以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。熱処理装置1は基板として略円形の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射された光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(O2)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。図2に示すように、ガス導入バッファ83は、図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持しつつ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が図1に示す半導体ウェハーWの受渡位置と図5に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
図3は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
図4は、ホットプレート71を示す平面図である。図4に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
次に、ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
図6は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートにはIGBT制御部21が接続されている。IGBT制御部21は、IGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96を駆動する回路である。具体的には、IGBT制御部21がIGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Hiの電圧)を印加するとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)を印加するとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む回路はIGBT96によってオンオフされる。
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
また、第1実施形態においては、フラッシュランプFLを含む回路に電流モニター25が設けられている。電流モニター25としては、フラッシュランプFLを含む回路に電流が流れたときに発生する磁界を測ることによってフラッシュランプFLに流れる電流値を測定するクランプメータ(架線電流計)を用いることができる。電流モニター25によって測定された電流値はIGBT制御部21に伝達される。
図1のリフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。また、制御部3は、目標値設定部32を備えるとともに、入力部33に接続されている。入力部33としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部33からの入力内容に基づいて目標値設定部32が制御変数(第1実施形態ではフラッシュランプFLに流れる電流値)の目標値の波形(時間プロファイル)を設定し、その波形がIGBT制御部21に入力される。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(図1,5参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、保持部7が図5に示す処理位置から図1に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWに光照射が行われるときの保持部7の位置であり、図5に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、図1に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。熱処理装置1における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。図1に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
次に、保持部7が受渡位置に下降したときに、弁82および弁87が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に常温の窒素ガスが導入される。続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、複数の支持ピン70上に載置される。
半導体ウェハーWの搬入時におけるチャンバー6への窒素ガスのパージ量は約40リットル/分とされ、供給された窒素ガスはチャンバー6内においてガス導入バッファ83から図2中に示す矢印AR4の方向へと流れ、図1に示す排出路86および弁87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。なお、以下で説明する各ステップにおいて、チャンバー6には常に窒素ガスが供給および排気され続けており、窒素ガスの供給量は半導体ウェハーWの処理工程に合わせて様々に変更される。
半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されると、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖される。そして、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に保持された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する。
図7は、予備加熱が開始されてからの半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。処理位置にて時間tpの予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし700℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では500℃)。また、半導体ウェハーWの予備加熱を行う時間tpは、約3秒〜200秒とされる(本実施の形態では60秒)。なお、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
時間tpの予備加熱時間が経過した後、時刻AにてフラッシュランプFLによる半導体ウェハーWの光照射加熱が開始される。フラッシュランプFLからの光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、IGBT制御部21がIGBT96のオンオフを制御してフラッシュランプFLを発光させる。
図8は、IGBT96のオンオフ制御の手順を示すフローチャートである。フラッシュランプFLによる光照射加熱に先立って予め制御変数の目標値の設定を行っておく(ステップS11)。第1実施形態においてはフラッシュランプFLの発光に関連する制御変数はフラッシュランプFLに流れる電流値であり、入力部33から電流値の目標値を入力する。具体的には、例えば、IGBT制御部21による制御開始からの時刻tnとその時刻tnにおける電流値Anの目標値との組み合わせ(t1,A1)、(t2,A2)、(t3,A3)・・・(tn,An)・・・を順次入力部33から入力するようにすれば良い。
このような電流値の目標値をオペレータが入力部33から制御部3に入力すると、それに基づいて制御部3の目標値設定部32が図9に示すような電流値の目標値の時間プロファイルを設定する。目標値設定部32が設定した図9に示す如き電流値の目標値の時間プロファイルは、IGBT制御部21に送信され、図示を省略するIGBT制御部21の記憶部内に格納される。
このようにして電流値の目標値が予め設定され、ステップS12以降のIGBT96のオンオフ制御が開始される。IGBT96のオンオフ制御が開始されると、まず、IGBT制御部21がIGBT96のゲートに所定値以上の電圧を印加してIGBT96をオン状態とする(ステップS12)。また、IGBT制御部21がIGBT96を最初にオン状態とするタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91にトリガー電圧を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96がオン状態となり、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、コンデンサ93に蓄積された電荷がフラッシュランプFLのガラス管92内の両端電極間で電流として流れ始め、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。すなわち、フラッシュランプFLが発光を開始し、フラッシュランプFLを流れる電流値は時間とともに増大する。
初期状態としてIGBT制御部21がIGBT96をオン状態とした後、ステップS13〜ステップS18の処理が繰り返されてIGBT96がオンオフ制御される。図10は、図9の目標値に従ってIGBT96がオンオフ制御されたときの制御変数の測定値を示す図である。図10において、目標値設定部32が設定した電流値の目標値の時間プロファイル(図9)は点線にて示し、電流値の測定値は実線にて示している。また、図10中、一点鎖線にて示しているのは、上限許容値および下限許容値である。なお、上限許容値および下限許容値についても、予め入力部33から入力しておく(例えば、上限許容範囲は目標値の+10%、下限許容範囲は目標値の+10%等)。
まず、制御変数の測定を実行する(ステップS13)。第1実施形態では、電流モニター25がフラッシュランプFLを含む回路に流れる電流値を測定する。そして、電流モニター25によって測定された電流値はIGBT制御部21に伝達される。
続いて、ステップS14に進み、得られた測定値がその時点(測定時)での目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいか否かがIGBT制御部21によって判定される。そして、測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいときには、ステップS15に進んでIGBT制御部21がIGBT96をオフ状態とする。IGBT96がオフ状態となると、フラッシュランプFLを含む回路が開き、フラッシュランプFLを流れる電流値は時間とともに減少する。一方、測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きくない場合には、ステップS16に進む。
ステップS16では、得られた測定値がその時点(測定時)での目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいか否かがIGBT制御部21によって判定される。そして、測定値が目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいときには、ステップS17に進んでIGBT制御部21がIGBT96をオン状態とする。IGBT96がオン状態となると、フラッシュランプFLを含む回路が閉じ、フラッシュランプFLを流れる電流値は時間とともに増加する。一方、測定値が目標値よりも下限許容範囲を超えて小さくない場合には、ステップS18に進む。
ステップS18では、IGBT96のオンオフ制御が終了したか否かが判断され、終了していない場合にはステップS13に戻る。具体的には、目標値設定部32が設定した電流値の目標値の時間プロファイルから求められる予め規定されたIGBT96のオンオフ制御時間が経過したか否かをIGBT制御部21が判断するようにすれば良い。予め規定されたIGBT96のオンオフ制御時間が経過するまでステップS13〜ステップS18の処理が繰り返されることとなる。
電流モニター25はフラッシュランプFLを含む回路に流れる電流値をマイクロ秒オーダー(10マイクロ秒以下)で測定することができる。このため、ステップS13〜ステップS18の一巡の処理を実行するのに要する時間は50マイクロ秒〜100マイクロ秒とすることができる。単純に(IGBT96を常にオン状態にしたのと同じ)フラッシュランプFLを発光させた場合であっても、その発光時間は数ミリ秒〜数十ミリ秒と極めて短いのであるが、少なくとも100マイクロ秒(0.1ミリ秒)間隔でIGBT96をオンオフ制御できれば、フラッシュランプFLの発光を十分に制御することができる。
このようにして、ステップS13〜ステップS18の処理が繰り返し実行された結果、フラッシュランプFLを流れる電流値の実測値(つまり、実際にフラッシュランプFLを流れた電流値)は図10の実線にて示すように変化する。すなわち、IGBT96が断続的にオンオフ制御された結果、フラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷が分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。なお、図10に示すように、フラッシュランプFLを流れる電流値が完全に”0”になる前にIGBT96がオン状態となって電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光出力が完全に”0”になるものではない。また、一旦、フラッシュランプFLの通電が開始され、その電流値が所定値以上残っている状態でIGBT96がオン状態となることにより、その後はトリガー電極91に高電圧を印加しなくてもフラッシュランプFLに電流が流れ続ける。すなわち、ステップS12にて最初にオン状態となるときのみトリガー電極91に高電圧を印加すれば、その後はトリガー電圧を印加せずともフラッシュランプFLに電流が継続して流れる。
図8に示したIGBT96のオンオフ制御の手順は、いわばIGBT96をフィードバック制御するものであると言える。すなわち、電流モニター25によって得られたフラッシュランプFLを流れる電流値の測定値に基づいて、その電流値が予め設定された目標値となるようにIGBT制御部21がIGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96をオン状態またはオフ状態に切り替えている。より具体的には、IGBT制御部21は、電流値の測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいときにはIGBT96をオフ状態とし、目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいときにはIGBT96をオン状態とする。これにより、フラッシュランプFLを流れる電流値を予め設定した目標値に容易に制御することが可能となる。
図10の実線にて示すような電流が流れてフラッシュランプFLが発光し、それによって処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWにフラッシュ光が照射される。その結果、半導体ウェハーWの表面温度は短時間のうちに処理温度T2にまで昇温される(図7参照)。処理温度T2は、半導体ウェハーWに注入された不純物の活性化が生じる温度であって、1000℃以上とされる。
以上のようにしてフラッシュランプFLによる光照射加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び図1に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWは装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの光照射加熱処理が完了する。
既述のように、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスがチャンバー6に継続的に供給されており、その供給量は、保持部7が処理位置に位置するときには約30リットル/分とされ、保持部7が処理位置以外の位置に位置するときには約40リットル/分とされる。
第1実施形態においては、制御変数としてフラッシュランプFLに流れる電流値の目標値を予め設定し、電流モニター25によって測定された電流値の測定値に基づいて、その電流値が予め設定された目標値となるようにIGBT制御部21がIGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96をオン状態またはオフ状態に切り替えている。すなわち、電流モニター25によってフラッシュランプFLに流れる電流値を極めて短いサンプリングタイムで測定し、その測定値と目標値との比較を行って両者が一致するようにIGBT96を制御するフィードバック制御(閉回路制御)を行っている。
このため、フラッシュランプFLに流れる電流値を最適化するためにトライアンドエラー方式によってIGBT96のゲートに印加するパルス信号の設定を繰り返して行う必要はなくなり、目標値を設定するだけで電流値を簡易に最適化することができる。その結果、フラッシュランプの発光に関連する制御変数(第1実施形態では電流値)の最適化に要する時間を大幅に短縮することができる。また、フラッシュランプFLに流れる電流値が安定するため、フラッシュランプFLによる光照射加熱処理の再現性を向上させることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図11は、第2実施形態の熱処理装置の構成を示す縦断面図である。また、図12は、第2実施形態のフラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。第2実施形態においては、チャンバー6内の熱処理空間65に光センサー26を設置している。光センサー26は、フラッシュランプFLが発光したときにその発光強度を測定する光検出器であり、応答速度の速いフォトダイオードを用いるのが好ましい。光センサー26にフラッシュランプFLからのフラッシュ光が照射されることによって生じた電流(光電流)は光量モニター27によって検出される。光量モニター27は、光センサー26に生じた電流値をフラッシュランプFLの発光強度に変換し、その値をIGBT制御部21に伝達する。残余の構成については、第2実施形態の熱処理装置は第1実施形態と同様である。
第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と概ね同じである(図8参照)。但し、第2実施形態においては、フラッシュランプFLの発光に関連する制御変数をフラッシュランプFLの発光強度としている。このため、ステップS11では、オペレータがフラッシュランプFLの発光強度の目標値を入力する。そして、その入力に基づいて制御部3の目標値設定部32が発光強度の目標値の時間プロファイルを設定し、IGBT制御部21に送信する。
フラッシュランプFLの発光強度の目標値が予め設定され、ステップS12以降のIGBT96のオンオフ制御が実行される。第2実施形態では、光センサー26および光量モニター27によってフラッシュランプFLの発光強度を測定する(ステップS13)。測定された発光強度は光量モニター27からIGBT制御部21に伝達される。そして、得られた測定値がその時点(測定時)での目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいか否かがIGBT制御部21によって判定され、測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいときには、IGBT制御部21がIGBT96をオフ状態とする(ステップS14,S15)。
次に、得られた測定値がその時点での目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいか否かがIGBT制御部21によって判定され、測定値が目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいときには、IGBT制御部21がIGBT96をオン状態とする(ステップS16,S17)。なお、光センサー26および光量モニター27はフラッシュランプFLの発光強度をマイクロ秒オーダーで測定することができる。このため、第1実施形態と同様に、IGBT制御部21は少なくとも100マイクロ秒間隔でIGBT96をオンオフ制御することができる。
このようにして第2実施形態においても、IGBT96をフィードバック制御している。すなわち、光センサー26および光量モニター27によって得られたフラッシュランプFLの発光強度の測定値に基づいて、その発光強度が予め設定された目標値となるようにIGBT制御部21がIGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96をオン状態またはオフ状態に切り替えている。より具体的には、IGBT制御部21は、発光強度の測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいときにはIGBT96をオフ状態とし、目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいときにはIGBT96をオン状態とする。これにより、フラッシュランプFLの発光強度を予め設定した目標値に容易に制御することが可能となる。
以上のように、第2実施形態においては、制御変数としてフラッシュランプFLの発光強度の目標値を予め設定し、光センサー26および光量モニター27によって測定された発光強度の測定値に基づいて、その発光強度が予め設定された目標値となるようにIGBT制御部21がIGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96をオン状態またはオフ状態に切り替えている。すなわち、光センサー26および光量モニター27によってフラッシュランプFLに流れる電流値を極めて短いサンプリングタイムで測定し、その測定値と目標値との比較を行って両者が一致するようにIGBT96を制御するフィードバック制御を行っている。
このため、第1実施形態と同様に、目標値を設定するだけでフラッシュランプFLの発光強度を簡易に最適化することができる。その結果、フラッシュランプの発光に関連する制御変数(第2実施形態では発光強度)の最適化に要する時間を大幅に短縮することができる。また、フラッシュランプFLの発光強度が安定するため、フラッシュランプFLによる光照射加熱処理の再現性を向上させることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態の熱処理装置の構成を示す縦断面図である。また、図14は、第3実施形態のフラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。第3実施形態においては、チャンバー6内の熱処理空間65に温度センサー28を設置している。温度センサー28は、フラッシュ光の照射を受けた半導体ウェハーWの表面温度を測定する放射温度計である。温度センサー28としては、半導体ウェハーWの表面から放射される赤外線を受光して表面温度を測定する赤外線センサーが用いられ、応答速度の速い量子型赤外線センサー(例えば、フォトダイオード)を用いるのが好ましい。半導体ウェハーWの表面からの赤外線を受光することによって温度センサー28に生じた電流は温度モニター29によって検出される。温度モニター29は、温度センサー28に生じた電流値を半導体ウェハーWの表面温度に変換し、その値をIGBT制御部21に伝達する。残余の構成については、第3実施形態の熱処理装置は第1実施形態と同様である。なお、温度モニター29に、半導体ウェハーWの放射率補正機能を組み込むようにしても良い。
第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と概ね同じである(図8参照)。但し、第3実施形態においては、フラッシュランプFLの発光に関連する制御変数を保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面温度としている。このため、ステップS11では、オペレータが半導体ウェハーWの表面温度の目標値を入力する。そして、その入力に基づいて制御部3の目標値設定部32が表面温度の目標値の時間プロファイルを設定し、IGBT制御部21に送信する。
半導体ウェハーWの表面温度の目標値が予め設定され、ステップS12以降のIGBT96のオンオフ制御が実行される。第3実施形態では、処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面温度を温度センサー28および温度モニター29によって測定する(ステップS13)。測定された半導体ウェハーWの表面温度は温度モニター29からIGBT制御部21に伝達される。そして、得られた測定値がその時点(測定時)での目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいか否かがIGBT制御部21によって判定され、測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいときには、IGBT制御部21がIGBT96をオフ状態とする(ステップS14,S15)。
次に、得られた測定値がその時点での目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいか否かがIGBT制御部21によって判定され、測定値が目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいときには、IGBT制御部21がIGBT96をオン状態とする(ステップS16,S17)。なお、温度センサー28の応答速度自体はマイクロ秒オーダーであるものの、第1実施形態の電流モニター25および第2実施形態の光センサー26に比較して出力にバラツキが大きく、数回のサンプリング結果を温度モニター29にて平滑化してからIGBT制御部21に伝達する必要がある。そのようにしても、温度モニター29からIGBT制御部21に100マイクロ秒間隔程度で表面温度の測定値を伝達することができる。すなわち、100マイクロ秒程度のサイクルタイムにてステップS12の制御変数の測定を実行することができる。このため、第3実施形態においても、IGBT制御部21は少なくとも100マイクロ秒間隔でIGBT96をオンオフ制御することができる。
このようにして第3実施形態においても、IGBT96をフィードバック制御している。すなわち、温度センサー28および温度モニター29によって得られた半導体ウェハーWの表面温度の測定値に基づいて、その表面温度が予め設定された目標値となるようにIGBT制御部21がIGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96をオン状態またはオフ状態に切り替えている。より具体的には、IGBT制御部21は、表面温度の測定値が目標値よりも上限許容範囲を超えて大きいときにはIGBT96をオフ状態とし、目標値よりも下限許容範囲を超えて小さいときにはIGBT96をオン状態とする。これにより、半導体ウェハーWの表面温度を予め設定した目標値に容易に制御することが可能となる。
以上のように、第3実施形態においては、制御変数として半導体ウェハーWの表面温度の目標値を予め設定し、温度センサー28および温度モニター29によって測定された表面温度の測定値に基づいて、その表面温度が予め設定された目標値となるようにIGBT制御部21がIGBT96のゲートに信号を印加してIGBT96をオン状態またはオフ状態に切り替えている。すなわち、温度センサー28および温度モニター29によって半導体ウェハーWの表面温度を極めて短いサンプリングタイムで測定し、その測定値と目標値との比較を行って両者が一致するようにIGBT96を制御するフィードバック制御を行っている。
このため、第1実施形態と同様に、目標値を設定するだけで半導体ウェハーWの表面温度を簡易に最適化することができる。その結果、フラッシュランプの発光に関連する制御変数(第3実施形態では半導体ウェハーWの表面温度)の最適化に要する時間を大幅に短縮することができる。また、半導体ウェハーWの表面温度が安定するため、フラッシュランプFLによる光照射加熱処理の再現性を向上させることができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、制御変数の目標値に対して上限許容範囲および下限許容範囲を規定し、測定値が上限許容範囲を超えたときにはIGBT96をオフ状態とし、下限許容範囲を下回ったときにはIGBT96をオン状態としていたが、測定値が目標値より大きければIGBT96をオフ状態とし、目標値より小さければIGBT96をオン状態とするようにしても良い。このことは、上記各実施形態において、上限許容範囲および下限許容範囲をゼロに規定したのと同義である。
また、最初にIGBT96をオン状態とした後、測定値が目標値に到達したらIGBT96をオフ状態にするだけの単純な制御としても良い。このような単純な制御であればIGBT制御部21の構成を簡素化できるとともに、制御に要する時間もさらに短くすることができる。
また、第3実施形態において、測定された半導体ウェハーWの表面温度が所定の閾値温度を超えた時点で、制御の態様を変更するようにしても良い。例えば、測定値が閾値温度未満のときには上記第3実施形態と同様のIGBT制御を行い、閾値温度を超えたときには測定値が目標値に到達したらIGBT96をオフ状態にするだけの制御を行うようにしても良い。
また、IGBT制御部21がIGBT96をオン状態にするのと同期してトリガー回路97を制御してトリガー電極91にトリガー電圧を印加するようにしても良い。このようにすれば、IGBT96をオン状態となったときにフラッシュランプFLに確実に通電することができる。特に、IGBT96のオフ状態が長い場合やフラッシュランプFLに流れている電流値が低いときにIGBT96をオン状態とするときには、それと同期してトリガー電極91にトリガー電圧を印加するようにした方が好ましい。
また、上記の各実施形態においては、IGBT制御部21を制御部3とは別の要素としていたが、入力に対して十分高速に応答して出力できるコンピュータにて制御部3を構成するのであれば、IGBT制御部21の機能を制御部3によって実現するようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、制御開始からの時刻と目標値との組み合わせを順次入力部33から入力して目標値の時間プロファイルを設定するようにしていたが、これに代えて、例えば、オペレータが入力部33から目標値の時間プロファイルを直接グラフィカルに入力するようにしても良い。また、以前に設定されて磁気ディスク等の記憶部に記憶されていた目標値の時間プロファイルを読み出すようにしても良いし、或いは熱処理装置1の外部からダウンロードするようにしても良い。
また、上記実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
また、IGBT96に代えて、ゲートに入力された信号レベルに応じて回路をオンオフできる他のトランジスタを用いるようにしても良い。もっとも、フラッシュランプFLの発光には相当に大きな電力が消費されるため、大電力の取り扱いに適したIGBTやGTO(Gate Turn Off)サイリスタを採用するのが好ましい。
また、上記実施形態においては、ホットプレート71に載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ハロゲンランプを設けて光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1にまで予備加熱するようにしても良い。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。