JP2011203705A - 眼鏡レンズ及びその設計方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】眼鏡レンズの近用領域の主注視線上に位置する近用度数測定ポイントNPの等価球面度数に比べ、この近用度数測定ポイントNPよりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側の等価球面度数を小さく、近用度数測定ポイントNPの等価球面度数に比べ、近用度数測定ポイントNPよりも水平方向の耳側の等価球面度数を大きく設定した。
【選択図】図2
Description
従来、眼鏡レンズの設計にあたり、近用領域の主注視線上に位置する近用度数測定ポイント(近用測定領域の中心)での等価球面度数が設定される。近用領域では、等価球面度数は、近用度数測定ポイントの上が最も大きく、近用度数測定ポイントを挟んで眼鏡装用時の水平方向の左右両側に従って徐々に小さくなる従来例1がある。
例えば、左右両視で水平方向の目の移動の際に、左右の眼鏡レンズの度数差(面倍率差)が少なくなるように設計する従来例2(特許文献1)がある。
さらに、優位眼の偏位を測定し、内寄せ量を決定した従来例3(特許文献2)がある。
そして、鼻側の遠用領域や近用領域の視野を狭くすることにより、鼻側や耳側の最大収差の差を0.3ディオプトリー(D)以下にする従来例4(特許文献3)がある。
図5は、従来例1を説明する図である。図5には近くの平面上の物体Oを両眼視する場
合の眼球、眼鏡レンズ及び物体Oの関係が示されている。
図5において、通常、左眼LEと右眼REの中間位置の正面にある対象物OCを両眼視する場合では、対象物OCから左眼LEまでの距離と対象物OCから右眼REまでの距離とが同じであるので、左眼LEと右眼REとの調節力は同じとなる。なお、中間位置の正面を両眼視する場合の視線が左右の眼鏡レンズ1を通過する仮想線が主注視線である。
つまり、従来例1の眼鏡レンズの近方領域では、主注視線上の近用度数測定ポイントNPを挟む左右両側で等価球面度数が同じとなっているので、見る対象が右眼の正面にあるか、左眼の正面にあるかによって、左右の眼の調節力が異なり、眼球疲労を生じるという課題がある。
特許文献2では、優位眼の偏位を測定する工程という煩雑な工程が必要である。
特許文献3では、鼻側の遠用領域や近用領域の視野を狭くする必要があるので、装用者にとって、明確に見える領域が制限される。
そのため、眼が疲れることなく、近くの物体を容易に両眼視することができる。その上、近用領域の広さを変えることを要しないので、近用視できるエリアを狭めることがなく、眼鏡装用者にとって利便性が高いものとなる。さらに、このような効果は前記点の水平方向の両側における等価球面度数を調整することで容易に実現できるので、優位眼の偏位を測定する工程等、従来例が必要とされた煩雑な工程が不要とされる。
この構成の本発明では、前述の効果を達成することができる累進屈折力眼鏡レンズを提供することができる。
この構成の本発明では、前述の効果を奏することができる近々タイプ(中間・近距離専用)の累進屈折力眼鏡レンズを提供することができる。
この構成の本発明では、従来から等価球面度数が設定される近用測定領域の中心である近用度数測定ポイントやレンズ設計で従来から利用されている累進終了点を前述の点として用いるため、眼鏡レンズの設計を容易に行うことができる。
そのため、式(1)に基づいて、実際の眼鏡装用者の条件に合った眼鏡レンズを簡単に提供することができる。
本発明における近用瞳孔間距離(近用PD)は、近方視した場合の瞳孔間距離をいい、実際には、装用される眼鏡フレームのレンズ光心間距離(近用MA)を指す。フィッティングポイントから耳側に距離m離れた位置で等価球面度数が最も大きな値をとるようにする。
そのため、本発明では、式(2)に基づいて、実際の眼鏡装用者の条件に合った近用専用の眼鏡レンズを簡単に提供することができる。
なお、一般的な眼鏡調整では、眼鏡装用時にフィッティングポイントがアイポイントと一致するように調整する。レンズ設計においても眼鏡装用時にフィッティングポイントがアイポイントと一致することを前提に設計する。
従って、右レンズのフィッティングポイントと左レンズのフィッティングポイントとがなす距離は、瞳孔間距離に等しくなる。遠近両用タイプや中近タイプのレンズでは、瞳孔間距離として遠用瞳孔間距離が採用され、近々タイプや近用単焦点レンズでは、近用瞳孔間距離が採用されることが多い。
この構成の本発明では、前述の効果を達成することができる眼鏡レンズを簡単に設計することができる。
図1から図5には本発明の第一実施形態が示されている。
図1は、第一実施形態にかかる眼鏡レンズの概略平面図である。
図1において、眼鏡レンズ1は、遠方視に対応するとともに上部に設けられる遠用領域2と、近用視に対応するとともに下部に設けられる近用領域3と、遠用領域2から近用領域3にかけて屈折力が連続的に変化するとともに中間位置に設けられる中間領域4と、中間領域4の両側にそれぞれ設けられる中間側方領域5とを備えた遠近両用タイプの累進屈折力眼鏡レンズである。なお、図1には右眼用の眼鏡レンズ1が図示されている。
これらの遠用領域2、近用領域3及び中間領域4は眼鏡レンズ1の内面(眼球側)あるいは外面(反眼球側)に形成されている。
主注視線6は、主子午線とも称されるものであり、遠用領域2を通過する遠用線部6Aと、中間領域4を通過する累進線部6Bと、近用領域3を通過する近用線部6Cとからなる。なお、眼鏡レンズの中心を通る中心線と遠用線部6Aとが一致しているが、図1では、遠用線部6Aをわかりやすく表示するため、中心線に対して遠用線部6Aがずれて表示されている。
遠用線部6Aは、アイポイントEPを通り眼鏡装用時における鉛直方向に沿って形成されている。また、遠用線部6Aのいずれかの位置、例えば、アイポイントEPの4mm上方の位置には遠用度数測定ポイントDPがある。この遠用度数測定ポイントDPは、遠用領域2において屈折力が加えられる遠用測定領域の中心である。
近用線部6Cは近用度数測定ポイントNPを通過するとともに眼鏡装用時における鉛直方向に沿って形成され、遠用線部6Aから寸法tだけ鼻側(図1中左側)に内寄せ(インセット)されている。
累進線部6Bは遠用線部6Aの下端と近用線部6Cの上端とを接続するもので、これらの線分に対して斜めに形成されている。
近用領域3の近用測定領域において屈折力が加えられるが、本実施形態では、近用度数測定ポイントNPを含む水平方向の線分NLにおいて、等価球面度数を従来とは変えて設定する。
ここで、等価球面度数は、平均度数、平均屈折力とも称される。眼鏡レンズの屈折力は、レンズ後面の視線透過位置から眼球の焦点までの距離の逆数として定義されるが、レンズ周辺部を通過する光は非点収差によって複数の焦点が生じる。そのため、本実施形態では、複数の焦点に対応する屈折力の平均値を設定する。
本実施形態では、近用度数測定ポイントNPの等価球面度数は眼鏡装用者の視力、その他の条件に応じて通常の方法で設定されるものであり、この近用度数測定ポイントNPよりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側(図1では左側)の等価球面度数が連続して小さく設定され、近用度数測定ポイントNPよりも水平方向の耳側(図1では右側)の等価球面度数が連続して大きく設定される(図2参照)。
図2において、xは線分NL上の水平方向距離であり、x=0は主注視線6上のうち遠用領域2に対応する部分である遠用線部6Aから水平方向の線分NLに下ろした垂線の足の位置NOであり(図1参照)、正の値は耳側であり、負の値は鼻側である。
近用度数測定ポイントNPからx=0となる位置まで耳側に向かうと等価球面度数は連続して大きくなり、この位置を過ぎてさらに右側に向かうと連続して小さくなる。一方、近用度数測定ポイントNPから鼻側に向かうと等価球面度数は連続して小さくなる。
本実施形態では、xが−7.5≦x≦2.5の範囲において、等価球面度数の勾配fn(x)は次の(1)式から求められる。
(1)式において、Lは近用作業距離であり、この近用作業距離は眼球の回旋中心から一方の眼球正面にある物体Oまでの距離である近用作業距離である。lは眼球の回旋中心からレンズ後面までの距離である(図5参照)。
X=xL/l ……(1−1)
そして、眼球中心から位置Oxまでの距離Yは次の(1−2)式で求められる。
Y=(L2+(Lx/l)2)1/2 ……(1−2)
ここで、距離Yにある対象物を見るために必要な調節力は距離Yの逆数から求められ、その逆数の微分した値が(1)式で求められる勾配fn(x)である。
図2は、予め設定される内寄せ量tが−2.5mmであり、近用度数測定ポイントNPで設定される等価球面度数が2.00ディオプトリー(D)であり、近用作業距離Lが300mmであり、眼球の回旋中心からレンズ後面までの距離lが25mmである場合の等価球面度数のグラフである。
換言すれば、本実施形態では、近用領域3での設計が従来と異なるものであり、他の領域の設計は従来と同じである。そして、右眼用の眼鏡レンズ1について、説明したが、左眼用の眼鏡レンズも右眼用の眼鏡レンズ1と同様に、近用度数測定ポイントNPよりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側の等価球面度数が連続して小さく設定され、近用度数測定ポイントNPよりも水平方向の耳側の等価球面度数が連続して大きく設定される。
図4には従来設計例の眼鏡レンズが示されるものであり、(A)は収差図、(B)は平均度数を示す図である。なお、図3及び図4において、近用領域以外の設計は従来と同じであるが、累進帯長を14mm、S0.00、加入屈折力ADDが2.00ディオプトリー(D)として設計した。
図3(A)と図4(A)との収差図同士を対比すると、本実施形態と従来設計例とは、明視できる範囲、つまり非点収差0.5ディオプトリー(D)以下の範囲は主注視線6に沿って設けられており、実質的な相違はない。しかし、従来設計例に比べて本実施形態では、鼻側(図中左側)の最大収差が減少し、耳側(図中右側)との収差のバランスがとれているのがわかる。
(1)眼鏡レンズ1の近用領域3の主注視線6の上に位置する基準点の等価球面度数に比べ、この基準点よりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側の等価球面度数を小さく、基準点の等価球面度数に比べ、基準点よりも水平方向の耳側の等価球面度数を大きく設定した。これにより、右眼REと左眼LEの一方に位置する対象物OR,OLを両眼視する場合、右眼REと左眼LEの一方が他方に比べて大きな調整力が必要となるが、本実施形態では、大きな調整力を必要とする眼からの視線が通過するレンズ部位の等価球面度数が大きく、大きな調整力を必要とされない眼からの視線が通過するレンズ部位の等価球面度数が小さいので、左右の眼の調節力の差が小さくなり、眼が疲れることなく、近くの物体を容易に両眼視することができる。
その上、近用領域3の広さを変えることを要しないので、近用視できるエリアを狭めることがなく、眼鏡装用者にとって利便性が高いものとなる。
さらに、基準点の水平方向の両側における平均度数を調整することで容易に実現できるので、優位眼の偏位を測定する工程等の煩雑な工程が不要とされる。
そのため、累進屈折力眼鏡レンズの近用領域3を用いて近くの物体を両眼視する際に、対象物の左右方向の位置にかかわらず快適に見ることができる。
図6は第二実施形態にかかる眼鏡レンズの概略平面図である。
図6において、眼鏡レンズ11は、遠方視に対応するとともに上部に設けられる遠用領域12と、近用視に対応するとともに下部に設けられる近用領域13と、遠用領域12から近用領域13にかけて屈折力が連続的に変化するとともに中間位置に設けられる中間領域14と、中間領域14の両側にそれぞれ設けられる中間側方領域15とを備えた中近重視の累進屈折力眼鏡レンズである。なお、図6には右眼用の眼鏡レンズ11が図示されている。
これらの遠用領域12、近用領域13及び中間領域14は眼鏡レンズ11の内面(眼球側)あるいは外面(反眼球側)に形成されている。
主注視線16は、遠用領域12を通過する遠用線部16Aと、中間領域14を通過する累進線部16Bと、近用領域13を通過する近用線部16Cとからなる。
遠用線部16Aは、眼鏡装用時における視線の鉛直方向に沿って形成されている。
近用線部16Cは近用度数測定ポイントNPを通過するとともに眼鏡装用時における鉛直方向に沿って形成され、遠用線部16Aから寸法tだけ鼻側(図6中左側)に内寄せ(インセット)されている。
累進線部16Bは遠用線部16Aの下端EFと近用線部6Cの上端である近用度数測定ポイントNPとを接続するもので、遠用線部16Aや近用線部16Cの線分に対して斜めに形成されている。
第二実施形態では、アイポイントEPは中間領域14の所定箇所、例えば、眼鏡レンズ11の幾何学的中心位置Cに設けられており、遠用瞳孔間距離により決定されている。
第二実施形態では、xが−7.5≦x≦2.5の範囲において、等価球面度数の勾配fn(x)は次の(1)式から求められる。
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、予め設定される内寄せ量tが−2.5mmであり、近用度数測定ポイントNPで設定される等価球面度数が2.00ディオプトリー(D)であり、近用作業距離Lが300mmであり、眼球の回旋中心からレンズ後面までの距離lが25mmである(図2参照)。
換言すれば、第二実施形態では、近用領域13での設計が従来と異なるものであり、他の領域の設計は従来と同じである。そして、左眼用の眼鏡レンズも右眼用の眼鏡レンズ1と同様に、近用度数測定ポイントNPよりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側の等価球面度数が連続して小さく設定され、近用度数測定ポイントNPよりも水平方向の耳側の等価球面度数が連続して大きく設定される。
図8には従来設計例の眼鏡レンズが示されるものであり、(A)は収差図、(B)は平均度数を示す図である。なお、図7及び図8において、近用領域以外の設計は従来と同じであるが、累進帯長を24mm、S0.00、加入屈折力ADDが2.50ディオプトリー(D)として設計した。
図7(A)と図8(A)との収差図同士を対比すると、第二実施形態は従来設計例に比べて、明視できる範囲、つまり非点収差0.5ディオプトリー(D)以下の範囲が主注視線16に沿って設けられており、実質的な相違はない。しかし、従来設計例に比べて第二実施形態では、鼻側(図中左側)の最大収差が減少し、耳側(図中右側)との収差のバランスがとれているのがわかる。
図9は第三実施形態にかかる眼鏡レンズの概略平面図である。
図9において、眼鏡レンズ21は、中間部から下部にかけて設けられるとともに近用視に対応する近用領域23と、この近用領域23よりも上方に配置され近用領域23よりも屈折力が小さく、かつ、中間視に対応する中間領域24とを備えた近用専用の累進屈折力眼鏡レンズである。第三実施形態では、近用領域23は前記実施形態の近用領域3,13より左右の領域が広く設定されている。なお、図9には右眼用の眼鏡レンズ21が図示されている。
これらの近用領域23及び中間領域24は眼鏡レンズ21の内面(眼球側)あるいは外面(反眼球側)に形成されている。
主注視線26は、中間領域24を通過する累進線部26Bと、近用領域23を通過する近用線部26Cとからなる。
第三実施形態では、眼鏡装用時のフィッティングポイントは近用PDを用いて決定される。近用PDは、後述する通り、近方視した場合の瞳孔間距離をいい、実際には、装用される眼鏡フレームのレンズ光心間距離(近用MA)を指す。
一般的な眼鏡調整では、眼鏡装用時にフィッティングポイントはアイポイントEPと一致するように調整されるものであり、レンズ設計においても眼鏡装用時にフィッティングポイントがアイポイントEPと一致することを前提に設計される。そのため、フィッティングポイント(アイポイントEP)から耳側に距離mだけ離れた位置で等価球面度数が最も大きな値となるようにする。
図10には近用PDが示されている。
図10において、左右の眼球LE,REからそれぞれ近距離の物体Oに対して向けられる近用視線は左右の眼鏡レンズLL,RLを通過する。ここで、正確には、左右の眼球LE,REの瞳の間の距離が近用PDであり、眼鏡レンズLL,RLを透過する位置の間の距離を近用PDとして用いる。また、遠用視した場合の瞳孔間距離が遠用PDであるが、この遠用PDは左右の眼球LE,REの中心の間の距離と同じである。
近用PDNは実測する方法と、遠用PDとから求める方法とがある。
実測する方法として、瞳孔間隔距離計(TOPCON社のPDメーター:PD−5等)を用いることができる。
眼鏡フレームのフレームラインFLにおけるブリッジ中央をFCとすると、この位置FCと瞳孔中心との距離が遠用単眼瞳孔間距離HPDFであり、位置FCと眼鏡レンズLL,RLを透過する位置との距離が近用単眼瞳孔間距離HPDNである。
遠用単眼瞳孔間距離HPDFと近用単眼瞳孔間距離HPDNとを瞳孔間距離計を用いて実測し、距離mを、m=HDPF−HDPNの式から求める。
(2)遠用PDのみを実測する場合
遠用単眼瞳孔間距離HPDFを瞳孔間距離計で求め、さらに、近用の目的距離a、眼球中心と角膜頂点との距離b、角膜頂点間距離eを用いて、次の式から距離mを求める。
つまり、図10で示される通り、HPDN/HPDF=(a−e)/(a+b)であるから、距離mを
m=HPDF−HPDN=HPDF−HPDF・{(a−e)/(a+b)}=HPDF{1−(a−e)/(a+b)}の式から求める。なお、b、eは実測してもよいが、一般的な平均値b=13mm、e=12mmを用いてもよい。
(3)近用PDのみを実測する場合
近用単眼瞳孔間距離HPDNを瞳孔間距離計で求め、さらに、近用の目的距離a、眼球中心と角膜頂点との距離b、角膜頂点距離eを用いて、次の式から距離mを求める。
m=HPDF−HPDN=HPDN・{(a+b)/(a−e)−1}から求める。
図11において、x=0はアイポイントEPであり、このアイポイントEPから距離m(2mm)だけ離れた位置まで耳側に向かうと、等価球面度数は連続して大きくなり、この位置を過ぎてさらに耳側に向かうと連続して小さくなる。一方、アイポイントEPから鼻側に向かうと等価球面度数は連続して小さくなる。アイポイントEPから耳側に距離m(2mm)離れた位置で設定される等価球面度数が3.01ディオプトリー(D)であり、近用作業距離Lが300mmであり、眼球の回旋中心からレンズ後面までの距離lが25mmである場合の等価球面度数のグラフである。
図11には、従来設計例の勾配が合わせて示されている。従来設計例では、アイポイントEPを頂点とし、その両側、つまり、鼻側と耳側とにそれぞれ離れるに従って等価球面度数が同じ勾配で小さくなる。本実施形態は従来設計例に比べて、アイポイントEPより右側(耳側)ではプラス度数が加入され、アイポイントEPより左側(鼻側)ではマイナス度数が加入されている。
換言すれば、第三実施形態では、近用領域23での設計が従来と異なるものであり、他の領域の設計は従来と同じである。そして、左眼用の眼鏡レンズも右眼用の眼鏡レンズ21と同様に、アイポイントEPよりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側の等価球面度数が連続して小さく設定され、アイポイントEPよりも水平方向の耳側の等価球面度数が連続して大きく設定される。
図13には従来設計例の眼鏡レンズが示されるものであり、(A)は収差図、(B)は平均度数を示す図である。なお、図12及び図13において、3.00ベース、加入屈折力ADDが1.00ディオプトリー(D)として設計した。
xが−7.5≦x≦2.5の範囲において式(2)による等価球面度数の勾配を求めた結果、図12(A)に表示される0.25ディオプトリー(D)で、図12(B)に示される等価球面度数の分布が得られた。
図12(A)と図13(A)との収差図同士を対比すると、本実施形態と従来設計例とは、明視できる範囲、つまり非点収差0.50ディオプトリー(D)以下の範囲は実質的な相違はない。しかし、従来設計例に比べて本実施形態では、鼻側(図中左側)の最大収差が減少し、耳側(図中右側)との収差のバランスがとれているのがわかる。
図12(B)と図13(B)との等価球面度数の図同士を対比すると、従来設計例では主注視線26の上に近用度数のピークがあるが、本実施形態では、主注視線26より耳側(図中右側)に近用度数のピークがあることがわかる。
例えば、前記各実施形態では、眼鏡レンズを、遠用領域2,12、近用領域3,13及び中間領域4,14を有する累進屈折力眼鏡レンズや近用領域23を幅広く設定した累進屈折力眼鏡レンズとしたが、本発明では、単焦点レンズに用いてもよい。
また、本発明では、主注視線6,16,26の近用線部6C,16C,26Cが眼鏡装用時に鉛直に沿って設けられる眼鏡レンズ1,11,21に限定されるものではない。
また、等価球面度数のグラフの勾配fn(x)は(1)式や(2)式以外から求めるものでもよい。例えば、光線追跡法を用いて、レンズのプリズム量を考慮した等価球面度数の勾配fn(x)を求めることができる。
Claims (7)
- 近方視に対応する近用領域を有し、
この近用領域の主注視線上に位置する点の等価球面度数に比べて前記点よりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側に位置する領域の等価球面度数が小さく、前記点の等価球面度数に比べて前記水平方向の耳側に位置する領域に等価球面度数が大きい領域が存在することを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項1に記載された眼鏡レンズにおいて、
前記近用領域と、
この近用領域よりも屈折力が小さい、遠方視に対応する遠用領域と、
前記遠用領域から前記近用領域にかけて屈折力が連続的に変化するとともに中間視に対応する中間領域と、
を備えたことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項1に記載された眼鏡レンズにおいて、
前記近用領域と、この近用領域よりも屈折力が小さい、中間視に対応する中間領域と、を備えたことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項2又は請求項3に記載された眼球レンズにおいて、
前記点は前記近用領域と前記中間領域との境界に位置する累進終了点または前記近用領域の中心である近用度数測定ポイントであることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載された眼鏡レンズを設計する方法であって、
まず、前記主注視線を設定し、前記近用領域の前記点の等価球面度数を設定し、その後、前記点の等価球面度数に比べて前記点よりも眼鏡装用時における水平方向の鼻側に位置する領域の等価球面度数を小さく設定し、前記点の等価球面度数に比べて前記主注視線よりも前記水平方向の耳側に等価球面度数が大きい領域を設定することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
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