JP2011213506A - 無機酸化物分散液とその製造方法及び透明混合液並びに透明複合体、光学部材 - Google Patents
無機酸化物分散液とその製造方法及び透明混合液並びに透明複合体、光学部材 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】本発明の無機酸化物透明分散液は、無機酸化物粒子を分散媒に分散してなる無機酸化物透明分散液であって、前記無機酸化物粒子は、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下であり、かつ、酸成分が除去されており、その表面は前記無機酸化物粒子の表面に結合している酸成分と置換可能な表面処理剤により修飾されている。
【選択図】なし
Description
さらに、光学製品の内部光学系を構成するレンズでは、屈折率、波長分散性の制御が重要である。そこで、無機酸化物をフィラーとして樹脂と複合化することにより、屈折率や波長分散性を広い領域で調整することが可能な透明複合体が提案されている。
このフラットパネルディスプレイ用プラスチック基板やプラスチックレンズに対する要求特性としては、透明性、屈折率、波長分散性、機械的特性等が挙げられている。
また、樹脂の透明性を高めるために、例えば、透明性を有するエポキシ樹脂では、硬化剤として無水フタル酸等のカルボン酸無水物が一般に用いられている(特許文献1)。
さらに、樹脂の透明性を阻害する一因となるのが樹脂の着色である。そこで、樹脂の着色を改善する方法として、フィラーとなる金属酸化物粒子を含むゾルを限外濾過することにより、このゾルに含まれる酢酸や塩酸等の低分子量化を促進する物質を低減または除去する方法が提案されている(特許文献2)。
この透明複合体を無機酸化物分散液を用いて作製する場合、通常、無機酸化物分散液と樹脂とを混合し、得られた透明混合液を型に流し込む等として所定の形状に成形し、その後、この成形体から溶媒を除去し、加熱あるいは紫外線照射等により硬化させ、目的の形状の透明複合体とする方法が採られる。
(1)透明混合液の経時増粘
無機酸化物分散液と樹脂とを混合した透明混合液は、混合した時点では所定の粘度を維持しているが、時間の経過とともに徐々に粘度が増加(経時増粘)し、この経時増粘により、同一条件での形成が難しくなり、製品の再現性が低下するという問題点があった。
(2)透明複合体の着色
透明複合体の樹脂を硬化する場合、加熱あるいは紫外線照射等が用いられるが、この樹脂を硬化させる工程では、得られた透明複合体が着色し、光透明性(光透過率)が低下するという問題点があった。この透明複合体が着色する理由は、透明混合液中の無機酸化物粒子に含まれるカルボキシル基等の酸成分が、光や熱のエネルギーにより樹脂を着色させるためと考えられている。この光透明性の低下は、特に、熱硬化の場合に顕著である。
前記無機酸化物粒子の酸価の値は15以下であることが好ましい。
また、無機酸化物粒子から透明複合体の着色の一因といわれるカルボキシル基等の酸成分を除去したので、この無機酸化物粒子を含む分散液を用いて作製された透明複合体や光学部材においても、着色が生じる虞がない。
また、着色の一因といわれるカルボキシル基等の酸成分を除去したので、硬化等に伴う透明複合体の着色を抑制することができる。したがって、量産性と光透明性(光透過率)に優れた光学部材を得ることができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の無機酸化物透明分散液は、無機酸化物粒子を分散媒に分散してなる無機酸化物透明分散液であって、前記無機酸化物粒子は、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下であり、かつ、酸成分が除去されており、その表面は前記無機酸化物粒子の表面に結合している酸成分と置換可能な表面処理剤により修飾されている。
特に、光学部材に適用する場合には、屈折率制御、屈折率の波長依存性の制御等が必要になる場合が多く、これらの制御の容易性を考慮すると、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)が好適である。
ここで、無機酸化物粒子の一次粒子径が1nm未満であると、粒子の結晶性が低くなるために目的とする機能が発現し難くなる場合があったり、あるいは、粒子の表面活性が高くなり、その結果、粒子同士が凝集し易くなり、粒子の分散性が低下するので好ましくなく、一方、一次粒子径が20nmを超えると、樹脂と複合化した場合にレイリー散乱の影響が顕著となり、得られた透明複合体の透明性を低下させるので好ましくない。
ここで、酸価の値を15以下とした理由は、酸価の値が15を超えると、無機酸化物粒子における酸成分の除去が不十分となり、その結果、この無機酸化物透明分散液の分散媒中に樹脂成分を含有しているか、または、この無機酸化物透明分散液と樹脂成分とを混合してなる透明混合液においては経時増粘が発生し、この透明混合液を用いて透明複合体を作製する際の作製条件が変動するとともに、この無機酸化物粒子と樹脂とを複合化した場合に残った酸成分が着色の要因となって、得られた透明複合体や光学部材を着色し、その透明性を低下させるので好ましくない。
(1)水洗による酸成分の除去
無機酸化物粒子を表面処理剤により修飾する際に、元々無機酸化物粒子の表面に付着していた酸成分を水洗により除去する方法であり、無機酸化物粒子の表面に付着していた塩素やカルボキシル基等の酸成分が水に溶け出すことにより、除去することができる。
無機酸化物粒子の表面を、この無機酸化物粒子の表面に結合している酸成分と置換可能な表面処理剤により修飾することにより、元々無機酸化物粒子の表面に存在していた塩素やカルボキシル基等の酸成分を表面処理剤で置換し、遊離した酸成分を水に溶出させることで、除去する方法である。
ここで、表面処理剤としては、元々存在する酸成分よりも強い力で、無機酸化物粒子表面と結合する必要がある。この結合力としては、水酸基による縮合反応を好適に用いることができる。その理由は、水酸基による脱水縮合反応により形成される結合は通常の化学結合であり、酸成分が無機酸化物粒子と結合する際の結合方法である配位結合や水素結合に比べて、強い結合力を有しているからである。
これらの化合物は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
陰イオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸エステルスルフォン酸ナトリウム等の脂肪酸系、アルキルリン酸エステルナトリウム等のリン酸系、アルファオレインスルフォン酸ナトリウム等のオレフィン系、アルキル硫酸ナトリウム等のアルコール系、アルキルベンゼン系等が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
ここで、修飾部分の質量比を5質量%以上と限定した理由は、修飾部分の質量比が5質量%未満であると、表面処理剤と、元々無機酸化物粒子表面に結合している酸成分との置換が不十分となり、残留した酸成分による影響が出る虞があるためであり、また、表面処理剤としての作用である無機酸化物粒子表面と樹脂との親和性が不足するために無機酸化物粒子の樹脂への相溶が困難となり、樹脂との複合化の際に透明性が失われるからである。一方、修飾部分の質量比を200質量%以下と限定した理由は、修飾部分の質量比が200質量%を超えると、酸成分に対する表面処理剤量としては十分であるが、表面処理剤が樹脂特性へ及ぼす影響が大きくなり、樹脂と複合化した場合に得られた透明複合体の透明性が低下し、屈折率等の光学特性も低下するからである。
ここで、無機酸化物粒子の含有率を1質量%以上かつ70質量%以下と限定した理由は、この範囲が無機酸化物粒子が良好な分散状態を取りうる範囲であり、含有率が1質量%未満であると、無機酸化物粒子としての効果が低下し、また、70質量%を超えると、ゲル化や凝集沈澱が生じ、分散液としての特徴を消失するからである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、分散媒として樹脂成分を用いる場合については、後述の「透明混合液」に該当するので、樹脂成分の説明は透明混合液の欄にて行うこととする。
また、無機酸化物粒子から透明複合体の着色の一因といわれるカルボキシル基等の酸成分を除去したので、この無機酸化物粒子を含む分散液を用いて作製される透明複合体や光学部材においても、着色が生じる虞がない。
本実施形態の無機酸化物透明分散液の製造方法は、無機酸化物粒子を分散媒に分散してなる無機酸化物透明分散液の製造方法であって、前記無機酸化物粒子の表面に結合している酸成分と置換可能な表面処理剤を用いて、前記無機酸化物粒子の表面を修飾するとともに、前記無機酸化物粒子を水により洗浄することにより、該無機酸化物粒子から酸成分の除去を行う方法である。
さらに、水洗を行うことにより、元々無機酸化物粒子の表面に付着していた酸成分も洗浄水に溶出されるので、除去することができる。
なお、表面処理剤としては、元々存在する酸成分よりも強い力で、無機酸化物粒子表面と結合する必要があることから、この結合力としては、水酸基による縮合反応を好適に用いることができる。
さらに、表面処理剤が水溶性あるいは水分散性を有していれば、この表面処理剤と無機酸化物粒子とを水に投入し混合することにより、無機酸化物粒子の表面に当該表面処理剤を修飾すると同時に、この無機酸化物粒子から遊離した酸成分を水に溶出できるので、遊離した酸成分が一時的にでも無機酸化物粒子表面に残留することがなく、より確実に酸成分の除去が行えることから、より好ましい。
本実施形態の透明混合液は、無機酸化物粒子と樹脂成分とを含有してなる透明混合液であって、上記の無機酸化物透明分散液の分散媒中に樹脂成分を含有しているか、または、上記の無機酸化物透明分散液と樹脂成分とを混合してなる混合液である。
ここで分散媒中に樹脂成分を含有させるためには、無機酸化物透明分散液を作製する際に、分散媒を液状の樹脂成分自体としてもよく、また、分散媒を液状の樹脂成分と有機溶媒の混合液としてもよい。
さらには、分散媒中に樹脂成分を含有している無機酸化物透明分散液に対して、さらに樹脂成分を追加混合してもよい。
なお、無機酸化物透明分散液と樹脂成分とを混合させる方法は特に限定されず、ミキサー、各種ミル、超音波の印加等、従来より知られている方法を用いればよい。
すなわち、上記の樹脂の液状モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー、シリコーン系モノマー等が好適に用いられる。
また、上記の液状の樹脂オリゴマーとしては、アクリレート系化合物であるウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリルアクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
これらの樹脂成分は、必要とする特性に対応して、1種類のみを選択してもよく、複数の樹脂成分を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の透明複合体は、上記の透明混合液を硬化したものであり、上記の透明混合液を金型を用いて成形するか、または金型あるいは容器内に充填し、次いで、この成形体もしくは充填物を加熱したり、紫外線や赤外線等を照射する等により、この成形体もしくは充填物から分散媒を除去するとともに樹脂成分を硬化させることで得ることができる。
この無機酸化物粒子はナノメートルサイズの粒子であるから、この無機酸化物粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、光散乱が小さく、複合体の透明性を維持することが可能である。
(a)1分子中のケイ素原子に結合した官能基のうち少なくとも2つがアルケニル基であるオルガノポリシロキサン
(b)1分子中のケイ素原子に結合した官能基のうち少なくとも2つが水素原子であるか、または分子鎖の両端が水素原子で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサン
(c)ヒドロシリル化反応用触媒
また、このアルケニル基以外のケイ素原子に結合した官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。
また、(b)成分の含有量は、(a)成分に含まれている合計アルケニル基1モルに対して水素原子が0.1〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5モルの範囲内となる量であり、さらに好ましくは0.5〜2モルの範囲内となる量である。
この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金カルボニル錯体等が挙げられ、特に、塩化白金酸が好ましい。
このシリコーン樹脂については、本発明の目的を損なわないかぎり、その他任意の成分として、耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
単官能アクリレート及び多官能アクリレートそれぞれの具体例について次に挙げる。
(a)脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、
ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート
メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート
(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換アクリルアミド等が挙げられる。
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1.4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート
ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
(d)芳香族(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート類、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(f)エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
図1は、樹脂の自動酸化サイクル(酸化劣化)の一例を示す図であり、ポリマーR−Hに光・熱を照射、または金属イオン等を添加する(図中、A)ことにより、ポリマーR−Hから「H・」が引き抜かれてポリマーのラジカル「R・」が発生(図中、B)し、このポリマーに切断、構造変化、架橋が生じる。これらが生じたポリマーを酸化することにより、含酸素ラジカル「ROO・」の生成と共に連鎖反応が進行する(図中、C)。このポリマーに生じた切断、構造変化、架橋がポリマーを劣化させ(図中、D)、このポリマーに着色や脆化が生じる、という一連のサイクルを示している。
ここで、無機酸化物粒子の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下と限定した理由は、下限値の1質量%は屈折率等の光学特性及び機械的強度等の機械的特性の向上が可能となる添加率の最小値であるからであり、一方、上限値の80質量%は樹脂自体の特性(強度、柔軟性、比重、等)を維持することができる添加率の最大値であるからである。
例えば、無機酸化物粒子としてジルコニア粒子を用いた場合、ジルコニア粒子の含有率が25質量%では、光路長を1mmとしたときの可視光線透過率が90%以上となる。この可視光線透過率は、透明複合体におけるジルコニア粒子の含有率により異なり、ジルコニア粒子の含有率が1質量%では95%以上、ジルコニア粒子の含有率が40質量%では80%以上である。
このジルコニア粒子は、ナノメートルサイズの粒子であるから、樹脂と複合化させた場合においても、光散乱が小さく、複合材料の透明性を長期に亘って維持することが可能である。
本実施形態の光学部材は、上記の透明混合液を硬化したものであり、換言すれば、上記の透明複合体を用いたものである。
この光学部材は、上記の透明複合体を作製した後、この透明複合体を切削加工等により成型して作製してもよいが、上記の透明混合液においては、経時増粘がを抑制されており、複数の透明複合体を同一条件にて作製することができることから、上記の透明混合液を光学部材の金型を用いて成形するか、または上記の透明混合液を光学部材の金型あるいは容器内に充填し、次いで、この成形体もしくは充填物を加熱したり、あるいは紫外線や赤外線等を照射する等により、この成形体もしくは充填物から分散媒を除去するとともに樹脂成分を硬化させることで、複数の光学部材を低コストで効率良く得ることができる。
また、無機酸化物粒子から光学部材の着色の一因といわれるカルボキシル基等の酸成分を除去したので、この無機酸化物粒子を含む光学部材においても、着色が生じる虞がなく、光透明性(光透過率)が向上したものとなる。したがって、量産性と光透明性(光透過率)に優れた光学部材を得ることができる。
「ナノジルコニア粒子の作製」
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、ナノジルコニア粒子を作製した。
得られたナノジルコニア粒子の一次粒子径を電界放射型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて測定したところ、4nmであった。
上記のナノジルコニア粒子10gに水10gを加えて撹拌し、ナノジルコニア透明水分散液を作製した。
次いで、このナノジルコニア透明水分散液に、表面修飾剤としてシランカップリング剤 KBM−1003(信越化学(株)社製)を5g加えて混合し、ナノジルコニア粒子の表面を修飾した。
次いで、この表面処理ナノジルコニア粒子と水とを遠心分離機にて分離し、分離した表面処理ナノジルコニア粒子を40℃の乾燥機により乾燥した。次いで、この表面処理ナノジルコニア粒子3gにトルエン7gを加え、その後分散処理を施し、ナノジルコニア透明トルエン分散液を作製した。
得られたトルエン分散液中のナノジルコニア粒子の粒度分布を、動的光散乱式粒子径分布測定装置(Malvern社製)を用いて測定した。その結果、ナノジルコニア粒子の体積粒度分布において、分散粒子径が50nm以上のものは0.4%であった。
上記のナノジルコニア透明トルエン分散液の酸価の値を、水酸化カリウムによる電位差敵定法により測定した。
この測定では、電位差滴定装置AT−610(京都電子工学株式会社製)を用いた。測定の結果、酸価の値は14であった。
上記のナノジルコニア透明トルエン分散液5gと、エポキシ樹脂827(ジャパンエポキシレジン社製)2.5gと、エポキシ樹脂硬化剤ST11(ジャパンエポキシレジン社製)2.5gとを混合し、透明混合液を作製した。
次いで、この透明混合液の粘度を、落球型粘度測定法により測定した。この測定では、粘度測定機 KF−10(ピスクテック社製)を用いた。ここでは、初期の粘度を測定した後、環境温度20℃にて10日間保管し、同様の粘度測定を行い、初期の粘度からの増減の倍率を算出した。その結果、10日間保管後の粘度は、初期の粘度の1.1倍であった。
上記の透明混合液を、バーコート法によりスライドガラス上に厚み5μmとなるように塗布し、その後乾燥させ、薄板状の透明複合体を得た。
次いで、この透明複合体を、電気炉を用いて180℃にて所定時間加熱し、この透明複合体の加熱時間毎の波長400nmの光に対する透過率を、分光光度計V−510(VISCO社製)を用いて測定した。その結果、劣化時間(透過率が90%を下回るまでの加熱時間)は242時間であった。
上記の透明混合液を、バーコート法によりスライドガラス上に厚み5μmとなるように塗布し、その後乾燥させ、薄板状の透明複合体を得た。
次いで、この透明複合体を用いて、電気炉により200℃、220℃、240℃の各温度にて所定時間加熱し、これらの透明複合体の所定温度各々における加熱時間毎の波長400nmの光に対する透過率を、分光光度計V−510(VISCO社製)を用いて測定し、これらの測定値をアレニウスプロットすることにより、活性化エネルギーを求めた。その結果、活性化エネルギーは1.7eVであった。
「ナノチタニア粒子の合成」
三塩化チタン2445gを純水40Lに溶解させたチタン塩溶液に、28%アンモニア水55gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、チタニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硝酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硝酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硝酸ナトリウムの添加量は、チタン塩溶液中のチタンイオンのチタニア換算値に対して30質量%であった。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硝酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、ナノチタニア粒子を作製した。
得られたナノチタニア粒子の一次粒子径を電界放射型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて測定したところ、6nmであった。
上記のナノチタニア粒子を用いて、実施例1に準じてナノチタニア透明トルエン分散液を作製した。
得られたトルエン分散液中のナノチタニア粒子の粒度分布を、動的光散乱式粒子径分布測定装置(Malvern社製)を用いて測定した。その結果、ナノチタニア粒子の体積粒度分布において、分散粒子径が50nm以上のものは0.5%であった。
上記のナノチタニア透明トルエン分散液の酸価の値を、実施例1に準じて測定した。その結果、酸価の値は15であった。
上記のナノチタニア透明トルエン分散液を用いて、実施例1に準じて、透明混合液を作製し経時増粘を測定した。その結果、10日間保管後の粘度は、初期の粘度の1.2倍であった。
上記の透明混合液を用いて、実施例1に準じて、薄板状の透明複合体を作製し、光透過率を測定した。その結果、劣化時間は230時間であった。
上記の透明複合体の活性化エネルギーを実施例1に準じて求めた。その結果、活性化エネルギーは1.7eVであった。
実施例1の「酸成分除去を伴う表面処理」にて、表面処理剤をシランカップリング剤 KBM−1003からカプリル酸(C7H15COOH)に変更したこと以外は、実施例1に準じて比較例1のナノジルコニア透明トルエン分散液、透明混合液及び透明複合体を作製した。
得られたナノジルコニア透明トルエン分散液、透明混合液及び透明複合体を、実施例1に準じて評価した。その結果、ナノジルコニア透明トルエン分散液の酸価の値は20、ナノジルコニア粒子の体積粒度分布における分散粒子径が50nm以上のものは0.8%、透明混合液の保管後の粘度は初期値の1.7倍、透明複合体の劣化時間は80時間、活性化エネルギーは1.5eVであった。
実施例1に準じてナノジルコニア粒子を作製した。
次いで、このナノジルコニア粒子3gに、分散媒としてトルエンを7g、表面処理剤としてシランカップリング剤 KBM−1003(信越化学(株)社製)を3.5g加えて混合し、ナノジルコニア粒子の表面を修飾した。
その後分散処理を施し、ナノジルコニア透明トルエン分散液を作製した。
その後、実施例1に準じて比較例2の透明混合液及び透明複合体を作製した。
比較例2の表面処理剤をシランカップリング剤 KBM−1003からカプリル酸(C7H15COOH)に変更したこと以外は、比較例2に準じて比較例3のナノジルコニア透明トルエン分散液、透明混合液及び透明複合体を作製した。
得られたナノジルコニア透明トルエン分散液、透明混合液及び透明複合体を、実施例1に準じて評価した。その結果、ナノジルコニア透明トルエン分散液の酸価の値は90、ナノジルコニア粒子の体積粒度分布における分散粒子径が50nm以上のものは1.2%、透明混合液の保管後の粘度は初期値の2.0倍、透明複合体の劣化時間は24時間、活性化エネルギーは1.3eVであった。
実施例1、2及び比較例1〜3の測定結果を表1に示す。
Claims (7)
- 無機酸化物粒子を分散媒に分散してなる無機酸化物透明分散液であって、
前記無機酸化物粒子は、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下であり、かつ、酸成分が除去されており、その表面は前記無機酸化物粒子の表面に結合している酸成分と置換可能な表面処理剤により修飾されていることを特徴とする無機酸化物透明分散液。 - 前記表面処理剤は、水酸基による縮合反応により前記無機酸化物粒子の表面に結合することを特徴とする請求項1記載の無機酸化物透明分散液。
- 前記無機酸化物粒子の酸価の値は15以下であることを特徴とする請求項1または2記載の無機酸化物透明分散液。
- 無機酸化物粒子を分散媒に分散してなる無機酸化物透明分散液の製造方法であって、
前記無機酸化物粒子の表面に結合している酸成分と置換可能な表面処理剤を用いて、前記無機酸化物粒子の表面を修飾するとともに、前記無機酸化物粒子を水により洗浄することにより、該無機酸化物粒子から酸成分の除去を行うことを特徴とする無機酸化物分散液の製造方法。 - 無機酸化物粒子と樹脂成分とを含有してなる透明混合液であって、
請求項1ないし3のいずれか1項記載の無機酸化物透明分散液の前記分散媒中に樹脂成分を含有しているか、または、請求項1ないし3のいずれか1項記載の無機酸化物透明分散液と樹脂成分とを混合してなることを特徴とする透明混合液。 - 請求項5記載の透明混合液を硬化してなることを特徴とする透明複合体。
- 請求項5記載の透明混合液を硬化してなることを特徴とする光学部材。
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