JP5215243B2 - パンタグラフの接触力算出方法 - Google Patents
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Description
また、電車走行時の接触力の波形は電車線の架設状態の影響を大きく受けていると推定されるため、測定した接触力波形から電車線の状態監視が可能であると考えられる。
そこで、従来は、風洞実験や現車試験による揚力測定によって舟体の速度-揚力特性を予め把握しておき、この速度-揚力特性と車両の走行速度とから舟体の揚力を算出する手法が採られていた(例えば、非特許文献1参照)。
即ち、本発明に係るパンタグラフの接触力算出方法は、トロリ線に下方から接触する舟体と、該舟体を車体に対して昇降可能に支持する枠体と、該枠体に対して前記舟体を上方に付勢する第1バネ要素と、前記車体に対して前記枠体を上方に付勢する第2バネ要素とを備えるパンタグラフにおいて、前記トロリ線に対する前記舟体の接触力を算出するパンタグラフの接触力算出方法であって、走行区間における車両速度、前記第1バネ要素の復元力及び前記舟体の慣性力を検出する工程と、前記車両速度と予め取得した前記枠体の速度-揚力特性から前記枠体の揚力の理論値を算出する工程と、前記第1バネ要素の復元力から前記枠体の揚力の実測値を抽出する工程と、前記枠体の揚力の実測値と前記枠体の揚力の理論値との比である揚力比を算出する工程と、該揚力比の平方根を前記車両速度に乗算して前記パンタグラフ周りの流速を算出する工程と、該流速と予め取得した前記舟体の速度‐揚力特性とから前記舟体の揚力を算出する工程と、該舟体の揚力、前記舟体の慣性力及び前記第1バネ要素の復元力を加算することにより前記舟体の接触力を算出することを特徴とする。
即ち、本発明においては、枠体及び舟体の揚力がともにパンタグラフ周りの流速に支配されるのに着目して、実測の容易な枠体の揚力から上記流速を算出し、当該流速を舟体の流速-揚力特性に適用して舟体の揚力を算出しているのである。
ここで、揚力比をC、流速変動の影響を含んだ枠体の揚力の実測値をFL2r、流速変動を無視して車両速度を流速とした枠体の揚力の理論値をFL2cとすると、揚力比Cは下記(1)式で定義される。
なお、パンタグラフ周りの流速を車両速度v0と近似可能な明かり区間においては、上記揚力比の値は約1になるため、(4)式から求めたパンタグラフ周りの流速vpを用いて舟体の揚力を計算しても車両速度v0を用いて舟体の揚力を計算した結果とほぼ等しくなる。したがって、本手法を用いることにより、明かり区間とトンネル区間とが混在する全走行区間においてパンタグラフの接触力を精度高く算出することができる。
車体1の屋根に搭載されたパンタグラフ10は、図1の上方から下方に向かって、舟体11、枠体12、台枠13、支持碍子14を備え、さらに、舟体11と枠体12との間には復元バネ(第1バネ要素)15が設けられ、枠体12には図示しない主バネ(第2バネ要素)が設けられている。
この舟体11は、車幅方向に沿って略水平方向に延びる直線部と該直線部の両端側から斜め下方に向かって延びる傾斜部とを備えており、直線部に取り付けられた上記すり板を介してトロリ線に接触するようになっている、なお該トロリ線は上記すり板の局所的な磨耗を防止するため、舟体11の有効幅内において蛇行して配置されている。
図2に示すように、トロリ線から舟体11に作用する接触力をFc、舟体11を上方に向かって押し上げる力である内力をFb、舟体11に作用する鉛直方向の慣性力をFine、舟体11に作用する揚力をFL1とすると、舟体11に関する力の釣り合いから、下記(6)式が成立する。
風洞実験又は現車による揚力測定試験により、舟体11の周りの流速(速度)と舟体11に作用する揚力を測定し、これに基づいて舟体11の速度-揚力特性(図4参照)を求める。
風洞実験又は現車による揚力測定試験により、枠体12の周りの流速(速度)と枠体12に作用する揚力を測定し、これに基づいて枠体12の速度-揚力特性(図4参照)を求める。
なお、上記舟体11及び枠体12の速度-揚力特性はあくまで一例であり、場合によっては、枠体12についても、舟体11と同様に、速度が上昇するほどプラスの揚力(上方向への揚力)が大きくなる。
車両が走行区間を走行する際の車両速度v0を全走行区間にわたって検出する。この車両速度v0は、実際に車両が走行した際のランカーブから検出してもよいし、速度信号から検出してもよい。
車両が走行区間を走行する際の内力Fbを全走行区間にわたって検出する。この内力Fbは、復元バネ(第1バネ要素)15の復元力と等しいため、該復元力を測定することにより内力Fbが検出される。
具体的には、上記レーザ変位計を用いた場合には、復元バネ15の上下方向変位を全走行区間にわって検出し、復元バネ15の収縮量を求める。そして、この収縮量と復元バネ15のバネ定数とに基づいて全走行区間にわたっての内力Fbが求められる。また、上記荷重計を用いた場合には、復元バネ15の荷重を走行区間にわたって測定することで、直接的に内力Fbを検出することができる。
車両が走行区間を走行する際の舟体11の上下方向加速度を全走行区間にわたって検出する。具体的には、復元バネ15に設けられた上記加速度センサによって当該舟体11の上下方向加速度を検出する。
ステップS2で取得した枠体12の速度‐揚力特性と、ステップS3で検出した車両速度v0とから全走行区間にわたっての枠体12の揚力の理論値FL2cを算出する。枠体12の正確な揚力を得るにはパンタグラフ10周りの流速vpを速度-揚力特性に当てはめて算出する必要があるが、ここでは、車両流速v0とパンタグラフ10周りの流速vpとが等しいと仮定して、車両流速v0を速度-揚力特性に当てはめて枠体12の揚力の理論値FL2cを算出している。したがって、算出された枠体12の揚力の理論値FL2cは、パンタグラフ周りの流速変動を無視した値となる。
ステップS4で検出した内力Fbから枠体12の揚力の実測値FL2rを抽出する。
ここで上記(7)式に示したように、内力Fbは静押上力F0と枠体12の揚力FL2との和として表すことができる。さらに、上述のように静押上力F0は、主バネ(第2バネ要素)の車両停止時における復元力に等しい。
したがって、主バネの復元力を検出し、上記内力Fbから減算することで、枠体12の揚力の実測値FL2rを得ることができる。
さらに、この枠体12の揚力の実測値FL2rには、車両走行時の高周波のノイズが含まれているため、0.2Hzローパスフィルタ処理を施すことにより、ノイズを除去する。これにより、枠体12の揚力の実測値FL2rが精度高く抽出される。
ステップS6で算出した枠体12の揚力の理論値FL2cとステップS7で算出した枠体12の揚力の実測値FL2rとから揚力比Cを算出する。
この揚力比Cは、下記(8)式で定義される。
揚力が速度(流速)の2乗に比例する特性を考慮すると、枠体の揚力の実測値FL2r及び理論値FL2cは、下記(9),(10)式で表される。
上記(9),(10)式から、車両速度v0がパンタグラフ周りの流速vpと等しいと近似できる明かり区間においては、枠体12の揚力の実測値FL2rと理論値FL2cとが等しくなる。また、トンネル区間においては、一般に車両速度v0よりもパンタグラフ周りの流速vpが大きくなるため、枠体12の揚力の実測値FL2rの方が理論値FL2cよりも大きくなる。
したがって、これら枠体12の揚力の実測値FL2r及び理論値FL2cの比である上記揚力比Cは、図5に示すように、明かり区間では流速変動が起こらないためおよそ1の値を示し、トンネル区間では流速変動の影響を受けて1よりも大きな値を示すことになるのである。
ステップ3で取得した車両速度v0と、ステップS8で算出した揚力比Cとからパンタグラフ周りの流速vpを算出する。この流速vpの算出は、下記(11)式に基づいて行なわれる。
ステップ1で取得した舟体11の速度‐揚力特性と、ステップS9で算出したパンタグラフ周りの流速vpとから、全走行区間にわたっての舟体11の揚力FL1を算出する。
ステップS9で算出したパンタグラフ周りの流速vpはトンネル内における変動分を含んでいるため、当該流速vpを舟体11の速度-揚力特性に当てはめて舟体11の揚力の値を算出することで、流速変動の影響を考慮した舟体11の揚力FL1を算出することができる。
ステップS5で検出した舟体11の上下方向加速度に基づいて舟体11の慣性力Fineを算出する。この慣性力Fineの算出は、舟体11の上下方向加速度と等価質量とから求められる。
上記(6)式に基づいて、ステップS4で検出した内力Fbと、ステップS11で算出した舟体11の慣性力Fineと、ステップS10で算出した舟体11の揚力FL1を合算することによりパンタグラフ1の接触力Fcを算出する。
風洞実験又は現車による揚力測定試験により、舟体11の周りの流速(速度)vと舟体に作用する揚力を測定し、これに基づいて舟体11の速度-揚力特性(図4参照)を求める。なお、実施形態と違い、枠体12の速度-揚力特性は取得しない。
車両が走行区間を走行する際の車両速度v0を全走行区間にわたって検出する。
(ステップS103:内力Fbの検出)
車両が走行区間を走行する際の内力Fbを全走行区間にわたって検出する。
(ステップS104:舟体加速度の検出)
車両が走行区間を走行する際の舟体11の上下方向加速度を全走行区間にわたって検出する。
ステップ101で取得した舟体11の速度‐揚力特性と、ステップS102で検出した車両速度v0とから、舟体11の揚力FL1を算出する。
この比較例では、車両流速v0とパンタグラフ10周りの流速vpとが等しいと仮定して、車両流速v0を速度-揚力特性に当てはめて枠体12の揚力値を算出している。したがって、算出された枠体12の揚力値FL1は、パンタグラフ周りの流速変動を無視した値となる。
ステップS5で検出した舟体11の上下方向加速度に基づいて舟体11の慣性力Fineを算出する。
(ステップS107:内力と舟体の慣性力及び揚力との加算による接触力の算出)
上記(6)式に基づいて、ステップS4で検出した内力Fbと、ステップS11で算出した舟体11の慣性力Fineと、ステップS10で算出した舟体11の揚力FL1を合算することによりパンタグラフ1の接触力Fcを算出する。
図7は明かり区間及びトンネル区間を含む走行区間における接触力Fcの波形を示す図である。この図7において、(A)は比較例の接触力算出方法により得られた接触力の波形であり、上段はフィルタ処理後の波形、下段はフィルタ処理前の生波形である。また、(A)は実施形態の接触力算出方法により得られた接触力Fcの波形であり、上段はフィルタ処理後の波形、下段はフィルタ処理前の生波形である。なお、図7の横軸はキロ呈を示している。
したがって、比較例では舟体11の揚力を正しく算出することができないため、トンネル区間においてパンタグラフ1に作用する接触力Fcに誤差が生じてしまう。
風洞実験又は現車による揚力測定試験により、舟体11の周りの流速(速度)と舟体11に作用する揚力を測定し、これに基づいて舟体11の速度-揚力特性(図4参照)を求める。
(ステップS22:枠体の速度-揚力特性取得)
風洞実験又は現車による揚力測定試験により、枠体12の周りの流速(速度)と枠体12に作用する揚力を測定し、これに基づいて枠体12の速度-揚力特性(図4参照)を求める。
車両が走行区間を走行する際の車両速度v0を全走行区間にわたって検出する。
(ステップS24:内力Fbの検出)
車両が走行区間を走行する際の内力Fbを全走行区間にわたって検出する。
(ステップS25:舟体加速度の検出)
車両が走行区間を走行する際の舟体11の上下方向加速度を全走行区間にわたって検出する 。
ステップS22で取得した枠体12の速度‐揚力特性と、ステップS23で検出した車両速度v0とから全走行区間にわたっての枠体12の揚力の理論値FL2cを算出する。
(ステップS27:枠体揚力の実測値FL2rの抽出)
ステップS24で検出した内力Fbから枠体12の揚力の実測値FL2rを抽出する。
トンネル区間か明かり区間かを判別する。この判別は、走行区間を車両が走行した際に検出したトンネル区間、明かり区間の別に基づいて行なってもよいし、明かり/トンネル信号から判別してもよい。
そして、明かり区間である場合にはステップS29に進み、トンネル区間である場合にはステップS30に進む。
明かり区間の場合、パンタグラフ周りの流速vpとして、車両速度v0を採用する。
明かり区間においては、車両速度v0をパンタグラフ周りの流速vpと近似可能であるため、舟体11の揚力FL1を算出するためのパラメータとして車両速度v0を使用しても舟体の揚力FL1を制度高く算出できる。
トンネル区間の場合、ステップS6で算出した枠体12の揚力の理論値FL2cとステップS7で算出した枠体12の揚力の実測値FL2rとから揚力比Cを算出する。
(ステップS31:パンタグラフ周りの流速vpの算出)
ステップ23で取得した車両速度v0と、ステップS30で算出した揚力比Cとからパンタグラフ周りの流速vpを算出する。具体的には、実施形態で説明したように、上記(11)式を用いて算出する。
トンネル区間においては、車両速度v0とパンタグラフ周りの流速vpが異なるため、車両速度v0を直接的に用いて舟体11の揚力FL1を算出することはできない。よって、実施形態と同様に、舟体11の揚力FL1を算出するためのパラメータとして、トンネル内での変動を踏まえた流速vpを用いる。
明かり区間の場合、ステップ21で取得した舟体11の速度‐揚力特性と、ステップS29で決定したパンタグラフ周りの流速vp(=v0)から、全走行区間にわたっての舟体11の揚力FL1を算出する。
トンネル区間の場合、ステップ21で取得した舟体11の速度‐揚力特性と、ステップS31で算出した変動を踏まえたパンタグラフ周りの流速vpから、全走行区間にわたっての舟体11の揚力FL1を算出する。
ステップS25で検出した舟体11の上下方向加速度に基づいて、舟体11の慣性力Fineを算出する。
上記(6)式に基づいて、ステップS24で検出した内力Fbと、ステップS33で算出した舟体1の慣性力Fineと、ステップS32で算出した舟体11の揚力FL1を合算することによりパンタグラフ1の接触力Fcを算出する。
10 パンタグラフ
11 舟体
12 枠体
13 台枠
14 支持碍子
15 復元バネ(第1バネ要素)
Claims (3)
- トロリ線に下方から接触する舟体と、該舟体を車体に対して昇降可能に支持する枠体と、該枠体に対して前記舟体を上方に付勢する第1バネ要素と、前記車体に対して前記枠体を上方に付勢する第2バネ要素とを備えるパンタグラフにおいて、前記トロリ線に対する前記舟体の接触力を算出するパンタグラフの接触力算出方法であって、
走行区間における車両速度、前記第1バネ要素の復元力及び前記舟体の慣性力を検出する工程と、
前記車両速度と予め取得した前記枠体の速度-揚力特性から前記枠体の揚力の理論値を算出する工程と、
前記第1バネ要素の復元力から前記枠体の揚力の実測値を抽出する工程と、
前記枠体の揚力の実測値と前記枠体の揚力の理論値との比である揚力比を算出する工程と、
該揚力比の平方根を前記車両速度に乗算して前記パンタグラフ周りの流速を算出する工程と、
該流速と予め取得した前記舟体の速度‐揚力特性とから前記舟体の揚力を算出する工程と、
該舟体の揚力、前記舟体の慣性力及び前記第1バネ要素の復元力を加算することにより前記舟体の接触力を算出することを特徴とするパンタグラフの接触力算出方法。 - 前記枠体の揚力の実測値を、前記第1バネ要素の復元力から前記第2バネ要素の復元力を減算した後に高周波ノイズを除去することで抽出することを特徴とする請求項1に記載のパンタグラフの接触力算出方法。
- 前記走行区間のうち明かり区間においては、前記車両速度と前記舟体の速度‐揚力特性とから前記舟体の揚力を算出し、
トンネル区間においては、算出した前記パンタグラフ周りの流速と前記舟体の速度‐揚力特性とから前記舟体の揚力を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のパンタグラフの接触力算出方法。
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