以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電源装置のブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における電源装置のアイドリングストップ時の動作を示すフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態1における電源装置の各種特性の経時変化図であり、(a)は車速の経時変化図、(b)はスイッチのタイミングチャート、(c)は発電機電圧Vgの経時変化図、(d)は出力電圧設定値Vosのタイミングチャート、(e)は蓄電部電圧Vcの経時変化図、(f)は蓄電部下限電圧設定値Vcsのタイミングチャート、(g)は充電電流上限設定値Icsのタイミングチャート、(h)はDC/DCコンバータに流れる電流Iの経時変化図をそれぞれ示す。なお、図1において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。また、図3の(a)〜(h)の横軸は時刻tを示す。
図1において、車両のバッテリ11にはエンジン(図示せず)を始動するためのスタータ13と前記エンジンによって電力を発生する発電機15が電気的に並列接続されている。また、バッテリ11にはスイッチ17の一端が電気的に接続されている。なお、スイッチ17として外部信号によりオンオフ制御が可能な構成のものであればよい。
スイッチ17の他端には負荷19が電気的に接続される。この負荷19は前記車両の電装品であるが、特に瞬時低下による動作停止を回避する必要のある安全装備や灯火類、ナビゲーション等が含まれる。さらに、スイッチ17の前記他端にはDC/DCコンバータ21が電気的に接続されている。また、DC/DCコンバータ21には蓄電部23が電気的に接続されている。このように、スイッチ17がオンの場合、蓄電部23がDC/DCコンバータ21を介してバッテリ11や発電機15に電気的に接続される構成は、図10の構成と同様である。
蓄電部23は前記車両の減速時に発電機15が発生する回生電力を蓄えるもので、急峻に発生する前記回生電力を十分に蓄えるために、充電受入性の良好な電気二重層キャパシタを用いた。なお、本実施の形態1では定格電圧2.5Vの電気二重層キャパシタを4本直列に接続する構成とした。従って、蓄電部23は10V(=2.5V×4本)の満充電電圧Vmまで前記回生電力を充電することができる。このような構成としたことにより、発電機15で発生した電圧(以下、発電機電圧Vgと呼び、Vgは約14.5Vである)がDC/DCコンバータ21により降圧されて蓄電部23に充電される。また、充電した前記回生電力を負荷19やバッテリ11に放電する際に、蓄電部23の蓄電部電圧VcはDC/DCコンバータ21で昇圧される。ゆえに、DC/DCコンバータ21は双方向DC/DCコンバータ構成となる。
また、蓄電部23には蓄電部電圧Vcを検出して出力する蓄電部電圧検出回路25が電気的に接続されている。
また、スイッチ17には並列にダイオード26が電気的に接続される。ここで、ダイオード26はカソードがDC/DCコンバータ21側に、アノードがバッテリ11側になるように接続されている。なお、本実施の形態1では、スイッチ17とダイオード26の並列構成を電界効果トランジスタ(以下、FETという)により一体化した。この場合、FETの寄生ダイオードがダイオード26となる。これにより、高信頼性と小型化が可能となる。なお、このFETはノーマリーオフ、すなわち前記FETのゲート端子に電圧が印加されていない状態(前記車両の非使用時)にはオフになる構成のものを用いた。
スイッチ17、DC/DCコンバータ21および蓄電部電圧検出回路25には制御回路27が信号系配線で電気的に接続されている。制御回路27はマイクロコンピュータと周辺回路(いずれも図示せず)で構成され、蓄電部電圧検出回路25から蓄電部電圧Vcを読み込むとともに、スイッチ17に対してスイッチ信号SWを送信することでスイッチ17のオンオフ制御を、DC/DCコンバータ21に対して制御信号contを送信することでDC/DCコンバータ21の制御を、それぞれ行なう。さらに、制御回路27は車両用制御回路29とも信号系配線で電気的に接続されており、車内通信規格に則って蓄電部電圧Vc等の種々のデータをデータ信号dataにより送受信している。
次に、このような電源装置の動作について説明する。
まず、前記車両が制動せずに通常走行している場合は、制御回路27はスイッチ17をオンにしている。これにより、前記エンジンにより発電機15で発電された電力がバッテリ11に充電されるとともに、スイッチ17を経由して負荷19に供給される。この時、前記回生電力は発生していないので、制御回路27は蓄電部23への充電を行なわないようにDC/DCコンバータ21を制御している。
ここで、この場合のDC/DCコンバータ21の制御の詳細を説明する。制御回路27は、前記回生電力が発生していない場合、前記車両の制動時にできるだけ多くの前記回生電力を蓄電部23に充電できるように、蓄電部電圧Vcが下限電圧設定値Vcsで設定される電圧を維持するようにDC/DCコンバータ21を制御する。この下限電圧設定値Vcsは変更可能であり、本実施の形態1では蓄電部下限電圧Vck、または蓄電部最低電圧Vck2のいずれか一方に設定される。
蓄電部下限電圧Vckと蓄電部最低電圧Vck2は次のようにして決定される。
まず、蓄電部下限電圧VckはDC/DCコンバータ21を駆動して蓄電部23の電力を放電することができる下限の蓄電部電圧Vcのことであり、DC/DCコンバータ21の能力や蓄電部23の特性に依存して決まる。本実施の形態1では蓄電部下限電圧Vckを3Vとしている。従って、蓄電部電圧Vcが蓄電部下限電圧Vck(=3V)に至るまではDC/DCコンバータ21を駆動することができる。
次に、蓄電部最低電圧Vck2について述べる。アイドリングストップ後に前記車両を走行させるには、前記エンジンを再始動する必要があるが、バッテリ11によりスタータ13を駆動することで前記エンジンが始動する時、バッテリ11の電圧は大きく低下する。この瞬時低下により、従来構成では負荷19への印加電圧が変動し、場合によってはその動作が中断、停止してしまう。そこで、これを回避するために本実施の形態1ではスタータ13の駆動中に蓄電部23の電力を負荷19に供給するようにしている。従って、スタータ13の駆動前に蓄電部23には少なくともスタータ13の駆動により瞬時低下を起こす既定期間ts(ここではts=2秒とする)に亘って負荷19を駆動できる電力が蓄えられていなければならない。そして、既定期間tsが経過後の蓄電部電圧Vcは最低でもDC/DCコンバータ21が動作できる蓄電部下限電圧Vck(=3V)でなければならない。
これらのことから、前記エンジンの再始動直前に必要な蓄電部最低電圧Vck2を決定する。まず、負荷19の最大消費電力を500Wとする。従って、スタータ13の駆動前に蓄えられていなければならない負荷供給エネルギEfは500W×2秒(既定期間ts)=1000W秒となる。一方、前記電気二重層キャパシタに蓄えられるエネルギEcは、Ec=C・V2/2で表される。なお、式中のCは容量値を、Vは電圧を表す。ここで、本実施の形態1で用いた電気二重層キャパシタ1個の容量値を500Fとすると、蓄電部23の容量値Cは4本直列のため500F/4本=125Fとなる。また、電圧Vは放電前(スタータ13の駆動前)が蓄電部最低電圧Vck2であり、放電後(既定期間ts経過後)が蓄電部下限電圧Vck(3V)である。従って、放電前の蓄電部23のエネルギEcbはEcb=C・Vck22/2となり、放電後の蓄電部23のエネルギEcaはEca=C・Vck2/2となる。このエネルギ差Ecb−Ecaが負荷供給エネルギEfとなる。これらのことから、各数値を代入して整理すると、Ef=1000W秒=125/2・(Vck22−32)となる。これを解くと、Vck2=5Vとなる。ゆえに、蓄電部最低電圧Vck2は5Vと決定される。なお、蓄電部最低電圧Vck2(=5V)と蓄電部下限電圧Vck(=3V)の差を既定電圧幅ΔVc(=2V)という。従って、蓄電部下限電圧Vckは蓄電部最低電圧Vck2より既定電圧幅ΔVcだけ低い関係を有する。
今、前記車両は通常走行中であり前記瞬時低下は発生しないので、制御回路27はDC/DCコンバータ21の下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に設定している。このように設定することで、制動時にたとえ十分な前記回生電力を回収できなかったとしても、蓄電部23には前記瞬時低下の発生中に負荷19へ供給できるだけの電力が蓄えられているので、前記瞬時低下による負荷19への電圧変動の影響を低減できる。
DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcに対して下限電圧設定値Vcs以外にも上記した満充電電圧Vmにより上限が設定されている。さらに、蓄電部23の充電電流上限設定値Icsと放電電流上限設定値Idsも設定されている。従って、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcが下限電圧設定値Vcs(3Vまたは5V)から満充電電圧Vm(10V)までの範囲で、充電電流上限設定値Ics以下の電流での充電、および放電電流上限設定値Ids以下の電流での放電を行なうことにより、DC/DCコンバータ21の出力電圧Vo(=負荷19の印加電圧)が出力電圧設定値Vosになるように制御する。従って、蓄電部電圧Vcが下限電圧設定値Vcs、または満充電電圧Vmに至れば、その電圧を維持するようにDC/DCコンバータ21は制御する。また、DC/DCコンバータ21に流れる電流Iが充電電流上限設定値Ics、または放電電流上限設定値Idsに至れば、その電流を維持するようにDC/DCコンバータ21は制御する。なお、DC/DCコンバータ21に流れる電流Iは、DC/DCコンバータ21に内蔵された図示しない電流検出回路によって検出される。
ここで、充電電流上限設定値Icsは、本実施の形態1では既定上限電流値Icu(できるだけ多くの前記回生電力を充電するために100Aとした)、または0Aの2種類を切り替える構成とした。具体的な切替動作は後述する。また、放電電流上限設定値Idsは、負荷19やバッテリ11への放電時の最大電流値としてあらかじめ求めた値とした。本実施の形態1では、上記した通り負荷19の前記最大消費電力が500Wであり、後述するように前記瞬時低下発生時の出力電圧Voは負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に設定されるので、この時DC/DCコンバータ21に流れる電流Iは47.6Aとなる。従って、ここではマージンを加味して放電電流上限設定値Idsを50Aの固定値とした。
また、出力電圧設定値Vosは通常電圧Vn、アイドリングストップ中電圧Vi、および負荷駆動最低電圧Vdの3種類を切り替える構成とした。ここで、上記した3種類の電圧について説明する。まず、通常電圧Vnはアイドリングストップを行なっていない通常時の出力電圧設定値Vosであり、本実施の形態1では発電機電圧Vg(=14.5V)よりも高い15Vとした。これにより、通常時で蓄電部23に十分な前記回生電力が蓄えられている場合は、発電機15やバッテリ11よりも優先的に負荷19に前記回生電力が供給され、有効活用が図れる。また、前記回生電力の供給中は発電機15が発電を行なわないので、前記エンジンの機械的負担が軽減され、省燃費化が図れる。次に、アイドリングストップ中電圧Viはアイドリングストップ中で前記瞬時低下が発生していない時の出力電圧設定値Vosであり、本実施の形態1ではバッテリ11の開放電圧OCV(無負荷時のバッテリ11の端子電圧で約12V)よりも高い13Vとした。これにより、アイドリングストップ中で前記瞬時低下が発生しておらず蓄電部23に十分な前記回生電力が蓄えられている場合は、バッテリ11よりも優先的に負荷19に前記回生電力が供給され、有効活用が図れる。次に、負荷駆動最低電圧Vdは負荷19を駆動するために必要な最低電圧のことで、本実施の形態1では10.5Vとした。なお、通常電圧Vn、アイドリングストップ中電圧Vi、および負荷駆動最低電圧Vdの具体的な切替動作は後述する。
このようなDC/DCコンバータ21の設定や動作から、前記車両の通常走行時において蓄電部23への充電を行なわないようにするためには、制御回路27はDC/DCコンバータ21へ出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=15V)に、下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に、それぞれ設定するよう制御信号contを送信する。これにより、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)より高ければ、DC/DCコンバータ21は蓄電部23に蓄えられた電力を放電することで出力電圧Voが通常電圧Vn(=15V)になるように動作する。そして、放電により蓄電部電圧Vcが低下し蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至れば、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)を維持するように動作する。
なお、放電電流上限設定値Idsは上記したように50Aの固定値であるので、DC/DCコンバータ21は50Aまでの範囲で負荷19が必要とする消費電流に応じた放電を行なう。一方、通常走行時では、制御回路27は充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)に設定している。これは、通常走行の段階では既定上限電流値Icu(=100A)と0Aのいずれに設定してもよいが、0Aに設定すれば前記回生電力の発生とともに充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)に切り替える必要がありロスタイムが発生するため、いつ発生するかわからない前記回生電力を速やかに、少しでも多く蓄電部23へ充電できるようにするためには、あらかじめ充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)に設定しておく方が望ましい。
次に、運転者がブレーキを踏むなどにより車両が制動され減速すると、その事実が車両用制御回路29からデータ信号dataにより制御回路27に送信される。その結果、制御回路27は発電機15が発生している前記回生電力を蓄電部23に充電するようにDC/DCコンバータ21を制御する。具体的には、制御回路27は出力電圧設定値Vosをアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)に切り替えるよう制御信号contをDC/DCコンバータ21に送信する。これにより、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voがアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)になるように動作するので、発電機電圧Vg(=14.5V)をアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)に下げるように蓄電部23を充電する動作を行なう。この時、上記したように充電電流上限設定値Icsは既定上限電流値Icu(=100A)に設定されているので、DC/DCコンバータ21に流れる電流Iが100Aまでの範囲で前記回生電力を充電することができる。なお、この時も制御回路27はスイッチ17をオンのままとする。これにより、前記回生電力は負荷19に供給されるとともに、バッテリ11の状態によっては一部の前記回生電力がバッテリ11に充電されるが、急峻に発生する初期の前記回生電力の大部分は上記したようにDC/DCコンバータ21により蓄電部23に充電される。これにより、充電受入性のよい蓄電部23に優先して前記回生電力を回収することで、回収効率を向上することができる。
制御回路27は蓄電部電圧検出回路25から蓄電部電圧Vcを読み込むことにより、蓄電部23の満充電を判断する。上記したように蓄電部23の満充電電圧Vmは10Vであるので、制御回路27は前記回生電力の充電により上昇する蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vmに至れば、その電圧を維持するようにDC/DCコンバータ21を制御する。
制動後、前記車両が停止すると、車両用制御回路29は前記エンジンを停止する。これによりアイドリングストップ状態となる。この時、発電機15も止まるので、制御回路27は負荷19への電力が蓄電部23から供給されるようにDC/DCコンバータ21を制御する。この動作を図2のフローチャートにより説明する。なお、図2のフローチャートは図示しないメインルーチンから実行されるサブルーチンとして記載している。
車両用制御回路29からアイドリングストップ状態になったことをデータ信号dataで受信すると、制御回路27は図2のサブルーチンを実行する。その結果、制御回路27はスイッチ17をオフにするようスイッチ信号SWを出力する(ステップ番号S11)。これにより、蓄電部23が蓄えた前記回生電力がバッテリ11に逆流して充電されることがないようにしている。すなわち、もし蓄電部23からバッテリ11に前記回生電力が充電され、その後、充電された前記回生電力がバッテリ11から再び放電されると、バッテリ11において上記した充放電に伴う損失が発生する。従って、せっかく回収した前記回生電力の一部が熱として失われるため、できるだけ蓄電部23からバッテリ11を充電しないようにスイッチ17をオフにしている。
次に、制御回路27は蓄電部電圧Vcに対する下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)から蓄電部下限電圧Vck(=3V)に切り替える(S13)。なお、出力電圧設定値Vosはアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)のままであり、充電電流上限設定値Icsは既定上限電流値Icu(=100A)のままである。また、発電機15が停止しているので、ダイオード26のアノード側電圧はバッテリ11の開放電圧OCV(=12V)となり、出力電圧設定値Vos(ここでは13V)よりも低くなる。従って、ダイオード26はオフであり、蓄電部23からDC/DCコンバータ21を介して出力される電力は負荷19のみに供給される。この時、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voがアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)になるように蓄電部23の前記回生電力を放電するので、前記回生電力を有効活用することができる。なお、これに伴って蓄電部電圧Vcは経時的に低下していく。
この蓄電部電圧Vcは蓄電部電圧検出回路25により読み込まれることにより制御回路27により監視される(S15)。そして、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至ったか否かを判断する(S17)。もし、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2より大きければ(S17のNo)、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至っていないので、次に制御回路27は現時点でアイドリングストップが完了し前記エンジンが再始動を完了したか否かを判断する(S19)。これは、蓄電部23が回収した前記回生電力を負荷19に供給し終わる前にアイドリングストップが完了し前記エンジンを再始動したか否かを判断することに相当する。なお、前記エンジンの再始動完了は車両用制御回路29からのデータ信号dataにより知ることができる。
もし、S19の時点で前記エンジンの再始動が完了していなければ(S19のNo)、まだアイドリングストップ中であるので、S15に戻り蓄電部電圧Vcの監視動作を継続する。
一方、前記エンジンの再始動が完了している場合は(S19のYes)、前記車両が通常状態に戻っているため、DC/DCコンバータ21の動作を前記通常走行時と同じ状態に戻すため、後述するS31にジャンプする。なお、S19でYesの場合は蓄電部23が蓄えた前記回生電力のみが負荷19に供給されている間に前記エンジンの再始動が完了したことになる。この際、スイッチ17とダイオード26はオフであるので、バッテリ11の電力でスタータ13を駆動した際に発生するバッテリ11の電圧の前記瞬時低下は負荷19に影響しない。従って、負荷19はS19でYesの場合でも安定した動作を継続することができる。
なお、S17でNoであっても、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2より僅かに大きい場合がある。この状態でスタータ13を駆動しても蓄電部23から負荷19に電力を供給し続けることができるように、S13の時点であらかじめ下限電圧設定値Vcsを蓄電部下限電圧Vck(=3V)に切り替えている。
ここでS17に戻り、前記エンジンが再始動する前に蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2以下となれば(S17のYes)、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至ったことになる。しかし、S13により下限電圧設定値Vcsは蓄電部下限電圧Vck(=3V)に切り替えられているので、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcが蓄電部下限電圧Vck(=3V)に至るまでは放電を継続しようとする。これをこのまま継続すると前記瞬時低下中の蓄電部23から負荷19への電力供給が不十分となり、負荷19の動作が中断する可能性が大きくなる。そこで、制御回路27は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)を維持するようにDC/DCコンバータ21を制御する。具体的には、制御回路27が出力電圧設定値Vosをアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)から負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に切り替えることで、出力電圧Voが負荷駆動最低電圧VdになるようにDC/DCコンバータ21を制御する(S21)とともに、充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)から0Aに設定する(S23)。このような動作により、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voが負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)になるように制御するので、バッテリ11の開放電圧OCV(=12V)より低くなり、ダイオード26がオンになる。そして、バッテリ11の電力を蓄電部23に充電するように動作することで出力電圧Voを負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に下げようとする。しかし、S23の動作により、充電電流上限設定値Icsは0Aに設定されているので、DC/DCコンバータ21に流れる充電電流は実質的に流れないように動作する。この時の動作の優先度は後者の方が高いので、DC/DCコンバータ21は0Aで蓄電部23を充電する動作を行ない、出力電圧Voの制御は行なわれない。ゆえに、出力電圧Voは開放電圧OCVからダイオード26の電圧降下(約0.7V)だけ低い11.3Vとなる。この電圧が負荷19に印加されるので、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至れば、DC/DCコンバータ21が0Aで蓄電部23を充電する動作を行なうことで蓄電部23からの放電を停止し、バッテリ11の電力で負荷19の動作が継続される。また、このような動作により、蓄電部電圧Vcは蓄電部最低電圧Vck2(=5V)を維持することになる。従って、前記瞬時低下が発生しても負荷19を駆動し続けられる電力を蓄電部23に残しておくことができる。
ここまで説明したS17のYesからS23までの動作をまとめると、次のようになる。蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至った場合は、制御回路27は蓄電部23への充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuから0に設定して蓄電部23を充電するようにDC/DCコンバータ21を制御する。ここで、蓄電部23を充電するようにDC/DCコンバータ21を制御するために出力電圧設定値Vosをアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)から負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に切り替え、出力電圧Voを下げるようにDC/DCコンバータ21を動作させている。
このような動作から、S23の実行後におけるDC/DCコンバータ21の状態は、出力電圧設定値Vosが負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)、蓄電部23の下限電圧設定値Vcsが蓄電部下限電圧Vck(=3V)、充電電流上限設定値Icsが0A、放電電流上限設定値Idsが固定値の50Aとなる。この状態でアイドリングストップ中であれば、DC/DCコンバータ21はバッテリ11から負荷19に印加される電圧(11.3V)を負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に下げるため、蓄電部23を充電する方向に動作しようとするが、充電電流上限設定値Icsが0Aであるため、蓄電部電圧Vc(この時点では蓄電部最低電圧Vck2=5V)を維持する動作が優先して行なわれている。
その後、制御回路27は前記エンジンの再始動が完了したか否かを判断する(S25)。この動作は既に説明したS19と同じである。もし、前記エンジンが再始動していなければ(S25のNo)、S25に戻り、前記エンジンが再始動を完了するまで待機する。
その間に、運転者がブレーキペダルからアクセルペダルに踏みかえる等の操作を行なうと、車両用制御回路29はアイドリングストップの完了を判断する。なお、これらの状態は制御回路27と車両用制御回路29とのデータ信号dataにより交信される。
アイドリングストップが完了したと判断されると、車両用制御回路29はバッテリ11の電力でスタータ13を駆動する。この時、スタータ13に大電流が流れるので、バッテリ11の電圧は6V程度まで瞬時低下を起こす。その結果、負荷19に印加される電圧(=出力電圧Vo)も低下するのであるが、出力電圧Voが負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に至った瞬間に、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voがそれ以上低下しないように、負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)を維持するように蓄電部23の電力を放電する方向に動作する。この時、上記したように放電電流上限設定値Idsは50Aであるので、それまでの範囲で負荷19に負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)を印加するようにDC/DCコンバータ21は動作する。その結果、ダイオード26はカソード側の電圧が高くなるためオフになる。従って、前記瞬時低下の発生時には蓄電部23の電力のみが負荷19に供給され、バッテリ11の瞬時低下による電圧変動が負荷19に影響しない。これら一連の動作は前記瞬時低下が発生してから自動的に行なわれ、その間に制御回路27は前記エンジンの再始動が完了したか否かを判断するS25の動作を繰り返しているだけである。従って、前記瞬時低下が発生したときには既に制御回路27によるDC/DCコンバータ21に対する制御は終了しており、いつ前記瞬時低下が発生してもハードウエアのみにより極めて速やかに負荷19への電力供給を維持できる。また、蓄電部23には前記瞬時低下の既定期間tsに亘り負荷19を駆動し続ける電力が残されているので、前記エンジンの始動完了まで負荷19を安定動作させることができる。
なお、車両用制御回路29がアイドリングストップの完了を判断し、その情報を制御回路27がデータ信号dataとして受信してから、制御回路27がDC/DCコンバータ21を制御して蓄電部23の電力を負荷19に供給するようにしてもよいが、運転者がブレーキペダルからアクセルペダルに踏みかえた後、スタータ13を駆動するまでの期間は、運転者に対し違和感を与えないために数10ミリ秒程度と極めて短い。これに対し、前記車内通信規格で定められる情報伝達速度や送受信タイミング、さらに制御回路27がDC/DCコンバータ21を制御して、DC/DCコンバータ21の動作が完了するまでの期間を積算すると、前記数10ミリ秒を超える可能性がある。もし超えてしまうと、蓄電部23から負荷19へDC/DCコンバータ21が電力を供給する前にスタータ13が動作してしまい、前記瞬時低下が発生してしまう場合がある。従って、本実施の形態1のようにハードウエアのみにより速やかに負荷19への電力供給を維持できるよう、あらかじめDC/DCコンバータ21の制御を済ませておく構成が望ましい。
次に、S25に戻り、前記エンジンの再始動が完了すると(S25のYes)、発電機15が発電できる状態であるので、もはや前記瞬時低下は発生しない。そこで、制御回路27はDC/DCコンバータ21の動作を通常走行時の状態に戻す制御を行なう。具体的には、まず充電電流上限設定値Icsを0Aから既定上限電流値Icuに戻す(S29)。この時、発電機15が発電を開始しているので、ダイオード26のアノード側電圧は発電機電圧Vg(=14.5V)となり、DC/DCコンバータ21の出力電圧設定値Vos(ここではS21の動作により10.5V)よりも高くなるため、ダイオード26がオンになる。従って、負荷19には発電機電圧Vgよりダイオード26の電圧降下分低い13.8Vが印加される。これに対し、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voが出力電圧設定値Vos(=10.5V)になるように動作するので、出力電圧Voを13.8Vから10.5Vに下げるために蓄電部23を充電する。なお、S29で充電電流上限設定値Icsは既定上限電流値Icu(=100A)に戻っているので、蓄電部23は100Aの電流値を上限に充電され、前記瞬時低下時に蓄電部最低電圧Vck2(=5V)よりも下がった蓄電部電圧Vcは上昇する。
その後、S19でYesの場合とS29の実行後の場合のいずれも、制御回路27は下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に戻す(S31)。次に、制御回路27は出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=15V)とすることにより、出力電圧Voが通常電圧VnになるようにDC/DCコンバータ21を制御する(S32)。この時の負荷19への印加電圧は上記した通り13.8Vであるので、通常電圧Vnよりも低い。従って、DC/DCコンバータ21は蓄電部23を放電する方向に動作することで、出力電圧Voを通常電圧Vnに上げるよう動作する。
これらのS31とS32の動作により、蓄電部電圧Vcは次のようになる。
まず、S29の後の場合、すなわち蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)よりも低くなり、DC/DCコンバータ21により蓄電部23が充電されている場合、DC/DCコンバータ21はS31により下限電圧設定値Vcsが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に戻された後も蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)より低ければ、S32でDC/DCコンバータ21が放電する方向に制御されていても、それに優先して蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至るまでは蓄電部23の充電を継続するハードウエア構成としている。従って、S32の実行後に蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至っていなければ、蓄電部最低電圧Vck2まで蓄電部23を充電し、その後、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至れば、蓄電部23を放電することなく、蓄電部最低電圧Vck2を維持するように制御される。なお、上記のハードウエア構成とすることで、蓄電部23は自動的にプリチャージされることになる。その結果、常に前記瞬時低下の発生時に負荷19へ十分に供給できる電力を蓄電部23に蓄えておくことができ、低速制動時のように前記回生電力の発生が不十分な場合であっても負荷19に対する前記瞬時低下の影響を抑制することができる。
一方、S29の後の場合であっても、S32を実行した後の時点で蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)を超えた場合は、DC/DCコンバータ21の放電する方向への動作が行なわれ、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至るまで蓄電部23から超えた分の電力が放電される。蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至れば、蓄電部最低電圧Vck2を維持するように制御される。
また、S19でYesの場合は、S17でNoであったので蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2より高い状態で前記エンジンの再始動が完了したことになる。この状態で、S32を実行した後、DC/DCコンバータ21は蓄電部23を放電する方向に動作するので、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至るまで蓄電部23は放電される。これにより、回収した前記回生電力の余剰分を負荷19に供給でき有効活用が図れる。また、放電期間中は発電機15の発電が不要となるため、その分前記エンジンへの機械的負担が軽減され省燃費化が図れる。蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至れば、DC/DCコンバータ21は蓄電部最低電圧Vck2を維持するように制御する。
S32の後は、制御回路27はスイッチ17をオンにする(S33)。これにより、発電機15やバッテリ11から負荷19への電力供給時にダイオード26による損失を低減できる。
以上で図2のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。この時点でのDC/DCコンバータ21の状態は、出力電圧設定値Vosが通常電圧Vn(=15V)、蓄電部電圧Vcの下限電圧設定値Vcsが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)、充電電流上限設定値Icsが既定上限電流値Icu(=100A)となり、前記車両の通常走行時と同じ状態に戻る。以後は、これまでに述べた動作を繰り返す。
なお、図2において、S17でYesの場合は、S29からS33までの動作はどのような順番で行なってもよい。すなわち、アイドリングストップ状態で蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至った場合、前記エンジンの再始動完了後に制御回路27は充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuに戻す動作(S29)、下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2に戻す動作(S31)、蓄電部23を放電するようにDC/DCコンバータ21を制御する動作(S32に相当)、およびスイッチ17をオンにする動作(S33)を順不同で行なえばよい。
同様に、S19でYesの場合は、S31からS33までの動作はどのような順番で行なってもよい。すなわち、アイドリングストップ状態で蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至る前の時点で前記エンジンの再始動が完了した場合、制御回路27は下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2に戻す動作(S31)、蓄電部23を放電するようにDC/DCコンバータ21を制御する動作(S32に相当)、およびスイッチ17をオンにする動作(S33)を順不同で行なえばよい。
但し、後者の場合はS29の動作が不要のため、図2のフローチャートのような順番にすることによりソフトウエアの簡易化、省メモリ化が可能となる。また、制御回路27に内蔵される前記マイクロコンピュータの処理速度が遅い場合は、S33の動作をできるだけ早いステップで実行することにより、ダイオード26における損失を少しでも低減できる。
ここで、上記までに説明した動作を行なうことにより、スイッチ17の状態やDC/DCコンバータ21の各種設定値がどのように変化し、その結果、各種電圧電流がどのように変化するのかを図3(a)〜(h)により具体的に示す。なお、図3(a)〜(h)の横軸は時刻tである。
図3の時刻t0において、前記車両は図3(a)に示すように定速走行中である。これは通常走行であるので、図3(b)に示すようにスイッチ17はオンであり、発電機15は前記エンジンにより発電を行なっているので、図3(c)に示すように発電機電圧Vgは14.5Vである。これにより、発電機15の電力を負荷19に供給することができる状態である。しかし、この時点で図3(e)に示すように、蓄電部23には前回回収した前記回生電力が残存しており、蓄電部電圧Vcが図3(f)で設定されている蓄電部最低電圧Vck2(=5V)よりも高い。ここで、DC/DCコンバータ21は蓄電部23にできるだけ多くの前記回生電力を回収できるように、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2を維持するように制御するので、蓄電部23の残余の電力はDC/DCコンバータ21によって放電され、負荷19に供給される。その結果、蓄電部電圧Vcは図3(c)に示すように、時刻t0以降で経時的に低下する。なお、この際にDC/DCコンバータ21に流れる電流I(ここでは負荷19が消費している電流)は、図3(h)に示すように放電電流上限設定値Ids(=50A)であるとする。なお、図3(h)では、充電電流を正で、放電電流を負で示すように定義した。従って、時刻t0以降ではDC/DCコンバータ21に−50Aの電流が流れることになる。また、時刻t0では通常走行中であるので、既に説明したように出力電圧設定値Vosは図3(d)に示すように通常電圧Vn(=15V)に、充電電流上限設定値Icsは図3(g)に示すように既定上限電流値Icu(=100A)に、それぞれ設定されている。
その後、通常走行中に蓄電部23の残余の前記回生電力を負荷19が消費し、時刻t1で図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至ると、DC/DCコンバータ21は負荷19への放電を停止し、蓄電部最低電圧Vck2を維持するように動作する。その結果、図3(h)に示すように電流Iは時刻t1で0Aとなる。これにより、負荷19へは発電機15の電力が供給される。
その後、時刻t2で前記車両が制動を開始すると、図3(a)に示すように車速が経時的に低下する。この時、DC/DCコンバータ21により発電機15で発生する前記回生電力を蓄電部23に充電するよう制御回路27が制御する。すなわち、時刻t2で制御回路27は図3(d)に示すように、DC/DCコンバータ21の出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=15V)からアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)に切り替える。この際、蓄電部23へはできるだけ多くの前記回生電力を充電するために、図3(g)に示すように充電電流上限設定値Icsが既定上限電流値Icu(=100A)に設定されているので、時刻t2以降でDC/DCコンバータ21に流れる電流Iは、図3(h)に示すように100Aとなる。従って、蓄電部23は100Aで充電され、蓄電部電圧Vcは図3(e)に示すように経時的に上昇する。
その後、制動中の時刻t3で、図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vmに至ると、DC/DCコンバータ21は蓄電部23への前記回生電力の充電よりも満充電電圧Vmを維持する動作を優先する。その結果、時刻t3以降では蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vm(=10V)のままとなり、図3(h)に示すようにDC/DCコンバータ21に流れる電流Iも0Aとなる。なお、時刻t3から車速が実質的に0になる時刻t4までの間に発生する前記回生電力はバッテリ11や負荷19に供給される。また、車速が0に近づくほど発生する前記回生電力が極めて小さくなるので、実際には車速が時速数km以下になると前記回生電力の回収を行なわないようにしている。従って、図3(a)では車速が時速数km以下の場合を実質的に車速0として示している。
時刻t4で前記車両が停止すると、車両用制御回路29は前記エンジンを停止し、アイドリングストップ状態とする。その結果、発電機15も停止するので、図3(c)に示すように発電機電圧Vgは0Vとなる。このアイドリングストップ状態となれば、制御回路27は図2のフローチャートに従った制御を行なう。それにより、まず図3(b)に示すように、スイッチ17をオフにして、蓄電部23から放電される前記回生電力のバッテリ11への逆流を防ぐ。その後、制御回路27はあらかじめ蓄電部下限電圧設定値Vcsを図3(f)に示すように蓄電部最低電圧Vck2(=5V)から蓄電部下限電圧Vck(=3V)に切り替える。なお、DC/DCコンバータ21の出力電圧設定値Vosは図3(d)に示すようにアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)のままであり、バッテリ11の開放電圧OCV(=12V)よりも高いので、時刻t4でDC/DCコンバータ21は蓄えた前記回生電力を蓄電部23から負荷19に放電する。その結果、図3(h)に示すようにDC/DCコンバータ21に流れる電流Iは−50Aとなり、図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcは経時的に低下する。
その後、時刻t5で図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至ると、制御回路27は蓄電部最低電圧Vck2を維持するようにDC/DCコンバータ21を制御する。その結果、図3(e)に示すように、時刻t5以降は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)のままとなる。また、この制御により、図3(h)に示すようにDC/DCコンバータ21に流れる電流Iは0Aとなる。この時、制御回路27は図3(d)に示すように、出力電圧設定値Vosをアイドリングストップ中電圧Vi(=13V)から負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に切り替えるとともに、図3(g)に示すように、充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)から0Aに設定する。これらの動作により、いつ前記エンジンの再始動のためにスタータ13が駆動して前記瞬時低下が発生しても、蓄電部23の電力で負荷19を駆動し続けることが可能となる。
すなわち、時刻t6でアイドリングストップ状態が終了し、車両用制御回路29がスタータ13を駆動すると、バッテリ11の電圧が大きく低下するので、その既定期間ts(時刻t6から時刻t7まで)に亘り蓄電部23の電力がDC/DCコンバータ21により負荷19に供給される。従って、図3(h)に示すように、DC/DCコンバータ21に流れる電流Iは−50Aとなって蓄電部23が放電され、それに伴い図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcは経時的に低下する。なお、時刻t6から時刻t7までの間は前記エンジンの始動が行われるため、発電機電圧Vgは不安定となるが、図3(c)では仮に直線的に発電機電圧Vgが増大するものとして記載した。
時刻t7で前記エンジンの再始動が完了すると、図3(c)に示すように発電機電圧Vgは14.5Vに至り、通常状態となる。一方、蓄電部電圧Vcは図3(e)に示すように時刻t7でちょうど蓄電部下限電圧Vck(=3V)に至る。従って、蓄電部23へは前記プリチャージを行なうために、制御回路27は図3(g)に示すように充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)に戻すとともに、図3(f)に示すように蓄電部下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に戻す。さらに、制御回路27は図3(b)に示すようにスイッチ17をオンにするとともに、図3(d)に示すように出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=15V)に戻す。その結果、図3(a)に示すように前記車両が走行を開始し車速が上がっていく間に、DC/DCコンバータ21により発電機15の電力が蓄電部23にプリチャージされる。この際、図3(e)に示すように時刻t8で蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至るまで、図3(h)に示すようにDC/DCコンバータ21に流れる電流Iは100Aとなる。これにより、早急に蓄電部23をプリチャージすることができる。
時刻t8で前記プリチャージが終了すると、DC/DCコンバータ21は図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)を維持するように動作する。その結果、図3(h)に示すように、DC/DCコンバータ21に流れる電流Iは0Aとなる。
時刻t8以降の状態は時刻t1から時刻t2の状態と同じであるため、以後このような動作を繰り返す。なお、図3に示したアイドリングストップ中の動作(時刻t4から時刻t7までの動作)は、図2のS19のYes以外の動作を行なった場合について示している。また、図3(b)、(d)、(e)、(g)、(h)の太点線に示す時刻t7から時刻t9までの特性については実施の形態2で説明する。
以上の構成、動作により、前記瞬時低下の発生時に蓄電部23から負荷19へ遅延することなく安定して電力を供給できるので、負荷19に対する電圧の瞬時低下可能性を低減する回生電力回収機能付き電源装置を実現できる。
なお、本実施の形態1では制御回路27は、前記アイドリングストップ状態で蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至り(図2のS17でYes)、蓄電部23を充電するようにDC/DCコンバータ21を制御する際に、DC/DCコンバータ21の負荷23に対する出力電圧Voを負荷駆動最低電圧Vdに設定している(S21)が、これは負荷駆動最低電圧Vdに限定されるものではなく、DC/DCコンバータ21が蓄電部23を充電できるような電圧であればよい。すなわち、S21の時点ではこれ以上蓄電部23から電力を放電しないようにするとともに、バッテリ11から負荷19に電力を供給する必要があるので、ダイオード26がオンになる電圧、すなわち開放電圧OCV(=12V)からダイオード26の電圧降下分(0.7V)を差し引いた11.3Vより低い電圧であればよい。但し、その後のスタータ13の駆動時に負荷19を駆動し続けるために、最低でも負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)は必要である。ゆえに、S21で出力電圧設定値Vosに設定すべき電圧値は10.5V以上11.3V以下であればよい。なお、この電圧値の範囲においても、特に出力電圧設定値Vosは本実施の形態1で述べた負荷駆動最低電圧Vdとする方が望ましい。その理由は次の通りである。スタータ13の駆動により前記瞬時低下が発生している間、DC/DCコンバータ21の出力は負荷19のみに接続され、バッテリ11との接続は切断される。従って、DC/DCコンバータ21の出力電圧Voは負荷19が動作できる電圧(負荷駆動最低電圧Vd)さえ確保されていればよいので、できるだけ電圧を下げてDC/DCコンバータ21の昇圧比を小さくしている。これにより、DC/DCコンバータ21の効率を上げ、損失を抑制する効果が得られる。
また、本実施の形態1では前記プリチャージをハードウエア的に行なう構成としているが、これはソフトウエアにより行なってもよい。この場合は図2のS29により蓄電部23へのプリチャージが始まるので、S29の後に蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至ったか否かを判断し、至れば次のステップ(S31)を実行するようにすればよい。この場合、上記のソフトウエア実行時間が必要となり応答性が悪くなるが、プリチャージ用のハードウエアが不要となるので、応答性とコストのどちらに重点を置くかで、いずれかの構成を適宜選択すればよい。
また、本実施の形態1において、制御回路27はバッテリ11の端子電圧を検出し、バッテリ11が正しく接続されている時にのみスイッチ17のオン動作を許可する構成としてもよい。これにより、バッテリ11の極性の逆接続(以下、逆接という)に対する保護機能を付加することができ、高信頼性が得られる。なお、前記車両の非使用時には前記FETがオフになる構成であるので、非使用時にバッテリ11を逆接してもDC/DCコンバータ21や蓄電部23、負荷19に電流が流れず、これらの回路を保護することが可能となる。さらに、スイッチ17とダイオード26が並列接続される構成としているので、スイッチ17がオフであってもダイオード26はバッテリ11を逆接しない限りオンとなり、前記車両の非使用時にも負荷19が電力供給を必要とする場合、有効な構成となる。
また、本実施の形態1においてダイオード26のみをスイッチ17として置き換える構成としてもよい。この場合、本実施の形態1で述べたスイッチ17のオンオフ動作が不要になるので制御が簡易化されるという効果が得られる。しかし、前記回生電力は前記車両の減速開始直後に急増するため、ダイオード26のみの構成とすると大きな回生電流がダイオード26に流れることになる。従って、ダイオード26の電圧降下に起因した発熱が大きくなる。その結果、前記回生電力の損失が大きくなる上に、十分な放熱構成を有するように設計したり複数のダイオードを並列接続して熱分散を図る等の構成上の対策が必要となるので、本実施の形態1で述べた前記FETを用いる構成の方が望ましい。
また、本実施の形態1において、図2のS31で下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2に戻しているが、この際に制御回路27は既定速度v(例えば1V/秒)で徐々に戻すようにしてもよい。これは次の理由による。S31で下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2に急に戻すと前記プリチャージにより大電流が流れ、負荷19への電圧変動が発生するとともに、蓄電部23の容量値が大きければバッテリ11からも一部電力が持ち出されてしまう可能性がある。そこで、前記大電流を抑制するために下限電圧設定値Vcsを既定速度vで徐々に戻すことで、負荷19への印加電圧の安定化を図ることができ、バッテリ11からの電力持ち出しを抑制でき効率が向上する。但し、電圧安定化と効率を向上し、かつ次回のアイドリングストップまでに前記プリチャージが完了する既定速度vをあらかじめ求めておく必要がある。従って、構成によっては前記プリチャージに要する期間が長くなり、次回アイドリングストップまでに前記プリチャージが完了しなくなる可能性があるので、必要とする蓄電部23の容量値やアイドリングストップ間隔の見積もり値などに応じて徐々に戻すか否かを適宜選択すればよい。
また、本実施の形態1ではアイドリングストップ中に蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至ると、その電圧を維持するように制御回路27がDC/DCコンバータ21を制御しているので、電圧維持の間はバッテリ11の電力が負荷19に供給される構成としている。しかし、車両用制御回路29により監視されるバッテリ11の充電状態(以下、SOCという)が低く、負荷19への電力供給を継続することにより前記エンジンの再始動のためのスタータ13の駆動電力が不足すると予測される場合は、アイドリングストップ中であっても車両用制御回路29は前記エンジンの再始動を行うようにしている。この場合であっても図2の動作は同じであり、前記エンジンの再始動によりS29以降の動作が行なわれる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における電源装置のアイドリングストップ時の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態2における電源装置の構成は図1と同じであるため、詳細な説明を省略する。また、動作においてもアイドリングストップ状態の動作が異なるのみであるので、異なる点を中心に図4を用いて説明する。なお、図4において、図2と同じ動作には同じステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
前記車両が前記アイドリングストップ状態となれば、制御回路27は図4のサブルーチンを実行する。ここで、図4のS11からS25までの動作は図2と同じであるため説明を省略する。但し、S19でYes以降の動作は図2と異なるが、その詳細は後述する。
本実施の形態2の動作の特徴はプリチャージをソフトウエアにより行なう点であるので、その動作を以下に説明する。
S25で前記エンジンの再始動が完了すれば(S25のYes)、制御回路27は充電電流上限設定値Icsを既定中間電流値Icmに設定する(S51)。この動作は図2の場合、既定上限電流値Icuに設定していたが(図2のS29)、本実施の形態2のように既定中間電流値Icmに設定することで、前記プリチャージにおける蓄電部23の充電電流を低減することができる。なお、本実施の形態2では既定中間電流値Icmを10Aとした。これにより、蓄電部23への前記プリチャージは図2の場合と比べ10分の1の電流で済むことになる。ゆえに、前記プリチャージによる前記大電流が蓄電部23に流れることによる負荷19への印加電圧変動を抑制することができる。また、前記大電流によるバッテリ11からの電力持ち出しによる効率低下も抑制できる。但し、前記プリチャージに必要な期間が10倍となるので、もしその間に再度アイドリングストップ状態となる可能性がある電源装置の場合は、前記アイドリングストップ状態となる前に前記プリチャージが終了する既定中間電流値Icmをあらかじめ決定しておけばよい。
S51の実行により、前記プリチャージが開始されるので、その後、下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に戻す(S53)。この動作は図2のS31と同じである。
その後、制御回路27は蓄電部電圧検出回路25から蓄電部電圧Vcを読み込み(S55)、蓄電部電圧Vcと蓄電部最低電圧Vck2とを比較する(S57)。もし、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2未満であれば(S57のNo)、蓄電部23の前記プリチャージがまだ終わっていないので、S55に戻り、以後の動作を繰り返す。
一方、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2以上であれば(S57のYes)、蓄電部23の前記プリチャージが終了し、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2になるように制御する動作を優先する。従って、前記プリチャージによる電流は流れないので、制御回路27は充電電流上限設定値Icsを既定中間電流値Icmから既定上限電流値Icuに戻す(S59)。これにより、前記プリチャージによる負荷19への印加電圧変動と、バッテリ11からの電力持ち出しの影響を低減できる。
次に、制御回路27は出力電圧設定値Vosに通常電圧Vnを設定することで、出力電圧Voが通常電圧Vn(=15V)になるようにDC/DCコンバータ21を制御する(S60)。これにより、DC/DCコンバータ21は蓄電部23を放電する方向に動作しようとするが、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至っているので、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2を維持する動作を継続する。その結果、蓄電部23にいつでも前記回生電力を回収できるように待機することができる。
その後、スイッチ17をオンにして(S61)、図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。なお、S60とS61の動作はそれぞれ図2のS32、S33の動作と同じである。
次に、S19でYesの場合、すなわち蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2より大きい状態で前記エンジンの再始動が完了した場合、制御回路27は再び蓄電部電圧検出回路25から蓄電部電圧Vcを読み込む(S63)。これは、S15からS63に至るまでの間に蓄電部電圧Vcが低下するため、S63で最新の蓄電部電圧Vcを検出している。次に、制御回路27は蓄電部電圧Vcと蓄電部最低電圧Vck2とを比較する(S65)。もし、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2未満となっていれば(S65のYes)、蓄電部23に対し前記プリチャージが必要となるので、上記したS51にジャンプする。
一方、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2以上であれば(S65のNo)、前記エンジンが再始動しても、まだ回収した前記回生電力が蓄電部23に蓄えられている状態である。この場合は、下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に戻し(S67)、上記したS60にジャンプする。S60では制御回路27はDC/DCコンバータ21が蓄電部23を放電する方向に制御し、この時点では蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2以上であるので、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至るまで、剰余の前記回生電力が蓄電部23から負荷19に放電され、有効活用される。
ここで、本実施の形態2における特徴となる動作は図3(b)、(d)、(e)、(g)、(h)の太点線に示される。すなわち、時刻t7で前記エンジンの再始動が完了すれば、制御回路27は図3(g)の太点線に示すように充電電流上限設定値Icsを既定中間電流値Icm(=10A)に設定する。その結果、蓄電部23の前記プリチャージにおけるDC/DCコンバータ21に流れる電流Iは図3(h)に示すように10Aとなり、図3(e)に示すように蓄電部23を徐々に充電し、蓄電部23への突入電流発生を抑制している。
その後、時刻t9で図3(e)に示すように蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2(=5V)に至ると、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2を維持するように動作し、図3(h)に示すようにDC/DCコンバータ21に流れる電流Iは0Aとなる。これに伴い、制御回路27は図3(g)に示すように充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)に戻すとともに、図3(d)に示すように出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=15V)に設定し、図3(b)に示すようにスイッチ17をオンにする。
以上の構成、動作により、前記瞬時低下の発生時に蓄電部23から負荷19へ遅延することなく安定して電力を供給できる上、前記プリチャージの際の負荷19への印加電圧変動も抑制できるので、負荷19に対する電圧の瞬時低下可能性をさらに低減する回生電力回収機能付き電源装置を実現できる。
なお、本実施の形態2では充電電流上限設定値Icsを段階的に既定上限電流値Icuへ戻しており、実施の形態1で述べた下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2に既定速度vで徐々に戻す動作とは別の方法で、前記プリチャージによる前記大電流が蓄電部23に流れることによる負荷19への印加電圧変動と、バッテリ11からの電力持ち出しを抑制している。これは、どちらの動作でも得られる効果は同じであるので、適宜いずれかの動作を選択すればよい。但し、本実施の形態2で述べた動作の場合、蓄電部23に充電される電流値そのものを制御できるので、前記大電流の中でも特に前記プリチャージ開始時の突入電流の抑制精度が高まるという効果が得られる。従って、前記突入電流の影響が大きい場合は、本実施の形態2の構成、動作が望ましい。
また、本実施の形態2では充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuに戻す際に、制御回路27は、まず既定中間電流値Icm(=10A)に設定し、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至ると、充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icu(=100A)に戻しているが、このような1段階の段階的な戻し方に限定されるものではなく、既定中間電流値Icmを複数設定し多段階で戻すようにしてもよいし、段階数を多くすることにより、実質的に連続して徐々に戻すようにしてもよい。なお、ここでは段階数を多くして実質的に連続して徐々に戻す動作も含めて段階的に戻す動作であると以下定義する。これにより、制御が複雑になるものの、前記突入電流の抑制精度を向上することができ、さらなる負荷19への電圧安定化が図れる。
また、充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuへ戻す際に、本実施の形態2のようにソフトウエアにより戻すものに限定されず、ハードウエアにより戻す構成としてもよい。すなわち、例えば制御回路27にタイマ回路を内蔵し、前記タイマ回路からの出力に応じて、あらかじめ定めた期間内に段階的に充電電流上限設定値Icsを大きくするような構成とする。これにより、制御回路27は図4のS51の段階で前記タイマ回路による制御を開始させれば、後はハードウエアにより自動的に定めた期間内に段階的に充電電流上限設定値Icsが既定上限電流値Icuまで大きくなる。このような構成とすれば図4のS51とS55からS59までの動作を行なう必要がなくなる。その結果、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至った際に、充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuとする動作が不要となりソフトウエアを簡略化できる。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における電源装置のブロック回路図である。なお、図5において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
本実施の形態3の電源装置の構成において、図1と同じ部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、図5における特徴となる構成はバッテリ11にバッテリ電圧検出回路31を電気的に接続した点である。バッテリ電圧検出回路31は制御回路27とも信号系配線で電気的に接続され、バッテリ電圧Vbを検出して制御回路27に出力する構成を有する。
次に、このような電源装置の特徴となる動作について説明する。本実施の形態3ではバッテリ電圧Vbを検出することができる構成であるので、制御回路27によりDC/DCコンバータ21を制御することで、バッテリ電圧Vbを制御対象とすることができる。その具体的な動作は以下の通りである。
制御回路27は、前記アイドリングストップ状態の場合に、DC/DCコンバータ21が出力電圧設定値Vosに制御する対象を、DC/DCコンバータ21の負荷19に対する出力電圧Voとする。この動作は実施の形態1と同じである。
一方、前記アイドリングストップ状態以外では、制御回路27はDC/DCコンバータ21が出力電圧設定値Vosに制御する対象を、バッテリ電圧検出回路31で検出されるバッテリ電圧Vbとする。具体的には、実施の形態1で説明したように前記アイドリングストップ状態以外では出力電圧設定値Vosには通常電圧Vn(=15V)が設定されるので、DC/DCコンバータ21はバッテリ電圧Vbが出力電圧設定値Vos(=15V)になるように制御する。これにより、バッテリ電圧Vbがより正確に15Vに制御されるので、バッテリ11の開放電圧OCV(=12V)や発電機電圧Vg(=14.5V)よりも高い電圧に制御する確実性が増す。その結果、蓄電部23に蓄えられた前記回生電力をバッテリ11や発電機15からの電力に優先して、かつ安定に負荷19に供給できる上、前記回生電力のバッテリ11への充電が行なえるため、前記回生電力を有効活用する確度が向上する。さらに、発電機15の発電をより確実に抑制することができるので、前記エンジンの負担を軽減することによる省燃費化も図ることができる。
なお、実施の形態1では前記アイドリングストップ状態以外であってもDC/DCコンバータ21は出力電圧Voが出力電圧設定値Vos(=15V)になるように制御しているが、この構成はDC/DCコンバータ21からバッテリ11や発電機15までの電力系配線の抵抗値が極めて小さい場合であれば前記回生電力の有効活用が可能である。しかし、前記電力系配線が長い車両構成などの場合のように、前記抵抗値(スイッチ17の内部抵抗値も含む)がある程度の大きさを有すると、DC/DCコンバータ21からバッテリ11や発電機15までに電圧降下が発生する。その結果、DC/DCコンバータ21から出力される出力電圧Voが15Vであっても、前記電力系配線やスイッチ17による前記電圧降下により、例えば発電機15におけるDC/DCコンバータ21からの電圧が発電機電圧Vg(=14.5V)を下回る可能性がある。そうすると、発電機電圧Vgの方が高電圧となるので、蓄電部23から前記回生電力を放電しているにもかかわらず、発電機15からの電力もバッテリ11などに供給されてしまい、前記回生電力の有効活用が不十分となる。さらに、前記電圧降下によりDC/DCコンバータ21からの電圧がバッテリ11の開放電圧OCV(=12V)よりも下回ると、前記回生電力のバッテリ11への充電もできなくなる。
このような理由から、前記車両における車種やグレード毎にそれぞれ異なる前記抵抗値がどのような値であっても前記回生電力の有効活用を図ることができ、かつ負荷19を安定駆動することができる電源装置を構築する場合は、本実施の形態3の構成が望ましい。
なお、本実施の形態3の構成ではバッテリ電圧検出回路31が必要になるが、これは例えば制御回路27や蓄電部電圧検出回路25とともにDC/DCコンバータ21に内蔵する構成とすることで、実施の形態1に比べ回路規模をそれほど大きくすることなく実現することができる。
上記までに説明した以外の動作(アイドリングストップ時の詳細動作など)は実施の形態1と同じである。
以上の構成、動作により、前記瞬時低下の発生時に蓄電部23から負荷19へ遅延することなく安定して電力を供給できる上、前記回生電力を有効利用する確実性が高い電源装置を実現できる。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における電源装置のブロック回路図である。なお、図6において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
本実施の形態4の電源装置の構成において、図1と同じ部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、図6における特徴となる構成は発電機15として発電電圧の制御対象となる回路部分に設けられる調整端子33を有するものを用いた点である。すなわち、発電機15は調整端子33の電圧を検出し、その電圧が既定の発電機電圧Vg(=14.5V)になるように制御する機能を有する。そして、本実施の形態4では、調整端子33を図6に示すようにDC/DCコンバータ21の負荷19に対する出力電圧Voを検出するように接続している。
次に、このような電源装置の動作について説明する。
まず、前記アイドリングストップ状態の場合は発電機15が停止しているので、調整端子33による発電機電圧Vgの制御は行なわれない。従って、実施の形態1と同じ動作を行なう。
次に、前記アイドリングストップ状態以外の場合、発電機15は調整端子33の電圧が発電機電圧Vg(=14.5V)になるように制御する。しかし、蓄電部23に前記回生電力が蓄えられている場合は、実施の形態1で述べたようにDC/DCコンバータ21は出力電圧Voが通常電圧Vn(=15V)になるように制御する。その結果、調整端子33の電圧が発電機電圧Vgより高くなるため、発電機15は発電を行なわない。従って、前記エンジンへの負担が軽減され省燃費化が可能となる。同時に、発電機15に優先して前記回生電力を負荷19に安定供給できるので、前記回生電力の有効活用も可能となる。このように発電機15の発電電圧の制御対象をDC/DCコンバータ21の出力付近とする構成により、実施の形態3で述べた前記電力系配線による前記電圧降下の影響を低減することができる。従って、実施の形態3と同様の理由から、前記車両における車種やグレード毎にそれぞれ異なる前記抵抗値がどのような値であっても前記回生電力の有効活用を図ることができ、かつ負荷19を安定駆動することができる電源装置を構築する場合は、本実施の形態4の構成も有効である。なお、本実施の形態4の場合、発電機15が調整端子33を備える構成のものを使用する必要があるが、バッテリ電圧検出回路31は不要となり、実施の形態3よりは回路構成が簡略化できる。
上記までに説明した以外の動作(アイドリングストップ時の詳細動作など)は実施の形態1と同じである。
以上の構成、動作により、前記瞬時低下の発生時に蓄電部23から負荷19へ遅延することなく安定して電力を供給できる上、前記回生電力を有効利用する確実性が高い電源装置を実現できる。
なお、実施の形態1の構成では、発電機15はその出力端子が既定の発電機電圧Vg(=14.5V)になるように制御する構成のものを使用している。これは、調整端子33が発電機15の出力端子に直接接続されている構成に相当する。従って、前記電圧降下の影響が小さい場合は、本実施の形態4に比べ構成が簡単な実施の形態1の構成が望ましい。
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5における電源装置のブロック回路図である。図8は、本発明の実施の形態5における電源装置の他の構成のブロック回路図である。なお、図7、図8において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
図7、図8において、図6と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、実施の形態4に対する本実施の形態5の特徴となる構成は、調整端子33、および制御回路27と電気的に接続される調整端子電圧検出回路35を備えた点である。従って、調整端子電圧検出回路35は調整端子33における調整端子電圧Vtを検出して制御回路27に出力する。
また、本実施の形態5では、実施の形態4と異なり、調整端子33を図7の構成ではバッテリ11の正極側に、図8の構成では発電機15の前記出力端子に、それぞれ接続している。従って、図7の構成では発電機15はバッテリ11の正極側で調整端子33を接続した部分が、図8の構成では発電機15の前記出力端子が、それぞれ既定の発電機電圧Vg(=14.5V)になるように発電する。
次に、このような電源装置の動作について説明する。
制御回路27は、前記アイドリングストップ状態の場合に、DC/DCコンバータ21が出力電圧設定値Vosに制御する対象を、DC/DCコンバータ21の負荷19に対する出力電圧Voとする。この動作は実施の形態1と同じである。なお、発電機15は停止しているので、調整端子33による発電機電圧Vgの制御は行なわれない。
一方、前記アイドリングストップ状態以外では、制御回路27はDC/DCコンバータ21が出力電圧設定値Vosに制御する対象を、調整端子電圧検出回路35で検出される調整端子電圧Vtとする。その具体例を図7の構成で説明する。
実施の形態1で説明したように前記アイドリングストップ状態以外では出力電圧設定値Vosには通常電圧Vn(=15V)が設定されるので、DC/DCコンバータ21は調整端子電圧Vtが出力電圧設定値Vos(=15V)になるように制御する。ここで、図7の構成では調整端子33がバッテリ11の正極側に設けられているので、実質的には実施の形態3と同様にバッテリ電圧Vbが出力電圧設定値Vos(=15V)になるように制御されることになる。従って、前記電力系配線の抵抗値による前記電圧降下の影響をほとんど受けない状態でバッテリ電圧Vbがより正確に15Vに制御されるので、バッテリ11の開放電圧OCV(=12V)や発電機電圧Vg(=14.5V)よりも高い電圧に制御する確実性がさらに増す。その結果、実施の形態1〜3に比べ前記電力系配線の抵抗値による損失が最も抑制され高効率化が図れる。なお、蓄電部23に蓄えられた前記回生電力をバッテリ11や発電機15からの電力に優先して、かつ安定に負荷19に供給でき、前記回生電力のバッテリ11への充電も行なえることから、前記回生電力を有効活用する確度が向上するという効果も実施の形態2、3と同様に得られる。加えて、調整端子電圧Vtが発電機電圧Vgより高くなるため発電機15は発電を行なわず、省燃費化が可能となるという効果も得られる。
なお、図8の構成では発電機15の前記出力端子に調整端子33が設けられるので、前記アイドリングストップ状態以外では前記出力端子における調整端子電圧Vtが出力電圧設定値Vos(=15V)になるように制御されることになる。従って、発電機15から調整端子33までの前記電力系配線が最短となり、その抵抗値による前記電圧降下の影響も最小に抑制できる。ゆえに、調整端子電圧Vtが発電機電圧Vgより高くなる確実性が増し、発電機15の発電を停止させる可能性が高まる。その結果、前記エンジンへの負担を軽減し省燃費化を図る点で最も効果が得られる構成となる。
このように、発電機15の調整端子33を設けた部分に調整端子電圧検出回路35を備える構成とすることにより、前記アイドリングストップ状態以外の際に制御回路27は前記電力系配線の抵抗値の影響を極力受けない状態でDC/DCコンバータ21が調整端子電圧Vtを出力電圧設定値Vos(=15V)とするように制御できるので、例えば前記車両の車種やグレード等に応じて調整端子33を前記電力系配線における発電電圧の制御対象となるどの回路部分に設けたとしても、前記回生電力の高効率な有効活用と省燃費化が図れる。
上記までに説明した以外の動作(アイドリングストップ時の詳細動作など)は実施の形態1と同じである。
以上の構成、動作により、前記瞬時低下の発生時に蓄電部23から負荷19へ遅延することなく安定して電力を供給できる上、前記回生電力を有効利用する確実性が高く高効率で省燃費の電源装置を実現できる。
なお、本実施の形態5の構成では調整端子電圧検出回路35が必要になるが、これは実施の形態3と同様に例えば制御回路27や蓄電部電圧検出回路25とともにDC/DCコンバータ21に内蔵する構成とすることで、実施の形態1に比べ回路規模をそれほど大きくすることなく実現することができる。
(実施の形態6)
図9は、本発明の実施の形態6における電源装置のブロック回路図である。なお、図9において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
図9において、図1と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、実施の形態1に対する本実施の形態6の特徴となる構成は次の通りである。
1)発電機15をバッテリ11との並列接続構成から蓄電部23との直接並列接続構成とした。
2)発電機15の発電可能な発電機電圧Vgは車両用制御回路29からの発電信号ALTに応じて可変できる構成とした。
3)発電機15と直接接続される蓄電部23の充放電時における蓄電部電圧Vcをバッテリ11の電圧より高い範囲とした。ここで、蓄電部電圧Vcにおける満充電電圧Vmを29Vとした。
4)満充電電圧Vm(29V)に対応するために、蓄電部23の電気二重層キャパシタの数を12本(1本当たり最大2.42V)とした。
上記以外の構成は実施の形態1と同じである。なお、このような構成により、発電機15から直接蓄電部23に電力を充電できるので、回生により発電される大きな電力を、DC/DCコンバータ21を介することなく効率よく充電できるという特長を有する。また、本実施の形態6ではDC/DCコンバータ21は蓄電部23側から負荷19側への給電のみでよいが、後述するようにアイドリングストップが開始され、制御回路27が下限電圧設定値Vcsを蓄電部下限電圧Vckに切り替えた後、蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2を維持する動作が必要となるため、実施の形態1と同様に双方向DC/DCコンバータ構成とした。但し、この構成により充電電流上限設定値Icsを0Aより大きい数値に設定すると、出力電圧Voが出力電圧設定値Vosより高い場合、DC/DCコンバータ21は蓄電部23を充電する方向に動作してしまう。これはバッテリ11の電力を蓄電部23に充電することになり、バッテリ11からの不要な電力の持ち出しとなるため、本実施の形態6では既定上限電流値Icuを0Aとしている。これにより、DC/DCコンバータ21の充電電流は常に実質的に0Aに固定されることになり、上記した不要な電力の持ち出しを抑制できる。なお、実質的に0Aであるということは、DC/DCコンバータ21に内蔵された前記電流検出回路の検出精度やDC/DCコンバータ21の動作精度等の誤差範囲内で0Aであることと定義する。
次に、このような電源装置の動作について説明する。
まず、車両が制動せずに通常走行している場合は、制御回路27はスイッチ17をオンにするとともに、出力電圧Voが通常電圧Vn(ここでは13Vとする)になるようにDC/DCコンバータ21を動作させる。すなわち、出力電圧設定値Vosには通常電圧Vn(=13V)が設定されている。これにより、発電機電圧Vg(=14.5V)がDC/DCコンバータ21で降圧されてバッテリ11が充電されるとともに、発電電力が負荷19に供給される。なお、この際に蓄電部23は発電機15と並列接続されているので、蓄電部電圧Vcはバッテリ11の充電電圧以上を維持する必要がある。具体的には、車両用制御回路29は蓄電部電圧Vcが十分に高い場合は発電機15が発電を行なわないように制御し、蓄電部電圧Vcがバッテリ11の充電電圧より高い値(ここでは発電機電圧Vgと等しい14.5Vとする)に至るまで蓄電部23が放電すると発電機15を動作させて蓄電部電圧Vcがバッテリ11の充電電圧以上を維持するよう制御すればよい。その結果、回生が行われていない通常走行時の蓄電部電圧Vcは発電機電圧Vg(=14.5V)以上となる。
ここで、蓄電部電圧Vcの制御対象とする電圧値は上記した発電機電圧Vg(=14.5V)に限定されるものではなく、蓄電部23の放電により蓄電部電圧Vcが低下し、DC/DCコンバータ21が出力電圧Voを維持できなくなるまでの範囲で設定すればよい。例えば、DC/DCコンバータ21に内蔵されるハイサイドスイッチング素子(図示せず)をデューティーが1になるまで動作できるような構成とする。これにより、蓄電部電圧Vcが十分に高く発電機15が発電を行なわない場合であれば、出力電圧Vo=13Vを得る際に、蓄電部電圧Vc=13VまでDC/DCコンバータ21を動作させることができるので、蓄電部23に蓄電された電力を有効利用できる。なお、DC/DCコンバータ21が出力電圧Voを維持できなくなった場合、すなわち蓄電部電圧Vcが13Vに至った場合は、車両用制御回路29が発電機15を動作させるように制御するが、バッテリ11のSOCが十分高い場合は、引き続きバッテリ11から放電するように制御してもよい。
これらのことから、本実施の形態6では蓄電部最低電圧Vck2を13Vとし、通常走行時には下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=13V)に設定している。ここで、蓄電部最低電圧Vck2を13Vとすることにより、アイドリングストップ後の前記エンジン再始動時に負荷19へ供給するために必要な電力が得られるかを実施の形態1と同様にして検証する。
まず、DC/DCコンバータ21が動作できる電圧(蓄電部下限電圧Vck)であるが、本実施の形態6では実施の形態1と異なり蓄電部電圧Vcがバッテリ11の電圧よりも高い構成であるので、DC/DCコンバータ21は蓄電部電圧Vcを降圧することにより放電する。この時、蓄電部電圧Vcが下がってきてもDC/DCコンバータ21の前記ハイサイドスイッチング素子(図示せず)をデューティーが1(ほぼオン状態)になるよう制御することで、DC/DCコンバータ21から蓄電部電圧Vcをほぼそのまま出力することができる。このことから、瞬時低下が発生する既定期間tsが経過後の蓄電部電圧Vcは最低でも負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)であれば十分である。従って、蓄電部下限電圧Vckは負荷駆動最低電圧Vdとなる。
他のパラメータである負荷19の消費電力(500W)、既定期間ts(2秒)、電気二重層キャパシタ1個の容量値(500F)は実施の形態1と同じであるとすると、蓄電部最低電圧Vck2は実施の形態1で述べたエネルギ式を用いて、Vck2=12.6Vと求められる。従って、マージンを考慮して蓄電部最低電圧Vck2を13Vと決定してもよいことがわかる。なお、これらの数値から、既定電圧幅ΔVcは13V−10.5V=2.5Vとなる。
次に、前記車両が制動され減速すると、車両用制御回路29は例えばブレーキの踏み込み速度や車両減速度等からブレーキフィーリングや回生効率が最適となるような発電機15の発電電力指令を求め、発電信号ALTとして発電機15へ送信する。これを受け、発電機15は求められた発電電力を出力する。なお、車両制動状態は刻々と変化するので、車両用制御回路29はリアルタイムに前記発電電力指令を求めて発電機15に送信する。また、車両制動の事実は実施の形態1と同様に車両用制御回路29からデータ信号dataにより制御回路27にも送信される。
これらの動作により、制御回路27は次のように制御する。まず、スイッチ17をオンのままとする。次に、蓄電部電圧Vcの監視を行なう。その理由は以下の通りである。
前記車両の制動、減速が起こると発電機電圧Vgが上昇するため、それに応じて発生した初期の急峻な回生電力は充電受入性の良好な蓄電部23に直接充電される。従って、蓄電部23への充電が低損失に行なわれ、効率よく回生電力を回収することができる。この充電により、蓄電部電圧Vcは発電機15の発電とともに上昇する。このような蓄電部電圧Vcの上昇は蓄電部電圧検出回路25を介して制御回路27により監視されている。そして、制御回路27と交信している車両用制御回路29により蓄電部23の満充電電圧Vm(=29V)以内で充電が行なわれるように発電機15が制御される。
一方、前記回生電力が発生している場合も、DC/DCコンバータ21は通常走行時と同様に出力電圧Voが通常電圧Vn(=13V)になるように制御する。この際、DC/DCコンバータ21の入力電圧に相当する発電機電圧Vgは減速状態に応じて変化するが、DC/DCコンバータ21により出力電圧Voが安定化されるので、バッテリ11の充電や負荷19への電力供給は減速時にも継続される。ゆえに、前記回生電力の一部はバッテリ11や負荷19にも供給される。
制動後、前記車両が停止すると、前記車両はアイドリングストップ状態となる。この際に、制御回路27は車両用制御回路29からの前記エンジンの再始動に関するデータ信号dataを受信してからDC/DCコンバータ21を制御することによる応答遅れを発生させないようにするために、データ信号dataの受信を行なわなくてもスタータ13の駆動による前記瞬時低下の発生期間tsに亘って蓄電部23の前記回生電力を負荷19に供給するための準備動作を行なう。具体的には、制御回路27はスイッチ17をオフにするとともに、DC/DCコンバータ21の下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=13V)から、それより既定電圧幅ΔVc(=2.5V)だけ低い蓄電部下限電圧Vck(=10.5V)に切り替える。但し、この時点では出力電圧設定値Vosは通常電圧Vn(=13V)のままである。すなわち、本実施の形態6では通常電圧Vnとアイドリングストップ時電圧Viが等しい値として設定されている。これは、本実施の形態6において発電機15と蓄電部23が直接並列接続され、実施の形態1のように出力電圧Voを発電機電圧Vg(=14.5V)より高くする必要がないからである。
これらにより、DC/DCコンバータ21は蓄電部23の前記回生電力を放電して負荷19に供給する。なお、スイッチ17はオフであり、出力電圧Voは通常電圧Vn(=13V)になるようにDC/DCコンバータ21が放電するので、出力電圧Voはバッテリ11の開放電圧OCVより高くなりダイオード26はオフになる。ゆえに、前記回生電力は負荷19にのみ供給される。
アイドリングストップ状態が長い場合、蓄電部電圧Vcが徐々に低下していく。そこで、制御回路27は蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至るまでの範囲で蓄電部23を放電するようにしている。蓄電部電圧Vcが蓄電部最低電圧Vck2に至れば、制御回路27は実施の形態1と同様に蓄電部23への充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuから0Aに設定して蓄電部23を充電するようにDC/DCコンバータ21を制御する。但し、上記したように既定上限電流値Icuは元々0Aに設定されているので、充電電流上限設定値Icsは0Aのままである。また、DC/DCコンバータ21を蓄電部23の充電方向に制御するために、具体的には出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=13V)から負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に切り替える。これにより、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voを負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)に下げるように、すなわち蓄電部23を充電する方向に動作する。しかし、充電電流上限設定値Icsは0Aであるので、これを超えない動作が優先され、蓄電部23へは充電が行なわれず、蓄電部電圧Vcは蓄電部最低電圧Vck2を維持することになる。なお、このような動作により、DC/DCコンバータ21から負荷19への前記回生電力の供給が停止するので、ダイオード26がオンになり、以後はバッテリ11の電力が負荷19に供給される。但し、バッテリ11のSOCが低く十分に負荷19へ電力供給ができないときは、前記エンジンを再始動する。
次に、アイドリングストップが終了し、前記車両が前記エンジンの再始動を行う動作について述べる。実施の形態1と同様に、運転者のペダル踏み替えなどにより車両用制御回路29がアイドリングストップの終了を判断すると、すぐにスタータ13の駆動を行なう。これにより、バッテリ11の電圧は急激に低下するので、ダイオード26はオフになる。これに伴い、出力電圧Voも低下するが、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voが負荷駆動最低電圧Vd(=10.5V)になるように動作するので、それにより蓄電部23の前記回生電力が放電される。なお、DC/DCコンバータ21の放電電流上限設定値Idsは実施の形態1と同様に50Aの固定値としている。従って、DC/DCコンバータ21は50Aまでの範囲で蓄電部23の前記回生電力を負荷19に放電する。このような動作により、バッテリ11がスタータ13を駆動し、前記瞬時低下が発生している既定期間tsに亘って、負荷19は蓄電部23から電力が供給され駆動し続けることができる。
以上のように、前記エンジンの再始動時に制御回路27は何ら制御を行なうことなく前記瞬時低下の既定期間tsに亘り蓄電部23の電力を負荷19に供給できるので、応答遅れがほとんど発生せずに負荷19への前記瞬時低下の影響を抑制することができる。この際、上記したように、負荷19を既定期間tsに亘って駆動できるだけの電力が蓄電部23に蓄えられているので、負荷19の動作は既定期間ts内で確保できる。
既定期間tsが経過してスタータ13の駆動が終了すると、前記エンジンが再始動し発電機15が発電する準備が整う。従って、もはや瞬時低下は発生しないので、制御回路27は充電電流上限設定値Icsを既定上限電流値Icuに、下限電圧設定値Vcsを蓄電部最低電圧Vck2(=13V)に、それぞれ戻すとともに、スイッチ17をオンにする。なお、上記したように既定上限電流値Icuは0Aであるので、実質的には充電電流上限設定値Icsは変更されず0Aのままである。
その後、制御回路27は蓄電部23を放電するようにDC/DCコンバータ21を制御する。具体的には、DC/DCコンバータ21の出力電圧設定値Vosを通常電圧Vn(=13V)に設定する。これにより、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voが通常電圧Vn(=13V)になるように動作する。但し、この際の発電機15の制御は蓄電部電圧Vcによって以下に示すように異なる。
まず、アイドリングストップ期間が短いなどにより前記回生電力をあまり消費せず、蓄電部電圧Vcが発電機電圧Vg(=14.5V)より高い状態である場合、その情報はデータ信号dataにより制御回路27から車両用制御回路29に送信される。これを受け、車両用制御回路29は発電機15による発電を停止するように発電信号ALTを出力する。これにより、発電機15は発電を行なわず空回り状態となるので、発電機15の駆動トルクが小さくなり燃料消費低減が可能となる。その際、DC/DCコンバータ21から出力される電力は蓄電部23からのもののみとなる。従って、蓄電部23に蓄えた前記回生電力がバッテリ11や負荷19に供給されるので、前記回生電力の有効活用が可能となり効率が向上する。さらに、蓄電部23の電力がバッテリ11と負荷19の両方に供給されることで、蓄電部23の電力を素早く消費することができ、次回の回生電力を効率よく蓄電部23に充電できるよう備えておくことが可能となる。その後、蓄電部電圧Vcが低下し発電機電圧Vg(=14.5V)に至れば、車両用制御回路29は発電機15の発電を開始するよう発電信号ALTを送信する。これを受け、発電機15は通常走行時の発電機電圧Vg(=14.5V)になるように発電を行なう。これにより、蓄電部電圧Vcは発電機電圧Vgを維持する。また、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voが13Vになるように制御しているので、発電機電圧Vgを降圧してバッテリ11と負荷19に供給する。
なお、上記の動作において、スイッチ17は蓄電部電圧Vcが発電機電圧Vgに至るまでオフのままとしてもよい。この場合は、蓄電部23の電力がバッテリ11には供給されず、負荷19にのみ供給される。これにより、バッテリ11に前記回生電力が一旦充電され、その後放電されることによるバッテリ11の内部抵抗に起因した損失を低減することができる。但し、上記したように素早く蓄電部23の電力を消費して次回に発生する回生電力に備えることが十分にできなくなる可能性がある。従って、車両用制御回路29はバッテリ11のSOCや負荷19の消費電流から効率を求め、前記回生電力をバッテリ11に充電してもよい最適な時点でスイッチ17をオンにするように制御すればよい。
次に、アイドリングストップ期間が長いなどにより前記回生電力をほとんど消費し、蓄電部電圧Vcが蓄電部下限電圧Vck(=10.5V)以下の状態である場合、これ以上蓄電部23からの放電ができないので、車両用制御回路29は直ちに発電機電圧Vg(=14.5V)を出力するように発電機15を制御する。これにより、蓄電部電圧Vcは発電機電圧Vgに至るまで充電され、その後発電機電圧Vgを維持する。また、DC/DCコンバータ21は出力電圧Voが13Vになるように制御しているので、発電機電圧Vgを降圧してバッテリ11と負荷19に供給する。
以上までに説明したアイドリングストップ時の制御回路27の動作は、各種電圧の設定値が異なるものの、実施の形態1で説明した図2の動作と同じである。従って、本実施の形態6のような発電機15と蓄電部23が直接並列接続される構成であっても、アイドリングストップ時の動作は同じでよい。なお、本実施の形態6では既定上限電流値Icuが0Aであるため、図2のS23とS29の動作はなくてもよい。
次に、前記車両が走行を開始した後は上記した通常走行状態であるので、その後の動作を繰り返す。
以上の構成、動作により、発電機15と蓄電部23を直接並列接続した構成であっても、前記瞬時低下の発生時に蓄電部23から負荷19へ遅延することなく安定して電力を供給できる回生電力回収機能付き電源装置を実現できる。
なお、本実施の形態6の構成では、発電機15と蓄電部23が直接並列接続されているため、蓄電部23への前記プリチャージが発生してもDC/DCコンバータ21が安定した出力電圧Vo(=13V)を出力する。従って、実施の形態1で述べたような下限電圧設定値Vcsを蓄電部下限電圧Vckから既定速度vで徐々に蓄電部最低電圧Vck2に戻す動作は行なわなくてもよい。
また、本実施の形態6では充電電流上限設定値Icsが0Aであるため、実施の形態2で述べた充電電流上限設定値Icsを段階的に戻す動作は不要である。
また、本実施の形態6において、前記車両の使用開始時に蓄電部電圧Vcが蓄電部下限電圧Vckより低い場合は、前記エンジンの始動後に発電機15により前記プリチャージが行なわれる。但し、蓄電部電圧Vcが蓄電部下限電圧Vckよりも非常に小さい場合、例えば蓄電部電圧Vcが前記車両の非使用期間中に自己放電により0V近傍まで低下した場合は、発電機15で前記プリチャージを行なうと、発電機15から蓄電部23に大きな突入電流が流れる可能性がある。そこで、車両用制御回路29は前記車両の使用開始時に蓄電部電圧Vcが極めて低下している場合は、発電機15の発電電力を徐々に大きくすることで前記突入電流を低減したり、バッテリ11からも前記プリチャージができるように、DC/DCコンバータ21の充電電流上限設定値Icsを前記車両の使用開始時に限って一時的に例えば10A程度の値に設定するよう制御回路27を制御すればよい。
また、本実施の形態6ではDC/DCコンバータ21を双方向降圧型構成としたが、これは双方向に昇圧も降圧も可能な双方向昇降圧型構成としてもよい。この場合は蓄電部下限電圧Vckを例えば実施の形態1と同様に3V程度まで下げることができる。その結果、より多くの前記回生電力を回収することができる。但し、DC/DCコンバータ21の構造や制御が複雑になり損失も大きくなるので、発生する前記回生電力の大きさや負荷19の消費電力、各方式によるDC/DCコンバータ21の効率比較等を考慮し、最適構成のDC/DCコンバータ21を選択すればよい。
また、実施の形態1〜6における蓄電部23の電気二重層キャパシタの本数は一例であり、必要とされる電力仕様や用途等に応じ最適な本数とすればよい。
また、実施の形態1〜6において、蓄電部電圧検出回路25をDC/DCコンバータ21と別体構成で示したが、これは蓄電部電圧検出回路25をDC/DCコンバータ21に内蔵する構成としてもよい。この場合、蓄電部電圧VcはDC/DCコンバータ21から制御回路27に出力される構成となる。また、蓄電部電圧検出回路25と制御回路27をDC/DCコンバータ21に内蔵することで、これらを一体化する回路構成としてもよい。この場合は回路全体の小型化が図れる。
また、実施の形態1〜6において、蓄電部23には電気二重層キャパシタを用いたが、これは電気化学キャパシタ等の他のキャパシタでもよい。
また、実施の形態1〜6において、スイッチ17にFETを用いたが、これはノーマリーオフ型のリレーでもよい。但し、前記リレーは機械的接点や機械的動作を伴うため、高信頼性の観点からは前記FETを用いる方が望ましい。