JP6227076B2 - 鉄系耐熱合金及び鉄系耐熱合金の製造方法 - Google Patents

鉄系耐熱合金及び鉄系耐熱合金の製造方法 Download PDF

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本発明は鉄系耐熱合金及び鉄系耐熱合金の製造方法に関し、特に急速加熱下での高温強度に優れた鉄系耐熱合金及び鉄系耐熱合金の製造方法に関する。
金属の塑性加工では加工機械・装置の強度の面からより低い負荷により所定の加工がなされることが要求される。このため被加工物を加熱することにより、被加工物の変形抵抗を減じた状態で塑性加工がなされることが一般的である。被加工物が鉄系の場合では、1000℃以上に加熱する熱間加工により、1回での加工量を大きくする塑性加工がなされている。
この熱間加工では加工に供する工具も高温の被加工物と接触することにより昇温する。このため工具も強度が低下し、加工時に荷重による変形が当然生じ易くなる。しかし、被加工物の加工精度を保証するには、工具が塑性変形し難いことが要求され、高い降伏強度を有する材料が必要とされるので、高温での強度が高い工具が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
たとえば被加工物の高付加価値化のために通常の炭素鋼からステンレス鋼のような高合金へ変更された場合、被加工物の高温強度が上昇するためさらに加工温度を上げて被加工物の変形抵抗を下げて加工する方法がとられる。このような場合には使用される工具の温度上昇も大きくなるため、工具の高温での強度をさらに高くし、寿命延長することが求められるようになる。
そして高温強度を測定するのにこれまでは通常の抵抗発熱体を用いた加熱炉により長時間かけて昇温した後、圧縮試験、引張試験を実施して特性を評価してきた。つまり平衡に近い状態での圧縮強度あるいは引張強度で材料の熱間加工用工具の特性を評価してきた。
しかし、実際の製造工程での加工では工具は高温に熱せられた被加工物と接触し、急速に昇温される非平衡の状態で荷重が負荷される場合が多い。このような状況下で使用される工具を平衡状態での特性・データで選定した場合、最適な工具材料の選択をすることは困難といえる。
そして、これまで現実の加工条件下を想定した急速加熱下での高温圧縮試験により評価した例は無い。そこで今回我々は熱間加工再現装置と呼称される装置を用いて、高周波加熱により急速な加熱、たとえば1100℃まで急速加熱し、その後圧縮荷重を負荷することで、急速加熱下での塑性変形が始まる直前の高温圧縮降伏強度を調べた。この評価方法を用いることにより、現実の加工に即した高温圧縮降伏強度に優れた鉄系耐熱合金の開発に至った。
この開発においては合金の組成とその合金組成の平衡状態における合金組織とに着目し、その結果、フェライトが消失する温度と、VC系炭化物が基地に固溶する温度とが急速加熱下での高温強度に大きな影響を有することを見い出した。
国際公開番号WO2014/050975
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、急速加熱下での高温強度に優れた鉄系耐熱合金及び鉄系耐熱合金の製造方法を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、C:0.14〜0.41mass%、Si:0.40〜1.09mass%、Mn:0.49〜1.13mass%、Ni:1.03〜3.09mass%、Cr:0.11〜1.01mass%、W:0.51〜4.39mass%、V:1.46〜3.41mass%であり、残部がFe及び不可避不純物である鉄系耐熱合金であって、この組成で構成される合金の平衡状態においてフェライトが消失する温度が883℃以上であり、かつバナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度が1110℃以上であることを特徴とする鉄系耐熱合金に関する。
請求項2に係る発明は、C:0.14〜0.41mass%、Si:0.40〜1.09mass%、Mn:0.49〜1.13mass%、Ni:1.03〜3.09mass%、Cr:0.11〜1.01mass%、W:0.51〜4.39mass%、V:1.46〜3.41mass%であり、残部がFe及び不可避不純物である金属溶湯を鋳造することにより、この組成で構成される合金の平衡状態においてフェライトが消失する温度が883℃以上であり、かつバナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度が1110℃以上である特性を有する鉄系耐熱合金を製造することを特徴とする鉄系耐熱合金の製造方法に関する。
請求項3に係る発明は、請求項2の製造方法の後に、700〜1150℃で2時間以上の熱処理を行うことを特徴とする鉄系耐熱合金の製造方法に関する。
熱処理の保持後の冷却は炉冷又は焼きならしとする。
請求項1に係る発明の鉄系耐熱合金によれば、合金組成と、その合金の平衡状態における金属組織とにより、急速加熱下での高温強度に優れる。
請求項2に係る発明の鉄系耐熱合金の製造方法によれば、前記組成の金属溶湯を鋳造することにより、急速加熱下での高温強度に優れた鉄系耐熱合金を容易に製造することができる。
請求項3に係る発明の鉄系耐熱合金の製造方法によれば、鋳造後の熱処理により鋳造歪が取り除かれ、また組織が均質化されるので、割れ等の損傷のおそれが少なくなる。また特許文献1に記されている水素による置き割れ防止にも効果があると考えられるため、鋳造後にこの熱処理を行うことが好ましい。
本発明の実施例と比較例の合金の組成を示す図である。 本発明の実施例と比較例の合金の平衡状態におけるフェライトの消失温度、バナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度、及び1100℃における炭化物割合を示す図である。 (a)は実施例合金P1の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P2の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P3の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P4の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P5の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P6の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P7の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P8の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P9の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P10の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P11の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P12の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P13の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P14の平衡状態計算結果である。 (a)は実施例合金P15の平衡状態計算結果であり、(b)は実施例合金P16の平衡状態計算結果である。 (a)は比較例合金C1の平衡状態計算結果であり、(b)は比較例合金C2の平衡状態計算結果である。 (a)は比較例合金C3の平衡状態計算結果であり、(b)は比較例合金C4の平衡状態計算結果である。 (a)は比較例合金C5の平衡状態計算結果であり、(b)は比較例合金C6の平衡状態計算結果である。 本発明の実施例の熱処理条件、ロックウェル硬さ、高温圧縮降伏強さを示す図である。 比較例の熱処理条件、ロックウェル硬さ、高温圧縮降伏強さを示す図である。 高温圧縮降伏試験での応力−歪曲線である。 本発明の実施例と比較例の高温圧縮降伏強さを示す図である。
以下、本発明に係る鉄系耐熱合金の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の鉄系耐熱合金は、C:0.14〜0.41mass%、Si:0.40〜1.09mass%、Mn:0.49〜1.13mass%、Ni:1.03〜3.09mass%、Cr:0.11〜1.01mass%、W:0.51〜4.39mass%、V:1.46〜3.41mass%であり、残部がFe及び不可避不純物である鉄系耐熱合金であって、この組成で構成される合金の平衡状態においてフェライトが消失する温度が883℃以上であり、かつバナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度が1110℃以上である。
本実施形態の鉄系耐熱合金に含有させる各元素について以下に説明する。
Cは、高温強度の向上に有効な元素であり、本実施形態の合金においては、優れた高温圧縮強度を発現する要因のVC系炭化物を金属組織中に生成・分散するのに必要な元素である。そして、Cの含有量の下限は0.14mass%であり、好ましくは0.15mass%であり、更に好ましくは0.16mass%である。また、Cの含有量の上限は0.41mass%であり、好ましくは0.39mass%であり、更に好ましくは0.37mass%である。
Cの含有量が上記下限未満であると、Cを含有させることによる効果が得られなくなるおそれがある。一方、Cの含有量が上記上限を超えると、Cがオーステナイト安定化元素であることにより、フェライト消失温度が低下する。このことにより、急速加熱条件化においても基地すべてが容易にオーステナイト化するので、本実施形態合金における特徴であるオーステナイトとフェライトとの2相の高温での混在状態が失われ、優れた高温強度が得られなくなるおそれがある。
Siは、溶解時の酸化防止と脱酸、また鋳造時の湯流れを良好にして鋳造性を確保する効果を有する。また、フェライト安定化作用を有し、フェライト消失温度を上昇させ高温強度を高くする。
そして、Siの含有量の下限は0.40mass%であり、好ましくは0.42mass%であり、更に好ましくは0.44mass%である。また、Siの含有量の上限は1.09mass%であり、好ましくは1.06mass%であり、更に好ましくは1.03mass%である。
Siの含有量が上記下限未満であると、Siを含有させることによる効果が得られなくなって、鋳造性が悪化するおそれがあるとともに、高温強度を低下させる。一方、Siの含有量が上記上限を超えると、靱性が低下するおそれがある。
Mnは、溶解時の脱酸調整作用、脱硫作用に有効であり、また、耐食性や耐熱性、靱性を向上させる効果を有する。
そして、Mnの含有量の下限は0.49mass%であり、好ましくは0.55mass%であり、更に好ましくは0.60mass%である。また、Mnの含有量の上限は1.13mass%であり、好ましくは1.05mass%であり、更に好ましくは1.00mass%である。
Mnの含有量が上記下限未満であると、Mnを含有させることによる効果が得られなくなるおそれがある。一方、オーステナイト安定化に働く作用を有し、フェライト消失温度を低下させるので、上記上限を超える場合には、高温強度を低下させるおそれがある。
Niは、耐食性、耐熱性、靱性及び熱処理時の焼入れ性を向上させる効果を有する。
そして、Niの含有量の下限は1.03mass%であり、好ましくは1.06mass%であり、更に好ましくは1.10mass%である。また、Niの含有量の上限は3.09mass%であり、好ましくは3.04mass%であり、更に好ましくは3.00mass%である。
Niの含有量が上記下限未満であると、Niを含有させることによる効果が得られなくなるおそれがある。一方、オーステナイト安定化に働く作用を有し、フェライト消失温度を低下させるので、上記上限を超える場合には、高温強度を低下させるおそれがある。
Crは、固溶して基材の強度を増加させ、また炭化物を形成し高温強度を高くする効果を有するとともにフェライト安定化作用を有し、フェライト消失温度を上昇させ、高温強度を高くする。
そして、Crの含有量の下限は0.11mass%であり、好ましくは0.15mass%であり、更に好ましくは0.18mass%である。また、Crの含有量の上限は1.01mass%であり、好ましくは0.98mass%であり、更に好ましくは0.95mass%である。
Crの含有量が上記下限未満であると、Crを含有させることによる効果が得られなくなるおそれがある。一方、上記上限を超える場合には、結晶粒界に粗大なクロム炭化物が偏析するために靭性値が低下するおそれがある。
MoはV同様にフェライト安定化に働き、炭化物生成元素である。平衡状態計算ソフト(サーモカルク社製、Thermo−Calc WindowsGUI(TCW3.0))と平衡状態計算用データベース(サーモカルク社製、TCFe3 TCS Steel DatabseV3)とを用いた平衡状態計算結果によれば、(V+Mo)量が3.5mass%以下となるように、Mo量を添加することで、実施例合金と同様の組織構成の平衡状態計算結果が得られる。このことからMoを(V+Mo)量が3.5mass%以下となる範囲で添加することで、実施例合金と同様に急速加熱化において高い圧縮強度が得られると考えられる。ただし、前期組成条件化でMo量を2mass%以上に増加し、V量を1.5mass%以下に減じれば、基地固溶温度が低いMC炭化物が増加し、基地固溶温度の高いVC系炭化物が減じるため高温圧縮強度を低下させるおそれがある。
Wは、固溶強化により、基材の強度を増加し、高温強度を高くする効果を有する。また、フェライト安定化元素であるので、平衡状態計算においてもWは、本実施形態の合金においてフェライト消失温度を上昇させ、高温圧縮強度を高くする効果がある。
そして、Wの含有量の下限は0.51mass%であり、好ましくは0.60mass%であり、更に好ましくは0.65mass%である。また、Wの含有量の上限は4.39mass%であり、好ましくは4.37mass%であり、更に好ましくは4.35mass%である。
Wの含有量が上記下限未満であると、Wを含有させることによる効果が得られなくなるおそれがある。一方、上記上限を超えても、その効果の増加を期待できず、炭化物生成を促進し、靭性を損なうおそれがある。
Vは、炭素と結合してバナジウムと炭素とが原子比で1対1のVC系炭化物を形成する。このVC系炭化物は、バナジウムと炭素との結合が他の炭化物に見られるような共有結合だけでなく、イオン結合性も有しているので、VとCの結合力が大きく、極めて安定であり、高温まで分解せず残存する。加えて、Vはフェライト安定化元素であり、フェライト消失温度を上昇させるため、高温までフェライトが安定して存在する。VC系炭化物と残存するフェライトは、高温で主たる基地であるオーステナイトとは結晶構造が異なる異相となり、塑性変形を担う転位の移動・増殖を抑制する働きを有する。このような条件化で塑性変形を生じさせるにはより高い応力を必要とする。このことからV添加により高温圧縮強度を高くする効果がある。
そして、Vの含有量の下限は1.46mass%であり、好ましくは1.50mass%であり、更に好ましくは1.55mass%である。また、Vの含有量の上限は3.41mass%であり、好ましくは3.35mass%であり、更に好ましくは3.30mass%である。
Vの含有量が上記下限未満であると、VC系炭化物生成量が減少して高温圧縮強度が低下するおそれがある。一方上記上限を超える場合には、結晶粒界に粗大なVC系炭化物が偏析するために靭性値が低下するおそれがある。
不可避不純物は、各元素とも0.05mass%以下である。
本実施形態の鉄系耐熱合金はバナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度も1110℃以上であって高い。
前述したように、Vは、炭素と結合してバナジウムと炭素とが原子比で1対1のVC系炭化物を形成する。このVC系炭化物はバナジウムと炭素の結合が他の炭化物に見られるような共有結合だけではなく、イオン結合性を有しているため、VとCとの結合力が大きく、極めて安定である。このため、特許文献1における主たる添加元素であるタングステン、モリブデンなどが形成するMC(Mは金属を表す)、あるいは炭化物形成に一般的に添加されるクロムが形成するM炭化物やM23炭化物と比較して高温まで分解せず残存する。
ところで鉄系耐熱合金において、フェライトからオーステナイトへの変態が拡散変態であるためオーステナイト化には炭素原子などの拡散が必要である。また、オーステナイト化にはフェライトよりも高い炭素濃度を必要とする。
本実施形態合金において、オーステナイトへの変態に必要な炭素原子の供給源が高温においても分解しにくいVC系炭化物であるため、残存するVC系炭化物の周囲の基地では、炭素が不足し、フェライトからオーステナイトへの変態が阻害される。このことによりオーステナイト基地中にフェライトが残存しやすい。
加えて、VはWと同様にフェライト安定化元素であり、V添加の本実施形態の鉄系耐熱合金では、フェライトが消失する温度が883℃以上と高い。このため、上記VC系炭化物周辺のフェライト以外の領域でも高温までフェライトが安定して存在する。
なお、フェライトが消失する温度、及びVC系炭化物が基地に固溶する温度は、平衡状態計算によって算出できるが、急速加熱下においては、平衡状態計算によって算出された温度よりも高い温度までVC系炭化物が残存するとともに、オーステナイトとフェライトが共存すると思われる。
金属の塑性変形は、転位の移動と増殖に伴って生じる。転位の移動は、硬い粒子や結晶構造が母材と異なる異相の存在により抑制される。本実施形態の鉄系耐熱合金では高温において主たる基地であるオーステナイト中に残存するVC系炭化物とフェライトとが共にオーステナイトとは結晶構造が異なる異相に相当し、塑性変形を担う転位の移動・増殖を抑制する働きを有する。このことにより転位の移動、増殖が困難となり、塑性変形を生じさせるにはより高い応力を必要とするところから、本実施形態の鉄系耐熱合金は、従来より高い圧縮降伏強度を示す。
<実施例>
図1に示す組成の実施例と比較例の合金を鋳造した。この図1の実施例及び比較例の各合金の平衡状態でのフェライトの消失温度、バナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度、及び1100℃における炭化物割合を図2に示す。
このフェライトの消失温度とVC系炭化物の固溶化温度は、平衡状態計算ソフト(サーモカルク社製、Thermo−Calc WindowsGUI(TCW3.0))と平衡状態計算用データベース(サーモカルク社製、TCFe3 TCS Steel DatabseV3)とを用いて算出した。
図3〜10に、各合金の平衡状態計算結果を示す。各状態計算結果において、フェライト基地消失温度を点Aで示し、VC系炭化物基地完全固溶化温度を点Bで示す。
実施例の各合金(P1〜P16)においては、フェライトの消失温度が883℃以上であり、VC系炭化物基地完全固溶化温度が1110℃以上であった。
一方、比較例の各合金(C1〜C4)においては、組成が実施形態の範囲を外れ、フェライトの消失温度が883℃未満であった。また比較例C1〜C3における炭化物基地完全固溶化温度は、VC系でない炭化物の固溶化温度が1110℃未満であり、C4ではVC系炭化物の固溶化温度が1114℃であった。
また、比較例の各合金(C5、C6)においては、組成が実施形態の範囲内であるが、フェライトの消失温度が883℃未満であった。比較例C6においてはVC系炭化物の固溶化温度が1110℃未満であった。
(熱処理)
鋳造した各試料毎に、図14、15に示す条件で熱処理し、ロックウェル硬さHRCを測定した。
その後、各試料を下記の試験条件で1100℃まで急速加熱し、急速加熱下での塑性変形が始まる直前の高温圧縮降伏強さを調べた。
(試験条件)
試験装置:富士電波工機株式会社製、熱間加工再現試験装置(サーモメカマスターZ)
試料形状:8mmφ×12mm長さ
加熱方法:高周波加熱
加熱温度:1100℃昇温時間:60秒
1100℃到達から圧縮荷重を加えるまでの時間:2秒
変形速度:0.1mm/秒
変形量:2.4mm
この圧縮荷重を加えている間の荷重と歪を記録し、応力−歪曲線を得て、圧縮降伏応力を算出した(図16参照)。算出に当たっては弾性変形から塑性変形へ移行する直前の応力値を圧縮降伏応力値とした。
測定した高温圧縮降伏強さを図14、15、17に示す。なお図17においては、実施例、比較例毎に全合金をまとめ、熱処理時の1次保持温度毎にグラフにしている。例えば、実施例5、11、17、24、28、32、41、45及び48は、1次保持温度が1050℃で同じであって1次保持時間や2次保持温度が異なるが、同じ1050℃の欄のグラフにしている。
また、比較例18は、1次保持温度が850℃であるが、図の簡略化のために800℃の欄にカウントしている。
実施例は、鋳放しも含むいずれの熱処理条件においても50MPa以上であり、高い高温圧縮降伏強さとなっている。一方、比較例は、いずれも50MPa以下であり、低い高温圧縮降伏強さとなっている。
このように、本発明の鉄系耐熱合金は、従来の鉄系耐熱合金に比べて急速加熱下での高温圧縮降伏強さが高くなっている。
本発明は、例えば摩擦攪拌接合用(FSW)ツール、コークス製造用搬送バケット用ライナー、熱間圧延用鋼材ガイド、熱間加工鋼材搬送用ローラー、シームレス鋼管製造用ピアサープラグに好適に使用される。

Claims (3)

  1. C:0.14〜0.41mass%、Si:0.40〜1.09mass%、Mn:0.49〜1.13mass%、Ni:1.03〜3.09mass%、Cr:0.11〜1.01mass%、W:0.51〜4.39mass%、V:1.46〜3.41mass%であり、残部がFe及び不可避不純物である鉄系耐熱合金であって、
    この組成で構成される合金の平衡状態においてフェライトが消失する温度が883℃以上であり、かつバナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度が1110℃以上であることを特徴とする鉄系耐熱合金。
  2. C:0.14〜0.41mass%、Si:0.40〜1.09mass%、Mn:0.49〜1.13mass%、Ni:1.03〜3.09mass%、Cr:0.11〜1.01mass%、W:0.51〜4.39mass%、V:1.46〜3.41mass%であり、残部がFe及び不可避不純物である金属溶湯を鋳造することにより、この組成で構成される合金の平衡状態においてフェライトが消失する温度が883℃以上であり、かつバナジウムを主成分とするVC系炭化物が基地に固溶する温度が1110℃以上である特性を有する鉄系耐熱合金を製造することを特徴とする鉄系耐熱合金の製造方法。
  3. 請求項2の製造方法の後に、700〜1150℃で2時間以上の熱処理を行うことを特徴とする鉄系耐熱合金の製造方法
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