼ばれ、尚|b|は増幅パラメータである。このノイズレス増幅に対する基本的な理論的説明は以下の如くである。干渉項の大きさ及びホトンノイズの両方が|b|に比例する。従って、信号対雑音比、即ち該2つの量の間の比は、|b|とは独立的である。干渉項における係数「2」は、互いにコヒーレントに動作する実際には2つの信号増幅器が存在するという事実からのものである。一方の増幅器はbs*によって表され、且つ他方の増幅器はb*sによって表される。それらは相互にコヒーレントであるが、欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相に依存して、相互に建設的であるか又は破壊的であるかのいずれかとなる場合がある。
欠陥信号の振幅を最大とさせるために、該2個の増幅器は、欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相を制御することにより相互に建設的な態様で動作する形態とさせることが必要である。相互に建設的であることは、相対的位相が0°又は180°のいずれかに設定された場合に最大となる。相対的位相が±90°である場合には完全なる相互に破壊的なものとなる。ノイズの場合には、話は別である。式(1b)から分かるように、該式中における|b|2によって表されるただ1個のノイズ増幅器が存在しており且つそれが主要なホトンノイズ源である。このことは、鏡面成分は信号ノイズよりも2倍該信号を増幅することが可能であることを意味している。
その結果、鏡面成分は、イメージセンサーのダイナミックレンジが十分に大きい場合には、信号自身に本来存在する内在的な信号対雑音比の最大で2倍まで該信号の信号対雑音比を増加させることが可能である。係数「2」に対して払われる犠牲は、増幅を最大とさせるために散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相が制御されねばならないということである。従って、信号対雑音比を増加させることは位相制御を必要とする。位相制御は、該信号に対して更なる情報を付加するために相対的位相についての知識を必要とする。従って、信号対雑音比における増加は、情報保存法則を犯すものではない。
該内在的な信号対雑音比は、信号と信号雑音との間の比であり、該雑音は該信号自身に包含されている。信号雑音は内在的雑音とも呼称される。検知器のダイナミックレンジは、該検知器の最大信号範囲と通常該検知器の雑音レベルであると仮定される最小検知可能信号との間の比である。ダイナミックレンジは、通常、該検知器が与えることが可能なグレイレベルの総数として定義され、即ち最大信号範囲を雑音レベルで割り算したものである。
光電子増倍管内部のダイノード(dynode)等の最もクリーンな電子増幅器をも含めてどの電子増幅器も信号対雑音比を増加させることが可能なものではない。それらは信号対雑音比を減少させるに過ぎない。鏡面成分によるノイズレス増幅は、実際に信号対雑音比を増加させることが可能であるという点において特別である。それはこれまで知られているものの中で最良の増幅器である。それは、小さな欠陥からの信号などの弱い信号に対して最も適切な増幅器であり、且つそれは性能において全ての電子増幅器に勝るものである。
ここに開示されるシステム及び方法は、小さな欠陥を信頼性を持って検知するために、鏡面成分によるノイズレス増幅の力を完全に利用するものである。ここにおける干渉検知は、2個の干渉ビームが同じテンポラル(temporal)周波数を持っているホモダイン検知の一つのバージョンである。
注意すべきことであるが、鏡面成分は両刃の剣である。それがその位相を適切に制御することにより増幅器として使用される場合には、その利点は巨大なものとなる場合がある。しかしながら、それが使用されない場合には、それは中立状態には止まらずにそれが主要なホトンノイズ源となる場合があるという点において有害なものとなる。この付加的なノイズは、或る場合においては、ブライトフィールドインスペクションシステムはダークフィールドインスペクションシステムよりも一層悪い性能となる場合があることを示している。これは、既存のブライトフィールドシステムは一貫性をもって動作するものではない理由の一つである。ここに記載する主要な思想の内の一つは、鏡面成分を最も有益的な態様で利用していることである。
以下の表に示した例は、ノイズレス増幅のパワーを示している。例は将来におけるハイエンド欠陥検知の実世界を表すべく選択されている。これらの例において、鏡面成分と散乱成分との間の相対的位相は、ノイズレス増幅を最大とさせるために0°又は180°に設定されている。科学グレードCCD,TDICCD(時間遅延及び積分CCD)などの典型的なハイエンドイメージセンサーの単一のピクセルにおける欠陥信号レベルを検討する。検知器ノイズは、加算的であり且つ信号レベルとは独立的であると仮定される。光強度は、光ビーム中のホトンではなく、検知器内の光によって発生された電子の単位で表される。何故ならば、究極的に関心があることは検知器において発生される電子数だからである。
1番目の表に示されている例において、検知信号は検知器雑音(ノイズ)と比較して非常に弱いが、内在的雑音と比較して未だにかなり強いものである。以下の1番目の表は、従来の欠陥検知システムに対して検知不可能な程度に弱い欠陥信号がどのようにして、強い鏡面成分及び大きなイメージセンサーダイナミックレンジによって与えられる大型でノイズレスの増幅を介して容易に検知可能な信号となることが可能であるかを示している。この例においては、信号対雑音比は、ノイズレス増幅プロセスによって、0.25から12.0へ増加されている。
以下の2番目の表は、強い鏡面成分及びイメージセンサーの大きなダイナミックレンジによって与えられる大きなノイズレス増幅を介して、どのようにして小さな欠陥からの極めて弱い信号でさえも検知可能な信号となることが可能であるかを示している。注意すべきことであるが、この場合には、該信号はその内在的な雑音との比較でさえも小さいものである。しかしながら、その信号対雑音比は、ノイズレス増幅によって、0.005からかなりの大きさの1.69へ増加している。それは、単一ホトン信号であっても比較的信頼性をもって検知することの可能性を示している。
両方の場合において、増幅された信号の信号対雑音比は、信号自身の内在的な信号対雑音比よりも一層大きい。これは、本発明者の知る限り以前に認識されておらず又予測されていなかったことであり、ここに開示する技術の驚くべき力の内の一つである。該信号対雑音比は、未だに、該信号の制限された増幅に起因する内在的な信号対雑音比の2倍未満である。これらの表は、将来において、小さな又は微小な欠陥の検知のために鏡面成分による信号のノイズレス増幅の重要性を示している。ノイズレス増幅は、該信号の内在的な信号対雑音比が妥当な程度に高いものである限り、雑音性のイメージセンサーであっても非常に弱い欠陥信号を信頼性をもって検知することを可能とする。欠陥信号のノイズレス増幅無しでこのように小さな欠陥を検知することはまことに希望の無いものとなる。
実世界において、特に、高処理能力欠陥検知などの高速適用例においては、欠陥信号が2番目の表に示した信号例の程度に弱いものである場合には、該信号の大量のノイズレス増幅でもってしてもその欠陥を見つけ出すことは容易でない場合がある。注意すべきことであるが、高速適用例においては、読み出しノイズ(雑音)がしばしば主要なノイズ成分となる。しかしながら、ブライトフィールド又はダークフィールド技術等の既存の技術を上回るここに開示されるシステム及び方法の相対的な利点は維持される。両方の例において、ノイズレス増幅は、大きな量だけ信号対雑音比を増加させている。基本的に、大きなノイズレス増幅は、検知器ノイズを問題のないものとさせる。内在的な信号対雑音比のみが問題である。内在的な信号対雑音比は、信号と、該信号自身に含まれる雑音である信号雑音との間の比である。鏡面成分による大量のノイズレス信号増幅は低い反射率を持ったサンプルでさえも達成することが可能であることを、「ダークフィールドモードの限界」についての後のセクションにおいて例を介して示すこととする。
信号増幅において、第1段増幅器の品質が最も重要である。鏡面成分は、ノイズレス第1段信号増幅の可能性を提供する。ここに開示するシステム及び方法は、鏡面成分の振幅を制御することにより、且つ欠陥信号振幅と鏡面成分との間の相対的位相を制御することにより、このことを利用することが可能である。該信号のこのノイズレス増幅を実現することにより、高い信号対雑音比を、たとえオリジナルの信号が弱い場合であっても、ここに開示した技術で、達成することが可能である。高い信号対雑音比とは、欠陥検知においての高い感度及び低い誤り検知率のことを意味している。鏡面成分を使用した欠陥信号のノイズレス増幅は、ここに開示する干渉欠陥検知及び分類技術の重要な特徴の内の一つである。一般的に、ノイズレス増幅が大きければ大きいほど、信号対雑音比は一層良好である。
高いノイズレス増幅は、強い鏡面成分から利点を得る。従って、減衰されていない強い鏡面成分がここでは通常望ましいものである。これは、従来の顕微鏡とは反対のことであり、従来の顕微鏡においては、生の画像のコントラストを向上させるために、鏡面成分は阻止されるか又は厳しく減衰されるものである。ここに開示するシステム及び方法においては、鏡面成分は、イメージセンサーのダイナミックレンジがその適用例に対して制限されすぎている場合に、減衰すべきである。
位相制御器は不所望の欠陥信号のデアンプリフィケーション(deamplification)即ち減衰のために使用することも可能である。良い例はウエハパターンノイズであり、それは実際にはノイズ(雑音)ではなく不所望の欠陥信号である。殆どの欠陥検知適用例においては、ウエハパターンノイズを抑圧することが望ましい。ウエハパターンノイズの抑圧が関心の或る欠陥信号を増幅することよりも一層重要である場合には、位相制御器は、関心の或る欠陥信号を最大化させるのではなくウエハパターンノイズを最小化すべく設定することが可能である。パターンノイズに関する一層具体的な説明については後述する。「サンプルパターンノイズ」、「ウエハパターンノイズ」、「パターンノイズ」、「サンプルノイズ」及び「ウエハノイズ」等の用語は、同一の種類のノイズのことを意味しており、ここでは交換可能に使用されている。
信号式を検査することにより表れる別の重要な事実は、干渉項の空間的周波数帯域幅はダークフィールド項のものとは異なることである。干渉項の空間的周波数帯域幅は、共通光路形態におけるダークフィールド項のものよりも一層小さい。(例えば、図40を参照)。より不正確であるがより直感的に言えば、干渉項により形成される欠陥画像は、ダークフィールド項により形成される欠陥画像よりも空間的に一層幅広である。このことは、干渉項の周波数帯域幅は一層狭いものであることを暗示している。このことは有益的である場合がある。何故ならば、それは一層高い処理能力に通じるからである。一層小さな帯域幅は、サンプル画像の一層粗いサンプリングを行うことを可能とし、そのことは、同じ寸法のイメージセンサーでのイメージングシステムに対して一層大きな視野とすることを可能とする。一層高い処理能力は、通常、一層大きな視野で達成することが可能である。イメージングシステムの開口数が固定されている限り、ダークフィールド項の帯域幅は固定されており、それは鏡面成分の光線角度に依存するものではない。しかしながら、干渉項の帯域幅は、イメージングシステムの開口数のみならず、鏡面成分の光線角度にも依存する。
干渉項の空間的周波数帯域幅は、鏡面成分の光線角度を最小とさせることにより最小とさせることが可能である。鏡面成分の光線角度は、照明光の方向がサンプル表面に対して垂直又はほぼ垂直である場合に最小となる。従って、干渉項のみが使用されるか又は支配的なものである場合には、サンプルの垂直な又はほぼ垂直な照明は、一層高い処理能力のために選択することが可能である。垂直又はほぼ垂直な照明は、高い角度の入射での照明と比較して瞳にわたってポラリゼーション(polarization)即ち偏光を一層一様なものとさせるという点において付加的な利点を与える。瞳にわたっての一層一様な偏光は一層高い干渉項へ通じる。注意すべき別の重要な事実は、欠陥が波長よりも一層小さい場合には、干渉項の空間的形状は、単に、イメージングシステムの振幅点ひろがり関数(APSF)の形状であり、従って固定されている。鏡面成分の空間的周波数がゼロではない場合であっても、それは干渉項の形状を変えるものではない。その唯一の効果は、干渉項にゼロでないキャリア周波数を与えることである。
鏡面成分が単一の光線を有している場合には、干渉項は、振幅点広がり関数APFSとキャリア周波数項との乗算として表すことが可能である。即ち、キャリア周波数項は、常に、取り除き且つ別に取り扱うことが可能である。キャリア周波数項を別に取り扱う場合には、小さな欠陥の差分画像の形状とAPSFとの間に差異は無い。このことは、検知器アレイに帰せられる有限幅のサンプリング関数での欠陥画像の高速数値的デコンボリューション(numerical deconvolution)を可能とさせる。
サンプリング関数の幅はイメージセンサーの各ピクセルにおける光感受性区域の幅である。高感度又は高ダイナミックレンジは、通常、大きな光感受性区域を必要とする。従って、アレイ内の検知器の有限の寸法は、最大信号振幅を幾分減少させるべく作用し、且つデコンボリューションは画像の拡大と等価である。従って、光学的画像拡大は、高速数値的デコンボリューションで置換することが可能である。光学的拡大を数値的デコンボリューションで置換することは光学的システムのコストを減少させる。これらの点については、空間周波数帯域幅についての後のセクションにおいてより詳細に説明する。
サンプル表面内への照明光の浸透深さを制御することが時折有用である。例えば、検知することが必要な欠陥がサンプル表面上又はその近くに位置している場合に、照明光の浅い浸透は、該欠陥をより信頼性をもって検知するために通常望ましいものである。検知することが必要な欠陥が深いトレンチの底部に位置している反対の場合には、照明光の深い浸透が該欠陥をより信頼性をもって検知するために通常望ましい。照明光の浸透深さは任意に制御することが可能なものではない。しかしながら、サンプル上の欠陥周りのプリントしたパターンが一つの方向に向いている場合には、照明光の浸透深さは、該照明光の偏光を制御することによってある程度制御することが可能である。例えば、該照明光の偏光方向がサンプル上のプリントしたパターンの方向と平行に設定される場合には、該照明光は最も少ない量だけ浸透する。
該照明光の偏光方向が該プリントしたパターンの方向に垂直に設定される場合には、該照明光は最も深くに浸透する。この様に照明光の浸透深さを制御する態様は、欠陥検知において有用な場合がある。何故ならば、プリントしたパターンの高い割合が好ましいエッジ方向を有しているからである。
時折、照明光の偏光がプリントしたパターンの方向と平行に向けられていても、照明光の浸透が未だに深すぎる場合がある。この場合には、その照明に対して高い入射角度を実施することを考慮することが可能である。注意すべきことであるが、入射角度は、光線と表面に対する垂線との間の角度として定義されるものであり、表面自身ではない。
高い入射角度の照明は、処理能力の減少をきたす場合がある。何故ならば、それは該信号を正確に検知するためにより細かいサンプリンググリッドを必要とするからである。このことは、一層高い倍率比となるか、又は同じ検知寸法に対して一層小さな視野となるかのいずれかである。しかしながら、高い角度の照明の場合には有益的な効果が得られる場合がある。高い角度の照明がs偏光された光と結合される場合には、低入射角度照明の場合よりも一層効果的にサンプルの表面内へ照明光の浸透を減少させることが可能である。注意すべきことであるが、極めて高い入射角度は「すれすれ入射」と呼ばれている。
ウエハ表面内への照明光の浸透の減少は、又、所謂「ウエハパターンノイズ」を減少させることが可能である。ウエハパターンノイズは、ウエハ全体にわたっての製造プロセスにおける変動に起因してダイ毎にウエハ上のプリントしたパターンがわずかに異なる場合に、発生する。2種類のウエハパターンノイズがある。その内の一つは、軸方向又は長手方向ウエハパターンノイズと呼ばれるものであり、且つ他方のものは横方向ウエハパターンノイズと呼ばれるものである。高い角度の照明は長手方向ウエハパターンノイズを減少させることが可能である。横方向ウエハパターンノイズは、アパーチャのエッジ及び不明瞭部を良好なフーリエフィルタリング及びソフトニング処理することにより、減少させることが可能である。アパーチャのエッジ及び不明瞭部をソフトニング処理するための効果的で且つ実際的な方法は、鋸歯状アパーチャと呼ばれる後のセクションにおいて説明する。
厳密に言えば、ウエハパターンノイズは、実際には、ノイズではない。それは、むしろ、我々の関心の無い1種の欠陥信号である。照明光浸透の減少は、ウエハの表面プロフィルが比較的平坦であるか又はウエハパターンエッジの方向が照明光のs偏光の方向と平行である傾向がある場合に、顕著である場合がある。しかしながら、ウエハがほぼ同数のx方向エッジとy方向エッジとを有している場合、又は該パターンエッジの方向が照明光のs偏光の方向と実質的に平行ではない場合には、その利点はより顕著ではない場合がある。
高い入射角度の照明の実施は非常にコスト高となる場合がある。従って、高い入射角度の照明を使用することの決定をなす前に、コストに対する利益は注意深く分析すべきである。
照明光の浸透深さ制御は、照明光の偏光制御に対する唯一の理由ではない。偏光された光と欠陥及びその周りのパターンとの間の相互作用は通常複雑なものとなり、且つ実験的測定及び/又は予測のための数値的モデリングを必要とする。実世界はしばしば直感に相対するものである。幾つかの場合において、偏光方向は欠陥検知を改善するために変化させることが可能である。高入射角度照明の後のセクションにおいて高い角度の照明及び偏光制御についての更なる説明をする。
II.システムコンフィギュレーション
実施例に基く干渉欠陥検知システムは多くの異なる態様の形態とすることが可能である。多くの例は、共通光路及び欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相を制御するものを包含している。このセクションにおいては、一般的なシステムコンフィギュレーションについて説明する。具体的な構成例及びサブシステム例は他のセクションにおいて後に提示される。
1.システムコンフィギュレーションの例
図1は、干渉欠陥検知システム100の1例を示している。光ビーム118が、1例においてはレーザなどのコヒーレント源である照明源112によって発生される。干渉イメージングシステムの基本的なコンポーネントを構成することが可能である限り、任意の波長を使用することが可能である。使用することが可能な波長の例は、紫外線、遠紫外線、真空紫外線、超紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線、等を包含している。
図1において、ビーム118は、サンプル110の表面へ向けて反射されており、且つ図示した如くにサンプル(試料)の表面を照明する。ビーム118は、サンプル110の表面においてイメージセンサーの視野をカバーする。サンプル110は、ウエハ、レチクル、又はその他の検査中のサンプルとすることが可能である。サンプル110は、照明ビームの一部を散乱(又は分散)させ、且つ別の部分を鏡面反射させる(及び一部が吸収される場合がある)。入射ビームの散乱された部分及び鏡面反射された部分は、夫々、ここでは「散乱成分」及び「鏡面成分」と呼称する。該散乱成分はビーム128によって表わされており、且つ鏡面成分はビーム124によって表されている。
フロントエンドレンズシステム116及びバックエンドレンズシステム114を包含している高分解能光学的イメージングシステムが、光の散乱成分及び鏡面成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー140へ指向させるべく配置されている。該イメージングシステムにおける収差が、鏡面成分と散乱成分との間の相対的位相を一つの散乱された構成から別の散乱された光線へと変化させることが可能である。この種類の位相変化はシステム性能を劣化させる場合がある。従って、該イメージングシステムは、好適には、実質的に回折が制限されており、即ち、小さな量の収差を有するに過ぎない。理解すべきことであるが、ここでは光線光学系用語を使用するが、対応する回折光学系用語を使用することも可能であり、当業者は光学的現象の光線光学系及び回折光学系の両方の説明の均等性及び限界を理解するものである。
この様なイメージングシステムの構成及び製造は周知の技術である。フロントエンドレンズシステムは、通常、視野にわたっての一様な性能を達成するためにサンプル側においてテレセントリックであるように構成される。テレセントリック性は完全である必要はない。2,3度等の実質的な量のテレセントリックエラーは、通常、許容可能である。バックエンドレンズシステム114はテレセントリックである必要はない。
欠陥検知を包含する殆どの適用例において、該サンプルの画像は、典型的に100倍又はそれ以上の大きな量だけ拡大させることが必要である。サンプル画像の拡大は、通常、バックエンドレンズシステム114の焦点距離をフロントエンドレンズシステム116の焦点距離よりも一層長いものとさせることにより達成される。高い性能を得るためには、該イメージングシステムの焦点は、サンプルスキャンの期間中に、正確に維持されることを必要とする。イメージングシステム焦点の正確な維持は、通常、サーボ制御型自動焦点システムを必要とする。サーボ制御型焦点システムの例は自動焦点システムと呼称する後のセクションにおいて説明する。
注意すべきことであるが、多くの異なる種類のイメージセンサーをシステム100のために使用することが可能である。CCD,時間遅延及び積分CCD(TDICCD)等の二次元イメージセンサーは、多くの適用例に対して適切であることが判明している。注意すべきことであるが、ここで使用される用語としての「イメージセンサー」という用語は、全体的なイメージセンス用ハードウエアシステムを意味しており、その受光部分のみではない。例えば、或る実施例においては、イメージセンサー140は、又、後に詳述する制御器142を包含している場合がある。
高感度及び高ダイナミックレンジが該イメージセンサーにおいて好適である。小さな信号を検知するためには、通常、該信号の高いノイズレス(無雑音)の増幅が望まれる。しかしながら、該信号の高いノイズレスの増幅は、イメージセンサーにおける高いダイナミックレンジを必要とする。従って、イメージセンサー又はセンサーシステムのダイナミックレンジ即ち動的範囲は、極めて小さな欠陥を検知することが必要である場合に、将来において重要な問題点となる。
図1に示した如く、システム100の例示的実施例は、コンピュータ又は同様のマシンなどの制御器142を包含しており、それは該システムの種々のコンポーネントの動作を制御すべく適合されている(例えば、コンピュータ読み取り可能又はマシン読み取り可能な媒体に実現されているソフトウエア等の命令を介して)。制御器142は、システム100の動作を制御する形態とされており、且つセンサーシステム140へ電気的に接続されており且つ、後に詳述する如く、それからのデジタル化した生の電子信号を受け取り且つ処理し且つ処理済の画像信号を形成すべく適合されている処理ユニット(「プロセッサ」)152を包含している。例示的実施例においては、プロセッサ152は、生の信号を処理し且つそれを他の信号(例えば、隣接したフィールド、又はメモリユニット154内に格納されているような理想化したフィールドのデジタル画像)と比較して欠陥が存在するか否かを決定し、且つ、後に詳述する如く、その欠陥の特性付けを行う構成とされている。ここで使用されるように、「電子又は電気信号」という用語は、アナログ物理量又はその他の情報のアナログ及びデジタルの両方の表示を包含している。
制御器142は、センサーシステム140から電子的な生の信号を受け取り且つ該信号を処理してサンプルにおけるその欠陥の特性付け又は分類を行う構成とされている。説明するように、制御器142はプロセッサ152を包含しており、それは、一連のソフトウエア命令を実行することが可能な任意のプロセッサ又は装置であるか又はそれを包含するものであって、且つ、制限無く、汎用の又は特別目的のマイクロプロセッサ、有限状態マシン、制御器、コンピュータ、中央処理ユニット(CPU)、グラフィカル処理ユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はデジタル信号プロセッサ、を包含している。
メモリユニット(「メモリ」)154は、動作可能にプロセッサ152へ結合されている。ここで使用される如く、「メモリ」という用語は、任意のプロセッサ読み取り可能媒体のことを意味しており、これらに制限されるものではないが、RAM,ROM、EPROM、PROM、EEPROM、ディスク、フロッピディスク、ハードディスク、CD−ROM、DVD等、その上にプロセッサ152によって実行可能な一連の命令を格納することが可能なものを包含している。例示的実施例においては、制御器142は、CD−ROM、DVD,メモリスティック等の格納媒体のような着脱自在のプロセッサ読み取り可能媒体158を収容すべく適合されているポート又はドライブ156を包含している。
ここで記載する欠陥検知及び分類方法は、制御器142をしてオペレーティングシステム100に対して該方法及び制御動作を実施させるためのマシン読み取り可能な命令(例えば、コンピュータプログラム及び/又はソフトウエアモジュール)を具備するマシン読み取り可能な媒体(例えば、メモリ154)における種々の実施例で実現することが可能である。例示的実施例においては、該コンピュータプログラムはメモリ154からプロセッサ152上で稼動し、且つ、着脱自在な媒体158上に格納されている場合には、ディスクドライブ又はポート156を介して、又は制御器142外部に格納されている場合には、ネットワーク接続又はモデム接続を介して、又はそれから読み取り且つ利用することが可能なその他のタイプのコンピュータ又はマシン読み取り可能な媒体を介して、永久的格納部からメインメモリへ転送させることが可能である。
該コンピュータプログラム及び/又はソフトウエアモジュールは、本発明の種々の方法を実施するため且つシステム100内の種々のコンポーネントの動作及び機能を制御するために複数個のモジュール又はオブジェクトを具備することが可能である。そのコードのために使用されるコンピュータプログラミング言語のタイプは、手順コード型言語とオブジェクト指向型言語との間で異なる場合がある。ファイル又はオブジェクトは、プログラマーの希望に依存して、説明するモジュール又はメソッドステップに対して1対1の対応を有することは必要ではない。更に、本方法及び装置は、ソフトウエア、ハードウエア、及びファームウエアの結合を有することが可能である。ファームウエハは、本発明の種々の例示的実施例を実現するためにプロセッサ142内へダウンロードさせることが可能である。
制御器142は、又、オプションとして、多様な英文字及びグラフィカル表示を使用して情報を表示するために使用することが可能なディスプレイユニット146を包含している。例えば、ディスプレイユニット146は、生の信号又は処理済みの信号を表示するために有用である。制御器142は、又、オプションとして、キーボードなどのデータエントリ装置148を包含しており、それはシステム100のユーザがシステム100の動作を手作業により制御するために制御器142内に情報を入力することを可能とさせる。
例示的実施例においては、制御器142は、動作可能にセンサーシステム140へ結合されているか又はその一部である。別の例示的実施例においては、制御器142は、サンプルを位置決めするためのサンプル位置決めシステム150及び位相制御器及び減衰器122を使用して位相を調節するためのアクチュエータ144へ動作可能に接続されている。制御器142は、説明の便宜上、図1のシステム100においてのみ示されているが、それはここに記載する全ての例示的実施例内に包含させることが可能である。
図1に示した如く、散乱成分128及び鏡面成分124の両方が同じ光学系を介して通過する。従って、この実施例は共通光路干渉計システムの一つのタイプである。この特徴は、システム性能の安定性のために有益的である。何故ならば、共通光路干渉計への何らかの擾乱は同じ量だけ両方の光路に影響を与える蓋然性があり、且つ散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相差が維持される蓋然性があるからである。
幾つかの実施例において、位相制御器及び減衰器122は鏡面成分124の光路内に据え付けられている。鏡面成分が位相制御器122を介して通過し、且つその相対的位相は、欠陥検知感度を最大とさせるか、又は各欠陥信号の位相及び振幅の両方を決定するために、調節することが可能である。散乱光ビーム128は、鏡面成分と散乱成分との間の大きな量の光路長差を補正するための補正板130を介して通過する。補正板の軸方向位置は非常に柔軟性がある。何故ならば、その光線の光路長は補正板の軸方向位置に依存するものではないからである。即ち、殆どの図が、補正板が位相制御器の一層長い光路長を補正するものであることを強調するために、補正板と位相制御器とを同一の面内に示しているが、補正板は位相制御器と同じ面内に配置させることは必要なことではない。それは、位相制御器のかなり上方又は下方に配置させることが可能である。補正板の軸方向位置における柔軟性は、補正板周りの機械的構成を容易化させる。
位相制御は有益的な特徴であり且つ欠陥検知能力を劇的に改善するために利用することが可能であり且つ以下に更に詳細に説明する。幾つかの実施例によれば、特にイメージセンサーのダイナミックレンジがその適用例に対して小さすぎる場合に、その光路内にピンホール絞りを付加するか、又は位相制御器コンポーネントの表面の内の一つの上に反射コーティングを付加することによって、画像コントラストを改善させるために鏡面成分124を減衰させることも可能である。鏡面成分124の反射部分はビーム126で図1中に表してある。注意すべきことであるが、位相制御器及び減衰器は主要瞳面即ちアパーチャストップ(開口絞り)に位置されており、そのことは、付加的な瞳リレーシステム、ビームスプリッタ及びそうでなければ必要とされる場合のあるその他のコンポーネントに起因するパワー損失及び複雑性を有益的に回避している。
多くの異なる種類の光源を光源118に対して使用することが可能である。ブライト(明るい)光源が多くの適用例において望ましいものである。何故ならば、ブライト光源は、光学的イメージングシステムの瞳共役面においての鏡面成分と散乱成分との明瞭な空間的分離を可能とさせるからである。ブライト光源は、又、瞳面においての鏡面成分に対する小さなフットプリント(footprint)即ち足跡のお陰でフーリエフィルタリングを非常に効果的なものとする。鏡面成分と散乱成分との明瞭な分離と、効果的なフーリエフィルタとの両方がここに開示するシステム及び方法の最善の性能に対して重要である。一般的に、光源が一層明るければ明るいほど、一層良好である。現在使用可能な最も明るい光源はレーザである。従って、多くの適用例にとって、レーザは好ましい光源である。
サンプル即ち試料はコヒーラント即ち可干渉的(coherent)又は非可干渉的(incoherent)のいずれかでレーザにより照明させることが可能である。しかしながら、レーザでの非可干渉的照明は、通常コスト高のスペクルバスター(speckle buster)を必要とするばかりか、可干渉的照明と比較してフーリエフィルタリングをより効果的ではないものとさせるという点において顕著な欠点を有している。従って、レーザ光源での可干渉的照明が望ましい。全体的なフィールドにわたり一様な照明強度を達成する方法は、可干渉的一様照明器に関する後のセクションにおいて提示する。
多くの異なるタイプのレーザが照明光源として適している。例えば、レーザは連続波タイプか又はモードロック型又はQスイッチ型レーザ等のパルス型のタイプのいずれかとすることが可能である。レーザは複数のテンポラル(temporal)モード又は有限のテンポラル帯域幅を有することが可能である。しかしながら、可干渉的照明に対しては、通常、単一空間モードが望ましい。アークランプ、発光ダイオード(LED)等のその他の光源を使用することも可能である。しかしながら、これらの分散光源の場合には鏡面成分と散乱成分とを分離することが困難である。何故ならば、散乱成分の幾らかの部分が瞳面においても鏡面成分とオーバーラップする場合があるからである。このことは、散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相の精密な制御を困難なものとさせる。位相制御における不精密性は、通常、より拙い性能となる。更に、瞳面における鏡面成分の比較的大きなフットプリントに起因して分散光源での効果的なフーリエフィルタを実現することは困難である。
注意すべきことであるが、光源としてのレーザの使用は、幾つかのレンズコンポーネント上又は内に損傷性のホットスポットを形成する場合がある。この問題は、レンズ設計によって及び特別に調製されたフューズドシリカ、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等の耐久性のあるレンズ物質の使用によって緩和させることが可能である。
位相制御器122は、明瞭な態様で散乱成分から鏡面成分を空間的に分離させ且つ全体的なイメージングフィールドにわたって一様な性能を達成することが可能であるために、瞳又は光学的イメージングシステムの瞳共役(pupil conjugate)において又はその近くに配置させるべきである。理想的には、光学系は比較的簡単なものであり、且つ光学的イメージングシステムのアパーチャストップの共役に対する必要性の無いものである。位相制御器122は、図1におけるイメージングシステムのアパーチャストップ面において又はその近くに配置されている。位相制御器を光学的イメージングシステムのアパーチャストップ面において又はその近くに配置させることは、多くの適用例に対して望ましいことである。何故ならば、それは、大きく且つコスト高であるばかりか、画像品質及びエネルギ効率を低下させる場合のある付加的な光学的部品を必要とするものではないからである。光源112としてレーザが使用され且つサンプル110が可干渉的に照明される場合には、瞳共役面における鏡面成分の寸法は小さくなり、通常1mm未満となり、その結果、位相制御器を極めて小さくすることが可能であり且つ空間をそれ程取るものではなく且つ他のシステムコンポーネントと干渉することもないことが判明している。
たとえその区域が狭く且つ他の部品で混雑している場合であっても、位相制御器を光学的イメージングシステムのアパーチャストップに直接的に又はその近くに配置させることの能力は、多くの適用例において実際的な利点である。この利点は、現在の且つ将来の欠陥検知システムデザインにおいて特に有用である。何故ならば、アパーチャストップをより混雑していない区域へ中継するために更なる光学的要素を付加することは困難であり且つコスト高となるからである。アパーチャストップの区域が位相制御器を許容するには狭すぎるか又は混雑している幾つかの代替的実施例においては、高品質瞳中継システムをデザイン・イン(design in)即ち組み込むことによって、アパーチャストップ面をより混雑していない区域へ中継させることが可能である。しかしながら、この構成は不所望な副作用をもたらす。高エテンデューのDUV光学系に対して適切な瞳中継システムを組み込むことは困難であり且つコスト高である。
2.位相制御器
図2a及び2bは位相制御器及び減衰器の1例を示している。位相制御器は、サンプルからの光の鏡面成分と散乱成分との間の相対的位相を変化させるために使用される。注意すべきことであるが、絶対的な位相は、通常、関心事ではない。むしろ、通常、散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相が関心事である。従って、位相制御器は、鏡面成分か又は散乱成分かのいずれかの光路内に据え付けることが可能である。
ここでの殆どの図は、鏡面成分の光路内に位相制御器を据え付けた場合を示しているが、幾つかの実施例においては、位相制御器は、散乱成分の光路内に据え付けることが可能である。光ビームの位相を変化させる多様な態様がある。位相を変化させる一つの技術は、ビームの光路長を変化させることである。光路長は、ビームが通過する光学的物質の厚さを変化させることにより容易に変化させることが可能である。これらの種類の位相制御器は、多くの異なる方法で構成することが可能である。一つの方法は、図2aに示した如く、2個のウエッジ型ガラスプレートをオーバーラップさせることである。位相制御器122は、上部ガラスウエッジ222及び下部ガラスウエッジ220を利用する。入ってくる光ビーム124は下部ウエッジ220に入り且つ少なくとも一部が光ビーム212として上部ウエッジ222を通過する。これらのウエッジプレートの内の一つを矢印250で示した方向に移動させることにより、通過ビームの光路長は変化される。例えば、光路長を増加させるために上部ウエッジ222を右方向へ移動させることが可能であり、且つ光路長を減少させるために左方向へ移動させることが可能である。
上部ウエッジと下部ウエッジとの間の空隙は鏡面成分ビームを所望の光路から立ち去らせる場合がある。このことは、鏡面成分の波面を画像面において傾斜させる場合がある。傾斜された波面はフィールドにわたり性能変化となる場合があり、特に後のセクションにおいて説明する高感度動作モードにおいてそうである。しかしながら、この問題は容易に直すことが可能である。鏡面成分ビームは、該ビームの立ち去り方向に対して反対の方向へ全体的な位相制御器ブロックを多少傾斜させることによってその所望の光路へ戻すことが可能である。必要とされる傾斜量は、画像面においての鏡面成分の波面傾斜を測定することによって決定することが可能である。この波面傾斜は、フィールドにわたっての鏡面成分の線形位相変化として表れる。従って、それは、次のパラグラフにおいて説明する位相制御器キャリブレーションプロセス期間中に測定することが可能である。該ビームをその所望の光路へ戻すために、2,3回の繰り返しの位相ブロック傾斜動作が見込まれる。
位相制御器は使用する前にキャリブレーションが必要である。このキャリブレーションは、該制御器の光学的部品の寸法及び位置を精密に測定することにより純粋に機械的に行うことが可能である。しかしながら、より良い方法は、それを光学的に行うことであり、それは難なく行うことが可能である。例えば、位相制御器は、各島状部がその周囲から小さな光路差を有している複数の島状部からなる二次元アレイからなる位相マスク等のステップ位相オブジェクトを使用してキャリブレーションを行うことが可能である。ステップ位相オブジェクトの画像は、鏡面成分の位相が90°点を通過する場合に、位相ステップ区域周りにコントラスト反転を示す。該画像コントラストは、鏡面成分の0°及び180°位相角度において極値となる。この現象及び位相制御器の機械的特性を使用して、位相制御器は正確にキャリブレーションを行うことが可能である。小さなピット、小さな島状部、幅狭の谷、幅狭のメサ等のその他のパターンをこのキャリブレーションのために使用することも可能である。このキャリブレーションプロセスは、位相基準、即ちゼロ位相シフト点も与える。
フィールドにわたり複数の同一のパターンが配列され且つ該キャリブレーションが該フィールドにわたり同時的に実施される場合には、位相制御器のより一層正確なキャリブレーションを達成することが可能であるばかりか、フィールドにわたり位相基準を確立することが可能である。位相基準の値は、イメージングシステムが完全である場合には、全て同じであるべきである。しかしながら、実際のイメージングシステムは完全なものとすることは不可能である。フィールドにわたっての位相基準値の幾らかの変化が、位相制御器の傾斜、収差、フィールド湾曲、等に起因して存在することが予測される。フィールドにわたっての位相基準値の変化の線形部分は全体的な位相制御器ブロックを多少傾斜させることによって除去することが可能である。該変化の非線形部分はイメージングシステムにおける不完全性から発生する。
イメージングシステム不完全性の一次効果は、フィールドにわたっての位相基準値の変化である。従って、フィールドにわたっての位相基準値の変化の大きさは、イメージングシステムの品質の良好なインジケータである。フィールドにわたっての位相基準値の変化は、後のセクションにおいて説明するキャッチオールモード(catch-all mode)及びダークフィールド動作モード(dark field mode of operation)に対しては重要性はより少ない。しかしながら、これは後のセクションにおいて説明する高感度動作モードに対して問題となる場合がある。何故ならば、それは高感度動作モードの性能をフィールドにわたり変化させる場合があるからである。従って、イメージングシステムの品質を高く維持することが重要である。
注意すべきことであるが、キャリブレーションを必要とするGouy位相と呼ばれる別の位相がある。しかしながら、Gouy位相のキャリブレーションは、位相制御器がキャリブレーションされている限り簡単なものである。Gouy位相は可変ピンホール絞りと呼ばれる後のセクションにおいて説明する。
例示的実施例において、位相制御器コンポーネントの表面の一つ又はそれ以上の上に反射性コーティングを与えることによって、図2aに示した種類の位相制御器へ減衰器を付加している。例えば、図2aにおいて、反射性コーティング224が、図示した如く、下部ウエッジ220の表面に位置されている。この例によれば、入ってくるビーム124の一部はコーティング224によって反射され且つダンプビーム126によって表されているようにダンプされる。幾つかの実施例によれば、減衰量は、異なる反射率を有する幾つかのコーティングを連続して設け且つ該コンポーネントを移動可能とさせることにより、ステップ変化させることが可能である。
図2bは、図2aのA−A’線に沿って見た場合の反射性コーティング224の1例を示している。この例において、コーティング224は、矢印240の方向に示した如くに配列されている3個の異なる反射性コーティング230,232,234から構成されている。下部ウエッジ220を移動させることにより、異なるレベルの減衰を達成することが可能である。
図3は、干渉欠陥検知システム300の別の例を示している。図3において、ビーム128によって表されている散乱成分の位相はガラスウエッジ324を使用して変化される。可干渉性光源112が照明ビーム118を発生し、それはサンプル110の表面へ向けて反射される。該反射光の散乱成分はビーム128によって表されており、且つ鏡面成分はビーム124によって表されている。下部ウエッジに対して上部ウエッジを移動させることにより、実効光路長、従って散乱成分の位相が変化される。鏡面成分124は補正ブロック326を通過して鏡面成分と散乱成分との間の光路長差を補正する。フロントエンドレンズシステム316及びバックエンドレンズシステム314はサンプル110からの光を回収し且つ該光をイメージセンサー140上にフォーカスさせる。
光路長を変化させる別の方法は図4a及び4bに示してある。この例においては、図4aに示されているように、光学的に透明な液体410がリングコンデンサの電極420と422との間に注入されている。液体410の厚さはコンデンサ電極420及び422の間の電圧を変化させることによって変化される。通常の液体ではなく液晶を液体410として使用することも可能である。この場合には、光路長は、単に、液晶分子の平均配向を変化させることによって変化される。図4bはB−B’線に沿っての方向における図4aの構成の平面図を示している。上部電極420は液体410と共に示されている。
可動で僅かにウエッジ型のガラスプレート又は透明なフィルムストリップも簡単な連続的に可変な位相制御器として使用することが可能である。しかしながら、この種類の位相制御器は、不可避的に、その理想的な光路から光線経路を逸らせ、その結果、システム性能に悪影響を与えることとなる。
図5は、幾つかの実施例に基く、光路長を変化させるために使用される可動ミラーの1例を示している。このシステムは反射表面を具備している可動部材530を包含している。入ってくる鏡面反射ビーム520は部材530の表面534から一部が反射される。散乱光ビーム510及び512は固定反射部材536から反射される。可動ミラータイプ位相制御器は、将来世代の欠陥検知システムにおいて使用される場合がある真空紫外線又は超紫外線のような極めて短い波長の光を使用する適用例に対して特に有用であることが判明している。何故ならば、これらの波長に対して透過性の光学的物質を見つけること又は開発することは比較的困難だからである。
注意すべきことであるが、位相制御用ミラーは必ずしも高度に反射性であることは必要ではない。多くの適用例の場合に、特にイメージセンサーのダイナミックレンジが低い場合に、低い反射性が望ましい。何故ならば、鏡面成分を減衰することが適切な画像コントラストを達成するために有用だからである。例えば、何らのコーティングの無いむきだしのガラスが幾つかの場合に適切な反射率を与えることが可能であることが判明している。その他の実施例において、特に高速応答が望ましい場合に、位相制御器は電気・光学コンポーネントを使用して構成することが可能である。
図6は可動ミラー位相制御器を使用する干渉欠陥検知システムの1例を示している。入ってくる光ビーム618はサンプル610の表面に向けて指向されており、該サンプルはウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。ビーム510及び512によって表されている散乱成分はレンズシステム616を通過し、反射性部材536によって反射され、レンズシステム614へ通過し、該レンズシステム614は該ビームをイメージセンサー640へ向けて指向させる。鏡面成分ビーム520は、図5に関して説明した如く、可動反射性部材530の表面から反射される。
注意すべきことであるが、ここで説明する実施例の多くに対して連続的に変化する位相制御器を示しているが、幾つかの実施例によれば、離散的に可変の位相制御器を使用することが可能である。例えば、位相選択の総数が4に制限されている場合には、離散的に可変の位相制御器に対する位相値の一つの選択は0°、±180°、±90°である。3個の離散的位相選択でも、後のセクションにおいて説明するキャッチオール動作モードなどの幾つかの適用例においてはうまくいく場合がある。この場合には、位相値の一つの選択は0°及び±120°である。位相選択の数を2へ減少させることは、例えば、{0
°、180°}又は{90°、―90°}、多くの適用例に対してより望ましいものではない。何故ならば、干渉項の符号を振幅型欠陥及び位相型欠陥の両方に対して、ダークフィイールド項の符号とマッチさせることができないからである。
離散的に可変の位相制御器は、多くの異なる方法で構成することが可能である。離散的に可変の位相制御器を製造する一つの方法は、基板上に正しい厚さの薄膜を付着させるか、又は基板を正しい深さだけエッチングするかのいずれかによる。ここで、離散的に可変の位相制御器は連続的に可変の位相制御器とは異なる物理的形状を有することが可能であっても、それらは概念的には異なる種類の位相制御器とは考えられず、連続的に可変の位相制御器のサブセットであると考えられる。何故ならば、連続的に可変の位相制御器は離散的態様で動作させることが可能だからである。
単一の位相制御器は複数の波長で共用させることが可能であるか、又は広帯域照明と共に使用することが可能である。しかしながら、この場合には、全ての波長に対する精密な位相制御を達成することは比較的困難である。
位相制御器の位相を迅速に変えることが可能である場合には、システムはヘテロダインモードで動作させることが可能である。ヘテロダインモードは、かなりの量の1/fノイズが存在する場合に良好な選択である。位相制御器の位相の迅速な変化は多くの異なる方法で達成することが可能である。例えば、図2aに示した位相制御器のガラス部品の内の一つを迅速に移動させることによって達成することが可能である。位相制御器が電気・光学物質から構成されている場合には、位相制御器を電気光学的に制御することによって非常に迅速な位相変化を達成することが可能である。ヘテロダインシステムは、スキャニングシステム、特に高速スキャニングシステム、において実現することは比較的困難であるが、スタティック又はステッピングシステム等の非スキャニングシステムにおいて実現することは比較的容易である。
3.フーリエフィルタリング
瞳面即ちアパーチャストップ(開口絞り)において不所望の光をブロックすることは、フーリエフィルタリング(Fourier Filtering)と呼ばれる。何故ならば、瞳面即ちアパーチャストップにおける光振幅分布は対物面における光振幅分布のフーリエ変換だからである。フーリエフィルタリングは多くの適用例において望ましい特徴である。何故ならば、それは、マンハッタン(Manhattan)マスク又はウエハパターンによって回折(分散)される検知器アレイに到達する光の量を効果的に減少させることが可能だからである。それはホトンノイズばかりでなくサンプルパターンノイズも減少させる。それは、又、光の強度をフィールドにわたりより一層一様なものとさせる。
一層一様な光強度は、ノイズレス信号増幅用のイメージセンサーのダイナミックレンジをより良い使用を可能とさせる。回路パターンの大部分はx又はy方向エッジから形成されており、従って、回路パターンのy及びx方向に対応して瞳において2つの狭い帯域に沿って光を散乱(即ち回折又は分散)させる。この種類の散乱光は欠陥に関してそれほど情報を持っているわけではなく、ホトンノイズ及びパターンノイズを発生し、且つイメージセンサーを飽和させる場合がある。
従って、この種類の光をフィルタにより除去することが望ましい。図7a−7cは、ほぼ垂直な照明を有する干渉欠陥検知システムに使用する不透明なフーリエフィルタストリップを具備する補正板の1例を示している。図7aにおいて、補正板730は幅狭のフーリエフィルタストリップ部材750,752,754,756と共に示されている。鏡面ビーム近くの散乱光は不透明なブロッキングプレート732によってブロックされ、該ブロッキングプレート732は鏡面ビームを通過させるのに十分な広さである幅pのアパーチャを包含している。この例においては、x及びyウエハパターン幾何学的形状によって散乱される光は瞳面即ちアパーチャストップにおけるフィルタストリップ部材750,752,754,756上に突き当たる。この様に、この種類の不所望の光は非常に効果的にフィルタにより取り除くことが可能である。メタルなどの不透明物質からなる2,3の交差したストリップが必要とされるに過ぎない。
注意すべきことであるが、フーリエフィルタは、周期的なパターンから分散された光のみならず、フーリエフィルタストリップに対して垂直の方向に指向されている長尺ライン又はエッジなどの非周期的パターンから分散された光をもブロックする。注意すべきことであるが、ストリップ部材750,752,754,756は、欠陥信号光をあまりブロックするものではなく、マスク又はウエハ上のマンハッタンパターンによって発生される不所望の光の殆どをブロックする。不所望の光を二次元においてブロックするこの種類のフーリエフィルタは二次元フーリエフィルタと呼称される。二次元フーリエフィルタリングは、サンプル上の二次元パターンからの不所望の光をブロックする上で一次元フーリエフィルタよりも一層効果的である。このことは、又、二次元フーリエフィルタは、一次元フーリエフィルタの場合と比較して、フィールドにわたり画像の強度を一層一様にさせることを意味している。
一様な画像強度は、多くの適用例に対して重要である。何故ならば、それは、欠陥信号の増幅のためにイメージセンサーのダイナミックレンジを完全に利用することを可能とするからである。不所望の光は、通常、瞳面において鏡面成分の近傍において一層強い。従って、フーリエフィルタストリップは、通常、その性能を最適化させるためにテーパー形状とさせることが必要である。テーパー形状としたフーリエフィルタストリップは、中間において一層幅広であり且つ端部において一層幅狭であり、通常、信号光をぼかすことの影響を最小としながら不所望の光をブロックする上で一層効果的なものである。
該ストリップの位置は、照明ビーム718及びプリズム780が同じ位置に止まる限り変化させることは必要ではない。従って、フーリエフィルタは何ら駆動機構を必要とするものではなく且つ永久的な態様で設置することが可能である。
注意すべきことであるが、フーリエフィルタはデュアル機能を有することが可能である。フーリエフィルタストリップは、その内側端部を鏡面成分が通過する領域へ延在させることによって鏡面成分に対するアパーチャストップとして使用することも可能である。アパーチャストップが可変であることが必要である場合には、フーリエフィルタストリップはその長さ方向に移動可能であるようにすべきである。移動するフーリエフィルタと固定されている補正板との間の機械的磨耗は、フーリエフィルタストリップと補正板との間に十分に大きな間隙を与えることにより容易に回避することが可能である。フーリエフィルタストリップと補正板との間に相当の大きさの間隙を与えることは、イメージングシステムの性能に影響を与えるものではない。というのは、補正板を任意の方向に移動させることはどの光線の光路長に影響を与えるものではないからである。
従って、二次元フーリエフィルタリングは、簡単且つ容易のみならず、信号光に対する最小の影響でもって達成される。図7aには、上部ガラスウエッジ722及び下部ガラスウエッジ720が示されている。図7bは、幾つかの実施例に基いて、C−C’線に沿っての図7aの構成の断面図を示している。補正板730は開口と共に示されており、該開口内には上部ガラスウエッジ722及び下部ガラスウエッジ720が配置されている。下部ガラスウエッジ720の上部表面は、図2a−2bに図示し且つ説明した如く、可変反射表面を持っている。
図7cは幾つかの実施例に基くD−D’線に沿っての図7aの構成の断面図を示している。補正板730は開口と共に示されており、該開口内には上部ガラスウエッジ722及び反射表面724を具備している下部ガラスウエッジ720が配置されている。上部ガラスウエッジと下部ガラスウエッジとの間の相対的な運動は延長アーム726及びアクチュエータ770によって達成され、それらは上部ガラスウエッジ722へ接続されている。予測される如く、照明入力プリズム780の中心及び鏡面ビームに対する直径pの小さな瞳絞りは図7及び8において互いに対角線的に対向している。
注意すべきことであるが、殆どの図において、補正板及び位相制御器は、補正板が位相制御器に対する光路長を補正することを強調するために、同じか又はほぼ同じ面内に位置されている。しかしながら、このことは必要なことではない。何故ならば、補正板の軸方向位置は前に説明した如く非常に柔軟性があるからである。補正板の軸方向位置における柔軟性はフーリエフィルタ及び位相制御器についての機械的相反又は困難性を緩和させることが可能である。
その他の実施例によれば、サンプル上のマンハッタンパターンから発生するもの以外のパターン回折(分散)を除去するためのフーリエ面ブロッカーが必要とされる場合に付加される。この種類の特別のフーリエブロッカーは、通常、カスタム設計することが必要であり且つ多くの異なる態様で実現することが可能である。例えば、付加的なメタルストリップを瞳面内に導入させることが可能である。別の態様は、ガラスプレート又はプリントしたパターンを含むペリクルを瞳面内に挿入することである。この種類の柔軟性は、殆ど全ての種類のウエハ又はマスクパターンに対するノイズを発生する光の殆ど完全なフィルタリングを可能とする。これはここに開示するシステム及び方法の別の有益的な利点である。
フーリエフィルタはノイズを発生する光のみならず欠陥信号光をブロックすることとなるので、過剰なフーリエフィルタリングは有害となる場合があることが判明している。信号光をブロックすることは、最終的な欠陥信号を2つの態様でインパクトを与える場合がある。即ち、それは信号光の全量を減少させるばかりか、欠陥の画像を回折(分散)により多少ぼやかす。通常、最適な量のフーリエフィルタリングが存在しており、それはウエハ上のパターンに依存するものである。従って、望ましいフーリエフィルタリングの量は特定の適用例に依存し且つ当業者によって不当な実験無しで決定することが可能なものである。
フーリエフィルタは、常に、メタルストリップのような不透明の物質で作ることが必要なものではない。それは、半透明物質又は誘電体膜などの完全に透明な物質でも作ることが可能である。これらの種類のフーリエフィルタは、信号即ち幾つかのパターン又は特徴の可視度を増加させる上で非常に効果的である場合がある。複雑なパターン又は特徴の観察等の幾つかの適用例の場合に、非常に洗練されたフーリエフィルタを画像の可視度を増加させるために使用することが可能である。
メタルのような吸収性物質から構成したフーリエフィルタは、動作期間中熱くなる場合があり、特に強力な光源が通常使用される産業的適用例の場合にそうである。熱いフーリエフィルタは機械的問題を発生させるばかりか光学的問題も引き起こす。何故ならば、それは周囲の空気を加熱する場合があり、それが信号光の波面に歪を発生させる場合があるからである。しかしながら、この種類の熱問題は、フーリエフィルタの周りにヘリウムのような高い熱伝導度のガスを流すことにより解決するか又は緩和させることが可能である。ヘリウムガスは、その屈折率が非常に低く従ってその密度に非常に敏感ではないので、特に適している。
4.可変ピンホールストップ
注意すべきことであるが、ここに開示するシステム及び方法は、固定ピンホールストップで動作し、又鏡面成分の光路内に何らのピンホール又はピンホールストップが存在しない場合であっても動作する。しかしながら、多くの適用例において、鏡面成分の光路中における可変ピンホールストップはシステム性能を改善することが可能であることが判明している。
殆どの図、即ち、図2a、7b、7c、9,10,11,13b,13c,14はここでの位相制御器を例示しているが、位相制御器の上に鏡面ビーム用の小さなストップ即ち絞りをも示している。鏡面ビームストップに対する理想的な位置は瞳面である。何故ならば、ピンホールストップが瞳面から離れて位置される場合には、システム性能がフィールドにわたり変化する場合があるからである。主要な瞳面はテレセントリック構成の場合にはフロントエンドレンズシステムの後側焦点面である。
「鏡面成分」という用語を精密に定義することは不可能である。何故ならば、鏡面成分と散乱成分との間に明瞭な境界があるわけではないからである。鏡面成分は有限の寸法のものでなければならず、従って幾らかの、極めて少量の散乱(又は回折又は拡散)成分を包含している。従って、鏡面成分は、実際には、非散乱(非回折又は非拡散)光と低角度散乱光との両方の結合を意味している。ここで使用される「鏡面成分」という用語は、幾らかの量の低角度散乱成分を含むことが許されている。
鏡面成分は幾らかの量の低角度散乱光を含有するものであるから、鏡面成分の特性は、それが含有する低角度散乱光の量を変化させることにより、変化する場合がある。鏡面ストップの寸法を変化させることは、鏡面ビームにおける散乱光の量を変化させるために使用することが可能な最も簡単な装置の内の一つである。一層大きな鏡面ストップは、鏡面ビーム内に一層多くの散乱成分を導入させ、その逆も又真である。重要なことは、ストップ寸法が画像面における鏡面成分の空間的一様性に直接的に関連しているということである。一層大きなストップは画像面における鏡面成分のより少ない空間的一様性を与える。何故ならば、それはより多くの散乱光を通過させるからであり、その逆も又真である。換言すると、より大きな鏡面ストップは画像強度の局所的変化のよりすくないものを平均化させ、且つその逆も又真である。
より厳密に説明すると、一層大きな鏡面ストップは画像面において鏡面成分の複素振幅の局所的変化のより少ないものを空間的に平均化し、且つその逆も又真である。即ち、鏡面ストップは、強度即ち振幅ばかりではなく、フィールドオブビュー(field of view)即ち視野にわたっての鏡面成分の位相変化をも、空間的に平均化する。数学的に説明すれば、画像面における鏡面成分の複素振幅は、画像面における鏡面ストップの回折パターンでのサンプル反射率関数の畳み込みである。
従って、イメージセンサーに到達することが可能な鏡面成分の全量のみならず、鏡面ストップの寸法を変化させることによって、画像面における鏡面成分の空間的一様性をも変化させることが可能である。可変鏡面ストップ直径の寸法を寸法「p」として図7b及び7cに示してある。鏡面成分のこの変数は欠陥検知能力を改善するために使用することが可能である。鏡面ストップも鏡面成分の減衰のために使用することが可能である。何故ならば、より小さなストップは鏡面成分のより少ないものを伝達させるからである。鏡面成分を減衰させるその他の方法は、振幅減衰と呼ばれる後のセクションにおいて説明する。
イメージセンサーのダイナミックレンジが十分に大きくない場合には、欠陥信号は、たとえ該信号のノイズレス増幅によって検知器の全体的なダイナミックレンジが完全に利用される場合であっても、使用可能なグレイレベルの制限された数によって拙く特性付けられる場合がある。この場合には、鏡面成分の減衰の幾らかの量が生の画像における適切なコントラストを達成するために必要とされる。鏡面ストップの寸法を調節することにより、鏡面成分の適切な減衰を容易に達成することが可能である。鏡面ストップを使用しての鏡面成分の減衰は、鏡面成分をフィールドにわたり一層一様なものとさせるという偶発的な効果を有している。
鏡面アパーチャでの別の有益的な特徴は、反射光は光学系から容易に除去することが可能であるので、それはゴースト画像を形成するものではないということである。良く知られているように、反射コーティングを具備する減衰器は、別の表面での2番目の反射によりゴースト画像を発生する場合がある。しかしながら、欠点も存在している。第1に、鏡面ストップは鏡面成分の適切な減衰のためには大量の光エネルギを吸収せねばならず、従って非常に高温になる場合がある。このことは機械的問題ばかりではなく光学的問題も引き起こす場合がある。何故ならば、高温のストップは周囲の空気を加熱し、加熱された空気は波面に歪を発生する場合があるからである。しかしながら、この種類の熱問題は、レンズキャビティを高い熱伝導率で且つ低い屈折率のガス、例えばヘリウム、で充填することにより緩和させることが可能である。ヘリウムガスは、その屈折率は非常に低く、従ってその密度に対して不感受性であるので良好な選択である。
2番目の欠点は、ピンホール寸法での鏡面成分の位相変化である。この種類の位相変化は「Gouy位相シフト」と呼ばれている。これは内在的な現象であって、容易に回避することは不可能である。しかしながら、Gouy位相シフトはスタティックであり、従ってフィールドにわたり容易にマップさせ且つ補償することが可能である。従って、鏡面ストップ寸法に関連する鏡面成分の位相変化は対処することが必要なものではあるが、致命的な問題ではない。実際に、鏡面ストップはピンホールの寸法であることとなる場合が良くある。ピンホールの反射性の対応物は入ってくる光の一部を反射する小さなミラー(ピンミラー)である。鏡面アパーチャタイプ及び形状の選択は、適用例及び光学系のデザインに依存する。透過性で且つ反射性のピンホールは同じ光学的特性を共有する。従って、透過性の鏡面ストップに関連する説明の全ては反射性の鏡面ビームストップに対して直接的に適用することが可能である。
殆どの図において、鏡面ビームストップ及びフーリエフィルタコンポーネントは、それらの別々の機能を強調するために別々のコンポーネントとして示してある。しかしながら、実際のシステムデザインにおいては、機械的デザインを簡単化させるため及び可能性のある機械的相反を最小化させるために、2つの別々のコンポーネントを一つに結合させることが望ましい場合がある。フーリエフィルタストリップを内側へ延在させるか、又は鏡面ビーム又はピンホールアパーチャを外側へ延在させるかのいずれかにより2つのコンポーネントを一つへ結合させることが可能である。結合された構成においては、ピンホールストップの寸法はフーリエフィルタストリップをそれらの長さ方向に沿って移動させることにより調節することが可能である。
5.アクチュエータ
可変位相制御器は何らかの種類の機械的又は電気的なアクチュエータを必要とする。アクチュエータを配置するのに最も便利な場所は位相制御器の直ぐ隣である場合がある。しかしながら、アクチュエータを位相制御器の直ぐ隣に配置させることは、信号光をあまりにもブロックしてしまう場合がある。幾つかの例においては、アクチュエータは光学的イメージングシステムの周囲に配置されるものであり、それはアクチュエータに対してより多くの空間を与えるので魅力の或る選択である。しかしながら、この選択の欠点は、アクチュエータの運動を位相制御器へ伝達するための何らかの機構が必要となることである。該運動伝達機構は瞳半径にわたるものでなければならず、且つ信号光をブロックする場合がある。しかしながら、幾つかの実施例によれば、光をブロックすることの問題は、フーリエフィルタの固定した位置を使用することにより解決される。移動する又は回転するワイヤなどの運動伝達機構をフーリエフィルタブロッキングストリップの上又は下に設置することにより、光の更なるブロッキングを回避することが可能である。
図7a及び7bにおいて、運動伝達部材726が設けられており、それはフーリエフィルタ部材754の経路に沿って走行している。運動伝達機構726はアクチュエータ770によって駆動され且つ可変位相シフト機構内の上部ウエッジ形状のガラス部品を移動させる。同様に、可変ピンホールストップ又はウエーブプレート(wave plate)等のその他の部品に対する運動伝達機構も付加的に光がブロックされることを最小とするために殆ど同様の態様で実現させることが可能である。運動伝達機構に対する十分な空間は容易に得ることが可能である。何故ならば、補正板の軸方向位置は非常に柔軟性があるからである。
6.オブスキュレーション(Obscuration)
位相制御器及びそのアクチュエータは、不可避的に、信号光の幾らかをオブスキュレーション(又はブロック)する。この種類の光のブロックは、イメージセンサーに到達することが可能な信号光の全量を減少させるばかりではなく、回折光による光学系の分解能をも減少させる。これは不所望な副作用であり、それは可及的に最大限最小とされる。このことを達成するために、位相制御器の光学的コンポーネントとアクチュエータの両方を可及的に小型に構成すべきであり、又はアクチュエータは光学的イメージングシステムの周囲に配置すべきである。
図8は、幾つかの実施例に基く、照明光用のフォールディングプリズム(folding prism)の配置の1例を示している。補正板830が、図7aに示したものと同様の態様で、フーリエフィルタストリップ850,852,854,856と共に配置されている。図8の例においては、図示したように、照明光ビーム818用のフォールディングプリズム880をフーリエフィルタストリップ850に一致して配置させることによりオブスキュレーションの付加的な小さな減少を達成することが可能である。又、光学的イメージングシステムのアパーチャストップ及びオブスキュレーションのエッジのソフトニングは、エッジ回折の不所望の副作用を減少させることが可能である。アパーチャ及びオブスキュレーションのエッジのソフトニングの効果的で且つ実際的な方法は鋸歯状アパーチャという後のセクションにおいて説明する。
注意すべきことであるが、ブロッキングプレート732によって発生されるむしろ大きなオブスキュレーションからの有益的な副作用がある。このオブスキュレーションは、ダークフィールドモードにおいてガードバンドとして働く。二次元フーリエフィルタと共にこの大きなガードバンドは、ダークフィールドモードを非常に暗いものとさせる。このことは、ダークフィールドモードは低ノイズにより特性付けられ、従ってより少ないオブスキュレーションを有するダークフィールドモードと比較して一層高い欠陥検知感度を維持することが可能である、ことを意味している。
7.照明光の偏光制御
照明光の偏光方向を制御することによりサンプル内への照明光の浸透深さの制御については前に説明した。しかしながら、浸透深さ制御は照明光を偏光させるための唯一の理由ではない。幾つかのタイプの欠陥に対する検知感度は照明光の偏光に依存する。従って、照明光の偏光方向を変化させる能力は重要な要因である場合がある。照明光の偏光は、ここで説明する構成において容易に且つ精密に制御することが可能である。何故ならば、照明光ビームのエテンデューは小さいからである。既存の偏光制御装置を使用することが可能である。照明光の偏光が照明システムを介しての通過期間中に変更されると、このことは測定し且つ補正することが可能である。欠陥及びその周りのパターンが何らの螺旋構造を有するものではない限り、欠陥検知感度を最大化させるために直線偏光以外の偏光が必要とされるものではない。このことは、半導体ウエハ及びレチクルの場合に該当することが判明している。しかしながら、相互に直交する直線偏光が同時的に与えられることが必要である場合には、対角線的直線偏光又は円偏光を使用することが可能である。しかしながら、この場合には、欠陥検知感度が妥協される場合がある。
8.回収光の偏光制御
信号光の偏光は鏡面成分のものと異なるものである場合がある。高い欠陥検知感度を達成するために、鏡面成分の偏光は、可及的に大きな程度、信号光の偏光と同じものとすべきである。従って、幾つかの実施例においては、鏡面成分の偏光はサンプルと検知器との間の光路において変化される。このことは、鏡面成分のエテンデューが小さいので、容易に且つ精密に行うことが可能である。
図9は、幾つかの実施例に適した偏光回転子(polarization rotator)と結合された位相制御器を示している。図9は、反射コーティング924を具備する下部ウエッジ型ガラスプレート920と、上部可動ウエッジ型ガラスプレート922と、可変鏡面ストップ950とを示している。回転可能なλ/2プレート960が可変ピンホールストップ950の上方に位置されている。入ってくる鏡面光ビーム916はコーティング924によって部分的に反射され、且つビーム912の一部は可動ウエッジ型ガラスプレート922、ストップ950及び回転可能なλ/2プレート960を介して通過する。図9に示した構成の偏光制御可能性は幾分制限されており、即ち、入ってくる鏡面成分の偏光を任意のタイプの偏光へ変換することは不可能である。しかしながら、この構成は入ってくる直線偏光を任意の方向に回転させることが可能である。欠陥及びその周りのパターンが何らの螺旋構造を有するものではない限り、欠陥検知感度を最大化させるためには直線偏光以外の偏光が必要とされるものではない。このことは、半導体ウエハ及びレチクルに対してそうであることが判明している。従って、図9に示した簡単な偏光制御装置はウエハ又はレチクルの欠陥検知のためには適切なものである。
より一般的な偏光制御が必要とされる場合には、図10に示されている多少より複雑な偏光制御器を使用することが可能である。図10は、反射コーティング1024を具備する下部ウエッジ型ガラスプレート1020と、上部可動ウエッジ型ガラスプレート1022と、可変ストップ1050とを示している。回転可能なλ/2プレート1060及び回転可能なλ/4プレート1062が可変ピンホールストップ1050の上方に位置されている。入ってくる鏡面光ビーム1016は部分的にコーティング1024によって反射され、且つビーム1012の一部は可動ウエッジ型ガラスプレート1022、ストップ1050、回転可能なλ/2プレート1060、回転可能なλ/4プレート1062を介して通過する。図10に示した構成はいかなる入ってくる偏光も任意のタイプの偏光へ変換させることが可能である。その動作原理は、R.M.A. Azzam及びN.M. Basharaの「エリプソメトリー及び偏光された光(Ellipsometry and Polarized Light)」、Elsevier Science B.V.、1999年、72〜84頁、に記載されており、それを引用により本書に取り込む。
鏡面成分の偏光に対して直交する偏光である散乱成分の部分は鏡面成分と干渉するものではなく、従って、画像のダークフィールド部分に貢献する。幾つかの適用例の場合に、この散乱成分における直交偏光の部分は、画像コントラストを増加させるため又はホトンノイズを減少させるためにフィルタ除去することが可能である。散乱光ビーム内の直交偏光をフィルタ除去することは、適宜のウエーブプレートを散乱成分の光路内に挿入して不所望の偏光成分を直線的に偏光させ、この不所望な成分を直線偏光器で除去し、次いで干渉する鏡面ビームの偏光と一致させるために残りの光を変換させることにより達成することが可能である。
9.振幅減衰
前に説明したように、鏡面成分は欠陥信号を増幅する。鏡面成分が強ければ強いほど、より一層の増幅が行われる。従って、減衰されていない即ち強い鏡面成分は殆どの場合に望ましいものである。注意すべきことであるが、このことは、生の画像において高いコントラストを達成するために鏡面成分がブロックされるか又は厳しく減衰されるかのいずれかである従来の顕微鏡検査法とは反対のことである。しかしながら、強すぎる鏡面成分はイメージセンサーを飽和させる場合がある。イメージセンサーの飽和は、欠陥信号を減少させるばかりではなく、望ましくない態様で欠陥信号に歪を発生させる。換言すると、ダイナミックレンジが鏡面成分によって飽和されると、欠陥信号は、たとえそれが鏡面成分によってできるだけ多く増幅される場合であっても、必要とされる数のグレイレベルをスパンすることは不可能である。この場合に、鏡面成分の幾らかの減衰が、時折、散乱成分を増加させる照明光強度における増加と共に、生の画像のコントラストを向上させるために必要とされる。
検知器の飽和を回避するために鏡面アパーチャストップを使用する鏡面成分の減衰は前に説明した。このセクションにおいては、その他の減衰方法を説明する。最も簡単な方法は、何らかの光吸収物質を使用して鏡面成分を吸収するものである。しかしながら、この簡単な減衰方法は、どのような光吸収減衰器にも損傷を与える蓋然性が非常にある鏡面成分の高いパワーに起因するウエハ又はレチクル欠陥検知に対しては適したものではない場合がある。
鏡面成分を減衰させるより適切な方法は、鏡面成分の過剰な部分をセンサー面から離れるように反射させることである。この種類の減衰器は、図2a及び2bに示した如く、位相制御器コンポーネントの内の一つの上に反射性誘電体コーティングを設けることにより容易に構成することが可能である。減衰の量は、図2bに示した如く、各々が異なる反射率を持っている幾つかの異なる反射コーティングを連続して設け且つそれらを移動可能とすることにより変えることが可能である。この種類の減衰器は簡単であり且つ付加的な光学的コンポーネントを必要とするものではない。しかしながら、これらの種類の減衰器は、高度に反射性の表面に起因してゴースト画像を発生する場合がある。
この種類の簡単な減衰器では減衰の連続した変化を達成することも困難である。増加した性能のために、連続的に可変の減衰器を使用することが可能である。連続的に可変の減衰器を作成するための一つの方法は、光の偏光特性を使用することである。偏光子を直線偏光されたビームの軸周りに回転させることにより、又は、代替的に、固定した偏光子を介して通過するビームの偏光方向を回転させることにより、連続的に可変の減衰器を構成することが可能であることは良く知られている。図11は偏光用ビームスプリッタを使用する連続的に可変の減衰器の1例を示している。図12は図11に示したタイプの減衰器を使用するシステムの例示的実現例を示している。図13a−13cは、幾つかの実施例に基く、瞳即ちアパーチャストップの近傍におけるシステムの更なる詳細を示している。
図11を参照すると、偏光されたレーザビーム1116が偏光ビームスプリッタ1164へ入り、それはp偏光した光1110を透過させる一方、s偏光された光1126を反射させる。回転可能なλ/2プレート1162を使用して入ってくる光の偏光方向を制御することにより、偏光ビームスプリッタを介して通過する鏡面成分の量を連続的な態様で制御することが可能である。ビームスプリッタ1164を通過した後に、p偏光した光ビーム1110は可動ウエッジ型ガラスプレート1122及び可変アパーチャストップ1150を前述した如くに通過する。出力側の回転可能なλ/2プレート1160は、存在する光の偏光を任意の方向へ再指向させるために使用することが可能である。この減衰方法は、ウエハ又はレチクルの検査に良く適している。しかしながら、この方法は完全に一般的なものではない。それは直線偏光を操作する場合にうまくいく。より一般的な偏光状態を使用することが必要である場合には、付加的な光学的コンポーネントを減衰器へ付加することが可能である。
図14は任意の偏光状態を達成するために使用することが可能なλ/2プレートとλ/4プレートの両方を具備している減衰器の1例を示している。ビーム1416は固定した偏光ビームスプリッタ1464へ入り、それはp偏光された光1410を透過させるが、s偏光された光1426を反射させる。回転可能なλ/4プレート1466及び回転可能なλ/2プレート1462の両方を使用して入ってくる光の偏光方向を制御することにより、該偏光ビームスプリッタを介して通過する鏡面部分の量を連続的な態様で制御することが可能である。固定したビームスプリッタ偏光子1464を通過した後に、p偏光された光1410は可動ウエッジ型ガラスプレート1422及び可変ストップ1450を介して、前述した如くに、通過する。出力側の回転可能なλ/2プレート1460及び回転可能なλ/4プレート1468は存在する光の偏光を任意の状態に再指向させるために使用することが可能である。λ/2プレート及びλ/4プレートの両方を回転させることにより、鏡面成分の任意の種類の偏光を適切な減衰をもって得ることが可能である。
図12を参照すると、干渉欠陥検知システム1200は、可干渉性ビーム1218を発生する照明源1212を包含している。ビーム1218は、図示した如く、サンプル1210の表面へ向けて指向される。サンプル1210はウエハ、レチクル、又はその他の検査中のサンプルとすることが可能である。サンプル1210からの散乱成分はビーム1228によって表されており、且つ鏡面成分はビーム1224によって表されている。レンズシステム1214及び1216を包含する高分解能光学系が、光の散乱成分と鏡面成分との両方を回収し且つそれらをイメージセンサー1240へ指向させる。サブシステム1270は鏡面成分1224の光路内に位置されており且つ位相制御器、可変減衰器、及び図11及び14に関して説明し且つ図示した如き1個又はそれ以上の偏光回転子を包含している。散乱光ビーム1228は補正板1230を介して通過されて鏡面成分と散乱成分との間の光路長差を補正する。ビームダンプ1226が可変減衰器によって減衰された鏡面成分1224の部分を受け付ける。
図13aを参照すると、補正板1330が幅狭のフーリエフィルタストリップ1350,1352,1354,1356と共に示されている。照明ビーム1318がプリズム1380を使用してサンプル(不図示)へ向けて反射される。サブシステム1370は図示した如くに位置されており且つ位相制御器、可変減衰器、及び図11及び14に関して説明し且つ図示した如く1個又はそれ以上の偏光回転子を包含している。図13b及び13cは、夫々、E−E’線及びF−F’線に沿っての図13aの構成の断面図を示している。図13b及び13cの両方において、補正板1330は開口と共に示されており、該開口内にはサブシステム1370の種々のコンポーネントが配置されている。偏光ビームスプリッタ1364は、p偏光された光を透過させるが、s偏光された光を反射する。回転可能なλ/2プレート1362を使用して入ってくる光の偏光方向を制御することにより、偏光ビームスプリッタを介して通過する鏡面成分の量を連続的な態様で制御することが可能である。P偏光された光は可動ウエッジ型ガラスプレート1322及び可変ストップ1350を介して通過する。出力側の回転可能なλ/2プレート1360は、存在する光の偏光を任意の方向に再指向させるために使用することが可能である。
10.高入射角度照明
考えられるノイズの一つの発生源は、ウエハにわたっての製造プロセスの変動に起因してウエハ上のプリントしたパターンがダイ毎に多少異なる場合に発生するウエハパターンノイズである。ウエハパターンノイズはウエハ表面内への照明光の浸透深さと共に増加する。従って、ウエハ表面内への照明光の浸透を減少させることが望ましい場合がままある。
深紫外線又は超紫外線等の短い波長の光はそれほどウエハ表面に浸透するものではない。何故ならば、ウエハパターニングのために使用される殆どの物質は、短い波長の光の強い吸収性のために短い波長の光に対して不透明である。しかしながら、可視光線又は近紫外線等の一層長い波長の光は、ウエハ表面を比較的一層深くに浸透することが可能である。何故ならば、これらの波長において殆どの物質による光の吸収性はより低いからである。サンプル表面内への照明光の浸透を減少させる最もポピュラーな方法の内の一つは、s偏光された光で高い入射角度でサンプルを照明することである。注意すべきことであるが、入射角度は光線と表面の法線との間の角度であり、表面それ自身ではない。極めて高い入射角度はすれすれ入射と呼ばれている。
しかしながら、この方法は2,3の欠点を有している。第1に、それはウエハパターンノイズのみならず欠陥信号光の強度を減少させる場合がある。第2に、それは画像面において式(2c)に示した干渉項の空間周波数帯域幅を増加させる場合がある。空間周波数帯域幅の増加は、干渉項を忠実に検知するためには画像のより細かなサンプリングを必要とする。このことは、後のセクションにおいて説明するキャッチオール動作モードの処理能力を減少させる場合がある。
これらの欠点にも拘らず、幾つかの適用例に対しては、特に利点が欠点よりも一層大きい場合に、ウエハパターンノイズを減少させるために照明光の入射角度を増加させることが望ましい。ここに開示するシステム及び方法は、照明の入射角度に関しては柔軟性がある。該システム及び方法は、低入射角度のみならず、高入射角度を受け付けることが可能である。図15乃至18はこれの例を示している。
図15は高入射角度照明を有する干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム1500は照明源ビーム1518を包含しており、それは、図示した如くに、サンプル1510の表面へ向けて指向されている。サンプル1510はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル1510からの散乱成分はビーム1528によって表してあり、且つ鏡面成分はビーム1524によって表してある。
レンズシステム1514及び1516を包含している高分解能光学系は、光の散乱成分及び鏡面成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー1540へ向けて指向させる。サブシステム1570が鏡面成分1524の光路内に位置されており、且つ図2a及び2bに関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び減衰器を包含している。散乱光ビーム1528は補正板1530を介して通過されて鏡面成分と散乱成分とに対する光路長を等しくさせる。ビームダンプ1526が該減衰器によって拒絶される鏡面成分1524の部分を受け付ける。
図16は高入射角度照明及び可変減衰器を有する干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム1600は照明源ビーム1618を包含しており、それは、図示した如くに、サンプル1610の表面へ向けて指向される。サンプル1610はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル1610からの散乱成分はビーム1628によって表してあり、且つ鏡面成分はビーム1624によって表してある。レンズシステム1614及び1616を包含している高分解能光学系は、光の散乱成分及び鏡面成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー1640へ指向させる。サブシステム1670が鏡面成分1624の光路内に位置されており、且つ図9−11及び14に関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び可変減衰器を包含している。散乱光ビーム1628は補正板1630を介して通過されて鏡面成分と散乱成分との光路長を等しくさせる。ビームダンプ1626は可変減衰器によって拒絶される鏡面成分1624の部分を受け付ける。
図17は低画像フレア及び高入射角度照明を有する干渉欠陥検知システムの1例を示している。フレアは、サンプルへ向かう途中でレンズ表面によって反射又は散乱される照明光であり、それは検知面上に現れる。干渉欠陥検知システム1700は、照明源ビーム1718を有しており、それは、図示した如く、サンプル1710の表面に向けて指向される。サンプル1710はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル1710からの散乱成分はビーム1728によって表されており、且つ鏡面成分はビーム1724によって表されている。レンズシステム1714及び1716を包含している高分解能光学的イメージングシステムは光の散乱成分と鏡面成分との両方を回収し、且つそれらをイメージセンサー1740へ向けて指向させる。サブシステム1770は鏡面成分1724の光路内に位置されており且つ図2a及び2bに関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び減衰器を包含している。散乱光ビーム1728は補正板1730を介して通過されて鏡面成分及び散乱成分の光路長を等しくさせる。ビームダンプ1726が減衰器により拒絶される鏡面成分1724の部分を受け付ける。
図18は、幾つかの実施例に基いて、低画像フレア及び高入射角度照明及び可変減衰器を有している干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム1800は照明源ビーム1810を包含しており、それは、図示した如く、サンプル1810の表面へ向けて指向される。サンプル1810はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル1810からの散乱成分はビーム1828によって表してあり、且つ鏡面成分はビーム1824によって表してある。レンズシステム1814及び1816を包含している高分解能光学系は、散乱及び鏡面光成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー1840上に画像形成する。サブシステム1870が鏡面成分1824の光路内に位置されており且つ図9−11及び14に関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び可変減衰器を包含している。散乱光ビーム1828は補正板1830を介して通過されて鏡面成分と散乱成分との光路長を等しくさせる。ビームダンプ1826は、可変減衰器により拒絶される鏡面成分1824の部分を受け付ける。
図15乃至18に示した如く、瞳面/アパーチャストップのエッジ(端部)へ向けてビーム位置をシフトさせることにより、又は照明光を外部的にサンプル上へ供給することにより、高い入射角度の照明を達成することが可能である。サンプルへの照明光の外部ルーチングはフレア及び迷光を著しく減少させる。位相制御、振幅減衰、及び鏡面成分の偏光制御等の前述した技術の全てを使用することが可能である。
11.照明光の方位方向回転
欠陥検知感度は、通常、照明光の入射の極角度(polar angle)のみならず方位角(azimuthal angle)にも依存する。方位角は、サンプル上のパターンと、該サンプル上への入射ビームの垂直投影(normal projection)との間の角度として定義される。幾つかの適用例に対して欠陥検知感度を最大化させるために、最適角度を見つけることが可能であるように照明方位角を変化させることが望ましい。実際的な方位角をカバーする効果的な方法は、サンプルの共役位置に回転可能なプリズム又はミラーを設置することである。このスキームを図19乃至22に示してある。図19及び20の形態はより柔軟性があるが、その理由は照明系と回収系とがレンズシステムの高パワー部分のみを共用しているからである。
図19は方位方向に回転可能な高入射角度照明を有している干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム1900は照明源ビーム1918を有しており、それはミラー又はプリズムのような回転可能で且つ傾斜可能な表面1920へ向けて指向される。反射ビームがレンズシステム1912及び1916を介して通過し且つ、図示した如く、サンプル1910の表面へ向けて指向される。サンプル1910はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル1910からの散乱成分はビーム1928で表してあり、且つ鏡面成分はビーム1924で表してある。
レンズシステム1914及び1916及びビームスプリッタ1972を包含している高分解能光学系が光の散乱成分と鏡面成分との両方を回収し且つそれらをイメージセンサー1940へ向けて指向させる。サブシステム1970が鏡面成分1924の光路内に位置されており且つ図2a及び2bに関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び減衰器を包含している。散乱光ビーム1928が補正板1930を介して通過されて鏡面成分と散乱成分との光路長差を補正する。ビームダンプ1926は、減衰器によって拒絶される鏡面成分1924の部分を受け付ける。サブシステム1970は、瞳の周辺周りを該ビームに追従するためにミラー1920の回転と共に移動せねばならない。表面1972上において50/50ビームスプリッタが使用される場合には、このスキームの光学的効率は、該ビームスプリッタを介しての透過及び反射のために、25%を越えるものではない。偏光ビームスプリッタが表面1972に対して使用され且つ四分の一波長板がビームスプリッタとサンプルとの間の照明経路中に使用される場合には、一層高い効率が可能である。
図20は、方位方向に回転可能な高入射角度照明を有しており且つ適用例を見つける場合のある鏡面成分用の可変減衰器を有している干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム2000は照明源ビーム2018を包含しており、それはミラー又はプリズム等の回転可能な表面2020へ向けて指向されている。反射ビームがレンズシステム2012及び2016を介して通過し且つ、図示した如く、サンプル2010の表面へ向けて指向されている。サンプル2010はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル2010からの散乱成分はビーム2028によって表してあり、且つ鏡面成分はビーム2024によって表してある。レンズシステム2014及び2016及びビームスプリッタ2072を包含している高分解能光学系は、サンプルからの散乱成分と鏡面成分との両方を回収し且つそれらをイメージセンサー2040へ向けて指向させる。鏡面成分2024の光路内に位置されているサブシステム2070は、図9−11及び14に関して説明し且つ図示されているような位相制御器及び減衰器を包含している。サブシステム2070は、瞳周辺部周りにビームを追従するためにミラー2020の回転と共に移動すべきである。散乱光ビーム2028は補正板2030を介して通過されて鏡面成分及び散乱成分に対する光路長を等しくさせる。ビームダンプ2026が可変減衰器によって減衰される鏡面成分2024の部分を受け付ける。
幾つかの適用例の場合に、特に大きなエテンデューのシステムにおいて、ビームスプリッタに対してレンズシステムの中間部には殆ど使用可能な空間が存在しない場合がある。この場合には、該ビームスプリッタを、より多くの空間が使用可能な箇所に位置させたビームスプリッタ又はミラーで置換させることが可能である。図21及び22は可能な形態を示している。図21は、方位方向に回転可能であり、高入射角度の照明を有する干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム2100は照明源ビーム2118を包含しており、それはミラー又はプリズム等の回転可能であり且つ傾斜可能な表面2120へ向けて指向されている。その反射ビームは、図示した如く、サンプル2110の表面へ向けて指向されている。サンプル2110はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル2110からの散乱成分はビーム2118で表してあり、且つ散乱成分はビーム2124で表してある。レンズシステム2114及び2116及びビームスプリッタ2172を包含している高分解能光学系が光の散乱成分及び鏡面成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー2140へ指向させる。サブシステム2170が鏡面成分2124の光路内に位置されており且つ図2a及び2bに関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び減衰器を包含している。サブシステム2170は、瞳の周辺部周りにビームを追従するために、ミラー2120の回転と共に移動すべきである。散乱光ビーム2128は補正板2130を介して通過されて鏡面成分及び散乱成分の光路長を等しくさせる。ビームダンプ2126が該減衰器によって拒絶された鏡面成分2124の部分を受け付ける。
図22は、方位方向に回転可能な高入射角度照明を有しており幾つかの適用例に対して適切である場合がある鏡面成分用の可変減衰器を有している干渉欠陥検知システムの1例を示している。干渉欠陥検知システム2200は照明源ビーム2218を包含しており、それはミラー又はプリズム等の回転可能で傾斜可能な表面2220へ向けて指向されている。その反射ビームは、図示した如く、サンプル2210の表面へ向けて指向されている。サンプル2210はウエハ、レチクル、又は検査中のその他のサンプルとすることが可能である。サンプル2210からの散乱成分はビーム2228で表してあり、且つ鏡面成分はビーム2224で表してある。
レンズシステム2214及び216及びミラー2272を包含している高分解能光学系が光の散乱成分及び鏡面成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー2240へ向けて指向させる。鏡面成分2224の光路内に位置されているサブシステム2270は図9−11及び14に関して説明し且つ図示した如き位相制御器及び可変減衰器を包含している。サブシステム2270は、瞳の周辺部周りにビームを追従するためにミラー2220の回転と共に移動すべきである。散乱光ビーム2228は補正板2230を介して通過されて鏡面成分及び散乱成分の光路長を等しくさせる。ビームダンプ2226が可変減衰器によって減衰される鏡面成分2224の部分を受け付ける。
サンプルの仮想共役焦点面に位置されているプリズム又はミラーを回転させることにより、原理的には、照明ビームの方位角を360度回転させることが可能である。しかしながら、照明光による360度の方位回転可能性は、他の機械的部品又は光学的部品との機械的衝突のために実際に達成することはむしろ困難である。幾つかの実施例において、照明光の180°の方位回転(azimuthal rotation)を使用することが可能である。これらの場合には、サンプルに対する照明光の方位回転の360度のカバレッジは、サンプルを180°回転させることによって達成される。サンプルの180度の回転は、通常、問題を発生するものではない。何故ならば、ウエハ又はレチクル上のパターンは大部分が0°−180°又は90°−270°方向に配向されているからである。照明ビームの方位回転は、それが偏光制御と結合された場合には、欠陥検知感度を増加させる上で非常に効果的である場合がある。照明の偏光制御は、照明光の方位回転と機械的に結合されることを必要とするものではない。従って、これらの二つの制御は困難性無く独立的に実施することが可能である。注意すべきことであるが、照明ビームの方位方向が変化された場合には、鏡面成分の光路内の位相制御器も照明ビーム光路に追従するためにレンズ軸周りに回転されるべきである。
12.透過的形態(Transmissive Configuration)
レチクル及び生物的組織等の幾つかのサンプルは反射性であるよりも一層透過性である場合がある。透過性サンプルを検査するために、本システムは透過性モードの形態とすることが可能である。
図23は透過性サンプルを介して照明を通過させるべく構成されている干渉欠陥検知システムの1例を示している。前に説明した実施例からの唯一の顕著な差異は照明光路である。
その他の側面は同じままである。干渉欠陥検知システム2300は可干渉性ビーム2318を発生する照明源を包含している。ビーム2318は、図示した如く、透過性サンプル2310へ向けて指向されている。サンプル2310は、例えば、レチクル又は検査中のその他の生物的サンプルとすることが可能である。サンプル2310からの散乱成分はビーム2328で表してあり、且つ鏡面成分はビーム2324で表してある。
レンズシステム2314及び2316を包含している高分解能光学系は光の散乱成分及び鏡面成分の両方を回収し且つそれらをイメージセンサー2340へ向けて指向させる。サブシステム2370が鏡面成分2324の光路内に位置されており且つ図2a−b、9−11及び14に関して説明し且つ図示した如き位相制御器、減衰器、及び/又は1個又はそれ以上の偏光制御器を包含することが可能である。散乱光ビーム2328が補正板2330を介して通過されて鏡面成分と散乱成分との光路長を等しくさせる。ビームダンプ2326が可変減衰器によって拒絶される鏡面成分2324の部分を受け付ける。
殆どのレチクルは透過性で且つ反射性の両方である。しかしながら、レチクルは通常透過性モードで使用される。この場合には、レチクルの反射ではなく透過が最終的な関心事である。従来のレチクル検査ツールと異なり、レチクル上の1点の複素透過係数を多数の異なる位相シフトを使用して透過した光の強度を測定することによって決定することが可能である。従って、ここで説明する透過性形態は、レチクル、特に位相シフトレチクルの検査に対して性能及びコストの点において非常に効果的に使用することが可能である。
13.デュアルモード形態
幾つかのサンプルは反射性で且つ透過性の両方の場合がある。良い例はレチクルである。この種類のサンプルをより完全な態様で検査するために、本システムは反射モードと透過モードの両方を同時に組み込むことが可能である。
この種類のシステムの例示的形態を図24に示してある。システム2400は反射性検査サブシステム2042a及び透過性検査サブシステム2042bを包含している。単一の供給源ビーム2418が例えばレチクルであるサンプル2410へ向けて指向されている。反射光ビーム及び透過光ビームが2個の別個のイメージセンサー2440a及び2440bによって同時的に検知される。位相制御及び減衰が各夫々のサブシステム2470a及び2470bを介して達成される。ここで前に説明したものと作動原理は異なるものではない。相対的位相、鏡面振幅、方位回転及び偏光の前述した制御を実施することが可能である。
レチクル検査の場合には、ダイ毎の画像減算技術は通常使用することは不可能である。この場合には、欠陥の無いレチクルの参照画像をレチクルパターンを形成するために使用されるレチクルデータから発生することが可能である。これは通常コンピュータによって行われる重たい計算作業である。次いで、欠陥を検知するために、実際のレチクルの画像を欠陥の無いレチクルのコンピュータが発生した画像と比較する。高速のデータ処理を容易化させるために、欠陥の無いレチクルの画像は非常に迅速に発生されねばならない。レーザのような完全に可干渉性の照明源はレチクル画像構成に必要とされる計算量を最小とさせ、従って最小の計算資源で高速の画像構成を可能とさせる。
14.マルチ波長形態
通常、より短い波長は一層高い欠陥検知感度を与える。しかしながら、幾つかの欠陥の検知感度はこの一般的な規則に従うものではない。従って、幾つかの適用例の場合には、一層効果的に多様な欠陥を検知するために複数の波長を使用する場合がある。複数の波長は逐次的動作形態か又は同時的動作形態かのいずれかで費用効果的に実施することが可能である。
逐次的複数波長
この形態においては、単に1個のイメージセンサーを使用する場合があり、且つ欠陥を検知するために一度に一つの波長を使用する場合がある。ハードウエハは一層簡単であるが、同時的複数波長動作用の形態と比較して動作にはより時間がかかる。連続的可変位相制御器は異なる波長を受け入れるために修正することは必要ではないが、振幅減衰及び偏光制御用のウエーブプレートは異なる波長を取り扱うために修正すべきである。
図25乃至27はλ/2プレートを変える幾つかの可能な手段を示している。図25は、各々が異なる検査波長に対してのものである2個のλ/2ウエーブプレートを保持する回転体2510の1例を示している。図26は各々が異なる波長に対して最適な3個のλ/2ウエーブプレートを保持する回転体2610の1例を示している。図27は4個の異なる波長に対する4個のλ/2ウエーブプレートを保持している回転体2710の1例を示している。図25−27に示したものと類似する修正をλ/4プレートに対して適用することが可能である。波長がスイッチされると、ウエーブプレートがそれに従ってスイッチされる。ウエーブプレートスイッチングは適宜の量だけウエーブプレート回転体を回転させることにより達成される。ウエーブプレートは全ての可能な振幅減衰及び偏光状態をカバーするために最大90°だけ回転される。従って、図27に示した如く、単一のマウントにおいて、4つの異なる波長に対して最大で4個のウエーブプレートをパッケージ化させることが可能である。ビーム寸法が各ウエーブプレートの面積と比較して非常に小さいものではない場合には、図25及び26に示したように、単一のマウントにおいて2個又は3個のプレートとすることがより実際的である。
同時的複数波長
波長スプリッタと各波長に対して別個のイメージセンサーとを付加することにより複数の波長を同時的に使用することが可能である。図28は2つの波長に対する例示的なシステム形態を示している。サンプル2810を検査するためのシステム2800は、2つの異なる波長を持っている2つの別々の照明源ビーム2818a及び2818bを使用している。これら2つの波長は結合され且つダイクロイック波長スプリッタ2872によって分離される。これら2つの波長は回収光学系2816の同一のフロントエンドを共用しており、それは、通常、全光学系の中で最も重要で且つ最も高価な部品である。回収光学系2816のフロントエンドを共有することにより、本システムは単純化のみならず安定性も達成している。バックエンドレンズコンポーネント2812及び2814は、通常、低光学パワーのものであり、従ってより廉価であり、それらは位相制御、倍率調節、及びセンサー選択において最大の柔軟性を与えるために別々とされている。サブシステム2870a及び2870bは、図2a−b,9−11,14に関して説明し且つ図示した如き位相及び減衰を制御するために使用される。
各波長は、又、それ自身の補正板2830a及び2830b、及びイメージセンサー2840a及び2840bを使用する。幾つかの実施例においては、266nm及び532nmの波長が使用される。これら2つの波長を発生する技術は熟知されており、且つ単一レーザシステムが両方の波長を与えることが可能であり、従ってコストを低減させる。注意すべきことであるが、193nm、真空紫外線、超紫外線等のより短い波長は一層高い感度を得るために使用することが可能である。しかしながら、より短い波長は取り扱いが一層困難である。幾つかの実施例においては、バックエンド光路内に更なる波長スプリッタを付加させることによって2個を越える波長を実現している。
波長スプリッタを除去し且つイメージセンサーを節約するために、全ての位相制御器を互いに隣り合わせて同一の瞳面内に位置させることが可能であるように物を整理することも可能である。しかしながら、この様な形態は機械的設計を一層困難なものとさせ且つ瞳オブスキュレーション(pupil obscuration)を増加させる。更に、本システムは、複数の波長または広帯域照明が同じ位相制御器を共用するような形態とさせることが可能である。この様な形態は位相制御器の数を節約するが位相の精密な制御を困難なものとさせる。
15.分散光源
前述した如く、多くの適用例に対して、非常に可干渉性のビームを発生する単一空間モードレーザが好適な光源である。しかしながら、幾つかの実施例においては、単一モードレーザ以外の光源を使用することも可能である。例えば、アークランプ等の分散光源を図29乃至31に示したように使用することが可能である。分散光源は、ここでは、そのエテンデューがその波長の平方よりも一層大きな非可干渉性光源として定義している。
図29は低入射角度照明システムを有しており且つ分散光源を使用している干渉欠陥検知システムの1例を示している。入ってくる照明ビーム2918はビームスプリッタ2972を使用してサンプル2910へ向けて指向されている。鏡面反射成分はビーム2924によって表されており、且つ図2a−2b,9−11,14に関して説明し且つ図示したサブシステムのいずれかに類似している位相制御器及び減衰器2970を介して通過する。散乱成分はビーム2928によって表してあり、補正板2930を介して通過する。フロントエンド光学系2916及びバックエンド光学系2914がサンプルからの光を回収し且つイメージセンサー2940へ向けて指向させる。
図30は発散光源を具備する高入射角度照明を有する干渉欠陥検知システムの1例を示している。入ってくる光ビーム3018はビームスプリッタ3072を使用してサンプル3010へ向けて指向される。鏡面反射成分はビーム3024によって表されており、それは図2a−2b,9−11,14に関して説明し且つ図示したサブシステムの内のいずれかに類似する位相制御器及び減衰器3070を介して通過する。ビーム3028によって表されている散乱成分は補正板3030を介して通過する。フロントエンド光学系3016及びバックエンド光学系3014はその光を回収し且つそれをイメージセンサー304へ向けて指向させる。
図31は発散光源を具備する高入射角度照明及び散乱光の光路内における位相制御を有している干渉欠陥検知システムの1例を示している。入ってくる照明ビーム3118はビームスプリッタ3172を使用してサンプル3110へ向けて指向されている。鏡面反射成分はビーム3124によって表されており且つ補正板3130を介して通過する。ビーム3128によって表されている散乱成分は、図2a−2b,9−11,14に関して説明し且つ図示したサブシステムの内のいずれかに類似する位相制御器及び減衰器3170を介して通過する。フロントエンド光学系3116及びバックエンド光学系3114はその光を回収し且つイメージセンサー3140へ向けて指向させる。
発散光源は、イメージングシステムレンズコンポーネントの一層広い区域にわたり光エネルギを一様に分散させる利点を有している。このことは、照明ビーム又は鏡面ビーム成分の高いパワー密度によるレンズ損傷の可能性を減少させる。しかしながら、発散光源に関連する欠点が存在している。例えば、散乱成分から鏡面成分を空間的に分離させることが困難である。散乱成分の幾らかの部分は不可避的に瞳面においてさえも鏡面成分とオーバーラップする。このことは、散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相の精密な制御を困難なものとさせる。位相制御における不精密性は、通常、一層拙い性能となる。別の欠点は、信号光の回収効率が、増加された瞳オブスキュレーションのために、減少される傾向となることである。又、通常、瞳面におけるブロッキングストリップの比較的大きな足跡(footprint)のために、発散光源でのパターンノイズに対する判別を行うためにフーリエフィルタを実現することが一層困難である。
III.動作モード
ここで説明するシステムは、多くの異なる態様で動作させることが可能である。幾つかの異なる動作モードに関する更なる詳細について説明する。
1.高感度モード
このモードは、特定のタイプの欠陥、特にチップ製造歩留まりに悪影響を与える場合のある種類の欠陥、をターゲットとしている。散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相は、通常、欠陥信号を最大とさせるために設定される。しかしながら、該相対的位相は、ウエハパターンノイズを最小とするか又は欠陥信号の信号対雑音比を最大とするために設定することも可能である。殆どの場合において、これらは互いに均等である。
前述した如く、信号対雑音比は、鏡面成分による信号のノイズレス増幅を介して内在的な信号対雑音比の最大で2倍まで増加させることが可能である。前に示した如く、ノイズレス増幅は、弱い欠陥信号の検知にとって重要である。欠陥及び周囲の回路パターンの詳細な物理的特性が不明である場合には、所望の又は理想的な相対的位相値を実験的に決定することが可能である。例えば、最適な位相値を実験的に決定するために、次のセクションにおいて導入するキャッチオールモードをサンプルに関して稼動させることが可能である。一方、欠陥の物理的特性が既知である場合には、検知用の最適な相対的位相を理論又は数値シミュレーションに基いて設定することが可能である。
式(2c)は、欠陥信号振幅と鏡面成分との間の相対的位相φsが欠陥信号を最大とさせるために重要な変数であることを示している。それは、欠陥信号の極値がφs=0°又は180°である場合に発生することを示している。φs=0°である場合には、干渉項の値は正となり、且つφs=180°である場合に、干渉項の値は負となる。前述したように、全欠陥信号はダークフィールド項と干渉項との両方から構成されている。従って、全欠陥信号を最大とさせるためには、干渉項の符号は全体のダークフィールド項と同じ符号であるように修正されるべきである。全体のダークフィールド項の符号は制御することは不可能である。それは、欠陥及び周囲のパターンの物理的特性に依存して正か負かのいずれかとなることが可能である。従って、最大の欠陥信号を得るためには、干渉項の位相を制御することが可能である。
全体のダークフィールド項の符号が正である場合には、φs=0°の選択が全欠陥信号を最大とさせる。全体のダークフィールド項の符号が負である場合には、φs=180°の選択が全欠陥信号を最大とさせる。開示したシステム及び方法の利点を明確に示すために、現実的であるが簡単な欠陥が数値シミュレーションのために選択される。
又、前述したように、該相対的位相は、鏡面成分及び散乱成分のいずれか又は両方の位相を変えることにより変化させることが可能である。しかし、実際上は、鏡面成分は通常一層低いエテンデューを有しているので、鏡面成分の位相を変化させることが通常一層容易である。従って、全ての数値シミュレーションにおいて、鏡面成分の位相を変化させて最適な相対的位相値を得る。数値シミュレーションは特定のタイプの欠陥に制限されているものであるが、ここに開示するシステム及び方法は、通常、任意の種類の欠陥の検知に対して適用可能である。
図32a及び32bは、ここでの数値シミュレーションに使用される欠陥の形状を示している。該欠陥は円筒形状をしており、その直径と同じ高さ即ち深さを有している。図32aは「d」の高さ及び直径を有している粒子型欠陥3212を示している。欠陥物質はサンプル物質と同じであると仮定されている。これらの種類の欠陥は、反射光に振幅変化ではなく位相変化を導入するものであるから位相欠陥と呼称される。位相のみであるので、それらは可能な欠陥タイプの完全なスペクトルの極限端にある。
別の極限タイプの欠陥は振幅のみの欠陥である。振幅のみの欠陥は位相欠陥に対して反対の特性を有しており、それらはゼロの高さを有しているが、それらの周りの区域とは異なる反射率を有している。殆どの実際の欠陥は、純粋の位相タイプでも純粋な振幅タイプでもない。それらは、通常、それらの周囲からの位相差及び振幅差の両方を有している。位相タイプ欠陥からの信号のみがこのセクションにおいてシミュレーションされるが、そのシミュレーションに使用される式及びコンピュータプログラムは一般的なものであり、その他のタイプの孤立した円筒状欠陥を取り扱うことが可能である。
ここで説明するシミュレーションにおいて、266nmの波長が使用され且つ信号回収システムの開口数(NA)は0.9であると仮定されている。位相制御器及びそのマウントに起因する中央オブスキュレーションは0.2NAであると仮定されている。
画像形成用の式を以下に導出し且つスカラー回折理論に基づいている。スカラー式はベクトル式ほど正確なものではない。しかしながら、それは、従来技術とここに開示するシステム及び方法との間の性能比較のためには十分に正確なものである。それは、又、ここでの我々の主要な関心事である四分の一波長よりも一層小さな欠陥に対する信号強度及び形状の極めて正確な定量的推定を与えるものである。又、スカラー式は、通常、ベクトル式よりも一層明瞭な物理的洞察を可能とするものであり、従って、ここで開示するシステム及び方法に含まれている重要な概念を説明するのにはより適している。欠陥高さの影響は急激な位相変化として近似される。この近似は、イメージングシステムが光波の放射性部分のみを回収することを仮定して正当化される。それは、光波の非放射性部分を回収する近接場顕微鏡においては適切なものではない。導出される式は十分に一般的なものであり、それらは他のタイプの孤立した円筒状欠陥を取り扱うことが可能である。以下の表記法を式において使用する。
h:欠陥高さ
a:欠陥の反射率振幅
b:周囲区域の反射率振幅
ρ1:イメージングシステムの中央オブスキュレーションの開口数
ρ2:イメージングシステムのアパーチャストップの開口数
t:減衰器の透過振幅
φ:位相制御器により鏡面成分に付加される位相(ラジアン)
サンプル反射率の複素振幅O(r)は以下の如くに表すことが可能である。
式(3)は以下の如くに書き直すことが可能である。
最初の角括弧内の部分は純粋な位相オブジェクトを表しており、且つ2番目の角括弧内の部分はゼロ反射率での純粋な振幅オブジェクトを表している。従って、一般的に、どのような小さな欠陥も純粋な位相欠陥と純粋な振幅欠陥とに分解することが可能であるということが可能である。
本システムの円対称性を維持するために垂直照明が採用されている。円対称性は、信号グラフをより散らばったものでないようにするために維持されている。斜め照明は垂直照明と同じ容易さでモデル化させることが可能である。単位強度での垂直照明は以下の如くに表すことが可能である。
反射光の複素振幅W(x,y)は以下の如くに表される。
座標を波長で公式化しなおすと、次式が得られる。
瞳面において観察される間接パターン振幅Q(α,β)はW(x’,y’)のフーリエ変換である。従って、瞳面における複素新婦は以下の如くになる。
瞳透過(pupil transmission)Pupil(ρ)及び鏡面成分に関する位相制御は以下の如くに表される。
検知器即ち検知面上のサンプル焦点ずれの効果は以下の如くに瞳において導入することが可能である。
瞳透過及び焦点ずれ効果が結合されると、以下の如くである。
瞳における反射光の複素振幅V(α,β)は以下の通りとなる。
画像面における光の複素振幅はV(α,β)の逆フーリエ変換である。それは以下の如くになる。
画像面における光強度I(x’)は以下の如くになる。
上の式は欠陥信号シミュレーションの全てに対して使用される。式(15)の値は、例えば、パイソン(Python)プログラミング言語を使用して数値的に計算される。
図33−35bは上のプログラムを使用した数値シミュレーション結果を示している。図33は40nm直径欠陥に対するシミュレーション結果を示している。曲線3310は従来のブライトフィールドモードシステムに対するシミュレーション結果を示しており、且つ曲線3312及び3314は、夫々、鏡面成分に適用した144°及び−36°の位相角度及び高感度モードを使用したここに開示した干渉方法のシミュレーション結果を示している。曲線3316は従来のダークフィールドシステムに対するシミュレーション結果を示している。
図34は20nm直径結果に対するシミュレーション結果を示している。曲線3410は従来のブライトフィールドモードシステムに対するシミュレーション結果を示している。曲線3412及び3414は、夫々、鏡面成分に対する117°及び−63°の位相角度を導入する高感度モードを使用したここで開示した干渉方法に対するシミュレーション結果を示している。曲線3416は従来のダークフィールドシステムに対するシミュレーション結果をプロットしている。
図35aは10nm直径結果に対するシミュレーション結果を示している。曲線3510は従来のブライトフィールドモードシステムのシミュレーション結果を示している。曲線3512及び3514は、夫々、鏡面成分に対して104°及び−76°の位相角度を導入する高感度モードを使用するここで開示した干渉方法のシミュレーション結果を示している。曲線3516は従来のダークフィールドシステムに対するシミュレーション結果を示している。図中の記号「BF」はブライトフィールドモードを使用する従来システムを意味しており且つ比較の目的で図中に包含してある。図中の記号「HS」は高感度モードを意味している。角度値は、前述した如く、欠陥信号の2つの極値を得るために鏡面成分に対して導入される位相角度である。正の角度はφs=0°の場合に対応しており、且つ負の角度はφs=±180°の場合に対応している。
角度φsは鏡面成分に対して導入される位相角度ではない。そうではなく、φsは鏡面成分に導入される位相角度、及び欠陥信号と鏡面成分との間の本来備わった(innate)位相角度差、の和である。この本来備わった位相角度差は、従来のブライトフィールドモードシステムが有する位相角度差である。シミュレーションした欠陥信号におけるこの本来備わっている位相角度差は、40nm,20nm,10nmに対して、夫々、−144°,−117°.−104°である。これらの本来備わった位相角度差は0°又は±180°から極めて異なるものである。従来のブライトフィールド検査モードが良好に動作するものでもなく且つ安定に動作するものでもない理由である。
位相制御器は、欠陥とその周りとの間の全位相角度差を0°又は±180°とさせるために位相角度の適宜の量を加算又は減算する。シミュレーションした欠陥信号において、位相制御器は、40nm,20nm,10nm欠陥からの本来備わった信号に対して、夫々、144°,117°,104°を加算して全位相差を0°とさせている。位相制御器は、又、40nm,20nm,10nm欠陥からの本来備わった欠陥信号に対して、夫々、−36°,−63°,−76°を加算して全位相差を−180°とさせている。
図33乃至35bにおける記号は、位相制御器が本来備わった位相角度差へ加算した位相角度を示している。「BF」は位相角度加算(又は減算)無しを意味している。従って、「BF」は「HS:0°」と均等であり、鏡面成分に対して位相加算の無い高感度モードである。又、図中の記号から注意すべきことであるが、2つの極限欠陥信号に対する2つの位相角度の間の差は180°である。図中の記号「DF」はダークフィールドシステムを現している。
シミュレーション結果から幾つかの重要な事実を導き出すことが可能である。第1に、ダークフィールド信号の強度は、欠陥の寸法が波長の四分の一よりも小さくなる場合に、非常に迅速に減少する。周囲のパターンにより散乱光と建設的に干渉する場合には、ダークフィールド信号は図中に示したものよりも一層高くなる場合がある。その種類の干渉は制御可能なものではなく、完全に運に依存する。従って、波長の四分の一より小さな寸法の欠陥に対しては、ダークフィールド欠陥信号は信頼性をもって検知するには低すぎるものとなることが一般的に予測される。近い将来において、半導体ウエハにおける臨界的な欠陥のかなりの部分が波長の四分の一よりも一層小さいものであることが予測される。実際に、線幅は四分の一波長に近づくことが予測されており、その場合に、波長は193nmを193nmにおける水の屈折率で割り算したものである。従って、現在のダークフィールド検査技術の将来性は良くない。
第2に、シミュレーションにおいて使用される欠陥が位相オブジェクトであっても、欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相を0°又は180°とさせるために鏡面成分に関する所要の位相変化は必ずしも±90°ではない。実際に、最大の欠陥信号に対する鏡面成分に関して必要とされる位相変化の量は、位相オブジェクトの寸法に依存する。これは、本検査技術と固定した±90°位相が最大画像コントラストのために鏡面成分へ加算される位相コントラスト顕微鏡検査方法との間の重要な差異である。これらの簡単な例であっても、欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相の連続的な変化性が信頼性のある欠陥検知のために望ましいものであることを示している。より一般的な欠陥からの信号がシミュレーションされると、それらは、位相制御器において連続的変化性を有することが望ましいことを一層明確に示す。
例えば、純粋に振幅欠陥からの信号がシミュレーションされる場合には、位相制御器に対する最適位相値は0°又は180°である。これらの位相値は、純粋に位相欠陥の例において示されるものとは非常に異なっている。実際に、位相制御器は、全ての種類の欠陥を信頼性をもって検知することが可能であるために任意の位相シフト値を与えることが可能であるべきである。従って、位相制御器の連続的な変化性は望ましいものであるばかりか、欠陥を信頼性を持って検知するが望まれる場合には、実際には必要なものである。ここで開示するシステム及び方法は、実質的に連続的な態様で相対的位相を変化させることが可能な位相制御器を使用している。
第3に、欠陥信号は、相対的位相を適切に変化させることにより、従来のブライトフィールド信号よりも著しくブースト即ち増幅される。更に、欠陥寸法が一層小さくなる場合に、信号増幅は一層顕著なものとなる。最大欠陥信号モードにおいて動作する別の利点は、改善された信号安定性である。何故ならば、信号強度が極値である場合には、外部摂動に対する一次信号感度はゼロだからである。従って、ここに開示するシステム及び方法は、よりよい安定性と共に、一層高い欠陥検知感度を提供することが可能である。
位相制御器は、又、不所望の欠陥信号の減衰のために使用することが可能である。その良い例はウエハパターンノイズであり、それは実際にはノイズではなく欠陥信号である。殆どの欠陥検知状態において、ウエハパターンノイズを抑圧することが望ましい。ウエハパターンノイズの抑圧が関心の或る欠陥信号の増幅よりも一層重要である場合には、位相制御器は、関心の或る欠陥信号を最大化させるのではなくウエハパターンノイズを最小化させるべく設定することが可能である。
3つの図33,34、35aの全てにおいて、ブライトフィールド信号は未だにかなりの大きさである。しかしながら、重要なことは、このことはシミュレーションにおいて使用される欠陥タイプに対して成り立つということである。ブライトフィールド信号は、幾つかのタイプの実際の欠陥に対してはかなり一層小さい場合がある。この点を理解するために、欠陥信号を一層明示的に書くことが可能である。欠陥信号sは、欠陥からの生の信号と鏡面成分との間の差異である。(式(3)を参照)従って、欠陥の位置における欠陥信号振幅は以下の通りになる。
尚、Rdは欠陥の反射率であり、hは欠陥の高さである。
式(17)が示すところによれば、以下の式が成立する場合には、
尚、Rsurは周囲区域の反射率
欠陥信号は純粋に仮想的である。即ち、欠陥信号と鏡面成分との間の位相差φsは±π/2である。この場合には、式(2c)に示した干渉項はゼロとなり且つブライトフィールド信号に貢献するものではない。その結果、ブライトフィールド信号は小さな欠陥に対しては非常に低いものであるダークフィールド信号と同じである。このことは、ブライトフィールドシステムは幾つかのタイプの欠陥を全く見つけることが出来ない場合があることを示している。
良い例はシリコンウエハ上の小さな高度に反射性の粒子である。該粒子の反射率はシリコンのものよりも一層高いので、それは式(18)を満足する場合がある。該粒子がたとえ近似的であったとしても式(18)を満足する場合には、ブライトフィールドシステムはそれを見つける上で困難性を有している。図35bはその問題を明らかに示している。欠陥寸法は10nmであるが、その反射率は式(18)を満足するためには周囲区域よりも26%一層高い。
これらの条件下において、ブライトフィールド信号3521及びダークフィールド信号3522の両方は事実上ゼロである。しかしながら、散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相を制御することにより該信号を完全に回復させることが可能である。90°の相対的シフトは干渉信号3523を発生し、且つ−90°の相対的シフトは信号3524を発生する。この例はここの開示する干渉検知システム及び方法の能力を示している。
ブライトフィールドシステムが明るい欠陥に対して非常に盲目的である場合があるということは直感に反するように思われる。しかし、実際には、理由が存在している。このことは、2つの極限状態を考えることにより少なくとも定性的に理解される。欠陥の反射率が周囲区域の反射率と同じであるか又はそれより低い場合には、ブライトフィールド信号は負の符号を有するべきであり、即ちその生の画像における窪みであって、参照(基準)を減算する前の信号である、ことを我々は直感から知っている。しかしながら、その欠陥の反射率が周囲区域の反射率よりも一層高い場合には、ブライトフィールド信号は正の符号を有すべきであり、即ちその生の画像におけるピークであることも、我々は直感から知っている。このことは、欠陥の何らかの中間の反射率に対してブライトフィールド信号はゼロでなければならないことを我々に告げている。従って、幾つかのタイプの欠陥に対してブライトフィールドシステムの致命的な盲目性が存在している。その欠陥が比較的大きい場合には、その欠陥が式(18)を満足させる可能性は乏しい。
従って、ブライトフィールドシステムが幾つかの大きな欠陥に対して盲目的であることの可能性は乏しい。しかしながら、欠陥が四分の一波長よりも一層小さい場合には、欠陥が式(18)を満足する可能性は顕著なものとなる。欠陥寸法は迅速に縮小する。従って、ブライトフィールドシステムは、将来の技術と関連する迅速に縮小する欠陥寸法に対して信頼性をもって欠陥を検知することが不可能であることが予測される。ここに開示するシステム及び方法は、欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相を活用するものである。上の例において、位相制御器が鏡面成分の位相を±π/2だけ変化させると、干渉項はその完全な強度を回復する。
図33において、信号曲線3312は信号曲線3314よりも絶対的振幅において僅かに一層大きい。何故ならば、式(2c)に示されるダークフィールド項及び干渉項は同じ符号を有しており且つ曲線3312に対して建設的に加算するからである。しかしながら、曲線3314の場合に、ダークフィールド項と干渉項とは反対の符号を有しており且つ破壊的に加算するからである。従って、この特定の例において、曲線3312は曲線3312よりも欠陥検知のためにはより良い選択である。この特定の例において、2つの選択の間の差異は小さい。しかしながら、実際の欠陥の場合には、これら2つの選択の間の差異は顕著である場合がある。高感度動作モードは任意の特定のタイプの欠陥に対して最適な信号曲線を選択することを可能とする。
イメージングシステムアパーチャの尖ったエッジからの回折に起因して、図33乃至35bに示した如く、信号測定点がその信号の周辺部へ向かって移動するに従い、その検知信号は、通常、符号を変化させる。従って、全信号を最大化させるために該信号を空間的に積分することが必要である場合には、該信号の全ての部分を積分の前に正の値へ変換することが重要である。主要のノイズ源は検知器ノイズ及び鏡面成分からのホトンノイズであり、それらは両方共空間的に一様であるので、ノイズの量は空間的に一様である。従って、該信号はその中心即ちピークにおいて最も高い信号対雑音比有しており、且つその周辺においてより低い信号対雑音比を有している。
該信号変換プロセスが、該信号の高い信号対雑音部分に対して一層高い重みを与え且つ該信号のより低い信号対雑音部分に対してより低い重みを与えることが有益的である。例えば、該信号を平方すること及び絶対値を取ることの両方が該信号の全ての部分を正の値へ変換させる。しかしながら、該信号を自動的に平方することは該信号の一層高い品質部分に対してより多くの重みを与え、一方該信号の絶対値を取ることは該信号の全ての部分に対して同じ重みを与えることとなる。従って、該信号を平方することは、該信号の絶対値を取ることよりもより良い変換プロセスである。しかしながら、前者のプロセスは後者のプロセスよりもより多くの計算時間がかかる。従って、実際のシステムにおいては、計算資源が制限されている場合には、性能と速度との間の何らかの妥協が必要となる場合がある。
コントラスト向上
前述した如く、強い鏡面成分は欠陥信号の高いノイズレス増幅を意味している。欠陥信号の高いノイズレス増幅は差分画像(subtracted image)における高い欠陥コントラストに通じる。このことは、更に、より敏感で且つ安定な欠陥検知システムに通じる。従って、強い鏡面成分は通常望ましいものである。注意すべきことであるが、強い鏡面成分は差分画像のコントラストを増加するが、生の画像(raw image)のコントラストを減少させる。欠陥検知に対する関心事のコントラストは、減算前の生の画像のコントラストではなく差分画像のコントラストである。この基準は、生の画像のコントラストを増加させることに努力している位相コントラストタイプ及びその派生物を包含する全ての従来の顕微鏡とは全く反対である。しかしながら、そのダイナミックレンジが非常に大きなものでない場合には、強すぎる鏡面成分はイメージセンサーを飽和させる場合があり、その結果、不所望な態様で欠陥信号に歪を発生させることとなる。このことは該信号に対しての不足した数のグレイレベルとなる。従って、イメージセンサーのダイナミックレンジが飽和される場合には、欠陥信号の歪を回避するためには、生の画像のコントラストを増加させる必要がある場合があり、且つ鏡面成分のコントラストを減少させる必要がある場合がある。
欠陥又はウエハパターンが波長よりもかなりより小さい場合には、適切に高い画像コントラストを得るために鏡面成分に特に注意することは有用である場合がある。数値シミュレーションはこのコントラスト向上方法の有効性を確認している。
図36は、鏡面成分の強度を96%だけ減衰させることにより向上させたコントラストが与えられた40nm欠陥の画像を示している。曲線3610は鏡面成分を減衰させた後の結果を示しており、一方曲線3612は鏡面成分を減衰させる前の結果を示している。
図37は、鏡面成分の強度を99.9%だけ減衰させることにより得られる20nm欠陥の画像の向上されたコントラストを示している。曲線3710は鏡面成分を減衰した後の結果を示しており、一方曲線3712は減衰前の結果を示している。注意すべきことであるが、シミュレーションにおいて使用した減衰の量は過剰なものである。それらは多くの場合において推奨されるものでも実際的なものでもないが、コントラスト向上のための技術の能力を示すために使用したものである。
予測されるように、同じ画像コントラストを得るためには、より小さな欠陥は鏡面成分のより強い減衰を必要とする。ウエハ上の欠陥及び回路パターンの寸法は容赦なく継続して減少され、且つイメージセンサーにおいて高いダイナミックレンジを達成することは困難であり且つコスト高となる場合がある。従って、将来においてはより小さな欠陥に対処するためには鏡面成分の強い減衰が必要となる場合がある。このことが、多くの実施例において、鏡面成分の光路内に減衰器が配置されていることの理由である。
この種類のコントラスト向上技術の欠点の一つは光エネルギの大きな損失である。鏡面成分の減衰に起因するエネルギ損失を補償するために、より多くの光を照明光路へ供給することが可能であるか、又は検知器信号を一層長い時間期間にわたり積分することが可能である。多くの適用例において、これらのオプションのいずれもが望ましいものではない。何故ならば、強力な照明ビームはサンプルを損傷する場合があり、且つより長い検知器積分時間は処理能力を低下させるからである。従って、コントラスト向上は、これらの及びその他の不所望な副作用を心して注意深く使用せねばならない。注意すべきことであるが、サンプル上のより大きな面積を照明すること及び比例的により大きな検知器アレイを使用することは、処理能力を維持しながら強力な照明によるサンプル損傷の可能性を減少させることが可能であるが、このことは、通常、より高価な装置構成を必要とする。
幸運なことに、コントラスト向上を明確に示すためにシミュレーションにおいては鏡面成分を厳しく減衰させていたが、殆どの実際の場合は、現在の欠陥検知システムにおいて使用されているイメージセンサーの大きなダイナミックレンジのお陰で、それ程大きなコントラスト向上を必要とするものではない。中程度のコントラスト向上が現在のプラクティスで非常に許容可能なものであるばかりか、信号増幅に対する現在の必要性、使用される光エネルギの効率、及びシステム処理能力を考慮すると、望ましいものでもある。
図36における3610及び図37における3710の欠陥画像の形状から重要な結論を導くことが可能である。欠陥画像の形状は、鏡面成分の大量の減衰であっても干渉項は優勢であることを示している。減衰が99.9%でさえも、干渉項は未だに優勢である。干渉項は鏡面成分による信号のノイズレス増幅によって形成され、且つサンプルの低反射率は鏡面成分の高い減衰とほぼ同じ効果を有している。従って、鏡面成分の非常に高い減衰であっても干渉項が優勢であることは、極めて低い反射率のサンプルであっても、鏡面成分によるノイズレス信号増幅は非常に効果的に作用することを意味していると解釈することが可能である。このことは、鏡面成分によるノイズレス信号増幅に依存するここに開示するシステム及び方法の全ては事実上任意の種類のサンプルで良好に動作することを意味している。実際に、欠陥が小さければ小さいほど、鏡面成分による欠陥信号のノイズレス増幅は一層効果的である。このことを支持するより正確な例については「ダークフィールドモードの限界」に関する後のセクションにおいて示す。
偏光の選択
前述した如く、殆どの場合に、検知信号の信号対雑音比は照明光及び回収光の偏光状態に依存する。従って、関心の或る欠陥に対して正しい偏光を選択することが重要である。正しい偏光の選択は、直感、理論的モデリング、数値シミュレーション、又は実験で行うことが可能である。しかしながら、全ての異なる偏光の組み合わせをテストすることは、その数が多いので、通常は実際的ではない。欠陥及びその隣のパターンが螺旋構造を有するものでない限り、偏光の選択は直線偏光の組み合わせへ制限することが可能である。
2.キャッチオールモード(Catch-All Mode)
欠陥は、振幅のみならず、散乱光の位相をも変化させる場合がある。異なる種類の欠陥は散乱光の振幅及び位相の両方を異なるように影響を与える。従って、散乱光の振幅及び位相の両方を測定する場合には、より多くの欠陥を見つけることが可能であるばかりか、欠陥に関してのより多くの情報を得ることが可能である。キャッチオールモードは、欠陥信号の振幅と位相の両方の決定に基くものである。欠陥信号はその振幅と位相とによって完全に決定することが可能であるから、ノイズが十分に低い場合には、キャッチオールモードは、原理的に、一つの操作において異なる種類の欠陥の事実上全てを捕らえることが可能である。
欠陥は、振幅及び位相情報の両方が得られる場合に、一層より正確に分類することが可能である。例えば、欠陥の寸法は、振幅情報から推測することが可能であり、且つ位相情報から、その欠陥が粒子タイプであるか又はボイドタイプであるか、又はメサタイプであるか又は谷タイプであるかを決定することが可能である。1例を「3スキャン方法」のセクションにおいて与える。
サンプル基板及びパターン物質、及び周囲パターン幾何学的形状等のその他のデータが付加的に使用される場合には、更により正確な欠陥分類が可能となる場合がある。
より正確な欠陥分類は、通常非常にコスト高である欠陥レビュープロセスにおいて著しく時間を節約することとなる。欠陥レビューは、通常、高価であるが遅い電子顕微鏡の使用を必要とする。加えて、キャッチオール動作モードにおいて収集された情報は、その他の動作モードの適切なセットアップに対して非常に有用である場合がある。その他の動作モードの適切なセットアップのためのキャッチオールモードの利用はセットアップ時間を削減するのみならず、早い自動的なセットアップを可能とさせる。
キャッチオールモードは、キャッチオールモード自身のセットアップに対して使用することも可能である。例えば、キャッチオールモードは、各々が異なる位相シフトに対応している異なる数のサンプルスキャンで、且つ異なる偏光で、多数回動作させることが可能である。次いで、その結果を互いに比較してキャッチオールモード自身の最適な使用のたための最善の偏光設定及び最適な数のサンプルスキャンを決定することが可能である。従って、キャッチオールモードは強力なモードである。キャッチオールモードの単一操作はサンプルの複数のスキャンを必要とする。しかしながら、その処理能力は他のモードと比較して一層低くなることが予測されるものではない。何故ならば、それは全ての異なる種類の欠陥を単一の操作で捕らえることが可能であり、且つ複数回のスキャンの間でサンプルのローディング/アンローディングの必要性がないからである。又、処理能力の減少は欠陥レビュープロセスにおける処理能力の増加により見事に補償される。従って、キャッチオールモードはその処理能力がより低いものであってもポピュラーな動作モードであると予測される。
3スキャン方法
式(2c)は、干渉項が欠陥信号の相対的位相のコサイン(余弦)及び振幅を包含していることを示している。欠陥信号の相対的位相及び振幅を完全に決定するためには、サンプルの少なくとも3つのスキャンを使用することが必要である。2つのスキャンでは十分ではない、というのは、全体のダークフィールド項という別の未知数が存在しているからである。鏡面成分の形状は各スキャンに対して異なって設定することが必要である。このことは、位相制御器をキャリブレーションすることにより達成することが可能である。位相制御器に対するキャリブレーション方法は前のセクションで説明している。
鏡面成分の初期位相値は重要ではなく、従って鏡面成分の任意の位相設定を使用することが可能である。例えば、サンプルの第1スキャンに対する鏡面成分の位相値がφbであり且つ位相変化が第2及び第3スキャンに対してθ1及びθ2であるとすると、第1、第2、第3スキャンに対する鏡面成分の複素振幅は以下の如くに表すことが可能である。
次いで、これら3つのサンプルスキャンに対する画像強度は以下の如くに表される。
次いで、ダイ毎の(又はセル毎の)差分強度は以下の通りである。
これらのダイ対ダイ即ちダイ毎の差分強度は欠陥信号の必要とされる振幅及び位相情報を包含している。従って、これらのダイ毎の差分強度は全ウエハに対して格納することが必要である。このことは非現実的な量のメモリ空間を必要とするように見える。しかし、現実は、データは欠陥周りの区域においてのみ非ゼロであり、欠陥は実際には極めてまばらなものであるから、それほどのメモリ空間を必要とするものではない。非ゼロであるか又は所定のスレッシュホールド値より一層大きな値のデータのみを格納することが必要であるに過ぎない。ゼロ又はスレッシュホールド値より一層小さな値のデータは格納することは必要ではない。
θ1及びθ2がゼロではなく且つθ1≠θ2である場合には、式(25),(26),(27)から欠陥信号の複素振幅(又は等価的に振幅及び位相)を決定することが可能である。増幅した欠陥信号の複素振幅の実部及び虚部は以下の通りである。
全ダークフィールド項が以下の如くに表されることが分かる。
θ1=−θ2=θ≠0である場合には、式(28),(29),(30)は以下の式に還元される。
θ1及びθ2の値に対して幾つかの良い選択がある。しかし、最良の選択はθ1=−θ2=2π/3であり、それは式(38)により示されるように結果的に信号強度式が簡単化されるからである。θ1=−θ2=π/3又はθ1=π/3、θ2=2π/3のようなその他の選択もうまくいくが、信号強度の式は式(38)ほど簡単且つ対称的なものではない。θ1=−θ2=2π/3である場合には、式(32),(33),(34)は更に以下の式に還元される。
この場合に対する増幅した欠陥信号強度Isは以下の簡単な式を有している。
Isは生の信号強度である。その大きさは照明光の強度のみならず鏡面成分の強度にも依存する。従って、欠陥信号を一層一貫性のあるものとさせるために、Isは照明光ビーム及び鏡面成分の強度に対して正規化させるべきである。
照明はフィールドにわたり比較的一様とさせることが可能であるが、鏡面成分の強度は全フィールドにわたり著しく変化する場合がある。鏡面成分の強度変化の正確な測定は困難である。幸運なことに、鏡面成分の局所的強度の正確な値は必要ではない。正規化の目的のためには近似的な値で良い。鏡面成分の局所的強度値は、殆どの場合において全光強度の局所的平均によって近似させることが可能である。従って、生の増幅した欠陥信号強度Isは以下の如くにして適切に正規化させることが可能である。
尚、Iillはサンプル面における照明強度であり、Ilocalは画像面における全光強度の局所的平均であり、I'sは増幅した欠陥信号の正規化した強度である。
Iillは|s|2を正規化し且つIlocalは|b|2を正規化する。欠陥は、通常、スレッシュホールドと呼ばれるプリセット値とI'sのピーク値とを比較することにより検知される。全体的な性能を改善するために、より凝った欠陥検知アルゴリズムを使用することも可能である。
例えば、I's 2を空間的に積分することが可能であり、且つそのピーク値ではなくその積分した値を予め定めたスレッシュホールド値と比較することが可能である。又、有限幅の検知器要素での欠陥画像の数値逆畳み込み(numerical deconvolution)を他の方法と共に適用することも可能である。高速数値逆畳み込み方法は「空間周波数帯域幅」のセクションにおいて説明する。増幅した欠陥信号の正規化した強度は、欠陥の存在を表すのみならず、その欠陥の寸法に関しての重要な情報を与える。
光学的信号は欠陥の物理的な寸法情報を直接的に与えるものではない。そうではなく、それは欠陥の「光学的寸法」を直接的に与えるものである。物理的寸法と光学的寸法との間の関係は複雑なものとなる可能性がある。従って、光学的寸法のみから正確に欠陥の物理的寸法を推定することは困難である。しかしながら、実験又はシミュレーションを介して欠陥の光学的寸法と物理的寸法との間の一般的な関係を確立することが可能である。次いで、欠陥の物理的寸法をこの一般的な関係から近似的に推定することが可能である。欠陥組成データ、レチクルパターンデータ等のその他のデータが付加的に使用される場合には、欠陥のより正確な特性付けが可能である。
鏡面成分と相対的な欠陥信号φsの位相は以下の如くになる。
より意味の或る位相値は、φsと「位相制御器」のセクションにおいて説明する参照(基準)位相値との間の差異である。従って、この参照位相の値がゼロではない場合には、φsからこの参照位相値を減算すべきである。この位相情報はより正確な欠陥分類のための付加的な臨界的情報を与える。例えば、位相情報は、その欠陥が粒子、ボイド、メサ、又は谷タイプであるか否かを直接的に判別する。正確で信頼性の或る欠陥分類は、信頼性のある欠陥検知と同じ程度に重要である。既存の技術は欠陥分類のために部分的振幅情報のみに依存しており、それは非常に信頼性の無い欠陥分類となる。ここに開示するシステム及び方法は、欠陥分類のために振幅と位相情報の両方を使用することを可能とする。両方の量の使用はより一層正確且つ信頼性のある欠陥分類を可能とする。
欠陥組成データ、レチクルパターンデータ等の付加的な情報も使用する場合には、更により一層正確な欠陥分類が可能となる。より正確且つ信頼性のある欠陥分類能力は、ここに開示するシステム及び方法の重要な特徴の一つである。欠陥位相情報も高感度動作モードに対して位相制御器を適切に設定するために使用することが可能である。
ウエハパターンノイズ、偽り欠陥等の関心の無い欠陥は実際には現実の欠陥である。キャッチオールモードはこれらの種類の欠陥を検討するか又は特性付けるために非常に効果的に使用することが可能であり、従ってそれらを最も効果的に区別することが可能である。
図38は1例として20nm欠陥の信号強度及び位相のプロットを示している。曲線3810は信号強度であり且つ曲線3812は対応する位相である。この欠陥の検知のためには、信号強度のピーク値のみが通常必要とされる。
式(37)は照明強度で正規化させ且つダークフィールド信号の強度を評価するために使用することが可能であり、これはダークフィールド動作モードが欠陥を信頼性をもって見つけるために使用することが可能であるか否かを決定する。
式(35)乃至(39)は実際のシステムにおいて特に有用である場合がある。何故ならば、それは計算するのにそれほど計算時間を取るものではないし、位相角度の等分割のおかげでランダムノイズに殆ど影響されないからである。θ1=−θ2=2π/3を選択し且つこれらの式を使用することにより、3スキャン方法は非常に効果的な態様で欠陥信号の複素振幅を完全に決定することが可能である。
該式はピクセル毎の並列計算を可能とさせる。従って、大量の並列計算技術を使用することにより、実時間計算を困難性無しで実現することが可能である。例えば、現在の技術で、大量のグラフィックス処理ユニット(GPU)及びそれをサポートするチップセットを使用することにより、強力でどっしりした並列コンピュータを廉価に構築することが可能である。
増幅した欠陥信号強度、式(38)又は(39)、は欠陥信号の実部のみではなく全体の強度であり、従って、欠陥の存在の真実のインジケータである。それを予め定めたスレッシュホールドと比較することにより、その欠陥が関心のあるものである程度に十分に大きいものであるか否かを告げることが可能である。その欠陥が関心のあるものである場合には、式(35)及び(36)を使用してその信号の複素振幅を計算することによりそれを特性付けることが可能である。これはそれがどのような種類の欠陥であるかについての何らかの臨界的な情報を与える。
例えば、図39は20nm粒子及び20nmボイドからの欠陥信号の位相のプロットを示している。曲線3910は20nmボイドの位相を示しており、曲線3912は20nm粒子の位相を示している。図39から、粒子及びボイドは欠陥信号の複素振幅に対して反対符号の位相角度を与えることを理解することが可能である。従って、たとえ欠陥信号の振幅が同じであっても、どれが粒子タイプの欠陥でありどれがボイドタイプの欠陥であるかを告げることが可能である。
欠陥寸法が回収光学系の分解能と同等であるか又はそれより大きく且つノイズも低い場合には、欠陥信号の複素振幅をイメージング光学系の点広がり関数の複素振幅でデコンボリューション即ち逆畳み込みして欠陥のより詳細な状況を得ることも可能である。この能力は欠陥分類がより一層正確なものとなることを助ける。より正確な欠陥分類は欠陥レビュープロセスにおいて著しく時間を節約することとなる。欠陥レビュープロセスは、通常、非常にコスト高であり且つ遅滞なものである。何故ならば、欠陥レビューは、通常、高価であるが遅い電子顕微鏡を使用することを必要とするからである。従って、複数サンプルスキャンに起因する処理能力の減少は、欠陥レビュープロセスにおける処理能力の増加によりみごとに補償されることとなる。
別の重要な事実は、増幅した欠陥信号強度、式(38)又は(39)、の強さは欠陥信号の位相値に依存しないということである。このことは、キャッチオールモードは、潜在的に、任意の種類のパターンにより取り囲まれている任意の種類の欠陥を捕らえることが可能であることを意味している。このことが何故キャッチオールモードがそのように強力なモードであるかの理由である。従来技術はキャッチオールモードをサポートすることは不可能である。何故ならば、従来技術は欠陥信号の複素振幅の実部と虚部の両方を測定することは不可能だからである。従来技術は実部を測定することが可能であるに過ぎない。この場合には、信号強度は、臨界的に、欠陥信号とその周囲のパターンとの間の相対的位相値に依存する。その結果、従来技術は異なる種類の欠陥の全てを見つけることは不可能である。そうではなく、従来技術はかなりの数の欠陥をミスする蓋然性がある。
2スキャン方法
前述した如く、一般的に、欠陥信号の複素振幅を完全に決定するためには少なくとも3つのサンプルスキャンを取る。しかしながら、全信号のダークフィールド部分が干渉項と比較して無視可能である場合には、欠陥信号の複素振幅を決定するために2つのサンプルスキャンで十分である。このことは式(25)及び(26)から理解することが可能である。これらの式中のダークフィールド部分を無視し且つθ1=±π/2と設定すると、これらの式は次式を与える。
増幅した欠陥信号強度Isは次式となる。
正規化した増幅した欠陥信号強度Is’は次式となる。
イメージセンサーが大きなダイナミックレンジを有している場合には、全信号の干渉項を大きな量だけブーストさせることが可能である。この場合に、全信号のダークフィールド部分は、キャッチオール動作モードをスピードアップさせるために2スキャン方法を使用可能であるように非常に小さくなる場合がある。
4スキャン方法
鏡面成分の4つの位相値に対する簡単な選択は、0、π、π/2、−π/2である。サンプルをスキャン当たりの鏡面成分の位相変化である0、π、π/2、−π/2で4回スキャンすると、次式が得られる。
ダイ毎の差分強度は次式の通りとなる。
増幅した欠陥信号の複素振幅の実部及び虚部は次式の如くになる。
この場合に対する増幅した欠陥信号強度Isは以下の簡単な式を有している。
正規化した増幅した欠陥信号強度は次式となる。
鏡面成分と相対的な欠陥信号の位相φsは次式となる。
この4スキャン方法はより簡単な式を与える。しかしながら、その主要な欠点は、欠陥信号と鏡面成分との間の相対的位相角度は45°程度に大きくなることが可能であるという点である。注意すべきことであるが、3スキャン方法に対する最大の相対的位相角度は30°である。この事実は、3スキャン方法よりも幾つかの欠陥に対してこの4スキャン方法をより感度の低いものとさせる場合がある。3スキャン方法よりも良い感度を得るために、{0,π,π/2,−π/2}とは異なる位相値を選択することが可能である。可能な異なる選択は、{0,π/4,π/2、3π/4}、{±π/8,±3π/8}等である。しかしながら、これらの他の選択は、欠陥信号を決定するために回帰方法の使用が関与し、且つ欠陥信号の解析的表現を一層複雑なものとさせる。(欠陥信号の一般的な表現については次のサブセクションを参照)。4スキャン方法の別の欠点は、必要とされるエキストラなサンプルスキャンのおかげで、3スキャン方法と比較して処理能力が減少されていることである。
一層高いスキャン方法
より多くの独立した画像データはより良い信号対雑音比へ通じる。従って、信号対雑音比を増加させるために、各スキャンに対して鏡面成分の異なる位相設定で4回を越えでサンプルをスキャンをスキャンすることが可能である。この場合に、データの量は欠陥信号の複素振幅を一意的に決定するために必要なものよりも一層多い。従って、欠陥信号を決定するために回帰方法を採用すべきである。既知の賛否両論で使用可能な多数の異なる回帰方法がある。最もポピュラーな方法の内の一つは最小二乗回帰である。それは、ノイズがランダムである場合に好適な選択であり、且つそれは現在の場合に対して解析的なアプローチを可能とする。解析的回帰は多大な計算時間を節約することが可能であるので重要である。ノイズがランダムではない場合にその他の回帰方法がより適している場合があるが、通常、解析的アプローチを可能とするものではない。従って、最小二乗回帰をここで提示する。
サンプルが各スキャンに対して異なる位相設定でもってN回スキャンされるものと仮定すると、ΔIn (0)、即ちn番目のスキャンに対する理論的ダイ毎の差分画像強度は以下の如くに表される。
誤差関数は最小二乗回帰において以下の如くに定義される。
尚、ΔIはn番目のスキャンに対する実際のダイ毎の差分画像強度であり、且つΔIn (0)はn番目のスキャンに対する理論的なダイ毎の差分画像強度である。
この誤差関数を最小とさせるD,sx,syの値を見つけ出さねばならない。D,sx,syに関しての誤差関数の勾配はその最小値においてゼロとなる。従って、その解は以下の3つの式を満足する。
従って、式(62)から次式が得られる。
式(65)を式(63)及び(64)内に代入すると、次式が得られる。
式(66)及び(67)から次式が得られる。
式(73)及び(74)は増幅した欠陥信号の複素振幅に対する一般的な最善の解である。式(73)及び(74)を式(65)内に代入すると次式となる。
信号強度及び位相は迅速に計算することが可能であり且つ前に説明した態様で欠陥検知及び分類のために使用することが可能である。式(75)は照明強度で正規化させることが可能であり且つダークフィールド信号の強度を評価するために使用することが可能である。ダークフィールド信号の強度を評価することにより、ダークフィールド動作モードを欠陥を見つけ出すために使用することが可能であるか否かを告げることが可能である。
一般的に、N≧4である場合には、回帰の後に残留誤差の量を計算することにより測定データの完全性を推定することが可能である。この残留誤差は、式(73),(74),(75)を式(61)内に代入し且つ該式中の各項を加算することにより迅速に計算することが可能である。この残留誤差をプリセット値と比較することにより、測定の妥当性を告げることが可能である。該残留誤差をチェックすることは、システムトラブルシューティングにおいて特に有用である。それは、通常、システムトラブルシューティングプロセスの最初のステップである。
式(73)乃至(75)は、N=3である場合に、夫々、式(28)乃至(30)へ還元される。
位相設定が以下の条件を満足するように選択されると、
(1例として、全てのθnがそれらの間の均等な角度間隔で選択される場合に、上の条件を満足させることが可能である)
すると、
その結果、この場合には、次式となる。
式(78)及び(79)から、次式が得られる。
N=3であり且つθ0=0,θ1=−θ2=2π/3である場合に、式(78)乃至(81)は式(35)乃至(38)へ還元されることを理解することは容易である。それらは、又、N=4であり且つθ0=0,θ1=π,θ2=−θ3=π/2である場合に、式(53)乃至(56)へ還元される。
上に示した如く、キャッチオールモードに対する回帰プロセスは解析的に行うことが可能である。従って、キャッチオールモードにおける動作は、より信頼性のある欠陥信号を得るためにサンプルを3回を遥かに越えてスキャンする場合であっても過剰な計算時間を必要とするものではない。確実に、より多くのスキャンはより低い処理能力を意味している。しかしながら、信号対雑音比が低いか又は高い信号対雑音比が必要とされる場合には、より多くのサンプルスキャンは著しく助けとなる場合がある。例えば、欠陥信号の正確な検討は、高い信号対雑音比の欠陥信号の供給から利点を得る事が可能であり、且つこのことはキャッチオールモードを多数のサンプルスキャンで稼動させることにより容易に得ることが可能である。
Nが大きく且つ相対的位相を迅速に変えることが可能であり且つ測定データを迅速に収集することが可能である場合には、本システムはヘテロダインモードで動作させることが可能である。ヘテロダインモードは1/fノイズに影響されることは少なく、従って、通常、より明瞭な測定データを与えることが可能である。ヘテロダイン方法はスタティック又はステッピングシステムにおいて比較的容易に実現することが可能であるが、それは、通常、スキャニングシステム、特に、高速スキャニングシステムにおいて実現することは困難である。
コントラスト向上
イメージセンサーのダイナミックレンジが飽和すると、信号の完全性を維持するために、画像のコントラストはキャッチオールモードにおいて増加させることが必要である。この場合に、高感度モードセクションにおいて説明した同じコントラスト向上技術を使用することが可能である。
偏光ダイバーシチ(Polarization Diversity)
前述した如く、欠陥信号の強度は、照明光及び散乱光の偏光状態に依存する場合がある。従って、関心のある欠陥が、その信号強度が偏光状態に異なって依存する異なる種類の欠陥から構成されている場合には、全ての異なる種類の欠陥を捕獲するために、複数個の異なる偏光状態で画像を回収することが必要である。これは偏光ダイバーシチと呼ばれる。理論的には、偏光ダイバーシチに対処することは、位相シフトと偏光設定の異なる組み合わせでの多数のスキャンを取る場合がある。現実的には、このことは、通常、実際的ではなく、1個の小さな欠陥又は2個をミスする確率と処理能力とをバランスさせるために良好な判断が必要とされる。光学物理の基本的な理解は偏光ダイバーシチを対処する上で約に立つ。例えば、欠陥及びその隣のパターンが螺旋構造を有するものでない限り、使用される偏光の組み合わせを直線偏光の組み合わせへ制限することが可能である。
空間周波数帯域幅
回収レンズにより回収された光学的信号の複素振幅分布の最大空間周波数はNA/λであり、NAは回収レンズの開口数である。しかしながら、強度は複素振幅の絶対平方であるので、強度分布に対する最大空間周波数は2NA/λである。しかし、式(1)をより詳細に検討すると、実際には、ダークフィールド項のみが2NA/λの最大空間周波数を有するものであることが分かる。干渉項の最大空間周波数は近似的にNA/λのみとすることが可能である。何故ならば、鏡面成分の最大空間周波数は、サンプルを近法線方向から照明することにより非常に小さくすることが可能だからである。この事実は、図40に示してあり、それは照明が垂直入射である欠陥信号成分の空間周波数帯域幅をダークフィールド空間周波数帯域幅と比較する。曲線4010は干渉項を示しており、且つ曲線4012はダークフィールド項を示している。高感度モード及びダークフィールドモードに対する最大空間周波数は2NA/λである。何故ならば、それらは画像測定においてダークフィールド項を有しており且つそれらを使用するからである。しかしながら、キャッチオールモードは信号処理期間中に全てのダークフィールド項を落とし且つ干渉項のみを使用する。従って、キャッチオールモードに対する最大空間周波数はNA/λであり2NA/λではない。これは顕著な意味合いを有している。ナイキスト・シャノン(Nyquist-Shannon)サンプリング理論によれば、画像中の全ての情報をピックアップし且つ信号エイリアシング(aliasing)を回避するために、画像サンプリングの空間周波数は画像の最大空間周波数の少なくとも2倍とすべきである。注意すべきことであるが、ナイキスト・シャノンサンプリング理論はイメージセンサーに適用される。何故ならば、イメージセンサーは1種のサンプリング装置だからである。
このことは、全てのモードに対して同じイメージセンサーを使用する場合には、欠陥に関する必要とされる情報の全てをピックアップし且つ信号エイリアシングを防止するために、キャッチオールモードに対する画像倍率は高感度モード又はダークフィールドモードのものほど高いものである必要はないことを意味している。このことは、同一のイメージセンサーがキャッチオールモードにおいてサンプル面における一層大きなフィールドオブビュー即ち視野をカバーすることが可能であることを意味している。一層大きな視野は一層高い処理能力を意味している。従って、少なくとも理論的には、複数のサンプルスキャンに起因するキャッチオールモードの処理能力の低下は視野における増加により著しく補償することが可能である。
ダークフィールド信号が小さいか又は干渉信号と比較して無視可能である場合には、性能に影響を与えること無しに処理能力を増加させるために、高感度動作モードに対してさえもイメージングシステムの倍率を減少させることが可能である。欠陥寸法がだんだんとより小さくなるに従い、ダークフィールド信号はますますより重要ではなくなる。ダークフィールド信号は将来においては極めて小さいか又は無視可能となる場合がある。従って、将来世代の干渉欠陥検知システムは、高感度モードとキャッチオールモードの両方に対して同じ画像倍率を使用することが可能である場合がある。又、将来世代の干渉欠陥検知システムにおいては、この信号強度の低い強度に起因して、他の動作モードに対するものよりも一層高い画像倍率でダークフィールドモードは動作しない場合がある。照明光路が固定されている場合には、画像倍率は変えることは必要ではない。このことは、将来世代の干渉欠陥検知システムにおいて全ての動作モードに対して同一の固定した画像倍率を使用する場合があることを示唆している。単一の固定した画像倍率は、システムの製造コストを低下させると共にイメージングシステムを一層安定なものとさせるばかりか、その動作を簡単化させる。
注意すべきことであるが、ナイキスト・シャノンサンプリング理論はサンプリング関数としてデルタ関数を仮定している。しかし、全ての実際のサンプリング関数がデルタ関数であることが可能なものではない。実際のサンプリング関数は有限の幅を有していなければならず、そうでなければ、信号を検知することは不可能である。イメージセンサーは1種の空間サンプリング装置である。サンプリング関数の幅はイメージセンサーの各ピクセルにおける光感受性区域の幅である。高感度又は高ダイナミックレンジは、通常、大きな光感受性区域を必要とする。従って、ナイキスト・シャノンサンプリング理論は適宜の修正をもって実際のシステムに適用される。しかしながら、ここで提示されている一般的な議論は尚且つ成立する。
サンプリング関数の有限幅の負の効果を取り除く標準的な方法は、画像をサンプリング関数でデコンポリューションすることである。このことは、逆フーリエフィルタリングと等価であり、その場合には、画像のフーリエ変換をサンプリング関数のフーリエ変換の逆数で乗算する。しかしながら、デコンボリューションプロセスは通常過剰な計算資源を必要とするので実際的ではない。このことは、特に、高速欠陥検知の場合に言えることである。
デコンボリューションプロセスを実際的なものとさせるために、それを迅速に実施することが可能であるように該プロセスを著しく簡単化させることが可能である。デコンボリューションプロセスの簡単化は任意の画像に対しては非常に制限されている。しかしながら、デコンボリューションプロセスの著しい簡単化は、その寸法が波長よりもかなり小さいものである小さな欠陥の差分画像に対して可能である。何故ならば、小さな欠陥の差分画像においては干渉項が優勢であり、且つ干渉項の形状はイメージングシステムの振幅点広がり関数(APSF)の形状と同じであり、従ってイメージングシステムの開口数が固定されている限り固定されているからである。
図33乃至37はこの事実を確認している。たとえ鏡面成分の空間周波数がゼロではない場合であっても、それは干渉項の形状を変えるものではない。その効果は、干渉項にゼロではないキャリア周波数を与えることである。
鏡面成分が単一の光線から構成されている場合には、干渉項はAPSFとキャリア周波数項との乗算として表すことが可能である。即ち、キャリア周波数項は取り除き且つ別に取り扱うことが可能である。キャリア周波数項を別に取り扱う場合には、小さな欠陥の差分画像とAPSFとの間の差異はそれらの強度である。この場合に、1種類の信号関数を取り扱うことが必要であるに過ぎないという事実により、デコンボリューションプロセスは信号関数のポイント毎のリスケーリング(rescaling)に帰着する。そのリスケーリング関数は、サンプリング関数の有限幅により影響されない理想的なAPSFと、サンプリング関数の有限幅により影響される実際のAPSFとの間の比を取ることにより容易に発生させることが可能である。
デコンボリューションプロセスは、欠陥画像のリスケーリング関数との単純なポイント毎の乗算である。これは最近のコンピュータにおいて極めて高速のプロセスである。従って、この場合には、デコンボリューションプロセスは、小さな欠陥の画像に対して極めて高速に実施することが可能である。注意すべきことであるが、空間周波数ドメイン内において統計的に均等に分布されている限り、ノイズはデコンボリューションプロセスによって統計的な意味において増幅されたり又は影響されることはない。デコンボリューションは、画像を、検知器アレイと同じ間隔であるコム(comb)関数と呼称されるデルタ関数のアレイでサンプルされているように見えるようにさせる。この形態のデータで、理想的な信号形状に対応する関数を正確に当て嵌め、次いで欠陥が存在しない場合には参照信号の減算がほぼヌルの結果を与えるようにこの信号を多少シフトさせることが可能である。全信号のデコンボリューションが与えられたシステム例においては計算的に実際的ではないことが分かる場合には、このデコンボリューション技術は、検知プロセスの正確度を改善するために、弱い又は境目の欠陥信号に対してのみ選択的に適用させることが可能である。従って、ここに提示される高速デコンボリューション方法は、低コストで、高度に安定で、高性能で、高処理能力の欠陥検知システムの構成における重要な要因である。
サンプルスキャン数の減少
処理能力を増加させる1つの方法は、サンプルスキャンの数を減少させることである。サンプルスキャンの数は、オリジナルの光ビームを複数のビームに分割し且つ各ビーム経路内に位相制御器を設置することにより減少させることが可能である。
図41は例示的なシステム4100を示している。照明ビーム4118は瞳面近くでイメージングシステム内に入り且つ近垂直入射でサンプルに当たるように小型のプリズムによって折り曲げられる。サンプル4110からの鏡面ビーム成分4124及び散乱成分4128は、高NAレンズ組立体4116と低NAレンズ組立体4114との間で瞳近くに位置されているビームスプリッタ4172を使用して2つのビームに分割される。分割の後に、位相制御器4112及び補正板4130が各ビーム経路内に設置されている。各位相制御器は、散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相を予め選択した値の内の一つに設定する。2個の別個のイメージセンサー4140が2個の別々の画像の強度を同時的に測定する。従って、単一サンプルスキャンは同時に2個の画像データ組(セット)を発生することが可能である。その結果、サンプルスキャンの総数はこの例示的システムにおいては半分に減少させることが可能である。サンプルスキャンの数の更なる減少は、付加的なビームスプリッタを使用してこれらの2個のビームの各々を更に分割することにより容易に達成することが可能である。
付加的な位相制御器及びイメージセンサーは該付加的なビーム経路の各々に設置することが必要である。各位相制御器は、散乱成分と鏡面成分との間の相対的位相を予め選択した値の内の一つに設定する。複数の別個のイメージセンサーが複数の別々の画像の強度を同時的に測定する。従って、単一サンプルスキャンは同時に複数の画像データ組を発生することが可能である。その結果、サンプルスキャンの総数はその様に減少させることが可能である。物理的空間が許す限り、カスケード型ビーム分割を必要な数だけ実施することが可能である。この方法は、又、ターゲットとした欠陥が、各々が最適な検知のために異なる位相設定を必要とする複数の異なる種類の欠陥を包含している場合には、高感度動作モードに適用することが可能である。この場合に、各位相制御器は、各異なる種類の欠陥の最良の検知のために最適な位相値に設定される。正味の効果は同時的な複数の高感度モードの稼動である。この種類のスキャン数の減少は、ビームスプリッタを偏光感受性とすることにより、偏光多様性測定に適用することも可能である。しかしながら、この種類のスキャン数の減少はそれ自身の欠点を有している。それは、光学系の複雑性及びコストを増加させるばかりか、信号強度を減少させる。信号強度が低すぎるようになると、スキャン速度は信号強度を許容可能なレベルへブーストするために減少されねばならない。スキャン速度の減少は、スキャン数の減少で得ることが可能な処理能力の利得を減少させる場合がある。
3.ダークフィールドモード(Dark Field Mode)
ダークフィールドモードは鏡面反射を完全にブロックすることにより実現される。このスキームにおけるノイズを発生する光の付加的な二次元フーリエフィルタリングがダークフィールドモードを非常に静かなものとさせる(又はノイズレベルを非常に低くさせる)。それは、単に一次元フーリエフィルタリングを許容するに過ぎないライン照明を典型的に使用する現在使用可能な装置におけるダークフィールドモードよりも一層少ないホトンノイズを有している。しかしながら、前述した如く、二次元フーリエフィルタリングであっても、ダークフィールドモードは、その寸法がλ/4よりも小さな欠陥の検知のための良い選択ではない。しかしながら、ダークフィールドモードは、多様な異なる種類の大きな欠陥に対して十分に強い信号を発生し且つ通常サンプルの単一スキャンで十分であるので、それは大きな欠陥の高速な検知のための良い選択である。注意すべきことであるが、ダークフィールド信号の強さを前以て知ることが望まれる場合には、キャッチオールモードを最初にそのサンプルについて使用することが可能である。
ダークフィールドモードの別の良い使用は、イメージセンサーに対する最良の焦点を見つけ出すことである。何故ならば、ダークフィールドモードは、何らの焦点情報を担持するものではないが尚且つ散乱成分との干渉により画像のフォーカシング期間中に臨界的に画像に影響を与える場合がある鏡面成分をブロックするからである。ダークフィールドモードは鏡面成分を有するものではないので、他の動作モードほどイメージセンサーに関するダイナミックレンジが高いものであることを必要とするものではない。ダークフィールドモードに対するイメージセンサーシステムの更なる重要な特性は高感度及びより微細なピクセルである。
ダークフィールドモードの限界
ダークフィールドモードは位相制御器の操作を必要とするものではないので動作が容易である。又、それは単一サンプルスキャンで多様な欠陥を捕獲することが可能である。従って、ダークフィールドモードは、通常、信号が十分に強いものであるか又は鏡面成分による信号のノイズレス増幅が弱い鏡面成分に起因して些細なものである場合には1番目の選択である。しかしながら、前述した如く、ダークフィールドモードはノイズレス信号増幅能力を欠如しているので小さな欠陥を見つけ出す上で厳しい制限を有している。
ダークフィールドモードを使用して無意味な試行錯誤を回避するために、ダークフィールドの限界をより明確に認識しておくことが必要である。ダークフィールドモードの限界を一層明確に理解するために、孤立した欠陥からの信号をシミュレーションし、次いでダークフィールド部分と干渉部分とに分割する。266nmの波長及びイメージングシステムの開口数が0.9であると仮定している。中央オブスキュレーションは0.2NAであると仮定されている。位相制御器は干渉項を最大とさせるべく調節されている。
図42aは、1%の反射率に過ぎないサンプル表面上の80nmの孤立した欠陥からの検知信号のダークフィールド部分4210及び干渉部分4220を示している。欠陥自身の反射率は全てのシミュレーションした場合において100%であると仮定している。図42aは、欠陥が比較的大きく且つサンプル表面の反射率が非常に低い場合であっても、該信号の干渉項はダークフィールド部分よりも一層大きいことを示している。図42bは0.1%の反射率に過ぎないサンプル表面上の40nmの孤立した欠陥からの欠陥信号のダークフィールド部分4230及び干渉部分4240を示している。即ち、周りの区域の反射率は欠陥反射率の千分の一に過ぎない。このことは、欠陥の寸法が四分の一波長よりも小さい場合には、サンプルの反射率が極めて小さい場合であっても、欠陥信号の干渉部分はダークフィールド部分よりも一層大きいものであることを示している。
図42cは、0.1%の反射率に過ぎないサンプル上の20nmの孤立した欠陥からの欠陥信号のダークフィールド部分4260及び干渉部分4250を示している。この場合に、ダークフィールド部分は干渉部分よりも著しく一層小さい。サンプルの反射率が一層大きい場合には、干渉部分は更に優勢である。従って、殆ど全ての実際的な場合において、干渉項が全てのサンプルに対して優勢であるということができる。即ち、ここに記載した位相制御及びノイズレス増幅の技術は、実際に遭遇する蓋然性のある全ての異なるタイプのウエハ及びレチクルに対して良好に動作する。このことは、ここに開示するシステム及び方法の別の重要な利点である。ダークフィールドモードは、欠陥の寸法がほぼ四分の一波長よりも大きい場合にのみ有用であることになる。しかしながら、将来における殆どの臨界的な欠陥は四分の一波長よりも一層小さいものであることが予測される。又、ダークフィールドモードは欠陥を正確に分類することが不可能であり、従って、それは将来においてはポピュラーな動作モードであるとは予測されない。
殆どの実際の欠陥は他の特徴から孤立しているものではない。従って、孤立した欠陥からの信号をシミュレーションすることにより到達した結論は、最後の言葉として解釈されるべきものではない。しかしながら、孤立した欠陥の場合は多数の異なる種類の場合の平均を表しており、従って、その結論は少なくともおおよそ正しいものであろう。透過性サンプルは数学的には反射性サンプルに非常に類似しているので、透過性サンプルに対しても同様の結論に到達することが可能である。
IV.イメージングシステムの設計例
高品質イメージングシステムは、殆どの光学系を基礎とした検査システムの重要なコンポーネントの内の一つであり且つ最も高価な部品である。前述した如く、ここに開示するシステム及び方法は、屈折光学系(dioptric)、反射光学系(catoptric)、及び反射屈折光学系(catadioptric)を包含する多様なイメージングシステムで使用することが可能である。屈折光学系及び反射光学系設計はこのタイプの適用例に対してより良く知られている。多数の書籍、特許、及びその他の文献が屈折光学系及び反射光学系設計を徹底的にカバーしている。
反射屈折光学系設計はより少なく知られているが、非常に高い性能である場合がある。2つの高性能反射屈折光学系イメージングシステムの設計例をここに提示する。この設計は米国特許第5,031,976号に基いている。1番目の設計例は図43aに示してある。その設計処方を以下に示してある。
この設計は単一波長適用例に対するものである。266nmの波長をこの例示的設計に対して選択した。全てのレンズ及び2個の反射屈折光学系コンポーネント4313,4311は例示的設計においてはフューズドシリカ(fused silica)から構成されている。フューズドシリカの屈折率値は266nm波長に対して1.499684であると仮定している。しかしながら、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等のその他のレンズ物質を使用することも可能である。
レンズコンポーネント4311は平凸レンズで、1.5mm離れたサンプル4310に面している平坦側上に反射性コーティングを具備している。該反射性コーティングの中央部分は、サンプルからの光が該レンズを介して通過することを可能とさせるために除去されている。レンズ4311を介して通過した後に、イメージビームが別のレンズ要素4312を介して通過し且つミラー要素4313上の表面4314上のコーティングによって反射され、それからそれは再度レンズ要素4312を介して且つ該反射性コーティングを有している要素4311の平坦側へ通過する。2番目の反射の後に、該光は要素4311から現れ、要素4312を介して3度目の通過をし且つこの場合には表面4314上の反射性コーティングにおける中央の孔を介して要素4313の後側近くの中間焦点へ通過する。この光学的トレインにおけるその他のレンズ要素は全て屈折性であり且つ単に中間画像を図中の左側に離れた検知器アレイ上に再結像させる。
照明は図1に示したスキームを使用して補正板4315を介して導入することが可能である。近垂直入射照明ビーム4316を導入する別の方法は、レンズ/ミラー要素4313上の表面4314上の反射性コーティング内の2番目の小さな軸外孔を介してのものである。このことは、サンプル4310からの鏡面成分が表面4314の反対側から反射され、従ってサンプルから検知器面へ散乱成分と非常に類似した光路に追従することを確保する。この照明方法は、より少ないフレアを発生する。何故ならば、照明ビームはより少ない数の光学的コンポーネントを介して通過するからである。
全てのレンズ要素は、同じ物質から作ることは必要ではない。例えば、高いレーザ強度区域に位置されるレンズはフッ化カルシウムのような一層レーザ損傷耐久性物質で作ることが可能であり、且つその他はフューズドシリカで作ることが可能である。全てのレンズ表面は球面状である。非球面を性能を更に改善するか又はレンズコンポーネントの数を減少させるために使用することが可能であるが、非球面が必要とされるものではない。
どのレンズ表面も極端な極率を有するものでもない。全てのこれらのレンズ特性は中程度の製造公差に通じる。従って、図43aに示したレンズシステムは何らの極端な困難性無しで製造することが可能である。該設計の開口数は0.9である。その視野は極めて大きな1.0mm直径フィールドをカバーする。その倍率は200xであると選択されているが、それはシステムの性能又は品質に影響を与えること無しに変えることが可能である。設計ストレール(Strehl)比は全フィールドにわたり0.996以上である。アパーチャストップの直径は47mmである。補正板4315はレンズ瞳近くに位置しており且つ、干渉計測定イメージング適用例においては、位相制御器及びフーリエフィルタブロッキングストリップを包含している。該補正板のクリア(clear)なアパーチャ直径は、アパーチャストップの47mm直径とほぼ同じである。これは、過剰な中央オブスキュレーションを発生すること無しに中間に位相制御器を設置するのに十分に大きい。この設計は、又、非常に低いフィールド湾曲と歪とを有している。この設計の唯一の欠点はその小さな作業距離であり、それは該例示的設計においては1.5mmである。この例示的設計は、典型的にペリクル保護のために大きな作業距離を必要とするレチクル検査などの適用例に対しては動作しない場合がある。しかしながら、この設計は、大きな作業距離を必要とすることの無いウエハ検査等のその他の適用例に対しては良く適している。
図43bは別の反射屈折光学系設計例を示している。この設計処方を以下に示してある。
この設計は、サンプル表面4331と中間画像4332との間の部分における前の設計と同様であるが、瞳面近くにおいて、それはビームを二つのレッグ(leg)に分割するダイクロイック波長スプリッタ4333を包含しており、一方のレッグ4334は266nm部分であり且つ他方のレッグ4335は532nm部分である。各レッグはそれ自身の補正板4336及び位相制御器(不図示)を包含している。フューズドシリカの屈折率値は266nm波長に対して1.499684であり且つ532nm波長に対して1.460705であると仮定している。フッ化カルシウムの屈折率値は266nm波長に対して1.462084であり且つ532nm波長に対して1.435358であると仮定している。BK7ガラスの屈折率値は532nm波長に対して1.519473であると仮定している。この設計は単一波長設計と同様の特性を有している。レンズシステムは極端な困難性無しに製造することが可能である。開口数及び視野は前の設計のものと同じである。物理的寸法も同様である。しかしながら、それは2つの波長適用例に対して設計されている。その波長は266nm及び532nmに選択されている。その他の波長も同じ設計形式で選択することも可能である。それは2つの波長を独立的に取り扱うことが可能であるように各補正板内に包含されている波長分割器及び2つの別個の位相制御器を有している。
該処方から理解されるように、フロントエンドレンズシステムは両方の波長により共用されている。バックエンドレンズシステムはその設計柔軟性を最大化させるために完全に分離されている。設計ストレール比は、全フィールドにわたり、266nm波長に対しては少なくとも0.996であり、且つ532nm波長に対しては少なくとも0.985である。フィールド湾曲及び歪も非常に低い。該設計は、バックエンドレンズシステム内により多くの波長分割器を挿入することによりより多くの波長を受け付けるために容易に修正することが可能である。これらの設計例はここに記載する欠陥検知システムに適用することが可能である。
V.サブシステム
ここに開示するシステム及び方法は、何らの特定の照明又はフォーカスサブシステムに依存するものではない。それらは殆ど任意のサブシステムを受け付けることが可能である。しかしながら、性能及びコストの両方で全検査装置を最適化することは、優れたイメージングシステム設計ばかりでなく、相補的照明及び自動焦点システムの見事な設計をも必要とする。
別の簡単であるが重要な部分はアパーチャストップからの回折(分散)の抑圧である。これからのセクションにおいては、新たな照明システム及び新たな自動焦点システムを最初に提示する。次いで、低回折アパーチャを作る新しい方法を完全な理論と共に提示する。提示されるサブシステムは特に干渉検査システムに良く適している。しかしながら、それらはその他の光学的装置に対しても効果的に使用することが可能である。
1.可干渉性一様照明器
インターフェロメトリ即ち干渉法、光学的フーリエフィルタリング等の幾つかの適用例に対して、部分的に可干渉性又は不可干渉性照明ではなく完全に可干渉性の照明が望ましい。これらの適用例の殆どに対して、対物面にわたるトップハット(tophat)ビーム形状を有する一様な照明が望ましいか又は必要とされる。しかしながら、効果的に一様な照明を達成することは、洗練されたアプローチを必要とする。何故ならば、レーザ等の可干渉性光源からの出力ビームはトップハット強度分布ではなくガウス分布を有しており、且つレンズアレイ及びライトパイプ等の不可干渉性ビームで良好な一様性を達成するために使用されるツールの多くは、単に、可干渉性照明光源では動作しないからである。ガウスビーム分布をトップハットビーム分布へ変換させる多数の良く知られたエネルギ効率的な方法が存在している。幾つかの実施例によれば、ガウスビーム分布をトップハットビーム分布へ変換する別の方法が提供される。
ガウスビームをトップハットビームへ変換する最も直接的な方法は、吸収物質を使用して該ビームの高強度部分を部分的に吸収することである。しかしながら、この方法は、エネルギ的に非効率であるばかりか、入力ビームが強力であるか又は短いパルスから構成されている場合に、吸収物質に損傷を与える傾向がある。よりエネルギ的に効率的であり且つより損傷を発生する傾向の少ないガウスビームをトップハットビームへ変換する方法は、ビーム内の光エネルギを再分布させることである。このことは、互いに分離されている2,3のレンズ(又はレンズグループ)を使用して行うことが可能である。
図44aはこの方法を示している。第1レンズ4401は、曲線4407で示したようなガウス形状を有している入力ビーム4402へ適宜の量の球面収差を故意に導入する。第1レンズからの球面収差は該ビームが自由空間中を伝播する場合にその中のエネルギを再分布させる。球面収差の形式及び量及び伝播距離を調節することにより、ガウスビームはトップハット形状の一様なビームへ変換させることが可能である。球面収差は光エネルギを再分布させるばかりか波面歪を導入させるので、第2レンズ4403が使用される。この第2レンズは第1レンズによって導入される波面歪を補正し、従って焦点面4405におけるエネルギ分布は曲線4406によって示される。従って、2個のレンズは波面を歪ませること無しにガウスビームをトップハットビームへ変換させることが可能である。
この方法は、極めてエネルギ的に効率的であり且つ高パワービームを取り扱うことが可能である。しかしながら、この方法には欠点があり、それは、通常、図44aで示した如く、付加的な画像中継システム4404を必要とするということである。ビーム形状変換器は所望の一様な照明フィールド近くに制限された作業空間を与えるので、画像中継システムが使用される。その結果、ビーム形状変換器からのトップハット形状出力ビーム形状はイメージングシステムを使用して照明フィールド4408へ中継される。そうでない場合には、ビームがその理想的な共役焦点から長い距離を伝播せねばならない場合には、トップハットビーム形状は著しく変化する場合がある。注意すべきことであるが、曲線4409で示した中継画像面内の光分布は焦点面4405におけるものと同じであり、且つ曲線4406で示してある。
該中継システムは、通常、互いに分離されている少なくとも2個のレンズを有している。何故ならば、該中継システムは、トップハットビーム形状を中継することが必要であるばかりか、照明フィールドにおいて平坦な波面を維持することが必要だからである。時折、該中継システムのために空間を確保することが非常に困難である。通常、多数の機械的干渉問題が発生する。該中継システムがズームシステムであることが必要である場合には問題は一層厳しくなる。ここに記載する実施例はこれらの問題を緩和することが可能である。
図44bは、幾つかの実施例に基く本発明の動作を示している。簡単に説明すると、ガウス入力ビーム形状4420はシンク(sinc)関数にわたる包絡線を形成する形とされた形状4421へ変換される。シンク関数位置4424において、ビームが位相板4425上に入射し、該位相板はシンク関数が負となる箇所に位置されている溝を有しており且つ透過されたビームに180度の位相変化を発生する。該ビームの自由空間を介しての更なる伝播は、それをサンプル面4426においてトップハット強度形状4423へ変換する。
回折理論によれば、シンク関数状ビームの遠視野回折パターンはトップハット形状である。従来技術のようにここに記載した実施例は、ビーム形状変換器4427を使用するが、そのビーム形状変換器は入力ビーム形状をトップハット形状へ変換するものではない。それは入力ガウスビーム形状を別の非一様なビーム形状4421へ変換する。画像面4424におけるその変換されたビーム形状4421は実際には入力ビーム形状4420よりも一層非一様である。変換されたビーム4421の形状はシンク関数の多かれ少なかれ包絡線のように見える。ビーム形状変換器4427は、波面歪みを導入すること無しに、入力ビーム形状を所望の形状へ変換させる。該ビーム形状変換器は適宜の量の球面収差を第1レンズ4428(又はレンズグループ)を介して導入し且つレンズ4428により導入された波面歪みを第2レンズ4429(又はレンズグループ)で補正する。
本実施例は、ビーム形状変換器の後に配置した「位相ステッパー」と呼ばれる別の光学的コンポーネントを使用する。該位相ステッパーは、図44bに示した如く、ガラス基板上に正方形状で不均一に離隔させた溝を形成することにより作ることが可能である。ガラス基板上の精密な溝は多くの異なる方法によって作ることが可能である。例えば、それらはリソグラフィ技術で溝をパターニングし、次いで、精密エッチングか又はガラス物質の付着のいずれかにより作ることが可能である。該位相ステッパーは離散的な態様で入射波面の選択した部分の位相を変化させる。必要とされる位相ステップの量は約180°である。
位相ステップされた後に、現れる非一様なビーム4422は多かれ少なかれシンク関数のように見え、且つ長距離にわたり自由空間を介して伝播することが許容される。該ビームが自由空間を介して伝播する間に、そのビーム形状はトップハット形状に変化する。それがトップハットビームとなるために伝播することが必要な最小距離は次式で与えられる。
(文献:「フーリエ光学系入門、3版(Introduction to Fourier Optics, Third edition)」、Joseph W. Goodman、ロバーツアンドカンパニイ、イングルウッド、コロラド、2005年、75頁)。自由空間伝播のスタートにおけるビームの寸法と照明フィールドにおけるトップハットビームの寸法との間には或る関係が存在している。この関係は既知であり且つ同じ参考文献において見つけることが可能である。照明フィールド4426におけるビームは完全に一様なものではなく、図44bに示したようなリンギングを包含している。何故ならば、伝播の開始面4424におけるビーム形状は不完全なシンク関数であり且つ有限の寸法を有しているからである。前者のずれは、高入力ビームパワーによって損傷される場合のある位相ステッパーに対して吸収体を賢明に付加させることにより修正される場合がある。全ての吸収体を省略することにより、本実施例は高パワーを取り扱う能力に対して幾らかの量の残留強度非一様性に妥協する。
殆どの適用例は、幾らかの量の強度非一様性を許容する。従って、記載した実施例の多くは、光学的検査を包含する多くの適用例に対して未だに有用である。前述した如く、記載した実施例の重要な有益な特徴は、それが、他の部品又はサブシステムと深刻な機械的相反を発生する場合がある画像中継システムを必要とするものではないということである。この特徴は実際のシステムを設計する上で非常に有用である場合がある。
図44cは別の実施例に基く形態を示している。それは変換レンズ4430を有しており、該レンズはシンク関数状ビーム4422をその焦点面4426においてトップハットビームへ変換する。従って、この設計における該変換レンズの機能は、前の設計における長い自由空間伝播経路と同じである。基本的に、自由空間伝播及び変換レンズの両方が入力ビーム形状のフーリエ変換を実施する。トップハットビームの寸法は、該変換レンズへの入力ビームの寸法、及び該変換レンズの焦点距離に依存しており、それは、入力ビームの寸法に逆比例し且つ該変換レンズの焦点距離に比例する。
正しい入力ビーム寸法及び/又は該変換レンズに対する焦点距離を選択することにより、照明フィールドにおけるトップハットビームの寸法を制御することが可能である。変換レンズは、式(82)の距離条件を満足するには空間が制限され過ぎている場合に、自由空間伝播に対する有用な代替例となる。変換レンズが使用可能な物理的光路長よりも一層長い焦点距離を有することが必要である場合には、変換レンズとして望遠レンズを使用することが可能である。一層長い全体的な長さが所望される反対の場合には、逆望遠(reverse telephoto)レンズを変換レンズとして使用することが可能である。
図44cの実施例において、1個のレンズ又は複数のレンズがビーム伝播経路内に存在している。しかしながら、該変換レンズは、従来技術システムにおいて必要とされる画像中継レンズよりもその形態において一層簡単であり且つ柔軟性がある。従って、ここの実施例は、ビーム伝播経路中にレンズを使用するものを包含する従来技術と比較して利点を有している。
多くの実際的な適用例において、ビームのエッジにおける一層高い強度が望ましい。この種類のビームは「超一様ビーム」又は「超トップハットビーム」と呼称される。図44dは超一様ビーム形状4460の1例を示している。ここに記載した技術は超一様ビームの発生に良く適しており、それはターゲットとした超一様ビーム形状のフーリエ変換の包絡線のような位相ステッパーの入力側上でビーム形状を整形することにより容易に発生させることが可能である。実際に、ここに記載した技術は、非常に柔軟性があり、従ってそれは複数のハンプを持ったビーム形状等の広く多様なその他のビーム形状の発生のために使用することが可能である。
図44eは、ビーム形状変換器を使用すること無しに、トップハット形状を得ようとする結果を示している。入力ガウスビーム4440が位相ステッパー4425を介して通過させ、それは曲線4441によって示されるように、大体のビーム形状を変えること無しに位相を変化させる。照明フィールド4426における最終結果4442はガウス形状より好適であるが、形状変換器で得られるものほど良くない。このシステムはより簡単である。何故ならば、それはビーム形状変換器を必要としないからである。しかしながら、照明フィールドにおけるビームは、図44b及び44cに示したものよりも、より一様ではないか、及び/又はよりエネルギ的に効率的ではない。
これまでは一次元における一様照明について考慮してきた。しかしながら、幾つかの実施例によれば、二次元分布に対する拡張は率直的なものであり、というのは、入力ビームのガウスビーム形状は分離型可変形式にあるからである。これらの実施例によれば、x方向及びy方向を完全に別々に且つ独立的に取り扱うことが可能である。従って、これらの実施例は一次元のみならず二次元照明分布を得るために適用することが可能である。
幾つかの適用例は複数のフィールドを同時的に照明することを必要とする。その例は空間的に離隔されている複数のイメージセンサーを具備するシステムである。複数のフィールドの同時的照明は容易に達成することが可能である。図44fは1例を示している。複数フィールド照明は位相ステッパー4425の前又は後に回折格子4450を挿入することにより達成することが可能である。該格子が入って来る可干渉ビームを複数の回折次数に回折させる。各回折次数は一つのフィールドを照明する。
図44fは動作原理を明確に例示するために2つの別々の照明フィールドを示すに過ぎない。しかしながら、2つを越える回折次数を発生する格子を挿入することにより、又は複数の回折格子を挿入することにより、2つを越える照明フィールドを容易に得ることが可能である。照明フィールドの位置は、格子のピッチ及び配向を適切に選択することにより制御することが可能である。図44fにおいて、格子の配向は、動作原理を明確に示すために、位相ステッパーのものと同じに設定されているが、それは必要条件ではない。格子配向は、照明フィールドを所定の位置に配置させるために任意の方向に設定することが可能である。
高エネルギ効率及び良好なフィールド間一様性も格子の溝の形状を適切に設計することにより達成することが可能である。例えば、該溝の深さ及び形状は、各フィールドにおいての良くマッチした照明一様性を達成するために調節することが可能である。又、格子溝形状をブレージングすることにより極めて高いエネルギ効率を達成することが可能である。
従って、エネルギ効率的で、一様で、可干渉性の照明が複数及び単一のフィールドに対して与えられる。本可干渉性で一様な照明体の重要な特徴は以下に要約してある。
1.それは、中継レンズシステムを使用すること無しにトップハット照明形状を発生させることが可能である。変換レンズ又は変換レンズシステムが必要な場合がある。しかし、変換レンズ又は変換レンズシステムは中継レンズシステムよりも一層簡単であり且つ一層柔軟性がある。
2.それは超一様ビーム形状のようなその他のビーム形状を発生させることが可能である。
3.それは照明システム設計においてより柔軟性を与える。
4.単一又は複数のフィールド照明を容易に得られる。
2.自動焦点システム
殆どの高分解能イメージングシステムはサブシステムとして少なくとも1個の自動焦点システムを必要とする。本干渉欠陥検知システムは例外ではない。原理的に、干渉欠陥検知システムは、環境が静かであり且つサンプルステージが極めて精密である場合には、自動焦点システム無しで動作させることが可能である。しかしながら、これらの理想的な条件は実際の世界においては殆ど得られない。従って、全システムの安定な性能を確保するために自動焦点システムを有することが通常望ましい。
自動焦点システムは、通常、重要なサブシステムである。その性能は、通常、全システムの性能に対して臨界的である。しかしながら、性能のみが自動焦点システムに対する条件ではない。それは使用可能な空間内に適合せねばならない。又、そのコストは妥当なものでなければならない。本発明の記載した実施例はこれらの問題に対処している。
多数の異なる自動焦点システムが存在している。しかし、それらは2つのタイプに分類することが可能であり、一つのタイプはオフザレンズ(off-the-lens)であり且つ他方はスルーザレンズ(through-the-lens)である。オフザレンズタイプ自動焦点システムは、それら自身の利点を有している。しかしながら、殆どの高精密イメージングシステムはスルーザレンズタイプの自動焦点システムを必要とする。何故ならば、それらは温度変化、大気圧力変動等の環境擾乱に対してより影響されないからである。
殆どの従来技術の高精密スルーザレンズ自動焦点システムは、レーザよりも著しく明るくない発光ダイオード、アークランプ等の不可干渉性光源を使用する。より明るくない光源の使用は従来技術のスルーザレンズ自動焦点システムをしてフォーカス信号検知器へ十分な光を供給することが可能であるために大きなエテンデューを使用することを強制していた。そのエテンデューの寸法は、自動焦点システムを物理的に大きなものとし且つ高価なものとするばかりか、収差及びミスアライメントに影響されやすいものとさせていた。本発明の幾つかの実施例によれば、光源としてレーザを使用している。光源の変化は、一層高いフォーカス信号を与えるばかりか、全自動焦点システムの簡単化を可能としている。その他の独特の特徴も与えられる。
1実施例によれば、単一チャンネル形態を図45aに示してあり、それは高NA及び低NAイメージングレンズグループ116及び114、夫々、及び補正板130と相対的に位置されているフォーカスシステムを示している。該フォーカスシステムは、光源として単一の空間モードレーザ4501を使用している。半導体レーザは優れた候補である。しかしながら、レーザビームは、通常、位置及び指向方向において非常に安定なものではない。本来的な不安定性のために、レーザを直接的に自動焦点光学系へ結合させることは好ましいことではない。不安定なレーザビームはフォーカス信号にエラーを導入する場合がある。
幾つかの実施例によれば、レーザは直接的に自動焦点光学系へ結合されるものではない。その代わりに、レーザビームは長尺の単一モードオプチカルファイバ4502を介して通過する。単一モードファイバは、好適には、レーザ光のファイバ内への不完全な結合によって通常励起されるクラッディングモードを散逸させるために少なくとも1フィートの長さである。単一モードオプチカルファイバはパッシブ装置であり、それは光源におけるオリジナルの不安定性を容易にキャリブレーションすることが可能な出力強度変化へ変換させることによりビーム位置及び指向方向を安定化させることが可能である。ビーム位置及び指向方向における変化はレーザビームの単一モードファイバ内への結合効率を変化させる。入力端における結合効率の変化は出力端において強度変化を誘発する。
幾つかの実施例によれば、ビーム安定化器として単一モードファイバの使用は重要な特徴である。該ファイバの出力端は、サンプル面110上及び位置感応性検知器(PSD)表面4511上と共役(又は、結像されている)である。自動焦点光線はレンズ4503によってサンプル表面上に斜めにフォーカスされるので、サンプル表面の焦点シフトはPSD表面4511におけるレーザビームの横方向移動を発生させる。しかしながら、サンプルにおける小さな傾斜(tilt)がイメージングレンズ4504のアパーチャにわたり該ビームを移動させるが、位置感応性検知器4511上のその位置を変えるものではない。従って、本システムはサンプル焦点位置を測定するが、サンプルの傾斜ではない。従って、PSDからビーム位置を読み取ることにより、サンプルの焦点変化の量を決定することが可能である。PSDへ接続されているコンピュータ又は制御器がPSD出力を読み取り且つそれを処理してフォーカスエラーを推定する。そのフォーカスエラーが所定の値よりも一層大きい場合には、該コンピュータ又は制御器がフォーカスアクチュエータ4518へ適宜のフォーカス補正信号を送ることによって補正動作を行う。フォーカスエラー検知及び補正動作は、開又は閉ループにおいて稼動させることが可能である。PSDは容易に入手可能であり且つ多様な選択を与える。
記載した実施例は、好適には、自動焦点光線をイメージングシステム内へ又はそれから外へ結合させるためにビームスプリッタを使用するものではない。その代わりに、それは小さなプリズム(又はミラー)4505を使用する。この光結合方法はビームスプリッタよりも以下の利点を有している。
1.単純な結合光学系。
2.空間をそれ程取らない。
3.他のコンポーネントとの機械的衝突のより少ない可能性。
4.鏡面成分のみを回収。散乱光を拒絶。注意すべきことであるが、自動焦点光の一部はサンプルにより散乱される場合がある。散乱光を変化させることは、それがフォーカスセンサー上に現れる場合にはフォーカスエラーを発生する場合がある。
5.自動焦点システムのエテンデューを小さく維持。
6.自動焦点光学系の収差は、ビームのエテンデューが小さいので、非常に小さくすることが可能。
従って、記載した実施例の多くはより良く動作することが予測されるばかりか、コストがより低い。
自動焦点システムの性能は偏光の選択に著しく依存する。サンプル表面に対して平行な電界を有しているs偏光は、殆どのサンプル上で、p偏光よりも反射率及び位相のより少ない変化を有している。このことは、s偏光した光はp偏光した光よりも一層一貫性のある性能を提供することが可能であることを意味している。幾つかの実施例によれば、s偏光した光が図45a乃至45cに示した如くに使用されている。s偏光はビーム経路内の円形ドットのアレイによって表されている。光源からs偏光した光のみがピックアップされることを確保する幾つかの異なる方法が存在している。一つの方法は、単に、ビーム経路内に偏光器を設置することである。別の方法は、光源レーザと自動焦点光学系への入口との間に偏光維持単一モードファイバを使用することである。偏光維持ファイバはs偏光及びp偏光の両方を受け付けるが、一方の偏光を透過させるが、他方の偏光を迅速に減衰させる。ファイバのコアを正しい方向に回転させることにより、偏光維持ファイバはs偏光のみを透過させるようにさせることが可能である。レーザ光源から来る光が偏光されていると、偏光維持単一モードファイバはその他の種類のファイバよりも著しく一層高いエネルギ効率を与えることが可能である。
殆どの自動焦点システムの一般的な問題は、フォーカス信号プロセッサにおける時間遅延及びフォーカスエラー補正システムの遅い応答に起因してフォーカスエラー検知とその補正との間に時間遅延があるということである。これは、サンプルがイメージングシステムの下で迅速にスキャンされる高速スキャニングシステムにおける主要なフォーカスエラー発生源の内の一つとなる。この場合に、フォーカスエラーを減少させるために、フォーカスエラーはサンプルのイメージングの前に検知されるべきであり、且つフォーカスエラー補正信号はフォーカスエラー補正システムへフィードフォアワードで送られるべきである。
フォーカスエラーを前もって検知するために、自動焦点ビームはサンプルスキャン方向における前方位置においてサンプル表面上に落ちねばならない。このことは、スキャン速度及び方向における変化に適応するために、自動焦点システムがサンプル表面において自動焦点ビーム位置を横方向にシフトさせることを必要とする。サンプル表面における自動焦点ビーム位置は、ファイバの出力端を横方向に移動させることによって、容易に横方向へシフトさせることが可能である。前述した如く、ファイバの出力端はサンプル表面上に結像されているので、この方法は動作する。
横方向シフトが精密に制御されることを必要とする場合には、図45aに示し如く、傾斜可能なガラスプレート4512を使用することが可能である。該ガラスプレートを傾斜させることによりビームを横方向へシフトさせることが可能である。入力ビームがシフトされると、出力ビームは対応する量だけシフトされる。ビームとPSDとの間の相対的位置を維持することは、PSDの前方へ傾斜可能なガラスプレートを導入するか、又は単にPSD4511の位置を移動させることにより行うことが可能である。
図45aに示した単一チャンネル自動焦点システムは、通常、非常に安定なものではない。何故ならば、それは機械的構造不安定性又は温度変化に影響されるからである。この種類の問題を減少させる一つの方法は、対称的な態様で複数のチャンネルをセットアップすることである。対称的な態様で構成したマルチチャンネル自動焦点システムは、コモンモード機械的シフトに影響されないように構成することが可能である。図45bはマルチチャンネル自動焦点システムの1例を示している。それは対称的な態様で構成した2個のチャンネルを有している。サンプルプレートにおけるビーム位置シフトは、ガラスプレート4512を傾斜させることにより達成される。PSDは直接シフト機構4511によりシフトされる。
図45cは2チャンネル自動焦点システムの別の例を示している。この場合には、入力ビーム及び出力ビームの両方がガラスプレートを傾斜させることによりシフトされ、従って、PSDはシフトさせることは必要ではない。この形態はより少ない部品を使用するが、ビームアライメントを一層困難なものとさせている。何故ならば、2つのチャンネルが傾斜可能なガラスプレートを共有することにより結合されているからである。
図45b及び45cに示した如く、一方のチャンネルのビーム経路が他方のチャンネルのビーム経路とオーバーラップしていると、ビームスプリッタ4513は帰還ビームをPSDへ指向させるために使用される。しかしながら、ビームスプリッタの使用について2,3の問題がある。一つの問題は光エネルギの損失である。非偏光ビームスプリッタの使用は使用可能な光エネルギの少なくとも75%を犠牲にする。殆どのサンプルに対してエネルギ損失は許容可能であるかもしれないが、非常に低い反射率のサンプルに対しては許容可能なものではない。
別の問題は、一方のチャンネルからの帰還ビームの一部が他方のチャンネルの光源レーザ内に入ることである。即ち、チャンネルはそれらの光源において互いに干渉する。この干渉は光源レーザを不安定化させ且つフォーカスエラーを発生させる場合がある。光源レーザを安定なものとさせるために、それらを互いに光学的に分離させることが可能である。この問題に対して2つの解決法がある。一つの解決法は、図45dに示した如く、2つのチャンネルのビーム経路が互いにオーバーラップしないように配置させることである。この配置において、帰還ビームは未だにオプチカルファイバのコアに当たる場合があるが、それが起こる場合には、帰還ビームの方向は、帰還ビームがファイバ内に結合されるには単一モードファイバの受け入れ角度から離れすぎる程逸れている。
他の解決法は、非偏光ビームスプリッタではなく偏光ビームスプリッタを使用し且つ、図45b及び45cに示した如く、ビーム経路内にファラデー回転子(Faraday rotator)4514を配置させることである。偏光ビームスプリッタはp偏光を透過し且つs偏光を反射する。従って、偏光ビームスプリッタを介して通過するレーザビームは完全に直線偏光されている。ファラデー回転子は、好適には、入ってくる直線偏光の角度を45°だけ回転させる構成とされている。ビームはファラデー回転子4514を介して2度通過し、即ち一度はその入ってくる経路におけるものであり、且つ2番目はその帰還経路におけるものである。
従って、レーザビームの直線偏光は2個のファラデー回転子によって90°だけ回転される。即ち、入ってくる経路においてビームスプリッタを介して通過したオリジナルのp偏光された光は、帰還経路におけるビームスプリッタにおいてs偏光へ変換される。帰還経路中のビームスプリッタは全ビームをPSDへ向けて反射し且つ帰還レーザビームを光源レーザへ向けて送ることは無い。従って、ファラデー回転子は光源レーザを互いに分離している。ビームスプリッタ4513及び位置感応性検知器4511がビーム軸周りに適切に回転されると、レーザビームは、それらがサンプルに入射する場合に、100%s偏光させることが可能である。従って、この方法は、高いエネルギ効率を達成し、チャンネル間干渉が無く、且つ同時にサンプル表面上でのs偏光を達成することを可能としている。
ファラデー回転子の代わりに四分の一ウエーブプレートの使用は、高いエネルギ効率を達成し且つチャンネル間干渉が無い。しかし、それはサンプル表面上においてs偏光を達成することを可能とするものではない。従って、四分の一ウエーブプレートと比較して多くの実施例においてファラデー回転子が好適な選択である。
図45eは2チャンネル自動焦点システムの平面図を示している。自動焦点チャンネルは、外へ行くビーム経路内に入るサンプルから回折されたいずれかのレーザからの光を回避するために、サンプルに対して回転される。この方法は、通常、サンプルからの回折した光を回避する上で非常に効果的である。何故ならば、回折した光は、通常、瞳面においてx方向及びy方向において非常に局所化されているからである。
図45eにおいて、これら2つのチャンネルは互いに近くに配置されている。機械的ドリフト又はクリーピングがあると、近くに配置された2つのチャンネルは同じ方向にドリフト又はクリープする蓋然性がある。マルチチャンネルから抽出したフォーカス信号はこの種類のチャンネルのコモンモード運動に対して影響されないようにさせることが可能である。
図45fは、マルチチャンネル形態の別の例を示している。この場合には、2つのチャンネルの光路はサンプル上の焦点上で交差しているが、その他は完全に分離されている。この形態はより多くの部品を必要とするが、よりエネルギ効率的であり、且つファラデー回転子を必要とするものではない。又、ビーム経路アライメントはこの形態の場合に一層容易である。何故ならば、2つのチャンネルは全く結合されていないからである。例示的形態に示されている如く、この実施例はより良く動作するのみならず、その物理的構成が一層簡単であり且つ一層柔軟性がある。
新しい自動焦点システムの重要な特徴を以下に要約する。
1.スルーザレンズ形態
2.光源としてレーザ
3.単一光線(小さなエテンデュー)
4.単一モードファイバの使用による光源安定化
5.サンプル表面上のでのs偏光
6.チャンネル間干渉無し
7.小型プリズム又はミラーを使用したイメージングシステム内への且つそれから外への結合(この目的のためにビームスプリッタ/結合器無し)
8.回折した光の良好な拒絶
9.フィードフォワードフォーカスエラー補正のためのサンプル面におけるレーザスポットを横方向にシフトさせる能力
10.環境擾乱に対してより影響されないように構成した対称的なデュアル又はマルチ
チャンネル。
新しい自動焦点システムの利点を以下に要約する。
1.簡単なシステム
2.光の豊富なこと
3.高効率
4.安定な性能
5.ウエハパターンにより影響されないこと
6.イメージング経路により影響しないこと
3.鋸波型アパーチャ(Serrated Aperture)
殆どの光学系は、開口数を定義する少なくとも1個のアパーチャを必要とする。殆どのアパーチャは中央に相当の大きさの孔を具備する薄いメタルプレートから構成されている。これらの種類のアパーチャは製造が簡単であるが、これらのアパーチャにおけるシャープなエッジが画像面において長距離回折を発生し、そのことは画像の異なる部分の間で長距離干渉を発生する。長距離干渉はウエハパターンノイズに対する主要な貢献物の内の一つである。
この不所望の効果を減少させるために、アパーチャエッジを和らげることが望ましい。即ち、100%透過区域と非透過区域との間の遷移は急激なものとすべきではなく、緩やかなものとすべきである。緩やかな遷移は、多数の異なる方法で達成することが可能である。アパーチャエッジのセレーション(serration)即ち鋸歯状はその内の一つである。アパーチャエッジのセレーション方法は、それが正しく行われる場合には、他の方法よりも多くの利点を有しているので、選択している。1つの利点は、セレーションは容易に作ることが可能であり、薄いメタルプレート内に直接機械加工することが可能であるか、又は従来の半導体製造技術を使用してエッチングにより作ることが可能であるということである。
緩やかな遷移のアパーチャを作るための最も簡単な方法の内の一つは、アパーチャのエッジ近くに緩やかな吸収性コーティングを付加することによるものである。この方法は良く知られている従来技術である。しかしながら、この方法は概念的には容易であるが、実際上は困難である。何故ならば、緩やかなコーティングは適切に製造することが困難であり、又そのコーティングは不所望の副作用、特に位相変化、を導入する場合があるからである。別の従来技術は吸収性物質で作った負のパワーのレンズを使用する。その効果は、緩やかなコーティングのものと非常に類似している。しかしながら、それは同じ種類の不所望の副作用を有している。
米国特許第6,259,055号は、鋸歯状アパーチャについて記載している。しかし、それは鋸歯状アパーチャを正しく設計するために使用することが可能な何らの回折式を与えるものではない。又、その鋸歯状アパーチャの回折特性についての定性的な説明は誤っている。本発明の幾つかの実施例によれば、厳密な回折式を鋸歯状アパーチャに対して展開し且つ鋸歯状アパーチャをどの様にして正しく作るかを見つけ出すためにそれを使用する。
鋸歯状アパーチャの概略図を図46aに示してある。アパーチャ4606のセレーションはランダムなピッチではなく周期的な構造4608を有している。非周期的な即ちランダムなセレーション即ち鋸歯状はこの特許明細書においては考慮していない。何故ならば、その回折パターンは所望の形式を有するものではないからである。完全に周期的な構造であっても、鋸歯状のエッジの急激な透過変化のために大量の回折は不可避的であるからである。
しかしながら、周期的鋸歯状からの回折パターンは離散次数に分解することが可能である。最も低い次数、即ちゼロ番目次数、は透過したフィールドの円形状平均から発生し、従って、鋸歯状のシャープなエッジによって影響されるものではない。このことは、ゼロ番目次数の回折パターンは真に緩やかに遷移するアパーチャからのものと同じであることを意味している。従って、ゼロ番目次数の回折パターンは鋸歯状アパーチャから得ることを所望するものである。
真に緩やかに遷移するアパーチャはゼロ番目次数の回折のみを発生する。しかし、鋸歯状アパーチャはゼロ番目次数のみならずより高い回折次数も発生させる。これらのより高い次数は不所望のものである。鋸歯状アパーチャを真に緩やかに遷移するアパーチャのように動作させるために、ゼロ番目次数のみをイメージセンサーへ通過させ且つ全ての一層高い回折次数をイメージセンサーをミスすることを確保することを探求すべきである。直線的に周期的な鋸歯状の場合に、全てのより高い回折次数がイメージセンサーをミスするか否かを判別することは容易である。(参照文献:米国特許第7,397,557号)。しかしながら、円形的に周期的な鋸歯状の場合には、全てのより高い回折次数がどこへいくかを判別することはそれほど容易ではない。従って、全てのより高い次数がどこへ行くかを予測するための厳格な回折式を展開すべきである。
以下の式の全てにおいて次の表記法を使用する。
物体により形成される遠視野回折パターンは、その物体の透過パターンのフーリエ変換である。しかしながら、鋸歯状アパーチャによる回折の計算のためにフーリエ変換を適用するためには、座標ρ及びrを適切にスケールすべきである。スケーリング単位として使用することが可能な2つの長さがある。これらは波長及び光学系の焦点距離である。ρ及びrがフーリエ変換変数対であるためには、ρ及びrの内の一方が波長でスケールされる場合には、他方は焦点距離でスケールされるべきである。最もポピュラーなスケーリング規則は、ρが焦点距離でスケールされ且つrが波長でスケールされるものである。
ρが焦点距離の単位で表される場合には、それは、中心からρにおける瞳点を介して通過する光線の画像空間方向余弦(cosine)と同一となる。焦点距離単位で表されるρの最大値は光学系の開口数(NA)と呼ばれる。即ち、波長単位で表される画像空間位置座標及び画像空間光線方向余弦は、便利なフーリエ変換変数対を構成する。スケーリング規約を他の方法、即ち波長でスケールされるρ及び焦点距離でスケールされるr、へ変えることもうまくいく。この場合には、rは画像面におけるrに当たる光線のアパーチャ空間方向余弦と同一となる。
導出された回折式はスケールされた座標系を適切に使用する。回折式は、座標スケーリングが該2つの規約の間でスイッチされる場合でも、変化することはない。従って、回折式における変化について心配すること無しに自由にこれら二つのスケーリング規約の間でスイッチさせることが可能である。スケーリング規約をスイッチさせることは、実際には、座標変数の解釈を変えることと等価である。この様な解釈における変化は回折式に対してより直感的知識を与えることが可能である。
回折式は可干渉性垂直照明に対してのみ導出する。何故ならば、不可干渉性の場合に対する回折は、単に複数の可干渉性の場合の強度加算であり、且つ斜め照明の場合に対する回折式はフーリエ変換の「シフト理論」を使用して垂直照明の場合からすぐさま導出することが可能だからである。(参考文献:「フーリエ光学系入門、3版(Introduction to Fourier Optics, Third edition)」、Joseph W. Goodman、ロバーツアンドカンパニー、イングルウッド、コロラド、2005年、8頁)。鋸波状は多様な異なる波形状を有する場合がある。回折パターンの詳細は歯の形状に依存する。図46aは1例として直線的な歯での鋸波状を示している。しかしながら、最も関心のある各回折次数の特性は、鋸波状の歯の形状に依存するものではなく、鋸波状のピッチのみに依存するものである。
鋸波状アパーチャの振幅透過であるP(ρ,φ)は以下の如くに表すことが可能である。
尚、w(ρ)は2個の隣の鋸波状の歯の間の開口幅である。
回折パターンを得るためには式(83)をフーリエ変換することが必要である。P(ρ,φ)が分離変数形式を有する場合、即ちP(ρ,φ)=f(ρ)・g(φ)、重み付けハンケル変換(Weighted Hankel Transform)を使用してそれを容易にフーリエ変換することが可能である。(参考文献:「フーリエ光学系入門、3版(Introduction to Fourier Optics, Third edition)」、Joseph W. Goodman、ロバーツアンドカンパニー、イングルウッド、コロラド、2005年、10頁)。不幸なことに、P(ρ,φ)の形式は分離変数形式ではない。しかしながら、2,3のエキストラなステップを取ることにより尚且つそれをフーリエ変換することが可能である。それをするには2つの方法がある。一つの方法は、exp(jmφ)関数の重み付け和でN矩形関数の和を表し、尚mは整数であり、且つ同じ参考文献における練習問題2−7において示唆されているプロセスを追従することである。他の方法は、N矩形関数の和を分離変数関数の積分内に変換し且つ重み付けハンケル変換を使用することである。両方の方法共同じ結果を出すが、ここでは2番目の方法についてのみ示す。
N矩形関数の和は、デルタ関数及びダミー変数ρ’を使用して分離変数関数の積分に容易に変換させることが可能である。即ち、次式となる。
次いで、P(ρ,φ)を次の形式へ変換する。
さて、P(ρ,φ)の各項に対してフーリエ変換を適用する。第1項のフーリエ変換はフーリエ・ベッセル(Bessel)変換を使用して得ることが可能である。
第2項のフーリエ変換は重み付けハンケル変換を使用して得ることが可能である。
尚、
及び
式(89)における矩形関数の変換は以下の如くに行なうことが可能である。
さて、ckは以下の如くに表すことが可能である。
デルタ関数のハンケル変換は以下の如くである。
そこで、式(87)は以下の如くに表すことが可能である。
P(ρ,φ)のフーリエ変換は、今や、以下の如くに表すことが可能である(ダミー積分変数ρ’は、今や、ρへ変えられている)。
式(95)は、全回折は離散的回折次数から構成されていることを示している。第2項からゼロ番目の次数を取ると、次式が得られる。
sin(−x)=−sin(x)の関係を使用して単一の回折次数内に+m回折次数と−m回折次数とを結合させると、次式が得られる。
式(97)は回折公式の導出の最終結果である。不幸なことに、それは未だに数値的に実施することを必要とする一次元積分を有している。しかしながら、数値的一次元積分は、数値的二次元フーリエ変換に対して必要な数値的二次元積分より一層正確に且つ迅速に行なうことが可能である。
式(97)における最初の2つの項はゼロ番目回折次数を構成しており、それは鋸波状アパーチャから欲しいところのものである。ゼロ番目回折次数を別に書くと次式の如くである。
式(97)における最後の項は全てより高い回折次数であり、それはイメージセンサーから排除せねばならない。しかしながら、全てのゼロではない回折次数を気にしなければならないわけではない。何故ならば、第1回折次数のみが最も強く且つ画像面におけるゼロ番目次数に最も近くなるからである。全てのその他の一層高い次数は第1次数よりも一層弱いばかりか、より重要なことであるが、第1次数よりも画像面においてゼロ番目次数から更に遠くはなれて当たるものである。従って、鋸波状アパーチャが働くようにさせるためには、第1回折次数のみを見ることが必要であり且つそれがイメージセンサーの外側に当たることを確保することが必要である。式(97)における最後の項から第1回折次数を取ると、次式が得られる。
第1次数項はcos(Nθ)=±1である方向に沿ってその最大強度を有している。従って、最大強度の方向に沿ってのその振幅は次式となる。
鋸波状アパーチャを働くようにさせるためには、第1回折次数がイメージの外側に当たることを確保することで十分である。
該アパーチャのシャープなエッジ及び何らかのオブスキュレーションのシャープなエッジは長距離回折効果を発生する場合がある。アパーチャに対して使用される同じセレーション即ち鋸波状技術は、いずれかのオブスキュレーションによる長距離回折効果を減少させるためにオブスキュレーションに対して適用することが可能である。バビネット(Babinet)原理のおかげで、鋸波状オブスキュレーションに対する回折公式は、振幅符号の反転を除いて、鋸波状アパーチャに対するものと同一である。(参考文献:「光学原理(Principle of Optics)」、Max Born及びEmil Wolf、ケンブリッジ大学プレス、1999年)。従って、オブスキュレーションに対する新たな回折公式の導出は必要ではない。
該解析的回折公式は非常に一般的なものであり、それは任意の歯の形状を具備する鋸波状に適用することが可能である。しかしながら、回折パターンの挙動を見るために該公式の数値的評価を行なうべきである。該回折公式の数値的計算を実施するために、特定の形状の鋸波状の歯を選択し且つ関数w(ρ)を明示的に表す。図46aに示した如き直線的な歯を具備する鋸波状は良好に動作し且つ製造が容易である。従って、直線的な歯の形状を具備する鋸波状が回折パターンの数値的評価のために選択する。直線的な鋸波状の歯の場合には、関数w(ρ)は以下の如くに表される。
その他形状の歯を具備する鋸波状アパーチャからの回折パターンは、該回折公式において単に関数w(ρ)を適切に変えることにより、直線的な歯の場合に対するように、容易に評価することが可能である。前述した如く、鋸波状アパーチャを適切に設計することが可能であるためにはゼロ番目と1番目の回折次数のみを見ることが必要であるに過ぎない。従って、ここでは、ゼロ番目次数と1番目次数のみを考慮する。
図46b及び46cは、画像面においてのゼロ回折次数の強度の半径方向分布を示している。式(98)及び(101)が数値計算のために使用している。これらの値は非鋸波状アパーチャによる回折のピーク振幅で正規化してある。該ピーク振幅は回折パターンの中心に位置しており(r=0)且つその値は次式の如くである。
非鋸波状アパーチャの回折強度を比較目的のために包含してある。両方の鋸波状アパーチャは最大NA=0.9を有している。しかし、それらの鋸波状歯の長さは異なる。図46bにおいて、曲線4612は鋸波状アパーチャのゼロ番目回折次数の画像面強度を示しており(ρ1=0.8NA,ρ2=0.9NA)、且つ曲線4610は非鋸波状アパーチャに対するものである。図46cにおいて、曲線4614は鋸波状アパーチャのゼロ番目回折次数の画像面強度を示しており(ρ1=0.7NA,ρ2=0.9NA)、且つ曲線4616は非鋸波状アパーチャに対するものである。図46b及び46cは以下のことを示している。
(1)鋸波状アパーチャは、非鋸波状アパーチャよりも一層遠くへ延在することのない画像を発生する。この特徴は正に鋸波状アパーチャから望んでいたものである。
(2)鋸波状の幅が長ければ長いほど、画像における長距離回折効果はより少ない。
(3)画像中心近くでの画像形状に与える影響において鋸波状は効果的ではない。
(4)鋸波状の幅が長ければ長いほど、画像のピーク強度は一層小さい。
鋸波状は長距離回折振幅を減少させるが、それらは、又、ゼロ番目回折次数のピーク高さを減少させる。何故ならば、それらは不可避的に実効アパーチャ面積を減少させるからである。このことは、鋸波状アパーチャ、及び一般的にソフトアパーチャ、の不所望の副作用である。従って、鋸波状の幅を決定する場合に、これら二つの効果の間の良好な妥協を行なうことが必要である。
前述した如く、鋸波状アパーチャを働かせるためには、好適には、ゼロ番目の回折次数のみがイメージセンサーに到達し且つ全ての一層高い回折次数がイメージセンサーをミスするようにすることを確かなものとさせる。しかしながら、2番目及び全ての一層高い回折次数は、1番目の次数よりもゼロ番目の次数から更に離れていく。即ち、1番目の次数がイメージセンサーをミスする場合には、全ての一層高い次数は自動的にイメージセンサーをミスする。従って、1番目の次数のみを処理することが可能である。
周期的構造による回折理論から分かっていることであるが、鋸波状ピッチが小さければ小さいほど、ゼロ番目の次数から1番目の次数は更に遠くへ離れる。鋸波状が十分に細かく作られる場合には、ゼロ番目の次数から十分離れて1番目の回折次数を配置させることが可能である。しかしながら、鋸波状は、真っ直ぐなエッジの上ではなく、丸いアパーチャのエッジの上にある。この場合には、周期的構造による回折理論は直接的に適用されるものではない。
たとえ1番目の次数の光の殆どがゼロ番目の次数から十分に離れている場合であっても、1番目の次数の光の少量が尚且つゼロ番目の次数と1番目の次数の光の主要な部分との間に当たる場合がある。ゼロ番目の次数と1番目の次数の主要部分との間の1番目の次数の光が無視可能なものでは無い場合には深刻な問題となる場合がある。簡単な態様でこの種類の問題となる光の強度を推定することは可能であるようには思われない。
1番目回折次数強度分布の数値計算のために、式(100)及び(101)を使用している。ゼロ番目次数の場合、式(102)、と同じ正規化係数を強度の正規化のために使用している。
図46dにおいて、曲線4618はN=1000に対する1番目回折次数における光の半径方向分布を示しており且つ以下のことを表している。
(1)1番目回折次数の光は広い範囲にわたり広がっている。このことは真っ直ぐなエッジ上の鋸波状に対する場合と非常に異なっている。
(2)ゼロ番目次数と1番目次数の主要部分との間に実際上光は無い。このことは鋸波状アパーチャの驚くべき且つ重要な特徴である。この特徴は鋸波状アパーチャを働くことを可能とする。1番目の次数の光が存在しないゾーン内にイメージセンサーを配置することが可能である。イメージセンサーが1番目の次数の光が存在しないゾーン内側に配置させるのには大きすぎる場合には、そのゾーンの半径は鋸波状歯の数にほぼ比例しているので、その面積を増加させるために鋸波状歯の数を増加させることが可能である。
図46eはアパーチャ円周回りの鋸波状歯の異なる数に対する1番目の次数の光の半径方向分布を示している。曲線4601はアパーチャ円周回りに10個の鋸波状歯に対応しており、曲線4602は100個の鋸波状歯に対応しており、曲線4603は1,000個の鋸波状歯に対応しており、且つ曲線4604は10,000個の鋸波状歯に対応している。この解析は以下のことを示している。
(1)1番目の次数の光が無いゾーンの半径はほぼ鋸波状歯の数に比例している。このことは、特に、Nが1,000より大きい場合に成立する。
(2)鋸波状アパーチャは、鋸波状歯の数が100未満の場合には、鋸波状歯の数の減少と共に1番目の次数の光が無いゾーンが早く収縮するので、良好に働くものではない。
(3)大きなN、1,000を超える、の場合には、次式が成立する。
この値は、周期的構造による回折に基いて、我々の直感と一致している。式(103)は、1番目及び全ての一層高い回折次数をイメージセンサー外側に配置させるために必要な鋸波状歯の数又は等価な鋸波状ピッチを決定するために使用することが可能である。
次式が成立するので、式(103)から1番目の回折次数の回折角度(より精密には方向余弦)であるθ1を計算することが可能である。
尚、fはアパーチャと画像面との間に配置されたレンズシステムの焦点距離である。
更に、アパーチャの物理的半径であるrは次式のように表される。
そして、鋸波状の物理的ピッチであるpは次式のように表される。
式(103)乃至(106)から、次式が得られる。
式(107)は直線的エッジ上の鋸波状に対する回折角度式と同一である。直線的エッジ上の鋸波状に対する回折角度式はグレーチング即ち格子等の周期的構造に対するものと同一である。このことは、鋸波状歯のピッチがエッジの曲率半径よりもはるかに一層小さい場合には、該エッジの湾曲を無視することが可能であり且つ湾曲したエッジ上の鋸波状を真っ直ぐなエッジ上のものと同じように取り扱うことが可能であることを意味している。
曲線の短い部分は直線と考えることが可能であるから、このことは、又、道理にかなっている。このことは、エッジがシャープな角部を有するものではなく且つ鋸波状のピッチがエッジの曲率半径よりも一層小さい限り、エッジ鋸波状技術(edge serration technique)を任意の形状の任意のエッジに対して適用することが可能であることを告げている。例えば、不規則形状のアパーチャを考えてみる。この場合には、アパーチャエッジの湾曲はエッジに沿って変化する。しかしながら、アパーチャがシャープな角部を有するものではない限り、式(107)を満足する鋸波状ピッチを作ることが可能である。
鋸波状ピッチはどこもかしこも同じである必要はない。そのピッチがエッジに沿ってゆっくりと変化される限り、ここに開示した鋸波状技術は少なくともある程度は働くものと推測される。
鋸波状アパーチャの利点を以下に要約する。
1.より少ない長距離回折。画像の中心コアから遠く離れた領域内の回折限界画像の高さを減少させる。
2.注意深く鋸波状ピッチを選択することにより、1番目及びより高い回折次数をイメージセンサーから離したままとすることが可能。
3.位相変化が導入されることは無い。
4.製造が容易。
VI.干渉欠陥検知及び分類の適用例
記載した実施例は、高分解能光学的検査又は光学的信号の振幅及び位相の両方の決定から利点を得ることが可能な測定を行なう場合に特に適している。以下のものは、可能な適用例の部分的なリストであり、即ち、パターン形成したウエハの欠陥検知及び欠陥分類、ベアウエハの欠陥検知及び分類、結晶欠陥検知、欠陥レビュー、位相変化コンポーネントを具備するレチクル上の欠陥を含むレチクル欠陥の検知及び分類。
種々の実施例の利点の多くをここに説明した。この様な利点は、高欠陥信号、高欠陥検知感度、より少ない偽欠陥検知、より少ないサンプルパターンノイズ、一度に異なる種類の欠陥を取得する能力、ボイドと粒子又はメサと谷との間を区別する能力、より一層正確且つ信頼性のある欠陥分類、改善した検知一貫性、欠陥信号の増幅のためのイメージセンサーダイナミックレンジのより効果的な利用に通じるフィールドにわたっての改善した照明一様性、動作モードの早いセットアップ、CWレーザではなくモードロック型レーザの使用とそれによるコストの低下、コスト低下に通じるスペックルバスティング(speckle busting)に対する必要性の回避、フラッド(flood)照明を使用する能力とそれによるウエハ損傷の機会の減少、良く定義された回折次数に通じる可干渉性照明を使用する能力とそれによる簡単なフーリエフィルタリングの提供、コスト低下に通じる簡単なシステム形態、コスト低下に通じ且つエネルギロスを減少させる瞳又はアパーチャストップリレー(中継)の除去、及び効率的なエネルギ使用、を包含している。
前述したことは明確性の目的のために幾らかの詳細について説明しているが、その原理を逸脱すること無しに或る変更及び修正を行なうことが可能であることは明らかである。注意すべきことであるが、ここに記載したプロセス及び装置の両方を実現する多数の代替的な態様が存在している。従って、本実施例は、例示的なものであり制限的なものではないものとして考えるべきであり、かつ本発明はここに与えられている詳細に制限されるべきものではなく、それは特許請求の範囲の範囲及び均等物内において修正することが可能なものである。