JP2011241361A - ポリエチレン微多孔膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空孔率78〜93%、厚さ5〜50μm、表面の平均開孔率が10〜40%、および断面の平均孔面積が0.05〜1.0μm2であることを特徴とするポリエチレン微多孔膜。ポリエチレン組成物の揮発性溶剤による調整、溶融混練、押し出し冷却固化、一次延伸、溶剤乾燥、二次延伸により得られる。
【選択図】なし
Description
現在使用されるイオン交換膜は、通常厚さ50〜200μmであり、特にスルホン酸基を含有するパーフルオロカーボン重合体が、基本特性に優れるため広く検討されている。しかし、高出力密度を得るためには、現在のイオン交換膜は抵抗が充分には低くなく、スルホン酸基濃度を増加する方法や膜厚を薄くする方法がとられている。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、表面の平均開孔率が10〜40%であり、断面の平均孔面積が0.05〜1.0μm2であることを特徴とするものである。
表面の平均開孔率は好ましくは10〜35%であり、さらに好ましくは、10〜30%である。また、断面の平均孔面積は好ましくは0.05〜0.8μm2である。
本発明のポリエチレン微多孔膜において、空孔率(ε)は、ポリエチレン微多孔膜の目付け(g/m2)、真密度(g/cm3)、膜厚(μm)より下記式により算出する。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここで、Wsは目付け(g/m2)、dsはポリエチレンの真密度(g/cm3)、tは膜厚(μm)である。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、薄くても強度に優れることを特徴とし、ポリエチレン微多孔膜の厚さが5〜50μmにおいて好適に用いることができ、好ましくは9〜40μm、さらに好ましくは12〜35μmである。ポリエチレン微多孔膜の厚さが50μmを超えると、イオン交換性能が低下する。一方、厚さが5μmより薄いと力学強度が不十分となり、ポリエチレン微多孔膜の加工時等におけるハンドリング性が低下する。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、1μmル厚みあたりの100cc空気透過時間が1.0秒以下であることが好ましく、0.8秒以下であることがさらに好ましい。1マイクロメートル厚みあたりの100cc空気透過時間が1.0秒を超えると、ポリエチレン微多孔膜へのイオン交換樹脂の含浸時間を長く要するため、工業的な成型において問題を有するため好ましくない。
ポリエチレン微多孔膜を100ccの空気が透過するために要する時間が10秒を超えるとポリエチレン微多孔膜へのイオン交換樹脂の含浸時間を長く要するため好ましくない。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、少なくとも一方向の引張強度が5MPa〜25MPaであることが好ましく、5MPa〜20MPaであることがさらに好ましい。ポリエチレン微多孔膜の強度が5MPaより低いとイオン交換樹脂膜の力学強度が不十分となりハンドリング性が低下する。一方、ポリエチレン微多孔膜の強度を25MPaより高くすると、ポリエチレン微多孔膜そのものの製膜が困難になるため好ましくない。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜である。本発明に用いられるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンや、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物等が好適である。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、(I)重量平均分子量が6×105以上の超高分子量ポリエチレンを1重量%以上含むポリエチレン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調整し、(II)これを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し冷却固化してゲル状成形物を得て、(III)ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し、(IV)一次延伸後あるいは一次延伸と同時に溶剤の乾燥を行い、残存溶媒量が5〜30重量%の一次延伸成形物を得て、(V)一次延伸成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程により好ましく製造することができる。
延伸は、乾燥を制御し、溶剤を好適な状態に残存させた状態で行うことが出来る。
ここで工程(V)の二次延伸工程は、二軸延伸が好ましく、縦延伸、横延伸を別々に実施する逐次二軸延伸、縦延伸、横延伸を同時に実施する同時二軸延伸、いずれの方法も好適に用いることが可能である。また縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する方法、縦方向に延伸し横方向に複数回延伸する方法、逐次二軸延伸した後にさらに、縦方向および/または横方向に1回もしくは複数回延伸する方法も好ましい。
この製法により、従来の方法では、ゲル状組成物からの溶剤除去時の脱溶剤に伴い収縮していたポリエチレン組成物を、クエンチ時に形成した空孔を維持したまま、あるいは、形成した空孔を成長させながら縦方向および横方向に二軸延伸を行うことができるため高空孔率のポリエチレン微多孔膜を提供することが可能になる。
上記のような物性から本発明のポリエチレン微多孔膜は、特定の多孔構造をもち、薄膜でありながら高強度であり、かつイオン交換特性を保持できる補強材として好適である。固体高分子型燃料電池の構成部材であるプロトン伝導性ポリマーからなる電解質膜における、電解質膜の性能低下を抑えながら、強度付与を実現するポリエチレン微多孔膜として優れた特性を有する。
(1)目付け
サンプルを10cm×10cmに切り出し重量を測定する。この重量を面積で割ることにより1m2当たりの重量である目付けを求めた。
接触式の膜厚計(ミツトヨ社製 ライトマチックVL−50)にて20点測定し、これを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。
空孔率εは以下の式から算出した。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここで、Wsは坪量(g/m2)、dsはポリエチレンの真密度(g/cm3)、tは膜厚(μm)である。
空気透過時間および1μm厚みあたりの100cc空気透過時間τは以下のように求めた。
JIS P8117に従ってポリエチレン微多孔膜の空気透過時間(秒/100cc)Tを測定した。
上記の空気透過時間と膜厚みから下記式により1μm厚みあたりの100cc空気透過時間を求めた
τ = T/t
ここで、TはJIS P8117に従い測定した空気透過時間(秒/100cc)、tは膜厚(μm)である。
引張試験機(オリエンテック社製 RTE−1210)にて、短冊状の試験片(幅15mm、長さ50mm)を 200mm/分の速度で引っ張り、引張強度を求めた。
ポリエチレン試料をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、GPC(Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム;GMH6−HTおよびGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定を行った。
平均開孔率は以下のように算出した。
ポリエチレン微多孔膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて所定の倍率(1000倍〜25000倍)で撮影した。得られた撮影画像をコントラストの最大強度255に対して閾値175を設定して二値化を行った。二値化した画像の画像解析から開孔部分の総面積を求め、観測面積全体に占める比率の平均値を算出し、平均開孔率とした。
平均孔面積は以下のように算出した。
ポリエチレン微多孔膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて所定の倍率(1000倍〜25000倍)で撮影した。得られた撮影画像をコントラストの最大強度255に対して閾値175を設定して二値化を行った。二値化した画像の画像解析により、所定の範囲に存在する開孔数および開孔部分の総面積を求め、総面積を開孔数で除して平均孔面積とした。
ポリエチレン樹脂として、GUR(登録商標)2126(Ticona社製、重量平均分子量460万)とGUR(登録商標)X143(Ticona社製、重量平均分子量56万)を用いた。GUR2126とGURX143を1:9の重量比にて配合し、ポリエチレン樹脂総量の濃度が30重量%となるようにしてデカリン(新日鐵化学製;デカヒドロナフタレン)と混合し、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で冷却し、ゲル状シートを作製した。
該ゲル状シートを70℃の温度雰囲気下にて20分間、予備乾燥を行い、その後、室温下で長手方向に1.5倍で(III)の一次延伸をした後に、本乾燥を60℃の温度雰囲気下にて5分間行った。本乾燥後の一次延伸成形物中に残存する溶剤は20重量%であった。本乾燥を完了した後、(V)の二次延伸として該一次延伸成形物を長手方向に温度100℃にて倍率5.5倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度125℃にて倍率13倍で延伸し、その後直ちに120℃で熱処理(熱固定)を行って、二軸延伸ポリエチレン微多孔膜を得た。得られたポリエチレン微多孔膜は好適な多孔構造(表面の平均開孔率、断面の平均孔面積、空孔率)を有し、ハンドリング性にも優れた基材であった。
得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
実施例1において、GUR2126とGURX143を3:7の重量比にて配合し、ポリエチレン樹脂総量の濃度が30重量%となるようにデカリンと混合し、ポリエチレン溶液を調製した以外は同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、強度にも優れ、ハンドリング性に優れた基材であった。
実施例1において、ベーステープの予備乾燥後の一次延伸を長手方向に1.2倍で行った以外は同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、多孔構造、ハンドリング性ともに好適な基材であった。
実施例1において、GUR2126とGURX143を1:9の重量比にて配合し、ポリエチレン樹脂総量の濃度が20重量%となるようにデカリンと混合し、ポリエチレン溶液を調製した以外は同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、多孔構造、ハンドリング性ともに好適な基材であった。
実施例1において、(V)の二次延伸工程での縦方向の延伸倍率を4倍、横方向の延伸倍率を11倍とした以外は同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、多孔構造、ハンドリング性ともに好適な基材であった。
実施例1において、熱処理(熱固定)温度を135℃とした以外は同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、多孔構造、ハンドリング性ともに好適な基材であった。
市販のポリエチレン微多孔膜 ソルポア(登録商標)(品番;7P03A)の物性を表1に示す。
ソルポアは、表面の平均開孔率および断面の平均孔面積ともに好適な範囲を超えた基材であり、イオン交換樹脂膜としてハンドリング性が悪く適さなかった。
実施例2において、ゲル状シートの予備乾燥および(III)の一次延伸を行わなかった以外は同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
得られたポリエチレン微多孔膜は、表面の平均開孔率および断面の平均孔面積が低い基材であり、イオン交換樹性能が不足し適さなかった。
ポリエチレン樹脂として、GUR2126(Ticona社製、重量平均分子量460万)とGURX143(Ticona社製、重量平均分子量56万)を用いた。GUR2126とGURX143を3:7の重量比にて配合し、ポリエチレン樹脂総量の濃度が30重量%となるようにしてデカリン(新日鐵化学製;デカヒドロナフタレン)2重量%およびパラフィン(松村石油研究所;スモイルP−350P)68重量%と混合し、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液から実施例1と同様にして、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。
該ベーステープの予備乾燥および(III)の一次延伸を行わずに、60℃の温度雰囲気下にて20分間、本乾燥を行った後、(V)の二次延伸および熱固定を実施例1と同様に行い、続いて、フィルム中に残存するパラフィンを洗浄溶媒に浸漬して除去した後に120℃の温度下にて加熱乾燥を施し、二軸延伸ポリエチレン微多孔膜を得た。
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、表面の平均開孔率および断面の平均孔面積が低い基材であり、イオン交換性能が不足し、イオン交換樹脂膜としてハンドリング性が悪く適さなかった。得られたポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。
Claims (8)
- 空孔率78〜93%、厚さ5〜50μm、表面の平均開孔率が10〜40%、および断面の平均孔面積が0.05〜1.0μm2であることを特徴とするポリエチレン微多孔膜。
- 1μm厚みあたりの100cc空気透過時間が1秒以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン微多孔膜。
- 少なくとも一方向の引張強度が5〜25MPaであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン微多孔膜。
- 該微多孔膜の100cc空気透過時間が10秒以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン微多孔膜。
- 重量平均分子量が6×105以上の超高分子量ポリエチレンを1重量%以上含むポリエチレン組成物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエチレン微多孔膜。
- 燃料電池の電解質を保持するために用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエチレン微多孔膜。
- (I)重量平均分子量が6×105以上の超高分子量ポリエチレンを1重量%以上含むポリエチレン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調整し、(II)これを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し冷却固化してゲル状成形物を得て、(III)ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し、(IV)一次延伸後あるいは一次延伸と同時に溶剤の乾燥を行い、残存溶媒量が5〜30重量%の一次延伸成形物を得て、(V)一次延伸成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエチレン微多孔膜の製造方法。
- 一次延伸における延伸倍率が1.1〜3倍であることを特徴とする請求項7に記載のポリエチレン微多孔膜の製造方法。
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