JP2007244091A - 接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法 - Google Patents

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Shiyunichi Kusumi
俊一 久須美
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Abstract

【課題】実施するのが容易で、コストの低減を測ることができる接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法を提供する。
【解決手段】接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、車両の走行時のトロリ線からパンタグラフへの接触力と離線を測定しておき、両者のデータを用いてパンタグラフからトロリ線への揚力を推定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法に関するものである。
トロリ線とパンタグラフ間の接触力の大きな変動は安定した集電を阻害する。接触力がゼロに近いと両者の接触が維持できず、アークの発生を誘引して摺動部材の摩耗を促進する。逆に接触力が大きいと摺動部材に機械的なダメージを与える。したがって、トロリ線とパンタグラフの間に作用する接触力を測定、評価することは集電の品質を把握するために非常に重要である。
パンタグラフは、図5に示すように、枠組101と、すり板102が取り付けられた舟体103等から構成されている。また、104は車両(図示なし)の屋根に搭載される支持碍子、105はその支持碍子104上に設けられるフレームであり、このフレーム105上に上記した枠組101が設けられる。この枠組101は、主ばね106、釣り合い棒107、主軸108、下枠109、上枠110、天井管111を備えており、天井管111と舟体103との間に舟支え112が配置されている。
そこで、パンタグラフは主ばね106で静押上力F0 を発生し、すり板102でトロリ線(図示なし)に接触する。このパンタグラフが走行すると、枠組み101や舟体103には風を受けて揚力Fa が発生する。従って、走行中、パンタグラフがトロリ線を押し上げる力Fは、
F=F0 +Fa …(1)
となる。この揚力Fa は速度vの2乗に比例する特性があり、揚力係数をka とすると、揚力Fa は、
a =ka 2 …(2)
で表される。
なお、既に、パンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置を提案している(特許文献1、非特許文献1参照)。
特開2004−301591号公報 久須美 俊一 他「パンタグラフの接触力波形の特徴と電車線診断への適用」,鉄道総研報告 Vol.19,No.7,2005.7,pp.17−22
しかしながら、最近の新幹線では、パンタグラフが低空力音特性を重視した形状になってきているため、揚力が大きくなりやすく、揚力を的確に把握しておく必要がある。また近年測定され始めたパンタグラフとトロリ線間の接触力も、この揚力が把握できていないと正確に算定できない。一般に揚力は走行中に測定することができず、風洞実験や現車による走行試験で求めている。しかし、風洞や現車による揚力測定は時間やコストがかかり、実施するのは容易ではない。
本発明は、上記状況に鑑みて、実施するのが容易で、コストの低減を測ることができる接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、車両の走行時のトロリ線からパンタグラフへの接触力と離線を測定しておき、両者のデータを用いてパンタグラフからトロリ線への揚力を推定することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、前記離線は、Fm −3σ=0(Fm :接触力平均、σ:接触力標準偏差)で発生することにより、離線が発生する箇所の平均接触力Fm (Fm =3σ)を求め、この平均接触力Fm と、速度vからそのときのパンタグラフ揚力Fa を求めることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、前記パンタグラフ揚力Fa と速度vから揚力係数ka (ka =Fa /v2 )を求めることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、前記揚力係数ka を用いることにより、車両の任意の速度におけるパンタグラフ揚力を求めることを特徴とする。
本発明によれば、パンタグラフ揚力の推定を、容易に、かつ低コストで実施することができる。
本発明の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法は、車両の走行時のトロリ線からパンタグラフへの接触力と離線を測定しておき、両者のデータを用いてパンタグラフからトロリ線への揚力を推定する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、トロリ線からパンタグラフへ作用する接触力の算出法について説明する。
図1は本発明の前提を説明するための、舟体に作用する力の釣り合いを示す模式図である。
この図に示すように、パンタグラフ1を、接触力が作用する分系1(舟体)とそれ以外の分系2(枠組)に分割する。トロリ線からパンタグラフ1へ作用する接触力をfc 、分系1と分系2の結合部に作用する鉛直方向の内力をfb 、分系1の鉛直方向慣性力をfine 、分系1に作用する揚力をfL とする。このようにすると分系1に関する力のつり合いから次式が成り立つ。
c =fine +fb +fL …(3)
車両の走行中に測定できるのは上記式(3)の第1項と第2項である。第3項の分系1(舟体)の揚力fL は、前述したように、風洞実験や現車による走行試験等の揚力測定により得られた結果を代入する。
次に、接触力波形について説明する。
図2はトロリ線からパンタグラフへ作用する接触力を測定した際の波形を示す図である。
図2において(A)は走行中に測定した慣性力fine +内力fb の波形であり、上段はフィルタ処理前の生波形であり、下段はフィルタ処理後の波形である。(B)は、風洞実験などで得られた揚力fL を(A)に加えた後の波形であり、これは接触力fc を示している〔式(3)参照〕。
(B)の上段は、フィルタ処理前の生波形であり、下段はフィルタ処理後の波形である。最下段には車両の速度が示されている。
揚力fL を加えていない波形(A)では速度が高くなると平均的に下がっているが、揚力fL を加えた波形(B)ではそうなっていない。前述したように、走行中は、(A)の波形が測定され、風洞実験等の揚力測定結果をこの波形に加算することにより、正しい接触力fc が求まるが、本発明においては、その方法は用いない。
次に、トロリ線からパンタグラフへ作用する接触力分布とパンタグラフの離線率について説明する。
図3にパンタグラフの離線率が0%と28%となった区間(1〜1.5km)の接触力度数分布と、その平均値及び標準偏差から求めた確率密度関数を示す。
なお、図3において、横軸は接触力(N)、縦軸は確率密度,相対度数を示し、図中の点線は度数分布、実線は確率密度関数を示している。
パンタグラフの離線が発生すると、図3(a)に示すように、パンタグラフへ作用する接触力は0になるため本来はマイナスの接触力は発生しない。しかし、図3(b)ではマイナスまで接触力が分布している。これは舟体の弾性振動による精度悪化を避けるため、フィルタ処理を行った結果である。このようにパンタグラフへ作用する接触力は離線の有無に関わらずほぼ正規分布となっていることがわかる。
いま、図3に示したFm −3σに注目する(Fm :接触力平均、σ:接触力標準偏差)。この値がプラスであれば、そのパンタグラフの接触力は99.85%がプラスであるため、ほぼ離線はしていないと判断できる(Fm ±3σは99.7%)。逆にFm −3σがマイナスになると接触力はプラスばかりではないことになり、離線が発生していると考えることができる。そこでFm −3σと離線率を比較した。これを図4に示す。図4において、横軸は速度(km/h)、縦軸はFm −3σ(N),離線率(%)を示している。
図4から明らかなように、離線はFm −3σ<0で発生し、Fm −3σがマイナスに大きくなるほど離線率は増加していることがわかる。
次に、パンタグラフの揚力の推定について説明する。
図4から明らかなように離線が発生するときには
m −3σ=0 …(4)
になると見ることができる。σは、図2に示したように予め得られる測定波形から得られる。よって、離線が発生する箇所の平均接触力は
m =3σ …(5)
として簡単に求めることができる。
以上のことから、離線が発生した時の平均接触力Fm がわかり、この平均接触力Fm と速度を用いて式(1)から、つまり、平均接触力Fm から、予め得られている主ばねによって生じる静押上力F0 を引き算することにより、そのときの揚力Fa が求まる。この揚力Fa と速度vから式(2)を使用して揚力係数ka が求まる。この揚力係数Ka を使用することにより、任意の速度の揚力を求めることができる。
以上のように、トロリ線からパンタグラフへ作用する接触力と離線を測定することで揚力が推定できる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法は、トロリ線とパンタグラフの間に作用する接触力を測定、評価することにより、集電の品質を把握するために利用することができる。
本発明の前提を説明するための、舟体に作用する力の釣り合いを示す模式図である。 トロリ線からパンタグラフへ作用する接触力を測定した際の波形を示す図である。 パンタグラフの離線率が0%と28%となった区間(1〜1.5km)の接触力度数分布と、その平均値及び標準偏差から求めた確率密度関数を示す図である。 m −3σと離線率の速度特性図である。 従来のパンタグラフ(菱形)の構造を示す図である。
符号の説明
1 パンタグラフ

Claims (4)

  1. 車両の走行時のトロリ線からパンタグラフへの接触力と離線を測定しておき、両者のデータを用いてパンタグラフからトロリ線への揚力を推定することを特徴とする接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法。
  2. 請求項1記載の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、前記離線は、Fm −3σ=0(Fm :接触力平均、σ:接触力標準偏差)で発生することにより、離線が発生する箇所の平均接触力Fm (Fm =3σ)を求め、該平均接触力Fm と、速度vからそのときのパンタグラフ揚力Fa を求めることを特徴とする接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法。
  3. 請求項2記載の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、前記パンタグラフ揚力Fa と速度vから揚力係数ka (ka =Fa /v2 )を求めることを特徴とする接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法。
  4. 請求項3記載の接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法において、前記揚力係数ka を用いることにより、車両の任意の速度におけるパンタグラフ揚力を求めることを特徴とする接触力によるパンタグラフ揚力の推定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH09252502A (ja) * 1996-03-18 1997-09-22 Hitachi Ltd 集電装置
JP2004301591A (ja) * 2003-03-31 2004-10-28 Railway Technical Res Inst パンタグラフの接触力測定方法及び接触力測定装置
JP2005312290A (ja) * 2004-03-24 2005-11-04 Railway Technical Res Inst 集電装置の揚力制御構造

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