JP5536536B2 - パンタグラフの摺り板の局所的凹部検知方法及び装置 - Google Patents
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したがって、各列車の各パンタグラフについて、このような損傷凹部、あるいは局所的な凹部を検出して対処することが求められる。このためには、パンタグラフの摺り板に存在する局所的な凹部を簡単に検出する損傷凹部検知方法及び装置が必要になる。
ただし、太陽光の影響や摺り板の汚れなどによって、舟体と摺り板の境界を判定し損ねる可能性がある。また、舟体との境界面を基準とするので、舟体は平面を有する必要がある。さらに、走行中に撮像した画像について画像処理して判定するので、車両走行速度に制約がある。
しかし、開示された異常検出方法は、トロリ線の固有振動測定を用いるが、測定対象はトロリ線自体の異常であって、測定点を通過する電車のパンタグラフ摺り板に関する測定ができるわけではない。
したがって、トロリ線の水平変位に基づいて、摺り板に局所的凹部が発生していることを検知することができる。
すなわち、ジグザクに支持されたトロリ線の支柱中間位置において、トロリ線の線路に垂直な水平方向の変位を測定し、トロリ線が凹部の側壁に押圧されて生じる正方向変位と凹部から解放された後の逆方向変位の一方または両方を評価することにより、トロリ線が摺り板表面の凹部に拘束されたことを知ることができる。
すなわち、ジグザクに支持されたトロリ線には、トロリ線が局所的凹部の側壁に押圧されて正常位置から変位する間、側端部を変位させる力が働くので、トロリ線の側端部も凹部の存在する部分の水平変位と対応して、線路に垂直な水平方向に変位する。
また、逆方向変位に伴う変位の急激な変化率を指標に加えることにより、局所的凹部の発生を確実に検知することもできる。
トロリ線の水平変位を測定するセンサは、常時、巻き上げる方向に引っ張り力が作用するセンシングワイヤを備え、センシングワイヤの先端を被測定物に繋ぐと、被測定物の変位がセンシングワイヤの巻き取り量に変換され、巻き取り量が出力電圧に変換されて変位測定ができるように構成された、ワイヤ伸張タイプのポテンショメータであることが好ましい。
センシングワイヤは、吊架線から垂下するハンガの先端に設けられ、トロリ線を両側から挟むようにして支持するイヤにワイヤ先端を固定して、トロリ線の変位を測定することができる。また、ハンガと独立してトロリ線に固定したイヤにワイヤ先端を繋いで測定することもできる。
また、トロリ線の支柱の中間に新しく測定用の柱を設置する代わりに、既存の支柱にセンサを設けて、支柱近傍のトロリ線側端部における水平変位を測定してもよい。
図1には、図中左下から右上にかけて、図示しない線路に沿って水平に伸びるトロリ線1が図示されている。トロリ線1には、電車のパンタグラフ23の摺り板25が下方から押し付けられながら摺動する。
また、このトロリ線1を支えるため、線路に沿って立てられた支柱2が図示されている。支柱2には、線路と直交する方向に伸びるアーム3が碍子4を介して取り付けられており、このアーム3には吊架線5が懸けられている。
図2(A)には、トロリ線1の下に電車が存在し、電車の屋根に設置された台枠22に搭載されたパンタグラフ23の摺り板25の上面がトロリ線1の下面と摺動する様子が模式的に表されている。
パンタグラフ23は、電車の屋根20に碍子21を介して設置された台枠22に搭載されている。パンタグラフ23は、トロリ線1に押し付けられる摺り板25と、摺り板25を支持する舟体26と、この舟体26を台枠22に昇降可能に支持する枠組27を有する。この例では、2個の舟体26が進行方向に並ぶように配置されている。
図4は、線路に沿って延設されているトロリ線1の下を電車が図中上から下に通過していく過程を模式的に示す平面図である。図面の最上部に、摺り板の凹部とトロリ線の位置関係を示すため、摺り板位置における断面図が表示されている。
このとき、トロリ線1は、凹部25bの側壁に押圧されていた状態から一挙に解放されるので、弦が弾かれたような状態となり、トロリ線1は水平方向(図中左方向)に大きく運動して、図4(D)に示すように、図の一点鎖線で示す平衡位置を越えた位置まで変位する。
したがって、トロリ線1の水平方向の変位を監視することにより、段付摩耗の発生を検知することができる。
本実施例では、トロリ線1の水平方向の変位を計測するために、一本の支柱2にポテンショメータ(測定センサ)30を取り付ける。ポテンショメータ30とは、回転角を電圧値に変換するセンサである。なお、隣り合わせた支柱2の中間位置に測定用の柱を設けて、この測定用柱にポテンショメータ30を設置してもよいことはいうまでもない。
ポテンショメータ30の出力は、有線の通信線33又は無線によってデータ処理装置35に送られる。
この例では、段付摩耗と同様の凹部を形成した摺り板を搭載した試験車両を使用し、この凹部をトロリ線が線路に垂直で路面に平行なほぼ水平方向に摺動するような状況下で試験車両を走行させた。そして、支柱に設けたポテンショメータを用いてトロリ線の水平変位を計測した。ポテンショメータとして、DTP−D−1KS−P(株式会社共和電業製)を使用した。ポテンショメータのサンプリング周波数は2kHzであった。
図6は、ポテンショメータで計測されたトロリ線の水平変位量の変化を示すグラフである。縦軸は変位量(mm)、横軸は時間(秒)を表す。また、図7は、計測位置における水平変位量の正常時における値からの差の絶対値変化を示すグラフである。縦軸は変位量の差の絶対値(mm)、横軸は時間(秒)を表す。
また、測定出力をハイパスフィルターに通して変位変化の低周波成分をカットし解析に必要な高周波成分を利用するようにしても、類似の効果を得ることができる。
このときのトロリ線1の変位量は、プラスからマイナスに大きく変化し、変化量は大きい。
図7は、図6に示した変位測定値の絶対値を示すもので、試験車両の進行方向に拘わらず、変位量の符号を無視して同じ論理に従って判定することができる。また、その後の信号処理では測定値に符号を考慮する必要がないため、演算処理を単純化することができる。
(1)初めの変位量の絶対値
(2)初めの変位に対する逆方向の変位の変化量
また、局所的凹部を確実に捉えるために、項目(3)を加味して判定するようにしてもよい。
(3)逆方向変化の変化率
またさらに、項目(4)により、摺り板に発生した局所的凹部を検出することもできる。
(4)水平変位量積分値の絶対値
(1)初めの変位量の絶対値
図4(C)で示したように、トロリ線1が凹部25bの側壁に押し付けられている場合、トロリ線1はその平衡位置から外れて、摺り板25の摺動面に案内されて車両進行方向に対する左右いずれかの方向に変位する。車両進行方向が逆方向になる場合でも、反対方向に同様の挙動を示すので、変位の絶対値を使って同じ手順で評価することができる。
トロリ線1の変位の絶対値は、トロリ線1が凹部25bから外れるまで増大するので、凹部25bが大きければ変位絶対値も大きい。一方、凹部25bが小さければトロリ線1が簡単に凹部25bから外れるので、トロリ線1の変位絶対値は大きくならない。
図7において、トロリ線1の変位絶対値は、図に示したΔB=73mmにおいて最大値になることが分かる。図6の測定のために設定された条件では、閾値TBはたとえば40mmとすることができる。
トロリ線1が図4(C)に示したように凹部25bの側壁に押し付けられると、トロリ線1は平衡位置から外れて左右いずれかの方向に変位する。その後、トロリ線1が図4(D)に示したように凹部25bから外れて非摩耗部25aの表面に乗り上げるように移動した場合、トロリ線1は凹部により初めに変位した方向に対して反対方向に平衡位置を超えて大きく変位する。
したがって、図6に示された、トロリ線1の初期変位から反対方向の変位までの変位変化量を観察することにより、凹部25bの存在を確実に検出することができる。
図6において、トロリ線1の変位の変化量は、図に示したΔA=115mmまで増大したことが分かる。図6の測定のために設定された条件では、閾値TAはたとえば60mmとすることができる。
変化率は、グラフの傾きを示すもので、一定時間内の変位変化の量を表す。トロリ線1が凹部25bから解放されて逆方向に行き過ぎるときは、変位変化率が最も大きい。そこで、最初の変位から逆方向に変位が移行する際の変化率を検出して、変化率の閾値と比較した結果を、項目(1)または項目(2)の判定に加えることにより、凹部25bの存在をより確実に検出することができる。
トロリ線は、風などにより水平方向に振動するので、局所的凹部の検出に対するノイズとなる場合がある。そこで、水平変位量を積分することにより変位量に含まれる振動成分を除去する方法がある。さらに、車両の走行方向により水平変位の方向が正負いずれかに変化するため、下の式に従って、積分値の絶対値z(T)を取って正負の区別を除去することが好ましい。
このようにして得られた水平変位量積分値の絶対値について、適宜の閾値を超えたかどうかを判定して、摺り板局所的凹部の有無を検知することができる。この判定方法は、水平変位量を積分することによって、感度を増大させることができ、振動成分のノイズを除去することができるので、便利である。
すなわち、下の式に従い、測定時点Tにおいて、Tから所定の期間TAだけ遡った範囲内で水平変位量x(t)を積分し、その値の絶対値を求めて、得られた値z(T)が経験に基づいて得られた閾値を超えたときに摺り板局所的凹部が存在すると判断する。なお、得られた値は、期間TAで割ることにより移動平均となる。
本発明のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知方法を用いることにより、試験車両を計測区間で走行させるだけでパンタグラフの摺り板における局所的凹部の存否を検出するので、摺り板の保全作業が大いに簡約化され、効率化されることになった。
2 支柱
3 アーム
4 碍子
5 吊架線
6 ハンガ
7 イヤ
20 屋根
21 碍子
22 台枠
23 パンタグラフ
25 摺り板
25b 段付摩耗(凹部)
25a 非摩耗部
26 舟体
27 枠組
28 舟支え
29 復元バネ
30 ポテンショメータ
31 絶縁ワイヤ(センシングワイヤ)
33 通信線
35 データ処理装置
Claims (10)
- ジグザクに支持されたトロリ線の線路に垂直な水平方向の平衡位置からの変位を測定し、
測定された前記変位に基づいて前記変位が前記平衡位置から一方向に所定の幅以上変化しその後前記平衡位置に向けて変化し自由振動して減衰する変化形態を示すことを検出したときに、前記トロリ線の下の線路を通過した電車のパンタグラフの摺り板に局所的凹部が存在すると判定することを特徴とするパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知方法。 - 前記変位は、前記トロリ線に対して垂直かつ水平方向に離れた位置に設けられたセンサにより測定されることを特徴とする請求項1記載の局所的凹部検知方法。
- 前記変位の変化形態は、前記変位の一方向の変化が所定の第1閾値を超えることと、前記変位の前記平衡位置に向けた変位が所定の第2閾値を超えることとの一方または両方に基づいて検出を判定し、前記局所的凹部の存在を判定することを特徴とする請求項1または2記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知方法。
- さらに、前記変位の変化率を算定して所定の第3閾値と比較した結果を、前記判定に加味して前記局所的凹部の存在を判定することを特徴とする請求項3記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知方法。
- 前記変位の変化形態は、測定された前記変位を積分して絶対値を取った値が所定の第4閾値を超えたときに検出を判定し、前記局所的凹部の存在を判定することを特徴とする請求項1または2記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知方法。
- 適宜配置される支柱により線路に沿って線路に垂直な水平方向にジグザグになるように配設されたトロリ線の線路に垂直な水平方向の変位を測定するセンサと、
測定された前記変位が前記平衡位置から所定の幅以上変化しその後前記平衡位置に向けて変化し自由振動して減衰する変化形態を示すことを検出したときに、前記トロリ線の下の線路を通過した電車のパンタグラフの摺り板に局所的凹部が存在すると判定する処理判定装置と、を備え、
該処理判定装置が、前記測定された変位の一方向の変化が所定の第1閾値を超えることと、前記変位の前記平衡位置に向けた変化が所定の第2閾値を超えることとの一方または両方に基づいて、前記トロリ線の下の線路を通過した電車のパンタグラフの摺り板に局所的凹部が存在すると判定することを特徴とするパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知装置。 - 前記処理判定装置は、さらに、前記測定された変位の変化率を算定して、該変化率が所定の変化率閾値を超えたことを確認して、前記電車のパンタグラフの摺り板に局所的凹部が存在することを判定することを特徴とする請求項6記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知装置。
- 前記変位の変化形態は、測定された前記変位を積分して絶対値を取った値が所定の第4閾値を超えたときに検出を判定し、前記局所的凹部の存在を判定することを特徴とする請求項6記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知装置。
- 前記センサは、常時引っ張り力が作用するセンシングワイヤを備え、該センシングワイヤの先端を被測定物に繋ぐと、該被測定物の変位がセンシングワイヤの巻き取り量に変換され、さらに該巻き取り量が出力電圧に変換されて変位測定ができる構成を有する、ワイヤ伸張タイプのポテンショメータであることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知装置。
- 前記センサは、センサ本体を、前記トロリ線に対して垂直かつ水平方向に離れた位置に設けて、前記センシングワイヤの先端をトロリ線に繋いで測定することを特徴とする請求項9記載のパンタグラフ摺り板の局所的凹部検知装置。
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