JP2011229439A - 微生物培養添加剤 - Google Patents

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【課題】微生物が高効率で発酵可能な栄養源を提供することを目的とする
【解決手段】微生物培養用の添加剤に、藻類に含まれる成分の全て、又は一部を含有する。藻類に含まれる成分を微生物の栄養源として利用することで、微生物培養において高効率で微生物発酵を誘起することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、藻類に含まれる成分を含有する微生物培養用の添加剤と、その製造方法、及びその添加剤を用いた有用物質の生産方法に関する。
近年、微生物による発酵を利用して有機化合物からバイオ燃料を製造する方法が検討されている。微生物を培養して増殖するためには、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ビタミン等の栄養物質が必要であり、こうした微生物の栄養源として、通常、酵母エキスや ペプトンが培養添加剤として使用される。しかしながら、酵母エキスは高価であるため、工業的に利用することが困難である。そこで、微生物の発酵に必要な酵母エキスを削減するために、大豆、ホエー、魚廃棄物、コーンスティープリカー等のタンパク質廃棄物を発酵栄養源として利用する方法が開発されている(非特許文献1〜7)。
Pauli T, Fitzpatrick J.J., Process Biochemistry, 2002年, 38巻, 1-6頁 Hsieh,,Chienyan Mark, Process Biochemistry, 1999年, 34巻 Sunhoon Kwon, Pyung Cheon Lee, Eun Gyo Lee, Yong Keun Chang and Nam Chang, Enzyme and Microbial Technology, 2000年, 26巻, 209-215頁 Celina B. Martone, OlindaPerez Borla and Jorge J. Sanchez Bioresource Technology, 2005年, 96巻, 383-387頁 Beatriz Rivas, Ana B. Moldes, Jose M. Dominguez and Juan C. Parajo, International Journal of Food Microbiology, 2004年, 97巻, 93-98頁 J. J. Fitzpatrick, C. Murphy, F. M. Mota and T. Pauli, International Dairy Journal, 2003年, 13巻, 575-580頁 Gao MT, Hirata M, Toorisaka E, and Hano T., Bioresour Technol., 2006年, 15巻, 2414-2420頁
しかしながら、タンパク質廃棄物を高い発酵効率を得る添加剤とするためには、酵素や酸による加水分解処理が必要となることがわかってきている。
以上のように、微生物培養用の添加剤として利用可能なタンパク質廃棄物が各種検討されてきた結果、微生物の栄養源としては一定の成果はあった。しかしながら、上記のいずれの方法によっても、添加剤の生産コストを下げることが困難で、しかも、微生物発酵の効率は、酵母エキスに比べて大きく劣ることがわかった。そのため、効率的に生産できるとともに、酵母エキスと同等の発酵効率を発揮可能な添加剤が求められていた。
そこで、本発明は、微生物が高効率で発酵可能な培養添加剤を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、こうした微生物の培養添加剤の生産方法を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、こうした微生物の培養添加剤を利用した有用物質の生産方法を提供することを他の一つの目的とする。
上述した課題に鑑みて、本発明者らは、微生物発酵において酵母エキスと同等の発酵効率を発揮可能な培養添加剤を検討した。その結果、培養が容易で、微生物の発酵に必要とされるタンパク質が豊富に含まれ、且つ食料と競合しない「藻類」を微生物培養用の添加剤として利用することで、酵母エキスに匹敵する微生物の発酵効率が得られるという知見を得て、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明によれば、藻類に含まれる成分の全て、又は一部を含有する、微生物培養用の添加剤が提供される。
上記の藻類は、微細藻を用いることができる。また、上記の藻類は、タンパク質含量が20質量%以上の藻類を用いることができる。さらに、上記の藻類は、Pseudochoricystis属に属する藻類を用いることができ、なかでも、Pseudochoricystis ellipsoideaを用いることができる。
また、本発明の微生物培養用の添加剤には、上記の藻類の加水分解処理物を含有してもよい。上記の加水分解処理物をカルシウム塩で処理して得られる上清を含有してもよい。
本発明の微生物培養添加剤の製造方法によれば、藻類を加水分解する工程を備えることができる。上記の藻類を加水分解する工程の後に、カルシウム塩で処理する工程をさらに備えてもよい。本工程によって、藻類の固形成分と上清を分離することができる。また、上記の添加剤を培地に添加して、微生物を培養することができる。
本発明の有用物質の生産方法によれば、上記の添加剤を培地に添加して、微生物発酵する工程を備えることができる。上記の微生物発酵には、乳酸菌、及び/又は、酵母の発酵を用いることができる。上記の乳酸菌には、Lactococcus属の株菌に属する乳酸菌を用いることができる。
上記のLactococcus属の株菌に属する乳酸菌には、Lactococcus lactisを用いることができる。
上記の酵母には、Saccharomyces属の株菌に属する酵母を用いることができる。上記のSaccharomyces属の株菌に属する酵母には、Saccharomyces cerevisiaeを用いることができる。
実施例1の藻類の加水分解処理条件による発酵効率の変化を示す図である。 実施例2と比較例との乳酸発酵量を比較した図である。 実施例3と比較例とのエタノール発酵量を比較した図である。 実施例4の藻類のオイル抽出残渣を発酵栄養源とした場合の乳酸とエタノールの生成量を示す図である。
本明細書の開示は、藻類に含まれる成分を含有する微生物培養用の添加剤とその製造方法に関する。本発明によれば、藻類に含まれる全て、又は一部の成分を微生物培養用の添加剤として用いる。藻類には、タンパク質や糖類をはじめとする栄養素が含まれており、これらの成分を微生物の栄養源として利用することができる。また、上記の添加剤を、発酵能を有する微生物の培養の栄養源として利用することで、微生物発酵を促進させることができる。このときの微生物の発酵効率は、酵母エキスに匹敵する高い発酵効率を発揮することができる。そのため、微生物培養に用いる酵母エキスの量を減量することができ、培地にかかるコストを抑えることができる。また、本明細書の開示によれば、乳酸菌、及び/又は、酵母の発酵栄養源に藻類を用いることができる。そのため、藻類を栄養源として、乳酸をはじめとする有機酸や、エタノール等の有用物質を製造することができる。さらに、藻類を微生物培養の栄養源として用いても、食料と競合しないため、微生物の大量培養を行うことができる。これにより、微生物発酵によって大量の有用物質を製造することができる。また、藻類は、繁殖能が高いために培養しやすく、安価かつ人体に対して安全であるため、容易に利用することができる。
また、本明細書の開示は、微生物培養用の添加剤の製造方法に関する。本発明に開示される微生物培養用の添加剤の製造方法は、藻類を加水分解する工程を有している。この加水分解工程によって、藻類から、タンパク質や糖類をはじめとする、微生物培養の栄養源となる成分を得ることができる。さらに、本発明に開示される微生物培養用の添加剤の製造方法は、藻類を加水分解した後に、カルシウム塩で処理する工程をさらに備えている。本工程によって、藻類に含まれている固形成分を除去することができる。これにより、微生物発酵の効率のよい添加剤を得ることができる。
さらに、本明細書の開示は、上記の添加剤を培地に添加して微生物を培養する方法に関する。藻類に含まれる全て、又は一部の成分を、微生物培養用の培地に添加することによって、栄養下で微生物を培養することができるようになる。
また、本明細書の開示は、上記の添加剤を培地に添加して有用物質を生産する方法に関する。本発明に開示される有用物質の生産方法は、上記の添加剤を培地に添加して、微生物発酵する工程を有している。藻類に含まれる全て、又は一部の成分を、微生物培養用の培地に添加し、この培地で発酵能を有する微生物を培養することで、栄養下で微生物発酵することができるようになる。微生物発酵により、有用物質を生産することができる。また、こうした微生物発酵には、乳酸菌、及び/又は、酵母の発酵を用いることができる。これにより、乳酸をはじめとする有機酸や、アルコールなどの有用物質を得ることができる。
以下、本明細書の開示を実施する形態につき詳細に説明する。
(微生物培養用の添加剤)
本明細書に開示される微生物培養添加剤は、藻類に含まれる成分の全て、又は一部の成分を微生物培養の栄養源として含有することができる。微生物培養の栄養源の原料は、藻類に含まれる成分の全て、又は一部の成分を含有している。
本明細書において、「藻類」とは、酸素発生型光合成を行う生物をいう。特に、藻類は、酸素発生型光合成を行う生物のうち、地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものをいう。藻類には、真正細菌の藻類と、真核生物の藻類が含まれる。真正細菌の藻類としては、例えば藍色植物門(Cyanophyta:藍藻類)が含まれる。藍色植物門に属する藻類には、クロオコッカス目(Chroococcales)、プレウロカプサ目(Pleurocapsales)、ユレモ目(Oscillatoriales)、ネンジュモ目(Nostocales)、スティゴネマ目(Stigonematales)、グロエオバクター目(Gloeobacterales)が挙げられる。また、真核生物に属する藻類としては、アーケプラスチダ(Archaeplastida)、クロムアルベオラータ(Chromalveolata)、アルベオラータ(Alveolata)、クロムアルベオラータ(Chromalveolata)アルベオラータ(Alveolata)、エクスカバータ(Excavata)、リザリア(Rhizaria)等が挙げられる。アーケプラスチダには、灰色植物門(Glaucophyta)、紅色植物門(Rhodophyta:紅藻)、緑色植物門(Chlorophyta)等が含まれ、緑色植物門には、緑藻綱(Chlorophyceae)、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、トレボウクシア藻綱(Trebouxiophyceae)、アオサ藻綱(Ulvophyceae)、車軸藻綱(Charophyceae)等が含まれる。また、緑藻綱には、クラミドモナス目(Chlamydomonadales)、オオヒゲマワリ目(Volvocales : オオヒゲマワリなど)、クロロコックム目(Chlorococcales : クンショウモなど)、ヨコワミドロ目(Sphaeropleales :アミミドロなど)、サヤミドロ目(Oedogoniales)、ヨツメモ目(Tetrasporales)、カエトフォラ目(Chaetophorales)、カエトペルチス目(Chaetopeltidales)等が含まれ、車軸藻綱には、シャジクモ目(Charales)、コレオカエテ目(Coleochaetales)、ホシミドロ目(Zygnematales)、接合藻類(Gamophyceae)、クロロキブス目(Chlorokybales)、クレブソルミディウム目(Klebsormidiales)等が含まれる。クロムアルベオラータ、及びクロミスタには、クリプト植物門(Cryptophyta:クリプト藻)、ハプト植物門(Haptophyta:ハプト藻)、不等毛植物門(Heterokontophyta)等が含まれ、不等毛植物門には、褐藻綱(Phaeophyceae)、珪藻綱(Bacillariophyceae)、黄金色藻綱(Chrysophyceae)、ラフィド藻綱(Raphidophyceae)、黄緑藻綱(Xanthophyceae)、真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)、ペラゴ藻綱(Pelagophyceae)、ディクチオカ藻綱(Dictyochophyceae)、珪質鞭毛藻(Silicoflagellates)、パルマ藻綱(Parmophyceae)、ピングイオ藻綱(Pinguiophyceae)、ボリド藻綱(Bolidophyceae)、シゾクラディア藻綱(Schizocladiophyceae)、クリソメリス藻綱(Chrysomerophyceae)、ファエオタムニオン藻綱(Phaeothamniophyceae)等が含まれる。さらに、クロムアルベオラータ、及びアルベオラータには、渦鞭毛植物門(Dinophyta:渦鞭毛藻)等が含まれ、エクスカバータには、ユーグレナ植物門(Euglenophyta:ミドリムシ植物)等が含まれ、リザリアには、ケルコゾア門(Cercozoa)、クロララクニオン植物門(Chlorarachniophyta)が含まれる。また、藻類には、上記の分類以外に、トレボウクシア藻綱に属するコルシスチス(choricystis)と形態的に類似しているシュードコルシスチス(pseudochoricystis)等が含まれる。
特に上記の藻類のうち、顕微鏡サイズの藻類を「微細藻」と呼ぶ。微細藻には、上記の藻類のうち、藍色植物門、灰色植物門、紅色植物門、クリプト植物門、緑色植物門、不等毛植物門、渦鞭毛植物門、ユーグレナ植物門、ケルコゾア門、pseudochoricystis等が挙げられる。微細藻を微生物培養の栄養として用いることができる。特に、微生物の増殖、及び代謝には、タンパク質が必要とされるため、タンパク質が豊富に含まれている藻類を微生物の栄養源として用いることが好ましい。
好適には、タンパク質含量が20質量%以上である藻類が好ましい。こうした微生物の栄養源となる藻類には、pseudochoricystis属に属する藻類を好適に利用することができる。より好適には、pseudochoricystis属に属するシュードコルシスチスエリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea:オイル産生藻)を微生物の栄養源として利用することができる。Pseudochoricystis ellipsoideaは、タンパク質が約30質量%含まれていると共に、アミノ酸、グルコースをはじめとする糖類、油脂を含んでおり、これらの成分が微生物発酵の栄養源となり得る。特に、オイル産生藻によって産生されるオイルもまた、微生物発酵の栄養源となり得る。
なお、本培養添加剤に用いる藻類は、超純水で調製された藻体懸濁液として利用することができる。藻体懸濁液、及び/又は、藻体懸濁液の加水分解処理物を添加した発酵用培地を用いて、微生物を25〜38℃で培養することで、効率的に微生物を増殖させることができる。こうした微生物の培養温度は、微生物の種類に応じて、適宜適した温度に設定することで、効率的に微生物を増殖させることができる。
本添加剤は、藻類の成分(菌体成分及び代謝物)の全て又はその一部を含んでいる。藻類の成分の全てを含む添加剤は、藻類の全体を原料として利用することで得られる。例えば、藻類全体に対して、乾燥や粉砕等を施したものが挙げられる。あるいは藻類全体を原料として利用して加水分解処理等の加工処置後の処理物全体を用いるものが挙げられる。こうした加工処理については後段で説明する。
藻類の成分の一部を含む添加剤は、藻類に対して、成分抽出処理、加水分解処理及び精製処理などの各種処理を1又は2以上施して得られる画分の一部を用いるものが挙げられる。酸による藻類の加水分解方法としては、2%〜6%の酸(硫酸や塩酸、硝酸等)を添加し、加熱条件下(例えば、100〜140℃程度)で行うことができる。
成分抽出処理としては、オイル産生藻類に対するオイル抽出処理が挙げられる。オイル抽出処理は、例えば、藻類を加水分解した後に得られる加水分解処理物を含む藻体懸濁液から、オイルを抽出する工程として実施される。本工程では、藻体懸濁液に含まれるオイル、もしくは藻類によって産生したオイル成分と、加水分解された藻類の残渣とが分離される。オイルの抽出方法としては、藻体懸濁液に脂溶性溶媒を添加し、脂溶性溶媒中に抽出する方法を採ることができる。このような脂溶性溶媒としては、脂肪を溶解し得る溶媒であれば、いずれの溶媒も使用することができる。脂溶性溶媒としては、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、ステアリン酸ブチル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、フラン、ジベンゾフラン、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルムなどが挙げられる。また、オイル成分が包含された脂溶性溶媒と、それ以外の成分とを効率的に分離するために、更に親水性溶媒を添加してもよい。親水性溶媒としては、脂溶性溶媒と層分離が可能な溶媒であって、例えば脂溶性溶媒としては、アセトニトリル、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチルが挙げられる。藻類に含まれるオイル成分を脂溶性溶媒に抽出した後に遠心分離することによって、脂溶性媒体と加水分解された藻類の残渣とを分離することができる。こうしたオイルは、それ自体がバイオ燃料として利用可能である。また、こうしたオイル抽出処理後の残渣(主として菌体や水溶性成分を含む)も有効な添加剤となる。さらに、こうしたオイル抽出処理後の残渣の加水分解処理物も有効な添加剤となる。
また、加工処理としては、加水分解処理が挙げられる。藻類を加水分解処理することで、藻類に含まれるタンパク質や糖類等の成分を低分子化できるため、発酵が促進されやすい。加水分解処理は、典型的には酵素加水分解、酸又はアルカリの存在下において、藻類の全体を処理する。好ましくは、酸又はアルカリによる加水分解処理である。酸又はアルカリは、入手が容易で、かつ低コストであるためである。より好ましくは、酸を用いた加水分解は、藻類に豊富なカルシウムの分離ができるため、有効である。加水分解処理物は、典型的には、水相に不溶な残渣を除去した、主として水相溶解物を回収することによって得ることができる。
さらに、藻類の加水分解処理物をカルシウム塩で処理して得られる上清を用いることが好ましい。カルシウム塩で加水分解処理物を処理することで、藻類に含まれるアルギン酸をゲル状のアルギン酸カルシウムとすることができる。さらに、この加水分解処理物を、遠心分離にかけることによって、アルギン酸カルシウムが沈殿し、上清の液体を分離することができる。この上清には、糖類やタンパク質等の成分が含まれており、微生物培養用の添加剤に利用することができる。なお、藻類に対する各種処理については、後段で詳細に説明する。
また、本明細書において、「微生物」とは、微小な生物をいう。微生物には、菌類、古細菌、細菌類、藻類、原生生物、粘菌等が挙げられる。菌類としては、キノコ、カビ、酵母(yeast)が挙げられ、さらに酵母としては、出芽酵母(Saccharomyces)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ(Candida albicans)、アルカン資化酵母(Yarrowia lipolytica)、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)、メタノール資化酵母(Hansenula polymorpha)、キラー酵母(Kluyveromyces lactis)が挙げられる。出芽酵母には、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母、ワイン酵母等が含まれる。また、古細菌には、メタン菌等が挙げられる。
また、細菌類としては、アクチノバクテリア門、フィルミクテス門(グラム陽性菌)、プロテオバクテリア門、バクテロイデス-フラボバクテリウム類、デイノコックス-サーマス門、プランクトミセス、クラミジア、スピロヘータ類、クロロビウム門(緑色硫黄細菌)、クロロフレクサス門(緑色非硫黄細菌)、シアノバクテリア門(藍藻)等が挙げられる。さらに、アクチノバクテリア門には、アシドマイクロビウム目を含むアシドマイクロビウム亜綱、ルブロバクター目を含むルブロバクター亜綱、コリオバクター目を含むコリオバクター亜綱、アクチノマイセス目、及びビフィドバクテリウム目を含むアクチノバクテリア亜綱、放線菌目(Streptomyces griseus:ストレプトマイシン生産菌)、ミコール酸含有放線菌群(Corynebacterium diphteriae:ジフテリア菌、Mycobacterium tuberculosis:結核菌)、放線細菌(Bifidobacterium:乳酸菌(ビフィズス菌))、プロピオニバクテイア亜門(Propionibacterium acnes)等を含むアクチノバクテリア綱等が挙げられる。また、フィルミクテス門には、無胞子桿菌(Lactobacillus:乳酸菌(乳酸桿菌))、内生胞子形成桿菌および球菌(Bacillus subtilis:枯草菌、B. subtilis subsp. natto:納豆菌、B. anthracis:炭疽菌、B. cereus:セレウス菌)、無胞子球菌(Staphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌、Streptococcus thermophilus:サーモフィルス菌)、リステリア科(Listeria monocytogenes:リステリア症の原因菌)を含むバチルス綱、クロストリジア目(Clostridium tetani:破傷風菌、Clostridium botulinum:ボツリヌス菌、Clostridium perfringens:ウェルシュ菌)、ハルアナエロビア目、サーモアナエロバクテリア目を含むクロストリジア綱(嫌気性グラム陽性有胞子桿菌)、グラム陽性低GC含量光合成細菌、マイコプラズマ類を含むモーリキューテス綱が挙げられる。プロテオバクテリア門には、好気性グラム陰性桿菌および球菌(Rhizobium:根粒菌、Agrobacterium:根頭癌腫病菌)、通性嫌気性グラム陰性桿菌、出芽細菌、紅色非硫黄細菌I、リケッチア目(Orientia tsutsugamushi:ツツガムシ病リケッチア)を含むαプロテオバクテリア綱、グラム陰性好気性桿菌または球菌、有鞘細菌、アンモニア酸化細菌、紅色非硫黄細菌II、ナイセリア目(Neisseria gonorrhoeae:淋菌)を含むβプロテオバクテリア綱、好気性桿菌または球菌(Azotobacter:窒素固定菌)、(Pseudomonas aerginosa:緑膿菌、Thiobacillus ferroxidans:鉄酸化細菌、Yersinia pestis:ペスト菌、Legionella pneumophila:レジオネラ菌)腸内細菌科(Escherichia coli:大腸菌、Salmonella typhi:チフス菌、Shigella dysenteriae:志賀赤痢菌、Vibrio cholerae:コレラ菌、V. parahaemolyticus:腸炎ビブリオ)、紅色硫黄細菌、滑走細菌を含むγプロテオバクテリア綱、粘液細菌、硫酸還元細菌、鉄還元細菌を含むδプロテオバクテリア綱、Campylobacter、Wolinella等を含むεプロテオバクテリア綱等が挙げられる。また、デイノコックス-サーマス門としては、耐放射性細菌(Deinococcus radiodurans)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)が挙げられる。プランクトミセス、及びクラミジアには、出芽細菌、クラミジア目(Chlamydia trachomatis:トラコーマクラミジア)が挙げられる。スピロヘータ類としては、スピロヘータ目(Treponema pallidum:梅毒トレポネマ)が挙げられる。さらに、シアノバクテリア門(藍藻)には、クロオコッカス目(Microcystis:アオコ)、プレウロカプサ目、ユレモ目、ネンジュモ目(Nostoc:ネンジュモ、Anabaena:アナベナ藻)、スティゴネマ目、プロクロロン目等が挙げられる。なお、こうした生物学的分類とは別に、細菌類には、代謝により乳酸を生成する乳酸菌が含まれる。乳酸菌には、ラクトバシラス属 (Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)、エンテロコッカス属 (Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属 (Leuconostoc)が挙げられる。こうした各種の藻類の画分は当業者であれば適宜公知技術を参照して取得することができる。
特に、上記の微生物のうち、培養対象とする微生物は、発酵能を備えた発酵微生物であることが好ましい。例えば、発酵微生物は、エタノールをはじめとするアルコール発酵や、乳酸をはじめとする有機酸発酵、又は、メタン発酵等の能力を備える微生物であることが好ましい。好適には、発酵微生物として、乳酸菌、及び酵母が挙げられる。より好適には、Lactococcusに属する乳酸菌、及び、Saccharomycesに属する乳酸菌を培養対象とすることが好ましい。特に好適な乳酸菌はLactococcus latisであり、好適な酵母はSaccharomyces cerevisiaeである。こうした乳酸菌、及び酵母の培養に、藻類に含まれるタンパク質やグルコース等の糖類等を栄養源として利用することで、乳酸発酵及び、アルコール発酵が進行し、乳酸をはじめとする有機酸や、エタノールをはじめとするアルコールなどの、各種有用物質を得ることができる。
(培養添加剤の製造方法)
本明細書に開示される培養添加剤の生産方法は、藻類の加水分解工程を備えることができる。なお、藻類は、藻類の加水分解工程に先立って、既に説明した方法により藻類を培養することにより、取得することができる。
(藻類を加水分解する工程)
本明細書に開示される添加剤の製造方法は、藻類を加水分解する工程を備えることができる。本工程では、藻類に加水分解処理を実施する。本明細書において、「加水分解」とは、水との反応によって物質を分解する反応をいう。藻類を加水分解することで、藻類の生育を停止させると共に、藻類に含まれるセルロースを糖(グルコース等の単糖及び少糖)に分解することができる。このような藻類の加水分解物に含まれる糖類もまた、微生物の栄養源とすることができる。
加水分解の方法には、薬品による加水分解や、酵素(ヒドロラーゼ)による加水分解、熱水による加水分解、ホモジナイズによる加水分解等が挙げられる。例えば、加水分解に用いることができる薬品には、塩酸、硫酸、及び硝酸等の強酸などの酸、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等の強塩基などのアルカリからなる群から選択される公知の薬品を用いることができる。また、加水分解に用いることができる酵素には、エステル加水分解酵素、カルボン酸エステル加水分解酵素、リン酸エステル加水分解酵素、リン酸ジエステル加水分解酵素等の、公知の加水分解酵素を用いることができる。さらに、熱水による加水分解としては、加圧熱水処理等の、公知の超臨界水法、又は熱水加水分解処理法を用いることができる。こうした加水分解処理の方法は当業者であれば適宜公知技術を参照して採用することができる。本工程によって、藻類に含まれる、タンパク質や糖類をはじめとする栄養成分を抽出することができる。本方法においては、省エネルギー、低コストの観点から、希硫酸による加水分解工程を実施するのが好ましい。
(カルシウム塩で処理する工程)
本明細書に開示される添加剤の製造方法は、上記の藻類を加水分解する工程の後に、カルシウム塩で処理する工程をさらに備えることができる。本工程では、藻類を加水分解した後にカルシウム塩を加えることで、藻類に含まれているアルギン酸がアルギン酸カルシウムとなる。アルギン酸カルシウムはカルシウムイオンによって架橋することによって、ゲル状になる。さらに遠心処理することで、アルギン酸カルシウムと藻類に含まれる固形成分の沈殿物と、藻類に含まれるタンパク質や糖類等の成分の上清とに分離することができる。これにより、藻類に含まれるタンパク質や糖類をはじめとする成分を得ることができる。また、加水分解処理によって生じた不純物や有害物質をアルギン酸カルシウムに吸着させて、除去することができる。さらに、添加剤中の固形成分が除去されることによって、効率よく微生物を培養することができるようになる。なお、ここでいうカルシウム塩とは、カルシウムを含む塩化物をいう。カルシウム塩には、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられるが、適宜選択して使用することができる。特に炭酸カルシウムは、工業的に広く利用され、大量入手が容易であるため好ましい。カルシウム塩の添加量は、添加剤中のアルギン酸がアルギン酸カルシウムとなるのに十分な量であればよいが、好適には、添加剤に対して50〜100%であれば、効率よく添加剤中のアルギン酸をゲル化することができる。
こうしたカルシウム塩による加水分解物の処理方法としては、加水分解物が中性となるように、pH監視下でカルシウム塩を滴定してもよいし、加水分解工程で添加した酸の量から中和に必要なカルシウム塩の量を算出して添加してもよい。また、カルシウム塩による中和処理は、pHが7.0に限らず、弱酸性、乃至、弱アルカリ性としてもよい。
(微生物の培養方法)
また、本発明の開示によれば、微生物の培養方法が提供される。上記の添加剤を培地に添加して、微生物を培養することができる。すなわち、培地に藻類の藻類に含まれる、タンパク質や糖類をはじめとする栄養成分を添加して、微生物培養の栄養とすることができる。これにより、微生物の増殖や代謝を促すことができる。また、上記の添加剤を培地に添加して微生物を大量に培養することが可能となる。なお、本明細書において「培地」とは、微生物や生物組織の培養において、培養対象に生育環境を提供するものをいう。培地には、炭素源やビタミン、無機塩類など栄養素の供給源となる他、細胞の増殖に必要な足場や液相を与える物理的な要素を含む。こうした培地には、微生物を培養可能であれば、肉汁培地、肉汁ゼラチン培地、硝酸塩培地、牛乳培地、コーンミール培地、MR-VP培地、トマトジュース培地、TSI培地、SIM培地、グルコース-ブイヨン培地。YM培地、真菌用培地、オートミール培地、麦芽汁寒天、麦芽汁、土壌エキス、PGY培地、Fowell酢酸塩培地(酵母胞子形成用培地)、V-8ジュース培地、酵母エキス(YPD培地)、発酵試験培地、酵母資化性培地、酸生成培地、高浸透圧培地、デンプン生成培地、アルブチン分解培地、藻類用培地、淡水産藻類用、AF6培地、C培地、URO培地、VT培地、海産藻類用、ESM培地、f/2培地、IMR培地、MNK培地、ダイゴ人工海水培地、遺伝研究用培地、細菌用完全培地、Lennox培地(L培地)、LB培地、大腸菌用最少培地(Davis培地)、大腸菌用最少塩培地(MS)、トリス-グルコース培地(TG培地)、EMB糖指示培地、枯草菌用最少培地(Spizizen 最少培地)、無機塩類液、枯草菌用最少塩培地、枯草菌形質転換用培地I、枯草菌形質転換用培地II、酵母用完全培地(YPAD)、酵母用最少培地、アカパンカビ用完全培地、アカパンカビ用最少培地(Vogel 培地 N)、アカパンカビ交雑用最少培地、アスペルギルス用完全培地(ANA培地)、ツァペック-ドッグス培地、植物用培地、MurashigeとSkoogの培地(MS培地)、B5培地等の公知の培地を用いることができる。特に、YPD培地は、微生物発酵に一般に用いられる培地であり、発酵効率が高いため好ましい。YPD培地には、蛋白質をアミノ酸および低分子量のペプチドまで加水分解したペプトンが含まれていてもよい。YPD培地に上記の添加剤を添加することによって、高い発酵効率を保ちながら、酵母エキスの量を減らすことができる。
(有用物質の生産方法)
また、本発明の開示によれば、有用物質の生産方法が提供される。本発明の有用物質の生産方法は、微生物発酵する工程を備えることができる。すなわち、上記の添加剤を培地に添加して、微生物を培養することで、有用物質を生産することができる。特に、本工程では、発酵能を有する微生物を培養することによって、有用物質である発酵生成物を得ることができる。このような「有用物質」としては、乳酸をはじめとする有機酸や、アルコールなどが挙げられる。例えば、有用物質を生産する微生物としては、エタノールをはじめとするアルコール発酵や、乳酸をはじめとする有機酸発酵、又は、メタン発酵等の能力を備える微生物であることが好ましい。好適には、発酵微生物として、乳酸菌、及び酵母が挙げられる。より好適には、Lactococcusに属する乳酸菌、及び、Saccharomycesに属する乳酸菌を培養対象とすることが好ましい。特に好適な乳酸菌はLactococcus latisであり、好適な酵母はSaccharomyces cerevisiaeである。こうした乳酸菌、及び酵母の培養に、藻類を栄養源として利用することで、乳酸発酵及び、アルコール発酵が進行し、乳酸をはじめとする有機酸や、エタノールをはじめとするアルコールを得ることができる。
また、乳酸菌を培養して乳酸発酵を行う場合には、培地に酵母エキスを含んでいることが好ましい。培地に酵母エキスが含まれていることで、乳酸発酵の効率が高くなるためである。こうした酵母エキスの量は、上記の藻類を培地に添加した場合には、少量であってもよい。特に、藻類を加水分解処理した後にカルシウム塩で中和して得られた上清を培地に添加することによって、乳酸発酵を促進させることができる。例えば、藻類を培地に添加した場合は、藻類を培地に添加しない場合に比べて、酵母エキスの量を60〜80%程度低減することができる。一方で、酵母を培養してアルコール発酵を行う場合には、培地には必ずしも酵母エキスを添加しなくてもよい。上記の藻類を栄養源として利用することで、酵母エキスの添加を省略することができる。特に、藻類を加水分解処理した後にカルシウム塩で中和して得られた上清を培地に添加することによって、アルコール発酵を促進させることができる。培養に用いる培地は、微生物の種類に応じて、適宜成分を調製したものを用いることができる。また、培地に添加する藻類、又は藻類加水分解処理物の量は、その乾燥重量が培地の0.1%〜10%程度であることが好ましい。より好ましくは、培地に添加する藻類、又は藻類加水分解処理物の量は、その乾燥重量が培地の1%〜5%であると、微生物発酵を促進させることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
微生物培養用の培地に、藻類をそのまま添加した場合と、加水分解処理した藻類を添加した場合とで、乳酸発酵の発酵効率を比較した。乳酸生産菌としてLactococcus lactis(NBRC 10933)を準備し、前培養液Lactobacilli inoculum broth (05801 Nissui, Japan)にて、24時間培養を行った後、遠心分離によって菌体を回収した。次いで、前培養液の10倍量の発酵用培地(グルコース100g/l、KHPO 1.5g/l、(NHSO2.0g/l、MgSO 1.0g/l、炭酸カルシウム50g/l、酵母エキス(YE、ペプトンを含む)、藻類)に菌体を添加した。藻類は、オイル生産微細藻類(Pseudochoricystis ellipsoidea)を用い、超純水で6%藻体懸濁液に調製した。この藻体懸濁液を、2%、4%、又は6%の3M−硫酸を添加して121℃、20分間加水分解し、その乾燥重量が発酵用培地の2%となるように発酵用培地に添加した。この発酵用培地を、30℃、120rpmで24時間振盪培養を行った。この後に、それぞれの発酵用培地をサンプリングし、乳酸及びグルコース濃度をバイオセンサー(Oji Keisoku Kiki , Amagasaki)によって測定した。
図1に、発酵用培地中の乳酸濃度とグルコース濃度を示す。乳酸濃度が高いほど、またグルコース濃度が低いほど微生物発酵が進行していることを示す。図1に示すように、加水分解していない藻類を添加した培地よりも、加水分解した藻類を添加した培地を用いた方が、培地中の乳酸濃度が増大すると共にグルコース濃度が低下し、すなわち、微生物の発酵効率が増大した。また、硫酸濃度が6%まで高くなるに従って、微生物の発酵効率が増大した。
上記の微生物培養添加剤によれば、藻類を加水分解して得られた加水分解処理物を培地に添加して、乳酸発酵能を有する微生物の培養を行うことによって、乳酸を生産することができる。すなわち、上記の微生物培養添加剤を、微生物培養の栄養源として用いることができる。
酵母エキスと藻類を培地中に添加した場合の乳酸発酵における発酵効率の比較を行った。培地条件として、藻類と酵母エキスのいずれも添加しない培地(YE0g/l)と、酵母エキス15g/l培地、酵母エキス3g/l培地、酵母エキス3g/l+藻培地、酵母エキス3g/l+藻(上清)培地のそれぞれを用いて、Lactococcus lactisを培養した。培地に添加した藻、又は藻の上清は、それぞれ発酵用培地の2%とした。酵母エキス3g/l+藻培地は、藻類を加水分解処理して得られた藻体懸濁液と同等量の炭酸カルシウムで中和処理したものを、酵母エキスを含む培地に添加したものであり、酵母エキス3g/l+藻(上清)培地は、さらに中和処理した藻類を遠心分離によってアルギン酸カルシウムや固形物を除去し、得られた上清を、酵母エキスを含む培地に添加したものである。それぞれ、実施例1と同じ条件で培養を行い、培地中の乳酸濃度と、グルコース濃度を測定した。
図2に、培地中の乳酸濃度とグルコース濃度を示す。図2に示すように、酵母エキス濃度を15g/lから3g/lに減らすと、乳酸濃度が減少し、発酵効率の低下が見られた。酵母エキスが3g/lに減らされた培地に藻類を添加することによって、乳酸濃度が増大した。また、藻類中のアルギン酸を除去して培地に添加した場合には、さらに乳酸濃度が増大し、酵母エキス濃度15g/lに相当する発酵効率を示した。
上記の微生物培養添加剤によれば、藻類を加水分解して得られた加水分解処理物を培地に添加して、発酵能を有する微生物の培養を行うことによって、効率よく微生物発酵を行うことができる。また、藻類に含まれる固形成分を除去することによって、酵母エキスに匹敵する発酵効率で微生物発酵を行うことができる。これにより、藻類を微生物発酵の栄養源とすることで、培地に添加する酵母エキスの量を低減することができる。
酵母エキスと藻類を培地中に添加した場合のエタノール発酵における発酵効率の比較を行った。培地は、酵母エキスも藻類も添加しない培地(添加剤なし)と、2%酵母エキス培地、酵母エキスを添加せずに加水分解未処理の藻を添加した培地、酵母エキスを添加せず、固形成分を除去した藻類の加水分解処理物の上清を添加した培地を用いた。培地に添加した藻、又は藻の上清は、それぞれ発酵用培地の2%とした。エタノール生産菌としてワイン酵母OC−2を準備し、それぞれの培地を用いて、実施例1と同様の条件下でOC−2を培養した後、培地中のエタノール濃度を測定した。図3に、各培地中のエタノール濃度を示す。図3に示すように、酵母エキスも藻類も添加しない場合には、培地からエタノールは得られなかった。酵母エキスを栄養源とした場合には、60g/l以上のエタノールが得られた。一方、酵母エキスに代わり、藻類の加水分解処理物を培地に添加した場合には、40g/l以上のエタノールが得られ、特に、固形成分を除去した藻類を培地に添加した場合には、酵母エキスとほぼ同程度のエタノールが得られた。
上記の微生物培養添加剤によれば、藻類を加水分解して得られた加水分解処理物を培地に添加して、エタノール発酵能を有する微生物の培養を行うことによって、エタノールを生産することができる。また、藻類に含まれる固形成分を除去することによって、酵母エキスに匹敵する発酵効率でエタノール発酵を行うことができる。これにより、藻類を微生物発酵の栄養源とすることで、培地に添加する酵母エキスの量を低減してエタノールを生産することができる。
オイル生産微細藻類のオイル抽出残渣の発酵栄養源としての乳酸発酵とエタノール発酵への利用可能性を検討した。オイル抽出残渣は、藻体懸濁液にクロロホルムとメタノールを2:1の割合で添加し、溶媒に含まれるオイル成分とそれ以外の不溶性成分(オイル抽出残渣)とを分離することによって得た。さらに、このオイル抽出残渣を6%の3M−硫酸を添加して121℃、20分間加水分解し、オイル抽出残渣の加水分解処理物を得た。乳酸発酵用培地には、3g/lの酵母エキス培地に藻類の加水分解処理物、又はオイル抽出残渣の加水分解処理物を添加したものを用い、エタノール発酵には、酵母エキスを含まない培地に、藻類の加水分解処理物、又はオイル抽出残渣の加水分解処理物を添加したものを用いて、培養を行った。培養条件は、実施例1と同様とした。図4に、培地中の乳酸及びエタノール濃度を測定した結果を示す。図4に示すように、オイル生産微細藻類のオイル抽出残渣の加水分解処理物を微生物培養用の栄養源として添加した場合、オイル抽出前の藻類の加水分解処理物を栄養源として培地に添加した場合よりも、乳酸やエタノールの生産量は僅かに低かったものの、微生物発酵の進行が見られた。
上記の微生物培養添加剤によれば、オイル生産微細藻類のオイル抽出残渣を、微生物の発酵栄養源として用いることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

Claims (16)

  1. 藻類に含まれる成分の全て、又は一部を含有する、微生物培養用の添加剤。
  2. 前記藻類は、微細藻であることを特徴とする、請求項1に記載の添加剤。
  3. 前記藻類は、タンパク質含量が20質量%以上である、請求項1又は2に記載の添加剤。
  4. 前記藻類は、Pseudochoricystis属に属する藻類である、請求項1〜3のいずれかに記載の添加剤。
  5. 前記Pseudochoricystis属に属する藻類がPseudochoricystis ellipsoideaである、請求項4に記載の添加剤。
  6. 前記藻類の加水分解処理物を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の添加剤。
  7. 前記加水分解処理物をカルシウム塩で処理して得られる上清を含有する、請求項6に記載の添加剤。
  8. 藻類を加水分解する工程を備える、微生物培養添加剤の製造方法。
  9. 前記藻類を加水分解する工程の後に、カルシウム塩で処理する工程をさらに備え、
    藻類の固形成分と上清を分離することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 請求項1〜7に記載の添加剤を培地に添加して、微生物を培養する培養方法。
  11. 請求項1〜7に記載の添加剤を培地に添加して、微生物発酵する工程を備える、有用物質の生産方法。
  12. 前記微生物発酵は、乳酸菌、及び/又は、酵母の発酵である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記乳酸菌が、Lactococcus属の株菌に属する乳酸菌である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記Lactococcus属の株菌に属する乳酸菌がLactococcus lactisである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記酵母がSaccharomyces属の株菌に属する酵母である、請求項12に記載の方法。
  16. 前記Saccharomyces属の株菌に属する酵母がSaccharomyces cerevisiaeである、請求項15に記載の方法。
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