JP5885592B2 - トロリ線の静高さの推定方法及び推定装置 - Google Patents
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Description
あるいは、絶縁性のゲージ棒(高さ測定棹)を用いた人手による測定が行われることもある。しかし、この測定は、列車の運行しない夜間等に限られること、人手で測定するために測定精度が低く、測定箇所も離散的で範囲も限られることなどの問題がある。
ア)前記車両走行時において前記パンタグラフのすり板上面の動的な高さ(パンタグラフ動高さ)hdを、前記線路に沿って測定し、
イ)前記車両走行時における前記パンタグラフと前記トロリ線との接触力Fcを測定し、
ウ)前記車両の走行速度を加味し、径間で平均した前記トロリ線の等価ばね定数
kbarを得ておいて、前記パンタグラフによって前記トロリ線が押し上げられている寸法(動押上量)をFc/kbarと推定し、
エ)前記パンタグラフが押し上げていない状態における前記トロリ線の摺動面の前記鉄道軌道からの高さである静高さHsを、前記車両のパンタグラフを除いた高さHt、及び、上記各種値から、
Hs=Ht+hd−Fc/kbar
と推定することを特徴とする。
車両の走行速度を加味したトロリ線の等価ばね定数kbarとは、トロリ線のある一点を上方に単位長さだけ変位させるために必要な力を、トロリ線のレール方向のある区間内で平均した値である。トロリ線のばね定数は、支持点(電柱など)との位置関係によって変化するので、平均値を求める。また、等価ばね定数は走行速度によって影響を受け、速度が上がれば等価ばね定数は下がる傾向がある。このため、実測などにより、対象鉄道路線についてのトロリ線の等価ばね定数を事前に把握しておく。
車両のパンタグラフを除いた高さHtは、車両の型式によって決まっている。なお、軸ばねや枕ばねの伸縮などにより変動する分は補正してもよい。
前記車両走行時において前記パンタグラフのすり板上面の動的な高さ(パンタグラフ動高さ、hd)を、前記線路に沿って測定する装置と、
前記車両走行時における前記パンタグラフと前記トロリ線との接触力(Fc)を測定する装置と、
前記パンタグラフ動高さ測定装置及び前記接触力測定装置で測定された値が入力されて処理される制御部と、を有し、
前記制御部において、
前記車両の走行速度を加味し、径間で平均した前記トロリ線の等価ばね定数
(kbar)と、前記接触力(Fc)とから、前記パンタグラフによって前記トロリ線が押し上げられている寸法(動押上量)をFc/kbarとし、
前記パンタグラフが押し上げていない状態における前記トロリ線の摺動面の前記鉄道軌道からの高さである静高さ(Hs)を、
Hs=Ht+hd−Fc/kbar
ここで、Ht:前記車両のパンタグラフを除いた高さHt、
と推定することを特徴とする。
まず、図1を参照して、本発明のトロリ線の静高さ推定方法を説明する。
車両走行時に、パンタグラフのすり板上面の動的な高さ(パンタグラフ動高さ)hdを、線路に沿って測定する。この測定は検測車によって検測できる(検測方法は後述)。さらに、車両走行時に、パンタグラフとトロリ線との接触力Fcを測定する。この測定も検測車で検測する(検測方法は後述)。
一方、車両の走行速度を加味したトロリ線の等価ばね定数kbarを得ておき、パンタグラフによってトロリ線が押し上げられている寸法(動押上量、hx)を、接触力Fcを等価ばね定数kbarで除した値Fc/kbarと推定する。等価ばね定数については後述する。
そして、パンタグラフ動高さhdから動押上量(hx=Fc/kbar)を減じて、車上におけるトロリ線の静高さ(hs=hd−Fc/kbar)を求める。
最後に、パンタグラフが押し上げていない状態におけるトロリ線の摺動面の鉄道軌道からの高さである静高さHsを、車両のパンタグラフを除いた高さHtと、車上におけるトロリ線の静高さ(hs)とから、
Hs=Ht+hs
=Ht+hd−Fc/kbar
として求める。
まず、パンタグラフ1の構造の一例を説明する。パンタグラフ1は、トロリ線Tと摺動するすり板体3を保持する舟体4と、これらを支持し、電気鉄道車両の屋根に起立倒伏可能に設置された枠組5と、を主に備える。
パンタグラフ動高さ(hd)は、図2(A)に示すように、主軸11に絶縁体21を介して接続するポテンショメータ23によって計測される。すなわち、トロリ線Tの高さが変わると、パンタグラフ1はその高さに追随して上下に運動し、パンタグラフ1の主軸11が回転する。この回転は絶縁体21を介してポテンショメータ23に導かれ、このポテンショメータ23によりトロリ線Tの動高さ(hd)が測定できる。このようなポテンショメータ23等は検測車に搭載される。
まず、加速度計31で計測されたすり板3の加速度に、予め求めておいたすり板3の等価質量を乗算し、すり板3の慣性力を算出する。一方で、ひずみゲージ33で計測された各復元ばね8の変形量と復元ばね8のばね定数とから、復元ばね8の反力を算出する。そして、慣性力と反力とを合算してパンタグラフ1の接触力(Fc)を算出する。なお、パンタグラフの接触力測定方法については、特許第4012108号、第3930299号、第3722463号等の方法を用いることもできる。
前述の測定においては、詳細な架線構造や架線に作用する慣性力の影響を無視しているため、得られた各値を、径間(架線の支持点間)周期に対応する周波数の2〜3倍の所定の周波数以上の周波数をカットするローパスフィルタを通して、径間内のトロリ線の静高さの変化を把握しつつ高周波成分をカットする。径間距離が50m、車両速度が300km/hの場合、例えば、3Hz以上の周波数をカットするローパスフィルタを使用できる。あるいは、例えば、波数0.03(1/m)のものを使用できる。
グラフに示すように、トロリ線のばね定数は径間内で変化し、支持点の部分で最も高く(kmax)、支持点の中央で最も低く(kmin)なる。トロリ線の静押上量はその反対の挙動を示す。等価ばね定数kbarは、径間内でのばね定数の平均である。
グラフに示すように、等価ばね定数は、走行速度が高くなるほど波動の影響を強く受けるため、ほぼ直線的に低下する傾向を示す。したがって、パンタグラフの静高さを推定する際には、走行する車両の速度に応じた等価ばね定数を予め実測や解析等により求めておく。
次に、パンタグラフ動高さ(hd)からパンタグラフの動押上量(hx=Fc/kbar)を減じて、トロリ線の静高さ(hs)を求める。
最後に、図1に示すように、このトロリ線静高さ(hs)に、車両の高さ(パンタグラフ除く)(Ht)を加えることにより、軌道上からのトロリ線の静高さ(Hs)を求めることができる。車両の高さ(Ht)は、車両の型式によって決まっており、軸ばねや枕ばねの伸縮などにより変動する分は補正してもよい。
グラフに示すように、この区間内においては両者とも同様の変位を示しており、径間内でのトロリ線の静高さの変位幅は約30mm程度である。推定値と実測値の、最も大きい差は13mm程度である。これは、長い区間に渡ってトロリ線の静高さを把握する上では、十分な精度であるといえる。
4 舟体 5 枠組
7 ホーン 8 復元ばね
9 天井管 11 主軸
12 ベース
21 絶縁体 23 ポテンショメータ
31 加速度計 33 ひずみゲージ
Claims (4)
- 電気鉄道を走行する車両のパンタグラフの高さを測定した結果に基づいて、該鉄道の線路に沿ったトロリ線摺動面の高さの分布を推定する方法であって、
ア)前記車両走行時において前記パンタグラフのすり板上面の動的な高さ(パンタグラフ動高さ)hdを、前記線路に沿って測定し、
イ)前記車両走行時における前記パンタグラフと前記トロリ線との接触力Fcを測定し、
ウ)前記車両の走行速度を加味し、径間で平均した前記トロリ線の等価ばね定数
kbarを得ておいて、前記パンタグラフによって前記トロリ線が押し上げられている寸法(動押上量)をFc/kbarと推定し、
エ)前記パンタグラフが押し上げていない状態における前記トロリ線の摺動面の前記鉄道軌道からの高さである静高さHsを、前記車両のパンタグラフを除いた高さHt、及び、上記各種値から、
Hs=Ht+hd−Fc/kbar
と推定することを特徴とするトロリ線の静高さの推定方法。 - 測定されたパンタグラフ動高さ(hd)を、ローパスフィルタを通過させて高周波成分を除去し、
一方で、測定されたパンタグラフとトロリ線との接触力(Fc)を、ローパスフィルタを通過させて高周波成分を除去した後で、前記車両の走行速度を加味した前記トロリ線の等価ばね定数(kbar)で除した値(Fc/kbar)を、前記パンタグラフによって前記トロリ線が押し上げられている寸法(動押上量hx)とし、
前記高周波成分を除去したパンタグラフ高さ(hd)から前記動押上量(hx)を減じて、車上での前記パンタグラフの静高さ(hs=hd−hx=hd−Fc/kbar)とし、
前記パンタグラフが押し上げていない状態における前記トロリ線の摺動面の前記鉄道軌道からの高さである静高さ(Hs)を、前記車両のパンタグラフを除いた高さ(Ht)に、車上でのパンタグラフ静高さ(hs)を加えた値とすることを特徴とする請求項1に記載のトロリ線の静高さの推定方法。 - 前記ローパスフィルタが、径間周期に対応する周波数の2〜3倍の所定の周波数以上の周波数をカットするものであることを特徴とする請求項2に記載のトロリ線の静高さ推定方法。
- 電気鉄道を走行する車両のパンタグラフの高さを測定した結果に基づいて、該鉄道の線路に沿ったトロリ線摺動面の高さの分布を推定する装置であって、
前記車両走行時において前記パンタグラフのすり板上面の動的な高さ(パンタグラフ動高さ、hd)を、前記線路に沿って測定する装置と、
前記車両走行時における前記パンタグラフと前記トロリ線との接触力(Fc)を測定する装置と、
前記パンタグラフ動高さ測定装置及び前記接触力測定装置で測定された値が入力されて処理される制御部と、を有し、
前記制御部において、
前記車両の走行速度を加味し、径間で平均した前記トロリ線の等価ばね定数
(kbar)と、前記接触力(Fc)とから、前記パンタグラフによって前記トロリ線が押し上げられている寸法(動押上量)をFc/kbarとし、
前記パンタグラフが押し上げていない状態における前記トロリ線の摺動面の前記鉄道軌道からの高さである静高さ(Hs)を、
Hs=Ht+hd−Fc/kbar
ここで、Ht:前記車両のパンタグラフを除いた高さHt、
と推定することを特徴とするトロリ線の静高さの推定装置。
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