JP2011516477A - ドライアイ治療用βターンペプチド模倣環式化合物 - Google Patents

ドライアイ治療用βターンペプチド模倣環式化合物 Download PDF

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Abstract

本発明は、βターンペプチド模倣環式化合物またはその誘導体を用いて、ドライアイを治療する方法に関する。βターンペプチド模倣環式化合物は、単独で使用してもよいし、ドライアイを治療する1種類以上の他の化合物、分子または薬剤と併用および/または連動させてもよい。

Description

関連出願
本出願は、2009年2月27日に出願された米国仮特許出願第61/208,873号ならびに、2008年4月4日に出願された米国仮特許出願第61/123,036号の優先権の利益を主張するものである。上記の出願の教示内容全体を本明細書に援用する。
発明の背景
乾性角結膜炎としても知られるドライアイは、眼表面損傷のおそれのある不快感、視覚障害、涙液層不安定といった症候を生じる、涙液および眼表面の多因子疾患である。ドライアイには、涙液層の浸透圧上昇や眼表面の炎症を伴う(The Ocular Surface, “The Definition and Classification of Dry Eye Disease: Report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye Workshop (2007),” 5(2): 75〜92 (2007))。ドライアイは、涙腺機能単位すなわち、涙腺、眼表面(角膜、結膜、マイボーム腺)、眼瞼ならびに、これらをつなぐ感覚神経と運動神経を含む一体構造の乱れであるとされている。涙腺機能単位は、涙液層の主な成分を調節するよう制御し、環境や内分泌、皮質の影響に応答する。この単位の機能は、涙液層の完全性、角膜の透明度、網膜に投影される像の質を保つことにある。涙腺機能単位のいずれかの構成要素(求心性感覚神経、遠心性自律神経および運動神経、涙液を分泌する腺)に疾患または損傷が生じると、涙液層が不安定になり、それ自体がドライアイと呼ばれる眼表面疾患につながる可能性がある。
ドライアイには主に、涙液欠乏性ドライアイ(ADDE)と蒸発性ドライアイ(EDE)がある。ADDEは、涙腺からの涙液分泌に障害があって生じるもので、さらにシェーグレン症候群性ドライアイ(関節リウマチなど、涙腺および唾液腺が自己免疫過程の標的になる)と非シェーグレン症候群ドライアイ(加齢に伴うドライアイなど、涙腺の機能不全であるが、シェーグレン症候群の全身性自己免疫の特徴は除外される)とに分けられる。EDEは、涙腺の正常な分泌機能がある状態で、露出している眼表面から水分が過剰に失われることによるものである。その原因は内因性(マイボーム腺の機能不全など、眼瞼の構造または動態に影響する内因性疾患によるもの)のこともあれば、外因性(ビタミンA欠乏症など、何らかの外的要因がゆえに眼表面疾患が発生する場合)のこともある(The Ocular Surface, “The Definition and Classification of Dry Eye Disease: Report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye Workshop (2007),” 5(2): 75〜92 (2007)を参照のこと)。
ドライアイは最も一般的な眼の病気のひとつであり、米国では50歳以上の女性323万人、男性168万人前後に発症して推定有病率は491万人にものぼる(The Ocular Surface, “The Epidemiology of Dry Eye Disease,” 5(2): 93〜107 (2007))。ドライアイに対する現行の治療法は、涙液を交換して症候を抑えることに焦点を合わせた対症療法的なものである。店頭販売の人工涙液製剤を入手可能である。また、水性の涙液層の内容を改善するための非薬理学的手法に、涙点プラグ挿入術がある。しかしながら、涙点プラグ挿入術は、涙液産生量、クリアランス、眼表面の感覚を損なう危険性をはらんでいる。これらの対症療法的な治療法には、短期的にみれば利点もあるが、ドライアイに対する長期にわたるコントロール療法では用途が限られている。ドライアイ治療用の最初の処方薬は、RESTASIS(登録商標)(シクロスポリンA)である。RESTASIS(登録商標)は、ドライアイ疾患と関連した眼の炎症の結果として涙液産生量が減少している患者で、涙液産生量を増やすものである。しかしながら、抗炎症薬よりも幅広い用途の見込める治療法に需要がある。
ドライアイを外科的に誘発したイヌでの研究で、NGFを局所使用するとドライアイの角膜感度が改善され、結膜杯細胞密度が増すことが、いくつかの臨床研究で明らかになっている(Bonini,S.ら, “Topical Treatment with Nerve Growth Factor for Neurotrophic Keratitis,” Ophthalmology, 107: 1347〜1352 (2000))。しかしながら、NGFは神経細胞による神経突起形成を刺激することから、NGFを局所投与することに伴う副作用のひとつに、眼疼痛がある(Bonini,S.ら, “Topical Treatment with Nerve Growth Factor for Neurotrophic Keratitis,” Ophthalmology, 107: 1347−1352 (2000))。また、NGFは、薬物動態およびバイオアベイラビリティが悪く、製造コストが高い。従来技術では、ドライアイを治療する別の方法に対する需要が存在する。
発明の開示
本発明は、ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、βターンペプチド模倣環式化合物を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法を提供するものである。一実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が、13〜17個の炭素原子で構成される大環状環を含む。一層特定の実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が構造式(I)で表され、

式中、RおよびRは、水素、C〜Cアルキル、アリールまたはいずれかの対掌配置で20種類のタンパク質−アミノ酸に見られるアミノ酸側鎖置換基から独立に選択され、RおよびRは独立に、水素またはC〜Cアルキルであるか、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を形成するか、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を形成し、RおよびRは、水素またはC〜Cアルキルであり、Yは、水素であるか、1個または2個の芳香族置換基であり、Xは、O、N、S、P、Se、C、1〜6個の炭素原子で構成されるアルキレン、SO、SOまたはNHから選択され、nは、0、1、2、3、4または5であり、リンカーは、ホモ二官能性化合物との反応によって、式(I)で表される化合物のダイマーを形成するのに効果的な連結基である。好適なリンカー基としては、NH、OH、SH、COOH、CHCO、CHO、NH−CH−COOHがあげられるが、これに限定されるものではない。
本発明のもうひとつの実施形態では、Xが、O、SまたはNHであり、R、R、R、Rが各々水素原子であり、大環状環が、14個、15個または16個の環原子を有する。
もうひとつの実施形態では、RおよびRが、異なるタンパク質新生アミノ酸側鎖の配列由来である。
本発明のもうひとつの実施形態では、Xが、O、SまたはNHである。
特定の実施形態では、式Iのβターンペプチド模倣環式化合物が、以下の式

で表されるか、その薬学的に許容される塩である。この化合物を本明細書ではD3と呼ぶ。D3は、Trkモジュレーター活性を持つことが実証されている。
もうひとつの実施形態では、βターン環式化合物が、








からなる群から選択されるか、上記のいずれかの薬学的に許容される塩である。これらの化合物が、Trkモジュレーター活性を持つこともある。
一実施形態において、本発明は、ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、以下の構造式(D3)

で表されるβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法に関するものである。
もうひとつの実施形態では、本発明は、ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、式3Aa

で表されるβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法に関するものである。
さらにもうひとつの実施形態では、本発明は、ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、式3Ak

で表されるβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法に関するものである。
一実施形態において、本発明は、ムチン分泌の刺激が必要な被検体においてムチン分泌を刺激する方法であって、本明細書に記載のβターンペプチド模倣環式化合物を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法に関するものである。
本発明はさらに、治療が必要な被検体においてドライアイ治療用の薬の製造に、本明細書に記載の化合物(βターンペプチド模倣環式化合物など)を使用することに関するものである。
本発明はさらに、治療が必要な被検体におけるドライアイの治療に有用な製剤組成物に関するものである。この製剤組成物は、本明細書に記載の化合物(βターンペプチド模倣環式化合物など)と、薬学的に許容されるキャリアとを含む。
上記の内容は、添付の図面に示したような、本発明の実施形態の例に関する以下の一層具体的な説明から明らかになろう。これらの図において、同じ構成要素には同様の参照符号を付す。図面はかならずしも原寸に比例した縮尺ではなく、本発明の実施形態を示すにあたって強調した部分もある。
図面ならびに裏付けとなる実験の説明では、化合物表記に接頭辞MIMを含む。この接頭辞のある化合物表記は、接頭辞のない化合物表記と同じである。たとえば、化合物D3、D3、MIM−D3は、同じ化合物を示す。
Trkモジュレーター化合物に1、2、3の番号を付した、βターン主鎖についてのコードである。 Trkモジュレーター化合物にA、B、C、Dの文字を付した、主鎖のX置換基についてのコードである。 Trkモジュレーター化合物に対する主鎖のジペプチドRおよびR置換基のコードである。 主鎖(1、2または3)、X置換基(A、B、CまたはD)、ジペプチドアミノ酸(RおよびR)を含むβターンペプチド模倣環式化合物の完全な文字コードを示す。 30μM(マイクロモル)、10μM、1μM、0.3μMの用量で、神経成長因子(NGF)、カルバコール(CCh)、化合物D3、化合物3Aa、化合物3Akを試験している、ラット(ラット1〜4)の結膜杯細胞での4回の実験で得られたデータを示す表である。この表には、平均(Avg)と測定の標準誤差(SEM)を示す。 ラット(ラット1〜4)の結膜杯細胞での実験で得られたデータについての棒グラフである。Y軸は、複合糖質分泌に関する基礎より上の倍増分を示す。X軸は、30μM(マイクロモル)、10μM、1μM、0.3μMの用量での神経成長因子(NGF)、カルバコール(CCh)、化合物D3、化合物3Aa、化合物3Akを示す。 ラット(ラット1〜3)の結膜杯細胞での実験で得られたデータについての棒グラフである。Y軸は、細胞増殖の基礎より上の倍増分を示す。X軸は、30μM(マイクロモル)、10μM、1μM、0.3μMの用量でのウシ胎仔血清(FBS)、神経成長因子(NGF)1nM、化合物D3、化合物3Aa、化合物3Akを表す。 図5A〜図5Cは、培養での杯細胞の成長形態を示す。図5Aは、9日目までには接着細胞が組織全体で目視確認されることを示す。図5Bは、組織培養ウェルに付着している単一の細胞が玉石の形態を呈し、細胞質ベシクルに小さな半透明の液滴を含有していることを示す。図5Cの開いた矢印は、培養で細胞が増殖する際に、杯細胞表面で粘液様の分泌生成物を示唆する小さな液滴の形成が観察されたことを示す。図5Cの塗りつぶし矢印は、これらの液滴含有細胞が培養で成長するにつれて液滴がプールにマージされたことを示す。 図6A〜図6Cは、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色に対する杯細胞の一次培養の組織化学的分析を示す。図6Aは、細胞がPASに対して陽性反応を持つことを示す。図6Bの開いた矢印は、多くの細胞質核周囲ベシクルが観察されたことを示す。図6Bおよび図6Cの塗りつぶし矢印は、これらのベシクルのうちいくつかがPASで著しく染色されたことから、分泌顆粒内に中性の複合糖質が存在することを示す。 ホルボール−12−ミリステート−13−アセテート(PMA)(0.1、1、10nM)、NGF(0.1、1、10nM)、化合物D3(2、10、50Mμ)が複合糖質分泌に対しておよぼす影響に関する、基礎を上回る倍増分(±sem)での棒グラフである。Y軸は、複合糖質分泌の基礎より上の倍増分(±sem)を表す。X軸は、基礎、NGF(0.1、1、10nM)、PMA(0.1、1、10nM)、化合物D3(2、10、50μM)を表す。 NGF(0.01、0.1、1、10nM)および化合物D3(3、10、30、100μM)が杯細胞増殖に対しておよぼす影響についての棒グラフである。Y軸は、細胞増殖の基礎を上回る倍増分(±SD)を表す。X軸は、FBS、NGF(0.01、0.1、1、10nM)および化合物D3(3、10、30、100μM)を表す。 PMA(100nM)、NGF(1nMおよび10nM)、化合物D3(10μMおよび50μM)がマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)活性に対しておよぼす影響についてのウエスタンブロットを示す。 基礎、PMA(100nM)、NGF(1nMおよび10nM)、化合物D3(10μMおよび50μM)についての総アクチンタンパク質に対するMAPK活性化の定量化に関する棒グラフである。Y軸は、MAPK活性化の倍増分(±sem)を表す。X軸は、基礎、PMA(100nM)、NGF(1および10nM)、化合物D3(10および50μM)を表す。 陰性対照ラット(未処理;n=ラット6匹)、14日間連続の全身スコポラミンで誘導したドライアイモデルのラット(スコポラミン;n=ラット5匹)、8日目に生理食塩水で局所的に1回処理したドライアイモデルのラット(スコポラミン+生理食塩水;n=ラット6匹)、8日目に50ugの1%化合物D3で局所的に1回処理したドライアイモデルのラット(スコポラミン+1%化合物D3;n=ラット7匹)における、スコポラミン植込み後14日目のフルオレセイン角膜染色スコア(スコア±sem)の棒グラフである。 陰性対照ラット(未処理;n=ラット6匹)、14日間連続の全身スコポラミンで誘導したドライアイモデルのラット(スコポラミン;n=ラット5匹)、8日目に生理食塩水で局所的に1回処理したドライアイモデルのラット(スコポラミン+生理食塩水;n=ラット6匹)、8日目に50ugの1%化合物D3で局所的に1回処理したドライアイモデルのラット(スコポラミン+1%化合物D3;n=ラット7匹)における、スコポラミン植込み後数日(X軸)の涙液産生スコア(シルマーテスト)(mm±sem)(Y軸)のグラフである。 陰性対照ラット(未処理;n=ラット6匹)、14日間連続の全身スコポラミンで誘導したドライアイモデルのラット(スコポラミン;n=ラット5匹)、8日目に生理食塩水で局所的に1回処理したドライアイモデルのラット(スコポラミン+生理食塩水;n=ラット6匹)、8日目に50ugの1%化合物D3で局所的に1回処理したドライアイモデルのラット(スコポラミン+1%化合物D3;n=ラット7匹)における、スコポラミン植込み後数日(X軸)の涙液フルオレセインクリアランススコア(FU/mm±sem)(Y軸)のグラフである。 健常なラットにおける化合物D3およびNGF処置薬の投与前後のムチン濃度を示す棒グラフである。Y軸は、ムチン濃度(ng/μL±sem)を表す。X軸は、生理食塩水および化合物D3(0.4、1.0および2.5%)およびNGFを表す。 健常なラットにおける化合物D3およびNGF処置薬の局所投与後の基線からのムチン濃度の変化を示す棒グラフである。Y軸は、ムチン濃度の変化を表す(ng/μL±sem)。X軸は、生理食塩水および化合物D3(0.4、1.0および2.5%)およびNGFを表す。 実施例3での端点評価の研究設計とスケジュールのグラフである。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.00053%のNGF、2.5%、1.0%、0.4%の化合物D3(それぞれ、25mg/mL、10mg/mL、4mg/mLの化合物D3に相当)で処理したスコポラミン植込みラットにおける、13日目、21日目、28日目の涙液破壊時間(TBUT)(秒、平均±sem)の棒グラフである。Y軸は、TBUT(秒、平均±sem)を表す。X軸は、13日目、21日目、28日目の、無処置のラットならびに、生理食塩水、0.00053%のNGF、2.5%、1.0%、0.4%の化合物D3で処理したスコポラミン植込みラットを示す。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.4%、1.0%、2.5%の化合物D3および0.00053%のNGFで処理したスコポラミン植込みラットにおいて、スコポラミン植込み後数日(X軸)の涙液破壊時間(TBUT)(sec±sem)(Y軸)のプロットである。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.00053%のNGF、2.5%、1.0%、0.4%の化合物D3(それぞれ、25mg/mL、10mg/mL、4mg/mLの化合物D3に相当)で処理したスコポラミン植込みラットにおける、13日目、21日目、28日目の角膜染色(平均±sem)の棒グラフである。Y軸は、角膜染色(CS)(秒、平均±sem)を表す。X軸は、13日目、21日目、28日目の、無処置のラットならびに、生理食塩水、0.00053%のNGF、2.5%、1.0%、0.4%の化合物D3で処理したスコポラミン植込みラットを示す。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.4%、1.0%、2.5%の化合物D3および0.00053%のNGFで処理したスコポラミン植込みラットにおいて、スコポラミン植込み後数日(X軸)の角膜染色(スコア±sem)(Y軸)のプロットである。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.00053%のNGF、2.5%、1.0%、0.4%の化合物D3(それぞれ、25mg/mL、10mg/mL、4mg/mLの化合物D3に相当)で処理したスコポラミン植込みラットにおける、12日目、19日目、28日目のムチン産生(ng/μL±sem)の棒グラフである。Y軸は、ムチン産生(ng/μL±sem)を表す。X軸は、13日目、21日目、28日目の、無処置のラットならびに、生理食塩水、0.00053%のNGF、2.5%、1.0%、0.4%の化合物D3で処理したスコポラミン植込みラットを示す。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.4%、1.0%、2.5%の化合物D3および0.00053%のNGFで処理したスコポラミン植込みラットにおいて、スコポラミン植込み後数日(X軸)のムチン産生(ng/μL±sem)(Y軸)のプロットである。 図20A〜図20Cは、棒グラフ、化合物D3が選択された端点測定に対しておよぼす影響を示す。図20Aは、未処理群、生理食塩水群、1%化合物D3で処理した群について、28日目と13日目でのTBUT(sec)の変化を示す。図20Bは、未処理群、生理食塩水群、1%化合物D3で処理した群について、28日目と13日目での角膜染色(スコア)の変化を示す。図20Cは、未処理群、生理食塩水群、1%化合物D3で処理した群について、28日目と13日目でのムチン産生(ng/μL)の変化を示す。 図21A〜図21Cは、1%化合物D3が選択された端点測定に対しておよぼす影響についてのプロットを示す。図21Aは、スコポラミン植込み後数日(X軸)における生理食塩水群および1%化合物D3で処理した群について、TBUT(sec±sem)の変化(Y軸)を示す。図21Bは、スコポラミン植込み後数日(X軸)における生理食塩水群および1%化合物D3で処理した群について、角膜染色(スコア±sem)の変化(Y軸)を示す。図21Cは、スコポラミン植込み後数日(X軸)における生理食塩水群および1%化合物D3で処理した群について、ムチン産生の変化(ng/μL±sem)(Y軸)を示す。 無処置のラットならびに、生理食塩水、0.4%、1.0%、2.5%の化合物D3および0.00053%のNGFで処理したスコポラミン植込みラットにおいて、スコポラミン植込み後数日(X軸)の涙液産生(mm±sem)(Y軸)のプロットである。 無処置のラットならびに、および生理食塩水、0.4%、1.0%、2.5%の化合物D3および0.00053%のNGFで処理したスコポラミン植込みラットにおいて、スコポラミン植込み後数日(X軸)の涙液フルオレセインクリアランス(Log FU/mm±sem)のプロットである。 無処置の未処理対照ラットならびに、生理食塩水、0.4%、1.0%、2.5%の化合物D3および0.00053%のNGFで処理したスコポラミン植込みラットにおいて、スコポラミン植込み後数日(X軸)の体重のグラフ(g±sem)(Y軸)。
発明の詳細な説明
本発明は、ドライアイの治療を必要とする被検体においてドライアイを治療する方法であって、βターンペプチド模倣環式化合物を前記被検体に投与することを含む、方法に関する。本明細書で使用する場合、「βターンペプチド模倣環式化合物」は、ニューロトロフィン受容体リガンド(NGF、NT−3、NT−4、BDNFなど)のβターン領域を模倣する環式化合物を示す。特定の実施形態では、本発明のβターンペプチド模倣環式化合物は、ニューロトロフィンチロシンキナーゼ(Trk)受容体モジュレーターであってもよい。もうひとつの特定の実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物がp75受容体モジュレーターであってもよい。さらにもうひとつの実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物がp75受容体モジュレーターとTrk受容体モジュレーターの両方であってもよい。
一実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が構造式Iで表される。特定の実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が化合物D3または化合物D3の誘導体である。
もうひとつの実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が、1Ad、3Aa、3Ak、3Ba、3Bg、3Bi、3Ca、3Ce、3Cg、3Ck、1Aa、1Ba、3Ac、3Aeからなる群から選択される化合物であってもよい。
本発明のβターンペプチド模倣環式化合物は、Trk受容体モジュレーター化合物またはp75受容体モジュレーターであってもよいが、ドライアイを治療する上でのβターンペプチド模倣環式化合物の有用性が、ドライアイを治療する上で調節すると有用なTrkB受容体または他の任意の受容体の調節など、他の活性に依存する場合がある。また、ドライアイを治療する上での本発明のβターンペプチド模倣環式化合物の有用性が、走化性の白血球動員に対する作用、顆粒球分化に対する作用、好中球、肥満細胞、好酸球に対する作用、角膜上皮細胞増殖に対する作用、上方制御される選択的感覚ニューロペプチド、サブスタンスPおよびカルシトニン遺伝子関連ペプチドなど、ニューロトロフィン様活性の他の調節に依存することもある。
本明細書で使用する場合、「Trk受容体モジュレーター化合物」は、TrkA受容体アゴニスト、TrkC受容体アゴニストあるいは、TrkA受容体アゴニストとTrkC受容体アゴニストの両方である化合物である。
本明細書で使用する場合、「調節する」または「モジュレーター」とは、受容体を刺激または受容体に拮抗することを示す。
本明細書で使用する場合、「p75受容体モジュレーター」は、p75受容体アゴニストまたはアンタゴニストである。
ニューロトロフィンおよびニューロトロフィン受容体
ニューロトロフィン(NTF)は、あらゆる脊椎動物種でニューロンの増殖、生存、分化を制御するダイマータンパク質のファミリである。NTFは、神経成長因子(NGF)、脳神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ニューロトロフィン−4(NT−4)を含む。これらのNTFは、2種類の膜貫通受容体すなわち高親和性受容体ファミリのチロシンキナーゼ(Trk)(TrkA、Trk B、Trk C)(K=10〜100pM)およびp75受容体(K=1nM)と結合する。Trkファミリの受容体リガンドは極めて選択性が高い(NGFがTrkAと結合し、BDNFがTrkBと結合し、NT−3が主にTrkCと結合するなど)。
ニューロトロフィンとその受容体は、結膜杯細胞(CGC)で同定されている(Rios, J. D.ら, “Role of Neurotrophins and Neurotrophin Receptors in Rat Conjunctival Goblet Cell Secretion and Proliferation, Ophthalmology & Visual Science, 48: 1543〜1551 (2007))。CGCは、涙液層における大きな可溶性ムチンの一次源である。これらのムチンは、角膜と結膜を外的要因(細菌または化学物質)から保護する物理的障壁および化学的障壁を提供し、かつ鮮やかな視界を得るのに必要な滑らかな屈折面を得やすくするものである。
βターンペプチド模倣環式化合物
一実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が、13〜17個の炭素原子で構成される大環状環を含む。一層特定の実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が構造式(I)で表され、

式中、RおよびRは、水素、C〜Cアルキル、アリールまたはいずれかの対掌配置で20種類のタンパク質−アミノ酸に見られるアミノ酸側鎖置換基から独立に選択され、RおよびRは独立に、水素またはC〜Cアルキルであるか、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を形成するか、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を形成し、RおよびRは、水素またはC〜Cアルキルであり、Yは、水素であるか、1個または2個の芳香族置換基であり、Xは、O、N、S、P、Se、C、1〜6個の炭素原子で構成されるアルキレン、SO、SOまたはNHから選択され、nは、0、1、2、3、4または5であり、リンカーは、ホモ二官能性化合物との反応によって、式(I)で表される化合物のダイマーを形成するのに効果的な連結基である。好適なリンカー基としては、NH、OH、SH、COOH、CHCO、CHO、NH−CH−COOHがあげられるが、これに限定されるものではない。
20種類のアミノ酸側鎖置換基としては、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシンの側鎖があげられる。たとえば、グルタミン酸の側鎖は

である。
本発明のもうひとつの実施形態では、Xが、O、SまたはNHであり、R、R、R、Rが各々水素原子であり、大環状環が、14個、15個または16個の環原子を有する。
もうひとつの実施形態では、RおよびRが、異なるタンパク質アミノ酸側鎖の配列由来である。
本発明のもうひとつの実施形態では、Xが、O、SまたはNHである。
特定の実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物がD3(Maliartchoukら, Mol Pharmcol 57(2):385〜391, 2000(全体を本明細書に援用する)ならびに米国特許第6,881,719号明細書(全体を本明細書に援用する)を参照のこと)またはD3の誘導体である。本発明の方法で使用するのに、D3および式Iで表される他の化合物の多数の誘導体が想定され、このような単位2つがダイマーで連結されたビオチニル化形態および分子などの単純な修飾を含む。D3および式Iで表される他の化合物の他の誘導体として、20種類のタンパク質−アミノ酸に見られるアミノ酸側鎖置換基を有する側鎖R〜Rがあげられる。
タンパク質アミノ酸に特有の側鎖(Arg、Trp、Hisなど)は、D3および式Iで表される他の化合物の容易に生成される誘導体である多様な構造の形成/設計を可能にし、多くのタイプの官能基を含み得る。
置換基Yは、水素であってもよいし、ニトロ、アミノ、ハロ、アルキル(たとえば、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子で構成されるアルキル)、アリール(たとえば、フェニルまたはナフチル)などの1個または2個の芳香族置換基であってもよい。アルキルおよびアリール置換基Yは、未置換であっても置換されていてもよく、好適な置換基には、1〜6個の炭素原子で構成されるニトロおよびアルキルがある。また、Yは、ビオチンなどの官能基で誘導体化されてもよい。基Xは、O、N、S、P、Seといったどのような求核原子であってもよいが、Cなどの他の原子でもよく、あるいは、メチレンなどの一般に1〜6個の炭素原子で構成されるアルキレンラジカル、SO、SOまたはNHであってもよい。ベンゾイルカルボニルのオルトまたはメタを連結点にすることが可能である。「n」の許容可能な値は、0、1、2、3、4、5である。Xを取り込む連結側鎖は、構造(I)に示すように脂肪族である。
側鎖アルキル基R、R、R、R、R、Rは、これらの化合物の生物活性を高める目的でさまざまに変えられるものである。一般に、R、R、R、Rは、20種類のタンパク質−アミノ酸に見られるアミノ酸側鎖置換基であり、たとえば、いずれかの対掌配置でのグルタミン酸、リジン、オルニチン、スレオニンの側鎖である。R置換基がアミノ酸側鎖である場合、その炭素上の他の置換基であるRは一般に水素であるが、メチル、エチルまたはベンジルであってもよい。あるいは、RおよびRがその介在原子と一緒になって接合し、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン残基を与える形であってもよい。RおよびRは、上述したようなRおよびRと同じように関連している。すなわち、多くの場合、このうちの一方がアミノ酸側鎖になり、2つの置換基のうちの他方は水素であるが、メチル、エチル、プロピルまたはベンジルであってもよい。また、RおよびRが介在原子と一緒になって接合し、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン残基を与える形であってもよい。
これらの位置における最も一般的な置換基が水素またはメチルであるRおよびRのバリエーションについては、かなりの幅がある。これらの置換基は、20種類のタンパク質−アミノ酸の側鎖のうちの1つ、特にメチルと対応するようにも設計可能である。
特に生物活性の助けとなることが明らかな側鎖が、リジン、グルタミン酸、チロシン、イソロイシン、アスパラギン、スレオニンの側鎖としてのRおよびR、水素としてのR、R、R、Rである。特に側鎖のうちの1つ以上を選択し、NGFのターン領域内の側鎖に対応させる。
通常、大環状化合物は13員環から16員環であり、X置換基はO、N、S、SOまたはSOである。
もうひとつの実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が、1Ad、3Aa、3Ak、3Ba、3Bg、3Bi、3Ca、3Ce、3Cg、3Ck、1Aa、1Ba、3Ac、3Aeからなる群から選択される。
さらにもうひとつの実施形態では、βターンペプチド模倣環式化合物が、環状アミノ、エーテルまたはスルフィド足場を含む化合物(図1A参照)であり、さまざまな置換基(アミン、グアニジンまたはメチルスルホンアミドなど)(図1B参照)ならびにR基およびR基が、ジペプチドアミノ酸フラグメントを含む(図1C参照)。(図1Dも参照)。
一実施形態において、本発明は、ムチン分泌の刺激が必要な被検体においてムチン分泌を刺激する方法であって、本明細書に記載のβターンペプチド模倣環式化合物を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法に関するものである。
本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与した場合に、標的となる機能障害を治療(治療的または予防的に)するのに十分な量を示す。たとえば、有効量は、治療対象となる機能障害の重症度、期間または進行を低減または寛解し、治療対象となる機能障害の進展を防止し、治療対象となる機能障害を退行させ、あるいは別の治療法の予防効果または治療効果を亢進または改善するのに十分である。
本明細書で使用する場合、「ドライアイ」は、涙液欠乏性ドライアイ、蒸発性ドライアイ、閉経関連ドライアイ、涙液減少症、涙液欠乏、眼球乾燥症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、眼瞼縁炎、閉瞼障害および感覚神経麻痺、アレルギー性結膜炎関連ドライアイ、ウイルス感染後結膜炎ドライアイ、白内障手術後ドライアイ、レーザー角膜屈折矯正手術(LASIK)後の慢性ドライアイ、VDT手術関連ドライアイ、コンタクトレンズ装着関連ドライアイ、加齢によるドライアイ、角膜損傷、感染、ライリー・デイ症候群、先天性無涙症、栄養障害または栄養不足(ビタミンを含む)、薬理学的副作用、眼のストレスおよび腺や組織の破壊、スモッグ、煙、異常に乾燥した空気、空気中の微粒子などへの環境曝露、自己免疫および他の免疫不全障害、まばたきができなくなっている昏睡患者を含むことを想定した広い概念である。また、「ドライアイ」には、角結膜上皮病変、角膜上皮の痛み、角膜潰瘍(角膜実質層の潰瘍など)、眼感染症など、ドライアイによって引き起こされる疾患も含む。
被検体とは、本明細書で使用する場合、霊長類(ヒトなど)、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、ネズミまたは種としての他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、齧歯類またはネズミを含むがこれに限定されるものではない、哺乳動物などの動物を示す。一実施形態では、被検体がヒトである。
「治療する」という表現には、療法的な治療と予防的な治療(発生尤度の低減)の両方を含む。この表現は、疾患(本明細書に記載の疾患または機能障害など)の発生または進行を低減、抑制、減弱、減少、抑止または安定させ、疾患の重症度を下げるまたは疾患に関連した症候を改善することを意味する。
本明細書で使用する場合、薬学的に許容される塩という表現は、薬学的に許容される無毒の酸(その無機酸および有機酸を含む)から調製される投与対象化合物の塩を示す。このような無機酸の例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸があげられる。適切な有機酸については、たとえば、脂肪族、芳香族、カルボン酸およびスルホン酸クラスの有機酸から選択すればよく、その一例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、ムチン酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などがあげられる。
本発明はさらに、治療を必要とする被検体においてドライアイを治療するための製剤組成物に関するものである。この製剤組成物は、本発明の1つ以上のβターンペプチド模倣環式化合物と、薬学的に許容されるキャリアとを含む。薬学的に許容されるキャリアは、組成物中の制御/活性物質と相互作用しない不活性成分を含有するものであってもよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに記載されているものなどの標準的な製剤処方技術を採用可能である。非経口投与用の好適な製剤キャリアとしては、たとえば、滅菌水、生理食塩液、静菌生理食塩水(約0.9%mg/mlのベンジルアルコールを含有する生理食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス液、乳酸リンゲル液、デキストロース、エタノール、グリセロールなどの界面活性剤または賦形剤があげられる。
別の実施形態では、製剤組成物が(1種類以上の)他の治療剤をさらに含む。本明細書に記載の方法および製剤組成物で用いるのに適した他の治療剤は、抗炎症剤(RESTASIS(登録商標)(Allergan)など)、ムチン刺激薬(ジクアホソル(Inspire Pharmaceuticals)15−(S)−HETE(Alcon)、レバミピド(Otsuka)、エカベト(ISTA)など)、ホルモン剤、涙腺刺激薬(アンドロゲン涙液(Allergan)など)、人工涙液などであり得るが、これに限定されるものではない。
投与モード
この組成物は、たとえば、溶液、軟膏、クリーム、ローション、眼軟膏、最も好ましくは、点眼薬または点眼ゲルの形で眼科用局所塗布向けに処方可能であり、保存剤、薬剤の浸透を助ける溶媒、軟膏およびクリームの皮膚軟化薬などの従来の適切な添加剤を含有するものであってもよい。このような局所製剤は、相溶可能な従来のキャリア、たとえばクリームまたは軟膏基剤、ローション用のエタノールまたはオレイルアルコールを含有するものであってもよい。
あるいは、活性化合物をリポソームによって眼に適用してもよい。さらに、ポンプ−カテーテル系によって活性化合物を涙液層に注入してもよい。本発明のもうひとつの実施形態は、ピロカルピン(Ocusert(商標))System(Alza Corp., Palo Alto, Calif.)に用いられているものなどであるが、これに限定されるものではない、膜などの連続または選択的放出装置に入れた活性化合物を対象とする。他の実施形態として、活性化合物を、眼内に装着されるコンタクトレンズに含ませる、コンタクトレンズに保持させる、あるいはコンタクトレンズに結合させてもよい。本発明のもうひとつの実施形態は、眼表面に適用可能なスワブまたはスポンジに含ませた活性化合物を対象とする。本発明のもうひとつの実施形態は、眼表面に塗布可能な液体スプレーに含有させた活性化合物を対象とする。本発明のもうひとつの実施形態は、涙腺組織内へあるいは眼表面に対する活性化合物の直接的な注射を対象とする。
ドライアイ治療用の本発明の製剤組成物を点眼液として用いる場合、水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液および可溶化点眼液などの水性点眼薬あるいは、非水性点眼液および非水性懸濁点眼液などの非水性点眼液といった、点眼液に用いられている任意の剤形で提供される。このうち、水性点眼液が好ましい。
ドライアイ治療用の本発明の製剤組成物を水性点眼液に調製する場合、水性点眼液で普通に用いられているさまざまな添加剤を、本発明の目的に悪影響がおよばない範囲で適宜含有させる。このような添加剤の例として、緩衝液、等張化剤、保存剤、可溶化剤(安定剤)、pH調整剤、増粘剤、キレート化剤があげられる。
緩衝液については、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液(たとえば酢酸ナトリウム)、アミノ酸を含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
等張化剤については、ソルビトール、グルコース、マンニトールなどの糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムなどの塩を含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
保存剤については、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸エチルなどのパラオキシ安息香酸アルキル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸およびその塩、チメロサール、クロロブタノールを含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
可溶化剤(安定剤)については、シクロデキストリンおよびその誘導体、ポリ(ビニルピロリドン)などの水溶性ポリマー、ポリソルベート80(商品名:Tween 80)などの界面活性剤を含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
pH調整剤については、塩酸、酢酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムを含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
増粘剤については、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびこれらの塩を含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
キレート化剤については、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウムナトリウムを含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
ドライアイ治療用の本発明の製剤組成物を眼科用軟膏に調製する場合、基剤化合物が存在しなければならない。眼科用軟膏の基剤については、精製ラノリン、VASELINE(登録商標)、plastibase、液体パラフィン、ポリエチレングリコールを含む群から選択すればよいが、これに限定されるものではない。
あるいは、ラクトース、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ステアリン酸などの薬学的に許容される打錠用賦形剤を用いて、本発明の組成物を経口投与用に処方することも可能である。経口投与には、水、グリコール、油、アルコールなどで製剤化した液体組成物も含み得る。
同時投与
本発明の方法が同時投与を含む場合、同時投与とは、第1の量のβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩と、抗炎症剤(RESTASIS(登録商標)(Allergan)など)、ムチン刺激薬(ジクアホソル(Inspire Pharmaceuticals)15−(S)−HETE(Alcon)、レバミピド(Otsuka)、エカベト(ISTA)など)、ホルモン剤および涙腺刺激薬(アンドロゲン涙液(Allergan)など)、人工涙液からなる群から選択される第2の量の少なくとも1種の作用剤との投与を示し、第1および第2の量が一緒に、治療を必要とする被検体においてドライアイを治療するための有効量を含む。同時投与には、単一の製剤組成物に含めるか、複数の製剤組成物に含めるかして本質的に同時期になるように、第1および第2の量の化合物を投与することも包含される。また、このような同時投与には、順不同で各化合物を逐次的に用いることも包含される。同時投与が第1の量のβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩と、抗炎症剤(たとえば、RESTASIS(登録商標)(Allergan)など)、ムチン刺激薬(たとえば、ジクアホソル(Inspire Pharmaceuticals)15−(S)−HETE(Alcon)、レバミピド(Otsuka)、エカベト(ISTA)など)、ホルモン剤および涙腺刺激薬(たとえば、アンドロゲン涙液(Allergan)など)、人工涙液からなる群から選択される第2の量の少なくとも1種の作用剤とを別々に投与することを対象とする場合、化合物は、所望の治療効果が得られるよう時間的に十分に近いタイミングで投与される。たとえば、所望の治療効果が得られるそれぞれの投与間の時間は、数分から数時間の範囲を取り得るものであり、効力、可溶性、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、動態プロファイルなどの各化合物の特性を考慮して決定可能である。
投与量
βターンペプチド模倣環式化合物の有効量は、患者の年齢、性別、体重、患者の現時点の病状、治療対象となるドライアイ疾患の性質に左右される。当業者であれば、これらの要因および他の要因に応じて適切な薬用量を判断できるであろう。たとえば、ドライアイの治療を必要とする被検体で本発明の製剤組成物をドライアイ治療用の点眼液として用いる場合、水溶液の点眼薬が本発明の化合物の活性成分を、0.02〜2.0(w/v)、たとえば約0.03〜1.5(w/v)%、たとえば約0.05〜1.0(w/v)%などの約0.001〜2.5(w/v)%の量で含有するのが望ましい。本明細書で使用する場合、重量/容量(w/v)は、最終比容積(g/mlなど)における溶質の比質量を意味する。投与する際、本発明の化合物および組成物は、1日1回あるいは、1日2回、1日3回、1日4回など、一日量を複数に分けて投与可能である。特に好ましい実施形態では、本発明の化合物および組成物を、1〜5滴、たとえば、1滴、2滴、3滴、4滴または5滴の用量で投与可能である。
本発明の製剤組成物を眼用軟膏として用いる場合、本発明の化合物の活性成分を、0.02〜2.0(w/w)、たとえば約0.03〜1.5(w/w)%、たとえば約0.05〜1.0(w/w)%などの約0.001〜2.5(w/w)%の量で眼用軟膏に含有すると望ましい。本明細書で使用する場合、重量/重量(w/w)は、g/gなど、溶液の最終重量における溶質の重量を意味する。投与する際、本発明の化合物および組成物は、1日1回あるいは、1日2回、1日3回、1日4回など、一日量を複数に分けて投与可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
本明細書に引用する特許、公開公報、参考文献の教示内容に関しては、その全体を本明細書に援用する。
本発明についてその実施例を参照して図示し、説明しているが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に対してさまざまな変更が可能である旨は当業者であれば理解できよう。
例証
実施例1
βターンペプチド模倣環式化合物がラットの結膜杯細胞からの複合糖質分泌に対しておよぼす影響
動物:
250〜300gのオスのスプラーグドーリーラット(n=4)のラット下結膜組織を収集した。
細胞培養:
Rios, J. D.ら, “Role of Neurotrophins and Neurotrophin Receptors in Rat Conjunctival Goblet Cell Secretion and Proliferation, Ophthalmology & Visual Science, 48: 1543〜1551 (2007)に記載された細胞培養およびアッセイ手順と同様にして、ラット下結膜組織から組織片培養を確立した。外植片由来の細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)およびペニシリン(100U/mL)/ストレプトマイシン(100μg/mL)を加えたRPMI 1640にて、5%CO加湿雰囲気中37℃で72時間成長させた。汚染源となる非杯細胞をプレートから掻爬して除去した。このとき、杯細胞が切片から遊走し、増殖しはじめた。1週間後、杯細胞をトリプシン処理し、10%FBS加RPMI−1640培地の入った24ウェルの培養プレートに蒔いた。
複合糖質分泌の測定:
複合糖質分泌を測定するために、結膜杯細胞をコンフルエンスの状態まで成長させ、2時間血清欠乏させた上で、神経成長因子(NGF)、カルバコール(Cch)、化合物D3、化合物3Aa、化合物3Akを2時間加えた。化合物D3、3Aa、3Akを30μm(マイクロモル)、10μM、1μM、0.3μMの濃度で投与した。化合物を溶解させるのに用いたビヒクルであるジメチルスルホキシド(DMSO)も含めた。DMSOについては、30μM濃度の化合物に対する基礎対照として使用し、これは0.1%(v/v)であった。コリン作動薬であるカルバコール(Cch)を100μM(マイクロモル)で加え、複合糖質分泌の陽性対照とした。酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)によって培地に分泌される複合糖質の量の測定した。培地を回収し、ムチンをはじめとしてレクチン検出可能な複合糖質の量を分析した。ラット結膜杯細胞ムチンに特異的なレクチンUEA−Iを用いて分泌量を測定した。Rios, J. D.ら, “Role of Neurotrophins and Neurotrophin Receptors in Rat Conjunctival Goblet Cell Secretion and Proliferation, Ophthalmology & Visual Science, 48: 1543〜1551 (2007)(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されているようにして、ビオチニル化UEA−Iレクチンおよびアルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジンを使用した。細胞を取り出して超音波処理し、細胞ホモジネートのタンパク質総量をBradfordタンパク質アッセイで分析した。このアッセイによって、各ウェルに等しい量のタンパク質があることが明らかになった。複合糖質分泌を、基礎を上回る増分(x倍)として表した。
細胞増殖の測定:
結膜杯細胞を24ウェルの培養プレートでサブコンフルエンス状態まで成長させた後、24時間血清欠乏させた。タンパク質源として0.5%BSAを加えた無血清RPMI中にて、化合物D3、化合物3Aa、化合物3Akの濃度を高めてまたは高めずに、細胞を24時間インキュベートした(図4)。化合物D3、3Aa、3Akを、30μM(マイクロモル)、10μM、1μM、0.3μMの濃度で投与した。細胞増殖研究では、10%FBS加RPMIを陽性対照として用いた。細胞数を測定する非放射性の比色WST−8増殖アッセイで、CGC増殖を求めた。この手順では、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、一ナトリウム塩(WST−8)を使用する。これは、成長中の生きたミトコンドリアによって切断され、蛍光ELISAリーダー(Bio−Tek, Winooski, VT)を用いて460nmで検出される濃青色のホルマザン生成物を形成する。
データの提示:
CGC複合糖質分泌と増殖についてのデータを、基礎値より上の増分(x倍)として表し、これを1.0に標準化した。たとえば、0.3μM(マイクロモル)、1μM、10μMの用量の場合、CGC複合糖質分泌と増殖を未処理細胞に対する被験化合物として表した。30μMの用量の場合は、CGC複合糖質分泌と増殖をDMSO未処理細胞に対する被験化合物として表した。結果については平均±semとして表す。
結果:
複合糖質分泌の結果を図2および図3に示す。NGFはCGC複合糖質分泌を基礎より上に1.3±0.1倍増加させた。周知の杯細胞アゴニストであるCchは、CGC複合糖質分泌を基礎より上に1.3±0.3倍増加させた。
化合物D3は、CGC複合糖質分泌を増加させ、濃度依存性の傾向を示した。化合物D3はCGC複合糖質分泌を以下のように増加させた:基礎より上に1.7±0.7倍(30μM)、基礎より上に1.6±0.3倍(10μM)、基礎より上に1.6±0.2倍(1μM)、基礎より上に1.3±0.2倍(0.3μM)。
化合物3Aaは、CGC複合糖質分泌を以下のように増加させた:基礎より上に2.1±0.7倍(30μM)、基礎より上に1.7±0.4倍(10μM)、基礎より上に1.6±0.3倍(1μM)、基礎より上に2.1±0.3倍(0.3μM)。化合物3Aaのほうが、NGFおよびCchよりも大きなCGC複合糖質分泌の増加を示した。
化合物3Akは、化合物D3および3Aaほどしっかりとした作用を示さなかったが、活性は実証された。化合物3AkのCGC複合糖質分泌の結果は以下のとおりである:基礎より上に1.1±0.3倍(30μM)、基礎より上に1.2±0.1倍(10μM)、基礎より上に1.1±0.3倍(1μM)、基礎より上に1.4±0.3倍(0.3μM)。
細胞増殖の結果を図4に示す。増殖アッセイでは、試験した濃度では、どの化合物も24時間のインキュベーション後に杯細胞増殖を示さなかった。対照として、ウシ胎仔血清10%(FBS)でもCGC増殖が基礎より上に3.4±1.0倍になり、NGFはCGC増殖を基礎より上に1.6±0.3倍に増加させた。
試験したβターンペプチド模倣環式化合物は、ムチン分泌を刺激し、よってドライアイの治療を必要とする被検体でドライアイ疾患を治療する方法に有用なものとなり得る。
実施例2
ラット結膜杯細胞での複合糖質分泌、増殖、シグナル伝達における化合物D3の影響
この研究の目的は、複合糖質分泌と培養ラット結膜杯細胞の増殖における化合物D3の有効性を判断することならびに、化合物D3が分泌を刺激するのに用いるシグナル伝達経路を研究調査することであった。
動物:
6〜8週齢のオスのスプラーグドーリーラットをCharles River(Wilmington, MA)から入手した。動物を、一定の光の条件(12時間明/12時間暗サイクル)下にて室温(22±1℃)および相対湿度(40〜70%)で、1ケージあたり2匹ずつで収容した。この研究での手順はすべて、McGill Universityの動物福祉方針に準じており、Lady Davis Research Institute(LDI)Animal Care and Use Committeeの承認を受けた。動物の飼育と使用に関する標準は、Canadian Council on Animal Care(CCAC)によって規定されているものに準じるか、それを上回るようにした。
結膜組織の単離:
イソフルオラン99.9%USB(Abraxis Bioscience, Richmond Hill, Ont)チャンバでの安楽死前に動物を麻酔した。致死用量のナトリウムペントバルビタール2mL/0.4kgまたは300mg/kg(Ceva Sante Animale, Libourne, France)を用いて動物を安楽死させた。結膜組織、特に瞬膜および円蓋部を切除し、3Xペニシリン−ストレプトマイシン(300ug/mL)を含有するハンクス平衡塩溶液にすみやかに入れた。眼球と眼瞼結膜との接合部で折れ曲がりの最後方部に沿って走っているバンドとして、円蓋部を特定した。円蓋部の鼻下側をつかんで持ち上げ、結膜から切り取った。
結膜杯細胞の培養:
RPMI−1640培養液、ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン−ストレプトマイシン、ハンクス平衡塩溶液をWisent(St. Bruno, Quebec)から入手した。L−グルタミンおよび0.05%トリプシン−EDTAをGibco(Grand Island, NY)から入手した。組織培養フラスコと培養皿はCorning(Lowell, MA)から、Laboratory TekチャンバのスライドはNunc(Rochester, NY)から入手した。
組織片培養からの結膜杯細胞の培養については、Shatos, M.ら, “Isolation, Characterization, and Propagation of Rat Conjunctival Goblet Cells In Vitro,” IOVS 42:1455〜1464 (2001)(その内容全体を本明細書に援用する)に説明されているようにした。組織を細かく刻み、0.5mLの完全RPMI−1640(10%FBS、2mMグルタミン、100μg/mLペニシリン−ストレプトマイシンを補充)にて、スコアを付けた6ウェルの培養皿に個々の切片を固着させ、5%CO加湿雰囲気にて37℃でインキュベートした。組織片培養を2日ごとに再供給した。数日以内に、杯細胞が切片から遊走し、増殖しはじめた。ほぼ1週間後、組織プラグを除去し、杯細胞をコンフルエンスの状態まで成長させた。接着細胞を0.05%トリプシン−0.53mM EDTA(pH7.4)でトリプシン処理して細胞を1回継代し、完全RPMI−1640培地を用いて、8ウェルのLaboratory Tekチャンバのスライド(組織化学)または96ウェル(増殖)、24ウェル(分泌)または6ウェル(ウエスタンブロット)の培養プレートに蒔いた。
組織化学:
細胞を固定し、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色用に処理して、Hematoxylin Solution、Gill No.3キット(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)で製造業者の指示に従って対比染色した。すべての手順を室温で実施した。簡単に説明すると、細胞をメタノール中に15分間固定した。スライドを水道水で1分間すすぎ、過ヨウ素酸溶液で5分間染色し、蒸留水で5回すすぎ、シッフ試薬に15分間浸漬し、水道水で5分間線上し、ヘマトキシリン溶液で90秒間染色し、水道水で15〜30秒間すすぎ、空気乾燥させ、Vectamount(Vector Labs, Burlingame, CA)に装着した。スライドを調べ、Leica DFC480カメラを取り付けたLeica DM LB 2顕微鏡で写真を撮った。
被験物品と溶液の調製:
Mimetogen Pharmaceuticals(Montreal, Quebec, Canada)製の化合物D3(塩酸塩、ロット番号12−95)を生理食塩水に溶解させ、10mMのストック溶液を得た。
NGF(組換えヒト)は、緩衝液[20mM酢酸ナトリウム、136mM塩化ナトリウム、pH5.5]中の3.16mg/mL溶液であり、冷凍保存(2〜8℃)してある。この溶液の生物活性を、ナノモル濃度でPC12細胞の分化を引き起こす機能について試験した
ホルボール−12−ミリステート−13−アセテート(PMA)(Sigma, St. Louis, MO)をDMSO中10−mg/mL(16.2mM)ストック溶液として調製した。
実験の前に、被験物品を培地で図に示したような最終濃度に希釈した。基礎培養については、生理食塩水ビヒクル対照を用いてインキュベートした。
培養杯細胞の成長、形態およびキャラクタリゼーション
組織プラグ確立から早くも2日で細胞が組織から成長を開始して成長しつづけるため、9日目までには接着細胞が組織全体で目視確認される(図5A)。倍率を上げると、組織培養ウェルに付着している単一の細胞が玉石の形態を呈し、細胞質ベシクルに小さな半透明の液滴を含有している(図5B)。培養で細胞が増殖する際には頻繁に、杯細胞表面で粘液様の分泌生成物を示唆する小さな液滴の形成が観察された(図5C、開いた矢印)。これらの液滴含有細胞が培養で成長するにつれて液滴がプールにマージされ、大きさが大きくなって数も増えた(図5C、塗りつぶし矢印。結果はすでに刊行物に記載のあるものと類似している(Shatos, M.ら, “Isolation, Characterization, and Propagation of Rat Conjunctival Goblet Cells In Vitro,” IOVS 42:1455〜1464 (2001)(その内容全体を本明細書に援用する))。
これらの細胞はPASに対して陽性反応を示すと判断され、これらの細胞が中性タイプのムチン分泌生成物と関連していることを示していた(図6A)。さらに高い倍率にすると(100×)、多くの細胞質核周囲ベシクルが観察された(図6B、開いた矢印)。検査時、これらのベシクルのうちいくつかがPASで著しく染色されたことから、分泌顆粒内に中性(桃色から赤)の複合糖質が存在することを示していた(図6Bおよび図6C、塗りつぶし矢印)。細胞をヘマトキシリン/エオシン染色で青く対比染色する。
端点と結果:
詳細については後述するように、化合物D3は結膜杯細胞でのムチン分泌を増加させ、用量2μMのときに増加量が多かった。また、最大100μMまでの濃度では、化合物D3は4日目まで杯細胞増殖を刺激せず、用量間に差異は認められなかった。最後に、結膜杯細胞を化合物D3で5分間処理すると、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)リン酸化が増加した。
複合糖質分泌:
細胞分泌を測定するために、杯細胞をコンフルエンスの状態まで成長させた後、2時間血清欠乏させた上で、刺激した。2、10、50μMの化合物D3、0.1、1、10nMのNGF、0.1、1、10nMのPMAを用いて、無血清RPMIにて2時間、細胞をインキュベートした。杯細胞分泌を、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)で測定した。簡単に説明すると、細胞培養上清のアリコートを、三重にした96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレート(Corning Life Sciences #2592、Fisher Scientific, Nepean, Ont)に移した。ウシ顎下ムチン(BSM)(Sigma, St. Louis, MO)の希釈系列を標準(標準曲線データならびに、BSMの検出が0.003から0.1μgの間で線形であることを示すデータは図示していない)として各プレートに含めた。プレートを37℃で一晩の蒸発によってコーティングした。その後、プレートを洗浄緩衝液[0.3%BSA、0.05%Tween−20含有PBS]で3回洗浄した後、3%BSAと0.05%Tween−20を含有するPBSで、37℃で1時間、非特異的結合をブロックした。ウェルを洗浄緩衝液で3回すすいだ後、洗浄緩衝液(Vector Labs, Burlingame, CA)で希釈した2μg/mLビオチニル化UEA−1中、37℃で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で3回すすいだ後、洗浄緩衝液(Pierce, Rockford, IL)で希釈した1μg/mLのHRP−コンジュゲートニュートラアビジン中、37℃で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で3回すすぎ、TMB(Promega, Madison, WI)で発色させ、0.5N硫酸で停止させた。Benchmark Plus(Biorad)にて450nmで吸光度を読み取った。培養ウェルに残っているをRIPA緩衝液[1%TritonX−100、20mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1.5mM MgCl、1%デオキシコール酸Na、1mM EGTA、1mM EDTA、0.1%SDS、10%グリセロール、1mMバナジン酸Na、10mMフッ化Na、10mMピロリン酸Na、完全ミニEDTAフリープロテアーゼインヒビター(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)]または1M Tris−緩衝液(pH7.5)のいずれかで掻爬し、回収し、超音波処理した。ウシ血清アルブミン(BSA)の希釈系列を標準(BioRad, Montreal, PQ)として用いるBradfordタンパク質アッセイキットを使用して、細胞ホモジネートにおけるタンパク質の量を分析した。複合糖質分泌をホモジネート中の総タンパク質に対して正規化した。その後、データを基礎より上の倍増分として表した。
化合物D3が杯細胞ムチン分泌を刺激するか否かを判断するために、化合物D3(2、10、50μM)またはNGF(0.1、1、10nM、陽性対照(Rios, J.ら, “Role of Neurotrophins and Neurotrophin Receptors in Rat Conjunctival Goblet Cell Secretion and Proliferation,” IOVS 48:1543〜1551 (2007)(その内容全体を本明細書に援用する))またはPMA(0.1、1および10nM、別の陽性対照(Dartt, D.ら, “Regulation of Conjunctival Goblet Cell Secretion by Ca2+ and Protein Kinase,” C. Exp Eye Res 71:619〜628 (2000)(その内容全体を本明細書に援用する))の存在下にて、培養継代杯細胞を2時間インキュベートした。Rios, J.ら, “Immunolocalization of Muscarinic and VIP Receptor Subtypes and Their Role in Stimulating Goblet Cell Secretion,” IOVS 40:1102〜1111 (1999)(その内容全体を本明細書に援用する))に説明されているようにして、ELLAによって、ビオチニル化レクチンUEA−1を用いて培地に分泌された高分子量糖タンパク質の量を求めた。4匹の独立したラットからの培養杯細胞で得られたムチン分泌の生データを表1にあげておく。
ムチン分泌にラット間でほとんど差異はなく、基礎の分泌が複合糖質2.0〜9.9μg/タンパク質mgの範囲であった。陽性対照NGFは、用量依存的にムチン分泌を増加させた(最大は10nMで1.55±0.18倍)(表2)。他の陽性対照であるPMAもムチン分泌を約1.4倍増加させたが、これは用量依存性ではなかった。化合物D3はムチン分泌を増加させ、2μMで一層大きな増加が認められた(1.49±0.33倍)。どの処理も互いに統計的に有意ではなかった(P=0.7429)。このデータのグラフ表示を図7にあげておく。
細胞増殖:
Biosource(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)から入手したAlamar Blueを用いて、製造業者のプロトコールに従って細胞増殖を測定した。2匹のラットからの培養杯細胞を、10または100μM MIM−D3の存在下、FBS(10%、陽性対照)、NGF(10pM〜10nM)、化合物D3(0.1〜100μM)またはNGF(10pM〜10nM)添加の24時間前に、0.5%BSA加無血清RPMIで血清不足とし、さらに5%CO加湿雰囲気にて37℃でインキュベートした。24時間後、10%Alamar Blueを6時間加え、Benchmark Plus (Biorad)にて吸光度を570nmおよび600nmで読み取った。Alamar Blue還元の比率を製造業者の指示どおりに算出した。Alamar Blue含有プレートをさらに37℃で48時間、72時間、96時間インキュベートし、プレートを毎日再読み取りした。
10%FBSの存在下、最大4日間にわたって杯細胞増殖を測定した。増殖の統計的に有意な増加が10%FBSで経時的に得られた(3日目で247±2倍、P<0.0001)。10%FBSを用いる3日間のインキュベーション後、細胞数が多いかインキュベーション時間が長いことが原因で、Alamar Blueの還元率が低下した。化合物D3およびNGFが杯細胞増殖を刺激するか否かを判断するために、化合物D3(図8)またはNGFの濃度を増し、最大4日間にわたって杯細胞を無血清培地でインキュベートした。NGFは、どの濃度でも最大4日間は増殖を増さず、化合物D3は最大100μMの濃度で4日目までに杯細胞増殖を刺激せず(3μM未満の濃度は図示せず)、用量応答間の差異はなかった(P=0.1098)。NGFと10μMまたは100μMの化合物D3とを組み合わせても、増殖に対する影響はなかった(データ図示せず)。
MAPK:
p42/44 MAPKの活性化を、ウエスタンブロット技術で調べた。PMA(100nM)、NGF(1または10nM)またはMIM−D3(10または50μM)添加の4〜6時間前に、37℃で5分間杯細胞を無血清RPMIで血清不足とした。その後、細胞を冷PBSで1回すすぎ、100μLの1×SDS−PAGE試料緩衝液[62.5mM Tris−HCl pH6.8、10%グリセロール、2%SDS、5%β−メルカプトエタノール、0.02mg/mLブロモフェノールブルー]にて掻爬し、20分間超音波処理した。ホモジネートを4℃にて14,900gで15分間遠心処理した。上清の30μLアリコート中のタンパク質をSDS−PAGE(8%アクリルアミドゲル)で分離し、ニトロセルロース膜に移した。20mM Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、0.01%Tween−20(TBST)を含有する緩衝液に入れた5%脱脂粉乳で、膜を2時間ブロックした。次に、5%BSAを含有するTBST中、ブロットを0.1μg/mLでMAPK1/2(Calbiochem, San Diego, CA)のホスホリル化形態に対して指向された抗体を用いて4℃で一晩プローブした後、5%脱脂粉乳含有TBST中、HRP−コンジュゲート二次抗マウス抗体(Sigma, St. Louis, MO)で室温にて1時間インキュベーションした。高感度化学ルミネッセンス法(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて免疫反応バンドを可視化した。ブロットをストリップ緩衝液[62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、2%SDS、0.1Mβ−メルカプトエタノール]にて55℃で30分間ストリップした後、5%脱脂粉乳含有TBST中、アクチン(1:5000希釈、Sigma, St. Louis, MO)に指向された抗体で再プローブし、HRP−コンジュゲート二次抗ウサギ抗体でインキュベーションした。免疫反応バンドをEPSONスキャナでデジタル的に走査し、NIH ImageJ v1.38xを用いて解析した。各試料のホスホリル化MAPKの量を、試料中の総アクチンタンパク質量に対して標準化した。
化合物D3およびNGFがMAPK経路の活性化によって複合糖質分泌を誘導したのか否かを判断するために、3匹の独立したラットから得た培養杯細胞を10μMと50μMの化合物D3、1nMと10nMのNGFまたはPMA(100nM、陽性対照)で5分間刺激し、ウエスタンブロット解析でMAPK活性を測定した。3匹の独立したラットの杯細胞培養から得られた代表的なウエスタンブロットを図9に示し、定量化を図10に示す。この処理ではMAPK活性化に対して統計的に有意な影響があった(P<0.0001)。化合物D3は、MAPK活性を基礎より上に10μMで2.5±0.3倍、50μMで2.2±0.5倍増加させ、NGFはMAPK活性を1nMで2.8±0.5(P<0.05)、10nMで1.7±0.2増加させた。陽性対照PMAは、MAPK活性を6.1±0.7倍と統計的に有意に増加させた(P<0.01)。
データの提示と統計解析:
データについては、基礎値より上の増分(x倍)として表す。これを1.0に標準化した。結果については平均±SEMで表す。GraphPad Prism v4.0c(GraphPad Software Inc., La Jolla, CA)を用いてANOVAでデータを一方向に解析する。P<0.05を統計的に有意であるとみなす。基礎対照との比較のために、ダネット検定での調整を利用した。
実施例3
スコポラミン誘導ドライアイモデル(化合物D3)
この研究の目的は、ドライアイのスコポラミンモデルを用いて、化合物D3の有効性を研究することであった。スコポラミンモデルの選択は、制御環境チャンバ(CEC)とドライアイのスコポラミンモデルとを比較する先の研究調査に基づいて実施した。
動物:
体重300g〜350gのオスのスプラーグドーリーラットをCharles River(Wilmington, MA)から入手した。動物を、一定の室温(22±1℃)と光の条件(12時間明/12時間暗サイクル)下にて湿度(40〜60%)で、アニマルクオーター(animal quarter)に収容した。外科的実験と臨床検査の前に動物をイソフルオランで麻酔した。
コリン作動性遮断によるドライアイの誘導
スコポラミンを充填して、肩甲骨の間の背側部分中央に皮下移植した浸透圧ポンプ(2ML4 Alzet(登録商標); CedarLane, Burlington, Ontario)を用いて動物に連続的かつ全身に送達させたスコポラミン(Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)を用いて、ドライアイを誘導した。2〜3の創傷クリップで創傷を閉じた。手術後と翌日に再度、非ステロイド抗炎症薬であって齧歯類で長期にわたって作用する強力な鎮痛剤のカプロフェン(0.5mg/100g)を動物に皮下注射した。外科的なポンプ植込み前かつすべての臨床端点試験の前に、イソフルオラン99.9%USP(Abraxis Bioscience, Richmond Hill, Ontario)チャンバで動物を麻酔した。スコポラミンを12.5mg/日で送達し、技術的な理由で、データを14日目に評価した。
臭化水素酸スコポラミン(Sigma−Aldrich, St. Louis MO)0.175g/mLの滅菌溶液を生理食塩水(0.9%)で調製し、0.22umのシリンジ−エンドフィルタ(Millex−GC, Millipore Corp., Bedford, MA)で濾過した。2ML4 Alzet(登録商標)ポンプに2mLの0.175g/mLスコポラミン溶液を製造業者の指示に従って充填した。
処理群:
ラットの被験眼の群は以下のとおりとした。
・群1:対照ラット(n=ラット6匹から12の眼)。
・群2:スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット6匹から12の眼)にドライアイを誘導し、フルオレセイン染色の測定値を14日目に得た。
・群3:スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット7匹から14の眼)にドライアイを誘導し、8日目に生理食塩水で1回局所処理した。
・群4:スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット7匹から14の眼)にドライアイを誘導し、8日目に1%(10mg/mL)の化合物D3を5μl点眼して1回局所処理した。
ドライアイの臨床端点と結果
詳細については後述するように、8日目に1%化合物D3で局所処理した群に、14日目に生理食塩水処理対照に比して平均スコア1.1±0.1で角膜フルオレセイン染色の有意な減少が認められ(p<0.0001)たが、13日目に測定した水性涙液産生と水性涙液代謝回転には、未処理またはスコポラミン処理対照に比して何ら影響がなかった。
死亡例はなかったが、切開創傷部位が噛まれて再び開いてしまい、ポンプが露出した羅患例が2例(一方は群2、他方は群3)あった。これらの2匹の動物については、臨床徴候データを排除した。すべてのスコポラミン処理動物(群2〜4)に、2日目以降に軽度から重度の眼刺激が観察された。ほとんどのスコポラミン処理動物の眼に、結膜の鬱血、腫れ、結膜の血性分泌物が認められた。結膜の鬱血と血性分泌物は通常、消散する。しかしながら、結膜の腫れは研究中ずっと続いた。麻酔下でありながら、動物への投薬時に眼刺激が観察された。
処置前、平均体重は約350gであり、統計的に群間の差がなかった(P=0.3999)。未処理対照群(群1)の平均体重が14日目までに約420gに増えた。スコポラミンを投与された3つの群(群2〜群4)では、平均体重が約375gに増えた。7日目から開始して14日目まで続く、体重を減らすための統計的に有意な処理効果があった(P=0.0042)。
角膜染色:
角膜のフルオレセイン含浸によって、角膜乾燥の臨床徴候を評価した。滅菌生理食塩水を用いて生成した1%フルオレセインナトリウム(Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)溶液1滴を、麻酔した動物の結膜嚢に滴下した。その後、ブルーコバルトフィルタ(Reichert Opthalmic Instruments, Depew, NY)付きのPortable Slit Lamp検眼鏡を用いて、フルオレセイン点眼の3分後に青色光の下で角膜を観察した。それぞれの動物で、眼表面にある点状の蛍光陽性部分を盲検的に記録した。この試験のスコアに、0=染色なし、1=<25%表面染色、2=25〜50%表面染色、3=50〜75%表面染色および4=>75%表面染色として、0〜4の評点を付けた。
図11に示すように、対照群(無処置)では、角膜フルオレセイン染色がほぼ完全に認められず、平均スコア(スコア±SD)は0.8±0.1であった。未処理のドライアイ群(スコポラミンのみ)では、点状で拡散した角膜フルオレセイン染色が有意な度合いで認められ、スコポラミンポンプ植込み後14日目の平均スコアは2.3±0.3であった。スコポラミンポンプ植込み後8日目に局所的に生理食塩水で処理した群でも、14日目に未処理のドライアイ群と同様の角膜フルオレセイン染色が有意な度合いで認められ、平均スコアは2.9±0.3であった。8日目に局所的に1%化合物D3で処理した群では、14日目に生理食塩水処理対照に対して角膜フルオレセイン染色が有意に減少し(p<0.0001)、平均スコアは1.1±0.1であった。また、14日目に、局所的に1%化合物D3で処理した群の平均値(1.1±0.1)は、群1(未処理対照、0.8±0.1、p >0.05)と統計的に違いがなかった。
シルマーテスト:
イソフルランを用いて軽く鎮静させた動物で、Zone−Quick標準化フェノールレッド糸(FCI Ophthalmics, Marshfield Hills, MA)を用いて、涙液産生を測定した。糸を下眼瞼外側部に挿入し、そのまま30秒おいた。糸に1mmの精度で付けられた目盛りを使って、糸の染色された湿った部分の長さをミリメートル刻みで測定した。以下のセクションで説明するように、涙液フルオレセインクリアランスにシルマーテストを定法により組み合わせた。
基線では、すべての群で処置前の平均シルマースコアが13.7±4.2mm(P=0.6943)であった。6日後、スコポラミン処理動物は、ドライアイの誘導に対応して未処理対照よりもシルマースコアが下がった(すなわち涙液が減った)(16.0±5.4mmに対して9.2±2.5mm、P<0.0001)。8日目の生理食塩水(群3)または1%化合物D3(群4)での単回局所用量に続いて、5日日の処置なし期間を設けた。13日目に、スコポラミンを投与された群でシルマースコアが未処理対照(群1)より統計的に有意に低く(P<0.0001)、用量群との間に統計的に有意な差異は認められなかった(図12)。8日目に1%化合物D3を1回点眼したところ、未処理またはスコポラミン処理対照と比較して13日目(5日後)に測定した水性涙液産生に影響はなかった。
涙液フルオレセインクリアランス:
ヒトで説明されている方法(Afonso, AA.ら, “Correlation of Tear Fluorescein Clearance and Schirmer Test Scores with Ocular Irritation Symptoms,” Ophthalmology 106:803〜810 (1999)(その内容全体を本明細書に援用する))とラットで改変された方法(Chen, W.ら, “Keratoconjunctivitis Sicca Modifies Epithelial Stem Cell Proliferation Kinetics in Conjunctiva,” Cornea 26:1101〜1106 (2007)(その内容全体を本明細書に援用する))で、涙液フルオレセインクリアランスを評価した。動物をイソフルランで軽く鎮静させ、2マイクロリットルの1%ナトリウムフルオレセイン(Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)溶液(滅菌生理食塩水中)を下側結膜嚢に適用した。動物は2分以内で目覚めた。15分後、動物を再度鎮静させ、フルオレセイン染色涙液流体をフェノールレッド綿糸で回収した(シルマーテストの場合とまったく同じ)。この糸を、蛍光光度分析まで、遮光した1.5mLのポリプロピレンエッペンドルフチューブに入れてすみやかに密閉した。湿っている綿の長さ(mm)で、回収された涙液流体の容積を判断した。
その後、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、管を12,000rpmで5分間スピンさせた後、流体を96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレート(Corning Life Sciences #2592、Fisher Scientific, Nepean, Ont.)に移した。各プレート上で標準ウェルを調製した。これは、2μlの1%ナトリウムフルオレセイン溶液を含有する100μlのPBSにフェノールレッド糸を入れて構成されたものであった。標準ウェルに対するゲインを設定した後、蛍光マイクロプレートリーダー(FLUOstar OPTIMA, BMG Labtech, Germany)を用いてすみやかに蛍光を測定した。蛍光単位(FU)を湿った綿の長さ(mm)で割って、涙液中のフルオレセイン濃度を算出した(FU/mm)。
水性涙液の代謝回転をフルオレセインクリアランスによって測定した。基線で、平均フルオレセインクリアランス値は606±496FU/mm(P=0.8920)であった。以後、6日目と13日目の検査で、数値的に、群1(未処理対照)よりもスコポラミンを投与された群の値が高くなった(すなわち、涙液の代謝回転が減った)。この差異は、13日目には統計的に有意(0.0304)であったが、6日目には有意でなかった(P=0.1117)(図13)。8日目に1%化合物D3を1回点眼したところ、未処理またはスコポラミン処理対照と比較して13日目(5日後)に測定した水性涙液の代謝回転に影響はなかった。
統計解析:
平均および標準偏差(SD)を使用して、各研究群のデータをキャラクタライズした。治療群の体重および眼科的な徴候について、観察をするごとにGraphPad Prism 4.0c(GraphPad Software Inc., La Jolla, CA)を用いて分散の一方向解析(ANOVA)を実施した。検査日に層別化した際、治療群が統計的に有意(p≦0.05、両側)だった場合に対比較を実施した。未処理対照(群1またはA)との比較のために、ダネット検定での調整を用いた。群のうち、複数の比較に対する補正はしなかった。P値が示されず、一対の平均各々間の差異(>0.05、<0.05、<0.01または<0.001としての報告P値)は示していない。
実施例4
化合物D3点眼後の無処置ラットにおける涙液ムチン産生
無処置ラットでのムチン産生の刺激にあたり、化合物D3の点眼時に用量範囲研究を実施した。30匹のオスのスプラーグドーリーラットを各群ラット6匹ずつの5つの群に分け、連続した6時間のあいだ1時間に1回、生理食塩水、0.4%の化合物D3、1.0%の化合物D3、2.5%の化合物D3、0.00053%のNGFのいずれかで、両側を処理した。麻酔後、較正したマイクロピペットを用いて各動物の両眼の下側結膜嚢に被験物品5μLを点眼した。
処理前と、生理食塩水、化合物D3およびNGFでの1時間ごと6回の点眼後に、両方の眼からの涙液流体洗液をプールし、回収した。涙液流体洗液すべてのムチン濃度を酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)で評価した。
平均および標準偏差(SD)を用いて、データをキャラクタライズした。ラット群からの処理マイナス基線で、ムチン濃度の差異を算出した。基線からの2つの群間のムチンの連続変化を対応t検定で評価した。分散解析を用いて、3以上の治療群間のムチンの変化を解析した。ウィルコクソン順位和検定を使用して、治療群間の中央値のムチン変化を理論中央値ゼロと比較した。P<0.05での両側検定を統計的に有意とみなした。GraphPad Prism 4.0C(GraphPad Software Inc., La Jolla, CA)を使用して、統計解析を実施した。
結果から、処理後、群間の差異は統計的に有意ではなかった(p=0.1430)ことが分かった。処理対基線で対比較を行うと、2.5%化合物D3で処理した動物のムチン濃度に統計的に有意な増加が認められた(図14)(3.0±1.9ng/μLから7.0±4.5ng/μL、p=0.0413)が、他の群には認められなかった(p=0.1799から8454)。また、群間の差異は統計的に有意ではなかった(p=0.0818)。群間の差異を理論中央値ゼロと比較すると、2.5%の化合物D3で処理した群に統計的に有意な増加が認められた(4.0±3.5ng/μL p−0.0312)が、他の群には認められなかった(p=0.1562から1.1250)。数値的に、化合物D3で処理したすべての群でのムチン濃度の平均変化の増加は用量依存性であった(図15)。
実施例5
スコポラミン誘導ラットドライアイモデル(化合物D3および神経成長因子)
動物:
体重360g〜470gのオスのスプラーグドーリーラット(6〜8週齢)をCharles River(Wilmington, MA)から入手した。動物を、一定の室温(22±1℃)と光の条件(12時間明/12時間暗サイクル)下にて相対湿度(32〜61%)で、アニマルクオーターに収容した。外科的なポンプ植込み前かつすべての臨床端点試験の前に、イソフルラン99.9%(Abraxis Bioscience, Richmond Hill, Ontario)チャンバで動物を麻酔した。
コリン作動性遮断によるドライアイの誘導:
スコポラミンを充填して、肩甲骨の間の背側部分中央に皮下移植した浸透圧ポンプ(2ML4 Alzet(登録商標); CedarLane, Burlington, Ontario)を用いて動物に連続的かつ全身に送達させた塩酸スコポラミン(Sigma−Aldrich, St. Louis, Missouri)を用いて、ドライアイを誘導した。スコポラミンを28日間の期間にわたって12.5mg/日で送達した。これは、浸透圧ポンプで30.0±1.5mg/kg相当であった。
塩酸スコポラミン(Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)0.175g/mLの滅菌溶液を生理食塩水で調製した。この溶液を0.22umのシリンジ−エンドフィルタ(Millex−GC, Millipore Corp, Bedford, MA)で濾過し、冷蔵庫で一晩保管した。Alzet(登録商標)浸透圧ポンプ(Model 2ML4, ロット番号10187−08, CedarLane Laboratories, Burlington, Ontario)に2mLのスコポラミン溶液を製造業者の指示に従って充填した。充填とポンプの取り扱い時には滅菌技術を使用した。
手術後と翌日に再度、非ステロイド抗炎症薬であって齧歯類で長期にわたって作用する強力な鎮痛剤のカプロフェン(0.5mg/100g)を動物に皮下注射した。−1日目にポンプ植込み前に動物の体重を計った後、4週間にわたって週に1回体重を計った。この投与量計画をラットでドライアイを誘導するものとして報告した(Viau Sら, “Time course of ocular surface and lacrimal gland changes in a new scopolamine−induced dry eye model,” Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol., 246:857〜867 (2008)(その内容全体を本明細書に援用する))。
処理群:
表3および図16から明らかなように、被験ラット眼の群は以下のとおりとした。
・ポンプ植込みなしの対照ラット(n=ラット5匹から10の眼)であり、研究中をとおして何ら処理しなかった(この群を本明細書では「G1」とも呼ぶ)。
・スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット5匹から10の眼)にドライアイを誘導し、5日目から開始して21日目まで継続的に、5μLの生理食塩水で毎日局所処理した(この群を本明細書では「G2」とも呼ぶ)。
・スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット5匹から10の眼)にドライアイを誘導し、5日目から開始して21日目まで継続的に、5μLの0.4%(4mg/mL)化合物D3溶液で毎日局所処理した(この群を本明細書では「G3」とも呼ぶ)。
・スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット5匹から10の眼)にドライアイを誘導し、5日目から開始して21日目まで継続的に、5μLの1.0%(10mg/mL)化合物D3溶液で毎日局所処理した(この群を本明細書では「G4」とも呼ぶ)。
・スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット5匹から10の眼)にドライアイを誘導し、5日目から開始して21日目まで継続的に、5μLの2.5%(25mg/mL)化合物D3溶液で毎日局所処理した(この群を本明細書では「G5」とも呼ぶ)。
・スコポラミンを連続的に全身投与してラット(n=ラット5匹から10の眼)にドライアイを誘導し、5日目から開始して21日目まで継続的に、5μLの0.00053%(0.00526mg/mL)NGF溶液で毎日局所処理した(この群を本明細書では「G6」とも呼ぶ)。
G2〜G6の処理を17日間にわたって毎日継続した(21日目を含む日まで)。その後、処理を終えたが研究はさらに1週間続けた。処理時、各動物をイソフルランチャンバで麻酔した。一度眠ったら、較正したマイクロピペットを用いて各動物の両眼の下側結膜嚢に被験物品5μLを点眼した。臨床端点も試験するのであれば、試験の最後に被験物品を局所的に滴下した。
投与溶液の調製:
約pH7(pH指示片で判断、EMD Chemicals)の緩衝生理食塩水であるMimetogen Pharmaceuticalsによって設計された製剤を用いて、化合物D3を調製した。3種類の局所投与溶液を以下のようにして調製した。
・4.0mgの化合物を用いて845μLの滅菌milliQ水に溶解させ、0.4%の局所投与溶液を調製した。この溶液を、6.5μLの1.0N NaOH(VWR)で約pH7に調整(pH指示片を使用)し、148.5μLの滅菌1.0M NaClを加えて等張(0.9%NaCl)にした。
・10.0mgの化合物を用いて845μLの滅菌milliQ水に溶解させ、1.0%の局所投与溶液を調製した。この溶液を、20μLの1.0N NaOHで約pH7に調整し、135μLの滅菌1.0M NaClを加えて等張にした。
・25.0mgの化合物を用いて845μLの滅菌milliQ水に溶解させ、2.5%(最大溶解性)の溶液を調製した。この溶液を、20μLの1.0N NaOHで約pH7に調整した。135μLの滅菌1.0M NaClを加えて溶液を等張にした。すべての溶液を5分間超音波処理した。研究期間中、すべての化合物D3溶液を冷蔵庫で保管(2〜8℃)した。
1μLの3.16mg/mLストック溶液を600μLの滅菌0.9%塩化ナトリウム注射、USP(LOT 63−922−FW EXP 20100301)で希釈し、0.00053%NGFの1つの局所投与溶液を調製した。新たに希釈した投与溶液を毎週生成し、冷蔵庫で保管(2〜8℃)した。この濃度のNGFは、i)第三眼瞼涙腺切除後にドライアイが発生したイヌ(Coassin M, Lambiase A, Costa Nら: Efficacy of topical nerve growth factor treatment in dogs affected by dry eye. Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2005;243:151〜155(その内容全体を本明細書に援用する))およびii)レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)後に角膜神経損傷が発生したウサギ(Esquenazi S, Bazan HEP, Bui Vら: Topical Combination of NGF and DHA Increases Rabbit Corneal Nerve Regeneration after Photorefractive Keratectomy. Investigative Ophthalmology & Visual Science 2005;46:3121〜3127(その内容全体を本明細書に援用する))で有効性を有すると報告された。
滅菌0.9%塩化ナトリウム注射、USP(LOT 63−922−FW EXP 20100301)の局所投与溶液を用いた。生理食塩水溶液を室温で保管した。
ドライアイの臨床端点と結果:
詳細については後述するように、7日間の回復期間後における0.4、1.0または2.5%用量の化合物D3の影響に関する評価では、未処理対照に比して1%用量の化合物D3が涙液破壊時間(TBUT)を延長させ、ムチン産生量を増やし、角膜染色からほぼ完全に回復させることが示されたが、涙液産生(シルマーテスト)、タンパク質判定またはフルオレセインクリアランスについて、対照と比して統計的に有意な差異は認められなかった。
TBUT:
13日目(8日間、毎日の処理後)、21日目(16日間、毎日の処理後)、28日目(7日間処理を停止した後)に、涙液破壊時間を試験した。TBUTについては、10μLのナトリウムフルオレセイン溶液(滅菌生理食塩水中0.2%)を麻酔した動物の上側結膜嚢に点眼して評価した。瞼を手で瞬目させ、フルオレセインを涙液層に分散させた。携帯型スリットランプ検眼鏡(Reichert Ophthalmic Instruments, Depew, NY)のコバルトブルーの光で、眼を開いた状態に保って1つ以上の黒い線条が前角膜涙液層に現れるまでの時間を記録した。それぞれの眼で、新鮮なフルオレセイン溶液を用いて最低でも三重の読み取りを実施した。
スコポラミン(表4および図17Aおよび図17B)を投与された他のどの群よりも群1(未処理対照)で涙液破壊時間が最大となった(すなわち、より良い)。すべての観察で、統計的に有意な処理効果が認められた(それぞれp<0.0001、0.0349、<0.0001)。処理時(13日目)、スコポラミンを投与された群ではすべて、群1とは統計的に有意に異なっていた(p<0.0001〜0.0012)。群5(7.0±2.3秒、2.5%化合物D3)についてさらに対比較を実施すると、群4(3.9±1.2秒、1.0%化合物D3、p=0.0160)とは統計的に有意な差異が認められた。処理時(21日目)、群4および群5(1.0%および2.5%化合物D3)以外、スコポラミンを投与された群ではすべて、群1とは統計的に有意に異なっていた(p=0.0167〜0.0289)。28日目、スコポラミンを投与された群ではすべて、群1とは統計的に有意に異なっていた(p<0.0001〜0.0054)。群4(6.4±1.2秒、1.0%化合物D3)についてさらに対比較を実施すると、群3(4.3±0.8秒、0.4%化合物D3、p=0.0204)および群6(4.2±0.8秒、NGF、p=0.0165)とは統計的に有意な差異が認められた。7日間の回復期間後、未処理対照に比して1%用量の化合物D3でTBUTが増加した。これとは対照的に、0.4%および2.5%用量の化合物D3について7日間の回復期間後にTBUTに差異はなかった。用量を増やすと、杯細胞でのNGF受容体が脱感作され、化合物D3のアゴニスト活性に対して自らを抵抗性にすることがあった。用量を減らすと、単に最適ではなくなることがあった。
TBUTに基線値はないが、13日目との比較で28日目のTBUTの変化を評価することで、未処理対照群および生理食塩水群に比した1%用量の化合物D3の影響をそれに用いることが可能である。1%用量の化合物D3は、未処理対照群および生理食塩水対照群に比してTBUTを統計的に有意に改善した(p=0.0001)(図20A)。また、図21Aは、生理食塩水対照群および1%用量の化合物D3で処理した群において、13日目との比較でTBUTの経時的な端点測定データを示す。
角膜染色:
TBUT評価の直後に、13日目(8日間、毎日の処理後)、21日目(16日間、毎日の処理後)、28日目(7日間処理を停止した後)に、角膜のフルオレセイン染色によって角膜乾燥の臨床徴候を評価した。滅菌生理食塩水を用いて生成した0.2%ナトリウムフルオレセイン溶液1滴を、麻酔した動物の上側結膜嚢に点眼した。その後、ブルーコバルトフィルタ(Reichert Ophthalmic Instruments, Depew, New York)付きのPortable Slit Lamp検眼鏡を用いて、フルオレセイン点眼の2〜3分後に青色光の下で角膜を観察した。それぞれの動物で、角膜にある点状のフルオレセイン染色部分をマスク記録した。この試験のスコアに、0は染色なし、1は25%未満の表面染色、2は25〜50%表面染色、3は50〜75%表面染色、4は75%を超えて表面染色として、0〜4の評点を付けた。
数値的に、群1(未処理対照)よりもスコポラミンを投与された群のほうが値が大きかった(すなわち、損傷が多い)(表5および図18A〜図18B)。群間の差異は13日目と28日目に統計的に有意であった(p<0.0001)が、21日目にはそうでなかった(p=0.0682)。13日目、スコポラミンを投与された群は各々、群1と統計的に有意に異なっていた(p<0.0001〜0.0003)が、他の各群とは異なっておらず(p>0.0677)、例外は群4と統計的に有意に異なっていた群5であった(p=0.0352)。28日目、群2、3、5、6が群1と統計的に有意に異なっていた(p<0.0001〜0.0007)。群4(1%化合物D3)の平均値1.3±0.3は、群1とは統計的に有意に異ならなかった(未処理対照、0.9±0.7、p=0.5136)。同様に、この検査で、群4が値の大きい群2、3、5、6とは統計的に有意に異なっていた(p<0.0001〜0.0047)。7日間の回復期間後、1%用量の化合物D3で、未処理対照群に比してほぼ完全に角膜染色が消えた。対照的に、0.4%および2.5%用量の化合物D3の用量では、7日間の回復期間後の用量で角膜染色に差異はなかった。用量を増やすと、杯細胞でのNGF受容体が脱感作され、化合物D3のアゴニスト活性に対して自らを抵抗性にすることがあった。用量を減らすと、単に最適ではなくなることがあった。
角膜染色に基線値はないが、13日目との比較で28日目の角膜染色の変化を評価することで、未処理対照群および生理食塩水群に比した1%用量の化合物D3の影響をそれに用いることが可能である。1%用量の化合物D3の用量は、未処理対照群および生理食塩水対照群に比して角膜染色を統計的に有意に改善した(p<0.0001)(図20B)。また、図21Bは、生理食塩水対照群および1%用量の化合物D3で処理した群において、13日目との比較で角膜染色の経時的な端点測定データを示す。
すべての検査で、群間のtBUT値と角膜染色スコアに有意な逆相関が認められた。角膜染色スコアが大きくなるにつれてtBUT値が小さくなった(スピアマンr=−0.7606、p<0.0001、n=87XY対)。
ムチン産生量の判定:
麻酔した動物の5μLの下側結膜嚢に滅菌生理食塩水を点眼した後、12日目(7日間、毎日の処理後)、19日目(14日間、毎日の処理後)、28日目(7日間処理を停止した後)に、6群のラットすべてから涙液流体洗液を回収した。瞼をしずかに瞬目させ、涙液層を生理食塩水と混合した。5μL容のガラス製毛細管(Drummond Scientific Co, Broomhall, Pennsylvania)を使用し、眼瞼外側部の涙三角からの毛管作用によって希釈涙液流体を回収した。約4〜5μLを定常的に回収した。強いドライアイでは、回収前に第2の5μLアリコートの生理食塩水を点眼した。
希釈涙液流体洗液中のムチン糖タンパク質の濃度を酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)で求めた。総タンパク質含有量3μgの試料をカーボネート緩衝液(pH9.2)にて100μLまで希釈し、96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレート(Corning Life Sciences #2592、Fisher Scientific, Nepean, Ontario)に移した。ウシ顎下ムチンの希釈系列(Sigma, St. Louis, Missouri)を標準として各プレートに含めた。プレートを37℃で一晩の蒸発によってコーティングした。その後、プレートを洗浄緩衝液[0.3%BSA、0.05%Tween−20含有PBS]で3回洗浄した後、3%BSAと0.05%Tween−20を含有するPBSで、37℃で1時間、非特異的結合をブロックした。ウェルを洗浄緩衝液で3回すすいだ後、洗浄緩衝液(Vector Labs, Burlingame, CA)で希釈した2μg/mLビオチニル化UEA−1中、37℃で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で3回すすいだ後、洗浄緩衝液(Pierce, Rockford, Illinois)で希釈した1μg/mLのHRP−コンジュゲートニュートラアビジン中、37℃で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で3回すすぎ、TMB(Promega, Madison, Wisconsin)で発色させ、0.5N硫酸で停止させた。総タンパク質3μgになる涙液流体洗液(μL)の容積で割って、涙液流体洗液中のムチン濃度をngムチンとして算出した。
ムチン産生を測定したところ、群間の差異はどの観察でも統計的に有意ではなかった(p=0.1066〜0.7844)(表6および図19A〜図19B)。数値的に、群1(それぞれ未処理対照、2.9、6.8、1.5ng/μL)に比して、これらの訪問(3.3、9.1および6.8ng/μL)の都度どの処置群でも群4(1%用量の化合物D3)で最高平均値が見られた。この差異は、28日目(p=0.0312)に統計的に有意であったが、他の日にはそうではなかった(p=0.6992〜0.9973)。7日間の回復期間後、1%用量の化合物D3によるムチン産生のこの統計的に有意な増加が、涙液層の品質と安定性を改善した場合がある。対照的に、0.4%および2.5%用量の化合物D3の用量では、7日間の回復期間後の用量でムチン産生に差異はなかった。用量を増やすと、杯細胞でのNGF受容体が脱感作され、化合物D3のアゴニスト活性に対して自らを抵抗性にすることがあった。用量を減らすと、単に最適ではなくなることがあった。
ムチン産生に基線値はないが、12日目との比較で28日目のムチン産生染色の変化を評価することで、未処理対照群および生理食塩水群に比した1%用量の化合物D3の影響をそれに用いることが可能である。1%用量の化合物D3は、未処理対照群および生理食塩水対照群に比してムチン産生を統計的に有意に増した(p=0.0013)(図20C)。また、図21Cは、生理食塩水対照群および1%用量の化合物D3で処理した群において、12日目との比較でムチン産生の経時的な端点測定データを示す。
シルマーテスト:
ドライアイ誘導の5、7、14、20、29日後に、シルマーテストを用いて涙液産生を観察した。イソフルランを用いて軽く鎮静させた動物で、Zone−Quick標準化フェノールレッド糸(FCI Ophthalmics, Marshfield Hills, Massachusetts)を用いて、涙液産生を測定した。糸を下眼瞼外側部に挿入し、そのまま30秒おいた。糸に1mmの精度で付けられた目盛りを使って、糸の染色された湿った部分の長さをミリメートル刻みで測定した。
30匹のラット(眼60個)での平均術前シルマー涙液試験は11.9±3.8mm(p=0.7228)であった。2日後、未処理対照よりもスコポラミン処理動物のほうがシルマースコアが小さく(すなわち涙液が少なく)(15.2±5.4mmに対して9.6±3.2mm、p=0.1671)、動物を群に振り分けた(表7)。5日目に、未処理対照(17.7±4.4mm)に対して処理動物の平均シルマースコアは8.5±2.2mmであり、この差異は、ドライアイの誘導に対応する統計的に有意なものであった(p<0.0001)。以後の検査では、未処理対照(G1)よりもスコポラミンを投与された群のほうがシルマースコアが統計的に有意に低く(p<0.0001〜0.0541−14日目のボーダーライン)、スコポラミンを投与された群間に統計的に有意な差異は認められなかった(表8および図22)。
涙液フルオレセインクリアランス:
フルオレセインクリアランス試験を使用して、ドライアイの誘導後5日目、7日目、14日目、20日目に、涙液流体の代謝回転を測定した。ヒトで説明されている方法(Afonso, A.A.ら, “Correlation of Tear Fluorescein Clearance and Schirmer Test Scores with Ocular Irritation Symptoms,” Ophthalmology 106:803〜810 (1999)(その内容全体を本明細書に援用する))とラットで改変された方法(Chen, W.ら, “Keratoconjunctivitis Sicca Modifies Epithelial Stem Cell Proliferation Kinetics in Conjunctiva,” Cornea 26:1101〜1106 (2007)(その内容全体を本明細書に援用する))で、涙液フルオレセインクリアランスを評価した。動物をイソフルランで軽く鎮静させ、2マイクロリットルの1%ナトリウムフルオレセイン(Sigma−Aldrich, St. Louis, Missouri)溶液(滅菌生理食塩水中)を下側結膜嚢に適用した。動物は2分以内で目覚めた。15分後、動物を再度鎮静させ、(シルマーテストで説明したようにして)フルオレセイン染色涙液流体をフェノールレッド綿糸で回収した。この糸を、蛍光光度分析まで、遮光した1.5mLのポリプロピレンエッペンドルフチューブに入れてすみやかに密閉した。回収された涙液流体の容量を、湿っている綿の長さ(mm)で求めた。その後、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、管を12,000rpmで5分間スピンさせた後、流体を96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレート(Corning Life Sciences #2592、Fisher Scientific, Nepean, Ontario)に移した。各プレート上で標準ウェルを調製した。これは、2μlの1%ナトリウムフルオレセイン溶液を含有する100μlのPBSにフェノールレッド糸を入れて構成されたものであった。標準ウェルに対するゲインを設定した後、蛍光マイクロプレートリーダー(FLUOstar OPTIMA, BMG Labtech, Germany)を用いてすみやかに蛍光を測定した。蛍光単位を湿った綿の長さ(mm)で割って、涙液中のフルオレセイン濃度を算出した(FU/mm)。
基線で、平均フルオレセインクリアランス値は387±427FU/mm(P=0.7506)であった。その後の検査で、数値的に、群1(未処理対照)よりもスコポラミンを投与された群の値が高くなった(すなわち、涙液の代謝回転が減った)。この差異は7日目には統計的に有意(0.0378)であったが、他の日には有意でなかった(p=0.1242〜0.4472)。スコポラミンを投与された群間で統計的に有意な差異は認められなかった(表9および図23)。
すべての検査で、群間の涙液フルオレセインクリアランス値とシルマーテスト値に有意な逆相関が認められた。水性涙液産生が少なくなるにつれて涙液フルオレセイン濃度が高くなった(スピアマンr=−0.3306、p<0.0001、n=180XY対)。
ラットにおけるスコポラミンの効果:
羅患例はなかった。すべてのスコポラミン処理動物(G2〜6)に、2日目以降に軽度から重度の眼刺激が観察された。ほとんどのスコポラミン処理動物の眼に、結膜の鬱血、腫れ、結膜の血性分泌物が認められた。結膜の鬱血と結膜の血性分泌物は通常、翌日には消散するが、結膜の腫れは研究中ずっと続いた。処置前、平均体重は約400gであり、統計的に群間の差がなかった(p=0.3927)(表10)。未処理対照群(G1)の平均体重が研究中に約575gに増えた。スコポラミンを投与された5つの群(G2〜G6)では、平均体重が約425〜450gに増えた。14日目から開始して28日目まで続く、体重を減らすための統計的に有意な処理効果があった(p<0.0001〜0.0426)(図24)。
統計解析
適用可能な場合、眼でのデータをラットごとに平均したため、実験動物は分析対象単位となった(n=5)。平均および標準偏差(SD)を使用して、各研究群のデータをキャラクタライズした。治療群、検査日、治療群検査日を要素として、体重および眼科的な徴候に対する分散の二方向解析を実施(PROC GLM)(PC−SAS、バージョン9.1.、SAS Institute, Cary NC)。検査日に層別化した際、治療群が統計的に有意(p≦0.05、両側)だった場合に対比較を実施した。未処理対照(群1)との比較のために、ダネット調整ありのLSMEANSを使用した。他の群との比較のために、LSMEANSを使用した。群のうち、データテーブルにp値を示し、すべての対比較の推論p値を評価した(データ含めず)。スピアマンの相関係数順位を使用して、GraphPad Prism 4.0c(GraphPad Software Inc., La Jolla, CA)を用いてさまざまな端点測定間の相関を評価した。
帰納的な検出力計算を実施した。Whitley, E. and Ball, J., “Statistics Review 4: Sample Size Calculations,” Critical Care, 6:335〜341 (2002)(その内容全体を本明細書に援用する)。体重で54g、シルマースコアで4.9mm、フルオレセインクリアランスで830FU/mm、tBUTで2.8秒、角膜染色で0.9スコア、4.5ng/μLムチンという小さな差異を検出するために、検定の検出力を80%(β)(α=0.05、両側)とした。

Claims (12)

  1. ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、βターンペプチド模倣環式化合物を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法。
  2. βターンペプチド模倣環式化合物が、13〜17個の炭素原子で構成される大環状環を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記βターンペプチド模倣環式化合物が、構造式(I)で表され、

    式中、RおよびRは、水素、C〜Cアルキル、アリールまたは20種類のタンパク質−アミノ酸に見られるアミノ酸側鎖置換基から独立に選択され、RおよびRは独立に、水素またはアルキルであるか、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を形成するか、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を形成し、RおよびRは、水素またはC〜Cアルキルであり、Yは、水素であるか、1個または2個の芳香族置換基であり、Xは、O、N、S、P、Se、C、1〜6個の炭素原子で構成されるアルキレン、SO、SOまたはNHから選択され、nは、0、1、2、3、4または5であり、リンカーは、NH、OH、SH、COOH、CHCO、CHO、NH−CH−COOHからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  4. Xが、O、SまたはNHであり、R、R、R、Rが各々水素原子であり、大環状環が、14個、15個または16個の環原子を有する、請求項3に記載の方法。
  5. およびRが、異なるアミノ酸側鎖の配列由来である、請求項3に記載の方法。
  6. Xが、O、SまたはNHである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記βターンペプチド模倣環式化合物が、式D3

    で表されるか、その薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記βターンペプチド模倣環式化合物が、







    からなる群から選択されるか、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
  9. ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、式D3

    で表されるβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法。
  10. ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、式3Aa

    で表されるβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法。
  11. ドライアイの治療が必要な被検体においてドライアイを治療する方法であって、式3Ak

    で表されるβターンペプチド模倣環式化合物またはその薬学的に許容される塩を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法。
  12. ムチン分泌の刺激が必要な被検体においてムチン分泌を刺激する方法であって、βターンペプチド模倣環式化合物を前記被検体に有効量で投与することを含む、方法。
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