JP2011244663A - パンタグラフの摺り板の局所的凹部検知方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 パンタグラフの摺り板の局所的凹部検知装置は、トロリ線1の水平方向の変位を測定するポテンショメータ30と、測定された水平方向変位を処理・判定する手段35と、を備える。段付摩耗などの局所的凹部によって挙動が変化するトロリ線の水平方向の変位を測定し、測定値の時刻歴波形のうち、一定の時間幅をもって移動する窓に入った波形に関する標準偏差を求め、この標準偏差が所定の閾値を超えたことをもってトロリ線の下の軌道を通過した電車のパンタグラフの摺り板に段付摩耗などの局所的凹部が生じていると判定する。
【選択図】 図1
Description
したがって、各列車の各パンタグラフについて、このような損傷凹部、あるいは局所的な凹部を検出して対処することが求められる。このためには、パンタグラフの摺り板に存在する局所的な凹部を簡単に検出する損傷凹部検知方法及び装置が必要になる。
ただし、太陽光の影響や摺り板の汚れなどによって、舟体と摺り板の境界を判定し損ねる可能性がある。また、舟体との境界面を基準とするので、舟体は平面を有する必要がある。さらに、走行中に撮像した画像について画像処理して判定するので、車両走行速度に制約がある。
しかし、開示された異常検出方法は、トロリ線の固有振動測定を用いるが、測定対象はトロリ線自体の異常であって、測定点を通過する車両のパンタグラフ摺り板に関する測定ができるわけではない。
なお、線路に垂直な水平方向からセンシングワイヤを伸ばして先端をトロリ線を支持するイヤと接続しトロリ線の水平振動を検知するようにしたポテンショメータを、トロリ線の水平変位を測定するセンサとして利用することができる。
図1には、図の左右斜め方向に水平に延びるトロリ線1が図示されている。トロリ線1には、パンタグラフの摺り板21が下方から押し付けられながら摺動する。また、このトロリ線1を支えるため、線路に沿って立てられた支柱2が図示されている。支柱2には、線路と直交する方向に延びるアーム3が碍子4を介して取り付けられており、このアーム3には吊架線5が懸けられている。トロリ線1は、この吊架線5に所定の間隔で設けられたハンガ6によって吊り下げられている。トロリ線1は、ハンガ6の下端部に設けられたイヤ7で両側から挟むようにして支持されている。
パンタグラフは、電車車両20の屋根に碍子23を介して設置された台枠24に搭載されている。パンタグラフは、トロリ線1に押し付けられる舟体25と、この舟体25を台枠24に昇降可能に支持する枠組26を有する。舟体25は、枠組26の上端に取り付けられた舟支え28に復元バネ27により支持されている。舟体25の上面には、摺り板21が支持されている。摺り板21は、復元バネ27の弾性力でトロリ線1に押し付けられながら、トロリ線1を摺動する。
この図はトロリ線に垂直な面で切断した断面図であり、摺り板21に段付摩耗部(凹部)21bが生じ、その凹部21b内にトロリ線1が嵌り込んでいる状態を示す。前述の様に、線路に沿って延設されているトロリ線1は線路に垂直な水平方向にジグザグになるように配設されているので、車両の進行に従って凹部21b内を水平の1方向に移動する。この際、トロリ線1が凹部21bの端まで移動すると、トロリ線1は凹部21bの側壁に押し付けられる。さらに同方向へ移動すると、ついには、トロリ線1が凹部21bから非摩耗部(平坦部)21aへ乗り上げるように移行する。この際、トロリ線1が凹部21bの側壁に押圧されていた状態から一挙に解放されるので、弦が弾かれたような状態となり、トロリ線1は水平方向に大きく振動する(図5を参照しつつ後述する)。
そこで、トロリ線の水平振動の大きさを測定することにより、段付摩耗の発生が検知できる。
本発明では、トロリ線1の水平振動を計測するために、一本の支柱2にポテンショメータ(測定センサ)30を取り付ける。ポテンショメータ30とは、回転角を電圧値に変換するセンサである。
たとえば、ポテンショメータ30はワイヤ伸張タイプのストロークセンサであって、回転軸に取り付けられ常時引っ張り力が作用するセンシングワイヤを備え、センシングワイヤを伸ばしてワイヤ先端を被測定物に繋ぐと、被測定物の変位がセンシングワイヤの巻き取り量に変換され、巻き取り量が出力電圧に変換されて、変位測定ができる。なお、このタイプのポテンショメータでは、センシングワイヤの展張方向に垂直な方向の変位に対してほとんど感度を有しない。
ポテンショメータ30の本体は、トロリ線1を挟持するイヤ7とセンシングワイヤである絶縁ワイヤ31を介して接続されている。絶縁ワイヤ31の繰り出し量は、トロリ線1の水平方向の変位に対応する。これにより、トロリ線1の線路に垂直な水平方向の移動量がポテンショメータ30に伝えられ、ポテンショメータ30のセンシングワイヤの繰り出し量からトロリ線1の水平変位が測定される。
ポテンショメータ30の出力は、有線33又は無線によってデータ処理装置35に送られる。
標準偏差は、時間幅Tに含まれる測定値と時間幅T間の平均値の差を二乗して積算し時間幅で割って求めるものであるから、時間幅Tに含まれる波形における振幅平均値に対応する。
また、時間幅Tより長い周期の変動は、標準偏差算定の過程で平均値との偏差を算定することにより相殺され、評価の対象にならない。したがって、時間幅Tを適宜に選択することにより、低周波数のノイズ成分を除去することができる。
トロリ線は、摺り板の凹部で弾かれた後には、摺り板の摺動面に擦られるが、基本的にはトロリ線のジグザグのスパンを画定する2本のアーム3を支点とする弦として、スパン間距離とトロリ線の剛性で決まる固有振動数で振動する。
したがって、この固有振動数成分を透過するフィルタを適用して、上下振動などのノイズ成分を除去した測定信号について解析することができる。
この例では、段付摩耗と同様の凹部を形成した摺り板を搭載した試験車両を使用し、この凹部をトロリ線が線路に垂直な水平方向に摺動するような状況下で試験車両を走行させた。そして、前述の方法でポテンショメータと処理判定装置を用いてトロリ線の水平振動を計測した。ポテンショメータとしては、この例では、DP-500C(株式会社東京測器研究所社製)を使用し、サンプリング周波数は2kHzである。
左上のグラフ(A)は、ポテンショメータで計測された水平変位量の変化を示すグラフである。縦軸は変位量(mm)、横軸は時間(秒)を表す。
右上のグラフ(B)は、グラフ(A)の測定データ(水平変位量)の時間幅T(2.4秒)に対する移動標準偏差を示すグラフである。縦軸は移動標準偏差、横軸は時間(秒)である。
左下のグラフ(C)は、グラフ(A)の測定データ(水平変位量)に対してバンドパスフィルタ(0.4〜1Hz)に通した後のグラフである。縦軸は変位量(mm)、横軸は時間(秒)である。
右下のグラフ(D)は、グラフ(C)の測定データ(水平変位量)の時間幅T(2.4秒)に対する移動標準偏差を示すグラフである。縦軸は移動標準偏差、横軸は時間(秒)である。
この結果から、一例として、トロリ線の水平変位量の時間幅T(この例では2.4秒)に対する移動標準偏差がたとえば0.4[mm]を超えた場合に、摺り板に段付摩耗などの局所的凹部が発生していると判定できる。
この結果から、一例として、トロリ線水平変位量の測定値の時刻歴波形をバンドパスフィルタ(0.4〜1Hz)に通して得られる波形の時間幅T(この例では2.4秒)に対する移動標準偏差がたとえば0.2[mm]を超えた場合に、摺り板に段付摩耗などの局所的凹部が発生していると判定できる。
3 アーム 4 碍子
5 吊架線 6 ハンガ
7 イヤ
20 電車車両 21 摺り板
23 碍子 24 台枠
25 舟体 26 枠組
27 復元バネ 28 舟支え
30 ポテンショメータ 31 絶縁ワイヤ
33 信号線 35 データ処理装置
Claims (5)
- トロリ線の線路に垂直な水平方向の変位を測定し、
測定値の時刻歴波形のうち、一定の時間幅の移動窓に含まれる波形に対して標準偏差を求め、
該標準偏差が所定の閾値を超えたことをもって前記トロリ線の下の軌道を通過した電車のパンタグラフの摺り板に局所的凹部が生じていると判定することを特徴とするパンタグラフの摺り板の局所的凹部検知方法。 - トロリ線の水平方向の変位の時刻歴波形を、トロリ線水平振動の低次の固有振動数成分を透過し、かつ、上下振動の固有振動数成分を抑制するように設定されたバンドパスフィルタあるいはローパスフィルタに通し、
該フィルタを通過した、一定の時間幅の移動窓に含まれる波形に対して標準偏差を求めることを特徴とする請求項1に記載のパンタグラフの摺り板の局所的凹部検知方法。 - トロリ線の線路に垂直な水平方向の変位を測定するセンサと、
測定された変位を処理・判定する手段と、
を備え、
前記処理・判定手段において、前記変位の時刻歴波形のうち、一定の時間幅の移動窓に含まれる波形に対して標準偏差を求め、
該標準偏差が所定の閾値を超えたことをもって前記トロリ線の下の軌道を通過した電車のパンタグラフの摺り板に局所的凹部が生じていると判定することを特徴とするパンタグラフの摺り板の局所的凹部検知装置。 - さらに、前記トロリ線水平振動の低次の固有振動数成分を透過し、かつ、上下振動の固有振動数成分を抑制するように設定されたバンドパスフィルタあるいはローパスフィルタを備えることを特徴とする請求項3に記載のパンタグラフの摺り板の局所的凹部検知装置。
- 前記センサは、常時引っ張り力が作用するセンシングワイヤを備え、センシングワイヤの先端を被測定物に繋ぐと、被測定物の変位がセンシングワイヤの巻き取り量に変換され、巻き取り量が出力電圧に変換されて変位測定ができる、ワイヤ伸張タイプのポテンショメータであることを特徴とする請求項3または4に記載のパンタグラフの摺り板の局所的凹部検知装置。
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