JP2011208115A - ポリマーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属触媒を使用せず、かつ残存モノマー等の除去工程を必要とせずに、開環重合性モノマーから、1段階の工程で、残存モノマーの少ない任意の分子量のポリマーを高収率で製造できる方法の提供。
【解決手段】(1)圧縮性流体中で、金属原子を含まない有機触媒を用いて、開環重合性モノマーを重合させるポリマーの製造方法。
(2)前記開環重合性モノマーのポリマー転化率が95重量%以上である(1)に記載のポリマーの製造方法。
(3)前記圧縮性流体が二酸化炭素からなる(1)又は(2)に記載のポリマーの製造方法。
(4)前記有機触媒が、塩基性を有する求核性の窒素化合物である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧縮性流体中、有機触媒存在下で開環重合性モノマーを重合させてポリマーを製造する方法に関する。
石油由来のプラスチックの多くは軽く強靭で耐久性に優れ、容易に所望の形に成形できるので、量産されて我々の生活を多岐にわたって支えてきた。しかし、これらのプラスチックは、環境中に廃棄された場合、容易に分解されずに蓄積する。また、焼却の際に大量の二酸化炭素を放出するため、地球温暖化に拍車を掛けている。
よって、地球環境保護の目的から、非石油原料からなる樹脂、又は自然環境下で微生物等によって分解される生分解性樹脂が注目され、近年世界中で研究されている。現在検討されている生分解性樹脂のほとんどは、脂肪族カルボン酸エステル単位を有し、微生物により分解され易い。その反面、熱安定性に乏しく、溶融紡糸、射出成形、溶融製膜などの高温に晒される成形工程における分子量低下、あるいは色相悪化が深刻である。
その中でもポリ乳酸は、原料である乳酸又はそのラクチド(環状ジエステル)が、天然物から製造可能である上に、耐熱性に優れ、色相、機械強度のバランスが取れたプラスチックである。
開環重合性モノマーの一例としてポリ乳酸の出発原料であるラクチドが知られている。ラクチドを出発原料としたポリ乳酸の製造は、一般的にはL−又はD−乳酸のラクチドにオクチル酸スズ等の金属触媒を添加し、不活性ガス雰囲気中、大気圧又は減圧下、200℃付近で溶融重合を行っている。この方法によれば、比較的高分子量のポリ−L−乳酸又はポリ−D−乳酸が得られる。しかしながら、前記金属触媒は、酸による洗浄や脱金属等の工程を行わないとポリ乳酸中に残存し、ポリ乳酸の耐熱性や安全性に悪影響を及ぼすし、高温で重合を行うため多大なエネルギーを必要とするといった問題があった。
また、ポリ乳酸の重合系では、ポリ乳酸とラクチドとの間に平衡関係が成立しており、200℃付近の溶融重合では得られるポリ乳酸中にラクチドが残存することは避けられない。ポリ乳酸中に含まれるラクチドやポリ乳酸の分解物等の不純物は、成形時に異物発生の因子となる他、ポリ乳酸の物性(ガラス転移点温度及び溶融粘度)を低下させ、成形加工性、熱安定性を著しく劣下させる原因となるため、ポリ乳酸中のラクチドを真空下で除去する操作を行ったり、再沈殿や温水中での抽出等の操作が一般的に行われている(特許文献1)。しかし、これらの操作も金属触媒の除去と同様に、工程、エネルギーの増加や、収率低下によるコストアップの要因となる。これらの問題は、ポリ乳酸の製造に限らず、ε−カプロラクトン等の他の開環重合性を有するモノマーを出発原料としたポリマーの製造に共通するものである。
一方、実質的に金属を含まない化合物の存在下でポリ乳酸を得る試みがなされている。例えば、特許文献2では、有機触媒を使用し、塩化メチレン溶媒中でラクチドの開環重合を行っている。この方法では、高収率でポリ乳酸を得ることができるが、溶媒を除去しポリ乳酸を取り出す工程が増えるため、やはりコスト増加、及び溶媒を除去するための多大なエネルギーが必要となってしまうという問題があった。
この問題を解決するため、溶媒として超臨界二酸化炭素を活用することが検討されている(非特許文献1)。超臨界二酸化炭素を溶媒にすると、廃液等が発生しない上、乾燥したポリマーが1段階の工程で得られる点で有利である。しかし、昨今使用規制等が叫ばれているスズ触媒を使用したラクチドの開環重合の報告例があるのみである。しかも、この例では、反応時間が24時間以上と長時間であり、かつ加えたラクチドのポリ乳酸への転化率が85重量%と不十分なため、そのまま成型加工等に使用することは困難であった。
したがって、低コスト、低環境負荷、省エネルギー、さらに省資源の観点から、超臨界二酸化炭素を溶媒として使用した場合の利点を生かしつつ、金属触媒を使用せずに従来よりも低温かつ高収率でポリマーを得る方法は、ポリ乳酸に限らず、開環重合性モノマーを出発原料とするポリマーでは例が無い。
本発明は、金属触媒を使用せず、かつ残存モノマー等の除去工程を必要とせずに、開環重合性モノマーから、1段階の工程で、残存モノマーの少ない任意の分子量のポリマーを高収率で製造できる方法の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜13)の発明によって解決される。
1) 圧縮性流体中で、金属原子を含まない有機触媒を用いて、開環重合性モノマーを重合させることを特徴とするポリマーの製造方法。
2) 前記開環重合性モノマーのポリマー転化率が95モル%以上であることを特徴とする1)に記載のポリマーの製造方法。
3) 前記圧縮性流体が二酸化炭素からなることを特徴とする1)又は2)に記載のポリマーの製造方法。
4) 前記有機触媒が、塩基性を有する求核性の窒素化合物であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
5) 前記有機触媒が、窒素原子を含有する環状化合物であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
6) 前記有機触媒が、環状モノアミン、環状ジアミン、環状トリアミン、複素環式化合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
7) 前記有機触媒が、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、及び、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする6)に記載のポリマーの製造方法。
8) 前記開環重合性モノマーがエステル結合を環内に有するモノマーであることを特徴とする1)〜7)のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
9) 前記エステル結合を環内に有するモノマーが、環状エステル又は環状カーボネートであることを特徴とする8)に記載のポリマーの製造方法。
10) 前記環状エステルが、下記一般式1で表される化合物のL体及び/又はD体を脱水縮合して得られる環状2量体であることを特徴とする9)に記載のポリマーの製造方法。
〔一般式1〕 R−C*−H(−OH)(COOH)
(Rは炭素数1〜10のアルキル基)
11) 前記環状2量体がL体及び/又はD体の乳酸ラクチドであることを特徴とする10)に記載のポリマーの製造方法。
12) 得られるポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であることを特徴とする1)〜11)のいずれかに記載のポリマーの製造方法。ただし、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表す。
13) ポリマー分子内にウレタン結合又はエーテル結合を含有することを特徴とする1)〜12)に記載のポリマーの製造方法。
本発明によれば、ポリマーの熱安定性、安全性を著しく劣化させる原因となる金属触媒を使用せず、かつポリマーの成形加工性、熱安定性を著しく劣化させる原因となる残存モノマー等の除去工程を必要とせずに、開環重合性モノマーから、1段階の工程で残存モノマーの少ない任意の分子量のポリマーが高収率で得られる製造方法を提供できる。
温度と圧力に対する物質の状態を示す一般的な相図。 本発明に係る圧縮性流体の範囲を定義する相図。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は、圧縮性流体中で開環重合性モノマーを重合させる点、及び金属原子を含まない有機触媒を用いる点に特徴を有する。
従来、超臨界二酸化炭素を溶媒とする場合、二酸化炭素は、塩基性、求核性を有する物質と反応するとされていることから、リビングアニオン重合には適用できないとされていた(非特許文献2参照)。しかし、本発明はこの従来の知見を覆し、超臨界二酸化炭素中でも、安定的に塩基性、求核性を有する有機触媒が開環性モノマーに配位し、開環させることで、定量的に重合反応が進行し、結果的に重合反応がリビング的に進行することを見出した。ここでいうリビング的とは、移動反応・停止反応などの副反応を伴わず、定量的に反応が進行し、得られたポリマーの分子量分布が狭く単分散であることを意味する。
また、本発明によれば、金属原子を含まない有機触媒を用いるので前述した諸々の問題点を克服できる。
本発明における「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、(3)の何れかの領域に存在するときの状態を意味する。
このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。超臨界流体とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上かつ臨界圧力以上の状態にある流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本発明においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本発明においては、圧力が1/2Pc以上の高圧ガスを表す。
圧縮性流体の状態で用いることができる物質としては、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、メタン、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、エチレンなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
中でも二酸化炭素は、臨界圧力が約7.4MPa、臨界温度が約31℃であって、容易に超臨界状態を作り出せること、不燃性で取扱いが容易であることなどの点で特に好ましい。
また、反応の効率化、ポリマー転化率等を考慮すると、圧縮性流体が二酸化炭素の場合、その温度は25℃以上であることが好ましく、圧力は5MPa以上であることが好ましい。より好ましくは超臨界流体の状態である。
重合時の圧力、すなわち圧縮性流体の圧力は、高圧ガス、液化ガス状態でも問題ないが、特に圧縮性流体へのモノマーの溶解性を高め、均一にかつ定量的に重合反応を進めるためには、超臨界状態となる圧力が好ましい。圧縮性流体が二酸化炭素の場合には、3.7MPa以上が必要であり、5MPa以上であることが好ましく、より好ましくは臨界圧力の7.4PMa以上である。
本発明で重合させることができる開環重合性モノマーとしては、エステル結合を環内に有するものであれば特に限定されるものではなく、環状エステル、環状カーボネートなどが挙げられる。
環状エステルとして、公知のものを特に制限なく用いることができるが、特に好ましいモノマーとしては、次の一般式1で表される化合物のL体又はD体を脱水縮合して得られる環状2量体が挙げられる。
〔一般式1〕 R−C*−H(−OH)(COOH)
(Rは炭素数1〜10のアルキル基)
上記一般式1で表される化合物の具体例としては、乳酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシブタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシペンタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシヘキサン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシヘプタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシオクタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシノナン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシデカン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシウンデカン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシドデカン酸の鏡像異性体などが挙げられる。これらの中でも、乳酸の鏡像異性体が反応性・入手性の観点から特に好ましい。これら環状2量体は単独で、あるいは数種を混合して使用することも可能である。
上記一般式1以外の環状エステルとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−カプロラクトン、δ−ドデカノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、グリコリッド、ラクタイドなどの脂肪族のラクトンを挙げることができる。特にε−カプロラクトンが反応性・入手性の観点から好ましい。
また、環状カーボネートとしてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記開環重合性モノマーは単独で、あるいは数種を混合して用いることも可能である。
本発明で用いる金属原子を含まない有機触媒は、開環重合性モノマーの開環反応に寄与し、開環重合性モノマーとの活性中間体を形成した後、アルコールとの反応で脱離、再生するものであればよい。カチオン系触媒でも重合反応は進行するが、ポリマー主鎖から水素を引き抜き(バック−バイティング)、分子量分布が広くなり高分子量のものは得にくいため、塩基性を有する求核剤として働く化合物が好ましい。より好ましくは、窒素原子を含有する環状化合物である。上記のような化合物としては、環状モノアミン、環状ジアミン(アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物)、グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物、窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物、N−ヘテロサイクリックカルベンなどが挙げられる。
環状アミンの例としては、キヌクリジン、環状ジアミンの例としては、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5;アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物の例としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジアザビシクロノネン;グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物の例としては、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG);窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物の例としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、ピロコリン、イミダゾール、ピリミジン、プリン;N−ヘテロサイクリックカルベンの例としては、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、DABCO、DBU、DPG、TBD、DMAP、PPY、ITBUが好ましい。
金属原子を含まない有機触媒の種類及び使用量は、圧縮性流体と開環重合性モノマーの組み合わせによって変わるので、一概に特定できないが、開環重合性モノマー100モル%に対して、0.01〜15モル%が好ましく、より好ましくは0.1〜1モル%、さらに好ましくは0.3〜0.5モル%である。使用量が0.01モル%未満では、重合反応が完了する前に有機触媒が失活し、目標とする分子量のポリマーが得られない場合がある。一方、使用量が15モル%を超えると、重合反応の制御が難しくなる場合がある。
重合反応温度についても、圧縮性流体、開環重合性モノマー及び有機触媒の組み合わせなどによって変わるので、一概に特定できないが、通常の場合、重合反応温度は、40〜150℃程度とし、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃とする。40℃未満では反応速度が低下しやすく、定量的に重合反応を進めることができない場合がある。また、150℃を超えると、解重合反応も平衡して起きるため、やはり定量的に重合反応が進みにくくなる。
重合反応時間は目標とする分子量に応じて適宜設定すればよい。分子量が3千〜10万の範囲であれば、通常、2〜12時間である。
また、重合反応を均一かつ定量的に進めるため、モノマーとの密度差によってポリマー粒子が沈降しないように、攪拌により密度差を補償してもよい。
重合時の圧力、すなわち圧縮性流体の圧力は、高圧ガス、液化ガス状態でも問題ないが、特に圧縮性流体へのモノマーの溶解性を高め、均一にかつ定量的に重合反応を進めるためには、超臨界状態となる圧力が好ましい。圧縮流体が二酸化炭素の場合、3.7MPa以上、好ましくは7.4PMa以上である。
重合に際しては、得られるポリマーの分子量を制御するために、開環重合開始剤を加えることが好ましい。開環重合開始剤としては、公知のものが使用でき、アルコール系であれば例えば脂肪族アルコールのモノ、ジ、又は多価アルコールのいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれであっても構わない。具体例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のモノアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン等の多価アルコール、及び乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。また、末端にアルコール残基を有するポリマーを使用することにより、ジブロック、トリブロック共重合体を合成することも可能である。
開環重合開始剤の使用量は、目標とする分子量に応じて適宜調整すればよく、開環重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部程度が好ましい。
また、必要に応じて重合反応後に重合停止剤(安息香酸、塩酸、燐酸、メタリン酸、酢酸、乳酸等)を用いることもできる。
さらに、本発明では、重合系に、圧縮性流体に溶解し、かつ圧縮性流体と開環重合性モノマーの双方に親和性を有する界面活性剤を共存させてもよい。例えば、圧縮性流体として二酸化炭素を用いた場合には、親CO基と親モノマー基を分子内に持つ界面活性剤が使用でき、フッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤が好ましい。上記界面活性剤として、構造中にアルコール等の活性水素を有する化合物を選択することによって、開始剤としての機能も付与することが可能となるので、より好ましい。
また、重合反応系内の水分量が、前記開環重合性モノマー100モル%に対して、4モル%以下であることが好ましい。目的とする分子量にもよるが、それ以上の濃度であると、水分自体も開始剤として寄与するため分子量の制御が困難となる。より好ましくは1モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下である。必要に応じて、前処理として、開環性モノマー、その他原材料に含まれる水分を除去する操作を加えてもよい。
上記開環重合性モノマーを重合させたポリマーは、用途に応じてウレタン結合やエーテル結合を導入することも可能である。このウレタン結合やエーテル結合は、開環重合性モノマーと同様に、イソシアネート化合物やグリシジル化合物を加えて圧縮性流体中で重付加反応させることにより導入できる。
分子構造を制御するために、開環重合性モノマーの重合反応終了後に、別途上記化合物を加えて反応させる方法がより好ましい。
イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなど、従来公知の多官能性イソシアネート化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
グリシジル化合物としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート等の従来公知の多官能グリシジル化合物が挙げられるが特に限定されるものではない。
前述したように、従来の開環重合性モノマーの溶融重合法では、150℃以上と高温での反応のため、ポリマー中にある一定量の未反応のモノマーが残存していることが一般的であり、そのため未反応のモノマーを除去する工程が必要となる場合がある。また、溶液重合法においても、得られたポリマーを固体で使用するためには溶媒を除去する工程が必要となることから、いずれの方法でも、工程の増加や、収率低下によるコストアップが避けられない。
しかし、本発明を開環重合性モノマーからのポリマー製造に応用した場合、下記の理由(1)〜(4)により、低コスト、低環境負荷、省エネルギー、省資源の点で優れ、成形加工性、熱安定性に優れたポリマーの提供が可能となる。
(1)溶融重合法と比較して、低温で反応が進む。
(2)低温で反応が進むので、副反応もほとんど起こらず、加えた開環重合性モノマーに対して高収率でポリマーが得られる(すなわち未反応の開環重合性モノマーが少ない)。そのため、成形加工性、熱安定性に優れたポリマーを得るための未反応モノマーの除去等の精製工程を簡略化又は省略できる。
(3)ポリマーに金属触媒を含有しないので、その除去工程が不要である。
(4)廃液等も発生せず、乾燥したポリマーが1段階の工程で得られることから、乾燥工程も簡略化又は省略できる。
得られたポリマーは、電子写真の現像剤、印刷用インク、建築用塗料、化粧品、医療用材料などの各種用途に用いることができる。
その際、成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、結晶性、耐候性等を向上させる目的で、各種添加剤、例えば、安定剤(エポキシ化大豆油、カルボジイミド等)、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール等)、防曇剤(グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリル等)、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、結晶核剤効果を持つ無機添加剤(クレイ、タルク、シリカ等)、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、群青等)、滑剤、天然物等を添加し、ポリマー組成物として使用してもよい。
上記添加剤の配合量は、添加する目的や添加剤の種類によって異なるが、好ましくは、ポリマー組成物100重量部に対して0〜5重量部である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で得られたポリマーの分子量及びモノマーのポリマー転化率は次のようにして求めた。
<ポリマーの分子量測定>
GPC(gel permeationchromatography)により以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー社製)・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
濃度0.5重量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してトナーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwを算出した。分子量分布は前記MwをMnで除した値である。
<モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)>
ポリ乳酸の場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリ乳酸由来の四重線ピーク面積比(5.10〜5.20ppm)に対するラクチド由来の四重線ピーク面積比(4.98〜5.05ppm)として算出し、これを100倍したものである。
ポリカプロラクトンの場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリカプロラクトン由来の三重線ピーク面積比(4.04〜4.08ppm)に対するカプロラクトン由来の三重線ピーク面積比(4.22〜4.25ppm)として算出し、これを100倍したものである。
ポリカーボネートの場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリカーボネート由来の四重線ピーク面積比(4.22〜4.25ppm)に対するエチレンカーボネート由来の一重線ピーク面積比(4.54ppm)として算出し、これを100倍したものである。
実施例1
耐圧容器に、L−乳酸のラクチド90重量部、D−乳酸のラクチド10重量部、開始剤のラウリルアルコールをモノマー100モル%に対し3.00モル%、及び4−ピロリジノピリジン(PPY)3.3重量部を仕込み、60℃まで昇温した。
次いで、超臨界二酸化炭素(60℃、10MPa)を充填し、60℃で12時間反応させた。
反応終了後、加圧ポンプと背圧弁を用い、背圧弁の出口側流量を5.0L/分に調整し、30分間、超臨界二酸化炭素をフローしてPPYと残留モノマー(ラクチド)を除去した。
次いで、徐々に常温、常圧まで戻し、3時間後に、容器内部のポリマー(ポリ乳酸)を取り出した。
このポリマーについて前述の方法で求めた物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を表1に示す。
実施例2〜4
開始剤量を、表1の実施例2〜4の欄に示すように変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表1に示す。
実施例5〜7
反応温度を、表1の実施例5〜7の欄に示すように変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表1に示す。
実施例8〜10、比較例1〜3
反応圧力及び反応温度を、表1の実施例8〜10及び比較例1〜3の欄に示すように変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表1に示す。
実施例11〜16
使用する有機触媒を、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)に変えると共に、反応圧力及び反応温度を、表2の実施例11〜16の欄に示すように変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行いポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表2に示す。
実施例17〜20
使用する開始剤を、実施例17ではエタノール、実施例18では2−プロパノール、実施例19ではt−ブタノール、実施例20ではトリフルオロエタノールに変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行いポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表3に示す。
実施例21〜23、比較例4
使用する有機触媒を、実施例21では、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)に、実施例22では、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)に、実施例23では、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)に、それぞれ変え、比較例4では有機触媒を加えず、かつ反応温度を80℃に変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表4に示す。
実施例24〜26
使用する開環重合性モノマーを、実施例24〜25では、ε−カプロラクトンに、実施例26では、エチレンカーボネートに、それぞれ変えるとともに、使用する有機触媒を、実施例24では、ジフェニルグアニジン(DPG)に、実施例25では、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)に、実施例26では、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)に、それぞれ変えた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例24〜26のポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表4に示す。
実施例27
耐圧容器に、L−乳酸のラクチド90重量部、D−乳酸のラクチド10重量部、開始剤のラウリルアルコールをモノマー100モル%に対し3.00モル%、及び4−ピロリジノピリジン(PPY)3.3重量部を仕込み、60℃まで昇温した。
次いで、超臨界二酸化炭素(60℃、10MPa)を充填し、60℃で10時間反応させた。
続いて、開始剤100モル%に対して70モル%のイソホロンジイソシアネート(伸長剤)をあらかじめ計量して別の容器に入れ、超臨界二酸化炭素(60℃、10MPa)を充填しておき、反応系と圧力を均等にした後に自重で滴下し、60℃で10時間反応させた。加圧ポンプと背圧弁を用い、背圧弁の出口側流量を5.0L/分に調整し、30分間、超臨界二酸化炭素をフローしてPPYと残留モノマー(ラクチド)を除去した。
次いで、徐々に常温、常圧まで戻し、3時間後に、容器内部のポリマー(ポリ乳酸)を取り出した。
このポリマーについて前述の方法で求めた物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を表5に示す。
実施例28〜30
伸長剤を、実施例28ではヘキサメチレンジイソシアネート、実施例29ではトリレンジイソシアネート、実施例30ではネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルに変えた点以外は、実施例27と同様の操作を行い、実施例28〜30のポリマーを得た。
得られたポリマーについて前述の方法で求めた物性値を表5に示す。
Figure 2011208115
Figure 2011208115
Figure 2011208115
Figure 2011208115
Figure 2011208115
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Claims (13)

  1. 圧縮性流体中で、金属原子を含まない有機触媒を用いて、開環重合性モノマーを重合させることを特徴とするポリマーの製造方法。
  2. 前記開環重合性モノマーのポリマー転化率が95モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーの製造方法。
  3. 前記圧縮性流体が二酸化炭素からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーの製造方法。
  4. 前記有機触媒が、塩基性を有する求核性の窒素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  5. 前記有機触媒が、窒素原子を含有する環状化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  6. 前記有機触媒が、環状モノアミン、環状ジアミン、環状トリアミン、複素環式化合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  7. 前記有機触媒が、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、及び、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のポリマーの製造方法。
  8. 前記開環重合性モノマーがエステル結合を環内に有するモノマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
  9. 前記エステル結合を環内に有するモノマーが、環状エステル又は環状カーボネートであることを特徴とする請求項8に記載のポリマーの製造方法。
  10. 前記環状エステルが、下記一般式1で表される化合物のL体及び/又はD体を脱水縮合して得られる環状2量体であることを特徴とする請求項9に記載のポリマーの製造方法。
    〔一般式1〕 R−C*−H(−OH)(COOH)
    (Rは炭素数1〜10のアルキル基)
  11. 前記環状2量体がL体及び/又はD体の乳酸ラクチドであることを特徴とする請求項10に記載のポリマーの製造方法。
  12. 得られるポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーの製造方法。ただし、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表す。
  13. ポリマー分子内にウレタン結合又はエーテル結合を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
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