JP2011249427A - リアクトルの固定構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リアクトル10の固定構造は、2つのコイル21,21に対し、各コイル21,21の径外側を樹脂でモールドして一体化したモールドコイル20が、六面形状に形成され、モールドコイル20には、コイル21の軸心方向Yに沿う当該モールドコイル20の厚み方向Y中央に、ボルト50,50を貫通孔25H,25Hに挿通して保持する締結部材保持部25,25が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
リアクトルは、電気的に直列に接続した2つのコイルを並列に配置し、2つのU字形状のコアを、各コイル内にコイル両端からコイル軸心方向にそれぞれ挿通して対向させ、ギャップ体を挟んでトラック形状に繋ぎ合わせたものである。
リアクトルには、直流重畳特性があり、ギャップ体を設けていないと、コイルに流れる直流電流の電流値が低いときに、インダクタンスが大きく得られるが、電流値が大きくなると、インダクタンスは急激に低下してしまう。その結果、低い電流値で磁気飽和が起きてしまい、所望の電圧値にまで昇圧することができない。
この現象を避けるため、透磁率がコアよりも小さいギャップ体が、コア同士の間に挟まれている。ギャップ体があると、電流値が低いときには、インダクタンスは、ギャップ体がない場合に比べて小さくなるが、インダクタンスが低下し始める直流バイアス電流値が、ギャップ体がない場合に比べて大きくなる傾向にある。すなわち、インダクタンスは、ギャップ体がない場合と異なり、コイルに流れる電流の電流値が低いときから高くなるまで、ほぼ横ばいに推移した後、徐々に減少する。そのため、磁気飽和が起きる電流値も高く、所望の電圧値まで昇圧に必要な電流値に対しても、磁気飽和は起きない。
このようなリアクトルは、アルミニウム等の金属製の筐体に支持させボルト締めで固定されている。
図13に示すように、リアクトル210では、2つのU字形状のコア230,230がコイル220,220の径内で、ギャップ体235を介在させて繋ぎ合わさっており、このコア230,230と一体成形された薄板状のステイ225が、各コイル220のコイルエンド両端付近に4箇所設けられている。リアクトル210は、ステイ225の挿通孔225Hにボルトを挿通し、図示しない筐体に載置しボルト締めで筐体に固定される。
しかしながら、図13に示すようなリアクトルでは、コイルに流れる電流の状態が変化すると、磁束密度の変化によりコア間で作用する電磁吸引力と、各コアで生じる磁歪とが生じて、双方のコアが伸縮変位し振動する。その結果、この振動が筐体へと伝播して、騒音が発生する。
特に、図13に例示したリアクトル210では、ステイ225は、薄板を折り曲げて形成されているため、剛性が低く、コア230の振動によりステイ225そのものも低周波数で共振し易いため、騒音が発生し易い状態になっていた。
特許文献1のリアクトル310は、コア330を圧粉鉄芯で形成している。特許文献1のリアクトルの固定構造では、図14に示すように、コイル320及びコア330とPCUケース360との間に樹脂部341を介在させることにより、リアクトル310とPCUケース360とを離間させ、板バネ340で、リアクトル310周囲を覆った樹脂部341をPCUケース360に押圧して、リアクトル310がPCUケース360に固定されている。
この問題は、次の理由によって生じる。
その一方で、積層鋼板型鉄芯と圧粉鉄芯との機械的性質を比較してみると、圧粉鉄芯のヤング率は積層鋼板型鉄芯よりも小さく、圧粉鉄芯の共振周波数は、積層鋼板型鉄芯の共振周波数よりも低くなる。
コアが積層鋼板型鉄芯で形成されている場合には、積層鋼板型鉄芯の共振周波数が、リアクトルの作動時にコアが振動する駆動周波数(約10KHz)と、数KHz以上も離れているため、共振周波数の悪影響を受けてコアが、大きく振動してしまうことはない。
ところが、コアが圧粉鉄芯で形成されていると、コアの駆動周波数が、圧粉鉄芯の共振周波数に近づいてしまい、リアクトルの作動時にコアが大きく振動する状態となっていた。
特許文献1では、コア330が圧粉鉄芯で形成されている上、参照する図14に示すように、板バネ340が、コア330の縦振動方向(図14中、左右方向)にリアクトル310を跨いでPCUケース360に固定されている。
そのため、樹脂部341を介在させ、リアクトル310とPCUケース360とを離間させても、振幅が最も大きい「腹」を含む大きな振動が、コア330の共振周波数に近い周波数で、樹脂部341を介して板バネ340、PCUケース360にまで伝播してしまう。特に、静粛性に優れたハイブリッド自動車では、駆動周波数10KHz近傍のコアの振動がPCUケース360等に伝播して生じた騒音は、乗車人にとって不快な音であり、コアの振動に起因した騒音が十分に抑制できていなかった。
(1)電気的に直列に接続した2つのコイルを並列に配置し、圧粉鉄芯で形成された2つのU字型形状のコアを、各コイル内にコイル両端からコイル軸心方向にそれぞれ挿通して対向させ、コア間にギャップ体を挟んでトラック形状に繋ぎ合わせたリアクトルを、該リアクトルを支持する筐体に、締結部材で固定させるリアクトルの固定構造において、2つのコイルに対し、各コイルの径外側を樹脂でモールドして一体化したモールドコイルが、六面形状に形成され、モールドコイルには、コイル軸心方向に沿う当該モールドコイルの厚み方向中央に、締結部材を貫通孔に挿通して保持する締結部材保持部が形成されていることを特徴とする。
(2)(1)に記載するリアクトルの固定構造において、締結部材保持部は、各コイルの径方向に沿うモールドコイルの幅方向に突出すると共に、モールドコイルと一体で成形されていることを特徴とする。
(3)(2)に記載するリアクトルの固定構造において、締結部材保持部の貫通孔と締結部材との間には、金属製のカラーが介在し、カラーは、インサート成形によりモールドコイルと一体となっていることを特徴とする。
(4)(1)に記載するリアクトルの固定構造において、締結部材保持部は、モールドコイルの厚み方向中央で、コイルの径方向にモールドコイルを跨いで延び、覆い包み込んだモールドコイルの外側となる位置に、貫通孔を有するリアクトル保持部材であり、締結部材が、リアクトル保持部材の貫通孔を挿通して筐体と締結していることを特徴とする。
(5)(4)に記載するリアクトルの固定構造において、リアクトル保持部材は、金属製であり、インサート成形によりモールドコイルと一体となっていることを特徴とする。
本発明のリアクトルの固定構造では、電気的に直列に接続した2つのコイルを並列に配置し、圧粉鉄芯で形成された2つのU字型形状のコアを、各コイル内にコイル両端からコイル軸心方向にそれぞれ挿通して対向させ、コア間にギャップ体を挟んでトラック形状に繋ぎ合わせたリアクトルを、該リアクトルを支持する筐体に、締結部材で固定させるリアクトルの固定構造において、2つのコイルに対し、各コイルの径外側を樹脂でモールドして一体化したモールドコイルが、六面形状に形成され、モールドコイルには、コイル軸心方向に沿う当該モールドコイルの厚み方向中央に、締結部材を貫通孔に挿通して保持する締結部材保持部が形成されているので、モールドコイルの厚み方向中央は、2つのコアが互いに向き合う方向に伸縮を繰り返す振動に対し、この振動の節に相当する位置となり、2つのコアにおける磁歪及び電磁吸引力による振動の振幅が、最も小さくなる部位となる。
また、コアが低コストの圧粉鉄芯で構成され、コアの駆動周波数がたとえコアの共振周波数の近くにあっても、モールドコイルの厚み方向中央では、コアの振動はその振幅が最も小さくなっている。そのため、このモールドコイルの厚み方向中央に設けた結部材保持部の貫通孔に、締結部材を挿通して筐体と締結することで、コアの振動が、モールドコイル、締結部材を介して筐体に伝播したとしても、筐体への振動伝播はより小さく抑えることができる。
従って、リアクトルの作動時に生じるコアの振動が筐体に伝播するのを低減できているため、この振動に起因する騒音を、より確かに抑制することができる、という優れた効果を奏する。特に、静粛性に優れたハイブリッド自動車では、コアによる駆動周波数10KHz近傍の振動が筐体等に伝播して生じた騒音は、人にとって不快な音であり、このような騒音が抑制できる。
また、剛性の高いモールドコイルに締結部材保持部を一体に設けたことで、リアクトルと筐体との締結剛性を、従来の締結剛性よりも高くすることができ、従来、固定部材そのものが低い共振周波数で振動すること、及びこの振動に起因して発生していた騒音を抑止することができる。
これに対し、本発明のリアクトルの固定構造では、例えば、モールドコイルの幅方向両側に締結部材保持部を2つ設ければ、リアクトルと筐体との締結箇所を従来よりも少ない2つにすることができ、リアクトル全体をコンパクトにすることができる上、コストも低減できる。
さらに、コアが圧粉鉄芯で形成されているため、リアクトルの作動時には、コアの駆動周波数がコアの共振周波数に近くある状態の下、従来のリアクトルの固定構造では、リアクトルを筐体に固定するための固定部材として、薄板状のステイ、板バネ等、何れも剛性が低い固定部材を用いていた。
しかしながら、固定部材の剛性を低くし、リアクトルと筐体との締結剛性を低くして、コアの振動が筐体に伝播するのを低減させようとしても、固定部材そのものが低い周波数で共振してしまい、固定部材によるこの共振に起因した騒音が抑制できていなかった。
これに対し、本発明のリアクトルの固定構造では、剛性の高い締結部材保持部で、その貫通孔から締結部材を挿通してリアクトルと筐体とを固定させるため、リアクトルと筐体との締結剛性が高くなっている。そのため、従来、固定部材そのものが低い共振周波数で振動し、この振動に起因した騒音も発生しない。
そのため、締結部材でモールドコイルと筐体とが締結されていても、樹脂製の締結部材保持部にクリープが経時的に発生せず、締結部材保持部に生じるクリープに起因した締結部材による締結力の低下を防止することができている。
後述する実施形態1,2及び変形例に係るリアクトルの固定構造で形成されたリアクトルは、ハイブリッド自動車の駆動制御システムにおいて、バッテリの電圧値から、モータジェネレータに印加する電圧値まで昇圧させる目的で搭載されている。
そこで、はじめに駆動制御システムの構成について説明した後、実施形態1,2及び変形例に係るリアクトルの固定構造で形成されたリアクトルについて説明する。
図7は、本実施形態に係るリアクトルの固定構造を含む駆動制御システムの構造の一例を概略的に示す図である。図8は、図7中、PCUの主要部を示す回路図である。
駆動制御システム1は、図7に示すように、PCU2(Power Control Unit)と、モータジェネレータ6と、バッテリ7と、端子台8と、ハウジング71と、減速機構72と、ディファレンシャル機構73と、ドライブシャフト受け部74等とから構成されている。
PCU2は、図8に示すように、コンバータ3と、インバータ4と、制御装置5と、コンデンサC1,C2と、出力ライン6U,6V,6Wとを含む。
コンバータ3は、バッテリ7とインバータ4との間に接続され、インバータ4と電気的に並列に接続されている。インバータ4は、出力ライン6U,6V,6Wを介してモータジェネレータ6と接続されている。
コンバータ3は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、後に詳述するリアクトル10とからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置5の制御信号をベースに供給する。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流が流れるよう、パワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間に接続されている。
リアクトル10は、その一端を、バッテリ7の正極と接続する電源ラインPL1に接続し、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端を接続して配置されている。
コンバータ3は、リアクトル10によりバッテリ7の直流電圧を昇圧し、昇圧後の電圧で直流電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ3は、インバータ4から受ける直流電圧を降圧してバッテリ7に充電する。
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1における電圧レベルを平滑化する。また、コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2における電圧レベルを平滑化する。
さらに、制御装置5は、モータジェネレータ6で発電された交流電流を直流電流に変換してバッテリ7に充電させるため、コンバータ3及びインバータ4においてパワートランジスタQ1乃至Q8のスイッチング動作を制御する。
その一方で、インバータ4は、モータジェネレータ6の回生で発電された交流電圧を、直流電圧に変換して電源ラインPL2に出力する。コンデンサC2は、電源ラインPL2にかかる電圧を平滑化し、コンバータ3は、コンデンサC2により平滑化された直流電圧を降圧してバッテリ7に充電する。
実施形態1に係るリアクトルの固定構造で形成されたリアクトルについて、図1乃至図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るリアクトルの分解斜視図であり、図2は、本実施形態に係るリアクトルの要部を示す斜視図であり、モールド層を除いた状態を示す図である。図3は、本実施形態に係るリアクトについて、ギャップ体の図示を省略した説明図であり、一部を図1中、A−A矢視に相当する位置から見た断面で示す図である。図4は、図3中、
B部の拡大図である。
筐体60は、例えば、アルミ鋳造等の金属製で、筐体60本体から離れる側(図3中、Z方向上側)に突出した筐体締結部61,61を2つ有している。各筐体締結部61,61には、雌ネジが形成されている。
一方側のU字型鉄芯31の固着面31a,31aは、図2に示すように、ギャップ体35の一方側の板面に当接し、接着剤で密着されている。同様に、その反対側にある他方側のU字型鉄芯31の固着面31b,31bは、ギャップ体35の他方側の板面に当接し、接着剤で密着されている。
まず、リアクトル10の組付けでは、U字型鉄芯31,31を、モールドコイル20の各コイル21,21内に、コイル21,21両端からコイル21の軸心方向Yにそれぞれ挿通して対向させ、モールドコイル20のギャップ体35をU字型鉄芯31,31間に挟んで、U字型鉄芯31,31をトラック形状に繋ぎ合わせる。
具体的には、一方側のU字型鉄芯31の固着面31a,31aをギャップ体35の一方側板面に当接して密着させ、接着剤でU字型鉄芯31とギャップ体35とを固着する。また、他方側のU字型鉄芯31の固着面31b,31bをギャップ体35の他方側板面に当接して密着させ、接着剤でU字型鉄芯31とギャップ体35とを固着する。これにより、参照する図2に示すように、ギャップ体35が介在したトラック形状のコア30が、モールドコイル20にある2つのコイル21,21を挿通し、リアクトル本体部11、すなわちリアクトル10が得られる。
かくして、リアクトル10が、2本のボルト50,50で筐体60に固定される。
ここで、本実施形態に係るリアクトル10のコア30が最も大きく振動している様子を模式的に示した図を、図5に示す。また、本実施形態に係るリアクトルのコアに関する駆動周波数と共振周波数との関係を示すグラフを、図6に示す。
本実施形態のリアクトル10の固定構造では、電気的に直列に接続した2つのコイル21,21を並列に配置し、圧粉鉄芯で形成された2つのU字型形状のU字型鉄芯31,31(コア30)を、各コイル21,21内にコイル21両端からコイル21の軸心方向Yにそれぞれ挿通して対向させ、U字型鉄芯31,31間にギャップ体35,35を挟んでトラック形状に繋ぎ合わせたリアクトル10を、このリアクトル10を支持する筐体60に、ボルト50,50で固定させるリアクトル10の固定構造において、2つのコイル21,21に対し、各コイル21,21の径外側を樹脂でモールドして一体化したモールドコイル20が、六面形状に形成され、モールドコイル20には、コイル21の軸心方向Yに沿う当該モールドコイル20の厚み方向Y中央に、ボルト50,50を貫通孔25H,25Hに挿通して保持する締結部材保持部25,25が形成されているので、モールドコイル20の厚み方向Y中央は、コア30において2つのU字型鉄芯31,31が互いに向き合う方向に伸縮を繰り返す振動に対し、この振動の節に相当する位置となり、2つのU字型鉄芯31,31における磁歪及び電磁吸引力による振動の振幅が、最も小さくなる部位となる。
よって、モールドコイル20の厚み方向Y中央の部位は、2つのU字型鉄芯31,31における磁歪及び電磁吸引力による振動の振幅が、最も小さくなる部位となる。
従って、リアクトル10の作動時に生じるコア30の振動が筐体60に伝播するのを低減できているため、この振動に起因する騒音を、より確かに抑制することができる、という優れた効果を奏する。特に、静粛性に優れたハイブリッド自動車では、コア30による駆動周波数10KHz近傍の振動が筐体60等に伝播して生じた騒音は、人にとって不快な音であり、このような騒音が抑制できる。
また、剛性の高いモールドコイル20に締結部材保持部25,25を一体に設けたことで、リアクトル10と筐体60との締結剛性を、従来の締結剛性よりも高くすることができ、従来、固定部材そのものが低い共振周波数で振動し、この振動に起因して発生していた騒音を抑止することができる。
これに対し、本実施形態のリアクトル10の固定構造では、モールドコイル20の幅方向両側に締結部材保持部25,25を2つ設ければ、リアクトル10と筐体60との締結箇所を従来よりも少ない2つにすることができ、リアクトル10全体をコンパクトにすることができる上、コストも低減できる。
しかしながら、固定部材の剛性を低くし、リアクトルと筐体との締結剛性を低くして、コアの振動が筐体に伝播するのを低減させようとしても、固定部材そのものが低い周波数で共振してしまい、固定部材によるこの共振に起因した騒音が抑制できていなかった。
これに対し、本実施形態のリアクトル10の固定構造では、剛性の高い締結部材保持部25,25で、その貫通孔25H,25Hからボルト50,50を挿通してリアクトル10と筐体60とを固定させるため、リアクトル10と筐体60との締結剛性が高くなっている。そのため、従来、固定部材そのものが低い共振周波数で振動すること、及びこの振動に起因した騒音も発生しない。
そのため、ボルト50でモールドコイル20と筐体60とが締結されていても、樹脂製の締結部材保持部25にクリープが経時的に発生せず、締結部材保持部25に生じるクリープに起因したボルト50による締結力の低下を防止することができている。
以下、実施形態2について、図11及び図12を用いて説明する。
図11は、本実施形態に係るリアクトルの分解斜視図であり、図11中、C−C矢視断面図を図12に示す。
実施形態1のリアクトル10では、締結部材保持部25,25を、各コイル21,21の径方向に沿うモールドコイル20からその幅方向Xに突出すると共に、射出成形により、モールドコイル20と一体に形成した。
これに対し、本実施形態のリアクトル110では、締結部材保持部25,25に代えて、1つの板材を屈曲させて形成した金属製のリアクトル保持部材140を用い、このリアクトル保持部材140がモールドコイル120と一体に成形されている。
よって、実施形態1と実施形態2とは、ボルト50と筐体60の筐体締結部61との締結力を、リアクトル10,110に作用させる手段が異なるが、ボルト50による締結力でリアクトル10,110を筐体60に固定させる点、及びそれ以外の部分は、実施形態1と同様である。
従って、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、その他について説明を簡略または省略する。
モールドコイル120は、電気的に直列に接続する2つのコイル21,21と、2枚のギャップ体35,35とを有し、2つのコイル21,21に対し、各コイル21の径外側全体を樹脂でモールドして一体化されたものである。コイル21,21は、U字型鉄芯31,31の各端部の形状に対応した形態で捲回されたものであり、図12に示すように、コイル21の軸心方向Yに対し、互いに平行な並列配置で設けられている。
コイル21,21の径内側では、モールドコイル120の厚み方向Yの中央に、ギャップ体35,35が、それぞれモールドコイル120のモールド層と一体成形で設けられている。
このリアクトル保持部材140は、コイル21の軸心方向Yに沿うモールドコイル120の厚み方向Y中央に、コイル21の径方向Xにモールドコイル120を跨いで延び、覆い包み込んだモールドコイル120の外側となる位置に、貫通孔140H,140Hを各側1つ有している。
かくして、リアクトル110が、2本のボルト50,50で筐体60に固定される。
本実施形態のリアクトル110の固定構造でも、実施形態1と同様、電気的に直列に接続した2つのコイル21,21を並列に配置し、圧粉鉄芯で形成された2つのU字型形状のU字型鉄芯31,31(コア30)を、各コイル21,21内にコイル21両端からコイル21の軸心方向Yにそれぞれ挿通して対向させ、U字型鉄芯31,31間にギャップ体35,35を挟んでトラック形状に繋ぎ合わせたリアクトル110を、このリアクトル110を支持する筐体60に、ボルト50で固定させるリアクトル110の固定構造において、2つのコイル21,21に対し、各コイル21,21の径外側を樹脂でモールドして一体化したモールドコイル120が、六面形状に形成され、モールドコイル120には、コイル21の軸心方向Yに沿う当該モールドコイル120の厚み方向Y中央に、ボルト50,50を貫通孔140H,140Hに挿通して保持するリアクトル保持部材140が形成されているので、モールドコイル120の厚み方向Y中央は、コア30において2つのU字型鉄芯31,31が互いに向き合う方向に伸縮を繰り返す振動に対し、この振動の節に相当する位置となり、2つのU字型鉄芯31,31における磁歪及び電磁吸引力による振動の振幅が、最も小さくなる部位となる。
従って、リアクトル110の作動時に生じるコア30の振動が筐体60に伝播するのを低減できているため、この振動に起因する騒音を、より確かに抑制することができる、という優れた効果を奏する。特に、静粛性に優れたハイブリッド自動車では、コア30による駆動周波数10KHz近傍の振動が筐体60等に伝播して生じた騒音は、人にとって不快な音であり、このような騒音が抑制できる。
しかしながら、本発明に係るリアクトルの固定構造は、実施形態1のモールドコイル20に代えて、図9に示すように、モールドコイル20Aを用いた固定構造であっても良い。
モールドコイル20Aは、2つのコイル21,21に対し、各コイル21の径外側一部が樹脂でモールドされず外部に露出し、その以外の部分を樹脂でモールドして一体化したものである。
具体的には、モールドコイル20Aの締結部材保持部25Aが、筐体60の筐体締結部61とボルト50による締結で固定された状態において、図9及び図10に示すように、モールドコイル20Aの下側(図9中、Z方向下方)で、コイル21,21の一部が外部に露出する形態に、モールドコイル20Aが形成されている。
20,20A,120 モールドコイル
21 コイル
25,25A 締結部材保持部
25H 140H 貫通孔
30 コア
31 U字型鉄芯
35 ギャップ体
40 カラー
50 ボルト(締結部材)
60 筐体
140 リアクトル保持部材
X 径方向
Y 軸心方向、厚み方向
Claims (5)
- 電気的に直列に接続した2つのコイルを並列に配置し、圧粉鉄芯で形成された2つのU字型形状のコアを、前記各コイル内に前記コイル両端からコイル軸心方向にそれぞれ挿通して対向させ、前記コア間にギャップ体を挟んでトラック形状に繋ぎ合わせたリアクトルを、該リアクトルを支持する筐体に、締結部材で固定させるリアクトルの固定構造において、
前記2つのコイルに対し、前記各コイルの径外側を樹脂でモールドして一体化したモールドコイルが、六面形状に形成され、
前記モールドコイルには、前記コイル軸心方向に沿う当該モールドコイルの厚み方向中央に、前記締結部材を貫通孔に挿通して保持する締結部材保持部が形成されていることを特徴とするリアクトルの固定構造。 - 請求項1に記載するリアクトルの固定構造において、
前記締結部材保持部は、前記各コイルの径方向に沿う前記モールドコイルの幅方向に突出すると共に、前記モールドコイルと一体で成形されていることを特徴とするリアクトルの固定構造。 - 請求項2に記載するリアクトルの固定構造において、
前記締結部材保持部の前記貫通孔と前記締結部材との間には、金属製のカラーが介在し、前記カラーは、インサート成形により前記モールドコイルと一体となっていることを特徴とするリアクトルの固定構造。 - 請求項1に記載するリアクトルの固定構造において、
前記締結部材保持部は、前記モールドコイルの厚み方向中央で、前記コイルの径方向に前記モールドコイルを跨いで延び、覆い包み込んだ前記モールドコイルの外側となる位置に、貫通孔を有するリアクトル保持部材であり、
前記締結部材が、前記リアクトル保持部材の前記貫通孔を挿通して前記筐体と締結していることを特徴とするリアクトルの固定構造。 - 請求項4に記載するリアクトルの固定構造において、
前記リアクトル保持部材は、金属製であり、インサート成形により前記モールドコイルと一体となっていることを特徴とするリアクトルの固定構造。
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