JP2011205857A - 誘導電動機の制御装置及び制御方法 - Google Patents

誘導電動機の制御装置及び制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】軽負荷状態でも最大トルク動作点からずれてしまわずに損失が増えてしまわない誘導電動機の制御装置又は制御方法を提供する。
【解決手段】誘導電動機の制御装置10は、ベクトル制御される誘導電動機106の制御装置10において、誘導電動機106の検出速度ω又は推定速度ω^と速度指令値ω とからトルク指令値T を生成するトルク指令値生成部11と、トルク指令値生成部11からのトルク指令値T を入力して定格トルクTmnと定格電流Iとに基づいて最大トルク動作点で駆動させるための磁束指令値φ を生成する磁束指令値生成部12を備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は、誘導電動機の制御装置及び制御方法に関し、特に、ベクトル制御によって制御される誘導電動機の制御装置及び制御方法に関するものである。
従来、誘導電動機の制御装置としては、誘導電動機に3相の駆動電流を供給するインバータ回路と、このインバータ回路に正弦波のPWM信号を供給するPWM回路とを備え、外部からの速度指令信号と磁束指令信号に基づいてPWM回路に制御信号を出力する誘導電動機の制御装置が種々提案されている。(例えば、特許文献1,特許文献2参照)
図7は、従来の誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。図7で示す誘導電動機の制御装置100(以下、制御装置100)は、3相交流電源101及び誘導電動機(IM)106に接続され、誘導電動機106を制御する制御装置であり、ダイオード整流回路102、平滑回路103、インバータ回路104、PWMゲート信号生成器105、パルスジェネレータ(PG)センサ107、電流センサ108、3相/2相座標変換器109、2相/dq座標変換器110、磁束推定器111、速度推定器112、フィードバック速度切替器113、すべり演算器114、積分器115、磁束PI制御器116、磁束電流PI制御器117、速度PI制御器118、トルク電流PI制御器119、dq/2相座標変換器120、2相/3相座標変換器121を備えている。
制御装置100は、磁束指令値φ と、速度指令値ω を目標に、インバータ回路104を用いて誘導電動機106を駆動するものである。なお、インバータ回路104の機能は、パワースイッチング素子によって実現されるが、以下で述べる各機能は、CPU(Central Proccesing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成されたコンピュータと、ROM,RAM等に格納されたプログラムとによって実現される。
制御装置100は、まず、磁束指令値φ と磁束推定器111によって推定された磁束推定値φ^との偏差Δφを偏差演算部122によって演算し、得られた偏差Δφは磁束PI制御器116に入力される。磁束PI制御器116は、入力された偏差Δφに基づいて磁束電流指令値I を生成する。次に、磁束電流指令値I と2相/dq座標変換器110から出力されるd軸の磁束電流iとの偏差ΔIを偏差演算部123によって演算し、得られた偏差ΔIは磁束電流PI制御器117に入力される。磁束電流PI制御器117は、入力された偏差ΔIに基づいてd軸電圧指令V を生成する。
一方、制御装置100は、速度指令値ω と速度推定器112によって推定された速度推定値ω^または、パルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ωとの偏差Δωを偏差演算部124によって演算し、得られた偏差Δωは速度PI制御器118に入力される。速度PI制御器118は、入力された偏差Δωに基づいてトルク電流指令値I を生成する。次に、トルク電流指令値I と2相/dq座標変換器110から出力されるq軸のトルク電流iとの偏差ΔIを偏差演算部125によって演算し、得られた偏差ΔIはトルク電流PI制御器119に入力される。トルク電流PI制御器119は、入力された偏差ΔIに基づいてq軸電圧指令V を生成する。
磁束電流PI制御器117から出力されるd軸電圧指令V と、トルク電流PI制御器119から出力されるq軸電圧指令V は、dq/2相座標変換器120に入力される。dq/2相座標変換器120は、d軸電圧指令V とq軸電圧指令V と積分器115から出力される位相角θに基づいてα軸、β軸の2相電圧指令Vα 、Vβ を出力する。2相電圧指令Vα 、Vβ は、2相/3相座標変換器121に入力される。2相/3相座標変換器121は、入力された2相電圧指令Vα 、Vβ に基づいてU相、V相、W相の3相電圧指令V 、V 、V を生成する。生成された3相電圧指令V 、V 、V は、PWM(Pulse Width Moduration)ゲート信号生成器105に入力される。PWMゲート信号生成器105は、PWM制御によりインバータ104の出力電圧を3相電圧指令V 、V 、V に従い制御する。
図7の構成図において、制御装置100には、3相の誘導電動機106が接続されており、電流センサ108が誘導電動機106のW相の電流iとU相の電流iを検出している。なお、この電流センサ108は、3相(U相,V相,W相)の内、2相(W相、U相)の電流i,iを検出しているが、3相電流の和はゼロであるから他の1相(V相)の電流iは一意に定められる。また、誘導電動機106の速度ωは、パルスジェネレータセンサ107で検出している。
電流センサ108によって検出された電流i,iは、3相/2相座標変換器109に入力される。3相/2相座標変換器109は、電流i,iに基づいて3相/2相座標変換を行ってα軸、β軸の2相電流iα,iβを生成し、2相/dq座標変換器110に出力する。2相/dq座標変換器110は、2相電流iα,iβと、積分器115から出力される位相角θに基づいてd軸の磁束電流iとq軸のトルク電流iを出力する。
一方、磁束推定器111は、dq/2相座標変換器120から出力される2相電圧指令Vα 、Vβ と、3相/2相座標変換器109から出力される2相電流iα,iβに基づいてα軸、β軸の磁束推定値φα^、φβ^を生成し、それらを速度推定器112に出力する。速度推定器112は、磁束推定値φα^、φβ^に基づいて速度推定値ω^を生成する。フィードバック速度切替器113は、フィードバックに用いる速度信号として速度推定値ω^を用いるか、パルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ωを用いるかを選択して切り替えることができるスイッチである。
すべり演算器114は、磁束PI制御器116から出力される磁束電流指令値I と、速度PI制御器118から出力されるトルク電流指令値I とに基づいて、誘導電動機106のすべり速度推定値ωを演算し、演算器126は、速度推定値ω^または、速度ωと、すべり速度推定値ωとを入力し、ω=ω^+ωまたはω=ω+ωを演算し、電源角周波数(インバータ出力角周波数)ωを出力する。このωは、積分器115によって位相角θに変換され、2相/dq座標変換器110と、dq/2相座標変換器120に入力される。
上記のように、従来、誘導電動機(モータ)106を低損失で制御する場合、磁束とトルクを個別に制御するベクトル制御が使用される。トルクは誘導電動機106の速度をパルスジェネレータセンサ107で検出するか、又はモータパラメータ及び2相電圧指令Vα 、Vβ と誘導電動機106の電流i,iから得られた2相電流iα,iβを用いて推定された磁束推定値φα^、φβ^とともに速度推定値ω^を演算することにより、誘導電動機106の速度信号(ω^またはω)をフィードバックして速度指令値ω との偏差ΔωをPI(比例積分)制御することにより、トルク電流指令値I を生成する。一方磁束は、誘導電動機106の励磁電流から演算された基本磁束指令値φ と磁束推定値φ^との偏差ΔφからPI制御することで磁束電流指令値I を生成する。それぞれの電流指令値I 、I と誘導電動機106の電流i,iを座標変換して得られた回転座標(q軸、d軸)上の電流i,iとの偏差ΔI、ΔIからPI制御を行い、電圧指令値V 、V を生成し、最終的に3相交流の電圧指令値V 、V 、V に変換して、PWMゲート信号を生成してインバータ回路104のスイッチングを制御して誘導電動機106を駆動する。
特開2000−308400号公報 特開2001−037300号公報
しかしながら、従来の誘導電動機の制御装置では、誘導電動機が定格負荷に近い状態で運転しているときは低損失運転となるが、軽負荷状態では励磁電流が変わらないため最大トルク動作点からずれてしまい損失が増えてしまうという問題点があった。
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、軽負荷状態でも最大トルク動作点を維持することができ、損失の増大を防止することができる誘導電動機の制御装置又は制御方法を提供することにある。
本発明に係る誘導電動機の制御装置又は制御方法は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
第1の誘導電動機の制御装置(請求項1に対応)は、ベクトル制御される誘導電動機の制御装置において、誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成部と、トルク指令値生成部からのトルク指令値を入力して定格トルクと定格電流とに基づいて最大トルク動作点で駆動させるための磁束指令値を生成する磁束指令値生成部を備えたことを特徴とする。
第2の誘導電動機の制御装置(請求項2に対応)は、ベクトル制御される誘導電動機の制御装置において、誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成部と、トルク指令値生成部からのトルク指令値を入力して第1の磁束指令値を生成する磁束指令値生成部と、基本磁束指令値と検出速度又は推定速度とから弱め界磁制御時の第2の磁束指令値を生成する弱め界磁磁束指令値生成部と、第1の磁束指令値と第2の磁束指令値と基本磁束指令値とのいずれか一つを選択する磁束指令値選択部と、磁束指令値選択部によって選択された第1の磁束指令値と第2の磁束指令値と基本磁束指令値とのいずれか一つとトルク指令値とに基づいてトルク電流指令値を生成するトルク電流指令値生成部と、を備えることを特徴とする。
第3の誘導電動機の制御装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、第1の磁束指令値の上限及び下限を制限するリミッタを備えることを特徴とする。
第4の誘導電動機の制御装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、基本磁束指令値は、誘導電動機の励磁電流に基づいて得られることを特徴とする。
第5の誘導電動機の制御装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、磁束指令値生成部は、最大トルク動作点の電流指令値を生成する電流指令値演算部と、電流指令値演算部によって生成された電流指令値と相互インダクタンスとに基づいて第1の磁束指令値を生成する磁束指令換算部を備えることを特徴とする。
第1の誘導電動機の制御方法(請求項6に対応)は、ベクトル制御される誘導電動機の制御方法において、誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成ステップと、トルク指令値生成ステップで得られたトルク指令値を入力して定格トルクと定格電流とに基づいて最大トルク動作点で駆動させるための磁束指令値を生成する磁束指令値生成ステップを備えたことを特徴とする。
第2の誘導電動機の制御方法(請求項7に対応)は、ベクトル制御される誘導電動機の制御方法において、誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成ステップと、トルク指令値生成ステップで得られたトルク指令値を入力して第1の磁束指令値を生成する磁束指令値生成ステップと、基本磁束指令値と検出速度又は推定速度とから弱め界磁制御時の第2の磁束指令値を生成する弱め界磁磁束指令値生成ステップと、第1の磁束指令値と第2の磁束指令値と基本磁束指令値とのいずれか一つを選択する磁束指令値選択ステップと、磁束指令値選択ステップによって選択された第1の磁束指令値と第2の磁束指令値と基本磁束指令値とのいずれか一つとトルク指令値とに基づいてトルク電流指令値を生成するトルク電流指令値生成ステップと、を備えることを特徴とする。
第3の誘導電動機の制御方法(請求項8に対応)は、上記の方法において、好ましくは、第1の磁束指令値の上限及び下限を制限する制限ステップを備えることを特徴とする。
第4の誘導電動機の制御方法(請求項9に対応)は、上記の方法において、好ましくは、基本磁束指令値は、誘導電動機の励磁電流に基づいて得られることを特徴とする。
第5の誘導電動機の制御方法(請求項10に対応)は、上記の方法において、好ましくは、磁束指令値生成ステップは、最大トルク動作点の電流指令値を生成する電流指令値演算ステップと、電流指令値演算ステップによって生成された電流指令値と相互インダクタンスとに基づいて第1の磁束指令値を生成する磁束指令換算ステップを備えることを特徴とする。
本発明によれば、トルク指令値生成部からのトルク指令値を入力して定格トルクと定格電流とに基づいて最大トルク動作点で駆動させるための磁束指令値を生成する磁束指令値生成部を備えるため、モータが要求するトルク指令から最大トルク動作となる磁束指令をリアルタイムで演算して複雑なゲイン調整を行わずに軽負荷時の効率を改善することができる。また、磁束指令値選択部によって、第1の磁束指令値と第2の磁束指令値と基本磁束指令値とのいずれか一つを選択するようにしたため、磁束指令を可変しても制御が不安定にならないようにすることができる。それにより、軽負荷状態でも最大トルク動作点を維持することができ、損失の増大を防止することができる誘導電動機の制御装置又は制御方法を提供することができる。
本発明の本実施形態に係る誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の本実施形態に係る誘導電動機の制御装置での低損失制御部のブロック図である。 誘導電動機の最大トルク動作点を示す図である。 磁束指令値のリミット範囲を示す図である。 弱め界磁制御中の磁束指令値を示す図である。 速度領域による磁束指令値可変範囲を示す図である。 従来の誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の本実施形態に係る誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。基本のブロック構成は、図7で示した従来の制御装置100と同一の構成要素を有しているが、本発明の特徴である低損失制御を行うためのブロックが図7の構成に追加され変更されている。それゆえ、図7で示した従来の制御装置100と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図1で示す誘導電動機の制御装置10(以下、制御装置10)は、3相交流電源101及び誘導電動機(IM)106に接続され、誘導電動機106を制御する制御装置であり、ダイオード整流回路102、平滑回路103、インバータ回路104、PWMゲート信号生成器105、パルスジェネレータ(PG)センサ107、電流センサ108、3相/2相座標変換器109、2相/dq座標変換器110、磁束推定器111、速度推定器112、フィードバック速度切替器113、すべり演算器114、積分器115、磁束PI制御器116、磁束電流PI制御器117、トルク電流PI制御器119、dq/2相座標変換器120、2相/3相座標変換器121を備えている。
また、本発明を特徴づける構成として、トルク指令値生成部11と、磁束指令値生成部12とトルク電流指令値生成部13を備えた低損失制御器14と、リミッタ15と、磁束指令選択器16と、弱め界磁磁束指令値演算器17と、磁束指令選択器制御部18を備えている。磁束指令選択器16と磁束指令選択器制御部18とで磁束指令値選択部を構成している。
従来の誘導電動機のベクトル制御は、図7に示すように速度制御のPI制御器118と磁束制御のPI制御器116は独立しており、磁束PI制御器116,速度PI制御器118の出力は磁束成分(d軸)、トルク成分(q軸)の電流指令値i ,i となる。本発明では、第1の磁束指令値φd1 をトルク指令値生成部11と低損失制御器14の磁束指令値生成部12から演算するようにした。
制御装置10は、速度指令値ω を目標に、インバータ回路104を用いて誘導電動機106を駆動するものである。なお、インバータ回路104の機能は、パワースイッチング素子によって実現されるが、以下で述べる各機能は、CPU(Central Proccesing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成されたコンピュータと、ROM,RAM等に格納されたプログラムとによって実現される。
制御装置10は、速度指令値ω と速度推定器112によって推定された速度推定値ω^または、パルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ω(検出速度)との偏差Δωを偏差演算部19によって演算し、得られた偏差Δωはトルク指令値生成部11に入力される。トルク指令値生成部11は、入力された偏差Δωに基づいてトルク指令値T を生成する(トルク指令値生成ステップ)。トルク指令値生成部11によって生成されたトルク指令値T は、低損失制御器14に入力される。
低損失制御器14は、後に詳述するように、入力されたトルク指令値T に基づいて磁束指令値生成部12によって最大トルク動作点となる磁束指令値φd10 を生成し、リミッタ15に出力する(磁束指令値生成ステップ)。また、低損失制御器14は、トルク電流指令値生成部13によって、トルク指令値T と磁束指令選択器16によって選択された磁束指令値φ とに基づいてトルク電流指令値I を出力する(トルク電流指令値生成ステップ)。
リミッタ15は、磁束指令値φd10 に上限及び下限リミットを設け、第1の磁束指令値φd1 を出力する(制限ステップ)。上限に関しては、定格負荷状態での最大効率点が従来のベクトル制御とほぼ同じであることから、(1)式に示す励磁電流Iにより求められた基本磁束指令値φd0 でリミットする。
φd0 =(3/2)×L×I・・・・・・・(1)
φd0 :基本磁束指令値、L:相互インダクタンス、I:励磁電流
また、下限については、誘導電動機の特性、特に、相互インダクタンスLの大きさにより決定すればよく、例えば、概ね基本磁束指令値φd0 の25%でリミットする。
弱め界磁磁束指令値演算器17は、誘導電動機106の定格回転数を超える運転領域では弱め界磁制御を行うため、(2)式により第2の磁束指令値φd2 を演算して出力する(弱め界磁磁束指令値生成ステップ)。
φd2 =(Nbase/Nref)×φd0 ・・・・・・・(2)
φd2 :第2の磁束指令値、Nbase:定格回転数、Nref:回転数指令値、φd0 :基本磁束指令値
磁束指令選択器16は、第1の磁束指令値φd1 と第2の磁束指令値φd2 と基本磁束指令値φd0 とのいずれか一つを選択する(磁束指令値選択ステップ)。その選択の制御は、磁束指令選択器制御部18によって行われる。
磁束指令選択器制御部18は、速度指令値ω と速度推定器112によって推定された速度推定値ω^または、パルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ωとに基づいて、誘導電動機106が加減速中か否か判断する。誘導電動機106の加減速中は、トルクが変動しやすく、制御が不安定になりやすいので、基本磁束指令値φd0 で制御を行うように磁束指令選択器16を端子16aに接続する。なお、定常状態と加減速状態は速度指令値ω と、速度ωまたは速度推定値ω^との差が一定範囲内にあるか否かで判別する。
また、磁束指令選択器制御部18は、誘導電動機106が定格回転数を超える運転領域であるか否かを判断する。誘導電動機106が定格回転数を超える運転領域である場合は、定出力制御となるので、(2)式により第2の磁束指令値φd2 を演算して制御する弱め界磁制御を行うようにするため、磁束指令選択器16を端子16bに接続する。
さらに、磁束指令選択器制御部18は、速度指令値ω と速度推定器112によって推定された速度推定値ω^または、パルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ωとに基づいて、最低回転数しきい値以下であるか否か判断する。低速領域でも磁束指令値φ が小さい場合、特に、速度センサレス制御を行う場合に、制御が不安定になりやすいことから、基本磁束指令値φd0 に切り替えることで低速領域から高速領域まで安定した制御を行うことができる。なお、低速側の最低回転数しきい値は、誘導電動機ごとに異なる値を設定するとよい。
そして、磁束指令選択器制御部18は、上記の場合以外は、磁束指令選択器16を端子16cに接続し、第1の磁束指令値φd1 を出力する。
制御装置10は、上記のように磁束指令選択器16によって選択された磁束指令値φ と磁束推定器111によって推定された磁束推定値φ^との偏差Δφを偏差演算部122によって演算し、得られた偏差Δφは磁束PI制御器116に入力される。磁束PI制御器116は、入力された偏差Δφに基づいて磁束電流指令値I を生成する。次に、磁束電流指令値I と2相/dq座標変換器110から出力されるd軸の磁束電流iとの偏差ΔIを偏差演算部123によって演算し、得られた偏差ΔIは磁束電流PI制御器117に入力される。磁束電流PI制御器117は、入力された偏差ΔIに基づいてd軸電圧指令V を生成する。
一方、制御装置10は、低損失制御器14から出力されるトルク電流指令値I と2相/dq座標変換器110から出力されるq軸のトルク電流iとの偏差ΔIを偏差演算部125によって演算し、得られた偏差ΔIはトルク電流PI制御器119に入力される。トルク電流PI制御器119は、入力された偏差ΔIに基づいてq軸電圧指令V を生成する。
磁束電流PI制御器117から出力されるd軸電圧指令V と、トルク電流PI制御器119から出力されるq軸電圧指令V は、dq/2相座標変換器120に入力される。dq/2相座標変換器120は、d軸電圧指令V とq軸電圧指令V と積分器115から出力される位相角θに基づいてd軸電圧指令V とq軸電圧指令V を座標変換し、α軸、β軸の2相電圧指令Vα 、Vβ を出力する。2相電圧指令Vα 、Vβ は、2相/3相座標変換器121に入力される。2相/3相座標変換器121は、入力された2相電圧指令Vα 、Vβ に基づいて2相/3相座標変換を行い、U相、V相、W相の3相電圧指令V 、V 、V を生成する。生成された3相電圧指令V 、V 、V は、PWM(Pulse Width Moduration)ゲート信号生成器105に入力される。PWMゲート信号生成器105は、PWM制御によりインバータ104の出力電圧を3相電圧指令V 、V 、V に従い制御する。
図2は、低損失制御器14のブロック構成図である。低損失制御器14は、磁束指令値生成部12とトルク電流指令値生成部13を備えている。磁束指令値生成部12は、フィルタ20とリミッタ21と電流指令演算部22と(3/2)L演算部23を備えている。トルク電流指令値生成部13は、(1/K(φ ))・T 演算部24を備えている。磁束指令値生成部12は、トルク指令値生成部11の出力であるトルク指令値T をフィルタ20でフィルタ処理を行った後、リミッタ21によってトルク指令値が小さい場合は、所定の値、例えば10%でリミットをかけ、電流指令演算部22で最大トルク動作点の電流指令値を求め(電流指令値演算ステップ)、さらに、(3/2)L演算部(磁束指令換算ゲインブロック)23で相互インダクタンスを乗じて磁束指令値φd10 を出力する(磁束指令換算ステップ)。一方、トルク電流指令値生成部13は、トルク指令値T と磁束指令選択器16によって選択された磁束指令値φ に基づいて、(1/K(φ ))・T 演算部(逆トルク係数ブロック)24で逆トルク係数1/Kを乗じて換算を行い、トルク電流指令値I を出力する(トルク電流指令値生成ステップ)。
次に、低損失制御器14を図2の構成とすることで低損失運転となる理由を以下に図3を参照して説明する。
ベクトル制御時のトルク、磁束、一次電流の関係は、それぞれ(3)式と(4)式で示される。
=(pL/L)iφ=Kφ・・・(3)
φ=(L/(1+τs))i・・・・・・・・(4)
(3)式と(4)の変数は以下の値を示す。
:トルク、φ:磁束、i:磁束電流、i:トルク電流、L:相互インダクタンス、L:二次インダクタンス、τ:二次時定数、p:モータ極対数、K:トルク係数、s:ラプラス演算子(微分演算子)
ここで、磁束電流i及びトルク電流iの関係は、電流ベクトルの実効値Iにより(5)式で制約されるとすると、(3)式と(4)式を(5)式に代入してトルクは(6)式に変形される。(ただし定常状態中でラプラス演算子s=0とする)
I=(i +i 1/2・・・・・(5)
=K
=K(I−i 1/2・・・・・(6)
従って、(6)式で示すようにトルクTは、磁束電流iの関数となる。(5)式は、図3に示すq軸、d軸を座標とするグラフにおいて、半径Iの電流制限円Cで示される。また、(6)式は、トルク一定曲線Tで示される。電流制限円Cと接するトルク一定曲線Tが最大トルク曲線Tmaxとなり、電流制限円Cと最大トルク曲線Tmaxとの接点Aが最大トルク動作点となる。
そこで、(6)式を磁束電流iで微分して0となる磁束電流iを求めることで磁束電流iに対するトルクの最大点が計算できる。この結果、磁束電流iが(8)式の条件を満たすときにトルクは最大の値をとる。
dT/di=K((I−i 1/2−i /(I−i 1/2)=0
・・・・(7)
=I/21/2・・・・・・(8)
(8)式が意味することは、電流ベクトルの実効値であるIの1/21/2、すなわち、図3に示すq軸に対しなす角45度の直線L上に電流ベクトルがくれば最大トルク動作点で駆動できることになる。
そこで、最大トルク動作点で駆動するためトルク指令値生成部11の出力であるトルク指令値T に対し、定格トルクTmn及び定格電流Iから、トルク指令値T に相当する電流ベクトルの大きさIを(9)式により演算する。(図2の電流指令演算部22の演算)
I=(T /Tmn)(I/21/2)・・・・・(9)
さらに、磁束指令値φ を演算するため、(10)式で変換した結果を磁束指令値φd10 とする。(図2の磁束指令換算ゲインブロック23の演算)
φd10 =(3/2)L・I・・・・・(10)
また、トルク電流指令値i は、(11)式に示すようにトルク指令値T にトルク係数Kの逆数を乗ずることで求める。(図2の逆トルク係数ブロック24の演算)
=(1/K)・T ・・・・・・(11)
ここで、K=Kφ
次に、制御装置10において行った制御安定性の向上の対策を説明する。本来ベクトル制御では磁束指令を一定に保った状態で制御を行うのが基本であり、磁束指令を変化させた場合、そのまま適用したのでは制御が不安定になってしまう。そこで、本実施形態では、制御が不安定にならないように以下に説明する対策を合わせて実施する。
まず、対策1としてトルク指令値T のフィルタ処理について説明する。本来磁束が一定値となることで制御が安定するため、トルク指令値T が頻繁に変化してしまうと磁束指令値φ も変動して不安定になってしまう。また、磁束指令値φ は、早い応答で変化させる必要もないため、磁束指令値φ を演算するためのトルク指令値T に図2のフィルタ20で示したフィルタ処理を行う。さらに、無負荷時でトルク指令が10%程度の値でふらついて制御が不安定になる場合もあるのでトルク指令が小さい場合には例えば10%でリミットをかけることでさらに制御が安定化する。この対策1は、低損失制御器14のリミッタ21によって実現される。
次に、対策2として磁束指令値φ の上限及び下限リミットを次のように設定する。磁束指令値を可変する場合、図4に示すように磁束指令値に上限及び下限リミットを設ける。上限に関しては、定格負荷状態での最大効率点が従来のベクトル制御とほぼ同じであることから、(1)式に示す励磁電流により求められた基本磁束指令値φd0 でリミットする。また、下限については、誘導電動機の特性、特に、相互インダクタンスLの大きさにより決定すればよく、例えば、概ね基本磁束指令値φd0 の25%でリミットする。この対策2は、制御装置10のリミッタ15によって実現される。
さらに、対策3として誘導電動機の加減速中の磁束指令値φd*を次のように設定する。モータの加減速中は、トルクが変動しやすく、制御が不安定になりやすいので、加減速中の磁束指令値φ は可変せず、(1)式に示す基本磁束指令値φd0 で制御を行う。なお、定常状態と加減速状態は指令周波数に対し、インバータ出力周波数が一定範囲内であるかどうかで判別している。この対策3は、制御装置10の磁束指令選択器16による磁束指令値の切り替え(端子16aへの切替)によって実現される。
また、対策4として弱め界磁制御による磁束指令値φ を次のように設定する。誘導電動機の定格回転数を超える運転領域では定出力制御となるため、(2)式により磁束指令値φ を演算して制御する弱め界磁制御を行う。このとき、磁束指令値φ は、図5のような特性となるが、低損失制御で磁束指令値φ をさらに可変してしまうと、弱め界磁制御領域での制御が不安定になることから、弱め界磁制御時は、基本磁束指令値φd0 、定格回転数Nbase及び回転数指令値Nrefを用いて(2)式で演算された磁束指令値に切り替える。これは、図2の磁束指令選択器16を端子16bに切り替えることによって弱め界磁磁束指令値演算器17からの出力に切り替えることによって行う。
一方、低速領域でも磁束指令値φ が小さい場合、特に、速度センサレス制御を行う場合に、制御が不安定になりやすいことから、図6に示すように基本磁束指令値φd0 に切り替えることで低速領域から高速領域まで安定した制御を行うことができる。なお、低速側の最低回転数しきい値は、誘導電動機ごとに異なる値を設定する。この対策4は、制御装置10の磁束指令選択器16による磁束指令値の切り替え(端子16aへの切替)によって実現される。
以上説明したように、誘導電動機の要求するトルク指令値T から磁束指令値φ を求めることでどのような負荷状態でも最大トルク動作点で制御することが可能である。また、トルク指令値T が決まれば、磁束指令値φ が一意に決まるため、煩わしいゲイン調整が不要となる。一方、磁束指令値φd*が変動することで生じる制御の不安定については、トルク指令値T のフィルタ処理、磁束指令値φ のリミッタ処理、磁束指令値φ の切り替えシーケンスなどの機能により対策を行い、安定した制御を実現している。
なお、本実施形態では、フィードバック速度切替器113を設け、フィードバックに用いる速度信号として速度推定値ω^を用いるか、パルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ωを用いるかを選択して切り替えることができるようにしているが、フィードバック速度切替器113を設けず、フィードバックに用いる速度信号として速度推定値ω^を用いるようにしている制御装置、または、フィードバックに用いる速度信号としてパルスジェネレータセンサ107によって検出された速度ωを用いるようにしている制御装置のいずれにおいても本発明を適用することができる。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
本発明に係る誘導電動機の制御装置及び制御方法は、誘導電動機の駆動を制御する装置及び方法として利用される。
10 誘導電動機の制御装置
11 トルク指令値生成部
12 磁束指令値生成部
13 トルク電流指令値生成部
14 低損失制御器
15 リミッタ
16 磁束指令選択器
17 弱め界磁磁束指令値演算器
18 磁束指令選択器制御部
101 3相交流電源
102 ダイオード整流回路
103 平滑回路
104 インバータ回路
105 PWMゲート信号生成器
106 誘導電動機
107 パルスジェネレータ(PG)センサ
108 電流センサ
109 3相/2相座標変換器
100 誘導電動機の制御装置
110 2相/dq座標変換器
111 磁束推定器
112 速度推定器
113 フィードバック速度切替器
114 すべり演算器
115 積分器
116 磁束PI制御器
117 磁束電流PI制御器
118 速度PI制御器
119 トルク電流PI制御器
120 dq/2相座標変換器
121 2相/3相座標変換器

Claims (10)

  1. ベクトル制御される誘導電動機の制御装置において、
    前記誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成部と、
    前記トルク指令値生成部からの前記トルク指令値を入力して定格トルクと定格電流とに基づいて最大トルク動作点で駆動させるための磁束指令値を生成する磁束指令値生成部を備えたことを特徴とする誘導電動機の制御装置。
  2. ベクトル制御される誘導電動機の制御装置において、
    前記誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成部と、
    前記トルク指令値生成部からの前記トルク指令値を入力して第1の磁束指令値を生成する磁束指令値生成部と、
    基本磁束指令値と前記検出速度又は前記推定速度とから弱め界磁制御時の第2の磁束指令値を生成する弱め界磁磁束指令値生成部と、
    前記第1の磁束指令値と前記第2の磁束指令値と前記基本磁束指令値とのいずれか一つを選択する磁束指令値選択部と、
    前記磁束指令値選択部によって選択された前記第1の磁束指令値と前記第2の磁束指令値と前記基本磁束指令値とのいずれか一つと前記トルク指令値とに基づいてトルク電流指令値を生成するトルク電流指令値生成部と、
    を備えることを特徴とする誘導電動機の制御装置。
  3. 前記第1の磁束指令値の上限及び下限を制限するリミッタを備えることを特徴とする請求項2記載の誘導電動機の制御装置。
  4. 前記基本磁束指令値は、前記誘導電動機の励磁電流に基づいて得られることを特徴とする請求項2又は3記載の誘導電動機の制御装置。
  5. 前記磁束指令値生成部は、最大トルク動作点の電流指令値を生成する電流指令値演算部と、前記電流指令値演算部によって生成された前記電流指令値と相互インダクタンスとに基づいて前記第1の磁束指令値を生成する磁束指令換算部を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の誘導電動機の制御装置。
  6. ベクトル制御される誘導電動機の制御方法において、
    前記誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成ステップと、
    前記トルク指令値生成ステップで得られた前記トルク指令値を入力して定格トルクと定格電流とに基づいて最大トルク動作点で駆動させるための磁束指令値を生成する磁束指令値生成ステップを備えたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。
  7. ベクトル制御される誘導電動機の制御方法において、
    前記誘導電動機の検出速度又は推定速度と速度指令値とからトルク指令値を生成するトルク指令値生成ステップと、
    前記トルク指令値生成ステップで得られた前記トルク指令値を入力して第1の磁束指令値を生成する磁束指令値生成ステップと、
    基本磁束指令値と前記検出速度又は前記推定速度とから弱め界磁制御時の第2の磁束指令値を生成する弱め界磁磁束指令値生成ステップと、
    前記第1の磁束指令値と前記第2の磁束指令値と前記基本磁束指令値とのいずれか一つを選択する磁束指令値選択ステップと、
    前記磁束指令値選択ステップによって選択された前記第1の磁束指令値と前記第2の磁束指令値と前記基本磁束指令値とのいずれか一つと前記トルク指令値とに基づいてトルク電流指令値を生成するトルク電流指令値生成ステップと、
    を備えることを特徴とする誘導電動機の制御方法。
  8. 前記第1の磁束指令値の上限及び下限を制限する制限ステップを備えることを特徴とする請求項7記載の誘導電動機の制御方法。
  9. 前記基本磁束指令値は、前記誘導電動機の励磁電流に基づいて得られることを特徴とする請求項7又は8記載の誘導電動機の制御方法。
  10. 前記磁束指令値生成ステップは、最大トルク動作点の電流指令値を生成する電流指令値演算ステップと、前記電流指令値演算ステップによって生成された前記電流指令値と相互インダクタンスとに基づいて前記第1の磁束指令値を生成する磁束指令換算ステップを備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の誘導電動機の制御方法。
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