本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、単なる説明例である。
図1〜図52を参照して、本実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について説明する。本実施形態の説明では、図1および図2の左下側、右上側、右下側、左上側を、それぞれテープ印字装置1の前側、後側、右側、左側とする。図3の右下側、左上側、右上側、左下側を、それぞれテープカセット30の前側、後側、右側、左側とする。
本実施形態では、テープカセット30に収納される各種テープ(例えば、感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58、フィルムテープ59)を、総称してテープという。テープカセット30に収納されるテープの種類(例えば、テープ幅、印字態様、テープ色、文字色など)を、総称してテープ種類という。
はじめに、図1〜図14を参照して、テープ印字装置1について説明する。説明の便宜上、図3〜図8では、カセット装着部8の周囲を形成する側壁が図示されているが、これらの図はあくまでも模式図であるため、図中に示す側壁は実際よりも厚く描かれている。図3に図示されているギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、実際にはキャビティ811の底面により覆い隠されている。これらのギヤ群を説明する必要上、図3にはキャビティ811の底面は図示されていない。図5〜図8において、カセット装着部8に装着されているテープカセット30は、上ケース311が取り外された状態である。
テープ印字装置1の概略構成について説明する。テープ印字装置1は、1台でサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセットが使用可能な汎用のテープ印字装置である。サーマルタイプのテープカセットは、感熱紙テープを備えている。レセプタタイプのテープカセットは、印字テープとインクリボンとを備えている。ラミネートタイプのテープカセットは、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとを備えている。
図1および図2に示すように、テープ印字装置1は、略直方体形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2上面の前側には、キャラクタキーや機能キーを含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、キーボード3で入力されたキャラクタなどを表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30(図3参照)の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。
カセットカバー6は、平面視略長方形状の蓋部である。カセットカバー6は、本体カバー2の背面上方の左右両端部で軸支され、図1に示す閉鎖位置と、図2に示す開放位置との間で回動可能である。本体カバー2の内部には、テープカセット30を着脱可能な領域であるカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8は、カセットカバー6が閉鎖位置にあるときに被覆され(図1参照)、カセットカバー6が開放位置にあるときに露出する(図2参照)。
カセットカバー6の下面には、係止ロック413と、ヘッド押え部材7と、周縁押え部材911〜914とが設けられている。係止ロック413は、下方に突出する鉤状体である。本体カバー2のカセット装着部8の前側には、係止ロック413に対応するロック孔412が設けられている。カセットカバー6が閉じられると、係止ロック413がロック孔412に嵌め込まれて、カセットカバー6の自然開放が防止される(図1参照)。
ヘッド押え部材7および周縁押え部材911〜914は、下方に突出する角柱体である。ヘッド押え部材7は、カセットカバー6が閉じられた場合に、カセット装着部8に装着されているテープカセット30の押え受け部393(図15参照)を上方から押圧する。周縁押え部材911〜914は、カセットカバー6が閉じられた場合に、カセット装着部8に装着されているテープカセット30の周縁を上方から押圧する。
本体カバー2の左側面後方には、排出スリット111が設けられている。排出スリット111は、印字済みのテープをカセット装着部8から排出する。カセットカバー6の左側面には、排出窓112が設けられている。排出窓112は、カセットカバー6が閉じられている場合に、排出スリット111を外部に露出させる。
図3〜図8を参照して、カセットカバー6下の本体カバー2の内部構造について説明する。図3および図4に示すように、カセット装着部8は、キャビティ811および角支持部812を含む。キャビティ811は、カセットケース31の底面302の形状と略対応するように凹設された、平面状の底面を有する凹部である。角支持部812は、キャビティ811の外縁から水平に延びる平面部である。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、角支持部812はテープカセット30の周縁の下面を支持する。
角支持部812の2箇所に、2つの位置決めピン102、103が設けられている。具体的には、キャビティ811の左側に、位置決めピン102が設けられている。キャビティ811の右側に、位置決めピン103が設けられている。位置決めピン102、103は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、カセットケース31のピン孔62、63(図16参照)にそれぞれ挿入される。このとき、位置決めピン102、103は、テープカセット30の周縁部の左右位置で、テープカセット30を前後・左右方向に位置決めする。
カセット装着部8の前部には、ヘッドホルダ74が設けられている。ヘッドホルダ74は、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10を搭載している。カセット装着部8の外側(図3では右上側)には、ステッピングモータであるテープ駆動モータ23が配設されている。テープ駆動モータ23の駆動軸の下端には、ギヤ91が固着されている。ギヤ91は、開口を介してギヤ93に噛み合っている。ギヤ93は、ギヤ94に噛み合っている。ギヤ94は、ギヤ97に噛み合っている。ギヤ97は、ギヤ98に噛み合っている。ギヤ98は、ギヤ101に噛み合っている。
ギヤ94の上面には、リボン巻取軸95が立設されている。リボン巻取軸95は、リボン巻取スプール44に着脱可能な軸体である。リボン巻取軸95の基部側から先端側に向けて、複数のカム部材95Aが平面視で放射状に設けられている(図45参照)。ギヤ101の上面には、テープ駆動軸100が立設されている。テープ駆動軸100は、テープ駆動ローラ46に着脱可能な軸体である。テープ駆動軸100の基部側から先端側に向けて、複数のカム部材100Aが平面視で放射状に設けられている(図45参照)。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態で、テープ駆動モータ23が反時計回り方向にギヤ91を回転駆動すると、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動する。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95に装着されたリボン巻取スプール44を回転駆動する。さらに、ギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動する。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100に装着されたテープ駆動ローラ46を回転駆動する。
ギヤ98の後側には、補助軸110が立設されている。補助軸110は、第1テープ支持孔65に挿脱可能な略円柱状の軸体である。カセット装着部8の右側後部には、ガイド軸120が立設されている。ガイド軸120は、ガイド孔47(図5参照)に挿脱可能な軸体である。
ガイド軸120は、直径が異なる2つの軸部(大径軸部120Aおよび小径軸部120B)と、テーパ部120Cとを含む(図45参照)。大径軸部120Aは、ガイド軸120の基部側を構成する軸部であり、ガイド軸120において直径が最も大きい。小径軸部120Bは、ガイド軸120の先端側を構成する軸部であり、大径軸部120Aよりも直径が小さい。テーパ部120Cは、大径軸部120Aと小径軸部120Bとの間に設けられた軸部である。テーパ部120Cは、大径軸部120A側から小径軸部120B側に向けて軸径が漸減するテーパ面を有する。
キャビティ811の後縁部は、平面視で2つの弧が左右に並んだような形状を有している。これら2つの弧の間に位置する角支持部812の一部が、後方支持部813である。後方支持部813は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、後方凹部360(図16参照)を支持する。
後方支持部813には、複数の検出スイッチ310を含む後方検出部300が設けられている。検出スイッチ310のスイッチ端子317(図13参照)は、後方支持部813から上方に突出している。テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、スイッチ端子317は底面302側(詳細には、図16に示す後方段差壁360A)と対向する。以下では、後方検出部300に設けられた検出スイッチ310を、後方検出スイッチ310という。本実施形態の後方検出部300は、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eを有する。
図4〜図8に示すように、ヘッドホルダ74の後側には、カセットフック75が立設されている。カセットフック75は、突出部751および爪部752を備えている(図49参照)。突出部751は、キャビティ811の底面(図示せず)から略垂直に上方へ突出する板状体である。爪部752は、突出部751の上端部から後方(図49では左方向)に突出する、断面視略三角形状の突起部である。突出部751は、前後方向(図4の上下方向)の可撓性を有している。爪部752は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、係止部397(図49参照)に係止される。
ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が設けられている。プラテンホルダ12は、軸支部121を中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、プラテンローラ15および可動搬送ローラ14が回転可能に軸支されている。プラテンローラ15は、サーマルヘッド10に相対して、サーマルヘッド10と接離可能である。可動搬送ローラ14は、テープ駆動軸100に装着されているテープ駆動ローラ46に相対して、テープ駆動ローラ46と接離可能である。
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示外のリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が図5に示す待機位置に向けて移動する。図5に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間しているので、人がテープカセット30をカセット装着部8に対して着脱可能である。プラテンホルダ12は、図示外の巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が図6〜図8に示す印字位置に向けて移動する。図6〜図8に示す印字位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接している。具体的には、図6に示すように、ラミネートタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ15がフィルムテープ59とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧する。同時に、可動搬送ローラ14が両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを介してテープ駆動ローラ46を押圧する。
図7に示すように、レセプタタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ15が印字テープ57とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧する。同時に、可動搬送ローラ14が印字テープ57を介してテープ駆動ローラ46を押圧する。図8に示すように、サーマルタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ15が感熱紙テープ55を介してサーマルヘッド10を押圧する。同時に、可動搬送ローラ14が感熱紙テープ55を介してテープ駆動ローラ46を押圧する。
図6〜図8に示す印字位置では、テープ印字装置1がカセット装着部8に装着されているテープカセット30を使用して印字を行うことが可能である。感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58、フィルムテープ59およびインクリボン60の詳細は、後述する。
排出スリット111(図2参照)の右側には、印字済テープ50を所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と移動刃19とを有する。移動刃19は、固定刃18に対向して前後方向(図4〜図8の上下方向)に移動可能である。
図4〜図8に示すように、プラテンホルダ12の後側面には、その長手方向の中間位置からやや右側に、複数の検出スイッチ210を含むアーム検出部200が設けられている。以下では、プラテンホルダ12の後側面、つまり、サーマルヘッド10と対向する側の面を、カセット対向面122という。検出スイッチ210のスイッチ端子222(図12参照)は、カセット対向面122からカセット装着部8に向けて略水平に突出している。
言い換えると、スイッチ端子222は、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱方向(図3の上下方向)と略直交する方向に突出している。テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、スイッチ端子222はテープカセット30の前面(詳細には、アーム前面壁35)と対向する。以下では、アーム検出部200に設けられた検出スイッチ210を、アーム検出スイッチ210という。本実施形態のアーム検出部200は、5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eを有する。
図9および図10を参照して、ヘッドホルダ74の詳細について説明する。図9および図10に示すように、ヘッドホルダ74は、1枚の板状部材で形成されており、台座部743とヘッド固着部744とを備えている。台座部743は、キャビティ811の底面(図示せず)の下方に固定されている。ヘッド固着部744は、台座部743から略垂直に屈曲されて上方へ延び、且つ、左右方向に沿って配置されている。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、ヘッドホルダ74はヘッド挿入部39に挿入される。ただし、ヘッドホルダ74がヘッド挿入部39に挿入された状態で、ヘッドホルダ74の右端部がヘッド挿入部39の右端部よりも右側に延びている。サーマルヘッド10は、ヘッド固着部744の前面に固着されている(図5〜図8参照)。
ヘッド固着部744には、第1支持部741および第2支持部742が設けられている。第1支持部741および第2支持部742は、テープ印字装置1に装着されているテープカセット30を下方から支持する。第1支持部741は、ヘッド固着部744の右端部を正面視でL字型に切り欠くことにより所定の高さ位置に形成された段差部である。第2支持部742は、ヘッド固着部744の左端部からヘッド固着部744に対して略垂直に屈曲して後方へ延びる側面視長方形状の延設片である。第1支持部741および第2支持部742は、同一の上下方向位置(高さ位置)に設けられている。
つまり、第1支持部741と第2支持部742とは、平面視で互いに略直交する方向に延びている。第1支持部741と第2支持部742は、それぞれ、サーマルヘッド10に対するテープ搬送方向の上流側と下流側とにおいて、テープカセット30を同一の高さ位置で支持する。第1支持部741および第2支持部742は、サーマルヘッド10の上下方向中心位置から上下方向に所定距離離れた位置に設定されている。よって、第1支持部741および第2支持部742は、サーマルヘッド10の上下方向中心位置に対してテープカセット30を上下方向に位置決めする基準となる。
図11および図12を参照して、アーム検出スイッチ210の詳細について説明する。図11に示すように、プラテンホルダ12のカセット対向面122には、5つの貫通孔123が上下方向に3列に並べて設けられている。具体的には、最上列に2つ、真ん中の列に2つ、最下列に1つの配置である。貫通孔123の左右方向の位置は、それぞれ異なっている。
すなわち、カセット対向面122の右側(図11の左側)から順に、最下列、最上列の右側、真ん中の列の右側、最上列の左側、そして真ん中の列の左側の順に、5つの貫通孔123がジグザグに配置されている。これらの貫通孔123に対応して、カセット対向面122の左側(図11の右側)から順に、5つのアーム検出スイッチ210A、210B、210C、210D、210Eが設けられている。
図12に示すように、アーム検出スイッチ210は、本体部221およびスイッチ端子222を備えている。本体部221は、プラテンホルダ12の内部で水平に設置された円筒体である。本体部221の前端部(図12の右端部)は、プラテンホルダ12の内部に設置されているスイッチ支持板220に固定されている。
スイッチ端子222は、本体部221の後端部(図12の左端部)に設けられた棒状体であり、貫通孔123を介して略水平に進退可能である。スイッチ端子222は、本体部221の内部に設けられたバネ部材(図示せず)によって、常には本体部221から後方側(図12の左側)に伸出した状態に保持される。スイッチ端子222は、後方から押圧されていないときは本体部221から伸出した状態(オフ状態)になり、後方から押圧されているときは本体部221内に押し込まれた状態(オン状態)になる。
カセット装着部8にテープカセット30が装着されている場合、プラテンホルダ12が待機位置に向けて移動すると(図5参照)、アーム検出スイッチ210はテープカセット30から離間するため、全てオフ状態となる。プラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると(図6〜図8参照)、アーム検出スイッチ210は、後述のアーム指標部800(図3参照)によって選択的に押圧される。テープ印字装置1は、アーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せに基づいて、テープカセット30のテープ種類を検出する。
図11および図12に示すように、プラテンホルダ12のカセット対向面122には、左右方向に延びる突起部である係止片225が設けられている。具体的には、係止片225は、カセット対向面122から後方側(図12の左側)に突出するように、プラテンホルダ12と一体成形されている。つまり、係止片225は、スイッチ端子222と同様に、カセット対向面122からカセット装着部8に向けて略水平に突出している。カセット対向面122を基準とした係止片225の突出高さは、カセット対向面122を基準としたスイッチ端子222の突出高さよりも若干大きい。
係止片225は、先端側(図12の左側)に向けて厚みが漸減するように、下面の一部が水平方向に対して傾斜した傾斜部226を有する。係止片225は、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着された状態で、係止孔820(図3参照)と相対する高さ位置に設けられている。本実施形態では、係止片225は、カセット対向面122において、上下方向においては最上列のアーム検出スイッチ210より上方、左右方向においては最下列のアーム検出スイッチ210に重なる位置に配置されている。
図4および図13を参照して、後方検出スイッチ310の詳細について説明する。図4に示すように、後方支持部813には、5つの貫通孔814が前後方向に2列に並べて設けられている。具体的には、後側の列に4つ、前側の列に1つの配置である。これらの貫通孔814に対応して、4つの後方検出スイッチ310A〜310Dが右側(図13では左側)から順に後方支持部813の後端部に沿って1列に並び、且つ、左から2番目の後方検出スイッチ310Cの前側に、残る1つの後方検出スイッチ310Eが並んでいる。
図13に示すように、後方検出スイッチ310は、本体部316およびスイッチ端子317を備えている。本体部316は、後方支持部813の下方で垂直に設置された円筒体である。本体部316の下端は、本体カバー2の内部に設置されているスイッチ支持板315に固定されている。
スイッチ端子317は、本体部316の上端部に設けられた棒状体であり、貫通孔814を介して上下方向に進退可能である。スイッチ端子317は、本体部316の内部に設けられたバネ部材(図示せず)によって、常には本体部316から上方に伸出した状態に保持される。スイッチ端子317は、上方から押圧されていないときは本体部316から伸出した状態(オフ状態)になり、上方から押圧されているときに本体部316内に押し込まれた状態(オン状態)になる。
テープカセット30がカセット装着部8に装着されていない場合、後方検出スイッチ310はテープカセット30から離間しているため、全てがオフ状態となる。テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、後方検出スイッチ310は、後述の後方指標部900(図16参照)によって選択的に押圧される。テープ印字装置1は、後方検出スイッチ310のオン・オフの組合せに基づいて、テープカセット30のテープ種類を検出する。
図4を参照して、カセット装着部8に立設された各部材の位置関係について説明する。図4における二点鎖線は、平面視でテープ駆動軸100とガイド軸120とを結んだ仮想線である分割線Jを示している。テープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110、リボン巻取軸95、ヘッドホルダ74は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態で、ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65、巻取スプール支持孔68、ヘッド挿入部39と対応する位置にそれぞれ設けられている(図45参照)。
テープ駆動軸100は、カセット装着部8における左前方に位置する角部を含む領域P1に立設されている。領域P1は、カセット装着部8の前部中央に固設されたヘッドホルダ74の左側に位置している。言い換えると、領域P1は、テープ搬送方向におけるサーマルヘッド10の印字位置よりも下流側に位置している。ガイド軸120は、カセット装着部8における右後方に位置する角部を含む領域P2に立設されている。つまり、カセット装着部8を平面視した場合、領域P2に含まれる角部は、領域P1に含まれる角部の対角に位置している。
平面視、カセット装着部8を分割線Jで分割した場合に、分割線Jよりも後側を占めるのが領域P3であり、分割線Jよりも前側を占めるのが領域P4である。補助軸110は、領域P3に立設されており、詳細にはカセット装着部8の平面視中央よりも左後側に位置している。リボン巻取軸95は、領域P4に立設されており、詳細にはカセット装着部8の平面視中央よりも右前側に位置している。つまり、補助軸110およびリボン巻取軸95は、平面視で分割線Jを中心としてほぼ対称に位置している。
テープ駆動軸100の後側には、位置決めピン102が隣接して設けられている。ガイド軸120の前側には、位置決めピン103が隣接して設けられている。位置決めピン102,103は、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を、それぞれテープ駆動軸100およびガイド軸120の近傍で位置決めする。
図14を参照して、テープ印字装置1の電気的構成について説明する。図14に示すように、テープ印字装置1は、制御基板上に形成された制御回路部600を備えている。制御回路部600では、ROM602、CGROM603、RAM604、入出力インターフェース611が、データバス610を介してCPU601に接続されている。
ROM602には、CPU601がテープ印字装置1を制御するために実行する各種プログラムが記憶されている。カセット装着部8に装着されたテープカセット30のテープ種類を特定するためのテーブル(図40、図44参照)も、ROM602に記憶されている。CGROM603には、キャラクタを印字するための印字用ドットパターンデータが記憶されている。RAM604には、テキストメモリ、印字バッファ等、複数の記憶エリアが設けられている。
入出力インターフェース611には、アーム検出スイッチ210A〜210E、後方検出スイッチ310A〜310E、キーボード3、液晶駆動回路(LCDC)605、駆動回路606、607、608等が接続されている。駆動回路606は、サーマルヘッド10を駆動するための電子回路である。駆動回路607は、テープ駆動モータ23を駆動するための電子回路である。駆動回路608は、カッターモータ24を駆動するための電子回路である。カッターモータ24は、印字済テープ50を切断するために、移動刃19を前後方向に移動させる。LCDC605は、ディスプレイ5に表示データを出力するためのビデオRAM(図示外)を有する。
次に、図3、図5〜図8、図15〜図44を参照して、テープカセット30について説明する。説明の便宜上、図18、図19および図32では、上ケース311および下ケース312に分解されたカセットケース31が、内部に収納されるテープ類およびスプール類を取り除いて図示されている。ただし、図32では、フィルムテープ59、インクリボン60、およびこれらに関する部材が図示されている。図28では、分離部61近傍の構成のうち、フィルムテープ59、インクリボン60および規制部材361、362を仮想線で示している。図29では、上ケース311を取り除いたラミネートタイプのテープカセット30が図示されている。
テープカセット30の概略構成について説明する。テープカセット30は、内部に収納されるテープの種類、および、インクリボンの有無などを適宜変更することによって、前述のサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等に実装可能な汎用カセットである。
図3、図15〜図17に示すように、テープカセット30は、その筐体であるカセットケース31を備えている。カセットケース31は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)である。カセットケース31は、上ケース311および下ケース312を含む。下ケース312は、カセットケース31の底面302を形成する底板306(図20参照)を含む。上ケース311は、カセットケース31の上面301を形成する上板305(図22参照)を含み、下ケース312の上部に固定される。底面302から上面301までの距離を、テープカセット30またはカセットケース31の高さという。
本実施形態のカセットケース31は、上板305および底板306の周縁全体が側面を形成する周壁によって囲われているが、必ずしも全体が囲われている必要はない。例えば、周壁の一部(例えば背面)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上板305および底板306を接続するボスが設けられたりしてもよい。
カセットケース31は、テープカセット30のテープ種類にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された4つの角部321〜324を有する。以下では、左後方の角部を第1角部321、右後方の角部を第2角部322、右前方の角部を第3角部323、左前方の角部を第4角部324と呼ぶ。第1〜第3角部321〜323は、平面視で直角をなすようにカセットケース31の側面から外側方向に突出している。第4角部324は、排出案内部49が角に設けられているため、直角をなしていない。角部321〜324の下面は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、角支持部812に支持される部位である。
図16に示すように、第4角部324および第2角部322の下面の2箇所に、テープ印字装置1の位置決めピン102、103に対応するピン孔62、63が設けられている。具体的には、第4角部324の下面に設けられた凹部が、位置決めピン102が挿入されるピン孔62である。第2角部322の下面に設けられた凹部が、位置決めピン103が挿入されるピン孔63である。
図3および図17に示すように、カセットケース31の上下方向(つまり、上面301と底面302とが対向する高さ方向)において角部321〜324と同一の位置、且つ、同一の幅でカセットケース31の側面を全周に亘って取り巻く部位(角部321〜324を含む)を、共通部32という。詳細には、共通部32は、カセットケース31の上下方向における中心線Nに関して、上下方向に対称の幅を有する部位である(図39参照)。テープカセット30の高さは、カセットケース31に収納されるテープの幅に応じて異なっている。一方、共通部32の幅(上下方向の長さ)Tは、カセットケース31に収納されるテープの幅にかかわらず、同一寸法に設定されている。
具体的には、テープカセット30のテープ幅が大きくなると(例えば、18mm、24mm、36mm)、それに応じてカセットケース31の高さも大きくなる。一方、共通部32の幅T(図39参照)は、テープ幅に関係なく、例えば12mmで一定である。なお、テープ幅が共通部32の幅T以下である場合(例えば、6mm、12mm)、カセットケース31の高さ(つまり、幅)は、共通部32の幅Tに所定幅を加えた大きさで一定である。この場合、カセットケース31の高さは最も小さくなる。
カセットケース31には、カセットケース31内に装着されるスプール類を回転可能に支持するための4つの支持孔65〜68が複数設けられている。以下では、カセットケース31の左側後部、右側後部、右側前部に設けられた孔部を、それぞれ、第1テープ支持孔65、第2テープ支持孔66、リボン支持孔67と呼ぶ。平面視で第1テープ支持孔65とリボン支持孔67との間に設けられた孔部を、巻取スプール支持孔68と呼ぶ。
第1テープ支持孔65は、第1テープスプール40(図5参照)を回転可能に支持する。第2テープ支持孔66は、第2テープスプール41(図5参照)を回転可能に支持する。リボン支持孔67は、リボンスプール42(図5参照)を回転可能に支持する。巻取スプール支持孔68は、リボン巻取スプール44(図5参照)を回転可能に支持する。リボン巻取スプール44の下部には、クラッチバネ340(図16参照)が取り付けられている。クラッチバネ340は、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するコイルバネである。
図5〜図8に示すように、カセットケース31内には、第1テープ領域400、第2テープ領域410、第1リボン領域420および第2リボン領域440が設けられている。第1テープ領域400および第2テープ領域410は、それぞれテープを収納可能な領域である。第1リボン領域420は、未使用のインクリボン60を収納可能な領域である。第2リボン領域440は、印字に使用された後のインクリボン60(以下、使用済みのインクリボン60)を収納可能な領域である。テープおよびインクリボン60は、各々の幅方向がテープカセット30の上下方向と平行となるように、カセットケース31内で収納および搬送される。
第1テープ領域400は、第1角部321に隣接した、カセットケース31内の左半分をほぼ占める平面視略円形の領域である。第2テープ領域410は、第2角部322に隣接した、カセットケース31内の右後部に設けられた平面視略円形の領域である。第1リボン領域420は、第3角部323およびヘッド挿入部39に隣接した、カセットケース31内の右前部に設けられた領域である。第2リボン領域440は、カセットケース31内で第1テープ領域400と第1リボン領域420との間に設けられた領域である。支持孔65〜68は、平面視で、それぞれ第1テープ領域400、第2テープ領域410、第1リボン領域420、第2リボン領域440の略中央部に設けられている。
図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30では、カセットケース31内に、両面粘着テープ58、フィルムテープ59、およびインクリボン60の3種類のロール体が収納される。両面粘着テープ58は、両面に接着剤が塗布され、且つ一面に剥離紙が貼着されたテープである。フィルムテープ59は、インクリボン60を用いた印字が施される印字面を有する透明なテープである。インクリボン60は、インクが一面に塗布されたインク面を有する。
第1テープ領域400には、剥離紙を外側に向けて第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58が収納される。第2テープ領域410には、印字面を内側に向けて第2テープスプール41に巻回されたフィルムテープ59が収納される。第1リボン領域420には、インク面を内側に向けてリボンスプール42に巻回された未使用のインクリボン60が収納される。第2リボン領域440には、リボン巻取スプール44に巻き取られた使用済みのインクリボン60が収納される。
ラミネートタイプのテープカセット30では、フィルムテープ59の引き出しに伴って、第2テープスプール41が平面視で時計回り方向に回転する。第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59は、カセットケース31の右前隅部(図5および図6では右下隅部)に向けて搬送される。カセットケース31の右前隅部では、リボンスプール42に巻回されているインクリボン60の外周に沿って、且つ、インクリボン60に対して間隔を置いて、フィルムテープ59が搬送される。これにより、搬送中のフィルムテープ59と、リボンスプール42に巻回されているインクリボン60との接触が抑制されるため、フィルムテープ59を安定的に搬送できる。
インクリボン60の引き出しに伴って、リボンスプール42が平面視で反時計回り方向に回転する。リボンスプール42から引き出されたインクリボン60は、搬送ピン531に向けて搬送される。両面粘着テープ58の引き出しに伴って、第1テープスプール40が平面視で反時計回り方向に回転する。第1テープスプール40から引き出された両面粘着テープ58は、カセットケース31の左前隅部(図5および図6では左下隅部)に設けられたテープ駆動ローラ46に向けて搬送される。
図7に示すレセプタタイプのテープカセット30では、印字テープ57およびインクリボン60の2種類のロール体が、カセットケース31内に収納される。印字テープ57は、インクリボン60を用いた印字が施される印字面を有し、且つ、印字面とは反対側の面に剥離紙が貼着された片面テープである。第1テープ領域400には、剥離紙を外側に向けて第1テープスプール40に巻回された印字テープ57が収納される。第1リボン領域420には、リボンスプール42に巻回された未使用のインクリボン60が収納される。第2リボン領域440には、リボン巻取スプール44に巻き取られた使用済みのインクリボン60が収納される。第2テープ領域410には何も収納されないため、第2テープスプール41は設けられていない。
レセプタタイプのテープカセット30では、印字テープ57の引き出しに伴って、第1テープスプール40が平面視で時計回り方向に回転する。第1テープスプール40から引き出された印字テープ57は、カセットケース31の右前隅部に向けて搬送される。インクリボン60の引き出しに伴って、リボンスプール42が平面視で反時計回り方向に回転する。リボンスプール42から引き出されたインクリボン60は、搬送ピン531に向けて搬送される。
図8に示すサーマルタイプのテープカセット30では、感熱紙テープ55の1種類のロール体が、カセットケース31内に収納される。感熱紙テープ55は、感熱方式で印字が施される印字面を有し、且つ、印字面とは反対側の面に剥離紙が貼着された片面テープである。第1テープ領域400には、剥離紙を外側に向けて第1テープスプール40に巻回された感熱紙テープ55が収納される。第2テープ領域410、第1リボン領域420、および第2リボン領域440には何も収納されないため、第2テープスプール41、リボンスプール42、およびリボン巻取スプール44は設けられていない。
サーマルタイプのテープカセット30では、感熱紙テープ55の引き出しに伴って、第1テープスプール40が平面視で時計回り方向に回転する。第1テープスプール40から引き出された感熱紙テープ55は、カセットケース31の右前隅部に向けて搬送される。
図5〜図8に示すように、カセットケース31の右前隅部、すなわち第1リボン領域420の右前側には、屈曲部533が立設されている。屈曲部533は、屈曲部533を経由するテープの搬送経路を、第1リボン領域420の外周に沿って鋭角状に屈曲させるピンである。カセットケース31の左前隅部に向けて搬送されたテープは、屈曲部533を経由してカセットケース31の左前隅部に向けて搬送され、後述のアーム部34内に案内される。
屈曲部533は、円筒状の回転体であるコロ部材535の軸孔に挿入されている。屈曲部533は、コロ部材535を回転可能に支持する。コロ部材535は、屈曲部533を経由するテープに接触して回転する。コロ部材535の回転によって、屈曲部533を経由するテープは、カセットケース31の左前隅部に向けて円滑に送り出される。
搬送ピン531は、第1リボン領域420の左側、且つ、第1円筒部材881B(図18参照)の右前部に設けられている。搬送ピン531は、インクリボン60の搬送経路をアーム部34の内部に向けて屈曲させるピンである。リボンスプール42から引き出されたインクリボン60は、搬送ピン531を経由して、アーム部34内に案内される。
第1リボン領域420の右側には、底板306から立設された規制リブ532が設けられている。言い換えると、規制リブ532は、屈曲部533よりもテープの搬送方向上流側に設けられた板状部材である。規制リブ532は、カセットケース31の右側面から左方向に延び、且つ、左端部がテープの搬送経路の近傍に位置している。規制リブ532は、搬送中のテープには接触しない一方、裏面(印字面とは反対側の面)側へ移動しようとするテープに接触する。つまり、規制リブ532は、第1リボン領域420の近傍でテープが広がるのを規制する。
図3および図17に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で略半円状の溝部である半円溝84が設けられている。半円溝84は、カセットケース31の上下方向に亘って設けられている。半円溝84は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、プラテンホルダ12の軸支部121がカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。
カセットケース31の前面壁のうち、半円溝84から左に延びる部分は、アーム前面壁35である。アーム前面壁35から後方へ離間した位置に上下方向に亘って設けられた壁部は、アーム背面壁37である。アーム前面壁35およびアーム背面壁37とで前後に規定される、テープカセット30の右前部から左方に延びる部位が、アーム部34である。
アーム前面壁35の左端部は、後方へ向かって屈曲している。アーム前面壁35とアーム背面壁37の左端部との間で上下方向に延びる隙間が、排出口341である。排出口341は、アーム部34からテープ(およびインクリボン60)を排出する。アーム前面壁35のうちで排出口341に隣接する左端部が、アーム先端部85である。アーム先端部85のうちで上ケース311および下ケース312が接離される部分が、接離部86である。アーム前面壁35には、アーム指標部800および係止孔820が設けられているが、詳細は後述する。
図5〜図8に示すように、アーム部34内では、第1テープスプール40または第2テープスプール41から引き出されたテープが、アーム前面壁35と略平行に延びる搬送経路に沿って案内され、排出口341から排出される。リボンスプール42から引き出されたインクリボン60は、アーム部34内でテープとは異なる搬送経路に沿って案内され、排出口341から排出される。ただし、ラミネートタイプのテープカセット30では、アーム部34内を案内されたフィルムテープ59およびインクリボン60が、排出口341で重ね合わされて排出される。レセプタタイプのテープカセット30では、アーム部34内を案内された印字テープ57およびインクリボン60が、排出口341で重ね合わされて排出される。
アーム背面壁37の右端部から後方に延び、且つ、アーム背面壁37と平行に延びる周壁は、ヘッド周壁36である。アーム背面壁37とヘッド周壁36とによって規定される、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面側に設けられた露出部77を介して、テープカセット30の前面側でも外部とつながっている。ヘッド挿入部39には、サーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入される。
露出部77では、排出口341から排出されたテープの一面(裏面)が前方に露出し、且つ他面(印字面)がサーマルヘッド10に対向する。サーマルヘッド10は、露出部77に位置するテープに印字を行う。ただし、ラミネートタイプのテープカセット30では、露出部77に排出されたフィルムテープ59の印字面が、インクリボン60を挟んでサーマルヘッド10に対向する。レセプタタイプのテープカセット30では、露出部77に排出された印字テープ57の印字面が、インクリボン60を挟んでサーマルヘッド10に対向する。サーマルヘッド10は、露出部77に位置する印字テープ57またはフィルムテープ59にインクリボン60を用いた印字を行う。
図5〜図8および図17に示すように、ヘッド挿入部39の左側には、分離部61が設けられている。分離部61は、露出部77のテープ搬送方向下流側で、印字に使用されたテープおよびインクリボン60を分離する部位である。分離部61は、規制部材361、362、リボン案内壁38、隔離壁43などを含む。
規制部材361、362は、印字が施されたテープを排出案内部49に向かって案内する、上下一対の板状体である。リボン案内壁38は、使用済みのインクリボン60をリボン巻取スプール44に向かって案内する壁部である。隔離壁43は、ラミネートタイプのテープカセット30において、リボン案内壁38に沿って案内される使用済みのインクリボン60と、テープ駆動ローラ46に向けて引き出される両面粘着テープ58とが接触するのを防ぐ壁部である。
リボン案内壁38とリボン巻取スプール44との間には、隔離壁48が設けられている。隔離壁48は、第1テープ領域400の前側に設けられ、且つ、第1テープ領域400の外周縁の一部に沿って設けられている。隔離壁48は、リボン案内壁38からリボン巻取スプール44に向けて案内される使用済みのインクリボン60と、第1テープスプール40に巻回されている両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止する壁部である。
分離部61の左側(つまり、テープ搬送方向の下流側)には、ローラ支持孔64が設けられている。ローラ支持孔64の内側には、テープ駆動ローラ46が回転可能に軸支されている。図5および図6に示すように、ラミネートタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第2テープスプール41からフィルムテープ59が引き出され、且つ、第1テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。
印字後のフィルムテープ59は、規制部材361、362によってテープ搬送方向の下流側に案内される。印字後のフィルムテープ59がテープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間を経由するときに、両面粘着テープ58がフィルムテープ59の印字面に接着される。接着後のフィルムテープ59、すなわち印字済テープ50は、排出案内部49に向かって搬送される。
図7に示すように、レセプタタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から印字テープ57が引き出される。印字後の印字テープ57、すなわち印字済テープ50は、規制部材361、362によってテープ搬送方向の下流側に案内され、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間を経由して排出案内部49に向かって搬送される。
図8に示すように、サーマルタイプのテープカセット30が装着されている場合は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から感熱紙テープ55が引き出される。印字後の感熱紙テープ55、すなわち印字済テープ50は、規制部材361、362によってテープ搬送方向の下流側に案内され、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間を経由して排出案内部49に向かって搬送される。
図5〜図8に示すように、排出案内部49は、カセットケース31の左側面の前端部から僅かに前方に離間して設けられた、上面301と底面302に亘る板状部材である。排出案内部49は、テープ駆動ローラ46を経由して搬送されてきた印字済テープ50を、カセットケース31の左側面の前端部との間に形成される通路内に案内する。印字済テープ50は、この通路の終端からテープカセット30の外部に排出される。
カセットケース31の右後部には、テープカセット30の着脱時にガイド軸120が挿脱されるガイド孔47が設けられている。本実施形態のガイド孔47の開口形状は、平面視で分割線K(図15参照)と平行な両辺が直線状であり、且つ、分割線Kに略直交する両辺がガイド孔47の開口中心からの距離が一定となるような曲線状である。言い換えると、ガイド孔47は、分割線Kと直交する方向に開口幅が小さく、且つ、分割線Kに沿って延びる長孔である。
ガイド孔47の開口幅は、平面視でガイド孔47の開口中心を通る全ての方向について、ガイド軸120の小径軸部120B(図45参照)の直径よりも大きい。ただし、ガイド孔47は、平面視でガイド孔47の開口中心を通る分割線Kにおける開口幅が最も大きい。ガイド孔47は、平面視でガイド孔47の開口中心を通り、且つ、分割線Kと直交する線(図15に示す仮想線G)における開口幅が最も小さい。仮想線Gにおけるガイド孔47の開口幅は、ガイド軸120の大径軸部120A(図45参照)の直径と略等しい。
図16、図18および図19に示すように、カセットケース31の後部における左右方向の略中央位置には、後方凹部360が設けられている。後方凹部360は、底板306の一部を底面302よりも上方に向けて凹ませた凹部である。言い換えると、後方凹部360は、第1テープ領域400と第2テープ領域410とカセットケース31の背面との間に形成された段差部である。
後方凹部360は、底面302より上方に位置する平面状の壁部(凹部の底部分)である後方段差壁360Aを有する。後方段差壁360Aは、後方支持部813(図3参照)と略対応する形状、すなわち底面視で略三角形状を有する。後方段差壁360Aは、共通部32の下端部と同じ高さ位置に形成されている。そのため、カセットケース31の中心線Nから後方段差壁360Aまでの距離は、共通部32と同様に、テープカセット30のテープ種類にかかわらず一定である。後方段差壁360Aには、後述の後方指標部900が設けられている。
図15〜図28を参照して、上ケース311および下ケース312の詳細な構造について説明する。特に、上ケース311と下ケース312とを連結するための構造と、テープおよびインクリボン60の幅方向位置を規制するための構造とを、上ケース311と下ケース312とに分けて説明する。
図16〜図21、図27および図28を参照して、下ケース312の構造について説明する。図18および図19に示すように、下ケース312の外形は、底板306と下周壁304とで形成されている。下周壁304は、底面302の外縁に沿って、底板306から所定の高さで上方へ延びる側壁である。下周壁304のうち、アーム前面壁35の下側部分を構成する壁部は、下アーム前面壁35Bである。下アーム前面壁35Bから後方へ離間して底板306から立設された壁部は、アーム背面壁37の下側部分を構成する下アーム背面壁37Bである。下アーム背面壁37Bに連続して延びる周壁は、ヘッド周壁36の下側部分を構成する下ヘッド周壁36Bである。
下ケース312におけるヘッド挿入部39周辺の詳細な構成について、説明する。図16および図20に示すように、下ケース312のヘッド挿入部39の外周上には、第1受け部391および第2受け部392が設けられている。言い換えると、第1、第2受け部391、392は、ヘッド挿入部39を臨む位置に設けられている。第1、第2受け部391、392は、カセット装着部8に装着されるテープカセット30の上下方向の位置決めに使用される。
具体的には、サーマルヘッド10(図5参照)の挿入位置(詳細には、印字位置)を基準として、テープ搬送方向の上流側および下流側の2箇所に、第1受け部391および第2受け部392が設けられている。第1受け部391は、アーム部34のテープ搬送方向上流側の端部、およびヘッド挿入部39の上流側端部に連接している。第2受け部392は、ヘッド挿入部39の下流側端部に連接している。
第1、第2受け部391、392は、いずれも底板306の一部を底面302よりも上方に向かって凹ませた凹部である。さらに、第1受け部391は、アーム前面壁35に沿った方向にヘッド挿入部39から凹んでいる。第2受け部392は、アーム前面壁35とは直交する方向にヘッド挿入部39から凹んでいる。つまり、第1受け部391と第2受け部392とは、互いに直交する方向でヘッド挿入部39を臨んでいる。
第1、第2受け部391、392は、それぞれ、第1下側平面部391Bおよび第2下側平面部392Bを有する。第1、第2下側平面部391B、392Bは、底面302より上方に位置する底面視略長方形状の平面部(凹部の底部分)の下側の面である。
下ケース312における第1、第2下側平面部391B、392Bの高さ位置(つまり、上下方向位置)と、カセットケース31に収納されるテープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とは、テープカセット30のテープ種類にかかわらず、つまりテープカセット30の上下方向の高さが異なっていても一定である。よって、テープカセット30に収納されるテープおよびインクリボン60の幅がより大きいほど、第1下側平面部391Bの高さ位置を基準とした第1受け部391の深さは大きくなり、且つ、第2下側平面部392Bの高さ位置を基準とした第2受け部392の深さは大きくなる。
本実施形態では、第1、第2下側平面部391B、392Bは、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置から上下方向に同一の距離だけ離れた位置にある。つまり、第1、第2下側平面部391B、392Bは、下ケース312において同一の高さ位置にある。なお、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置と、カセットケース31の上下方向中心位置とは一致している。
第1、第2下側平面部391B、392Bは、それぞれ、下ケース312における基準面である。基準面とは、ある部位の寸法設定や寸法測定の際に基準として用いられる面である。本実施形態では、第1、第2下側平面部391B、392Bは、テープおよびインクリボン60の幅方向への移動を規制する各種規制部に対する基準面である。また、第1、第2下側平面部391B、392Bは、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、それぞれ、第1、第2支持部741、742(図5参照)によって下方から支持される部位としても機能する。
図16および図20に示すように、下ケース312のヘッド挿入部39の外周上(つまり、ヘッド挿入部39を臨む位置)には、係止部397が設けられている。詳細には、係止部397は、下ヘッド周壁36Bの左右方向のほぼ中心位置に設けられ、下アーム背面壁37Bと前後方向に対向している。係止部397は、下ヘッド周壁36Bの底面302から所定高さより上の一部分を切り欠くことによって形成されている。係止部397(切り欠かれた下ヘッド周壁36Bの上端)は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、カセットフック75の爪部752(図49参照)が係止される。
下ケース312におけるアーム部34近傍を構成する部分の詳細について、説明する。図17〜図20に示すように、下ケース312におけるアーム部34の構成部分は、下アーム前面壁35B、下アーム背面壁37B、および分離壁33を含む。分離壁33は、下アーム前面壁35Bと下アーム背面壁37Bとの間に設けられた、底板306から上方に延びる壁部である。下アーム前面壁35Bにおける左端部の近傍には、金型孔850が設けられている。金型孔850は、下アーム前面壁35Bの上部から正面視縦長長方形状に切り欠かれた部位である。金型孔850は、下ケース312を成形する際に使用される金型の逃がし孔であり、下ケース312に上ケース311が組み付けられるとアーム前面壁35に貫通孔を形成する。
分離壁33は、アーム部34の3つの壁部(下アーム前面壁35B、下アーム背面壁37B、分離壁33)のうちで最も高く形成されている。分離壁33の高さは、カセットケース31に収納されるテープの幅より僅かに大きい。下アーム前面壁35Bのうち、金型孔850の左側部分は分離壁33の半分程度の高さを有し、金型孔850の右側部分は分離壁33の三分の二程度の高さを有する。下アーム背面壁37Bは、分離壁33より僅かに低く、インクリボン60の幅とほぼ同一の高さを有する。分離壁33の平面視円柱状の右端部は、アーム部34のほぼ中央に位置する。分離壁33の左端は、下ケース312の前後方向において、下アーム前面壁35Bに設けられた金型孔850に対向する位置にある。
図17および図18に示すように、下アーム前面壁35Bにおける金型孔850の左側部分は、アーム先端部85の下側部分を構成する下先端部85Bである。下先端部85Bの上端が、接離部86の下側部分を構成する下接離部86Bである。下ケース312において下アーム前面壁35Bの右側に形成された溝部が、半円溝84の下側部分を構成する下半円溝84Bである。
下先端部85Bには、上下方向に延びる先端孔部687が設けられている。先端孔部687は、テープカセット30の底板306に貫通する孔であり、平面視で円形に形成されている。先端孔部687は、テープカセット30の底板306を貫通しない凹状の孔に形成してもよい。先端孔部687の上部は、上端部の開口径が最大となるように、上方に向かって徐々に広くなっている。
図20に示すように、下ケース312におけるアーム部34の構成部分では、下アーム前面壁35Bと分離壁33との間に、テープの搬送経路が形成される。分離壁33と下アーム背面壁37Bとの間に、インクリボン60の搬送経路が形成される。これらの搬送経路上には、テープやインクリボン60の幅方向(つまり、上下方向)の移動を規制する規制片が設けられている。
テープの搬送経路に関しては、分離壁33の左端部および右端部の下端に、それぞれ、テープの下方向への移動を規制する第1テープ下規制部381B、382Bが設けられている。第1テープ下規制部381B、382Bは、それぞれ、底板306の上面から上方へ僅かに突出し、且つ、前方に向かって下アーム前面壁35Bまで延びている。分離壁33の左端部の上端には、テープの上方向への移動を規制する分離壁規制部383が設けられている。分離壁規制部383は、分離壁33の上端から前方に向かって突出する突出片である。第1テープ下規制部381B、382Bと、分離壁規制部383との上下方向の距離は、テープの幅と同一である。
図18および図27を参照して、分離壁33の左端部の詳細な構成について説明する。図27に示すように、分離壁33の左端部における上端および下端には、それぞれ、分離壁規制部383および第1テープ下規制部381Bが設けられている。分離壁規制部383と第1テープ下規制部381Bとの間に、第1印字面側規制部389が設けられている。第1印字面側規制部389は、平面視で左右方向の中央部が僅かに盛り上がるような膨らみ部である。さらに、第1印字面側規制部389は、側面視で上下方向の中心部が僅かに前方(図27では右側)に突出する凸レンズのような形状を有する。つまり、第1印字面側規制部389の規制面389Aは、左右方向においても上下方向においても、中心部が周辺部よりも僅かに盛り上がっている。
図18に示すように、分離壁規制部383は、下アーム前面壁35Bよりも高い位置に設けられている。第1テープ下規制部381Bは、金型孔850の背後に設けられている。分離壁規制部383および第1テープ下規制部381Bは、下ケース312に上ケース311が組み付けられる前の状態で、下アーム前面壁35Bの前方に露出する。さらに、分離壁33の左端部、つまり分離壁規制部383および第1テープ下規制部381Bは、正面視で後述のアーム指標部800と隣接している(図25参照)。したがって、分離壁規制部383および第1テープ下規制部381Bと、アーム指標部800とを、人が下ケース312の前方から同時に目視可能である。
図20に示すように、インクリボン60の搬送経路に関しては、分離壁33の右端部の下端に、第1リボン下規制部387Bが設けられている。第1リボン下規制部387Bは、インクリボン60の下方向への移動を規制する。第1リボン下規制部387Bは、底板306の上面から上方へ僅かに突出し、且つ、分離壁33の右端部から後方に向かって下アーム背面壁37Bまで延びている。
第1テープ下規制部381B、382B、分離壁規制部383、および第1リボン下規制部387Bは、それぞれ、第1、第2下側平面部391B、392Bを基準面として、下ケース312における高さ位置が設定されている。
詳細には、第1テープ下規制部381B、382Bの突出端(上端)と、第1、第2下側平面部391B、392Bとの上下方向の距離は、テープの幅に応じて設定されている。分離壁規制部383の下端と、第1、第2下側平面部391B、392Bとの上下方向の距離は、テープの幅に応じて設定されている。第1リボン下規制部387Bの突出端(上端)と、第1、第2下側平面部391B、392Bとの上下方向の距離は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。先述のように、第1、第2下側平面部391B、392Bは、それぞれ、ヘッド挿入部39の上流側端部および下流側端部の近傍に設けられている。したがって、アーム部34内に設けられた各規制部は、基準面である第1、第2下側平面部391B、392Bと近接している。
従来では、規制部の寸法設定や、製造後の寸法測定を行う際に使用されていた基準位置(例えば、ピン孔62、63の底部)は、規制部とは離れた位置にあったため、両者を成形する金型の駒が異なる場合があった。この場合、基準位置の駒が遠くなるほど、製造されたテープカセット30の規制部の寸法誤差が大きくなるおそれがあった。また、同一の駒で形成できたとしても、基準位置と規制部とが離れた位置にある場合には、測定誤差が発生して寸法精度が低くなるおそれがあった。そのため、従来のテープカセットの製造工程では、規制部の寸法設定や製造後の寸法測定などを、作業者が厳密に行っていた。
本実施形態のように、規制部と基準面の距離をより近くすれば、測定誤差が少なくなるとともに、両者を同じ駒で成形できる可能性が高くなる。その結果、各規制部の高さ位置を正確に規定でき、ひいてはテープおよびインクリボン60の搬送精度を向上させることができる。アーム部34は、サーマルヘッド10(図5参照)によって印字が行われる位置(具体的には、露出部77)の上流側近傍にある。そのため、アーム部34内のテープおよびインクリボン60の搬送精度の向上に伴って、サーマルヘッド10の印字精度も向上させることができる。さらに、上記のように規制部の寸法設定などを作業者が厳密に行う負担が軽減される。
下ケース312の製造後には、第1、第2下側平面部391B、392Bを基準として、各規制部の寸法管理を容易に行うことができる。例えば、下ケース312の検品時には、基準面である第1、第2下側平面部391B、392Bを治具の載置面に載置して、各規制部の寸法測定が行われる。この際、各規制部と基準面との距離が近いので、検査員は正確に寸法を測定できる。
第1、第2下側平面部391B、392Bは、カセットケース31に収納されたテープおよびインクリボン60の幅方向中心位置から上下方向に一定の距離をおいて設けられている。したがって、第1、第2下側平面部391B、392Bの上下方向位置に対するテープおよびインクリボン60の上下方向位置がより明確になる。その結果、テープおよびインクリボン60の搬送精度をさらに向上させることができる。
本実施形態では、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置と、第1、第2下側平面部391B、392Bと上下方向の距離は、テープおよびインクリボン60の幅によらず一定である。したがって、収納されるテープおよびインクリボン60の幅が異なる複数種類のテープカセット30について、第1、第2下側平面部391B、392Bの高さ位置を統一的な基準で定めることができる。その結果、カセットケース31の寸法測定や部品管理を容易にすることができる。
アーム部34内の各規制部は、下ケース312の左右方向において第1、第2下側平面部391B、392Bの間にあり、いずれの基準面にも近接している。つまり、いずれかの基準面を用いて寸法設定や寸法測定を行うこともできるし、両方の基準面を用いて行うこともできる。両方の基準面を用いることにより、各規制部を製造する際の寸法精度をさらに高めることができる。したがって、テープおよびインクリボン60の搬送精度をさらに向上させることができる。加えて、下ケース312の製造後には、各規制部の寸法管理をさらに正確且つ容易に行うことができる。
さらに、アーム部34内では、テープが幅方向に規制されるのみならず、第1印字面側規制部389によって印字面側への移動が規制される。第1印字面側規制部389は左右方向の中心部が前方に突出しているので、アーム部34内で搬送されるテープはヘッド挿入部39側に屈曲される。第1印字面側規制部389は上下方向の中心部が前方に突出しているので、テープの張力が幅方向の中心部に集中する。その結果、アーム部34内で搬送されるテープにバックテンションが付与されるため、テープの走行を安定させることができる。
図20に示すように、テープ搬送方向においてアーム部34よりもさらに上流側の第3角部323近傍には、屈曲部533が設けられている。屈曲部533の下端には、規制部384Bが設けられている。規制部384Bは、第1テープ下規制部381B、382Bと同様にテープの下方向への移動を規制する。よって、第1テープ下規制部381B、382Bと同様に、隣接する第1下側平面部391Bを基準面として、規制部384Bの寸法設定や寸法管理を行ってもよい。
下ケース312における分離部61近傍を構成する部分の詳細について、説明する。図18〜図20および図28に示すように、下ヘッド周壁36Bのうち、ヘッド挿入部39の左側で前後方向に延びる壁部が、リボン案内壁38である。言い換えると、リボン案内壁38は、ヘッド挿入部39におけるテープ搬送方向の下流側端部を規定する壁部である。リボン案内壁38は、平面視で第2受け部392の左側に隣接している。
リボン案内壁38の左側、且つ、後述の開口部64Bの右側には、隔離壁43が立設されている。隔離壁43は、平面視で開口部64Bの一部に沿って、カセットケース31の前後方向に緩やかな弧を描くように設けられている。隔離壁43の開口部64B側の面は、両面粘着テープ58が接着するのを防ぐために、平面視でのこぎりの歯状に形成されている。リボン案内壁38の左前方、且つ、隔離壁43の前方には、底板306から上方に延びる規制部材362が設けられている。
先述のように、アーム部34から排出されたテープおよびインクリボン60は、露出部77を経由して分離部61内に案内される。リボン案内壁38と規制部材362との間に形成される縦長の隙間が、導入口61Aの下側部分として機能する。導入口61Aは、露出部77と連通する、テープおよびインクリボン60の搬送経路の一部である。導入口61Aは、印字済みのテープおよび使用済みのインクリボン60を分離部61内に案内する。
隔離壁43と規制部材362との間に形成される縦長の隙間は、テープ案内口61Bの下側部分として機能する。テープ案内口61Bは、導入口61Aの下流側に連続して設けられた、テープ搬送経路の一部である。テープ案内口61Bは、印字済みのテープをテープ駆動ローラ46(図5参照)の前方に向けて案内する。
リボン案内壁38および隔離壁43の間に形成される縦長の隙間は、リボン案内口61Cとして機能する。リボン案内口61Cは、導入口61Aの下流側に連続して設けられた、インクリボン60の搬送経路の一部である。リボン案内口61Cは、使用済みのインクリボン60を第2リボン領域440(図5参照)に向けて案内する。
導入口61Aおよびリボン案内口61Cの下端部では、底板306の上面が凹凸のない連続した平面を形成している。一方、隔離壁43の基部と規制部材362の基部とに亘って、底板306の上面から上方へ僅かに突出した第2テープ下規制部363Bが設けられている。そのため、テープ案内口61Bの下端部(つまり、第2テープ下規制部363Bの突出端)は、導入口61Aの下端部(つまり、底板306の上面)よりも上方に位置している。言い換えると、第2テープ下規制部363Bは、テープ案内口61Bの下端部が導入口61Aの下端部よりも高くなるような段差を形成している。
第2テープ下規制部363Bは、テープ案内口61Bを経由するテープの下方向への移動を規制する。さらに、第2テープ下規制部363Bは、分離部61内で印字済みのテープから使用済みのインクリボン60を剥がすための分離リブとして機能する。
隔離壁43の前端部の上端には、前方へ突出する突出片である隔離壁規制部364が設けられている。隔離壁規制部364は、テープ案内口61Bを経由するテープの上方向への移動を規制する。隔離壁規制部364の上部には、上方に突出するピンである突起部398が設けられている。第2テープ下規制部363Bと隔離壁規制部364との上下方向の距離は、テープの幅と同一である。
隔離壁43の前端面には、第2印字面側規制部43A、43Bが設けられている。第2印字面側規制部43Aは、隔離壁規制部364の下部に設けられた、隔離壁43の前端面から若干前方に突出した段差部である。第2印字面側規制部43Bは、隔離壁43の基部に設けられた、隔離壁43の前端面から若干前方に突出した段差部である。
第2テープ下規制部363Bおよび隔離壁規制部364は、それぞれ隣接する第2下側平面部392Bを基準面として、下ケース312における高さ位置が設定されている。詳細には、第2テープ下規制部363Bの突出端(上端)と第2下側平面部392Bとの上下方向の距離、および隔離壁規制部364の下端と第2下側平面部392Bとの上下方向の距離は、テープの幅に応じて設定されている。したがって、第2下側平面部392Bを基準面として、第2テープ下規制部363Bおよび隔離壁規制部364を製造する際の寸法精度を高めることができる。下ケース312の製造後には、第2テープ下規制部363Bおよび隔離壁規制部364の寸法管理を容易に行うことができる。
本実施形態では、第2テープ下規制部363Bおよび隔離壁規制部364は、テープ駆動ローラ46の近傍に設けられる。分離部61内では、これらの規制部によって、テープが幅方向に位置決めされる。したがって、分離部61からテープ駆動ローラ46に対して、テープの幅方向中心線に対して平行に精度よくテープを搬送できる。
さらに、分離部61内では、テープが幅方向に規制されるのみならず、第2印字面側規制部43A、43Bによって印字面側への移動が規制される。第2印字面側規制部43A、43Bは前方に突出しているので、テープ案内口61Bを経由するテープはテープ駆動ローラ46側に屈曲される。その結果、テープ案内口61Bを経由するテープにバックテンションが付与されるため、テープの走行を安定させることができる。
下ケース312における第1角部321、第2角部322、およびテープおよびインクリボン60の収納領域を構成する部分の詳細について説明する。図16、図18〜図20に示すように、下ケース312は、第1角部321の下面である第3下側平面部321B、および第2角部322の下面である第4下側平面部322Bを含む。第3下側平面部321Bおよび第4下側平面部322Bは、いずれも底面302よりも上方に位置する平面部である。
下ケース312における第3、第4下側平面部321B、322Bの高さ位置と、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とは、テープカセット30のテープ種類にかかわらず一定である。よって、テープカセット30に収納されるテープおよびインクリボン60の幅がより大きいほど、底面302から第3、第4下側平面部321B、322Bまでの距離は大きくなる。
本実施形態では、第3、第4下側平面部321B、322Bは、第1、第2下側平面部391B、392Bと同様に、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置から上下方向に同一の距離だけ離れた位置にある。つまり、第1〜第4下側平面部391B、392B、321B、322Bは、下ケース312において全て同一の高さ位置にある。第3、第4下側平面部321B、322Bは、テープおよびインクリボン60の下方向への移動を規制する規制部に対する基準面として用いられる。
図18〜図20に示すように、下ケース312は、第1下テープ領域400B、第2下テープ領域410B、第1下リボン領域420B、および第2下リボン領域440Bを含む。第1下テープ領域400Bは、第1テープ領域400の下側部分を構成する。第2下テープ領域410Bは、第2テープ領域410の下側部分を構成する。第1下リボン領域420Bは、第1リボン領域420の下側部分を構成する。第2下リボン領域440Bは、第2リボン領域440の下側部分を構成する。
図20に示すように、第1下テープ領域400Bには、底板306の上面から僅かに上方に突出する突出部が設けられている。詳細には、第1テープスプール40(図5参照)が配置される第1下テープ領域400Bの中心位置に、環状の突出部が設けられている。この環状の突出部から放射状に、3本の線状の突出部が第1下テープ領域400Bの周縁まで延びている。これらの突出部が、第3テープ下規制部401Bである。第3テープ下規制部401Bは、第1テープ領域400に収納されているテープ(図5〜図8参照)の下方向への移動を規制する。
第3テープ下規制部401Bは、隣接する第3下側平面部321Bを基準面として、下ケース312における高さ位置が設定されている。詳細には、第3テープ下規制部401Bの突出端(上端)と、第3下側平面部321Bとの上下方向の距離は、テープ幅に応じて設定されている。したがって、第3下側平面部321Bを基準面として、第3テープ下規制部401Bを製造する際の寸法精度を高めることができる。下ケース312の製造後には、第3テープ下規制部401Bの寸法管理を容易に行うことができる。
リボン案内壁38の後端部には、第2リボン下規制部388Bが設けられている。第2リボン下規制部388Bは、分離部61から第2リボン領域440へ搬送されるインクリボン60の下方向への移動を規制する。第2リボン下規制部388Bは、底板306の上面から上方へ僅かに突出しており、且つ、後方に向かって第1下テープ領域400Bの手前まで延びている。
第2リボン下規制部388Bは、隣接する第2下側平面部392Bを基準面として、下ケース312における高さ位置が設定されている。詳細には、第2リボン下規制部388Bの突出端(上端)と、第2下側平面部392Bとの上下方向の距離は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。したがって、第2下側平面部392Bを基準面として、第2リボン下規制部388Bを製造する際の寸法精度を高めることができる。下ケース312の製造後には、第2リボン下規制部388Bの寸法管理を容易に行うことができる。
第2下テープ領域410Bには、第1下テープ領域400Bと同様、底板306の上面から僅かに上方に突出する突出部が設けられている。詳細には、第2テープスプール41(図5参照)が配置される第2下テープ領域410Bの中心位置に環状の突出部が設けられている。この環状の突出部から放射状に、8本の線状の突出部が第2下テープ領域410Bの周縁まで延びている。これらの突出部が、第4テープ下規制部411Bである。第4テープ下規制部411Bは、第2テープ領域410に収納されているテープ(図5および図6参照)の下方向への移動を規制する。
第4テープ下規制部411Bは、隣接する第4下側平面部322Bを基準面として、下ケース312における高さ位置が設定されている。詳細には、第4テープ下規制部411Bの突出端(上端)と、第4下側平面部322Bとの上下方向の距離は、テープ幅に応じて設定されている。したがって、第4下側平面部322Bを基準面として、第4テープ下規制部411Bを製造する際の寸法精度を高めることができる。下ケース312の製造後には、第4テープ下規制部411Bの寸法管理を容易に行うことができる。
第1下リボン領域420Bには、底板306の上面から僅かに上方に突出する突出部が設けられている。詳細には、リボンスプール42(図5参照)が配置される第1下リボン領域420Bの中心位置に環状に設けられた突出部が、第3リボン下規制部421Bである。第3リボン下規制部421Bは、第1リボン領域420に収納されている未使用のインクリボン60(図5〜図7参照)の下方向への移動を規制する。
第3リボン下規制部421Bは、隣接する第1下側平面部391Bを基準面として、下ケース312における高さ位置が設定されている。詳細には、第3リボン下規制部421Bの突出端(上端)と、第1下側平面部391Bとの上下方向の距離は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。したがって、第1下側平面部391Bを基準面として、第3リボン下規制部421Bを製造する際の寸法精度を高めることができる。下ケース312の製造後には、第3リボン下規制部421Bの寸法管理を容易に行うことができる。
本実施形態では、第1〜第4テープ下規制部381B、382B、363B、401B、411Bの突出端は、各々の配設位置にかかわらず全て同じ高さ位置に設定されている。したがって、第1テープ領域400に収納されたテープ、および第2テープ領域410に収納されたテープは、アーム部34および分離部61に存在するテープと同じ高さ位置で、それぞれ下方向への移動が規制される。
さらに、第1〜第3リボン下規制部387B、388B、421Bの突出端は、各々の配設位置にかかわらず全て同じ高さ位置に設定されている。したがって、第1リボン領域420に収納されたインクリボン60は、アーム部34および分離部61に存在するインクリボン60と同じ高さ位置で、下方向への移動が規制される。
下ケース312には、上ケース311と下ケース312とを接合するための円筒部材および連結孔が設けられている。
図18〜図20に示すように、第1受け部391の上側には、円筒状の第1円筒部材881Bが立設されている。言い換えると、第1円筒部材881Bは、第1下側平面部391Bの鉛直方向上方に設けられている。第1円筒部材881Bは、下ヘッド周壁36Bに接触しているが、下周壁304から離間している。
図21に示すように、第1円筒部材881Bは、円筒孔部891を有する。円筒孔部891は、第1円筒部材881Bの軸線に沿って形成された、平面視円形の凹部である。円筒孔部891の径は、円筒孔部891の上端部で最大となるように、上方に向かって徐々に大きくなっている。後述の第2〜第7円筒部材882B、883B、884B、885B、886B、887Bの構成は、第1円筒部材881Bの構成と同様である。
図18〜図20に示すように、テープ駆動ローラ46(詳細には、後述の開口部64B)の後側、且つ、第1下テープ領域400Bの左前側には、第2円筒部材882Bが設けられている。第2円筒部材882Bに対して第1下テープ領域400Bの平面中心(詳細には、後述の開口部65B)を挟んだ反対側、すなわち第1下テープ領域400Bの右後側には、第4円筒部材884Bが設けられている。第3下側平面部321Bの裏面、すなわち第1下テープ領域400Bの左後側には、第3円筒部材883Bが設けられている。
つまり、第2〜第4円筒部材882B、883B、884Bは、下ケース312における第1下テープ領域400Bの外周に沿って設けられている。第3、第4円筒部材883B、884Bは、第1下テープ領域400Bの外周縁の一部に沿って立設された第1周辺壁70に接触している。第2〜第4円筒部材882B、883B、884Bは、下ケース312の下周壁304から離間して設けられている。
第4下側平面部322Bの裏面、すなわち第2下テープ領域410Bの右後側には、第5円筒部材885Bが設けられている。第5円筒部材885Bに対して第2下テープ領域410Bの平面中心(詳細には、後述の下テープ支持部66B)を挟んだ反対側、すなわち第2下テープ領域410Bの左前側には、第6円筒部材886Bが設けられている。第3角部323の下面の裏面、すなわち第1下リボン領域420Bの右前側には、第7円筒部材887Bが設けられている。
つまり、第5、第6円筒部材885B、886Bは、下ケース312における第2下テープ領域410Bの外周に沿って設けられている。第5、第6円筒部材885B、886Bは、第2下テープ領域410Bの外周縁の一部に沿って立設された第2周辺壁71に接触している。第5〜第7円筒部材885B、886B、887Bは、下ケース312の下周壁304から離間して設けられている。
下ケース312の下半円溝84Bにおける左部の上端よりやや下側には、第1連結孔871Bが設けられている。下ヘッド周壁36Bにおける係止部397の左右両側には、第2連結孔872B(図28参照)および第3連結孔873B(図30参照)がそれぞれ設けられている。第2連結孔872Bは、第2下側平面部392Bの上方に設けられている。
下ケース312の下周壁304に含まれる背面側の壁部は、カセットケース31の背面の下側部分を構成する後壁370である。後壁370には、第4連結孔874Bおよび第5連結孔875Bが設けられている。第4連結孔874Bは、第1下テープ領域400Bの左後側に設けられている。第5連結孔875Bは、第2下テープ領域410Bの後側に設けられている。第1〜第5連結孔871B、872B、873B、874B、875Bは、正面視または背面視で左右方向に長い矩形状の貫通孔である。
第2円筒部材882Bの後側、且つ、第1下テープ領域400Bの左前側には、左側内壁861が設けられている。第2下テープ領域410Bの右前側、且つ、第1下リボン領域420Bの右後側には、右側内壁862が設けられている。左側内壁861および右側内壁862は、下周壁304よりも若干内側に設けられた、平面視で矩形枠状の壁部である。左側内壁861には、側面視で前後方向に長い矩形状の貫通孔である第6連結孔876Bが設けられている。右側内壁862には、側面視で前後方向に長い矩形状の貫通孔である第7連結孔877Bが設けられている。
図15、図17〜図19、図22、図23、図27および図28を参照して、上ケース311の構造について説明する。図18および図19に示すように、上ケース311の外形は、上板305(図22参照)と上周壁303とで形成されている。上周壁303は、上面301の外縁に沿って、上板305から所定の高さで下方へ延びる側壁である。上周壁303のうち、アーム前面壁35の上側部分を構成する壁部は、上アーム前面壁35Aである。上アーム前面壁35Aから後方へ離間して上板305から下方へ延びる壁部は、アーム背面壁37の上側部分を構成する上アーム背面壁37Aである。上アーム背面壁37Aに連続して延びる周壁は、ヘッド周壁36の上側部分を構成する上ヘッド周壁36Aである。
上ケース311におけるヘッド挿入部39周辺の詳細な構成について、説明する。図15および図22に示すように、上ケース311のヘッド挿入部39のテープ搬送方向における上流側端部に連接して、押え受け部393が設けられている。押え受け部393は、上ケース311が下ケース312に組み付けられた場合に、第1受け部391と上下に重なる。押え受け部393は、上板305の一部を上面301よりも下方に向かって凹ませた凹部である。押え受け部393は、第1受け部391と同様、アーム前面壁35に沿った方向にヘッド挿入部39から凹んでいる。
押え受け部393は、第1上側平面部393Aを有する。第1上側平面部393Aは、上面301より下方に位置する平面視略長方形状の平面部(凹部の底部分)の上側の面である。上ケース311における第1上側平面部393Aの高さ位置(つまり、上下方向位置)と、カセットケース31に収納されるテープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とは、テープカセット30のテープ種類にかかわらず一定である。よって、テープカセット30に収納されるテープおよびインクリボン60の幅がより広いほど、第1上側平面部393Aの高さ位置を基準とした押え受け部393の深さは大きくなる。
第1上側平面部393Aは、上ケース311における基準面である。本実施形態では、第1上側平面部393Aは、テープおよびインクリボン60の上方向への移動を規制する各種規制部に対する基準面として設けられている。また、第1上側平面部393Aは、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、ヘッド押え部材7(図2参照)によって上方から押圧される部位としても機能する。
第1上側平面部393Aの直下には、下ケース312の第1下側平面部391B(図16参照)が位置する。つまり、第1上側平面部393Aと第1下側平面部391Bとは、テープカセット30の上下方向で少なくとも一部が対向する。第1上側平面部393Aの後方には、傾斜部394が設けられている。傾斜部394は、第1上側平面部393Aの後端から上後方に向かって傾斜した、第1上側平面部393A後端から上面301に亘る押え受け部393の側面である。
上ケース311におけるアーム部34近傍を構成する部分の詳細について、説明する。図17〜図19および図22に示すように、上ケース311におけるアーム部34の構成部分は、上アーム前面壁35Aおよび上アーム背面壁37Aを含む。上アーム前面壁35Aおよび上アーム背面壁37Aは、それぞれ、下ケース312の下アーム前面壁35Bおよび下アーム背面壁37Bに対応する。よって、上アーム前面壁35Aの方が、上アーム背面壁37Aよりも高さが大きい。
上板305には、下ケース312の分離壁33に対応する位置に、固定溝331が設けられている。固定溝331は、平面視で分離壁33と同一形状の溝部である。上ケース311と下ケース312とが組み付けられると、分離壁33の上端部330が固定溝331に嵌め込まれて、上ケース311と下ケース312とが固定される(図27参照)。
図17および図18に示すように、上アーム前面壁35Aの左端部は、アーム先端部85の上側部分を構成する上先端部85Aである。上先端部85Aの下端が、接離部86の上側部分を構成する上接離部86Aである。上ケース311において上アーム前面壁35Aの右側に形成された溝部が、半円溝84の上側部分を構成する上半円溝84Aである。上半円溝84Aの左側部分には、平面視で凹状に形成された窪み部684が設けられている。窪み部684の凹み部分の深さは、下ケース312の下半円溝84Bを形成する壁の厚みと略同一である。
上接離部86Aには、下方に向けて突出する凸部689が設けられている。凸部689は、先端孔部687の径より小さく形成された略円柱体である。凸部689は、上下方向における中央よりやや上側から下端に向かって徐々に細くなっている。つまり、凸部689の軸径は、先端(下端)に向けて徐々に小さくなっている。
図22に示すように、上ケース311におけるアーム部34の構成部分では、上アーム前面壁35Aと固定溝331との間にテープの搬送経路が形成される。固定溝331と上アーム背面壁37Aとの間に、インクリボン60の搬送経路が形成される。これらの搬送経路上に、下ケース312と同様、テープやインクリボン60の上方向への移動を規制する規制片が設けられている。
テープの搬送経路に関しては、固定溝331の左端部に接して、第1テープ上規制部381Aが設けられている。固定溝331の右端部に接して、第1テープ上規制部382Aが設けられている。第1テープ上規制部381A、382Aは、それぞれ、上板305の下面から下方へ僅かに突出し、且つ、前方に向かって上アーム前面壁35Aまで延びている。第1テープ上規制部381A、382Aは、それぞれ、テープの上方向への移動を規制する。
インクリボン60の搬送経路に関しては、固定溝331の右端部に接して、インクリボン60の上方向への移動を規制する第1リボン上規制部387Aが設けられている。第1リボン上規制部387Aは、上板305の下面から下方へ僅かに突出し、且つ、後方に向かって上アーム背面壁37Aまで延びている。
第1テープ上規制部381A、382Aおよび第1リボン上規制部387Aは、それぞれ、第1上側平面部393Aを基準面として、上ケース311における高さ位置が設定されている。
詳細には、第1テープ上規制部381A、382Aの突出端(下端)と、第1上側平面部393Aとの上下方向の距離は、テープの幅に応じて設定されている。第1リボン上規制部387Aの突出端と、第1上側平面部393Aとの上下方向の距離は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。先述のように、第1上側平面部393Aは、ヘッド挿入部39の上流側端部近傍にある。つまり、アーム部34内に設けられた各規制部は、基準面である第1上側平面部393Aと近接している。
したがって、第1上側平面部393Aを基準面として、各規制部の製造時の寸法精度を高めることができ、ひいてはテープおよびインクリボン60の搬送精度を向上させることができる。アーム部34は、サーマルヘッド10(図5参照)によって印字が行われる位置(具体的には、露出部77)の上流側近傍にある。そのため、アーム部34内のテープおよびインクリボン60の搬送精度の向上に伴って、サーマルヘッド10の印字精度も向上させることができる。
本実施形態では、下ケース312に加えて上ケース311にも、アーム部34内の規制部を設けた。これにより、アーム部34内において、テープおよびインクリボン60は幅方向の移動がさらに規制される。したがって、テープおよびインクリボン60の搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度をさらに向上させることができる。加えて、上ケース311の製造後には、第1上側平面部393Aを基準として、各規制部の寸法管理を容易に行うことができる。
第1上側平面部393Aは、カセットケース31に収納されたテープおよびインクリボン60の幅方向中心位置から上下方向に一定の距離をおいて設けられている。したがって、第1上側平面部393Aの上下方向位置に対するテープおよびインクリボン60の幅方向位置がより明確になり、テープおよびインクリボン60の搬送精度をさらに向上させることができる。
上ケース311における分離部61近傍を構成する部分の詳細について、説明する。図18〜図19、図22および図28に示すように、上板305には、下ケース312の隔離壁43に対応する位置に、固定溝332が設けられている。固定溝332は、平面視で隔離壁43と同一形状の溝部である。隔離壁43に設けられた突起部398に対応する位置に、突起部398と同径の固定穴399が設けられている。上ケース311が下ケース312に組み付けられると、隔離壁43の上端部が固定溝332に嵌まり、且つ、突起部398が固定穴399に嵌まって、上ケース311と下ケース312とが固定される。
固定溝332の前方には、上板305から下方に延びる規制部材361が設けられている。上ケース311が下ケース312に組み付けられた場合、リボン案内壁38と規制部材361と間に形成される縦長の隙間が、導入口61Aの上側部分として機能する。隔離壁43と規制部材361と間に形成される縦長の隙間は、テープ案内口61Bの上側部分として機能する。なお、上板305において固定溝332から右側に延びる部分は、リボン案内口61Cの上端部を形成する壁部である。
導入口61Aの上端部およびリボン案内口61Cの上端部では、上板305の下面が凹凸のない連続した平面を形成している。一方、固定溝332と規制部材361の基部とに亘って、上板305から下方へ僅かに突出する第2テープ上規制部363Aが設けられている。言い換えると、第2テープ上規制部363Aは、下ケース312の第2テープ下規制部363Bと上下方向に対応する位置に設けられ、テープ案内口61Bの上端部として機能する。テープ案内口61Bの上端部(つまり、第2テープ上規制部363Aの突出端)は、導入口61Aの上端部(つまり、上板305の下面)よりも下方に位置している。言い換えると、第2テープ上規制部363Aは、テープ案内口61Bの上端部が導入口61Aの上端部よりも低くなるような段差を形成している。
上ケース311が下ケース312に組み付けられた状態で、第2テープ上規制部363Aは下ケース312の隔離壁規制部364と左右に並ぶ。このとき、第2テープ上規制部363Aの突出端(下端)と、隔離壁規制部364の下端とが、同じ高さ位置で並ぶ。したがって、第2テープ上規制部363Aは、隔離壁規制部364とともに、テープ案内口61Bを経由するテープの上方向への移動を規制する。
本実施形態では、下ケース312に加えて上ケース311にも、分離部61内の規制部を設けた。これにより、分離部61内において、テープは幅方向の移動がさらに規制される。したがって、分離部61からテープ駆動ローラ46に対して、さらに精度よく、テープの幅方向中心線に対して平行にテープを搬送できる。
上ケース311における第1角部321、第2角部322、およびテープおよびインクリボン60の収納領域を構成する部分の詳細について説明する。図18、図19および図22に示すように、上ケース311は、第1角部321の上面である第2上側平面部321A、および第2角部322の上面である第3上側平面部322Aを含む。第2上側平面部321Aおよび第3上側平面部322Aは、いずれも上面301よりも下方に位置する平面部である。第2上側平面部321Aおよび第3上側平面部322Aは、上ケース311が下ケース312に組み付けられた場合に、それぞれ、第3下側平面部321Bおよび第4下側平面部322B(図16参照)と上下に対向する。
上ケース311における第2、第3上側平面部321A、322Aの高さ位置と、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とは、テープカセット30のテープ種類にかかわらず一定である。よって、テープカセット30に収納されるテープおよびインクリボン60の幅がより広いほど、上面301から第2、第3上側平面部321A、322Aまでの距離は大きくなる。
本実施形態では、第2、第3上側平面部321A、322Aは、第1上側平面部393Aと同様に、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置(本実施形態では、カセットケース31の上下方向中心位置)から上下方向に同一の距離だけ離れた位置にある。つまり、第1〜第3上側平面部393A、321A、322Aは、上ケース311においてすべて同一の高さ位置にある。第2、第3上側平面部321A、322Aは、テープおよびインクリボン60の上方向の移動を規制する規制部に対する基準面として用いられる。
上ケース311は、第1上テープ領域400A、第2上テープ領域410A、第1上リボン領域420A、および第2上リボン領域440Aを含む。第1上テープ領域400Aは、第1テープ領域400の上側部分を構成する。第2上テープ領域410Aは、第2テープ領域410の上側部分を構成する。第1上リボン領域420Aは、第1リボン領域420の上側部分を構成する。第2上リボン領域440Aは、第2リボン領域440の上側部分を構成する。
図22に示すように、第1上テープ領域400Aには、上板305の下面から僅かに下方に突出する突出部が設けられている。詳細には、第1テープスプール40(図5参照)が配置される第1上テープ領域400Aの中心位置に、環状の突出部が設けられている。この環状の突出部から放射状に、3本の線状の突出部が第1上テープ領域400Aの周縁まで延びている。これらの突出部が、第3テープ上規制部401Aである。
第3テープ上規制部401Aは、第1テープ領域400に収納されているテープ(図5〜図8参照)の上方向への移動を規制する。つまり、第1テープ領域400に収納されているテープは、第3テープ上規制部401Aおよび第3テープ下規制部401B(図20参照)によって幅方向に位置決めされる。
第3テープ上規制部401Aは、隣接する第2上側平面部321Aを基準面として、上ケース311における高さ位置が設定されている。詳細には、第3テープ上規制部401Aの突出端(下端)と、第2上側平面部321Aとの上下方向の距離は、テープの幅に応じて設定されている。したがって、第2上側平面部321Aを基準面として、第3テープ上規制部401Aを製造する際の寸法精度を高めることができる。上ケース311の製造後には、第3テープ上規制部401Aの寸法管理を容易に行うことができる。
固定溝332の後端部のやや右側には、上板305の下面から下方へ僅かに突出する第2リボン上規制部388Aが設けられている。第2リボン上規制部388Aは、下ケース312の第2リボン下規制部388Bと上下方向に対応する位置に設けられている。第2リボン上規制部388Aは、分離部61から第2リボン領域440へ搬送されるインクリボン60の上方向への移動を規制する。つまり、分離部61から第2リボン領域440へ搬送されるインクリボン60は、第2リボン上規制部388Aおよび第2リボン下規制部388B(図20参照)によって、カセットケース31内で幅方向に位置決めされる。
第2上テープ領域410Aには、第1上テープ領域400Aと同様、上板305の下面から僅かに下方に突出する突出部が設けられている。詳細には、第2テープスプール41(図5参照)が配置される第2上テープ領域410Aの中心位置に環状の突出部が設けられている。この環状の突出部から放射状に、8本の線状の突出部が第2上テープ領域410Aの周縁まで延びている。これらの突出部が、第4テープ上規制部411Aである。
第4テープ上規制部411Aは、第2テープ領域410に収納されているテープ(図5および図6参照)の上方向への移動を規制する。つまり、第2テープ領域410に収納されているテープは、第4テープ上規制部411Aおよび第4テープ下規制部411B(図20参照)によって幅方向に位置決めされる。
第4テープ上規制部411Aは、隣接する第3上側平面部322Aを基準面として、上ケース311における高さ位置が設定されている。詳細には、第4テープ上規制部411Aの突出端(下端)と、第3上側平面部322Aとの上下方向の距離は、テープ幅に応じて設定されている。したがって、第3上側平面部322Aを基準面として、第4テープ上規制部411Aを製造する際の寸法精度を高めることができる。上ケース311の製造後には、第4テープ上規制部411Aの寸法管理を容易に行うことができる。
第1上リボン領域420Aには、上板305の下面から僅かに下方に突出する突出部が設けられている。詳細には、リボンスプール42(図5参照)が配置される第1上リボン領域420Aの中心位置に環状に設けられた突出部が、第3リボン上規制部421Aである。第3リボン上規制部421Aは、第1リボン領域420に収納されている未使用のインクリボン60(図5〜図7参照)の上方向への移動を規制する。つまり、第1リボン領域420に収納されているインクリボン60は、第3リボン上規制部421Aおよび第3リボン下規制部421B(図20参照)によって幅方向に位置決めされる。
第3リボン上規制部421Aは、隣接する第1上側平面部393Aを基準面として、上ケース311における高さ位置が設定されている。詳細には、第3リボン上規制部421Aの突出端(下端)と、第1上側平面部393Aとの上下方向の距離は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。したがって、第1上側平面部393Aを基準面として、第3リボン上規制部421Aを製造する際の寸法精度を高めることができる。上ケース311の製造後には、第3リボン上規制部421Aの寸法管理を容易に行うことができる。
本実施形態では、第1〜第4テープ上規制部381A、382A、363A、401A、411Aの突出端と、隔離壁規制部364および分離壁規制部383の下端とは、各々の配設位置にかかわらず全て同じ高さ位置に設定されている。したがって、第1テープ領域400に収納されたテープ、および第2テープ領域410に収納されたテープは、アーム部34および分離部61に存在するテープと同じ高さ位置で、それぞれ上方向への移動が規制される。
さらに、第1〜第3リボン上規制部387A、388A、421Aの突出端は、各々の配設位置にかかわらず全て同じ高さ位置に設定されている。したがって、第1リボン領域420に収納されたインクリボン60、および分離部61から第2リボン領域440へ向かうインクリボン60は、アーム部34に存在するインクリボン60と同じ高さ位置で、それぞれ上方向への移動が規制される。
これにより、図7に示すレセプタタイプのテープカセット30では、第1テープ領域400、アーム部34、分離部61にわたって、印字テープ57を幅方向中心線に対して平行に精度よく搬送できる。図8に示すサーマルタイプのテープカセット30では、第1テープ領域400、アーム部34、分離部61にわたって、感熱紙テープ55を幅方向中心線に対して平行に精度よく搬送できる。
図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30では、第2テープ領域410、アーム部34、分離部61にわたって、フィルムテープ59を幅方向中心線に対して平行に精度よく搬送できる。同時に、第1テープ領域400に収納された両面粘着テープ58を、テープ駆動ローラ46に向けて幅方向中心線に対して平行に精度よく搬送できる。ひいては、両面粘着テープ58とフィルムテープ59との幅方向位置を精度よく一致させることができる。
レセプタタイプおよびラミネートタイプのテープカセット30では、第1リボン領域420、アーム部34、第2リボン領域440にわたって、インクリボン60を幅方向中心線に対して平行に精度よく搬送できる。したがって、いずれのタイプのテープカセット30であっても、テープ及びインクリボン60の搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度を向上させることができる。
本実施形態では、第1〜第4テープ下規制部381B、382B、363B、401B、411Bの突出端、隔離壁規制部364および分離壁規制部383の下端、および第1〜第3リボン下規制部387B、388B、421Bの突出端は、全て同じ高さ位置に設定されている。すなわち、下ケース312に設けられた各規制部によって、テープおよびインクリボン60は同じ高さ位置で下方向への移動が規制される。
さらに、第1〜第4テープ上規制部381A、382A、363A、401A、411Aの突出端、および第1〜第3リボン上規制部387A、388A、421Aの突出端は、全て同じ高さ位置に設定されている。すなわち、上ケース311に設けられた各規制部によって、テープおよびインクリボン60は同じ高さ位置で上方向への移動が規制される。
したがって、レセプタタイプのテープカセット30では、印字テープ57およびインクリボン60を、互いの幅方向位置が一致した状態で精度よく搬送できる。ラミネートタイプのテープカセット30では、フィルムテープ59およびインクリボン60を、互いの幅方向位置が一致した状態で精度よく搬送できる。よって、テープ及びインクリボン60の搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度をさらに向上させることができる。
上ケース311には、上ケース311と下ケース312とを接合するための圧入ピンおよび連結アームが設けられている。
図18、図19および図22に示すように、押え受け部393には、下方へ突出する第1圧入ピン881Aが設けられている。言い換えると、第1圧入ピン881Aは、第1上側平面部393Aの鉛直方向下方に設けられている。第1圧入ピン881Aは、第1上側平面部393Aにおいて、下ケース312の第1円筒部材881B(図20参照)に対応する位置に設けられている。
図23に示すように、押え受け部393の下側には、円柱部393Bが設けられている。円柱部393Bは、押え受け部393の下面(第1上側平面部393Aの裏面)から下方に突出する円柱体である。第1圧入ピン881Aは、円柱部393Bの底面中央から下方に延びている。円柱部393Bは、第1円筒部材881Bの上端部と当接することによって、テープカセット30の高さを決定する。
第1圧入ピン881Aは、支柱部896と突起部材897とを含む。支柱部896は、円柱部393Bの底面中央から下方に延びる略円柱状の軸体である。支柱部896のうち、上下方向における中央よりやや下側部分は、支柱先端部898である。支柱先端部898の軸径は、支柱先端部898の下端部で最小となるように、下方に向かって徐々に小さくなっている。支柱先端部898の下端部の軸径は、第1円筒部材881Bの円筒孔部891(図21参照)の径より小さい。
支柱部896の周囲には、複数の突起部材897が放射状に設けられている。突起部材897は、支柱部896の外周面に沿って、円柱部393Bの底面から支柱部896の上下方向略中央まで延びている。突起部材897は、平面視で円弧状に支柱部896から突出している。突起部材897を含んだ第1圧入ピン881Aの直径は、円筒孔部891(図21参照)の径より大きい。
突起部材897の下部では、支柱部896からの突出幅が下方に向かって徐々に小さくなっている。これにより、第1圧入ピン881Aが円筒孔部891(図21参照)に挿入される場合に、突起部材897の下部が第1円筒部材881B(図21参照)の上面に引っかかることが抑制される。後述の第2〜第7圧入ピン882A、883A、884A、885A、886A、887Aの構成は、第1圧入ピン881Aの構成と同様である。
図18、図19および図22に示すように、テープ駆動ローラ46(詳細には、後述の開口部64A)の後側、且つ、第1上テープ領域400Aの左前側には、第2圧入ピン882Aが設けられている。第2圧入ピン882Aに対して第1上テープ領域400Aの平面中心(詳細には、後述の開口部65A)を挟んだ反対側、すなわち第1上テープ領域400Aの右後側には、第4圧入ピン884Aが設けられている。第2上側平面部321Aの裏面、すなわち第1上テープ領域400Aの左後側には、第3圧入ピン883Aが設けられている。
つまり、第2〜第4圧入ピン882A、883A、884Aは、上ケース311における第1上テープ領域400Aの外縁の一部に沿って、それぞれ下ケース312の第2〜第4円筒部材882B、883B、884B(図20参照)に対応する位置に設けられている。第2〜第4圧入ピン882A、883A、884Aは、上ケース311の上周壁303から離間して設けられている。
第3上側平面部322Aの裏面、すなわち第2上テープ領域410Aの右後側には、第5圧入ピン885Aが設けられている。第2上テープ領域410Aの平面中心(詳細には、後述の上テープ支持部66A)を挟んだ反対側、すなわち第2上テープ領域410Aの左前側には、第6圧入ピン886Aが設けられている。第3角部323の上面の裏面、すなわち第1上リボン領域420Aの右前側には、第7圧入ピン887Aが設けられている。
つまり、第5、第6圧入ピン885A、886Aは、上ケース311における第2上テープ領域410Aの外縁の一部に沿って、それぞれ下ケース312の第5、第6円筒部材885B、886B(図20参照)に対応する位置に設けられている。第7圧入ピン887Aは、下ケース312の第7円筒部材887B(図20参照)に対応する位置に設けられている。第5〜第7圧入ピン885A、886A、887Aは、上ケース311の上周壁303から離間して設けられている。
窪み部684から下方に延びる板状体は、第1連結アーム871Aである。第1連結アーム871Aは、下ケース312の第1連結孔871B(図20参照)に対応する位置に設けられている。第1連結アーム871Aは、平面視で上アーム前面壁35Aの右端部から右上方向に延びている。第1連結アーム871Aは、斜め前後方向からの外圧に対する可撓性を有する。第1連結アーム871Aの下端部には、右斜め前方に向かって突出する爪部が設けられている。後述の第2〜第7連結アーム872A、873A、874A、875A、876A、877Aの構成は、第1連結アーム871Aの構成と同様であるが、爪部の突出方向が異なっている。
上ヘッド周壁36Aにおける左右両側には、第2連結アーム872Aおよび第3連結アーム873Aが設けられている。第2、第3連結アーム872A、873Aは、それぞれ、下ケース312の第2、第3連結孔872B、873B(図20参照)に対応する位置で下方に突出している。第2、第3連結アーム872A、873Aの爪部は、前方に突出している。
上ケース311の上周壁303に含まれる背面壁には、第4連結アーム874Aおよび第5連結アーム875Aが設けられている。第4連結アーム874Aは、第1上テープ領域400Aの左後側に設けられている。第5連結アーム875Aは、第2上テープ領域410Aの後側に設けられている。第4、第5連結アーム874A、875Aは、それぞれ、下ケース312の第4、第5連結孔874B、875B(図20参照)に対応する位置で下方に突出している。第4、第5連結アーム874A、875Aの爪部は、後方に突出している。
第2圧入ピン882Aの後側、且つ、第1上テープ領域400Aの左前側には、第6連結アーム876Aが設けられている。第6連結アーム876Aは、上周壁303よりも若干内側に設けられ、下ケース312の第6連結孔876B(図20参照)に対応する位置で下方に突出している。第2上テープ領域410Aの右前側、且つ、第1上リボン領域420Aの右後側には、第7連結アーム877Aが設けられている。第7連結アーム877Aは、上周壁303よりも若干内側に設けられ、下ケース312の第7連結孔877B(図20参照)に対応する位置で下方に突出している。第6連結アーム876Aの爪部は右方向に突出し、第7連結アーム877Aの爪部は左方向に突出している。
本実施形態のテープカセット30における上ケース311と下ケース312との接合構造について説明する。
図21、図23および図24を参照して、第1〜第7圧着部881〜887の接合構造について説明する。図24は、第1円筒部材881Bと第1圧入ピン881Aとの接合態様を例示しているが、第2〜第7円筒部材882B〜887Bと、第2〜第7圧入ピン882A〜887Aとの接合態様も、これと同じである。
図21および図23に示すように、作業者が上ケース311を下ケース312に組み付けると、まず第1圧入ピン881Aの支柱先端部898が、第1円筒部材881Bの円筒孔部891に挿入される。前述したように、支柱先端部898の先端部(下端部)の軸径は円筒孔部891の径より小さく、且つ、円筒孔部891の径は上端部で最も大きい。このため、支柱部896を円筒孔部891内へスムーズに案内できる。
第1圧入ピン881Aが円筒孔部891の所定深さまで挿入されると、突起部材897が円筒孔部891の内周壁に接触する。前述したように、突起部材897の下端部は、支柱部896からの突出幅が最も小さい。このため、突起部材897を、第1円筒部材881Bの上面に引っかかることなく、円筒孔部891内へスムーズに案内できる。
突起部材897を含んだ第1圧入ピン881Aの直径は、円筒孔部891の径より大きい。このため、突起部材897が第1円筒部材881Bによって加圧されつつ、第1圧入ピン881Aは円筒孔部891内に挿入される。第1圧入ピン881Aが円筒孔部891内に挿入されるにつれて、第1円筒部材881Bが突起部材897の反発力によって若干外側に広がる。
第1圧入ピン881Aが円筒孔部891にさらに挿入されると、図24に示すように、第1円筒部材881Bの上端面と、押え受け部393の円柱部393Bとが接触する。これにより、第1円筒部材881Bと第1圧入ピン881Aとが強固に連結して、第1圧着部881が形成される(図5〜図8参照)。
同様にして、作業者が上ケース311を下ケース312に組み付けると、第2圧入ピン882A(図22参照)が第2円筒部材882B(図20参照)に挿入され、第2圧着部882が形成される。第3圧入ピン883A(図22参照)が第3円筒部材883B(図20参照)に挿入され、第3圧着部883が形成される。第4圧入ピン884A(図22参照)が第4円筒部材884B(図20参照)に挿入され、第4圧着部884が形成される。
第5圧入ピン885A(図22参照)が第5円筒部材885B(図20参照)に挿入され、第5圧着部885が形成される。第6圧入ピン886A(図22参照)が第6円筒部材886B(図20参照)に挿入され、第6圧着部886が形成される。第7圧入ピン887A(図22参照)が第7円筒部材887B(図20参照)に挿入され、第7圧着部887が形成される。これらの第1〜第7圧着部881〜887により、下ケース312と上ケース311とが接合される。
図5〜図8に示すように、最も重量の大きいテープを収納する第1テープ領域400の周囲には、4つの圧着部(つまり、第2圧着部882、第3圧着部883、第4圧着部884、第6圧着部886)が設けられている。第2、第4圧着部882、884は、第1テープ領域400の略平面中心を挟んで対向している。第3、第6圧着部883、886は、第1テープ領域400の略平面中心を挟んで対向している。2番目に重量の大きいテープを収納する第2テープ領域410の周囲には、2つの圧着部(つまり、第5圧着部885、第6圧着部886)が設けられている。第5、第6圧着部885、886は、第2テープ領域410の略平面中心を挟んで対向している。
第2リボン領域440の周囲には、2つの圧着部(つまり、第1圧着部881、第6圧着部886)が設けられている。第1、第6圧着部881、886は、第2リボン領域440の略平面中心を挟んで対向している。さらに、テープカセット30の平面視における4つの角部321〜324の近傍には、4つの圧着部(つまり、第2圧着部882、第3圧着部883、第5圧着部885、第7圧着部887)が設けられている。
このように、カセットケース31の内部に収納されるテープおよびインクリボン60の周囲、および、カセットケース31の四隅で、下ケース312と上ケース311とが強固に接合される。このため、例えばテープカセット30が落下した場合のように、カセットケース31に大きな物理的衝撃が加えられても、下ケース312と上ケース311との接合状態が保持されやすい。つまり、下ケース312と上ケース311との間における浮きや隙間の発生を抑制できる。
さらに、第6圧着部886は、第1テープ領域400、第2テープ領域410、第2リボン領域440の周囲およびテープカセット30の中央位置で、下ケース312および上ケース311を固定する。テープカセット30の四隅を固定する圧着部のうち、第5圧着部885は第2テープ領域410の周囲で下ケース312および上ケース311を固定する。第2圧着部882および第3圧着部883は、第1テープ領域400の周囲で下ケース312および上ケース311を固定する。第7圧着部887は、第1リボン領域420の周囲で下ケース312および上ケース311を固定する。このように、第1〜第7圧着部881〜887は、それぞれ二以上の固定機能を兼ねているため、下ケース312と上ケース311とを効率的に固定できる。
従来では、第1円筒部材881Bと第1圧入ピン881Aとの寸法関係が適正な範囲を超えている場合、第1圧入ピン881Aが第1円筒部材881Bに挿入されると、突起部材897によって拡径された第1円筒部材881Bに、外観上の変形や白化を生じるおそれがあった(第2〜第7円筒部材882B〜887Bも同様)。そのため、従来のテープカセットの製造工程では、第1〜第7円筒部材881B〜887Bと第1〜第7圧入ピン881A〜887Aとの寸法関係を、作業者が厳密に管理していた。
本実施形態のテープカセット30では、第1〜第7円筒部材881B〜887Bの全てが下周壁304から離間している。よって、第1〜第7円筒部材881B〜887Bに変形や白化が発生しても、その影響がテープカセット30の外観に及びにくい。さらに、第1〜第7圧入ピン881A〜887Aを挿入する圧力を高めることで(例えば、第1〜第7圧入ピン881A〜887Aを太くする等)、テープカセット30の外観の悪化を抑制しつつ、下ケース312と上ケース311とをさらに確実に固定できる。ひいては、上記のような寸法管理を行う作業者の負担を軽減できる。
従来では、カセットケース31に設けられた円筒部材が下周壁304に接触しているため、ケース内側における円筒部材と下周壁304との接触部分は、合成樹脂の厚みが大きくなりやすくかった。このため、ケース成型時に、下周壁304の外面にいわゆるヒケが発生しやすかった。そのため、従来のテープカセットの製造工程では、ケース成型時にヒケが発生しないように高度な作業精度が要求されていた。
本実施形態のテープカセット30では、第1〜第7円筒部材881B〜887Bのすべてが下周壁304から離間している。よって、下ケース312の成型時に下周壁304の厚みが大きくなることが抑制される。つまり、下ケース312の成型時におけるヒケの発生が抑制されるため、テープカセット30の外観の悪化を抑制できる。ひいては、上記のように高度な作業精度でケース成型を行う作業者の負担が軽減される。
図17、図18、図25〜図27を参照して、アーム部34近傍の接合構造について説明する。図18に示すように、作業者が上ケース311を下ケース312に組み付けると、まず凸部689の下部が先端孔部687に挿入される。前述したように、凸部689は先端側(下端側)に向けて細くなっており、且つ、先端孔部687の径は上端部で最も大きい。このため、凸部689を、先端孔部687内へスムーズに案内できる。
凸部689が先端孔部687内の所定深さまで挿入されると、第1連結アーム871Aの爪部が下半円溝84Bの背面に接触して、第1連結アーム871Aが若干後方に撓む。さらに凸部689が先端孔部687内に挿入されるのに伴って、第1連結アーム871Aの爪部が下半円溝84Bの背面に沿って下方向に移動する。第1連結アーム871Aの爪部は、第1連結孔871Bの位置に到達すると、第1連結アーム871Aの弾性力によって第1連結孔871Bに嵌め込まれる。
これにより、図17および図25に示すように、第1連結部871が形成される。第1連結部871によって、アーム部34におけるテープの搬送方向上流側の端部の近傍で、下ケース312と上ケース311とが固定される。同時に、上接離部86Aと下接離部86Bとが接触して接離部86が形成される。凸部689の軸径は先端孔部687の径より小さいので、アーム先端部85では上ケース311と下ケース312とが固定されない。そのため、図26に示すように、先端孔部687内に挿入された凸部689は、外圧に応じて先端孔部687内から離脱する方向(つまり、上方向)に移動可能である。つまり、接離部86では、上接離部86Aと下接離部86Bとが接離可能である。
図27に示すように、分離壁33の上端部330が上ケース311の固定溝331に嵌め込まれて、アーム部34の内部で分離壁33が固定される。アーム部34の内部では、各規制部(つまり、第1テープ下規制部381B、382B、分離壁規制部383、第1リボン下規制部387B、第1テープ上規制部381A、382A、および第1リボン上規制部387A)によって、テープとインクリボン60との幅方向位置が規制される。第1印字面側規制部389によって、テープの印字面側への移動が規制される。
アーム部34の各規制部のうち、排出口341の近傍でテープを規制する規制部(第1テープ下規制部381B、分離壁規制部383および第1印字面側規制部389)は、いずれも下ケース312に設けられている。そのため、上ケース311と下ケース312との接合状態にかかわらず、テープの幅方向および印字面側への移動を、印字直前の段階で適切に規制できる。さらに、サーマルヘッド10の印字範囲の上下方向中心位置と、テープの幅方向中心位置とを精度よく一致させることができる。
図20および図22に示すように、アーム部34内におけるテープの搬送経路には、第1テープ上規制部381A、382Aおよび第1テープ下規制部381B、382Bが設けられている。そのため、アーム部34内を搬送するテープは、その搬送方向の上流側および下流側(つまり、2ヵ所の平面位置)で幅方向位置が規制される。
一方、アーム部34内におけるインクリボン60の搬送経路には、第1リボン上規制部387Aおよび第1リボン下規制部387Bが設けられている。そのため、アーム部34内を搬送するインクリボン60は、その搬送方向の上流側のみ(つまり、1ヵ所の平面位置)で幅方向位置が規制される。つまり、アーム部34の排出口341の近傍では、テープの幅方向位置が規制される一方、インクリボン60の幅方向位置は規制されない。
インクリボン60は、テープと比べて薄手であるため、幅方向の規制が過剰に行われると皺が発生しやすい。本実施形態では、インクリボン60は、アーム部34内の上流側では幅方向に規制される一方、アーム部34内の下流側では幅方向に規制されない。つまり、インクリボン60は、アーム部34内で幅方向の規制を受けつつ、排出口341の近傍では幅方向に振れることが許容される。したがって、インクリボン60の幅方向位置を適正な範囲に確保し、且つ、インクリボン60に皺が発生することを抑制できる。
例えばテープカセット30が落下した場合等には、カセットケース31に物理的衝撃が加えられるのに伴って、アーム部34に対して上下方向に外力が加えられることがある。この場合、図26に示すように、接離部86を構成する上接離部86Aと下接離部86Bとが離間する。その後、第1連結部871で接合されている上ケース311および下ケース312の弾性力によって、上接離部86Aと下接離部86Bとが再び接触する(図25参照)。つまり、アーム部34に対して上下方向の外力が加えられた場合でも、アーム先端部85は正常な状態に復帰する。
アーム先端部85が正常な状態に復帰すると、アーム部34内におけるテープとインクリボン60との幅方向位置が、各規制部によって再び適切に規制される。このため、カセットケース31に物理的衝撃が加えられた場合でも、テープおよびインクリボン60が適切に搬送され、印字品質が良好に保たれる。このように、上接離部86Aが外圧に応じて下接離部86Bから瞬間的に離間することで、外圧を緩衝することができる。ひいては、アーム部34の物理的な耐久性能を向上させることができる。
図17に示すように、第1連結部871は、半円溝84に設けられている。半円溝84は、平面視で略半円形の曲面部であるため、平板状のアーム前面壁35よりも撓みに対する強度が高い。このため、カセットケース31に物理的衝撃が加えられた場合でも、第1連結アーム871Aと第1連結孔871Bとの連結は解除されにくい。よって、例えばテープカセット30が落下した場合等でも、第1連結部871によって上ケース311と下ケース312とを確実に固定できる。
図18に示すように、上ケース311が下ケース312に組み付けられる際には、凸部689が先端孔部687内に挿入されながら、上先端部85Aが下先端部85Bに向けて案内される。このため、上先端部85Aまたは下先端部85Bが、アーム部34内のテープやインクリボン60に接触することが防止される。よって、テープ等の傷に起因する印字品質の悪化を抑制できる。
図19、図20、図22および図32に示すように、下ケース312の下アーム背面壁37Bには、下方に向けてV字型に切り欠かれた切欠部372が設けられている。分離壁33の一部は、切欠部372を介して下アーム背面壁37Bの後方に露出する。上ケース311の上アーム背面壁37Aには、切欠部372に対応して、下方に向けてV字型に突出する突起部371が設けられている。
下ケース312に上ケース311が組み付けられると、突起部371が切欠部372に隙間なく嵌め込まれる。これにより、上アーム背面壁37Aと下アーム背面壁37Bとが接合して、アーム背面壁37が形成される(図17参照)。したがって、例えば下アーム背面壁37Bの下端および上アーム背面壁37Aの上端がそれぞれ直線状である場合と比較して、アーム背面壁37の接合状態を強固にできる。
従来では、下ケース312における分離壁33と下アーム背面壁37Bとの間隔が狭く、且つ、下アーム背面壁37Bが分離壁33と同程度の高さを有する壁部である場合には、金型成型上の問題を生じるおそれがあった。すなわち、狭い間隔で並ぶ同程度の高さの2つの壁部を成型するためには、両壁部の間に嵌まる金型が必要となるが、このような金型は薄型であるため強度が弱かった。そのため、従来のテープカセットの製造工程では、例えば金型のメンテナンスのような対応処置が必要であった。
本実施形態では、下アーム背面壁37Bには、背面視で分離壁33を露出させる切欠部372が設けられている。そのため、ヘッド挿入部39(図17参照)に嵌まる金型と、下アーム背面壁37Bと分離壁33との間に嵌まる金型とを、切欠部372に嵌まる金型部分を介して一体に製造でき、金型強度を向上させることができる。ひいては、上記のような金型のメンテナンスなどの対応処置を行う作業者の負担を軽減できる。
図15および図16に示すように、アーム背面壁37は、全体として左右方向に延びる壁部である。アーム背面壁37の左端部よりやや右側には、屈折部373が設けられている。アーム背面壁37は、屈折部373で若干後方に屈折している。言い換えると、アーム背面壁37は、アーム部34内におけるテープ搬送方向の下流側で、ヘッド挿入部39側に若干膨らんでいる。
屈折部373の近傍では、アーム背面壁37と分離壁33との間隔(つまり、前後方向長さ)が若干大きくなる(図20参照)。これにより、アーム部34におけるインクリボン60の搬送経路を広めに確保できるため、インクリボン60の走行性能が向上する。さらに、例えばアーム背面壁37が平面視で直線状である場合と比べて、アーム部34の物理的強度を向上させることができる。
アーム背面壁37における屈折部373から左前方に延びる壁部は、先端側背面壁374である。言い換えると、先端側背面壁374は、アーム背面壁37のうちで排出口341に隣接する部分である。先端側背面壁374は平面視で左前方に傾斜しているため、排出口341の近傍でヘッド挿入部39の前後方向長さが大きくなる。よって、ヘッド挿入部39内にヘッドホルダ74を着脱する際に、アーム部34の先端側がサーマルヘッド10に接触するおそれを低減できる。
図15を参照して、第2〜第7連結部872〜877の接合構造について説明する。作業者が上ケース311を下ケース312に組み付けると、第1連結部871と同様に、第2連結アーム872A(図22参照)の爪部が第2連結孔872B(図20参照)に嵌め込まれ、第2連結部872が形成される。第3連結アーム873A(図22参照)の爪部が第3連結孔873B(図20参照)に嵌め込まれ、第3連結部873が形成される。第4連結アーム874A(図22参照)の爪部が第4連結孔874B(図20参照)に嵌め込まれ、第4連結部874が形成される。
第5連結アーム875A(図22参照)の爪部が第5連結孔875B(図20参照)に嵌め込まれ、第5連結部875が形成される。第6連結アーム876A(図22参照)の爪部が第6連結孔876B(図20参照)に嵌め込まれ、第6連結部876が形成される。第7連結アーム877A(図22参照)の爪部が第7連結孔877B(図20参照)に嵌め込まれ、第7連結部877が形成される。これらの第1〜第7連結部871〜877により、下ケース312と上ケース311とが接合される。
詳細には、第1連結部871は、テープカセット30の前面において、下ケース312と上ケース311とを固定する。第2連結部872および第3連結部873は、テープカセット30の前面近傍において、下ケース312と上ケース311とを固定する。第4連結部874および第5連結部875は、テープカセット30の背面において、下ケース312と上ケース311とを固定する。第6連結部876は、テープカセット30の左面近傍において、下ケース312と上ケース311とを固定する。第7連結部877は、テープカセット30の右面近傍において、下ケース312と上ケース311とを固定する。つまり、第1〜第7連結部871〜877によって、テープカセット30の各側面(図18に示す上周壁303および下周壁304が形成する外面)で、下ケース312と上ケース311とを確実に固定できる。
第2連結部872および第3連結部873は、ヘッド周壁36の近傍で、下ケース312と上ケース311とを固定する(図30参照)。第2連結部872は、テープ駆動ローラ46(図5参照)の近傍に設けられている。第3連結部873は、リボン巻取スプール44(図5参照)の近傍に設けられている。したがって、第2、第3連結部872、873によって、テープ駆動ローラ46およびリボン巻取スプール44の回転駆動時に発生する振動が抑制される。したがって、テープおよびインクリボン60の走行を安定させることができ、ひいては印字品質を向上させることができる。
第1テープ領域400には、最も重いテープが巻回された第1テープスプール40が収納される。例えばテープカセット30の落下時等には、第1テープスプール40に巻回されたテープの重みによって、第1テープ領域400の近傍で下ケース312と上ケース311とが分離しやすい。本実施形態では、第2、第4、第6連結部872、874、876は、第1テープ領域400の近傍に設けられている。よって、カセットケース31に物理的衝撃が加えられた場合でも、第1テープ領域400の近傍でカセットケース31が開くことが抑制され、ひいてはカセットケース31の物理的強度を向上させることができる。
先述のように、下ケース312に上ケース311が組み付けられる場合、第1連結アーム871Aの爪部が下半円溝84Bに接触するよりも先に、凸部689の下部が先端孔部687内に挿入される。そのため、凸部689が先端孔部687内で案内された状態のもと、第1連結アーム871Aの爪部を第1連結孔871Bに正確に嵌め込むことができる。
さらに、本実施形態の上ケース311では、第1〜第7圧入ピン881A〜877Aが、いずれも第1〜第7連結アーム871A〜877Aよりも下方まで延びている(図18、図19参照)。そのため、上ケース311が下ケース312に組み付けられると、第1〜第7連結アーム871A〜877Aの爪部がそれぞれ下ケース312の下周壁304等に接触するよりも先に、第1〜第7圧入ピン881A〜887Aがそれぞれ第1〜第7円筒部材881B〜887Bに挿入される。
そのため、第1〜第7圧入ピン881A〜887Aがそれぞれ第1〜第7円筒部材881B〜887B内で案内された状態のもと、第1〜第7連結アーム871A〜877Aの爪部を、それぞれ第1〜第7連結孔871B〜877Bに正確に嵌め込むことができる。つまり、作業者が上ケース311を下ケース312に組み付ける場合に、上ケース311を傾かせることなく正確に組み付けることができる。
図20に示すように、第2〜第5連結孔872B〜875Bの左右両縁には、それぞれ、下周壁304の上端まで上方向に延びる案内リブ809が設けられている。上ケース311が下ケース312に組み付けられる場合には、第2〜第5連結アーム872A〜875Aは、それぞれ、案内リブ809によって左右方向の移動が規制されつつ、第2〜第5連結孔872B〜875Bに向けて案内される。
同様に、第6、第7連結孔876B、877Bの前後両縁にも、それぞれ、左側内壁861および右側内壁862の上端まで上方向に延びる案内リブ809が設けられている。第6、第7連結アーム876A、877Aも、それぞれ、案内リブ809によって前後方向の移動が規制されつつ、第6、第7連結孔876B、877Bに向けて案内される。よって、作業者は下ケース312および上ケース311をより正確に組み付けることができる。
図15に示すように、第3連結部873は、ヘッド周壁36の右部に設けられているため、正面視でアーム背面壁37の背後に位置する。ヘッド挿入部39内への指や異物の進入は、アーム背面壁37によって阻害される。そのため、第3連結孔873Bに嵌め込まれた第3連結アーム873Aの爪部が、外部から直接押圧されにくい。
さらに、下ケース312および上ケース311が接合された状態では、第6連結部876および第7連結部877はカセットケース31の内部に設けられている。そのため、第6、第7連結孔876B、877Bに嵌め込まれた第6、第7連結アーム876A、877Aの爪部は、外部から直接押圧されにくい。よって、第3、第6、第7連結部873、876、877の連結状態が、例えば爪部が外部から押圧されることで解除されるおそれを低減できる。
図5〜図8、図15、図16、図20および図22を参照して、テープカセット30の接合構造と基準面との関係について説明する。第1圧着部881は、ヘッド挿入部39の上流側端部で上下方向に対向する2つの基準面(第1上側平面部393Aおよび第1下側平面部391B)の間に設けられている。第1上側平面部393Aおよび第1下側平面部391Bは、第1圧着部881によって適切な高さ位置に保持される。
つまり、第1上側平面部393Aおよび第1下側平面部391Bのいずれかの近傍に設けられた各規制部(具体的には、第1テープ下規制部381B、382B、分離壁規制部383、第1リボン下規制部387B、第3リボン下規制部421B、第1テープ上規制部381A、382A、第1リボン上規制部387A)の高さ位置が適切に保持される。このため、テープ及びインクリボン60の搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度を向上させることができる。
第2連結部872は、第2受け部392に設けられた第2下側平面部392Bの鉛直方向上方に設けられている。第2下側平面部392Bは、第2連結部872によって適切な高さ位置に保持される。つまり、第2下側平面部392Bの近傍に設けられた各規制部(具体的には、第2テープ下規制部363B、第2テープ上規制部363A、隔離壁規制部364、第2リボン下規制部388B、第2リボン上規制部388A)の高さ位置が適切に保持される。このため、テープ及びインクリボン60の搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度を向上させることができる。
第3圧着部883は、第1角部321で上下方向に対向する2つの基準面(第2上側平面部321Aおよび第3下側平面部321B)の間に設けられている。第2上側平面部321Aおよび第3下側平面部321Bは、第3圧着部883によって適切な高さ位置に保持される。つまり、第3下側平面部321Bおよび第2上側平面部321Aのいずれかの近傍に設けられた各規制部(具体的には、第3テープ下規制部401Bおよび第3テープ上規制部401A)の高さ位置が適切に保持される。このため、テープの搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度を向上させることができる。
第5圧着部885は、第2角部322で上下方向に対向する2つの基準面(第3上側平面部322Aおよび第4下側平面部322B)の間に設けられている。第3上側平面部322Aおよび第4下側平面部322Bは、第5圧着部885によって適切な高さ位置に保持される。つまり、第3上側平面部322Aおよび第4下側平面部322Bのいずれかの近傍に設けられた各規制部(具体的には、第4テープ下規制部411Bおよび第4テープ上規制部411A)の高さ位置が適切に保持される。このため、テープの搬送精度、ひいてはサーマルヘッド10の印字精度を向上させることができる。
ここで、上ケース311と下ケース312とを組み付ける場合には、まず作業者は下ケース312を治具で支持する。このとき、作業者は、基準面である第1〜第4下側平面部391B、392B、321B、322Bを、治具の載置面に載置する。作業者は、治具に支持された下ケース312に対して、上ケース311を上側から組み付ける。これにより、先述のように第1〜第7圧着部881〜887および第1〜第7連結部871〜877が形成されて、上ケース311と下ケース312とが接合される。治具の載置面の高さ位置は、第1〜第4下側平面部391B、392B、321B、322Bの高さ位置に正確に対応することが好ましい。
本実施形態では、第1〜第4下側平面部391B、392B、321B、322Bが、下ケース312における同じ高さ位置に設定されている。これに対応して、治具の載置面も、同一の高さ位置に設定される。治具の載置面を作成する際には、同一の高さ位置で作成したほうが、異なった高さ位置で作成する場合よりも正確かつ容易に作成できる。従って、治具の載置面の高さ位置を、第1〜第4下側平面部391B、392B、321B、322Bの高さ位置に正確に対応させることができる。
図15、図18、図19および図28〜図30を参照して、分離部61近傍の接合構造について説明する。図18、図19および図28に示すように、上ケース311が下ケース312に組み付けられると、隔離壁43の上端部が固定溝332に嵌まり、且つ、突起部398が固定穴399に嵌まって、上ケース311と下ケース312とが固定される。これにより、テープ駆動ローラ46の上流側に、露出部77で印字に使用されたテープおよびインクリボン60を分離する分離部61が形成される。
図15および図28〜図30に示すように、印字済みのテープおよびインクリボン60は、重ね合わされた状態で分離部61内に進入し、共通の搬送経路である導入口61Aを経由して分岐口790に搬送される。分岐口790は、導入口61Aとテープ案内口61Bおよびリボン案内口61Cとが接続される部位である。分岐口790では、分離部61内に進入した印字済みのテープから、使用済みのインクリボン60が分離される。分離後のインクリボン60は、テープ案内口61Bに進入して、第2リボン領域440に向かって案内される。インクリボン60が分離されたテープは、リボン案内口61Cに進入して、テープ駆動ローラ46の前方に向かって案内される。
本実施形態の分岐口790は、テープ案内口61Bの入口およびリボン案内口61Cの入口が左右方向に並ぶ一つの搬送経路である。ただし、先述のように、テープ案内口61Bの上下側には、それぞれ第2テープ上規制部363Aおよび第2テープ下規制部363Bが設けられている。よって、分岐口790では、テープ案内口61Bの上下方向長さが、リボン案内口61Cの上下方向長さよりも若干小さい。
先述したように、アーム部34の排出口341の近傍では、テープの幅方向位置が規制される一方、インクリボン60の幅方向位置は規制されない。したがって、アーム部34から排出されたテープは、サーマルヘッド10によって印字されたのち、適正な幅方向位置を維持しながら分離部61内に進入しやすい。この場合、分岐口790まで搬送されたテープの幅方向位置は、第2テープ上規制部363Aおよび第2テープ下規制部363Bによって規定される上下方向位置とほぼ一致している。よって、印字済みのテープは、導入口61Aとテープ案内口61Bとの間に形成された段差(つまり、第2テープ上規制部363Aおよび第2テープ下規制部363B)によって干渉を受けることなく、テープ駆動ローラ46の引き出し方向に沿ってテープ案内口61Bに進入する。
一方、アーム部34から排出されたインクリボン60は、サーマルヘッド10の印字に使用されたのち、適正な幅方向位置から若干ずれた状態で分離部61内に進入しやすい。この場合、分岐口790まで搬送されたインクリボン60の幅方向位置は、第2テープ上規制部363Aおよび第2テープ下規制部363Bによって規定される上下方向位置から外れている。そのため、使用済みのインクリボン60は、導入口61Aとテープ案内口61Bとの間に形成された段差によって干渉を受けやすい。
特に、インクリボン60は、排出口341から分離部61に至る過程で、自重によって適正な幅方向位置から若干下側にずれやすい。そのため、分岐口790に搬送されたインクリボン60は、導入口61Aとテープ案内口61Bとの間に形成された下側の段差(つまり、第2テープ下規制部363B)に接触しやすい。よって、インクリボン60はテープ案内口61Bに進入することなく、リボン巻取スプール44の巻き取り方向に沿って、テープ案内口61Bよりも上下方向長さが大きいリボン案内口61Cに進入する。
インクリボン60は、排出口341から分離部61に至る過程で、例えば印字動作に起因する振動などによって、適正な幅方向位置から若干上側にずれることがある。この場合、分岐口790に搬送されたインクリボン60は、導入口61Aとテープ案内口61Bとの間に形成された上側の段差(つまり、第2テープ上規制部363A)に接触するため、上記と同様にリボン案内口61Cに進入する。
このように、分岐口790では、アーム部34から排出されるインクリボン60の幅方向への移動が許容されていることを利用して、インクリボン60が導入口61Aからリボン案内口61Cに案内される。したがって、テープとインクリボン60との上下方向長さ(幅)が同じである場合でも、インクリボン60と重ね合っているテープに引きずられて、インクリボン60がテープ案内口61Bに誤って進入することを抑制できる。なお、テープの幅がインクリボン60の幅よりも小さい場合も、上記と同様に、インクリボン60がテープ案内口61Bに誤って進入することを抑制できる。
導入口61Aとテープ案内口61Bとの間には、上下方向に対向する2つの段差(つまり、第2テープ上規制部363Aおよび第2テープ下規制部363B)が設けられている。導入口61Aの上下方向中心位置およびテープ案内口61Bの上下方向中心位置は、テープの幅方向中心位置と略同一である。そのため、インクリボン60が適正な幅方向位置から上方向および下方向のいずれにずれている場合であっても、インクリボン60をテープから適切に分離でき、且つ、リボン案内口61Cに案内できる。
さらに、導入口61Aを経由したテープは、テープ案内口61Bで幅方向の移動が規制されつつ下流側に搬送される。一方、導入口61Aを経由したインクリボン60は、リボン案内口61Cで幅方向の移動が許容されつつ下流側に搬送される。インクリボン60がリボン案内口61C内で幅方向に移動すると、それに伴って導入口61Aで搬送されているインクリボン60も幅方向に移動しやすい。その結果、導入口61Aで幅方向に移動したインクリボン60は、導入口61Aの終端部に設けられた段差(つまり、第2テープ上規制部363Aおよび第2テープ下規制部363B)に接触することで、テープからの分離が促進される。
以上のように、インクリボン60は段差によってテープ案内口61Bに進入することが阻害され、且つ、テープ案内口61Bに進入するテープとの分離が促される。段差に接触したインクリボン60は、テープ案内口61Bよりも上下方向長さが大きいリボン案内口61Cに進入する。したがって、分離部61では、テープおよびインクリボン60を確実に分離でき、且つ、インクリボン60がテープ案内口61Bに進入することが抑制できる。テープから分離されたインクリボン60はリボン案内口61Cに進入するため、インクリボン60を適正な経路に沿って搬送できる。
先述のように、テープ案内口61Bを経由するテープは、第2テープ下規制部363B、第2テープ上規制部363Aおよび隔離壁規制部364によって、幅方向への移動が規制される。テープ案内口61Bを経由するテープは、第2印字面側規制部43A、43Bによって、印字面側への移動が規制され、且つ、僅かに後方に屈曲されてバックテンションが付与される。しかしながら、排出口341から分離部61を経由してテープ駆動ローラ46の前方まで至るテープの搬送経路は、全体として平面視でほぼ左方向へ延びる直線状である。よって、排出口341から排出されたテープを、テープ駆動ローラ46の前方までスムーズに搬送できる。
分離部61の各規制部のうち、テープ駆動ローラ46の近傍でテープを規制する規制部(具体的には、第2テープ下規制部363B、隔離壁規制部364、第2印字面側規制部43A、43B)は、いずれも下ケース312に設けられている。そのため、上ケース311と下ケース312との接合状態にかかわらず、テープ案内口61Bを経由するテープの幅方向および印字面側への移動を適切に規制できる。さらに、第2印字面側規制部43A、43Bは、隔離壁43の前端面の上端および下端にのみ設けられているので、テープの印字部分に接触する面積を最小限に抑えることができ、印字品質を損なう可能性を低減できる。
先述のように、リボン案内口61Cを経由するインクリボン60は、第2リボン領域440に向けて案内され、リボン巻取スプール44によって巻き取られる。リボン案内口61Cを経由するインクリボン60は、テープ案内口61Bを経由するテープから離間される右後方向へ搬送され、さらにテープの搬送方向とはほぼ反対方向である右方向へ搬送される。そのため、排出口341から分離部61を経由してリボン巻取スプール44に至るインクリボン60の搬送経路は、平面視、分離部61で鋭角状に屈曲している。これにより、分離部61では、テープおよびインクリボン60を確実に分離できる。ひいては、テープおよびインクリボン60が互いの走行に引きずられることを抑制して、テープおよびインクリボン60の走行を安定させることができる。
図17〜図19に示すように、分離壁33および隔離壁43の上下方向長さは、カセットケース31の上下方向長さとほぼ一致している。そのため、下ケース312に上ケース311が組み付けられると、先述のように、分離壁33および隔離壁43はそれぞれ固定溝331、332に嵌め込まれる。これにより、分離壁33および隔離壁43がそれぞれ上ケース311に適正に連結されたか否かを、作業者は固定溝331、332を目視して容易に確認できる。
例えばテープカセット30が落下した場合等に、カセットケース31に加えられた物理的衝撃によって、分離壁33および隔離壁43がそれぞれ固定溝331、332から瞬間的に外れたとしても、自動的に元の状態に復帰する。つまり、分離壁33および隔離壁43は、それぞれ固定溝331、332に容易に嵌まるので、そのまま復帰する。また、分離壁33および隔離壁43は、平面視で各々の形状に対する溝部である固定溝331、332にそれぞれ嵌め込まれるため、例えばピンと孔部で連結する場合と比べて安定的に固定できる。
図20および図22に示すように、上ケース311の第1〜第3角部321〜323には、各々の輪郭形状に沿って上板305から下方に突出する角部突起631がそれぞれ設けられている。上ケース311が下ケース312に組み付けられると、上ケース311に設けられた3つの角部突起631が、下ケース312の第1〜第3角部321〜323に沿ってそれぞれ嵌まる。つまり、カセットケース31の内部では、第1〜第3角部321〜323の輪郭を形成する下周壁304の角部の内壁に、各角部突起631が隙間なく接触する。
これにより、第1〜第3角部321〜323は、それぞれ、カセットケース31の内部で角部突起631によって補強された状態となる。つまり、上ケース311および下ケース312が、第1〜第3角部321〜323で強固に接合される。第1〜第3角部321〜323は、箱状のカセットケース31において構造上剛性が高い部位である。よって、カセットケース31の物理的強度を高めることができる。
例えばテープカセット30の落下時などには、箱状のカセットケース31のうちで、第1〜第3角部321〜323のいずれかに強い物理的衝撃が加えられやすい。本実施形態では、第1〜第3角部321〜323が、それぞれ角部突起631によって補強されている。そのため、第1〜第3角部321〜323に強い物理的衝撃が加えられても、角部突起631によって物理的衝撃が緩衝されるため、カセットケース31の破損が抑制される。
第1角部321および第3角部323は、平面視でカセットケース31の対角上に位置し、且つ、それぞれ角部突起631によって補強されている。そのため、第1角部321および第3角部323のいずれか一方の角部に物理的衝撃が加えられた場合、物理的衝撃を他方の角部に分散して受けることができる。例えば第1角部321に物理的衝撃が加えられた場合には、第1角部321を補強する角部突起631と、第3角部323を補強する角部突起631とによって、物理的衝撃が緩衝される。
先述したように、共通部32の幅T(図39参照)は、テープ幅に関係なく一定である。つまり、上ケース311における角部321〜324の上面の高さ位置と、カセットケース31に収納されるテープの幅方向中心位置とは、テープカセット30のテープ種類にかかわらず一定である。そのため、上ケース311および下ケース312の幅寸法が異なっていても、角部突起631からテープの幅方向中心位置までの距離も常に一定である。
したがって、テープカセット30のテープ種類、すなわち上ケース311および下ケース312の幅寸法にかかわらず、角部突起631を共通の高さ位置および突出幅で設けることができる。上ケース311および下ケース312の幅寸法が異なっていても、カセットケース31の強度設計を共通化できる。
図15〜図17、図29〜図36を参照して、テープカセット30を構成する各部の詳細について説明する。以下では、ラミネートタイプのテープカセット30を例示して、カセットケース31に設けられた孔部(ローラ支持孔64〜、第1テープ支持孔65、第2テープ支持孔66、リボン支持孔67、巻取スプール支持孔68およびガイド孔47)と、および、これらの孔部に関連する部材とについて説明する。
図15〜図17、図29および図30を参照して、ローラ支持孔64およびテープ駆動ローラ46について説明する。図15〜図17および図29に示すように、テープ駆動ローラ46は、ローラ支持孔64を介して回転可能に支持されている。ローラ支持孔64は、上板305に設けられた開口部64Aと、底板306に設けられた開口部64Bとを含む。開口部64Aおよび開口部64Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられた貫通孔である。
図30に示すように、テープ駆動ローラ46は、カセットケース31の高さとほぼ等しい高さを有する円筒体である。テープ駆動ローラ46の本体部46Eの外径は、開口部64A,64Bの径よりも大きい。本体部46Eの外周面が、テープに当接するローラ面46Cである。ローラ面46Cの上下方向長さ(つまり、テープ送り幅)は、テープ幅と同一である。
テープ駆動ローラ46の上端部46Aは、本体部46Eの上端面中央から上方向に突出する円筒部である。テープ駆動ローラ46の下端部46Bは、本体部46Eの下端面中央から下方向に突出する円筒部である。上端部46Aおよび下端部46Bの外径は、それぞれ開口部64A,64Bの径よりも若干小さい。テープ駆動ローラ46の内部には、本体部46E、上端部46Aおよび下端部46Bを上下方向に貫通する軸孔46Dが設けられている。
カセットケース31の内部では、上端部46Aが上板305の開口部64Aに嵌め込まれ、且つ、下端部46Bが底板306の開口部64Bに嵌め込まれている。詳細には、本体部46Eの上端部は、開口部64Aの開口縁に沿って上板305から下方に突出する支持体に当接している。本体部46Eの下端部は、開口部68Bの開口縁に沿って底板306から上方に突出する支持体に当接している。これにより、テープ駆動ローラ46は、本体部46Eで上下方向への移動が規制されつつ、上端部46Aおよび下端部46Bにて回転可能に支持される。
テープ駆動ローラ46の内周面(つまり、軸孔46Dを形成する内壁)には、下端部から上方に延びる複数のリブ46Fが設けられている。テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、テープ駆動軸100(図45参照)が開口部64Bを介して軸孔46Dに挿入される。軸孔46D内では、複数のカム部材100A(図45参照)が、複数のリブ46Fに噛み合う。なお、軸孔46Dの径は、テープ駆動軸100の軸径よりも若干大きい。そのため、軸孔46Dの内部に挿入されたテープ駆動軸100は、周方向の遊びが若干大きい。
従来では、下ケース312の成型時に、開口部64B近傍の厚みを小さくするための凹部(所謂、肉盗部)を、下ケース312の内側(つまり、底板306の上面側)に形成することがあった。この場合、作業者がテープ駆動ローラ46を下ケース312の開口部64Bに取り付ける際に、テープ駆動ローラ46の下端部46Bが開口部64B近傍の肉盗部に引っ掛かり、テープ駆動ローラ46の回転不良を生じるおそれがあった。そのため、従来のテープカセットの製造工程では、作業者がテープ駆動ローラ46を肉盗部に引っ掛けないように注意を払う必要があった。
本実施形態では、下ケース312の成型時に、開口部64B近傍の厚みを小さくする肉盗部990が、下ケース312の外側(つまり、底板306の下面側)に形成される(図16参照)。これにより、下ケース312の内側における開口部64B近傍を平坦にすることができ、肉盗部に起因するテープ駆動ローラ46の回転不良を抑制できる。ひいては、上記のような肉盗部に注意を払う作業者の負担を軽減できる。
図15〜図17、図29および図31を参照して、第1テープ支持孔65および第1テープスプール40について説明する。図17および図29に示すように、第1テープ領域400に収納された第1テープスプール40は、第1テープ支持孔65を介して回転可能に支持されている。
図15、図16および図31に示すように、第1テープ支持孔65は、上板305に設けられた開口部65Aと、底板306に設けられた開口部65Bと、開口部65A,65B間を連通する軸孔65Cとを含む。開口部65Aおよび開口部65Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられた貫通孔である。
図31に示すように、上ケース311は、開口部65Aから下方に向けて延設された複数の係止リブ784を備える。各係止リブ784は、それぞれの先端側がカセットケース31の内部で互いに対向する方向に突起する鉤状体である。下ケース312は、開口部65Bから上方に向けて延設される円筒状の筒壁部785を備える。
筒壁部785には、上下方向に切り込まれた複数のスリット787が設けられている。各スリット787の上側開口端は、それぞれ、頭部786によって閉じられている。カセットケース31の内部では、各スリット787に嵌め込まれた係止リブ784が、それぞれ頭部786に係止されている。筒壁部785の内部には、上下方向に貫通する軸孔65Cが設けられている。開口部65A,65Bは、軸孔65Cによって連通している。
第1テープスプール40は、内壁40Aと外壁40Bとの二重壁構造を有する。内壁40Aは、筒壁部785の外径よりも若干内径が大きい円筒体であり、テープ幅よりも小さい高さを有する。内壁40Aの内部には、上下方向に貫通する軸孔40Dが設けられている。外壁40Bは、内壁40Aを全周に亘って取り囲む円筒体であり、テープ幅とほぼ同一の高さを有する。外壁40Bの外周面には、両面粘着テープ58が巻回されている。なお、レセプタタイプのテープカセット30では、印字テープ57が外壁40Bに巻回される(図7参照)。サーマルタイプのテープカセット30では、感熱紙テープ55が外壁40Bに巻回される(図8参照)。
第1テープスプール40は、内壁40Aと外壁40Bとの間に架設された複数の連結体40Cを有する。第1テープスプール40は、複数の連結体40Cによって、内壁40Aおよび外壁40Bが同軸をなす二重筒状に構成される。第1テープスプール40は、軸孔40Dに挿入された筒壁部785によって回転可能に軸支される。軸孔65Cの径は、補助軸110の軸径と比較して略等しいか若干大きい程度である。
図29および図31に示すように、第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58の幅方向の両端面には、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム) 製のスペーサ980が設けられている。スペーサ980は、第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58の巻回径が最も大きい状態で、その巻回径以上の径を有する円盤体である。本実施形態のスペーサ980は、第1テープ領域400とほぼ同径であり、両面粘着テープ58の最大巻回径よりも若干大きい径を有する。
スペーサ980は、第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58から粘着剤が滲み出すのを防止する。これにより、例えば第1テープスプール40と上板305および底板306とが、両面粘着テープ58から滲み出た粘着剤によって接着されることを抑制できる。ひいては、第1テープスプール40の円滑な回転が妨げられることを抑制できる。
図15〜図17、図29、図32〜図34を参照して、第2テープ支持孔66および第2テープスプール41について説明する。図17および図29に示すように、第2テープ領域410に収納された第2テープスプール41は、第2テープ支持孔66を介して回転可能に支持されている。
図15、図16および図32に示すように、第2テープスプール41は、テープ幅とほぼ同一の高さを有する円筒体である。第2テープスプール41の外周面には、フィルムテープ59が巻回されている。第2テープ支持孔66は、上板305の下面側に設けられた上テープ支持部66Aと、底板306の上面側に設けられた下テープ支持部66Bとを含む。上テープ支持部66Aおよび下テープ支持部66Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられ、互いに連結されている。
図32に示すように、上テープ支持部66Aは、上基部581と円筒部582とを含む。上基部581は、上板305から下方に突出して下端面を有する円筒体である。上基部581は、第2テープスプール41の軸孔41Aに上方から挿入される。円筒部582は、上基部581の下端面中央から下方に突出する小径の円筒体であり、上下方向に貫通する軸孔を有する。
下テープ支持部66Bは、下基部583と、支持軸584と、複数の係止突起585と、複数の係止溝586と、拡径防止体587(図34参照)とを含む。下基部583は、底板306から上方に突出して上端面を有する円筒体である。下基部583は、第2テープスプール41の軸孔41Aに下方から挿入される。支持軸584は、下基部583の上端面中央に立設された小径の軸体であり、上端部が円筒部582の軸孔に嵌め込まれる。複数の係止突起585は、下基部583の上端面の周縁に沿って、平面視で支持軸584を中心として放射状に配置される複数の角柱体である。複数の係止溝586は、隣り合う係止突起585の間にそれぞれ形成される複数の溝部である。拡径防止体587については、別途後述する。
回転部材571は、円筒状突起571A、一対の突条571B、および本体部571Cを含む。本体部571Cは、軸孔41Aと略同径を有する円筒体である。一対の突条571Bは、本体部571Cの外周面に設けられ、且つ、互いに対向する位置に径外側に突出している。円筒状突起571Aは、本体部571Cの一端側から突出する、本体部571Cよりも小径の円筒体である。円筒状突起571Aの外周面には、クラッチバネ572が装着される。
クラッチバネ572は、円環部572Aと係止部572Bとを含むコイルバネである。円環部572Aは、円筒状突起571Aの外周面に装着されるコイルである。係止部572Bは、円環部572Aの後端(図32では下端)から径外側に延設された、コイルの先端部である。円環部572Aは、円環部572Aの先端(図32では上端)から後端(つまり、係止部572B)に向けて、時計回り方向に巻回されている。クラッチバネ572は、円筒状突起571Aの外径よりも僅かに小径となるように巻回されている。
円筒状突起571Aは、円環部572Aの先端側から後端側に向けて貫通するように、僅かに拡径された円環部572Aに挿入される。これにより、円環部572Aがその弾性力によって円筒状突起571Aの外周面に密着し、且つ、係止部572Bが円筒状突起571Aの先端側に配置される。円環部572Aの巻回方向(つまり、円環部572Aの先端から後端に向けて時計回り方向)は、平面視でのフィルムテープ59の引き出し方向と一致する。
クラッチバネ572が装着された回転部材571は、円筒状突起571Aが下テープ支持部66Bと対向するように、第2テープスプール41の軸孔41A内に装着される。軸孔41Aの内周面における相互に対向する位置には、上下方向に延びる一対の摺動溝41Bが設けられている。軸孔41A内では、回転部材571の各突条571Bが、第2テープスプール41の各摺動溝41Bにそれぞれ嵌まる。
これにより、突条571Bと摺動溝41Bとが協動して、回転部材571が第2テープスプール41と一体に回転可能となる。さらに、第2テープスプール41に装着された回転部材571(詳細には、円筒状突起571Aの軸孔)に、下テープ支持部66Bの支持軸584が挿入される。これにより、第2テープスプール41が、回転部材571を介して、支持軸584を中心に回転可能となる。
図33および図34に示すように、回転部材571に支持軸584が挿入された状態では、円筒状突起571Aが下基部583の上端面に対向する。クラッチバネ572は、円環部572Aが密着している円筒状突起571Aと、複数の係止突起585との間に配設される。係止部572Bは、複数の係止溝586の一つに係止される。先述のように、円環部572Aの巻回方向は、フィルムテープ59の引き出し方向(時計回り方向)と一致している。そのため、円環部572Aは、平面視で時計回り方向の回転力が作用した場合には拡径し、平面視で反時計回り方向の回転力が作用した場合には縮径する。
下基部583の上端面には、複数の拡径防止体587が設けられている。各拡径防止体587は、支持軸584と対向する各係止突起585の面に沿って立設された、小径の略円柱体である。言い換えると、複数の拡径防止体587は、平面視で支持軸584を中心として放射状に設けられ、且つ、複数の係止突起585の若干内側に設けられている。円環部572Aは、平面視で複数の拡径防止体587の内側に位置する。円環部572Aは、所定幅まで拡径すると複数の拡径防止体587に接触するため、所定幅以上に拡径することが規制される。円環部572Aが複数の拡径防止体587に接触する大きさまで拡径すると、円環部572Aと円筒状突起571Aとの密接状態が解除される。
フィルムテープ59の引き出しによって第2テープスプール41が時計回り方向に回転すると、第2テープスプール41を介して回転部材571に時計回り方向の回転力が作用する。このとき、係止部572Bが係止溝586に係止されていることによって、円筒状突起571Aと円環部572Aとの間に摺動摩擦が生じ、円環部572Aに時計回り方向のトルクが加えられる。これにより、円環部572Aは巻き戻されて拡径し、円筒状突起571Aと円環部572Aとの間に生じる摺動摩擦が小さくなる。円環部572Aが複数の拡径防止体587に接触する所定幅まで拡径すると、クラッチバネ572と第2テープスプール41との連結が解除される。このとき、クラッチバネ572が第2テープスプール41に付与する回転負荷は相対的に小さいため、第2テープスプール41はスムーズに回転可能となる。
これにより、第2テープスプール41は、フィルムテープ59の引き出し方向に回転しているときに、クラッチバネ572によって定量的で安定した回転負荷(つまり、負荷トルク)が付与される。そのため、フィルムテープ59へ安定したバックテンションが付与されて、第2テープスプール41から引き出される単位時間当たりのフィルムテープ59の量を安定させることができる。ひいては、印字動作時におけるフィルムテープ59の走行を安定させて、フィルムテープ59の走行不良に起因する印字品質の劣化を抑制できる。
一方、第2テープスプール41をフィルムテープ59の引き出し方向とは反対方向(つまり、反時計回り方向)に回転させる外力が加えられると、第2テープスプール41を介して回転部材571に反時計回り方向の回転力が作用する。このとき、円筒状突起571Aと円環部572Aとの間に生じる摺動摩擦によって、円環部572Aに反時計回り方向のトルクが加えられる。これにより、円環部572Aは巻き込まれて縮径し、円筒状突起571Aと円環部572Aとの間に生じる摺動摩擦が大きくなる。つまり、クラッチバネ572と第2テープスプール41とが連結されて、第2テープスプール41に相対的に大きな回転負荷が付与される。これにより、フィルムテープ59が引き出し方向とは反対方向に回転することが規制される。
円環部572Aは、複数の拡径防止体587に接触する所定幅(第2テープスプール41の回転がスムーズになるという条件を満たす拡径幅)まで拡径可能である。複数の拡径防止体587によって、円環部572Aの過剰な拡径が規制される。この場合、円環部572Aが拡径状態から縮径状態に戻ったときに、円環部572Aが反転する程度が小さくなるため、第2テープスプール41が反転する作用も小さくなる。したがって、円環部572Aが拡径状態から縮径状態に戻ったときに、第2テープスプール41から既に引き出されたフィルムテープ59がカセットケース31内に引き戻されにくくなる。
図33に示すように、上テープ支持部66Aの上基部581は、第1径部581Aと、第2径部581Bと、テーパ部581Cとを含む。第1径部581Aは、上板305から下方に突出した、第2テープスプール41の軸孔よりも若干外径が小さい円筒部である。テーパ部581Cは、第1径部581Aから下方に延びる円錐状の筒部であって、下方に向けて外径が漸減している。第2径部581Bは、テーパ部581Cから下方に延びる有底の円筒部であって、第1径部581Aの外径よりも小径である。第2径部581Bの下端面に、先述の円筒部582が形成されている。
下テープ支持部66Bの下基部583は、第1径部583Aと、第2径部583Bと、テーパ部583Cとを含む。第1径部583Aは、底板306から上方に突出した、第2テープスプール41の軸孔とほぼ同径の外径を有する円筒部である。テーパ部583Cは、第1径部583Aから上方に延びる円錐状の筒部であって、上方に向けて外径が漸減している。第2径部583Bは、テーパ部583Cから上方に延びる有底の円筒部であって、第1径部583Aの外径よりも小径である。第2径部583Bの上端面に、先述の支持軸584が形成されている。
先述したように、下基部583の第1径部583Aは、第2テープスプール41の軸孔とほぼ同径である。そのため、第2テープスプール41の軸孔内に挿入される下テープ支持部66Bのうち、第1径部583Aのみが第2テープスプール41の内壁に接触して下端側を回転支持する。一方、上基部581の第1径部581Aは、第2テープスプール41の軸孔よりも若干小径である。そのため、第2テープスプール41の軸孔内に挿入される上テープ支持部66Aは、その全体が第2テープスプール41の内壁に接触しない。ただし、第2テープスプール41が回転によって外周側に偏った場合には、上テープ支持部66Aのうち第1径部581Aのみが第2テープスプール41の内壁に接触して、第2テープスプール41の上端側を回転支持する。
これにより、第2テープスプール41と上テープ支持部66Aおよび下テープ支持部66Bとの接触面積を最小限に抑えることができ、第2テープスプール41の回転負荷を小さくできる。第2テープスプール41の回転負荷を小さくするためのグリスの塗布が不要となるため、第2テープスプール41のリサイクル性を高めることができる。
ところで、上ケース311と下ケース312は別部品であるため、それぞれ別々の金型で成型されたのち、作業者によって組み付けられる。このとき、上テープ支持部66Aおよび下テープ支持部66Bの製造精度や組み付け誤差などによって、第1径部581Aの軸線と第1径部583Aの軸線とが正確に一致しないことがある。言い換えると、カセットケース31内で、第1径部581Aと第1径部583Aとが正確に上下方向に対向しないことがある。
この場合、第1径部581Aが第2テープスプール41の上端側に付与する回転負荷と、第1径部583Aが第2テープスプール41の下端側に付与する回転負荷とに差が生じて、第2テープスプール41の回転むらの原因となるおそれがある。その対策として、従来のテープカセットの製造工程では、上テープ支持部66Aおよび下テープ支持部66Bの製造精度や組み付け誤差を、作業者が厳密に管理していた。
本実施形態では、上テープ支持部66Aの第1径部581Aが、下テープ支持部66Bの第1径部583Aよりも外径が若干小さい。言い換えると、第2テープスプール41の軸孔内で、第1径部581Aは周方向の遊びを有する。第1径部581Aの軸線と第1径部583Aの軸線とが正確に一致しない場合でも、第1径部581Aが第2テープスプール41の上端側に付与する摺動負荷は小さい。
よって、上テープ支持部66Aおよび下テープ支持部66Bの製造精度や組み付け誤差などが生じた場合でも、第1径部583Aが第2テープスプール41の回転を適切に支持できる。ひいては、第2テープスプール41の回転むらの発生を抑制でき、且つ、上記のような製造精度や組み付け誤差を管理する作業者の負担を軽減できる。
下基部583の第1径部583Aは第2テープスプール41の軸孔とほぼ同径であるため、第2テープスプール41の回転時に発生する下テープ支持部66Bの振動が小さい。一方、上基部581の第1径部581Aは第2テープスプール41の軸孔よりも小さいため、第2テープスプール41の回転時に発生する上テープ支持部66Aの振動が大きい。よって、第2テープスプール41に装着された回転部材571のクラッチバネ572は、上テープ支持部66Aよりも下テープ支持部66Bに連結されることが好適である。
下テープ支持部66Bの下基部583には、支持軸584、係止突起585および係止溝586が設けられている。第2テープスプール41に装着された回転部材571のクラッチバネ572は、下テープ支持部66Bに連結される。これにより、第2テープスプール41の回転時に生じる回転部材571の振動も抑制できるため、クラッチバネ572が付与する回転負荷にむらが発生することを抑制できる。ひいては、第2テープスプール41の回転を安定させることができる。
図15〜図17、図29、図32〜図34を参照して、リボン支持孔67およびリボンスプール42について説明する。図17および図29に示すように、第1リボン領域420に収納されたリボンスプール42は、リボン支持孔67を介して回転可能に支持されている。リボンスプール42は、テープ幅とほぼ同一の高さを有する円筒体である。リボンスプール42の外周面には、未使用のインクリボン60が巻回されている。
図15、図16および図32に示すように、リボン支持孔67は、上板305の下面側に設けられた上リボン支持部67Aと、底板306の上面側に設けられた下リボン支持部67Bとを含む。上リボン支持部67Aおよび下リボン支持部67Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられ、互いに連結されている。
図32に示すように、上リボン支持部67Aは、上基部591と、円筒部592と、複数の係止突起593と、複数の係止溝594とを含む。上基部591は、上板305から下方に突出して下端面を有する円筒体である。上基部591は、リボンスプール42の軸孔42Aに上方から挿入される。円筒部592は、上基部591の下端面中央から下方に突出する小径の円筒体であり、上下方向に貫通する軸孔を有する。複数の係止突起593は、上基部591の下端面の周縁に沿って、平面視で円筒部592を中心として放射状に配置される複数の角柱体である。複数の係止溝594は、隣り合う係止突起593の間にそれぞれ形成される複数の溝部である。
下リボン支持部67Bは、下基部595と支持軸596とを含む。下基部595は、底板306から上方に突出して上端面を有する円筒体である。下基部595は、リボンスプール42の軸孔42Aに下方から挿入される。支持軸596は、下基部595の上端面中央に立設された小径の軸体であり、上端部が円筒部592の軸孔に嵌め込まれる。
本実施形態では、第2テープ支持孔66とリボン支持孔67とが、ほぼ同様の連結構造を有する。そのため、支持軸584、596の軸径、円筒部582、592の孔径、複数の係止突起585、593(つまり、係止溝586、594)の数量、形状、位置関係などが、互いに共通である。リボンスプール42は、第2テープスプール41とほぼ同一の構成を有している。そのため、軸孔41A、42Aの形状及び孔径は互いに共通であり、軸孔42Aの内周面にも摺動溝41Bと同様の摺動溝42Bが設けられている。ただし、第2テープ支持孔66では係止突起585および係止溝586が下ケース312に設けられているのに対し、リボン支持孔67では係止突起593および係止溝594が上ケース311に設けられている点で異なる。
リボンスプール42に装着される回転部材571およびクラッチバネ572は、第2テープスプール41に装着される回転部材571およびクラッチバネ572と共通部品である。第2テープスプール41に装着される場合と同様に、クラッチバネ572が装着された回転部材571は、リボンスプール42の軸孔42Aに装着される。軸孔42A内では、回転部材571の各突条571Bが、リボンスプール42の各摺動溝42Bにそれぞれ嵌まる。リボンスプール42に装着された回転部材571(詳細には、円筒状突起571Aの軸孔)に、下リボン支持部67Bの支持軸596が挿入される。
ただし、クラッチバネ572が装着された回転部材571は、円筒状突起571Aが上リボン支持部67Aと対向するように、軸孔42A内に装着される。つまり、回転部材571およびクラッチバネ572は、第2テープスプール41に装着される場合とは上下方向を逆にしてリボンスプール42に装着される。これにより、円環部572Aの巻回方向(つまり、円環部572Aの先端から後端に向けて時計回り方向)は、底面視でのインクリボン60の引き出し方向(時計回り方向)と一致する。すなわち、円環部572Aの巻回方向は、平面視でのインクリボン60の引き出し方向(反時計回り方向)と一致する。
回転部材571に支持軸596が挿入された状態では、円筒状突起571Aは上基部591の下端面に対向する。クラッチバネ572は、円環部572Aが密着している円筒状突起571Aと、複数の係止突起593との間に配設される。係止部572Bが、複数の係止溝594の一つに係止される。先述のように、円環部572Aの巻回方向は、インクリボン60の引き出し方向(反時計回り方向)と一致する。そのため、円環部572Aは、平面視で反時計回り方向の回転力が作用した場合には拡径し、平面視で時計回り方向の回転力が作用した場合には縮径する。
インクリボン60の引き出しによってリボンスプール42が反時計回り方向に回転すると、第2テープスプール41が時計回り方向に回転されるときと同様に、円環部572Aの拡径によってリボンスプール42がスムーズに回転可能となる。一方、リボンスプール42をインクリボン60の引き出し方向とは反対方向(つまり、時計回り方向)に回転させる外力が加えられると、第2テープスプール41が反時計回り方向に回転されるときと同様に、円環部572Aの縮径によってリボンスプール42に大きな回転負荷が付与される。
本実施形態では、上リボン支持部67Aの上基部591は、先述の上基部581と同様の構成であり、第1径部591A、第2径部591Bおよびテーパ部591Cを有する(図33参照)。下リボン支持部67Bの下基部595は、先述の下基部583と同様の構成であり、第1径部595A、第2径部595Bおよびテーパ部595Cを有する(図33参照)。ただし、上基部591の第1径部591Aは、リボンスプール42の軸孔とほぼ同径の外径を有する円筒部である。下基部595の第1径部595Aは、リボンスプール42の軸孔よりも若干外径が小さい円筒部である。
リボンスプール42の軸孔内に挿入される上リボン支持部67Aのうち、第1径部591Aのみがリボンスプール42の内壁に接触して上端側を回転支持する。一方、リボンスプール42の軸孔内に挿入される下リボン支持部67Bは、その全体がリボンスプール42の内壁に接触しない。ただし、リボンスプール42が回転によって外周側に偏った場合には、下リボン支持部67Bのうち第1径部595Aのみがリボンスプール42の内壁に接触して、リボンスプール42の下端側を回転支持する。
これにより、リボンスプール42と上リボン支持部67Aおよび下リボン支持部67Bとの接触面積を最小限に抑えることができ、リボンスプール42の回転負荷を小さくできる。リボンスプール42の回転負荷を小さくするためのグリスの塗布が不要となるため、リボンスプール42のリサイクル性を高めることができる。
上基部591の第1径部591Aはリボンスプール42の軸孔とほぼ同径であるため、リボンスプール42の回転時に発生する上リボン支持部67Aの振動が小さい。一方、下基部595の第1径部595Aはリボンスプール42の軸孔よりも小さいため、リボンスプール42の回転時に発生する下リボン支持部67Bの振動が大きい。よって、リボンスプール42に装着された回転部材571のクラッチバネ572は、下リボン支持部67Bよりも上リボン支持部67Aに連結されることが好適である。
上リボン支持部67Aの上基部591には、円筒部592、係止突起593および係止溝594が設けられている。リボンスプール42に装着された回転部材571のクラッチバネ572は、上リボン支持部67Aに連結される。これにより、リボンスプール42の回転時に生じる回転部材571の振動も抑制できるため、クラッチバネ572が付与する回転負荷にむらが発生することが抑制できる。ひいては、リボンスプール42の回転を安定させることができる。
図32〜図34を参照して、テープカセット30の製造時に、第2テープスプール41およびリボンスプール42をカセットケース31に組み付ける方法について説明する。まず作業者は、フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41を、第2下テープ領域410Bに収納する。このとき、作業者は下ケース312の支持軸584を、第2テープスプール41の軸孔41Aに挿入する。
次に、作業者はクラッチバネ572が装着された回転部材571を、第2テープスプール41の軸孔41A内に装着する。このとき、作業者は、各突条571Bを各摺動溝41Bに挿入し、且つ、支持軸584を円筒状突起571Aの軸孔に挿入する。ただし、作業者は、円筒状突起571A(つまり、クラッチバネ572)が下向きとなるように、回転部材571を軸孔41A内に装着する。すると、軸孔41A内では係止部572Bがいずれかの係止溝586に係止されるため、フィルムテープ59にバックテンションが付与される。よって、下ケース312に上ケース311が組み付けられる前であっても、第2テープスプール41に巻回されているフィルムテープ59が外周側に膨らむことを抑制できる。
一方、作業者は、インクリボン60が巻回されたリボンスプール42を、第1下リボン領域420Bに収納する。このとき、下ケース312の支持軸596を、リボンスプール42の軸孔42Aに挿入する。
次に、作業者は、クラッチバネ572が装着された回転部材571を、リボンスプール42の軸孔42A内に装着する。このとき、作業者は、各突条571Bを各摺動溝42Bに挿入し、且つ、支持軸596を円筒状突起571Aに挿入する。ただし、作業者は、円筒状突起571A(つまり、クラッチバネ572)が上向きとなるように、回転部材571を軸孔42A内に装着する。言い換えると、作業者は、クラッチバネ572が装着された回転部材571を、第2テープスプール41およびリボンスプール42に対して、各々の上下方向が反転するように装着する。
下ケース312に上ケース311が組み付けられる前の状態では、係止部572Bが係止溝594に係止されていないため、インクリボン60にバックテンションは付与されない。しかしながら、インクリボン60は、フィルムテープ59等よりも厚みが小さく、且つ、材料成分として磁性体を含有している。そのため、インクリボン60は、静電気の影響等を受けて巻回状態が維持されやすい。つまり、リボンスプール42に巻回されているインクリボン60は、バックテンションの付与がなくても外周側への膨らみが発生しにくい。
最後に、作業者は上ケース311を下ケース312に組み付けて、下ケース312の支持軸584、596の上端部を、上ケース311の円筒部582、592の軸孔にそれぞれ嵌め込む。軸孔42A内では係止部572Bがいずれかの係止溝594に係止されるため、インクリボン60にもバックテンションが付与される。このように、上ケース311および下ケース312が組み付けられる際に、フィルムテープ59およびインクリボン60がバラけにくいため、カセットケース31の組付け性を向上させることができる。
フィルムテープ59およびインクリボン60にそれぞれバックテンションを付与するためのブレーキ部材(回転部材571およびクラッチバネ572)を共通の構成にすることで、テープカセット30の設計・製造を容易にすることができる。特に、ブレーキ部材を同一部品とすることで、ブレーキ部材の部品管理を容易にすることができる。第2テープスプール41およびリボンスプール42に対するブレーキ部材の組付け誤りを抑制できる。ブレーキ部材は回転部材571およびクラッチバネ572からなる簡易な構造であるため、ブレーキ部材の部品組立を容易にすることができる。
第2テープスプール41がフィルムテープ59の引き出し方向に回転される場合には、フィルムテープ59がスムーズに引き出される。このとき、フィルムテープ59が過剰に引き出されない程度に、フィルムテープ59に小さなバックテンションが付与される。第2テープスプール41がフィルムテープ59の引き出し方向とは反対方向に回転される場合には、第2テープスプール41の回転を規制するように、フィルムテープ59に大きなバックテンションが付与される。よって、フィルムテープ59を安定的に搬送でき、且つ、フィルムテープ59における皺や弛みの発生を抑制できる。
リボンスプール42がインクリボン60の引き出し方向に回転される場合には、インクリボン60がスムーズに引き出される。このとき、インクリボン60が過剰に引き出されない程度に、リボンスプール42に小さなバックテンションが付与される。リボンスプール42がインクリボン60の引き出し方向とは反対方向に回転される場合には、リボンスプール42の回転を規制するように、インクリボン60に大きなバックテンションが付与される。よって、インクリボン60を安定的に搬送でき、且つ、インクリボン60における皺や弛みの発生を抑制できる。
本実施形態では、屈曲部533にコロ部材535が設けられているので(図5〜図8、図29参照)、テープ搬送経路上でテープに加えられる負荷が低減されている。したがって、ブレーキ部材に起因するバックテンションを、フィルムテープ59に対して安定的に付与できる。さらに、フィルムテープ59およびインクリボン60は互いの搬送方向が逆方向であって、それぞれ印字位置まで分離した状態で搬送される。
したがって、第2テープ領域410と第1リボン領域420とが隣接している場合でも、フィルムテープ59およびインクリボン60が互いの搬送に引きずられにくい。フィルムテープ59およびインクリボン60にそれぞれ付与されるバックテンションが相互に干渉することを抑制でき、ひいてはフィルムテープ59およびインクリボン60を安定的に搬送できる。
ところで、例えばユーザの不正な操作によって、アーム部34の排出口341から排出されたテープが、排出口341からアーム部34内に誤って押し込まれることがある。この場合、排出口341から押しこまれたテープが許容量を越えてしまうと、カセットケース31内で逆流するおそれがある。そうすると、逆流したテープが第1リボン領域420の近傍や第2テープ領域410内で広がってしまい、ジャムを生じる可能性がある。
本実施形態では、第1リボン領域420の近傍には、先述の規制リブ532(図5〜図8、図29参照)が設けられている。排出口341からテープが押し込まれた場合には、逆流したテープが第1リボン領域420の近傍で広がることが、規制リブ532によって抑制される。これに伴って、逆流したテープが第2テープ領域410内に進入することも抑制される。したがって、排出口341からテープが押し込まれたことに起因するジャムの発生を抑制できる。
図15〜図17、図29および図35を参照して、巻取スプール支持孔68およびリボン巻取スプール44について説明する。図17および図29に示すように、リボン巻取スプール44は、第2リボン領域440に収納された状態で、巻取スプール支持孔68を介して回転可能に支持されている。図15、図16および図35に示すように、巻取スプール支持孔68は、上板305に形成された開口部68Aと、底板306に形成された開口部68Bとを含む。開口部68Aおよび開口部68Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられた貫通孔である。
図35に示すように、リボン巻取スプール44は、カセットケース31の高さとほぼ等しい高さを有する円筒体である。リボン巻取スプール44の上端縁および下端縁には、それぞれ径外方向の全周に亘って突出するフランジ状の支持部44Eが設けられている。上側の支持部44Eと下側の支持部44Eとの上下方向長さは、インクリボン60の幅とほぼ等しい。リボン巻取スプール44の外周面のうち、上側の支持部44Eと下側の支持部44Eとの間に、使用済みのインクリボン60が巻回される。
カセットケース31の内部では、リボン巻取スプール44の上端部44Aが開口部68Aに嵌め込まれ、且つ、下端部44Bが開口部68Bに嵌め込まれている。リボン巻取スプール44の上端縁では、支持部44Eが上板305の下面に当接しているので、リボン巻取スプール44の上方向への移動が規制される。リボン巻取スプール44の下端縁では、底板306の上面に支持部44Eが当接しているので、リボン巻取スプール44の下方向への移動が規制される。これにより、リボン巻取スプール44は、上端部44Aおよび下端部44Bにて回転可能に支持される。
リボン巻取スプール44の内部には、上下方向に貫通する軸孔44Cが形成されている。リボン巻取スプール44の内周面(つまり、軸孔44Cを形成する内壁)には、下端部から上方に延びる複数のリブ44Dが設けられている。テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、リボン巻取軸95(図45参照)が開口部68Bを介して軸孔44Cに挿入される。軸孔44C内では、複数のカム部材95A(図45参照)が、複数のリブ44Dに噛み合う。これにより、リボン巻取軸95の回転がリボン巻取スプール44に伝達される。なお、軸孔44Cの径は、リボン巻取軸95の軸径よりも若干大きい。そのため、軸孔44Cの内部に挿入されたリボン巻取軸95は、周方向の遊びが若干大きい。
図16および図35に示すように、リボン巻取スプール44の下端部には、クラッチバネ340が設けられている。クラッチバネ340は、下側の支持部44Eの直下に巻回されている。クラッチバネ340から径外側に突出するコイルの先端部は、バネ端部340Aである。バネ端部340Aは、下ケース312のバネ装着溝328に嵌め込まれている。バネ装着溝328は、底板306に形成された溝部であり、開口部68Bから右側後方(図35では左上方向)に延びている。
図18および図20に示すように、下ケース312の内側には、バネ装着溝328をまたいで底板306から上方に延びるバネ固定壁329が立設されている。バネ固定壁329には、バネ装着溝328から上方に延びる溝部329Aが形成されている。バネ固定壁329と、バネ固定壁329の右端部から後方に延びる壁部と、バネ固定壁329の左端部から右方向に延びる壁部とで囲まれた、平面視で三角形状の領域がバネ固定部345である。
リボン巻取スプール44の取り付け時には、バネ端部340Aは溝部329Aを介して上方からバネ装着溝328に装着される。バネ端部340Aの先端部は上方に向けて屈曲している。バネ端部340Aの屈曲した先端部が、バネ固定部345内で固定される。クラッチバネ340は、リボン巻取スプール44をインクリボン60の巻き取り方向とは反対方向(時計回り方向)に回転させる外力が加えられると、リボン巻取スプール44に大きな回転負荷を付与する。
バネ固定部345は、第1下リボン領域420Bの後側、且つ、第2下リボン領域440Bの右後側に設けられている。つまり、バネ固定部345は、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60の搬送経路(つまり、第1下リボン領域420Bの左方向)、および、リボン巻取スプール44に巻き取られるインクリボン60の搬送経路(つまり、第2下リボン領域440Bの左下方向)とは異なる位置に設けられている。したがって、作業者が下ケース312にリボン巻取スプール44を着脱する際に、バネ端部340Aがインクリボン60に接触して傷つけるおそれを低減できる。
下ケース312にリボン巻取スプール44が取り付けられると、バネ固定部345によってバネ端部340Aの先端部が固定される。これにより、上ケース311が組み付けられていない状態でも、下ケース312に装着されたリボン巻取スプール44の立設状態を安定させることができる。したがって、第2下リボン領域440Bに取り付けられたリボン巻取スプール44が、上ケース311が組み付けられる前に倒れてしまうことを抑制できる。
さらに、図18〜図20および図29に示すように、隔離壁48の右端部に連続して、装着案内壁335が立設されている。装着案内壁335は、第2下リボン領域440Bの左側に隣接して、底板306から上方に延びている。装着案内壁335は、下ケース312および上ケース311が接合された状態で上板305に接触する高さ位置まで延びている。装着案内壁335は、リボン巻取スプール44が第2リボン領域440に取り付けられた状態で、リボン巻取スプール44の外周縁の一部(詳細には、支持部44Eの一部)に沿っている。
作業者がリボン巻取スプール44を下ケース312に取り付ける場合には、リボン巻取スプール44が装着案内壁335に沿って第2下リボン領域440B内に案内される。第2下リボン領域440Bに取り付けられたリボン巻取スプール44は、上ケース311が組み付けられていない状態でも、装着案内壁335によって立設状態が安定する。したがって、第2下リボン領域440Bに取り付けられたリボン巻取スプール44が、上ケース311が組み付けられる前に倒れてしまうことをさらに抑制できる。
さらに、装着案内壁335は、第1下テープ領域400Bの右前側に隣接して設けられている。第1テープスプール40に巻回されている両面粘着テープ58の両端面には、先述のスペーサ980が貼着されている。第1テープ領域400内では、装着案内壁335がスペーサ980の周縁に隣接している。第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58が、第1テープ領域400内で前後左右方向に移動すると、装着案内壁335がスペーサ980の周縁に接触する。
これにより、例えばテープカセット30に振動や傾斜が生じた場合でも、両面粘着テープ58に貼着されたスペーサ980の位置ずれが抑制される。スペーサ980が他の領域(具体的には、第2リボン領域440や第2テープ領域410など)に進入することが抑制される。つまり、スペーサ980が他のスプール(具体的には、リボン巻取スプール44や第2テープスプール41など)に接触するのが抑制される。ひいては、リボン巻取スプール44などの回転不良を抑制できる。
装着案内壁335に対して第1下テープ領域400Bの平面中心(詳細には、開口部65B)を挟んだ反対側、すなわち第1下テープ領域400Bの左後側には、先述の第1周辺壁70が設けられている。第1周辺壁70は、第1下テープ領域400Bの外周縁の一部に沿って設けられ、且つ、下ケース312および上ケース311が接合された状態で上板305に接触する高さ位置まで延びている。第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58が、第1テープ領域400内で前後左右方向に移動すると、第1周辺壁70もスペーサ980の周縁に接触する。
つまり、第1テープ領域400では、装着案内壁335および第1周辺壁70によって、両面粘着テープ58に貼着されたスペーサ980の位置ずれが抑制される。したがって、リボン巻取スプール44などの回転不良をより確実に抑制できる。さらに、作業者は、装着案内壁335および第1周辺壁70に沿って両面粘着テープ58に貼着されたスペーサ980を移動させるだけで、両面粘着テープ58が巻回された第1テープスプール40を第1テープ領域400の適正位置に配置できる。
図15、図16および図36を参照して、ガイド孔47について説明する。図15、図16および図36に示すように、ガイド孔47は、カセットケース31の第2角部322に設けられた、カセットケース31の上下方向に貫通する孔部である。ガイド孔47は、開口部47A、開口部47B、および軸孔47Cを含む。開口部47Aおよび開口部47Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられた貫通孔である。
図36に示すように、開口部47Aは、第2角部322の上面(つまり、第2角部322における上板305)に形成されている。開口部47Bは、第2角部322の下面(つまり、第2角部322における底板306)に形成されている。下ケース312には、開口部47Bから上方に延びる円筒状の筒壁部589が設けられている。カセットケース31の内部では、筒壁部589の上端が開口部47Aに接続されている。軸孔47Cは、筒壁部589の内部で上下方向に延び、開口部47A,47Bを連通させる。
先述したように、本実施形態のガイド孔47は、平面視で、分割線Kに沿った開口幅を長径、かつ、仮想線Gに沿った開口幅を短径とする長孔である(図15参照)。ただし、ガイド孔47は、丸孔、楕円形状孔、長孔などに例示される任意の開口形状で構成してもよい。
図15および図17を参照して、テープカセット30に設けられた各部の位置関係について説明する。図15において斜めに引かれた二点鎖線は、後述する分割線Kを示している。先述のローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65、巻取スプール支持孔68、ヘッド挿入部39は、カセット装着部8のテープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110、リボン巻取軸95、ヘッドホルダ74と対向する位置にそれぞれ設けられている。
詳細には、ローラ支持孔64は、テープカセット30の第4角部324を含む領域Q1に形成されている。領域Q1は、テープカセット30の前部中央に設けられたヘッド挿入部39の左側に隣接している。言い換えると、領域Q1はヘッド挿入部39よりもテープ搬送方向の下流側に位置している。テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、第4角部324がカセット装着部8の領域P1(図4参照)に対向する。
ガイド孔47は、テープカセット30の第2角部322を含む領域Q2に形成されている。テープカセット30を平面視した場合に、領域Q2に含まれる第2角部322は、領域Q1に含まれる第4角部324の対角に位置している。テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、第2角部322がカセット装着部8の領域P2(図4参照)に対向する。
ローラ支持孔64とガイド孔47とを平面視で結ぶ分割線Kを基準としてテープカセット30を平面視で分割した場合に、分割線Kよりも後側を占めるのが領域Q3であり、分割線Kよりも前側を占めるのが領域Q4である。第1テープ支持孔65は、平面視で三角形状をなす領域Q3の重心(つまり、領域Q3を形成する3辺の中線を結ぶ交点)またはその近傍に形成される。巻取スプール支持孔68は、平面視で三角形状をなす領域Q4の重心(つまり、領域Q4を形成する3辺の中線を結ぶ交点)またはその近傍に形成される。第1テープ支持孔65および巻取スプール支持孔68は、平面視で分割線Kを中心としてほぼ対称に位置している。
第2テープ支持孔66は平面視で分割線K上に形成されており、詳細にはテープカセット30の平面視中央とガイド孔47との略中間に位置している。リボン支持孔67は領域Q4に形成されており、詳細には巻取スプール支持孔68よりもテープカセット30の右前側に位置している。
上記のような位置関係によって、ラミネートタイプのテープカセット30(図5および図6参照)の重量分布は次のようになる。第1テープ支持孔65では、カセットケース31の内部で第1テープスプール40が回転支持されている。これは、第1テープスプール40の回転中心(つまり、軸孔40D)が、平面視で領域Q3の範囲内に設けられていることを意味する。言い換えると、第1テープスプール40に巻回されている両面粘着テープ58の重心が、平面視で領域Q3の範囲内に位置している。
リボン支持孔67では、未使用のインクリボン60が巻回されたリボンスプール42が回転支持されている。巻取スプール支持孔68では、使用済みのインクリボン60が巻回されたリボン巻取スプール44が回転支持されている。そのため、インクリボン60の重心が、平面視で領域Q4の範囲内に位置している。第2テープ支持孔66では、フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41が回転支持されている。そのため、フィルムテープ59の重心が、平面視で分割線K上に位置している。
以上のことから、ラミネートタイプのテープカセット30は、分割線Kを基準とした領域Q3の重量と領域Q4の重量が近似する。さらに、テープカセット30全体の重心が、平面視で分割線K上またはその近傍に位置する。このような重量分布によって、テープカセット30のハンドリング性を向上させることができるため、ユーザはテープカセット30の位置決めを正確に行うことができる。
例えば、上記のような重量分布を有するテープカセット30を、ユーザがカセットケース31の左右両端を指で挟持しながら、上面301および底面302を略水平に維持しつつカセット装着部8に垂直に押し込む。このとき、テープカセット30における重量の偏りが少ないことと、テープカセット30の重心が分割線K上またはその近傍に位置することとが相まって、分割線Kを回転中心としてテープカセット30が傾斜することが抑制される。さらに、両面粘着テープ58のほうがインクリボン60よりも重量が大きい場合でも、リボン巻取スプール44の重みによって領域Q3と領域Q4との重量差がさらに小さくなる(つまり、テープカセット30の重量の偏りが軽減される)。
また、レセプタタイプのテープカセット30(図7参照)の重量分布は次のようになる。第1テープ支持孔65では、印字テープ57が巻回された第1テープスプール40が回転支持されている。そのため、印字テープ57の重心が、平面視で領域Q3の範囲内に位置している。一方、インクリボン60の重心は、ラミネートタイプのテープカセット30(図5および図6参照)と同様に、平面視で領域Q4の範囲内に位置している。
したがって、レセプタタイプのテープカセット30も、分割線Kを基準とした領域Q3と領域Q4との重量が近似する。さらに、印字テープ57のほうがインクリボン60よりも重量が大きい場合でも、リボン巻取スプール44の重みによって領域Q3と領域Q4との重量差がさらに小さくなる。よって、上記のラミネートタイプと同様に、テープカセット30のハンドリング性を向上させることができる。
さらに、テープカセット30がカセット装着部8に装着される場合、テープ印字装置1の案内軸がテープカセット30のキャビティに挿入される。案内軸は、カセット装着部8に設けられた軸部であって、テープカセット30のキャビティに挿入された状態で、テープカセット30を着脱方向(本実施形態では、上下方向)に案内する。キャビティは、カセットケース31に設けられた開口部、孔部、凹部のいずれかであって、テープ印字装置1の案内軸が挿入された状態で、テープカセット30を着脱方向に案内する。
本実施形態では、テープ駆動軸100、ガイド軸120および補助軸110を、案内軸として例示する。ローラ支持孔64、ガイド孔47および第1テープ支持孔65を、キャビティとして例示する。複数の案内軸の少なくとも1つが対応するキャビティに挿入されることによって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に案内されるが、詳細は後述する。
図37〜図40を参照して、アーム前面壁35の詳細について説明する。以下の説明では、テープ幅が所定幅(例えば、18mm)以上のテープカセット30を、幅広カセット30という。テープ幅が所定幅未満のテープカセット30を、幅狭カセット30という。図37〜図39に示すように、本実施形態のテープカセット30は幅広カセット30である。
図37に示すように、アーム前面壁35は、アーム指標部800および係止孔820を含む。アーム指標部800は、少なくとも一の孔部を含んでテープカセット30のテープ種類を示す。人はアーム指標部800を目視することでテープ種類を特定できる。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合には、アーム検出部200によってアーム指標部800が示す情報を検出することで、テープ印字装置1がテープ種類を特定できる。
本実施形態では、アーム指標部800および係止孔820は、アーム前面壁35のうちで下アーム前面壁35Bに設けられている。アーム指標部800が特定するテープ種類は、テープ印字装置1にて適正な印字を実行するのに必要な情報(印字用情報)である。以下、アーム前面壁35が有する領域と、その領域内の構成とを説明する。
アーム前面壁35は、排出口341に対してテープ搬送方向上流側に位置する特定領域R0を含む。特定領域R0の左右方向長さは、排出口341と排出案内部49との距離L0以下である。排出口341と排出案内部49との間では、排出口341から排出されたテープが印字面とは反対側の面を前方に露出しつつ排出案内部49に向けて搬送される。つまり、距離L0は、テープが露出される長さであるテープ露出長と同義である。本実施形態では、排出口341から半円溝84の左端までの間のアーム前面壁35全体が、特定領域R0である。
特定領域R0は、係止孔820が形成される第1領域R1と、第1領域R1以外の、アーム指標部800を含む第2領域R2とを有する。以下に、第2領域R2、第1領域R1の順で、各領域について説明する。
図38に示すように、第2領域R2は、縦情報区域Xおよび横情報区域Yを含む。縦情報区域Xは、テープの搬送方向と直交する方向(図38では上下方向)に沿って延びる複数の帯状区域である。横情報区域Yは、テープの搬送方向と平行(図38では左右方向)に延びる複数の帯状区域である。
本実施形態の縦情報区域Xは、5つの縦情報区域X1〜X5を含む。縦情報区域X1〜X5は、排出口341から間隔をおいて配置され、且つ、正面視で左側から右側に向けて等間隔で配置される。縦情報区域X1は、縦情報区域X1〜X5のうちでテープ搬送方向の最下流側(つまり、最も左側)に位置している。縦情報区域X1からテープ搬送方向の上流側(つまり、右側)に向けて、縦情報区域X2、X3、X4、X5が順に設けられる。縦情報区域X1〜X5の幅長(つまり、左右方向長さ)は略等しく、且つ、縦情報区域X1〜X5のうちで隣り合う縦情報区域同士は等間隔で隣接している。
本実施形態の横情報区域Yは、3つの横情報区域Y1〜Y3を含む。横情報区域Y1〜Y3は、正面視で上側から下側に向かって並んで配置される。横情報区域Y1〜Y3のうちで最も上方に位置する横情報区域Y1は、その上下方向中心がアーム前面壁35の高さの略中心となる位置に設けられている。横情報区域Y1から下側に向かって、横情報区域Y2、Y3が順に設けられる。横情報区域Y1〜Y3の幅長(つまり、上下方向長さ)はそれぞれ略等しく、横情報区域Y1〜Y3のうちで隣り合う横情報区域同士はほぼ等間隔で隣接している。
図39に示すように、本実施形態の横情報区域Y1〜Y3のうち、上方の横情報区域Y1、Y2は、アーム前面壁35における所定の高さ寸法(以下、所定高さ)T1の範囲内に設けられる。以下では、所定高さT1の範囲内の領域を、共通指標部831という。より好適には、共通指標部831は、カセットケース31の上下方向(つまり、高さ方向)における中心線Nを中心とした上下方向に対称な領域である。所定高さT1は、テープ幅が異なる複数のテープカセット30の高さのうちで、最も小さい高さと等しい。一方、所定高さT2(T2>T1)の範囲内のうちで共通指標部831以外の領域を、拡張部832という。
横情報区域Y1〜Y3のうち最も下方に位置する横情報区域Y3は、幅広カセット30および幅狭カセット30によって配置が異なる。幅広カセット30では、共通指標部831と下側の拡張部832とにまたがって、横情報区域Y3が配置される。幅狭カセット30では、テープカセット30の高さは所定高さT1と等しいので、拡張部832が存在しない。よって、幅狭カセット30では、共通指標部831の下端部、すなわちアーム前面壁35の下端部に沿って、横情報区域Y3が配置される。
第2領域R2は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、アーム検出スイッチ210に対向する領域である。第2領域R2には、縦情報区域X1〜X5を含むアーム指標部800が設けられる。縦情報区域X1〜X5のうち少なくとも1つの区域内には、孔部が形成される。各縦情報区域X1〜X5に孔部が形成されるか否かは、印字用情報に応じて予め定められている。アーム指標部800は、縦情報区域X1〜X5の各々に孔部が形成されているか否かの組合せによって印字用情報を特定する。人は、縦情報区域X1〜X5に形成された孔部の組合せを目視することで、印字用情報を認識できる。
本実施形態のように、縦情報区域X1〜X5が等間隔で配置されている場合、縦情報区域X1〜X5のなかに孔部が形成されていない区域があったとしても、人はその区域を容易に特定できる。つまり、縦情報区域X1〜X5のうちで、孔部が形成されている区域と、孔部が形成されていない区域とを、人が目視で正確に特定できる。
縦情報区域X1〜X5の上下方向において孔部が形成される位置は、縦情報区域X1〜X5の各々について定められていてもよい。例えば、縦情報区域X1〜X5と横情報区域Y1〜Y3とが交差して重なり合う複数の領域(以下、重なり領域という)のうち、縦情報区域X1〜X5の各々に1つずつの重なり領域を指標部として定める。アーム指標部800は、この指標部に孔部が形成されているか否かの組合せによって、印字用情報を特定してもよい。この場合、アーム検出スイッチ210(図11参照)に対応する位置を指標部として定めれば、テープ印字装置1も印字用情報を特定できる。
本実施形態では、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、5つのアーム検出スイッチ210A〜210E(図11参照)のそれぞれに対向する5つの重なり領域が、指標部800A〜800Eとして機能する。詳細には、図38に示すように、縦情報区域X1と横情報区域Y2とが交差して重なり合う領域が、アーム検出スイッチ210Aに対向する指標部800Aとして機能する。
縦情報区域X2と横情報区域Y1とが交差して重なり合う領域が、アーム検出スイッチ210Bに対向する指標部800Bとして機能する。縦情報区域X3と横情報区域Y2とが交差して重なり合う領域が、アーム検出スイッチ210Cに対向する指標部800Cとして機能する。縦情報区域X4と横情報区域Y1とが交差して重なり合う領域が、アーム検出スイッチ210Dに対向する指標部800Dとして機能する。縦情報区域X5と横情報区域Y3とが交差して重なり合う領域が、アーム検出スイッチ210Eに対向する指標部800Eとして機能する。
このように、縦情報区域X1〜X5には指標部が1つずつ配置される。さらに、隣り合う縦情報区域の指標部同士は、左右方向に並ばない。つまり、指標部800A〜800Eは、ジグザグに配置されている。このような配置を採用した場合には、隣り合う縦情報区域の指標部がいずれも孔部で構成される場合であっても、ある縦情報区域の指標部と隣り合う縦情報区域の指標部との区別をより容易にすることができる。
図38に示す例では、指標部800A、800C、800Dには、孔部が形成されている。指標部800B、800Eは、孔部が形成されていない、アーム前面壁35に含まれる面部の一部である。このように、指標部800A〜800Eは、各々が、人の目視によって識別可能な孔部または面部で構成される。さらに、これらの孔部および面部は、それぞれ、後述の非押圧部801および押圧部802としてそれぞれ機能する。指標部800A〜800Eとアーム検出スイッチ210との関係については、後で詳述する。
第1領域R1は、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、且つ、プラテンホルダ12が印字位置に移動した場合(図6〜図8参照)、係止片225(図11参照)に対向する領域である。図39に示すように、第1領域R1は、共通指標部831内に設けられる。第1領域R1には、係止片225が挿入される係止孔820が形成されている。第1領域R1は、少なくとも係止片225の背面視形状に対応する領域よりも大きい。
第1領域R1は、アーム部34の排出口341から間隔をおいて配置され、且つ、その右端部が少なくとも縦情報区域X1よりもテープ搬送方向の上流側(つまり、右側)に位置している。図38の例では、縦情報区域X1〜X5のうちでテープ搬送方向の最上流側に位置する縦情報区域X5の右端部は、第1領域R1の左右方向の略中心線上に位置する。よって、係止孔820の右端部は、縦情報区域X1〜X5の全てよりもテープ搬送方向の上流側(つまり、右側)に位置している。第1領域R1の左右方向長さは、縦情報区域X1〜X5の幅長のほぼ2倍である。
第1領域R1は、横情報区域Y1〜Y3のうちで最も上方に位置する横情報区域Y1に隣接して上方に設けられている。つまり、係止孔820の上端部は、横情報区域Y1〜Y3の全てよりも上方に位置している。図38の例では、第1領域R1の上下方向長さは、横情報区域Y1〜Y3の幅長の2/3程度である。
係止孔820は、左右方向に延びるスリット状の貫通孔である。テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態で、プラテンホルダ12が待機位置(図5参照)と印字位置(図6〜図8参照)との間で移動するのに伴って、係止片225が係止孔820に挿脱される。係止孔820は、第1領域R1と同一形状の孔部であってもよいし、第1領域R1を含む大きさの孔部であってもよい。係止孔820は、貫通孔ではなく、凹部として形成されてもよい。係止孔820の下壁は、水平方向に対して傾斜する傾斜部821である(図50参照)。係止孔820の上下方向の開口幅は、傾斜部821によって後方に向かって漸減している。
図37を参照して、アーム前面壁35における各種構成要素の位置関係について説明する。図37において、中心線Cは、カセットケース31の左右方向の中心線である。本実施形態のアーム指標部800は、カセットケース31の左右方向の中心位置、つまり中心線C上に設けられている。距離L0は、排出口341と排出案内部49との距離(テープ露出長)を示す。距離L1は、中心線Cから左右基準線C1までの距離を示す。
左右基準線C1は、係止孔820が設けられる左右方向の位置を特定する仮想的な線である。左右基準線C1としては、その線上に必ず係止孔820が位置する線を用いればよく、例えば第1領域R1の左右方向の中心線を用いることができる。上下基準線C2は、係止孔820が設けられる上下方向の位置を特定する仮想的な線である。上下基準線C2としては、その線上に必ず係止孔820が位置する線を用いればよく、例えば第1領域R1の上下方向の中心線を用いることができる。
範囲LW1は、中心線Cからテープ搬送方向下流側(図37では左方向)に向かって、テープ露出長L0の14〜20%の範囲を示す。範囲LW2は、アーム部34の排出口341からテープ搬送方向上流側に向かってテープ露出長L0の30〜36%の範囲を示す。
図37に示すように、特定領域R0の左右方向長さは、テープ露出長L0以下である。距離L1は、テープ搬送方向上流側(図37では右方向)に向かって、テープ露出長L0の18〜24%の範囲内にある。上下基準線C2は、共通指標部831内にある。縦情報区域X1の少なくとも一部は、範囲LW1内にある。縦情報区域X1の少なくとも一部は、範囲LW2内にある。隣り合う縦情報区域の左右方向の中心線同士の間隔は、テープ露出長L0の7〜10%の範囲内にある。
上記のように、アーム前面壁35における各種構成要素の位置関係が規定されているのは、以下の理由による。
第一に、距離L1はテープ露出長L0の18〜24%の範囲内にあることが好ましい。距離L1がテープ露出長L0の18〜24%の範囲よりも大きいと、係止孔820が特定領域R0の範囲外に位置するおそれがあるためである。逆に、距離L1がテープ露出長L0の18〜24%の範囲よりも小さいと、特定領域R0の左右方向の範囲が短くなり、例えば5列の縦情報区域を配置できないおそれがあるためである。
例えば、人が下ケース312単体を目視して、カセットケース31に収納させるべきテープを特定する場合を想定する。この場合、下ケース312にテープが装着されていない状態でも、人は目視でテープ露出長L0の長さおよび中心線Cの位置を特定できる。さらに、人はテープ露出長L0および中心線Cを基準として、係止孔820の位置を特定できる。
第二に、縦情報区域X1の少なくとも一部が、範囲LW1内にあることが好ましい。第三に、縦情報区域X1の少なくとも一部が、範囲LW2内にあることが好ましい。縦情報区域X1が範囲LW1、LW2の範囲外にあると、縦情報区域X1が排出口341に近づきすぎてしまい、下ケース312の成形時にショートショットが生じるおそれがあるためである。逆に、縦情報区域X1が排出口341から遠ざかりすぎてしまい、特定領域R0の範囲内に例えば5列の縦情報区域を配置できないおそれがあるためである。
この場合、人は範囲LW1、LW2を基準として、縦情報区域X1の位置を特定できる。特に、人の目視によって特定容易な部位である中心線Cおよび排出口341を基準として、縦情報区域X1の位置をより容易に且つ正確に特定できる。さらに、縦情報区域X1の位置を特定する場合には、一定の限られた範囲のみ目視すればよいため、ユーザの負担を抑制できる。
第四に、隣り合う縦情報区域の左右方向の中心線同士の間隔がテープ露出長L0の7〜10%の範囲内となるように、縦情報区域X1〜X5が左右方向に位置することが好ましい。隣り合う縦情報区域の左右方向の中心線同士の間隔がこれ以上短いと、隣り合う縦情報区域を区別するのが難しくなるためである。逆に、隣り合う縦情報区域の左右方向の中心線同士の間隔がこれ以上長いと、特定領域R0の範囲内に例えば5列からなる縦情報区域を配置できなくなるためである。これにより、人は縦情報区域X1を基準として、他の縦情報区域X2〜X5の位置を特定できる。
以上のようにアーム前面壁35の各種位置関係を規定することによって、人が目視によって縦情報区域X1〜X5や指標部800A〜800Eの位置を容易に認識することが可能となる。以下にその理由を説明する。
人は縦情報区域X1〜X5の左右方向位置をすべて把握している場合、各縦情報区域X1〜X5に孔部が形成されているか否かを確認するだけで、印字用情報を特定できる。一方、人が縦情報区域X1〜X5の左右方向位置を把握していない場合には、以下のように目視で位置を特定可能である。
まず、人は係止孔820を指標として、縦情報区域X1〜X5の配置位置を絞り込むことができる。先述したように、係止孔820の右端部は、少なくとも縦情報区域X1よりもテープ搬送方向の上流側(つまり、右側)に位置している。人は、アーム前面壁35のうちで縦情報区域X1が配置される可能性がある範囲を、係止孔820の右端部よりもテープ搬送方向の下流側(つまり、左側)に絞り込むことができる。さらに、係止孔820の右端部は、縦情報区域X1〜X5の全てよりもテープ搬送方向の上流側に位置している。人は、縦情報区域X1〜X5が配置される可能性がある範囲を、係止孔820の右端部よりも左側に絞り込むことができる。
人は縦情報区域X1の位置を、以下のように特定することができる。第一に、縦情報区域X1〜X5は、アーム部34の排出口341から間隔をおいて配置される。人は、排出口341から縦情報区域X1までの離間距離をあらかじめ把握していれば、排出口341を基準として縦情報区域X1の左右方向位置を特定できる。第二に、縦情報区域X1の少なくとも一部は、範囲LW1内にある。第三に、縦情報区域X1の少なくとも一部は、範囲LW2内にある。このように、排出口341または中心線Cという目視で容易に把握できる部位を基準として、縦情報区域X1の左右方向位置を特定できる。
縦情報区域X1〜X5は、アーム前面壁35において正面視で左側から右側に向けて等間隔で配置される。人は、縦情報区域X1〜X5のうちで隣り合う縦情報区域の配置間隔、または隣り合う縦情報区域の左右方向の中心線同士の間隔がテープ露出長L0の7〜10%の範囲内にあることをあらかじめ把握していれば、縦情報区域X1を基準として他の縦情報区域X2〜X4の左右方向位置を特定できる。
さらに、図38の例のように、指標部800A〜800Eに孔部が形成されているか否かで印字用情報が特定される場合には、指標部800A〜800Eの位置特定も必要となる。人は、横情報区域Y1〜Y3が配置される上下方向位置をすべて把握していれば、縦情報区域X1〜X5内の指標部800A〜800Eの上下方向位置を、横情報区域Y1〜Y3を基準として特定できる。つまり、縦情報区域X1〜X5と横情報区域Y1〜Y3との重なり領域に設けられる指標部800A〜800Eの規定位置(左右方向位置および上下方向位置)を、人が目視で特定できる。
係止孔820の上端部は、アーム前面壁35の高さ寸法の範囲内で、横情報区域Y1〜Y3のいずれよりも上方に位置する。人は、横情報区域Y1〜Y3の上下方向位置を把握していない場合であっても、横情報区域Y1〜Y3が配置される可能性がある範囲を、係止孔820の上端部の下側に絞り込むことができる。
横情報区域Y1、Y2は、共通指標部831内に配置される。共通指標部831の所定高さT1は、共通部32の幅Tよりもわずかに大きい。人は、共通部32を基準として、共通指標部831の範囲を特定できる。幅広カセット30では、共通指標部831と下側の拡張部832とにまたがって、横情報区域Y3が左右方向に延びる。幅狭カセット30では、アーム前面壁35の下端部に沿って延びる。よって、人は横情報区域Y3の位置を容易に特定できる。
横情報区域Y1〜Y3は、第2領域R2において上下方向にほぼ等間隔で並んでいる。人は、横情報区域Y1〜Y3のすべての上下方向位置を把握していない場合でも、カセットケース31の中心線Nや共通部32という目視で容易に把握できる部位を基準として、横情報区域Y1、Y2の位置を特定できる。
このように、本実施形態のテープカセット30は、人がアーム前面壁35を目視することによって、アーム指標部800の縦情報区域X1〜X5、および指標部800A〜800Eの規定位置を特定可能に構成されている。
次に、アーム指標部800の縦情報区域X1〜X5の各々、または指標部800A〜800Eの各々に孔部が形成されているか否かの組合せによる印字用情報の特定について説明する。印字用情報には様々な要素があるが、本実施形態では、これらの要素のうち、テープ幅、印字態様、および色テーブルの3要素を特定する例を挙げて説明する。
縦情報区域X1〜X5がそれぞれに特定する印字用情報の要素は、予め定められている。本実施形態では、縦情報区域X1、X2、X5は、テープ幅を特定する情報を示す区域として定められている。縦情報区域X3は、印字態様を特定する情報を示す区域として定められている。縦情報区域X4は、色テーブルを特定する情報を示す区域として定められている。
さらに、図38に示すように、縦情報区域X1〜X5内における特定の重なり領域が指標部800A〜800Eとして機能する場合には、指標部800A〜800Eが設けられた縦情報区域X1〜X5に応じて、指標部800A〜800Eがそれぞれに特定する印字用情報の要素が決まる。本実施形態では、指標部800A、800B、800Eは、テープ幅を特定する指標部である。指標部800Cは、印字態様を特定する指標部である。指標部800Dは、色テーブルを特定する指標部である。
縦情報区域X1、X2、X5および指標部800A、800B、800Eは、それぞれテープ幅特定部として機能する。縦情報区域X3および指標部800Cは、それぞれ印字態様特定部として機能する。縦情報区域X4および指標部800Dは、それぞれ色テーブル特定部として機能する。テープカセット30は、他の特定部の構成にかかわらず、各特定部のみで対応する印字用情報の要素を特定可能である。以下では、指標部800A〜800Eによる印字用情報の特定方法を例にして説明する。
表1〜表3を参照して、各特定部によって特定される印字用情報(テープ幅、印字態様、および色テーブル)について説明する。便宜上、表中では、指標部800A〜800Eに孔部が形成されている場合が「0」で示されている。指標部800A〜800Eに孔部は形成されていない場合(つまり、面部である場合)が「1」で示されている。なお、縦情報区域X1〜X5の各々に孔部が形成されているか否かで印字用情報が特定される場合には、表1〜表3の指標部800A〜800Eをそれぞれ縦情報区域X1〜X5に置き換えることによって、以下の説明と同様に印字用情報を特定できる。
表1に示すように、テープ幅特定部を構成する指標部800A、800B、800Eがそれぞれ孔部であるか、または面部であるかの組合せに対応して、3.5mm〜36mmまでの7種類のテープ幅が定められている。人は、アーム指標部800のうちで、縦情報区域X1、X2、X5内にそれぞれ存在する指標部800A、800B、800Eを目視するだけで、テープカセット30のテープ幅を認識できる。
表1に示すように、指標部800Eは、テープ幅が所定幅(18mm)以上の場合には面部であると定められている。テープ幅が所定幅未満の場合には、孔部であると定められている。人は、指標部800Eの位置を目視で特定し、そこに孔部が設けられているか否かを確認するだけで、テープ幅が所定幅(18mm)以上であるか否を認識できる。
さらに、人は指標部800A、800Bに基づいて、テープ幅の大小関係を、テープ幅が所定幅(18mm)以上または所定値未満の各範囲内で特定できる。詳細には、指標部800A、800Bがそれぞれ孔部、面部(表1では「0、1」の組合せ)の場合は、テープ幅が所定幅以上の範囲内または所定値未満の範囲内で最大のテープ幅(表1では36mmまたは12mm)を示す。
指標部800A、800Bがそれぞれ面部、孔部(表1では「1、0」の組合せ)の場合は、テープ幅が所定幅以上または所定値未満の各範囲内で2番目に大きいテープ幅(表1では24mmまたは9mm)を示す。指標部800A、800Bの両方が孔部(表中では「0、0」の組合せ)の場合は、テープ幅が所定幅以上または所定値未満の各範囲内で、3番目に大きいテープ幅(表1では6mmまたは18mm)を示す。なお、指標部800A、800Bが共に面部(表中では「1、1」の組合せ)の場合は、最も小さなテープ幅(表1では3.5mm)を示す。
人は、指標部800A、800B、800Eの位置を目視で特定し、指標部800Eに孔部が形成されているか否かを確認して、テープ幅が所定幅以上および所定幅未満のいずれであるかを判別できる。さらに、人は、指標部800A、800Bの各々に孔部が形成されているか否かを確認して、より詳細なテープ幅を特定できる。例えば、図37〜図39に示す幅広カセット30は、指標部800Eが面部、指標部800Aが孔部、指標部800Bが面部である。この場合、人はアーム指標部800を目視して、テープ幅が所定幅の18mm以上で最大幅、つまり「36mm」であると特定できる。
所定幅の数値を認識していれば、人は、テープカセット30全体を目視するだけでも、テープカセット30のテープ幅が所定幅未満であるか否かを判別できる。したがって、アーム指標部800に含まれるテープ幅特定部として、縦情報区域X1、X2が規定されてもよいし、指標部800A、800Bの2つが配置されてもよい。この場合、排出口341から露出部77に排出されるテープの幅と、排出口341に隣接する縦情報区域X1、X2とを、人が同時に目視できる。人は、露出部77で露出するテープの幅を、テープ幅特定部が示すテープ幅と正確に照合できる。
一方、テープ幅特定部が縦情報区域X1、X2以外の縦情報区域を含む場合には、その縦情報区域はテープ幅が所定幅未満であるか否かを示すことが好ましい。本実施形態では、縦情報区域X5が、テープ幅が所定幅未満であるか否かに応じて、孔部および面部のいずれを含む。人は、縦情報区域X5が孔部および面部のいずれであるかを確認することで、テープ幅が所定幅未満であるか否かを特定できる。さらに、縦情報区域X5は、縦情報区域X1、X2から離間した位置に設けられている。人は、縦情報区域X5を縦情報区域X1、X2と混同することなく、テープ幅が所定幅未満であるか、または所定幅以上であるかを正確に判別できる。
表2に示すように、印字態様特定部を構成する指標部800Cが孔部であるか、または面部であるかに対応して、印字態様が鏡像印字(ラミネート)および正像印字(レセプタ)のいずれであるかが定められている。詳細には、指標部800Cが孔部の場合(表中では「0」)には、印字態様がラミネートであると定められている。指標部800Cが面部(表中では「1」)の場合には、印字態様がレセプタであることが定められている。
人は、アーム指標部800のうちで、縦情報区域X3内に存在する指標部800Cを目視するだけで、テープカセット30の印字態様を認識できる。詳細には、人は、指標部800Cの位置を目視で特定し、そこに孔部が形成されているか否かを確認するだけで、印字態様がラミネートおよびレセプタのいずれであるかを判別できる。例えば、図37〜図39に示す幅広カセット30は、指標部800Cが孔部である。この場合、人はアーム指標部800を目視して、印字態様は「ラミネート」であると特定できる。
印字態様の「レセプタ」は、テープにインクリボンのインクを転写するレセプタタイプと、インクリボンを用いずに感熱テープで発色するサーマルタイプの他、鏡像印字を行わないタイプの全ての印字タイプを含む。したがって、人は印字態様を特定することにより、正像印字用のテープカセット30(或いは製造工程において、正像印字用として用意されたカセットケース31)、および鏡像印字用のテープカセット30(或いは製造工程において、鏡像印字用として用意されたカセットケース31)のいずれであるかを特定できる。
表3に示すように、色テーブル特定部を構成する指標部800Dが孔部であるか、または面部であるかに対応して、テープ印字装置1が色情報を特定するときに使用される色情報テーブル520(図44参照)が定められている。詳細には、指標部800Dが面部(表中では「1」)の場合には、第2色テーブルが使用されることが定められている。指標部800Dが孔部(表中では「0」)の場合には、第1色テーブルが使用されることが定められている。
人は、アーム指標部800のうちで、縦情報区域X4内に存在する指標部800Dを目視するだけで、色情報の特定時に使用される色情報テーブルを認識できる。詳細には、人は、指標部800Dの位置を目視で特定し、そこに孔部が形成されているか否かを確認するだけで、第1色テーブルおよび第2色テーブルのいずれが使用されるかを判別できる。例えば、図37〜図39に示す幅広カセット30は、指標部800Dが孔部である。この場合、人はアーム指標部800を目視して、色情報の特定時に「第1色テーブル」が使用されると特定できる。色情報テーブル520の詳細は、後述する。
テープ幅および印字態様は、テープ印字装置1で適正な印字を実行するために重要な情報である。よって、アーム指標部800は、テープ幅特定部または印字態様特定部を単独で備えてもよいし、テープ幅特定部および印字態様特定部の両方を備えてもよい。一方、アーム指標部800は、色テーブル特定部を備えなくてもよい。また、縦情報区域X4または指標部800Dは、色テーブルではなく、テープ種類のその他の要素(例えば、文字色が黒または黒以外のいずれであるか)を特定してもよい。
アーム指標部800が特定するテープ幅、印字態様、および色テーブルの内容は、表1〜表3に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。表1〜表3に規定されるテープ幅、印字態様および色テーブルの総組合せ数は28個になるが、すべてが使用される必要はない。例えば、後述するように、テープ印字装置1がテープカセット30の不適正な装着状態を検出する場合には、その不適正な装着状態に対応する組合せは使用されない。
ここまで、アーム指標部800が印字用情報を特定するための構成と、人がアーム指標部800を目視して印字用情報を特定する方法について説明した。以下では、アーム検出スイッチ210との関係で見たアーム指標部800の構成と、テープ印字装置1による印字用情報の特定態様とについて説明する。
まず、アーム検出スイッチ210との関係で見たアーム指標部800の構成について説明する。本実施形態のテープ印字装置1は、先述したように、5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eを有する(図11参照)。カセット装着部8に装着されているテープカセット30において、アーム検出スイッチ210A〜210Eのそれぞれに対向する重なり領域が、指標部800A〜800Eである(図38参照)。図38に示す幅広カセット30の例では、指標部800A、800C、800Dは孔部であり、指標部800B、800Eは面部である。
孔部は、アーム検出スイッチ210と対向した場合に、スイッチ端子222(図12参照)を押圧しない非押圧部801として機能する。非押圧部801は、指標部(重なり領域)の形状に対応して、正面視で縦長長方形形状の開口形状を有する。非押圧部801は、例えばアーム前面壁35に対して略垂直に(つまり、上面301および底面302と平行に)、アーム前面壁35を貫通する孔である。非押圧部801の形成方向は、アーム部34内のテープ走行経路とほぼ直交している。非押圧部801に対向するアーム検出スイッチ210は、スイッチ端子222が非押圧部801に挿入されてオフ状態となる。
面部は、アーム検出スイッチ210と対向した場合に、スイッチ端子222を押圧する押圧部802として機能する。押圧部802は、アーム前面壁35の一部であって、指標部(重なり領域)の形状に対応して、正面視で縦長長方形形状の面形状を有する。押圧部802に対向するアーム検出スイッチ210は、スイッチ端子222が押圧部802に接触してオン状態となる。図38に示す幅広カセット30の例では、指標部800A、800C、800Dは非押圧部801であり、指標部800B、800Eは押圧部802である。
指標部800Eは、横情報区域Y3内に設けられる。先述したように、幅広カセット30では、共通指標部831と下側の拡張部832にまたがって、横情報区域Y3が設けられる。幅狭カセット30では、アーム前面壁35の下端部に沿って、横情報区域Y3が設けられる。幅狭カセット30における指標部800Eの上下方向長さは、幅広カセット30における指標部800Eの上下方向長さに比べて1/3程度である(図39参照)。
本実施形態では、幅広カセット30の場合には、指標部800Eは面部、すなわち押圧部802である。幅狭カセット30の場合には、指標部800Eは孔部、すなわち非押圧部801である。これは、次の理由による。テープ印字装置1が幅狭カセット30のみが使用される専用機である場合、指標部800Eに対向する位置にアーム検出スイッチ210Eは不要である。一方、テープ印字装置1が幅狭カセット30および幅広カセット30を共用可能な汎用機である場合、指標部800Eと対向するアーム検出スイッチ210Eが必要である。したがって、幅狭カセット30の指標部800Eは、幅狭カセット30が汎用機に装着された場合に、アーム検出スイッチ210Eを押圧しないための逃がし孔として機能する。
先述したように、指標部800A〜800Eには、印字用情報に応じた規定のパターンで孔部(非押圧部801)および面部(押圧部802)のいずれかが形成される(表1〜3参照)。テープ印字装置1は、アーム指標部800によって選択的に押圧されるアーム検出スイッチ210のオン・オフ状態の組合せに基づいて、印字用情報を特定できる。
詳細には、テープ印字装置1は、5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフの組合せに対応する印字用情報を、テーブルを参照して特定する。このテーブルでは、指標部800A〜800Eについて予め定められた規定のパターン(孔部および面部の組合せ)が、それぞれ対応するアーム検出スイッチ210A〜210Eの検出パターン(オフ状態およびオン状態の組合せ)に置き換えられて、印字用情報と対応付けられている。
図40に示す印字用情報テーブル510は、テープ印字装置1による印字用情報の特定に用いられるテーブルの一例である。印字用情報テーブル510は、ROM602(図14参照)に記憶されている。なお、図40に示す例では、アーム検出スイッチ210A〜210Eが、それぞれスイッチ「SW1」〜「SW5」に対応している。各アーム検出スイッチ210のオフ状態(OFF)およびオン状態(ON)が、それぞれ「0」および「1」に対応している。
計5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eを使用する場合、オン・オフ状態の総組合せ数である最大32個の検出パターンに対応して、最大32個の印字用情報を特定可能である。図40に示す例では、最大32個の検出パターンのうち、24個の検出パターンに対応する印字用情報が設定されている。残り8個の検出パターンのうち、「エラー」を示す3つの検出パターンは、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されていない状態を検出するのに用いられる。その他の5つの検出パターンには、空欄を示す「予備」が設定されている。エラーが検出される場合のテープカセット30の装着状態については後述する。
テープ印字装置1で使用される印字用情報テーブル510は、図40に示す例に限らない。例えば、「予備」に対応する検出パターンに、他の任意のテープ種類を追加した印字用情報テーブル510を使用できる。登録済みのテープ種類を削除したり、各検出パターンとテープ種類との対応を変更したり、各検出パターンに対応するテープ種類の内容を変更した印字用情報テーブル510を使用してもよい。この場合、先述した目視によるテープ種類特定のために定められる規定のパターンも適宜変更される。
先述したように、例えば指標部800E、800Dを設けない場合には、対応するアーム検出スイッチ210E(SW5)および210D(SW4)は使用されない。この場合、印字用情報テーブル510に、アーム検出スイッチ210A〜210C(SW1〜SW3)に対応する印字用情報のみが定義されればよい。
以上に説明したように、本実施形態のテープカセット30は、人およびテープ印字装置1が、アーム指標部800に基づいてテープ種類(詳細には、印字用情報)を特定できるように構成されている。人がアーム指標部800を目視してテープ種類を認識できるようにしたことで、次のような効果を奏する。
従来のテープカセットの製造方法では、テープ幅に対応した高さ(所謂、ケースサイズ)のカセットケースに、作業者がテープを収納するのが一般的である。これに対し、テープ幅が異なる複数種類のテープを、それぞれケースサイズが共通化されたカセットケースに収納させるテープカセットの製造方法が提案されている。このようにケースサイズを共通化したテープカセットの製造方法によれば、以下の効果が期待できる。
1つ目には、従来では各種テープ幅に対応した異なるケースサイズのカセットケースを部品製造工場から組立工場へ搬送する際に、ケースサイズごとに異なる輸送コンテナ等を使用してカセットケースを搬送していた。ケースサイズを共通化することで、カセットケースの搬送時に使用する輸送コンテナ等も共通化でき、カセットケースの輸送コストを削減できる。
2つ目には、テープ幅ごとにケースサイズが異なると、組立工場から製品出荷する際にもケースサイズごとに異なる梱包箱等を使用する必要がある。ケースサイズを共通化することで、製品出荷用の梱包箱や製品出荷時の梱包形態等も共通化できるので、費用削減を図ることができる。
3つ目には、インクリボンはテープよりも物理的な耐久性が弱いため、テープ幅が小さいテープに対して同一幅のインクリボンを使用すると、印字動作中にインクリボンが切断されるおそれがある。十分な強度を有する程度のリボン幅を確保できるケースサイズに共通化することで、テープ幅が小さい場合でも強度的に十分なリボン幅を確保できる。したがって、テープ幅が小さい場合でも、印字動作中におけるインクリボンの切断を抑制できる。
従来では、テープ幅が異なるテープを共通サイズのカセットケースに収納させる場合、カセットケースに誤ったテープ幅のテープが収納されるおそれがあった。例えば、12mmのテープに合わせてケースサイズが共通化されたカセットケースは、12mmのテープを収納できるようにリブ高さが設定されているため、12mm未満のテープも収納可能である。この場合、12mmのテープを収納させる予定であったカセットケースに、作業者が6mm或いは9mmのテープを誤って収納してしまうおそれがあった。
テープカセットの印字態様には、先述したように、レセプタタイプとラミネートタイプとが存在する。ケースサイズを共通化すると、カセットケースの外観形状が同様となってしまう。そのため、従来では、予定されていた印字態様と対応しないテープがカセットケースに収納されるおそれがあった。例えば、ラミネートタイプとする予定のカセットケースに、作業者が誤った感熱紙テープを収納する場合である。
そのため、従来のテープカセットの製造工程は、製造済みのテープカセットに収納されているテープやインクリボンが、予定されていたテープ幅や印字態様などと対応するか否かを確認する検査工程を含んでいた。
本実施形態のテープカセット30によれば、人がアーム指標部800を目視するだけで、テープカセット30のテープ種類を認識できる。すなわち、カセットケース31に収納すべきテープのテープ幅や、カセットケース31に意図された印字態様を把握できる。従って、テープカセット30の製造工程において、作業者はカセットケース31に実装すべき内容を確認しながら作業できるため、テープカセット30の製造ミスを低減できる。ひいては、上記のように検査工程を行う作業者の負担を軽減できる。
さらに、テープカセット30の製造工程では、作業者が下ケース312にテープを収納し、且つ、テープの一部をアーム部34内に挿入する。作業者は、アーム部34内に挿入されたテープの一部を、アーム部34内の規制部(分離壁規制部383、第1テープ下規制部381Bなど)によって適正に規制される位置に取り付ける。
先述したように、分離壁規制部383および第1テープ下規制部381Bと、アーム指標部800とを、人が下ケース312の前方から同時に目視可能である。よって、作業者は下アーム前面壁35Bを前方から目視することで、アーム部34内で幅方向に規制されるテープが、アーム指標部800が示すテープ種類に対応しているか否かを確認できる。したがって、作業者はテープカセット30に誤った種類のテープが収納されていることを容易に発見できる。ひいては、テープカセット30の製造ミスを抑制できる。
テープカセット30の製品出荷時には、カセットケース31に実装された内容が正しいか否かを、検査員がアーム指標部800を目視して確認できる。具体的には、製造済みのテープカセット30の露出部77から露出するテープが、アーム指標部800から読み取れるテープ種類と一致しているか否かを検査できる。
特に、本実施形態のアーム指標部800は、テープが露出する露出部77に隣接したアーム前面壁35に設けられている。したがって、人は、アーム指標部800およびテープを同一方向(具体的には、テープカセット30の前方)から目視可能である。検査員は、アーム指標部800が示すテープ種類を、露出部77で露出するテープと照合できる。したがって、テープカセット30の製品検査の作業性を向上させることができる。
アーム指標部800は、縦情報区域X1〜X5(指標部800A〜800E)の各々に設けられた孔部および面部の組み合わせ(つまり、非押圧部801と押圧部802との組み合わせ)という簡易な構成である。テープカセット30の製造時に、カセットケース31にアーム指標部800を形成するのが容易である。したがって、カセットケース31に、実装内容を示す印刷を施したり、実装内容を示すラベルを貼着したりする必要がない。したがって、テープカセット30の製造ミスを低コストで抑制できる。
本実施形態では、第1領域R1に係止孔820として機能する孔部が設けられている。第2領域R2のうちで指標部800A〜800Eとして機能する重なり領域に、それぞれ、テープ種類に対応した孔部(つまり、非押圧部801)または面部(つまり、押圧部802)が設けられている。しかしながら、特定領域R0には、係止孔820および指標部800A〜800Eとしての機能が確保される範囲内で、孔部および面部を自由に形成できる。
具体的には、先述のテープカセット30(図37〜図39参照)では、特定領域R0のうちで係止孔820および指標部800A〜800Eとして機能しない領域の全てが、押圧部802と同一面である。そのため、特定領域R0に設けられた孔部(非押圧部801および係止孔820)が全て独立しているが、孔部は全て独立している必要はない。
例えば、特定領域R0において、複数の非押圧部801の少なくとも2つを含むような大きさおよび形状を有する1つの孔部(溝部)を形成してもよい。係止孔820と非押圧部801と含む一の溝部を形成してもよい。複数の非押圧部801の少なくとも2つと、係止孔820とを含む一の溝部を形成してもよい。一の溝部を形成する場合は、押圧部802として機能する部位を含まないことが好ましい。
本実施形態では、アーム指標部800および係止孔820は、アーム前面壁35のうちで下アーム前面壁35Bに設けられている。これにより、アーム指標部800および係止孔820をそれぞれ別部材(例えば、上アーム前面壁35Aと下アーム前面壁35B)に設ける場合と比較して、アーム指標部800と係止孔820との位置関係をより正確に規定できる。ひいては、人が目視でテープ種類を特定する場合、および、テープ印字装置1がアーム検出部200でテープ種類を特定する場合のいずれであっても、テープ種類をより正確に特定できる。
以下に、図41〜図44を参照して、後方凹部360が有する後方段差壁360Aの詳細な構成および機能について説明する。
図41および図42に示すように、後方段差壁360Aは、後方指標部900を含む。後方指標部900は、少なくとも一の孔部を含んでテープカセット30のテープ種類を示す。人は後方指標部900を目視することでテープ種類を特定できる。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合には、後方検出部300によって後方指標部900が示す情報を検出することで、テープ印字装置1がテープ種類を特定できる。
本実施形態では、後方指標部900が特定するテープ種類は、テープカセット30に収納されたテープに関する色情報である。以下、後方段差壁360Aが有する領域と、その領域内の構成を説明する。
後方段差壁360Aは、後壁370から前方に延びる領域である特定領域F0を含む。つまり、特定領域F0は、後方段差壁360Aにおいて後壁370に隣接した領域である。本実施形態では、後方段差壁360Aの全体が特定領域F0である。特定領域F0は、縦情報区域Vおよび横情報区域Wを含む。縦情報区域Vは、カセットケース31の短手方向である前後方向(図41では上下方向)に沿って延びる複数の帯状区域である。横情報区域Wは、カセットケース31の長手方向である左右方向(図41では左右方向)に沿って延びる複数の帯状区域である。
本実施形態の縦情報区域Vは、4つの縦情報区域V1〜V4を含む。縦情報区域V1〜V4は、カセットケース31の左右方向に等間隔で並んで配置される。縦情報区域V1は、縦情報区域V1〜V4のうちで最も右側(図41では左側)に位置している。縦情報区域V1から左側(図41では右側)に向けて、縦情報区域V2、V3、V4が順に設けられる。縦情報区域V1〜V4の幅長(つまり、左右方向長さ)は略等しく、縦情報区域V1〜V4のうちで隣り合う縦情報区域同士は等間隔で隣接している。
縦情報区域V3は、平面視で第1下テープ領域400Bおよび第2下テープ領域410Bの外縁が隣接する部位(図20に示す接点P)を含んでいる。言い換えると、縦情報区域V3は、接点P上を通る前後方向に沿った仮想線(以下、基準線Zとよぶ。)を含んでいる。本実施形態では、縦情報区域V3の左右方向の略中心位置から若干左寄り(図41では右寄り)に、基準線Zが位置している。
本実施形態の横情報区域Wは、2つの横情報区域W1、W2を含む。横情報区域W1、W2は、カセットケース31の前後方向(図41では上下方向)に並んで配置される。横情報区域W1は、特定領域F0において後壁370に隣接して設けられる。横情報区域W2は、特定領域F0において横情報区域W1よりも前方(図41では下方)に設けられる。横情報区域W1、W2の幅長(つまり、前後方向長さ)はそれぞれ略等しい。
特定領域F0は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、後方検出スイッチ310に対向する領域である。特定領域F0には、横情報区域W1、W2を含む後方指標部900が設けられる。横情報区域W1、W2のうち少なくとも1つの区域内には、孔部が形成される。各横情報区域W1、Wに孔部が形成されるかは、色情報に応じて予め定められている。後方指標部900は、横情報区域W1、W2の各々に孔部が形成されているか否かの組合せによって色情報を特定する。人は、横情報区域W1、W2に形成された孔部の組合せを目視することで、色情報を認識できる。
横情報区域W1、W2の左右方向において孔部が形成される位置は、横情報区域W1、W2の各々について定められていてもよい。例えば、横情報区域W1、W2と縦情報区域V1〜V4とが交差して重なり合う複数の領域(以下、重なり領域という)のうち、横情報区域W1、W2の各々について少なくとも1つの重なり領域を指標部として定める。後方指標部900は、この指標部に孔部が形成されているか否かの組合せによって、色情報を特定してもよい。この場合、後方検出スイッチ310(図13参照)に対応する位置を指標部として定めれば、テープ印字装置1も色情報を特定できる。
本実施形態では、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、5つの後方検出スイッチ310A〜310E(図13参照)のそれぞれに対向する5つの重なり領域が、指標部900A〜900Eとして機能する。詳細には、図41に示すように、横情報区域W1と縦情報区域V1とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Aに対向する指標部900Aとして機能する。
横情報区域W1と縦情報区域V2とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Bに対向する指標部900Bとして機能する。横情報区域W1と縦情報区域V3とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Cに対向する指標部900Cとして機能する。横情報区域W1と縦情報区域V4とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Dに対向する指標部900Dとして機能する。横情報区域W2と縦情報区域V3とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Eに対向する指標部900Eとして機能する。
図41に示す例では、指標部900A、900Eには、孔部が形成されている。指標部900B、900C、900Dは、孔部が形成されていない、後方段差壁360Aに含まれる面部の一部である。このように、指標部900A〜900Eは、各々が、人の目視による識別可能な孔部または面部で構成される。さらに、これらの孔部および面部は、それぞれ、後述の非押圧部901および押圧部902として機能する。指標部900A〜900Eと後方検出スイッチ310との関係については、後で詳述する。
本実施形態では、特定領域F0(つまり、後方段差壁360A)は、平面視で略三角形状であり、且つ、基準線Zにおいて前後方向長さが最も大きい。つまり、縦情報区域V1〜V4のうちで基準線Zを含む縦情報区域V3が、特定領域F0における前後方向長さが最も大きい。そのため、縦情報区域V1、V2、V4にそれぞれ1つの指標部が設けられ、縦情報区域V3に複数の指標部が設けられている。このように、特定領域F0に複数の指標部を前後方向に並べる場合には、特定領域F0における前後方向長さが大きい縦情報区域に配置するのが好適である。
以上のような構成により、人は後方段差壁360Aを目視することで、横情報区域W1、W2または指標部900A〜900Eに形成されている識別要素(孔部または面部)を容易に認識できる。以下、図41〜図43を参照して、その理由を説明する。図41および図42は、本実施形態の後方段差壁360A(特定領域F0)を示す。図43は、後方段差壁360A(特定領域F0)における孔部の形成パターンを変えた比較例を示す。
人が後方指標部900を目視する態様としては、次の2パターンが想定される。第1に、人が、下ケース312の内側から後方段差壁360Aを目視する態様である。この態様では、人は、上ケース311が組み付けられる前の下ケース312を上方から目視する。これにより、人は、後方段差壁360Aの上面側から後方指標部900を目視可能である。
第2に、人が、下ケース312の外側から後方指標部900を目視する態様である。この態様では、人は下ケース312を下方から目視する。このとき、下ケース312は、上ケース311が組み付けられていてもよいし、上ケース311が組み付けられていなくてもよい。これにより、人は、後方段差壁360Aの下面側から後方指標部900を目視可能である。
人は横情報区域W1、W2の前後方向位置をすべて把握している場合、横情報区域W1、W2の識別要素を目視で特定できる。一方、人が横情報区域W1、W2の前後方向位置を把握していない場合には、後方指標部900を目視する態様に応じて、以下のように横情報区域W1、W2の識別要素を特定できる。
まず、横情報区域W1の要素特定について説明する。図42に示すように、下ケース312の内側から後方指標部900を目視する場合、人は後壁370に隣接して左右方向に延びる領域を横情報区域W1として特定できる。さらに、後壁370に隣接して形成されている孔部を、横情報区域W1に設けられた孔部として特定できる。後壁370に隣接した領域のうちで孔部が形成されていない部位を、横情報区域W1に設けられた面部として特定できる。
一方、図41に示すように、下ケース312の外側から後方指標部900を目視する場合、人は後壁370を直接目視することはできない。しかしながら、後壁370の厚み(前後方向長さ)は小さいため、人は底面視で下ケース312の後端縁部を後壁370としてみなすことができる。よって、人はテープカセット30の背面側の輪郭線に隣接して左右方向に延びる領域を、横情報区域W1として特定できる。また、上記と同様に、横情報区域W1に設けられた孔部および面部を特定できる。
次に、横情報区域W2の要素特定について説明する。図42に示すように、下ケース312の内側から後方指標部900を目視する場合、人は第1下テープ領域400Bおよび第2下テープ領域410Bを認識できる。第1下テープ領域400Bおよび第2下テープ領域410Bを基準として、人は接点P(図20参照)を通る基準線Zを認識できる。基準線Zを基準として、以下のように横情報区域W2の要素特定を行うことができる。
まず、人は、後壁370に隣接して形成されている孔部(つまり、横情報区域W1に設けられた孔部)のうちで、基準線Zから最も近接した位置にある孔部を基準孔部として特定する。ただし、平面視で基準線Zと重なる孔部(図41に示す縦情報区域V3内に設けられた孔部)が存在する場合は、基準線Z上の孔部を除いて、基準線Zから最も近接した位置にある孔部を基準孔部として特定する。人は、基準孔部において基準線Zから最も離間した端部を基準端部として特定する。人は、基準線Zと基準端部との間の左右方向長さを、距離D1として特定する。
図42に示す例では、横情報区域W1の指標部のうちで最も右端に位置する指標部900Aに形成されている孔部が、基準孔部に相当する。指標部900Aに形成されている孔部の右端部が、基準端部に相当する。よって、指標部900Aに形成されている孔部の右端部から基準線Zまでの左右方向長さが、距離D1として求められる。
距離D0(図41参照)は、後壁370と横情報区域W2との間の前後方向長さを示す。横情報区域W2の前後方向位置は、距離D0が距離D1の2倍未満となるように規定されている(図42参照)。つまり、後方段差壁360Aにおいて、後壁370から距離D1の2倍まで前方に至る範囲内(図42では距離D2の範囲内。D2=D1*2)に、横情報区域W2の少なくとも一部が含まれる。
以上のことから、人は、距離D2の範囲内に、横情報区域W1の前方に位置する横情報区域W2の少なくとも一部があることを特定できる。距離D2の範囲内に、後壁370から離間した孔部(つまり、横情報区域W1の範囲外に設けられた孔部)が形成されている場合には、人はその孔部を横情報区域W2に設けられた孔部として特定できる。特に、横情報区域W2に指標部が1つしか設けられない場合は、人はその指標部の位置を明確に把握していなくても、横情報区域W2に孔部が設けられているか否かを特定できる。
上記の手法によれば、基準孔部の形成位置によって距離D1、ひいては距離D2が異なることになる。基準線Zから最も離間した位置にある指標部(図42では指標部900A)に孔部が設けられ、且つ、その孔部が基準孔部として特定された場合に、距離D1、D2が最も大きくなる。基準線Zから最も近接した位置にある指標部(図43では指標部900D)に孔部が設けられ、且つ、その孔部が基準孔部として特定された場合に、距離D1、D2が最も小さくなる。
図43に示す例のように、横情報区域W1に複数の孔部が形成されている場合は、基準線Zに近接しているほうの孔部(つまり、指標部900Dの孔部)が基準孔部に相当する。この場合、基準線Zから離間しているほうの孔部(つまり、指標部900Aの孔部)を基準孔部とするよりも、距離D1、D2が小さくなる。このように、横情報区域W1に少なくとも1つの孔部が設けられている場合には、横情報区域W1に設けられた孔部の数量および位置に拘らず、人は距離D2の範囲を特定できる。
一方、下ケース312の外側から後方指標部900を目視する場合(図41参照)、人は第1下テープ領域400Bおよび第2下テープ領域410Bを直接目視できない。そのため、人は、接点P(図20参照)や基準線Zを認識するのが難しい場合がある。この場合、次の方法で横情報区域W2の要素特定が可能である。
本実施形態の後方指標部900は、テープカセット30に収納される割合が大きい主要なテープに関する色情報(例えば、テープ色:Clear,文字色:Blackなど)に対応している場合、横情報区域W1、W2にそれぞれ設けられて前後方向に並ぶ2つの指標部のうち、前方の指標部に孔部が設けられ、後方の指標部に面部が設けられる。具体的には、基準線Zが通る2つの指標部900C、900Eがそれぞれ面部および孔部の組合せで構成されている。
これにより、多くのテープカセット30では、後壁370に近接する面部で構成された指標部と、後壁370から離間した孔部で構成された指標部とが、前後方向に並ぶ。人は、後方指標部900を下方から目視した場合に、後壁370から離間した孔部を横情報区域W2に設けられた孔部として特定できる。この孔部の後側に設けられた面部を、横情報区域W1に設けられた面部として特定できる。さらに、人は、特定した面部および孔部に基づいて、横情報区域W1、W2の位置特定を行うことができる。
逆に、横情報区域W1、W2にそれぞれ設けられて前後方向に並ぶ2つの指標部のうち、後方の指標部を孔部とし、前方の指標部を面部としてもよい。例えば、図示しないが、基準線Zが通る2つの指標部(例えば、指標部900C、900E)をそれぞれ孔部、面部で構成する。この場合、後壁370に近接する孔部で構成された指標部と、後壁370から離間した面部で構成された指標部とが、前後方向に並ぶ。人は、後方指標部900を下方から目視した場合に、後壁370に近接した孔部を横情報区域W1に設けられた孔部として特定できる。この孔部の前側に設けられた面部を、横情報区域W2に設けられた面部として特定できる。さらに、人は、特定した孔部および面部に基づいて、横情報区域W1、W2の位置特定を行うことができる。
本実施形態の後方指標部900は、孔部および面部の形成パターンが上方からも認識可能である。そのため、後方指標部900を上方から目視する場合でも(図42参照)、上記と同様にして横情報区域W2の孔部または面部を特定可能である。
さらに、図41および図42の例のように、指標部900A〜900Eに孔部が形成されているか否かで色情報が特定される場合には、指標部900A〜900Eの位置特定も必要となる。人は、縦情報区域V1〜V4が配置される左右方向位置をすべて把握していれば、横情報区域W1、W2内の指標部900A〜900Eの左右方向位置を、縦情報区域V1〜V4を基準として特定できる。つまり、横情報区域W1、W2と縦情報区域V1〜V4との重なり領域に設けられる指標部900A〜900Eの規定位置(左右方向位置および前後方向位置)を、人が目視で特定できる。
縦情報区域V1〜V4の左右方向位置は、人が後方指標部900を目視することで、次のように特定することができる。先述したように、基準線Zは縦情報区域V3に含まれている。よって、後方指標部900を上方から目視する場合(図42参照)、人は基準線Zを基準として、縦情報区域V3の左右方向位置を特定できる。縦情報区域V1〜V4は、特定領域F0において左右方向にほぼ等間隔で並んでいる。よって、人は縦情報区域V3を基準として、右方向に等間隔で順に並ぶ縦情報区域V2、V1と、左方向に等間隔で並ぶ縦情報区域V4とを特定できる。このように、縦情報区域V1〜V4の左右方向位置を把握していない場合でも、人は目視で容易に把握できる基準線Zを基準として、縦情報区域V1〜V4の位置を特定できる。
先述したように、指標部900C、900Eは、前後方向に並ぶ孔部および面部の組合せで構成されている。よって、後方指標部900を下方から目視する場合(図41参照)、前後方向に並ぶ孔部および面部の組合せに基づいて、指標部900C、900Eを含む縦情報区域V3の左右方向位置を特定できる。そのため、上記と同様に、特定領域F0において左右方向にほぼ等間隔で並ぶ縦情報区域V1〜V4を特定できる。このように、縦情報区域V1〜V4の左右方向位置を把握していない場合でも、人は前後方向に並ぶ指標部(孔部および面部の組合せ)を基準として、縦情報区域V1〜V4の位置を特定できる。
これにより、横情報区域W1に設けられている孔部が、縦情報区域V1〜V4のいずれに設けられているかで、その孔部が指標部900A〜900Dのいずれに設けられているかを特定できる。横情報区域W2に設けられている孔部が、縦情報区域V3に設けられているか否かで、その孔部が指標部900Eに設けられているか否かを特定できる。このように、本実施形態の後方指標部900は、人が目視で各指標部900A〜900Eに設けられた孔部および面部の組合せを特定できる。
次に、横情報区域W1、W2の各々、または指標部900A〜900Eの各々に孔部が形成されているか否かの組合せによる色情報の特定について説明する。色情報には様々な要素があるが、本実施形態では、これらの要素のうち、テープ色および文字色の2要素を特定する例を挙げて説明する。色情報に含まれるテープ色は、テープ(感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58)の基材色を示す。色情報に含まれる文字色は、インクリボン60を用いた熱転写方式であればインクリボン60のインク色を示す。感熱紙テープ55を発色させる感熱方式であれば、感熱紙テープ55が発色する色を示す。
横情報区域W1、W2がそれぞれに特定する色情報の要素は、予め定められている。本実施形態では、横情報区域W1は、テープ色を特定する情報を示す区域として定められている。横情報区域W2は、文字色を特定する情報を示す区域として定められている。さらに、横情報区域W1、W2内において特定の重なり領域が指標部900A〜900Eとして機能する場合には、横情報区域W1、W2のいずれに対応するかに応じて、指標部900A〜900Eが特定する色情報の要素が決まる。本実施形態では、指標部900A〜900Dは、テープ色を特定する指標部である。指標部900Eは、文字色を特定する指標部である。
横情報区域W1および指標部900A〜900Dは、それぞれテープ色特定部として機能する。横情報区域W2および指標部900Eは、それぞれ文字色特定部として機能する。テープカセット30は、他の特定部の構成にかかわらず、各特定部のみで対応する色情報の要素を特定可能である。以下では、指標部900A〜900Eによる色情報の特定方法を例にして説明する。
表4〜表6を参照して、各特定部によって特定される色情報の要素(テープ色および文字色)について説明する。便宜上、表中では、指標部900A〜900Eに孔部が形成されている場合が「0」で示されている。指標部900A〜900Eに孔部は形成されておらず面部である場合が「1」で示されている。
なお、横情報区域W1、W2に形成される孔部および面部の組合せによって色情報が特定される場合には、表4の指標部900B〜900Dを横情報区域W1に設けられる3箇所の孔部および面部の組合せに置き換えることによって、以下の説明と同様に主要なテープ色を特定可能である。表5の指標部900A〜900Dを横情報区域W1に設けられる4箇所の孔部および面部の組合せに置き換えることによって、以下の説明と同様に特殊なテープ色を特定可能である。表6の指標部900Eを横情報区域W2に設けられる1箇所の孔部または面部に置き換えることによって、以下の説明と同様に文字色を特定可能である。
まず、テープカセット30のテープ色を、人が目視によって特定する方法について説明する。本実施形態では、指標部900A〜900D(横情報区域W1上の指標部)が、孔部および面部の組合せによってテープ色を示す。特に、テープカセット30に実装される割合が大きい主要なテープ色は、3つの指標部900B〜900Dのみを目視して特定可能である。また、テープカセット30に実装される割合が小さい特殊なテープ色のうちの一部は、4つの指標部900A〜900Dを目視して特定可能である。
表4に示すように、テープ色特定部の一部を構成する指標部900B〜900Dがそれぞれ孔部であるか、または面部であるかの組合せに対応して、主要なテープ色である「Clear」、「Blue」、「Black」の3色が定められている。詳細には、指標部900B〜900Dがそれぞれ面部、面部、孔部(表4では「1、1、0」の組合せ)の場合は、テープ色が「Clear」であることを示す。指標部900B〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部(表4では「0、1、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「Blue」であることを示す。指標部900B〜900Dがそれぞれ孔部、孔部、面部(表4では「0、0、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「Black」であることを示す。
人は、後方指標部900のうちで、横情報区域W1内に存在する指標部900B〜900Dを目視するだけで、テープカセット30の主要なテープ色を認識できる。詳細には、人は、指標部900B〜900Dの位置を目視で特定し、そこに孔部が形成されているか否かを確認するだけで、主要なテープ色であるか否か、および、そのテープ色の詳細を判別できる。例えば、図43に示すテープカセット30では、指標部900B〜900Dがそれぞれ面部、面部、孔部である。この場合、人は後方指標部900を目視して、テープ色は「Clear」であると特定できる。
指標部900Cは、基準線Zを基準として特定可能な縦情報区域V3に設けられている。そのため、指標部900Cは、横情報区域W1上の指標部900A〜900Dのうちで、人の目視によって最も容易に特定可能である。縦情報区域V3の左右隣りに位置する縦情報区域V2、V4に設けられる指標部900B、900Dも、人の目視によって容易に特定可能である。つまり、主要なテープ色については、横情報区域W1上の指標部900A〜900Dのうちで、人が目視によって認識容易な指標部900B〜900Dを確認するだけで特定できる。
表5に示すように、テープ色特定部を構成する指標部900A〜900Dがそれぞれ孔部であるか、または面部であるかの組合せに対応して、特殊なテープ色である「White」、「Yellow」、「Red」の3色が定められている。詳細には、指標部900A〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部、面部(表5では「0、1、1、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「White」であることを示す。指標部900A〜900Dがそれぞれ面部、孔部、面部、孔部(表5では「1、0、1、0」の組合せ)の場合は、テープ色が「Yellow」であることを示す。指標部900A〜900Dがそれぞれ孔部、面部、孔部、面部(表5では「0、1、0、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「Red」であることを示す。
人は、後方指標部900のうちで、横情報区域W1内に存在する指標部900A〜900Dを目視するだけで、テープカセット30の特殊なテープ色を認識できる。詳細には、人は、指標部900A〜900Dの位置を目視で特定し、そこに孔部が形成されているか否かを確認するだけで、特殊なテープ色であるか否か、および、そのテープ色の詳細を判別できる。例えば、図41および図42に示すテープカセット30では、指標部900A〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部、面部であるから、テープ色は「White」であると特定できる。
表6に示すように、文字色特定部を構成する指標部900Eが孔部であるか、または面部であるかに対応して、文字色として「Black」または「Black以外」が定められている。詳細には、指標部900Eが孔部(表6では「0」)の場合は、文字色が「Black」であることを示す。指標部900Eが面部(表6では「1」)の場合は、文字色が「Black以外」であることを示す。
人は、後方指標部900のうちで、横情報区域W2内に存在する指標部900Eを目視するだけで、テープカセット30の文字色を認識できる。詳細には、人は、指標部900Eの位置を目視で特定し、そこに孔部が形成されているか否かを確認するだけで、文字色が黒および黒以外のいずれであるかを判別できる。例えば、図41〜図43に示すテープカセット30では、いずれも指標部900Eが孔部である。この場合、人は後方指標部900を目視して、文字色は「Black」であると特定できる。
このように、本実施形態のテープカセット30では、指標部900Eが孔部および面部のいずれであるかに拘らず、人が指標部900B〜900Dまたは指標部900A〜900Dを目視するだけで、テープ色を認識できる。指標部900A〜900Dが孔部および面部のいずれであるかに拘らず、人が指標部900Eを目視するだけで、文字色を認識できる。
図29に示すように、第1テープ領域400および第2テープ領域410は、カセットケース31内の後側に偏って設けられている。第1リボン領域420および第2リボン領域440は、カセットケース31内の前側に偏って設けられる。インクリボン60を使用するテープカセット30では、横情報区域W1、W2の前後方向の並び順序に対応して、カセットケース31内においてテープおよびインクリボン60が前後方向に並ぶ。
よって、横情報区域W2よりも後側でテープ色を示す横情報区域W1を目視して、インクリボン60よりも後側に位置するテープの基材色を特定できる。横情報区域W1よりも前側で文字色を示す横情報区域W2を目視して、テープよりも前側に位置するインクリボン60のインク色を特定できる。これにより、人が横情報区域W1、W2に示される色情報の要素を、カセットケース31内でのテープおよびインクリボン60の並びに沿って正確に照合できる。
なお、各特定部によって特定される色情報(テープ色および文字色)の内容は、表4〜表6に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。表4〜表6に規定される色情報の総組合せ数は28個になるが、すべてが使用される必要はない。ただし、色情報が対応する孔部および面部の組合せは、少なくとも以下の規則性に従って定義されることが好適である。
第1に、基準線Zを指標として特定しやすい指標部900Cを除いた指標部900A、900B、900Dは、少なくとも1つが孔部で構成され、且つ、少なくとも1つが面部で構成される組合せであることが好ましい。これにより、各指標部900A〜900Dに設けられた孔部および面部の組合せの視認性を高めることができる。人は指標部900A〜900Dを目視したときに、色情報を正確に特定できる。
第2に、横情報区域W1内に存在する指標部900A〜900Dの全てが面部となる組合せ、および、特定領域F0内に存在する指標部900A〜900Eの全てが面部となる組合せを採用しないことが好ましい。このような組合せでは、後方段差壁360Aが、孔部の1つも存在しない面部、または、後壁370から離間した位置に1つのみ孔部が形成された面部となるためである。この場合、後方段差壁360Aに後方指標部900が設けられていることを、人が把握し難くなる。後壁370に隣接した位置に少なくとも1つは孔部を設けることで、後方段差壁360Aに後方指標部900が設けられていることを明確にすることができる。
第3に、テープカセット30に収納される頻度が高いテープの色情報は、後方段差壁360Aにおいて前後に並ぶ指標部900C、900Eのうち、一方を孔部とし、他方を面部とする組合せで示されることが好ましい。これは、先述したように、人が後方段差壁360Aを目視することによって、横情報区域W2の要素特定を可能とするためである。
第4に、人が目視によってテープ色を特定する場合、そのテープ色が主要なものか特殊なものかに拘らず、指標部900B〜900Dがそれぞれ孔部および面部のいずれであるかを確認する必要がある。よって、特殊なテープ色に対応する後方検出部300の検出パターン(表5参照)は、主要なテープ色に対応する後方検出部300の検出パターン(表4参照)を含まないことが好ましい。これにより、人が後方指標部900を目視した場合に、主要なテープ色を他のテープ色と明確に区別して、テープ色の特定を容易にすることができる。
ここまで、後方指標部900が色情報を特定するための構成と、人が後方指標部900を目視して色情報を特定する方法について説明した。以下では、後方検出スイッチ310との関係で見た後方指標部900の構成と、後方検出スイッチ310による色情報の特定態様とについて説明する。
まず、後方検出スイッチ310との関係で見た後方指標部900の構成について説明する。本実施形態のテープ印字装置1は、先述したように、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eを有する(図13参照)。カセット装着部8に装着されているテープカセット30において、後方検出スイッチ310A〜310Eのそれぞれに対向する重なり領域が、指標部900A〜900Eである(図41参照)。図41に示すテープカセット30の例では、指標部900A、900Eは孔部であり、指標部900B〜900Dは面部である。
孔部は、後方検出スイッチ310と対向した場合に、スイッチ端子317(図13参照)を押圧しない非押圧部901として機能する。非押圧部901は、指標部(重なり領域)の形状に内接する平面視円形の開口形状を有する。非押圧部901に対向する後方検出スイッチ310は、スイッチ端子317が非押圧部901に挿入されてオフ状態となる。
面部は、後方検出スイッチ310と対向した場合に、スイッチ端子317を押圧する押圧部902として機能する。押圧部902は、後方段差壁360Aの一部であって、指標部(重なり領域)の形状に内接する平面視円形の面形状を有する。押圧部902に対向する後方検出スイッチ310は、スイッチ端子317が押圧部902に接触してオン状態となる。図41に示すテープカセット30の例では、指標部900A、900Eは非押圧部901であり、指標部900B〜900Dは押圧部902である。
先述したように、後方指標部900の指標部900A〜900Eには、色情報に応じた規定のパターンで孔部(非押圧部901)および面部(押圧部902)のいずれかが形成される(表4〜6参照)。テープ印字装置1は、後方指標部900によって選択的に押圧される後方検出スイッチ310のオン・オフ状態の組合せに基づいて、色情報を特定できる。
詳細には、テープ印字装置1は、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフの組合せに対応する色情報を、テーブルを参照して特定する。このテーブルでは、指標部900A〜900Eについて予め定められた規定のパターン(孔部および面部の組合せ)が、それぞれ対応する後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターン(オフ状態およびオン状態の組合せ)に置き換えられて、色情報と対応付けられている。
図44に示す色情報テーブル520は、テープ印字装置1による色情報の特定に用いられるテーブルの一例である。色情報テーブル520は、ROM602(図14参照)に記憶されている。なお、図44に示す例では、後方検出スイッチ310A〜310Eがそれぞれスイッチ「ST1」〜「ST5」に対応している。各後方検出スイッチ310のオフ状態(OFF)およびオン状態(ON)が、それぞれ「0」および「1」に対応している。
本実施形態の色情報テーブル520は、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターン毎にそれぞれ異なる色情報が定義された複数の色テーブルを含む。図44に示す例では、色情報テーブル520が、第1色テーブル521と第2色テーブル522とを含んでいる。
第1色テーブル521は、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターンに応じて第1セットの色情報が定義された、標準的な色テーブルである。第2色テーブル522は、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターンに応じて第2セットの色情報が定義された、特殊な色テーブルである。第1セットの色情報は、第2セットの色情報よりも使用頻度が高い。テープ印字装置1は、第1色テーブル521および第2色テーブル522を選択的に使用して、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターンに応じた色情報(第1セットの色情報または第2セットの色情報)を特定するが、詳細は後述する。
テープ印字装置1で使用される色情報テーブル520は、図44に示す例に限らない。例えば、「予備」に対応する検出パターンに、他の任意の色情報を追加した色情報テーブル520を使用できる。登録済みの色情報を削除したり、各検出パターンと色情報との対応を変更したり、各検出パターンに対応する色情報の内容を変更した色情報テーブル520を使用してもよい。この場合、先述した目視による色情報特定のために定められる孔部の形成パターンも適宜変更される。
以上に説明したように、本実施形態のテープカセット30は、人およびテープ印字装置1が、後方指標部900に基づいてテープ種類(詳細には、色情報)を特定できるように構成されている。人が後方指標部900を目視してテープ種類を認識できるようにしたことで、次のような効果を奏する。
従来のテープカセットの製造方法では、テープカセットに実装されるテープ種類に応じて、カセットケースにテープ等が収納されるのが一般的であった。例えば、テープカセットに実装される色情報(テープ色と文字色との組合せ)に応じて、そのテープ色に一致する基材色のテープと、その文字色に一致するインク色のインクリボンとを、作業者がカセットケースに収納していた。
ところが、テープ色と文字色との組合せは多種にわたる。テープカセットの製造時に、予め意図された色情報とは異なるテープやインクリボンを、作業者が誤ってカセットケースに収納するおそれがあった。そのため、従来のテープカセットの製造工程は、製造済みのテープカセットに収納されたテープやインクリボンが、予定されていた色と対応するか否かを確認する検査工程を含んでいた。
本実施形態では、例えばテープカセット30の製造工程において、作業者が上ケース311を下ケース312に組み付ける前に、下ケース312の内側から後方指標部900を目視する。あるいは、作業者は下ケース312にテープ等を収納する前に、下ケース312を裏返して後方指標部900を目視する。作業者は後方指標部900が示す色情報を特定することで、カセットケース31に収納すべきテープ色や文字色を把握できる。このように、作業者はカセットケース31に実装すべき内容を確認しながら作業できるため、テープカセット30の製造ミスを低減できる。ひいては、上記のように検査工程を行う作業者の負担を軽減できる。
テープカセット30の出荷後には、ユーザがテープ種類等を記したラベルを何らかの理由で読めない場合でも、テープカセット30を底面視することによって、後方指標部900に基づいて色情報を認識できる。よって、ユーザは、複数のテープカセット30のなかから、所望の色情報を有するテープカセット30を容易に選び出すことができる。
後方指標部900は、横情報区域W1、W2(指標部900A〜900E)の各々に設けられた孔部および面部の組み合わせ(つまり、非押圧部901と押圧部902との組み合わせ)という簡易な構成である。テープカセット30の製造時に、カセットケース31に後方指標部900を形成するのが容易である。したがって、カセットケース31に、実装内容を示す印刷を施したり、実装内容を示すラベルを貼着したりする必要がない。したがって、テープカセット30の製造ミスを低コストで抑制できる。
本実施形態では、指標部900A〜900Eとして機能する重なり領域に、色情報に対応した孔部(つまり、非押圧部901)および面部(つまり、押圧部902)のいずれかが設けられている。しかしながら、特定領域F0には、指標部900A〜900Eとしての機能が確保される範囲内で、孔部および面部を自由に形成できる。
具体的には、先述のテープカセット30(図41および図42参照)では、特定領域F0のうちで指標部900A〜900Eとして機能しない領域の全てが、押圧部902と同一面である。そのため、特定領域F0に設けられた孔部(非押圧部901)が全て独立しているが、孔部は全て独立している必要はない。例えば、特定領域F0において、複数の非押圧部901の少なくとも2つを含むような大きさおよび形状を有する1つの孔部(溝部)を形成してもよい。一の溝部を形成する場合は、押圧部902として機能する部位を含まないことが好ましい。
図45および図46を参照して、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱態様について説明する。図45および図46では、理解を容易にするために、テープカセット30の着脱に関する孔部を仮想線(二点鎖線)で示している。カセット装着部8のうちで、テープカセット30の着脱に関する部材を図示している。図46では、ガイド孔47およびその近傍を右側面視での断面図で示している。
まず、カセット装着部8に立設された各部材の高さ関係について説明する。本実施形態では、ヘッドホルダ74、テープ駆動軸100、リボン巻取軸95、補助軸110、ガイド軸120は、少なくとも共通部32の幅Tよりも大きな軸長(上下方向長さ)を有する。このうち、3つの案内軸(つまり、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)は、それぞれの軸長が略等しく、且つ、リボン巻取軸95の軸長およびヘッドホルダ74の上下方向長さよりも大きい。そのため、キャビティ811の底面を基準として、テープ駆動軸100および補助軸110の上端の高さ位置は、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95の各上端の高さ位置よりも大きい。
先述したようにガイド軸120は、キャビティ811よりも上方に位置する角支持部812上に立設されている。ガイド軸120の上端は、ヘッドホルダ74、テープ駆動軸100、リボン巻取軸95、補助軸110のいずれの上端よりも高い位置にある。つまり、ガイド軸120は、テープ駆動軸100および補助軸110よりも上方に延びている。
ユーザがテープカセット30をカセット装着部8に装着する場合は、カセットケース31の上板305(図20参照)および底板306(図22参照)を略水平に維持しつつ下方に押し込む。このとき、ユーザは、ローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47をそれぞれテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120に対して平面視での相対位置をほぼ一致させる。
テープカセット30がカセット装着部8に向けて下方に移動すると、図45に示すように、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の各上端が、底板306に設けられた開口部64B、65B、47Bにそれぞれ進入する。このとき、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95は、それぞれの上端が底板306の下方に位置しているため、テープカセット30の内部に進入していない。
図45に示す状態から、テープカセット30がさらに下方に移動すると、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120はそれぞれ開口部64B、65B、47Bを介して軸孔46D、65C、47Cに下方から挿入される。このとき、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120が、それぞれ軸孔46D、65C、47Cの内壁に接触することで、テープカセット30の周方向への移動が規制される。これにより、テープカセット30は、軸孔46D、65C、47Cにそれぞれ挿入されたテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の立設方向に沿って案内されつつ、自重の作用も加わって下方に移動する。
本実施形態では、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の上端縁は、先端に向けて軸径が小さくなるようなテーパ形状となっている。そのため、ローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47に対して平面視での相対位置に若干ズレが生じていても、ユーザはテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120を適切かつ円滑に挿入可能である。また、テープ駆動軸100の軸径は、軸孔46Dの径よりも若干小さい。そのため、ローラ支持孔64内でテープ駆動ローラ46の平面位置が振動や傾斜等によって若干変化した場合でも、ユーザはテープ駆動軸100をローラ支持孔64に挿入可能である。
先述したように、ガイド孔47は、ガイド軸120の先端部(つまり、小径軸部120B)の軸径よりも開口幅が大きく、特に分割線K方向(図15参照)の開口幅が最も大きい。つまり、ガイド軸120の平面位置に対するガイド孔47の位置決め精度の許容幅が、分割線Kに沿って大きくなっている。テープカセット30の装着時には、ガイド軸120に対する平面視でのガイド孔47の相対位置が若干分割線K方向にずれていても、ユーザはガイド軸120をガイド孔47に挿入可能である。
これにより、ユーザは、カセット装着部8に設けられた3つの案内軸の全てに対して、テープカセット30の対応する各キャビティ(つまり、ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65)を正確に位置決めする必要はない。そのため、テープカセット30の装着時に、ユーザがテープカセット30を位置決めする負担が軽減される。また、ローラ支持孔64およびガイド孔47との寸法幅を、テープ駆動軸100とガイド軸120との寸法幅と完全一致させるためには、作業者に高度な製造精度が要求される。
上記のようにガイド孔47に分割線K方向の遊びを設けることで、ガイド孔47の寸法精度の僅かな誤差が許容される。したがって、テープカセット30の製造時に、作業者がガイド孔47を正確に形成する負担を軽減できる。
テープカセット30が下方に案内されるのに伴って、サーマルヘッド10を備えたヘッドホルダ74がヘッド挿入部39に下方から挿入される。リボン巻取軸95が、開口部68Bを介して軸孔44Cに下方から挿入される。このとき、カセットケース31の下ヘッド周壁36B(図49参照)が、カセットフック75の爪部752(図49参照)の上部に当接して、可撓性を有する突出部751が前方向(図49では右方向)に撓む。
テープカセット30がカセット装着部8の適正位置まで下方に押し込まれると、以下のようにテープカセット30の位置が固定される。
図46に示すように、ガイド軸120の基部側(つまり、大径軸部120A)が、ガイド孔47に嵌め込まれる。先述したように、大径軸部120Aの軸径は、ガイド孔47の仮想線G(図15参照)における開口幅に略等しい。そのため、ガイド孔47に挿入された大径軸部120Aは、筒壁部589(図36参照)によって仮想線G方向に緊密に係止される。図45および図46には図示しないが、位置決めピン102、103(図4参照)が、それぞれピン孔62、63(図16参照)に挿入される。これにより、カセット装着部8に装着されたテープカセット30は、前後左右方向への移動が規制される。
図47および図48に示すように、第1受け部391の第1下側平面部391Bが、ヘッドホルダ74の第1支持部741に当接する。第2受け部392の第2下側平面部392Bが、ヘッドホルダ74の第2支持部742に当接する。つまり、サーマルヘッド10の上下方向中心位置の基準となる第1、第2支持部741、742が、基準面である第1、第2下側平面部391B、392Bにそれぞれ当接して、テープカセット30を下方から支持する。このとき、カセット装着部8の角支持部812も、カセットケース31の角部321〜324の下面に当接して、テープカセット30を下方から支持する。これにより、カセット装着部8に装着されたテープカセット30は、下方向への移動が規制される。
図49に示すように、カセットフック75の爪部752は、突出部751の弾性力によって係止部397に係止される。さらに、印字のためにカセットカバー6が閉じられると、図47に示すように、ヘッド押え部材7が押え受け部393の第1上側平面部393Aに当接して、テープカセット30を上方から押圧する。周縁押え部材911、912(図2参照)が、第1、第2角部321、322の第2、第3上側平面部321A、322A(図15参照)にそれぞれ当接して、テープカセット30を上方から押圧する。これにより、カセット装着部8に装着されたテープカセット30は、浮き上がる方向、つまり上方への移動が規制される。
図49に示すように、カセットケース31の下ヘッド周壁36Bと底板306とを結ぶ下端角部の一部に、傾斜部375が設けられている。傾斜部375は、係止部397の直下に設けられた面取り部であり、前方上側(図49では右上側)から後方下側(図49では左下側)に向けて傾斜している。テープカセット30の装着時には、傾斜部375がカセットフック75の爪部752に上方から接触する。
爪部752は、先述のように断面視略三角形状の突起部であり、その上端面が前方上側から後方下側に向けて傾斜している。テープカセット30の装着時には、傾斜部375が爪部752の上端面に沿って下方にスライド移動する。これにより、カセットフック75がカセットケース31に干渉することが抑制されるため、爪部752が係止部397に向けてスムーズに案内される。ユーザは、テープカセット30をカセット装着部8内にスムーズに押し込むことができる。
カセットカバー6は、テープ印字装置1の背面上方の左右両端部において軸支されている。カセットカバー6が閉じられる場合、ヘッド押え部材7の先端は、カセット装着部8に装着されているテープカセット30の上面301に対して垂直方向に接近するのではなく、後方から前方に向かって鋭角に接近する。第1上側平面部393A後方に設けられた傾斜部394(図15参照)は、ヘッド押え部材7が第1上側平面部393Aに接近する際の干渉をなくすための逃がし部として機能する。
このように、本実施形態では、3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置まで案内される。テープカセット30は、ガイド軸120等によって適正な平面位置に位置決めされ、且つ、第1、第2支持部741、742等によって適正な高さ位置に位置決めされる。カセット装着部8の適正位置に装着されたテープカセット30は、カセットフック75およびヘッド押え部材7等によって保持される。
言い換えると、テープカセット30は、3つのキャビティ(ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65)の少なくとも1つに挿入される案内軸によって、テープカセット30が着脱方向(つまり、上下方向)に案内され、且つ、着脱方向とは異なる方向(つまり、前後・左右方向)への移動が規制される。したがって、カセット装着部8に対するテープカセット30の位置決めを容易にすることができる。
例えば、テープカセット30がカセット装着部8に装着される場合に、ヘッドホルダ74がヘッド挿入部39の外縁に接触するのが抑制される。よって、ユーザは、ヘッドホルダ74をヘッド挿入部39内にスムーズに挿入できる。さらに、ユーザは第1、第2受け部391、392を、それぞれ第1、第2支持部741、742上に正確に位置決めできる。これにより、第1、第2受け部391、392が、第1、第2支持部741、742によって確実に支持される。
図46に示すように、テープカセット30が適正位置に装着された状態では、テープ駆動軸100のカム部材100Aが、テープ駆動ローラ46のリブ46F(図30参照)に適正に噛み合う。リボン巻取軸95のカム部材95Aが、リボン巻取スプール44のリブ44D(図35参照)に適正に噛み合う。ヘッドホルダ74に設けられたサーマルヘッド10が、ヘッド挿入部39の適正な印字位置に配置される。これにより、テープ印字装置1では、テープやインクリボン60の走行が安定し、ひいては適正な印字を実行可能になる。
本実施形態では、ヘッドホルダ74に設けられた第1、第2支持部741、742によって、サーマルヘッド10の近傍でテープカセット30の上下方向の位置決めが正確に行われる。サーマルヘッド10の印字範囲の上下方向中心位置と、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とを、精度よく一致させることができる。よって、テープに対する印字品質を向上させることができる。
特に、テープカセット30は、サーマルヘッド10の挿入位置の近傍、詳細には印字位置に対してテープ搬送方向の上流側および下流側の両側で支持される。テープおよびインクリボン60の搬送方向が、サーマルヘッド10の配置方向(上下方向)に対して直角に精度よく維持される。その結果、テープおよびインクリボン60の走行を安定させることができる。サーマルヘッド10による上下方向の印字中心位置と、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とを、さらに精度よく一致させることができる。
さらに、第1、第2受け部391、392およびアーム部34に設けられた規制部の一部(つまり、分離壁規制部383、第1テープ下規制部381B、382B、第1印字面側規制部389)は、いずれも下ケース312に設けられている。これにより、上ケース311と下ケース312との圧入状態にかかわらず、第1、第2受け部391、392と、分離壁規制部383、第1テープ下規制部381B、382Bおよび第1印字面側規制部389との位置関係が一定となる。
したがって、第1、第2受け部391、392がそれぞれ第1、第2支持部741、742によって適正な高さ位置で支持されるのに伴って、分離壁規制部383、第1テープ下規制部381B、382Bおよび第1印字面側規制部389も適正な高さ位置に保持される。ひいては、アーム部34内を搬送されるテープの幅方向中心位置が、サーマルヘッド10による上下方向の印字中心位置とより正確に一致させることができるため、印字品質をさらに向上させることができる。
テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、角部321〜324が角支持部812によって下方から支持される。つまり、第1、第2下側平面部391B、392Bに加え、同じく基準面である第3、第4下側平面部321B、322Bも支持される。したがって、例えばカセットケース31にそり等の変形が発生した場合でも、複数位置にある基準面が下方から支持されることで、各基準面の高さ位置が矯正される。したがって、テープやインクリボン60の走行性能および印字位置精度を良好に維持できる。
カセットカバー6が閉じられると、ヘッド押え部材7が、第1下側平面部391Bの真上に位置する第1上側平面部393Aを上方から押圧する。つまり、テープカセット30は、基準面である第1下側平面部391Bと第1上側平面部393Aとが、第1支持部741とヘッド押え部材7とで上下から挟まれる。
したがって、テープカセット30は、上下方向から確実に固定され、且つ、印字位置近くで適切に位置決めできる。カセット装着部8に装着されているテープカセット30の上方向への移動(所謂、浮き)を規制できる。サーマルヘッド10の印字範囲の上下方向中心位置と、フィルムテープ59の幅方向中心位置とをさらに精度よく一致させることができる。ひいては、テープの搬送および印字を安定して行うことが可能となる。
さらに、周縁押え部材911、912が、第2、第3上側平面部321A、322Aをそれぞれ上方から押圧する。つまり、テープカセット30は、3箇所で上下から挟まれる。3箇所を結んで囲まれる面は広範囲に及ぶため、テープカセット30はより確実に固定される。例えばカセットケース31にそり等の変形が発生した場合でも、各基準面の高さ位置が確実に矯正される。したがって、テープやインクリボン60の走行性能および印字位置精度を向上させることができる。
第1受け部391と第2受け部392とは、互いに直交する方向からヘッド挿入部39を臨んでいる。第1、第2受け部391、392は、互いに直交する方向に延びる第1、第2支持部741、742にそれぞれ挿入されて、第1、第2下側平面部391B、392Bをそれぞれ下方から支持する。したがって、第1、第2支持部741、742は、テープカセット30の上下方向の移動のみならず、テープカセット30の前後方向および左右方向の移動も規制する。これにより、サーマルヘッド10とヘッド挿入部39との位置関係をより適切に保持できる。
カセットフック75は、ヘッド押え部材7等と同様に、テープカセット30が浮き上がる方向、つまり上方への移動をさらに確実に規制する。これにより、テープの搬送および印字をより安定させることができる。
図47に示すように、第1、第2下側平面部391B、392Bと、カセットケース31に収納されたテープの幅方向中心位置(カセットケース31の中心線N)との距離H2は、テープカセット30のテープ種類に関わらず一定である。第1上側平面部393Aと中心線Nとの距離H1も、テープカセット30のテープ種類に関わらず一定である。つまり、テープカセット30の上下方向の高さが異なっていても、距離H1、H2は一定である。これにより、同一のテープ印字装置1で、高さの異なる複数種類のテープカセット30を使用できる。
従来では、印字動作の実行時にテープが搬送される場合、テープ幅に関わらず幅方向中心位置が一致していなければ、幅方向に生じるテープへの圧力差が許容範囲を超えるとテープが蛇行する可能性があった。本実施形態では、テープ幅に拘らず距離H1、H2は一定である。そのため、印字動作の実行時には、幅が異なるテープであっても、各々の幅方向中心が一致する位置でテープが搬送される。したがって、幅方向に生じる圧力差に起因するテープの蛇行を防止できる。
さらに、距離H1と距離H2とが等しいため、テープカセット30に対する下方からの支持と上方からの押圧のバランスがよい。よって、サーマルヘッド10の印字範囲の上下方向中心位置と、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置との適切な位置関係を安定して維持できる。
テープカセット30をカセット装着部8から取り外す場合は、例えばユーザがカセットケース31の左右両端を指で挟持しながら、テープカセット30をカセット装着部8から上方に引き抜けばよい。このときも、テープカセット30が3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によってテープカセット30が上方向に案内される。よって、テープカセット30をカセット装着部8から取り外す過程で、テープカセット30に傾きが生じにくい。ひいては、テープカセット30がカセット装着部8の内壁等に引っ掛かることを防止できる。
このように、テープカセット30の着脱時には、平面視でテープカセット30の一対の対角部(具体的には、ローラ支持孔64およびガイド孔47)と第1のテープの重心位置(具体的には、第1テープ支持孔65)との3点において、テープカセット30が上下方向に案内される。そのため、カセット装着部8に装着される過程で、テープカセット30が適正な姿勢から傾斜したり、テープカセット30に位置ズレが生じたりすることを適切に防止できる。
テープカセット30の全体の重心は、平面視でローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47を結ぶ領域内に位置することが好適である。これによれば、平面視でテープカセット30が案内される3点(すなわち、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)に、テープカセット30の自重が均等に分散して作用する。テープカセット30の着脱方向への移動がスムーズになり、テープカセット30が装着される過程での位置ズレや傾きの発生がより確実に防止される。本実施形態のテープカセット30は、テープ種類にかかわらず、平面視でローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47を結ぶ領域内に重心が位置している(図5〜図8参照)。
より好適には、テープカセット30の全体の重心が、平面視で分割線K上またはその近傍に位置することが好ましい。本実施形態では、ラミネートタイプのテープカセット30(図5および図6参照)およびレセプタタイプのテープカセット30(図7参照)は、平面視で分割線K上またはその近傍に重心が位置する重量分布を有する。そのため、これらのテープカセット30をカセット装着部8に装着する過程で、テープカセット30の自重による傾きが生じにくい。
ローラ支持孔64が設けられた第4角部324と、その対角に位置してガイド孔47が設けられた第2角部322との少なくとも2点において、テープカセット30の着脱が案内される。第4角部324近傍では、テープ駆動ローラ46によるテープの送り出しと、サーマルヘッド10による印字とが行われる。第4角部324近傍に設けられた露出部77では、印字を行うためにテープが露出している。そのため、第4角部324近傍におけるテープカセット30の位置決めが、印字品質やテープ走行に大きな影響を与える。
本実施形態では、テープカセット30がローラ支持孔64に挿入されるテープ駆動軸100に沿って案内される。したがって、テープの送り出しおよび印字が行われる位置の近傍で、テープカセット30の位置決めを正確に行うことができる。テープカセット30の装着過程で外部に露出したテープが他の部材に絡んでしまうことを抑制できる。テープ駆動軸100を案内軸の一つとして利用することで、テープカセット30を第4角部324近傍で案内する軸体を別途立設する必要がなく、テープ印字装置1の構造が複雑になることを抑制できる。
さらに、テープカセット30はガイド孔47に挿入されるガイド軸120に沿って案内される。つまり、テープカセット30が第2角部322近傍でも着脱方向に案内される。これにより、平面視で最も大きい2点間距離を確保できる両対角位置にて、テープカセット30を安定的に着脱方向に案内できる。
図50および図51を参照して、テープ印字装置1がテープカセット30のテープ種類を検出する態様について説明する。
図50を参照して、アーム検出部200によるアーム指標部800の検出態様について説明する。テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着され、カセットカバー6が閉じられると、プラテンホルダ12が待機位置(図5参照)から印字位置(図6〜図8参照)に向けて移動する。このとき、アーム検出部200および係止片225が、それぞれ、テープカセット30のアーム指標部800および係止孔820に向けて移動する。
テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されていれば、係止片225は係止孔820に挿入される。この場合、アーム検出スイッチ210のスイッチ端子222は、係止片225によって干渉されることなく、アーム指標部800の指標部(非押圧部801または押圧部802)に対向する。このとき、非押圧部801に対向するアーム検出スイッチ210は、非押圧部801に挿入されてオフ状態になる。押圧部802に対向するアーム検出スイッチ210は、押圧部802によって押圧されてオン状態になる。
例えば、図37〜図39に示すテープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されている場合、図50に示すように、アーム検出スイッチ210A、210C、210Dは、非押圧部801である指標部800A、800C、800Dにそれぞれ対向するので、オフ状態「0」となる。アーム検出スイッチ210B、210Eは、押圧部802である指標部800B、800Eにそれぞれ対向するのでオン状態「1」となる。つまり、アーム検出スイッチ210A〜210Eにそれぞれ対応するスイッチ「SW1」〜「SW5」のオン・オフ状態は、それぞれ「0」、「1」、「0」、「0」、「1」である。
テープ印字装置1では、アーム検出部200の検出パターン(つまり、5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフの組合せ)に基づいて、テープカセット30のテープ種類として印字用情報が特定される。上記の例では、印字用情報テーブル510(図40)を参照して、先述した目視での特定結果と同様、テープ幅「36mm」、印字態様「鏡像印字(ラミネート)」、色テーブル「第1色テーブル」を特定可能である。
前述したように、係止片225は、傾斜部226が設けられているため、後方に向かって厚みが漸減している。係止孔820は、傾斜部821が設けられているため、前方に向かって上下方向の開口幅が漸増している。例えば、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置から僅かに浮いた状態では、係止片225が係止孔820に対して僅かに下方向にずれる。このような場合でも、プラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると、傾斜部226および傾斜部821の相互作用によって、係止片225が係止孔820の内部に案内される。
つまり、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置から僅かに浮いた程度であれば、係止片225を係止孔820内に適切に挿入させることができる。ひいては、アーム検出部200をアーム指標部800に正確に対向させることができる。
一方、例えばテープカセット30の下方向への押し込みが足りない場合などには、係止片225が係止孔820に挿入されることなくアーム前面壁35の面部に接触する。前述したように、係止片225は、各スイッチ端子222よりも突出高さが若干大きい。係止片225がアーム前面壁35の面部に接触している場合には、スイッチ端子222はアーム前面壁35に接触できない。
このように、係止片225がスイッチ端子222とアーム指標部800との接触を妨げた場合、アーム検出スイッチ210A〜210Eはすべてオフ状態となる。つまり、スイッチ「SW1」〜「SW5」のオン・オフ状態は、それぞれ「0」、「0」、「0」、「0」、「0」である。この装着状態の場合、テープ印字装置1は、印字用情報テーブル510(図40)を参照して、「エラー1」を特定可能である。
さらに、係止片225を備えていないテープ印字装置1の場合は、テープカセット30が適正位置に装着されていなくても、アーム検出スイッチ210がアーム前面壁35の面部に対向していればスイッチ端子222は押圧される(つまり、オン状態となる)。前述したように、指標部800A〜800Eはジグザグに配置されており、上下方向で同一線上に並ぶ指標部800A〜800Eはない。そのため、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置から上下方向にズレている場合は、次のような態様でエラーが検出される。
例えば、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置から若干上方にズレているために、アーム前面壁35の下端部における高さ位置が、下列のアーム検出スイッチ210Eよりも下方になることがある。この場合、全てのアーム検出スイッチ210A〜210Eが、アーム前面壁35の面部に対向するために全てオン状態となる。つまり、スイッチ「SW1」〜「SW5」のオン・オフ状態は、それぞれ「1」、「1」、「1」、「1」、「1」である。この装着状態の場合、テープ印字装置1は、印字用情報テーブル510(図40)を参照して、「エラー3」を特定可能である。
また、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置から大きく上方にズレているために、アーム前面壁35の下端部における高さ位置が、中列のアーム検出スイッチ210A、210Cと下列のアーム検出スイッチ210Eとの間にあることがある。この場合、アーム検出スイッチ210A〜210Dがアーム前面壁35の面部に対向してオン状態になり、アーム検出スイッチ210Eがアーム前面壁35の面部に対向せずにオフ状態になる。つまり、スイッチ「SW1」〜「SW5」のオン・オフ状態は、それぞれ「1」、「1」、「1」、「1」、「0」である。この装着状態の場合、テープ印字装置1は、印字用情報テーブル510(図40)を参照して、「エラー2」を特定可能である。
先述したように、本実施形態のアーム指標部800は、「エラー1」〜「エラー3」のいずれかに対応する押圧部802(面部)と非押圧部801(孔部)の組合せパターンは採用されていない。これにより、テープ印字装置1は、テープ種類のみならず、テープカセット30の装着状態も検出可能である。
アーム部34は、テープおよびインクリボン60を排出口341から露出部77に排出する部位である。そのため、ヘッド挿入部39に挿入されたサーマルヘッド10と、テープおよびインクリボン60との上下方向の位置関係が、アーム部34によって決定される。従来では、例えばユーザがテープカセット30を正しく装着しなかった場合やテープ印字装置1を正しく操作しなかった場合に、アーム部34がカセット装着部8内で適正に位置決めされないことがあった。この場合、テープおよびインクリボン60とサーマルヘッド10との位置関係に誤差が生じて、テープの幅方向に対してずれた位置に印字が行われるおそれがあった。
本実施形態のアーム指標部800は、ヘッド挿入部39の近傍に位置するアーム部34(詳細には、アーム前面壁35)に設けられている。アーム部34は、テープおよびインクリボン60とサーマルヘッド10との位置関係の誤差を検出しやすい部位である。したがって、テープ印字装置1は、アーム部34を基準として、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されているか否かを正確に判断できる。
係止孔820は、下アーム前面壁35Bに設けられている。係止孔820に係止片225が挿入されると、下アーム前面壁35Bの位置が固定され、ひいては下ケース312のアーム部34部分の位置も固定される。そのため、例えば印字動作時におけるアーム部34の振動が抑制される。さらに、下ケース312のアーム部34部分に設けられた規制部(分離壁規制部383、第1テープ下規制部381B、第1印字面側規制部389など)も、適正な高さ位置に位置決めされる(図27参照)。したがって、上ケース311と下ケース312との圧入状態にかかわらず、アーム部34内におけるテープの搬送を安定させることができ、且つ、テープの幅方向および印字面側への移動がより確実に規制できる。
アーム指標部800は、複数のアーム検出スイッチ210が水平に突出するのに対応して、カセットケース31の側壁(詳細には、アーム前面壁35)に設けられる。アーム指標部800が複数のアーム検出スイッチ210を選択的に押圧するとき、押圧部802に対向するアーム検出スイッチ210の反発力がアーム前面壁35に加えられる。
先述のように、テープカセット30は、3つのキャビティの少なくとも一つに挿入される案内軸によって、着脱方向とは異なる方向への移動が規制される。したがって、アーム検出スイッチ210の反発力がアーム前面壁35に加えられた場合でも、テープカセット30が側面方向に移動することを抑制でき、ひいてはテープ種類が誤検出されるおそれを低減できる。
アーム指標部800は、下アーム前面壁35Bに設けられ、且つ、係止孔820と隣接している。よって、係止孔820に係止片225が挿入されると、アーム指標部800が適正位置に固定されるため、アーム検出部200によるテープ種類の検出精度が向上する。さらに、例えばテープ印字装置1の印字動作時に振動が発生した場合、上接離部86Aが下接離部86Bから離間しても、下接離部86Bの位置は維持される。よって、アーム部34で行われるテープの搬送やテープ種類の検出などに与える影響を抑制しつつ、アーム部34の物理的な耐久性能を向上させることができる。
図51を参照して、後方検出部300による後方指標部900の検出態様について説明する。テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されると、後方支持部813がカセットケース31の後方段差壁360Aを下方から支持する。このとき、後方支持部813に設けられた後方検出部300が、後方段差壁360Aに設けられた後方指標部900に対向する。
この場合、後方検出スイッチ310のスイッチ端子317が、後方指標部900の指標部(非押圧部901または押圧部902)に対向する。このとき、非押圧部901に対向する後方検出スイッチ310は、非押圧部901に挿入されてオフ状態になる。押圧部902に対向する後方検出スイッチ310は、押圧部902によって押圧されてオン状態になる。
例えば、図41および図42に示すテープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されている場合、図51に示すように、後方検出スイッチ310A、310Eは、非押圧部901である指標部900A、900Eにそれぞれ対向するので、オフ状態となる。後方検出スイッチ310B〜310Dは、押圧部902である指標部900B〜900Dに対向するのでオン状態となる。つまり、後方検出スイッチ310A〜310Eにそれぞれ対応するスイッチ「ST1」〜「ST5」のオン・オフ状態は、それぞれ「0」、「1」、「1」、「1」、「0」である。
テープ印字装置1では、後方検出部300の検出パターン(ここでは、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフの組合せ)に基づいて、テープカセット30のテープ種類として色情報が特定される。上記の例では、色情報テーブル520(図44参照)を参照して、後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフ状態「0」、「1」、「1」、「1」、「0」に対応する色情報が特定される。
ただし、色情報テーブル520に含まれる複数の色テーブルのいずれを使用するかによって、特定される色情報が異なる。本実施形態では、先述のアーム検出スイッチ210Dのオフ状態に応じて、第1色テーブル521が色情報の特定に使用される。その結果、先述した目視での特定結果と同様に、テープ色「White」、文字色「Black」が特定される。
このように、本実施形態のテープカセット30では、アーム指標部800および後方指標部900が、カセットケース31において互いに離間した位置および異なる壁面に設けられる。つまり、テープ種類を示す指標部の位置及び範囲が、一つの壁面に限定されない。したがって、テープ印字装置1に検出させるテープ種類のパターン数を容易に増加させることができる。ひいては、テープカセット30の設計自由度を向上させることができる。
さらに、アーム指標部800および後方指標部900は、それぞれ複数のアーム検出スイッチ210および複数の後方検出スイッチ310を、互いに離間した位置および異なる方向から選択的に押圧する。これにより、テープ印字装置1は、テープ種類に含まれる異なる要素(すなわち、印字用情報および色情報)を明確に区別できる。したがって、テープカセット30は、テープ印字装置1に印字用情報および色情報をより正確に検出させることができる。
上記のように、後方指標部900が複数の後方検出スイッチ310を選択的に押圧する場合、押圧部902に対向する後方検出スイッチ310の反発力が後方段差壁360Aに加えられる。このとき、後方検出スイッチ310の反発力によって、カセットケース31の後端側が持ち上げられることがありうる。
本実施形態では、アーム指標部800および後方指標部900は、いずれもカセットケース31の長手方向(つまり、左右方向)の中心位置に設けられている。つまり、後方検出スイッチ310の反発力は、カセットケース31の後端側における左右方向中心位置に加えられる。カセットケース31の後端側が持ち上げられた場合でも、カセットケース31は左右方向に傾斜しにくいため、カセットケース31の前端側に与える影響が小さい。よって、カセットケース31の後端側が持ち上げられた場合でも、アーム指標部800と複数のアーム検出スイッチ210との位置関係の変化を抑制できる。ひいては、テープ印字装置1が印字用情報を誤検出することを抑制できる。
後方指標部900は、複数の後方検出スイッチ310が上方に突出するのに対応して、カセットケース31の底板306(詳細には、後方段差壁360A)に設けられる。先述のように、一対のキャビティの少なくとも一方に挿入される案内軸に沿って、テープカセットが着脱方向に案内される。テープカセット30の着脱方向は、複数の後方検出スイッチ310の進退方向と平行である。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、押圧部902に対向する後方検出スイッチ310が突出方向とは正反対の方向(つまり、下方向)に押圧される。
したがって、押圧部902によって押圧される後方検出スイッチ310に対して、進退方向とは異なる方向に負荷が加えられることを抑制できる。ひいては、後方検出スイッチ310の屈曲や破損等を抑制できる。さらに、後方検出スイッチ310が正確に押圧されるため、テープ種類の検出精度を向上させることができる。
図52を参照して、本実施形態に係るテープ印字装置1の印字に係る処理について説明する。図52に示すフローチャートの処理は、テープ印字装置1が電源オンされると、CPU601がROM602に記憶されているプログラムに基づいて実行する(図14参照)。
図52に示すように、テープ印字装置1の印字に係る処理では、まずアーム検出部200の検出パターンに基づいて、テープカセット30の印字用情報が特定される(ステップS1)。ステップS1では、印字用情報テーブル510(図40参照)に基づいて、アーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフの組合せに対応する印字用情報が特定される。
ステップS3の実行後、アーム検出スイッチ210D(以下、スイッチSW4)がオン状態であるか否かが判断される(ステップS3)。スイッチSW4がオフ状態である場合(ステップS3:NO)、色情報テーブル520(図44参照)から第1色テーブル521が選択される(ステップS5)。スイッチSW4がオン状態である場合(ステップS3:YES)、色情報テーブル520から第2色テーブル522が選択される(ステップS7)。
ステップS5またはステップS7の実行後、後方検出部300の検出パターンに基づいて、テープカセット30の色情報が特定される(ステップS9)。ステップS9では、ステップS5またはステップS7で選択された色テーブルを参照して、後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフの組合せに対応する色情報が特定される。
本実施形態では、特定のアーム検出スイッチ210の検出状態(具体的には、アーム検出スイッチ210Dのオン・オフ状態)に応じて、テープカセット30の色情報の特定に使用される色テーブルが選択される(ステップS3〜S7参照)。そのため、後方検出スイッチ310の数量を増加させることなく(つまり、後方検出部300が占める面積を大きくすることなく)、テープ印字装置1が特定可能な色情報のパターン数を増加させることができる。
ステップS9の実行後、ステップS1で特定された印字用情報およびステップS9で特定された色情報が、ディスプレイ5にテキスト情報として表示される(ステップS11)。例えば、先述のテープカセット30(図37〜図39、図41および図42参照)が適正に装着された場合には、ディスプレイ5に「36mmラミネートタイプのテープカセットが装着されました。テープ色はWhite、文字色はBlackです。」という表示が行われる。
ステップS11の実行後、キーボード3からの入力があったか否かが判断される(ステップS13)。キーボード3からの入力がある場合(ステップS13:YES)、印字データの入力が受け付けられる(ステップS15)。ステップS15では、CPU601が、キーボード3から入力されたキャラクタを印字データとして受け付けて、その印字データ(文書データ)をRAM604のテキストメモリに記憶する。キーボード3からの入力がない場合(ステップS13:NO)、処理はステップS13に戻り、CPU601はキーボード3からの入力を待ち受ける。
その後、例えばキーボード3から印字開始が指示されると、ステップS1で特定された印字用情報に応じて、テキストメモリに記憶された印字データが加工される(ステップS17)。例えば、ステップS17では、ステップS1で特定されたテープ幅に応じて、印字データの印字範囲および印字サイズなどが加工される。ステップS1で特定された印字態様(ラミネートまたはレセプタ)に応じて、印字データの印字位置などが加工される。ステップS17の実行後、加工済みの印字データに基づいてテープへの印字処理が実行される(ステップS19)。ステップS19の印字処理が完了すると、印字に係る処理(図52)が終了する。
ステップS19の印字処理では、図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合、テープ駆動軸100によって回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって、第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出す。リボン巻取軸95によって回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期して、リボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。
フィルムテープ59およびインクリボン60は、アーム部34内を搬送されたのち、排出口341で重ね合わされて露出部77に排出され、サーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。サーマルヘッド10では、インクリボン60を用いてフィルムテープ59にキャラクタを鏡像で転写する鏡像印字が行われる。
さらに、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間にガイドされて巻き込まれながら、印字済みのフィルムテープ59の印字面に貼着される。使用済みのインクリボン60は、リボン案内壁38にて印字済みのフィルムテープ59から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。両面粘着テープ58が貼着されたフィルムテープ59(つまり、印字済テープ50)は、さらに排出案内部49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
図7に示すレセプタタイプのテープカセット30が装着されている場合、テープ駆動軸100によって回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から印字テープ57を引き出す。リボン巻取軸95によって回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期して、リボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。
印字テープ57およびインクリボン60は、アーム部34内を搬送されたのち、排出口341で重ね合わされて露出部77に排出され、サーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。サーマルヘッド10では、インクリボン60を用いて印字テープ57にキャラクタを正像で転写する正像印字が行われる。
使用済みのインクリボン60は、リボン案内壁38にて印字済みの印字テープ57から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。印字済みの印字テープ57(つまり、印字済テープ50)は、さらに排出案内部49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
図8に示すサーマルタイプのテープカセット30が装着されている場合、テープ駆動軸100によって回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から感熱紙テープ55を引き出す。感熱紙テープ55は、アーム部34内を搬送されたのち、排出口341から露出部77に排出されて、サーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。サーマルヘッド10では、感熱紙テープ55にキャラクタを正像で発色させる正像印字が行われる。印字済みの感熱紙テープ55(つまり、印字済テープ50)は、さらに排出案内部49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
上記の印字処理(ステップS19)の実行中は、第1、第2受け部391、392、ヘッド押え部材7、カセットフック75などの作用により、テープカセット30の安定した装着状態が保たれる。よって、テープ印字装置1は、サーマルヘッド10の印字範囲の上下方向中心位置と、テープおよびインクリボン60の幅方向中心位置とが精度よく一致した状態で、テープの印字面に対して印字を施すことができる。
本実施形態では、汎用カセットであるテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1にて使用している。それにより、テープ印字装置1は1台でサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能である。したがって、テープカセット30のタイプごとに異なるテープ印字装置1を用いる必要がない。また、同じテープ幅のテープに対応したテープカセット30を製造する場合、アーム指標部800および後方指標部900を形成する部分を含む金型等、一部の金型を除いて共通の金型を使用可能なため、大変なコスト削減になる。
上記実施形態において、上板305が本発明の「上壁」に相当し、底板306が本発明の「底壁」に相当し、下周壁304が本発明の「下外壁」に相当し、底面302が本発明の「底面」に相当し、アーム前面壁35が本発明の「前面」に相当する。感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58およびフィルムテープ59の少なくとも一つが、本発明の「テープ」に相当する。下アーム前面壁35Bが本発明の「第1壁部」に相当し、分離壁33が本発明の「第2壁部」に相当する。係止孔820が本発明の「係止孔」に相当し、係止片225が本発明の「係止部」に相当する。第1テープ下規制部381Bおよび分離壁規制部383が、本発明の「幅方向規制部」に相当する。アーム指標部800が本発明の「前面指標部」に相当し、指標部800A〜800Eが本発明の「複数の指標部」に相当する。非押圧部801が本発明の「スイッチ孔」に相当し、押圧部802が本発明の「面部」に相当する。第1受け部391および第2受け部392が、本発明の「支持受け部」に相当する。第1支持部741および第2支持部742が、本発明の「支持部」に相当する。
なお、本発明に係るテープカセットは、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、図53および図54に示すテープカセット130のように、第2テープ領域410内に、第2テープスプール41から引き出されるテープの量を安定化させるための調整リブ940を設けてもよい。
調整リブ940は、第2テープ領域410におけるフィルムテープ59の搬送経路の最下流側に設けられた板状部材であり、第1調整リブ941および第2調整リブ942を含む。第1調整リブ941は、第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59の裏面側に接触している。第2調整リブ942は、第1調整リブ941よりも下流側で、第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59の印字面側に接触している。
図53に示すように、第2テープスプール41に巻回されているフィルムテープ59の量が多い場合(つまり、フィルムテープ59の巻回径が大きい場合)、第1調整リブ941によって、フィルムテープ59の搬送経路が大きく屈折されている。このとき、第1調整リブ941に接触するフィルムテープ59の摩擦力が大きくなるため、第2テープスプール41に大きな回転負荷が付与される。
第2テープスプール41からフィルムテープ59が引き出されるにつれて、第2テープスプール41に巻回されているフィルムテープ59の量が少なくなる(つまり、フィルムテープ59の巻回径が小さくなる)。図54に示すように、フィルムテープ59の巻回径が小さい場合、第1調整リブ941によって、フィルムテープ59の搬送経路が小さく屈折されている。このとき、第1調整リブ941に接触するフィルムテープ59の摩擦力が小さくなるため、第2テープスプール41に小さな回転負荷が付与される。
このように、フィルムテープ59の巻回径が大きいほど、第2テープスプール41に付与される回転負荷が大きくなるのに伴って、フィルムテープ59のバックテンションも大きくなる。一方、フィルムテープ59の巻回径が小さいほど、第2テープスプール41に付与される回転負荷が小さくなるのに伴って、フィルムテープ59のバックテンションも小さくなる。つまり、フィルムテープ59の巻回径に応じて、第2テープスプール41に最適な回転負荷が付与されることで、フィルムテープ59のバックテンションが調整される。このように、第2テープ領域410内に調整リブ940を設けた簡易な構造で、第2テープスプール41から引き出されるテープの量を安定させることができる。
先述のように、第2テープスプール41には、フィルムテープ59にバックテンションを付与するクラッチバネ572(図33参照)が装着されている。フィルムテープ59が引き出し方向に回転している場合、第2テープスプール41の回転負荷(つまり、負荷トルク)が、クラッチバネ572によって安定的に付与される。ただし、この負荷トルクによって発生するフィルムテープへのバックテンションは、フィルムテープ59の巻回径に応じて変化する。
具体的には、クラッチバネ572によって付与される負荷トルクは一定である。ただし、フィルムテープ59の巻回径が大きいほど、クラッチバネ572に起因するバックテンションは相対的に小さくなる一方、調整リブ940によって付与されるバックテンションは相対的に大きくなる。つまり、クラッチバネ572に起因するバックテンションが小さい場合には、調整リブ940によって大きなバックテンションが補完される。
また、フィルムテープ59の巻回径が小さいほど、クラッチバネ572に起因するバックテンションが相対的に大きくなる一方、調整リブ940によって付与されるバックテンションは、相対的に小さくなる。つまり、クラッチバネ572に起因するバックテンションが増加した場合には、調整リブ940によって補完されるバックテンションが、その増加分に応じて小さくなる。
つまり、フィルムテープ59に対して、クラッチバネ572によってバックテンションが付与されるのに加えて、調整リブ940によってフィルムテープ59の巻回径に応じた最適なバックテンションが補完的に付与される。これにより、フィルムテープ59の巻回径にかかわらず、フィルムテープ59のバックテンションが全体的に安定するため、第2テープスプール41から引き出されるフィルムテープ59の量がより安定する。ひいては、印字動作時におけるフィルムテープ59の走行がより安定して、フィルムテープ59の走行不良に起因する印字品質の劣化をより確実に抑制できる。
上記実施形態では、非押圧部801および非押圧部901が、カセットケース31に設けられた貫通孔である。非押圧部801は、対向するアーム検出スイッチ210のスイッチ端子222を押圧することなく挿脱可能であれば、貫通孔に限定されない。同様に、非押圧部901は、対向する後方検出スイッチ310のスイッチ端子317を押圧することなく挿脱可能であれば、貫通孔に限定されない。例えば、非押圧部801は、アーム前面壁35の一部が後方に凹んだ、スイッチ端子222を挿脱可能な凹部であってもよい。非押圧部901は、後方段差壁360Aの一部が上方に凹んだ、スイッチ端子317を挿脱可能な凹部であってもよい。
上記実施形態では、テープやインクリボン60が、スプール(具体的には、第1テープスプール40、第2テープスプール41、リボンスプール42)に巻回されている。テープやインクリボン60は、回転可能なロール状であれば、スプールに巻回されていなくてもよい。例えば、テープやインクリボン60は、スプールを用いることなく中心に孔を形成するように巻回された、所謂コアレスタイプのロール体であってもよい。