JP2011213207A - 電動パワーステアリング装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本製造方法は、入力軸および出力軸18を同軸上に連結したトーションバーを備え、入力軸の一端が、円筒状に巻かれた巻きブッシュ35を介して出力軸18の連結孔181に支持されている電動パワーステアリング装置に適用される。本製造方法は、圧入治具40を用いて巻きブッシュ35を出力軸18の連結孔181に圧入する工程と、圧入治具40を取り外した後、入力軸の一端を巻きブッシュ35内に挿入する工程と、を含む。圧入治具40は、巻きブッシュ35内に挿入される挿入軸41および巻きブッシュ35の軸方向端部353を押圧する押圧部42を含む。圧入する工程では、出力軸18の連結孔181に圧入された巻きブッシュ35の周方向端部354が内側へ入り込むことが、挿入軸41によって抑制されるようにしてある。
【選択図】図4
Description
ステアリングシャフトは、操舵部材に連なる入力軸と、転舵機構に連なる出力軸とに分割されている。これら入力軸および出力軸はトーションバーを介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸に操舵トルクが入力されたときに、トーションバーが弾性ねじり変形し、これにより、入力軸および出力軸が相対回転するようになっている。トルクセンサは、トーションバーを介する入力軸および出力軸の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出する。入力軸の一端の外周は、出力軸の連結孔に、円筒状に巻かれた巻きブッシュを介して支持されている。この巻きブッシュは出力軸の連結孔に圧入されている。
そこで、本発明の目的は、製造時の不良率を低くできる電動パワーステアリング装置の製造方法を提供することである。
すなわち、本発明において、上記圧入する工程において、上記挿入軸の外径(L1)は、上記連結孔の内径(L3)がその公差範囲内の下限値(L31)であるときに当該連結孔に圧入された上記巻きブッシュの内径(L41)よりも大きく、且つ上記連結孔の上記内径がその公差範囲内の上限値(L32)であるときに当該連結孔に圧入された上記巻きブッシュの内径(L42)よりも小さくされている場合がある(請求項2)。この場合、圧入時に巻きブッシュの周方向端部が内側に突起状に変形することは、連結孔の内径がその公差範囲内の下限値に近くなる程に生じ易くなる。このように突起状の変形が生じ易い上述の下限値のときの連結孔に圧入された巻きブッシュの内径よりも、挿入軸の外径を大きくしたので、圧入時に巻きブッシュの周方向端部が内側に突起状に変形することをより確実に防止できる。これにより、製造時の不良率を一層低くできる結果、製造コストを一層低減できる。
図1は、本発明の一実施形態の製造方法が適用された電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)の概略構成の模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸10とを有している。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる第1軸としての入力軸17と、ピニオン軸7に連なる第2軸としての出力軸18とに分割されている。これら入力軸17および出力軸18はトーションバー19を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸17に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー19が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸17および出力軸18が相対回転するようになっている。
図2は、図1の出力軸18、ウォームホイール27等の断面図である。図1と図2を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム28を有している。ステアリングシャフト3は、例えば、操舵部材2が上方になるようにして、車体の前後方向に対して斜めに取り付けられている。
ステアリングシャフト3の軸方向に関してのステアリングコラム28の上端部は、第1の軸受を保持し、この第1の軸受を介して、入力軸17の軸方向の上部を回転可能に支持している。第1の軸受は、転がり軸受としての玉軸受である。
ステアリングシャフト3の軸方向に関してのステアリングコラム28の下部は、第3の軸受33および第4の軸受34を保持し、これら第3の軸受33および第4の軸受34を介して、出力軸18を回転可能に支持している。第3の軸受33および第4の軸受34は、それぞれ転がり軸受としての玉軸受である。第3の軸受33および第4の軸受34の内輪が、出力軸18の外周に、例えば、圧入されている。
入力軸17の一端171は、ステアリングシャフト3の軸方向に関して、入力軸17の下端部に配置されている。一端171の外周は、円筒形状をなす嵌合面を有している。この嵌合面が、巻きブッシュ35の内周352に嵌合している。嵌合面の外径は、連結孔181に圧入された巻きブッシュ35の内周352との間に所定量の隙間を確保できるように、連結孔181に圧入された巻きブッシュ35の内径未満の値に設定されている。
巻きブッシュ35の内周352には、フッ素樹脂37が被覆されている。すなわち、巻きブッシュ35は、金属製の筒部材38と、この筒部材38の内周を覆うフッ素樹脂37とを有している。フッ素樹脂37は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、巻きブッシュ35の内周352を形成している。フッ素樹脂37は、弾性変形可能とされるとともに、相手方の入力軸17の一端171と相対摺動するときの摩擦を小さくする効果を有する。巻きブッシュ35の筒部材38は、金属製の板材が円筒形状に巻かれるとともに板材の相対向する一対の縁部が互いに突き合わされてなる。
図3を参照して、圧入する工程では、第3の軸受33およびウォームホイール27が固定された出力軸18が、受け治具43に保持される。受け治具43に保持された出力軸18の連結孔181に、圧入治具40の挿入軸41に保持された巻きブッシュ35が圧入される(図4(a)参照。)。
このように、本実施形態では、圧入治具40の挿入軸41が、圧入時に巻きブッシュ35の径方向内方へ当該巻きブッシュ35の周方向端部354が突起状に変形することを抑制できる。その結果、圧入後の巻きブッシュ35の内周352の真円度を向上することができ、製造時の不良率を低くできる。ひいては、製造コストを低減できる。
図1と図4(b)を参照して、圧入時に巻きブッシュ35の周方向端部354が内側に突起状に変形することを抑制できるので、電動パワーステアリング装置1において入力軸17と出力軸18とが相対回転するときの摩擦が大きくなることが抑制される。その結果、操舵トルクの検出精度の低下を抑制できる。ひいては、操舵フィーリングの低下を抑制できる。
このように、圧入時に巻きブッシュ35の周方向端部354が内側に突起状に変形することを抑制することを通じて、上述の真円度の不良率および異音発生の不良率をともに低減することが可能となる。
図6を参照して、挿入軸41の外径L1は、連結孔181の内径L3がその公差範囲内の下限値L31であるときに当該連結孔181に圧入された巻きブッシュ35の内径L4の値L41よりも大きく、且つ連結孔181の内径L3がその公差範囲内の上限値L32であるときに当該連結孔181に圧入された巻きブッシュ35の内径L4の値L42よりも小さくされている(L42≧L1≧L41)。
本実施形態では、巻きブッシュ35の内周352に被覆されたフッ素樹脂37は、弾性変形可能で低摩擦特性を有するので、圧入後の巻きブッシュ35から挿入軸41を容易に抜くことができる。ひいては、製造コストの低減に寄与する。
図3を参照して、フッ素樹脂37が弾性変形可能であるので、挿入軸41に保持された巻きブッシュ35の外径L6と、連結孔181の内径L3との寸法差を吸収できる。その結果、巻きブッシュ35を連結孔181に圧入し易くできる。
例えば、巻きブッシュ35の内周352にフッ素樹脂37が被覆されていない場合も考えられる。
[試験]
本発明の図3の実施形態の製造方法に対応する試験例1,2による電動パワーステアリング装置の製造用中間体を製造した。この製造用中間体は、図3に示すように、出力軸18と、この出力軸18の外周に圧入されたウォームホイール27と、出力軸18の外周に圧入された第3の軸受33と、出力軸18の連結孔181に圧入された巻きブッシュ35とを有している。製造用中間体において、出力軸18の連結孔181に圧入された巻きブッシュ35の内径を測定した。
これらの測定結果を互いに比較し、試験例1,2に係る製造用中間体の圧入後の巻きブッシュの真円度が、比較例に係る製造用中間体と比べて良好なことを説明する。
なお、試験例1,2に係る製造用中間体と、比較例に係る製造用中間体との間で、これら製造用中間体を構成する各部品の公差範囲は、互いに同じとした。また、これらの製造用中間体の出力軸の連結孔および巻きブッシュの具体的な寸法は、上述の実施形態で説明した通りである。
<試験例1,2>
試験例1の製造方法では、圧入治具の挿入軸の外径は、12.033mmとされる。試験例2の製造方法では、圧入治具の挿入軸の外径は、12.044mmとされる。
試験例1,2に係るグループの各製造用中間体の巻きブッシュについて、圧入後の各巻きブッシュの内径を以下のように測定した。すなわち、連結孔に圧入された巻きブッシュの内周の輪郭形状を測定し、測定した輪郭形状の外接円の直径(巻きブッシュの個体内での内径の最大値に相当する。)および内接円の直径(巻きブッシュの個体内での内径の最小値に相当する。)を求めた。なお、外接円の直径と内接円の直径との差の半分の値が、真円度に相当する。
<比較例>
比較例の製造方法で用いられる従来の圧入治具の挿入軸の外径は、11.970mmである。比較例に係る製造用中間体を複数個(例えば、30個)製造した。
<試験例1,2に係るグループにおける製造用中間体の巻きブッシュの内周の直径の測定結果>
図7を参照して、試験例1,2に係るグループでは、製造用中間体の巻きブッシュの内周の外接円の直径は、上限値P11(12.052mm)と下限値P12(12.041mm)との間でばらつく。また、グループ内で、製造用中間体の巻きブッシュの内周の内接円の直径は、上限値P21(12.033mm)と下限値P22(12.019mm)との間でばらつく。
<比較例に係るグループでの製造用中間体の巻きブッシュの内周の直径の測定結果>
比較例に係るグループでは、製造用中間体の巻きブッシュの内周の外接円の直径は、上限値Q11(12.065mm)と下限値Q12(12.042mm)との間でばらつく。また、グループ内で、製造用中間体の巻きブッシュの内周の内接円の直径は、上限値Q21(12.036mm)と下限値Q22(12.010mm)との間でばらつく。
<評価>
試験例1,2に係るグループの製造用中間体において、圧入された巻きブッシュの内周の内接円の直径のばらつき範囲B2の下限値P22は、比較例に係るグループの製造用中間体における測定結果の対応する下限値Q22よりも大きい(P22>Q22)。つまり、試験例1,2に係るグループの製造用中間体では、圧入された巻きブッシュの周方向端部が内側に突出する変形が生じていないか、または変形が生じていたとしても、その突出量が小さくなっているといえる。
従って、試験例1,2に対応する本発明の実施形態の製造方法により、圧入後の巻きブッシュの真円度不良の発生を抑制できることが確認された。
Claims (3)
- 第1軸と、第2軸と、上記第1軸および上記第2軸を貫通して上記第1軸および上記第2軸を同軸上に連結したトーションバーと、を備え、上記第1軸の一端が、円筒状に巻かれた巻きブッシュを介して上記第2軸の連結孔に支持されている電動パワーステアリング装置の製造方法であって、
上記巻きブッシュ内に挿入される挿入軸および上記巻きブッシュの軸方向端部を押圧する押圧部を含む圧入治具を用いて、上記巻きブッシュを上記第2軸の上記連結孔に圧入する工程と、
上記圧入治具を取り外した後、上記第1軸の上記一端を上記巻きブッシュ内に挿入する工程と、を含み、
上記圧入する工程では、上記第2軸の上記連結孔に圧入された上記巻きブッシュの周方向端部が内側へ入り込むことが、上記挿入軸によって抑制されるようにしてあることを特徴とする電動パワーステアリング装置の製造方法。 - 請求項1において、
上記圧入する工程において、上記挿入軸の外径は、上記連結孔の内径がその公差範囲内の下限値であるときに当該連結孔に圧入された上記巻きブッシュの内径よりも大きく、且つ上記連結孔の上記内径がその公差範囲内の上限値であるときに当該連結孔に圧入された上記巻きブッシュの内径よりも小さくされている、ことを特徴とする電動パワーステアリング装置の製造方法。 - 請求項1または2において、
上記圧入する工程において上記挿入軸が挿入される上記巻きブッシュの内周には、フッ素樹脂が被覆されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置の製造方法。
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