JP2011252532A - 車両の駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】リングギヤが例えば楕円状に変形する振動モードが発生することで生じる放射音を効果的に抑制することができる車両の駆動装置を提供する
【解決手段】リングギヤR1が楕円状に変形する振動モードが発生した際、リングギヤR1の外周歯73において、補強部122と異なる部位が剛性が弱いため、振動モードの腹が発生することとなる。また、このリングギヤR1の補強部122と異なる部位は、有底円筒状ケース44の内周歯75に形成されている欠歯部124に嵌合されているため、前記振動モードの腹が欠歯部124で発生する。したがって、リングギヤR1の振動モードの腹が、有底円筒状ケース44の欠歯部124で発生することから、その振動モードの腹が有底円筒状ケース44の内周歯75と接触しないため、その振動が有底円筒状ケース44に伝達されることが抑制される。
【選択図】図9

Description

本発明は、車両の駆動装置に係り、特に、駆動装置のケースに回転不能に嵌合されるリングギヤで発生する振動による放射音の抑制に関するものである。
ケース内部に単数また複数個の遊星歯車装置が内蔵されている車両の駆動装置がよく知られている。遊星歯車装置は、サンギヤと、サンギヤと同軸心上に配置されてピニオンギヤを介してサンギヤと噛み合うリングギヤと、ピニオンギヤを自転および公転可能に支持するキャリヤとを備えて構成されている。リングギヤは円環状に形成されており、その内周側にはピニオンギヤの外周歯と噛み合う内周歯が形成されている。また、前記リングギヤにおいて、リングギヤの外周側に外周歯が形成され、その外周歯がケースの内周側に形成されている内周歯と嵌合されることで、その回転が常時停止させられている構造を備えたものがある。
ところで、リングギヤは円環状に形成されているため、所定の共振周波数においてリングギヤが例えば楕円状に変形する振動モード(一次モードのたわみ振動)が発生する。ここで、リングギヤがケースに嵌合されている構造では、前記振動モードによる振動がケースに伝達されることによって、ケース外部に放射音(ギヤノイズ)が発生する。この振動モードで発生する放射音が音圧のピークとなり、特に、リングギヤが嵌合されるケースの剛性が低い場合、その放射音が顕著となる。これに対して、特許文献1に記載のリングギヤ3では、そのリングギヤ3の周方向に、第1肉厚部部31および第1肉厚部31よりも肉厚の大きい第2肉厚部32をそれぞれ3箇所ずつ交互に形成することで、例えば楕円状に変形する振動モードの発生を抑制させている。
特開2006−144995号公報
しかしながら、特許文献1に記載のリングギヤは、そのリングギヤの剛性によって、リングギヤが例えば楕円状に変形する振動モードの発生を抑制するものであるが、リングギヤの剛性をいくら高めても、その振動モードの発生を完全に抑制することは不可能であるため、その振動モードの発生による放射音を大幅に抑制することは困難であった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、外周部に外周歯が形成されているリングギヤと、そのリングギヤの外周歯が嵌合される内周歯が形成されているケースとを、備える車両の駆動装置において、リングギヤが例えば楕円状に変形する振動モードが発生することで生じる放射音を効果的に抑制することができる車両の駆動装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)遊星歯車装置を構成するリングギヤの外周部に形成されている外周歯が、非回転部材であるケース内に設けられた嵌合穴の内周部に形成されている内周歯と噛み合う状態で、そのリングギヤがその嵌合穴に相対回転不能に嵌め入れられている構造を有する車両の駆動装置であって、(b)前記リングギヤの前記外周歯には、そのリングギヤの剛性を局所的に増加させる補強部が形成されており、(c)前記ケースの嵌合穴には、前記内周歯の周方向の一部が欠歯されている欠歯部が形成されており、(d)前記リングギヤの外周歯に形成されている補強部が、前記嵌合穴の内周歯の欠歯されていない部位に嵌合され、(e)そのリングギヤの外周歯においてその補強部と異なる部位が、前記嵌合穴の内周歯の欠歯部に嵌合されることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両の駆動装置において、前記補強部は、周方向に隣り合う前記リングギヤの外周歯間を連結する板状のリブであり、且つ、そのリブはそのリングギヤの軸心方向において一方の端部に設けられていることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両の駆動装置において、前記駆動装置は、電動機を駆動源とする電気自動車に搭載されていることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両の駆動装置において、前記駆動装置は、前記電動機と、その電動機の回転を減速して出力する前記遊星歯車装置と、その遊星歯車装置の出力を左右の駆動輪へ伝達する差動歯車装置とを、同軸心上に備える一軸式構造であることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至4のいずれか1の車両の駆動装置において、前記リングギヤの内周歯は、ステップドピニオンの外周歯と噛み合うことを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両の駆動装置によれば、前記リングギヤの外周歯に形成されている補強部が、前記嵌合穴の内周歯の欠歯されていない部位に嵌合され、リングギヤの外周歯において補強部と異なる部位が、前記嵌合穴の内周歯の欠歯部に嵌合される。このようにリングギヤおよびケースが構成されると、例えばリングギヤが楕円状に変形する振動モードが発生した際、リングギヤの外周歯において、補強部と異なる部位の剛性が補強部よりも弱いため、振動モードの腹が補強部と異なる部位で発生することとなる。これに対して、リングギヤの前記補強部と異なる部位は、嵌合穴の内周歯に形成されている欠歯部に嵌合されているため、前記振動モードの腹が前記欠歯部で発生する。したがって、リングギヤの振動モードの腹が、嵌合穴の欠歯部で発生することから、その振動モードの腹がケースと接触しないため、その振動がケースに伝達されることが抑制されるに従い、ケース外部で発生する放射音が大幅に抑制される。
また、請求項2にかかる発明の車両の駆動装置によれば、前記補強部は、周方向に隣り合う前記リングギヤの外周歯間を連結する板状のリブであり、且つ、そのリブはそのリングギヤの軸心方向において一方の端部に設けられている。このようにすれば、外周歯の軸心方向の一方の端部にリブが設けられても、外周歯の軸心方向の他方側には、リブが設けられていないため、外周歯の軸心方向の他方側を、嵌合穴に形成されている内周歯と嵌合させることができる。
また、請求項3にかかる発明の車両の駆動装置によれば、前記駆動装置は、電動機を駆動源とする電気自動車に搭載されるため、電気自動車において、ケースに嵌合されるリングギヤにおいて例えば楕円状に変形する振動モードが発生しても、その振動がケースに伝達されることが抑制されるに従い、ケース外部で発生する放射音が大幅に抑制される。
また、請求項4にかかる発明の車両の駆動装置によれば、前記駆動装置は、前記駆動装置は、前記電動機と、その電動機の回転を減速して出力する前記遊星歯車装置と、その遊星歯車装置の出力を左右の駆動輪へ伝達する差動歯車装置とを、同軸心上に備える一軸式構造であるため、駆動装置が軸方向に長くなり、例えばケースにリングギヤが嵌合される位置が、剛性の比較的高いケースのフランジから離れた位置とされるなど、構造上、ケースの剛性が低い部位にリングギヤが嵌合されることがある。すなわち、ケースの振動が伝達されやすい部位にリングギヤが嵌合されることがある。これに対して、振動モードの腹が欠歯部で発生するように構成されるため、その振動のケースへの伝達が抑制されるに従い、放射音が大幅に抑制される。
また、請求項5にかかる発明の車両の駆動装置によれば、前記リングギヤの内周歯は、ステップドピニオンの外周歯と噛み合うため、ステップドピニオンが所定の回転速度で回転すると、リングギヤが例えば楕円状に変形する振動モードが発生するが、その振動がケースに伝達されることが抑制されるに従い、ケース外部で発生する放射音が大幅に抑制される。
本発明の一実施例の車両の駆動装置を備える車両の駆動系の構成を概念的に示す図である。 図1に示す車両の後方から見た駆動系の構成を概念的に示す図である。 図1の車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。 図3の車両の駆動装置の一部を拡大して示す断面図である。 図4のリングギヤの構造を簡略的に示す図である。 図5に示すリングギヤの一部であって、補強リブが形成されている状態を示す部分拡大図である。 周方向に補強リブが形成された状態のリングギヤを図6の矢印A方向からみた矢視図である。 図4の有底円筒状ケースを開口側から見た図である。 図7のリングギヤが図8の有底円筒状ケースに嵌合された状態を示す図である。 図7のリングギヤが楕円状に変形する振動モードによって変形される状態を示す図である。 周波数に対するケース外部で発生する放射音(音圧レベル)を検出した実験結果である。 比較対象となる欠歯部が形成されない有底円筒状ケースの構造を示す図であり、図8に対応するものである。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の車両の駆動装置10を備える車両12の駆動系の構成を概念的に示す図である。また、図2は、車両12の後方から見た駆動系の構成を概念的に示す図である。図1および図2において、車両12は、その前側および後側にそれぞれ設けられた左右一対の前輪14および後輪16と、車両12の前側において図2に示すように車体18にマウント部材20を介して固定され、左右一対のドライブシャフト(車軸)22を介して一対の前輪14を回転駆動する車両用駆動装置10とを備えている。
上記車両用駆動装置10は、車両12の駆動源として機能して車両12に横置きされる電動機24を含む駆動部26と、その駆動部26の出力回転を減速しつつ左右一対のドライブシャフト22へ分配する動力伝達装置として機能するトランスアクスル部28とを備えている。上記電動機24は、例えば、車体18の上に配設されるインバータ30から供給される駆動電流によって作動させられる。車両12は、その前側に配設された電動機24によって駆動輪としての前輪14が回転駆動されるFF(フロントモーター・フロントドライブ)式の電気自動車である。
図3は、図1の車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図3において、車両用駆動装置10は、3分割式のトランスアクスルケース32内に収容され、且つ、共通の軸心C1上に配設された電動機24、その電動機24の回転を減速して出力する減速機34、および減速機34の出力を左右の前輪14(駆動輪)へ伝達する差動歯車装置36を備える一軸式構造を有している。前記駆動部26は主に電動機24を備えて構成され、前記トランスアクスル部28は主に減速機34および差動歯車装置36を備えて構成される。
上記トランスアクスルケース32は、主として電動機24を収容する円筒状ケース38と、主として減速機34および差動歯車装置36を収容し、開口面40(図4参照)が円筒状ケース38の一方の開口面42(図4参照)と組み合わされて例えば図示しないボルトにより相互に締着された有底円筒状ケース44と、円筒状ケース38の他方の開口面と組み合わされて例えば図示しないボルトにより相互に締着された円板状のケースカバー48とから成る。前記円筒状ケース38の有底円筒状ケース44の開口側と電動機24との間には、その内周面から内周側に向けて一体に突設された円環板状の隔壁50が形成されている。また、有底円筒状ケース44の鉛直下部には、オイルパン52が固定されている。このオイルパン52は、トランスアクスルケース32内を循環する潤滑油が有底円筒状ケース44の下部に環流する際にその潤滑油を受けるための油受けとして機能する。また、有底円筒状ケース44の開口面40には、円環板状の支持壁54が例えばボルト等により固定されている。上記円筒状ケース38、有底円筒状ケース44、ケースカバー48、および支持壁54は、例えば、アルミニウム合金のダイカスト製である。
電動機24は、円筒状ケース38に例えば図示しないボルトなどにより一体に固定されたステータ58と、そのステータ58の内周側に配設されたロータ60と、図1に示される前記車両12の右側に配設された一方のドライブシャフト22の外周側に設けられてロータ60が固定され、両端部が円筒状ケース38の隔壁50に嵌め着けられたモーターサイドベアリング62および例えばケースカバー48に設けられたベアリング63によってそれぞれ回転可能に支持された円筒状の出力軸64とを備えている。出力軸64は、前記インバータ30からステータ58に供給される駆動電流に応じて回転駆動される。このように構成される電動機24は、その後段に連結される減速機34の入力軸66に連結されてそれを回転駆動する。
図4は、図3の車両の駆動装置10の一部を拡大して示す断面図である。図3および図4に示すように、減速機34は、前記一方のドライブシャフト22の外周側に設けられて電動機24の出力軸64に例えばスプライン嵌合により相対回転不能に連結された円筒状の入力軸66と、その入力軸66の電動機24とは反対側すなわち差動歯車装置36側の軸端部68に例えばスプライン嵌合により相対回転不能に嵌合されたサンギヤS1と、小径部70および大径部72を有してその大径部72がサンギヤS1に噛み合わされたステップドピニオンP1と、そのステップドピニオンP1をピニオンシャフト74を介して自転可能に且つサンギヤS1まわりに公転可能に支持するキャリヤCA1と、サンギヤS1と同心且つ有底円筒状ケース44の嵌合穴79に相対回転不能に嵌め入れられて内周歯71がステップドピニオンP1の小径部70の外周歯77に噛み合わされたリングギヤR1とを備える遊星歯車式の減速機である。なお、減速機34が本発明の遊星歯車装置に対応する。
図5は前記リングギヤR1の構造を簡略的に示している。なお、図5のリングギヤR1においては、ステップドピニオンP1の小径部70の外周歯77と噛み合う内周歯71が省略されている。図5に示すように、円環状に形成されているリングギヤの外周部には、周方向に沿って外周歯73が形成されている。このリングギヤR1の外周歯73が、図4に示す有底円筒状ケース44の嵌合穴79の内周部に形成されている内周歯75に嵌め入れられることによって、リングギヤR1の回転が阻止される。
図4に戻り、上記キャリヤCA1は、非回転の支持壁54の内周側に第1ベアリング76を介して軸心C1まわりに回転可能に支持された円筒状の軸端部78を有している。また、キャリヤCA1は、減速機34の後段に配設される差動歯車装置36のデフケース80に連結されており、減速機34の出力部材として機能する。このように構成される減速機34は、電動機24から入力軸66に入力された回転を減速して差動歯車装置36に出力する。
上記入力軸66は、軸端部78により第1ベアリング76と径方向において重なる第2ベアリング82を介して内側に支持されてキャリヤCA1に対して同心且つ相対回転可能に設けられている。また、入力軸66は、軸心方向において第2ベアリング82に所定間隔を隔てて外周側に突設された円板状のパーキングロックギヤ(ギヤ部)84を備えている。また、入力軸66は、パーキングロックギヤ84の電動機24側が隔壁50に第3ベアリング86を介して回転可能に支持されており、軸心方向においてパーキングロックギヤ84の両側で第2ベアリング82と第3ベアリング86とを介して回転可能に支持されている。
図4に示すように、差動歯車装置36は、2分割式のデフケース80と、そのデフケース80内の軸心C1上において相対向する一対のサイドギヤ92と、それらサイドギヤ92間において周方向の等間隔に配設されて一対のサイドギヤ92にそれぞれ噛み合う3つのピニオン94とを備えて構成され、軸心C1方向において入力軸66の電動機24とは反対側に隣接して設けられている。
上記デフケース80は、軸心C1方向の電動機24側に配設された円筒状の第1デフケース96と、その第1デフケース96の電動機24とは反対側に配設され、第1デフケース96と組み合わされて例えば図示しないボルトにより相互に締着された円筒状の第2デフケース98から成り、軸心C1まわりに回転可能に設けられている。
第1デフケース96は、前記キャリヤCA1と一体に設けられており、このキャリヤCA1および第1ベアリング76を介して軸心C1まわりに回転可能に支持されている。第1デフケース96には、キャリヤCA1を通じて減速機34の出力回転が入力される。すなわち、第1デフケース96は、差動歯車装置36の入力部材でもある。また、第1デフケース96には、オイルポンプ100のピニオン102を回転駆動するための外周歯110が円周方向に連続的に形成されている。
第2デフケース98は、有底円筒状ケース44の円環板状の底壁112の内周側にデフサイドベアリング114を介して軸心C1まわりに回転可能に支持されている。
前記一対のサイドギヤ92のうち電動機24側のサイドギヤ92には、その内周側に前記一方のドライブシャフト22の軸端部が例えばスプライン嵌合により相対回転不能に連結されている。また、前記一対のサイドギヤ92のうち電動機24とは反対側のサイドギヤ92には、その内周側に他方のドライブシャフト22の軸端部が例えばスプライン嵌合により相対回転不能に連結されている。上記一方のドライブシャフト22は、例えば入力軸66の内周面により軸心C1まわりの回転可能に支持されており、また、上記他方のドライブシャフト22は、第2デフケース98の内周面により軸心C1まわりの回転可能に支持されている。
このように構成される差動歯車装置36は、減速機34により回転駆動されることで軸心C1上に配設された一対のドライブシャフト22にそれらの回転差を許容しつつ駆動力を伝達する。
上記のように構成される車両の駆動装置10において、リングギヤR1は円環状に形成されているため、所定の周波数においてリングギヤR1が楕円状に変形する振動モード(一次のたわみ振動モード、円環潰れ共振)が発生する。ここで、リングギヤR1は、有底円筒状ケース44の嵌合穴79に嵌合されているため、リングギヤR1で発生する振動モードが有底円筒状ケース44に伝達される結果、有底円筒状ケース44の外部において放射音が発生する。この上記リングギヤR1が楕円状に変形する振動モードが発生した際には、その放射音が最も大きくなる。
この放射音に対して、例えば有底円筒状ケース44の剛性を増加させると、有底円筒状ケース44外部への振動伝達がある程度抑制される。しかしながら、本実施例の車両の駆動装置10では、搭載上の制限等により、図4に示すように、有底円筒状ケース44の厚み(肉厚)は、比較的薄く、また、駆動装置10は一軸式構造であることなどから軸心方向の長さが長くなり、比較的剛性の高いフランジ104から離れた剛性の低い部位にリングギヤR1が嵌合されているため、リングギヤR1からの振動が伝達されやすい構造となっている。具体的には、リングギヤR1の内周歯71がステップドピニオンP1の小径部70に形成されている外周歯77と噛み合うが、この小径部70が有底円筒状ケース44の開口側から比較的離れた位置に配置されているため、それに応じてリングギヤR1が有底円筒状ケース44のフランジ104から離れた位置に嵌合される。
これに対して、本実施例のリングギヤR1には、周方向に隣り合う外周歯73間を相互に連結する板状の補強リブ120(本発明のリブに対応する)が設けられている。図6は、図5に示すリングギヤR1の一部であって、前記補強リブ120が設けられている状態を示す部分拡大図であり、図7は、補強リブ120が設けられた状態のリングギヤR1を図6の矢印A方向からみた矢視図である。なお、図6においても、リングギヤR1の内周歯71が省略されている。図6に示すように、周方向に隣り合うように形成されている外周歯73間を連結するように、板状の補強リブ120が嵌め着けられている。
また、図6に示すように、補強リブ120は、リングギヤR1の軸心方向において一方側の端部にのみ設けられることで、有底円筒状ケース44の内周歯75への嵌合が可能となる。具体的には、リングギヤR1を有底円筒状ケース44の内周歯75に嵌合する際には、有底円筒状ケース44の開口側からリングギヤR1が嵌め付けられるが、補強リブ120が形成されない他方側が嵌め付けられる。すなわち、補強リブ120が設けられる側が、軸心C1方向において有底円筒状ケース44の開口側に位置されるように嵌め入れられることによって、補強リブ120が設けられてもリングギヤR1の嵌合が可能となる。
また、補強リブ120は、図7に示すように、リングギヤR1の周方向において複数枚(図7においては4枚)隣り合うように設けられており、この補強リブ120が設けられることで、外周歯73の剛性が局所的に増加した補強部122が形成される。この補強部122は、図7に示すように、周方向に等角度間隔で4箇所設けられている。したがって、リングギヤR1では、剛性の高い部位(補強部122)と通常の剛性を有する部位(補強リブ120が形成されない部位、補強部122と異なる部位)とが交互に4箇所ずつ形成される。
図8は、有底円筒状ケース44(本発明のケースに対応する)を開口側から見た図であり、特に、リングギヤR1が嵌め入れられる嵌合穴79の内周部に形成されている内周歯75の形状を説明するためのものである。図8に示すように、有底円筒状ケース44の嵌合穴79の内周部には、内周歯75が周方向に形成されている。ここで、嵌合穴79内には、内周歯75の周方向の一部が欠歯されている欠歯部124が周方向に等角度間隔に4箇所形成されている。この欠歯部124は、内周歯75が欠歯されることで周方向に形成される隙間であり、欠歯部124に嵌合されるリングギヤR1の外周歯73との間に所定の隙間が形成される。なお、欠歯部124の軸心方向の長さは、リングギヤR1の外周歯73の軸心方向の長さと同じかそれよりも僅かに長い寸法に形成されている。
図9に、有底円筒状ケース44にリングギヤR1が嵌合された状態を示す。図9に示すように、リングギヤR1の外周歯73が、有底円筒状ケース44の内周歯75と嵌合される際には、リングギヤR1の補強部122が、有底円筒状ケース44の嵌合穴79の内周歯75において、欠歯されていない部位と嵌合され、且つ、リングギヤR1の外周歯73において補強部122と異なる部位(通常の剛性を有する部位)が、嵌合穴79の内周歯75の欠歯部124と嵌合される。なお、補強部122は、前述したように、補強リブ120がリングギヤR1の軸心方向において一方側の端部にのみ設けられることで構成されるため、有底円筒状ケース44の内周歯75との嵌合が可能となる。
図9に示すように、リングギヤR1が有底円筒状ケース44の嵌合穴79に嵌め入れられることで、有底円筒状ケース44の外部に伝達される放射音が大幅に抑制される。以下、上記構成によって放射音が抑制される理由について説明する。車両の駆動装置10において、電動機24が所定の回転速度で回転すると、上述したリングギヤR1が楕円状に変形する振動モード(一次の振動モード)が発生する。このとき、その振動モードは、図10の破線または一点鎖線に示すように、外周歯73の補強リブ120が形成されていない部位において振動モードの腹が発生する。なお、破線および一点鎖線で示す振動モードの形は、その振動モードをわかりやすく示したものであって、実際には、マイクロ単位の大きさで変形するものである。
上記は、リングギヤR1では、補強部122が設けられていることで、周方向に剛性差が与えられおり、剛性が相対的に低い補強リブ120が形成されない部位で変形しやすく構成されているためである。すなわち、リングギヤR1において補強部122では、剛性が高いために変形しにくくなっている。一方、補強リブ120が形成されない部位は、補強部122に比べて剛性が相対的に低いため、補強部122に比べて相対的に変形しやすくなっている。したがって、剛性が相対的に高い補強部122において振動モードの節が発生し、リングギヤR1において、楕円状に変形する振動が発生すると、剛性が補強部122よりも相対的に低い補強リブ120が形成されていない部位で振動モードの腹が発生する。
また、図10に示すように、リングギヤR1において、補強部122および補強リブ120が形成されない部位が、等角度間隔でそれぞれ交互に4箇所ずつ形成されるため、例えば補強部122と周方向において対向する位置(対角の位置)には、同じ補強部122が形成されると共に、補強リブ120が形成されない部位と周方向において対向する位置には、同じ補強リブ120が形成されない部位が形成される。すなわち、リングギヤR1の剛性が増加された部位(補強部122)が90度間隔で4箇所形成されると共に、その間に剛性が相対的に低い部位が90度間隔で4箇所形成されている。これより、特にリングギヤR1が楕円状に変形する振動モードが発生した場合には、周方向に対向する剛性が相対的に低い部位にそれぞれ振動モードの腹が発生しやすくなる。したがって、リングギヤR1において楕円状に変形する振動モードの腹が、剛性の低い部位(補強リブ120が形成されない部位)で安定的に発生する。
上記より、楕円状に変形する振動モードが発生すると、リングギヤR1の補強リブ120が形成されない部位に振動モードの腹が発生するが、リングギヤR1の補強リブ120が形成されない部位は、有底円筒状ケース44の嵌合穴79に形成されている欠歯部124に嵌合されているため、この振動モードの腹は、図9に示すように有底円筒状ケース44の内周歯75において欠歯部124の位置で発生することとなる。したがって、振動モードの腹が発生しても欠歯部124が形成されているため、その振動モードの腹が有底円筒状ケース44と接触しない。これより、その振動が有底円筒状ケース44に殆ど伝達されないため、有底円筒状ケース44外部で発生する放射音が抑制される。すなわち、リングギヤR1の振動モードの腹を、内周歯75の欠歯部124で安定的に発生させることで、振動モードが発生した際の有底円筒状ケース44への伝達が抑制される。
図11は、周波数に対するトランスアクスルケース32外部で発生する放射音(音圧レベル)を検出した実験結果である。ここで、実線は、本発明に対応する上述した補強部122および欠歯部124が設けられる場合の実験結果を示しており、一点鎖線は、図12に示すように、有底円筒状ケース44の内周歯に欠歯部124が形成されない有底円筒状ケース44aに、補強リブ120が設けられていないリングギヤR1が嵌合された従来構造の実験結果を示している。なお、実験では、車両の駆動装置10において走行領域に対応する周波数範囲でリングギヤR1を加振させ、その際の音圧レベル(dB)をトランスアクスルケース32外部の所定の位置に配設された図示しないマイクロフォンによって検出した。
図11に示すように、一点鎖線で示す従来の場合では、周波数が2600Hzあたりで音圧レベルが最大(ピーク)となっている。この周波数が、リングギヤR1が楕円状に変形する振動モードの共振周波数と対応している。これに対して、本発明が適用されると、実線に示すように、2600Hzで発生した音圧レベルのピークが低減される。上記は、リングギヤR1が楕円状に変形する振動モードが発生しても、その振動モードの腹が有底円筒状ケース44の欠歯部124で発生するため、その振動が有底円筒状ケース44に伝達されるのが抑制されるためである。すなわち、有底円筒状ケース44の欠歯部124の位置で、リングギヤR1の振動モードの腹が発生するように、リングギヤR1の欠歯部124と嵌合される部位の剛性を相対的に低くする(すなわち、リングギヤR1の欠歯部124と嵌合されない部位に補強部122を設ける)ことで、振動モードの腹が欠歯部124の位置で安定的に生じ、有底円筒状ケース44に伝達される振動が抑制される。
なお、本実施例のリングギヤR1においては、外周歯73間を連結するように補強リブ120を設けることによって補強部122が形成されているが、外周歯73の剛性を局所的に高める構成であれば、補強リブ120に限定されない。例えば、外周歯の剛性を高くしたい部位のみ、径方向或いは軸心方向の肉厚を増加することで、補強部122を構成しても構わない。
上述のように、本実施例によれば、リングギヤR1の外周歯73に形成されている補強部122が、嵌合穴79の内周部に形成されている内周歯75の欠歯されていない部位に嵌合され、リングギヤR1の外周歯73において補強部122と異なる部位が、嵌合穴79の内周歯75の欠歯部124に嵌合される。このようにリングギヤR1および有底円筒状ケース44が構成されると、例えばリングギヤR1が楕円状に変形する振動モードが発生した際、リングギヤR1の外周歯73において、補強部122と異なる部位が補強部122よりも剛性が弱いため、振動モードの腹が補強部122と異なる部位で発生することとなる。これに対して、このリングギヤR1の補強部122と異なる部位は、嵌合穴79の内周歯75に形成されている欠歯部124に嵌合されているため、前記振動モードの腹が欠歯部124で発生する。したがって、リングギヤR1の振動モードの腹が、有底円筒状ケース44の欠歯部124で発生することから、その振動モードの腹が有底円筒状ケース44と接触しないため、その振動が有底円筒状ケース44に伝達されることが抑制されるに従い、有底円筒状ケース44外部で発生する放射音が大幅に抑制される。
また、本実施例によれば、補強部122は、周方向に隣り合うリングギヤR1の外周歯73間を連結する板状の補強リブ120であり、且つ、その補強リブ120は、そのリングギヤR1の軸心方向において一方の端部に設けられる。これより、外周歯73の軸心方向の一方の端部に補強リブ120が形成されていても、外周歯73の軸心方向の他方側には、補強リブ120が設けられていないため、外周歯73の軸心方向の他方側を、嵌合穴79に形成されている内周歯75と嵌合させることができる。
また、本実施例によれば、車両の駆動装置10は、電動機24を駆動源とする電気自動車に搭載されるため、電気自動車において、有底円筒状ケース44に嵌合されるリングギヤR1において例えば楕円状に変形する振動モードが発生しても、その振動が有底円筒状ケース44に伝達されることが抑制されるに従い、有底円筒状ケース44外部で発生する放射音が大幅に抑制される。
また、本実施例によれば、車両の駆動装置10は、電動機24と、その電動機24の回転を減速して出力する減速装置34と、その減速装置34の出力を左右の前輪14へ伝達する差動歯車装置36とを、同軸心上に備える一軸式構造であるため、駆動装置10が軸方向に長くなり、例えば有底円筒状ケース44にリングギヤR1が嵌合される位置が、剛性の比較的高い有底円筒状ケース44のフランジ104から離れた位置とされるなど、構造上、有底円筒状ケース44の剛性が低い部位にリングギヤR1が嵌合されることがある。すなわち、有底円筒状ケース44の振動が伝達されやすい部位にリングギヤR1が嵌合されることがある。これに対して、振動モードの腹が欠歯部124で発生するように構成されるため、その振動の有底円筒状ケース44への伝達が抑制されるに従い、放射音が大幅に抑制される。
また、本実施例によれば、リングギヤR1の内周歯71は、ステップドピニオンP1の外周歯77と噛み合うため、ステップドピニオンP1が所定の回転速度で回転すると、リングギヤR1が例えば楕円状に変形する振動モードが発生するが、その振動が有底円筒状ケース44に伝達されることが抑制されるに従い、有底円筒状ケース44外部で発生する放射音が大幅に抑制される。
また、本実施例によれば、有底円筒状ケース44の剛性が比較的低い部位にリングギヤR1が嵌合されても、上記構成より有底円筒状ケース44に伝達される振動が大幅に抑制されて、放射音が抑制される。
また、本実施例によれば、リングギヤR1の補強部122は、周方向に等角度間隔で4箇所形成されているため、リングギヤR1が楕円状に変形する振動モードが発生した場合において、リングギヤR1の補強部122と異なる部位において、安定的に振動モードの腹を発生させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、車両の駆動装置10として、電動機24によって駆動される電気自動車を一例に説明が為されているが、本発明は、電気自動車に限定されず、ハイブリッド車両や従来の自動変速機を備えた車両等においても適用することができる。すなわち、ケースにリングギヤが嵌合されるものであれば、車両の形式は特に限定されない。
また、前述の実施例では、電気自動車であって、特に一軸式構造の車両の駆動装置10に本発明が適用されているが、本発明は必ずしも一軸式構造に限定されない。
また、前述の実施例では、リングギヤR1において、周方向に等角度間隔に4箇所の補強部122が設けられているが、必ずしも4箇所に限定されず、少なくとも一箇所形成されるものであっても構わない。例えば、車両が駆動される周波数範囲において、リングギヤR1が三角形状に変形される振動モードが存在し、且つ、その振動モードで発生する放射音が問題になる場合には、補強部122を周方向に等角度間隔に3箇所設けることで、三角形状に変形するリングギヤR1の振動モードの腹を、有底円筒状ケース44の欠歯部の位置に安定的に発生させることができる。すなわち、リングギヤR1の発生する振動モードに応じて、振動モードの腹が安定的に欠歯部124で発生するように、リングギヤR1の補強部122および欠歯部124を設けることで、振動の有底円筒状ケース44への伝達が抑制される。
また、前述の実施例では、リングギヤR1の補強部122として、隣り合う外周歯73の隙間に板状の補強リブ120が形成されているが、補強部122は、必ずしも補強リブ120に限定されない。例えば、補強部122のみ径方向或いは軸心方向の厚みを増加させるなどして、外周歯73の剛性を増加させても構わない。
また、前述の実施例では、リングギヤR1の内周歯71にステップドピニオンP1の外周歯77が噛み合わされているが、必ずしもステップドピニオンP1に限定されず、従来のピニオンギヤの外周歯が噛み合わされている構造であっても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両の駆動装置
14:前輪(左右の駆動輪)
24:電動機
34:減速機(遊星歯車装置)
36:差動歯車装置
44:有底円筒状ケース(ケース)
71:リングギヤの内周歯
73:外周歯
75:内周歯
77:ステップドピニオンの外周歯
79:嵌合穴
120:補強リブ(リブ)
122:補強部
124:欠歯部
P1:ステップドピニオン
R1:リングギヤ

Claims (5)

  1. 遊星歯車装置を構成するリングギヤの外周部に形成されている外周歯が、非回転部材であるケース内に設けられた嵌合穴の内周部に形成されている内周歯と噛み合う状態で、該リングギヤが該嵌合穴に相対回転不能に嵌め入れられている構造を有する車両の駆動装置であって、
    前記リングギヤの前記外周歯には、該リングギヤの剛性を局所的に増加させる補強部が形成されており、
    前記ケースの嵌合穴には、前記内周歯の周方向の一部が欠歯されている欠歯部が形成されており、
    前記リングギヤの外周歯に形成されている補強部が、前記嵌合穴の内周歯の欠歯されていない部位に嵌合され、
    該リングギヤの外周歯において該補強部と異なる部位が、前記嵌合穴の内周歯の欠歯部に嵌合されることを特徴とする車両の駆動装置。
  2. 前記補強部は、周方向に隣り合う前記リングギヤの外周歯間を連結する板状のリブであり、且つ、該リブは該リングギヤの軸心方向において一方の端部に設けられていることを特徴とする請求項1の車両の駆動装置。
  3. 前記駆動装置は、電動機を駆動源とする電気自動車に搭載されていることを特徴とする請求項1または2の車両の駆動装置。
  4. 前記駆動装置は、前記電動機と、該電動機の回転を減速して出力する前記遊星歯車装置と、該遊星歯車装置の出力を左右の駆動輪へ伝達する差動歯車装置とを、同軸心上に備える一軸式構造であることを特徴とする請求項3の車両の駆動装置。
  5. 前記リングギヤの内周歯は、ステップドピニオンの外周歯と噛み合うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1の車両の駆動装置。
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