JP2011213504A - シリカ複合混合無機粒子の製造方法及びシリカ複合混合無機粒子 - Google Patents

シリカ複合混合無機粒子の製造方法及びシリカ複合混合無機粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】製紙用の填料や顔料とするに適したシリカ複合混合無機粒子を連続的に製造することができるシリカ複合混合無機粒子の製造方法とする。
【解決手段】混合無機粒子S、珪酸アルカリ水溶液K及び鉱酸R1,R2からシリカ複合混合無機粒子を製造するにあたり、混合無機粒子S及び珪酸アルカリKを第1の槽70Aに供給し、この槽70A内のスラリーHAが、第2の槽70Bへ、第3の槽70Cへ、第4の槽70Dへと順に流れるものとしつつ、第3の槽70C内のスラリーHCに鉱酸R2を添加するほか、第1の槽70A内のスラリーHAにも鉱酸R1を先行添加して、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも2種類の無機粒子にシリカが複合されたシリカ複合混合無機粒子を製造する方法及びシリカ複合混合無機粒子に関するものである。
従来、製紙用の填料や顔料としては、炭酸カルシウムやクレー、タルク等の無機粒子が使用されていたが、近年では、これらの無機粒子にシリカを複合させたシリカ複合無機粒子の開発が進められている。
具体的には、例えば、特許文献1は、紙の嵩高性や、白色度、不透明の向上、紙力低下の防止等を課題とした無機微粒子・シリカ複合粒子の製造方法を開示している。同文献は、当該無機微粒子・シリカ複合粒子を製造するについて、『無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し硫酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを8〜11の範囲に調整する』としている。
また、例えば、特許文献2は、シリカ‐炭酸カルシウム複合粒子の製造方法を開示しており、この方法によって得られたシリカ‐炭酸カルシウム複合粒子は、『含水シリカやコロイダルシリカに匹敵する印刷適性をインクジェット記録用紙に付与でき、かつ経済性においても満足できる』ものとなるとしている。同文献は、『高比表面積を有する炭酸カルシウムの形成工程である炭酸化反応過程において、炭酸カルシウムの結晶核生成後に、アルカリ金属イオンの共存下でケイ酸アルカリを添加して、炭酸カルシウムの表面にシリカを固着させる』としている。
さらに、例えば、特許文献3は、『印刷適性を向上させるために、吸油性が高く、また、填料として用いた紙の嵩高効果が高い炭酸カルシウム‐シリカ複合材料を提供することを目的とする』として、同材料の製造方法を開示している。同文献は、炭酸カルシウム‐シリカ複合材料を製造するについて、『塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で30:70〜55:45の範囲で含むスラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合してケイ酸カルシウムを生じさせ、ついで該ケイ酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させる』としている。また、同文献は、この方法によって製造された炭酸カルシウム‐シリカ複合材料によると、『炭酸カルシウムの優れた特性と合成シリカの優れた特性とを併せ持つ炭酸カルシウム‐シリカ複合材料』になるとしている。
以上のほか、本出願人も、無機粒子として特に再生粒子を利用するシリカ被覆再生粒子の製造方法を開示しており、例えば、特許文献4において、『古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て、前記焼成工程において凝集体とした再生粒子を得て、この再生粒子を珪酸アルカリ水溶液中に懸濁するとともに鉱酸を添加し、再生粒子の周囲をシリカで被覆してシリカ被覆再生粒子を得る』方法を開示している。
これらの製造方法によって得られるシリカ複合粒子は、従来の無機粒子では不十分であった製紙用の填料や顔料としての特性が改善されたものになるとして注目されている。特に、本出願人の開示した再生粒子を利用する方法によれば、製紙スラッジ廃棄の問題も同時に解決されることになり、製紙業界におる環境問題に関わる重要な課題の解決につながる。もっとも、従来のシリカ複合粒子の製造方法は、いずれも所定量毎にシリカ複合粒子の製造を繰り返すいわゆる「バッチ式」であり、シリカ複合粒子を連続的に製造する「連続式」ではない。シリカ複合粒子を連続的に製造すると、当然、生産効率が向上するが、例えば、シリカ複合粒子の平均粒子径や粒子径分布を制御するのが困難となり、また、シリカ複合粒子が均質にならなくなる。つまり、単に連続的に製造したのでは、シリカ複合混合無機粒子が製紙用の填料や顔料とするに適したものでなくなる。
特許第3898007号公報 特開2007‐70164号公報 特開2009‐40612号公報 特許第4087431号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、製紙用の填料や顔料とするに適したシリカ複合混合無機粒子を連続的に製造することができるシリカ複合混合無機粒子の製造方法及びシリカ複合混合無機粒子を提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
少なくとも2種類の無機粒子、珪酸アルカリ水溶液及び鉱酸から、前記混合無機粒子にシリカが複合されたシリカ複合混合無機粒子を製造する方法であって、
前記混合無機粒子及び前記珪酸アルカリを第1の槽に供給し、この第1の槽内の前記混合無機粒子が分散されたスラリーが、前記第1の槽から第2の槽へ、この第2の槽から第3の槽へ、この第3の槽から第4の槽へ流れるものとしつつ、
前記第3の槽内のスラリーに前記鉱酸を添加するほか、前記第1の槽内のスラリーにも前記鉱酸を先行添加して、
シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する、
ことを特徴とするシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
前記鉱酸の合計添加量を、前記第4の槽内のスラリーがpH7.0〜9.0となる量とし
かつ、前記先行添加する鉱酸の量を前記合計添加量の18〜48%とする、
請求項1記載のシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
前記第1の槽内のスラリーについては、レイノルズ数が4000〜16000となるように撹拌しつつ、通過時間が2〜20分となるように流れるものとし、
前記第2の槽内のスラリーについては、通過時間が20〜50分となるように流れるものとする、
請求項1又は請求項2記載のシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
〔請求項4記載の発明〕
前記無機粒子は、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、粉砕して製造した再生粒子及び炭酸カルシウム、クレー、タルクの組合せからなる少なくとも2種類の無機粒子からなり、
前記再生粒子は、平均粒子径が1.4μm以上、かつ粒子径1μm以下の割合が5%以下であり、得られる組合せ後の無機粒子の体積平均粒子径が0.5μm〜10.0μm上である。
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
〔請求項5記載の発明〕
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって製造され、
かつ、プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製、3時間、スラリー濃度2質量%)を用いて測定したワイヤー摩耗度が5〜100g/m2である、
ことを特徴とするシリカ複合混合無機粒子。
本発明によると、製紙用の填料や顔料とするに適したシリカ複合混合無機粒子を連続的に製造することができるシリカ複合混合無機粒子の製造方法及びシリカ複合混合無機粒子となる。
シリカ複合設備の概要図である。 再生粒子製造設備の概要図である。 シリカ複合混合無機粒子の粒子径分布を示すグラフである。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
本形態のシリカ複合混合無機粒子の製造方法は、少なくとも2種類の無機粒子、珪酸アルカリ水溶液及び鉱酸を主な原料とし、混合無機粒子にシリカを複合させてシリカ複合混合無機粒子とするものである。
原料として用いることができる無機粒子の種類は特に限定されず、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の公知の無機粒子を用いることができるが、好ましくは製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、粉砕して製造した再生粒子及び炭酸カルシウム、クレー、タルクの組合せからなる少なくとも2種類の無機粒子を用いることが好ましく、より好ましくは、資源の有効利用の面から再生填料と炭酸カルシウムとして、製紙工場のクラフトパルプ設備にて生成される石灰泥を用いることが、製紙スラッジ廃棄の問題、余剰の石灰泥処理も同時に解決されることから、製紙スラッジを主な原料とする再生粒子と石灰泥を用いるのがより好ましい。そこで、以下では、無機粒子に対するシリカの複合方法を説明した後、再生粒子の製造方法について、特に好適な形態を説明する。なお、石灰泥については、公知のクラフトパルプ製造工程にて得られる石灰泥が援用できる。
〔シリカの複合方法〕
本形態のシリカの複合(製造)方法においては、図1に示すように、まず、少なくとも2種類の無機粒子が混合された混合無機粒子S及び珪酸アルカリKを第1の槽70Aに供給し、この第1の槽70A内の混合無機粒子Sが分散されたスラリーHAが、第1の槽70Aから第2の槽70Bへ、この第2の槽70Bから第3の槽70Cへ、この第3の槽70Cから第4の槽70Dへ流れるものとする。また、第3の槽30C内のスラリーHCに鉱酸R2を添加するほか、第1の槽70A内のスラリーHAにも鉱酸R1を先行添加して、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する。以下、詳細に説明する。
《第1の槽》
本形態において、混合無機粒子S及び珪酸アルカリKは、図示はしないが、各別に第1の槽70Aに供給し、第1の槽70A内において撹拌・混合して、スラリー化することもできる。しかしながら、図示例のように、第1の槽70Aに先行する混合槽90Sに、混合無機粒子S、珪酸アルカリK(又はその水溶液)、及び適宜水等を供給し、当該混合槽90S内において撹拌・混合してから、第1の槽70Aに供給する方が好ましい。このように混合無機粒子S及び珪酸アルカリKをあらかじめ撹拌・混合してから第1の槽70Aに供給すると、混合無機粒子Sがより均一に分散するため、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が向上する。
この点、通常であれば、第1の槽70A内のスラリーHAの撹拌強度を強くすることによって、あるいは撹拌時間を長くすることによって混合無機粒子Sの分散性を高めることができる。しかしながら、本形態においては、撹拌強度を強くし、あるいは撹拌時間を長くすることによって混合無機粒子Sの分散性を高めると、後述するように第1の槽70Aにおいて生成されるシリカゾルが好適なものとはならなくなる可能性がある。したがって、混合無機粒子S及び珪酸アルカリKをあらかじめ撹拌・混合することによって混合無機粒子Sの分散性を高める方が好ましい。
なお、この混合無機粒子S等の撹拌・混合は、インラインミキサーを利用して行うことも考えられるが、スケールの防止という観点からは、本形態のように混合槽90Sを利用する方が好ましい。
本件発明者らの知見では、予め水に分散しスラリー化した個々の無機粒子スラリーを準備し、所定の混合割合で第1の槽70A内に添加することで、無機粒子の不本意な凝集や分散不良が生じる問題を回避することができる。
(珪酸アルカリ)
珪酸アルカリの種類は特に限定されず、例えば、液状、粉末状の無水物である珪酸ナトリウムガラス(水ガラス)、フレーク状のオルソ珪酸ナトリウム等の珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2・nH2O)や、一般工業用の珪酸カリウム水溶液、ブラウン管用蛍光物質結合剤として用いられている高純度珪酸カリウム等の珪酸カリウム(K2O・nSiO2)等を用いることができる。ただし、入手が容易であり、また、安価であることから、珪酸ナトリウム溶液たる3号水ガラスを用いるのが好ましい。
珪酸アルカリは、例えば、水溶液として供給することができ、当該珪酸アルカリ水溶液の珪酸(SiO2)濃度は、6〜18g/Lであるのが好ましく、8〜16g/Lであるのがより好ましく、10〜14g/Lであるのが特に好ましい。
珪酸濃度が6g/Lを下回ると、第3の槽70Cにおいてシリカゾルが十分に生成されない可能性があり、一部の混合無機粒子Sにシリカが複合せず、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。この点、シリカ複合混合無機粒子の製造を従来のようにバッチ式で行う場合は、珪酸アルカリ水溶液の混合割合を増やすことによって珪酸の量を確保することができる。しかしながら、本形態の製造方法は、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する連続式であり、珪酸アルカリが混合されたスラリーHAは、随時、第1の槽70Aから第2の槽70Bへ、第2の槽70Bから第3の槽70Cへ、第3の槽70Cから第4の槽70Dへと流れてしまい、それぞれの槽70A,70B,70C,70Dにおいて各別の反応が進められる。したがって、一原料のみの大幅な増量は、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性低下につながる可能性があり、好ましいものではない。
他方、珪酸濃度が18g/Lを上回ると、第3の槽70Cにおいてシリカゾルではなくホワイトカーボンが生成され、第4の槽70Dにおいて混合無機粒子Sの一部がホワイトカーボンによって被覆されてしまう可能性がある。混合無機粒子Sがホワイトカーボンで被覆されてしまうと、例えば、混合無機粒子Sの特性が発揮されなくなってしまうと共に、少なくとも2種類の無機粒子を用いることによる相乗効果としての多孔質特性や光学的特性等が発揮されなくなる問題が生じやすくなり、少なくとも2種類の無機粒子を用いる利点が失われる。
(混合無機粒子)
混合無機粒子Sの種類は、特に限定されず、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の公知の無機粒子を用いることができるが、好ましくは製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、粉砕して製造した再生粒子及び炭酸カルシウム、クレー、タルクの組合せからなる少なくとも2種類の無機粒子を用いることが好ましく、より好ましくは、資源の有効利用の面から再生填料と炭酸カルシウムとして、製紙工場のクラフトパルプ設備にて生成される石灰泥を用いることが、製紙スラッジ廃棄の問題、余剰の石灰泥処理も同時に解決されることから、製紙スラッジを主な原料とする再生粒子と石灰泥を用いるのがより好ましい。そこで、以下では、無機粒子に対するシリカの複合方法を説明した後、再生粒子の製造方法について、特に好適な形態を説明する。なお、石灰泥については、公知のクラフトパルプ製造工程にて得られる石灰泥が援用できる。
得られる混合無機粒子Sは、その組合せによる体積平均粒子径が、0.5〜10.0μmであるのが好ましく、1.0〜5.0μmであるのがより好ましく、2.0〜4.0μmであるのが特に好ましい。
混合無機粒子Sの平均粒子径が0.5μmを下回ると、本形態の製造方法によっても、第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付け(この「糊付け」の意味については、後述する。)が不十分となり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。他方、混合無機粒子Sの平均粒子径が10.0μmを上回ると、製造されるシリカ複合混合無機粒子の平均粒子径が大きくなり過ぎ、製紙用の填料や顔料として用いるに適さないものとなる可能性がある。
混合無機粒子Sの体積平均粒子径は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒子径分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になるときの粒子径(d50)として求められる。測定試料の調製に際しては、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、混合無機粒子Sを添加し、超音波で1分間分散するものとする。
混合無機粒子Sは、粒子径1μm以下の小径な混合無機粒子Sの質量割合が、0〜20%であるのが好ましく、0〜15%であるのがより好ましく、0〜10%であるのが特に好ましい。
粒子径1μm以下の小径な混合無機粒子Sの質量割合が20%を上回る場合は、本形態の製造方法によっても、小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分となり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
粒子径1μm以下の混合無機粒子Sの質量割合は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒子径分布を測定し、全粒子の体積に対する粒子径1μm以下の粒子の累積体積として求められる。測定試料の調製に際しては、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、混合無機粒子Sを添加し、超音波で1分間分散するものとする。
混合無機粒子Sは、鉱酸R1を添加する前のスラリーHA中において、濃度が、95〜125g/Lであるのが好ましく、100〜120g/Lであるのがより好ましく、105〜115g/Lであるのが特に好ましい。
混合無機粒子Sの濃度が95g/Lを下回ると、生産性が悪く、連続式として生産性の向上を図る本形態の趣旨が減殺される可能性がある。他方、混合無機粒子Sの濃度が125g/Lを上回ると、各槽70A,70B,70C,70DにおけるスラリーHA,HB,HC,HDの粘度が増加して混合無機粒子Sの分散性が低下する可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。少なくとも2種類の無機粒子を用いることによる相乗効果としての多孔質特性や光学的特性等が発揮されなくなる問題が生じやすくなり、少なくとも2種類の無機粒子を用いる利点が失われる。特に混合無機粒子S中に再生粒子を用いた場合は、再生粒子が極めて多孔質であるために、スラリーHA,HB,HC,HDの粘度がより増加し易く、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性がより低下する可能性がある。
(清水)
本形態のおいては、混合無機粒子S及び珪酸アルカリKの混合液とは別に、清水Wを、インラインミキサー90W等を通して、好ましくは蒸気J等によって加熱して、第1の槽70Aに供給する。この清水Wの供給により、第1の槽70A内のスラリーHAの混合無機粒子Sの濃度や温度を調節することができる。
(鉱酸)
第1の槽70A内のスラリーHAには、鉱酸R1を先行添加する。この鉱酸R1は、第3の槽70C内のスラリーHCに添加する鉱酸R2とは別に添加するものであり、しかも鉱酸R2の添加とは技術的な意味を異にする。
すなわち、第1の槽70Aにおいても、第3の槽70Cにおいても、鉱酸R1,R2を添加することにより、シリカゾルを生成させるという点では同様である。しかしながら、第3の槽70Cにおいて生成させるシリカゾルは、第4の槽70Dにおいて混合無機粒子Sに複合させるためのシリカゾルである。これに対し、第1の槽70Aにおいて生成させるシリカゾルは、第2の槽70Bにおいて小径な混合無機粒子Sを他の混合無機粒子Sに付着させるための、いわば小径な混合無機粒子Sを他の混合無機粒子Sに糊付けするためのシリカゾルである(糊付け機能)。したがって、それぞれのシリカゾルに求められる特性が異なり、鉱酸R1,R2の添加条件等も異なる。つまり、鉱酸R1及び鉱酸R2を各別に添加するのは、スラリーHA,HB,HC,HDに対して鉱酸R1,R2を均一に分散させるために、複数の段階に分けて添加するのとは異なる。
なお、鉱酸R1の添加に関して、先行という表現を用いているが、これは鉱酸R2に対する補助的な添加という意味ではなく、鉱酸R2の添加によるシリカの複合に先立って、混合無機粒子Sの粒子径を揃えるために先行的に添加するという意味である。
鉱酸R1の種類は特に限定されず、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸等の鉱酸の希釈液等を用いることができる。ただし、価格やハンドリング性等の点からは、鉱酸R1として希硫酸を用いるのが好ましい。
鉱酸R1の濃度は、0.50〜4.00mol/L(1〜8N(規定度))であるのが好ましく、1.00〜3.00mol/L(2〜6N)であるのがより好ましく、1.75〜2.25mol/L(3.5〜4.5N)であるのが特に好ましい。
鉱酸R1の濃度が0.50mol/Lを下回ると、十分な長さに成長しないシリカゾルの割合が増えるため、第2の槽70Bにおいて小径な混合無機粒子Sの糊付け機能が十分に発揮されない可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。特に本形態の製造方法は、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する連続式であり、鉱酸R1が添加されたスラリーHAは、随時、第1の槽70Aから第2の槽70Bへと流れてしまうため、反応時間を長くしてシリカゾルを十分な長さに成長させるには困難を伴う。
他方、鉱酸R1の濃度が4.00mol/Lを上回ると、鉱酸R1の分散性が悪くなるため、生成されるシリカゾルの長さが不均一になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布がブロードになる可能性がある。具体的には、十分な長さに成長しないシリカゾルが存在すると、その分だけ第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。他方、必要以上の長さに成長したシリカゾルが存在すると、このシリカゾルにより第2の槽70Bにおいて平均径の混合無機粒子Sや大径な混合無機粒子Sの糊付け効果まで発生してしまう可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が大径側においてブロードになる可能性がある。
この点、必要以上の長さに成長したシリカゾルは、強撹拌することによって短くすることもできるが、強撹拌すると他のシリカゾルまで短くなってしまう可能性がある。他のシリカゾルが短くなるということは、十分な長さに成長しないシリカゾルの割合が増えるのと同様であるため、その分だけ第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
また、鉱酸R1の濃度が高いほど早期にシリカゾルが生成されるところ、鉱酸R1の分散性が悪いと、スラリーHA中の高濃度なった部分において早期にシリカゾルが生成され、このシリカゾルにより第1の槽70A内において小径な混合無機粒子Sの糊付けが始まってしまう可能性がある。したがって、鉱酸R1の濃度が4.00mol/Lを上回ると、シリカゾルの生成は第1の槽70Aで行い、小径な混合無機粒子Sの糊付けは第2の槽70Bで行うことにより、反応の進行を揃え、粒子径分布をシャープにしようとした本形態の趣旨が減殺される可能性がある。
ここで、当該反応の進行をより揃えるためには、鉱酸R1を図示例のような1箇所ではなく、2箇所、3箇所又はそれ以上の複数箇所から添加することもできる。ただし、本形態においては、鉱酸R1を添加するに先立って、スラリーHA中に混合無機粒子Sが分散されており、当該混合無機粒子Sによってシリカゾルの生成速度が抑えられるため、装置構造を複雑にしないという観点からは、鉱酸R1の添加箇所を1箇所とすることもできる。
なお、シリカは、一般に、無水珪酸(SiO2)と、水和(含水)珪酸(SiO2・nH2O)とに大別され、本形態において生成されるシリカゾルは、主に含水珪酸のゾルであると考えられる。ただし、他の珪酸ゾルが生成されることを否定する趣旨ではない。また、シリカゾルは、一般に、粒子径10〜20nmの粒子状であるとされるが、この粒子が連鎖した状態で存在する。そこで、本明細書においては、この連鎖の長さをシリカゾルの長さとして表現している。
鉱酸R1の添加量は特に限定されないが、第3の槽70Cにおいて添加する鉱酸R2との合計添加量を調節することにより、第4の槽70D内のスラリーHDがpH7.0〜9.0となる量とするのが好ましく、pH7.5〜8.5となる量とするのがより好ましく、pH7.8〜8.2となる量とするのが特に好ましい。
鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を、上記pHが7.0を下回る量とすると、第3の槽70Cにおいてシリカゾルではなくホワイトカーボンが生成されてしまい、第4の槽70Dにおいて混合無機粒子Sがホワイトカーボンによって被覆されてしまう可能性がある。混合無機粒子Sがホワイトカーボンで被覆されてしまうと、少なくとも2種類の無機粒子を用いることによる相乗効果としての多孔質特性や光学的特性等が発揮されなくなる問題が生じやすくなり、少なくとも2種類の無機粒子を用いる利点が失われる。特に混合無機粒子S中の再生粒子が有する多孔質特性や光学的特性等が発揮されなくなり、再生粒子を用いる利点が失われる。
また、鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を、上記pHが7.0を下回る量とすると、混合無機粒子Sが再生粒子である場合において、再生粒子の構成成分であるカルシウムが硫酸カルシウムに変化し易く、例えば、製造されるシリカ複合混合無機粒子の体積平均粒子径が過度に低下したり、形状が不均一になったりする可能性がある。シリカ複合混合無機粒子の体積平均粒子径が過度に低下したり、形状が不均一になったりすると、例えば、紙の填料として用いる場合において、歩留りの低下や紙粉の発生、不透明度の低下等をまねく可能性がある。
他方、鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を、上記pHが9.0を上回る量とすると、鉱酸R1と鉱酸R2との添加比にもよるが、通常、第3の槽70Cにおいてシリカゾルが十分に生成されなくなり、第4の槽70Dにおいて混合無機粒子Sに対するシリカの複合が不十分になる可能性がある。
一方、鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を、上記pHの範囲に制限することとの関係において、鉱酸R1の量を合計添加量の18〜48容量%とするのが好ましく、23〜43容量%とするのがより好ましく、28〜38容量%とするのが特に好ましい。
鉱酸R1の添加量が合計添加量の18容量%を下回ると、第1の槽70Aにおいてシリカゾルが十分に生成されず、第2の槽70Bにおいて小径な混合無機粒子Sの糊付け機能が十分に発揮されない可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒度分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
他方、鉱酸R1の添加量が合計添加量の48容量%を上回ると、第3の槽70Cにおいてシリカゾルが十分に生成されず、第4の槽70Dにおいて混合無機粒子Sに対するシリカの複合が十分に行われなくなる可能性がある。シリカの複合が不十分であると、特に混合無機粒子Sが再生粒子である場合においては、例えば、ワイヤー摩耗度等が高くなり、製紙用の填料や顔料としての特性に劣る可能性がある。
鉱酸R1の添加速度は特に限定されるものではなく、前述した鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量(第4の槽70D内のスラリーHDのpH)、鉱酸R1の添加割合や、後述するスラリーHAの通過時間等から適宜決定することができる。
(撹拌)
製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性をより高めるためには、第1の槽70A内のスラリーHAを撹拌するのが好ましい。この撹拌の強度をどの程度のものとするかは特に限定されないが、スラリーHAのレイノルズ数(Re)が4000〜16000となるように撹拌するのが好ましく、6000〜14000となるように撹拌するのがより好ましく、8000〜12000となるように撹拌するのが特に好ましい。
レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、生成されるシリカゾルの長さが不均一になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布がブロードになる可能性がある。具体的には、十分な長さに成長しないシリカゾルが存在すると、その分だけ第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。他方、必要以上の長さに成長したシリカゾルが存在すると、このシリカゾルにより第2の槽70Bにおいて平均径の混合無機粒子Sや大径な混合無機粒子Sの糊付け効果まで発生してしまう可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が大径側においてブロードになる可能性がある。
また、鉱酸R1の濃度が高いほど早期にシリカゾルが生成されるところ、レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、鉱酸R1の分散性が悪く、スラリーHA中の高濃度なった部分において早期にシリカゾルが生成され、このシリカゾルにより第1の槽70A内において小径な混合無機粒子Sの糊付けが始まってしまう可能性がある。したがって、レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、シリカゾルの生成は第1の槽70Aで行い、小径な混合無機粒子Sの糊付けは第2の槽70Bで行うことにより、反応の進行を揃え、粒子径分布をシャープにしようとした本形態の趣旨が減殺される可能性がある。
他方、レイノルズ数が16000を上回るように撹拌すると、十分な長さに成長したシリカゾルが短くなってしまい、十分な長さに成長しないシリカゾルの割合が増えるのと同様な状態となる。したがって、その分だけ第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
ここでレイノルズ数(Re)は、第1の槽70A内のスラリーHAの流れの性質を示す無次元数であり、次式(1)で表される。
Re=ρvd/μ…(1)
なお、式(1)において、「ρ」はスラリーHAの密度(g/cm3)、「v」はスラリーHAの流速(cm/s)、「d」は第1の槽70Aの径(cm)、「μ」はスラリーHAの粘性係数(Ns/cm3)である。
レイノルズ数を上記範囲に調節する方法は特に限定されず、例えば、上記式(1)から明らかなように、第1の槽70Aの径を変えることによっても調節することができる。もっとも、通常、当該径は、処理効率の観点から決定され、レイノルズ数調節のために変化させることができないため、図示例のように撹拌羽根等が備わる撹拌手段80Aを第1の槽70A内に設け、この撹拌手段80AによってスラリーHAを撹拌することにより、レイノルズ数を調節するのが好ましい。
このように撹拌手段80Aを利用してレイノルズ数を調節するにあたっては、例えば、撹拌羽根を適宜逆転させること等もでき、また、撹拌手段80Aによる撹拌効果を高めるために、第1の槽70Aの内壁に邪魔板を取り付けること等もできる。
(通過時間)
第1の槽70A内のスラリーHAのレイノルズ数を4000〜16000とすることとの関係において、第1の槽70AにおけるスラリーHAの通過時間は、2〜20分とするのが好ましく、4〜18分とするのがより好ましく、8〜12分とするのが特に好ましい。
スラリーHAの通過時間が2分を下回ると、十分な長さに成長しないシリカゾルの割合が増えるため、第2の槽70Bにおいて小径な混合無機粒子Sが十分に糊付けされない可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
この点、通過時間が2分を下回る場合は、鉱酸R1の濃度を高くする等しても、前述したように撹拌強度の向上に限界があるため、シリカゾルの成長が不均一に進むだけで、十分な長さに成長しないシリカゾルの割合を減らすには困難を伴う。
他方、スラリーHAの通過時間が20分を上回っても処理効率が低下するだけで、シリカゾルの生成・成長に有用ではない。逆に、スラリーHAの通過時間が20分を上回ると、小径な混合無機粒子Sの糊付けが第1の槽70A内において始まって反応の進行が揃わなくなる可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布がシャープにならなくなる可能性がある。
ここでスラリーHAの通過時間とは、鉱酸R1が添加された後、第1の槽70Aから流出するまでの計算上の時間であり、鉱酸R1が添加される前の時間は含まない。
(温度)
第1の槽70A内のスラリーHAの温度は特に限定されないが、50〜100℃であるのが好ましく、70〜100℃であるのがより好ましく、90〜100℃であるのが特に好ましい。
スラリーHAの温度は、シリカゾルの生成・成長、強度等に影響を及ぼし、スラリーHAの温度が50℃を下回ると、シリカゾルの生成・成長が遅くなり、十分な長さに成長しないシリカゾルの割合が増える可能性がある。結果、第2の槽70Bにおいて小径な混合無機粒子Sが十分に糊付けされない可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布がブロードになる可能性がある。
この点、本形態の製造方法は、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する連続式であり、スラリーHAは、随時、第1の槽70Aから第2の槽70Bへと流れてしまう。したがって、反応時間を長くしてシリカゾルを十分な長さに成長させるには困難を伴う。また、第1の槽70Aにおいてシリカゾルが十分な長さに成長しないと、その分、通過時間の長い第2の槽70Bにおいてシリカではなくホワイトカーボンが生成されてしまう可能性があり、小径な混合無機粒子Sの糊付けが進まないばかりか、混合無機粒子Sの一部がホワイトカーボンによって被覆されてしまう可能性がある。第2の槽70Bにおいて混合無機粒子Sがホワイトカーボンによって被覆されてしまうと、第4の槽70Dにおけるシリカ複合が十分に進まなくなる可能性がある。また、特に混合無機粒子Sが再生粒子である場合においては、再生粒子が有する多孔質特性や光学的特性等が発揮されなくなり、再生粒子を用いる利点が失われる。
他方、スラリーHAの温度が100℃を上回ると、オートクレーブ等を使用しなければならなくなるため、設備が複雑になる。また、スラリーHAの温度が100℃を上回ると、熱エネルギーの無駄になるほか、スラリーHAの沸騰により液面が変動するため、第1の槽70Aの内壁面にスケールが付着する可能性がある。この他、水分の蒸発によりスラリーHAの濃度が上昇するため、増粘してしまい、増粘による撹拌不良等が生じる可能性がある。
スラリーHAの温度を調節するにあたっては、例えば、第1の槽70Aに加温設備を設け、第1の槽70A内のスラリーHAを直接加温する方法によることもできるが、図示例のように、清水Wを蒸気J等によって加熱して第1の槽70A内に供給する方法によるのが好ましい。本形態においては、各種原料の均一分散性を目指しているため、当該清水Wを加温して供給する方法によると、必然的にスラリーHA全体が均一に加温されることになる。
また、図示はしないが、スラリーの温度が上昇すると混合無機粒子Sの分散性が向上するため、珪酸アルカリK(溶液)を加温するのも好ましい形態である。
なお、蒸気Jとしては、公知の熱源を利用することができるが、工場内の生蒸気(例えば、13kg/m2、120℃)を利用することにより、エネルギーの有効利用を図ることができる。
ここでスラリーHAの温度は、第1の槽70Aの底面中央部に存在するスラリーHAの温度である。
(スラリーの移動)
第1の槽70A内のスラリーHAを第2の槽70Bに流す(移動させる)方法は特に限定されず、例えば、第1の槽70A内及び第2の槽70B内と連通する配管を設け、この配管を通してスラリーHAを移動させることができる。
ただし、図示例のように、第1の槽70A内のスラリーHAをオーバーフローさせて第2の槽70B内に移動させると好適である。図示例においては、第1の槽70A内に底面まで到達しない隔壁71Aが設けられており、第1の槽70A内に供給された各種材料(混合無機粒子S,珪酸アルカリK,鉱酸R1,清水W)は、スラリーHAとして第1の槽70A内を下降し、隔壁71Aを潜った後、上昇し、オーバーフローして第2の槽70Bに移動させられる。配管を通してスラリーHAを移動する形態によると、スケールの問題や意図しないシリカゾルの成長、小径な混合無機粒子Sの糊付け等が進む可能性があるが、図示例の形態によると、かかる可能性が減少する。
《第2の槽》
本形態において、第2の槽70B内のスラリーHBは、第1の槽70A内のスラリーHAが流れてきた(移動してきた)もののみでなり、新たに混合無機粒子Sや珪酸アルカリK、硫酸等は添加されない。
第2の槽70Bにおいては、第1の槽70A内において生成・成長させられたシリカゾルによって、小径な混合無機粒子Sが他の混合無機粒子Sに糊付けされるため、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてシャープになる。
(撹拌)
本形態においては、かかる糊付けを均一に進めるために、第1の槽70Aにおけるのと同様に、スラリーHBを撹拌するのが好ましい。この撹拌の強度をどの程度のものとするかは特に限定されないが、スラリーHBのレイノルズ数(Re)が4000〜16000となるように撹拌するのが好ましく、6000〜14000となるように撹拌するのがより好ましく、8000〜12000となるように撹拌するのが特に好ましい。
レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、小径な混合無機粒子Sの糊付けが不均一に進み、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
他方、レイノルズ数が16000を上回るように撹拌すると、十分な長さに成長したシリカゾルが短くなってしまい、十分な長さではないシリカゾルの割合が増えることになるため、その分だけ小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。しかも、レイノルズ数が16000を上回るように撹拌すると、通常の混合無機粒子Sや大径の混合無機粒子Sに一度糊付けされた小径な混合無機粒子Sが再分散してしまう可能性があり、この点でも製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
ここでレイノルズ数は、第2の槽70B内のスラリーHBの流れの性質を示す無次元数であり、前述式(1)で表される。
ただし、第2の槽70Bにおいて、「ρ」はスラリーHBの密度(g/cm3)、「v」はスラリーHBの流速(cm/s)、「d」は第2の槽70Bの径(cm)、「μ」はスラリーHBの粘性係数(Ns/cm3)である。
レイノルズ数を上記範囲に調節する方法は特に限定されず、例えば、上記式(1)から明らかなように、第2の槽70Bの径を変えることによって調節することもできる。もっとも、通常、当該径は、処理効率や、第1の槽70Aと第2の槽70Bとの通過時間比の観点から決定され、レイノルズ数調節のために変化させることができないため、図示例のように、撹拌羽根等が備わる撹拌手段80Bを第2の槽70B内にも設け、この撹拌手段80BによってスラリーHBを撹拌することにより、レイノルズ数を調節するのが好ましい。
この撹拌手段80Bは、第1の槽70Aにおける撹拌手段80Aと同様のものを用いることもできるが、第2の槽70Bの容量や形状等にあわせて、適宜大きさや形状を異なるものとするのが好適である。
撹拌手段80Bを利用してレイノルズ数を調節するにあたっては、例えば、撹拌羽根を適宜逆転させることなどもでき、また、撹拌手段80Bによる撹拌効果を高めるために、第2の槽70Bの内壁に邪魔板を取り付けることなどもできる。
(通過時間)
第1の槽70AにおいてスラリーHAをレイノルズ数が4000〜16000となるように撹拌しつつ、通過時間が2〜20分となるように流れるものとすることとの関係において、第2の槽70BにおけるスラリーHBの通過時間は、20〜50分となるように調節するのが好ましく、25〜45分となるように調節するのがより好ましく、30〜40分となるように調節するのが特に好ましい。
スラリーHBの通過時間が20分を下回ると、小径な混合無機粒子Sの糊付けが十分に進まず、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。他方、スラリーHBの通過時間が50分を上回っても、第1の槽70AにおいてスラリーHAをレイノルズ数が4000〜16000となるように撹拌しつつ、通過時間が2〜20分となるように流れるものとして生成・成長させたシリカゾルとの関係において、更なる小径な混合無機粒子Sの糊付けは進まず、処理効率が低下する可能性がある。
ここでスラリーHBの通過時間とは、スラリーHB(HA)が第2の槽70Bに流入してから、第3の槽70Cへ流出するまでの計算上の時間である。
(温度)
第2の槽70B内のスラリーHBの温度は特に限定されないが、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜100℃、特に好ましくは90〜100℃である。
スラリーHBの温度は、当該スラリーHBの粘度に影響を及ぼし、スラリーHBの温度が50℃を下回ると、特に小径な混合無機粒子Sの分散性が悪化するため、当該小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になる可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。この点、撹拌強度高めて分散性を向上させようとすると、通常の混合無機粒子Sや大径な混合無機粒子Sに糊付けされた小径な混合無機粒子Sが再分散してしまう可能性がある。
他方、スラリーHBの温度が100℃を上回ると、オートクレーブ等を使用しなければならなくなるため、設備が複雑になる。また、スラリーHBの温度が100℃を上回ると、熱エネルギーの無駄になるほか、スラリーHBの沸騰により液面が変動するため、第2の槽70Bの内壁面にスケールが付着する可能性がある。この他、水分の蒸発によりスラリーHBの濃度が上昇するため、増粘し、この増粘による撹拌不良などが生じる可能性がある。
ここでスラリーHBの温度は、第2の槽70Bの底面中央部に存在するスラリーHBの温度である。
スラリーHBの温度を調節するにあたっては、例えば、第2の槽70Bに加温設備を設け、第2の槽70B内のスラリーHBを直接加温する方法によることもできる。ただし、第1の槽70Aや第2の槽70Bを断熱性の素材で形成しておけば、通常、第1の槽70AにおけるスラリーHAの温度調節をするのみで足り、本工程において温度調節をする必要がなくなる。
なお、図示はしないが、第2の槽70Bにおいても第1の槽70Aの場合と同様に、蒸気等によって加温された清水をスラリーHBに供給することによって温度の調節を図ることができる。
(スラリーの移動)
第2の槽70B内のスラリーHBを第3の槽70Cに流す(移動させる)方法は特に限定されず、例えば、第2の槽70B内及び第3の槽70C内と連通する配管を設け、この配管を通してスラリーHBを移動させることができる。
ただし、図示例のように、第1の槽70Aにおけるのと同様、第2の槽70B内のスラリーHBをオーバーフローさせて第3の槽70C内に移動させると好適である。図示例では、第2の槽70B内に底面まで到達しない隔壁71Bが設けられており、第2の槽70B内に供給されたスラリーHB(HA)は第2の槽70B内を下降し、隔壁71Bを潜った後、上昇し、オーバーフローして第3の槽70Cに移動させられる。
この点、配管を通してスラリーHBを移動する形態によると、スケールの問題や意図しない小径な混合無機粒子Sの分散が生じる可能性があるが、図示例の形態によると、かかる可能性が減少する。
《第3の槽》
第3の槽70C内のスラリーHCには、鉱酸R2が添加される。この鉱酸R2の添加によって、第1の槽70Aにおけるのと同様に、シリカゾルが生成される。ただし、当該シリカゾルは、第4の槽70Dにおいて混合無機粒子Sに複合するためのシリカゾルであり、第2の槽70Bにおいて小径な混合無機粒子Sを他の混合無機粒子Sに糊付けするために、第1の槽70Aにおいて生成するシリカゾルとは技術的意味を異にする。したがって、以下で説明するように、当該シリカゾルに求められる特性が異なり、結果、鉱酸R2の添加条件等も異なる。
(鉱酸)
鉱酸R2の種類は特に限定されず、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸等の鉱酸の希釈液等を用いることができる。この鉱酸R2は、第1の槽70Aにおいて用いる鉱酸R1と同じ種類のものであっても、異なる種類のものであってもよい。ただし、処理の安定性の観点からは、鉱酸R1と同じ種類のものであるのが好ましく、価格、ハンドリング性等の観点からは、鉱酸R2としても希硫酸を用いるのが好ましい。
鉱酸R2の濃度は、好ましくは0.50〜4.00mol/L(1〜8N(規定度))、より好ましくは1.00〜3.00mol/L(2〜6N)、特に好ましくは1.75〜2.25mol/L(3.5〜4.5N)である。
鉱酸R2の濃度が0.50mol/Lを下回ると、シリカゾルの生成が不十分になるため、第4の槽70Dにおける混合無機粒子Sに対するシリカの複合が不十分になる可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子が不均質になる可能性がある。特に本形態の製造方法は、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する連続式であり、鉱酸R2が添加されたスラリーHCは、随時、第3の槽70Cから第4の槽70Dへと流れてしまうため、反応時間を長くしてシリカゾルの生成を図るには困難を伴う。
他方、鉱酸R2の濃度が4.00mol/Lを上回ると、鉱酸R2の分散性が悪くなるため、シリカゾルの生成が不均一になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。また、鉱酸R2の濃度が高いほど早期にシリカゾルが生成されるところ、鉱酸R2の分散性が悪いと、スラリーHC中の高濃度なった部分において早期にシリカゾルが生成され、このシリカゾルにより第3の槽70C内において混合無機粒子Sに対するシリカの複合が進んでしまう可能性がある。したがって、鉱酸R2の濃度が4.00mol/Lを上回ると、シリカゾルの生成は第3の槽70Cで行い、混合無機粒子Sに対するシリカの複合は第4の槽70Dで行うことにより、反応の進行を揃え、粒子径分布をシャープにしようとした本形態の趣旨が減殺される可能性がある。
ここで、当該反応の進行をより揃えるためには、鉱酸R2を図示例のような1箇所ではなく、2箇所、3箇所又はそれ以上の複数箇所から添加することもできる。ただし、本形態においては、鉱酸R2を添加するに先立って、スラリーHC中に混合無機粒子Sが分散されており、しかもこの混合無機粒子Sは、第1の槽70A及び第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付けにより粒子径分布が均一なものとされている。したがって、当該混合無機粒子Sによってシリカゾルの生成速度がより均一に揃えられるため、鉱酸R2の添加箇所を1箇所とすることもできる。なお、鉱酸R2を複数箇所から添加すると、当然、装置構成が複雑になる。
鉱酸R2の添加量は特に限定されないが、前述したように第1の槽70Aにおいて添加する鉱酸R1との合計添加量を調節することにより、第4の槽70D内のスラリーHDがpH7.0〜9.0となる量とするのが好ましくは、pH7.5〜8.5となる量とするのがより好ましく、pH7.8〜8.2となる量とするのが特に好ましい。
そして、鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を、上記pHの範囲に制限することとの関係において、鉱酸R2の量を合計添加量の52〜82容量%とするのが好ましく、57〜77容量%とするのがより好ましく、62〜72容量%とするのが特に好ましい。
鉱酸R2の添加割合が52容量%を下回ると、第3の槽70Cにおいてシリカゾルが十分に生成されなくなり、第4の槽70Dにおける混合無機粒子Sに対するシリカの複合が不十分になる可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子が製紙用の填料や顔料などとするに適したものとならなくなる可能性がある。特に混合無機粒子Sが再生粒子である場合においては、シリカの複合が不十分であるとワイヤー摩耗度が高くなる可能性があり、また、再生粒子は極めて多孔質であるため、複合されたシリカの剥落が生じやすくなり、抄造時等にかかる剪断力で当該シリカが剥落する可能性がある。
他方、鉱酸R2の添加割合が82容量%を上回ると、第1の槽70Aにおける鉱酸R1の添加割合が少なくなり、第1の槽70Aにおいてシリカゾルが十分に生成・成長されなくなる可能性があり、第2の槽70Bにおける小径な混合無機粒子Sの糊付けが不十分になる可能性がある。
(撹拌)
本形態においては、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性をより高めるために、第1の槽70A内や第2の槽70B内におけるのと同様に、第3の槽70C内のスラリーHCを撹拌するのが好ましい。
この撹拌の強度をどの程度のものとするかは特に限定されないが、スラリーHCのレイノルズ数(Re)が4000〜16000となるように撹拌するのが好ましく、6000〜14000となるように撹拌するのがより好ましく、8000〜12000となるように撹拌するのが特に好ましい。
ここで、当該レイノルズ数は、第3の槽70C内のスラリーHCの流れの性質を示す無次元数であり、前述式(1)で表される。
ただし、第3の槽70Cにおいて、「ρ」はスラリーHCの密度(g/cm3)、「v」はスラリーHCの流速(cm/s)、「d」は第3の槽70Cの径(cm)、「μ」はスラリーHCの粘性係数(Ns/cm3)である。
レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、生成されるシリカゾルが不均一になり、最終的に得られるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。また、鉱酸R2の濃度が高いほど短時間でシリカゾルが生成されるため、レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、シリカの複合が第3の槽70C内において部分的に始まってしまう可能性がある。したがって、シリカゾルの生成は第3の槽70Cで行い、シリカの複合は第4の槽70D内で行うことにより、反応の進行を揃え、シリカの均質性を向上させようとした本形態の趣旨が減殺される可能性がある。
他方、レイノルズ数が16000を上回るように撹拌すると、通常の混合無機粒子Sや大径の混合無機粒子Sに糊付けされた小径な混合無機粒子Sが再分散してしまう可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
本形態において、レイノルズ数を上記範囲に調節する方法は特に限定されず、例えば、上記式(1)から明らかなように、第3の槽70Cの径を変えることによっても調節することができる。もっとも、通常、当該径は、処理効率や、他の槽70A,70B,70Dとの通過時間比の観点から決定され、レイノルズ数調節のために変化させることができない。したがって、図示例のように撹拌羽根等が備わる撹拌手段80Cを第3の槽70C内にも設け、この撹拌手段80CによってスラリーHCを撹拌することにより、レイノルズ数を調節するのが好ましい。
この撹拌手段80Cは、第1の槽70Aにおける撹拌手段80Aと同様のものを用いることもできるが、第3の槽70Cの容量や形状等にあわせて、適宜大きさや形状を異なるものとするのが好適である。
撹拌手段80Cを利用してレイノルズ数を調節するにあたっては、例えば、撹拌羽根を適宜逆転させることなどもでき、また、撹拌手段80Cによる撹拌効果を高めるために、第3の槽70Cの内壁に邪魔板を取り付けることなどもできる。
(通過時間)
第3の槽70CのスラリーHCのレイノルズ数を4000〜16000の範囲内とすることとの関係において、第3の槽70CにおけるスラリーHCの通過時間は、2〜20分となるように調節するのが好ましく、4〜18分となるように調節するのがより好ましく、8〜12分となるように調節するのが特に好ましい。
ここで、スラリーHCの通過時間とは、鉱酸R2が添加された後、第3の槽70Cから流出するまでの計算上の時間である。なお、本形態では、第2の槽70B内から第3の槽70C内にスラリーHCが連続的に流入し、また、鉱酸R2の添加も連続的に行われるため、当該通過時間はスラリーHCが流入してから流出するまでの時間と同様である。
スラリーHAの通過時間が2分を下回ると、シリカゾルの生成が不均一になるため、第4の槽70Dにおけるシリカの複合が不均一になる可能性があり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。
なお、通過時間が2分を下回る場合、鉱酸R2の濃度を高くする等しても、前述したように撹拌強度の上限が制限されるため、シリカゾルの生成が不均一になる可能性がある。
他方、スラリーHCの通過時間が20分を上回っても処理効率が低下するだけで、シリカゾルの生成に有用ではない可能性がある。逆に、スラリーHCの通過時間が20分を上回ると、シリカの複合が第3の槽70C内において始まってしまい、反応の進行が揃わなくなる可能性がある。結果、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。
本形態において、鉱酸R2の添加速度は特に限定されるものではなく、前述した鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量(第4の槽70D内のスラリーHDのpH)、鉱酸R2の添加割合や、上記スラリーHCの通過時間等から適宜決定することができる。
(温度)
本形態において、第3の槽70C内におけるスラリーHCの温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜100℃、特に好ましくは80〜100℃である。
スラリーHCの温度は、シリカゾルの生成、強度等に影響を及ぼし、スラリーHCの温度が50℃を下回ると、シリカゾルの生成が遅くなり、また、強度が弱くなる傾向があるため、第4の槽70Dにおけるシリカの複合が不十分になり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下し、製紙用填料や顔料として使用するに適切なものではなくなる可能性がある。また、スラリーHCの温度が50℃を下回ると、スラリーHCの粘度が上昇するため、分散性が悪くなり、この点でも製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。さらに、本形態の製造方法は、シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する連続式であり、スラリーHCは、随時、第3の槽70Cから第4の槽70Dへと流れてしまうため、反応時間を長くしてシリカゾルの生成を十分なものとするには好ましいものではない。
他方、スラリーHCの温度が100℃を上回ると、オートクレーブ等を使用しなければならなくなるため、設備が複雑になる。また、スラリーHCの温度が100℃を上回ると、熱エネルギーの無駄になるほか、スラリーHCの沸騰により液面が変動するため、第3の槽70Cの内壁面にスケールが付着する可能性がある。このほか、水分の蒸発によりスラリーHCの濃度が上昇するため、増粘し、増粘による撹拌不良などが生じる可能性がある。
ここでスラリーHCの温度は、第3の槽70Cの底面中央部に存在するスラリーHCの温度である。
本形態において、スラリーHCの温度を調節するにあたっては、例えば、第3の槽70Cに加温設備を設け、第3の槽70C内のスラリーHCを直接加温する方法によることもできる。ただし、第1の槽70Aや第2の槽70B、第3の槽70Cを断熱性の素材で形成しておけば、通常、第1の槽70AにおけるスラリーHAの温度調節をするのみで、第3の槽70CにおけるスラリーHCの温度は上記範囲となり、温度調節をする必要はなくなる。
なお、図示はしないが、第3の槽70Cにおいても第1の槽70Aの場合と同様に、蒸気等によって加温された清水をスラリーHCに供給することによって温度の調節を図ることもできる。
(スラリーの移動)
本形態において、第3の槽70C内のスラリーHCを第4の槽70Dに流す(移動させる)方法は特に限定されず、例えば、第3の槽70C内及び第4の槽70D内と連通する配管を設け、この配管を通してスラリーHCを移動させることができる。
ただし、第1の槽70Aや第2の槽70Bにおけるのと同様に、第3の槽70C内のスラリーHCをオーバーフローさせて第4の槽70D内に移動させると好適である。図示例においては、第3の槽70C内に底面まで到達しない隔壁71Cが設けられており、第3の槽70C内に供給されたスラリーHC(HB)は第3の槽70C内を下降し、隔壁71Cを潜った後、上昇し、オーバーフローして第4の槽70Dに移動させられる。
この点、配管を通してスラリーHCを移動する形態によると、スケールの問題や意図しない混合無機粒子Sに対するシリカの複合、小径な混合無機粒子Sの再分散が生じる可能性があるが、図示例のようなオーバーフローさせる形態によると、かかる可能性を減少させることができる。
《第4の槽》
本形態において、第4の槽70D内のスラリーHDは、第3の槽70C内のスラリーHCが流れてきた(移動してきた)もののみでなり、新たに混合無機粒子Sや珪酸アルカリK、硫酸等は添加されない。
本形態においては、第3の槽70C内において生成されたシリカゾルによって混合無機粒子Sに対するシリカの複合が行われ、シリカ複合混合無機粒子になる。
(撹拌強度)
本形態においては、かかるシリカの複合を均一に進めるために、他の槽70A,70B,70Cにおけるのと同様に、スラリーHDを撹拌するのが好ましい。この撹拌の強度をどの程度のものとするかは特に限定されないが、スラリーHDのレイノルズ数(Re)が4000〜16000となるように撹拌するのが好ましく、6000〜14000となるように撹拌するのがより好ましく、8000〜12000となるように撹拌するのが特に好ましい。
ここで、当該レイノルズ数は、第4の槽70DのスラリーHDの流れの性質を示す無次元数であり、前述式(1)で表される。
ただし、第4の槽70Dにおいて、「ρ」はスラリーHDの密度(g/cm3)、「v」はスラリーHDの流速(cm/s)、「d」は第4の槽70Dの径(cm)、「μ」はスラリーHDの粘性係数(Ns/cm3)である。
レイノルズ数が4000を下回るように撹拌すると、シリカの複合が不均一になり、最終的に得られるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下する可能性がある。
他方、レイノルズ数が16000を上回るように撹拌すると、シリカの複合がかえって阻害され、また、小径な混合無機粒子Sの再分散が生じ、製造されるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布が小径側においてブロードになる可能性がある。
本形態において、レイノルズ数を上記範囲に調節する方法は特に限定されず、例えば、上記式(1)から明らかなように、第4の槽70Dの径を変えることによっても調節することができる。もっとも、通常、当該径は、処理効率や、他の槽70A,70B,70Cとの通過時間比の観点から決定され、レイノルズ数調節のために変化させることができないため、図示例のように撹拌羽根等が備わる撹拌手段80Dを第4の槽70D内にも設け、この撹拌手段80DによってスラリーHDを撹拌することにより、レイノルズ数を調節するのが好ましい。
この撹拌手段80Dは、第1の槽70Aにおける撹拌手段80Aと同様のものを用いることもできるが、第4の槽70Dの容量や形状等にあわせて、適宜大きさや形状を異なるものとするのが好適である。
撹拌手段80Dを利用してレイノルズ数を調節するにあたっては、例えば、撹拌羽根を適宜逆転させることなどもでき、また、撹拌手段80Dによる撹拌効果を高めるために、第4の槽70Dの内壁に邪魔板を取り付けることなどもできる。
(通過時間)
本形態においては、鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を前述pHの範囲に制限し、かつ鉱酸R2の量を合計添加量の52〜82容量%とすることとの関係において、第4の槽70DにおけるスラリーHDの通過時間が、20〜50分となるように調節するのが好ましく、25〜45分となるように調節するのがより好ましく、30〜40分となるように調節するのが特に好ましい。
ここで、スラリーHDの通過時間とは、スラリーHD(HD)が第4の槽70Dに流入してから流出するまでの計算上の時間である。
スラリーHDの通過時間が20分を下回ると、スラリーの複合が十分に進まなくなるため、製造されるシリカ複合混合無機粒子が不均質になる可能性があり、製紙用の填料や顔料などとするに適したものとならなくなる可能性がある。特に混合無機粒子Sが再生粒子である場合においては、シリカの複合が不十分であるとワイヤー摩耗度が高くなる可能性があり、また、再生粒子は極めて多孔質であるため、複合されたシリカの剥落が生じやすくなり、抄造時等にかかる剪断力で当該シリカが剥落する可能性がある。
他方、スラリーHDの通過時間が50分を上回っても、鉱酸R1及び鉱酸R2の合計添加量を前述pHの範囲に制限し、かつ鉱酸R2の量を合計添加量の52〜82容量%として生成させたシリカゾルとの関係において、シリカの複合は進まず、処理効率が低下する可能性がある。
(温度)
本形態において、第4の槽70D内におけるスラリーHDの温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜100℃、特に好ましくは70〜100℃である。
スラリーHDの温度は、当該スラリーHDの粘度に影響を及ぼし、スラリーHDの温度が50℃を下回ると、特にシリカゾルの分散性が悪化するため、当該シリカ(ゾル)の複合が十分に進まなくなり、製造されるシリカ複合混合無機粒子の均質性が低下し、製紙用の填料や顔料などとするに適したものとならなくなる可能性がある。特に混合無機粒子Sが再生粒子である場合においては、シリカの複合が不十分であるとワイヤー摩耗度が高くなる可能性があり、また、再生粒子は極めて多孔質であるため、複合されたシリカの剥落が生じやすくなり、抄造時等にかかる剪断力で当該シリカが剥落する可能性がある。なお、撹拌強度高めて分散性を向上させようとすると、通常の小径な混合無機粒子Sが再分散してしまう可能性がある。
他方、スラリーHDの温度が100℃を上回ると、オートクレーブ等を使用しなければならなくなるため、設備が複雑になる。また、スラリーHDの温度が100℃を上回ると、熱エネルギーの無駄になるほか、スラリーHDの沸騰により液面が変動するため、第4の槽70Dの内壁面にスケールが付着する可能性がある。このほか、水分の蒸発によりスラリーHDの濃度が上昇するため、増粘し、増粘による撹拌不良などが生じる可能性がある。
また、スラリーHDの温度は、第3の槽70CにおけるスラリーHCの温度よりも5〜10℃高いのが好ましい。第3の槽70Cにおける処理はシリカゾルの生成であるのに対し、第4の槽70Dにおける処理は混合無機粒子Sに対するシリカの複合である。この複合という観点からは、第4の槽70D内のスラリーHDの流速を下げるのが好ましく、スラリーHDの流速を下げることとの関係で、スラリーHDの温度を相対的に上げてスラリーHDの粘度を下げるのである。これにより、スラリーHDのレイノルズ数を前述範囲に維持することができる。
ここでスラリーHDの温度は、第4の槽70Dの底面中央部に存在するスラリーHDの温度である。
本形態において、スラリーHDの温度を調節するにあたっては、例えば、第4の槽70Dに加温設備を設け、第4の槽70D内のスラリーHDを直接加温する方法によることもできる。ただし、各槽70A,70B,70C,70Dを断熱性の素材で形成しておけば、通常、第1の槽70AにおけるスラリーHAの温度調節をするのみで足り、本形態において温度調節をする必要はなくなる。
なお、図示はしないが、第4の槽70Dにおいても第1の槽70Aの場合と同様に、蒸気等によって加温された清水をスラリーHDに供給することによって温度の調節を図ることもできる。
(スラリーの移動)
本形態において、第4の槽70D内のスラリーHDを第4の槽70Dから、例えば、脱水機等の他の設備に移動させる方法は特に限定されず、例えば、第4の槽70Dと他の設備とを配管等によって連通し、当該配管を通してスラリーHDを移動させることができる。
ただし、第1の槽70Aから第2の槽70Bへ、第2の槽70Bから第3の槽70Cへ、第3の槽70Cから第4の槽70Dへの移動と同様に、第4の槽70D内のスラリーHDをオーバーフローさせて他の設備に移動させると好適である。図示例においては、第4の槽70D内に底面まで到達しない隔壁71Dが設けられており、第4の槽70D内に供給されたスラリーHD(HC)は第4の槽70D内を下降し、隔壁71Dを潜った後、上昇し、オーバーフローして他の設備に移動させられる。
この点、配管を通してスラリーHDを移動する形態によると、スケールの問題や意図しない小径な混合無機粒子Sの分散、複合したシリカの剥離等が生じる可能性があるが、図示例のオーバーフローさせる形態によると、かかる可能性を減少させることができる。
《その他の工程等》
第4の槽70Dから流出したスラリーHDは、平均粒子径や粒子径分布、摩耗度等が好適に制御されており、したがって、以上の製造方法によると、製紙用の填料や顔料として用いるに好適なシリカ複合混合無機粒子が連続的に得られることになる。
また、スラリーHDは、例えば、ろ過、水洗い、脱水等してウェットケーキとすることができる。このウェットケーキは、例えば、風乾や加熱乾燥等して乾燥微粒子とした後、乾式粉砕機や湿式粉砕機等の粉砕機を使用して、粒子径を調整し、任意の粒子径のシリカ複合混合無機粒子とすることができる。
なお、以上においては、各槽70A,70B,70C,70Dにおける処理(反応)が異なるものとして説明したが、これらの説明は目的とする処理であり、他の反応等が全く生じないことを意味するものではない。例えば、第1の槽70Aにおいてはシリカゾルの生成を目的とするが、小径な混合無機粒子Sの糊付けが全く生じてはならないことを意味するのではない。また、以上の工程には、本発明の目的を阻害しない範囲で、適宜の工程を付加することができる。
以上の図示例では、第1の槽70A内のスラリーHAよりも第3の槽70C内のスラリーHCの方が、また、第2の槽70B内のスラリーHBよりも第4の槽70D内のスラリーHDの方が、容量が少ないが、これは単に作図上のものであり、各スラリーHA,HB,HC,HDの容量を限定する趣旨ではない。したがって、例えば、スラリーHA及びスラリーHC、スラリーHB及びスラリーHDの容量を同じとすることも、後者70C,70Dの容量を多くすることもできる。これら各スラリーHA,HB,HC,HDの容量は、各槽70A,70B,70C,70Dの通過時間等に応じて適宜決定することができる。
ただし、装置構造をシンプルにするという観点からは、第1の槽70A及び第3の槽70Cの通過時間、並びに、第2の槽70B及び第4の槽70Dの通過時間を、それぞれ同じとする場合は、同容量、好ましくは同形状とするとよい。
また、図示例では、各槽70A,70B,70C,70Dが一体的に形成されている形態を示しているが、各別に形成することもできる。
《シリカ複合混合無機粒子》
本形態のシリカ複合混合無機粒子は、混合無機粒子Sの表面に粒子状のシリカが固着されてなるものであり、この固着されたシリカの粒子径は、通常、10〜20nmである。このシリカの粒子径は、例えば、前述スラリーHA,HB,HC,HDの撹拌強度や温度等を調節することによって調節することができる。
シリカの粒子径は、当該シリカが球状の場合は直径を、球状でない場合は長径と短径の平均値を意味し、例えば、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用して測定することができる。
(摩耗度)
本形態のシリカ複合混合無機粒子は、プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製、3時間、スラリー濃度2質量%)を用いて測定したワイヤー摩耗度が、好ましくは5〜100g/m2、より好ましくは10〜90g/m2、特に好ましくは15〜70g/m2とされる。
(粒子径)
以上の製造方法によって得られたシリカ複合混合無機粒子は、体積平均粒子径が、好ましくは3.5〜10.0μm、より好ましくは5.0〜9.0μm、特に好ましくは6.0〜8.0μmである。シリカ複合混合無機粒子の体積平均粒子径が3.5μmを下回ると、シリカ複合による効果が十分に発現されず、例えば、製紙用の填料として使用した場合において、吸油量や不透明度の向上効果が十分なものとはならない可能性がある。他方、シリカ複合混合無機粒子の体積平均粒子径が10.0μmを超えると、製紙用の填料として使用した場合において、引張り強度の低下や引裂き強度の低下等をまねき、また、紙粉の発生や、抄紙設備の汚損をまねく可能性がある。
体積平均粒子径は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒子径分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になるときの粒子径(d50)として求められる。測定試料の調製に際しては、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、シリカ複合混合無機粒子を添加し、超音波で1分間分散するものとする。
また、本形態の製造方法によって製造したシリカ複合混合無機粒子は、粒子径1μm以下の小径な粒子の割合が、好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜1.5%、特に好ましくは0〜1.0%となる。他方、粒子径10μm以上の大径な粒子の割合が、好ましくは0〜70%、より好ましくは10〜65%、特に好ましくは30〜60%となる。
粒子径1μm以下のシリカ複合混合無機粒子Sの質量割合は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒子径分布を測定し、全粒子の体積に対する粒子径1μm以下の粒子の累積体積として求められる。測定試料の調製に際しては、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、混合無機粒子Sを添加し、超音波で1分間分散するものとする。
(吸油量)
本形態のシリカ複合混合無機粒子は、吸油量が、40〜180ml/100gであると好ましい。
シリカ複合混合無機粒子の吸油量が40〜180ml/100gであると、製紙用の填料として用いた場合において、当該シリカ複合混合無機粒子が紙層中に含浸したインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収するため、印刷不透明度、インク乾燥性、滲み等の問題が改善される。これに対し、シリカ複合混合無機粒子の吸油量が40ml/100gを下回ると、当該改善効果が不十分となる可能性や、シリカ複合混合無機粒子がインクの吸収性や乾燥性を阻害する可能性がある。この点、当該シリカ複合を接着剤と混合して塗工液とした場合、当該塗工液中においてシリカ複合混合無機粒子が接着剤を吸収し、その真密度が低下するため、沈降が抑制され、塗工層中において偏在しなくなる。しかしながら、吸油度が40mL/100gを下回ると、この効果が不十分となり、シリカ複合混合無機粒子の真比重と塗工液の比重との差によりシリカ複合混合無機粒子が沈降して偏在する可能性がある。
他方、シリカ複合混合無機粒子の吸油量が180ml/100gを上回ると、インクの吸収性が向上し過ぎるため、インクの沈み込みや、発色性低下の問題が生じる可能性がある。また、180ml/100gを上回る吸油量のシリカ複合混合無機粒子は、接着剤と混合して塗工液として使用すると、塗工後、乾燥中にシリカ粒子が吸収した多量の塗料を放出して収縮するため、塗工層がひび割れを起こしたり、塗工層表面の平滑性が失われたりする可能性がある。
シリカ複合混合無機粒子の吸油量は、例えば、前述シリカ複合工程におけるスラリーHA,HB,HC,HDの温度や通過時間、pH、粘度等を調節することによって調節することができる。
シリカ複合混合無機粒子の吸油量は、JIS K 5101‐13‐2記載の練り合わせ法によって算出した値である。すなわち、105〜110℃で2時間乾燥したシリカ複合混合無機粒子(試料)2〜5gを、ガラス板に取り、精製アマニ油(酸化4以下)をビュレットから少量ずつ試料の中央に滴下し、その都度ヘラで練り合わせる。この滴下・練り合わせの操作を繰り返し、全体が最初に1本の棒状にまとまったときを終点とし、この時点における精製アマニ油の滴下量(ml)を求め、下記の式によって吸油量を算出する。
吸油量(ml/100)=(アマニ油量(ml)×100)/試料(g)
(シリカ成分の割合)
本形態のシリカ複合混合無機粒子は、シリカ成分の割合が、好ましくは10.0〜50.0質量%、より好ましくは41.0〜49.0質量%、特に好ましくは42.0〜48.0質量%である。シリカ成分の割合が10.0質量%を下回ると、十分にシリカの複合が行われていない可能性があり、製紙用の填料や顔料として使用した場合において、吸油量や不透明度の向上効果が不十分になる可能性がある。他方、シリカ成分の割合が50.0質量%を上回ると、シリカの複合が過密に行われている可能性があり、製紙用の填料や顔料として使用した場合において、吸油量や不透明度の向上効果が不十分になる可能性がある。
(成分構成)
混合無機粒子Sとして再生粒子を用いた場合、以上の製造方法によって得られたシリカ複合混合無機粒子は、その成分構成が、酸化物換算でカルシウム:ケイ素:アルミニウム=30〜80:10〜50:7〜20の質量割合であるのが好ましい。なお、この成分構成は、堀場製作所製のX線マイクロアナライザーを用い、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い、構成成分を酸化物換算した値である。
《用途》
本形態のシリカ複合混合無機粒子は、高い白色度を有し、特に混合無機粒子Sとして再生粒子を用いた場合は硬度が低いものとなる。したがって、製紙用の填料や顔料として用いるに好適であり、例えば、抄紙機や塗工機等の磨耗トラブルが回避される。また、混合無機粒子Sとして再生粒子を用いた場合は、多孔質である再生粒子の表面がシリカで複合されることになるため、比表面積が極めて広くなり、製紙用の填料や顔料として使用した場合には、吸油量や不透明度の改善を期待することができる。さらに、混合無機粒子Sとして再生粒子を用いた場合は、再生粒子のカチオン性とシリカのアニオン性とにより、繊維間結合が適度に阻害されるため、製紙用の填料として使用した場合に、嵩高性の改善を期待することができる。
本形態のシリカ複合混合無機粒子を製紙用の填料や顔料として使用する場合、単独で使用することも、他の填料や顔料と併用することもできる。他の填料や顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、二酸化チタン、サチンホワイト等の混合無機粒子、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン・ブタジエン系共重合体系樹脂等の合成樹脂から製造される有機粒子等を例示することができる。
また、必要に応じて、例えば、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉等の澱粉類、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂、植物性ガム、水性セルロース誘導体等の紙力増強剤、アクリルアミド・アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合物、第4級アンモニウム塩等の歩留り向上剤、ロジン、澱粉、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、中性ロジン等のサイズ剤、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、耐水化剤、紫外線防止剤、退色防止剤、染料、顔料等の色料等の助剤を併用することもできる。
本形態のシリカ複合混合無機粒子を製紙用の填料として使用する場合、全填料に対する質量割合が、例えば5〜100%となるように、好ましくは10〜100%となるように使用することができる。このような配合により、嵩高性、クッション性を確保するに効果的である。ただし、この場合は、平坦化処理による高密度化に伴ってシリカ複合混合無機粒子が潰れるのを防止するために、紙の灰分率が10〜20%となるように、好ましくは15〜20%となるように、調節するのが好適である。
本形態のシリカ複合混合無機粒子を製紙用の填料として使用する場合は、例えば、前述ウェットケーキを再度水に分散して填料スラリーとし、この填料スラリーをパルプスラリーに内添するとよい。この填料が内添されたパルプスラリーに、必要に応じて紙力増強剤、サイズ剤、歩留り向上剤等の添加剤を加え、抄紙することにより、シリカ複合混合無機粒子内添紙が得られる。
このシリカ複合混合無機粒子内添紙の坪量は特に限定されないが、例えば、36〜200g/m2とすることができる。
他方、本形態のシリカ複合混合無機粒子は、例えば、塗工紙製造用(製紙用)の顔料として用いることができる。顔料として用いる場合は、例えば、適宜他の顔料と混合した後、例えば、珪酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ等の分散剤を添加してスラリーとし、このスラリーに接着剤や他の添加剤を混合して塗工液を調製し、この塗工液を中質紙や上質紙等からなる紙基材上に塗工することにより塗工紙を製造することができる。
本形態のシリカ複合混合無機粒子を塗工紙製造用の顔料として用いる場合は、塗工機における作業性向上や欠陥防止という観点から、シリカ複合混合無機粒子の平均粒子径が0.5〜2.0μmであるのが好ましく、0.5〜1.5μmであるのがより好ましい。この平均粒子径は、例えば、混合無機粒子Sの平均粒子径や、シリカ複合混合無機粒子自体の平均粒子径を調節することによって、調節することができる。
上記塗工液にシリカ複合混合無機粒子とともに用いる接着剤は、特に限定されず、例えば、スチレン‐ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート‐ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン‐酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、これらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性の重合体ラテックス等を用いることができる。
上記塗工液には、更に例えば、陽性化澱粉、酸化澱粉、酸素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール、オレフィン‐無水マレイン酸樹脂等の水溶性合成接着剤等を添加することができる。
また、必要に応じて、例えば、消泡剤、耐水化剤、流動性変性剤、着色剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を添加することができる。
シリカ複合混合無機粒子を含有する塗工液も、通常の塗工液と同様に、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、ロッドコーター、バーコーター、キャストコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の公知の塗工機(コーター)を使用して、紙基材上に塗工することができる。
シリカ複合混合無機粒子を含有する塗工液が塗工された塗工紙は、塗工液の乾燥後、例えば、平滑性や光沢性等の印刷適性を付与する目的で、通常の塗工紙と同様に、カレンダーの平坦化手段に通紙して加圧仕上げすることができる。当該カレンダーとしては、公知のカレンダー、例えば、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトコンパクトカレンダー等を使用することができる。
なお、本形態のシリカ複合混合無機粒子は、製紙用の填料や顔料以外にも、例えば、ゴム、プラスチック、塗料、インキの添加剤等として使用することができる。
〔再生粒子の製造方法〕
次に、混合無機粒子Sの組合せにおいて好適に用いることができる再生粒子の製造方法について説明する。再生粒子は、前述特許文献4に記載の方法によって製造することもできるが、その後に、更に好適な再生粒子の製造方法を開発するに至ったので、以下では、この方法について説明する。
《本再生粒子の製造方法の位置付け等》
再生粒子は、一般に製紙スラッジを燃焼することにより製造される。しかしながら、製紙スラッジに含有される有機物は、出所の違いや製紙工場内での抄造品種、定期修理や生産変動などにより多様に変化し、その品質変動が製紙スラッジの熱量変動を招き、燃焼温度の変動、燃焼時間の変動を来たし、最終的に得られる燃焼物(再生粒子)の品質、特に性状が一定でなくなり、また、燃焼物の白色度が不均一となる。
そこで、本発明者らは、製紙スラッジの熱量変動を所定の範囲に調整し、燃焼温度の変動、燃焼時間の変動を生じさせないで、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ねた結果、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、適宜粉砕して再生粒子を製造するにあたり、「熱処理を、脱水後の被処理物を乾燥する乾燥工程と、この乾燥工程で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理工程と、この第1の熱処理工程で熱処理された被処理物を第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理工程と、この第2の熱処理工程で熱処理された被処理物を第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理工程と、を含む少なくとも4工程に分けて行う」ことで、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造できることを見出した。
また、同時に、「上記乾燥は、脱水後の被処理物を熱気流に同伴させて行う」と好適であることも見出した。「脱水後の被処理物を熱気流に同伴させて乾燥する方式(以下、単に「気流乾燥方式」ともいう。)」とすると、乾燥に伴って被処理物が解れるため、後段で行う熱処理が均一かつ確実に行われるようになり、品質が均一化した再生粒子をより安定的に製造できるようになるのである。
この点、乾燥に先立って後段の熱処理に好適な状態となるまで被処理物を均一に解すのは、現実的には困難である。また、乾燥に先立って被処理物を解すのであれば、脱水率を高めておく必要があるが、脱水率を高めると被処理物が高圧縮化され、被処理物の乾燥効率が部分的に低下するおそれがあり、乾燥処理の不均一化、ひいては製品の不均一化をまねくおそれがある。他方、乾燥後に被処理物を解すのでは、不均一な状態にある被処理物を乾燥することになるため、乾燥が均一に行われなくなり、熱処理も均一に行われなくなる。結果、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造できなくなる。
一方、本形態において、後段の熱処理を複数の工程に分ける利点は、以下のとおりである。製紙スラッジは、各種有機物(有機成分)を含有し、この有機物のなかには、紙由来の220℃近傍で発熱量のピークをもつアクリル系有機物、320℃近傍で発熱量のピークをもつセルロース、420℃近傍で発熱量のピークをもつスチレン系有機分が含まれ、古紙等の出発原料の種類や量により変動幅が大きいものの、例えば、1000〜2000cal/gの発熱量を有する。従来の再生粒子の製造方法においては、これらの有機分を、燃焼工程(酸化工程)において、他の有機分と一緒に燃焼(酸化)させて除去する方策が取られていた。しかしながら、本発明者等は、以上の各有機物が上記温度の近傍で発熱量のピークをもつ発熱量が高い物質であること、200〜300℃で熱分解される有機分を燃焼させる際に発火・過燃焼が生じ、燃焼制御が困難となり、白色度の低下のみならず、ゲーレナイトやアノーサイトからなる硬質物質の生成をまねくことを見出し、まず、第1の熱処理工程において、所定の高発熱量成分(アクリル系有機物及びセルロース)を被処理物中から、熱処理除去することで、過燃焼を抑え、硬質物質の生成を抑制できることを見出した。
また、第1の熱処理工程と第2に熱処理工程とを別々に設ける利点は、従来の再生粒子の製造方法においては、被処理物中の微細繊維や有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水及び乾燥させ、高温で熱処理する方法を採用していた。しかしながら、本形態の製造方法においては、上記したように第1の熱処理工程において被処理物中の200〜300℃で熱分解・揮発蒸散する有機物をガス化してしまうため、第2の熱処理工程においては、安定的に熱処理を進行させることができ、被処理物の過燃焼や微粉化が抑制される。
また、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを分け、第1の熱処理工程において被処理物に含まれるアクリル系有機物及びセルロースを熱分解ガス化し、第2の熱処理工程において被処理物に含まれるスチレン系有機物を熱分解ガス化することで、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きく、均一かつ安定的に再生粒子を得ることができる。このようにして、第3の熱処理工程においては、被処理物中の残カーボン等を含む有機物を、効率良く熱処理除去することができ、また、過燃焼によって生じる硬質物質の生成を抑えることができる。さらに、セルロースの熱分解ガスの発火温度はスチレンの熱分解温度を下回るため、第1の熱処理工程においてセルロースを熱分解除去してしまい、スチレンは第2の熱処理工程において熱分解するのが好適であり、ここにも第1の熱処理工程と第2に熱処理工程とを別々に設ける利点が存在する。
ところで、本形態においては、乾燥工程を除く各熱処理工程において、キルン炉を用いるのが好適である。この理由は、次のとおりである。
従来から慣用的に用いられてきた熱処理炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者等は、それぞれの熱処理炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
ストーカー炉(固定床)は、脱墨フロス等の製紙スラッジの燃焼度合い調整が困難であり、再生粒子が不均一となるうえに、灰分の多い脱墨フロスの熱処理では、火格子間のクリアランスから落塵を生じる。火格子を通し被処理物の下から空気を吹き上げ、燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留りの低下が問題となる。ストーカー(階段状)を、所定幅で被処理物を通過させながら熱処理するため、撹拌が不十分で幅方向で熱処理にバラツキが発生する。
流動床炉は、炉内において珪砂等の粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂等が被処理物中に混入し、品質の低下をまねく問題や、均一な撹拌ができないとの問題を有する。硅砂等を流動層に混合して熱処理させた後、硅砂等と被処理物とを分離し、硅砂等は炉内へ戻し被処理物のみを取り出すが、被処理物も硅砂等と同程度の粒径であるため分離が困難である。被処理物を硅砂等と浮遊した状態で熱処理させるため、熱処理の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。硬度の高い珪砂等との摩擦、衝突により被処理物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
サイクロン炉は、被処理物が炉内を一瞬で通過するため、被処理物中の有機物を十分に熱処理することができず、白色度の低下に繋がる。また、風送によるため、細かい粒子がサイクロンで分離されず、排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留りが低下する。
以上の諸問題について鋭意検討を重ねた結果、本形態の乾燥工程を除く熱処理工程においては、内熱又は外熱キルン炉が好適な熱処理手段として選択された。
《本再生粒子の製造例》
次に、本再生粒子の製造例を、再生粒子の製造設備フローの一部構成例を示した図2を主に参照しながら説明する。なお、本製造設備には、各種センサーが備わっており、被処理物10や設備状態の確認、処理速度の制御等を行うことができる。
(被処理物)
本形態の被処理物10は、製紙スラッジを主成分(50質量%以上)とする。当該製紙スラッジは、例えば、パルプ等の繊維成分、澱粉や合成樹脂接着剤等の有機物、添料や塗工用顔料等の無機物などが利用されずに廃水中へ移行したもの、パルプ化工程等で発生するリグニンや微細繊維、古紙由来の填料や印刷インキ、生物廃水処理工程から生じる余剰汚泥などからなる。また、例えば、古紙パルプ製造工程において印刷インキ等を除去する脱墨工程や製紙用原料を回収して洗浄する洗浄工程に由来する固形成分等を含有していてもよい。
ただし、古紙パルプ製造工程においては、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産するために、選定、選別を行った一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類や比率、量等は、基本的に一定になる。しかも、本形態の再生粒子の製造方法において未燃率の変動要因となるビニールやフィルム等のプラスチック類が、古紙中に含まれていても、これらは脱墨フロスが生成される脱墨工程に至る前段階の例えば、パルパーやスクリーン、クリーナー等で除去される。したがって、工場排水工程や製紙原料調成工程等の他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、脱墨フロスは、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための被処理物10の好適な原料となる。
なお、本明細書において、脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程でパルプ繊維から分離されるものをいう。
被処理物10中に鉄分が含まれていると、当該鉄分の酸化により得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがあるため、当該鉄分はあらかじめ選択的に取り除くのが好ましい。さらに、各工程に用いる装置は、鉄以外の素材で設計、ライニングし、摩滅等によって鉄分が系内に混入するのを防止するとともに、各装置内等に磁石等の高磁性体を設置しておき、選択的に鉄分を除去するのが好ましい。
(脱水工程)
被処理物10は、例えば、公知の脱水装置を用いて、脱水する。本形態においては、被処理物10を、例えば、スクリーンによって水分率65〜90%まで脱水し、次いで、スクリュープレスによって水分率30〜60%まで、好ましくは30〜50%まで、より好ましくは35〜45%まで脱水する。
ここで水分率は、定温乾燥機を用い、乾燥機内に試料(被処理物)を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式にて乾燥前後の質量測定結果より算出した値である。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
脱水後の被処理物10の水分率が60%を超えると、乾燥装置60における乾燥のためのエネルギーロスが大きくなる。しかも、乾燥装置60における乾燥温度の変動が大きくなるため、乾燥ムラが生じるおそれがある。さらに、乾燥が十分に進む前に被処理物10が乾燥装置60から排出されてしまうため、被処理物10が十分に解れないおそれや、第1の熱処理炉42におけるエネルギーロスの原因、熱処理変動の原因などとなるおそれがある。
他方、脱水後の被処理物10の水分率が30%未満となるまで脱水をすると、被処理物10が高圧縮により、いわば固まった状態となるため、乾燥装置60において被処理物10が解れないおそれがある。
また、本形態のように被処理物10の脱水を多段で行い、急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制することができ、しかも、被処理物10のフロックが硬くなり過ぎるのを抑制することができる。
本脱水工程においては、被処理物10を凝集させる凝集剤等の助剤を添加し、脱水効率の向上を図ることもできる。ただし、助剤としては、鉄分を含まないものを使用するのが好ましい。鉄分を含むと、当該鉄分の酸化により、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
本脱水工程の装置は、他の工程の装置に隣接して設けると生産効率の面で好ましいが、古紙パルプ製造工程の装置等に隣接して設け、脱水した被処理物10をトラックやベルトコンベア等の搬送手段によって搬送し、貯槽12や乾燥装置60に供給することもできる。
(解し工程)
脱水後の被処理物10は、貯槽12から切り出し、乾燥工程に送り、乾燥することができる。ただし、この乾燥をするに先立って、例えば、撹拌機や機械式ロール等によって、粒子径50mm以上の割合が、30〜70質量%となるように、好ましくは40〜70質量%となるように、より好ましくは50〜70質量%となるように解して(ほぐして)おくと好適である。
ここで「粒子径50mm以上の割合」は、被処理物全体の質量を100とした場合に、目穴50mmの篩を通過しなかった試料の質量割合である。この測定に際しては、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板篩を用いる。
乾燥する際の被処理物10には、大きな粒子径の被処理物が存在しない方が好ましく、具体的には粒子径50mm以上の割合が70質量%以下であるのが好ましい。もっとも、本形態においては、乾燥工程においてロータリーキルン等を用いず、気流乾燥装置60を用いるため、被処理物10を過度に解す必要はなく、粒子径50mm以上の割合が30質量%未満となるまで解さなくとも、十分に均質な製品を得ることができる。
なお、被処理物10が、脱水後において既に「粒子径50mm以上の割合が70質量%以下」となっている場合は、解し工程を省略することもできる。この場合は、脱水後の被処理物10を、そのままの状態で「粒子径50mm以上の割合が70%以下」の被処理物10として、乾燥工程に送ることができる。
(乾燥工程)
脱水後の被処理物10は、適宜解す等した後、乾燥工程に備わる乾燥装置60に供給する。乾燥装置60の形態は特に限定されず、ストーカー炉、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の公知の乾燥装置を用いることができるが、本形態においては、この乾燥装置60として、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥する「気流乾燥装置」を用いる。気流乾燥装置を用いると、被処理物10が、乾燥されるのと同時に、圧縮力が加えられることなく大きな分散力(被処理物10を分散させる力)のもとで均一に解されるため、後段で行う熱処理(特に第1の熱処理)が均一かつ確実に行われるようになり、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造することができるようになる。
乾燥装置(気流乾燥装置)60としては、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥することができる適宜の装置を用いることができ、例えば、新日本海重工業社製の商品名:クダケラ等の公知の装置のほか、これらを改良した気流乾燥装置等も用いることができる。
本形態の乾燥装置60は、貯槽12から脱水後の被処理物10が供給されるととともに、バーナー47Aが備わる熱風発生炉47から熱風が吹き込まれ、この吹き込まれた熱風によって生じる熱気流に供給された被処理物10が同伴するように構成されている。したがって、例えば、熱風の温度や流量、流速等を調節して熱気流を制御することにより、被処理物10の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。
この熱気流の制御は、乾燥工程において粒子径50mm以上の被処理物10が存在しなくなるように、かつ被処理物10の平均粒子径が1〜7mmとなるように、好ましくは1〜5mmとなるように、より好ましくは1〜3mmとなるように行うと好適である。
ここで、被処理物10の「平均粒子径」は、目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定し、この測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。なお、被処理物10の「粒子径50mm以上の割合」は、前述したとおりである。
被処理物10の平均粒子径が1mm未満であると、第1の熱処理において過剰な熱処理が生じ易くなる。他方、被処理物10の平均粒子径が7mmを超え、あるいは粒子径50mm以上の被処理物10が存在すると、被処理物10を表面部から芯部まで均一に熱処理するのが困難になる。
本形態において、熱気流の温度は、特に限定されるものではないが、熱風発生炉47からの熱風の温度を200〜600℃とし、かつ乾燥装置60からの排ガスの温度が500℃以下となるように制御するのが好ましく、熱風発生炉47からの熱風の温度を300〜500℃とし、かつ乾燥装置60からの排ガスの温度が400℃以下となるように制御するのがより好ましく、熱風発生炉47からの熱風の温度を300〜400℃とし、かつ乾燥装置60からの排ガスの温度が300℃以下となるように制御するのが特に好ましい。
この形態によると、わずか1〜3秒で被処理物10の水分率が、好ましくは0〜5%になるまで、より好ましくは0〜3%になるまで、特に好ましくは0〜1%になるまで乾燥することができる。しかも、この乾燥は、熱気流によって被処理物10が解されながら行われるため、被処理物10全体にわたって均一な水分率である。加えて、被処理物10は、水分が蒸発した次の瞬間には乾燥装置60から排出されているため、意図しない有機物の熱分解・燃焼等の熱処理が生じるおそれもない。
(第1の熱処理工程)
乾燥後の被処理物10は、第1の熱処理工程に送られ、熱分解等の熱処理をされる。
第1の熱処理工程においては、被処理物10が装入機41によって第1の熱処理炉42に装入される。この第1の熱処理炉42としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いることができる。
しかしながら、本形態の第1の熱処理炉42は、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である。この第1の熱処理炉42としては、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能であるが、本形態のように外熱キルン炉を用いるのが好ましい。第1の熱処理工程において、脱水後の被処理物10を直ちに熱処理する場合は、被処理物10の乾燥(水分の蒸発)という観点から、熱効率のよい内熱キルン炉にも大きな利点がある。しかしながら、本形態においては、第1の熱処理に先立って被処理物10を乾燥するため、熱処理温度を確実に制御することができる外熱キルン炉の方が好適である。
また、第1の熱処理工程において、脱水後の被処理物10を直ちに熱処理する場合は、第1の熱処理工程において、被処理物10の乾燥と有機物の熱分解という異質な熱処理を連続的に行うことになるため、温度制御が複雑になる。しかしながら、本形態のように、第1の熱処理に先立って被処理物10が乾燥されていると、第1の熱処理工程においては、有機物の熱分解のみを行えば足りるため、複雑な温度制御が必要とならない。
本形態において、第1の熱処理炉42は、例えば、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転とにより、炉本体内の被処理物10が重力作用で搬送方向へ徐々に移送されるようになっている。
炉本体の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属製とすることができる。
本形態の第1の熱処理炉42においては、炉本体の外表面上に、例えば、電気ヒーター等からなる外熱ジャケット44が設けられている。この外熱ジャケット44による加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット44は、炉本体の軸方向に関して適宜の数に分割し、分割された外熱ジャケットを各別に加熱することができるようにするとより好適なものとなる。
このように外熱ジャケット44を適宜の数に分割し、各別に加熱することができる外熱方式とすると、炉本体内において変化する被処理物10の性状等に応じて熱処理温度を確実に制御することができ、被処理物10の好適な熱処理を行うことができる。
本形態においては、前述したように熱処理工程を少なくとも4工程に分けることとの関係において、炉本体外表面の温度が、260〜450℃となるように加熱するのが好ましく、280〜400℃となるように加熱するのがより好ましく、300〜400℃となるように加熱するのが特に好ましい。炉本体外表面の温度が260℃を下回ると、被処理物10中のアクリル系有機物及びセルロースを十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が450℃を上回ると、被処理物10の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、多くの領域において好ましくは240〜350℃、より好ましくは270〜350℃、特に好ましくは280〜350℃に調節される。なお、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
ところで、以上のように第1の熱処理炉42は、外熱方式とするのが好ましいが、内熱方式とすることも可能であり、内熱方式とする場合は、図1中に二点鎖線で示すように、バーナー43Aが備わる熱風発生炉43から酸素含有ガスたる熱風を、供給口42Aを通して炉本体内に吹き込む(供給する)のが好ましい。当該熱風によって、供給口42Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口42B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第1の熱処理炉42内のガス(排ガス)は、排出口42Bを通して排出される。
このように熱風の供給方式を並流方式にすると、相対的に低温の状態にある被処理物10を直ちにアクリル系有機物やセルロース等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、他端(排出口側)に向けて低温化する温度勾配が生じるため、被処理物10の過剰な熱処理が防止される。ただし、この温度勾配の制御は、前述外熱方式による方が好ましい。
なお、第1の熱処理炉42を前述外熱方式とする場合においても、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。この酸素含有ガスの吹き込みは、例えば、バーナー43Aを作動させずに、熱風発生炉43を利用して行うことができ、加熱しない点を除いて熱風を吹き込む場合と同様とすることができる。そこで、以下の炉本体内の酸素濃度制御については、内熱方式の場合(熱風を吹き込む場合)を例に説明する。
第1の熱処理炉42においては、熱風の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、排ガスの酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。この酸素濃度の調節・管理は、第1の熱処理炉42を外熱方式とする場合も同様である。
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ排ガスの酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。他方、熱風の酸素濃度が5.0%未満、あるいは排ガスの酸素濃度が0.1%未満であると、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整することが困難となるおそれや、熱分解ガスの発火(燃焼)が生じている(特に第1の熱処理炉42の通過に伴い酸素濃度が極端に低下する場合)おそれがある。
炉本体内の酸素濃度は、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理に際して酸素消費され、変動を生じるため、本形態のように、熱風の酸素濃度の調節及び排ガスの酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、内熱方式及び外熱方式のいずれにおいても、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
内熱方式とする場合、第1の熱処理炉42においては、熱風の温度を300〜420℃、好ましくは350〜410℃、より好ましくは360〜400℃に調節しつつ、排ガスの温度が250〜370℃、好ましくは300〜360℃、より好ましくは310〜350℃となるように管理すると好適である。
ここで、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、熱風の温度は、熱風発生炉43において熱電対にて温度を実測した値である。
熱風の温度が300℃以上で、かつ排ガスの温度が250℃以上であると、被処理物10中のアクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われる。また、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14及び第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14や第3の熱処理炉32において、スチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。
もっとも、熱風の温度が420℃を超え、あるいは排ガスの温度が370℃を超えると、熱分解ガスが発火するおそれがあり、また、第2の熱処理炉14における熱処理エネルギーが増加し、さらに、難燃性カーボンが生成し易くなり、製紙用の添料や顔料等として必要な特性を備えた再生粒子を安定して得ることができなくなるおそれがある。なお、第1の熱処理工程の前段に乾燥工程を設けない場合においては、本熱処理工程において被処理物10を乾燥させるために、熱処理温度をより高く設定する必要があり、以上のようなリスクを伴うことになる。
炉本体内の温度は、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、熱風の温度の調節及び排ガスの温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、通常250〜370℃、好ましくは300〜360℃、より好ましくは310〜350℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。また、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
第1の熱処理炉42においては、第1の熱処理炉42が外熱方式である内熱方式であるかにかかわらず、被処理物10の発熱量が20〜90%減少するように、好ましくは50〜80%減少するように、より好ましくは50〜70%減少するように熱処理するのが好ましい。
発熱量の減少率が90%以下であると、過剰な熱処理が抑えられ、硬質物質の生成が好ましくは1.5質量%以下に抑制される。この点、90%を超える発熱量の減少は、被処理物10中のスチレン系有機物までもが熱分解していることを意味し、したがって炉本体内がセルロース等の熱分解ガスが発火しうる状態(つまり、高温状態)になっていることを意味する。他方、発熱量の減少率が20%未満であると、被処理物10中の高発熱量成分であるアクリル系有機物が残留し、第2の熱処理炉14における熱処理温度の変動が大きなものとなるおそれがある。
ここで、発熱量の減少率は、第1の熱処理炉42に供給される被処理物10の発熱量と、第1の熱処理炉42から排出される被処理物10の発熱量とを比較した値である。この発熱量は、熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて測定した値である。
特に第1の熱処理炉42において、アクリル系有機物、セルロースを除去し、発熱量を20〜90%減少するとともに、発熱量が1000cal/g未満、好ましくは300〜400cal/gとなるように熱処理することにより、第2の熱処理炉14における炉本体内温度の変動幅を10〜40℃の範囲に抑制し易くなり、得られる再生粒子を均質化するに有用である。この点、当該炉本体内温度の変動幅が40℃を超えると、得られる再生粒子が硬い・柔らかい等のばらつきや白色度のばらつきを有するものとなるおそれがある。他方、当該炉本体内温度の変動幅を10℃未満にまで抑制するのは、現実的ではない。
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の未燃率が13〜30質量%となるように、好ましくは14〜26質量%となるように、より好ましくは15〜23質量%となるように熱処理を行うと好適である。
ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。
未燃率が30質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第2の熱処理炉14における熱処理を緩慢に行うことができるようになる。もっとも、未燃率が13質量%未満となるまで熱処理を行うと、第1の熱処理炉42におけるエネルギーコストが高くなる。
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは45〜105分、より好ましくは60〜90分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるアクリル系有機物、セルロースが緩慢に熱分解され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
ここで、滞留時間は、色で識別できる金属片を供給口42Aから炉本体内に投入し、排出口42Bから排出されるまでの実測時間である。
(第2の熱処理工程)
第1の熱処理炉42において熱処理した被処理物10は、第2の熱処理工程に送られ、熱分解や燃焼等の熱処理をされる。
被処理物10は、この第2の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を1〜7mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径は、通常上記の範囲内にあり、本粒子径の調節を省略することができる。
第2の熱処理工程においては、被処理物10が第2の熱処理炉14に装入される。この第2の熱処理炉14としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いることができる。しかしながら、本形態の第2の熱処理炉14は、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である。この第2の熱処理炉14としては、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉を用いることや、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能であるが、本形態では、外熱キルン炉を用いるのが好ましい。
この第2の熱処理炉14も、例えば、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転とにより、炉本体内の被処理物10が重力作用で搬送方向へ徐々に移送されるようになっている。
炉本体の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属製とすることができる。
また、本工程において用いる第2の熱処理炉14は、本形態のように第1の熱処理炉42と同形状のものを用いることもできるが、例えば、軸方向の長さが異なるキルン炉を用いて、被処理物10の滞留時間を異なるものとすることなどもできる。
本形態の第2の熱処理炉14においては、炉本体の外表面上に、例えば、電気ヒーター等からなる外熱ジャケット15が設けられている。この外熱ジャケット15による加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット15は、炉本体の軸方向に関して適宜の数に分割し、分割された外熱ジャケットを各別に加熱することができるようにするとより好適なものとなる。
このように外熱ジャケット15を適宜の数に分割し、各別に加熱することができる外熱方式とすると、炉本体内において変化する被処理物10の性状等に応じて熱処理温度を確実に制御することができ、被処理物10の好適な熱処理を行うことができる。
本形態においては、前述したように熱処理工程を少なくとも4工程に分けることとの関係において、炉本体外表面の温度が、360〜550℃となるように加熱するのが好ましく、360〜500℃となるように加熱するのがより好ましく、400〜500℃となるように加熱するのが特に好ましい。炉本体外表面の温度が360℃を下回ると、被処理物10中のスチレン系有機物を十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が550℃を上回ると、被処理物10の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、多くの領域において好ましくは360〜400℃に調節される。なお、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
ところで、以上のように第2の熱処理炉14は、外熱方式とするのが好ましいが、内熱方式とすることも可能であり、内熱方式とする場合は、図1中に二点鎖線で示すように、バーナー46Aが備わる熱風発生炉46から酸素含有ガスたる熱風を、供給口14Aを通して炉本体内に吹き込む(供給する)のが好ましい。当該熱風によって、供給口14Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口14B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第2の熱処理炉14内のガス(排ガス)は、排出口14Bを通して排出される。
このように熱風の供給方式を並流方式にすると、相対的に低温の状態にある被処理物10を直ちにスチレン系有機物等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、他端(排出口側)に向けて低温化する温度勾配が生じるため、被処理物10の過剰な熱処理が防止される。ただし、この温度勾配の制御は、前述外熱方式による方が好ましい。
また、第1の熱処理炉42が並流方式とされている場合等においては、第2の熱処理炉14を、排出口14Bを通して炉本体内に熱風を吹き込み、炉本体内の排ガスは供給口14Aを通して排出する向流方式とするのも好ましい形態である。この形態によると、第1の熱処理炉42からの排ガスを通す配管と、第2の熱処理炉14からの排ガスを通す配管とを、例えば1つにまとめることなどができ、配管処理が容易となる。
さらに、第1の熱処理炉42と第2の熱処理炉14とを連接し、熱風発生炉43からの熱風が第1の熱処理炉42を介し、供給口14Aを通して炉本体内に吹き込まれる(供給される)とともに、バーナー46Aが備わる熱風発生炉46からの酸素含有ガスたる熱風を、供給口14Aを通して炉本体内に吹き込む(供給する)こともできる。これらの熱風によって、供給口14Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口14B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。
なお、第2の熱処理炉14を前述外熱方式とする場合においても、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。この酸素含有ガスの吹き込みは、例えば、バーナー46Aを作動させずに、熱風発生炉46を利用して行うことができ、加熱しない点を除いて熱風を吹き込む場合と同様とすることができる。そこで、以下の炉本体内の酸素濃度制御については、内熱方式の場合(熱風を吹き込む場合)を例に説明する。
第2の熱処理炉14においては、熱風の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、排ガスの酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。この酸素濃度の調節・管理は、第2の熱処理炉14を外熱方式とする場合も同様である。
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ排ガスの酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。もっとも、熱風の酸素濃度が5.0%未満、あるいは排ガスの酸素濃度が0.1%未満であると、スチレン系有機物等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整するのが困難で白色化が進まないおそれがあり、また、熱分解ガスの発火(燃焼)が生じているおそれがある。他方、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。
第1の熱処理炉42を経て供給される熱風(酸素含有ガス)の酸素濃度は、被処理物10の熱処理状態等に応じて変化し、また、炉本体内の酸素濃度自体も、スチレン系有機物等の熱処理に際して酸素消費され、変動を生じる。したがって、本形態のように、熱風の酸素濃度の調節及び排ガスの酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、内熱方式及び外熱方式のいずれにおいても、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
内熱方式とする場合、第2の熱処理炉14においては、熱風の温度を350〜550℃、好ましくは380〜550℃、より好ましくは400〜500℃に調節しつつ、排ガスの温度が300〜500℃、好ましくは330〜500℃、より好ましくは350〜450℃となるように管理すると好適である。
ここで、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、熱風の温度は、熱風発生炉46において熱電対にて温度を実測した値である。
熱風の温度が350℃以上で、かつ排ガスの温度が300℃以上であると、被処理物10中のスチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われる。また、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32において、残カーボン等の有機物を緩やかに燃焼することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。他方、熱風の温度が550℃以下で、かつ排ガスの温度が500℃以下であると、本工程における残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、熱風の温度が550℃を超え、あるいは排ガスの温度が500℃を超えると、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
第1の熱処理炉42を経て供給される熱風の温度は、被処理物10の熱処理状態等に応じて変化し、また、炉本体内の温度自体も、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、熱風の温度の調節及び排ガスの温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、通常300〜500℃に、好ましくは330〜500℃に、より好ましくは350〜450℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。また、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
第2の熱処理炉14から排出された排ガスは、図1中に二点鎖線で示すように、再燃焼室22においてバーナー等により再燃焼し、予冷器24において予冷した後、熱交換器26を通し、誘引ファン28によって煙突30から排出することができる。ここで、熱交換器26は、外気を昇温し、この昇温した外気を、例えば、第1の熱処理炉42に吹き込まれる熱風の用に供し、排ガスの熱回収を図ることもできる。このような排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去にも有効である。
第2の熱処理炉14においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは40〜100分、より好ましくは40〜80分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるスチレン等由来の有機物が緩慢に熱処理され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
第2の熱処理炉14においては、第2の熱処理炉14が外熱方式である内熱方式であるかにかかわらず、被処理物10の未燃率が2〜20質量%となるように、好ましくは5〜17質量%となるように、より好ましくは7〜12質量%となるように熱処理を行うと好適である。
ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。
未燃率が20質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第3の熱処理炉32における熱処理(燃焼)を短時間で効率よく行うことができるようになり、得られる再生粒子の白色度を70%以上、好ましくは80%以上の高白色度とすることができる。もっとも、未燃率が2質量%未満となるまで熱処理を行うと、第2の熱処理炉14におけるエネルギーコストが高くなり、また、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬度が高くなるなど、再生粒子の品質低下につながるおそれがある。
(第3の熱処理工程)
第2の熱処理炉14において熱処理した被処理物10は、第3の熱処理工程に送られ、熱分解や燃焼等の熱処理をされる。
被処理物10は、この第3の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を5mm以下、好ましくは1〜4mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。平均粒子径が1mm未満であると、第3の熱処理炉32において被処理物10が過燃焼するおそれがある。他方、平均粒子径が5mmを超えると、残カーボンの熱処理(燃焼)が困難となり、芯部まで燃焼が進まず、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
また、この被処理物10の粒揃えは、粒子径1〜5mmの割合が、70質量%以上となるように、好ましくは75〜95質量%となるように、より好ましくは80〜95質量%となるように行うと好適である。
ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径や粒揃えは、各熱処理工程を経ることにより、通常上記の範囲内となり、本平均粒子径や粒揃えの調節を省略することができる。
第3の熱処理工程においては、被処理物10が装入機31から第3の熱処理炉32に装入される。この第3の熱処理炉32としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いることができる。しかしながら、本形態の第3の熱処理炉32は、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である。
ただし、この第3の熱処理炉32としては、第1の熱処理炉42や第2の熱処理炉14と同様に、外熱ジャケットを有する外熱キルン炉を使用することもできる。外熱ジャケットは、長手方向(搬送方向、炉本体の軸方向)の温度制御が容易な電気ヒーター形式とすると好適である。
長手方向の温度制御が容易であると、任意に温度勾配を設けることができ、被処理物10を所定の時間、所定の温度に保持することができるため、被処理物10中の残留有機分や、残カーボンを限りなくゼロに近づけることができる。また、外熱キルン炉による場合は、被処理物10を所定の滞留時間をもって燃焼(熱処理)することができ、しかも外熱により被処理物10に間接的に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキが生じない。さらに、炉内表面の回転による摩擦によって被処理物10が緩やかに撹拌されるため、微粉化を生じにくい。結果、最終的な再生粒子の品質及び性状が安定したものとなる。
もっとも、外熱キルン炉は、被処理物10を間接的に熱処理するものであり、熱処理効率は内熱キルン炉に及ばない。したがって、熱処理温度を相対的に高温とする第3の熱処理工程においては、熱処理効率や生産性の観点から、本形態のように、内熱キルン炉を用いる方が好ましい。
第3の燃焼炉32においては、炉本体の内壁に設けたリフターによって被処理物10の搬送を制御し、もって被処理物10を緩慢に熱処理(燃焼)することにより、得られる再生粒子の均質化を図ることもできる。この炉本体の内壁に設けるリフターは特に限定されるものではないが、被処理物10の供給口32A側から排出口32B側に向けて、軸心に対して例えば45〜70°の傾斜角を有する複数の螺旋状リフター及び軸心と平行な複数の平行リフターをこの順で設けるのが好ましい。
この形態によると、被処理物10が、まず、螺旋状リフターにて適切な速度で搬送されつつ、持ち上げられて落下し、この落下する間に熱分解ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触する。また、被処理物10は、続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返し、この落下を繰り返す間に可燃焼ガスと効率的に接触する。したがって、熱交換効率が極めてよい。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる被処理物10の量が制御されるため、平行リフターにおける被処理物10の持ち上げ及び落下が適切に行われ、被処理物10の熱処理(燃焼)が均一かつ効率的に行われる。螺旋状リフターや平行リフターは、例えば、耐熱性を有し、伝熱効率が高いステンレス鋼板等の金属製とすると好適である。
第3の熱処理炉32の炉本体内には、例えば、被処理物10の供給口32Aを通して、バーナー45Aが備わる熱風発生炉45から酸素含有ガスたる熱風を吹き込む(供給する)。当該熱風によって、供給口32Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口32B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。また、第3の熱処理炉32内のガス(排ガス)は、例えば、排出口32Bを通して(通り抜けて)排出される。
ただし、当該熱風は被処理物10の排出口32Bを通して吹き込み、第3の熱処理炉32内のガス(排ガス)は供給口32Aを通して(通り抜けて)排出する向流方式とするのも好ましい形態である。
向流方式とすると、排ガス中の煤塵が被処理物10中に混入し、得られる再生粒子の品質が低下するのを確実に防止することができる。すなわち、供給された被処理物10中の残カーボンは直ちに燃焼されるため、向流方式とすると、残カーボンの燃焼に伴って発生する煤塵は、被処理物10の供給口32A側から排ガスとともに速やかに炉本体外に排出されることになり、被処理物10に混入するのが防止される。
なお、第3の熱処理炉32を外熱方式とする場合においても、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。この酸素含有ガスの吹き込みは、例えば、バーナー45Aを作動させずに、熱風発生炉45を利用して行うことができ、加熱しない点を除いて熱風を吹き込む場合と同様とすることができる。そこで、以下の炉本体内の酸素濃度制御については、内熱方式の場合(熱風を吹き込む場合)を例に説明する。
第3の熱処理炉32においては、熱風の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、排ガスの酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。この酸素濃度の調節・管理は、第3の熱処理炉32を外熱方式とする場合も同様である。
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風(酸素含有ガス)及び排ガスの酸素濃度が低くなるように管理するのがより好ましい。もっとも、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が低すぎると、残カーボンや残留有機物の熱処理が充分に進まず、また、白色化が進まないおそれがある。他方、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。また、排ガスの酸素濃度を高くするためには、過剰の空気を炉本体内に吹き込む必要があり、炉内温度の低下や炉内温度制御が困難になる等の問題を生じるおそれがある。
炉本体内の酸素濃度は、残カーボンや残留有機物の熱処理に際して酸素消費され変動を生じるため、本形態のように、熱風(酸素含有ガス)の酸素濃度の調節及び排ガスの酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、内熱方式及び外熱方式のいずれにおいても、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
第3の熱処理炉32を内熱方式とする場合は、熱風の温度を550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節しつつ、排ガスの温度が550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃となるように管理すると好適である。
ここで、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、熱風の温度は、熱風発生炉45において熱電対にて温度を実測した値である。
熱風の温度が550℃以上で、かつ排ガスの温度も550℃以上であると、被処理物10中の残カーボンや残留有機物の熱処理が確実に行われる。他方、熱風の温度が780℃以下で、かつ排ガスの温度も780℃以下であると、残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、熱風の温度が780℃を超え、あるいは排ガスの温度が780℃を超えると、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。しかも、得られた再生粒子をスラリー化したときに、固まるおそれがある。
炉本体内の温度は、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、熱風の温度の調節及び排ガスの温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、上記調節・管理と同様、つまり、通常550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。
一方、第3の熱処理炉32を外熱方式とする場合は、炉本体外表面の温度が550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃となるように外熱ジャケット等の温度を制御すると好適である。炉本体外表面の温度が550℃以上であると、残カーボンや、第2の熱処理炉14で燃焼しきれなかったスチレン‐アクリルやスチレン等の残留有機物を確実に燃焼することができる。
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度や被処理物10の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、炉本体外表面や内表面の温度と実質的に同一の温度になると推定される。
第3の熱処理炉32においては、被処理物10の滞留時間を60〜240分、好ましくは90〜150分、より好ましくは120〜150分とすると好適である。滞留時間を60分以上とすることにより、被処理物10に含まれる残留有機物や残カーボンが確実に燃焼され、また、再生粒子を安定して生産することができるようになる。他方、滞留時間が240分を超えると、過燃焼によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
この点、第1の熱処理炉42において被処理物10の発熱量が20〜90%減少し、アクリル系有機物及びセルロースが熱分解するように熱処理され、また、第2の熱処理炉14において被処理物10のスチレン系有機物が熱分解するように熱処理されていると、第3の熱処理炉32における被処理物10の滞留時間を短くすることができ、過燃焼、白色度の低下、硬質物質の増加等のリスクを低減することができる。
(硬質物質)
被処理物10の主成分となる製紙スラッジは、製紙用に供される填料や顔料としての炭酸カルシウム、カオリン、タルク、抄紙助剤としての硫酸アルミニウム等の無機物を多く含み、示差熱熱重量分析(TG/DTA6200)とX線回折(RAD2X)とによる燃焼物の分析から、被処理物10を熱処理するに際しては、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)は600〜750℃にて質量減少し、硬質かつ水溶性の酸化カルシウム(CaO)に変化し、クレー(Al2Si2O5(OH)4)は500℃前後で脱水により質量減少し、メタカオリンとなり、1000℃前後の高温では硬質なムライト(Al2Si2O13)に変化することが知見された。また、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)は900℃前後で質量減少し、エンスタタイト(MgSiO3)に変化することも知見された。一方、X線回折(RAD2X)による燃焼物の分析から、燃焼物中にCa2Al2SiO7(ゲーレナイト)、CaAl2Si2O8(アノーサイト)の存在が確認された。
また、製紙用に供される填料や顔料と比べ、ゲーレナイトやアノーサイトは極めて硬質(硬質物質)であり、微量の存在で、製紙用具の摩耗・毀損や抄紙系内の汚れが生じ、塗工用顔料として使用した場合には、ドクター等の塗工設備の摩耗・毀損、ストリークの発生要因となることも知見された。
この点、従来、ゲーレナイトやアノーサイトは、900℃を超える高温での熱処理において生成されるものと予想されていたが、本発明者等の検討において、ゲーレナイトやアノーサイトの生成は熱処理温度が500℃前後でも生じ、熱処理温度の上昇に応じて生成量が増大することが見出された。
また、製紙スラッジ中の酸化物換算によるカルシウムの含有量が増えると、アノーサイトは減少し、ゲーレナイトは増える傾向を示すことも知見された。アノーサイトは、炭酸カルシウムの過燃焼により生じる酸化カルシウムとカオリンとの混合燃焼により生成され易く、したがって、上記各種熱処理工程においては、25〜800℃における示差熱熱重量分析において、重量減量割合が5%(TG)以上となるように熱処理を行い、酸化カルシウムの生成自体を可及的に抑制するのが好ましい。
また、水酸化カルシウムは、酸化カルシウムよりも一段とアノーサイトを生成し易いため、上記被処理物10の脱水率(水分率)や、各種熱処理における酸素濃度は、厳格に調節するのが好ましい。
また、本発明者等は、シリカがゲーレナイトやアノーサイトの生成を助長することを知見した。したがって、被処理物10は、可及的にシリカ分含有量を低減しておくのが好ましく、例えば、新聞古紙や新聞抄紙系白水の使用を抑え、比較的低融点のゲーレナイトやアノーサイトの生成を抑制するのが好ましく、得られた再生粒子を前述したようにシリカ複合するのがより好ましい。
(付帯工程)
第3の熱処理炉32から排出された被処理物10は、平均粒子径1.4〜3.2μm、好ましくは1.7〜2.9μm、より好ましくは2.0〜2.6μmとなるように粉砕等して調節すると好適である。
ここで粉砕後の平均粒子径は、粉砕後の被処理物スラリーをレーザー回折方式の粒度分布径(型番:SA−LD−2200、島津製作所製)を用いて測定した体積平均粒子径(D50)である。
この被処理物10の粉砕方法は特に限定されるものではなく、例えば、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機などを用いることができる。
この粉砕を行った被処理物10は、好適には凝集体であり、冷却機34において冷却した後、振動篩機等の粒径選別機36により選別をし、再生粒子としてサイロ38に一時貯留し、適宜添料や顔料等の用途先に仕向ける。
(その他)
以上の第1から第3の熱処理工程において、好適な熱処理炉として用いられる内熱又は外熱キルン炉は、内壁を構成する耐火物を円周状(円筒状)ではなく、六角形状や八角形状とすることもでき、これらの形状によると被処理物10を滑らすことなく持ち上げて撹拌することができる。ただし、簡便に被処理物10の撹拌を実現するためには、耐火物等を円筒状とし、前述したようなリフターを設けるのが好ましい。
《本再生粒子例》
本形態の再生粒子の製造方法によって得られる再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合、好ましくは40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、より好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の割合とされていると好適である。カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合とされていると、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑制されるため、脱水性が良好である。
このカルシウム、シリカ及びアルミニウムの質量割合を調節する方法としては、被処理物10の原料構成を調節することが本筋ではあるが、第1の熱処理工程や、第2の熱処理工程、第3の熱処理工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で添加し、あるいは焼却炉スクラバー石灰を添加して、調節することもできる。例えば、カルシウムの調節には、中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調節には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量に添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調節には酸性抄紙系の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
ところで、被処理物10の原材料ともいえる古紙は、近年の中性抄紙化、ビジュアル化の進展にともなう印刷見栄えの良い塗工紙使用量の増加にともない、填料・顔料としての炭酸カルシウムの使用量増加により、製紙スラッジ中の炭酸カルシウムの含有量増加につながり、結果としてゲーレナイトやアノーサイトの生成量増加に繋がるため、再生粒子に含有されるゲーレナイトやアノーサイト、いわゆる硬質物質の含有量をできる限り減少させる必要が大きくなっている。したがって、硬質物質の含有量を減らすことができる上記再生粒子の製造方法は、極めて有用であり、この製造方法によって製造された本形態の再生粒子は、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量が1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とされている。
ここで、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量は、下記の方法によって測定した値である。
(測定方法)
X線回析法(理学電気製、RAD2X)によって測定する。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とする。
以上のようにして得られた本再生粒子は、白色度が75〜85%、好ましくは80〜85%と高く、また白色度の変動が少ない。したがって、本再生粒子を本形態のインクジェット記録用紙の基材に内添すると、従来公知の再生粒子や、市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高くなる。
また、本再生粒子は、平均粒子径が公知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きく、再生粒子が繊維間に定着する特性を有するため、これにシリカが複合されたシリカ複合混合無機粒子も、前述各種条件を満たすことにより、同様の特性を有することになり、嵩高性が向上する。しかも、再生粒子のアルミニウム分がカチオン性であるため、繊維(アニアオン性)への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減させて、嵩高性及び強度を向上させることができる。
次に、本発明による製造例を挙げて本発明の作用効果を明らかにする。なお、本発明は、当然これらの例に限定されるものではない。また、以下おいて示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り絶乾質量基準である。
混合無機粒子に対して、図1の製造設備を使用し、表1及び表2に示す条件で、シリカを複合した。製造されたシリカ複合混合無機粒子の成分分析結果を表3に示した。
以上の製造例において、各種条件・成分等は、次のとおりである。なお、下記にない条件等は、前述したのと同様である。
(再生粒子)
製紙スラッジを脱水後、前述図2の製造設備を使用して再生粒子を製造した。
((ワイヤー)摩耗度)
プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製、3時間)を用い、スラリー濃度2質量%で測定した値である。
(均質性)
各再生粒子の白色度及び平均粒子径について変動割合を測定し、変動が少ない場合を「均質」とした。
(総合評価)
総合評価は、下記の基準に従って相対評価した。
5:体積平均粒子径が6.00〜8.00μmの範囲にあり、粒子径1μm以下の含有率が1.0%以下、粒子径10μm以上の含有率が30%以上60%以下、磨耗度が70mg以下、吸油量が50ml/100g以上であった場合。
4:総合評価5の評価基準において、体積平均粒子径が6.00〜8.00μmの範囲外である場合。
3:総合評価5の評価基準において、体積平均粒子径が6.00〜8.00μmの範囲外であり、且つ粒子径1μm以下の含有率が1.5%を超える場合。
2:総合評価5の評価基準において、体積平均粒子径が6.00〜8.00μmの範囲外であり、且つ粒子径1μm以下の含有率が1.5%を超え、且つ磨耗度が70mgを超える場合。
1:総合評価5の評価基準において、、体積平均粒子径が6.00〜8.00μmの範囲外であり、且つ粒子径1μm以下の含有率が1.5%を超え、且つ磨耗度が70mgを超え、且つ吸油量が50ml/100g未満の場合。
Figure 2011213504
Figure 2011213504
Figure 2011213504
(考察)
いずれの製造例においても、平均粒子径、粒子径分布は好適なものとなり、また、摩耗度は低く抑えられ、均質性及び吸油量は十分なものとなった。ただし、本製造例の中では、相対的に以下の傾向があった。
製造例2は、粒子径分布がややブロードであった。
製造例4は、小径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例5は、大径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例6は、摩耗度がやや高く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例7は、小径粒子がやや多かった。
製造例8は、小径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例9は、摩耗度がやや高かった。
製造例10は、小径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例11は、大径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。また、摩耗度がやや高かった。
製造例12は、小径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例13は、小径粒子がやや多く、粒子径分布がややブロードであった。
製造例25は、平均粒子径がやや小さかった。
製造例26は、平均粒子径がやや小さく、吸油量がやや低かった。
図3の(a)にシリカ複合混合無機粒子の製造を2段で行った場合(1段目:3号水ガラス(3号珪酸曹達)及び再生粒子の混合並びに希硫酸の添加、2段目:熟成)を、図3の(b)にシリカ複合混合無機粒子の製造を3段で行った場合(1段目:3号水ガラス(3号珪酸曹達)及び再生粒子の混合、2段目:希硫酸の添加、3段目:熟成)を、図3の(c)にシリカ複合混合無機粒子の製造を4段で行った場合(本発明の形態例)を、それぞれ示した。
図中のグラフから明らかなように、本発明の形態によると、得られるシリカ複合混合無機粒子の粒子径分布がシャープになることが分かる。
本発明は、混合無機粒子にシリカが複合されたシリカ複合混合無機粒子を製造する方法及びシリカ複合混合無機粒子、特に製紙用の填料や顔料として用いるに好適なシリカ複合混合無機粒子の製造方法及びシリカ複合混合無機粒子として適用可能である。
10…被処理物、12…貯槽、14…第2の熱処理炉、15,44…外熱ジャケット、22…再燃焼室、24…予冷器、26…熱交換器、28…誘引ファン、30…煙突、32…第3の燃焼炉、34…冷却機、36…粒径選別機、38…サイロ、42…第1の熱処理炉、43,45,46,47…熱風発生炉、60…乾燥装置、70A…第1の槽、70B…第2の槽、70C…第3の槽、70D…第4の槽、80A〜D…撹拌手段、HA〜HD…スラリー、K…珪酸アルカリ、R1,R2…鉱酸、S…混合無機粒子、W…清水。

Claims (5)

  1. 少なくとも2種類の無機粒子、珪酸アルカリ水溶液及び鉱酸から、前記混合無機粒子にシリカが複合されたシリカ複合混合無機粒子を製造する方法であって、
    前記混合無機粒子及び前記珪酸アルカリを第1の槽に供給し、この第1の槽内の前記混合無機粒子が分散されたスラリーが、前記第1の槽から第2の槽へ、この第2の槽から第3の槽へ、この第3の槽から第4の槽へ流れるものとしつつ、
    前記第3の槽内のスラリーに前記鉱酸を添加するほか、前記第1の槽内のスラリーにも前記鉱酸を先行添加して、
    シリカ複合混合無機粒子を連続的に製造する、
    ことを特徴とするシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
  2. 前記鉱酸の合計添加量を、前記第4の槽内のスラリーがpH7.0〜9.0となる量とし、
    かつ、前記先行添加する鉱酸の量を前記合計添加量の18〜48%とする、
    請求項1記載のシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
  3. 前記第1の槽内のスラリーについては、レイノルズ数が4000〜16000となるように撹拌しつつ、通過時間が2〜20分となるように流れるものとし、
    前記第2の槽内のスラリーについては、通過時間が20〜50分となるように流れるものとする、
    請求項1又は請求項2記載のシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
  4. 前記無機粒子は、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、粉砕して製造した再生粒子及び炭酸カルシウム、クレー、タルクの組合せからなる少なくとも2種類の無機粒子からなり、◇
    前記再生粒子は、平均粒子径が1.4μm以上、かつ粒子径1μm以下の割合が5%以下であり、得られる組合せ後の無機粒子の体積平均粒子径が0.5μm〜10.0μm上である。
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ複合混合無機粒子の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって製造され、
    かつ、プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製、3時間、スラリー濃度2質量%)を用いて測定したワイヤー摩耗度が5〜100g/mである、
    ことを特徴とするシリカ複合混合無機粒子。
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