本明細書において引用したすべての特許および文献は、それらの全体が本明細書において参照により援用される。
樹状細胞(DC)は、末梢免疫系全体に局在するプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)である。外来抗原が侵入すると、未熟なDCの血液から組織への移動が誘発され、ここで、これらのDCは、抗原を検出および捕捉する(非特許文献1)。活性化されたDCは、MHC分子(MHC分子または主要組織適合性複合体と呼ばれる1組の膜糖タンパク質)を介して捕捉したタンパク質を免疫原性ペプチドに処理し、そしてT細胞に提示する。DCによる病原体の侵入の認識は、Toll様受容体(TLR)およびレクチンを含むパターン認識受容体(PRR)によって仲介される(非特許文献2;非特許文献3)。DCの表面上に発現されるレクチンは、カルシウム依存的C型レクチン受容体(CLR)ファミリーのメンバーであり、そしてDCの抗原捕捉および内在化において重要な役割を果たす(非特許文献3)。CLRもまた、マクロファージを含む他のAPC上で発現される。
CLRファミリーは、カルシウム依存的様式で糖タンパク質リガンド上の多糖に結合することによって、タンパク質−炭水化物相互作用を実施する多くのタンパク質を含む。多数のCLRが、外来性病原体を認識するAPCの表面上に発現されるPRRに属し、宿主免疫応答において重要な役割を果たす。II型CLRは、それらのNH2末端ドメイン、細胞の細胞質に局在する細胞質尾部(CT)によって分類される。他のII型CLRドメインは、CTの後に膜貫通ドメイン(TMD)、カルボキシル末端に細胞外に暴露された単一の炭水化物認識ドメイン(CRD)、およびTMDとCRDとの間にネックドメインを含む。
ヒト染色体19p13.3に局在するII型CLR、CD23/LSECtin/DC−SIGN/L−SIGNのヒトレクチン遺伝子クラスターが、益々注目されている。類似のゲノム構造を有するヒトDC−SIGN、hL−SIGNおよびhLSECtin(非特許文献4)は、病原体認識を仲介することが可能な重要なC型レクチンである。ヒトCD23(FCER2)は、細胞間接着、B細胞生存および抗原提示に重要な役割を果たす低い親和性のIgE受容体である。樹状細胞特異的細胞内接着分子−3(「ICAM−3」)−グラビング非インテグリン(また、「DC−SIGN」としても公知であるヒトCD209、44kDa II型膜貫通タンパク質)、CLRが、DCおよびT細胞相互作用を仲介するICAM−3結合タンパク質として同定され(非特許文献5)、そしてHIV−1の感受性細胞へのトランスでの伝播を仲介するHIV−1 gp120受容体として同定された(非特許文献6)。さらに、DC−SIGNは、ICAM−2結合タンパク質と相互作用し、休止内皮および活性化内皮の両方を介するDCのケモカイン誘導性輸送を調節することが見出された(非特許文献7)。第2のヒトDC−SIGN(hDC−SIGN)相同体、hL−SIGN(CD209L)またはDC−SIGNRが続いて同定され、そして類似の機能であるが、hDC−SIGNとは若干異なる病原体認識の特性を有することを示した(非特許文献8)。
ヒトDC−SIGNは、単球由来ヒトDCにおいてインビトロで、正常なヒトリンパ節、真皮、粘膜および脾臓の未熟および成熟DCにおいて、ならびに肺の肺胞のマクロファージにおいてインビボで主に発現される(非特許文献5;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)が、L−SIGNは、肝臓およびリンパ節の類洞内皮細胞において高度に発現される(非特許文献8)。L−SIGN相同体は、ヒトおよび非ヒト霊長類のみにおいて存在し、他の非霊長類の哺乳動物種には存在しないことが観察されている。
最近、肝臓およびリンパ節類洞内皮細胞(LSEC)においてhL−SIGNと共に同時発現される第3のヒトDC−SIGN関連C型レクチン(「CLEC4G」として同定され、そして「LSECtin」と命名された)は、病原体認識および抗原捕捉の類似の特性を有するとみなされた(非特許文献12)。hLSECtin以外では、他の哺乳動物種におけるLSECtin相同体は、実験的に同定されていないが、限定的な遺伝子情報を、ゲノムのデータベースから検索することができる。
器官のサイズおよび生理学がヒトに類似するため、ブタは、異種移植に好適な供給源動物であると考えられている(非特許文献13)。分子相互作用のヒト−ブタ種の間の障壁の適合性を理解することは、ブタからヒトへの異種移植の臨床適用に極めて重要である。ブタ造血細胞上の受容体とヒト内皮細胞のリガンドとの相互作用は、ブタ造血細胞を使用して、ヒトレシピエントにおける忍容性を誘導する事象において極めて重要な役割を果たす(非特許文献14)。T細胞仲介異種移植片拒絶(同種抗原よりブタ抗原に対してより強力なヒトT細胞応答の誘導によっておそらく引き起こされる現象)もまた、DCのようなブタAPCとヒトT細胞との間の接着分子の潜在的な相互作用を要した(非特許文献15)。DC−SIGNは、さらに、ICAM−2およびICAM−3の内因性接着因子受容体として認められている(非特許文献5;非特許文献16;非特許文献17)。
ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、世界中で経済的に重要なブタ病原体は、ニドウイルス(Nidovirales)目のアルテリウイルス(Arteriviridae)科のメンバーである。これまで世界中で同定されたPRRSV単離体は、同じ疾患症状を引き起こすが、抗原的に異なる2つの異なる遺伝子型、欧州型(1型)および北米型(2型)遺伝子型に分けられる。HIVおよびHCVのような他のエンベロープウイルスと同様に、PRRSVの宿主細胞、即ち、ブタ肺胞マクロファージへの進入は、シアロアドヘシン、CD163およびヘパラン硫酸を含むいくつかの進入因子の存在が関与する複雑な多段階プロセスである(非特許文献18)。しかし、PRRSVとAPC上のブタPRRとの間の潜在的な相互作用については、未だ報告されていない。ヒトL−SIGNが肺におけるSARS−コロナウイルスの進入に関連することが明らかにされたため、PRRSVおよびコロナウイルスは両方ともニドウイルス(Nidovirales)目に属することから、ブタDC−SIGN/L−SIGN相同体がブタ肺におけるPRRSV感染中に類似の役割を果たす可能性はあるが、結論を導き出す前に有意な実験が保証されなければならない。
(特許文献1およびその他に記載の)サル腎細胞系統ならびに初代ブタ肺胞マクロファージ(PAM)は、増殖性PRRSV複製を支持することが公知のただ2つの細胞であるが、BHK−21細胞系統のような他の細胞は、複製コンピテントである、即ち、PRRSV複製を支持するのに必要な能力を有することが示されている(非特許文献19;非特許文献20)。例えば、BHK細胞を、ウイルスRNA、または欧州型株LVもしくは北米型株VR−2332の全長ゲノムcDNAからインビトロで合成したRNA転写物でトランスフェクトした場合、PRRSV複製のエビデンスが、BHK細胞において検出された。PRRSVビリオンが培地に産生および抽出された;そしてトランスフェクトBHK−21細胞由来の上清をPRRSV許容細胞に移した場合、細胞変性効果(CPE)が観察された。不運にも、トランスフェクトされたBHK−21細胞において複製中のウイルスは、細胞から細胞に拡大せず、BHK−21細胞上に受容体が存在しないことが示されている。推定PRRSV結合受容体が、肺胞マクロファージ由来の210kDaの膜タンパク質であることが同定された報告がある(非特許文献21)が、ウイルス進入のレベルでのこの受容体候補の機能的確認は、なお認められていない。最近、ブタシアロアドヘシン(pSn)が、PAMにおけるPRRSVの内在化を仲介すること(非特許文献22)、およびpSnがシアル酸結合レクチンであり、そしてPRRSビリオン上のシアル酸とpSnとの間の相互作用がPAMのPRRSV感染に必須であること(非特許文献23)が示されている。ヒト、マウスおよびブタでは、シアロアドヘシンは、組織マクロファージの個別のサブセットにおいてのみ発現される。PRRSVは、インビボでブタの呼吸器およびリンパ系のマクロファージに感染することが公知である。PRRSVが樹状細胞のような他の単球由来リンパ球にインビボでも感染するため、およびPRRSVビリオンの構造が極めて複雑であるため、複数の別の受容体および/または共受容体がこれらの細胞上に存在する可能性がある。加えて、感受性サル腎細胞上のPPRSV受容体は、未だ同定されていない。
マクロファージおよび樹状細胞は、病原体の認識に重要であり、そして侵入する病原体に対する免疫において重要な役割を果たす。ヒトDC−SIGNおよび関連する肝臓内皮細胞レクチンL−SIGNは、特徴付けられており、そして樹状細胞様細胞の表面で多量に発現することが見出されている(非特許文献24)。さらに加えて、C型マンノース結合レクチンhDC−SIGNおよびhL−SIGN(またはDC−SIGNR)では、HIVのようなエンベロープウイルス、細菌(マイコバクテリウム(Mycobacterium))、インビトロでの真菌および寄生体(非特許文献25)、デングウイルス(非特許文献26)、エボラウイルス(非特許文献27)、マールブルグウイルス(非特許文献28)、SARS−コロナウイルス(非特許文献28)、サイトメガロウイルス(非特許文献29)、およびC型肝炎ウイルス(非特許文献30;非特許文献31)を含む病原体に結合し、そして取り込んで、細胞への侵入および感染を容易にするそれらの能力が、かなり注目されている。hDC−SIGNおよびhL−SIGNの両方とも、エンベロープウイルスの広範なスペクトルにおいて、ウイルスエンベロープ糖タンパク質のアスパラギン連結高マンノースグリカンに、カルシウム(Ca2+)依存的様式で緊密に結合するC型レクチン特異的炭水化物認識ドメイン(CRD)を含有する(非特許文献32)。従って、C型レクチンは、DC−SIGNまたはL−SIGNを発現する細胞上でウイルスを濃縮し、そしてウイルスの細胞への結合および進入を容易にする。
DC−SIGNは、HIV gp120に結合し、そしてT細胞へのHIV伝播を容易にすることが報告されている(非特許文献33;非特許文献34;非特許文献35;非特許文献36。DC−SIGNおよびL−SIGNは、C型肝炎ウイルス糖タンパク質E2の高親和性結合受容体であり(非特許文献37)、そしてC型肝炎ウイルスによる肝臓細胞のトランス感染を仲介する(非特許文献30;非特許文献31)ことが示されている。DC−SIGNはまた、ヒト樹状細胞のデングウイルス感染を仲介することが見出されている(非特許文献26)。DC−SIGNおよびL−SIGNは、エボラウイルスによるシスおよびトランスでの細胞進入を仲介することが示されている(非特許文献27;非特許文献38)。他の報告では、レトロウイルス科(Retroviridae)(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)およびネコ免疫不全ウイルス(FIV))、フラビウイルス科(Flaviviridae)(デングウイルス、ウエストナイルウイルスおよびC型肝炎ウイルス(HCV))、フィロウイルス科(Filoviridae)(エボラおよびマールブルグウイルス)、コロナウイルス科(Coronaviridae)(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS−CoV))、トガウイルス科(Togaviridae)(シンドビスウイルス)ならびにヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(ヒトサイトメガロウイルス(ヒトCMV))を含むエンベロープウイルスの広範なスペクトルが、インビトロで増強された感染の認識および接着分子受容体としてDC−SIGNおよび/またはL−SIGNを使用することが報告されている(非特許文献39)。
DC−SIGNおよびL−SIGNは、ホモ四量体II型膜タンパク質であり、そしてC末端炭水化物認識ドメインを介して、ウイルスエンベロープ糖タンパク質上のマンノース含有複合糖質およびフコース含有ルイス血液型抗原のような比較的多数のN結合型炭水化物を認識することができる(非特許文献40;非特許文献41)。PRRSVビリオンエンベロープ上の4つの糖タンパク質のうち、GP2a、GP3、GP4およびGP5は、コンピュータの予想に基づくと、それぞれ2〜7個のNグリコシル化部位を含有する。エンドグリコシダーゼ処理により、すべての推定部位が複合型N−グリカンによって占有されることが示唆された(非特許文献20)。これらの観察は、DC−SIGN/L−SIGNは、PRRSVビリオン上の1つ以上の糖タンパク質と相互作用し得、それ故、PRRSV進入およびエンドサイトーシスを仲介することを示唆する。DC−SIGNは、DCおよびいくつかのタイプのマクロファージ(両方ともPRRSV複製の重要な標的である)上で発現される。L−SIGNは、類洞内皮細胞および胎盤マクロファージ上で発現されることが見出された。DC−SIGNの胎盤発現は、HIVの子宮内での垂直伝播を仲介することが見出された(非特許文献36)。偶然にも、PRRSVは、妊娠雌性ブタにおいて生殖疾患を引き起こすことが公知である。
PRRSVがメンバーであるアルテリウイルス(Arteriviridae)科と共にニドウイルス(Nidovirales)目のコロナウイルス(Coronaviridae)科に属するSARS−コロナウイルスもまた、ウイルス感染および発病中にS糖タンパク質を使用して、DC−SIGNおよびL−SIGNに結合することが示された(非特許文献28;非特許文献42)。PRRSVおよびコロナウイルス(Coronaviruses)は同じスーパーファミリーに属するが、感染および発病のためにPRRSVも同様にDC−SIGNまたはL−SIGNを使用するかどうかについて決定するためには、さらなる試験が必要である。
最近の研究により、ニパウイルス表面糖タンパク質(NiV−G)は、hLSECtinに結合することが可能であり、そしてhLSECtinは、ニパウイルス表面糖タンパク質(NiV−G)の推定受容体であることが報告された(非特許文献43)。相互作用は、NiV−GのGlcNAcβ1−2Man末端構造によって仲介された。エボラウイルスのエンベロープ表面糖タンパク質(短縮型グリカン)ならびに重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS−CoV)のスパイクタンパク質は、これらの炭水化物モチーフを有し、そしてhLSECtinによって特異的に認識される(非特許文献44)。hDC−SIGNおよびhL−SIGNとは異なり、hLSECtinは、末端に二糖GlcNAcβ1−2Manが存在する糖タンパク質に選択的に結合した。
さらに加えて、DC−SIGNおよびL−SIGNは、ヒトのゲノムレベルにおいて、独立した2つの遺伝子であると考えられる。先のDC−SIGN/L−SIGNヒト研究において示されたように、保存配列により、それらは、類似するが、異なる機能を有し得る。しかし、L−SIGNの生物学的または生理的役割は肝臓に限定される(L−SIGNのmRNAは肝臓においてのみ発現される)が、DC−SIGNは、身体全体の樹状細胞において機能する。
他の関連技術が、ヒトC型レクチンおよびヒトDC−SIGNについて公開されている。例えば、特許文献2(Hoppe et al.)は、組み換えタンパク質を発現するように誘導された細菌培養物の溶解物から精製されたヒトSP−DのコレクチンC型レクチンドメインおよびネック領域−レクチンドメインを含むポリペプチドについて説明しており、ポリペプチドは、コレクチンネック領域において三量体化することが可能である。三量体化ポリペプチドについて示唆される用途は、特に低い親和性で結合する受容体のペプチド−リガンド(例えば、神経ペプチド、インターロイキン)、抗原、活性化時に反応性である化学化合物、例えば、光活性化可能な化学架橋剤、カフェインおよびモルヒネのような有機化合物、薬学的研究において潜在的インヒビターのスクリーニングのための低親和性結合ドメインなどのように、コラーゲン形成を刺激することである。
特許文献3(Yang et al.)は、ヒトC型レクチン、および「CLAX」(C型レクチン活性化発現)タンパク質と称される3つの相同体をコードする単離されたcDNA配列について説明している。この特許は、ヒトCLAXタンパク質のすべてまたは一部(例えば、細胞外領域)を有する核酸配列、ポリペプチド、融合タンパク質、CLAXに特異的な抗体、ヒトCLAXのリガンドおよびインヒビターを使用する方法について開示している。タンパク質を含有する医薬組成物は、感染性、炎症性およびアレルギー疾患の予防ならびに治療に使用されることが示唆される。
特許文献4(Messier et al.)は、ヒトおよび/または非ヒト霊長類において、AIDSの発達に対する感受性(ヒト)または耐性(チンパンジー)を含む疾患のような生理学的条件に関連し得るポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を同定するための方法を提供する。生理学的特色には、AIDSの進行に対する耐性が含まれ;ポリヌクレオチドは、ヒトDC−SIGN遺伝子であってもよく;次いで、調節された機能は、AIDSの進行に対して増加した耐性である。配列は、宿主の治療標的としておよび/またはスクリーニングアッセイにおいて有用であることが示唆される。
特許文献5(Lee)は、粘膜に対し投与しようとするウイルス特異的リガンドの半減期を増加する方法に関し、ここで、前記膜には、粘膜上でコロニー化した細菌に結合するように細菌特異的リガンドを改変することによって、ラクトバチルス(Lactobacillus)、連鎖球菌(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、バクテロイデス(Bacteroides)、バチルス(Bacillus)、およびナイセリア(Neisseria)のような細菌がコロニーを形成する。この特許はまた、CD4、DC−SIGN、ICAM−1、HveA、HveC、ポリオウイルス受容体、ビトロネクチン受容体、CD21、またはIgA受容体配列のようなウイルス特異的リガンドおよび抗体、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または炭水化物のような細菌特異的リガンドを含むキメラ分子を開示している。
特許文献6(Littman et al.)は、樹状細胞上で特異的に発現され、そしてヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるTリンパ球の感染を容易にする受容体としてのヒトDC−SIGNに関する。この特許は、DC−SIGNおよびHIVならびに/あるいはT細胞およびマクロファージの相互作用を調節する化合物を同定するためのアッセイを提供し、ここで、化合物は、細胞へのHIV進入のトランス増強を阻害する。
特許文献7(Figdor et al.)は、樹状細胞の表面上のC型レクチン受容体のT細胞の表面上のICAM受容体への接着を調節することによって、免疫応答を調節するための組成物の調製におけるマンノース、フコース、植物レクチン、抗生物質、タンパク質、または樹状細胞の表面上のC型レクチンに結合するC型レクチンに対する抗体の使用に関する。この特許は、樹状細胞とT細胞との間、即ち、樹状細胞の表面上のDC−SIGNとT細胞の表面上のICAM−3受容体との間の結合を阻害する抗体を開示している。特異的抗原に対する免疫応答を予防/阻害するため、忍容性を誘導するため、免疫療法のため、免疫抑制のため、自己免疫疾患の治療、アレルギーの治療および/またはHIV感染を阻害するための組成物が提示される。
上記のように、免疫学的スーパーファミリーの一部として、DC−SIGNとICAM−3との間に生物学的関係が認められる。細胞接着分子(ICAM)は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのサブファミリーに属するI型膜貫通糖タンパク質である。これまで、ICAMファミリーのうちの5つのメンバー(ICAM1〜5)が、哺乳動物において同定されている(非特許文献45)。それらは、機能的および構造的Ig様ドメインを共有し、そして免疫系の機能に関連の細胞間接着相互作用を仲介する(非特許文献46)。ICAM−5を除いて、他のすべてのICAMメンバーはインテグリンLFA−1(CD11a/CD18)に結合するが、組織の分布に大きなばらつきが認められる(非特許文献45)。これらの接着相互作用は、炎症および非炎症組織を介して白血球輸送を仲介するのに重要な役割を果たし、そして抗原特異的T細胞応答に寄与する。ICAM−1およびICAM−2は、両方とも、休止中の白血球および抗原提示細胞(APC)において、発現されないか、または極めて低いレベルでしか発現されないため、ICAMメンバーのうち、ICAM−3は、免疫応答の開始中、LFA−1の優勢なリガンドであると考えられる(非特許文献47)。ICAM−3とDC−SIGNとの間の相互作用が、抗原提示中の樹状細胞と休止T細胞との間の初期の接触を確立することについて、ICAM−2およびICAM−3のC型レクチン、ヒトDC−SIGNへの結合が報告されているが、ICAM−2のヒトDC−SIGNへの結合により、樹状細胞の遊出および内皮を介する移動が調節される(非特許文献5;非特許文献7)。
全長ICAM分子は、シグナルペプチド配列、2つの(ICAM2およびICAM4)、5つの(ICAM1およびICAM3)または9つの(ICAM−5)細胞外Ig様ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン(TMD)、および細胞質尾部(CT)を含有する。各Ig様ドメインは、異なるエキソンによってコードされる(非特許文献48;非特許文献49)。選択的スプライシングによって作製されたマウスICAM−1のアイソフォームは、ICAM−1欠損マウスにおいて同定されている(非特許文献50;非特許文献51)。各マウスICAM−1アイソフォームは、Ig様ドメイン2、3、および/または4をコードするエキソンの完全なスキッピングから作製される。加えて、エキソン6における別の5’スプライス部位の存在によってもまた、エキソン6の3’末端から69−ntの欠失を伴うマウスICAM−1アイソフォームが生じる(非特許文献52)。マウスICAM−4では、イントロン保持により生じる貫通膜ドメインを欠くアイソフォームもまた同定された(非特許文献53)。これまでに同定されているすべてのICAMアイソフォームは十分に機能的であり、別のmRNAスプライシングは、異なる免疫応答経路において異なる役割を果たすことが示される。
ヒト−ブタ−マウス−ラットまたはヒト−イヌ−マウス−ラットゲノム領域に基づく2つの比較配列解析は、ICAM3遺伝子が、げっ歯類のゲノムにおいて消失していることを示した(非特許文献54;非特許文献55)。ヒト、非ヒト霊長類およびウシにおけるICAM3遺伝子の構成は類似し、7つの推定エキソンを含有しており、そしてエキソン3〜7は、遺伝子の3’−近位領域においてクラスター化される(非特許文献56;非特許文献57)。ブタICAM−3については、エキソン1〜部分的なエキソン5の領域のみが同定および配列決定されているため、遺伝子配列はなお完全には知られていない(非特許文献55)。加えて、ブタICAM−3のcDNAは、これまで同定されていない。
エキソン内で生じるナンセンス変異は、ナンセンス変異に伴う選択的スプライシング(NAS)として標示されるプレmRNAスプライシングプロセス中のエキソンスキッピングを誘導することができる(非特許文献58;非特許文献59;非特許文献60)。翻訳の中途終止により、機能的タンパク質を産生することができなくなるため、少数の疾患を引き起こす遺伝子において認められているように、NASは、通常、疾患に関連する(非特許文献58)。NASの機構は、スライシング、間接的ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)またはエキソンスプライシングエンハンサー(ESE)破壊前に翻訳様核スキャニングが生じることによると考えられる(非特許文献58)。
ヒトDC−SIGNは、ヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎ウイルス、デングウイルスおよびSARS−コロナウイルスのような様々なエンベロープウイルスのそれらのそれぞれの標的細胞への伝播に関与する一方、他の種から得られるDC−SIGNタンパク質の特徴および特性が、原則としてhDC−SIGNを模倣することは認められていない。従って、所定の任意のDC−SIGNの機能を割り当てるために、さらなる試験が必要である。現時点の発見の前は、ブタ種由来のDC−SIGNおよび他のLSECtin関連相同体は、単離も、同定も、特徴付けも、されていなかった。
本発明に従えば、ブタDC−SIGN(pDC−SIGN)、ブタICAM−3(pICAM−3)、ブタLSECtin(pLSECtin)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列の少なくとも1つの相補体、およびヌクレオチド配列の少なくとも1つの機能的な定義された部分を含む機能的フラグメントを含むこれまでに知られていない単離された核酸分子が提供される。
ゲノムPCR技術を使用して、本発明は、イノシシ(Sus scrofa)(イノシシ、ブタ科のメンバー)のインビトロで培養したブタ単球由来樹状細胞から単離された独特なpDC−SIGNをコードする遺伝子全体およびcDNA配列の分子クローニングおよび特徴付けを示す。マウスおよび文献において先に記載された他の種のゲノムデータベースにおけるDC−SIGN相同体のコンピュータに基づくスクリーニングとは異なり、DC−SIGN関連ブタ遺伝子配列は、ブタゲノムデータベースにおいて利用することができず、それ故、完全な核酸配列をクローニングすることが課題であった。
また、本発明の範囲には、ブタ肝臓組織から単離された新たなpLSECtinタンパク質をコードする完全な遺伝子およびcDNA配列も含まれる。本発明の開示物は、関連のブタタンパク質の組織および細胞部分布を示し、pDC−SIGNとhICAM−3との間の交差相互作用を例示し、pDC−SIGNとhICAM−2との間の交差相互作用を示し、そして特に重要なことに、pDC−SIGNによるトランスでの標的細胞へのPRRSV伝播の増大を実証する。
本発明の根拠は、hDC−SIGNおよびhL−SIGNが、多くのエンベロープウイルス、特に、PRRSVのようなマクロファージおよび樹状細胞において複製するそれらのウイルスの結合受容体であり得るという報告による。ヒトDC−SIGNはまた、生殖系におけるPRRSV発病を仲介し、そして生殖不能に関与し得る。ブタ特異的DC−SIGNおよびpLSECtin遺伝子を本明細書において同定し、そしてhDC−SIGNおよびhL−SIGNと比較したところ、タンパク質構造において予想されていなかった類似性が今回観察されたことから、本明細書において、PRRSVは、pDC−SIGNを利用して、マクロファージおよび樹状細胞への進入を容易にし得、そしてBHK−21のような複製コンピテント細胞におけるpDC−SIGNの発現が増殖性PRRSV複製を生じることができることが決定される。従って、本発明は、さらに、増殖性PRRSV複製を効率的に支持する遺伝子操作された安定なトランスフェクト細胞または細胞系統に関する。
意外なことに、本発明では、ブタLSECtinは、アミノ酸レベルでヒトLSECtinと高度に同一であることが観察されており、pLSECtinは、hLSECtinと同じ炭水化物−タンパク質相互作用パターンを共有することが示されている。先の研究では、ニパウイルス表面糖タンパク質(NiV−G)がヒトLSECtinに結合する能力、およびNiV−Gの推定受容体としてhLSECtinの可能な機能が報告された(T. A. Bowden et al., 2008、印刷中、上掲)。他の研究では、エボラウイルスのエンベロープタンパク質ならびにSARS−CoVのスパイクタンパク質は、同じ炭水化物モチーフを有し、そしてまた、hLSECtinによって認識されることが報告された(T. Gramberg et al., 2005、上掲)。本発明の新たに発見されたpLSECtinとhLSECtinとの間に今回認められた類似性のため、新たなpLSECtinは、病原体認識受容体(PRR)としての役割を果たして、宿主の生来の免疫応答を誘発し、そしてブタでの感染中のニパウイルスまたは他の病原性ブタエンベロープウイルスの伝播および拡大を容易にし得る。従って、pLSECtinの有用性には、ウイルス−pLSECtin相互作用を阻止するための特異的抗ウイルス薬(例えば、炭水化物リガンド、siRNAなど)の設計、pLSECtin依存的抗原認識を刺激し、そして宿主の生来の免疫応答を改善して、ワクチンの効力を増強する因子などを含有するウイルスワクチンの開発が含まれる。
また、本発明には、融合されたまたは融合タンパク質が含まれる。融合タンパク質は、pDC−SIGNに連結されたpLSECtinを含み得る一方、融合されたタンパク質もまた、他のタンパク質の機能的な定義された部分に連結されたpLSECtinまたはpDC−SIGNを含み得る。単独のもしくは融合されたpLSECtin、pDC−SIGNまたはその機能的な定義された部分のいずれも、hDC−SIGN、hL−SIGN、hLSECtinおよびそれらの組み合わせ、またはそれらの機能的な定義された部分からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質にさらに融合させてもよい。タンパク質の機能的な定義された部分は、ブタもしくはヒト相同体における免疫原性機能、受容体活性もしくは結合能を有することが同定されるそれらのドメインまたは領域、例えば、pDC−SIGNもしくはpLSECtinの炭水化物認識ドメイン、hDC−SIGN、hL−SIGN、hLSECtinの細胞質尾部、膜貫通ドメインもしくは反復ネック領域、あるいはそれらの組み合わせに関する。
好適な実施形態では、融合されたまたは融合タンパク質は、抗原を捕捉することを担うpDC−SIGNまたはpLSECtinの炭水化物認識ドメイン(CRD)、ならびにエンドサイトーシスによって捕捉された抗原を細胞に吸収または貪食することを担うhDC−SIGN、hLSECtinまたはhL−SIGNの細胞質尾部(CT)、膜貫通ドメイン(TMD)および反復ネック領域を含有してもよい。
PRRSVのような所定のエンベロープウイルスは、MARC−145細胞系統のような限定された細胞系統のみにおいて、限定された程度で増殖することができ、そして十分な力価で培養することは困難である。BHK−21細胞の培養物のような他の細胞系統は、PRRSVが細胞の内部で複製することを可能にするが、PRRSVを細胞から細胞へ拡大させないことから、これは、ウイルスが、他の非感染BHK−21細胞に進入することができないことを意味し、抗原の産生、従って、実用的なワクチン製品の製造には課題が残る。有利なことに、PRRSV受容体、即ち、pDC−SIGN、pICAM−3、pLSECtinなど、但し、望ましくは、pLSECtin、pDC−SIGNまたはその融合されたタンパク質構築物は、ウイルスが他の非感染細胞に進入し、十分な力価で繁殖することを可能にするBHK−21細胞(即ち、生体工学的BHK−21細胞系統)の表面上で安定に発現させることができる。
従って、本発明に重要な態様は、ウイルス、好ましくは、エンベロープウイルス(主に、RNAウイルスである)、特に、細胞培養で全くまたは限定された程度でしか繁殖させることができないそれらのウイルスを、適切な細胞系統において繁殖させる新たなかつ高度に有益な方法を包含する。例えば、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ呼吸器型コロナウイルス(PRCV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、ブタ内在性レトロウイルス、ブタサイトメガロウイルス、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、アフリカブタコレラウイルス、ブタコレラウイルス、ブタポックスウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(PHEV)などのようなエンベロープブタウイルス、ならびに感染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、デングウイルス、ウエストナイルウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS−CoV)、ネココロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(ヒトCMV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、シンドビスウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、ウマ動脈炎ウイルス(EAV)などを培養するのに使用するための本発明のタンパク質もしくは融合されたタンパク質構築物を安定に発現するプラスミドまたはベクターが特に有利である。好ましくは、ブタワクチンを製造する目的でPRRSVの繁殖を有意に改善するための新たな方法が用いられる。様E型肝炎ウイルス(HEV)、ブタサーコウイルス2型などの非エンベロープウイルスもまた、新たな方法に使用することができる。
本発明のこの新規の方法に従えば、pDC−SIGN、pICAM−3、pLSECtin、ヌクレオチド配列の少なくとも1つの相補体、それらの機能的な定義された部分または関連する融合されたタンパク質産物を安定に発現する新たな生体工学的細胞または細胞系統が、ウイルスを繁殖させるために使用される。発現されたタンパク質は、ウイルス受容体としての役割を果たして、ビリオンを捕捉して、細胞に取り込む。この方法においてブタタンパク質が存在すると、ウイルスの細胞間移行を援助し、それによって、ウイルスの繁殖を増強することによって、意外な利点が提供される。
1つの点に関して、改善された方法は、次の工程を用いる:(a)pDC−SIGN、pICAM−3およびpLSECtinからなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列の少なくとも1つの相補体、ならびにヌクレオチド配列の少なくとも1つの機能的な定義された部分を含有するトランスフェクト細胞または細胞系統を提供する工程;(b)細胞増殖培地においてトランスフェクトされた宿主細胞または細胞系統を増殖させて、培養物を形成する工程;(c)前記培養物にウイルスを播種する工程;ならびに(d)播種された培養物を、適切なウイルス培地において、培養物中でウイルスを増殖させるのに有効な条件下でインキュベートする工程。方法は、細胞変性効果が観察されるか、または高い力価が達成されるまで、播種された培養物をインキュベートする工程;あるいは細胞を溶解して、細胞内のビリオンを放出させる工程;および(g)ウイルス抗原を回収する工程を、場合により、さらに含み得る。
プロセス展開のためのウイルスを繁殖させるための独特な方法はまた、次の基本工程を含み得る:(a)ポリペプチド産物の発現を可能にする様式で、pDC−SIGN、pICAM−3およびpLSECtinからなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列の少なくとも1つの相補体、ならびにヌクレオチド配列の少なくとも1つの機能的な定義された部分を含むベクターまたは本明細書に記載の融合されたタンパク質で適切な細胞をトランスフェクトする工程;(b)タンパク質または融合ポリペプチド産物を安定に発現する細胞を、適切な細胞増殖培地により単層で増殖させる工程;(c)増殖培地を取り出し、ウイルスストックを細胞に播種し、続いて、37℃で通常1時間の初期の短期間のインキュベーションを行う工程;(d)ウイルス培地を添加し、そしてウイルスの量が、ウイルスに依存してCPE(細胞変性効果)または高い力価によって示されるような十分なレベルに到達するまで、ウイルスを2〜3日間培養する工程;ならびに(e)細胞を溶解して、細胞内のビリオンを放出させ、ウイルス滴定を実施し、そしてウイルスストックを凍結する工程。
独特なブタDC−SIGN遺伝子は、ヒトDC−SIGNおよびマウスSIGNRファミリーに相同であるが、本明細書に記載のような所定のばらつきがあることが見出されている。新たなブタDC−SIGNタンパク質は、240アミノ酸を有し、そしてII型膜貫通タンパク質であることが見出されている。そのC末端では、細胞外領域は、炭水化物認識ドメイン(CRD)を含有する。意外なことに、ブタDC−SIGNの推定アミノ酸配列は、ヒトDC−SIGN、非ヒト霊長類DC−SIGNまたは他のマウスSIGNR相同体よりも、系統的に、マウスSIGNR7およびSIGNR8により緊密に関連し、ブタDC−SIGNの異なる進化経路を示す。遺伝子を含有する真核細胞発現プラスミドでトランスフェクトされたBHK−21細胞の表面上のブタDC−SIGNタンパク質の一過性発現を、特異的抗ペプチドブタDC−SIGN抗体による免疫蛍光アッセイによって確認した。
ヒト、非ヒト霊長類およびマウスDC−SIGN遺伝子に基づく縮重RT−PCRプライマーを使用することによって、ヒトDC−SIGN(hDC−SIGN)に相同な配列を伴う短いフラグメントを、インビトロで培養したブタ単球由来樹状細胞から増幅した。続いて、最初に得られる配列に基づいて、完全なcDNAおよびブタDC−SIGN相同体の遺伝子の両方を、cDNA末端迅速増幅(RACE)−PCRによって決定した。さらに、ブタDC−SIGN遺伝子の発現は、細胞表面に局在することを見出し、タンパク質の膜貫通特性が確認された。続いて、pDC−SIGN特異的抗体を作製し、そしてpDC−SIGNを発現する安定な細胞系統を開発した。遺伝子構造、組織および細胞分布ならびにpDC−SIGNのヒトICAM−3およびICAM−2免疫接着因子へのインビトロ結合特性、ならびにpDC−SIGNとPRRSVとの間の潜在的な相互作用を特徴付けた。
従って、本発明の重要な実施形態は、pDC−SIGNをコードする単離されたもしくは精製された核酸分子またはそのcDNAクローンあるいはpDC−SIGN単独かまたはhDC−SIGN、hL−SIGN、hLSECtinに連結されたpDC−SIGNから構築されたタンパク質融合産物、あるいはそれらの任意の組み合わせに関する。望ましくは、pDC−SIGNをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1またはその相補鎖を含む。当該技術分野において周知である従来の方法を使用して、例えば、当該分野において認識された標準的なまたは高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション技術によって、配列番号1に高い相同性を有する相補鎖またはヌクレオチド配列を作製することができる。
本発明のもう1つの重要な実施形態は、pLSECtinをコードするcDNAおよび完全な遺伝子の同定および特徴付けに関する。全長pLSECtinのcDNAは、290個のアミノ酸のII型膜貫通タンパク質をコードする。今回、ブタLSECtin遺伝子が、ヒトLSECtin遺伝子、ならびに9つのエキソンを伴う推定ウシ、イヌ、マウスおよびラットLSECtin遺伝子と同じ遺伝子構造を有することが見出されている。LSECtinのmRNAの端側3’−非翻訳領域における複数種保存性部位は、それぞれ、家畜におけるマイクロRNA miR−350および霊長類におけるmiR−145の標的になることが予想された。ヒトLSECtinと同様に、pLSECtinのmRNA発現は、肝臓、リンパ節および脾臓に分布した。pLSECtinプレmRNAの一連の連続中間産物もまた、ブタ肝臓からのスプライシング中に同定した。
また、本発明の範囲内には、本明細書に記載の新たな核酸分子または融合産物を含有する生物学的に機能的なプラスミド、ウイルスベクターなど、本発明のプラスミドまたはベクターによって一過的にトランスフェクトされた適切な細胞、およびポリペプチド発現産物が含まれる。本発明の目的のために、ベクターは、広い意味で、任意の市販の標準的なウイルスベクターであってもよく、または当業者に公知の同種の生物学的に機能的なプラスミドであってもよいが、好ましくは、本発明の例示された組み換え2シストロン性ベクターpTriEx−PDCSから最適かつ有利な結果を達成するためのpTriEx−1.1 Neoである。
例示および比較により、組み換え2シストロン性ベクターpTriEx−PDCSの構築および本明細書に記載のブタDC−SIGNを安定に発現するBHK−21細胞系統の作製のためのpTriEx−1.1 Neoは、他のベクターより有意な利点を提供する。pDC−SIGNを安定に発現するBHK−21細胞系統を作製するためのpTriEx−PDCSおよびpCI−PDCS構築物をそれぞれ設計し、次いで、フローサイトメトリー解析によって試験して、一過的にトランスフェクトされた細胞の百分率を調べた。pCI−PDCS構築物の結果は、pCI−PDCSプラスミドの一過性トランスフェクションにより、pDC−SIGNの約10%〜30%の発現(図3)を示した。極めて対照的に、図8aの上の第2のパネルに示すフローサイトメトリー分取は、ベクターをトランスフェクトしたコントロールと比較して、構築された新たな細胞系統の95%を超える細胞がpTriEx−PDCSの使用によりpDC−SIGNを発現したことを実証する。両方の実験の詳細を以下に記載する。
最適なトランスフェクション結果のため、および本発明のタンパク質を安定に発現する細胞または細胞系統の構築のために、プロセスでは、G418耐性スクリーニングまたは当業者に公知の類似のスクリーニング技術を利用することが強く所望される。pDC−SIGN、pICAM−3および/またはpLSECtinを安定に発現するようにトランスフェクトすることができ、ウイルス繁殖に特に有用であり、ウイルス収量を増加し、そして免疫応答を誘導し、特に、ブタ抗原に対する免疫応答を増加する適切な細胞または細胞系統として、限定されないが、BHK−21、MARC−145、PK−15、COS−7、VERO、CV−1、LLC−MK2、MDCK、MDBK、Raji B、CHO−K1、3D4/31、SJPL、IPEC−J2、THP−1、RAW264.7、ST細胞、MA−104、293Tなどの培養物が挙げられ、但し、好ましくは、宿主細胞は、BHK−21細胞、MARC−145細胞または他の樹状細胞系統、マクロファージ細胞系統、単球系細胞系統、絨毛細胞系統、リンパ系細胞細胞系統など、望ましくは、単球由来樹状細胞、間質樹状細胞などの培養物を含む。本明細書に記載の新規の発現、繁殖および関連する方法は、pDC−SIGN、または宿主細胞へのウイルス進入を可能にするウイルス受容体として作製されるその誘導された融合構築物を安定に発現するそのような適切な細胞または細胞系統を利用する。用語は、本発明の目的のために本明細書において同義的に使用されるが、用語「宿主細胞」は、動物またはヒトから直接および外部で培養される初代細胞を指し、即ち、本発明の宿主細胞は、顕微鏡または微生物レベルにおいてであり、動物またはヒト全体の感染に基づくものではないことが意図される。用語「細胞」は、宿主(例えば、ブタ)細胞系統に属さない初期のタイプの単離された細胞を指す。用語「細胞系統」は、特定の細胞タイプに代表的な樹立された細胞系統を指す。
特に好適なタンパク質またはポリペプチドは、共通の用語として、同義的に使用され、配列番号2および図2に記載のアミノ酸配列を有する単離されたpDC−SIGNポリペプチドを包含し、単離されたpICAM−3ポリペプチドは、配列番号5および図11a〜11bに記載のアミノ酸配列を有し、そして単離されたpLSECtinポリペプチドは、配列番号37および図14b〜14cに記載のアミノ酸配列を有する。ブタタンパク質の生物学的に活性な変異体も本発明にさらに包含される。当業者であれば、ポリペプチド配列由来のアミノ酸を改変、置換、欠失などし、そして過度の努力を伴わずに、親配列と同じか、または実質的に同じ活性を保持する生物学的に活性な変異体を産生させる仕方を知っている。
本発明のポリペプチド産物、特に、pDC−SIGN、pLSECtinまたはその融合タンパク質構築物を産生または発現させるために、プロセスは、次の工程を含んでもよい:適切な栄養条件下で、選択された核酸分子でトランスフェクトされた原核細胞または真核細胞宿主細胞を、ポリペプチド産物またはポリペプチド融合産物の発現を可能にする様式で増殖させ、そして当該技術分野において公知の標準的な方法によって、前記核酸分子の発現の所望されるポリペプチド産物を単離する工程。トランスフェクションのための核酸分子は、例えば、pDC−SIGN、pICAM−3およびpLSECtinからなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列の少なくとも1つの相補体、ならびにヌクレオチド配列の少なくとも1つの機能的な定義された部分、または本明細書に記載の融合タンパク質を含む。本発明のブタタンパク質、融合されたタンパク質などは、例えば、生化学合成などのような他の技術によって調製してもよいことが考慮される。
本発明のもう1つの重要な実施形態は、pDC−SIGN、特に、配列番号2のアミノ酸配列に対して惹起され、そしてそれに特異的に結合する単離されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体、さらにまた、配列番号5および配列番号37のそれぞれのアミノ酸配列に特異的に結合するpICAM−3およびpLSECtinに対して惹起された抗体に関する。好ましくは、抗体はポリクローナルであり、そしてポリクローナル抗体は、配列番号13、配列番号14または配列番号13および配列番号14の組み合わせを含むペプチド領域に特異的に結合する。また、本発明の範囲内には、pDC−SIGN、特に、配列番号2またはpICAM−3もしくはpLSECtinのアミノ酸配列に特異的に結合する例えば、マンノース−、フコース−またはガラクトース−含有オリゴ糖などのような天然または人工的に合成されたオリゴ糖リガンド、ならびにpDC−SIGN、pICAM−3およびpLSECtin、望ましくは、pLSECtinまたはpDC−SIGNを認識する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系統が含まれる。抗体、オリゴ糖リガンドおよびハイブリドーマ細胞系統は、本明細書に記載の方法によって、ならびに当業者に公知の標準的な方法によって調製してもよい。
オリゴ糖リガンドのpDC−SIGNのような1つ以上のブタタンパク質への結合は、例えば、ビオチン−ストレプトアビジン系を介するポリペプチド抗原−オリゴ糖複合体の作製によって仲介され得る。第1に、ポリペプチド抗原は、ストレプトアビジンに化学的に結合される。続いて、ストレプトアビジン−抗原コンジュゲートは、ストレプトアビジン−ビオチン結合を介して、オリゴ糖−PAA−ビオチンに連結される。インビトロでの研究では、例えば、pDC−SIGNのようなブタタンパク質を安定に発現する細胞系統を、抗原−オリゴ糖コンジュゲートと共にインキュベートして、リガンド内在化について調べ、その活性を確認し、そして抗原特異的エフェクターT細胞の活性化と、ポリペプチドのみによって誘導される活性化とを比較する。オリゴ糖リガンドに加えて、抗pDC−SIGN抗体、抗pICAM−3抗体または抗pLSECTin抗体を使用して、ポリペプチド抗原に架橋し、それぞれpDC−SIGN、pICAM−3またはpLSECtin受容体を標的にすることができる。pDC−SIGN特異的オリゴ糖または抗pDC−SIGN抗体を添加すると、抗原が免疫応答を開始する未熟樹状細胞に集中する。
基本的に、本発明のハイブリドーマ細胞系統は、次のものによって調製され得る:本発明のブタタンパク質抗原によるマウスの免疫化およびハイブリドーマ細胞の作製のためのマウスドナーの選択;抗体産生のためのマウスのスクリーニング;骨髄腫細胞の調製;骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合;限界希釈によるハイブリドーマ細胞系統のクローニング;ならびに腹水産生によるクローンの拡大および安定化。当業者であれば、他の日常的工程または文献において公開された方法を介して、ハイブリドーマ細胞系統を産生させる仕方を理解していることが考慮される。
本発明は、新たな免疫原性組成物、ならびにpDC−SIGN、pICAM−3および/またはpLSECtinを標的にすることによって、抗原特異的免疫応答を増強することができるブタタンパク質抗体を使用する方法をさらに含む。本発明の文脈内で使用するように、pDC−SIGNまたはpICAM−3を「標的にする」とは、身体全体を通して、未熟樹状細胞が、リガンド(例えば、オリゴ糖もしくは抗DC−SIGN抗体)と樹状細胞上の受容体(例えば、DC−SIGN)との間の相互作用によって、免疫化された抗原−オリゴ糖コンジュゲートまたは抗原−抗タンパク質抗体複合体を認識する(そのままの抗原(naked antigen)で免疫するより効率的である)ことを意味する。pLSECtin受容体を標的にするための適切な抗体複合体の同種の使用には、肝臓細胞が関与する。
本発明はまた、非毒性の生理学的に許容できるキャリアおよび抗原と混合されたかまたは共有結合した免疫原性量の本明細書に記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体、あるいは、本明細書に記載のブタタンパク質を伴うキャリアを含む新規の獣医学的組成物を包含する。好ましくは、コンジュゲートワクチンが使用され、そしてこれは、標準的なプロセスによって作製して、貧弱な抗原をキャリアタンパク質として作用する抗体に共有結合させ、それによって、付着した抗原に免疫学的属性を付与することができる。
ブタに投与する場合、本発明の獣医学的組成物は、例えば、ブタサーコウイルス2型(PCV−2)、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィラス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ菌(Pasteurella multocida)、豚連鎖球菌(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレレスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ属細菌、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタパルボウイルス、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ呼吸器型コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病、ブタ伝染性胃腸炎などの原因病原体のような1つ以上のブタ抗原を含有してもよい。本発明の組成物は、場合により、多様な典型的に非毒性の薬学的に許容できるキャリア、添加物、希釈剤およびアジュバントを含有する。例示として、獣医学的組成物を、例えば、PCV−2およびPRRSVのような1つ以上の抗原との混合またはそれにコンジュゲートされたpDC−SIGN、pICAM−3またはpLSECtinに特異的な抗ペプチドポリクローナル抗体を、適切なキャリア、保存剤およびアジュバントシステムとの組み合わせで含有するように調製してもよい。
本発明において所望される遺伝子操作されたワクチンは、当該技術分野において公知の技術によって生成される。そのような技術は、組み換えDNAのさらなる操作、DC−SIGNタンパク質のアミノ酸配列の修飾または置換などに関与するが、これらに限定されない。
本発明の融合されたタンパク質産物は、例えば、ヒトDC−SIGN/L−SIGNの細胞質尾部(CT)、膜貫通ドメイン(TMD)および反復ネック領域とブタDC−SIGNの炭水化物認識ドメイン(CRD)とを融合することによって、作製してもよい。例示として、2ラウンドのPCRを含む融合PCR技術を実施して、所望される融合フラグメントを作製してもよい。第1ラウンドのPCRでは、全長ヒトDC−SIGN/L−SIGNのcDNAから得られたヒトDC−SIGN/L−SIGNのCT、TMDおよびネック領域を含有する上流のフラグメントを、ヒトDC−SIGN/L−SIGNのcDNAクローンを使用して、プライマーP1およびP2によって増幅する一方、全長ブタDC−SIGNのcDNAから誘導されるブタDC−SIGNのCRDを含有する下流のフラグメントを、プライマーP3およびP4によって増幅する。プライマーP2およびP3は、相互に逆相補的である。それらの3’または5’末端で短いストレッチ(約25bp)を共有する2つのフラグメントを精製し、そして第2のラウンドのPCRのテンプレートとして使用して、プライマーP1およびP4で融合フラグメントを増幅する。第2のラウンドのPCR産物を、所望される制限酵素で二重消化し、そして同じ制限酵素で消化した発現ベクターにクローニングする。この融合PCR技術については、S.U. Emerson et al., “In vitro replication of hepatitis E virus (HEV) genomes and of an HEV replicon expressing green fluorescent protein,” J. Virol. 78(9):4838-4846 (2004)にさらに説明されている。
フラグメントが活性であり、そして本発明において有用であることを決定するために、標準的なリガンド結合およびエンドサイトーシス活性アッセイを実施して、融合されたタンパク質のいずれかの部分の潜在的役割を確認してもよい。典型的に、pDC−SIGNまたはpLSECtinのcDNAから単離された融合タンパク質のCRD(炭水化物認識ドメイン)部分は、リガンド−結合アッセイによって確認可能なブタ病原体の認識および捕捉を担う一方、hDC−SIGN、hLSECtinまたはhL−SIGNから誘導される融合タンパク質のCT(細胞質尾部)、TMD(膜貫通ドメイン)および反復ネック領域は、捕捉された病原体の細胞へのエンドサイトーシスによる取り込みを担い、これは、エンドサイトーシス活性アッセイによって実証することができる。
本発明は、本明細書に記載の免疫学的に有効量の獣医学的組成物を動物に投与することを含む未処置のおよびリコールT細胞応答を効率的に誘導することによって、動物における抗原(即ち、免疫原として作用する病原体)に対する受動免疫を付与する新たな方法を含む。抗原または病原体に対する抗原特異的免疫応答を提供する方法は、pDC−SIGN、pICAM−3またはpLSECtinを標的にすることによって、弱い抗原または病原体の免疫原性活性を増強するように優先的に設計される。これに関して、共有結合型ワクチン産物が特に有用である。抗体組成物由来の増強された免疫学的有効性を必要とする貧弱な抗原または免疫原性物質は、ウイルス、細菌、真菌または寄生体を含む。本発明の抗体は、細胞受容体部位における病原体の増強された進入を提供し、免疫応答の誘導、最終的に疾患伝播の予防を援助する。好ましくは、免疫原性増強組成物を必要とする動物は、ブタであるが、ウシまたはイヌのような他の動物もまた有益であることが予想される。
方法では、本発明の免疫学的有効量の組成物は、動物において防御免疫応答を誘導するために、疾患または感染に対する保護が必要な動物、特に、幼期のブタに投与される。pDC−SIGN、pICAM−3またはpLSECtinを標的にすると、動物の免疫応答が増強される。有効な免疫量とは、病原体の有害効果から動物を保護するために、十分な免疫学的応答が達成される量である。獣医学的組成物が、少なくとも、ワクチン分野における標準値により必要とされるかなりの数の播種された動物を保護することが可能である場合、防御免疫応答が得られると考えられる。動物に播種され、そして満足のいくワクチン接種効果を発揮する免疫学的に有効な用量または有効な免疫量は、標準的な滴定研究のような日常的な試験によって、容易に決定または滴定することができる。
本発明の新規の免疫原性組成物は、健常な動物、好ましくは、約3箇月齢の幼期ブタのワクチン接種に用いられる。ワクチンはまた、繁殖期前の雌性ブタ(即ち、3箇月齢を超える)のような成熟または成獣動物に投与してもよい。ワクチンは、抗体価が低下し、そして追加注入が必要と思われる場合、単回用量または反復用量で、投与することができる。望ましくは、ワクチンは、健常な動物に単回播種で投与され、疾患に対する長期の保護を提供し、少なくとも1〜3年間以上、動物を保護する。適切な用量は、標準的な滴定研究によって決定される。
本発明はまた、非霊長類大型動物種から未知のDC−SIGN cDNA相同体をクローニングする独特な方法を含み、次の工程を含む:(a)動物の静脈血から、適切な宿主細胞において、単球由来樹状細胞を単離し、そして前記樹状細胞の増殖を可能にする適切な栄養条件下で、インビトロで培養する工程;(b)RNAを抽出する工程;(c)cDNAの第1鎖を合成し、そしてRT−PCRによって、ヒトDC−SIGNに相同な配列を有する短いフラグメントを増幅するために、ヒトおよびマウスDC−SIGNをコードする核酸分子の複数の配列アラインメントに基づいて、ヒトおよびマウスDC−SIGNヌクレオチド配列の保存配列に相補的であるように設計された縮重プライマーを使用して、逆転写酵素(RT)およびPCRを実施する工程;(d)それぞれ、5’−RACEまたは3’−RACEについて設計した、配列番号9を含む遺伝子特異的プライマーPDR−1および配列番号10を含む遺伝子特異的プライマーPDF−1を使用して、縮重PCR産物由来の配列情報に基づき、短いフラグメントに対して逆転写酵素およびRACE−PCRを実施する工程;(e)cDNA末端迅速増幅(RACE)−PCR反応産物によって、動物における未知のDC−SIGN相同体の完全なcDNAの2つの重複フラグメントをクローニングする工程;(f)動物のDC−SIGN相同体を単離、精製または配列決定する工程。
上記のクローニング方法では、適切な宿主細胞として、CD14陽性末梢血単球細胞(PBMC)、脾臓由来リンパ球、骨髄由来リンパ球などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、新たなクローニング方法における宿主細胞は、CD14陽性PBMCの培養物を使用する。
細胞の継代期の1つの例として、DC−SIGNを安定に発現する細胞を、光学顕微鏡で観察されるように、単層で培養する。ウイルス播種に必要であれば、細胞を、3〜4日間ごとに継代する。細胞増殖培地、例えば、10%ウシ胎児血清(FBS)および1×抗生物質(10,000単位/mLペニシリンG、10,000mg/mLストレプトマイシン)を追加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を、各フラスコから取り出し、そして細胞を、トリプシン−EDTA(TE)のような1mLのタンパク質分解酵素と共にインキュベートする。細胞剥離が最初に認められた時点で、TEを取り出す。5ミリリットルの細胞増殖培地を、懸濁された細胞に添加する;懸濁液を吸引し、そして5つのフラスコに分ける。7ミリリットルの細胞増殖培地を、各フラスコに添加し、続いて、吸引する。フラスコを加湿インキュベータ(37℃、5%CO2)に移し、そして細胞増殖のために水平位置でインキュベートする。フラスコに、ウイルス(例えば、PRRSV)を播種するか、または90%コンフルエンスが観察される場合、さらなる細胞継代に使用する。
ウイルス培養の例として、10%FBS−DMEM/PS細胞増殖培地を取り出す;そして細胞に、適切な滴定値を有する1mLウイルスストックを播種する。フラスコを、1時間、水平にインキュベートする(37℃、5%CO2)。次いで、9ミリリットルのウイルス培地(抗生物質を含まない2%FBS−DMEM)を、各フラスコに添加し、そしてフラスコを、加湿インキュベータに2〜3日間、戻す。細胞のほとんどにおいて、光学顕微鏡下で細胞変性効果(CPE)が認められるまで、ウイルス培養を継続する。CPEが観察される場合、−80℃に凍結することによって、細胞培養を終結させる。−80℃〜室温の連続凍結/融解サイクルをさらに2回実施して、細胞を溶解し、そして細胞内ビリオンを放出させる。ウイルスワクチンを製造するためにさらに処理するために、プロセス展開またはウイルス播種に使用するまで、得られるウイルスストック溶液を滴定し、そして−80℃で凍結する。
DC−SIGN遺伝子に関して、本発明は、初めて、pDC−SIGNのcDNAのクローニングについて説明し、そして事実上、非霊長類大型動物種由来の(hDC−SIGNの)DC−SIGNのcDNA相同体のクローニングに関する最初の報告について説明する。ブタゲノム配列決定プロジェクト(SGSP)データベースにおいて利用可能な関連配列は認められなかったため、本発明は、ブタDC−SIGN遺伝子をクローニングするために、マウスSIGNR分子に先に使用されたストラテジーと比較して、全く異なるかつ新規のストラテジーを使用した。ブタMDDCをインビトロで作製し、そしてMDDC細胞から抽出された全RNAを使用して、ブタDC−SIGN相同体をクローニングした。ヒトおよびマウスDC−SIGN配列に基づく縮重プライマーを使用することによって、hDC−SIGNおよびマウスDC−SIGNRに配列相同性を有する210bpフラグメントを、RT−PCRによって最初に増幅した。この初期配列に基づいて、続いて、2つの重複フラグメントにおいて、それぞれ、5’−および3’−RACE−PCRによって、ブタDC−SIGNの完全なcDNA配列を得た。加えて、完全なpDC−SIGN遺伝子を、cDNA配列に基づき、ワンステップゲノムPCRによって独自にクローニングした。ここで用いたクローニングストラテジーは、配列情報が入手できない他の動物種のDC−SIGN相同体の同定に極めて有用である。
ブタDC−SIGNはブタMDDCからクローニングされたが、pDC−SIGNは、本来の精製されたCD14陽性PBMCから増幅することができなかったことから、pDC−SIGNの発現は、MDDCの発達中に活性化されたことが示唆される。
マウスSIGNRメンバーでは、SIGNR3のみが、高マンノースおよびフコース含有グリカンの両方に結合する能力をhDC−SIGNと共有する(Powlesland et al., 2006、上掲)。SIGNR2は、GlcNAc−末端グリカンにほとんど排他的に結合し、そして選択的にシアル酸を認識するシアル酸結合受容体のシグレックファミリーのいくつかのメンバーと同様に、SIGNR7は、6−スルホ−シアリルルイスxグリカンに優先的に結合する(同上)。本明細書において同定されたpDC−SIGNは、CRDにおけるカルシウム依存的炭水化物結合性に関与する9つのすべての保存残基を有する。
しかし、配列アラインメントの結果は、pDC−SIGNが、おそらく、hDC−SIGNおよびL−SIGNとは異なる炭水化物結合特異性を有することを示唆しているが、他のDC−SIGN関連タンパク質と比較して、配列相同性が低いため、それらは、類似のリガンド結合能をhDC−SIGNと共有する。これは主に、ブタおよびウシDC−SIGNタンパク質の両方が、CRDの適切なフォールディングを容易にし、そしてカルシウム依存的炭水化物結合性に関与するすべての構造的保存残基を有することによる。これに対し、これらの相互作用は、タンパク質−炭水化物相互作用に加えて、hICAM−2およびhICAM−3に結合するhDC−SIGNの系統的変異導入解析によって示唆されているようにタンパク質−タンパク質相互作用に関与し得る(S. V. Su et al., “DC-SIGN binds to HIV-1 glycoprotein 120 in a distinct but overlapping fashion compared with ICAM-2 and ICAM-3,” J. Biol. Chem. 279:19122-32 (2004))。さらに加えて、hDC−SIGNは、gp120およびICAM−3について、異なるが重複する結合様式を有することが、先に示された(T. B. Geijtenbeek et al., “Identification of different binding sites in the dendritic cell-specific receptor DC-SIGN for intercellular adhesion molecule 3 and HIV-1,” J. Biol. Chem. 277:11314-11320 (2002);Su et al., 2004、上掲)。hDC−SIGNのaa351位におけるバリンからグリシンへの単一の変異は、ICAM−3結合性を無効にしたが、HIV−1 gp120相互作用は無効にしなかった(Geijtenbeek et al., 2002、上掲)。しかし、バリンがアラニンに変異した場合、ICAM−3またはICAM−2への結合は、いずれも影響を受けなかった(Su et al., 2004、上掲)。pDC−SIGNタンパク質は、ウシ、イヌおよびウマDC−SIGNタンパク質が特異的に共有する204位のヒスチジン残基を有する。バリンからヒスチジンへの変化は、pDC−SIGN−hICAM−3/hICAM−2相互作用に対する影響が最小であるようである。
個々のCRD単独による小さな炭水化物化合物の認識は、DC−SIGNおよびL−SIGNとHIV−1 gp120のような病原体との高い親和性相互作用を達成するのに不十分であることが示されている。ネック領域の反復ドメイン欠失変異に関する生化学的研究によってもまた、四量体を形成するのに最小で3つの反復が必要であること、およびさらなる反復が四量体を安定化することが示された(G. A. Snyder et al., “The structure of DC-SIGNR with a portion of its repeat domain lends insights to modeling of the receptor tetramer,” J. Mol. Biol. 347:979-989 (2005))。本発明において新たに同定されたpDC−SIGNは、既知のウシ、イヌおよびウマDC−SIGNタンパク質と共に、ネック領域において反復配列を有さなかったことから、ブタDC−SIGNを含むこれらのタンパク質は、四量体を形成することができず、それ故、ブタDC−SIGNが、異なる炭水化物結合特異性を有するという意見を支持することが示唆された。
pDC−SIGNは、hICAM−3およびhICAM−2のような潜在的リガンドと効果的に相互作用し、そしてPRRSVを捕捉して、標的細胞に伝達することが可能であると示されないため、これは、これらのタンパク質の結合能に直接関連しない。同様に、ネック領域に反復配列を伴わないウシDC−SIGNはまた、HIV−1 gp120ならびにマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)BCGに結合し、そしてそれらを内在化する能力を有する(Y. Yamakawa et al., “Identification and functional characterization of bovine orthologue to DC-SIGN,” J. Leukoc. Biol. 83:1396-403 (2008))。もう1つの例は、ネック領域に反復領域がないhDC−SIGN関連レクチンLSECtinであり、そしてなおそれは、ヒト骨髄細胞による抗原捕捉および病原体結合性を仲介することが可能である(A. Dominguez-Soto et al., “The DC-SIGN-related lectin LSECtin mediates antigen capture and pathogen binding by human myeloid cells,” Blood 109:5337-45 (2007))。pDC−SIGNはPRRSV進入に関与しないが、本明細書では、pDC−SIGNは、操作されたBHKドナー細胞から標的MARC−145細胞へのトランスでのウイルス伝播を、これらの2つの細胞系統が両方ともブタ起源ではないという事実にもかかわらず、増強することができることが示されている。
細胞表面上で発現されたpDC−SIGNの可溶性hICAMリガンドへの結合もまた、本明細書において実証される。hICAM−2のpDC−SIGNへの結合を改善すること、またはhICAM−3のpDC−SIGNへの結合を阻止することは、治療価値を有し得る。レシピエントT細胞が異種移植片拒絶を仲介するため、特に、インビボでの細胞細胞接着相互作用は、ブタ−ヒト間異種移植の臨床応用に重要な意味を有し得る。さらに加えて、組織および細胞の局在ならびにpDC−SIGNの特性およびヒトの天然のリガンドに対するその交差結合は、細胞接着におけるこのレクチンの類似の生理学的役割を強く示唆する。pLSECtinおよびpICAM−3について同様の役割もまた、考慮される。
この研究から得られる意外な所見は、pDC−SIGNが、他のマウスSIGNRメンバーよりも、マウスSIGNR7およびSIGNR8により緊密に関連することであった。マウス種における8つのDC−SIGN相同体の発見により、それらが大きく相違する生化学的および生理学的特性を有することが示された(Powlesland et al., 2006、上掲)。しかし、それらのうち、ヒトDC−SIGNに対する機能的相同分子種であることが実験的に確かめられたものはない。マウスDC−SIGNタンパク質は、ヒトタンパク質と機能を共有しないことが見出されている一方、最近、ウシDC−SIGNが、ウシMDDC上で発現し、HIV−1 gp120ならびにマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)カルメット−ゲラン桿菌(bacillus Calmette−Guerin)(BCG)に結合し、そしてそれらを内在化することが示され、たとえそれらが異なる2つの進化経路に分類されても、ウシDC−SIGNが、hDC−SIGNに機能的に関連する(Y. Yamakawa et al., “Identification and functional characterization of bovine orthologue to DC-SIGN,” J. Leukoc. Biol. 83:1396-403 (2008))ことが示唆された。この結論はまた、以下の実験において、組織および細胞分布ならびにpDC−SIGNのhICAMリガンドとの結合特徴のエビデンスによっても支持される。
本発明の詳細な説明では、pDC−SIGNのmRNA発現が、様々なリンパ器官において主として分布し、そしてタンパク質発現が、CD14+単球またはPBLの表面上に検出されないことが示されている。ブタDC−SIGNは、MDDC上で発現されるだけではなく、MDMΦおよびPAM上において発現されることから、それは、ブタDCおよびマクロファージの発達中に活性化されることが示唆される。IHC解析を使用することによって、pDC−SIGNが、マクロファージ様および樹状細胞様細胞を含むリンパ節類洞APCで発現されたが、BまたはTリンパ球上では発現されなかったことがさらに確認される(図7)。ブタDC−SIGN発現もまた、リンパ節内皮細胞上で検出されたが、これは、hDC−SIGN発現のパターンと類似のパターンを共有する(J. H. Martens et al., “Differential expression of a gene signature for scavenger/lectin receptors by endothelial cells and macrophages in human lymph node sinuses, the primary sites of regional metastasis,” J. Pathol. 208:574-89 (2006))。しかし、pDC−SIGNのmRNAまたはタンパク質のいずれも、それぞれ、RT−PCRおよびIHC解析を使用して、ブタ肝臓組織では検出されなかった。
これらの結果に基づいて、クローニングされたブタ遺伝子は(L−SIGN相同体ではなく)DC−SIGN相同体であるが、pDC−SIGNのアミノ酸配列は、hDC−SIGNともhL−SIGNとも有意な配列同一性を示さないと結論付けられる。L−SIGN遺伝子は、類人猿の共通のDC−SIGN先祖における重複事象から出現したが、ウシ、イヌおよびウマゲノム領域において示されているように、おそらく非霊長類哺乳動物種には存在せず、ここで、C型レクチンは、4つの遺伝子クラスターCD23/LSECtin/DC−SIGN/L−SIGNの代わりに、3つの遺伝子クラスターCD23/LSECtin/DC−SIGNとして、ヒト染色体19p13.3上に配列する。これらの非霊長類哺乳動物種におけるDC−SIGN相同体の進化経路は、霊長類の進化経路とは異なり、その結果、DC−SIGNは単一の遺伝子として存在する。系統解析および遺伝子構成の比較により、ブタDC−SIGNは、これらの非霊長類 哺乳動物種に高度に関連し、それ故、同じ特徴を共有すべきであることが示された。さらに加えて、クローニングされたpDC−SIGNがブタL−SIGN相同体であった場合、そのRNAおよびタンパク質発現は、それぞれ、RT−PCRおよびIHCによって、肝臓組織において検出されていたはずであり、IHCおよびRT−PCRにより、ブタ肝臓においてpDC−SIGN発現が認められなかったことからもまた、この結論が裏付けられる。
ブタDC−SIGNタンパク質の膜貫通特性は、本発明に関する実験的エビデンスによって確認され、そしてブタDC上で接着分子受容体として機能することが決定されている。
ブタDC−SIGNの発現をより良好に特徴付けるためには、ゲノムDNAレベルでの遺伝子の決定が必要である。決定されたブタDC−SIGNのcDNAの末端配列に基づいて、GenBankおよび他のブタゲノム配列供給源にこれまで公開されていないブタDC−SIGN遺伝子もまた、ゲノムPCRを使用することによって、増幅し、そしてクローニングした(図4)。ブタDC−SIGN遺伝子のコンセンサス配列は3438bp長であり、遺伝子の完全なコード領域にわたって8つのエキソンをコードし、ここで、エキソン1および8は未知のサイズを有した(図5−1〜5−2)。イントロンのサイズは113〜689bpで変動し、そしてイントロン上のすべてのアクセプターおよびドナー配列は、GT−AG規則に従った。さらなる代替的にスプライシングされたmRNAアイソフォームが、コンピュータプログラムによって推定されなかったことから、ブタ単球由来樹状細胞由来の同定されたcDNAは、ブタDC−SIGN発現の唯一存在するアイソフォームであるようであることが示唆され、これは、上記のRACE−PCR結果(図1(c))に一致する。
pDC−SIGNの組織および細胞分布を調べて、pDC−SIGNのmRNAの発現が、RT−PCRによって、ブタの一次(胸腺および骨髄)ならびに二次リンパ器官(リンパ節および脾臓)の両方、ならびに肺および骨格筋において検出されたが、十二指腸、腎臓、心臓または肝臓では検出されなかったことが見出された(図6a)。リンパ節および骨髄の発現レベルが最も高かった。筋肉で発現されたDC−SIGNの検出が興味深かった。
様々なリンパ器官におけるpDC−SIGN発現を考慮すると、pDC−SIGNは、MDDCに加えて、特定の造血細胞集団によっても発現されることが推測された。従って、フローサイトメトリー解析を実施して、PBL、単球、MDDC、MDMΦおよびPAM上のpDC−SIGNタンパク質の表面発現を検出した(図6b〜6d)。ブタPBMCの散乱光プロファイルから、明らかに、それらの形態学に従って、2つの細胞集団、PBLおよび単球が示された。CD14分子はブタ単球の表面マーカーであるため(H.W. Ziegler-Heitbrock et al., “The antibody MY4 recognizes CD14 on porcine monocytes and macrophages,” Scand. J. Immunol. 40:509-14 (1994))、これらの2つの細胞集団は、抗ブタCD14モノクローナル抗体を使用して、免疫磁気標識MACSシステムによって、分離され得る。CD14+単球をさらに使用して、サイトカインの非存在下、それぞれrpGM−CSFおよびrpIL−4またはMDMΦの添加を伴って、MDDCを発達させた。PBLおよび単球は、pDC−SIGN発現を示さなかったが、hDC−SIGNもL−SIGNも、リンパ球または単球において発現されないため、このことは予想されていた。従って、ブタ単球細胞系統3D4/31上では、pDC−SIGN発現は検出されなかった(図6b〜6d)。培養物における単球からMDDCへの分化時に、3日目〜7日目に、中央値蛍光強度を約8倍増加させ、pDC−SIGN発現をアップレギュレートさせた。ブタDC−SIGN発現はまた、MDMΦ上でも見出された。MDDCと比較して、大多数のMDMΦは、pDC−SIGN表現型を示した。PAMもまた、pDC−SIGN表現型が優勢であったが、発現レベルは、MDMΦ上での発現レベルより低かった。ブタ腎臓においてpDC−SIGNのmRNAの発現が検出できなかったことと一致して、タンパク質は、ブタ腎臓由来の上皮細胞系統PK15において発現されなかった(図6b〜6d)。
pDC−SIGNタンパク質が、特に、リンパ組織の細胞集団において実際に発現されたかどうかをさらに確認するために、ブタリンパ節および肝臓組織のパラフィン切片に対するIHC解析を実施した。pDC−SIGNタンパク質は、リンパ節における発現の優勢な類洞パターンを示したことが見出された(図7(a))。しかし、ブタ肝臓では、検出可能な発現は認められず(図7(b))、このことは、RT−PCRの結果と一致した(図6a)。リンパ節の類洞におけるpDC−SIGN特異的抗ペプチド抗体によって免疫染色された細胞のほとんどが、マクロファージ様細胞および樹状細胞様細胞であった(図7(c))。実質組織のリンパ管における内皮細胞もまた、pDC−SIGN特異的抗ペプチド抗体で免疫染色した(図7(d))。ブタリンパ節におけるpDC−SIGNタンパク質の発現パターンは、ヒトリンパ節におけるhDC−SIGNの発現パターンに類似し、ここで、hDC−SIGNタンパク質は、IHCによって、類洞マクロファージ上だけではなく、内皮細胞においても同定された(J. H. Martens et al., “Differential expression of a gene signature for scavenger/lectin receptors by endothelial cells and macrophages in human lymph node sinuses, the primary sites of regional metastasis,” J. Pathol. 208:574-89 (2006))。推定されたブタL−SIGNは、存在する場合、LSEC上で強力に発現されるはずであるため、ブタ肝臓においてpDC−SIGN発現が認められなかったことは、クローニングされたpDC−SIGNがL−SIGN相同体ではないことをさらに支持する。
本発明の個別の実施形態では、ブタICAM−3の新たな2つのcDNAアイソフォームを、今回、インビトロで培養したブタ単球由来樹状細胞から同定した(より大きい方のpICAM−3アイソフォームをコードするヌクレオチド配列は、配列番号4に対応する一方、小さい方のpICAM−3アイソフォームをコードする小さい方のヌクレオチド配列は、配列番号39に対応する)。2つのアイソフォームのうち小さい方は、非コード領域中114−ntの欠失を含有する。細胞接着分子−3(ヒトICAM−3、CD50)は、白血球インテグリンLFA−1(CD11a/CD18)および樹状細胞特異的細胞内接着分子−3(ICAM−3)−グラビング非インテグリン(ヒトDC−SIGN、CD209)の両方に結合する免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである。ICAM−3は、Tリンパ球および樹状細胞の両方の活性化において重要な役割を果たす。
意外なことに、新たに発見されたアイソフォームは、両方とも、3つのIg様ドメイン(D1〜D3)のみをコードし、そしてIg様ドメイン4および5(D4〜D5)を欠き、5つのIg様ドメイン(D1〜D5)を有するヒトICAM−3とは異なる。ブタICAM−3においてD4およびD5が認められなかったのは、プレmRNAスプライシングプロセス中のブタICAM−3遺伝子のエキソン5および6の連続スキッピングによるようである。ブタICAM−3ゲノムDNA配列の残りの未知の3’−近位領域を決定した後、エキソン5において1つのインフレーム3−ntナンセンス変異およびエキソン6において4つのインフレームナンセンス変異が存在する(ブタ種において独特である)ことを見出した。イントロン6の推定スプライスドナー部位における点変異(GからA)もまた、同定した。それ故、D4およびD5を欠くブタICAM−3アイソフォームの作製は、種に関連し、そしてプレmRNAスプライシングプロセス中にエキソン5および6を排除するナンセンス変異に伴う選択的スプライシング(NAS)によって生じるようである。
以下の実施例は、本発明の所定の態様を実証する。しかし、これらの実施例は例示のみを目的としており、そして本発明の条件および範囲に関して完全に限定的であるとは意図していないことを理解すべきである。典型的な反応条件(例えば、温度、反応時間など)が与えられている場合、特定の範囲を超えるおよびそれ未満の条件もまた、一般的にそれほど妥当ではないが、使用することができることを理解すべきである。実施例は、室温(約23℃〜約28℃)および大気圧下で行われる。他で特定しない限り、本明細書において言及したすべての部およびパーセントは、重量に基づき、そしてすべての温度は、摂氏で表現される。
以下の非限定的例から、本発明がさらに理解され得る。
実施例1
ブタDC−SIGN cDNAおよび遺伝子のクローニングおよび特徴付け
材料および方法
ブタ:3〜7週齢の健常な雑種の従来のブタから、静脈血サンプルおよびブタ肺胞マクロファージ(PAM)を回収した。ブタを、実験条件下、隔離された部屋で維持した。
ブタ肺胞マクロファージ、ブタ末梢血リンパ球、単球、単球由来樹状細胞および単球由来マクロファージの単離および培養:ブタ肺胞マクロファージ(PAM)を、冷PBSを使用する肺洗浄によって回収し、そして10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEMに再懸濁した。新鮮培養物または3日間インビトロで培養したPAM培養物を、染色およびその後の解析に使用した。
ブタのヘパリン処理血液を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1:2に希釈し、そしてFicoll−Paque PREMIUM(GE Healthcare,Sweden)上、1000gで40分間、室温で遠心分離した。末梢血単核細胞(PBMC)を含有するバフィーコート層を単離し、そして250gのPBSで3回、10分間4℃で洗浄した。PBMCの表面上のCD14陽性単球を、抗CD14mAb(M−M9,VMRD Inc.,Pullman,WA,USA)およびヤギ抗マウスIgG1−磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec GmbH,Bergisch Gladbach,Germany)を使用して、細胞の免疫磁気標識MACSシステムによって分取した。CD14陰性細胞を、フローサイトメトリー解析によって決定された細胞形態学に基づいて、ブタ末梢血リンパ球(PBL)と認識した。精製された単球を、1×105個の細胞/mLで、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、55μmol/Lのβ−メルカプトエタノールおよび抗生物質を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に再懸濁した。次いで、単球を、6ウェルプレートまたは60mmペトリ皿において、37℃で、25ng/mLの組み換えブタ顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(rpGM−CSF,R&D Systems,Minneapolis,MN)および25ng/mL組み換えブタインターロイキン−4(rpIL−4,Endogen,Rockford,IL)の存在下で培養した。3日ごとに、培養培地の半分を、新鮮培地で置き換えた。DCの特徴的形態学について、細胞を観察した。細胞を、3日目または7日目に回収し、そして単球由来樹状細胞(MDDC)として使用した。単球由来マクロファージ(MDMΦ)を、類似の手順で発達させたが、2つのサイトカインの非存在下で培養した。5日目に細胞を回収し、そしてMDMΦとして使用した。
連続細胞系統の培養:ベビーハムスター腎臓線維芽細胞系統BHK−21、サル腎細胞系統MARC−145およびブタ腎臓上皮細胞系統PK15を、10%FBSおよび抗生物質を補充したMEMにおいて、37℃で、インキュベータにおいて増殖させた一方、ブタ単球系統3D4/31(ATCC CRL−2844)を、10%FBSおよび抗生物質を補充したRPMI 1640培地中、37℃インキュベータにおいて増殖させた。hDC−SIGNを安定に発現するマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞系統を、NIH AIDS Research and Reference Reagent Program(Germantown,MD)を介して入手し、そして本研究では3T3−HDCSと改名した。この細胞系統を、10%FBSを補充したDMEM中で培養した。
RNA抽出、逆転写(RT)ならびに縮重PCRおよびcDNA末端迅速増幅(RACE)−PCR:rpGM−CSFおよびrpIL−4の存在下でブタ単球から誘導したインビトロで培養したブタ単球由来樹状細胞(MDDC)を、7日目〜10日目の間に回収した。RNeasyミニキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用し、続いて、RNaseを含まないDNase Iの処理により、MDDCから全RNAを単離した。第1鎖cDNAを、オリゴ−dT(Promega Corporation,Madison,WI)を逆方向プライマーとして使用するSuperScript II逆転写酵素(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)によって、全RNAから合成した。ヒトおよびマウスDC−SIGN遺伝子において保存配列に相補的な縮重プライマーのいくらかの対を、利用可能なヒトおよびマウスDC−SIGN関連遺伝子の複数の配列アラインメントに基づいて、設計した。縮重プライマーによるPCRを、50μL反応液中、Advantage 2 PCRキット(Clontech,Palo Alto,CA)により、次のPCRパラメータを使用して実施した:94℃で2分間、94℃で15秒間、57.5℃で30秒間および72℃で1分間の30サイクル、および72℃で3分間の最終インキュベーション。1組のプライマー(NF−05およびNR−05、以下の表1)を増幅に使用した場合にのみ、PCRフラグメントを増幅させた。得られたPCR産物を直接配列決定し、そしてヒトおよびマウスDC−SIGN関連遺伝子のGenBank配列と比較した。RTおよびRACE−PCRを、製造者の取扱説明書に従って、SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech,Palo Alto,CA)によって実施した。5’−RACEまたは3’−RACEに使用した遺伝子特異的プライマーは、それぞれ、PDR−1およびPDF−1(表1)であり、縮重PCR産物から得られた配列情報に基づいて設計した。RACE反応産物を、TAクローニングストラテジーによってpCR2.1ベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、そして配列決定した。
表1.pDC−SIGNのブタ組織において縮重RT−PCR、5’−RACEおよび3’−RACE PCR、ゲノムPCR、遺伝子配列決定、サブクローニングおよびPCR検出に使用したオリゴヌクレオチドプライマー
1縮重プライマー(NF−05およびNR−05)のために設計した混合した塩基(S=C+G、M=A+C、およびR=A+G)を太字で示し、そして下線を付す。プライマーNF−05、NF−06およびNR−05の配列は、pDC−SIGNの最終的cDNA配列と完全には同一ではないことが留意される。プライマーPCI−XHO、DCS3、Nco−DCS−5およびXho−DCS−3では、小文字は非ブタ−DC−SIGN配列を示し;下線を付したヌクレオチドは、サブクローニングに使用した制限部位(Xho I、Xba IまたはNco I)を表し、そして斜体のヌクレオチドは、開始コドンATGより前方の最適なKozak配列を示す。
2位置は、pDC−SIGNの全長cDNAに対応している(図2)。
ゲノムPCRおよび遺伝子配列決定:ワンステップゲノムPCRに使用したプライマーは、本明細書において決定したブタDC−SIGNのcDNAの配列に基づいた。順方向プライマー1F(5’−GATGGCAGAGATATGTGACCCCAAGGA−3’(配列番号15に対応する))は、開始コドンATG(下線部)を含有する一方、逆方向プライマー4R(5’−CGGAGGGGCTGCTGAGACCATC−3’(配列番号16に対応する))は、cDNAの3’−非コード領域内の配列に相補的である。ゲノムPCRを、(Novagen,Madison,WIから購入した)150ngのブタゲノムDNAを使用するPlatinum PCR HiFi Supermixキット(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)によって、50μLの全容積で実施した。PCR条件は、94℃で30秒間、68℃で5分間の35サイクルであり、テンプレートDNAの初期変性は、94℃で2分間であった。得られたフラグメントを、TAクローニングストラテジーによってpCR2.1ベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングした。M13順方向および逆方向プライマーならびに3つの遺伝子特異的プライマー2F(5’−TCGTCTCATTGGGTTTCTTCATGCTCC−3’(配列番号17に対応する))、3F(5’−CTGCAGAGAGAGAGAGAGACCAGCAGGA−3’(配列番号18に対応する))および4F(5’−TGCCCCTGGCATTGGGAATTCTT−3’(配列番号19に対応する))を、配列決定に使用した。全長遺伝子の集成を、Lasergeneパッケージ(DNASTAR Inc.,Madison,WI)由来のSeqManプログラムで行った。
配列および系統解析:DNAおよびアミノ酸配列の解析ならびにアラインメントを、Lasergeneパッケージ(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を使用して実施した。pDC−SIGN遺伝子のmRNAスプライシングの配列解析および推定を、オンラインプログラムASPic(Alternative Splicing Prediction,http://t.caspur.it/ASPIC/home.php)によって実施した。
ブタDC−SIGNに特異的な抗ペプチドポリクローナル抗体の作製:pDC−SIGNタンパク質の発現を検出するためのpDC−SIGN特異的抗ペプチドポリクローナル抗体を作製するために、ブタDC−SIGNのCRD内に暴露されることが推定される領域に対応する2つのペプチド(アセチル−VDNSPLQLSFWKEGEPNNHGC−アミド(配列番号13に対応する)、およびアセチル−AEQKFLKSWYRYNKAC−アミド(配列番号14に対応する))を、本発明の目的のために、21stCentury Biochemicals Corporation(Marlboro,MA)によって商業的に合成した。続いて、ペプチドを精製し、そして共に使用して、21stCentury Biochemicals Corporationの抗体産生受託サービスとして、2匹のニュージーランドホワイト(New Zealand white)系ウサギに免疫した。ブタDC−SIGN特異的抗ペプチドポリクローナル抗体を、免疫したウサギの血清から、アフィニティー精製により0.73mg/mLの濃度で製造した。
ブタDC−SIGNを発現する組み換えベクターの構築およびインビトロ発現:pDC−SIGNの完全なコード領域を、プライマーPCI−XHOおよびDCS3(表1)を使用するPCRによって増幅し、続いて、Xho IおよびXba I制限部位を使用して、pCI−neoベクター(Promega Corporation,Madison,WI)にCMV前初期エンハンサー/プロモーターの下流にクローニングした。構築物の配列を決定して、同一性を確認し、そしてpCI−PDCSと標示した。トランスフェクションでは、BHK−21細胞を、1ウェルあたり4×104個の細胞で、8ウェルLab−Tekチャンバスライド(Nalge Nunc International,Rochester,NY)に播種し、そして抗生物質を伴わずに24時間、増殖させた。プラスミドpCI−PDCSおよびpCI−neoを、若干の変更を加えた製造者のプロトコルに従い、Lipofectamine 2000(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)を使用して、BHK−21細胞に一過的にトランスフェクトした。簡単に説明すると、0.4μgのプラスミドDNAを、1.5μLのLipofectamine 2000および150μLのOpti−MEM(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)と、室温で、20分間、混合し、続いて、細胞に添加した。6時間後、新鮮増殖培地を置き換えた。細胞を、24〜48時間培養し、次いで、免疫蛍光アッセイ(IFA)またはウエスタンブロットに適用して、pDC−SIGNタンパク質の発現を検出した。
免疫蛍光アッセイ(IFA)およびウエスタンブロット:トランスフェクト細胞を、PBSで2回洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで20分間、固定し、次いで、0.5%Triton(登録商標)X−100(Union Carbide Corp.,Houston,TXの登録商標でポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテルとして一般的に公知であり、そしてSigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから市販されている非イオン性界面活性剤)で10分間、透過処理した。PBS中1:100希釈のpDC−SIGNに特異的な100マイクロリットルの抗ペプチド抗体を、細胞上に添加し、そして1時間、37℃でインキュベートした。細胞を、PBSで3回洗浄し、次いで、1:100希釈の100μLのFITC標識ヤギ抗ウサギIgG(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)を添加した。37℃で30分間のインキュベーション後、細胞を、PBSで3回洗浄し、そして蛍光顕微鏡下で可視化した。抗体のPBSでの2つの異なる希釈、1:50または1:100のいずれかを使用して、IFAを、2回を超えて行ったところ、類似する首尾よい結果が得られた。
ウエスタンブロット分析では、pCI−PDCSまたはpCI−neoトランスフェクト細胞を、106個の細胞あたり125μLのCelLytic M溶解緩衝液(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)中で溶解した。タンパク質抽出物を回収し、アリコートに分け、そして−20℃で凍結した。サンプルおよびタンパク質マーカー(Precision Plus Protein Kaleidoscope Standards,Bio−Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)を、SDS−PAGE上で分解し、そしてポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に移し、続いて、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するTris緩衝生理食塩水(TBS)で1晩、4℃でブロックした。TBS中1:200希釈のpDC−SIGN特異的抗体を、90分間、室温で使用し、続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−コンジュゲート抗ウサギIgG(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)と共に90分間、室温でインキュベーションを行って、pDC−SIGNタンパク質を検出した。次いで、クロロナフトールで膜を発色させた。
RT−PCRによって検出されるpDC−SIGNの組織分布:RNeasyミニキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用し、続いて、RNaseを含まないDNase Iの処理により、ホモジナイズしたブタ組織、選択された細胞集団および細胞系統から全RNAを単離し、そしてオリゴ−dT(Promega Corporation,Madison,WI)を逆方向プライマーとして使用するSuperScript II逆転写酵素(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)によって、cDNAを合成した。胸腺および骨髄のような単離するのが困難なブタ組織では、それらの組織cDNAは、Zyagen Laboratories(San Diego,CA,USA)から購入した。pDC−SIGN遺伝子のエキソン5とエキソン6との間の境界にわたるプライマーPDCS−E56Fおよびエキソン7とエキソン8との間の境界にわたるプライマーPDCS−E78R(上記の表1の配列を参照のこと)を使用するAdvantage 2 PCRキット(Clontech,Palo Alto,CA)により、50μL反応中でPCRを実施した。PCRパラメータは、95℃で20秒間、68℃で1分間の30サイクルを含み、テンプレートDNAの初期変性は、2分間であった。ハウスキーピング遺伝子、ブタグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)もまた、PCR(95℃で1分間、95℃で20秒間、55℃で20秒間、68℃で40秒間および72℃で3分間の30サイクル)によって、プライマーGAPDH5(配列番号29に対応する5’−GCTGAGTATGTCGTGGAGTC−3’)およびGAPDH3(配列番号30に対応する5’−CTTCTGGGTGGCAGTGAT−3’)を使用して、増幅した。PCR産物の予想されるサイズは、それぞれ、pDC−SIGNで301bpおよびブタGAPDHで285bpであった。
免疫組織化学(IHC):ブタリンパ節および肝臓のパラフィン切片(Zyagen Laboratories,San Diego,CA)を、先に記載の方法(W. Li et al., “Chronic Relapsing Experimental Autoimmune Encephalomyelitis: Effects of Insulin-like Growth Factor-I Treatment on Clinical Deficits, Lesion Severity, Glial Responses, and Blood Brain Barrier Defects,” J. Neuropath. Exp. Neurol. 57:426-38 (1998))によるアビジン−ビオチン複合体(ABC)で免疫染色した。簡単に説明すると、内因性ペルオキシダーゼ活性および非特異的免疫染色を阻止するために、PBS(pH=7.4)中10%正常ヤギ血清(NGS)による30分間の室温での処理の前に、切片を、3%H2O2に10分間、浸漬した。第一抗体のpDC−SIGN特異的抗ペプチドポリクローナル抗体、および第二抗体のビオチン化抗ウサギIgG(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を、両方とも、PBS緩衝液中2%NGSに希釈した。第一および第二抗体を、それぞれ、4℃で1晩および室温で30分間、インキュベートした。ABC試薬を調製し、そしてVECTASTAIN(登録商標)Elite ABCキット(Vector Laboratories,Burlingame,CAの登録商標で市販されているABCと標示されたアビジンまたはストレプトアビジンとビオチン化酵素との間の複合体)の製造者の指示に従って使用し、続いて、DAB/Ni基質(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を5分間、適用した。コントロールでは、第一または第二抗体を省略したもの、または第一抗体をウサギIgG、正常ウサギ血清、または抗原−抗体複合体(プレ抗体吸収)に置き換えたものを含んだ。切片を、ヘマトキシリン染色で対比染色し、そしてPermountスライドマウンティング溶液でシールした。IHCデータは、Nikon DS−Fi1デジタルカメラおよびNIS−Elementsソフトウェア(Nikon Instruments,Inc.,Melville,NYから市販されている)で獲得した。
結果および考察
インビトロで培養したブタMDDCからの、全長ブタcDNA相同体のヒトDC−SIGNへの分子クローニング:初めに、ブタのDC−SIGN相同体は、hDC−SIGNに類似の発現および分布パターンを有し、それ故、未知のpDC−SIGNのcDNAのクローニングの供給源として使用することができるブタMDDCの表面上で、主に高いレベルで発現され得ることが仮定されたが、pDC−SIGNタンパク質をコードするcDNAおよび完全な遺伝子を得るためには、未知のクローニングパラメータのさらなる実験および決定が必要であった。ブタMDDCの作製については、いくらかのグループによって、先に報告されている(C. P. Carrasco et al., “Porcine dendritic cells generated in vitro: morphological, phenotypic and functional properties,” Immunology 104:175-84 (2001);R. Paillot et al., “Functional and phenotypic characterization of distinct porcine dendritic cells derived from peripheral blood monocytes,” Immunology 102:396-404 (2001);C. L. Loving et al., “Differential type I interferon activation and susceptibility of dendritic cell populations to porcine arterivirus” Immunology 120:217-29 (2007))。rpGM−CSFおよびrpIL−4の存在下、付着性ブタCD14陽性単球の3日間の培養後、文献に記載の手順を使用して、単一および凝集したベール形状細胞を観察した。培養した皿において単球からほぼ形質転換された細胞の特徴的な樹状形態学は、7日後、さらに顕著であった(図1(a))。細胞の表現型解析の結果は、MHC II+CD1+CD11b/c+CD80/86+であり、これは、他の報告と一致し、それ故、MDDCと認識された(同上)。NCBIにおけるSwine Genome Sequencing Project(SGSP、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db= genomeprj&cmd=ShowDetailView&TermToSearch=13421)のデータベースの配列類似性検索からは、ヒトDC−SIGNのブタDC−SIGN相同体の配列が得られなかった。加えて、本発明に関する実験を開始した時点では、家畜種由来の他の推定DC−SIGN相同体は、ゲノムデータベースからは公開されていない。従って、新規のブタDC−SIGN遺伝子を同定するために、最初に、既知のヒト、非ヒト霊長類およびマウスDC−SIGN関連cDNAの複数の配列アラインメントに基づく保存配列に基づいて、一連の縮重プライマーを設計した(T. B. Geijtenbeek et al., “Identification of DC-SIGN, a novel dendritic cell-specific ICAM-3 receptor that supports primary immune responses,” Cell 100:575-585 (2000);Bashirova et al., 2001、上掲;F. Baribaud et al., “Functional and antigenic characterization of human, rhesus macaque, pigtailed macaque, and murine DC-SIGN,” J. Virol. 75:10281-10289 (2001);Park et al., 2001、上掲;A. A. Bashirova et al., “Novel member of the CD209 (DC-SIGN) gene family in primates,” J. Virol.77:217-27 (2003))。最初に、MDDCの全RNAから、プライマーNF−05およびNR−05で、約210bpの産物を、RT−PCRによって増幅した(図1(b))。同じ順方向プライマーNF−05およびプライマーNR−05の上流の新たな逆方向プライマーNR−06を伴う、ゲル精製されたフラグメントをテンプレートとして使用するネステッドPCRもまた、より小さなサイズを有するフラグメントを作製(即ち、増幅)し、PCRの特異性が示された。配列解析は、この最初のPCRフラグメントの配列が、DC−SIGNのCRDにおける領域を表すヒトDC−SIGN、ヒトL−SIGNおよびマウスDC−SIGN (SIGNR5)cDNA配列の対応する領域に対して、それぞれ、62.6%、61.2%、および57.6%配列同一性を共有することを示した。
この最初の配列に基づいて、2つの遺伝子特異的プライマーは、それぞれ、5’−および3’−RACE PCRによってcDNAの5’−および3’−近位領域を増幅するように設計され得る。5’−RACE PCRの逆方向プライマーPDR−1は、3’−RACE PCRプライマーPDF−1の下流に局在するため、増幅された5’−RACEおよび3’−RACE PCR産物は、82−ntの重複領域を有し、それ故、cDNAの全長配列を含むことが予想された。それぞれ、それぞれのRACE PCR由来の約600bpを有する2つの得られるPCR産物(図1(c))を、全長cDNA配列に集成させた。このcDNAによるBLAST検索では、ブタ(Sus scrofa)において相同体の配列が得られなかったことから、ヒトDC−SIGNに対応する新規のブタDC−SIGN等価物(即ち、種相同体)が示された。新たに発見されたcDNAを、ブタDC−SIGN(pDC−SIGN)と標示した。
ブタDC−SIGN cDNAおよびその推定タンパク質産物の特徴付け:1069bpのpDC−SIGN cDNAは、240個のアミノ酸を有するタンパク質をコードする26〜728位の723個のヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(ORF)を包含する(図2)。他のC型レクチンと同様に、推定pDC−SIGN産物は、推定39aaの細胞質尾部(CT)から開始して、推定31aaの膜貫通ドメイン(TMD)が後に続くII型膜貫通タンパク質であると推定される。細胞外ドメインは、38aaのネック領域、その後に続く、132aaのCRDからなった(図2)。内在化モチーフ、aa27〜28位におけるジロイシンに基づくモチーフが、CTにおいて見出された。膜貫通受容体のCTにおける内在化モチーフは、リガンド−受容体複合体の内在化に重要であるため、ブタDC−SIGNは、エンドサイトーシスを仲介し、そして潜在的な結合型病原体をDCの細胞質に移行させることが可能であるようである。ヒトDC−SIGN、hL−SIGN、非ヒト霊長類DC−SIGNおよびmSIGNR1は、ネック領域内に可変反復配列を含有するが、SIGNR2およびSIGNR6を除く残りのmSIGNRメンバーは、反復配列を有さない。pDC−SIGNのネック領域の配列は反復せず、そして長さはSIGNR3〜5により近似するが、マウスSIGNR7およびSIGNR8に高度に関連した。
pDC−SIGNのCRDは、他のすべての既知のDC−SIGN相同体タンパク質に類似のサイズを有したが、それらの全体のサイズは、ネック領域にばらつきがあるため、かなり異なる。CRDはまた、Ca2+−結合部位および炭水化物−結合部位を形成する重要な残基を包含するブタおよび他の非ブタDC−SIGN相同体タンパク質と共有する最も保存された領域であった。hDC−SIGNのCRDは、緊密であるが、異なる2つの部位を使用して、2つのカルシウムイオンに結合することが示されている(T. B. Geijtenbeek et al., “Identification of different binding sites in the dendritic cell-specific receptor DC-SIGN for intercellular adhesion molecule 3 and HIV-1,” J. Biol. Chem. 277:11314-11320 (2002))。Ca2+部位1は、DC−SIGNとそのリガンドとの相互作用に必須であるアミノ酸残基Asp176、Glu180、Asn203およびAsp208を含有する。これらの4つのすべての残基は、pDC−SIGNにおいて保存されていた。ブタDC−SIGNはまた、共通のGlu−Pro−Asn配列(EPN配列、aa200〜202位)およびGlu207、ならびにマンノース−、フコース−またはガラクトース−含有オリゴ糖への結合に極めて重要であるCa2+部位2に関与するAsn218を有した。加えて、ジスルフィド結合を形成することが推定される8個の保存されたシステインが、CRDにおいて見出された。
ウマ、オポッサム、イヌおよびウシDC−SIGN相同体をコードするコンピュータにより推定されたcDNAは、ゲノムデータベースにおいて利用可能であるため、それらのコードタンパク質の推定完全アミノ酸配列は、霊長類およびマウスDC−SIGN関連タンパク質由来のアミノ酸と共に、系統解析を実施するために含まれた。また、新規のブタLSECtinには、近隣結合系統樹を構築するための外群としてのDC−SIGNに緊密に関連するが個別のC型レクチンが含まれる。結果は、ブタおよびウシのタンパク質が、他のタンパク質より、最も相互に緊密に関連することを示した。意外な所見は、mSIGNR7、mSIGNR8、イヌおよびウマDC−SIGNが、ブタおよびウシのタンパク質と共にクラスター化され、他のマウスおよび霊長類相同体を含有するクラスターとは異なる個々のクラスター(即ち、クレード)を形成することであった。完全なpDC−SIGNタンパク質と他の種由来のDC−SIGN相同体との対配列比較は、pDC−SIGNが、他のDC−SIGN相同体(50%未満)よりも、ウシ、イヌおよびウマタンパク質ならびにSIGNR7およびSIGNR8(50%を超える)により相同であることを表し、これは、CRD配列の系統的比較と一致した。
ブタDC−SIGNタンパク質のインビトロ発現:pDC−SIGNが効率的に翻訳されるかどうか、そうであるならば、翻訳された産物が推定膜貫通特性を有するかどうかを決定するため、BHK−21細胞を使用して、トランスフェクション実験を行った。720bpを有するpDC−SIGN遺伝子の全長コード領域を、ブタMDDCのRNA抽出物からPCRによって増幅し、続いて、真核細胞発現ベクターpCI−neoにサブクローニングして、プラスミドpCI−DCSを得た。BHK−21細胞を、この構築物かまたはベクター単独でトランスフェクトした。pDC−SIGNタンパク質の発現を、CRDにおける2つのペプチドに対して惹起されたpDC−SIGN特異的抗ペプチド抗体を使用するIFAによって検出した。IFAの結果は、pDC−SIGNを発現するほとんどの細胞において、細胞質および膜の染色が散見されたことを示した(図3a)。いくつかの細胞は、細胞膜のみに局在する蛍光シグナルを示した(図3b)。対照的に、pCI−neoベクターでトランスフェクトした細胞は、陽性のIFAシグナルを示さなかった(図3c)。これらの結果から、ブタDC−SIGNをコードするcDNAは、インビトロで効果的に翻訳されること、および得られる産物は、実際に、II型膜貫通タンパク質であり、即ち、pDC−SIGNのcDNAは、II型膜貫通タンパク質をコードすることが結論付けられた。結果は、効果的な翻訳を例示した一方、アッセイは、pCI−PDCSプラスミドの一過性トランスフェクションによって、pDC−SIGNの僅か約30%の陽性発現しか示さなかった。抗pDC−SIGN抗体はまた、pCI−PDCSでトランスフェクトした細胞の溶解物において約48kDaの特異的バンドを検出したが、空のベクターコントロールでトランスフェクトした細胞では検出しなかった(図3d)。分子サイズは、推定アミノ酸配列から推定される分子サイズ(28kDa)より大きかったが、pDC−SIGNは、ネック領域において推定N−結合型グリコシル化部位(aa102)を含有するため、おそらく、これはグリコシル化によるものである。
ブタDC−SIGN タンパク質をコードする全長遺伝子の特徴付け:pDC−SIGNのcDNAのクローニングおよび配列決定後、次いで、pDC−SIGNの遺伝子配列を調べ、そして入手した。ワンステップゲノムPCRを使用することによって、PCRサイクルのアニーリングおよび伸長工程が、68℃で共に組み合わされた場合にのみ、約3.5kbの独特なバンドを増幅した(図4(a))。PCR産物のTAベクターへのクローニング後、タンデム重複領域を共有するそれぞれのシークエンシングプライマーを使用するDNA配列決定によって決定された個々の5つの配列を、pDC−SIGN遺伝子をコードするゲノム配列を表すコンティグに集成させた(図4(b))。3438bp長を有するpDC−SIGN遺伝子のコンセンサス配列を、3つの異なる独立したクローン間の配列の比較によって決定した。配列解析およびcDNA配列との対のアラインメントは、pDC−SIGN遺伝子が、エキソン1および8のサイズが決定されていない遺伝子の完全なコード領域にわたる8つのエキソンによってコードされたことを示した。決定されたブタcDNAの非コード領域の両末端における余分のヌクレオチド配列は、遺伝子に含まれなかったが、8つのすべてのエキソンの配列は、cDNAのコード領域および部分的3’末端非コード領域の配列に完全に同一であり、遺伝子の確実性が示された(図5−1〜5−2)。
イントロンのサイズは113〜689bpで変動し、そしてイントロン上のすべてのアクセプターおよびドナー配列は、GT−AG規則に従った。さらなる代替的にスプライシングされたmRNAアイソフォームが、コンピュータソフトウェアプログラムASPicによって推定されなかったことから、ブタ単球由来樹状細胞由来の同定されたcDNAは、pDC−SIGN発現の唯一存在するアイソフォームであるようであり、これは、本明細書に記載のRACE−PCR結果に一致することが示唆される。詳細な配列を、図5−1〜5−2に示す。翻訳開始部位は、エキソン1において開始する。エキソン1の3’末端、エキソン2全体およびエキソン3の5’末端は、細胞質尾部(CT)をコードする。エキソン3の残りの部分およびエキソン4の5’末端は、膜貫通ドメイン(TMD)をコードする。ネック領域は、エキソン4のTMD配列より後方にあり、エキソン5全体およびエキソン6の最初の8個のヌクレオチドにまで及ぶ。エキソン6の残りの部分、エキソン7全体およびエキソン8の5’末端は、炭水化物認識ドメイン(CRD)をコードする。
pDC−SIGN遺伝子は、8つのエキソンの類似の構造およびサイズを、対応するエキソンに対する4つのドメインの局在化を含め、推定されるウシ、イヌDC−SIGN遺伝子および同定されたマウスSIGNR8遺伝子と共有する。pDC−SIGNのゲノム配列とウシDC−SIGN、イヌDC−SIGNまたはマウスSIGNR8との対比較は、CRDをコードする最後の3つのエキソンが、最も高い配列同一性(70〜85%)を有することを表した。pDC−SIGNゲノム配列と他の種との全体的同一性(ウシDC−SIGN>イヌDC−SIGN>マウスSIGNR8)もまた、DC−SIGNタンパク質の系統解析から得られる結果と一致した。全体のイントロン配列における制限された配列同一性が4つの遺伝子において示されたが、エキソンに隣接するイントロン領域のいくつかは、特に、ブタとウシのDC−SIGN遺伝子間ならびにブタとイヌのDC−SIGN遺伝子間で保存された。これらの保存配列は、遺伝子発現を調節する共通のエレメントを含有してもよい。
ブタDC−SIGN遺伝子が、非霊長類大型哺乳動物種間で最初の実験的に同定された遺伝子であることをさらに確認するために、ヒトゲノムとのブタ転写物およびUnigeneクラスターアラインメントを、NCBIウェブサイトにおけるマップビュアーによって実施した。ブタゲノムに対するSsc UniGeneおよびSsc RNAを含むヒトおよびブタ染色体セグメント間のDC−SIGN(CD209)の比較マッピングを、NCBI Map Viewer Build 36.2から7,400K〜8,040Kの間の領域ディスプレイを使用して行った。ヒトDC−SIGN遺伝子は、NCBI Map Viewer Build 36.2に従えば、染色体19p13.3上に局在する。ヒトおよびブタ染色体セグメント間の対応に基づいて、pDC−SIGN遺伝子は、ブタ染色体2のSSC 2q1.1〜q2.1の間に割り当てられる(局在する)ことが推定される。
pDC−SIGNの組織および細胞分布:pDC−SIGN mRNAの発現が、RT−PCRによって、ブタの一次(胸腺および骨髄)ならびに二次リンパ器官(リンパ節および脾臓)の両方ならびに肺および骨格筋において検出されたが、十二指腸、腎臓、心臓または肝臓では検出されなかった(図6a)。リンパ節および骨髄の発現レベルが最も高かった。筋肉において発現されたDC−SIGNの検出は興味深かったが、マウスSIGNR7および8もまた、骨格筋において発現することが見出された。
様々なリンパ器官におけるpDC−SIGN発現を考慮すると、pDC−SIGNは、MDDCに加えて、特定の造血細胞集団によっても発現されることが推測された。従って、フローサイトメトリー解析を実施して、PBL、単球、MDDC、MDMΦおよびPAM上のpDC−SIGNタンパク質の表面発現を検出した(図6b〜6d)。ブタPBMCの散乱光プロファイルから、明らかに、それらの形態学に従って、2つの細胞集団、PBLおよび単球が示された。CD14分子はブタ単球の表面マーカーであるため、これらの2つの細胞集団は、抗ブタCD14モノクローナル抗体を使用する免疫磁気標識MACSシステムによって、分離され得る。CD14+単球をさらに使用して、サイトカインの非存在下、それぞれrpGM−CSFおよびrpIL−4またはMDMΦの添加を伴って、MDDCを発達させた。PBLおよび単球は、pDC−SIGN発現を示さなかったが、hDC−SIGNまたはL−SIGNはリンパ球または単球において発現されないため、このことはいくらか予想されていた。従って、ブタ単球細胞系統3D4/31上では、pDC−SIGN発現は検出されなかった(図6b〜6d)。培養物における単球からMDDCへの分化時に、3日目〜7日目に、中央値蛍光強度を約8倍増加させ、pDC−SIGN発現をアップレギュレートさせた。ブタDC−SIGN発現もまた、MDMΦ上で見出された。MDDCと比較して、大多数のMDMΦは、pDC−SIGN表現型を示した。PAMは、pDC−SIGN表現型が優勢であったが、発現レベルは、MDMΦ上での発現レベルより低かった。ブタ腎臓においてpDC−SIGNのmRNAの発現が検出できなかったことと一致して、タンパク質は、ブタ腎臓由来の上皮細胞系統PK15において発現されなかった(図6b〜6d)。
pDC−SIGNタンパク質が、リンパ組織の特定の細胞集団において実際に発現されるかどうかをさらに確認するために、ブタリンパ節および肝臓組織のパラフィン切片に対するIHC解析を実施した。pDC−SIGNタンパク質は、リンパ節における発現の優勢な類洞パターンを示したことが見出された(図7(a))。しかし、ブタ肝臓では、検出可能な発現は認められず(図7(b))、このことは、RT−PCRの結果と一致した(図6a)。リンパ節の類洞におけるpDC−SIGN特異的抗ペプチド抗体によって免疫染色された細胞のほとんどが、マクロファージ様細胞および樹状細胞様細胞であった(図7(c))。実質組織のリンパ管における内皮細胞もまた、pDC−SIGN特異的抗ペプチド抗体で免疫染色された(図7(d))。ブタリンパ節におけるpDC−SIGNタンパク質の発現パターンは、ヒトリンパ節におけるhDC−SIGNの発現パターンに類似し、ここで、hDC−SIGNタンパク質は、IHCによって、類洞マクロファージ上だけではなく、内皮細胞上においても同定された。推定されたブタL−SIGNは、存在する場合、LSEC上で強力に発現されるはずであるため、ブタ肝臓においてpDC−SIGN発現が認められなかったことは、クローニングされたpDC−SIGNがL−SIGN相同体ではないことを支持する。
実施例2
ブタDC−SIGNを発現する安定な細胞系統の作製
材料および方法
ブタDC−SIGNを所有する2シストロン性発現ベクターの構築:pDC−SIGNの完全なコード領域(723bp)を、プライマーNco−DCS−5(5’−ATACCATGGCAGAGATATG−3’(配列番号25に対応する))およびXho−DCS−3(5’−AGTCTCGAGTCAGAGCATGGGGCAGGGAGA−3’(配列番号26に対応する))を使用するPCRによって増幅し、続いて、Nco IおよびXho I制限部位を使用して、ニワトリβ−アクチンプロモーターに融合したCMV前初期エンハンサーからなるハイブリッドプロモーターの下流で、2シストロン性発現ベクターpTriEx−1.1 Neoベクター(Novagen,Madison,WIから市販されている)(pTriEx−1.1 Neoベクターの配列およびマップは、http://www.emdbiosciences.com/docs/docs/PROT/TB293.pdfに示されている)にクローニングした。「pTriEx−PDCS」と標示される構築物を配列決定して、同一性を確認し、そして7243bp長であることを決定した(骨格ベクターpTriEx−1.1 Neo(6664bp)+ブタDC−SIGNのタンパク質コード領域(723bp)の挿入およびベクター上のNco IとXho Iとの間の配列(144bp)を差し引くことを含む)。続いて、pTriEx−PDCS構築物を使用して、pDC−SIGNを安定に発現する安定な細胞系統(BHK−21)を作製した。
トランスフェクションおよび安定な細胞系統選択:BHK−21細胞を、トランスフェクション前に、6ウェルプレートに、1ウェルあたり2×105個の細胞で播種し、そして抗生物質を含まない完全増殖培地(DMEM中10%ウシ胎児血清)において約24時間、細胞が80%〜90%コンフルエンシーに到達するまで増殖させた。細胞の個々のウェルを、製造者の指示に従い、Lipofectamine 2000(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)を使用して、それぞれ、プラスミドpTriEx−PDCSまたは空のベクターpTriEx−1.1 Neoでトランスフェクトした。簡単に説明すると、2μgのプラスミドDNAを、6μLのLipofectamine 2000および500μLのOpti−MEM(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)と、室温で、20分間、混合し、次いで、細胞に添加した。トランスフェクト細胞を、約36時間、インキュベートして、増殖培地を伴わずに標的pDC−SIGN遺伝子の発現を可能にし、次いで、完全増殖培地+1mg/mLの濃度のGeneticin(登録商標)選択的抗生物質(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CAから市販のGentamicinに関連する硫酸ネオマイシンのアミノグリコシドアナログであるG−418試薬)で置き換えた。Geneticin(登録商標)含有培地を2日間ごとに交換して、死細胞または死にかかっている細胞を取り出した。
12日間後、生存している細胞をトリプシンで処理し、そして60mm皿において、単一の細胞が、良好に分離された個々のコロニーを生じるような希釈でプレート化した。数百細胞の個々のコロニーが存在し、そしてクローニングリング技術によって単離されるまで、細胞を約2週間、増殖させた。取り出そうとするコロニーの位置に印を付し、そしてクローニングリングを注意深く配置して、コロニーを取り囲んだ。コロニーリング中の細胞をトリプシン処理し、次いで24ウェルプレートの個々のウェルに移した。移した細胞が十分な密度に増殖した場合、それらを、T−25フラスコに置き換え、細胞が100%コンフルエンシーに到達し、そして操作された細胞系統として認識されるまで、増殖させた。
ヒトICAM−3およびICAM−2結合アッセイ:ヒトICAM−3またはICAM−2のpDC−SIGNタンパク質への接着を、FACS解析を介して可溶性免疫接着因子に結合した検出可能な細胞を測定することによって、BHK−PDCSおよびBHK−21細胞で評価した。3T3−HDCS細胞を、陽性コントロールとして使用した。細胞(1サンプルあたり1〜3×105個)を、2%FBSを含有する100μLのPBSに再懸濁し、そして60分間、4℃で、1μgの組み換えヒトIgG1 Fc(hFc)、ヒトICAM−3−Fc(hICAM3−Fc)キメラまたはhICAM2−Fcキメラ(R&D Systems,Minneapolis,MN)と共に、マンナン(100μg/mL)またはエチレングリコール四酢酸(EGTA、10mM)の存在または非存在下で、インキュベートした。次いで、細胞を2回洗浄し、そしてさらに45分間、4℃で、2%FBSを含有する100μLのPBS中0.5μgのFITC標識抗ヒトIgG Fc抗体(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)と共にインキュベートした。FACSAria(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して、蛍光をモニターした。
フローサイトメトリー解析:表面染色に使用したBHK、3D4/31、PK15および3T3−HDCS細胞を、トリプシン処理により回収し、計数し、そして冷却した洗浄緩衝液(0.1%アジ化ナトリウムおよび0.2%BSAを含有するPBS緩衝液)中1×106個の細胞/mLに調整した。ブタPBL、PAM、MDDCおよびMDMΦのそれぞれについて、細胞濃度を、2〜5×105個の細胞/mLに調整した。緩衝液の微量遠心分離および取り出し後、約2〜10×105個の細胞を、ブタDC−SIGNに対するpDC−SIGN特異的抗ペプチド抗体10μLと共に、PBS中最適希釈(BHK細胞では1:25およびブタ細胞では1:100、但し、ブタ細胞について1:50希釈で実施した早期のフローサイトメトリー解析もまた良好に作動した)で、30〜60分間、インキュベートした。細胞を洗浄して、非結合抗体を取り出し、そしてPBS中1:100希釈の10μLのFITC標識ヤギ抗ウサギIgG(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)で30分間、染色した。2つの染色手順を4℃で行った。3T3−HDCS上で発現するヒトDC−SIGNの検出のために、マウス抗hDC−SIGN mAb(クローン120507、NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)およびFITC標識ヤギ抗マウスIgG(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)を染色に使用した。蛍光を、FACSAria(BD Biosciences,San Jose,CA)またはFACSCalibur(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用してモニターし、そして結果を、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Ashland,OR)を使用して解析した。フローサイトメトリー解析によって確認された表面上でブタDC−SIGNを発現する代表的な細胞系統を、「BHK−PDCS」と標示した。高レベルのpDC−SIGN発現を得るために、細胞系統BHK−PDCSを、pDC−SIGN抗体を使用して、蛍光標識細胞分取(FACS)によってさらに分取した。
結果および考察
ブタDC−SIGNを発現する安定な細胞系統の作製:2シストロン性発現ベクターpTriEx−1.1 Neoを使用して、標的遺伝子を発現する細胞系統を作製することができる。ベクターは、脳心筋炎ウイルス(ECMV)から誘導される内部リボソーム進入部位(IRES)を使用し、挿入された標的遺伝子およびネオマイシン−耐性遺伝子を、単一のmRNAから翻訳させることを可能にする。pDC−SIGNの完全なコード領域をコードするPCRアンプリコンを、ハイブリッドプロモーターの下流にキャップ依存的第1のシストロンとして導入し、一方、ネオマイシン−耐性遺伝子は第2のシストロンとしてIRESの制御下にある。このベクター系であれば、おそらく、両方の遺伝子の連結された発現のため、pTriEx−PDCSでトランスフェクトされた安定な細胞系統の選択が、pCI neoベクター由来構築物(pCI−PDCS)を使用するよりも、より効率的に達成される。
pDC−SIGN発現プラスミドpTriEx−PDCSでトランスフェクトした代表的なBHK−21細胞コロニーを、Geneticin(登録商標)抗生物質(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CAから市販のGentamicinに関連する硫酸ネオマイシンのアミノグリコシドアナログであるG−418試薬)の選択下で細胞系統へと発達させ;そして細胞系統をBHK−PDCSと標示した。pDC−SIGNを細胞表面上で発現させることができるかどうかを決定するために、細胞系統BHK−PDCSおよびBHK−21を、フローサイトメトリー解析のためのポリクローナルpDC−SIGN抗体で染色した。図8aに示されるように、BHK−21細胞上では、抗体による検出可能の染色は認められなかったが、BHK−PDCS細胞上では、pDC−SIGNタンパク質の表面発現が検出され、これは、BHK−PDCS細胞系統が、pDC−SIGNタンパク質を合成することが可能であることを示した。また、結果から、pDC−SIGNが、II型内在性膜タンパク質ファミリーに属することが確認された。FACSによって、BHK−PDCSをさらに富化および分取して、pDC−SIGN発現を伴う、より純粋な細胞集団を入手し、そして以後の結合実験に使用した。加えて、hDC−SIGN特異的mAbによる染色によって確認される(L. Wu et al., “Functional evaluation of DC-SIGN monoclonal antibodies reveals DC-SIGN interactions with ICAM-3 do not promote human immunodeficiency virus type 1 transmission,” J. Virol. 76:5905-14 (2002)により記載の)hDC−SIGNを安定に発現する3T3−HDCS細胞系統(図8a)を、陽性コントロールに使用した。
ヒトICAM−3およびICAM−2免疫接着因子のpDC−SIGNを安定に発現するBHK細胞への結合:可溶性hFc、hICAM−3−FcおよびhICAM−2−FcのpDC−SIGN陰性BHK−21細胞への結合は、マンナンまたはEGTAのいずれかが存在してもまたは存在しなくても、観察されなかった(図8b〜8e)。しかし、hICAM−3−FcまたはhICAM−2−FcのいずれかのDC−SIGN陽性細胞の両方への結合は観察された。hICAM−3−FcのBHK−PDCS細胞への結合は、hICAM−2−FcのBHK−PDCS細胞への結合よりも高い親和性を有した。hFc単独のBHK−PDCSまたは3T3−HDCSへの結合は陰性であったため、結合は特異的であった。さらに加えて、マンナンの添加により、hICAM−3−FcおよびhICAM−2−Fcの両方の結合とも阻止され、EGTAが存在する場合も同様であった。DC−SIGN陽性細胞の両方において、EGTAによる阻害は、マンナンによる阻害よりも効率的であった(図8b〜8e)。結果は、pDC−SIGNが、ヒトICAM−3またはICAM−2と交差反応することが可能であり、そして相互作用がCa2+に対して依存的であり、そしてpDC−SIGNのCRDによって仲介されることを示した。
実施例3
ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の伝播または感染に対するブタDC−SIGNの関与
材料および方法
PRRSVウイルスストックの作製:異なる遺伝子型由来の2つのPRRSV株を、本研究に使用した。本研究の目的のために「PGXG」と標示された緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子型1 PRRSVのウイルスストックを、PRRSV感染性cDNAクローンによりPRRSV感染を支持することが可能なMARC−145細胞(Dr. Ying Fang,South Dakota State Universityより恵与された)のトランスフェクションによって作製した。感染性PRRSV cDNAクローンを、かなりより高い効率でDNAからラウンチ(launched)されるように改変し、続いて、MARC−145細胞に対する2代連続継代を行った。細胞破砕物が遠心分離によって除去され、ウイルスストックは、それらを有さないPRRSV含有上清であった。貯蔵条件で保持されたPGXGおよび遺伝子型2北米型PRRSV株VR2385のウイルス力価を、IFAによるMARC−145細胞に対する限界希釈によって決定し、そしてそれぞれ、1mLあたりの蛍光焦点形成単位(FFU)として定量した。
PRRSV結合アッセイ:BHK−PDCSおよびBHK−21細胞単層を、細胞解離緩衝液(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CAから市販の酵素を含まないPBSベースの緩衝液)を伴うインキュベーションによって分散させ、そして2%FBSを含有するPBSで2回洗浄した。懸濁液中合計で5×105個の細胞に、1個の細胞あたり10FFUの感染効率(M.O.I.)のPRRSV株VR2385を播種した。4℃で60分間のウイルス吸着および2回の洗浄後、細胞を、PRRSV mAb SDOW17−A(Rural Technologies,Inc.,Brookings,SD)と共に、1:1000希釈で30分間、4℃でインキュベートした。続いて、細胞を2回洗浄して、遊離の抗体を除去し、次いで、FITC標識ヤギ抗マウスIgG(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)と共に、1:50希釈でインキュベートして、FACS解析により、PRRSVの細胞への結合を決定した。PRRSV−ブロッキングICAM−3結合アッセイでは、BHK−PDCS細胞を、hICAM−3−Fc添加の前に、PGXGまたはVR2385(1個の細胞あたりM.O.I.=10FFU)のいずれかと共に、60分間、4℃で、インキュベートした。
PRRSV捕捉およびトランスでの伝播アッセイ:BHK−PDCS、BHK−21またはMARC−145ドナー細胞(それぞれについて2.5×105個の細胞)を、PGXGまたはPRRSV VR2385ウイルスのいずれかと共に、1個の細胞あたり0.5FFUのM.O.I.で、500μLの容積で、3時間、インキュベートして、ウイルスの吸着を可能にした。次いで、細胞を、PBSで洗浄し、2%FBSを補充したMEMの1mL中MARC−145標的細胞(1.0×105個)と混合し、そして12ウェルプレートの個々のウェルに播種した。感染の3日後、細胞を掻き取り、そしてPRRSVウイルスを3サイクルの凍結融解によって回収した。ウイルス力価を上記のように決定した。
結果および考察
BHK細胞の表面上で発現されたブタDC−SIGNは、PRRSVウイルスの進入には関与しないが、PRRSV伝播を増強して、トランスでMARC−145細胞を標的にする:BHK−21は、細胞内のエンベロープPRRSV複製を支持するが、ウイルスの細胞間の拡大は可能にしないことが示された(J. J. Meulenberg et al., “Infectious transcripts from cloned genome-length cDNA of porcine reproductive and respiratory syndrome virus,” J. Virol. 72:380-7 (1998)の早期の研究を参照のこと)。pDC−SIGNは、PAM(高度にグリコシル化されたエンベロープウイルスタンパク質を含有するPRRSVの感受性宿主細胞)上で発現されたため、細胞表面上で発現されるpDC−SIGNが、PRRSV付着および進入に関与するかどうかを調べることは重要である。遺伝子型1 PRRSV感染性cDNAクローンによるBHK−PDCS細胞のトランスフェクションにより、その後、標的MARC−145細胞において繁殖するGFP発現を伴うウイルスを回収(recover)し得る(図9a)。しかし、細胞培養培地に放出されたウイルス(PGXG)は、非トランスフェクトBHK−PDCS細胞に感染することができなかったことから、pDC−SIGNは、PRRSV進入に関与しないことが実証された。BHK−21細胞系統はまた、PRRSV結合に感受性であることが公知であったため(例えば、D. Therrien et al., “Preliminary characterization of protein binding factor for porcine reproductive and respiratory syndrome virus on the surface of permissive and non-permissive cells,” Arch. Virol. 145:1099-16 (2000)を参照のこと)、続いて、PRRSV特異的結合アッセイを実施して、細胞表面に対するウイルス付着を、BHK−PDCS細胞とBHK−21細胞との間で比較した。PRRSVは、実際に両方の細胞系統に結合することが見出されたが、差異を定量することは困難であった(図9b)。BHK−PDCS細胞に対するPRRSVの付着が、pDC−SIGN−hICAM−3相互作用を干渉し得るかどうかを決定するために、hICAM−3−Fc結合の前に、細胞を遺伝子型1 PRSV株PGXGまたは遺伝子型2 PRRSV株VR2385のいずれかで前処理した。結果は、PRRSV株は両方とも、hICAM−3結合を阻止したことを示し、PRRSV付着と、BHK細胞表面上でのpDC−SIGNの発現との間に予想外の相関が示唆された(図9c)。
さらに加えて、hDC−SIGNは、ウイルスを効率的に標的細胞に伝播することが示されているため、pDC−SIGNが、トランスでのドナー細胞−標的細胞接触によりPRRSV伝播を容易にする類似の能力を有するかどうかについて問題となった。BHK−PDCSおよびBHK−21細胞を、ドナー細胞として使用したが、感受性MARC−145細胞を、PRRSV捕捉および伝播アッセイにおける標的細胞(またはコントロールにおけるドナー細胞)として使用した。ドナー細胞を、それぞれ、培養培地(疑似インキュベーションコントロールとして)、PRRSV PGXG株およびPRRSV VR2385株と共にインキュベートした。1×107FFU/mLにまで到達し得る1個の細胞あたり0.5FFUの同じM.O.I.でのPRRSVによるMARC−145細胞の直接感染から得られるウイルス力価と比較して、3つのタイプのドナー細胞によって伝播されるMARC−145細胞において増殖したPRRSVのウイルス力価はかなり低く、2.9×102FFU/mL〜2.5×104FFU/mLの範囲であり(図9d)、低い効率にもかかわらず、PRRSVの伝播を定量し得ることが示された。MARC−145細胞によって伝播されるPRRSVは、さらなる細胞の存在(ドナー細胞をまた、標的細胞としても使用した)のため、2つのBHK細胞よりも効率的であった。BHK−PDCSによるPRRSV伝播は、それぞれ、BHK−21細胞と比較して、PRRSV PGXG株では52%(p=0.07)増強され、そしてPRRSV VR2385株では、72%(p=0.02)増強された(図9d)ことから、pDC−SIGNはおそらく、これらの条件下でトランスでのPRRSV伝播に関連することが示唆される。
実施例4
ブタICAM−3 cDNAアイソフォームのクローニングおよび特徴付け
材料および方法
ブタ:3〜7週齢の健常な雑種の従来のブタから、静脈血サンプルを回収した。ブタを、実験条件下、隔離された部屋で維持した。
ブタからのCD14陽性単球の調製および培養:ブタから回収したヘパリン処理血液を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1:2に希釈し、そしてFicoll−Paque PREMIUM(GE Healthcare,Sweden)上、1000gで40分間、室温で遠心分離した。末梢血単核細胞(PBMC)を含有するバフィーコート層を単離し、そして250gのPBSで3回、10分間4℃で洗浄した。PBMCの表面上のCD14陽性単球を、抗CD14mAb(M−M9,VMRD Inc.,Pullman,WA,USA)およびヤギ抗マウスIgG1−磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec GmbH,Bergisch Gladbach,Germany)を使用して、細胞の免疫磁気標識MACSシステムによって分取した。精製された単球を、1×105個の細胞/mLで、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、55μmol/Lのβ−メルカプトエタノールおよび抗生物質を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に再懸濁した。次いで、単球を、6ウェルプレートまたは60mmペトリ皿において、37℃で、25ng/mLの組み換えブタ顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(rpGM−CSF,R&D Systems,Minneapolis,MN)および25ng/mL組み換えブタインターロイキン−4(rpIL−4,Endogen,Rockford,IL)の存在下で培養した。3日ごとに、培養培地の半分を、新鮮培地で置き換えた。
RNA抽出:インビトロで培養したブタ単球を、7日目〜10日目の間に回収し、そしてブタ単球由来樹状細胞(MDDC)として使用した。ブタMDDC由来の全RNAを、製造者のプロトコルに従い、RNeasyミニキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用して、単離した。
5’−RACE、3’−RACEおよびRT−PCR:RTおよびRACE−PCRを、製造者の取扱説明書に従って、SMART RACE cDNA増幅キットおよびAdvantage 2 PCR Enzyme Systems(Clontech,Palo Alto,CA)によって実施した。5’−RACEおよび3’−RACEに使用した遺伝子特異的プライマーは、それぞれ、PIC54(5’−GCGTCCAGGTTAAGACACGCCG−3’(配列番号20に対応する))およびPIC51(5’−TCCGCGAGCAGAGACGACCACG−3’(配列番号21に対応する))であり、既知の部分的ブタICAM−3遺伝子の配列(GenBank 受託番号AJ632303)に基づいて設計した(Leeb and Muller, 2004、上掲)。RACE反応産物を、それぞれのプライマーで直接配列決定し、続いて、TAクローニングストラテジーによって、pCR2.1ベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、そしてVirginia Bioinformatics Institute(Blacksburg,VA)において、M13順方向および逆方向プライマーで配列決定した。
全長ブタICAM−3の2つのアイソフォームの完全性を確認するために、順方向プライマーPIC5E(5’−CTGTGGGTTCATGTGGGATCAGGGT−3’(配列番号22に対応する))および逆方向プライマーPIC58(5’−GGGGACAGCAGAAACGGAACGTCA−3’(配列番号23に対応する))を使用して、全長ブタICAM−3のcDNAを増幅した。得られた2つのPCR産物を、それぞれpCR2.1ベクターにサブクローニングし、配列決定し、そしてpPIC3LおよびpPIC3Sと標示した。
ゲノムPCR:QIAamp DNA blood Miniキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を、ブタMDDC、全血またはPBMCからのDNAの単離に使用した。ブタICAM−3ゲノム配列の増幅に使用したプライマーを、本研究から同定された全長ブタICAM−3のcDNA配列に基づいて設計した。順方向プライマーPIC53(5’−CCCACGAGATTGTCTGCAACGTGACC−3’(配列番号24に対応する))および逆方向プライマーPIC58は、それぞれ、エキソン4およびエキソン7に局在する。KOD高正確性のDNAポリメラーゼ(Novagen,Madison,WI)、GC緩衝液を伴うTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社、日本)またはAdvantage Genomic PCR Kit(Clontech,Palo Alto,CA)を、それぞれ製造者のプロトコルに従って、ゲノムPCR増幅に使用した。ブタICAM−3ゲノムフラグメントのPCR産物を、両鎖について直接配列決定した。
配列解析:DNAおよびアミノ酸配列の解析を、Lasergeneパッケージ(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を使用して実施した。
結果および考察
培養した付着性PBMCからのブタMDDCの作製:付着性ブタCD14陽性PBMC細胞を、rpGM−CSFおよびrpIL−4を補充した培地において増殖させた。1日間の培養後、初めに、単一およびベール形状細胞が出現した。細胞体からの長いベール状の突起を伴う不規則な形状およびクラスター形成を伴うより大きな細胞が7日目に認められ、ブタMDDCの発生が示された。rpGM−CSFおよびrpIL−4の添加を伴わない培養細胞は、形態学的変化または凝集を何ら示さなかった。
ブタICAM−3のcDNAの2つのアイソフォームのクローニングおよび特徴付け:部分的ブタICAM−3遺伝子について報告されている(Leeb and Muller, 2004、上掲)が、ブタICAM−3のcDNAは、これまで同定されていなかった。推定された部分的ブタICAM−3コード領域に基づいて、2つのプライマーPIC54およびPIC51を設計し、そしてブタMDDCから抽出された全RNAを使用して、5’−および3’−RACE PCRを実施した。5’−RACE PCRの逆方向プライマーPIC54は、3’−RACE PCRプライマーPIC51の下流に局在するため、増幅された5’−RACEおよび3’−RACE PCR産物は、55−ntの重複領域を有し、それ故、ブタICAM−3の全長配列を含む。
それぞれ約850bpおよび750bpを有する2つのフラグメントを、5’−RACE PCRから増幅したが(図10(a))、3’−RACE PCR由来の約700bpのただ1つのバンドが、1%アガロースゲル上で可視化された(図10(b))。得られる配列の集成および解析により、5’−末端領域で異なるブタICAM−3のcDNAの2つのアイソフォームが同定された。続いて、ICAM−3の全長の大きなおよび小さなアイソフォームを、それぞれ利用可能な配列の両末端に相補的な2つのプライマーを使用するRT−PCR増幅によって入手した。2つのアイソフォーム産物の配列解析によって、5’−および3’−RACE産物の集成の結果が確認された。
大きなアイソフォーム(ICAM−3L)は1,493bp長であり、それぞれ、nt13位または258位で開始する2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を有する(図11a〜11b)。第1のORFは、第2のORFと重複しない63−aaの小さなペプチドをコードする。1,119bp長を有する第2のORFは、ブタICAM−3をコードすることが推定されており、後方に、117bpの3’非コード領域、nt1452位のポリアデニル化シグナルおよびnt1469位で開始するポリ(A)尾部が続く。推定ICAM−3タンパク質は、34−aaの推定シグナルペプチドを有し、後方に、338アミノ酸の成熟タンパク質が続く。aa321位から開始する推定26−aaの疎水性膜貫通ドメインの後方に、26−aaの推定細胞質尾部が続く。
大きなアイソフォームICAM−3Lと比較した場合、1,379bp長を有する小さなアイソフォーム(ICAM−3S)は、nt145位から開始する114−ntの欠失を有する(図11a〜11b)。欠失は、インフレームでaa45位の第1のORFから開始し、そして後方に、第2のORFのATG開始コドンが続き、第2のORFと第1の短縮型ORFとの融合が生じている。従って、小さなアイソフォームブタICAM−3Sは、416アミノ酸を有する1つのORFのみをコードする。大きなアイソフォームのブタICAM−3Lにおける小さなORFが、機能的なペプチドを発現することが可能であるかどうか、または小さなアイソフォームICAM−3Sにおける単一のORFがnt13位で開始するかどうかについては、未だ決定されていない。両方のアイソフォームは、推定シグナルペプチドから開始する主要なコード領域を共有する(図11a〜11b)。
所見:結果は、ブタICAM−3アイソフォームが、3つのIg様ドメインのみからなることを示す。ヒト、非ヒト霊長類およびウシICAM−3は、それらを、Ig遺伝子スーパーファミリーのサブファミリーとして定義する5つのIg様ドメインからなるため、非ヒト霊長類以外では、ブタはヒトに最も近い種であることから、ブタICAM−3は、類似の構造を有するべきであることが予想される。しかし、意外なことに、クローニングされたブタICAM−3は、Ig様ループに典型的な鎖内ジスルフィド結合を有する3つの細胞外Ig様ドメインのみをコードしたことが見出された。報告されている部分遺伝子から推定される部分的ブタICAM−3のcDNAと比較して、現存の3つのIg様ドメインは、同一であり、そしてドメイン1〜3として認識される。加えて、ブタICAM−1およびICAM−2において対応するドメインがある各ドメインの最も高い配列同一性はまた、クローニングされたICAM−3が、ドメイン1〜3を有することを示した(以下の表2を参照のこと)(C. J. Stocker et al., “Cloning of porcine intercellular adhesion molecule-1 and characterization of its induction on endothelial cells by cytokines,” Transplantation 70:579-586 (2000);J.W. Godwin et al., “Characterization of pig intercellular adhesion molecule-2 and its interaction with human LFA-1,” Am J Transplant. 4:515-525 (2004))。ICAM−1およびICAM−2に類似して、Ig様ドメイン1(D1)は、2つの推定ジスルフィド結合を含有する。ブタ−ヒトまたはブタ−ウシICAM−3の個々のドメイン間の配列比較は、ドメイン2(D2)およびドメイン3(D3)の両方が、比較的保存されていることを表したが、ブタとヒトとの間では、D2で67%およびD3で68.8%であり、そしてブタとウシとの間では、D2で71.4%およびD3で66%であった。D1は、ブタとヒトとの間、ならびにブタとウシとの間でより低い配列同一性を示す。興味深いことに、ウシICAM−3は5つのIg様ドメインからなるが、そのブタICAM−3との系統的関係は、霊長類との関係よりも近く、40.7%のアミノ酸同一性を有し、そして霊長類ICAM−3から個々のクラスターを形成する。この関係は、ウシおよびブタICAM−3が、相違する経路から進化したことを示唆する。
表2.ブタICAM IgSFドメイン間のアミノ酸配列同一性
*Ig様ドメイン間のアミノ酸配列同一性パーセントを、Megalignプログラムによって計算した。ブタICAM−3ドメイン1〜3とブタICAM−1またはICAM−2における対応するドメインとの比較を、太字で示した。
8つの潜在的N−結合型グリコシル化部位は、3つのドメイン上に局在することが推定されている(図11a〜11b)。D1の第1の部位は、LFA−1結合に極めて重要であったヒトICAM−3に同一な保存された残基Asn57およびSer59を含み(L.B. Klickstein et al., “Localization of the binding site on intercellular adhesion molecule-3 (ICAM-3) for lymphocyte function-associated antigen 1 (LFA-1),” J. Biol. Chem. 271:23920-23927 (1996))、ブタにおけるLFA−1とICAM−3との間の分子相互作用が、ヒトICAM−3と類似のパターンを有することが示唆される。
ブタICAM−3の膜貫通ドメイン(TMD)および細胞質尾部(CT)は、ブタICAM−1およびICAM−2またはヒトおよびウシICAM−3とでほとんど保存が認められない。ヒトおよびウシICAM−3のCTにおけるセリン残基は独特であり、そしてヒト、ラットまたはマウスICAM−1もしくはICAM−2はいずれも、それらのCTにおいてセリン残基を含有しないことが見出されている(F. Lozano et al., “Effect of protein kinase C activators on the phosphorylation and the surface expression of the CDw50 leukocyte antigen,” Eur. J. Biochem. 203:321-326 (1992))。興味深いことに、ヒトおよびウシICAM−3と同様に、ブタICAM−3ならびにブタICAM−1および−2はすべて、それらのCTにおいてセリン残基を含有する。ヒトICAM−3におけるセリン残基は、一過的なリン酸化を経験し、異なる細胞内シグナルおよび細胞接着において異なる役割がもたらされることが示されている。ブタICAMメンバーが、ヒトICAM−3と同様に、シグナル伝達にリン酸化型セリン残基を使用するかどうかについては、明らかになっていない。
ICAMメンバーの各Ig様ドメインは、異なるエキソンによってコードされる。ICAM−1−欠損マウスでは、マウスICAM−1遺伝子の完全なエキソンスキッピングにより、Ig様ドメイン2、3、および/または4の欠失を伴うスプライシング変異体が生じた。しかし、これらの変異体の出現は、病理学的条件による可能性がある。病理学的条件または正常な生理学的条件下にかかわらず、ヒトICAM−3のスプライシングアイソフォームについては、報告されていない。ヒトおよびウシICAM−3の両方の遺伝子は、次の7つのエキソンを有する:エキソン1はシグナルペプチドをコードし、エキソン2〜6は、それぞれD1〜D5をコードし、そしてエキソン7はTMD+CTをコードする。ブタICAM−3遺伝子の利用可能な配列は、完全ではなく、そしてエキソン1〜部分的エキソン5の領域のみを含有する。本研究から同定されたD4およびD5欠失を伴うブタICAM−3アイソフォームは、ブタICAM−3遺伝子のエキソン5および6の連続スキッピングの結果であるようである(図12a)。従って、スプライシングの機構をさらに良好に理解するために、ブタICAM−3遺伝子の残りの未知領域のクローニングおよび配列決定を行った。
ブタICAM−3遺伝子の3’−近位領域のクローニングおよび特徴付け:ブタICAM−3のTMDならびにCT領域は、おそらく、エキソン7によってコードされる。エキソン7の配列を、本研究では、ブタICAM−3のcDNAから決定し、それ故、遺伝子の未知の3’−近位領域を同定するために、この配列を使用して、ゲノムPCRのための逆方向プライマーを設計した。GCリッチ領域のPCR増幅による所望されない変異を最小限にし、そして潜在的な人工的欠失を回避するために、異なる3つの市販のキットを、ゲノムPCR増幅に使用した。3つのすべてのPCRキットを使用して得られるPCR産物は、約1.5kb長のサイズを有した。これらの1.5kbPCR産物の配列解析により、それらがすべて同一であり、従って、72bpのエキソン4、すべてで273bpのイントロン4、すべてで255bpのエキソン5、すべてで119bpのイントロン5、すべてで244bpのエキソン6、すべてで360bpのイントロン6、および217bpのエキソン7を包含するブタICAM−3遺伝子の3’−近位領域を表すことが示された(図12b)。先に報告された部分的ブタICAM−3遺伝子を、本研究において同定された残りの配列と共に継ぎ合わせた場合、完全なブタICAM3遺伝子の構成が、ヒト、非ヒト霊長類およびウシ(すべて、7kbに及ぶ7つの推定エキソンを含有する)と同様に示された。エキソン3〜7は、遺伝子の3’側の半分においてクラスター化された。
ブタICAM−3のエキソン5、6および7の未知の境界配列を、それぞれ、解析し、そして配列を、ヒトおよびウシの配列と比較した(以下の表3を参照のこと)。イントロン6のスプライスアクセプター部位(SAS)を含むエキソン7の境界配列は、ヒトの配列に類似する。エキソン7は、TMDおよびCT領域の初めのセリン部位をコードするトリプレット(AGT)うちの2つ(GT)から開始し、これは、ブタICAM−3のcDNA構造と一致する(図11a〜11b)。エキソン5および6では、イントロン6のスプライスドナー部位(SDS)を除いて、他の境界配列が、スプライシングに関与することが公知であるコンセンサスエレメントを満たし、そして3つの種の間で保存されている(表3、図12b)。ほとんどのイントロンは配列GTから開始するため、イントロン6の推定SDSにおける点変異(GからA)は、同様に、スプライシングシグナルを排除し、それ故、エキソン6のスキッピングがもたらされる。他の代替的SDSは、下流配列において見出されなかった。
エキソン5の推定されたコード領域では、ヒトおよびウシICAM−3遺伝子における対応する位置と比較して、CTTからTGAへの有意な3nt置換が、エキソンの開始配列からnt141位において観察された。変異はインフレームであるが、ロイシン残基を終止コドンに変更する。ブタにおけるエキソン5の255bpサイズは、ヒトおよびウシにおけるそれと同じである。
推定エキソン6の配列はさらに複雑であった。4nt欠失および1nt欠失が、それぞれ、エキソンの開始配列からnt53位および終止配列からnt−7位で見出された。4nt欠失は、フレームシフトを生じ、従って、以後に、4つのインフレームでの終止コドンがもたらされる(図12b)。
エキソン5および6の得られた配列情報に基づいて、エキソン5または6を包含するRNA転写物が失われないことを確実にするために、特に、順方向プライマーPIC53およびエキソン5またはエキソン6の配列に相補的ないくらかの逆方向プライマーでcDNAフラグメントを増幅することを、試みた。特定のフラグメントは増幅されず、ブタICAM−3遺伝子は、エキソン5および6がスキッピングされている成熟mRNAのみを産生するようであることが示唆された。
表3.ヒト、ウシ、およびブタICAM−3遺伝子におけるエキソン5〜7のイントロン/エキソン境界配列の比較
SAS:スプライスアクセプター部位、(Splice Acceptor Site);SDS:スプライスドナー部位(Splice Donor Site);N/A:該当なし
イントロン配列を小文字で表す一方、エキソン配列を大文字で表す。イントロン開始配列「gt」および終止配列「ag」に下線を付す。ブタICAM−3遺伝子におけるイントロン6の推定SDSにおける点変異(gからa)を斜体太字で示す。
エキソン5および6におけるインフレームでの終止コドンまたは中途終止コドン(PTC)の存在は、ブタICAM−3の成熟mRNAからのそれらの排除に関連する。ナンセンス変異に伴う選択的スプライシング(NAS)として公知の現象が、少数の疾患を引き起こす遺伝子において認められている。しかし、情報および信条に基づいて述べれば、種関連のNASについては、これまで報告されていない。ブタMDDCから同定されたエキソン5および6を欠くブタICAM−3アイソフォームは、ブタ種におけるICAM−3のRNA転写物の天然の形であり得る。エキソン5のスキッピングは、おそらく、TGAナンセンス変異の結果であるが、エキソン6のスキッピングは、4つのナンセンスコドンまたはイントロン6のSDSにおける点変異から生じ得る。NAS機構を確認し、そしてさらにブタICAM−3遺伝子の関連スプライシング機構を同定するためには、変異誘発解析のような本研究の範囲にはないさらなる研究が必要である。
ヒトICAM−3タンパク質におけるIg様ドメイン4および5の正確な機能については、特徴付けられていない。第1のN−結合型グリコシル化部位においてAsn57およびSer59を含むいくつかの極めて重要な残基を含有するドメイン1は、LFA−1結合に必要かつ十分である。ドメイン2は、ヒトDC−SIGNと相互作用すると考えられる。クローニングされたブタICAM−3アイソフォームは、ブタLFA−1およびDC−SIGNとの潜在的な接着特性を保持し、それ故、対応するブタ免疫応答において類似の役割を果たすべきである両方のドメインからなる。
実施例5
ブタLSECtin cDNAおよび遺伝子のクローニングおよび特徴付け
材料および方法
RNA抽出および逆転写PCR(RT−PCR):7週齢の健常な雑種の従来のブタを、組織サンプルの回収に使用した。ブタを、実験条件下、隔離された部屋で維持した。RNeasyミニキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用し、続いて、RNaseを含まないDNaseIの処理により、ホモジナイズしたブタ肝臓組織から全RNAを単離した。第1鎖cDNAを、オリゴ−dT(Promega Corporation,Madison,WI)を逆方向プライマーとして使用するSuperScriptII逆転写酵素(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)によって、全RNAから合成した。遺伝子特異的プライマーの対、PLST−F(配列番号31に対応する5’−TATGCCCAGAGCAGGGCACC−3’)およびPLST−R(配列番号32に対応する5’−GGGCTAGGTCAGCAGTTGTGC−3’)を、GenBank受託番号AK232603を有するブタEST配列に従うpLSECtin cDNAの完全なコード領域の増幅のために設計した。PCRを、50μL反応液中、Advantage2PCRキット(Clontech,Palo Alto,CA)により、次のPCRパラメータを使用して実施した:94℃で2分間、94℃で15秒間、60.0℃で30秒間および72℃で90秒間の30サイクル、および72℃で3分間の最終インキュベーション。得られたPCR産物を、個別に切り出し、精製し、続いて、TAクローニングストラテジーによってpCR2.1ベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、続いて配列決定を行った。
ゲノムPCRおよび遺伝子配列決定:同じプライマーPLST−F(配列番号31)およびPLST−R(配列番号32)を、ワンステップゲノムPCRに使用した。ゲノムPCRを、50μLの全容積中、150ngのブタゲノムDNA(Novagen,Madison,WIから購入した)を使用するPlatinum PCR HiFi Supermixキット(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)によって実施した。PCR条件は、94℃で30秒間、68℃で4分間の35サイクルであり、テンプレートDNAの初期変性は、94℃で2分間であった。得られたフラグメントを、TAクローニングストラテジーによってpCR2.1ベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングした。M13順方向および逆方向プライマーを、遺伝子特異的プライマーPLST−E3F(配列番号33に対応する5’−CAGGATCTACTGAGGACAAACG−3’)と共に、配列決定に使用した。
RT−PCRによって検出されるLSECtinの組織分布:RNeasyミニキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用し、続いて、RNaseを含まないDNaseIの処理により、脾臓、十二指腸、胸腺、腎臓、肺、リンパ節、心臓、骨髄、肝臓および筋肉を含む10のホモジナイズしたブタ組織から全RNAを単離し、オリゴ−dT(Promega Corporation,Madison,WI)を逆方向プライマーとして使用するSuperScriptII逆転写酵素(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)によって、cDNAを合成した。ゲノムDNAの混入を回避するために、ゲノム配列決定によって決定されているpLSECtin遺伝子配列のエキソン6とエキソン7との間の境界にわたるプライマーPLST−E67F(配列番号34に対応する5’−GAGAGTCCGGTTCCAGAACAGCTCCT−3’)、ならびにエキソン8およびエキソン9の境界にわたるプライマーPLST−E89R(配列番号35に対応する5’−TCCCCCAGATTCCAGTGGCTGAAG−3’)を使用して、Advantage2PCRキット(Clontech,Palo Alto,CA)により、50μL反応において、PCRを実施した。PCRパラメータは、95℃で20秒間、68℃で1分間の30サイクルを含み、テンプレートDNAの初期変性は、94℃で2分間であった。ハウスキーピング遺伝子、ブタグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)もまた、PCR(95℃で1分間、95℃で20秒間、55℃で20秒間、68℃で40秒間および72℃で3分間の30サイクル)によって、プライマーGAPDH5(配列番号29に対応する5’−GCTGAGTATGTCGTGGAGTC−3’)およびGAPDH3(配列番号30に対応する5’−CTTCTGGGTGGCAGTGAT−3’)を使用して、増幅した。PCR産物の予想されるサイズは、それぞれ、pLSECtinで303bpおよびブタGAPDHで285bpであった。
配列および系統解析:DNAおよびアミノ酸配列の解析ならびにアラインメントを、Lasergeneパッケージ(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を使用して実施した。
結果および考察
ブタLSECtin cDNAおよび遺伝子の分子クローニングおよび構造:hLSECtinのブタ相同体を見出すために、GenBank ESTデータベースにおける一連の配列類似性検索を行った。hLSECtinのcDNAと有意な相同性を共有する GenBank受託番号AK232603を有するEST配列を見出した。この配列に基づいて、本発明者らは、遺伝子特異的プライマーを設計し、そしてブタ肝臓由来のEST配列に同一であるpLSECtinのcDNAの完全なコード領域を含有する909bpフラグメントを、RT−PCRによって首尾よく増幅した(図13)。微量のフラグメントにより、膜貫通ドメイン(807bp)を欠くもう1つのpLSECtinアイソフォームも同定されたことが表された(図13)。これらの2つのアイソフォーム以外に、一連のより高分子量のバンドが増幅された(図13)が、これは、スプライシング中のpLSECtinプレmRNAの中間産物として認識される(以下の考察を参照のこと)。ブタゲノムプロジェクトの公開ドラフト集成体において利用可能でないpLSECtin遺伝子(2721bp)もまた、PCRプライマーの同じ対によるゲノムPCRに従って、クローニングした(図13)。
図14aに例示されるように、pLSECtin遺伝子は、エキソン1および9のサイズが決定されていない遺伝子の完全なコード領域にわたる9つのエキソンによってコードされた。すべての9つのエキソンの配列は、クローニングされた909bpのcDNAならびにpLSECtin ESTの配列に完全に同一であり、遺伝子の確実性が示された。8つのイントロンのサイズは110〜320bpで変動し、そしてイントロン上のすべてのアクセプターおよびドナー配列は、GT−AG規則に従った。他のII型のC型レクチンと同様に、pLSECtinの推定コード領域は、アミノ末端からカルボキシル末端までの4つのドメイン、CT、TMD、ネックおよびCRDをコードする(図14b)。エキソン1の3’末端およびエキソン2の5’末端は、CTをコードする。エキソン2の残りの部分は、TMDをコードする。ネック領域は、エキソン3〜6の全体およびエキソン7の最初の5ヌクレオチドにわたる。エキソン7の残りの部分、エキソン8全体およびエキソン9の5’末端は、CRDをコードする(図14a)。
pLSECtin遺伝子とゲノムデータベースから利用可能な他の推定哺乳動物LSECtin相同体との比較:pLSECtin遺伝子は、4つのドメインの対応するエキソンへの局在を含む、9つのエキソンの類似の構造およびサイズを、ヒトならびに推定ウシ、イヌ、マウスおよびラットLSECtin遺伝子と共有する(図18)。本発明の目的のためにウマLSECtin1〜3と命名された3つのLSECtin遺伝子相同体が、ウマゲノムデータベースにおいて見出された。ウマLSECtin1およびLSECtin2はまた、同じ遺伝子構造を伴う9つのエキソンを有するが、ウマLSECtin3だけは、8つのエキソンを含有する。通常の(canonical)9エキソン含有LSECtin遺伝子の2つのネックドメインをコードするエキソン(pLSECtin遺伝子に対応するエキソン3および4)を1つのエキソンに融合することによって、ウマLSECtin3において1つのエキソンが失われる。同様に、通常の9エキソン含有LSECtin遺伝子のエキソン3および4を1つのエキソンに融合することにより、推定ヒトLSECtin偽遺伝子に存在する合計で8つのエキソンが生じた。しかし、ヒト偽遺伝子のタンパク質をコードする能力の消失は、チンパンジーLSECtin偽遺伝子と共に、提示された開始コドンATGにおける点変異(GからA)によるものである(図15)。2つのアカゲザルLSECtin相同体、LSECtin1およびLSECtin2を、ゲノム配列決定データに基づいて推定した。しかし、9つのエキソンが存在するにもかかわらず、相同体のいずれも、エキソン3における1nt挿入(LSECtin1の場合)またはエキソン5における1nt欠失(LSECtin2の場合)(偽遺伝子としても認識されている)により、CRD欠失を伴うカルボキシル末端短縮型タンパク質産物をコードする(図15)。
2つのアカゲザルLSECtin偽遺伝子を除いて、すべての同定されたLSECtin相同体は、CRDが常に最後の3つのエキソンにわたる重要な構造的特徴を共有する。これまでに同定された哺乳動物におけるDC−SIGN相同体は、同じ特徴を有する。
mVISTAプログラムを使用するpLSECtinのゲノム配列とウシ、イヌ、ウマ、ヒト、チンパンジー、アカゲザル、マウス、ラット、オポッサムまたはカモノハシとの一対比較により、エキソン(特に、CRDをコードする最後の3つのエキソン)およびイントロン(特に、イントロン1、3、5、6および8)配列の両方における有意な保存が、家畜および霊長類由来のpLSECtinおよびLSECtin相同体の間に存在することが示された(図15)。pLSECtinおよびげっ歯類LSECtin相同体の間では、エキソン配列においてそれほど保存が認められない一方、オポッサムおよびカモノハシLSECtinでは、保存が最も少ない。pLSECtinとpDC−SIGNとの間では、有意な同一性が認められなかった(図15)。
LSECtin mRNAの3’−非翻訳領域(3’−UTR)における複数種保存性マイクロRNA標的配列の推定によるpLSECtinコード産物の配列および系統解析:1,327bpのpLSECtin cDNAは、nt10位または37位において、それぞれ2つのインフレームの開始コドンATGを有する(図14b)。対応する位置で最初のATGを含まない他のLSECtin相同体と比較して、推定pLSECtinタンパク質は、第2のインフレームATGで開始することが推定され、そして290個のアミノ酸のタンパク質をコードする873個のヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(ORF)を包含する(図14b)。ブタLSECtinタンパク質は、28aaの細胞質尾部から開始して、後方に推定22aaのTMDが続く推定II型膜貫通タンパク質である。細胞外ドメインは、111aaのネック領域、その後に続く、129aaのCRDからなる(図17b)。2つの潜在的な内在化モチーフ、aa6位〜9位および14位〜15位におけるYSKWおよびEEが、ヒト、チンパンジー、ウシ、ヒツジおよびイヌLSECtinにおいて保存されているCT内で見出された。変異誘発分析により、hLSECtinの内在化能力が、両方のモチーフの完全性に依存的であることが示された。ウマLSECtin1および3、マウス、ラットおよび2つのカモノハシLSECtin相同体はまた、潜在的内在化シグナルとしてチロシンベースのモチーフを有する。hLSECtinのネック領域は、2つの潜在的なN−結合型グリコシル化部位を含有し、そしてα−ヘリックスコイル状構造を形成することが予想される典型的な7残基反復パターンを有する。また、最近の研究により、hLSECtinは、ネック領域における2システイン残基によるジスルフィド結合二量体として存在することが表された(A. S. Powlesland et al., “A novel mechanism for LSECtin binding to Ebola virus surface glycoprotein through truncated glycans,” J. Biol. Chem. 283(1):593-602 (2008))。これらのすべての特徴は、pLSECtin、ならびにウマLSECtin3、オポッサムおよびカモノハシLSECtinを除く他の哺乳動物LSECtinにおいて同一である。ヒトDC−SIGN、L−SIGN、非ヒト霊長類DC−SIGNおよびマウスSIGNR1は、ネック領域内に可変反復配列を含有するが、SIGNR2およびSIGNR6を除く残りのマウスSIGNRメンバーは、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌおよびウマDC−SIGNと共に、反復配列を有さないことが先に見出されている。データから、LSECtinファミリーメンバーのネック領域の進化は、DC−SIGNファミリーメンバーの進化ほど相違しないことが示唆された。
pLSECtinのCRDは、Ca2+−および炭水化物−結合部位を形成する重要な残基を含有するブタおよび他のすべてのLSECtin相同体タンパク質と共有する最も保存された領域であった。ジスルフィド結合を形成することが推定された8つの保存されたシステインが、余分な119aaの尾部を有するオポッサムLSECtin1を除いて、すべてのLSECtin相同体のCRDにおいて見出された。すべてのLSECtinならびにDC−SIGNファミリーメンバーは、カルシウム−結合部位2について、5つの保存アミノ酸残基、Glu260、Asn262、Asn268、Asn280およびAsp281(pLSECtinに対応するaa位置)、ならびにマンノース−、フコース−またはガラクトース−含有オリゴ糖に結合するのに極めて重要な共通のGlu−Pro−Asn配列(EPN配列;aa260位〜262位)を所有する。しかし、カルシウム−結合部位1を形成する4つの残基(aa233位、237位、263位および269位)のうちの3つは、LSECtinファミリーメンバーにおいて独特である。すべての胎盤哺乳動物のLSECtinは、aa233においてDC−SIGNと異なる独特なAla残基を共有するが、aa237の残基は、LSECtin相同体間で可変的である。すべてのLSECtinメンバーは、aa263において保存されたAsn残基の代わりにAsp残基を共有する。C型レクチンの保存されたAsp269は、LSECtinタンパク質のほとんどにおいて同一であるが、ヒトおよびチンパンジーLSECtinならびにオポッサムLSECtin1ではAsn残基によって置換される。加えて、すべての哺乳動物LSECtinタンパク質および胎盤哺乳動物LSECtinは、それぞれ、CRDの9および29個の独特な残基を共有する。これらの独特な置換は、LSECtinファミリーメンバーが、異なる糖結合親和性を有することが予想されることを示唆する。
最近、ヒトLSECtinは、EPNモチーフを介して新規の二糖(GlcNAcβ1−2Man)および2つの付近の残基Gly259およびTrp265に結合することが示された(Powlesland et al., 2008、上掲)。GlcNAc残基とTrp265の側鎖との間の接触は、GlcNAcのN−アセチル置換基のメチル基に対するトリプトファンのインドール環のパッキングによって仲介されることが予測された(同上)。しかし、Gly259は、すべてのLSECtinタンパク質において保存されているが、チンパンジーLSECtinのみは、hLSECtinとTrp265を共有する。この位置の残基は、他のLSECtinタンパク質の間で可変である:pLSECtinにおけるLeu、ウシ、ヒツジおよびイヌLSECtinにおけるMet、および3つのウマLSECtinにおけるGln。
マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNAの3’−UTRにおける不完全に相補的な部位に結合する小さな(約22nt長)内因性非コードRNAのクラスであり、それ故、mRNA発現を抑制する(D. P. Bartel, “MicroRNAs: genomics, biogenesis, mechanism, and function,” Cell 116(2):281-97 (2004);B. R. Cullen, “Transcription and processing of human microRNA precursors,” Mol. Cell 16(6):861-5 (2004))。多細胞生物およびいくつかのウイルス由来の異なる数千のmiRNAが同定されており、そしてほとんどすべての生物学的プロセスを調節すると考えられる組織特異的および発達段階特異的発現の両方を有することが示されている。3分の1を超えるヒト遺伝子は、マイクロRNAによって制御され得ることが推定されている(同上)。MiRNAにより仲介される抑制には、しばしば、miRNAシード領域(miRNA5’−末端からnt2〜7)のmRNA標的配列の3’−UTRへの完全な塩基対形成が必要である(Bartel, 2004、上掲;Cullen, 2004、上掲)。miRNAおよびそれらの3’−UTR結合部位の両方とも、多くの場合進化保存性である。これまで、機能的C型レクチンの発現が、miRNA調節と関連付けられることはなかった。異なる哺乳動物LSECtin遺伝子由来の3’−UTR配列について利用可能な情報により、複数の哺乳動物種間で保存されているmiRNA標的配列が存在するかどうかを調べるための実験を案出した。
TargetScanプログラムを使用して、ポリアデニル化シグナル(AAUAAA)の27nt上流に局在する独特な部位を、イヌmiRNA cfa−miR−350の標的であることが推定されている推定イヌLSECtin mRNAに見出した。この部位上の7nt配列UUUGUGAは、ブタ、ウシおよびヒツジLSECtinならびに2つのウマ相同体LSECtin1および3間で完全に保存されていた。3’−UTRにおける他の保存配列は、6nt未満であることが観察され、miRNAシード領域の提示された完全な塩基対形成を満たさなかった。ブタ、ウシ、ヒツジおよびウマにおけるmiR−350相同体は、miRBaseから利用することはできないが、それらは、進化保存性により同一の配列を有するはずである。興味深いことに、hLSECtin mRNAの同じ位置の8nt配列AACUGGAAもまた、ヒトmiRNA has−miR−145の標的であった。この独特な配列は、チンパンジーLSECtinおよびウマLSECtin2にも存在するが、他の霊長類偽遺伝子には存在しない。げっ歯類および非胎盤性LSECtinメンバーでは、同じ部位を認識する特異的miRNAが認められなかったが、これはおそらく、これらの種のmiRNAについて、miRBaseから利用することができるデータが限られていたためである。家畜および霊長類由来のLSECtinメンバーの位置保存性および複数種保存性miRNA標的配列のコンピュータに基づく同定は、LSECtinの潜在的なmiRNA仲介調節の機構を理解するのに有用である。
それ故、哺乳動物種において利用可能なすべてのDC−SIGN、LSECtinおよびCD23ファミリーメンバーの全長コードタンパク質の系統解析を実施して、それらの相違レベルおよび進化関係を決定した。それらを、LSECtinファミリーが、CD23ファミリーよりDC−SIGNファミリーに緊密に関連する3つの個々のクラスターに分けた。ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマおよびイヌを含む家畜のLSECtinが、共にクラスター化されたが、これは、DC−SIGNおよびCD23タンパク質の進化の関係に類似する。
スプライシング中間産物の同定およびpLSECtinプレmRNAのイントロンの取り出しの提示された順序:ブタ肝臓由来のpLSECtin cDNAのコード領域を増幅した場合、予想された成熟mRNAに加えて、一連の高分子量フラグメントの出現によって特徴付けられたpLSECtinプレmRNAの可能なプロセシングが観察された(図13a)。これらのフラグメントのそれぞれを切り出し、そしてT−Aクローニングして、それぞれの配列を決定した。これらの転写物は、決定されたpLSECtin遺伝子(2721bp)と比較して、様々なイントロンを保持するそれぞれ1707、1491、1381および1176bpのサイズを有するpLSECtin mRNA前駆体のスプライシング中間産物であることが判明した。これらのスプライシング中間産物のイントロンの取り出しに基づいて、pLSECtinプレmRNAのスプライシング経路の時間的順序を提示した(図16)。最初に、イントロンA、E、GおよびHは、同時か、またはRT−PCR結果からは推定され得ない順序のいずれかで取り出されて、1707bpの中間産物を生じたようであり、最後の3つのエキソンによってコードされたCRDならびに最初の2つのエキソンによってコードされたCTが完全な状態でもたらされた。1707bpの中間体のさらなるプロセシングは、イントロンFのスプライシングによって1491bpのプレmRNAを生成する。その後のイントロンDの取り出しによって、1381bpであるmRNAが生じる。イントロンCは、この時点でスプライシングされて、イントロンBのみを保持する1176bpのプレmRNAを生じるようである。909bpの産物として検出される成熟pLSECtin mRNAは、イントロンBの取り出しによって生成される。ネック領域をコードするpLSECtinエキソンのプロセシングは、3’側のエキソンEから5’側のエキソンBまで、関連イントロンの1つずつのスプライシングによる厳密な時間的および位置の順序に従うようである。さらに加えて、エキソン2が、成熟mRNA産物から取り出されて、TMDを欠く807bpのアイソフォームを生じる。あるいは、エキソン2およびイントロンBは共に連結しているため、アイソフォームは、1176bpのプレmRNAからのそれらの同時スプライシングによって、作製され得る(図16)。
スプライシング経路の時間的順序は、スプライシング中間産物の量がRT−PCRによって検出され得、それ故、スプライシング中間産物がすべての中間産物の大部分を占めたことを示すレベルに到達した事実に基づいて、提示した。検出は、インビボでこれらのプレmRNAのプロセシング経路を正確に反映させるために、肝臓で行った。DC−SIGNおよびL−SIGNのような他のC型レクチンにおいてもまた、ここで観察されるTMDおよびネック領域より先にCRDおよびCTドメインをコードするエキソンのプロセシングが存在し得るかどうかについては、未だ明らかになっていない。これまでに同定された既知のDC−SIGN/L−SIGN mRNAならびにhLSECtinアイソフォームは、TMDをコードするエキソンがスキッピングされるおよび/またはネック領域をコードするエキソン上に不明なスプライシング部位が存在するため、TMDを欠くかまたは部分的タンデム−ネック反復を欠く変異体として存在する(A. Dominguez-Soto et al., “The DC-SIGN-related lectin LSECtin mediates antigen capture and pathogen binding by human myeloid cells,” Blood 109(12):5337-45 (2007);S. Mummidi et al., “Extensive repertoire of membrane-bound and soluble dendritic cell-specific ICAM-3-grabbing nonintegrin 1 (DC-SIGN1) and DC-SIGN2 isoforms. Inter-individual variation in expression of DC-SIGN transcripts,” J. Biol. Chem. 276(35):33196-212 (2001))。このことは、後のスプライシング事象中に、異なるパターンの異常なスプライシングが発生する点で、スプライシングの時間的順序に関連し得る。さらに、L−SIGNの変異体ネック領域タンデム反復は、SARS−CoV、HIV−1、HCVおよびヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のようないくつかの感染性疾患の感染性に関連している(U. S. Khoo et al., “DC-SIGN and L-SIGN: the SIGNs for infection,” J. Mol. Med. 86(8):861-74 (2008))。ドナー/アクセプター部位の「品質」、スプライスエンハンサーもしくはサプレッサー、RNA二次構造またはイントロンおよびエキソンのサイズを含む他の因子もまた、イントロンの取り出しの順序を制御するのに寄与し得る(A. L. Lear et al., “Hierarchy for 5' splice site preference determined in vivo,” J. Mol. Biol. 211(1):103-15 (1990);B. L. Robberson et al., “Exon definition may facilitate splice site selection in RNAs with multiple exons,” Mol. Cell Biol. 10(1):84-94 (1990);A. J. McCullough and S. M. Berget, “G triplets located throughout a class of small vertebrate introns enforce intron borders and regulate splice site selection,” Mol. Cell Biol. 17(8):4562-71 (1997))。pLSECtinプレmRNAの連続スプライシング中間産物のインビボでの同定は、スプライシング機構が、C型レクチンにおいてイントロンが順番に取り出されることを確実にするために、スプライス部位の正確な対を選択する仕方について、およびこれらが病原体との相互作用に関連し得るかどうかについて研究するための良好なモデルを提供し得る。
pLSECtinの組織分布:pLSECtin mRNAの発現は、RT−PCRによって、ブタの脾臓、リンパ節および肝臓において検出されたが、十二指腸、胸腺、腎臓、肺、心臓、骨髄または骨格筋では検出されなかった(図17)。リンパ節の発現レベルが最も高かった。hLSECtinは、LSECにおいてだけではなく、単球由来マクロファージおよび樹状細胞(W. Liu et al., “Characterization of a novel C-type lectin-like gene, LSECtin: demonstration of carbohydrate binding and expression in sinusoidal endothelial cells of liver and lymph node,” J. Biol. Chem. 279(18):18748-58 (2004);Dominguez-Soto et al., 2007、上掲)、リンパ節および骨髄類洞(T. Gramberg et al., “Interactions of LSECtin and DC-SIGN/DC-SIGNR with viral ligands: Differential pH dependence, internalization and virion binding,” Virology 373(1):189-201 (2008))においても発現されることが報告されている。しかし、hLSECtin発現は、末梢血リンパ球、NK細胞、CD34+由来内皮様細胞(Dominguez-Soto et al., 2007、上掲)、肝クッパー細胞、胸腺または胎盤(Gramberg et al., 2008、上掲)では認められなかった。その時点で、pLSECtin発現は、hLSECtinと類似のパターンを共有することが観察された。
上記において、限定ではなく例示の目的のために、本発明の特定の実施形態の詳細な説明を提供してきた。本開示に基づいて当業者に明らかな他のすべての変更、派生物および均等物は、本発明の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるべきである。