JP2011219801A - オーステナイト系耐熱鋳鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄(Fe)をベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼であって、全体を100質量%(以下、単に「%」と表示する。)としたときに、炭素(C):0.4〜0.8%、ケイ素(Si):3.0%以下、マンガン(Mn):0.5〜2.0%、リン(P):0.05%以下、硫黄(S):0.03〜0.2%、クロム(Cr):18〜23%、ニッケル(Ni):3.0〜8.0%、窒素(N):0.05〜0.4%を含有すると共に、炭素(C)に対するクロム(Cr)の割合を22.5≦Cr/C≦57.5の範囲とする。また、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびニオブ(Nb)の1種または2種以上を合計で0.2%未満含有するようにする。
【選択図】なし
Description
[実施例1]
表1に示す組成を持つ、Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼の各試材(本発明材1、比較材1、2)を鋳造により得た。鋳造は、50kg高周波誘導炉を用いて大気溶解を行い、Fe−Si(75重量%)により脱酸処理を行った。なお、比較材1はJIS規定のSCH12相当、比較材2はJIS規定のSCH22相当の一般材である。
図1から、本発明材1と比較材1、2を比較すると、本発明材1は熱疲労特性が著しく向上しているのがわかる。また、図2から、引張強さについては、本発明材1は、比較材1、2よりNi含有量が低いが、オーステナイト相安定元素であるC、Mn、Nが合計で1.93%含まれており、それがオーステナイト相を安定化させるために、10%Niを含有する比較材1よりも優れており、21%Niを含有する比較材2と同等となっている。また、図2から、本発明材1と比較材1、2を比較すると、本発明材1は伸びが向上しているのがわかる。すなわち、本発明材1では、引張強さと靱性を両立することで熱疲労特性が向上している。
Cr/Cの範囲と、炭化物生成元素(V、Mo、W、Nb)の含有範囲について、検証した。実施例1と同様にして、表2に示す組成を持つ各試材(本発明材1〜8、比較材1〜8)を鋳造により得た。各試材について、実施例1と同様にして熱疲労試験を行い、破断までの回数を表2に破断回数(n)として示した。また、図3には、Cr/Cの値を横軸に、破断回数(n)を縦軸として、各試材をプロットした。なお、図3において、本発1〜8は本発明材1〜8を示し、比1〜8は比較材1〜8を示す。また、表2において、本発明材1および比較材1、2は、表1に示したと同じ試材である。
表2および図3に示すように、Cr/C比が22.5≦Cr/C≦57.5の範囲である本発明材1〜8は、破断回数が142以上であり、比較材1〜8を大きく上回っている。このことから、本発明材1〜8は、比較材1〜8と比較して、熱疲労特性が著しく向上しているのがわかる。また、比較材5〜8は、Cr/C比は本発明の範囲であるが、炭化物生成元素であるV、Mo、W、Nbのいずれかを0.2%含むために、靱性が低下したことで、熱疲労特性が本発明材と比較して劣っている。
Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼において、Cは高温強度の向上と鋳造性の向上に有効であることが知られている。そこで、本発明において、C含有量が0.4〜0.8%の範囲が適切であることの検証を行った。実施例1と同様にして、表3に示す組成を持つ各試材(本発明材9〜11、比較材9、10)を鋳造により得た。各試材について、湯流れ性を評価する断面形状(9×7mm)の渦巻き試験片に注湯温度1500℃で鋳造した。その結果を、図4に、C含有量を横軸とし、湯流れ長さを縦軸として示した。
図4に示されるように、C含有量が0.4%未満では湯流れ長さが急激に低下しており、鋳造性が悪くなることがわかる。また、図5に示されるように、C含有量が0.8%を超えると伸びが著しく低下しているのがわかる。これにより、本発明において、Cが0.4〜0.8%の範囲が適切であることが検証される。
Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼において、Siは、耐酸化性と鋳造性の改善に有効であるが、含有量が大きくなると靱性が低下することが知られている。そこで、本発明において、Si含有量は0.3%以下であることが適切であることの検証を行った。実施例1と同様にして、表5に示す組成を持つ各試材(本発明材1、14、15、比較材13)を鋳造により得た。各試材について、常温でJISZ2241の規定に準拠した引張試験を行った。その結果を、図6に、Si含有量を横軸とし、伸び(%)を縦軸として示した。なお、表5において、本発明材1は、実施例1でのものと同じ試材である。
図6に示されるように、Si含有量が増すと共に伸びが低下しており、3%を超えると著しく低下している。これにより、本発明において、Si含有量が0.3%以下であることが適切であることが検証される。
Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼において、Mnはオーステナイト安定化元素として有効に機能するが、所要量を超えると引張強度が低下することが知られている。そこで、本発明において、Mn含有量は2.0%未満が適切であることの検証を行った。実施例1と同様にして、表6に示す組成を持つ各試材(本発明材1、16、17、比較材14)を鋳造により得た。各試材について、JISG0567の規定に準拠した950℃での引張試験を行った。その結果を、図7に、Mn含有量を横軸とし、950℃引張強さ(Mpa)を縦軸として示した。なお、表6において、本発明材1は、実施例1でのものと同じ試材である。
図7に示されるように、Mn含有量が増すと共に引張強さが低下するが、2%を超えると著しく低下している。これにより、本発明において、Mn含有量が2.0%以下であることが適切であることが検証される。
Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼において、Sは、多量に添加すると加熱冷却の繰り返しによる熱劣化が発生しやすくなり、靱性も低下することが知られている。また、Sは、Mnと化合してMnS化合物を生成することで切削性が向上するが、所定量以下ではその効果が十分でない。そこで、本発明においてS含有量は0.03〜0.2%の範囲が適切であることの検証を行った。
図8に示されるように、S含有量が0.2%を超えると、熱疲労寿命が著しく低下することがわかる。また、図9に示すように、S含有量が0.03%未満では被削性の大きな向上は見られない。このことから、本発明において、S含有量が0.03〜0.2%の範囲であることが適切であることが検証される。
Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼において、Pは、多量に添加すると伸びが著しく低下することが知られている。そこで、本発明においてP含有量は0.05%以下であることが適切であることの検証を行った。
図10に示されるように、P含有量が0.05%を超えると伸びが著しく低下することがわかる。このことから、本発明において、P含有量が0.05%以下であることが適切であることが検証される。
本発明において、Crが18〜23%の範囲が適切であることを検証した。試験は、実施例1と同様にして、表10に示す組成を持つ各試材(本発明材1、21、22、比較材17、18)を鋳造により得、各試材について、950℃でJISG0567の規定に準拠した引張試験を行った。その結果を、Cr含有量を横軸とし、伸び強さ(Mpa)を縦軸として、図11に示した。また、伸びについてもCr含有量を横軸とし、伸び(%)を縦軸として、図12に示した。なお、表10において、本発明材1は表1に示したものと同じ試材である。
図11に示されるように、Crが18%未満のもの(比較材17)は引張強さが著しく低下した。これはCr量の減により基地組織中に固溶するCr量が減少するためである。また、伸びについては図12に示すとおりCr量増加に伴い靱性は低下するが、比較材18のように23%を超えると著しく低下することがわかる。これにより、本発明において、Cr含有量は18〜23%の範囲が適切であることが検証される。
Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼において、Nは高温強度の向上とオーステナイト相の安定化、組織の微細化に有効であることが知られている。しかし、少なすぎるとその効果が十分でなく、また多量に添加すると靱性が低下する。そこで、本発明において、Nの含有量が0.05〜0.4%の範囲であることが適切であることを検証した。
図13に示されるように、Nの含有量が0.05%未満では、引張強さが著しく低下して高温強度の向上効果が得られない。0.1%を超えると、N量増に伴い高温強度が向上することがわかる。また、図14に示されるように、Nの含有量増に伴い歩留まりが低下するが、0.4%を超えると著しく低下する。このことから、本発明において、Nの含有量は0.05〜0.4%の範囲が適切であることが検証される。
従来一般的に用いられているFeをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼は、Niが13%未満では、高温強度およびオーステナイトの安定化が十分でなくなっていたが、本発明材では、前記したようにNi当量((Nieq=Ni%+0.3C%+0.5Mn%+26(N%−0.02)+2.77)から計算される量のC、MnおよびNの添加により、Ni3〜8%の範囲の添加で、従来材と同等またはそれ以上の耐酸化性および高温強度が得られる。それを検証するために、950℃での引張強さについて、さらに追加的試験を行った。
図15に示すように、本発明材は、比較材1よりは高い高温強度(950℃引張強さ)が得られており、また比較材2と同等の高温強度が得られている。これにより、本発明において、Ni当量((Nieq=Ni%+0.3C%+0.5Mn%+26(N%−0.02)+2.77)から計算される量のC、MnおよびNの添加により、Ni3〜8%の範囲の添加で、高い高温強度が得られることが裏付けられる。
実施例2に示したように、炭化物生成元素(V、Mo、W、Nb)は、添加により靱性が低下して、高拘束時の熱疲労特性を低下させるために、本発明においては、それらの含有量は、0.2%未満であることが適切であることを実証したが、ここでは、0%〜0.2%の間の含有量においては、実用上十分に使用できる熱疲労寿命を備えた、本発明によるFeをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼が得られることを実証する。
図16に示すように、炭化物生成元素(V、Mo、W、Nb)を含まない試材は、大きな破断回数(n)を示し、含有量の増加と共に破断回数が低下するが、0.2%未満では、十分実用に供しうる値の破断回数を示している。この実施例からも、本発明において、炭化物生成元素(V、Mo、W、Nb)の1種または2種以上を合計で0.2%未満含有していても、熱疲労特性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼が得られることが実証される。
Claims (2)
- 鉄(Fe)をベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼であって、
全体を100質量%(以下、単に「%」と表示する。)としたときに、炭素(C):0.4〜0.8%、ケイ素(Si):3.0%以下、マンガン(Mn):0.5〜2.0%、リン(P):0.05%以下、硫黄(S):0.03〜0.2%、クロム(Cr):18〜23%、ニッケル(Ni):3.0〜8.0%、窒素(N):0.05〜0.4%を含有すると共に、
炭素(C)に対するクロム(Cr)の割合が、22.5≦Cr/C≦57.5の範囲であることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。 - 鉄(Fe)をベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼であって、
全体を100質量%(以下、単に「%」と表示する。)としたときに、炭素(C):0.4〜0.8%、ケイ素(Si):3.0%以下、マンガン(Mn):0.5〜2.0%、リン(P):0.05%以下、硫黄(S):0.03〜0.2%、クロム(Cr):18〜23%、ニッケル(Ni):3.0〜8.0%、窒素(N):0.05〜0.4%を含有すると共に、
炭素(C)に対するクロム(Cr)の割合が、22.5≦Cr/C≦57.5の範囲であり、
バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびニオブ(Nb)の1種または2種以上を合計で0.2%未満含有することを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
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