JP2009067954A - 樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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春生 海野
Tomohiro Ito
智啓 伊藤
Yasuaki Kai
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宏信 村松
Katsumi Morohoshi
勝己 諸星
Takashi Oda
崇 小田
Manabu Kawa
学 加和
Naoko Fujita
直子 藤田
Minoru Soma
実 相馬
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Abstract

【課題】 ポリカーボネートやエステル系の樹脂の低分子量化の発生・進行を防止/抑制し、ひいては金属酸化物粒子を含む熱可塑性樹脂の透明性、弾性特性、耐衝撃性、熱寸法安定性などの物性を十分に向上する技術を提供する。
【解決手段】 金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法であって、
(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを得る工程を含む、樹脂組成物の製造方法を提供することにより解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、低分子量化を促進する因子が低減または除去された樹脂組成物の製造方法に関する。
樹脂にナノサイズの無機フィラーを包含させたポリマーナノコンポジットは、樹脂に耐熱性、ガスシールド性、弾性率、表面平滑性、収縮等方性等、新たな物性を付与できるため、様々な工業分野からその技術が数多く開示されている。
近年、ナノサイズの無機フィラーとしてシリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物粒子、金、銀等の金属微細粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン、シルセスキオキサンなどの機能性ナノ有機材料が広く利用されるようになった。これらは無機フィラーがミクロンサイズの二次凝集体を形成することなく、均一に分散することで、ナノ領域となるとバルクとは異なった特異な物理、化学的性質を示す。よって、それらユニークな特性を材料に応用する研究が各方面にて行なわれている。
しかしながら、無機フィラーを用いた樹脂組成物について様々な検討がなされているにも関わらず、機械的物性を十分なレベルで実現することは未だ達成されていない。
さらにナノサイズの無機フィラーは、樹脂にユニークな特性を付与するが、思いがけないところで物性低下の原因ともなっている。例えば、上記特性を向上させるために無機フィラーの添加量を増大させた場合、樹脂組成物全体の延性が著しく低下し、力学的付加を加えた際の吸収エネルギーが低下し、特に衝撃強度が著しく低下する現象がある。
フィラー添加による脆化の問題に対し、一般的にマクロサイズの無機フィラーではマトリクス樹脂との界面結合力を調整している。かようにして、脱接合または引き抜きを生じさせ、破壊エネルギーを損失させることで衝撃強度を保持する手法が採られる。
一方、ナノサイズの無機フィラーではその表面エネルギーに打ち勝ち、均一分散させるためにマトリクス樹脂と強い相互作用を有する表面改質剤の使用が必須である。しかしながら、界面結合力の調整による衝撃強度の付与は難しく、未だ具体的な報告例がない。
特表2003−507498号公報 特表2004−524396号公報
以上のように樹脂にナノサイズの無機フィラーを包含させたポリマーナノコンポジットについては様々な検討がなされている。
しかしながら、従来提案されている技術によっても、酸化物粒子を含む熱可塑性樹脂(以下、単に「樹脂」とも称する)における透明性、弾性率、耐衝撃性、熱寸法安定性などの物性が十分に向上されたものとは言えていない。そこで、これら物性を一層向上させうる手段の開発が望まれているのが現状である。
本発明は、金属酸化物粒子を含む熱可塑性樹脂において、透明性、弾性特性、耐衝撃性、熱寸法安定性などの物性が十分に向上に寄与しうる技術を提供することを目的とする。
樹脂組成物の製造方法において、金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中に、かような低分子量化を促進する原因となる因子を低減または除去するという工程を含ませることで、上記課題は解決される。
ポリカーボネートやポリエステル系の樹脂の低分子量化の発生・進行を防止/抑制し、ひいては金属酸化物粒子を含む熱可塑性樹脂の透明性、弾性特性、耐衝撃性、熱寸法安定性などの物性を十分に向上できる。
本発明は、金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法であって、(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを得る工程を含む、樹脂組成物の製造方法である。
なお、「金属酸化物粒子を含む樹脂」と、単なる「樹脂」と区別するため、「金属酸化物粒子を含む樹脂(ポリマーナノコンポジット)」を「樹脂組成物」とも称する。
ポリカーボネートや(メタ)アクリル樹脂等の樹脂にアルミナ、珪酸またはその塩、チタニア等の金属酸化物粒子(フィラー)を混合すると、耐衝撃性、弾性率、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、引張強度、熱膨張性、延性等の種々の特性が向上できる。そのため、従来から、樹脂に上記したような金属酸化物粒子をフィラーとして添加する技術が用いられてきた。
しかし、このような特性の向上を図るあまり、金属酸化物粒子を過剰に添加すると、上記特性、特に靭性、延性や耐衝撃性が低下し、逆に、実使用時の力学的バランスに劣る樹脂組成物となってしまうという問題があった。
本発明者らは、上記の現状に鑑み、鋭意研究を行った。そして、鋭意研究の結果、本発明を完成させるに至った。本発明を完成させるに至った過程の概略は、以下である。ただし、本発明は、下記において限定されない。
(1)上記した所望の物性が得られない原因の詳細な検討
上記様々な所望の物性が得られないのは、樹脂の大幅な分子量の低下が原因であるものと本発明者らは推測した。
樹脂全体の分子量が低下するのは、金属酸化物粒子による剛化の他に、金属酸化物粒子を、特定の結合を有する樹脂中に添加すると、樹脂の分子鎖同士の絡み合い密度が低下して、「低分子量成分」が多く発生することに起因しているものと考えた。
ここで、「低分子量成分」は、その存在により成形物の靱性、延性、耐衝撃性などの低下を引き起こす原因成分である。具体的には、樹脂と金属酸化物粒子とを溶融混練する際に副生するオリゴマー(2〜10量体)、残留モノマー、ジオール化合物、添加剤、触媒、その他分解生成物などである。
(2)「低分子量成分」発生のメカニズム
上記様々な所望の物性が得られない原因は、上記の通り追究できた。続いて、なぜ「低分子量成分」が発生するのか、そのメカニズムを詳細に探索した。
その過程の中で、酸化物粒子表面、たとえばアルミナ粒子、シリカ粒子表面にはそれぞれAl−OH、Si−OHに代表される化学的に活性な水酸基(−OH)が存在している。そのためポリカーボネートやエステル系の熱可塑性樹脂と混合した際にこの活性な基が基点となり、該熱可塑性樹脂中に含まれる電気的、結合的、立体的に脆弱な部分を攻撃することを見出した。そして、それが原因となり、熱可塑性樹脂の加水分解や酸化劣化を引き起こし、得られた熱可塑性樹脂組成物中に「低分子量成分」が発生し、また、変色などの諸問題を生ぜしめることを見出した。
(3)「低分子量成分」の発生の防止・抑制
続いて、本発明者らは、如何にすれば上記「低分子量成分」の発生を防止・抑制ができるのかを詳細に検討した。
その過程の中で、「低分子量成分」が発生してしまう原因となる因子、すなわち、本明細書に使用される「低分子量化を促進する因子」を発見した。
「低分子量化を促進する因子」は、例えば、以下のようなものである。
酢酸等の有機酸;これは、一般的に、金属酸化物の合成の際に形態制御剤として添加されたり、原料ゾル中の分散剤として添加されている物質である。
塩酸等の無機酸;これは、一般的に、金属酸化物の合成の際に形態制御剤として添加されたり、原料ゾル中の分散剤として添加されている物質である。
Na、Feなどの金属;これは、金属酸化物の原料中や樹脂の合成触媒の残存としてコンポジット中に微量に含まれる。
Cl等の陰イオン;これは、金属酸化物の原料中や樹脂の合成触媒の残存としてコンポジット中に微量に含まれる。
これら因子が、加水分解や接触分解に深く関与している、すなわち金属イオンが触媒として働き、直接官能基に配位することで高分子鎖を切断する分解反応を引き起こすことを見出した。かような熱可塑性樹脂の加水分解が原因となって、得られた熱可塑性樹脂組成物(すなわち、ポリマーナノコンポジット)中に「低分子量成分」が発生し、強度低下、変色などの諸問題を生ぜしめることが分かった。
本発明者らは、このような「低分子量化を促進する因子」を見出し、その成分を有意に低減または除去することにより、熱可塑性樹脂の大幅な分子量の低下を防止/抑制することができることを見出したのである。
本発明によれば、上記所望の物性を有意に得ることができる。金属酸化物粒子の添加量を増加しても、樹脂の大幅な分子量の低下が起こらない。かような樹脂組成物は、機械的特性、特に靭性、延性及び耐衝撃性の低下が有意に防止されたものといえる。さらには、このような樹脂組成物を成形して得られた成形物は、高弾性、低熱膨張性、表面平滑性、透明性、可撓性などを維持することができる。
上記効果は、金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中に、低分子量化を促進する原因となる因子を低減または除去するという工程によって達成されうるのである。
さらに、本発明の方法によれば、成形時には、樹脂組成物中に低分子量成分、つまり、低分子量成分と金属酸化物との結合(架橋)体がほとんど存在しない。よって得られた成形物は、薄膜状であっても、縞模様は存在しない。また、樹脂と結合(架橋)体との柔軟性の相違による成形物の靭性低下も有意に抑制・防止できる。加えて、かようにして得られた成形物は、十分な透明性をも維持しうる。ゆえに、本発明の方法によって得られる樹脂組成物は、ガラスの代替材料として有用であり、自動車や建築物などの窓をはじめとして様々な用途に使用することにより、軽量化、燃費向上、飛散防止などの様々な効果が期待できる。
本発明は、上述の通り、金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法に関する。この際、本発明は、(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを得る工程を含む。
以下、構成要件に分けて詳細に説明する。
[金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法]
(金属酸化物粒子)
本発明には目的の力学特性を得るために、マトリックスであるポリカーボネート、ポリエステル系樹脂に対するフィラーとして、金属酸化物粒子を用いる。一般的に金属酸化物粒子には活性な水酸基が多く、上述のようにこれらが原因となって高温を要する樹脂組成物製造工程における分子量の著しい低下が起こりうる。
金属酸化物粒子としては酸化鉄、酸化チタン(チタニア)、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化カルシウム(カルシア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化イットリウム(イットリア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)などである。
この金属酸化物粒子の中でも機械的特性及び光学的特性を高い次元で両立させるにはシリカ、カルシア、アルミナ(ベーマイト)、酸化鉄(ヘマタイト)、チタニアが好ましい。中でも結晶性が良く、ナノサイズでありながら、アスペクト比の高い粒子を作ることができるアルミナが特に好ましい。
なお、アルミナには、異なった結晶組成(α、γ、χ、η、δ、θ、κ、・・等)のアルミナのほか、ベーマイト等の水和物型(Al・nHO)のものも含むものとする。
また、酸化鉄には、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(II,III)(Fe)、酸化鉄(III)(Fe)があるが、更にヘマタイト等の酸化鉄(III)(Fe)の鉱物形態やゲータイト、アカガネアイト、レピドクロサイト、フェリハイドライト等の鉄酸化・水酸化物(FeO(OH)等)の鉱物形態のものも含むものとする。同様に、他の金属酸化物粒子においても、異なった結晶組成のもの、水和物型のもの、鉱物形態のものなどを含むものとする。
また、上記の金属酸化物粒子は任意の割合で組み合わせて用いても良いし、また特にこれらに限定されるものではない。
上記の金属酸化物粒子の製造方法は粒子同士の癒着、結合の起こらないものであればいずれの製造方法でもよい。ただ、形状の均質化のためには水熱合成、ゲルゾル法、逆ミセル法などの湿式合成法により得ることが好ましい。
一方、気相合成、化学蒸着法、焼成処理により得られた粒子は粒子同士が癒着し、そのまま有機溶媒、樹脂に分散してしまうため所望の物性を得ることが難しくなる。
また、上記の金属酸化物粒子として好適なアルミナ粒子は、下記の一般式により表される。
Figure 2009067954
ただし、nは、0以上の整数である、
式中のnが0のときは酸化アルミニウムを示し、異なった結晶組成のα、γアルミナまたはβ、ρ、χ、ε、γ、κ、κ’、θ、η、δ、λ型のアルミナである。式中のnが1のときはベーマイトを表す。また式中のnが1を越えて3未満である場合はベーマイトと非結晶構造のアルミナ水和物の混合物を示す。これは一般に疑ベーマイトと呼ばれている。さらにnが3以上では非結晶構造のアルミナ水和物を示す。
本発明のアルミナ粒子はこれらのうちから選ばれる少なくとも1つであるが、結晶性や粒子安定性の面や入手の容易さからベーマイト、αアルミナ、γアルミナのいずれかが特に好ましい。
すなわち、
本発明の金属酸化物粒子は、酸化アルミニウム(Alを含有する金属酸化物粒子)であり、
酸化アルミニウムが、下記式(1):
Figure 2009067954
ただし、nは、0以上の整数である、
で表されるα、γ、δ、θ型のアルミナであると好ましい。
前記アルミナ粒子等の金属酸化物粒子の形状は、特に制限されるものではなく、球状のような等方性を示すものであってもよい。また、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状、板状などの異方性を示すことが好ましい。透明性を有する樹脂組成物中における金属酸化物粒子の光の散乱を考慮に入れ、熱膨張抑制や弾性率向上といった力学的特性を向上させることを考慮すると、具体的には、短軸長さは、好ましくは、1〜10nm、より好ましくは2〜6nmである。長軸長さは、好ましくは20〜700nm、より好ましくは100〜700nmである。アスペクト比は、好ましくは5〜150、より好ましくは、20〜150である。
ここで、金属酸化物粒子の短軸長さ、長軸長さ及びアスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)は、いずれも後述の方法で測定した100個の粒子の平均値を意味する。
図1Aに示すように、金属酸化物粒子の長軸長さは、Lとして求められる。金属酸化物粒子の短軸長さは、短軸方向の断面の長径Lおよび短径Lの平均値L=(L+L)/2として求められる。ここで、L≧Lであり、短軸方向の断面形状が円形の場合には、L=Lである。また、L≧Lであり、球状粒子の場合には、L=L(=L=L=粒子径)である。
アスペクト比は、金属酸化物粒子の長軸長さと、短軸長さとの比(L/L)として求められる。なお、金属酸化物粒子が中空形状や海島形状の場合でも、図1Aの中実粒子と同様に、図1Bに示すようにして、金属酸化物粒子の短軸長さ、長軸長さ及びアスペクト比を求めることができる。
また、後述する金属酸化物粒子が中空形状や海島形状の場合の中空円筒もしくは中空角柱のサイズに関しても、中空円筒もしくは中空角柱の短軸の径Lは、短軸方向の中空断面の長径Lと、短径Lとの平均値(L+L)/2として求められる。中空円筒もしくは中空角柱の長さは、Lとして求められる。中空円筒もしくは中空角柱の両端は、図1Bに示すように開口していてもよいし、いずれか一端または両端が閉じていてもよい。
前記アルミナ粒子等の金属酸化物粒子は、図1Bに示すように、粒子短軸の径(短軸長さL)の大きさに応じて0.5nm〜9.5nmの径L(=(L+L)/2)、長さLは粒子長軸長さ(長軸長さL)以下の5〜700nmの中空円筒を粒子内に有した中空粒子であることが好ましい。これによって、前記アルミナ粒子等の金属酸化物粒子の比重を低減することができる。
なお、アルミナ粒子等の金属酸化物粒子のモル数は一般式より求める。たとえば、アルミナ粒子を例にとれば、αアルミナ粒子は一般式Alより分子量は、101.96とする。ベーマイト粒子の場合は例外的にAlO(OH)を分子量に適用して75.98を分子量とする。他の金属酸化物粒子のモル数に関しても同様に一般式より求めるものとし、ベーマイト粒子(AlO(OH))やゲータイト粒子(FeO(OH))のような金属の酸化・水酸化物の場合は、例外的に当該酸化・水酸化物の一般式を分子量に適用して求めるものとする。
上述したアルミナ粒子等の金属酸化物粒子は、上記結晶系、形状、サイズのものが得られれば特に限定されず、水熱合成法やゾルゲル法など一般的な方法を用いることができる。
前記金属酸化物粒子の樹脂組成物に対する配合量は、要求特性(例えば、剛性、耐熱性及び耐熱膨張性など)が得られるような量であれば特に制限されない。ただ、得られる樹脂組成物に対し、総配合量が好ましくは5〜30vol%、より好ましくは10〜25vol%である。得られる樹脂組成物の剛性、耐熱性及び耐熱膨張性などの物性の向上を考慮すると、前記金属酸化物粒子の配合量が5vol%以上であることが好ましい。一方、樹脂組成物のコスト及び比重の増大を考慮すると、前記金属酸化物粒子の配合量が30vol%以下であることが好ましい。前記金属酸化物粒子の含有量が多すぎると、得られる樹脂組成物の粘度が増大してしまい、成形性が悪くなる虞がある。
[繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂]
本発明の原料として用いる樹脂は、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂である。具体的には、エステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂であれば特に限定しない。
繰り返し単位構造中にエステル結合を有する樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル系樹脂などが挙げられる。繰り返し単位構造中に炭酸エステル結合を有する樹脂としては、ポリカーボネート、ポリカーボネートコポリマーなどが挙げられる。なかでも透明性、衝撃強度、引張強度、熱膨張性のバランスが優れたポリカーボネートが好ましい。原料コストを考慮すると、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
ここで、本発明の原料として用いる樹脂では、上記樹脂が単独で使用されても、あるいは上記異なる種類の樹脂を2種以上混合して使用されてもよい。
原料ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
上記の二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどを挙げることができる。その他1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの二価の脂肪族アルコールを共重合することも可能である。
上記のカーボネート前駆体としては、カーボネートエステル等が使用され、具体的にはジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、ジフェニルカーボネートが好ましい。
上記二価フェノールと上記カーボネート前駆体を溶融エステル交換法によって反応させて原料ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また原料ポリカーボネートは三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる多官能性化合物の割合は、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。多官能性化合物の割合がポリカーボネート全量中、0.001モル%以上であれば熱安定性が向上することから好ましい。また1モル%以下であれば延性を顕著に低下させないことから好ましい。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合がある。かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。分岐構造の分岐ポリカーボネート量がポリカーボネート全量中、0.001モル%以上であれば熱安定性が向上することから好ましい。また1モル%以下であれば、延性を顕著に低下させないことから好ましい。なお、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
更に芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを、本発明にかかる樹脂として使用してもよい。脂肪族の二官能性カルボン酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族の二官能性カルボン酸が挙げられる。かかる脂肪族の二官能性のカルボン酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。芳香族の二官能性カルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビス−(4−カルボキシ)−ジフェニル、ビス−(4−カルボキシフェニル)−エーテル、ビス−(4−カルボキシフェニル)−スルホン、ビス−(4−カルボキシフェニル)−カルボニル、ビス−(4−カルボキシフェニル)−メタン、ビス−(4−カルボキシフェニル)−ジクロロメタン、1,2−および1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)−エタン、1,2−および2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−プロパン、1,2−および2,2−ビス−(3−カルボキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、1,1−および2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ブタン、1,1−および2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ペンタン、3,3−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ヘプタン、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ヘプタン;および脂肪族酸例えば蓚酸、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、セバシン酸、グルタール酸、アゼライン酸、スべリン酸等が挙げられる。かかる芳香族の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸及びテレフタル酸あるいはこれらの誘導体の混合物が好ましく挙げられる。
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のポリエステル系樹脂の使用も可能である。
原料ポリカーボネートは、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有する分岐ポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、末端フェニル性ポリカーボネートなど各種のポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。更に下記に示す製造法の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応である。不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃、好ましくは150〜310℃の範囲である。反応温度が120℃以上であれば、エステル交換反応の活性化エネルギーを得ることが可能となるため、反応が促進されることから好ましい。また350℃以下であればビスフェノールAの熱分解生成物で着色物質であるイソプロペニルフェノール誘導体の生成が抑制されることから好ましい。反応後期には系を1.33×10〜13.3Pa程度、好ましくは133〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応後期の系内圧力が1.33×10Pa以下であれば、副生成物であるフェノールが除去され、反応平衡が重合側に傾くため、高分子量化が促進されることから好ましい。また反応後期の系内圧力の下限値は特に制限されないが、13.3Pa以上であれば高真空状態を作り出すポンプが不要となるため、コスト低減が図れることになることから好ましい。ここで、反応後期とは、粘度平均分子量が5000g/mol以上となった状態をいうものとし、粘度、GPC測定などによりかかる減圧開始時期=反応後期になった状態を検知ないし感知することができる。反応時間は通常1〜4時間程度、好ましくは1〜2時間である。反応時間が1時間以上であれば、十分に重合反応が進行するため高分子量化が促進されることから好ましい。また4時間以下であれば、ビスフェノールAの熱分解生成物で着色物質であるイソプロペニルフェノール誘導体の生成が抑制されることから好ましい。
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。更にアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。重合触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。重合触媒の使用量が原料の二価フェノール1モルに対し、1×10−8当量以上であれば、触媒による活性化エネルギーの低減効果のため反応が促進されることから好ましい。また1×10−3当量以下であれば余剰分の触媒量を低減することで、ポリカーボネートとの接触分解を抑制できることから好ましい。
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。ここで、重縮反応の後期とは、粘度平均分子量が5000g/mol以上となった状態をいうものとし、粘度、GPC測定などによりかかる重縮反応の後期の状態を検知ないし感知することができる。また重縮反応の終了時は粘度平均分子量が13000g/mol以上となった状態をいうものとし、粘度、GPC測定などによりかかる重縮反応の終了時の状態を検知ないし感知することができる。重縮反応の終了後とは、上記重縮反応の終了時以降であれば特に制限されるものではないが、重縮反応の終了時から1時間以内に上記化合物を加えるのが望ましい。
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いないことが好ましい。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが挙げられる。失活剤を用いない理由としては、成形工程中における重合反応を促進させるためである。
原料(メタ)アクリル樹脂は、下記に詳述されるような(メタ)アクリル樹脂系モノマーを重合あるいは共重合することによって製造される。この際、(メタ)アクリル樹脂系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用されてもよい。得られる成形物の透明性、剛性及び硬度等のバランスを考慮すると、メチルメタクリレートを主成分とすることが好ましい。より好ましくは、メチルメタクリレートは、モノマー全量に対して、70〜100質量%の量で使用されることが好ましい。
本発明に係る樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明においては26,000以上、好ましくは26,000〜300,000の範囲が好適であり、より好ましくは35,000〜100,000の範囲である。
樹脂の重量平均分子量が26,000以上であれば、成形物は上記したような様々な特性を満足することができる。樹脂の数平均分子量が26,000未満であると強度などが低下し、更に得られる樹脂組成物の熱安定性が低下する場合がある。一方、樹脂の数平均分子量の上限値は特に制限されないが、300,000を超えるとフェニル性末端の濃度が不足し、成形工程中における重合反応が不十分になる。本明細書において、重量平均分子量は、後述する実施例の測定方法を用いて算出する。
また、ポリエステル系樹脂として、メタクリル樹脂系、アクリル樹脂系の使用が透明性の観点から好ましい。これらのモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。これらモノマーは、1種単独または2種類以上を混合して用いてもよいが、透明性、剛性、硬度等のバランスからメチルメタクリレートが主成分であることが好ましい。より好ましくは、上記不飽和単量体と共重合しうるもう一方の単量体全量に対してメチルメタクリレートが70質量%以上である。
(金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法)
本発明の製造方法は、低分子量化を促進する原因となる因子を低減または除去を除去する工程を必須の構成要件として含む以外は、特に制限されない。公知の方法をそのまままたは適宜組合せてあるいは適宜修飾して同様にして適用できる。以下、低分子量化を促進する原因となる因子を低減または除去する工程以外の、本発明の樹脂組成物の製造方法の好ましい実施形態を以下の工程の製法を参照しながら説明する。しかしながら、本発明の方法は、下記工程に制限されるものではないのはいうまでもない。
本発明に係る、金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物は、下記工程(基本プロセス)によって好適に作製される。
第一工程として、前記金属酸化物粒子が分散した水(水ゾル)、またはアルコール(アルコールゾル)に改質剤を添加し均一化する。
第二工程として、水の場合はフリーズドライにより水分を除去し、アルコールの場合は減圧、加熱環境により粉体を得る。
第三工程として、粉体を有機溶媒に溶解した後、これに樹脂の溶液を添加して均一化し、さらに溶剤を減圧、加熱環境により除去することで粗樹脂組成物を作製する。
第四工程として、粗樹脂組成物に対して、乾燥後、必要に応じてヘプタンやアセトンなどを用いた洗浄と、混練機を用いた溶融混練を行った後、成形機にて所望の成形体を作製する。
第一工程の目的として、このようなゾルを経ることで、金属酸化物粒子表面の改質効果を向上させることができる。
第二工程の目的として、粉体を経ることで溶剤の使用量を低減でき、工業生産性を向上することが出来る。
第三工程の目的として、ゾルに用いる溶媒に原料樹脂に対して溶解性のあるものを選択することで、樹脂組成物の構成原料を均一に混合することができ、金属酸化物粒子の分散性の向上効果が得られる。
第四工程の目的として、粗樹脂組成物の状態から、溶融混練を経ることで、脱泡や改質の固定化に伴う金属酸化物粒子の分散性向上が挙げられる。
なお、混練機は、二軸押出成形機、真空微量混練押出機、ラボプラストミル等を得たい成形体に応じて適宜用いることができる。また、成形法も適宜選択することが出来る。例えば射出成形、押出成形、インジェクションプレス、熱プレス、ブロー成形などが挙げられる。
続いて、上記工程をさらに詳細に説明する。
第一工程は、上記の通り、前記金属酸化物粒子が分散した水(水ゾル)、またはアルコール(アルコールゾル)に改質剤を添加し均一化する。
水ゾルの調製方法は、特に制限されないが、好ましくは、金属酸化物粒子を水中に1〜10質量%程度の濃度になるように分散させることが好ましい。より好ましくは、後工程での表面改質の容易性と生産性のバランスという観点で、2〜7質量%程度である。
また、金属酸化物粒子の水ゾルは、市販品を使用してもよい。例えば、触媒化成工業株式会社製の水分散ベーマイト(商品名:Cataloid−AS−3;ベーマイトの長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、水分散ベーマイト中の固形分7wt%、比重1.05)などが好ましく使用できる。水系ゾルは、主溶媒が水であるが、アルコール類やアセトンなどの親水性溶媒が少量含まれていても構わない。その量は特に制限されないが、20%程度までに抑えることが好ましい。
アルコール系ゾルの調製方法としても、特に制限はないが、具体的には、水ゾルにアルコールと表面改質剤を添加し、沸点差を利用して溶媒交換するといった方法を用いることができる。
なお、水ゾルの状態から改質剤を用い、沸点差を利用して有機溶剤ゾルへ溶媒交換されて、金属酸化物粒子改質体分散ゾルを調製してもよい。また、有機溶剤ゾルの調製時に用いられる有機溶剤は、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン(沸点:約156℃)、1,4−ジオキサン(沸点:約101℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:約180℃)などの沸点100℃以上の高沸点溶剤;ならびにテトラヒドロフラン、クロロホルム、メチレンクロライド、1,3−ジオキソランなどが好ましく、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、o−ジクロロベンゼンがより好ましい。有機溶剤を使用する場合の、有機溶剤の使用量は、十分有機溶剤ゾルへ溶媒交換できる量であれば特に限定されないが、金属酸化物粒子の濃度が好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の範囲になるような量である。
また、本工程では、本発明の効果をより得るために、改質剤を用いて分散させる。金属酸化物粒子を、より樹脂中に均一分散させるためである。
改質剤の例としては、特に限定されないが、金属酸化物粒子表面に化学的に結合する有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤はその分散効果が高く、特に好ましい。金属酸化物粒子に対する解膠能力は、有機スルホン酸が高く、特にパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が最も高い。有機リン化合物は特に限定されないが、金属酸化物粒子表面への反応性、化合物としての安定性、入手の容易さなどの理由から、モノフェニルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノブトキシエチルアシッドホスフェート、モノベンジルアシッドホスフェートが特に望ましい。シランカップリング剤は特に限定されないが、入手の容易さなどの理由から、メトキシトリメチルシラン、アセトキシトリメチルシラン、t−ブチルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシランが特に望ましい。
これらの有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸を組み合わせて用いることが、好ましい。
ここでいう「2種以上」とは、例えばブトキシエチルアシッドホスフェートとp−トルエンスルホン酸のように化学種の異なるものを組み合わせてもよいし、また例えば、下記式(2):
Figure 2009067954
式中、mは1または2である、
で表されるブチルアシッドホスフェートにおいて、式中のmが1のものと2のものを混合して用いてもよいことを意味している。
なお、本発明の目的を達成することが出来る限りにおいて、前記有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤は、前記金属酸化物粒子に対して、共有結合、配位縮合、水素結合、静電気的な結合などのいずれの態様で結合していても良い。また、前記有機スルホン酸、有機リン化合物の総てがこのような態様で結合している必要はなく、少なくとも一部が結合していればよい。
本発明の金属酸化物粒子における有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤の含有量は特に制限されない。しかしながら、粒子重量に対して2.5wt%以上が好ましく、さらに好ましくは5.0wt%以上、特に好ましくは10〜35wt%の範囲である。
有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤の含有量が、分散効果を十分に得るためには、0.5wt%以上が好ましい。尚、上記に規定する有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤の含有量は、これらを単独で用いる場合には、当該化合物の含有量を表わし、2種以上を併用して用いる場合には、それらすべての化合物の合計含有量を言うものとする。尚、有機スルホン酸、有機リン化合物の含有量は、TG−DTA、IR、NMR、GC−MSなどの装置を組み合わせて定性、定量することができる。シランカップリング剤の含有量は、後述するXPSで定性、定量することができる。
第二工程において、金属酸化物粒子を含有するゾルの溶媒が、水である場合、上記の通りフリーズドライにより水分を除去することが好ましい。このフリーズドライの条件には、特に制限はなく、従来公知の技術を適宜参照して設定することができる。下記に、条件の一例を挙げる。
フリーズドライは、市販の工業用フリーズドライ装置を用いて行うことができる。装置の例としては、共和真空技術(株)製凍結乾燥機RLEIIシリーズ、RL−Bシリーズなどが挙げられる。該凍結乾燥機を用いて、凍結乾燥を行う方法は次の通りである。(1)無機微粒子の水分散懸濁液を凍結乾燥装置の棚にセットし、2〜5時間かけて凍結を行う。凍結温度は−40℃以下が好ましい。
(2)この間、トラップも並行して冷却する。(3)10〜20分のうちに十分排気して0.02〜0.5Torr(2.6664Pa〜66.6610Pa)程度の真空とする。(4)約1日間凍結乾燥を行い、水分を大部分昇華させる。(5)25〜50℃にて数時間2次乾燥を行い、僅かに残存する水分を除去する。
(6)窒素又は乾燥空気により常圧に戻す。
また、金属酸化物粒子を含有するゾルの溶媒が、アルコールである場合、そのアルコールの除去のための減圧、加熱環境の条件にも特に制限はなく、従来公知の技術を適宜参照して行えばよい。市販されている乾燥機を使って、所定の条件で減圧、加熱してもよい。一例を挙げると、圧力20〜100kPa、35℃〜80℃にて1〜3時間加熱乾燥を行うことができる。
かようにすることにより、第二工程における粉体を得ることができる。
第三工程として、粉体を有機溶媒に溶解した後、これに樹脂を溶解した樹脂溶液を添加して均一化し、さらに溶剤を減圧、加熱環境により除去することで粗樹脂組成物を作製する。
本発明で用いる有機溶媒は、目的の構成成分(粉体・樹脂)に対して必要十分な溶解性を持つものであれば特に限定されない。例えば、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、メチレンクロライド、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、o−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。混合物の形態の場合、水と混合するのが好ましく、中でも着色や残存溶媒の影響の低いTHFと水との混合溶媒が特に好ましい。
有機溶媒に溶解させる粉体の量にも特に制限はないが、溶液の粘度と樹脂の溶解性という観点で好ましくは、有機溶媒の質量に対して、1〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。
なお、「樹脂溶液に用いる溶媒」と、上記有機溶媒は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。前者の場合であって、有機溶剤が目的の構成成分を溶解するのに十分量存在する場合には、特に本工程において溶媒を新たに添加する必要はなく、また、必要量のみを新たに添加してもよい。
また、「樹脂溶液に用いる溶媒」の使用量は、目的の構成成分(粉体・樹脂)に対して必要十分に溶解できる量であれば特に限定されないが、樹脂質量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。
第三工程における溶媒の除去の減圧、加熱環境条件は、特に制限されず、エバポレータを用いて減圧下で溶媒を留去する方法など、公知の溶媒の除去方法が同様にして適用できる。
具体的には、ベントなどに備え付けた減圧装置を使用することや、冷却トラップ付き蒸留装置などを用いるなどにより、溶媒を除去できる。ここで、溶媒除去(留去)後、さらに溶媒を完全に除去することを目的として、減圧下(好ましくは、50mmHg(6666.100Pa)以下)で100〜200℃で溶媒をさらに除去してもよい。
なお、本工程では、第二工程で得られた粉体を、樹脂の溶液に溶解しているが、金属酸化物粒子、または金属酸化物粒子改質体分散ゾルを、乾燥しないでそのまま、樹脂の溶液に溶解してもよい。
第四工程として、粗樹脂組成物に対して、乾燥後、必要に応じてヘプタンやアセトンなどを用いた洗浄と、混練機を用いた溶融混練を行った後、成形機にて所望の成形体を作製する。
粗樹脂組成物の乾燥は、例えば真空乾燥機を用いて、2〜6時間、50〜120℃で行うことができる。溶融混練する際の温度としては、使用する樹脂の溶融温度以上であれば特に限定されないが、混練時の樹脂の粘性(流動性)や熱劣化(熱ストレス)などを考慮すると、使用する樹脂の溶融温度よりも5〜80℃、より好ましくは10〜30℃ほど高い温度で、粗樹脂組成物を溶融混練することが好ましい。
溶融混練は、市販の溶融混練機(真空微量混練押出機(井元製作所製、IMC−1170B型))を用いて行なうことができる。真空チャンバー内で、好ましくは、0.01MPa以下の減圧度、ローター回転速度5〜20rpm、5〜10分間行なうことが好ましい。
所望の成形体は、樹脂組成物を融点以上の温度にて任意の形状することが可能である。目的とする部品形状や求められる性能によって成形法は適宜選択することが出来る。例えば、射出成形、押出成形、インジェクションプレス、熱プレス、ブロー成形などが挙げられる。
本発明に係る樹脂組成物は必要に応じて、例えば、相溶化剤、酸化防止剤及び熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル、及びこれらの置換体及びその組み合わせを含む)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、べンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、滑剤、離型剤(例えばシリコン樹脂、モンタン酸及びその塩、ステアリン酸及びその塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド等)、染料(例えばニトロシン等)、顔科(例えば硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤添着液(例えばシリコンオイル等)、結晶核剤(例えばタルク、カオリン等)、及び触媒(例えば金属、有機金属錯体)などを単独又は適宜組み合わせて添加することができ、さらに他の樹脂と任意の比率でブレンドしてもよい。
[低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾル]
続いて、本発明の特徴である(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを得る工程について詳細に検討する。
金属フィラーが含有した熱可塑性樹脂組成物を製造する(すなわち、ポリマーナノコンポジット化)の一連の工程中に、かような低分子量化を促進する原因となる因子を低減または除去するという工程を含ませる。
上述のように、ポリカーボネートや(メタ)アクリル樹脂等の樹脂に、アルミナ、珪酸またはその塩、チタニア等の金属酸化物粒子(フィラー)を混合すると、耐衝撃性、弾性特性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、引張強度、熱膨張性、延性等の種々の特性が向上できる。
そのため、樹脂組成物に上記したような金属酸化物粒子をフィラーとして添加していた。しかし、このような特性の向上を図るあまり、金属酸化物粒子を過剰に添加すると、上記特性、特に靭性、延性や耐衝撃性が低下し、逆に、実使用時の力学的バランスに劣る樹脂組成物となってしまうという問題があった。
かような問題は、上記の通り、樹脂の大幅な分子量の低下が原因であるものと本発明者らは推測した。そして、樹脂全体の分子量が低下するのは、金属酸化物粒子による剛化の他に、金属酸化物粒子を、特定の結合を有する樹脂中に添加すると、樹脂の分子鎖同士の絡み合い密度が低下し、「低分子量成分」が多く発生することに起因しているものと考えた。
これに対して、上記の通り、本発明者らは低分子量化を発生・促進する原因となるそもそもの成分、すなわち、低分子量化を促進する因子を見出し、その因子を有意に低減または除去することにより、樹脂の大幅な分子量の低下を防止/抑制することができることを見出したのである。
本発明の方法によって製造される樹脂組成物は、靱性、延性、耐衝撃性などの低下を引き起こす原因である低分子量成分が発生することは殆どない。このため、当該樹脂組成物を用いた成形物は、優れた靭性、延性及び耐衝撃性を発揮でき、また、金属酸化物粒子の存在により、種々の特性、特に、引張強度、熱膨張性などの向上が認められる。さらに、得られた成形物は、低分子量成分と金属酸化物との結合(架橋)体がほとんど存在しないので、十分な透明性を有していると同時に、高弾性、低熱膨張性、表面平滑性、可撓性などをも有している。
したがって、本発明の方法によって得られる樹脂組成物は、種々の用途に有用であり、例えば、その透明性により、自動車や建築物等のガラスなど、様々な分野におけるガラスの代替材料として有用である。特に、本発明の方法によって得られる樹脂組成物を自動車の窓ガラス等の自動車部品に適用される場合には、安全性が向上する上、軽量化が有意に達成できて、燃費向上などの様々な効果が期待できる。
(低分子量化を促進する因子)
上記した「低分子量化を促進する因子」は、有機酸、無機酸、金属および陰イオンからなる群から選択される少なくとも1種であると好ましい。
前記有機酸としては、例えば、酢酸、カルボン酸、酪酸、ギ酸、誘導カルボン酸およびプロピオン酸からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。特に、前記酢酸は、金属酸化物粒子の形態制御剤として、広く一般的に用いられ、ベーマイトなどに含有している。無論その他の有機酸も、添加剤として、金属酸化物粒子に含まれることがよく見られる。
前記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
前記金属としては、例えば、Na等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Cd、Co、V、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Ti、Zn、Rh、Ru、およびZrからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
前記陰イオンとしては、例えば、Cl、NO 、PO 3−およびSO 2−からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
上記の中で、少なくとも、酢酸、Na、FeおよびClからなる群から選択される少なくとも1種が低減または除去されることが好ましい。その理由は、金属酸化物粒子表面に吸着し、混練時に脱離することで加水分解を促進するためである。
これら成分が、下記方法により、有意に低減または除去されることで、本発明の効果が奏される。ここで、「低減」とは、(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法を行った後の「低分子量化を促進する因子」の量が、行う前の量によりも、少なくなっている状態になることを言う。また、「除去」とは、上記方法を行った後、これらの成分が、実質的にすべて存在しなくなっている、あるいは、完全に存在しなくなっている状態のなることを言う。無論、これら成分は、「除去」されることが最も好ましいが、上記方法を行うことにより、少なくともその成分が減少した状態になれば、すなわち「低減」されれば、それは、樹脂の大幅な分子量の低下を防止、少なくとも抑制することに繋がるのである。
すなわち少なくとも「低減」されれば、本発明の効果を奏していると言える。
低減または除去されたかを判断する方法としては、各種存在するが、例えば、元素分析法が挙げられる。すなわち、(a)(b)(c)の方法を施す前と、施した後とにおいて、元素分析を行い、施す前と比べ、施した後における「低分子量化を促進する因子」が減少していたら、それは低減されたものといえる。消失していれば、除去されたといえる。
なお、たとえば酢酸を除去する場合には樹脂組成物中の濃度で3wt%以下、Naを除去する場合には樹脂組成物中の濃度で60質量ppm以下とすることが好ましい。
(除去プロセス1:限外濾過法)
金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中に、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去するため、限外濾過法を用いることができる。限外濾過法を用いる段階は、金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中であればどの時点でもよいが、好ましくは、前記第一および前記第三工程の少なくとも一方に行う。
上述の通り、第一工程において、前記金属酸化物粒子が分散した水、またはアルコールゾルに改質剤を添加し均一化する。また、第三工程において、粉体を有機溶媒に溶解した後、これに樹脂の溶液を添加して均一化し、さらに溶剤を減圧、加熱環境により除去することで粗樹脂組成物を作製する。
第一工程においては、前記金属酸化物粒子が分散した水(水ゾル)、またはアルコールゾルを、限外濾過する。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去することができる。無論、改質剤を添加された、金属酸化物粒子改質体分散ゾルに限外濾過を施してもよい。
第三工程においては、粉体を有機溶媒に溶解し、有機溶媒のゾルを調製するのであるが、そのゾルに限外濾過を施す。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去することができる。
限外濾過は、従来公知の方法を適宜選択して行うことができる。市販の限外濾過装置を用いて行ってもよい。限外濾過は、「低分子量化を促進する因子」具体的には、酢酸や金属等を十分に低減または除去することができる条件(濃度、液量、時間、交換溶媒、細孔径)にて行う。市販の限外濾過装置としては、例えば、セラミックフィルター(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製 MEMBRALOXエレメント(マルチNF(孔径5/10nm))を濾過モジュール(7M3(4))に組み込みこんだ装置)を用いることができる。
[第一工程で、限外濾過を行う場合]
金属酸化物粒子水ゾルから、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去するためには、フィルター孔径は粒子が目詰まりせず、ポンプの圧力を上げることで必要な濾過効率を満足するのに適するサイズが好ましい。例えば、短軸長さの場合は、1〜30nmが好ましく、より好ましくは5〜20nmである。ここで、粒子に対して、フィルター孔径が大きく、目詰まりを起こすようであれば、逆洗を行うか、よりフィルター孔径の小さいフィルターを用いるなどの調整を行うことが好ましい。循環流速(循環流量)は前述のフィルター孔径にもよるが、セラミックフィルターが圧力で破損しない範囲で生産性を上げるためには、2〜10m/s(1.7〜8.6m3/h)が好ましく、より好ましくは3〜5m/s(2.6〜4.3m3/h)である。温度が濾過効率に与える影響は小さいため、特に制御する必要はなく、常温で開始すると、セラミックフィルターと粒子の摩擦熱によって温度が一定値(60℃程度)まで上昇する。フィルター通過圧力損失はフィルター保護のためにも0.1MPa以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.07MPa以下である。濾過に用いる溶媒の種類は濾過される原料ゾルに用いられている溶剤と同じものであり、液量は、低分子量化を促進する因子を低減できる量であれば、特に限定されないが、原料ゾルに対して300〜2000wt%が好ましく、さらに好ましくは500〜1000wt%である。
[第三工程で、限外濾過を行う場合]
第一工程で限外濾過を行う場合と同じ条件で、交換溶媒はゾルと同じものを用いる。なお透析手段としては拡散透析、電気透析が使用可能である。好ましくは電気透析であり、これにより濾過に要する時間をいっそう低減できて非常に有効である。
金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中に、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去するために、透析法を用いることができる。透析法を用いる段階は、金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中であればどの時点でもよいが、好ましくは、前記第一および前記第三工程の少なくとも一方に行う。
上述の通り、第一工程において、前記金属酸化物粒子が分散した水、またはアルコールゾルに改質剤を添加し均一化する。また、第三工程において、粉体を有機溶媒に溶解した後、これに樹脂の溶液を添加して均一化し、さらに溶剤を減圧、加熱環境により除去することで粗樹脂組成物を作製する。
第一工程においては、前記金属酸化物改質体が分散した水(水ゾル)、またはアルコールゾルに透析を施す。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去させることができる。無論、改質剤を添加された金属酸化物粒子改質体分散ゾルを透析してもよい。
第三工程においては、粉体を有機溶媒に溶解し、有機溶媒のゾルを調製するのであるが、そのゾルに透析を施す。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去させることができる。
透析は、従来公知の方法を適宜選択して行うことができる。市販の透析装置を用いて行ってもよい。透析は、「低分子量化を促進する因子」、具体的には、酢酸や金属等を十分に低減または除去することができる条件(濃度、温度、時間、液量、交換溶媒)にて行う。市販の透析装置としては、例えば、透析膜のチューブ(三光純薬(株)製 透析膜 36/32)を用いることができる。
[第一工程で、透析を行う場合]
金属酸化物粒子水ゾルから、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去するためには、交換溶媒としては純水(好ましくは、イオン交換済み)を用いる。その量は、金属酸化物粒子水ゾルの質量の2〜20倍程度が好ましく、より好ましくは7〜12倍程度である。
透析を行う際の温度は、コストと拡散バランスという観点から、好ましくは5〜70℃程度、より好ましくは23℃程度である。また、透析を行う時間は、因子を必要な濃度まで低減するという観点から、2〜24時間程度、より好ましくは6時間程度行う。
かような透析は、「低分子量化を促進する因子」を有意に低減または除去するためには、1回のみならず、複数回行うことが好ましい。その回数には、特に制限はないが、因子を必要な濃度まで低減することを考慮すると、2〜10回程度、より好ましくは3回〜7回程度行うとよい。なお細孔径は粒子の短軸径以下であることが条件である。
[第三工程で、透析を行う場合]
第一工程で限外濾過を行う場合と同じ条件で、交換溶媒はゾルと同じものを用いる。
なお透析手段としては拡散透析、電気透析が使用可能である。好ましくは電気透析であり、これにより濾過に要する時間をいっそう低減できて非常に有効である。
(除去プロセス3:強酸交換)
金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中に、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去するために、強酸交換法を用いることができる。強酸交換法を用いる段階は、金属酸化物粒子と、樹脂とを含有させるための一連の工程中であればどの時点でもよいが、好ましくは、前記第一および前記第三工程の少なくとも一方に行う。
ここで、「強酸交換」の原理について説明を行う。一般的に、金属酸化物粒子の表面はアルカリ性である。そのアルカリ性の表面に、酸性の酢酸やカルボン酸、ギ酸、プロピオン酸などが結合ないし吸着している。
そこで、該アルカリ性の表面に結合ないし吸着している酸よりも、強い酸を添加することにより、弱い酸と強い酸とが交換される。
ここで、「強酸」とは、該アルカリ性の表面に結合ないし吸着している酸よりも、強い酸の意味であり、該アルカリ性の表面に結合ないし吸着している酸よりも、相対的に強い酸であればよい。すなわち、該アルカリ性の表面に結合ないし吸着している酸のpHよりも、相対的に低いpHの酸を用いることができる。
上述の通り、第一工程において、前記金属酸化物粒子が分散した水、またはアルコールゾルに改質剤を添加し均一化する。また、第三工程において、粉体を有機溶媒に溶解した後、これに樹脂の溶液を添加して均一化し、さらに溶剤を減圧、加熱環境により除去することで粗樹脂組成物を作製する。
第一工程においては、前記金属酸化物粒子が分散した水(水ゾル)、またはアルコールゾルに、強酸交換法を施す。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去させることができる。無論、改質剤を添加された金属酸化物粒子改質体分散ゾルに強酸交換法を施してもよい。この後、純水を加えて初期の粒子濃度に水ゾルを調製する。
第三工程においては、粉体を有機溶媒に溶解し、有機溶媒のゾルを調製するが、そのゾルに強酸交換を施す。この後、該有機溶媒を加えて初期の粒子濃度の水ゾルに調整する。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質水ゾルを得た。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去させることができる。この後、純水を加えて初期の粒子濃度に水ゾルを調製する。
第一工程・第三工程においては、ゾル中の金属酸化物粒子の表面に結合ないし吸着している酸のpHよりも相対的に低いpHの酸の具体例は、例えば、スルホン酸(特に、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラベンゼンスルホン酸)、リン酸、塩酸(塩化水素)、硫酸(硫化水素)などが挙げられる。
また、強酸交換をする際に、必要に応じて50〜200℃の加熱操作を、0.1〜2時間程度行うことが好ましい。かような加熱操作を行なうと、交換反応を促進させることで処理時間を短縮できるといったメリットがある。
なお(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを得る工程に加え、下記の加熱処理の工程を含むことも好ましい。その加熱処理工程は、好ましくは、前記第一、前記第二および前記第三工程の少なくとも一工程に行う。
第一工程においては、前記金属酸化物粒子が分散した水、またはアルコールゾルに加熱処理を施す。かようにして、「低分子量化を促進する因子」を低減または除去させることができる。無論、改質剤を添加された金属酸化物粒子改質体分散ゾルに加熱処理をしてもよい。
第二工程においては、水の場合はフリーズドライにより水分を除去し、アルコールの場合は減圧、加熱環境により粉体を得る。その粉体に加熱処理を施す。
第三工程においては、粉体を有機溶媒に溶解し、有機溶媒のゾルを調製するのであるが、そのゾルに加熱処理を施す。
脱水反応に伴う粒子同士の凝集が伴わない温度(好ましくは50〜200℃)による加熱による酢酸を含む低沸点の有機酸等の揮発除去処理を行うことができる。すなわち、「低分子量化を促進する因子」を有意に低減または除去させることができる。
上述した通り、金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法は、低分子量化を促進する原因となる因子を低減または除去を除去する工程を必須の構成要件として含む以外は、特に制限されない。公知の方法をそのままあるいは適宜組合せてあるいは適宜修飾して同様にして適用できる。したがって、上記基本プロセス以外の方法を用いて樹脂組成物を製造してもよい。下記にその方法を説明する。
[直接混練法]
上記の(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルまたは、該ゾルから溶媒が除去された粉体を、上記樹脂と直接、溶融混練することもできる。
なお、該ゾルの溶媒の除去方法および溶融混練の方法は、上記で説明したことが同様に妥当するので、ここではその説明を割愛する。
かようにして、「低分子量化を促進する因子」が有意に低減または除去された樹脂組成物を得ることができる。
[内添重合法]
上記の(a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを、前記樹脂を構成するモノマーに混合し、そのモノマーを重合することもできる。
重合の条件としては、ポリマーナノコンポジットを作製する際の条件を適宜参照して設定することができるが、一例を挙げると、ポリカーボネートの場合、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを金属酸化物粒子含有ゾルを混合後、攪拌・加熱・減圧留去によりゾルの溶媒と縮合で生成するフェノールを留去すれば、ナノコンポジットを得ることができる。
具体的な条件としては、関東化学(株)製ビスフェノールAを50.4g(221mmol)、関東化学(株)製ジフェニルカーボネートを49.6g(232mmol)、金属酸化物粒子含有ゾル(固形分5%、メチレンクロライドゾル)を100g加え、縮重合触媒として和光純薬工業(株)製酸化亜鉛を5mg添加し、窒素ガス雰囲気下、攪拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)により攪拌しながらクロロホルムを留去した後、160℃まで加熱した。両モノマー成分の溶融を確認した後230℃に昇温し、この温度で内圧30kPaまで減圧し、1時間攪拌を続けた。続いて、30分かけて250℃・3kPaまで昇温・減圧し、30分間攪拌した。更に280℃・10Paまで昇温・減圧し、この温度と減圧度で30分間攪拌した後、窒素ガスにより常圧に戻し、放冷する。
かようにして、「低分子量化を促進する因子」が有意に低減または除去された樹脂組成物を得ることができる。
下記に、本発明の効果を纏める。
・金属酸化物粒子の添加量を増加しても、樹脂の大幅な分子量の低下が起こらない。
・かような樹脂組成物は、機械的特性、特に靭性、延性及び耐衝撃性の低下が有意に防止されたものといえる。
・さらには、このような樹脂組成物を成形して得られた成形物は、高弾性、低熱膨張性、表面平滑性、透明性、可撓性などを維持することができる。
・成形時には、樹脂組成物中に低分子量成分、ゆえに、低分子量成分と金属酸化物との結合(架橋)体がほとんど存在しない。よって得られた成形物は、薄膜状であっても、縞模様は存在しない。
・また、樹脂と結合(架橋)体との柔軟性の相違による成形物の靭性低下も有意に抑制防止できる。
・加えて、かようにして得られた成形物は、十分な透明性をも維持しうる。
・ゆえに、本発明の方法によって得られる樹脂組成物は、ガラスの代替材料として有用であり、自動車や建築物などの窓をはじめとして様々な用途に使用することにより、軽量化、燃費向上、飛散防止などの様々な効果が期待できる。
以下、実施例および比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において採用した分析方法および分析機器は下記の通りである。
1.粒子形状、粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)にて、粒子形状を観察した。
<観察方法1(粒子形状)>
試料を純水(2段蒸留水)にて希釈後、超音波洗浄器にて15分間かけた。その後銅メッシュ上の親水処理済カーボン被覆コロジオン膜に試料を塗布し、乾燥させ観察試料を準備した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を120KV、70mA、10万倍にて撮影して、観察した。
<観察方法2(樹脂組成物中の二次凝集)>
成形後の試験片の一部を、ウルトラミクロトームを用い超薄切片を作製した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を200kV、10万倍にて撮影して、観察した。
<観察方法1、2の共通の条件>
・TEM用銅メッシュ:マイクログリット150−Bメッシュ、カーボン補強済み 応研商事株式会社
・透過型電子顕徹鏡:JEOLJEM−1200EXII 日本電子株式会社
<観察方法1(粒子形状)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて粒子径を測定した。短軸径、長軸径、厚さ、一辺の長さ共にそれぞれ無作為に100個体選び、測定しその平均値とした。尚、粒子の長軸に垂直方向の断面形状に関する寸法は10万倍拡大のTEM画像中にて画像面に対して長軸が垂直の位置関係にある粒子(前処理のミクロトームにより、粒子が切断されて断面構造がわかるもの)を無作為に10個体選び、測定しその平均値とした。
ソフト名:Scion Image for Whindows(登録商標)Scion corp.
<観察方法2(樹脂組成物中の二次凝集)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて二次凝集径を測定した。1.5μm四方の範囲内にて短軸方向に100nm以上の凝集径を持つものの有無を測定した。
ソフト名:Scion Image for Whindows(登録商標)Scion corp.
2.金属酸化物粒子及び粒子表面改質量の定性、定量
TG−DTA、NMRを用いて行なった。
<分析条件>
TG−DTA:セイコーインスツルメンツ(株)製TG−DTA20にて、試料(樹脂組成物)を23〜900℃、昇温速度10℃/分の条件で加熱し、その際の残存物の重量を測定した。加熱前試料の重量に占める残存物の重量の割合をフィラー濃度とした。尚、上記加熱条件において、ベーマイトは結晶構造が変わり、αアルミナとなるため、フィラー濃度とは、αアルミナ濃度である。(ベーマイト濃度への換算はαアルミナ濃度に1.176を乗することで算出される)
NMR:日本電子(株)製JNMLA−400にて、H、13Cスペクトルを測定し、定性した。測定溶媒として重クロロホルムを用いた。
3.機械的物性、光学的物性測定
得られた樹脂組成物を乾燥して粒状にし、加熱プレス成形して厚さ4mmの試験片フィルムを得た。得られたシートについて曇価、破断伸度、曲げ弾性率、熱線膨張係数、IZOD衝撃強度を測定した。力学試験に関しては、下記の通りである。
・曇価は、へーズメーター(村上色彩研究所製 HM−65)で計測した。
・曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠し、オートグラフ(島津製作所(株)製 DSC−10T)で計測した。
・破断伸度は、引張試験機(インストロン(株)製デジタル材料試験機5881型)を用いて、JIS K7161準拠し、試験速度1mm/min(±20%)にて測定した。
・熱線膨張係数は、熱機械測定装置(セイコー電子工業(株)製 TMA120C)で計測した。
・IZOD衝撃強度は、JIS K7110に準拠し、IZOD衝撃試験装置(安田精機社製 95−LFR)で切欠き入り、23℃にて測定した。
4.分子量測定
得られた樹脂組成物を乾燥して粒状にし、加熱プレス成形したものを測定試料として、20℃のクロロホルムに溶解し、0.25wt%の溶液を作製した。本溶液を0.5μmフィルターで濾過した溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPC)に供試し、分子量を測定した。測定条件はトーソー(株)製TOSOシステム8000、カラムPL GEL mixd−D×2本、流速1ml/min、UV(254nm)検出、移動相クロロホルム、注入量200μlにて行った。重量平均分子量の算出は、標準ポリスチレンの検量線から行った。
5.低分子量成分の定量
抽出後の樹脂組成物(ペレット形状)を乾燥して粒状にしたものを測定試料として、20℃のアセトンに24時間浸漬し、5wt%の溶液を作製した。本溶液を0.5μm フィルターで濾過した溶液を乾燥させ、重量を測定した。この結果と上述の金属酸化物灰分の値から、低分子量成分及び金属酸化物以外の樹脂成分に対しての低分子量成分の濃度を算出した。なお低分子量成分とはPCオリゴマーとGPCでのPCのメインピーク中の低分子量成分の合計である。
6.粒子の合成
[針状ベーマイト粒子の合成]
機械攪拌機を備えたテフロン製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(2.0M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)を、約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.08)。溶液を、テフロンライナーを備えたオートクレーブに代え密栓し、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。
第1の熱処理の終了後、前記オートクレーブをオイルバスヘ移し、180℃、30分間加熱した(第2の熱処理)。第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを流水へ入れ、急速冷却(約10℃)をした(第3の熱処理)。第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンヘ入れ150℃で、1日加熱を続けた(第4の熱処理)。その後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(30000rpm,30min)で上澄み除去後、遠心水洗3回、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール、0.5:9.5)遠心洗浄を1回行った。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥させることにより無色結晶(A)を得た。この無色結晶(A)はX線回折の結果、針状ベーマイトであることが判明した。また、TEMを用いて粒子のサイズを調べたところ、長軸長さ125±13nm、短軸長さ(径)5.2±0.6nm、アスペクト比が約24の針状であることが判明した。
7.粒子分散水ゾルの作製
[針状ベーマイト粒子水ゾル(B) 実施例1〜5、比較例2、比較例6の原料水ゾル]
上記操作にて得た無色結晶(A)を純水に添加し、粒子5wt%の分散ゾルとしたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、水に分散した針状ベーマイト粒子水ゾル(B)を得た。
8.除去プロセス(透析)
[針状ベーマイト粒子水ゾル(C) 実施例1、実施例5の原料水ゾル]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾル(B)を透析膜のチューブ(三光純薬(株)製 透析膜 36/32)に入れ、容器にこのチューブと、水ゾルの200wt%の純水(イオン交換済み)を入れた。その後、密閉し、恒温槽中で23℃、6時間の透析を実施した後、純水を新しいものに交換して、再度6時間の透析を行う操作を4回繰り返した。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質水ゾル(C)を得た。
9.除去プロセス(限外濾過)
[針状ベーマイト粒子水ゾル(D) 実施例2、実施例4の原料水ゾル]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾル(B)に対して、セラミックフィルター(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製 MEMBRALOXエレメント(マルチNF(孔径5/10nm))を濾過モジュール(7M3(4))に組み込みこんだ装置)に針状ベーマイト粒子水ゾル(B)の5倍重量の純水を用いて、限外濾過を実施した。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質水ゾル(D)を得た。なお実施温度は室温(23℃)、時間は純水等量が廃液として得られるまでである。
10.除去プロセス(強酸交換)
[針状ベーマイト粒子水ゾル(E) 実施例3の原料水ゾル]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾル(B)に対し、ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)製 ソフト型)を1.0wt%添加し、エバポレータ内にて、80℃、大気圧下、少量の純水を加えながら強酸効果向上のために2時間加熱処理した後、純水を加えて初期の粒子濃度である5wt%水ゾルに調整した。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質水ゾル(E)を得た。なお上記強酸交換は20Pa、50℃で30分後、純水で濃度調整した。
11.ガラス繊維混合液の作製
[ガラス繊維混合液(F) 比較例3、比較例4の原料液]
サンゴバン・セラミック・マテリアルズ株式会社製 ガラス繊維サーフェストランドREV4(直径13μm、長さ70μm)を純水に添加し、粒子5wt%の分散液としたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけ、ガラス繊維混合液(F)を得た。この分散液は沈殿を伴う懸濁状態であった。
12.粒子の改質
[針状ベーマイト粒子改質水ゾル(G)(H)(I) 実施例1〜5の原料水ゾル]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾル(C)(D)(E)に対して、パラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)を粒子重量に対して7.5wt%、ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成株式会社製)を9.5wt%の割合で添加した。そして、それらをよく攪拌した後、超音波分散機に90分間かけた。この処理を行うことにより、水に分散した針状ベーマイト粒子改質水ゾル(G)(H)(I)を得た。また、前記分散溶液を濃縮、乾燥し、TG−DTAを用いて粒子上に吸着している改質剤量を確認すると、粒子重量に対して17.0wt%であった。
13.フリーズドライによる粒子の粉末化
[針状ベーマイト粒子粉末(J)(K)(L)(M)、ガラス繊維粉末(N) 実施例1〜5、比較例2〜4、比較例6の原料粉末]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質水ゾル(B)(G)(H)(I)、ガラス繊維混合液(F)について、液体窒素により凍結させた後、市販のフリーズドライ装置にて乾燥を行った。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子粉末(J)(K)(L)(M)、ガラス繊維粉末(N)を得た。
なお、フリーズドライの条件は以下の通りである。
装置は、東京理化機器(株)製凍結乾燥機FDU−1200を用いた。
(1)無機微粒子の水分散懸濁液を凍結乾燥装置の棚にセットし、0.5時間かけて凍結を行った。
(2)この間、トラップも並行して冷却した。(3)20分のうちに十分排気して15Torr程度の真空とした。(4)約1日間凍結乾燥を行い、水分を大部分昇華させた。(5)23℃にて数時間2次乾燥を行い、僅かに残存する水分を除去した。(6)窒素又は乾燥空気により常圧に戻した。
14.除去プロセス(加熱処理)
[針状ベーマイト粒子粉末(P)、ガラス繊維粉末(Q) 実施例4、比較例4の粉末]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子粉末(L)、ガラス繊維粉末(N)について、東洋製作所(株)製真空乾燥機VOP−42A市販の真空乾燥機で150℃、0.01MPaの加熱減圧環境にて5時間保持した。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子粉末(P)、ガラス繊維粉末(Q)を得た。
15.粗コンポジット化1(ポリカーボネートコンポジット)
[針状ベーマイト粒子の粗樹脂組成物(S)(T)(U)(V)(W)、ガラス繊維の粗樹脂組成物(X)(Y)、粗樹脂組成物(Z) 実施例1〜4、比較例1〜4の粗樹脂組成物]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子粉末(K)(L)(M)(P)(J)、ガラス繊維粉末(N)(Q)について、それぞれ8.5g秤量し、THF139g、水24.5gとよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、THF、水混合溶媒に分散した粒子分散液172gを作製した。その後、この粒子分散液にポリカーボネート(株式会社三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス7030A、40℃クロロホルムによるGPC(ポリスチレン換算)による重量平均分子量は6.5万)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧することで、THFと水を留去し、針状ベーマイト粒子の粗樹脂組成物(S)(T)(U)(V)(W)、ガラス繊維の粗樹脂組成物(X)(Y)を得た。これに加え、粒子を含まない系として、粉末をいれず、それ以外は上記の操作方法にて粗樹脂組成物(Z)を得た。
16.粗コンポジット化2(アクリルコンポジット)
[針状ベーマイト粒子の粗樹脂組成物(AB)(AC)、粗樹脂組成物(AD) 実施例5、比較例6、比較例5の粗樹脂組成物]
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子粉末(K)(J)について、それぞれ8.5g秤量し、THF139g、水24.5gとよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、THF、水混合溶媒に分散した粒子分散液172gを作製した。その後、この粒子分散液にアクリル(三菱レイヨン株式会社製アクリペットV001)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧することで、THFと水を留去し、針状ベーマイト粒子の粗樹脂組成物(AB)(AC)を得た。これに加え、粒子を含まない系として、粉末をいれず、それ以外は上記の操作方法にて粗樹脂組成物(AD)を得た。
17.粗樹脂組成物の混練
[全ての試料の混練済み樹脂組成物]
上記操作にて得られたすべての粗樹脂組成物を真空乾燥機にて、0.01MPa、100℃、4時間乾燥して粒状にし、これを、真空微量混練押出機(井元製作所製、IMC−1170B型)を用いて溶融混練した。混練条件は真空チャンバー内0.01MPa以下の減圧度、炉内及びローター温度250℃、ローター回転速度15rpmで10分間行い、混練済み樹脂組成物を得た。
18.混練済樹脂組成物の成形、物性測定
[全ての試料の成形品]
上記操作にて得られた全ての混練済み樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形した。この試料を用いて上記の方法にて、機械的物性、光学的物性測定、分子量測定を行った。
(評価結果)
各実施例、比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 2009067954
本発明の金属酸化物粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)の取り方を模式的に表した概略図である。このうち、図1Aは、異方性を示す中実粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)の取り方を模式的に表した概略図である。図1Bは、異方性を示す中空粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)、中空円筒もしくは中空角柱の長さ及び短軸の径の取り方を模式的に表した概略図である。
符号の説明
L1 金属酸化物粒子の長軸径(長さ)、
L2 金属酸化物粒子の短軸径(長さ)。
L3 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の長さ、
L4 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸の径、
La 金属酸化物粒子の短軸方向の断面の長径、
Lb 金属酸化物粒子の短軸方向の断面の短径、
Lc 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸方向の中空断面の長径、
Ld 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸方向の中空断面の短径。

Claims (9)

  1. 金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂と、を含む樹脂組成物の製造方法であって、
    (a)限外濾過法、(b)透析法および(c)強酸交換法からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを得る工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
  2. 改質剤を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記金属酸化物粒子のサイズが、短軸長さ1〜10nmであり、長軸長さ20〜700nmであり、アスペクト比5〜150である、請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記因子が、有機酸、無機酸、金属および陰イオンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記有機酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸およびその誘導カルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、または、
    前記無機酸が、塩酸、リン酸、硝酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1種である、または、
    前記金属が、Na、Cd、Co、V、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Ti、Zn、Rh、Ru、およびZrからなる群から選択される少なくとも1種である、または、
    前記陰イオンが、Cl、NO 、PO 3−およびSO 2−からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記金属酸化物粒子は、酸化アルミニウムであり、
    酸化アルミニウムが、下記式(1):
    Figure 2009067954
    ただし、nは、0以上の整数である、
    で表されるα、γ、δ、θ型のアルミナである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはこれらを含むポリマーアロイである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルまたは、該ゾルから溶媒が除去された粉体と、
    前記樹脂と、
    を、溶融混練する工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  9. 前記低分子量化を促進する因子が低減または除去された金属酸化物粒子含有ゾルを、前記樹脂の原料モノマーに混合させる、または金属酸化物粒子の粉体と該モノマーの溶液を混合させる工程と、
    前記モノマーを重合させる工程と、
    を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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