定義
本出願で用いられる「障害」とは、線維症を軽減する薬剤から利益を得る任意の障害、疾患、または状態である。例えば、細胞外マトリックス内における線維状物質の過剰生成を含めた、線維状物質の過剰生成を特徴とする、疾患、障害、および状態が含まれる。また、マトリックス関連成分の異常で、非機能的で、かつ/または過剰な蓄積による正常な組織エレメントの置換を特徴とする疾患、障害、および状態も含まれる。また、癒着形成を特徴とする疾患、障害、および状態も含まれる。また、創傷治癒を促進し、かつ/または腫脹、炎症、および/もしくは瘢痕形成(ケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、広汎性(伸展型)瘢痕、および萎縮性(陥没型)瘢痕を含めた、異常かつ過剰な瘢痕形成を含めた)を軽減する薬剤から利益を得る任意の障害、疾患、または状態も含まれる。例えば、手術または外傷から生じる創傷と、予測される速度で治癒しない創傷(治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、慢性創傷、および離開創など)と、神経障害性、虚血性、微小血管性の病態、骨領域全体(尾骨(仙骨)、股関節(転子骨)、臀部(坐骨)、または足のかかと)にわたる圧迫、再灌流による傷害、ならびに弁逆流による病因および状態と関連する創傷関連の異常とが含まれる。
本明細書で用いられる「対象」とは、ヒト;イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなどの家畜動物および農場動物、ならびに動物園動物、競技動物、およびペット動物を含む任意の哺乳動物を指す。対象は、動物園、競技、およびペットの鳥類を含む鳥類であり得る。本明細書で好ましい哺乳動物は、成人、小児、および老齢者を含むヒトである。好ましい競技動物は、ウマおよびイヌである。好ましいペット動物は、イヌおよびネコである。
本出願で用いられる「予防」とは、予防される物または事象の生成または発生を全体的もしくは部分的に予防するか、またはこれを改善もしくは制御するか、またはこれを軽減するかもしくは停止させることを意味する。
本発明の化合物または組成物に関して本出願で用いられる「治療有効量」または「有効量」とは、所望の生物学的結果、薬学的結果、または治療結果を誘導するのに十分な量を指す。その結果は、疾患もしくは障害もしくは状態の徴候、症状、もしくは原因の緩和、または生物学的系の他の任意の望ましい変化でありうる。本発明において、結果は、線維症の予防を伴う。本発明の別の態様において、結果は、癒着の予防および/または軽減を伴う。本発明の別の態様において、結果は、瘢痕化(scarring)および異常な瘢痕化の予防および/または軽減のほか、過剰な瘢痕形成(scar formation)、ならびにケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、広汎性瘢痕、および萎縮性瘢痕を含めた、他の種類の異常な組織増殖の予防および/または軽減を伴う。
さらなる態様により、結果は、治癒速度の向上を含めた、創傷治癒および創傷閉鎖の全体的または部分的な促進および/または改善を伴う。他の利益には、腫脹、炎症、および/または瘢痕形成の全体的または部分的な軽減が含まれる。
本出願で用いられる「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、治療的処置および予防措置または予防措置の両方を指す。治療を必要とする患者は、既に障害を有する患者のほか、障害を有する傾向があるかもしくは障害を有すると診断された患者、または障害が予防される患者を包含する。したがって、例として述べると、線維症または線維性組織の形成前に投与される本発明の化合物および組成物および製剤の抗線維的な適用は、癒着形成前に投与される本発明の化合物および組成物および製剤の抗癒着的な適用、ならびに、例えば、瘢痕軽減のための手術または手順における場合を含めた、瘢痕形成前に投与される本発明の化合物および組成物および製剤の抗瘢痕形成的な適用と同様、本発明内にある。
本明細書で用いられる「抗コネキシン剤」とは、コネキシン、コネキシンヘミチャネル(コネクソン)、またはギャップジャンクションの活性、発現、または形成に影響を及ぼすかまたはこれを調節する化合物である。抗コネキシン剤は、限定せずに述べると、アンチセンス化合物(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド)、RNAi化合物およびsiRNA化合物、抗体およびそれらの結合フラグメント、ならびに「ペプチド模倣剤」含むペプチドおよびポリペプチドと、ペプチド類似体とを含む。抗コネキシンポリヌクレオチド、および抗コネキシンペプチド、抗コネキシンペプチド模倣剤、またはギャップジャンクション修飾剤に加えて、他の抗コネキシン剤には、ギャップジャンクション閉鎖化合物(例えば、コネキシンリン酸化化合物)、ヘミチャネル閉鎖化合物または遮断化合物、およびコネキシンカルボキシ末端ポリペプチド(これは、例えば、コネキシン43などのコネキシンとのZO−1タンパク質の相互作用を遮断または破壊しうる)が含まれる。好ましい抗コネキシン剤は、抗コネキシン43剤、抗コネキシン43ギャップジャンクション剤、および抗コネキシン43ヘミチャネル剤である。例示的な抗コネキシン剤は、本出願でさらに詳細に論じられる。
「ペプチド模倣剤」および「模倣剤」という用語は、それらが模倣するタンパク質領域と同じ構造的特徴および機能的特徴を実質的に有しうる天然化合物および合成化合物が含まれる。コネキシンの場合、これらは、例えば、コネキシン間結合および細胞間のチャネル形成に関与する、向かい合うコネキシンの細胞外ループを模倣しうる。
「ペプチド類似体」とは、鋳型のペプチドの特性に類似する特性を有する化合物を指し、それらは非ペプチド薬剤でありうる。ペプチドベースの化合物を含む「ペプチド模倣剤」(また、「模倣ペプチド」としても公知)はまた、ペプチド類似体などの非ペプチドベースの化合物も含む。治療的に有用なペプチドに対して構造的に類似するペプチド模倣剤を用いて、同等であるかまたは増強された治療効果または予防効果をもたらすことができる。一般に、ペプチド模倣剤は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的な機能または活性を有するポリペプチド)と構造的に同一または類似であるが、また、場合によって、例えば、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、および−CH2SO−からなる群から選択される結合により置換される1または複数のペプチド結合も有しうる。模倣剤は、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸類似体だけから構成されたものであっても、部分的に天然のペプチドアミノ酸と部分的に非天然のアミノ酸類似体からなるキメラ分子であってもよい。任意量の天然アミノ酸に対する保存的置換もまた実質的に模倣剤の活性を変化させない限りにおいて、模倣剤はまたこのような置換も含みうる。例えば、ヘミチャネルのドッキングによるギャップジャンクションを介する細胞間連絡の形成に対する阻害、またはヘミチャネルの開放による細胞質の細胞外環境への曝露に対する阻害など、コネキシンタンパク質またはヘミチャネルの生物学的な作用または活性を下方調節することが可能な場合、例えば、模倣組成物は、抗コネキシン剤として有用でありうる。ペプチド模倣剤、模倣剤ペプチド、およびコネキシン調節ペプチドのほか、コネキシンリン酸化化合物およびコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドを含めた化合物には、本出願で記載または言及されるもののほか、現在公知の場合であれ将来的に開発される場合であれ、当技術分野において公知でありうるものも含まれる。
本明細書においてその各形態において用いられるコネキシン活性の「調節剤」および「調節」という用語は、コネキシンまたはコネキシンヘミチャネルまたはコネキシンギャップジャンクションの発現または作用または活性に対する全体的または部分的な阻害を指し、抗コネキシン剤として機能しうる。
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」という用語は、1つのアミノ酸(またはアミノ酸残基)のアルファ炭素に結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接するアミノ酸のアルファ炭素に結合したアミノ基のアミノ窒素原子に共有結合する場合に生じるペプチド結合により連結される、2つ以上の個々のアミノ酸(天然の場合であれ非天然の場合であれ)による任意のポリマーを指す。これらのペプチド結合、およびこれらを含む原子(すなわち、アルファ炭素原子、カルボキシルの炭素原子(およびこれらの置換基の酸素原子)、およびアミノの窒素原子(およびこれらの置換基の水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。加えて、本明細書で用いられる「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」および「ペプチド」(本明細書では、場合によって、互換的に用いられうる)という用語を含む形で理解される。同様に、本明細書では、タンパク質のフラグメント、類似体、誘導体、および変異体も「タンパク質」と称し、別段に示されない限り、「タンパク質」であるとみなされるものとする。タンパク質の「フラグメント」という用語は、タンパク質のすべてのアミノ酸残基よりも少数のアミノ酸残基を含むポリペプチドを指す。タンパク質の「ドメイン」もまたフラグメントであり、多くの場合、活性または機能を付与することが必要とされる、タンパク質のアミノ酸残基を含む。 本出願で用いられる「同時に」が、本発明の1または複数の薬剤を共時的に投与することを意味するように用いられるのに対し、「組み合わせて」という用語は、同時にまたは物理的に混合してではないにせよ、それらの両方を治療的な作用に用いられる時間枠内で「逐次的に」投与することを意味するように用いられる。したがって、「逐次的に」投与することにより、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤が有効量で共時的に存在する限りにおいて、1つの薬剤を、他の薬剤の投与後数分(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30分)、または約数時間、数日、数週間、もしくは数カ月以内に投与することが可能となりうる。成分の1回または複数回の投与間における時間の遅延は、成分の正確な性質、それらの間における相互作用、およびそれら各々の半減期に応じて変化する。
「創傷包帯材」という用語は、創傷に対する局所適用のための包帯材を指し、全身投与に適する組成物を除外する。例えば、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤は、創傷接触材料(例えば、織られた布材料または不織の布材料)の固体シート中または固体シート上に分散させることもでき、ポリウレタン発泡体などの発泡体層中またはポリウレタンヒドロゲル、ポリアクリル酸ヒドロゲル、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルギネート、および/もしくはヒアルロン酸ヒドロゲルなどのヒドロゲル中、例えば、ゲルまたは軟膏中に分散させることもできる。一部の実施形態において、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および/または1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤は、創傷中への有効成分の持続的な放出をもたらす生体分解性のシート材料、例えば、凍結乾燥コラーゲンシート、凍結乾燥したコラーゲン/アルギネート混合物(Johnson & Johnson Medical Limited社から登録商標FIBRACOLの下に入手可能)、または凍結乾燥コラーゲン/酸化再生セルロース(Johnson & Johnson Medical Limited社から登録商標PROMOGRANの下に入手可能)の中またはこの上に分散される。
本明細書で用いられる「マトリックス」は、例えば、コラーゲン、無細胞マトリックス、架橋生体骨格分子、組織ベースのマトリックス(ブタベースの創傷治癒マトリックスを含む)、培養による表皮自家移植片、培養による表皮同種移植片、組織改変皮膚、自己線維芽細胞および自己角化細胞を接種したコラーゲンおよびグリコサミノグリカンによる皮膚マトリックス、Alloderm(無傷の基底膜複合体を伴う、非生存同種異系無細胞皮膚マトリックス)、生存皮膚同等物(例えば、Dermagraft(分解性骨格上で増殖した生存同種異系皮膚線維芽細胞)、TransCyte(同種異系ヒト皮膚線維芽細胞により生成される細胞外マトリックス)、Apligraf(角化細胞、線維芽細胞、およびウシI型コラーゲンを含有する生存同種異系の2層型構築物)、およびOrCel(ウシコラーゲン2層型マトリックスの両面に播種された同種異系の線維芽細胞および角化細胞))、動物由来の包帯材(例えば、Oasis社製のブタ小腸の粘膜下無細胞コラーゲンマトリックス;およびE−Z Derm社製の無細胞異種コラーゲンマトリックス)、組織ベースの生体改変構造フレームワーク、生体加工による生体装具、また例えば、創傷治癒の促進に有用な、細胞の浸潤および増殖に適する血管グラフトなど、他の植え込み構造物または適用構造物などのマトリックスを含む。さらなる適切な生体マトリックス材料は、抗原性および免疫原性を軽減する化学修飾したコラーゲン組織を含みうる。他の適切な例は、創傷包帯材用のコラーゲンシート、抗原を含まないかまたは抗原を低減した無細胞マトリックス(Wilsonら、Trans Am Soc Artif Intern、1990年、第36巻、340〜343頁)、または異種移植材料に対する抗原反応を軽減するように改変された他の生体マトリックスを含む。創傷治癒を促進するのに有用な他のマトリックスは、例えば、不溶性のコラーゲンおよびエラスチンを含む加工済みのウシ心膜タンパク質(Courtmanら、J Biomed Mater Res、1994年、第28巻、655〜666頁)、および宿主細胞の移動が組織再生を加速させるための天然の微小環境をもたらすのに有用でありうる他の無細胞組織(Maloneら、J Vasc Surg、1984年、第1巻、181〜91頁)を含みうる。一部の実施形態において、マトリックス材料には、このような薬剤の部位特異的な放出のための1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチドおよび/あるいは1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤を補充することができる。
創傷および創傷の分類
慢性創傷、治癒が緩徐な創傷、および治癒の不完全な創傷は、結果として感染症をもたらすことが多く、切断術または死亡をもたらしうる。本出願で記載または言及される化合物を含めた特定の化合物の使用により、細胞連絡を遮断することも、阻害することも、変化させることもでき、これにより、慢性創傷、治癒が緩徐な創傷、および治癒が不完全な創傷における閉鎖および治癒を促進することができる。
本明細書で用いられる「創傷」という用語は、例えば、急性創傷、治癒が遅延しているか緩徐であるかまたは困難な創傷、および慢性創傷を含めた、任意の組織に対する傷害を含む。創傷の例は、開放創傷および閉鎖創傷の両方を意味する。創傷は、例えば、熱傷、切開、切除、裂傷、表皮剥離、穿通創における刺し傷、手術による創傷、挫傷、血腫、圧挫傷害、および潰瘍を含む。また、予測される速度で治癒しない創傷も含まれる。
「所定の/ある予測される速度で治癒しない創傷」とは、予測されるかまたは典型的な時間枠内で治癒しない、任意の組織に対する傷害を意味し、これには、治癒が遅延しているか、緩徐であるか、または困難な創傷(治癒が遅延しているかまたは不完全な創傷を含めた)、および慢性創傷が含まれる。予測される速度で治癒しない創傷の例には、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、血管性潰瘍、動脈潰瘍、静脈潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、褥瘡、褥瘡性潰瘍、感染性潰瘍、外傷誘導性潰瘍、熱傷潰瘍、壊疽性膿皮症と関連する潰瘍形成、および混合潰瘍が含まれる。
本出願で用いられる、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷には、例えば、1)炎症期の遷延、2)細胞外マトリックスの形成遅延、および3)上皮形成の停滞または上皮形成速度の低下のうちの1または複数を少なくとも部分的に特徴とする創傷が含まれうる。
当技術分野において、「慢性創傷」という用語は一般に、3カ月以内に治癒しなかった創傷を指すが、1または2カ月以内に治癒しなかった創傷でもありうる。慢性皮膚創傷には、例えば、褥瘡、糖尿病性潰瘍、静脈潰瘍、動脈潰瘍、炎症性潰瘍、および混合潰瘍が含まれる。慢性創傷は、完全動脈遮断または部分動脈遮断から生じる潰瘍形成がそこに含まれうる動脈潰瘍でありうる。慢性創傷は、静脈弁の機能不全および関連する血管疾患から生じる潰瘍形成がそこに含まれうる静脈鬱血性潰瘍でありうる。慢性創傷は、外傷誘導性潰瘍でありうる。
本明細書で用いられる慢性創傷はまた、例えば、1)創傷炎症の慢性自己永続状態、2)創傷ECMの欠損および欠陥、3)(老化)創傷細胞(例えば、線維芽細胞)の応答不十分、ECM生成の制約、ならびに/または4)必要なECMの組織化の欠如および移動のための足場の欠如に部分的に起因する再上皮形成不全を少なくとも部分的に特徴とする創傷も含みうる。
慢性創傷はまた例えば、1)炎症およびタンパク質分解活性の持続による、例えば、糖尿病性潰瘍、褥瘡(褥瘡性潰瘍)、静脈性潰瘍、および動脈性潰瘍を含む潰瘍性病変の惹起、2)瘢痕をもたらす創傷における持続的な線維症、3)罹患領域におけるマトリックスの進行性沈着、4)修復時間の長期化、5)創傷収縮の低減、6)再上皮形成の遅延、ならびに7)肉芽組織の肥厚も特徴とする。
例示的な慢性創傷は、「褥瘡」を含みうる。例示的な褥瘡は、例えば、病期1を含む、AHCPR(米国保健福祉省、健康管理政策研究局)ガイドラインに基づく創傷分類の全4病期を含みうる。病期1の褥瘡は、身体上で隣接するかまたは反対側の領域と比較したその指標が、以下:皮膚温度(温熱または低温)、組織の硬さ(しまった感じかまたはゆるい感じ)、および/または感覚(疼痛、刺激)のうちの1つまたは複数における変化を含みうる、圧力と関連する無傷皮膚の観察可能な変化である。潰瘍は、わずかに色素沈着した皮膚における、明確な持続性の発赤領域として現れる一方、皮膚の色調がより暗色の場合、潰瘍は、持続性の赤色、青色、または紫色を伴って現れうる。病期1の潰瘍は、無傷皮膚の消退しない発赤、および皮膚潰瘍形成の前兆となる病変を含みうる。皮膚が暗色化している個体においては、皮膚の変色、温熱、浮腫、硬結、硬化もまた、病期1の潰瘍形成の指標でありうる。病期2:病期2の潰瘍形成は、表皮、真皮、またはこれらの両方に及ぶ部分層皮膚喪失を特徴としうる。潰瘍は表面的であり、臨床的には表皮剥離、水膨れ、または表層的な陥没として現れる。病期3:病期3の潰瘍形成は、基層の筋膜を貫通しないがこれへと拡張しうる、皮下組織に対する損傷またはこの壊死を伴う全層皮膚喪失を特徴としうる。潰瘍は、臨床的には、隣接組織を蝕む場合であれ、そうでない場合であれ、深い陥没として現れる。病期4:病期4の潰瘍形成は、筋肉、骨、または支持構造(例えば、腱、関節被膜)に対する広範な破壊、組織壊死、または損傷を伴う全層皮膚喪失を特徴としうる。
例示的な慢性創傷は、「褥瘡性潰瘍」を含みうる。例示的な褥瘡性潰瘍は、虚血をもたらす骨の突出部上において、圧力が長期間にわたり軽減されないことの結果として生じうる。創傷は、麻痺患者、意識喪失患者、または重度の衰弱患者など、自ら体位を変えて体重の負荷を除去することができない患者において生じる傾向がある。米国保健福祉省により定義される通り、主要な防止措置は、危険性の高い患者の同定;頻繁な評価;および定期的な体位変換、適切な圧力除去横臥、防湿バリア、および十分な栄養状態などの予防措置を含む。治療選択肢は、例えば、圧力の除去、手術による創面切除および酵素的創面切除、湿潤創傷の治療、および細菌負荷の抑制を含みうる。一部の実施形態では、虚血をもたらす骨の突出部上において、圧力が長期間にわたり軽減されないことの結果として生じる褥瘡性潰瘍または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
例示的な慢性創傷は、「動脈性潰瘍」を含みうる。動脈性潰瘍は、組織の壊死および/または潰瘍形成をもたらしうる完全動脈遮断または部分動脈遮断を特徴とする潰瘍を含みうる。動脈性潰瘍の徴候は、例えば、下肢の無脈;有痛の潰瘍形成;極めて限局性であることが通常な、小型の点状潰瘍;低温皮膚または寒冷皮膚;毛細血管復帰時間の遅延(つま先の端部を軽く押して放し、約3秒間以内につま先に正常な色彩が戻るものとする);皮膚の萎縮外見(例えば、光沢、薄化、乾燥);ならびに指および足の体毛喪失を含みうる。
例示的な慢性創傷は、「静脈性潰瘍」を含みうる。例示的な静脈性潰瘍は、下肢が罹患する最も一般的な種類の潰瘍を含む場合があり、静脈弁の機能不全を特徴としうる。正常な静脈は、血液の逆流を防止する弁を有する。これらの弁が不全化すると、静脈血の逆流により、静脈鬱血が引き起こされる。赤血球からヘモグロビンが逸失して血管外腔へと漏出し、これにより、一般に言及される褐色の変色が引き起こされる。静脈性潰瘍を取り巻く皮膚の経皮酸素圧が低下することが示されており、これにより、領域の正常な血管形成を妨げる力が存在することが示唆される。リンパ液のドレナージおよび流動もまた、これらの潰瘍において役割を果たす。静脈性潰瘍は、内果近傍に現れる場合があり、通常、下肢の浮腫形成および硬結との組合せで生じ、浅く、それほど有痛でない場合があり、罹患部位からの滲出物の分泌を伴って現れる場合がある。
例示的な慢性創傷は、「静脈鬱血性潰瘍」を含みうる。例示的な静脈鬱血性潰瘍は、局所的低酸素症を結果としてもたらす下肢の慢性受動性静脈鬱血を特徴としうる。これらの創傷の1つの可能な発症機構は、厚い血管周囲のフィブリンカフを超える組織内への酸素拡散が妨害されることを含む。別の機構は、血管周囲組織内への高分子の漏出により、皮膚の完全性を維持するのに必要とされる成長因子が捕捉されることである。加えて、静脈鬱血により高分子である白血球の流動が遅くなり、白血球が毛細血管を閉塞させ、活性化し、血管内皮を損傷して潰瘍形成に対する素因を与える。
例示的な慢性創傷は、「糖尿病性足部潰瘍」を含みうる。例示的な糖尿病性足部潰瘍を有する糖尿病患者は、神経学的合併症および血管合併症の両方に起因する足部潰瘍形成に罹患しやすい傾向がある。末梢の神経障害は、足部および/または脚部における感覚の変化または感覚の完全な喪失を引き起こしうる。神経障害が進行した糖尿病患者は、とがったもの/まるいものを区別するすべての能力を失う。神経障害が進行した患者は、持続的な圧迫を感知するこの能力を失い、結果として、例えば、足底部の潰瘍形成をもたらす組織の虚血および壊死が生じうる。加えて、足部骨における微小骨折が感知および治療されずにおかれると、結果として、変形、慢性腫脹、およびさらなる骨の突出が生じうる。微小血管疾患は、これもまた潰瘍形成ももたらしうる、糖尿病の著明な合併症の1つである。
例示的な慢性創傷は、「外傷性潰瘍」を含みうる。例示的な外傷性潰瘍の形成は、身体に対する外傷性傷害の結果として生じうる。これらの傷害は、例えば、動脈系、静脈系、またはリンパ系に対する損傷;骨格の骨構造に対する変化;組織層(表皮、真皮、皮下軟組織、筋肉、または骨)の喪失;身体部分または臓器に対する損傷および身体部分または臓器の喪失を含む。
例示的な慢性創傷は、例えば、第1度熱傷(すなわち、皮膚表面の発赤領域);第2度熱傷(水膨れ液を除去した後で自然治癒しうる水膨れの傷害部位);第3度熱傷(皮膚全層に及ぶ熱傷で、通常、創傷治癒には手術による介入を要する);熱湯熱傷(熱湯、熱湯熱傷を引き起こすグリースまたはラジエータ液により生じうる);火炎熱傷(火炎により生じる場合があり、通常、深部熱傷である);化学熱傷(酸およびアルカリにより生じる場合があり、通常、深部熱傷である);電気熱傷(家庭周辺の低電圧または業務地における高電圧);爆発閃光熱傷(通常は表面的な傷害);および接触熱傷(通常、深部熱傷であり、マフラーテールパイプ、高温のアイロン、およびストーブにより生じうる)を含む熱傷の結果として生じる潰瘍形成を含む「熱傷潰瘍」を含みうる。
本出願で用いられる、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷には、例えば、1)炎症期の遷延、2)細胞外マトリックス(ECM)の形成遅延、および3)上皮形成速度の低下を少なくとも部分的に特徴とする創傷が含まれうる。
本出願で用いられる「線維性」疾患、障害、または状態には、本明細書で言及される場合が含まれ、線維原性に関連する生物学または病理学が明らかである急性症状および慢性症状、臨床症状または無症状がさらに含まれる。線維性疾患、線維性障害、または線維性状態には、細胞外マトリックス内における線維性物質の過剰生成、またはマトリックス関連成分の異常で、非機能的で、かつ/または過剰な蓄積による正常組織エレメントの置換を含めた、線維状物質の過剰生成を全体的または部分的に特徴とする疾患、障害、または状態が含まれる。線維性疾患、線維性障害、または線維性状態には、例えば、線維症を特徴とする、線維原性に関連する生物学または病理学が含まれる。
例示的な線維性疾患、線維性障害、および線維性状態には、例えば、強皮症(限局性強皮症、汎発性モルフェア、または線状強皮症を含めた)、腎線維症(糸球体硬化症、腎尿細管間質線維症、進行性腎疾患、または糖尿病性腎症を含めた)、心線維症(例えば、心筋線維症)、肺線維症(例えば、糸球体硬化症肺線維症、特発性肺線維症、珪肺症、石綿肺症、間質性肺疾患、間質線維性肺疾患、および化学療法/放射線照射により誘導される肺線維症)、口腔線維症、心内膜心線維症、三角筋線維症、膵炎、炎症性大腸炎、クローン病、結節性筋膜炎、好酸球性筋膜炎、多様な程度で正常な筋肉組織が線維状組織により置換されることを特徴とする一般的な線維症候群、後腹膜線維症、肝線維症、肝硬変、慢性腎不全;骨髄線維症(myelofibrosis)(骨髄の線維症(bone marrow fibrosis))、薬剤誘導性エルゴチン中毒、リー−フラウメニ症候群における神経膠芽腫、散発性神経膠芽腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、婦人科癌、カポジ肉腫、ハンセン病、コラーゲン蓄積大腸炎、および急性線維症を含む。
線維性疾患、線維性障害、および線維性状態にはまた、拘縮が含まれうる。術後拘縮を含めた拘縮とは、緊張性痙攣もしくは線維症によるか、または正常な組織のコンプライアンス、運動、もしくは平衡(例えば、筋肉、腱、靭帯、筋膜、滑膜、関節被膜、他の結合組織、または脂肪)の喪失による、運動範囲の永久的または長期的な低下を指す。一般に、拘縮状態は、急性および慢性両方の炎症成分による線維性反応を伴いうる。その一部は、リリース手順を含めた手術と関連しうる。デュピュイトラン拘縮、ペイロニー病、およびレダーホース病などの遺伝性拘縮もまた含まれる。
線維症は、慢性の場合も急性の場合もある。線維性状態には、組織内における過剰量の細胞外マトリックスの蓄積が含まれ、機能不全また潜在的には臓器不全を引き起こす組織を形成する、過剰量の線維状組織が含まれる。慢性線維症は、主要臓器、最も一般的には、肺、肝臓、腎臓、および/または心臓の線維症を含む。急性線維症(通常、突発的で重度の発症を伴い、短期間にわたり持続する)は、傷害、虚血性疾患(例えば、心臓発作後における心筋の瘢痕形成)、環境汚染物質、アルコール、および他の種類の毒素、急性呼吸逼迫症候群、放射線照射および化学療法による治療を含めた各形態の外傷に対する一般的な反応として生じることが典型的である。外傷により損傷したすべての組織は、特に、損傷が反復される場合、線維性となりうる。
傷害に対する反応は、傷害に後続する、組織化されて一時的に調節されたメディエーターのパターンと、組織内における細胞イベントの連鎖とを伴うことが報告されている。最初の傷害は、凝血カスケードおよび急性の局所性炎症反応を誘発した後で、間葉細胞の動員、増殖、およびマトリックスの合成を誘発することが報告されている。異常なサイトカイン経路を伴うことが多い制御不能のマトリックス蓄積により、線維性状態または線維性障害が生じうる。肺、腎臓、肝臓、心臓、脳、および骨髄などの致命的な臓器における進行性線維症は、疾患および死亡両方の主要な原因である。
癒着
本発明の他の態様内では、患者に抗コネキシンポリヌクレオチドを投与することにより、癒着、手術による癒着、および/または手術による続発性癒着を治療し、これらの発生を低下させるかもしくはこれらの重症度を軽減し、かつ/またはこれらを予防するかもしくは遅延させるための方法が提供される。
癒着形成とは、正常時には分離している体内組織が共に増殖する複合過程である。例えば、主要な婦人科の手術を受ける患者の約60%〜90%において、術後癒着の発生が報告されている。組織(例えば、上皮組織、結合組織、筋組織、および神経組織)の乾燥、虚血、熱傷、感染、または異物の存在の結果としての手術外傷は、従来、組織の癒着形成に対する刺激であると認識されてきた。これらの癒着は、手術療法が失敗する主要な原因であり、腸閉塞および不妊の主要な原因である。他の癒着による治療合併症には、慢性骨盤疼痛、尿道閉塞、および排尿機能障害が含まれる。
一般に、癒着形成とは、因子が放出され、血管透過性が上昇し、フィブリノーゲンの流入およびフィブリンの沈着が結果としてもたらされる炎症反応である。この沈着により、隣接組織を架橋するマトリックスが形成される。線維芽細胞が蓄積され、マトリックスに付着し、コラーゲンを沈着させ、血管形成を誘導する。このイベントのカスケードを手術後4〜5日以内に予防することができれば、癒着形成を阻害することができる。
既存の癒着を是正するための是正的な手術手順の結果として、手術による続発性癒着もまた形成されうる。手順は、リリース手順または分離手順でありうる。
その治療的潜在能力について特定の治療組成物または治療レジメンを評価するために、多種多様な動物モデルを用いることができる。略述すると、通常2つの隣接する表面に及ぶ重度の損傷を受けた結果として、動物では腹膜癒着の発生が観察されている。傷害は、虚血により、または異物導入の結果として、機械的でありうる。機械的傷害には、腸の圧挫(Choateら、Arch. Surg.、第88巻、249〜254頁、1964年)および腸壁外層の剥離または脱落(Gustavssonら、Acta Chir. Scand、第109巻、327〜333頁、1955年)が含まれる。腸の係蹄へと至る主要な血管が分断されると、虚血が誘導される(Jamesら、J. Path. Bact.、第90巻、279〜287頁、1965年)。領域内に導入されうる異物には、滑石(Greenら、Proc. Soc Exp. Biol. Med.、第133巻、544〜550頁、1970年)、スポンジガーゼ(LehmanおよびBoys、Ann. Surg、第111巻、427〜435頁、1940年)、有毒化学物質(Chancy、Arch. Surg. 、第60巻、1151〜1153頁、1950年)、細菌(Moinら、Am. J. Med Sci.、第250巻、675〜679頁、1965年)、および糞便(Jackson、 Surgery、第44巻、507〜518頁、1958年)が含まれる。
現在のところ、癒着形成の予防を評価するための典型的な動物モデルには、ウサギ子宮の掻爬を伴うウサギ子宮角モデル(Linskyら、J. Reprod. Med. 、第32巻、第1号、17〜20頁、1987年)、子宮の掻爬および血管切除を伴うウサギ子宮角血管切除改変モデル(Wisemanら、J. Invest Surg.、第7巻、527〜532頁、1994年)、および壁側腹膜片の切除に加えて盲腸の掻爬を伴うウサギ盲腸側壁モデル(WisemanおよびJohns、Fertil SteriL 、付録、25S頁、1993年)が含まれる。本出願では、これらおよび他の報告された評価モデルが記載される。
抗コネキシン剤
本明細書に記載の本発明の抗コネキシン剤は、細胞内への、また細胞からの分子の輸送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす(例えば、遮断するかまたは阻害するかまたは下方調節する)ことができる。したがって、本明細書に記載の一部の抗コネキシン剤は、細胞情報伝達(例えば、細胞間)を調節する。一部の抗コネキシン剤は、ギャップジャンクション調節剤である。一部の抗コネキシン剤は、細胞の細胞質と、ペリプラズム腔または細胞外腔との間における分子の移送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす。このような抗コネキシン剤は一般に、コネキシンおよび/またはコネキシンヘミチャネル(コネクソン)またはギャップジャンクション自身を標的とする。コネキシンを含むヘミチャネルおよび結果として生じるギャップジャンクションは、開口ヘミチャネルの場合における、細胞質と細胞外腔または細胞外組織との間における低分子の放出または交換、また開口ギャップジャンクションの場合における、隣接する細胞の細胞質間における低分子の放出または交換に独立して関与する。したがって、本明細書で提供される抗コネキシン剤は、細胞間における結合および情報伝達を直接的または間接的に低下させる場合もあり、細胞と細胞外腔または細胞外組織との間における情報伝達(または分子の伝達)を低下させるかまたは遮断する場合もあり、細胞から細胞外腔もしくは細胞外組織への(または細胞外腔もしくは細胞外組織から細胞内への)または隣接する細胞間における分子輸送の調節は、本発明の抗コネキシン剤および本発明の実施形態の範囲内にある。コネキシンは、コネキシン43であることが好ましい。
本発明の実施形態では、ギャップジャンクションまたはコネキシンヘミチャネルを介する分子の通過(例えば、輸送)に対する望ましい阻害を誘発することが可能な任意の抗コネキシン剤を用いることができる。ギャップジャンクションまたはコネキシンヘミチャネルを介する分子の通過を調節する任意の抗コネキシン剤はまた、特定の実施形態においても提供される(例えば、ある細胞の細胞質から細胞外腔または隣接する細胞の細胞質への分子の通過を調節するか、遮断するか、または低下させる抗コネキシン剤)。このような抗コネキシン剤は、ギャップジャンクションの結合解除(ギャップジャンクションを介する分子輸送の遮断)を伴う場合であれ伴わない場合であれ、ギャップジャンクションまたはコネキシンヘミチャネルを介する分子の通過を調節しうる。このような化合物は、例えば、タンパク質およびポリペプチド、ポリヌクレオチド、および他の有機化合物を含み、これらは、例えば、部分的または全体的にギャップジャンクションまたはヘミチャネルの機能または発現を遮断する場合もあり、全体的または部分的にコネキシンの生成を下方調節する場合もある。一部のギャップジャンクション阻害剤は、Evans, W.H.およびBoitano, S.、Biochem. Soc. Trans.、第29巻、606〜612頁(2001年)において列挙されている。他の化合物は、全体的または部分的にギャップジャンクションおよび/またはヘミチャネルを閉鎖するコネキシンリン酸化化合物、ならびにコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドを含む。コネキシンは、コネキシン43であることが好ましい。
一部の抗コネキシン剤は、コネキシン発現の下方調節(例えば、mRNAの転写または翻訳に対する下方調節による)をもたらすか、またはこれ以外の形で、コネキシンタンパク質、コネキシンヘミチャネル、もしくはギャップジャンクションの活性を低下させるかもしくは阻害する。下方調節の場合、これは、コネキシン発現が下方調節される部位において、ギャップジャンクションによる直接的な細胞間情報伝達、またはヘミチャネルによる細胞の細胞質の細胞外腔への曝露を低下させる効果を有する。抗コネキシン43剤が好ましい。
抗コネキシン剤の例は、コネキシンmRNAおよび/もしくはコネキシンタンパク質の発現もしくは機能を低下させるかもしくは阻害するか、またはコネキシン、コネキシンヘミチャネル、もしくはギャップジャンクションの活性、発現、もしくは形成を低下させる薬剤を含む。抗コネキシン剤は、アンチセンスポリヌクレオチドおよび他のポリヌクレオチド(siRNAまたはリボザイムの機能性を有するポリヌクレオチドなどの)などの抗コネキシポリヌクレオチドのほか、抗体およびその結合フラグメント、ならびにヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性または機能を調節するペプチド模倣剤およびペプチド類似体を含むペプチドおよびポリペプチドを含む。抗コネキシン43剤が好ましい。
抗コネキシンポリヌクレオチド
抗コネキシンポリヌクレオチドは、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドのほか、それらによるコネキシン発現の下方調節を可能とする機能性を有するポリヌクレオチドも含む。他の適切な抗コネキシンポリヌクレオチドは、RNAiポリヌクレオチドおよびsiRNAポリヌクレオチドを含む。抗コネキシン43ポリヌクレオチドが好ましい。
RNAi、siRNA、およびリボザイムポリヌクレオチドのほか、骨格が改変および混合されたポリヌクレオチドなどの、アンチセンスポリヌクレオチドおよび他の抗コネキシンポリヌクレオチドの合成は、当業者に公知である。例えば、Stein C.A.およびKrieg A.M.(編)、「Applied Antisense Oligonucleotide Technology」、1998年、(Wiley−Liss)を参照されたい。抗体および結合フラグメントのほか、ペプチド模倣剤およびペプチド類似体を含むペプチドおよびポリペプチドを合成する方法は、当業者に公知である。例えば、Lihu Yangら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、1;第95巻、第18号、10836〜10841頁(1998年9月1日); HarlowおよびLane(1988年)、「Antibodies: A Laboratory Manuel」、Cold Spring Harbor Publications、New York; HarlowおよびLane(1999年)、「Using Antibodies: A Laboratory Manuel」、Cold Spring Harbor Publications、New Yorkを参照されたい。
一態様によれば、コネキシン発現の下方調節は一般に、アンチセンスポリヌクレオチド(DNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドなど)を用いるアンチセンス法に基づき、またより具体的に、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の使用に基づきうる。これらのポリヌクレオチド(例えば、ODN)は、(1または複数の)コネキシンタンパク質を標的としてこれらを下方調節する。ポリヌクレオチドは、一本鎖であることが典型的であるが、二本鎖の場合もある。
アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンの転写および/または翻訳を阻害しうる。ポリヌクレオチドは、コネキシン遺伝子またはコネキシンmRNAからの転写および/または翻訳の特異的な阻害剤であり、他の遺伝子またはmRNAからの転写および/または翻訳を阻害しないことが好ましい。生成物は、(i)コード配列に対する5’側、および/または(ii)コード配列に対する、および/または(iii)コード配列に対する3’側にあるコネキシン遺伝子またはコネキシンmRNAに結合しうる。
アンチセンスポリヌクレオチドは一般に、コネキシンmRNA、好ましくはコネキシン43 mRNAに対してアンチセンスである。このようなポリヌクレオチドはコネキシンmRNAにハイブリダイズすることが可能であり、したがって、転写、mRNAのプロセッシング、核からのmRNAの輸送、翻訳、またはmRNAの分解を含む、コネキシンmRNA代謝の1つまたは複数の側面に干渉することにより、コネキシン発現を阻害しうる。アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAにハイブリダイズして、mRNA翻訳の直接的な阻害および/またはmRNAの不安定化を引き起こしうる二重鎖を形成することが典型的である。このような二重鎖は、ヌクレアーゼによる分解に対して感受性でありうる。
アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部にハイブリダイズしうる。アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAのリボソーム結合領域またはコード領域にハイブリダイズすることが典型的である。ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部の領域に対して相補的でありうる。例えば、ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部の完全な相補体でありうる。しかし、絶対的な相補性は必要とされず、生理学的条件下において約20℃、30℃、または40℃を超える融解温度を有する二重鎖を形成するのに十分な相補性を有するポリヌクレオチドが、本発明における使用に特に適する。
したがって、ポリヌクレオチドは、mRNAに対して相補的な配列の相同体であることが典型的である。ポリヌクレオチドは、約50℃〜約60℃における0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウムなどの中程度〜高度に厳密な条件下においてコネキシンmRNAにハイブリダイズするポリヌクレオチドでありうる。
一部の態様について述べると、適切なポリヌクレオチドは、例えば、約6〜40ヌクレオチドの長さであることが典型的である。ヌクレオチドは、好ましくは約12〜約35ヌクレオチドの長さでもあり、代替的には、約12〜約20ヌクレオチドの長さでもあり、より好ましくは、約18〜約32ヌクレオチドの長さでもありうる。代替的な態様によれば、ポリヌクレオチドは、少なくとも約40ヌクレオチド、例えば、少なくとも約60ヌクレオチドまたは少なくとも約80ヌクレオチドの長さでありえ、最長約100、約200、約300、約400、約500、約1000、約2000、または約3000ヌクレオチド以上の長さでありうる。
ポリヌクレオチドにより標的とされる1または複数のコネキシンタンパク質は、下方調節が行われる部位に依存する。これは、コネキシンサブユニットの組成に関して、全身の異なる部位において(1または複数の)ギャップジャンクションの構成が一様でないことを反映する。コネキシンは、一態様における、ヒトもしくは動物の天然に存在するコネキシンであるか、またはコネキシンの発現または活性を低下させる予定の組織内の天然に存在するコネキシンである。コネキシン遺伝子(コード配列を含む)は一般に、表8に示すコネキシン43コード配列との相同性など、本明細書で言及される1または複数の特異的なコネキシンのコード配列との相同性を有する。コネキシンは、αコネキシンまたはβコネキシンであることが典型的である。コネキシンはαコネキシンであり、治療される組織において発現することが好ましい。
しかし、組織内における分布に関して、一部のコネキシンタンパク質は、他のコネキシンタンパク質よりも遍在性である。最も広範に存在するコネキシンタンパク質の1つが、コネキシン43である。コネキシン43を標的とするポリヌクレオチドが、本発明における使用に特に適する。他の態様では、他のコネキシンが標的とされる。
抗コネキシンポリヌクレオチドは、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドのほか、それらによるコネキシン発現の下方調節を可能とする機能性を有するポリヌクレオチドも含む。他の適切な抗コネキシンポリヌクレオチドは、RNAiポリヌクレオチドおよびsiRNAポリヌクレオチドを含む。
好ましい一態様において、アンチセンスポリヌクレオチドは、1種のコネキシンタンパク質のmRNAだけを標的とする。このコネキシンタンパク質は、コネキシン43であることが最も好ましい。別の態様において、コネキシンタンパク質は、コネキシン26、30、31.1、32、36、37、40、または45である。他の態様において、コネキシンタンパク質は、コネキシン30.3、31、40.1、または46.6である。
別個のコネキシンタンパク質を標的とするポリヌクレオチドを組み合わせて用いることもまた意図される(例えば、1種、2種、3種、4種以上の異なるコネキシンを標的とすることができる)。例えば、コネキシン43を標的とするポリヌクレオチドと、コネキシンファミリーの1つまたは複数の他のメンバー(コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、45、および46.6など)とを標的とするポリヌクレオチドを、組み合わせて用いることができる。
代替的に、アンチセンスポリヌクレオチドは、複数種のコネキシンタンパク質に対するポリヌクレオチドを含みうる組成物の一部でもありうる。ポリヌクレオチドが対象とするコネキシンタンパク質の1つは、コネキシン43であることが好ましい。オリゴデオキシヌクレオチドが対象とする他のコネキシンタンパク質は、例えば、コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、45、および46.6を含みうる。各種のコネキシンを対象とするのに適する例示的なポリヌクレオチド(およびODN)を、表1に示す。
個々のアンチセンスポリヌクレオチドは、特定のコネキシンに特異的な場合もあり、1種、2種、3種以上の異なるコネキシンを標的とする場合もある。特異的なポリヌクレオチドが一般に、コネキシン間において保存されないコネキシン遺伝子またはコネキシンmRNA内の配列を標的とする一方、非特異的なポリヌクレオチドは、各種コネキシンの保存的配列を標的とする。
本発明で用いられるポリヌクレオチドは、非改変のホスホジエステルオリゴマーでありうるのが好都合である。このようなオリゴデオキシヌクレオチドは、長さが変わりうる。30マーのポリヌクレオチドが特に適することが分かっている。
本発明の多くの態様は、オリゴデオキシヌクレオチドに関して説明される。しかし、これらの態様では、他の適切なポリヌクレオチド(RNAポリヌクレオチドなど)も用いうることが理解される。
アンチセンスポリヌクレオチドは、化学修飾することができる。これにより、ヌクレアーゼに対するこれらの耐性を増強することができ、これらが細胞内に入る能力を増強することができる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いることができる。他のデオキシヌクレオチド類似体は、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホロジチオエート、N3’P5’−ホスホルアミデート、ならびにオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエートおよびそれらの2’−O−アルキル類似体、ならびに2’−O−メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートを含む。代替的に、混合骨格オリゴヌクレオチド(「MBO」)も用いることができる。MBOは、ホスホチオエートオリゴデオキシヌクレオチドのセグメントと、改変されたオリゴデオキシヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドの適切に配置されたセグメントとを含有する。MBOは、ホスホロチオエート結合のセグメントと、非イオン性で、ヌクレアーゼまたは2’−O−アルキルオリゴリボヌクレオチドに対して極めて耐性なメチルホスホネートなどの、他の改変オリゴヌクレオチドの他のセグメントとを有する。改変骨格オリゴヌクレオチドおよび混合骨格オリゴヌクレオチドを調製する方法は、当技術分野において公知である。
本発明で用いられるアンチセンスポリヌクレオチドの正確な配列は、標的のコネキシンタンパク質に依存する。一実施形態において、適切なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチドは、表1に記載される以下の配列から選択されるオリゴデオキシヌクレオチドなどのポリヌクレオチドを含みうる。
本明細書に記載の、ポリヌクレオチドの組合せ組成物の調製に適するポリヌクレオチドは、例えば、上記の表1に記載したコネキシンCx43に対するポリヌクレオチドと、コネキシン26、30、31.1、32、および37に対するポリヌクレオチドとを含む。
本発明において用いられるアンチセンスポリヌクレオチドの正確な配列は、標的のコネキシンタンパク質に依存するが、コネキシン43の場合、以下の配列:
GTA ATT GCG GCA AGA AGA ATT GTT TCT GTC(配列番号1);
GTA ATT GCG GCA GGA GGA ATT GTT TCT GTC(配列番号2);および
GGC AAG AGA CAC CAA AGA CAC TAC CAG CAT(配列番号3)
を有するアンチセンスポリヌクレオチドが特に適することが分かっている。
例えば、コネキシン26、31.1、および32に適するアンチセンスポリヌクレオチドは、以下の配列:
5’ TCC TGA GCA ATA CCT AAC GAA CAA ATA(コネキシン26)(配列番号4);
5’ CGT CCG AGC CCA GAA AGA TGA GGT C(コネキシン31.1)(配列番号9);および
5’ TTT CTT TTC TAT GTG CTG TTG GTG A(コネキシン32)(配列番号12)
を有する。
本発明の方法により有用な他のコネキシンアンチセンスポリヌクレオチド配列は、
5’ CAT CTC CTT GGT GCT CAA CC 3’(コネキシン37)(配列番号5);
5’ CTG AAG TCG ACT TGG CTT GG 3’(コネキシン37)(配列番号6);
5’ CTC AGA TAG TGG CCA GAA TGC 3’(コネキシン30)(配列番号7);
5’ TTG TCC AGG TGA CTC CAA GG 3’(コネキシン30)(配列番号8);
5’ AGA GGC GCA CGT GAG ACA C 3’(コネキシン31.1)(配列番号10);および
5’ TGA AGA CAA TGA AGA TGT T 3’(コネキシン31.1)(配列番号11)
を含む。
コネキシンタンパク質を対象とする、ODNを含むポリヌクレオチドは、任意の簡便な従来の手法により、それらのヌクレオチド配列に関して選択することができる。例えば、コンピュータプログラムであるMacVectorおよびOligoTech(Oligosなど、Eugene、Oregon、USA製)を用いることができる。選択されると、DNA合成器を用いてODNを合成することができる。
ポリヌクレオチドの相同体
本明細書では、相同性および相同体(例えば、ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNA中の配列に対する相補体の相同体でありうる)について論じる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、(相同配列の)少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約100以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって、対象の配列と少なくとも約70%の相同性、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の相同性を有することが典型的である。
相同性は、当技術分野における任意の方法に基づいて計算することができる。例えば、UWGCGパッケージでは、相同性を計算するのに用いうるBESTFITプログラム(例えば、そのデフォルト設定で用いられる)が提供される(Devereuxら(1984年)、Nucleic Acids Research、第12巻、387〜395頁)。PILEUPアルゴリズムおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F.(1993年)、J Mol Evol、第36巻、290〜300頁; Altschul, S, Fら(1990年)、J Mol Biol、第215巻、403〜10頁において説明される通り、相同性を計算するか、または配列を整列するのに用いることができる(それらのデフォルト設定における場合が典型的である)。
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により公に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中における同じ長さのワードにより整列する場合、ある正の値の閾値スコアTにマッチするかまたはこれを満たすクエリー配列中における長さWの短いワードを同定することによる、高スコアリング配列対(HSP)の同定を伴う。Tを、近傍ワードスコア閾値(Altschulら、前出)と称する。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含有するHSPを見出す検索を開始するためのシード(seed)として作用する。ワードヒットは、累積のアライメントスコアが増大しうる限りにおいて、各配列に沿って両方向に延長される。各方向におけるワードヒットの延長は、累積アライメントスコアが、達成されたその最大値から量Xだけ低下する場合;累積スコアが、1つまたは複数の負のスコアの残基アライメントの累積により、ゼロ以下に低下する場合;またはいずれかの配列の端部に到達する場合に停止される。
BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXにより、アラインメントの感度および速度が決定される。BLASTプログラムでは、ワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、10915〜10919頁を参照されたい)によるアライメント(B=50)、期待値(E=10)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較が、デフォルトとして用いられる。
BLASTアルゴリズムでは、2つの配列間における類似性に対する統計学的解析が実施される。例えば、KarlinおよびAltschul(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、5873〜5787頁を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間におけるマッチが偶然に生じる確率を示す、最小合計確率(P(N))である。例えば、第2の配列に対して第1の配列を比較した場合の最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、また最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列は別の配列に対して類似すると考えられる。
相同配列は、少なくとも約2、5、10、15、20以上(または約2、5、10、15、20以下)の変異(置換、欠失、または挿入でありうる)により対象配列と異なることが典型的である。これらの変異は、相同性の計算との関連で、上述の領域のいずれかにわたって測定することができる。
相同配列は、バックグラウンドを有意に上回るレベルで、元の配列に選択的にハイブリダイズすることが典型的である。選択的なハイブリダイゼーションは、中程度〜高度に厳密な条件(例えば、約50℃〜約60℃における0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)を用いて達成することが典型的である。しかし、このようなハイブリダイゼーションは、当技術分野において公知の任意の適切な条件下で実施することができる(Sambrookら(1989年)、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」を参照されたい)。例えば、高い厳密性が必要とされる場合、適切な条件は60℃における0.2×SSCを含む。より低い厳密性が必要とされる場合、適切な条件は60℃における2×SSCを含む。
ペプチドおよびポリペプチドによる抗コネキシン剤/PDGF受容体遮断剤−アンタゴニスト/抗オステオポンチン剤
ペプチド、ペプチド模倣剤、抗体、抗体フラグメントなどを含む結合タンパク質もまた、ギャップジャンクションおよびヘミチャネルに適する調節剤である。それらはまた、適切なPDGF受容体遮断剤またはアンタゴニストである。それらはまた、適切な抗オステオポンチン剤である。
結合タンパク質は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFvフラグメント;単鎖抗体;単鎖Fv;また例えば、特定の抗体または他の結合分子と接触する抗原決定基(すなわち、一般にエピトープと称する分子の部分)に結合可能な結合ドメイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、組換え抗体、ならびに抗体フラグメントを含む単鎖結合分子などの単鎖結合分子を含む)を含む。抗体、抗体フラグメントなどを含むこれらの結合タンパク質は、キメラの場合もあり、ヒト化される場合もあり、他の形でこれらが投与される対象においてより低い免疫原性に作製する場合もあり、また、合成する場合もあり、組換えにより作製する場合もあり、発現ライブラリー内において作製する場合もある。本明細書で言及され、かつ/または当技術分野においてより詳細に説明される結合分子など、当技術分野において公知であるかまたは将来的に発見される任意の結合分子が想定される。例えば、結合タンパク質は、抗体などだけではなく、リガンド、受容体、ペプチド模倣剤、または標的(例えば、コネキシン、ヘミチャネル、または関連する分子)に結合する他の結合フラグメントもしくは他の結合分子(例えば、ファージディスプレイにより作製される)も含む。
結合分子は一般に、結合特異性を含むがこれに限定されない所望の特異性、および所望の親和性を有する。親和性は、例えば、約104M−1以上、約106M−1以上、約107M−1以上、約108M−1のKaでありうる。約109M−1以上、約1010M−1以上、約1011M−1以上、および約1012M−1以上の親和性など、約108M−1をさらに超える親和性が適する。本発明による結合タンパク質の親和性は、従来の技法、例えば、Scatchardら、1949年、Ann. N.Y. Acad. Sci.、第51巻、660頁により説明される技法を用いて容易に決定することができる。
ヒドロパシープロットから得られるデータを用いることにより、コネキシンは、4つの膜貫通領域および2つの短い細胞外ループを含有すると仮定されている。コネキシンの第1および第2の細胞外領域の配置は、分離されたギャップジャンクション上における対応するエピトープの免疫学的局在決定に用いられる抗ペプチド抗体の作製報告によりさらに特徴づけられた(Goodenough D.A.、J Cell Biol、第107巻、1817〜1824頁(1988年); Meyer R.A.、J Cell Biol、第119巻、179〜189頁(1992年))。
隣接する2つの細胞が寄与するヘミチャネルの細胞外ドメインが互いに「結合(dock)」して、完全なギャップジャンクションチャネルが形成される。これらの細胞外ドメインの相互作用に干渉する試薬は、細胞間情報伝達を損なうことが可能である。ギャップジャンクションおよびヘミチャネルに対するペプチド阻害剤が報告されている。例えば、Berthoud, V.M.ら、Am J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol.、第279巻、L619〜L622頁(2000年); Evans, W.H.およびBoitano, S.、Biochem. Soc. Trans.、第29巻、606〜612頁;ならびにDe Vriese A.S.ら、Kidney Int.、第61巻、177〜185頁(2001年)を参照されたい。コネキシンの細胞外ループ内の配列に対応する短いペプチドが、細胞間情報伝達を阻害すると言われた(Boitano S.およびEvans W.、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、第279巻、L623〜L630頁(2000年))。Xenopusの卵母細胞対において発現されるコネキシン(Cx)32によりもたらされる細胞間チャネル形成に対する阻害剤としてのペプチドの使用もまた報告されている(Dahl Gら、Biophys J、第67巻、1816〜1822頁(1994年))。Berthoud, V.M.およびSeul, K.H.によりこれらの結果の一部がまとめられた(Am J., Physiol. Lung Cell Mol. Physiol.、第279巻、L619〜L622頁(2000年))。
抗コネキシン剤は、コネキシン(例えば、コネキシン45、43、26、30、31.1、および37)の膜貫通領域(例えば、第1〜第4)に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。抗コネキシン剤は、コネキシン45の膜貫通ドメインの一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含みうる。抗コネキシン剤は、配列番号13の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号13の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号13の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の実施形態は、配列番号13の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドである抗コネキシン剤を対象とする。本明細書で提供される一部の抗コネキシン剤では、配列番号13の位置46〜75および199〜228にあるアミノ酸に対応するコネキシン45の細胞外ドメインを用いて、特定のペプチド配列を開発することができる。本明細書に記載の一部のペプチドは、配列番号13の位置46〜75および199〜228にある領域に対応するアミノ酸配列を有する。ペプチドは、配列番号13のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置46〜75および199〜228に対応しない配列番号13の部分)も標的としうる。
また、適切な抗コネキシン剤は、コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドも含む。抗コネキシン剤は、配列番号14の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号14の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号14の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の抗コネキシン剤は、配列番号14の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の抗コネキシン剤は、配列番号14の位置37〜76および178〜208にあるアミノ酸に対応するコネキシン43の細胞外ドメインを含む。抗コネキシン剤は、配列番号14の位置37〜76および178〜208にある領域に対応するアミノ酸配列を有する、本明細書に記載のペプチドを含む。ペプチドは、配列番号14のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置37〜76および178〜208に対応しない配列番号14の部分)も標的としうる。
抗コネキシンペプチドおよび抗PDGF受容体ペプチドは、ペプチドが機能的に活性な抗コネキシン剤またはPDGF剤であるような保存的アミノ酸置換を伴う、コネキシンの細胞外ドメインまたはPDGF受容体の一部に対応する配列を含みうる。例示的な保存的アミノ酸置換は、例えば、別の非極性アミノ酸による非極性アミノ酸の置換、別の芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換、別の脂肪族アミノ酸による脂肪族アミノ酸の置換、別の極性アミノ酸による極性アミノ酸の置換、別の酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換、別の塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換、および別のイオン性アミノ酸によるイオン性アミノ酸の置換を含む。
コネキシン43を標的とする例示的なペプチドを、以下の表2に示す。M1、M2、M3、およびM4は、それぞれ、コネキシン43タンパク質の第1〜第4の膜貫通領域を指す。E1およびE2は、それぞれ、第1および第2の細胞外ループを指す。
表3は、ヘミチャネル機能またはギャップジャンクション機能を阻害するのに用いられる、さらなる例示的なコネキシンペプチドについて記載する。他の実施形態では、ペプチドまたはこれらのフラグメントに対して保存的なアミノ酸変化が作製される。
表4は、本明細書に記載の使用に供するペプチド阻害剤を開発するのに用いられるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ループについて記載する。表4に記載されるペプチドおよびこれらのフラグメントは、一部の非限定的な実施形態においてペプチド阻害剤として用いられる。他の非限定的な実施形態では、この表4中のペプチドの約8〜約15、または約11〜約13の連続アミノ酸を含むペプチドが、ペプチド阻害剤である。ペプチドまたはこれらのフラグメントには、保存的なアミノ酸変化を作製することができる。
表5は、ペプチドによる抗コネキシン剤を開発するのに用いうるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ドメインについて記載する。表5に記載されるペプチドおよびこれらのフラグメントもまた、ペプチドによる抗コネキシン剤として用いることができる。このようなペプチドは、この表5中のペプチド配列の約8〜約15、または約11〜約13の連続アミノ酸を含みうる。ペプチドまたはこれらのフラグメントには、保存的なアミノ酸変化を作製することができる。
表6は、コネキシン40の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示されるコネキシン40に対するペプチド阻害剤について記載する。太字のアミノ酸は、コネキシン40の膜貫通領域を対象とする。
表7は、コネキシン45の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示されるコネキシン45に対するペプチド阻害剤について記載する。太字のアミノ酸は、コネキシン45の膜貫通領域を対象とする。
一部の実施形態では、一部のペプチド阻害剤が、既存のギャップジャンクションを破壊することなく、ヘミチャネルを遮断することが好ましい。特定の理論または機構のいかなるものにも拘束されることを望まないが、一部のペプチド模倣剤(例えば、VCYDKSFPISHVR(配列番号23))はまた、ギャップジャンクションの結合解除を引き起こすことなくヘミチャネルを遮断する(Leybeartら、Cell Commun. Adhes.、第10巻、251〜257頁(2003年)を参照されたい)か、または低用量でヘミチャネルを遮断するとも考えられている。例えば、ギャップジャンクションの結合解除を伴わずにヘミチャネルを遮断するには、ペプチドSRPTEKTIFII(配列番号19)もまた用いることができる。ペプチドSRGGEKNVFIV(配列番号107)は、対照配列として用いることができる(DeVrieseら、Kidney Internat.、第61巻、177〜185頁(2002年))。コネキシン45に対するペプチド阻害剤の例は、YVCSRLPCHP(配列番号108)、QVHPFYVCSRL(配列番号109)、FEVGFLIGQYFLY(配列番号110)、GQYFLYGFQVHP(配列番号111)、GFQVHPFYVCSR(配列番号112)、AVGGESIYYDEQ(配列番号113)、YDEQSKFVCNTE(配列番号114)、NTEQPGCENVCY(配列番号115)、CYDAFAPLSHVR(配列番号116)、FAPLSHVRFWVF(配列番号117)およびLIGQY(配列番号118)、QVHPF(配列番号119)、YVCSR(配列番号120)、SRLPC(配列番号121)、LPCHP(配列番号122)およびGESIY(配列番号123)、YDEQSK(配列番号124)、SKFVCN(配列番号125)、TEQPGCEN(配列番号126)、VCYDAFAP(配列番号127)、LSHVRFWVFQ(配列番号128)である。ペプチドは、SRL、PCH、LCP、CHP、IYY、SKF、QPC、VCY、APL、HVRを含む3アミノ酸長だけの場合もあり、例えば、LIQYFLYGFQVHPF(配列番号129)、VHPFYCSRLPCHP(配列番号130)、VGGESIYYDEQSKFVCNTEQPG(配列番号131)、TEQPGCENVCYDAFAPLSHVRF(配列番号132)、AFAPLSHVRFWVFQ(配列番号133)など、より長い場合もある。
ギャップジャンクション調節剤
本明細書に記載の一部の抗コネキシン剤は、細胞内へ、また細胞からの分子の輸送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす(例えば、遮断するかまたは阻害する)ことが可能である。したがって、本明細書に記載の一部のギャップジャンクション調節剤は、細胞情報伝達(例えば、細胞間)を調節する。一部のギャップジャンクション調節剤は、細胞の細胞質とペリプラズム腔または細胞外腔との間における分子の伝達を調節するかまたはこれに影響を及ぼす。このような薬剤は一般に、細胞の細胞質と細胞外腔または細胞外組織との間における小分子の交換に独立して関与しうるヘミチャネル(コネキシンとも呼ばれる)を標的とする。したがって、本明細書で提供される化合物は、細胞間(ギャップジャンクションを介する)または細胞と細胞外腔もしくは細胞外組織との間(ヘミチャネルを介する)における結合を直接的または間接的に低下させることが可能であり、細胞から細胞外腔内への分子の輸送の調節は、本発明の一部の化合物および実施形態の範囲内にある。
本発明の実施形態では、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルを介する分子の通過(例えば、輸送)に対する所望の阻害を誘発することが可能な任意の分子を用いることができる。ギャップジャンクションまたはヘミチャネルを介する分子の通過を調節する化合物はまた、特定の実施形態(例えば、細胞の細胞質から細胞外腔内への分子の通過を調節する実施形態)においても提供される。このような化合物は、ギャップジャンクションの結合解除を伴う場合であれ、伴わない場合であれ、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルを介する分子の通過を調節しうる。このような化合物は、例えば、全体的または部分的にギャップジャンクションまたはヘミチャネルの機能または活性を遮断しうる、例えば、結合タンパク質、ポリペプチド、および他の有機化合物を含む。
本明細書で用いられる「ギャップジャンクション調節剤」とは、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性、機能、または形成を全体的または部分的に防止するか、低下させるか、または調節するこれらの薬剤または化合物を広く含みうる。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの機能を、全体的または部分的に防止するかまたは低下させる。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する。他の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを、全体的または部分的に遮断する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの開口を、全体的または部分的に低下させるかまたは防止する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤によるギャップジャンクションまたはヘミチャネルの前記遮断または閉鎖は、細胞外腔またはペリプラズム腔への開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、また細胞外腔またはペリプラズム腔からの開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、細胞外ヘミチャネル情報伝達を低下させることも可能であり、これを阻害することも可能である。ヘミチャネルおよび/またはギャップジャンクションの開口を遮断するペプチド模倣剤およびギャップジャンクションリン酸化化合物が現在好ましい。
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性または機能を防止するか、低下させるか、または変化させる。本明細書で用いられるギャップジャンクションの活性または機能の調節は、ギャップジャンクションの閉鎖、ヘミチャネルの閉鎖、ならびに/またはギャップジャンクションおよび/もしくはヘミチャネルを介する分子もしくはイオンの通過を含みうる。
例示的なギャップジャンクション調節剤は、限定なしに述べると、ポリペプチド(例えば、ペプチド模倣剤、抗体、これらの結合フラグメント、および合成構築物)、および他のギャップジャンクション遮断剤、およびギャップジャンクションタンパク質リン酸化剤を含みうる。ギャップジャンクションを閉鎖するのに用いられる例示的な化合物(例えば、コネキシン43のチロシン残基をリン酸化する)は、Jensenらへの米国特許第7,153,822号、米国特許第7,250,397号、および分類された(assorted)特許公報において報告されている。例示的なペプチドおよびペプチド模倣剤は、Greenら、WO2006134494において報告されている。また、Gourdieら、WO2006069181;およびTudorら、WO2003032964も参照されたい。
本明細書で用いられる「ギャップジャンクションリン酸化剤」は、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルの閉鎖を誘導するために、コネキシンのアミノ酸残基上においてリン酸化を誘導することが可能な薬剤または化合物を含みうる。ギャップジャンクション調節のための例示的なリン酸化部位は、コネキシンタンパク質上における1つもしくは複数のチロシン残基、セリン残基、またはトレオニン残基を含む。一部の実施形態において、リン酸化の調節は、1または複数のコネキシンタンパク質上における1つまたは複数の残基上において生じうる。例示的なギャップジャンクションリン酸化剤は当技術分野において周知であり、例えば、c−Srcチロシンキナーゼまたは他のGタンパク質共役受容体アゴニストを含みうる。Giepmans B(2001年)、J. Biol. Chem.、第276巻、第11号、8544〜8549頁を参照されたい。一実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ヘミチャネルの閉鎖によって、ヘミチャネルの機能に影響を及ぼす。別の実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ギャップジャンクションの閉鎖によって、ギャップジャンクションの機能に影響を及ぼす。コネキシン43ギャップジャンクションおよびコネキシン43ヘミチャネルの閉鎖を標的とするギャップジャンクションリン酸化剤が好ましい。
結合タンパク質(例えば、抗体、抗体フラグメントなど)、ペプチド、ペプチド模倣剤、およびペプチド模倣剤を含むポリペプチド化合物が、適切なギャップジャンクション調節剤である。
結合タンパク質は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFvフラグメント;単鎖抗体;単鎖Fv;また例えば、特定の抗体または他の結合分子と接触する抗原決定基(すなわち、一般にエピトープと称する分子の部分)に結合可能な結合ドメイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、組換え抗体、ならびに抗体フラグメントを含む単鎖結合分子などの単鎖結合分子を含む)を含む。抗体、抗体フラグメントなどを含むこれらの結合タンパク質は、キメラの場合もあり、ヒト化される場合もあり、他の形でこれらが投与される対象においてより低い免疫原性であるよう作製する場合もあり、また、合成する場合もあり、組換えにより作製する場合もあり、発現ライブラリー内において作製する場合もある。本明細書で言及され、かつ/または当技術分野においてより詳細に説明される結合タンパク質などの、当技術分野において公知であるかまたは将来的に発見される任意の結合タンパク質が想定される。例えば、結合タンパク質は、抗体などだけではなく、リガンド、受容体、ペプチド模倣剤、または標的(例えば、コネキシン、コネクソン、ギャップジャンクション、または関連する分子)に結合する他の結合フラグメントもしくは分子(例えば、ファージディスプレイにより作製される)も含む。
結合タンパク質は一般に、結合特異性を含むがこれに限定されない所望の特異性、および所望の親和性を有する。親和性は、例えば、約104M−1以上、約106M−1以上、約107M−1以上、約108M−1以上のKaでありうる。約109M−1以上、約1010M−1以上、約1011M−1以上、および約1012M−1以上の親和性など、約108M−1をさらに超える親和性が適する。本発明による結合タンパク質の親和性は、従来の技法、例えば、Scatchardら(1949年)、Ann. N.Y. Acad. Sci.、第51巻、660頁により説明される技法を用いて容易に決定することができる。
本発明は、ギャップジャンクションおよびヘミチャネルを調節するペプチド(1および複数のペプチド模倣剤を含む)の使用を含む。ヒドロパシープロットから得られるデータを用いることにより、コネキシンは、4つの膜貫通領域および2つの短い細胞外ループを含有すると仮定されている。コネキシンの第1および第2の細胞外領域の配置は、分離されたギャップジャンクション上における対応するエピトープの免疫学的局在決定に用いられる抗ペプチド抗体の作製報告によりさらに特徴づけられた(Goodenough D.A.(1988年)、J Cell Biol、第107巻、1817〜1824頁; Meyer R.A.(1992年)、J Cell Biol、第119巻、179〜189頁)。
ペプチドまたはこれらの変異体は、例えば、固相ペプチド合成法によっても、酵素触媒ペプチド合成によっても、組換えDNA法を援用しても、in vitroで合成することができる。固相ペプチド合成法は確立されて広く用いられている方法であり、以下:Stewartら(1969年)、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W. H. Freeman Co.、San Francisco; Merrifield(1963年)、J. Am. Chem. Soc.、第85巻、2149頁; Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、C.H. Li編、第2巻(Academic Press、1973年)、48〜267頁; ならびにBavaayおよびMerrifield、「The Peptides」、E. GrossおよびF. Meienhofer編、第2巻(Academic Press、1980年)、3〜285頁などの参考文献中において説明されている。これらのペプチドは、免疫親和性カラムまたはイオン交換カラム上における分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEなどの陰イオン交換樹脂上におけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G−75を用いるゲル濾過;リガンド親和性クロマトグラフィー;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒の混合物からの結晶化もしくは沈殿によりさらに精製することができる。結晶化または沈殿による精製が好ましい。
隣接する2つの細胞が寄与するヘミチャネルの細胞外ドメインが互いに「結合」して、完全なギャップジャンクションチャネルが形成される。これらの細胞外ドメインの相互作用に干渉する試薬は、細胞間情報伝達を損なうかまたは細胞外環境に対するヘミチャネルの開口を損なうことが可能である。
ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン(例えば、コネキシン45、43、26、30、31.1、および37)の膜貫通領域(例えば、第1〜第4)に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含むギャップジャンクション調節剤が、本発明における使用に好ましい。
ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン45の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含みうる。ギャップジャンクション調節剤は、配列番号13の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号13の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号13の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の実施形態は、配列番号13の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドであるギャップジャンクション調節化合物を対象とする。本明細書で提供される一部のギャップジャンクション調節剤では、配列番号13の位置46〜75および199〜228にあるアミノ酸に対応するコネキシン45の細胞外ドメインを用いて、特定のペプチド配列を開発することができる。本明細書に記載の一部のペプチドは、配列番号13の位置46〜75および199〜228にある領域に対応するアミノ酸配列を有する。ペプチドは、配列番号13のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置46〜75および199〜228に対応しない配列番号13の部分)も標的としうる。
また、適切なギャップジャンクション調節剤は、コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドも含みうる。ギャップジャンクション調節剤は、配列番号14の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号14の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号14の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他のギャップジャンクション調節剤は、配列番号14の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他のギャップジャンクション調節剤は、配列番号14の位置37〜76および178〜208にあるアミノ酸に対応するコネキシン43の細胞外ドメインを含む。ギャップジャンクション調節剤は、配列番号14の位置37〜76および178〜208にある領域に対応するアミノ酸配列を有する、本明細書に記載のペプチドを含む。ペプチドは、配列番号14のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置37〜76および178〜208に対応しない配列番号14の部分)も標的としうる。
さらに他の抗コネキシン剤は、コネキシンカルボキシ末端ポリペプチドを含む。Gourdieら、WO2006/069181を参照されたい。
ギャップジャンクション改変剤:他の抗コネキシン剤
ギャップジャンクション調節剤は、ギャップジャンクションおよび/またはヘミチャネルを閉鎖もしくは遮断するか、またはギャップジャンクションを介する細胞間情報伝達を別の形で防止するかもしくは低下させるか、またはヘミチャネルを介する細胞外環境への細胞の情報伝達を別の形で防止するかもしくは低下させる薬剤を含む。これらは、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性、機能、または形成を、全体的または部分的に防止するか、低下させるか、または阻害する薬剤または化合物を含む。
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する。他の実施形態において、ギャップジャンクション改変剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを、全体的または部分的に遮断する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション改変剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの開口を、全体的または部分的に低下させるかまたは防止する。
一部の実施形態において、ギャップジャンクション改変剤によるギャップジャンクションまたはヘミチャネルの前記遮断または閉鎖は、細胞外腔またはペリプラズム腔への開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、、また細胞外腔またはペリプラズム腔からの開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、細胞外ヘミチャネル情報伝達を低下させることも可能であり、これを阻害することも可能である。
ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを閉鎖するのに用いられるギャップジャンクション改変剤(例えば、コネキシン43のチロシン残基をリン酸化する)は、Jensenらへの米国特許第7,153,822号、米国特許第7,250,397号、および分類された特許公報において報告されている。例えば、ZO−1タンパク質の結合を阻害すると言われるコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドに関しては、Gourdieら、WO2006069181もまた参照されたい。Gourdieら、WO2006069181は、このようなペプチドを含む製剤の使用について説明している。
本明細書で用いられる「ギャップジャンクションリン酸化剤」は、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルの閉鎖を誘導するために、コネキシンのアミノ酸残基上においてリン酸化を誘導することが可能な薬剤または化合物を含みうる。例示的なリン酸化部位は、コネキシンタンパク質上における1つもしくは複数のチロシン残基、セリン残基、またはトレオニン残基を含む。一部の実施形態において、リン酸化の調節は、1または複数のコネキシンタンパク質上における1つまたは複数の残基上において生じうる。例示的なギャップジャンクションリン酸化剤は当技術分野において周知であり、例えば、c−Srcチロシンキナーゼまたは他のGタンパク質共役受容体アゴニストを含みうる。Giepmans B, J. Biol. Chem.、第276巻、第11号、8544〜8549頁、2001年3月16日を参照されたい。一実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ヘミチャネルの閉鎖によって、ヘミチャネルの機能に影響を及ぼす。別の実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ギャップジャンクションの閉鎖によって、ギャップジャンクションの機能に影響を及ぼす。コネキシン43ギャップジャンクションおよびコネキシン43ヘミチャネルの閉鎖を標的とするギャップジャンクションリン酸化剤が好ましい。
さらに他の抗コネキシン剤は、コネキシンカルボキシ末端ポリペプチドを含む。Gourdieら、WO2006/069181を参照されたい。
ある別の態様において、ギャップジャンクション改変剤は、例えば、脂肪族アルコール;オクタノール;ヘプタノール;麻酔剤(例えば、ハロタン)、エトレン、フルオタン、プロポフォール、およびチオペンタール;アナンダミド;アリールアミノベンゾアート(FFA:親油性であるフルフェナム酸および類似の誘導体);カルベンオキソロン;カルコン(2’,5’−ジヒドロキシカルコン);CHF(クロロヒドロキシフラノン);CMCF(3−クロロ−4−(クロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン);デキサメタゾン;ドキソルビシン(および他のアントラキノン誘導体);エイコサノイドであるトロンボキサンA(2)(TXA(2))模倣剤;NO(一酸化窒素);脂肪酸(例えば、アラキドン酸、オレイン酸、およびリポキシゲナーゼ代謝物);フェナム酸(フルフェナム酸(FFA)、ニフルミン酸(NFA)、およびメクロフェナム酸(MFA));ゲニステイン;グリチルレチン酸(GA):18a−グリチルレチン酸および18−β−グリチルレチン酸、ならびにこれらの誘導体;リンダン;リゾホスファチジン酸;メフロキン;メナジオン;2−メチル−1,4−ナフトキノン、ビタミンK(3);ナフェノピン;オカダ酸;オレアミド;オレイン酸;PH、細胞内酸性化によるゲーティング、例えば、酸性化剤;多価不飽和脂肪酸;脂肪酸GJIC阻害剤(例えば、オレイン酸およびアラキドン酸);キニジン;キニーネ;全 トランス−レチノイン酸;およびタモキシフェンを含みうる。
抗オステオポンチン剤
本出願で用いられる抗オステオポンチン剤は、オステオポンチン発現の下方調節(例えば、mRNAの転写または翻訳の下方調節による)をもたらすか、または他の形でオステオポンチンタンパク質の活性を低下させるかもしくは阻害する。
抗オステオポンチン剤には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFvフラグメント;単鎖抗体;単鎖Fv;また例えば、特定の抗体または他の結合分子と接触する抗原決定基(すなわち、エピトープ)に結合可能な結合ドメイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、組み換え抗体、ならびに抗体フラグメントを含む単鎖結合分子などの単鎖結合分子を含めた)などの抗オステオポンチン結合ペプチドおよび抗オステオポンチン結合タンパク質が含まれる。
抗オステオポンチン剤には、例えば、抗オステオポンチンデオキシリボザイムまたは抗オステオポンチンアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドなどの抗オステオポンチンポリヌクレオチドが含まれる。一実施形態において、抗オステオポンチン剤は、抗オステオポンチンデオキシリボザイムである。例示的なデオキシリボザイム(Dz)は、表9に記載されている。小文字は結合アームを表わし、大文字は触媒コア部位(GGCTAGCTACAACGA)(配列番号136)を示す。
別の実施形態において、抗オステオポンチン剤は、ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドである。例示的なアンチセンス(AS)オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、表10に記載されている。
剤形および製剤ならびに投与
治療有効量の本発明の各薬剤は、同時投与、個別投与、または逐次投与が、しかも任意の順序で可能である。薬剤は、個別投与される場合もあり、固定の組合せとして投与される場合もある。固定の組合せとして投与されない場合、好ましい方法には、単独の、または1または複数の抗コネキシン剤(例えば、抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチド、または抗コネキシンペプチド模倣剤)と組み合わせた1または複数の抗オステオポンチン剤の逐次投与が含まれる。
抗オステオポンチン剤および抗コネキシン剤が組み合わせて投与される場合、物理的にまたは創傷の治療の過程において、1または複数の薬剤が単独で投与される場合、すなわち、それらが組み合わせて投与されない場合に用いられる量または用量よりも少ない量または用量でそれらの一方または両方が供給される。投与される薬剤のこのような低量は、単独で投与される場合の該薬剤の1つの量または複数の量の約20分の1〜約10分の1であることが典型的であり、単独で投与される場合の量の約8分の1、単独で投与される場合の量の約6分の1、単独で投与される場合の量の約5分の1、単独で投与される場合の量の約4分の1、単独で投与される場合の量の約3分の1、および単独で投与される場合の量の約2分の1であってよい。薬剤は、互いから少なくとも約30分以内に逐次投与されることが好ましい。薬剤はまた、互いから約1時間以内に投与することもでき、互いから約1日〜約1週間以内に投与することもでき、適切であるとみなされる他の形で投与することもできる。抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、例えば、ヘミチャネルの開口を遮断するかまたは低下させうる抗コネキシン剤は、例えば、コネキシンタンパク質発現の下方調節により、コネキシン発現またはヘミチャネルの形成もしくはギャップジャンクションの形成を遮断するかまたは低下させる抗コネキシン剤の投与よりも前に投与されることが好ましい。1または複数の抗コネキシン剤は、(1または複数の)抗コネキシン43剤であることが好ましい。
本発明の薬剤は、本明細書で言及される疾患または状態のいずれかを有する対象など、治療を必要とする対象に投与することができる。こうして、対象の状態を改善することができる。したがって、抗オステオポンチン剤および抗コネキシン剤は、治療による対象の身体の処置に用いることができる。これらは、本明細書で言及される状態のいずれかを治療する薬剤の製造において用いることができる。したがって、本発明により、細胞間情報伝達を一過性の様式および部位特異的な様式で下方調節しうる製剤が提供される。
抗オステオポンチン剤および抗コネキシン剤は、実質的に単離形態で存在しうる。生成物は、生成物の意図される目的に干渉しない担体または希釈剤と混合することができ、これをなおも実質的に単離状態にあるとみなしうることが理解される。本発明の生成物はまた、実質的に精製形態の場合もあり、この場合、生成物は一般に、ポリヌクレオチド(または他の抗コネキシン剤)の、または調製物の乾燥質量の、約80%、85%、または90%、例えば、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含む。
意図される投与の経路に応じて、本発明の医薬品、医薬組成物、組合せ調製物、および薬剤は、例えば、溶液、懸濁液、点滴、軟膏剤(salves)、クリーム、ゲル、泡沫、軟膏(ointment)、エマルジョン、ローション、ペイント、持続放出製剤、または粉末の形態をとる可能性があり、(1または複数の)有効成分の約0.1%〜95%を含有することが典型的であり、(1または複数の)有効成分の約0.2%〜70%を含有することが好ましい。他の適切な製剤は、プロニックゲルベースの製剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(hyroxypropylmethylcellulose)(HPMC)ベースの製剤を含む。プルロニックゲルを含む適切な製剤は、例えば、約10〜約15パーセント、適切には約12パーセントのプルロニックゲルを有する。他の有用な製剤は、徐放調製物または遅延放出調製物を含む。
ゲルまたはゼリーは、ゼラチン、トラガカント、またはセルロース誘導体を含むがこれらに限定されない適切なゲル化剤を用いて作製することができ、保湿剤、皮膚軟化剤、および防腐剤としてグリセロールを含みうる。軟膏は、脂肪基剤、蝋基剤、または合成基剤中に組み込まれた有効成分からなる半固体調製物である。適切なクリームの例は、油中水エマルジョンおよび水中油エマルジョンを含むがこれらに限定されない。油中水クリームは、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールによる乳化剤および乳化蝋と類似するがこれらに限定されない特性を有する適切な乳化剤を用いて調合することができる。水中油クリームは、セトマクロゴール乳化蝋などの乳化剤を用いて調合することができる。適切な特性は、エマルジョンの粘稠度を変化させる能力、および広範なpHにわたる物理および化学の両面における安定性を含む。水溶性または混和性のクリーム基剤は、防腐剤系を含有する場合があり、また、許容される生理学的なpHを維持するように緩衝化することもできる。
泡沫調製物は、不活性の噴霧剤を用いる適切なアプリケーターにより、加圧エアゾールキャニスターから送達するように調合することができる。泡沫基剤の製剤に適する賦形剤は、プロピレングリコール、乳化蝋、セチルアルコール、およびステアリン酸グリセリルを含むがこれらに限定されない。潜在的な防腐剤は、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む。
本発明の薬剤を薬学的に許容される担体または希釈剤と組合せて、医薬組成物を作製することが好ましい。適切な担体および希釈剤は、等張性の食塩液、例えば、リン酸塩緩衝化食塩液を含む。適切な希釈剤および賦形剤はまた、例えば、水、食塩液、デキストロース、グリセロールなど、およびこれらの組合せ物も含む。加えて、所望の場合、保湿剤または乳化剤、安定化剤またはph緩衝剤などの物質もまた存在しうる。
「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物を投与される個体に有害な抗体の生成をそれ自体では誘導せず、不適切な毒性なしに投与しうる任意の薬学的な担体を指す。適切な担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、およびアミノ酸コポリマーなどの大型でゆっくりと代謝される高分子でありうる。
例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩など、薬学的に許容される塩もまた存在しうる。
適切な担体物質は、局所投与用のクリーム、ローション、ゲル、エマルジョン、ローション、またはペイントのための基剤として一般に用いられる任意の担体またはビヒクルを含む。例は、乳化剤、炭化水素による基剤を含む不活性担体、乳化基剤、非毒性溶媒、または水溶性の基剤を含む。特に適切な例は、プルロニック、HPMC、CMC、および他のセルロース基剤の成分、ラノリン、硬質パラフィン、液体パラフィン、軟質黄色パラフィン、または軟質白色パラフィン、白色蜜蝋、黄色蜜蝋、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ジメチコーン、乳化蝋、ミリスチン酸イソプロピル、微晶質蝋、オレイルアルコール、およびステアリルアルコールを含む。
薬学的に許容される担体またはビヒクルは、ゲルであることが好ましく、非イオン性ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーゲル、例えば、プルロニックゲル、好ましくはPluronic F−127(BASF Corp.)であることが適切である。このゲルは、低温では液体であるが、生理学的温度では急速に固まり、これにより、薬剤の放出が適応部位またはその部位にすぐの近接部位に限定されるので特に好ましい。
カゼイン、ゼラチン、アルブミン、膠、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはポリビニルアルコールなどの補助剤もまた、本発明の製剤中に組み入れることができる。
他の適切な製剤は、プロニックゲル基剤の製剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)基剤の製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)基剤の製剤を含む。組成物は、局所投与、点滴投与、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、または経皮投与を含む、任意の所望の送達形態に応じて調合することができる。他の有用な製剤は、徐放調製物または遅延放出調製物を含む。
経皮送達は、例えば、1)化学的な浸透増強剤または皮膚浸透増強剤の使用;2)リポソームを介する送達;3)イオントフォレーシス;4)電気穿孔;5)ソノフォレーシス;6)機械(例えば、マイクロポレーション)デバイスを対象とする方法を含めた、当技術分野で公知であるかまたは将来的に発見される方法により実施することができる。本出願で開示される薬剤の経皮送達に適する例示的な方法には、例えば、既存の小孔を隔てた輸送速度を増大させることにより、または人工的な小孔の創出を介して透過可能な皮膚の小孔数を増大させることにより、皮膚の小孔を隔てた物質の輸送増強を対象とする方法が含まれうる。
経皮送達は、例えば、エミュー油、エトキシル化油を含めた、植物起源、堅果起源、合成起源、もしくは動物起源の薬学的に許容される油、PEG、リノレイン酸、エタノール、1−メタノール、および/または角質層を脱脂質化する薬剤を含めた、化学的浸透増強剤を用いて実施することができる。適切な油には、それらのすべてが場合によってエトキシル化されうるメドウフォーム油、ヒマシ油、ホホバ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ゴマ油、およびエミュー油が含まれる。例には、US7291591、US7201919、US7052715、US7033998、US6946144;US6951658、US6759056、US6720001、US6224853;US5695779;およびUS6750291に記載の油が含まれる。加えて、乾燥粉末または凍結乾燥薬の送達には、経皮パッチもまた適応させることができ、例には、米国特許第5,983,135号に記載のパッチが含まれる。
経皮送達は、リポソームを介する送達法(例えば、親油性の膜活性剤の適用により促進される送達)により実施することができる。適切な例には、US5910306、US5718914、およびUS5064655に記載の方法が含まれうる。
経皮送達系はまた、多種多様なイオントフォレーシスシステムまたはエレクトロトランスポートシステムと共に用いることもできる。例示的なエレクトロトランスポートによる薬剤送達システムは、米国特許第5,147,296号、同第5,080,646号、同第5,169,382号、および同第5,169,383号において開示されている。
「エレクトロトランスポート」という用語は一般に、皮膚、粘膜、爪などの体表面を介する有益な薬剤、例えば、薬剤または薬剤前駆体の通過を指す。その結果として電流が印加され、これにより薬剤が送達されるかもしくはその送達が増強される、電位差の印加により薬剤の輸送が誘導もしくは増強されるか、または「逆」エレクトロトランスポートの場合、薬剤がサンプリングされるかもしくはそのサンプリングが増強される。ヒト体内へまたは同体内からの薬剤のエレクトロトランスポートは、多様な形で達成することができる。
経皮送達は、イオントフォレーシス法(例えば、ある時間にわたり皮膚に対して低レベルの電場を印加することにより促進される送達)により実施することができる。適切な例には、US6731987、US6391015、US6553255B1;US 4940456、US5681580、およびUS6248349に記載の方法が含まれうる。
また、経皮送達は、電気穿孔法(例えば、微小時間にわたって高電圧パルスを印加して、皮膚内において一過性の小孔を創出することにより促進される送達)によっても実施することができる。適切な例には、US7008637、US6706032、US6692456、US6587705、US6512950、US6041253、US5968006、およびUS5749847が含まれうる。
経皮送達は、ソノフォレーシス法(例えば、低周波数の超音波パルスを印加して、皮膚の透過性を増大させることにより促進される送達)により実施することができる。適切な例には、US7232431、US7004933、US6842641、US6868286、US6712805、US6575956、US6491657、US6487447、US623499、およびUS6190315が含まれうる。
経皮送達は、機械的デバイスの使用および/または構造エレメント、熱的安定性の特性、膜の流動性、ならびに皮膚の構造および部分構造の完全性における機械的な変化または破壊を誘導することによる人工的な微小孔またはマイクロチャネル(例えば、マイクロプロジェクション)の創出を含む方法により実施することができる。適切な例には、MicroPor(Altea Therapeutics社製)、MacroFlux(Alza社製)のほか、US6893655、US6730318、USRE35474、US5484604、US5362308、US5320850、およびUS5279544に記載の例も含まれうる。
他の適切な製剤は、吸入可能な製剤である。
抗オステオポンチン剤および抗コネキシン剤が、ポリヌクレオチドなどの核酸である場合、哺乳動物細胞による核酸の取込みは、複数種の公知のトランスフェクション法、例えば、トランスフェクション剤の使用を含むトランスフェクション法により増強される。このような技法は、ポリヌクレオチドを含む一部の抗コネキシン剤と共に用いることができる。投与される製剤は、このようなトランスフェクション剤を含有しうる。これらの薬剤の例は、陽イオン剤(例えば、リン酸カルシウムおよびDEAEデキストラン)およびリポフェクション剤(例えば、lipofectam(商標)およびtransfectam(商標))、ならびに界面活性剤を含む。
抗オステオポンチン剤および抗コネキシン剤がポリヌクレオチドを含む場合、製剤がポリヌクレオチドの細胞透過を補助する界面活性剤をさらに含むか、または製剤が任意の適切な充填剤を含有すると好都合である。DMSOなど、任意の適切な無毒性界面活性剤を組み入れることができる。代替的に、尿素などの経皮透過剤も組み入れることができる。
所与の対象または状態に対して有効な用量は、集団の少なくとも50%に対して治療的に有効な用量内にあり、このレベルにおいてほとんどまたはまったく毒性を示さないことが好ましい。
本発明の方法および組成物において用いられる各抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤、またはPDGF受容体阻害剤もしくは遮断剤、またはPDGF阻害剤もしくはアンタゴニストの有効用量は、用いられる1または複数の特定の抗コネキシン剤、(もし存在すれば)組合せのパートナー、投与方式、投与頻度、治療される状態、治療される状態の重症度、投与経路、治療される患者部分集団の必要、またはその患者の異なる必要がその患者に特異的な年齢、性別、体重、関連する治療状態に起因しうる個々の患者の必要を含むいくつかの因子に応じて異なりうる。
患者に抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤またはPDGF受容体阻害剤もしくは遮断剤、またはPDGF阻害剤もしくはアンタゴニストが投与される場合の用量は、患者の年齢、体重、および全般的な状態、治療される状態、ならびに投与される特定の抗コネキシン剤などの、各種の因子に依存する。
抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の適切な治療有効用量は、約0.01〜約0.4mg/kg体重など、約0.001〜約1mg/kg体重でありうる。しかし、適切な用量は、約0.01〜約0.050mg/kg体重など、約0.001〜約0.1mg/kg体重でありうる。
約1〜100、100〜200、100〜300または200〜300、100〜400または200〜400または300〜400、および100〜500または200〜500または300〜500または400〜500マイクログラムの治療有効用量の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤が適切である。約1〜1000マイクログラムの用量もまた適切である。最大2ミリグラムの用量もまた用いることができる。1または複数の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤が包帯材の形態で提供される場合、用量は適切な形で調整され、所望の総用量投与を維持するよう上方に調整されることが典型的である。
代替的に、抗オステオポンチン剤または抗コネキシンタンパク質またはペプチドの場合、そして抗コネキシンオリゴヌクレオチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤の場合、組成物中における各上記薬剤剤の用量は、それが適用される領域のサイズ、長さ、深さ、面積、または容積に対する組成物の濃度を基準として決定することができる。例えば、一部の局所適用において、医薬組成物の用量は、医薬組成物の質量(例えば、グラム)または適用領域の長さ、深さ、面積、もしくは容積当たりの医薬組成物の濃度(例えば、μg/ul)に基づいて計算することができる。有用な用量は、創傷サイズの平方センチメートル当たり約1〜約10マイクログラムの範囲にある。一部の用量は、創傷サイズの平方センチメートル当たり約1〜2、約1〜5、約2〜4、約5〜7、および約8〜10マイクログラムである。他の有用な用量は、創傷サイズの平方センチメートル当たり約10マイクログラムを超え、創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約15マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約20マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約25マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約30マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約35マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約40マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約50マイクログラム、および創傷サイズの平方センチメートル当たり少なくとも約100〜少なくとも約150マイクログラムを含む。他の用量は、平方センチメートル当たり約150〜200マイクログラム、平方センチメートル当たり約200〜250マイクログラム、平方センチメートル当たり約250〜300マイクログラム、平方センチメートル当たり約300〜350マイクログラム、平方センチメートル当たり約350〜400マイクログラム、および平方センチメートル当たり約400〜500マイクログラムを含む。
一部の実施形態において、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤組成物は、治療部位および/または治療部位に隣接して、約0.01マイクロモル濃度(μM)または0.05μM〜約200μM、または最大300μM、または最大1000μM、または最大2000μM、または最大3200μM以上の最終濃度、およびこれらの用量数値内にある任意の用量および用量範囲で適用することができる。アンチセンスポリヌクレオチド組成物は約0.05μM〜約100μMの最終濃度で適用されることが好ましく、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤組成物は約1.0μM〜約50μMの最終濃度で適用されることがより好ましく、抗コネキシン剤組成物は約5〜10μMから約30〜50μMの最終濃度で適用されることがより好ましい。加えて、組合わされた抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤組成物は約8μM〜約20μMの最終濃度で適用され、また代替的に、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤組成物は約10μM〜約20μMの最終濃度、または約10〜約15μMの最終濃度で適用される。他の一部の実施形態において、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤は、約10μMの最終濃度で適用される。さらに別の実施形態において、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤組成物は、約1〜15μMの最終濃度で適用される。他の実施形態において、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤は、約20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、10〜200μM、200〜300μM、300〜400μM、400〜500μM、500〜600μM、600〜700μM、700〜800μM、800〜900μM、900〜1000、または1000〜1500μM、または1500μM〜2000μM、または2000μM〜3000μM以上で適用される。
抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の投与量は、例えば、約0.1〜1、1〜2、2〜3、3〜4、または4〜5マイクログラム(μg)、約5〜約10μg、約10〜約15μg、約15〜約20μg、約20〜約30μg、約30〜約40μg、約40〜約50μg、約50〜約75μg、約75〜約100μg、約100μg〜約250μg、および250μg〜約500μgを含む。上記で言及した通り、0.5〜約1.0ミリグラム以上の投与量もまた提供される。投与容量は治療される部位のサイズに依存し、例えば、約25〜100μLから約100〜200μL、約200〜500μLから約500〜1000μLの範囲でありうる。より大きな治療部位には、ミリリットル用量もまた適切である。
さらに他の用量は、本明細書に記載の各薬剤に対して、1日当たり約1ナノグラム(ng)/kg体重〜約1mg/kg体重のレベルである。一部の実施形態において、各対象化合物の用量は一般に、kg体重当たり約1ng〜約1マイクログラム、kg体重当たり約1ng〜約0.1マイクログラム、kg体重当たり約1ng〜約10ng、kg体重当たり約10ng〜約0.1マイクログラム、kg体重当たり約0.1マイクログラム〜約1マイクログラム、kg体重当たり約20ng〜約100ng、kg体重当たり約0.001mg〜約0.01mg、kg体重当たり約0.01mg〜約0.1mg、またはkg体重当たり約0.1mg〜約1mgの範囲である。一部の実施形態において、各対象化合物の用量は一般に、kg体重当たり約0.001mg〜約0.01mg、kg体重当たり約0.01mg〜約0.1mg、kg体重当たり約0.1mg〜約1mgの範囲である。複数種の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤を用いる場合、各抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の用量は、他方の用量と同じ範囲である必要はない。例えば、1種の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の用量はkg体重当たり約0.01mg〜約10mgの可能性があり、別の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の用量はkg体重当たり約0.1mg〜約1mgの可能性がある。
本明細書で言及されるすべての用量および用量範囲は、例えば、抗オステオポンチンオリゴヌクレオチドまたは抗コネキシンオリゴヌクレオチドに適用可能である。これらの用量範囲はまた、例えば、抗オステオポンチンタンパク質およびペプチド、抗コネキシンペプチド、抗コネキシン模倣ペプチド、および抗コネキシンペプチド模倣剤にも適用可能である。
抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤は、投与後少なくとも約0.5〜1時間、少なくとも約1〜2時間、少なくとも約2〜4時間、少なくとも約4〜6時間、少なくとも約6〜8時間、少なくとも約8〜10時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間にわたって抗オステオポンチンタンパク質またはコネキシンタンパク質の発現を下方調節するか、または抗コネキシン剤の場合、ギャップジャンクションの形成もしくはコネクソンの開口を調節するのに十分な量で投与されると好都合である。
本発明の組成物および方法における各抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の用量はまた、それが適用される領域のサイズ、長さ、深さ、面積、または体積に対する組成物の濃度を基準として決定することもできる。例えば、一部の局所適用および他の適用、例えば、点滴において、医薬組成物の用量は、医薬組成物の質量(例えば、マイクログラム)または適用領域の長さ、深さ、面積、もしくは体積当たりの医薬組成物の濃度(例えば、μg/ul)に基づいて計算することができる。
本明細書で言及される通り、組合せで投与される抗オステオポンチンまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、ペプチドもしくはペプチド模倣剤、またはこれらの一方もしくは両方との組合せで投与される他の抗コネキシン剤の用量は、単独で施される場合に投与される用量よりも低く調整することができる。
複数種の薬剤を組み合わせて用いることにより、異なる薬剤の効果の発生および持続が補完的となりうるため、任意の個々の薬剤に対して必要とされる用量を低減することができる。好ましい実施形態において、2種以上の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤を組み合わせて用いると、相加効果、相乗効果、または超相加効果が得られる。
場合によって、1または複数の抗オステオポンチンポリヌクレオチドまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいはこれらの一方との組合せで投与されるかまたはこれらの両方との組合せで投与される他の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤を組み合わせると、相加効果が得られる。他の場合において、組合せは、相加を超える効果を有しうる。本明細書では、このような効果を「超相加(supra−additive)」効果と称し、これは、相乗的であるかまたは強化された相互作用に起因する可能性がある。
「創傷治癒の超相加的促進」という用語は、1または複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいはこれらの一方との組合せで投与されるかまたはこれらの両方との組合せで投与される他の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤の組合せを投与することによりもたらされる平均創傷治癒が、いずれかの薬剤を単独で個別に投与することによる癒着形成の減少和よりも統計学的に有意に高度であることを指す。1または複数の抗オステオポンチンポリヌクレオチドまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいはこれらの一方との組合せで投与されるかまたはこれらの両方との組合せで投与される他の抗コネキシン剤の組合せ投与によりもたらされるものが、個々の化合物について予測される加算値よりも「統計学的に有意に高度」であるかどうかは、本明細書に記載され、かつ/または当業者により公知である各種の統計学的方法により判定することができる。「相乗的」という用語は、例えば、抗コネキシンポリヌクレオチド、および抗コネキシンペプチドもしくは抗コネキシンペプチド模倣剤の両方、またはこれらの一方との組合せでもしくはこれらの両方との組合せで投与される他の抗コネキシン剤が、例えば、癒着形成を予防または減少させる能力を個別に有する、超相加的阻害の種類を指す。「強化された」という用語は、抗オステオポンチンポリヌクレオチドまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、またはこれらの一方との組合せでもしくはこれらの両方との組合せで投与される他の抗コネキシン剤の一つが、癒着形成を予防または減少させる増大した能力を個別にもつ、超相加的効果の種類を指す。
一般に、それらの治療群それぞれにおいて個々の治療によりもたらされる平均癒着形成の減少の合計と比較した場合、組合せ治療が、治療群において統計学的に有意に超相加的な(一例として)平均癒着形成の減少をもたらすかどうかを判定することにより強化を評価することができる。平均癒着形成減少は、例えば、対照群の平均癒着形成減少と、治療群の平均癒着形成減少との間の差として計算することができる。癒着形成減少率である「作用率(fraction affected)」(Fa)は、治療群における平均癒着形成減少を、対照群における平均癒着形成減少で除することにより計算することができる。統計学的に有意な強化に対する検定は、各治療群に対するFaの計算を必要とする。組合せ治療に対して予測される相加Faは、組合せのいずれかのエレメントを投与される群に由来する平均Faの合計であると理解することができる。例えば、1試料による両側T検定を用いて、実験により得られる結果が偶然だけに起因する可能性はどの程度であるかを、p値による測定の形で評価することができる。0.05未満のp値は統計学的に有意である、すなわち、偶然だけに起因する可能性は低いと考えられる。したがって、組合せの結果として強化された超相加効果がもたらされるとみなすために、組合せ治療群に対するFaは、単一エレメントによる治療群に対して予測される相加Faよりも統計学的に有意に高くなければならない。
組合せ治療から相乗効果がもたらされるかどうかは、中央値効果/組合せ指標によるアイソボログラム法(Chou, T.およびTalalay, P.(1984年)、Ad. Enzyme Reg.、第22巻、27〜55頁)により評価することができる。この方法では、抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤単独、例えば、1または複数の薬剤単独、および一定のモル比における2者の組合せに対する中央値効果プロットに由来するパラメータに基づき、異なる用量効果レベルに対する組合せ指数(CI)値を計算する。CI値が&1t;1は相乗効果を示し、CI−1は相加効果を示し、CP1はアンタゴニスト効果を示す。この解析は、CalcuSyn,Windows(登録商標) Software for Dose Effect Analysis(Biosoft(D,Cambridge UK)などのコンピュータソフトウェアツールを用いて実施することができる。
組合せ療法について、超相加効果が存在するかどうかを解析するための、当技術分野において公知であるかまたは将来的に開発される任意の方法は、組み合わせて用いるのに適する抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤のスクリーニングにおける使用が意図される。
別の好ましい実施形態では、1または複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンポリヌクレオチドと、1もしくは複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤とを組み合わせて用いることにより、前記薬剤が単独で投与される場合の有効用量と比較して、任意のこのような薬剤の有効用量が低下する。一部の実施形態において、組み合わせて用いられる場合の薬剤の有効用量は、単独で用いられる場合の薬剤用量の約1/15〜約1/2、約1/10〜約1/3、約1/8〜約1/6、約1/5、約1/4、約1/3、または約1/2である。
別の好ましい実施形態では、1または複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいはこれらの一方と組み合わせるかまたはこれらの両方と組み合わせる他の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤とを組み合わせて用いることにより、前記薬剤が単独で投与される場合の頻度と比較して、前記薬剤が投与される頻度が低下する。したがって、これらの組合せにより、所望の治療目標を達成するのにかつて必要とされた場合よりも低量および/または低頻度の投与で、各薬剤を用いることができる。
用量は、単一の適用で投与することもでき、分割した適用で投与することもできる。用量は、一度に投与することもでき、適用を反復することもできる。例えば、創傷治癒が促進されるまで適用を毎週反復するか、または例えば創傷治癒が遅れるかもしくは停滞する場合には反復適用を行いうることが典型的である。用量は、3〜7日間以上の間隔で適用することができる。慢性創傷の場合、例えば、毎週、もしくは隔週、もしくは毎月、または他の頻度、例えば、創傷治癒が遅れるかもしくは停滞する場合および時点において、反復適用を行うことができる。ある種の眼科使用など一部の適応の場合、最高1時間ごとのより高頻度の投与を用いることができる。
1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤を、同じ経路または異なる経路を介して投与することができる。本発明の各種の薬剤は、治療経過における異なる時点において個別に投与することもでき、組合せ形態を分割して投与することもでき、単一の組合せ形態で同時に投与することもできる。
本発明の一態様では、抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチドを1種の組成物で投与し、抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドまたはもしくはペプチド模倣剤を第2の組成物で投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤を含む第1の組成物を、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチドを含む第2の組成物の前に投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤を含む第1の組成物を、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチドを含む第2の組成物の後に投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤を含む第1の組成物を、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチドを含む第2の組成物の前および後に投与する。一実施形態では、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチドを含む第2の組成物を、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤を含む第1の組成物の前および後に投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤を含む第1の組成物を、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチドを含む第2の組成物とほぼ同時に投与する。
1または複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンまたは抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいは単独で、または組み合わせて投与される他の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤、および/またはPDGF受容体遮断剤もしくはアンタゴニストは、固体支持体(包帯材および他のマトリックスなど)および医薬製剤(ゲル、混合物、懸濁液、および軟膏など)を用いる局所投与を含むがこれらに限定されない局所投与(末梢投与または部位への直接投与)により送達されることが好ましい。一実施形態において、固体支持体は、生体適合膜または治療部位内への挿入を含む。別の実施形態において、固体支持体は、包帯材またはマトリックスを含む。本発明の一実施形態において、固体支持体組成物は、1または複数の抗オステオポンチンポリヌクレオチドおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいは組合せて投与される他の抗オステオポンチン剤または抗コネキシン剤が、アルギン酸塩、コラーゲン、または合成の生体吸収性ポリマーのマトリックスなどの徐放固体マトリックス中に分散される、徐放の固体支持体組成物でありうる。固体支持体組成物は、無菌であるかまたは低バイオバーデンであることが好ましい。一実施形態では、2つ以上の抗コネキシン剤を含む洗浄液を用いることができる。
1または複数の活性成分を含む本発明の製剤を、ある時間、場合によって、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8時間、または約24時間以上にわたり送達することは、より重度の傷害または状態において特に有利でありうる。
下方調節が誘導される部位および所望される治療効果の両方に送達時間が依存する一方で、約0.5〜1時間、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8時間または約24時間以上にわたる連続送達または徐放送達がもたらされる。本発明によれば、これは、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤、あるいは単独の、または組み合わせた他の抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤、またはPDGF受容体遮断剤もしくはアンタゴニストを、薬学的に許容される担体またはビヒクルと一体の製剤、特に、連続投与または徐放投与のための製剤の形態で組み入れることにより達成される。
言及した通り、例えば、創傷形成前、創傷形成時、創傷形成直後、または、例えば、瘢痕、癒着、もしくは線維症を結果としてもたらす可能性が高いかもしくはそのことが疑われる手順の後、あるいは、例えば、創傷形成後または癒着を結果としてもたらす可能性が高いかもしくはそのことが疑われる手順後約180、約120、約90、約60、または約30日以内であるが、好ましくは、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、または約2日以内であり、最も好ましくは、約24、約12、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2時間以内、または約60、約45、約30、約15、約10、約5、約4、約3、約2、約1分以内に本発明の1または複数の薬剤を投与することができる。本発明の1または複数の薬剤はまた、例えば、癒着を結果としてもたらす可能性が高いかまたはそのことが疑われる手順前および/または同手順時に投与することもできる。
本発明の薬剤および薬剤の組合せは、所望の結果を達成する任意の形で投与することができる。好ましい方法には、尿細管周囲投与(手術時における直接の適用、または内視鏡、超音波、CT、MRI、もしくは蛍光透視鏡の誘導を伴う);手術用インプラントの「コーティング」;および手術部位における薬剤溶出型ポリマーインプラントの留置が含まれる。好ましい実施形態では、体重比0.5%〜20%の(1または複数の)抗コネキシン剤をポリマー担体内に充填(以下の実施例に記載の通り)し、手術による癒着の発生が低減されるように、ある時間にわたって薬剤を放出する「ペースト」、「フィルム」、または「ラップ」として、尿細管周囲(腸間膜)表面に適用する。内視鏡手順時には、内視鏡内の送達ポートを介して、手術時において操作される腹部腸間膜および骨盤内臓器に対して、ポリマー調製物を「スプレー」として適用することができる。特に好ましい実施形態において、尿細管周囲組成物は、体重比約0.1%〜約5%の有効成分である。別の好ましい実施形態では、約0.1%〜約20%以上の(1または複数の)活性薬剤を含有するポリマーコーティングを手術インプラント(例えば、乳房インプラント、人工関節、血管グラフトなど)の表面に適用して、例えば、インプラント近傍における被包/不適切な瘢痕形成を予防する。さらに別の好ましい実施形態では、例えば、癒着形成が予防または軽減されるように、体重比約0.01%〜約20%以上の1または複数の活性薬剤を含有するポリマーインプラントを手術部位に直接(例えば、副鼻腔内、胸腔内、腹腔内、または神経外科術時における手術部位に直接)適用する。一実施形態では、1または複数の活性薬剤を、蛍光透視鏡により誘導される関節内注射により投与することができる。
別の実施形態では、約1〜約100μg/cm2(好ましくは約10〜約50μg/cm2)の(1または複数の)抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤を含有する洗浄液が手術時または手術直後において用いられ、また、医師により手術時投与または腹腔内投与される。すべての実施形態では、薬剤の効力および忍容性に応じて調整された相当量において、他の抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤が投与される。
医師により、任意の特定の患者および状態に対して最適な投与経路および用量が決定されるので、本明細書に記載の投与経路および用量は、指針だけのものとして意図される。
本明細書で言及または説明される疾患、障害または状態を有する対象を治療する方法ならびに手術手順の後の対象を治療する方法のいずれかでは、本明細書に記載の用量、剤形、製剤、および/または組成物のいずれかが投与されうる。
包帯材およびマトリックス
一態様において、1もしくは複数の活性成分は、包帯材またはマトリックスの形態で提供される。一部の実施形態では、本発明の1または複数の薬剤が直接的な適用のための液体組成物、半固体組成物、もしくは固体組成物の形態で提供されるか、あるいは組成物が包帯材ガーゼもしくはマトリックスなどの固体接触層の表面へと適用されるか、またはこの中へと組み込まれる。包帯材組成物は、例えば、流体またはゲルの形態で提供することができる。1または複数の活性成分は、局所適用のための従来の医薬賦形剤と組合せて提供することができる。適切な担体は、プルロニックゲル、ポロキサマーゲル、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれらの混合物を含む)を含有するヒドロゲル;ならびにポリアクリル酸を含有するヒドロゲル(Carbopols)を含む。適切な担体はまた、局所医薬調製物に用いられるクリーム/軟膏、例えば、セトマクロゴール乳化軟膏に基づくクリームも含む。上記の担体は、アルギン酸塩(増粘剤または刺激剤として)、ベンジルアルコールなどの防腐剤、リン酸水素二ナトリウム/リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整のための緩衝液、塩化ナトリウムなどの浸透圧を調整するための薬剤、およびEDTAなどの安定化剤を含みうる。
既に言及した生物学的マトリックスに加え、適切な包帯材またはマトリックスは、例えば、1または複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗オステオポンチンおよび/または抗コネキシンペプチドもしくはペプチド模倣剤(あるいは単独で、または、これらの一方もしくは両方と組み合わせて投与される他の活性成分(例えばPDGF受容体遮断剤もしくはアンタゴニスト))を伴う以下のものを含みうる。
1)吸収材:適切な吸収材は、例えば、セルロース、木綿、またはレーヨンなどの高度に吸収性の繊維層と組み合わせた、例えば、半接着質または非接着層をもたらしうる、例えば、吸収性包帯材を含みうる。代替的に、吸収材は、主要な(primary)包帯材または補助的な(secondary)包帯材として用いることができる。
2)アルギン酸塩:適切なアルギン酸塩は、例えば、天然の多糖繊維または海藻に由来するキセロゲルからなる不織パッド、非接着パッド、およびリボンである包帯材を含む。適切なアルギン酸塩包帯材は、例えば、滲出物との接触の場合イオン交換過程を介して湿潤ゲルを形成しうる。一部の実施形態において、アルギン酸塩包帯材は、やわらかく快適であり、不規則的な形状をした領域上での填塞、陥入、または適合が容易であるように設計される。一部の実施形態において、アルギン酸塩包帯材は、第2の包帯材と共に用いることができる。
3)抗菌包帯材:適切な抗菌包帯材は、例えば、例えば銀およびポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)などの生体活性薬剤の送達を促進して、これが必要であるかまたは望ましい場所で、感染に対する効力を維持しうる包帯材を含みうる。一部の実施形態において、適切な抗菌包帯材は、例えば、スポンジ、浸透化織りガーゼ、フィルム包帯材、吸収性製品、アイランド包帯材、ナイロン繊維、非接着バリア、または材料の組合せとして入手可能でありうる。
4)生体物質および生合成物質:適した生体物質包帯材または生合成物質包帯材は、例えば、天然供給源(例えば、ブタまたはウシ)に由来するゲル、溶液、または半透性シートを含みうる。一部の実施形態において、ゲルまたは溶液は、治療部位に適用され、バリア保護のための包帯材により被覆される。別の実施形態では、膜として作用する可能性があり、単回の適用後においてその場に残存する生体物質基剤(例えば、ブタの腸粘膜または膀胱組織)もしくは生合成物質基剤のシートをin situで配置するか、または1もしくは複数、好ましくは2つの抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤を組み入れるように、生体物質包帯材もしくは生合成物質包帯材をあらかじめ調製することができる。
5)コラーゲン:適切なコラーゲン包帯材は、例えば、ウシ、ブタ、もしくは鳥類の供給源、または他の天然の供給源もしくはドナーに由来する、例えば、ゲル、パッド、粒子、ペースト、粉末、シート、または溶液を含みうる。一部の実施形態において、コラーゲン包帯材は、治療部位における滲出物と相互作用してゲルを形成しうる。一部の実施形態において、コラーゲン包帯材は、補助的な包帯材と組み合わせて用いることができる。
6)複合材料:適切な複合材料包帯材は、例えば、物理的に異なる成分を単一の生成物へと混合して、例えば、細菌バリア、吸収、および接着など複数の機能を提供する包帯材を含みうる。一部の実施形態において、複合材料包帯材は、例えば、複数の層からなり、半接着パッドまたは非接着パッドを組み込む。一部の実施形態において、複合材料はまた、例えば、接着性の輪郭を有する不織布製テープまたは透明フィルムも含む。他の一部の実施形態において、複合材料包帯材は、例えば、主要な包帯材としても補助的な包帯材としても機能することが可能であり、さらに別の実施形態において、包帯材は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
7)接触層:適切な接触層包帯材は、例えば、ある領域上に配置されて、例えば、治療部位に適用された他の薬剤または包帯材との直接的な接触から組織を保護する、薄型の非接着シートを含みうる。一部の実施形態において、接触層は、治療部位領域の形状に調和するように配置することができ、また多孔性であるため、透過する滲出物を、上部の補助的な包帯材に吸収させることができる。さらに別の実施形態において、接触層包帯材は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
8)弾性包帯:適切な弾性包帯は、例えば、伸縮して身体の外形に調和する包帯材を含みうる。一部の実施形態において、繊維成分は、例えば、木綿、ポリエステル、レーヨン、またはナイロンを含みうる。他の一部の実施形態において、弾性包帯は、例えば、第2層としてのまたは補助的包帯材としての吸収をもたらし、被覆をその場に保持するか、圧力を加えるか、または治療部位にクッションを与えることができる。さらに別の実施形態において、接触層包帯材は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
9)発泡体:適切な発泡体包帯材は、例えば、流体の保持が可能な小さな開放セルを有する、発泡ポリマー溶液(ポリウレタンを含む)のシートおよび他の形状を含みうる。例示的な発泡体は、例えば、他の材料と組み合わせて浸透化または層状化することができる。一部の実施形態では、発泡体の厚さおよび組成に基づいて吸収能を調製することができる。他の一部の実施形態において、治療部位と接触する領域は、取り外しを容易とするために非接着性でありうる。さらに別の実施形態において、発泡体は、接着性の輪郭および/または抗感染性バリアとして働きうる透明のフィルムコーティングと組み合わせて用いることができる。
10)ガーゼおよび不織包帯材:適切なガーゼ包帯材および織地包帯材は、例えば、吸収性の程度が多様な乾燥織地スポンジまたは吸収性の程度が多様な乾燥不織スポンジおよび吸収性の程度が多様な乾燥織地ラップまたは吸収性の程度が多様な乾燥不織ラップを含みうる。例示的な繊維組成物は、例えば、木綿、ポリエステル、レーヨンを含みうる。一部の実施形態において、ガーゼおよび不織包帯材は、バルクにおいて滅菌の場合であれ非滅菌の場合であれ、また、接着性の輪郭を伴う場合であれ伴わない場合であれ入手可能でありうる。例示的なガーゼ包帯材および不織包帯材は、各種の治療部位を消毒、パッキング、被覆に用いることができる。
11)親水コロイド:適切な親水コロイド包帯材は、例えば、ゼラチン、ペクチン、またはカルボキシメチルセルロースからなるウェハー、粉末、またはペーストを含みうる。一部の実施形態において、ウェハーは自己接着性であり、接着性の輪郭を伴う場合であれ伴わない場合であれ入手可能であり、また多種多様な形状およびサイズで入手可能である。例示的なハイドロコロイドは、外形合わせを必要とする領域において有用である。一部の実施形態において、粉末およびペーストの親水コロイドは、第2の包帯材と組み合わせて用いることができる。
12)ヒドロゲル(アモルファス):適切なアモルファスヒドロゲル包帯材は、例えば、水分を与え、湿潤性の治癒環境を維持し、治療部位に水分を補給するように設計された、水、ポリマー、および不定形の他の成分による製剤を含みうる。一部の実施形態において、ヒドロゲルは、補助的な包帯材カバーと組み合わせて用いることができる。
13)ヒドロゲル:浸透化包帯材:適切な浸透化ヒドロゲル包帯材は、例えば、アモルファスヒドロゲルに浸したガーゼおよび不織スポンジ、ロープ、ならびにストリップを含みうる。アモルファスヒドロゲルは、例えば、乾燥治療部位に水分を与え、湿潤性の治癒環境を維持するように設計された、水、ポリマー、および不定形の他の成分による製剤を含みうる。
14)ヒドロゲルシート:適切なヒドロゲルシートは、例えば、水中において不溶性であり、膨潤により水溶液と相互作用する、架橋された親水性ポリマーの三次元ネットワークを含みうる。例示的なヒドロゲルは、高度に適合性でありそして透過性であり、それらの組成に応じて、広範な量のドレナージを吸収できる。一部の実施形態において、ヒドロゲルは、治療部位に対して非接着性であるか、または取り外しが容易であるように処置される。
15)浸透化包帯材:適切な浸透化包帯材は、例えば、溶液、エマルジョン、油、ゲル、または例えば、食塩液、油、亜鉛塩、ワセリン、ゼロフォーム(xeroform)、およびスカーレットレッド(scarlet red)のほか、本明細書に記載の化合物を含む、他の一部の薬学的に活性な化合物もしくは担体薬剤に浸したガーゼおよび不織スポンジ、ロープ、ならびにストリップを含みうる。
16)シリコンゲルシート:適切なシリコンゲルシート包帯材は、例えば、メッシュまたは布により補強されるかまたはこれに結合した架橋ポリマーからなる軟質カバーを含みうる。
17)溶液:適切な液体包帯材は、例えば、細胞外マトリックス中に見出される多タンパク質物質および他のエレメントの混合物を含みうる。一部の実施形態では、デブリドマンおよび洗浄の後において例示的な溶液を治療部位に適用し、次いで、吸収性包帯材または非接着性パッドにより被覆することができる。
18)透明フィルム:適切な透明フィルム包帯材は、片面が接着剤によりコーティングされる、多様な厚さのポリマー膜を含みうる。一部の実施形態において、透明フィルムは液体、水、および細菌に対しては不透過性であるが、水蒸気および大気中の気体に対しては透過性である。一部の実施形態では、透明性により、治療部位が視覚化される。
19)充填剤:適切な充填剤包帯材は、例えば、ビーズ、クリーム、発泡体、ゲル、軟膏、パッド、ペースト、クッション(pillow)、粉末、ストランド、または他の調合物を含みうる。一部の実施形態において、充填剤は非接着性であり、経時放出型抗菌剤を含みうる。例示的な充填剤は、湿潤環境の維持、滲出物の管理、また、例えば、部分層創傷および全層創傷、感染創傷、排液性創傷、およびパッキングを要する深部創傷の治療に有用でありうる。
創傷治療
一般的な態様
本発明は、治療有効量の、単独のまたは1もしくは複数の他の抗コネキシン剤を組み合わせた1もしくは複数の抗オステオポンチン剤を含む医薬組成物およびそれらの使用法に関する。組成物は、急性創傷、および慢性創傷などの予測される速度では治癒しない創傷、ならびに従来の創傷治療または創傷治癒促進療法に対して治癒が遅いかあるいは不応な場合もある他の創傷を含む創傷の治癒を増強または促進するのに有用である。
同様に、他の組織損傷(特に、創傷)の場合、本発明の方法および組成物は、創傷治癒過程の促進、腫脹および炎症の軽減、ならびに瘢痕形成の最小化において有効である。これらの製剤は、線維性疾患、線維性障害、および線維性状態の治療、ならびに癒着、手術による癒着、および/もしくは手術による続発性癒着の治療、これらの発生または重症度の軽減、あるいはこれらの予防または遅延に有用である。製剤は、外部外傷(熱傷を含めた)、内部外傷、または手術による介入のいずれの結果であるかに関わらない創傷の治療のほか、慢性創傷の治療においても明らかな利益をもたらす。
組成物
したがって、一態様において、本発明は、抗オステオポンチン剤を含む、治療的な創傷の処置において用いられる組成物を提供する。別の態様において、本発明は、抗オステオポンチン剤および少なくとも1つの抗コネキシン剤を含む、治療的な創傷の処置において用いられる組成物を提供する。好ましい実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体またはビヒクルをさらに含む。別の態様において、本発明は、PDGF受容体の遮断剤またはアンタゴニストを含む、治療的な創傷の処置において用いられる組成物を提供する。別の態様において、本発明は、抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤と共にPDGF受容体の遮断剤またはアンタゴニストを含む、治療的な創傷の処置において用いられる組成物を提供する。
一実施形態において、抗コネキシン剤は、創傷治療のための抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチド、または抗コネキシンペプチド模倣剤、ギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤、またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドからなる群から選択される。
好ましい一実施形態において、抗コネキシンポリヌクレオチドは、アンチセンスポリヌクレオチドである。好ましい一形態において、組成物は、1つのコネキシンタンパク質のmRNAだけに対する1または複数のアンチセンスポリヌクレオチドを含有する。このコネキシンタンパク質は、コネキシン43であることが最も好ましい。
別の好ましい形態において、組成物は、抗オステオポンチン、抗コネキシンペプチドまたはペプチド模倣剤、およびコネキシンタンパク質のmRNAに対するアンチセンスポリヌクレオチドを含む。このコネキシンタンパク質は、コネキシン43であることが最も好ましい。
組成物は、複数種のコネキシンタンパク質を対象とする、ポリヌクレオチドもしくは抗コネキシンペプチド、またはこれらの一方もしくは両方を伴う他の抗コネキシン剤を含みうる。ポリヌクレオチドもしくは抗コネキシンペプチドまたは他の抗コネキシン剤が対象とするコネキシンタンパク質の1つが、コネキシン43であることが好ましい。ポリヌクレオチドもしくは抗コネキシンペプチドまたは他の抗コネキシン剤が対象とする他のコネキシンは、例えば、コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、44.6、45、および46を含みうる。各種のコネキシンを対象とするのに適する例示的なポリヌクレオチド(およびODN)を、表1に記載する。本明細書では、適切な抗コネキシンペプチドもまた提供される。適切なギャップジャンクションリン酸化剤またはヘミチャネルリン酸化剤およびコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドは、当技術分野において公知である。
したがって、一態様において、本発明は、慢性創傷および治癒が緩徐であるかまたは遅延している創傷を含めた創傷の治療において用いられる組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、線維症、または線維性疾患、線維性障害、もしくは線維性状態の治療において用いられる組成物を提供する。
代替的な態様において、本発明は、異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖、ならびに関連する障害および状態の予防および/または治療において用いられる組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、手術による癒着を含めた、癒着の予防および/または軽減において用いられる組成物および方法を提供する。
キット、医薬、および製品
場合によって、単独の1または複数の抗オステオポンチン剤、あるいは1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなどの他の抗コネキシン剤、ならびに/あるいはPDGF受容体遮断剤もしくはアンタゴニストと組み合わせた1または複数の抗オステオポンチン剤はまた、医薬の製造においても用いることができる。
一態様において、本発明は、説明される1もしくは複数の組成物または製剤を含むキットを提供する。例えば、キットは、有効量の1または複数の抗オステオポンチン剤を単独で、あるいは1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなどの他の抗コネキシン剤、ならびに/あるいはPDGF受容体遮断剤もしくはアンタゴニストと組み合わせて含む組成物を含みうる。
本明細書に記載の本発明の組成物または製剤を含有する容器と、対象の治療のために用いられる指示書とを含む製品もまた提供される。例えば、別の態様において、本発明は、治療有効量の1または複数の抗オステオポンチン剤を単独で、あるいは、抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなどの他の抗コネキシン剤、ならびに/あるいはPDGF受容体遮断剤もしくはアンタゴニストと組み合わせて含有する容器と、対象を治療するための使用を含む使用のための指示書とを含む製品を含む。
一態様において、本発明は、慢性創傷および治癒が緩徐であるかまたは遅延している創傷を含めた、創傷を治療するためのキットを提供する。別の態様において、本発明は、線維性、または線維性疾患、線維性障害、または線維性状態を治療するためのキットを提供する。代替的な態様により、本発明は、記載の1または複数の製剤を含む、異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖ならびに状態を予防および/または治療するためのキットを提供する。別の態様において、本発明は、記載の1もしくは複数の組成物または製剤を含む、癒着を予防および/または軽減するためのキットを提供する。
慢性創傷および治癒が緩徐であるかまたは遅延している創傷を含めた、創傷を予防および/または治療するための製品が提供される。別の態様では、線維性または線維性疾患、線維性障害、または線維性状態を予防および/または治療するための製品が提供される。異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖、ならびに関連する障害および状態を予防および/または治療するための製品もまた提供される。本出願に記載の通り、癒着を予防および/または軽減するためのさらなる製品も提供される。
治療
本発明の組成物および製剤は、創傷の治癒を促進するための組成物と共に用いることもでき、これと組み合わせて用いることもでき、これらはまた、例えば、腫脹、炎症、および/または瘢痕形成を軽減することも可能である。本発明の組成物および製剤はまた、急性創傷または慢性創傷(治癒が緩徐な創傷および治癒が遅延している創傷を含む)の治癒を促進および/または改善するための組成物と共に用いることもでき、これと組み合わせて用いることもできる。一態様において、創傷は、手術もしくは外傷、または、例えば、糖尿病、末梢浮腫、血管炎、もしくは心血管疾患などの基礎的な医学的状態の結果である。
一態様において、本発明は、対象における創傷治癒を促進または改善する方法であって、単独の、あるいは1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシン43ポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシン43ペプチドまたは抗コネキシン43ペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせた、治療有効量の1または複数の抗オステオポンチン剤の投与を含む方法を対象とする。PDGF受容体遮断剤またはPDGF受容体アンタゴニストもまた、単独で、または上記薬剤のいずれかとの組合せで用いることができる。特定の実施形態において、単独の、あるいは1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチド、または抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシン43ポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシン43ペプチドまたは抗コネキシン43ペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせた、1もしくは複数のPDGF受容体遮断剤またはPDGF受容体アンタゴニスト、および/あるいは1または複数の抗オステオポンチン剤の投与は、炎症を軽減し、創傷の閉鎖および治癒を加速させる細胞移動を促進し、かつ/または上皮成長および表面回復を促進するのに有効である。特定の実施形態において、1または複数の本発明の組成物の投与は、異常な瘢痕形成を含めた瘢痕形成を軽減または予防するのに有効である。
一態様において、本発明は、対象における創傷治癒を促進または改善する方法であって、上皮基底細胞の分裂および増殖を調節するのに有効な量の1または複数の抗オステオポンチン剤を単独で、あるいは、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および/または1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせて投与する工程を含む方法を対象とする。一実施形態において、抗コネキシン剤は、上皮基底細胞の分裂および増殖を調節するのに、または外層ケラチン分泌を制御するために有効なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチドである。一実施形態において、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシン26のアンチセンスポリヌクレオチド、ペプチド、もしくはペプチド模倣剤、コネキシン43のアンチセンスポリヌクレオチド、ペプチド、もしくはペプチド模倣剤、またはこれらの混合物である。
またさらなる態様において、本発明は、創傷、例えば、手術による創傷(例えば、美容手術、痕跡修正手術または他の手術などにおける)を受けた患者における瘢痕形成を軽減し、かつ/または瘢痕の外見を改善する方法であって、1または複数の抗オステオポンチン剤を単独で、あるいは、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせて前記創傷に投与して、前記創傷部位にあり、また同部位にすぐ隣接する1つまたは複数のコネキシンタンパク質の発現を下方調節するステップを含む方法を提供する。PDGF受容体阻害剤もまた、単独で、あるいは1もしくは複数の抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤と組み合わせて使用され得る。また、創傷は、外傷の結果である場合もあり、手術の結果である場合もあり、例えば、手術に対する修復および/またはその閉鎖の直前に創傷に製剤を適用する。本明細書で言及される通り、瘢痕の形成または外見を軽減または改善する方法では、適量の抗コネキシンポリヌクレオチドの投与と組み合わせて、またはその投与後もしくはその投与前に、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤を投与することが好ましい。
一態様において、本発明は、対象における組織損傷を軽減、予防、または改善する方法であって、1または複数の抗オステオポンチン剤を単独で、あるいは、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせて投与する工程を含む方法に関する。
さらなる態様において、本発明は、物理的外傷を受けた急性創傷もしくは慢性創傷および/または組織の治療の一部として、腫脹および/または炎症を軽減する方法であって、1または複数の抗オステオポンチン剤を単独で、あるいは、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせて前記創傷もしくは組織にまたはこの近傍に投与するステップを含む方法に関する。一実施形態において、創傷は、脳、脊髄、もしくは視神経などの神経組織、または皮膚もしくは眼を含む組織に対する物理的外傷の結果である。
一態様において、本発明は、1または複数の抗オステオポンチン剤の単独の、あるいは、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤と組み合わせた持続投与、あるいは場合によって、1または複数の抗オステオポンチン剤の単独の、あるいは1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせた持続投与に関する。一実施形態において、この薬剤は、少なくとも約0.5時間、約1〜24時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間にわたり投与される。一実施形態において、オステオポンチンまたはコネキシンの発現は、持続的な期間にわたり下方調節される。別の実施形態において、オステオポンチンタンパク質が結合されるか、あるいはコネキシンヘミチャネルは、好ましい期間にわたり、全体的または部分的に遮断されるかまたは閉鎖される。例えば、持続的な期間にわたり、全体的または部分的に、オステオポンチンおよび/またはコネキシン43の発現が下方調節され、コネキシンヘミチャネルの開口が遮断されるかまたは阻害されることが好ましい。少なくとも約1、2、4、6、8、10、12、または24時間にわたりオステオポンチンおよび/またはコネキシン43の発現が下方調節されるか、またはヘミチャネルが遮断されるかもしくは阻害されると好都合である。一実施形態によれば、創傷は慢性創傷である。適切な対象は、糖尿病の対象を含む。他の対象は、例えば、末梢浮腫、血管炎、または心血管疾患を有する対象を含む。
一態様において、本発明は、創傷を有する対象を治療する方法であって、単独の、あるいは1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、抗コネキシンペプチド、または抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、ならびに/あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、他の抗コネキシン剤と組み合わせた、1もしくは複数のPDGF受容体遮断剤またはPDGF受容体アンタゴニスト、および/あるいは1または複数の抗オステオポンチン剤の有効量の創傷への持続投与を含む方法を提供する。
別の態様では、慢性創傷を有する対象を治療する方法が提供される。このような方法は、単独の、あるいはPDGF受容体遮断剤もしくはPDGF受容体アンタゴニスト、および/あるいはコネキシンもしくはコネキシンヘミチャネルの発現、形成、または活性を阻害することが可能な抗コネキシン剤と組み合わせた、1または複数の抗オステオポンチン剤を対象に投与するステップを包含する。
一態様において、本発明は、慢性創傷を治療または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、前記慢性創傷または前記慢性創傷と関連する組織に投与するのに有効な量の抗オステオポンチン剤を、抗コネキシン剤および/またはPDGF受容体遮断剤もしくはPDGF受容体アンタゴニストと組み合わせて投与するステップを含む方法を対象とする。一実施形態において、抗オステオポンチン剤は、抗コネキシンポリヌクレオチド、好ましくはコネキシン43アンチセンスポリヌクレオチドと組み合わせて投与される。別の実施形態において、抗オステオポンチン剤は、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、好ましくは抗コネキシン43ペプチドまたは抗コネキシン43ペプチド模倣剤と組み合わせて投与される。別の実施形態において、抗オステオポンチン剤は、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤および抗コネキシンポリペプチドと組み合わせて投与される。別の実施形態において、慢性創傷は慢性皮膚創傷であり、本発明の組成物は、効果的な期間にわたって、前記対象の皮膚または皮膚と関連する組織へと投与される。治療に適する慢性皮膚創傷は、例えば、褥瘡、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、血管性潰瘍、および混合潰瘍、ならびに本明細書で言及される他の潰瘍からなる群から選択することができる。慢性創傷は、完全動脈遮断または部分動脈遮断から生じる潰瘍形成を含む動脈性潰瘍でありうる。慢性創傷は、静脈弁の機能不全および関連する血管疾患から生じる潰瘍形成を含む静脈鬱血性潰瘍でありうる。慢性創傷は、外傷誘導性潰瘍でありうる。
固定した組合せとして投与されない場合、好ましい方法は、1もしくは複数の抗オステオポンチン剤、および1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、ペプチドまたはペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および/または1もしくは複数の抗コネキシンペプチド、または抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなどの他の抗コネキシン剤の逐次投与を含む。薬剤は、互いから少なくとも約30分以内に逐次投与されることが好ましい。薬剤はまた、互いから約1時間以内に投与することもでき、互いから約1日〜約1週間以内に投与することもでき、適切であるとみなされる他の形で投与することもできる。抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、例えば、ヘミチャネルの開口を遮断するかまたは低下させうる抗コネキシン剤は、例えば、コネキシンタンパク質発現の下方調節により、コネキシン発現またはヘミチャネルの形成もしくはギャップジャンクションの形成を遮断するかまたは低下させる抗コネキシン剤の投与よりも前に投与されることが好ましい。1または複数の抗コネキシン剤は、(1または複数の)抗コネキシン43剤であることが好ましい。
慢性創傷を含む創傷の治療するための別の実施形態では、1もしくは複数の抗オステオポンチン剤、抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および/または1もしくは複数の抗コネキシンペプチド、または抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなどの他の抗コネキシン剤の一方または全てが、物理的に、または創傷治療の経過において、1または複数の薬剤が単独で投与される場合(すなわち、それらが組み合わせて投与されない場合)に用いられる量または用量よりも少ない量または用量で、供給される。投与される薬剤のこのような低量は、単独で投与される場合の該薬剤の1つの量または複数の量の約20分の1〜約10分の1であることが典型的であり、単独で投与される場合の量の約8分の1、単独で投与される場合の量の約6分の1、単独で投与される場合の量の約5分の1、単独で投与される場合の量の約4分の1、単独で投与される場合の量の約3分の1、および単独で投与される場合の量の約2分の1でありうる。
一実施形態において、慢性創傷の治療または予防方法は、1または複数の抗オステオポンチン剤の単独の、あるいは1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、1もしくは複数の抗コネキシン剤またはペプチド模倣剤、あるいは場合によって、1もしくは複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および/または1または複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなどの他の抗コネキシン剤と組み合わせた持続投与を含む。一実施形態において、1または複数の組成物は、持続放出製剤において投与される。別の実施形態において、1または複数の組成物は、持続的な期間にわたり投与される。組成物は少なくとも約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約4〜8時間、約12時間、約18時間、または約24時間にわたり、コネキシン43レベルを低下させるか、またはコネキシン43ヘミチャネルの開口を遮断するかもしくは抑制するのに有効であると好都合である。治療されうる対象は、糖尿病患者、および他の潰瘍(静脈性潰瘍、および本明細書に記載される他のものおよび当該分野で公知の他のものを含む)を有する患者を含む。
一態様において、本発明は、対象における線維症、または線維性疾患、線維性障害、もしくは線維性状態を予防および/または治療する方法であって、単独の、あるいは1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および1もしくは複数の抗コネキシンペプチド、抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、ギャップジャンクション調整剤と組み合わせた、治療有効量の1または複数の抗オステオポンチン剤の投与を含む方法を対象とする。特定の実施形態において、投与は、線維症を軽減するのに有効である。特定の実施形態において、投与は、拘縮を予防または軽減するのに有効である。
一態様において、本発明は、対象における線維症、または線維性疾患、線維性障害、もしくは線維性状態を予防および/または治療する方法であって、場合によって、線維症を軽減するのに有効な1または複数の抗コネキシン剤と共に、治療有効量の1または複数の抗オステオポンチン剤の投与を含む方法を対象とする。一実施形態において、抗オステオポンチン剤および場合による1または複数の抗コネキシン剤の投与は、拘縮を予防または軽減するのに有効である。
上記方法の一実施形態によれば、対象は、強皮症、腎線維症(糖尿病性腎症を含めた)、心線維症(例えば、心筋線維症)、肺線維症(例えば、糸球体硬化症肺線維症、特発性肺線維症、珪肺症、石綿肺症、間質性肺疾患および線維性肺疾患、ならびに化学療法/放射線照射により誘導される肺線維症)、口腔線維症、心内膜心線維症、三角筋線維症、膵炎、炎症性大腸炎、クローン病、結節性筋膜炎、好酸球性筋膜炎、多様な程度で正常な筋肉組織が線維状組織により置換されることを特徴とする一般的な線維症候群、後腹膜線維症、肝線維症、肝硬変、慢性腎不全;骨髄線維症(myelofibrosis)(骨髄の線維症(bone marrow fibrosis))、薬剤誘導性エルゴチン中毒、リー−フラウメニ症候群における神経膠芽腫、散発性神経膠芽腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、婦人科癌、カポジ肉腫、ハンセン病、コラーゲン蓄積大腸炎、および急性線維症からなる群から選択される障害を有する。この実施形態によれば、強皮症は限局性強皮症、汎発性モルフェア、または線状強皮症でありうる。この実施形態によればまた、腎線維症は、糸球体硬化症、腎尿細管間質線維症、または進行性腎疾患でありうる。さらにこの実施形態によれば、肺線維症は、びまん性間質肺線維症でありうる。
上記方法の別の実施形態によれば、線維症は急性線維症である。急性線維症は、偶発性傷害、感染症、放射線照射または化学療法による治療を含めた各形態の外傷に対して反応しうる。
上記方法の別の実施形態によれば、線維症は慢性線維症である。本発明にはまた、例えば、被膜拘縮、デュピュイトラン拘縮、フォルクマン拘縮、レダーホース拘縮、ペイロニー拘縮、またはこれらの再発を含めた各種の疾患、障害、および状態を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、抗コネキシンポリヌクレオチドを含む有効量の組成物を投与するステップを含む方法も含まれる。一実施形態において、組成物は、瘢痕組織および異常組織ならびに/またはさらなる拘縮の再発を予防するリリース手順(例えば、緊急手順、オープンリリース、関節鏡リリース、または瘢痕の減量)の前に、これと同時に、および/またはこの後において、障害部位に投与される。
一態様において、本発明は、対象における異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖ならびに関連する障害および状態を予防および/または治療する方法であって、単独の、あるいは1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、および/または1もしくは複数の抗コネキシンペプチド、抗コネキシンペプチド模倣剤、あるいはギャップジャンクションリン酸化剤もしくはヘミチャネルリン酸化剤またはコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドなど、ギャップジャンクション調整剤と組み合わせた、治療有効量の1または複数の抗オステオポンチン剤の投与を含む方法を対象とする。特定の実施形態において、投与は、異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖ならびに関連する障害および状態を軽減するのに有効である。
一態様において、本発明は、対象における異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖ならびに関連する障害および状態を予防および/または治療する方法であって、治療有効量の抗オステオポンチン剤の投与を含む方法を対象とする。一実施形態において、抗オステオポンチン剤は、異常もしくは過剰な瘢痕形成および/または過剰な組織増殖ならびに関連する障害および状態を軽減するのに有効である。
一態様において、本発明は、単独の、または1もしくは複数の抗コネキシン剤と組み合わせた抗オステオポンチン剤の持続投与を対象とする。
一実施形態により、対象は、ケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、広汎性瘢痕、および萎縮性瘢痕からなる群から選択される異常な瘢痕を有する。
別の実施形態により、治療される対象には、外傷、手術による介入、熱傷、ならびに異常または過剰な瘢痕化(scarring)のほか、過剰な瘢痕形成(scar formation)、およびケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、広汎性瘢痕、および萎縮性瘢痕を含めた他の種類の異常な組織増殖をもたらすかまたはもたらしうる他の種類の傷害を経験した対象が含まれる。
特定の実施形態において、抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤は、上皮組織、結合組織、筋組織、および神経組織、または手術時もしくは外傷の結果として曝露もしくは創傷形成を受ける他の組織に投与される。一実施形態において、抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤は、局所投与される。他の実施形態において、抗オステオポンチン剤および/または抗コネキシン剤は、植え込まれるか、または滴下注入
されるか、もしくは注射される。
以下の実施例は、例示だけを目的として記載されるものであり、本発明の範囲に対する限定を構成するものではないと理解される。
(実施例1)
以下の材料および方法は、本出願に記載の実施例全体で用いられた。
創傷モデルおよびODN治療
すべての実験は、英国内務省の法令に従い実施された。マウス(年齢を適合させた雄のICRマウス;7〜11週齢)にハロタン麻酔をかけ、剃毛した背側の皮膚に4カ所の全層切除創傷(4mmの生検パンチ;Kai Industries社製)または1cmの全層切開創傷2カ所を無菌で作製した(図2A)。創傷形成直後の創傷腔内に、ピペットでODN(対照またはOPN AS)を局所適用した[50μl;30%プロニックF−127ゲル(Sigma−Aldrich社製)(付録「材料および方法」を参照されたい)中に1、2、または5μM]。SteREO Lumar.V12顕微鏡(Carl Zeiss社製)を用いて創傷を記録し、Openlab(商標)4.0.2(Improvision社製)ソフトウェアを用いて面積を計算した。6mm生検パンチにより創傷組織を回収した。
対照およびアンチセンス(AS)のオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の配列
組織学的解析
組織は、10%ホルマリンまたは4%パラホルムアルデヒド中で固定し、それぞれ、パラフィンまたはTissue−Tec(登録商標)O.C.T.化合物内に包埋した。切片(6μm)を、H&E、Masson社製Trichrome、Toluidine BlueもしくはPicrosirius Redによる染色、F4/80、またはCD31によるIHC(StreptABComplex/HRP、DAKO社製)、MPOによるIHC(Envision、DAKO社製)、またはF4/80−OPN二重免疫蛍光にかけた。用いられた抗体には、以下が含まれる。
透過電子顕微鏡法(TEM)
0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中に2%のグルタルアルデヒド(gluteraldehyde)および2%のパラホルムアルデヒド中、4℃で一晩、またその後、1%四酸化オスミウム中で1時間にわたり検体を固定し、次いで、処理後、TEM(Philips社製CM100型)にかけた。コラーゲンバンドル密度および線維直径の測定値の詳細は、補足資料において概括されている。
RNAの単離およびRT−PCR解析
TRIzol(Invitrogen社製)を用いて総RNAを抽出し、RNeasy MinElute Cleanupキット(Quiagen社製)を用いてさらに精製した。RNA(5μg)を逆転写(SuperScriptIII;Invitrogen社製)し、標準的なPCR(HotStarTaq(登録商標);Qiagen社製;補足資料で記載)によりOPNおよびGAPDHの発現について解析した。増幅および転写物量のリアルタイムでの検出には、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems社製)を用いた。
ウェスタンブロット法
タンパク質試料(20μg;T−PER(登録商標)試薬(PIERCE Biotechnology社製)中で回収)は、トリス−グリシンゲル(Invitrogen社製)上で分離し、PVDFへと転写し、標準的なプロトコールによりブロット処理した(抗体の詳細は、上記に記載されている)。タンパク質バンドは化学発光(Roche Diagnostics GmbH社製)により可視化し、バンド強度はImage J 1.34sソフトウェアを用いて計算した。
細胞培養物
スイス3T3細胞、J774.1マクロファージ、およびRBLマスト細胞を、DMEM+ 10%ウシ胎仔血清中で培養した。チオグリコール酸誘導腹膜炎の4時間後において、腹腔洗浄により好中球初代細胞を回収し、マウス骨髄からはマクロファージ初代細胞を誘導し、LPS(500ng/ml)により活性化させた。RPMI 1640+ 10%血清中において、両方の初代細胞型を維持した。標準的な条件下において48時間にわたり細胞を培養(2.5×10
5細胞/ml)することにより馴化培地(CM)を調製し、次いで、培地を濾過(0.2μm)した。CMまたは以下の成長因子/サイトカイン:OPN、PDGF−BB、EGF、TGFβ1もしくはTGFβ3、IL−6、TNF−α、Gleevec(STI571、イマチニブメシレート;Novartis社製)、ウォルトマニン、またはPDGF−Rβ中和抗体により、8時間またはこれらの半減期にわたりスイス3T3細胞を処理した。
用いられた成長因子/サイトカイン/阻害剤の詳細
上皮突端長、上皮ギャップ、および創傷幅の測定
図2Dに示す上皮突端長、上皮ギャップ、および創傷幅は、H&E染色した組織切片上において、Openlab(商標)4.0.2(Improvision社製)ソフトウェアを用いて測定した。
透過電子顕微鏡解析
コラーゲン直径の測定には、無傷組織および創傷組織から治療群当たり少なくとも5カ所ずつ無作為に選択した視野(倍率=28500倍、皮膚表面下の深さ=360μm)を撮影し、Image Jソフトウェアを用いて原線維の周長を測定し、直径を計算した(周長/3.14)。コラーゲン密度の測定には、無傷皮膚および創傷皮膚における8カ所の無作為視野(倍率=3900倍)を撮影し、コラーゲン線維により満たされていない細胞外腔の面積(nm
2/μm
2)[面積に変換された細胞外腔中の白色画素の数(nm
2)/(総視野面積(46μm
2)−細胞により占拠されている面積]を計算し、Adobe PhotoShopソフトウェア中の手書きの描線ツールを用いて細胞領域を画定した。
(実施例2)
この実施例は、AS ODN候補分子の設計および最適化について記載する。
ノックダウン試験用のAS ODN候補の設計:デオキシリボザイム(Dz)は、既に記載の通り(Martin, P.およびS.J. Leibovich(2005年)、Trends Cell Biol、第15巻、599〜607頁)に設計された。略述すると、標的のセンスOPN mRNA配列(GenBank;NM_009263)をAT部位およびGT部位について走査し、次いで、ATまたはGTの両側8ヌクレオチドと、触媒コアである「ggctagctacaacga」を含めるようにDzを作製した。BLAST検索を実施して、OPNに対して非特異的な配列を除外した。その後、成功したDz結合アームの配列に基づいてアンチセンスのデオキシリボヌクレオチド(AS ODN)を設計した(図6)。Oligo Walk(2)により、選択されたAS ODN(すなわち、ヘアピン形成およびホモ二量体形成)の熱安定性を調べた。Dzの配列(小文字は結合アームを表わし、大文字は触媒コア部位(GGCTAGCTACAACGA)(配列番号136)を示す):
in vitroにおけるOPN mRNAのDz切断:IMAGEクローン(GenBank、BC057858;Geneservice社製)からマウスOPN mRNAを転写し、結果として得られたRNAを、RNeasy MinElute Cleanupキット(Qiagen社製)により精製した。37℃で5分間にわたり切断緩衝液(10mM MgCl2、5mMトリス(pH7.5)、150mM NaCl)中でRNA(0.3μg/5μl)をインキュベートし、5μlのDz(40μM;MWG Biotech社製)も同様にインキュベートした。次いで、これらを組み合わせて、1時間にわたりインキュベートした。2%ホルムアルデヒド−アガロースゲル上においてRNA産物を分離し、SYBR Gold核酸ゲル染色剤(Invitrogen社製)により染色し、切断効率を決定した(図6A)。
in vitroにおけるAS ODNの切断:AS ODNの切断効率を評価するために、転写されたRNA(0.3μg)を、最終容量10μlの切断緩衝液中において、対照ODNまたはOPN AS ODN(2μMの最終濃度;MWG Biotech社製)、RNase H(Invitrogen社製)、およびRNasin(非特異的なRNA分解を阻害する;Promega社製)と共にインキュベートし、37℃で20分間にわたりインキュベートした。2%ホルムアルデヒド−アガロースゲル上においてRNA産物を分離し、SYBR Gold核酸ゲル染色剤(Invitrogen社製)により染色し、切断効率を決定した(図6B)。
in vivoにおけるODN送達:創傷直後にODNを局所適用した[50μl;<4℃では液体であるが、37℃では徐放性ビヒクル(3)として作用する30%プルロニックF−127ゲル(Sigma−Aldrich社製)中に1、2、または5μM]。
OPN転写物についてのRT−PCR解析:OPN mRNAの切断においてOPN AS ODN(943)が最も有効であることを決定してから、in vivoの実験を実施して、ノックダウンに最適な用量を決定した。創傷直後の全層切除創傷に対照ODNまたはOPN AS 943のODN(50μl;30%プルロニックF−127ゲル中に1、2、または5μM)を局所適用し、6時間後に組織を回収し、RNAについてRT−PCR解析を行った。HotStarTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ(Qiagen社製)および以下:OPN(順方向)5’−ACAAGACATCAACTGTGC−3’(配列番号172)、OPN(逆方向)5’TGACCTCAGAAGATGAACTCT−3’(配列番号173)、GAPDH(順方向)5’−ACTTTGTCAAGCTCATTTCC−3’(配列番号174)、GAPDH(逆方向)5’−TGCAGCGAACTTTATTGATG−3’(配列番号175)の通りに標的遺伝子に対して特異的なプライマーを用いて、合成されたcDNA(SuperScriptIII;Invitrogen社製)を増幅した。増幅は、55℃(OPN)または60℃(GAPDH)で30秒間にわたるアニーリング、72℃で1分間にわたる伸長、および5分間にわたる最終伸長を伴う30サイクルにわたり実施した。臭化エチジウム染色した2%アガロースゲル上における電気泳動によりPCR産物を分離した。OPNおよびGAPDHのバンドサイズは、それぞれ、931bpおよび267bpであった。
(実施例3)
この実施例は、創傷治癒、線維症、および瘢痕形成に対する、オステオポンチン(「OPN」)発現の下方調節効果を示す。上記の表に記載のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(「AS ODN」)または対応するスクランブル配列の対照ODNを、30%プルロニックゲル中に1μMの濃度で、成体マウスの背中における、in vivoの4mmパンチ生検による創傷に適用した。OPNは、創傷形成の6時間後までに創傷肉芽組織内で発現し、3日後にレベルがピークに達し、次いで、7日後までに創傷前のレベルまで低下することが典型的である(図1A)。
OPNおよびマクロファージ特異的マーカーであるF4/80に対する抗体による免疫蛍光試験は、一部の創傷マクロファージが低レベルでOPNを発現するのに対し、大半のOPN陽性細胞はF4/80陰性であり、したがって間葉細胞由来であり、一部は周皮細胞でありうるが、線維芽細胞である可能性がきわめて高いことを示す(図1B)。創傷組織のウェスタンブロット解析は、ASノックダウンにより、OPNレベルが、創傷形成の6時間後に対照レベルの約25%、同3日後までに対照レベルの50%まで再現可能な形で低下することを示した(図1、CおよびD)。この低下は、これらの時点においてAS ODNで治療した創傷に由来する切片におけるOPNについての免疫組織化学(IHC)染色の低下と符合した。送達されたODNの取込みおよび局在化を可視化するため、本出願者らは、Cy3でタグしたOPN AS ODNを作製したところ、これは、創傷周縁部から1mm内側まで、また、創傷内部において300μmの深さまでの細胞層に広がる、非細胞株特異的な形での取込みを示す(図1D)。
(実施例4)
この実施例は、OPN AS ODNが、創傷治癒の速度および質を改善することを示す。
時間をマッチさせたOPNノックダウン創傷対対照創傷の目視解析は、OPN AS ODNで治療した創傷においては、修復時の早期の時点において閉鎖が顕著に加速されることを示し(図2、BおよびC)、3日後までに達成された完全閉鎖は、対照における24%の閉鎖と比較して平均56%であった。組織学的解析は、再上皮形成および結合組織収縮によりなされた相対的な寄与を明らかにし(図2D)、OPN AS ODNで治療した創傷においては、少なくとも3日後までの再上皮形成が著明に迅速であることをデータは示す(図2E)。データはまた、治癒過程中の全段階において、結合組織創傷の幅が対照未満であることも示し、これにより、試験対象の早期の時点からの結合組織収縮の増強が示唆される(図2F)。OPN AS ODNで治療した創傷部位内では、第3日に収縮性筋線維芽細胞のマーカーであるα−平滑筋アクチンが発現し、これが対照創傷における場合よりも早期である(図2G)ことは、このデータと合致する。AS ODNで治療した創傷は完全な閉鎖が可能である事実は、皮膚修復においてOPNが絶対に必要とされるわけではないことを裏付け、これは、OPNヌルマウスにおける創傷修復の観察と符合する(Liaw, L.、D.E. Birk、C.B. Ballas、J.S. Whitsitt、J.M. Davidson、およびB.L. Hogan、1998年、「Altered wound healing in mice lacking a functional osteopontin gene」(付録)、J Clin Invest、第101巻、1468〜1478頁)。このデータはまた、糖尿病マウスモデルにおいて観察される低度のOPN発現が、機能的に創傷治癒遅延の一因であるという考え(Sharma, A.ら(2006年)、J Invest Dermatol、第126巻、2323〜2331頁)にも反する。したがって、炎症細胞からのシグナルの帰結として、創傷の線維芽細胞により発現されるOPNは、修復速度を低下させる可能性がある。
創傷中央領域内における創傷肉芽組織の断面積を明らかにするために、Masson社製Trichromeにより切除創傷の切片を染色した(図2G)。すべての時点において、解析されたOPNノックダウン創傷は、肉芽組織の断面積を、対照と比較して大幅に減少させた(10および14日後において50%の減少;図2HおよびI)。これらのデータには、標準的な皮膚病変の修復時において本出願者らが認める広範な肉芽組織形成およびその後の線維症の少なくとも部分的な原因をなすものとしての、創傷部位におけるOPN発現が関与する。データでは、OPNが直接にこれらの変化の原因となりうるかどうか、またはこれらの変化が炎症反応の低下の間接的な帰結であるかどうかが区別されない。OPNの発現は、かつて他の解剖学的部位[例えば、肺(Pardo, A., K.ら(2005年)、PLoS Med、第2巻、e251頁)、肝臓(Lee, S.H.ら(2004年)、Biochem Pharmacol、第68巻、2367〜2378頁)、心臓(Matsui, Y.ら(2004年)、Hypertension、第43巻、1195〜1201頁)]におけるいくつかの線維性状態と相互に関連付けられてきたが、皮膚修復についてのこの試験は、OPN発現が線維症に寄与しうることの最初の機能的な裏付けである。
上皮突端長、上皮ギャップ、および創傷幅の測定。
図2Dに示す上皮突端長、上皮ギャップ、および創傷幅は、H&Eにより染色した組織切片上において、Openlab(商標)4.0.2(Improvision社製)ソフトウェアを用いて測定した。
(実施例5)
この実施例は、OPN AS ODNで治療した創傷部位におけるコラーゲン組織化の変化を示す。
OPNのノックダウンが修復過程から生じる瘢痕形成のレベルに影響を与えるかどうかに取り組むため、本出願者らは、1cmの切開創傷モデルを用い、これを最長3週間にわたり毎日モニタリングした。傷害の21日後における目視解析により、対照創傷は薄い線状の白色瘢痕を発生させるが、OPNノックダウン創傷ではこれが認知可能な程度に軽減されることが示された(図3A)。対照ODNで治療した創傷およびOPN AS ODNで治療した創傷において発生する瘢痕組織をさらに比較するため、3週間後の創傷切片に対するPicrosirius Red染色およびTEM解析に着手して、全体的なコラーゲンバンドル形成パターンを明らかにし、創傷結合組織における個々のコラーゲン原線維直径および原線維密度のそれぞれについて超構造解析を行った(図3B、C、D)。Picrosirius Redによる組織学的解析は、OPN AS ODNで治療した創傷における、より低密度の「瘢痕コラーゲン」を明らかにし(図3B)、超構造試験は、対照ODNで治療した創傷における114nm2/μm2および創傷形成なしの皮膚における132nm2/μm2と比較して、AS ODNで治療した創傷の中央領域全体の断面積のうち153nm2/μm2がコラーゲン線維を「欠く」(図3C)ように、より「中空の」細胞外腔(すなわち、コラーゲン原線維間および同バンドル間における空間)を示した。さらに、OPN AS ODNで治療した創傷においては、対照と比較したコラーゲン原線維直径の著明な減少が観察され、これらのいずれもが、創傷形成なしの皮膚よりも小さな直径を示した(それぞれ、56nm対81nm対114nm;図3、CおよびD)。創傷部位におけるコラーゲン原線維直径およびバンドル形成密度のこれらの違いは、OPN AS ODNで治療した創傷において後に見られる線維症の程度の違いを反映し、これをもたらす可能性がある。
コラーゲンの原線維形成は、ADAMTHファミリーメンバー、BMP1、および哺乳動物tolloidを含めたいくつかの酵素によるほか、細胞外マトリックスタンパク質との相互作用によっても調節されることが公知である(Canty, E.G.およびK.E. Kadler(2005年)、J Cell Sci、第118巻、1341〜1353頁)。ここでもまた深部の皮膚創傷部位におけるコラーゲン原線維の直径が野生型マウスにおける場合より小さいOPNヌルマウスに由来するデータ(Liaw, L.ら(1998年)、J Clin Invest、第101巻、1468〜1478頁)と共に、本出願に記載のデータは、この過程もまたOPNにより影響されうることを示す。OPNは、無傷皮膚および修復中の皮膚それぞれの結合組織の主要なアイソフォームであるコラーゲンI型およびコラーゲンIII型と直接に相互作用することが報告されている(Butler, W.T.(1995年)、Ann N Y Acad Sci、第760巻、6〜11頁)。代替的に、OPNは、例えば、AS OPNで治療した創傷において低下することが本出願者らにより裏付けられる、フィブロネクチンレベルを変化させることによっても、間接的にコラーゲン原線維の形成に影響しうるであろう(図4C)。フィブロネクチンヌルの線維芽細胞についての試験は、これら2つの分子の相互作用がコラーゲンアセンブリーにおいて重要な段階であることを示している(Velling, T.、J. Risteli、K. Wennerberg、D.F. Mosher、およびS. Johansson(2002年)、J Biol Chem、第277巻、37377〜37381頁)。
(実施例6)
この実施例は、OPN AS ODNで治療した創傷においては、白血球動員が著明に低下することを示す。
修復過程時において、組織損傷部位には、時間経過が重複する複数系列の炎症細胞が動員される。好中球およびマクロファージの両方が修復の各側面に影響を及ぼすことが公知であり、本出願者らの観察によれば、これらの細胞型の数が対照創傷においてピークに達するとき(すなわち、好中球の場合1日後、また、マクロファージの場合7日後;図4、AおよびB)に、OPN AS ODN治療の帰結として、これら両方の細胞型の数は著明に減少する。このデータは、OPNが、好中球系列およびマクロファージ系列に対する化学誘引物質として機能しうるという他のin vivoにおける証拠と符合する(Giachelli, C.M.ら(1998年)、Am J Pathol、第152巻、353〜358頁)。10日後には、これもまた創傷部位における組織リモデリングに関与する(Egozi, E.I.ら(2003年)、Wound Repair Regen、第11巻、46〜54頁)マスト細胞の数が、対照創傷と比較して減少する(図4、AおよびB)。炎症細胞の強力な化学誘引物質であるCcl2のほか、TGFβ1もコードするmRNAのレベル低下が創傷部位における炎症細胞数のこれらの減少と関連する(図4C)ことは、炎症エピソードの増幅をもたらす正のフィードバックループを、OPNノックダウンにより破壊しうることを示す。
(実施例7)
この実施例は、OPN AS ODNで治療した創傷における細胞外マトリックス沈着および血管形成の変化を示す。
OPNノックダウン創傷における肉芽組織の広がりの減少、およびこれと関連するTGFβ1[皮膚の創傷治癒時における線維形成因子(Frank, S.、M. Madlener、および S. Werner(1996年)、J Biol Chem、第271巻、10188〜10193頁)]の下方調節に導かれて、本出願者らは、創傷部位におけるマトリックス沈着の変化を探索した。本出願者らは、OPN AS ODNで治療した創傷においてフィブロネクチンおよびI型コラーゲンα1のmRNAが低下し、7日後以降、創傷により誘導されるメタロプロテイナーゼであるMMP9の発現レベルもまた著明に低下することを示す(図4C)。
血管形成は、創傷修復時における肉芽組織形成と密接に関連している。本出願者らは、対照創傷およびOPN AS ODN創傷における血小板/内皮細胞接着分子1(PECAM;CD31)についてのIHCにより血管形成を評価した。OPN AS ODNは、創傷形成の7日後における肉芽組織中央帯域において、対照創傷と比較して著明に多数の血管腔をもたらした(図4DおよびE)。創傷血管形成の程度のこの違いは14日後までに消失したので、これは、修復過程における早期の時点における血管浸潤速度の上昇を示す。OPN AS ODNで治療した創傷において著明な違いが認められるわけではないので、これは、創傷の血管形成因子であるVEGFレベルの変化に起因するものではないと考えられる。OPNが血管形成を直接に阻害する能力を有することを近年の証拠は示唆する(Leali, D.、E. Moroni、F. Bussolino、およびM. Presta(2007年)、J Biol Chem)が、本出願者らはまた、炎症反応が見られず、瘢痕形成が低下するPU.1ヌルマウスの皮膚創傷修復時においてもまた、創傷肉芽組織内の血管形成が著明に上昇する(Martin, P.ら(2003年)、Curr Biol、第13巻、1122〜1128頁)ことにも注目する。同様に、TNF−αを介するシグナル伝達を欠くTNF−Rp55ノックアウトマウスも、皮膚創傷部位における血管形成の上昇を示す(Mori, R.ら(2002年)、FASEB J、第16巻、963〜974頁)。これらの結果は、炎症反応および炎症性サイトカインが血管形成を負に調節する可能性があり、これにより、正常な創傷修復時において線維症が促進されうることを示す。
(実施例8)
この実施例は、OPN発現の炎症依存性調節が、大部分マクロファージを介することを示す。
野生型マウス対PU.1ヌルマウスにおける組織修復遺伝子の発現プロファイルの比較により、OPNは炎症依存性修復遺伝子であることが明らかとなったが、PU.1ヌルマウスは、好中球、マクロファージ、およびマスト細胞を欠いているので、これらの白血球系列のどれが、正常な修復状況においてOPN発現を誘導する原因でありうるかは不明であった。これに取り組むため、等数のJ774.1マクロファージ細胞、マウス好中球初代細胞、RBLマスト細胞、または骨髄に由来するマクロファージ初代細胞による馴化培地(CM)の存在下において、スイス3T3線維芽細胞を培養した(図5A)。ウェスタンブロット解析は、試験対象のすべてのマクロファージおよびマスト細胞により分泌された因子は3T3線維芽細胞によるOPN発現を誘発しうるが、好中球による場合はこれを誘発しえないことを示した(図5B)。正常なヒト皮膚線維芽細胞も同様に、マクロファージによる馴化培地に対して、OPNの頑健な上方調節により応答する。in vivoの創傷におけるOPN発現の誘導が、創傷へのマクロファージの最初の流入と時間的に一致するのに対し、マスト細胞数は傷害を経たはるか後にピークに達し、修復全体においても相対的に少数である[(Egozi, E.I.ら(2003年)、Wound Repair Regen、第11巻、46〜54頁;Trautmann, A.ら(2000年)、J Pathol、第190巻、100〜106頁)および図4]。マクロファージが、in vivoの治癒時において、OPNの上方調節に対する主要な誘導シグナルを供給している可能性が高いからといって、これらのデータは、マスト細胞からの寄与を除外するわけではない。そこで、マクロファージにより分泌されることが公知の6つの成長因子/サイトカイン(Rappolee, D.Aら(1988年)、Science、第241巻、708〜712頁)を、スイス3T3細胞においてそれらがOPN発現を誘導する能力について調べた。PDGF−BBはOPN発現を著明に上方調節することが可能であったが、EGF、TGFβ1、TGFβ3、IL−6、またはTNF−αはこれが可能でなかった(図5C)。PDGFが実際にマクロファージCMによるOPNの誘導を媒介していたことを確認するため、本出願者らは、線維芽細胞をマクロファージCMに曝露する際、GleevecまたはPDGF−Rβ中和抗体によりPDGF−Rシグナル伝達を抑制し(図5、DおよびE)、OPN発現が著明に低下することを示した。OPNの誘導は、ウォルトマニンによっても同様に遮断することができ(図5F)、これには、このシグナルの伝達におけるPDGFの下流のPI3Kシグナル伝達カスケードが関与する。in vivoの状況においては、血小板の脱顆粒化によるPDGFの放出が傷害直後に生じるがこれは一過性であり、その後、常在の創傷細胞および浸潤するマクロファージを介する局所的な上方調節により補完される。
本出願者らは、経時的実験を実施して、OPN発現に必要とされる最小のPDGF曝露時間に取り組んだところ、データは、OPNレベルが最初の曝露の約8時間後にピークに達し、少なくとも2時間の曝露時間を必要とすることを示唆する(図5G)。PU.1ヌルマウスは、血小板生態は正常であるが、創傷においてOPNを発現しないという観察(Cooper, L.、C. Johnson、F. Burslem、およびP. Martin、2005年、Genome Biol、第6巻、R5頁)と併せて考えると、これらの結果は、血小板由来PDGFへの曝露だけでは、OPN発現を誘導するのに十分ではなく、マクロファージ由来のPDGFへの線維芽細胞の持続的な曝露がOPN誘導の原因であることを示唆する。
組織修復部位におけるOPN発現が、治癒に対して大部分は有害な帰結をもたらすと考えられる一方、修復過程が始まってからGleevec治療を送達すると創傷閉鎖が著明に遅延するという観察によって強調される通り、PDGFについて同じことは当てはまらない(Rajkumar, V.S.ら(2006年)、Am J Pathol、第169巻、2254〜2265頁)。実際、創傷に対するPDGF−BBの局所適用は、慢性潰瘍の治癒を加速させることが示されている(Chan, R.K.ら(2006年)、J Burn Care Res、第27巻、202〜205頁)が、この治癒速度の改善は、肉芽組織および瘢痕形成の増大を伴うという証拠が存在する(Lynch, S.E.、J.C. Nixon、R.B. Colvin、およびH.N. Antoniades(1987年)、Proc Natl Acad Sci U S A、第84巻、7696〜7700頁)。これらの負の副作用は、PDGFにより誘導されるOPN発現に起因する可能性があり、そのOPNの下方調節は、Gleevecが肺線維症および皮膚線維症を軽減する分子機構でありうる(Distler, J.H.ら(2007年)、Arthritis Rheum、第56巻、311〜322頁;Aono, Y.ら(2005年)、Am J Respir Crit Care Med、第171巻、1279〜1285頁)。TGFβ1もTGFβ3も創傷線維芽細胞によるOPN発現を誘発する原因となる誘導シグナルではないが、OPNの急速なノックダウンにより、治癒速度および修復の最終的な質の両方が改善されることを、試験は示している。
まとめると、これらのin vivoにおける創傷試験および組織培養実験は、例えば、マクロファージに由来するPDGFなど、炎症細胞を介するシグナルが創傷線維芽細胞におけるOPNの発現を誘発する可能性があり、これが修復を遅延させると共に、創傷治癒の結果として線維症を引き起こしうることを示す。OPN発現は、多面発現効果、創傷血管形成への影響、炎症反応の増幅、およびまた線維芽細胞内におけるマトリックス遺伝子発現の直接的な調節により線維症を増大させうる。
(実施例9)
単独で、または以下の例示的な配列:GTA ATT GCG GCA GGA GGA ATT GTT TCT GTC(コネキシン43)(配列番号2)およびGAC AGA AAC AAT TCC TCC TGC CGC ATT TAC(センス対照)(配列番号176)により調製された抗コネキシン43ポリヌクレオチド調製物との組合せで抗オステオポンチンAS ODN組成物を逐次投与した後において、表10に由来する配列により調製された抗オステオポンチンポリヌクレオチド調製物を投与する方法を、ラット糖尿病モデルにおける創傷治癒の有効性について評価した。
クエン酸緩衝液中に65mg/kgのストレプトゾトシンを含有する単回腹腔内注射により、成体のSprague−Dawleyラット(350〜400g)において糖尿病を誘導した(Shotton HR、Clarke S、Lincoln J.(2003年))。自律神経が分枝を供出する臓器が異なれば、糖尿病性自律神経障害治療の有効性も同じではなくなる(同上)。自律神経が分枝を供出する臓器が異なれば、糖尿病性自律神経障害治療の有効性も同じではなくなる(同上)。自律神経が分枝を供出する臓器が異なれば、糖尿病性自律神経障害治療の有効性も同じではなくなる(時点当たりN=6匹の糖尿病ラット、6匹の対照ラット)。ほとんどの糖尿病性創傷治癒試験は、糖尿病誘導の2週間後に行い、同じ時点をこの創傷治癒試験について使用する。しかしながら、糖尿病ラットの皮膚におけるコネキシン発現を8週間でも検査し(1時点当たりN=6の糖尿病、6の対照)、2週間で検出された変化が同じままであることを確認する。正常な背の皮膚を切除し、凍結切片化し、コネキシンについて免疫染色し、共焦点顕微鏡法によって染色し、Saitongdeeら(2000年)Effects of hibernation on expression of multiple gap junction connexins in hamster myocardium、Cardiovascular Res. 47巻、108〜115頁に記述されている通り染色を定量化する。
ラットにハロタンで麻酔をかけ、それらの背中を剃毛した。5×5mmの全層切除創傷2対を作製した。プルロニックF−127ゲル中に10μMのコネキシン43オリゴデオキシヌクレオチドGTA ATT GCG GCA GGA GGA ATT GTT TCT GTC(配列番号2)を一方の創傷に適用し、対照(センス)ゲルを他方の創傷に適用した。
1分、5分、10分、30分、1時間、または6時間以内に、プルロニックF−127ゲル中に1μMの表10に由来する抗オステオポンチン剤を一方の創傷に適用し、対照(プルロニックF−127ゲルだけ)を第2の創傷に適用した。
創傷の1、2、5、10および15日後に組織を採取し、コネキシン免疫組織化学またはH&E染色の準備のために切片化する(Coutinho Pら(2003年)Dynamic changes in connexin expression correlate with key events in the wound healing process. Cell Biol. Int.27巻:525〜541頁)。1時点当たりN=6匹の糖尿病、6匹の対照ラット。
細胞間コミュニケーションを、ゲルフォーム綿球中の4%Lucifer Yellow CH(Sigma)溶液を新しい全層皮膚切開中へ適用することによって評価する。5分間色素が移動するままにした後、ゲルフォームの除去および組織の固定を行った。損傷細胞に入るがギャップジャンクションを通過しない、10kD Kd FITC−デキストランを対照として使用する。組織を凍結切片化し、Leica SP2UV(Leica、Milton Keynes、UK)において共焦点顕微鏡によって撮像する。
移動した色素およびコネキシン免疫染色を、共焦点顕微鏡を使用して検査する。最適ゲインおよびオフセットを事前に設定し、画像取得処理の間一定に保つ。単一光学切片画像を連続して取得し、傷口から皮膚の合成写真を作成する。デジタル画像(8ビット)を、Image−Jソフトウェア(NIH)を使用して解析する。色素の移動を評価するために、1500×30ピクセルの対象領域ボックスを切断端部から真皮中央に置き、ボックスを横切る画像強度グラフを作成する。50を下回るグレーレベル強度を、Lucifer Yellowが移動した点とする。同様に、表皮において、傷口からLucifer Yellowシグナルが50を下回った場所までの距離を記録する。各動物の3つの画像の最小値を分析する。コネキシンタンパク質のレベルを比較するために、真皮または表皮の6つの単一光学切片画像を、各創傷について異なる切片から撮影する。レーザー出力、ピンホール、ゲイン/オフセットおよび対物レンズの全てのパラメータを、対照および糖尿病群の両方にわたって一定に保つ。コネキシン発現を、Saitongdee Pら(2000年)(同上)に記載の通りに定量する。最小のバックグラウンドノイズを有するギャップジャンクションプラークを検出するために閾値を設定し、全ての画像について一定に保つ。各画像に関してコネキシンプラークの数および大きさを記録し、表皮100mまたは真皮10000m2当たりで表す。このアプローチは、細胞レベルでのタンパク質発現に関する情報を発するため、ウェスタンブロットよりもはるかに正確であることが分かった。ウェスタンブロットは、表皮細胞と真皮細胞を区別することも、創縁に近接していることの影響も検出できない。このアプローチを使用して、創縁(WE)の領域および500μm離れた(AD)領域におけるケラチン生成細胞中のコネキシンレベルを、創傷の1または2日後に定量することができる。創傷後5日目に、追加の、新生表皮の先端(LE)領域も撮像する。H&E染色の画像を、DC300Fデジタルカメラを備えたLeica DMLFS顕微鏡を使用して撮影する。再上皮化率の測定は、Qiu, Cら(2003年)Targeting connexin43 expression accelerates the rate of wound repair. Curr. Biol. 13巻:1697〜1703頁において詳細に記述されている。Statview5.0.1に提供されているWilcoxonの符号付き順位検定を使用して、処置間の全ての数値差を有意性に関して試験する。
正常ラットおよびSTZ糖尿病ラット皮膚における相対的なコネキシン43および26染色レベルを、糖尿病誘導後2週および8週で測定し、比較する。グラフをプロットして、表皮および真皮におけるプラークの数を示す。対照および糖尿病皮膚における典型的なコネキシン43およびコネキシン26免疫染色の画像を8週で取得する(矢印は表皮と真皮の境界を示す;スケールバー25m)。対照および糖尿病ラットの表皮および真皮において、ギャップジャンクション透過色素であるLucifer Yellowが5分で移動した相対距離を定量する。
典型的には点状のコネキシン43免疫染色が、表皮基底層において、ならびに真皮線維芽細胞、毛包、血管および付属器において見られる。しかしながら、糖尿病皮膚ではコネキシン43染色は、表皮において、ギャップジャンクションプラークの大きさおよび数の両方に関して顕著に低減しうる。表皮の上層におけるコネキシン26の染色は、糖尿病表皮において同様に低減しうる。
糖尿病表皮および真皮における細胞間コミュニケーションを評価するために、ギャップ−ジャンクション透過色素Lucifer Yellowが5分で組織を通して移動する程度を検査する。コネキシン43タンパク質の発現上昇およびコミュニケーション増加が、ヒト糖尿病線維芽細胞において報告されており(Abdullah KMら(1999年)Cell−to−cell communication and expression of gap junctional proteins in human diabetic and nondiabetic skin fibroblasts: effects of basic fibroblast growth factor、Endocrine 10巻:35〜41頁);糖尿病に対する異なるコネキシンの混合反応が腎臓系において言及されている(Zhang J、Hill CE.(2005年)Differential connexin expression in preglomerular and postglomerular vasculature: accentuation during diabetes、Kidney Int.68巻:1171〜1185頁)。
対照および糖尿病表皮における損傷後の再上皮化およびコネキシン43およびコネキシン26タンパク質レベルの反応の相対的な比率を測定する。創傷の1または2日後に創縁(WE)の表皮および500m離れた隣接(AD)表皮におけるプラークを計数することによって、染色を定量する。5日目に、新生表皮の先端(LE)のさらなる領域を定量する。
創傷治癒過程の間、対照および糖尿病皮膚の表皮創縁のコネキシン43およびコネキシン26染色(緑色)および核染色(青色)を測定し、画像解析によって処理する。
損傷に対するコネキシン発現の動的応答を測定するため、創縁(WE)のケラチン生成細胞および500μm離れた隣接(AD)領域内のケラチン生成細胞におけるコネキシン染色を、創傷の1または2日後に定量する。5日後、先端(LE)ケラチン生成細胞を撮像する。
糖尿病WEケラチン生成細胞において起こりうるコネキシン43タンパク質の増加の作用を、損傷時に創傷に適用されるコネキシン43特異的アンチセンスゲルで、その増加を阻止することによって評価する。
糖尿病の表皮創縁におけるコネキシン43の異常な上方制御の新知見は重要であり、様々な様式における創傷閉鎖の過程に影響を及ぼす可能性を有している。再生中の表皮の中における連絡区画の形成は、創傷治癒において役割を果たすと提唱されている(Martin P(1997年)Wound healing − aiming for perfect skin regeneration、Science 276巻:75〜81頁;Lampe PDら(1998年)Cellular interaction of integrin alpha3beta1 with laminin 5 promotes gap junctional communication. J. Cell Biol. 143巻:1735〜1747頁;Hodgins M(2004年)Connecting wounds with connexins. J. Invest. Dermatol. 122巻:解説)。先端部の細胞におけるコネキシン26の発現およびコネキシン43の除去によって、これらのコネキシンは相互のジャンクションを形成しないため、通常の条件において区画化を効率的にもたらすことができるであろう。したがって、糖尿病における創傷治癒の遅延は、このような区画化が起こりうる点までコネキシン43発現を下方制御するのに必要な追加の時間を反映するものでありうるであろう。あるいは、コネキシン43のCテールは、細胞骨格成分またはP120ctn/Rho GTPaseと相互作用することが公知であり、そのためコネキシン43の下方制御は、創縁のケラチン生成細胞の運動性を変化させるのに必要であり得、これは、それらが移動して創傷を閉鎖するのを可能にする(Wei CJら(2004年)Connexins and cell signaling in development and disease、Annu Rev Cell Dev Biol. 20巻:811〜838頁)。
(実施例10)
抗オステオポンチンAS ODN組成物を単独で、あるいは以下の例示的な配列:SRPTEKTIFII(配列番号19)を用いて調製された抗コネキシン43ペプチド製剤の投与に続いて、以下の例示的な配列:GTAATTGCGGCAGGAGGAATTGTTTCTGTC(コネキシン43)(配列番号2)およびGACAGAAACAATTCCTCCTGCCGCATTTAC(センス対照)(配列番号176)を用いて調製された抗コネキシン43ポリヌクレオチド製剤と組み合わせて、糖尿病オスSprague Dawleyラットにin vivoで逐次投与した後、糖尿病対象における創傷治癒効果を調査する。糖尿病対象における創傷治癒を定量するために、創傷の引張強度を調査し、引張強度の増強は創傷治癒の向上を反映する。
糖尿病ラット動物モデルは、治癒しにくい糖尿病性創傷を研究するための確立されたモデル系である(Davidson、Arch. Dermatol. Res. 290巻:S1〜S11頁)。糖尿病は微小血管病を伴うため、この動物モデルは創傷治癒における動脈性要因の障害を研究するのにも適している。
糖尿病を誘導するために、250〜300gの体重を有するラットに新しく調製したストレプトゾトシン(Sigma)の水溶液を腹腔内注入する(50mg/体重kg)。誘導の7〜9日後動物の血糖を調べ、200mg/dLを超える血糖濃度値で糖尿病状態を確認する。糖尿病ラットおよび非糖尿病対照動物に、その後2%O2(2l/分)および1.25%イソフルランからなる混合物で麻酔をかける。背中を除毛し、その後の創傷のために各動物の背中に2箇所に印をつける。次いで創傷箇所に長さ1cmの切開創傷を作製し、創傷を創傷クリップで閉鎖する。
まず、プルロニックF−127ゲル中100〜500マイクログラムの抗コネキシン43ペプチドSRPTEKTIFII(配列番号19)と組み合わせた表10に示される、1〜5μmの抗オステオポンチンAS ODN組成物を1つの創傷に適用し、対照(プルロニックF−127ゲルのみ)を第2の創傷に適用する。その後、プルロニックF−127ゲル中10μMのコネキシン43オリゴデオキシヌクレオチドGTAATTGCGGCAGGAGGAATTGTTTCTGTC(配列番号2)を1つの創傷に、対照(センス)ゲルをもう一方に、1分、5分、10分、30分、1時間または6時間のいずれか以内で適用する。
10日後に創傷生検を採取し、製造業者の使用説明書に従ってInstron張力計を使用して創傷の引張強度を測定し、創傷の断面積を標準化する。
その後、処置される創傷の引張強度の絶対値および対照製剤を投与されるだけの同じ動物における創傷の引張強度の絶対値から、商(E/C値)を計算する。E/C値の平均を決定し、処置に対する引張強度の変化を測定する。
(実施例11)
抗オステオポンチン剤もしくはPDGF受容体阻害剤またはこれらの両方(場合によって、抗コネキシン剤と共に)を組み合わせることにより、本発明の特定の製剤を調製する。これらの有効成分は、治療所望量、例えば、約0.01%〜10%の濃度で、ナトリウムカルボキシメチルセルロース;塩化ナトリウム;酢酸ナトリウム三水和物;氷酢酸;メチルパラベン、プロピルパラベン、およびm−クレゾールの1もしくは複数またはすべてなどの防腐剤あるいは防腐剤の組合せ;L−リシンヒドロクロリド(必要または所望の場合のタンパク質安定化剤);および注射用水と共に供給される。ナトリウム含量およびpHは、それぞれ、生理的塩濃度に近似し、(1または複数の)活性薬剤の最大の安定性を確立するように選択する。ポリエチレンライナーでラミネート加工されたアルミニウムチューブ内にゲルを満たし、単回使用産物または複数回使用産物を提供することができる。複数回使用産物を調製する場合には、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびm−クレゾールの1もしくは複数またはすべてなどの防腐剤あるいは防腐剤の組合せを用いる。
本明細書において参照されたかまたは言及されたすべての特許、出版物、科学論文、ウェブサイトならびに他の文書および資料は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示すものであり、これらの参照文書および資料はそれぞれ、個別にその全体が参照により組み込まれたか、またはその全体が本明細書に記載された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。出願人は、任意の上記の特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、および別の参照資料または文書の、任意のおよびすべての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を保有する。
本明細書に記載されている具体的な方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、それらは例示的であって本発明の範囲を限定するものではない。別の目的、態様、および実施形態が、本明細書を考慮すれば当業者には思いつくはずであり、本特許請求の範囲によって定義されている通り本発明の精神に包含される。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な置換および変更を本明細書に開示されている本発明に対して行ってもよいことが、当業者には容易に明らかとなるはずである。例示的に本明細書に適当に記載されている本発明は、本明細書において不可欠であると特に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、あるいは1つまたは複数の限定の不在下で実施されてもよい。したがって、例えば、本発明の実施形態または実施例において、本明細書におけるそれぞれの場合において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」のいずれかの用語は、本明細書中の他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。また、「含む(comprising)」、「含んでいる(including)」、「含有している」などの用語は、包括的であって限定ではないと読み取るべきである。例示的に本明細書に記載されている方法およびプロセスは、異なる順序の工程で適当に実施されてもよく、必ずしも本明細書または本特許請求の範囲に示された工程の順序に制限されない。本明細書および添付の特許請求の範囲においても使用されているように、単数形「a」「an」および「the」は、文脈上別途明確に指示のない限り複数形への言及を含む。いかなる場合においても、本特許は、本明細書に特に開示されている具体的な実施例または実施形態または方法に限定されると解釈されるものではない。いかなる場合においても、本特許は、そのような陳述が、出願人による答弁書において明確に認められた限定または制限がなければ、特許商標庁のいかなる審査官またはいかなる別の当局者もしくは関係者によってなされたいかなる陳述によっても限定されると解釈されるものではない。
採用されている用語および表現は、説明であって限定するものではない用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示されているおよび説明されている特徴のいかなる均等物またはその一部も除外する意図はないが、請求されている本発明の範囲内で様々な変更形態が可能であることが認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書に開示されている概念の変更形態および変形形態が当業者によって用いられてもよいこと、およびこのような変更形態および変形形態が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるはずである。
本発明が、本明細書において広く一般的に記載された。一般的開示に含まれるそれぞれのより狭い種(species)および亜属集団(subgeneric grouping)もまた、本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書で具体的に挙げられているか否かに関係なく、その属の任意対象を除くという条件または否定的な限定を伴う本発明の一般的記載を含む。
別の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ(Markush)グループに関して記載される場合、当業者は、本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもそれによって記載されることを認識するはずである。