JP6495005B2 - 両眼用の一対の眼鏡レンズ、その製造方法、供給システム、および供給プログラム - Google Patents

両眼用の一対の眼鏡レンズ、その製造方法、供給システム、および供給プログラム Download PDF

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Description

本発明は両眼用の一対の眼鏡レンズ、その製造方法、供給システム、および供給プログラムに関する。
現在、視力矯正用の眼鏡レンズとして種々のものが知られている。例えば、所定の距離を見るための一つの領域が単に設けられた単焦点レンズ、単焦点レンズでありながらも当該領域から離れるに従って度数が変化する単焦点レンズ、それらに対し、度数が連続的に変化する部分(いわゆる累進部)を備えた累進屈折力レンズ(本明細書においては累進多焦点レンズでもある。)などが挙げられる。
累進屈折力レンズとしては、例えば特許文献1に記載のように、遠くを見るための遠用屈折力を有する遠用部と、手元を見るための近用屈折力を有する近用部と、遠用部と近用部との間に存在する累進部とを備えたものが挙げられる。更に、特許文献1の眼鏡レンズにおいては、遠用部および近用部に対し、各々異なる屈折力を有するプリズムを備えさせている。プリズムは、斜視、斜位、固視ずれ等、装用者の症状を矯正するために処方として与えられる。以降、このプリズムのことを処方プリズムと称する。特許文献1の[0004]においては、両眼のプリズムが正しく処方されない場合には、物が二重に見えたり遠近感が異なって見えたりすることが示唆されている。特許文献1においては、正しく処方されたプリズムを累進多焦点レンズに備えさせることにより、遠方視および近方視時のどちらにおいても快適に両眼視を行うことを目的としている(特許文献1の[0005])。
特開平11−295670号公報
現在、眼鏡レンズに関し、装用者が物体を明瞭に見られるようにするための研究が行われている。その中でも、累進屈折力レンズは、遠用部および近用部というように多焦点を有するものであることから、加齢とともに眼の調節力が低下してきた装用者に対し、極めて明瞭な視野を提供可能である。
それにもかかわらず、累進屈折力レンズの性能が高いにもかかわらず、累進屈折力レンズの普及度合いは、上記の種々の単焦点レンズと同等またはそれ以下という状況である。
上記の状況の原因を探るべく、本発明者は、各年代の眼鏡レンズの装用者に対して調査を行った。その結果、以下の隠れたニーズが存在することが、本発明者の調べにより明らかとなった。すなわち、全ての年代において物体を明瞭に見たいというニーズは当然存在するとしても、装用者の年代が高くなればなるほど、眼鏡レンズを装用した際に物体を拡大して見たいというニーズが増大することが明らかとなった。特に、そのニーズは、有限距離にある物体を見る際に増大することも明らかとなった。
しかも、眼鏡レンズを装用した際に物体を拡大して見たいというニーズは、累進屈折力レンズのみならず、単焦点レンズやその他のレンズにおいても同様に存在することも明らかとなった。
このニーズに対応するための手法としては、眼鏡フレームに対して拡大鏡(ルーペ)を着脱自在とし、眼鏡レンズと物体との間に拡大鏡をアタッチメントとして介在可能とするという手法が挙げられる。しかしながらこの手法だと、眼鏡フレームの構成を、アタッチメントを着脱可能なように変更する必要がある。そうなると、装用者にとっては眼鏡フレームの選択の自由度が著しく減少する。その上、眼鏡フレームに対し、更なる加工が必要となり費用が嵩むことになる。また、眼鏡レンズを作製した上、更に拡大鏡が必要となり、装用者にとっても費用が嵩むことになる。
本発明の課題は、眼鏡レンズを装用することにより物体を拡大して視覚させる技術を提供することにある。
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を行った。まず、アタッチメントを使用するのではなく、眼鏡レンズそのものに拡大機能を備えさせる必要があると、本発明者は考えた。この考えに基づき本発明者が鋭意検討を行った結果、一枚の眼鏡レンズではなく、両眼用の一対の眼鏡レンズにより、上記の課題を解決するという手法を想到した。
具体的に言うと、両眼用の一対の眼鏡レンズ各々に対し、処方プリズムとは別にインプリズムを備えさせる。それにより、眼鏡レンズを視線が通過した際に、意図的に両眼の間で視差を生じさせる。その上で、両眼視の際に、装用者の脳内で行われる処理であって各眼から入射した各々の物体像の融合(すなわち融像)を利用し、装用者に対し、物体の像を拡大して視覚させるという手法を想到した。
このように意図的に視差を生じさせるという手法は、先ほど述べたように、従来の眼鏡レンズ(特に累進屈折力レンズ)が売りとするところの「装用者が物体を明瞭に見られるようにすること」とは全く逆の技術的思想である。なお、「物体を拡大して視覚させること」が自然法則および技術的思想に則ったものであることは、後で詳述する。
以上の知見に基づきなされた本発明の態様は以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
両眼用の一対の眼鏡レンズの各々には有限距離の物体を見るための部分が備わり、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状が当該部分に備わった、両眼用の一対の眼鏡レンズである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
有限距離の物体を見るための前記部分は近用部である。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の態様であって、
眼鏡レンズの各々において、度数が連続的に変化する部分を備える。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記インプリズムが備わるのは、前記眼鏡レンズにおける特定距離用度数測定点、プリズム度数測定点、またはフィッティングポイントよりも下方の部分である。
本発明の第5の態様は、第3または第4の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記眼鏡レンズは、特定距離を見るための部分、当該特定距離よりも近い距離を見るための近用部、および、当該部分と当該近用部との間で度数が変化する累進部を備えており、かつ、以下の式を満たす。
−P<ADD*h/10
ここで、Pは、特定距離を見るための部分の度数測定点におけるプリズム量(Δ)を示し、Pは近用度数測定点のプリズム量(Δ)を示す。なお、プリズム量に関しては、アウトプリズムを正、インプリズムを負とする。
また、ADDは加入度数(D)を示し、hは、前記眼鏡レンズにおける内寄せ量(mm)であり、前記眼鏡レンズの上方頂点から下方頂点を結ぶ上下直線から見て鼻側を正、耳側を負とする。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズは以下の式を満たす。
|P−P−ADD*h/10|≧0.25
本発明の第7の態様は、第3〜第6のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記眼鏡レンズにおける前記部分の少なくとも一部において、前記インプリズムが前記眼鏡レンズの下方に向けて増加するように、前記部分を水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかの形状を、前記眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩った形状が備わる。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上である。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の態様であって、
前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点は、前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点の中点を基準に鉛直方向に±3mmの間に位置する。
本発明の第10の態様は、第7の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である。
本発明の第11の態様は、第10の態様に記載の態様であって、
前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点は、前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点の中点を基準に鉛直方向に±3mmの間に位置する。
本発明の第12の態様は、第3〜第7のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズにおける前記部分から見てアウトの水平方向およびインの水平方向の部分においても前記インプリズムの形状が備わる。
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上である。
本発明の第14の態様は、第12の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上である。
本発明の第15の態様は、第12の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上である。
本発明の第16の態様は、第3〜第7のいずれかの態様に記載の態様であって、 前記眼鏡レンズにおける前記部分からアウトの水平方向およびインの水平方向へと前記インプリズムを減少させる。
本発明の第17の態様は、第16の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である。
本発明の第18の態様は、第16の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である。
本発明の第19の態様は、第16の態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である。
本発明の第20の態様は、第3〜第19のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記インプリズムの量は2Δ以下である。
本発明の第21の態様は、
眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対して有限距離の物体を見るための部分を備えさせ、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせる設計工程と、
前記設計工程の結果に基づいて両眼用の一対の眼鏡レンズを製造する製造工程と、
を有する、両眼用の一対の眼鏡レンズの製造方法である。
本発明の第22の態様は、
眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
前記眼鏡レンズに係る情報を受信する受信部と、
前記眼鏡レンズに係る情報に基づいて、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対して有限距離の物体を見るための部分を備えさせ、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせる設計部と、
前記設計部により得られる設計情報を送信する送信部と、
を備えた、両眼用の一対の眼鏡レンズ供給システムである。
本発明の第23の態様は、
眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
前記眼鏡レンズに係る情報を受信する受信部、
前記眼鏡レンズに係る情報に基づいて、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対して有限距離の物体を見るための部分を備えさせ、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせる設計部、および、
前記設計部により得られる設計情報を送信する送信部、
としてコンピュータを機能させる、両眼用の一対の眼鏡レンズ供給プログラムである。
本発明によれば、眼鏡レンズを装用することにより物体を拡大して視覚させる技術を提供することができる。
SILO現象を説明する概略平面図であり、(a)は、輻輳要求に応じて視標を両眼視し、脳内で融像が行われたとき、視標が小さくかつ近づいたように視覚される様子(いわゆるSmall In:SI)を示し、(b)は、開散要求に応じて視標を両眼視し、脳内で融像が行われたとき、視標は大きくかつ遠ざかったように視覚される様子(いわゆるLarge Out:LO)を示す。 装用者にとって正面視の方向であって両眼球の中央前方に物体を配置した際に、インプリズムにより装用者が知覚する物体の位置(言い換えると虚像の位置)を説明する概略上面図である。 図2に加え、物体の大きさ(言い換えると虚像の大きさ)を説明する図である。 β(拡大倍率)についての説明図であり、図3に各符号を加えた図である。 装用者が遠用部を見る際に、眼鏡レンズを装用していなければ両視線が平行となり自然な視線となるところ、インプリズムが入っているため、両眼が過度に開散するような視線を装用者に強いることになる様子を示す概略上面図である。 図6の左側の分布図は、物体側の面(外面)に累進面が形成され、眼球側の面(内面)を球面としたいわゆる外面累進レンズであって、球面度数(S)を0.00D、乱視度数(C)を0.00D、加入度数(ADD)を3.50Dとした眼鏡レンズにおける面平均度数を示す。分布図の右側には、分布図の各該当部分における眼鏡レンズの水平断面形状を示す。 装用者がアウトプリズムから受ける影響を示す概略上面図である。 本実施形態における眼鏡レンズの概略平面図である。 実施例3に対応する内容において、眼鏡レンズにおいて主注視線が通過する部分αおよびその側方におけるインプリズムの制御の様子を示す概念図である。 実施例6に対応する内容において、眼鏡レンズにおいて主注視線が通過する部分αおよびその側方におけるインプリズムの制御の様子を示す概念図である。 本実施形態における眼鏡レンズの製造方法のうちの設計工程を概略的に示したフローチャートである。 本実施形態における眼鏡レンズ供給システムを概略的に示したブロック図である。 比較例3(参照例)に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 実施例3において、内面を連続的に捩った結果としてレンズ上に付与されるプリズム量を示す図であり、横軸は、2つの隠しマークを通る線分と主注視線が交わる点を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は付与されたプリズム量を表す。 実施例4において、内面を連続的に捩った結果としてレンズ上に付与されるプリズム量を示す図であり、横軸は、2つの隠しマークを通る線分と主注視線が交わる点を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は付与されたプリズム量を表す。 実施例5において、内面を連続的に捩った結果としてレンズ上に付与されるプリズム量を示す図であり、横軸は、2つの隠しマークを通る線分と主注視線が交わる点を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は付与されたプリズム量を表す。 実施例6において、内面を連続的に捩った結果としてレンズ上に付与されるプリズム量を示す図であり、横軸は、2つの隠しマークを通る線分と主注視線が交わる点を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は付与されたプリズム量を表す。 実施例7において、内面を連続的に捩った結果としてレンズ上に付与されるプリズム量を示す図であり、横軸は、2つの隠しマークを通る線分と主注視線が交わる点を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は付与されたプリズム量を表す。 実施例8において、内面を連続的に捩った結果としてレンズ上に付与されるプリズム量を示す図であり、横軸は、2つの隠しマークを通る線分と主注視線が交わる点を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は付与されたプリズム量を表す。 実施例3に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 実施例4に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 実施例5に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 実施例6に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 実施例7に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 実施例8に係る眼鏡レンズに関する図であり、(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。 比較例3での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例3での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例4での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例5での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例6での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例7での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例8での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(a)および垂直方向の面屈折力の分布図(b)へと分けた図である。 実施例3および比較例3において、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線において垂直方向の面屈折力をプロットしたものである。 実施例4および比較例3において、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線において垂直方向の面屈折力をプロットしたものである。 実施例5および比較例3において、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線において垂直方向の面屈折力をプロットしたものである。 実施例6および比較例3において、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線において水平方向の面屈折力をプロットしたものである。 実施例7および比較例3において、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線において水平方向の面屈折力をプロットしたものである。 実施例8および比較例3において、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線において水平方向の面屈折力をプロットしたものである。
[実施の形態1]
以下、本実施形態に関し、以下の順序で説明する。
1.本発明の技術的思想
1−1.技術的背景
1−2.倍率変化の概算
2.両眼用の一対の眼鏡レンズ
2−1.眼鏡レンズの構成
2−2.従来との相違
2−3.特定方法
なお、本明細書においては、天地の天の方向を上方、地の方向を下方とする。装用者が眼鏡レンズを通して上方から下方へと視線を移すことにより眼が内寄りに輻輳することになる。
また、本明細書においては、装用者の鼻の側をインの水平方向と称し、耳の側をアウトの水平方向と称する。
また、本明細書における水平方向とは、乱視軸およびプリズム基底方向の定義における0または180度方向のことを指し、フレームへの枠入れのための2つのアライメント基準マーク(いわゆる隠しマーク)を結ぶ水平基準線の方向と一致した例について述べる。なお、本実施形態における水平基準線は、眼鏡レンズ(枠入れ加工前の丸レンズ)の上方頂点と下方頂点との中間において水平に延びる線である。
<1.本発明の技術的思想>
(1−1.技術的背景)
本発明の技術的思想の背景について説明する。
本発明に至った背景には、人間の生物学的な視特性への検討がある。当該視特性としては、まず、SILO現象と呼ばれる視特性が挙げられる(例えば文献「基礎両眼視」興隆出版社 関真司著、改訂増版:2009年4月1日)。
このSILO現象とは、Small In Large Outの頭文字である。
SILO現象は、人間が、輻輳要求に応じて(すなわち眼を輻輳させて)視標を両眼視し、脳内で融像が行われたとき、図1(a)に示すように、視標は小さくかつ近づいたように視覚される(いわゆるSmall In:SI)。
それとは逆に、人間が、開散要求に応じて(すなわち眼を輻輳させないで)視標を両眼視し、脳内で融像が行われたとき、図1(b)に示すように、視標は大きくかつ遠ざかったように視覚される(いわゆるLarge Out:LO)。
上記のSILO現象は、以下のように幾何光学的に説明可能である。
例えば、図1(a)はSIが生じる例であるが、右眼で左視標、左眼で右視標が見えるような状況(すなわち両眼の視線において過度に輻輳が生じるが如く視差が生じた状況)だと、両視線が交わる箇所(すなわち視標よりも眼球に近い箇所)で融像が生じる。そうなると図1(a)に示すように、視標は小さくかつ近づいたように視覚される。
それとは逆に、図1(b)はLOが生じる例であるが、右眼で右視標、左眼で左視標が見えるような状況(すなわち両眼の視線において輻輳が生じない開散状態において視差が生じた状況)だと、両視線が交わる箇所(すなわち視標よりも遠ざかった箇所)で融像が生じる。そうなると図1(b)に示すように、視標は大きくかつ遠ざかったように視覚される。
また、別の資料(文教大学情報学部「情報研究」第46号、「融像式を用いたズーミング可能なステレオフォトビューア」広内 哲夫著、出版日は2012年1月)においても、両眼の視差を利用して、左眼用画像と右眼用画像に対する両眼の視差を利用して、被検者が融像により画像を知覚する際には、画像が遠ざかっているように感じながらも拡大されているように知覚できる技術が記載されている。
以上のように、融像に起因してSILO現象が生じるという知見を本発明者は得た。そして本発明者は、このSILO現象を眼鏡レンズに適用できないかという、これまでの当業者では誰も想到しなかった知見を得た。そして本発明者は、両眼用の一対の眼鏡レンズ各々に対し、インプリズムを備えさせることにより、図1(b)に示すようなLOの機能を発揮させるという前代未聞の知見を得た。
以下、インプリズムを備えさせることにより図1(b)に示すようなLOの機能を発揮させられる理由について簡単に、図2および図3を用いて説明する。図2は、装用者にとって正面視の方向であって両眼球の中央前方に物体を配置した際に、インプリズムにより装用者が知覚する物体の位置(言い換えると虚像の位置)を説明する概略上面図である。図3は、図2に加え、物体の大きさ(言い換えると虚像の大きさ)を説明する図である。なお、図2および図3においては、物体までの距離を400mm、虚像までの距離を400+dWmm、瞳孔間距離を32mm*2=64mmとしている。
図2に示すように、装用者は図2中の「物体」を両眼視することになる(実線)。しかしながら、眼鏡レンズにインプリズムが備わることにより、装用者の眼球は、輻輳とは逆方向に多少開散する方へ向いたとしても(破線)、物体を両眼視することが可能となる。
その結果、各眼の視線方向は図3に示すようになる。先ほども述べたように、脳内における融像は、各眼の視線が交わる箇所で行われる。その結果、「虚像」は、物体よりも遠ざかった箇所にて知覚される一方、物体の実像よりも拡大されて知覚される。
なお、虚像が実像よりも拡大されて知覚されるのは、インプリズムを備えさせる前と後とで視角が変わらない場合である。ただ、逆に言うと、装用者が眼鏡レンズを装用する前後において視角を含め諸々の条件を変動させなければ、インプリズムを備えさせることにより虚像が拡大されて知覚されることに変わりはなく、上記で挙げた本発明の効果を奏することに変わりはない。
(1−2.倍率変化の概算)
以下、インプリズムを備えた両眼用の一対の眼鏡レンズにより、虚像が実像よりも拡大される際の拡大倍率について説明する。なお、拡大倍率には、装用者ごとの輻輳や眼球回旋の度合いや装用者の脳内における融像も関係していることから、装用者ごとの個人差が存在する。その一方で、可能な限り本実施形態を詳細に説明すべく、以下、一つの模範的なモデルケースを挙げて、拡大倍率について図4を用いて説明する。
図4は、図3に各符号を加えた図である。各符号の意味は以下の通りである。
I:虚像の水平方向の大きさ(mm)
O:実像(物体)の水平方向の大きさ(mm)
W:装用者にとって正面視の方向における、眼球中心と実像との間の距離(mm)
dW:装用者にとって正面視の方向における、実像と虚像との間の距離(mm)
H:瞳孔間距離の半値(mm)
h:虚像と実像との間の水平方向のずれ量(mm)
L:眼球中心と実像の中央部分との間の距離(mm)
P:インプリズムの量(Δ)
なお、1Δは、光がプリズムにより1m先で水平方向に1cmずれることを意味する。以下の式である(式1)〜(式8)に関してのみ、プリズム量に関しては、インプリズムを正、アウトプリズムを負とする。
また、上記のh(ずれ量)は、後述の内寄せ量と符号が同じであるが、意味は異なる。以下の(式1)〜(式8)に関してのみ、hを虚像と実像との間の水平方向のずれ量と規定する。
まず、図4より、以下の式が成り立つ。
I:O=W+dW:W ・・・(式1)
(式1)を変形すると、以下の式になる。
I/O=1+dW/W ・・・(式2)
ここでβを拡大倍率(=I/O)とすると、(式2)は以下の式になる。
β=1+dW/W ・・・(式3)
一方、Pについてはプレンティスの公式より、以下の式が導き出せる。
P=(h/10)[cm]/(L/1000)[m]
=100*h/L ・・・(式4)
(式4)を、hについて変形し、L≒Wとすると以下のようになる。
h=W*P/100 ・・・(式5)
また、Hとhとは以下の関係を有している。
H:h=W+dW:dW ・・・(式6)
(式6)を変形すると、以下の式になる。
dW=W*h/(H−h) ・・・(式7)
(式3)および(式7)より、以下の式が導き出せる。
β=H/(H−h)=H/{H−W*P/100} ・・・(式8)
上記の(式8)により、模範的な例ではあるものの、拡大倍率の概算を算出することが可能となる。
例えば、H=32mm、W=400mm、P=1Δとすると、β=1.14となる。これはつまり、装用者が当該一対の眼鏡レンズを装用することにより、物体を10%程度大きく視覚することができることを意味する。もちろん上記の(式8)は幾何学的な関係のみを用いて導いた式であるから、この式から融像によって知覚する像の大きさの全てを説明できるわけではないが、像の拡大縮小に関する関係自体は説明可能と考えられる。
以上が本発明の技術的思想に焦点を当てた説明である。以下、本発明の一具体例である一対の眼鏡レンズについて説明する。
<2.両眼用の一対の眼鏡レンズ>
本実施形態の態様の一つは、両眼用の一対の眼鏡レンズである。一対の眼鏡レンズである理由としては、先ほど述べたように、意図的に両視線に視差を生じさせた上で両眼視により生じる融像を巧みに利用し、物体を拡大した虚像を装用者に知覚させるためである。各眼鏡レンズは、物体側の面(外面)と眼球側の面(内面)とが組み合わされて構成されるレンズである。なお、以下に記載が無い構成については、適宜公知の眼鏡レンズの構成を採用しても構わない。
なお、本実施形態における一対の眼鏡レンズは視力矯正用であれば特に限定は無い。つまり、所定の距離を見るための一つの領域が単に設けられた単焦点レンズ、単焦点レンズでありながらも当該領域から離れるに従って度数が変化する単焦点レンズ、小玉を設けた二重焦点レンズ、または、度数が連続的に変化する部分(いわゆる累進部)を備えた累進屈折力レンズであっても構わない。
また、累進屈折力レンズにおいても、遠用部および近用部を備える累進多焦点レンズであっても構わないし、遠用部ではなく中間部(例えば400cm〜40cmの距離の物体を見るための部分)および近用部を備える累進多焦点レンズ(いわゆる中近レンズ)であっても構わないし、近用部および更に近い物体(例えば100cm未満の距離)を見るための近用部を備える累進多焦点レンズ(いわゆる近近レンズ)であっても構わない。
ただ、本実施形態の各眼鏡レンズには、有限距離の物体を見るための部分が備わっている。これは、本発明の知見として述べたように、物体を拡大視するというニーズが、有限距離にある物体を見る際に増大することが関係するが、特に、先に述べたSILO現象は輻輳の度合いにより生じることにも関係する。つまり、遠方視しかできない眼鏡レンズの場合、SILO現象とは関連性が薄くなり、上述のような虚像の拡大視覚効果を望めない可能性があるため、本実施形態の各眼鏡レンズには、有限距離の物体を見るための部分が備わっている。
なお、上記に列挙した眼鏡レンズに対し、乱視処方を反映させた乱視度数を備えさせた形状であっても構わないし、斜視、斜位、固視ずれ等、装用者の症状を矯正するための処方プリズムを、上記のインプリズムとは別に設けた眼鏡レンズであっても構わない。
(2−1.眼鏡レンズの構成)
本実施形態における大きな特徴の一つが、有限距離の物体を見るための部分を通して装用者が当該物体を見ると、当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状が当該部分に備わっていることである。別の言い方をすると、視線に沿った光線を当該物体とは異なる方向に向かわせるインプリズムの形状が当該部分に備わっている。
なお、有限距離の物体を見るための部分は、近用部であるのが好ましい。先ほど述べたように、近方視を行うことにより輻輳が生じるため、虚像を拡大して知覚させることがより確実になるためである。以降、当該部分が近用部である場合を例示する。
ただ、もちろん、当該部分は近用部ではなく中間部であっても構わないし、更に近い物体を見るための近用部であっても構わない。
ちなみに、インプリズムを備えた際の、各眼鏡レンズにおける有限距離の物体を見るための部分の具体的な形状としては、特に制限は無い。すなわち、内面の形状全体を一律に傾けてインプリズムを備えさせても構わない。また、近用部に対してのみ、部分的に内面の形状を一律に傾けてインプリズムを備えさせても構わない。逆に、内面の形状全体に対し、プリズムの量が連続的に変化するようにインプリズムを付加しても構わないし、近用部に対してそのようなインプリズムの付加を行っても構わない。
なお、度数が連続的に変化する部分を備える単焦点レンズや、遠用部と近用部と累進部を備える累進屈折力レンズにおいて、好ましいインプリズムの付加の態様が存在する。この態様については、[実施の形態2]にて述べる。
なお、備えられるインプリズムの量については、両眼視の際に、実像よりも虚像が拡大して視覚可能であれば特に限定は無い。
また、両眼視の際に、融像により拡大視自在である限り、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対し、異なる量のインプリズムの形状を備えさせても構わない。ただ、両眼視の際のバランスをより良好とするためには、各々の眼鏡レンズのインプリズムの量の差が0.25Δ以下(更に好ましくは同量)のインプリズムの形状を、眼鏡レンズの各々に備えさせるのが好ましい。
以降、各々の眼鏡レンズのインプリズムの量を等しくした場合について例示する。また、本明細書だと主に眼鏡レンズ単体についての説明を行うが、特記の無い限り、以降の説明の内容を、左眼用の眼鏡レンズと右眼用の眼鏡レンズとに対して等しく適用するものを例示するものとする。
(2−2.従来との相違)
特許文献1にせよ、その他のプリズムを眼鏡レンズに備えさせた文献にせよ、プリズムを備えさえた目的は、視線を物体の方向に向かわせることにある。これは、装用者が物体を明瞭に見られるようにすることを目指す以上、単焦点レンズや累進屈折力レンズなど眼鏡レンズの種類を問わず、プリズムを入れるための大前提となる目的である。少なくとも、意図的に、当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるべく、処方プリズムとは異なるプリズムを備えさせた眼鏡レンズについては未だに知られていない。
それに対し、先ほどから述べているように、本実施形態においては、SILO現象を眼鏡レンズでも実現させるべく、一対の眼鏡レンズの各々にインプリズムを備えさせ、意図的に両眼の視線に視差を生じさせている。これにより、実像よりも拡大された虚像を装用者に知覚させることが可能となる。
(2−3.特定方法)
なお、本実施形態におけるインプリズムが眼鏡レンズに備わっているか否かについては、一義的に判別することが可能である。装用者の手元に届く眼鏡レンズには例外なく、処方値が記載されたレンズ袋が添付されている。このレンズ袋には、もちろん処方プリズムについての情報も記載されている。また、レンズ袋に情報が無い場合であっても、眼鏡レンズそのものにマークとして情報が記載されている。
結局のところ、眼鏡レンズに対してプリズム量を調べた結果、インプリズムであり、しかも、レンズ袋に記載された処方プリズムと異なる値である場合だと、当然に、実際の視線方向は処方プリズムが想定する視線方向と異なることになり、当該眼鏡レンズは本発明の技術的思想が反映されていることになる。
[実施の形態2]
<3.インプリズムの形状に関する好ましい例>
本実施形態においては、インプリズムの形状に関する好ましい例について主に述べる。なお、上記の実施形態と重複する内容は、適宜省略する。
以下、本実施形態に関し、以下の順序で説明する。
3−1.正面視の際の開散への対応
3−2.意図せぬアウトプリズムへの対応
なお、本実施形態に係る眼鏡レンズは、眼鏡レンズにて度数が連続的に変化する部分(累進部)を備えたものであれば、特に限定されない。例えば、本実施形態に係る眼鏡レンズは、遠く(例えば無限遠〜400cm)を見るための遠用部および近く(例えば100cm以下)を見るための近用部を備えるいわゆる累進多焦点レンズや、所定の距離を見るための一つの領域から離れるに従って度数が変化する、プラス度数を備えた単焦点レンズであっても構わない。もちろん、外面に累進面が存在する外面累進レンズであっても、内面に累進面が存在する内面累進レンズであっても、また両面において度数の変化を分配した両面累進レンズであっても構わない。
以降、説明の便宜上、累進多焦点レンズであって内面累進レンズ(外面は球面)を例示して説明する。
(3−1.正面視の際の開散への対応)
先ほど述べたように、ちなみに、インプリズムを備えた際の、各眼鏡レンズにおける有限距離の物体を見るための部分の具体的な形状としては、特に制限は無い。
その一方、累進屈折力レンズの場合、上記のようなインプリズムの一律な付加よりも、遠用度数測定点、プリズム度数測定点、またはフィッティングポイントよりも下方に対して上記のようなインプリズムを備えさせるのが好ましい。もちろん、当該インプリズムは、処方プリズムとは別に用意されたプリズムである。従来の眼鏡レンズとは異なり、当該インプリズムにより、両眼視の際に視差が生じることになることは、先ほど述べた通りである。
上記の例が好ましい理由は、以下の通りである。
例えば、遠用部、近用部および累進部を備えた累進屈折力レンズに対し、全ての部分に対して一律にインプリズムを付加させる場合を考える。その場合、図5に示すように、装用者が眼鏡レンズの遠用部を通して遠方の物体を見ると、眼鏡レンズを装用していなければ両視線が平行となり自然な視線となるところ、インプリズムが入っているため、両眼が過度に開散するような視線を装用者に強いることになる。つまり、上記の場合だと、確かに、近用部または累進部を通して物体を見る際には、有限距離にある物体を見るため、上述の虚像の拡大視覚効果すなわち本発明の効果を享受することができる。その一方、装用者が遠用部を通して物体を見ると、意図せぬ開散を強いてしまい、余分な疲労を与えてしまうことになりかねない。
しかしながら、遠用度数測定点、プリズム度数測定点、またはフィッティングポイントよりも下方に対して上記のインプリズムを備えさせることにより、両視線が平行となる遠用部においては、両眼視の際に視差を生じさせずに済む。その結果、装用者が遠用部を見る際、両視線が平行となり自然な視線となる。その一方で、装用者が有限距離にある物体を見る際には、物体を拡大して虚像を視覚することが可能となる。
(3−2.意図せぬアウトプリズムへの対応)
累進多焦点レンズにおいては、度数が連続的に変化する際の基準となる線として主注視線もしくは子午線(以降、「主注視線」を例示する。)と呼ばれる線が設定されている。
本明細書における主注視線とは、その名の通り、装用者が眼鏡レンズを装用して上方から下方へと視線を移した際に、眼鏡レンズにおいて視線が通過する部分が集まって形成される線を指す。この主注視線は、眼鏡レンズを設計する際の基礎となる。
特許文献1の図1等に示されるように、眼鏡レンズの上方から下方に向けて主注視線に着目したとき、眼鏡レンズの下方においては装用者の鼻の側(インの水平方向)に向けて主注視線が曲がっている。これは、上方から下方に視線を移すときの、両眼が同時に鼻の側を向く眼球の動き(すなわち輻輳眼球運動)に起因する。下方に視線を向けると視線が内寄りに変化し、主注視線もその変化に倣っている。
主注視線が内寄りになっているということは、眼鏡レンズを平面視した際に、眼鏡レンズの上方頂点と下方頂点とを結ぶ垂直線上に、主注視線が常に存在するというわけではないことを意味する。このことにより、眼鏡レンズに備わっていないはずのプリズム効果が発現してしまう。
このことについて図6を用いて説明する。図6の左側の分布図は、物体側の面(外面)に累進面が形成され、眼球側の面(内面)を球面としたいわゆる外面累進レンズであって、球面度数(S)を0.00D、乱視度数(C)を0.00D、加入度数(ADD)を3.50Dとした眼鏡レンズにおける面平均度数を示す。分布図の右側には、分布図の各該当部分における眼鏡レンズの水平断面形状を示す。
点Fは、主注視線上の点であって遠用部に存在する点(例えば遠用度数測定点)である。点Fを通過するように水平線A−A’で眼鏡レンズを断面視した場合、点Fにおける外面の接線と内面の接線との傾きに、差はほとんど生じていない。
その一方、点Nは、主注視線上の点であって近用部に存在する点(例えば近用度数測定点)である。先ほども述べたように、輻輳眼球運動に起因し、近用部においては主注視線が鼻の側(インの水平方向)に曲がっている。その結果、点Nを通過するように水平線B−B’で眼鏡レンズを断面視した場合、断面視の際の眼鏡レンズの頂点から点Nが外れてしまい、点Nにおける外面の接線と内面の接線との傾きに差が生じる。この傾きの差により、視線に沿った光線が屈折することになる。つまり、本例においては、輻輳を加味して主注視線を設定することにより、意図せぬプリズムを眼鏡レンズの近用部の主注視線上において生じさせてしまうことになる。
更に悪いことに、上記の意図せぬプリズムは、視線に沿った光線を装用者の耳の側(アウトの水平方向)へと屈折させるアウトプリズムとなっている。意図せぬアウトプリズムが発生すると、装用者の眼に対して、より大きな輻輳を強いることになる。これについて、図7を用いて説明する。図7は、装用者がアウトプリズムから受ける影響を示す概略上面図である。装用者が物体を近方視する際、アウトプリズムが生じなければ、破線のように眼球を過度に内寄せせずとも済む。しかしながらアウトプリズムが生じることにより、物体を視認するためには実線の視線にしなければならない。そうなると破線に比べ、両眼とも眼球を過度に内寄せすることになる。これは、装用者の眼に対して、より大きな輻輳を強いることを意味する。この余分な輻輳により、装用者に対して余分な疲労を招来しかねない。
これまで、度数が連続的に変化する部分(例えば累進部)を備えた眼鏡レンズにおいては、装用者の眼の前の物体と装用者との間の距離(すなわち前後方向の距離)に応じて装用者が眼を調節することに着眼点が主に置かれていた。しかしながら本発明者の鋭意検討により、装用者の輻輳(すなわち左右方向であり水平方向の距離)が、装用者にとっての装用感に大きく影響を与えているのではないか、という知見が得られた。
なお、図6では外面累進レンズを例に挙げたが、内面に累進面が存在する内面累進レンズであっても、また両面において度数の変化を分配した両面累進レンズ、更には両面累進レンズであって眼の特性に合わせた最適な設計を施した両面複合型累進レンズであっても、上方から下方に向けて眼鏡レンズに対してプラスの度数が備わることに変わりがない。そのため、図6で示したのと同様に、内面累進レンズであっても、更に言うと所定の距離を見るための一つの領域から離れるに従って度数が変化する、プラス度数を備えた単焦点レンズであっても、装用者の輻輳が加味された主注視線が通過する部分において意図せぬアウトプリズムが生じ得る。
以下、装用者にとっての眼球の輻輳量が、意図せぬアウトプリズムの量によってどのように変化するかについて述べる。
例えば、装用者にとっての眼球の輻輳量I(mm)は、大まかに下記の式で近似的に求められる。
I=H/{l×(1/V−D/1000)+1}・・・(式9)
ここでHは片眼瞳孔間距離(mm)、lは目的距離(mm)、Vは頂点間距離(mm)、Dは水平方向のレンズの屈折力(D)
その一方、意図せぬアウトプリズムは、プレンティスの公式を変形した以下の式(式10)により見積もることができる。なお、この変形についての詳細は、後述の(式11〜13)で述べる。
P=ADD*h/10 ・・・(式10)
ここで、Pはプリズム量(Δ)、hは眼鏡レンズの水平断面形状の頂点から主注視線上の点(例えば図6の点N)との間の水平距離(mm)であり、hの絶対値は、眼鏡レンズにおけるいわゆる内寄せ量に該当する。なお、以降、hの符号は、眼鏡レンズの水平断面形状の頂点(本例においては眼鏡レンズの上方頂点から下方頂点を結ぶ上下直線(鉛直線))から見て鼻側を正、耳側を負とするが、プラスの符号については以降省略する。また水平断面形状の頂点は、2つの隠しマークを通る直線に垂直で、かつ2つの隠しマークを結ぶ線分の中点を含む平面が、水平断面形状と交わる点として規定できる。なお、図6の点Nにおけるhは2.51mmである。
(式10)を見ると、意図せぬアウトプリズムは、加入度(ADD)が大きいほど大きくなることがわかる。
遠用の処方度数としてSが0.00の単焦点レンズを掛けている人の場合、35cm先の近方物体を見る際に必要となる輻輳量は、片眼瞳孔間距離を32mm、頂点間距離を27mmとして、(式9)より2.29mmと見積もれる。
一方、同じ人がSを0.00,ADDを3.50Dとした累進屈折力レンズを掛けて、35cm先の近方物体を見る際に必要となる輻輳量は、近用部の水平方向のレンズの屈折力を3.50Dと近似すれば、2.51mmとなる。
つまり、ADDを3.50Dとした場合だと、加入度がない場合に比べ、意図せぬアウトプリズムが増大し、その結果、約10%多く眼球を輻輳させなければならない。
そこで、本発明者は、上記の実施形態で挙げた物体の拡大視覚に加え、余分な輻輳を抑制する眼鏡レンズに関する技術を提供するという課題を新たに見出した。
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を行った。その結果、上記の意図せぬアウトプリズムを少なくとも一部相殺すべく、眼鏡レンズに対し、視線に沿った光線を装用者の鼻の側(インの水平方向)へと屈折させるインプリズムを備えさせるという構成を想到した。
その結果、本実施形態として想到した構成は、装用者の輻輳が加味された主注視線が通過する累進部の中の部分において生じ得るアウトプリズムを少なくとも一部相殺するインプリズムの形状が当該部分に備えるという構成である。
なお、主注視線は、先にも述べたように、眼鏡レンズにおいて視線が通過する部分が集まって形成される線を指す。そして、本実施形態においては、説明の便宜上、累進多焦点レンズにおける主注視線を、遠用度数測定点と近用度数測定点とを結ぶ線として定義する(後述の図8)。またこの定義は、実用上、実際のレンズの主注視線の位置を特定する際にも適用できる。
ただ、もちろん、本実施形態における相殺対象は、あくまで「眼鏡レンズにて度数が連続的に変化する部分であって装用者の輻輳が加味された主注視線が通過する部分において生じ得るアウトプリズム」である。別の言い方をすると、輻輳が加味され、主注視線はレンズの上方頂点から下方頂点を結ぶ上下直線(垂線)ではないという条件を満たすのならば、主注視線の形状(直線、曲線問わず)に限定は無い。そもそも、装用者に応じて主注視線の形状が変化する場合があることを鑑みると、本実施形態の眼鏡レンズを構成するものとして主注視線そのものの形状および位置を一義的に規定する必要はない。
話を元に戻すと、本実施形態においては、主注視線が鼻の側に曲がることによって意図せぬアウトプリズムが発生したとしても、そもそも眼鏡レンズの形状を、インプリズムを発揮可能な形状としておくことにより、アウトプリズムの悪影響を低減させることが可能となる。つまり、先んじて眼鏡レンズを、インプリズムを発揮可能な形状としておくことにより、輻輳により生じ得る意図せぬアウトプリズムを打ち消すことが可能となる。
上記のインプリズムは、上記のアウトプリズムを一部でも相殺できれば、従来に比べ、余分な輻輳を抑制することが可能となる。あくまで一例であるが、例えば、収差とのバランスを考えて50%の補正をしてもよい。ただ、相殺する割合は多い方が好ましいのは言うまでもない。そのため、上記のインプリズムは、上記のアウトプリズムの80%以上(更に言うと90%以上、特に95%以上)を相殺するのが好ましい。
なお、装用者の輻輳が加味された主注視線が通過する部分に生じる意図せぬアウトプリズムの量は、プレンティスの公式(式10)により見積もることが可能である。そして、見積もったアウトプリズムに応じてインプリズムの量も決定可能であり、そのインプリズムの量を眼鏡レンズに備えさせることにより本実施形態の眼鏡レンズが得られる。
上記の内容を数式で規定すると、以下のようになる。
まず、図8は、本実施形態における眼鏡レンズの概略平面図である。点Fは遠用度数測定点であり、点Nは近用度数測定点である。hは、先ほども述べたように、眼鏡レンズの水平断面形状の頂点から主注視線上の点(例えば図6の点N)との間の水平距離(mm)であり、点Fと点Nとの水平方向の距離(mm)でもある。hの絶対値は、眼鏡レンズにおけるいわゆる内寄せ量に該当する。また、点F’は、点Fから距離hだけ水平方向に離れた点である。本実施形態においては、点F’にて遠用部における水平方向のプリズム量を測定し、点Nにて近用部における水平方向のプリズム量を測定する。こうすることで、加入度とは別に処方された遠用度数によって発生するプリズム作用をキャンセルできるからである。そのため、本実施形態においては、点F’と点Nとの間のプリズム量を用い、意図せぬアウトプリズムを見積もるための数式を構築する。
まず、点F’および点Nにおけるプリズム量を求める。先に挙げたプレンティスの公式(式10)を応用すると、以下のようになる。
=D*h/10 ・・・(式11)
=D*h/10 ・・・(式12)
ここで、Pは点F’ひいては点Fのプリズム量(Δ)を示し、Pは点Nのプリズム量(Δ)を示す。なお、プリズム量に関しては、アウトプリズムを正、インプリズムを負とする。ただ、本明細書においては、インプリズムかアウトプリズムか明示しつつ、符号を省略することもある。その際、「アウトプリズムが増加」という表現を行う場合、アウトプリズムの度合いが増大しているという意味を指し、「アウトプリズムの量の絶対値が増加している」という意味を指す。
また、Dは遠用部における水平方向の度数(パワー)(D)を示し、Dは近用部における水平方向の度数(パワー)(D)を示す。
ここで、意図せぬアウトプリズムは、(P−P)で表される。そのため、特別なプリズムが入っていない従来の一般の累進多焦点レンズにおいては、以下の式が成り立つ。
−P=(D*h/10)−(D*h/10)
=(D−D)*h/10
=ADD*h/10 ・・・(式13)
意図せぬアウトプリズムの量(Δ)は(ADD*h/10)で見積もることができる。つまり、実際の眼鏡レンズにおいて測定される(P−P)が(ADD*h/10)よりも小さければ、意図せぬアウトプリズムの少なくとも一部が相殺されていることを表す。その結果、本実施形態の眼鏡レンズを以下の式で規定することも可能である。
−P<ADD*h/10 ・・・(式14)
この(式14)に加え、以下の(式14)を満たすのも好ましい。
|P−P−ADD*h/10|≧0.25 ・・・(式15)
(式15)の左辺は、「インプリズムの付加による、意図せぬアウトプリズムの減り具合」を示す。つまり(式15)は、処方としてのプリズムでいうところの1ステップ分(0.25Δ)以上、意図せぬアウトプリズムが相殺されていることを示す。なお、好ましくは、(式15)の左辺が0.25Δを超えた値とする。
ちなみに、本発明が対象とする眼鏡レンズにおいて「装用者の輻輳が加味された主注視線が通過する部分」(以降、単に「部分α」とも称する。)を規定するとすれば、あくまで一例ではあるが、実用上は遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分近傍の部分として規定しても問題ない。
また、部分αにおける眼鏡レンズの具体的な形状(本実施形態においては部分αにおける内面の具体的な形状)としては、以下の形状が挙げられる。すなわち、部分αの少なくとも一部において、インプリズムが眼鏡レンズの下方に向けて増加するように、部分αを水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかの形状を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に(徐々に)捩った形状を当該部分αに備えさせるのが好ましい。これは、両眼視における視差を連続的に(徐々に)増大させていくことを意味する。
詳しくは実施例の項目で述べるが、意図せぬアウトプリズムを考慮する前の累進面の光学レイアウト(後述の比較例3、図13(a)(b))に対し、遠用度数測定点Fもしくはプリズム度数測定点Pよりも下方の部分において、水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの内面形状を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩ったのが実施例3〜5であり、その中で以降例示する実施例3の光学レイアウトが図20(a)(b)である。
実施例3の図20(b)と比較例3の図13(b)との間では面平均度数に関しては相違が小さい。なぜなら、プリズムを付加したとしても、面の上方から下方にかけて水平断面形状を、主注視線上の点において水平断面形状の接線の傾きを連続的に傾きを変えた状態で累進面を構成するに過ぎず、累進面がもたらす平均的な度数自体にはさほど変動はないためである。ただ、もちろん、面形状を連続的に捩ったことに起因して、実施例3においては、図20(a)に示される面非点収差の分布図自体が、鼻の側の下方に若干偏っている。また、それに伴い、面非点収差の分布図は、実施例3と比較例3との間で大きく異なっている。
その一方、実施例3の眼鏡レンズの形状(カーブ)そのものを、部分αの側方において変形させたものが実施例6であり、実施例6と同様の設計条件で、内面形状捩り方を変えたのが実施例7、8である。以降、実施例6を例示する。実施例6においては、実施例3の眼鏡レンズの面の側方においてカーブ自体を変形させ、部分αの側方において、インプリズムの量を低く抑えている。だからこそ、実施例6の面非点収差の分布図(図23(a))においては、意図せぬアウトプリズムを考慮する前の累進面の面非点収差の分布図(比較例3、図13(a))と近似したレイアウトの面非点収差が得られる。その一方で、面の側方においてカーブ自体を変形させていることから、実施例6の面平均度数の分布図(図23(b))においては、近用部が下方に向かうに従って鼻の側に傾いている。
上記の内容について、以下、詳述する。
まず、実施例3に係る内容について述べる。上述の通り、意図せぬアウトプリズムを相殺すべく、眼鏡レンズにインプリズムを発揮する形状を備えさせる必要がある。これを実現するためには、先に挙げた図6で言うところの、主注視線上の点における外面の接線と内面の接線との傾きに差を生じさせる必要があり、しかもインプリズムを発揮する方向へと傾きを生じさせる必要がある。
そこで本実施形態の好ましい例においては、図6で言うところの主注視線上の点における外面の接線と内面の接線との間で傾きに差を生じさせるべく、部分αにおける遠用度数測定点Fもしくはプリズム度数測定点Pよりも下方の部分において、水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの内面形状を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩っていく。その際に、眼鏡レンズの内面において、主注視線上の点の接線が、鼻の側の方だと水平方向の断面視下方、耳の側の方だと水平方向の断面視上方となるように設定する。こうすることにより、眼鏡レンズの下方に向けて、連続的にインプリズムを増加させることが可能となり、そのようなインプリズムを眼鏡レンズに備えさせることが可能となる。上記の捩り形状は、本実施形態で例示する主注視線が、装用者の輻輳を反映させたために眼鏡レンズの下方に向けて鼻の側に徐々に曲がっていくことを考慮に入れた上の形状である。
上記で列挙した内容は部分αについての説明である。以下、部分α以外の部分の形状についても説明する。なおその際、図9および図10を用いて説明する。図9および図10は、眼鏡レンズにおいて主注視線が通過する部分αおよびその側方におけるインプリズムの制御の様子を示す概念図である。なお、説明の便宜上、図9および図10においては主注視線を直線で示している。これは主注視線をY軸に沿わせるための措置であって、主注視線が上下方向に直線状に延びていることを示すものではない。
本実施形態の一例として、本実施形態の眼鏡レンズにおける部分αから見てアウトの水平方向およびインの水平方向の部分においてもインプリズムの形状が備わっている。これは、部分αにインプリズムを備えさせたことに伴い、部分αの側方においても同様にインプリズムを備えさせた結果の形状である。図9で言うと、図9(a)→(b)→(c)へと、水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの内面形状全体を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩っていく。この形状は、水平方向の端から端まで同様にインプリズムを備えさせる形状を採用するため、眼鏡レンズに対する加工が比較的簡素となる。その結果、上記の構成を採用する場合、眼鏡レンズの製造効率が向上する。
なお、上記の内容は、後述の実施例3〜5に対応する。
ここで、上記の内容を、面屈折力の分布という面から規定することもできる。以下、説明する。図26は、後述の比較例3(参照例すなわちインプリズムを備える前のオリジナル累進面)での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(図26(a))および垂直方向の面屈折力の分布図(図26(b))へと分けた図である。
なお、同様の図を、後述の実施例3および実施例6についても図27および図30として設けている。
ここで水平方向および垂直方向の面屈折力の分布は以下のように求められる。
ある面が存在した場合に、面上の各点における最大最小の曲率およびその方向は一義的に決まる。面屈折力は曲率に屈折率の係数を掛けたものであるから、このことは面上の各点における最大最小の面屈折力とその方向は一義的に決まることと同義である。ここで最大、最小の面屈折力をそれぞれDmax、Dminとして、最大屈折力の方向をAXとすると、面上の各点における任意の方向(θ)の面屈折力は以下のオイラーの式で計算により求められる。
D=Dmax × COS2(θ-AX) + Dmin × SIN2(θ-AX) ・・・(式16)
水平方向の面屈折力は(式16)においてθ=0もしくは180、垂直方向の面屈折力はθ=90もしくは270を代入することにより求められる。このように水平および垂直方向の面屈折力を面上の各点において求めることにより、図21(a)および(b)のような図が得られる。
また(式16)の(Dmax + Dmin)/2は面平均度数を、|Dmax-Dmin|は面非点収差を表す。
インプリズムを備える前のオリジナル累進面における垂直方向の面屈折力の分布を示す図26(b)と、上記の内容に対応する実施例3の図27(b)とを比較すると、垂直方向の面屈折力の分布において大きく異なる。
なお、本例において、水平方向の面屈折力の分布に大きな差が生じていない理由としては、本例においてはあくまで水平方向にインプリズムを付与しているに過ぎず、眼鏡レンズの内面のカーブの形状自体に対して水平方向には変更を加えていないためである。しかしながら、垂直方向に見ると、カーブの形状が変化してしまっており、上記のような差が生じる。
ここで、図8の眼鏡レンズに付された(例えば刻印)された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る水平直線において垂直方向の面屈折力をプロットしたものを図33に示す。なお、図33の原点は上記の2つの隠しマークの中心を通る鉛直線と上記の水平直線が交わる点である。ただし、主注視線が通過する点は、原点から鼻の側の水平方向に0.9mm(ここでは−0.9mm)移動した点である。
後述の実施例3で説明するが、図33を見ると、主注視線が通過する点から+15mmの位置の面屈折力と、主注視線が通過する点から−15mmの位置の面屈折力とを比べると、比較例3と各実施例との間に大きな差が存在することがわかる。つまり、比較例3の場合、両者の間に屈折力の差は存在しない一方、実施例3においては鼻の側の方が、屈折力が高くなっている。これは、眼鏡レンズに備えさせるインプリズムの量を0.25Δとした場合(実施例3−1)、0.50Δとした場合(実施例3−2)であっても同様である。
なお、本例では図8で言うところの鼻の側が向かって左側となっている左眼用眼鏡レンズを例示しているからこのような結果となっているものの、右眼用眼鏡レンズだと逆の挙動を示す。そのため、比較例3と実施例3(ひいては本実施形態)との間の差を明確にしつつ本例を規定するならば、以下のように規定される。
・2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る水平直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上(好ましくは0.30D以上、より好ましくは0.60D以上)である。
なお、実施例3−1における上記の絶対値は0.38Dであり、実施例3−2における上記の絶対値は0.76Dである。
また、本例に対応する他の実施例4〜5に関しても、当該絶対値を規定する水平直線の配置を変化させた上で、上記のような規定を行っても構わない。例えば以下のような規定を設けても構わない。
・2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上(好ましくは0.40D以上、より好ましくは0.70D以上)である。
・2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D(好ましくは0.40D以上、より好ましくは0.80D以上)以上である。
なお、上記の各規定を単体で採用しても構わないが、本例の特徴を際立たせるためにも適宜組み合わせて採用するのが好ましい。
これに対し、本実施形態の別の一例として、図10に示すように、部分αの側方におけるインプリズムの量を抑える手法が挙げられる。具体的に言うと、部分αからアウトおよびインの水平方向へとインプリズムを小さくするという手法である。
確かに、意図せぬアウトプリズムを相殺するためにはインプリズムを備えさせるべきではあるが、部分αの側方においては水平方向のプリズムは歪みとして知覚されてしまう可能性がある。そのような可能性を排するためにも、部分αの側方においては水平方向のプリズム(インプリズム)の量を低く抑えておく必要がある。つまり、上記の例のように面形状を水平方向全体で捩った上で側方の捩りを元に戻す必要がある。このインプリズムの量の抑制を、眼鏡レンズにおける度数の変化(すなわち更なる面形状の変形)により実施した例が、本例である。具体的な構成としては、図10で言うと、図10(a)→(b)→(c)という形状変化が示すように、面の側方においてカーブ自体を水平方向に変形させる、という構成である。この構成によれば、意図せぬアウトプリズムの発生を抑制しつつも側方において歪みを低減させた眼鏡レンズを提供することができる。
なお、上記の内容は、後述の実施例6〜8に対応する。
先に挙げた実施例3に対応する内容と同様に、上記の内容を、面屈折力の分布という面から規定することもできる。以下、説明する。図30は、後述の実施例6での面屈折力の分布を、水平方向の面屈折力の分布図(図30(a))および垂直方向の面屈折力の分布図(図30(b))へと分けた図である。
インプリズムを備える前のオリジナル累進面における水平方向の面屈折力の分布を示す図26(a)と、上記の内容に対応する実施例6の図30(a)とを比較すると、水平方向の面屈折力の分布において大きく異なる。この理由としては、眼鏡レンズの内面のカーブの形状自体に対して水平方向に変更を加えたためである。
ここで、図8の眼鏡レンズに刻印された2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線において水平方向の面屈折力をプロットしたものを図36に示す。なお、図36は、先に挙げた図33(実施例3)に対応する、実施例6に係る図であり、図の中の諸々については説明を省略する。
後述の実施例6で説明するが、図36を見ると、主注視線が通過する点(垂直点線)から+5mmの位置の面屈折力と、主注視線が通過する点から−5mmの位置の面屈折力とを比べると、比較例3と実施例6との間に大きな差が存在することがわかる。つまり、比較例3の場合、両者の間に屈折力の差はほとんど存在しない一方、実施例6においては耳の側の方が、屈折力が高くなっている。これは、眼鏡レンズに備えさせるインプリズムの量を0.25Δとした場合(実施例6−1)、0.50Δとした場合(実施例6−2)であっても同様である。
なお、本例では図8で言うところの鼻の側が向かって左側となっている左眼用眼鏡レンズを例示しているからこのような結果となっているものの、右眼用眼鏡レンズだと逆の挙動を示す。そのため、比較例3と実施例6(ひいては本実施形態)との間の差を明確にしつつ本例を規定するならば、以下のように規定される。
・2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上(好ましくは0.20D以上、より好ましくは0.40D以上)である。
なお、実施例6−1における上記の絶対値は0.22Dであり、実施例6−2における上記の絶対値は0.50Dである。
また、本例に対応する他の実施例7〜8に関しても、当該絶対値を規定する水平直線の配置を変化させた上で、上記のような規定を行っても構わない。例えば以下のような規定を設けても構わない。
・2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上(好ましくは0.20D以上、より好ましくは0.40D以上)である。
・2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上(好ましくは0.20D以上、より好ましくは0.40D以上)である。
なお、上記の各規定を単体で採用しても構わないが、本例の特徴を際立たせるためにも適宜組み合わせて採用するのが好ましい。
この場合のインプリズムの付加量としては、上記の機能を奏するものであれば任意で構わない。ただ、現在のところ、本発明者の調べによれば、累進レンズの場合でかつレンズ上方(例えば遠用部)から下方(近用部)にかけてインプリズムを付加する際には、その付加量が2Δ以下であれば、装用者の個人差を考慮に入れたとしても、ほぼ確実に拡大視覚効果を得ることができるうえ、面の捩ることによって発生する収差や歪みの影響を最小限に抑えることができる。
ちなみに、上記で挙げた実施例3や実施例6で設定したプリズム量は、所望のβ(拡大倍率)および意図せぬアウトプリズムを所定の割合で相殺するという複数の内容を考慮に入れて決定されている。その一方で、所望のβ(拡大倍率)から決定されるプリズム量と、意図せぬアウトプリズムを所定の割合で相殺するためのプリズム量とを別途見積もっても構わない。そして2つのプリズム量を単純に加算したものをインプリズムの量としても構わないが、当該インプリズムの量が大きすぎる場合は、2つのプリズム量の各々に軽重を付けた上で加算しても構わない。いずれにせよ、先ほども述べたように、本発明者の調べによればインプリズムの量は2Δ以下ならば、装用者の個人差を考慮に入れたとしても、ほぼ確実に拡大視覚効果を得ることができるうえ、面の捩ることによって発生する収差や歪みの影響を最小限に抑えることができる。
[実施の形態3]
本実施形態においては、上述した「一対の眼鏡レンズ」に関する技術、すなわち眼鏡レンズの設計方法(製造方法)、眼鏡レンズ供給システム、および、眼鏡レンズ供給プログラムについて説明する。
以下、本実施形態に関し、以下の順序で説明する。
4.両眼用の一対の眼鏡レンズの設計方法(製造方法)
4−1.準備工程
4−2.設計工程
4−3.製造工程
5.両眼用の一対の眼鏡レンズ供給システム
5−1.受信部
5−2.設計部
5−3.送信部
6.両眼用の一対の眼鏡レンズ供給プログラム
<4.両眼用の一対の眼鏡レンズの設計方法(製造方法)>
以下、本実施形態における眼鏡レンズの設計方法(製造方法)について述べる。なお、以降の記載において、上記の各実施形態と重複する部分については記載を省略する。また、以降の記載において、記載の無い内容については、公知の技術を採用しても構わない。例えば、WO2007/077848号公報に記載の眼鏡レンズの供給システムについての記載の内容を適宜採用しても構わない。
(4−1.準備工程)
本工程においては、後の設計工程を行うための準備を行う。当該準備としては、まず、眼鏡レンズを設計する際に必要な情報を取得することが挙げられる。眼鏡レンズに係る情報としては、レンズアイテムに固有のデータであるアイテム固有情報と、装用者に固有のデータである装用者固有情報とに大別される。アイテム固有情報には、レンズ素材の屈折率nや、累進帯長に代表される累進面設計パラメータ等に関する情報が含まれる。装用者固有情報には、遠用度数(球面度数S、乱視度数C、乱視軸AX、プリズム度数P、プリズム基底方向PAX等)や、加入度数ADDや、レイアウトデータ(遠用PD、近用PD、アイポイント位置等)、フレーム形状、フレームと眼の位置関係を表すパラメータ(前傾角、そり角、頂点間距離等)等に関する情報が含まれる。
(4−2.設計工程)
次に、本工程において、眼鏡レンズに係る情報に基づいて、眼鏡レンズの設計を行う。その際、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々には有限距離の物体を見るための部分(例えば近用部)が備わり、装用者が近用部を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせる。
設計方法としては眼鏡レンズにプリズムを備えさせる公知の設計手法を採用しても構わない。例えば、眼鏡レンズに係る情報に基づいて、視差を生じさせる本実施形態のインプリズムを付加する前のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報を作成しておく。その上で、事前設計情報に対し、インプリズムを付加する設計を行っても構わない。
なお、上記のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報は、準備工程において入手しておいても構わない。
上記の設計工程をステップごとに記載すると、例えば以下のようになる。
(4−2−1.事前設計情報の入手ステップ)
本ステップにおいては、上記のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報を予め入手しておく。
(4−2−2.備えさせるインプリズムの量の決定ステップ)
本ステップにおいては、インプリズムの量を決定する。決定手法としては、例えば上記の(式8)において目標となるβ(拡大倍率)を決定し、逆算してPを決定しても構わない。その際に、両眼用の眼鏡レンズの各々にどの程度の量のインプリズムを備えさせるか(例えば同量とするのか差を設けるのか)についても決定しておく。
(4−3.製造工程)
本工程では、設計工程の結果に基づいて眼鏡レンズを製造する。具体的な製造方法に関しては、公知の手法を採用しても構わない。例えば、設計工程により得られた設計データを加工機に入力し、レンズブランクに対して加工を行い、眼鏡レンズを製造しても構わない。
なお、上記の工程以外(例えば洗浄工程やコーティング等)の工程を、必要に応じて適宜追加してももちろん構わない。
また、本実施形態は、両眼用の一対の眼鏡レンズの設計方法(製造方法)である。上記で述べた工程は、一対の眼鏡レンズのうちの一つに関するものである。そのため、別の眼鏡レンズに対しても上記の各工程を行う。なお、眼鏡レンズの各々に備えさせるインプリズムを最初から同量に設定しておいても構わない。
それ以外の内容としては、例えば、[実施の形態2]で述べた内容を、本実施形態の設計工程に適用しても構わない。以下、説明する。
設計工程の際、上記の部分α(すなわち眼鏡レンズにて度数が連続的に変化する部分であって装用者の輻輳が加味された主注視線が通過する部分)において生じ得る意図せぬアウトプリズムを少なくとも一部相殺するインプリズムの形状を当該部分に備えさせる。
設計方法としては、例えば、眼鏡レンズに係る情報に基づいて、意図せぬアウトプリズムを考慮する前のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報を作成しておく(後述の比較例3)。その上で、事前設計情報に対し、上記で挙げた後述の実施例3〜5に対応する手法(面形状の捩り)や、後述の実施例6〜8に対応する手法(面形状を捩った上で側方の捩りを元に戻す)を適用し、部分αおよび側方の部分ならびにそれ以外の部分を設計しても構わない。
なお、上記のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報は、準備工程において入手しておいても構わない。
上記の設計工程をステップごとに記載すると、例えば以下のようになる。図11に、本実施形態における設計工程を概略的に示したフローチャートを示す。
(4−2−1.事前設計情報の入手ステップ)
本ステップにおいては、上記のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報を予め入手しておく。
(4−2−2’.意図せぬアウトプリズムの量の算出ステップ)
本ステップはあくまで行うのが好ましいステップに過ぎないが、事前設計情報から、眼鏡レンズの内面における各点での意図せぬアウトプリズムの発生量は、上記のプレンティスの公式(式10)により見積もることができる。本ステップは例えば設計部の中の演算手段により算出することが可能であるし、例えば外部のサーバやクラウドによりアウトプリズムの発生量を演算しても構わない。
(4−2−3’.備えさせるインプリズムの量の決定ステップ)
本ステップはあくまで行うのが好ましいステップに過ぎないが、先のステップにより得られた意図せぬアウトプリズムの量に対応して備えさせるインプリズムの量を算出する。なお、意図せぬアウトプリズムのうち何%を相殺させるかを最初に設定しておき、その設定に応じ、インプリズムの下方への増加量を決定しても構わない。
先の(4−2−2’.意図せぬアウトプリズムの量の算出ステップ)を行っていない場合は、予め決定してあった量のインプリズムを眼鏡レンズに備えさせる設計を行うことになる。その場合、ここで改めて(4−2−2’.意図せぬアウトプリズムの量の算出ステップ)を行う。そして、予め決定してあった量のインプリズムと算出した意図せぬアウトプリズムの量とを比較して、少なくとも部分αにおいて意図せぬアウトプリズムを十分に相殺できているかを判定する(4−2−4’.判定ステップ)。
その結果、相殺度合いが十分であれば、設計工程を終了し、製造工程へと移行する。その一方、相殺度合いが十分でなければ、一定量のインプリズムを追加した上で、追加後のインプリズムの量と意図せぬアウトプリズムの量とを比較し、判定する。相殺度合いが十分となるまでこの判定を繰り返す。
なお、先ほど述べたように、所望のβ(拡大倍率)および意図せぬアウトプリズムを所定の割合で相殺するという複数の内容を考慮に入れてプリズム量を決定しても構わないし、所望のβ(拡大倍率)から決定されるプリズム量と、意図せぬアウトプリズムを所定の割合で相殺するためのプリズム量とを別途見積もっても構わない。
その場合、上記の(4−2−4’.判定ステップ)においては、上記の例とは逆に、予め所望のβ(拡大倍率)のみを設定しておき、意図せぬアウトプリズムの量を所望の度合い相殺可能なインプリズムの量を算出し、(式8)を用いて当該インプリズムの量からβ’を算出したとき、β’が所望のβ以上(または所定の範囲、例えば0.8*β≦β’≦1.2*β)となっているかどうかを判定しても構わない。
上記の構成により、物体を拡大して視覚可能な眼鏡レンズであって、意図せぬアウトプリズムを少なくとも一部相殺可能な眼鏡レンズを製造することが可能となる。
<5.両眼用の一対の眼鏡レンズ供給システム>
以下、本実施形態における眼鏡レンズ供給システムについて述べる。なお、本実施形態の眼鏡レンズ供給システムには、以降に述べる各部を制御する制御部が備わっている。なお、本実施形態においては、制御部を含む各部が、眼鏡レンズの設計メーカー側に備え付けられたコンピュータ(設計メーカー側端末30)に設けられる例について説明する。図12は、本実施形態における眼鏡レンズ供給システム1を概略的に示したブロック図である。
(5−1.受信部31)
受信部31においては、眼鏡店側端末20の情報記憶部21ひいては送受信部22から眼鏡レンズに係る情報を、公衆回線5を介して受信する。当該情報は上記の通りである。なお、当該情報には、上記のオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報を含めても構わない。当該情報は、通常、眼鏡店側に備え付けられたコンピュータ(眼鏡店側端末20)の入力手段により入力される情報である。もちろん、眼鏡店側端末20以外の場所(例えば外部のサーバやクラウド4)から当該情報を適宜引き出しても構わない。
(5−2.設計部32)
設計部32においては、眼鏡レンズに係る情報に基づいて、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を近用部に備えさせる。眼鏡レンズの光学レイアウトを設計することになるため、設計部32には光学パラメータを算出するための演算手段321が備わっているのが好ましい。ただ、眼鏡店側端末20以外の場所から引き出した情報の中に、インプリズムを付加する前の光学レイアウトが存在する場合、極端に言うと、設計部32ではインプリズムを当該光学レイアウトに付加することのみを行っても構わない。また、[実施の形態2]で述べた好ましい例であって先ほど述べた好ましい例としての設計工程の内容を、本構成により行っても構わない。
なお、具体的な設計手法に関しては、<4.両眼用の一対の眼鏡レンズの設計方法(製造方法)>で述べた通りである。
(5−3.送信部34)
送信部34においては、設計部32により得られる設計情報を送信する。なお、送信先としては眼鏡店側端末20が挙げられる。設計情報(更に言うと当該設計情報を面非点収差分布図や平均度数分布図によりビジュアル化したもの)を眼鏡店側に送信し、眼鏡店側で当該設計情報を確認し、問題が無ければ、眼鏡レンズを製造するメーカーへと当該設計情報を送信し、眼鏡レンズの製造を依頼する。なお、設計メーカーが眼鏡レンズの製造も行うことが可能な場合、眼鏡店側端末20から設計メーカー側端末30へと眼鏡レンズの製造を依頼する旨の情報を送信する。
ちなみに、同一の装置内に、送信部34と眼鏡レンズの加工機(図示せず)とが存在する場合、眼鏡レンズ供給システム1は眼鏡レンズ製造装置と呼んでも差し支えない。
なお、上記の各部以外の構成を、必要に応じて適宜追加してももちろん構わない。例えば、<4.両眼用の一対の眼鏡レンズの設計方法(製造方法)>で述べたように、目標となるβ(拡大倍率)からPを逆算する演算部(図示せず)や、意図せぬアウトプリズムの量を見積もる演算部(図示せず)を別途設けても構わないし、設計部32における演算手段321により上記の演算を行っても構わない。その結果得られたインプリズムの量(場合によっては拡大倍率βに対応するインプリズムの量を足した量)を設計部32に送信し、当該インプリズムの量を反映した設計情報を設計部32から得ても構わない。また、上記の判定ステップを行う判定部33を設けても構わない。この判定部33は設計部32の一部の構成としても構わない。
<6.両眼用の一対の眼鏡レンズ供給プログラム>
先に述べた眼鏡レンズ供給システム1を稼働させるためのプログラムおよびその格納媒体にも、本実施形態の技術的思想が反映されている。つまり、コンピュータ(端末)を、少なくとも受信部31、設計部32および送信部34として機能させるプログラムを採用することにより、最終的に、眼鏡レンズを装用することにより物体を拡大して視覚自在な眼鏡レンズを供給することが可能となり、好ましくは余分な輻輳を抑制する眼鏡レンズを供給することが可能となる。
[まとめ]
本実施形態によれば、両眼用の一対の眼鏡レンズ各々に対し、処方プリズムとは別にインプリズムを備えさせる。それにより、眼鏡レンズを視線が通過した際に、意図的に両眼の間で視差を生じさせる。その上で、両眼視の際に、装用者の脳内で行われる処理であって各眼から入射した各々の物体像の融合(すなわち融像)を利用し、装用者に対し、物体の像を拡大して視覚させられる。
その結果、装用者の年代が高くなればなるほど、眼鏡レンズを装用した際に物体を拡大して見たいというニーズであって、特に、有限距離にある物体を見る際に増大する当該ニーズを満たすことができる。
しかも、当該ニーズに対し、別途拡大鏡(ルーペ)を用意せずとも済む。そのため、装用者にとっては眼鏡フレームの選択の自由度が広がり、しかも両眼用の一対の眼鏡レンズを作製することにより、上記のニーズを満たすことができる。その結果、費用が嵩むことを抑制でき、リーズナブルな価格で一対の眼鏡レンズを装用者に提供できる。
更に、好ましい例によれば、遠用度数測定点、プリズム度数測定点、またはフィッティングポイントよりも下方に対して上記のインプリズムを備えさせることにより、両視線が平行となる遠用部においては、両眼視の際に視差を生じさせない。その結果、装用者が遠用部を見る際、両視線が平行となり自然な視線となる。その一方で、装用者が有限距離にある物体を見る際には、物体を拡大して虚像を視覚することが可能となる。
更に、好ましい例によれば、主注視線が鼻の側に曲がることによって意図せぬアウトプリズムが発生したとしても、そもそも眼鏡レンズの形状を、インプリズムを発揮可能な形状としておくことにより、アウトプリズムの悪影響を低減させることが可能となる。つまり、先んじて眼鏡レンズを、インプリズムを発揮可能な形状としておくことにより、輻輳により生じ得る意図せぬアウトプリズムを打ち消すことが可能となる。その結果、余分な輻輳を抑制することが可能となる。
なお、余分な輻輳を抑制することにより、例えば装用者が累進部を有さない単なる単焦点レンズを装用していた場合、装用者が累進屈折力レンズに買い換えたとしても、違和感をさほど生じなくさせるという効果も奏する。
[変形例]
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
(眼鏡レンズ)
中近レンズや近近レンズの場合、装用者は手元の作業をしていることが想定されるので、細かな文字を見たり、細かな物を扱ったりする状態、あるいは常に輻輳している状態になるので、中近レンズや近近レンズの場合の方が、本発明がもたらす効果は絶大となる。
ちなみに、中近レンズや近近レンズの場合、上記の(式14)および(式15)における遠用部は、特定距離を見るための部分(例:遠用度数測定点F→特定距離用度数測定点)と言い換えればよく、近用部は当該特定距離よりも近い距離を見るための領域となる。
また、[実施の形態2]において、所定の距離を見るための一つの領域から離れるに従って度数が変化する、プラス度数を備えた単焦点レンズの場合であっても、上記の場合で言うところの例えば遠用部(遠くを見るための領域であって安定して度数が略一定となる領域)が存在しなくなるだけであり、眼鏡レンズの下方に向けてプラス度数が付加される累進部が存在することに変わりはない。また、遠用度数測定点が存在しなくとも、眼鏡レンズ上の所定の位置において所定の度数が確保できているか確認するという意味での度数測定点を、上記で言うところの「特定距離を見るための部分における度数測定点」と言い換えても構わない。
また、上記のような単焦点レンズの場合、遠用部が存在しないことから、遠用度数測定点も存在せず、ひいては、上記の内面累進レンズにて定義した「主注視線」も、名目上は存在しないことになる。しかしながら上記の単焦点レンズを装用しても輻輳が生じることに変わりはなく、そのため意図せぬアウトプリズムの問題が生じることに変わりはない。そのため、上記のような単焦点レンズに対してであっても、上記の場合と同様の手法でインプリズムを備えさせることが可能である。実用上、主注視線を特定するための方法としては、上記「特定距離を見るための部分における度数測定点」を仮の遠用度数測定点とし、その点と近用度数測定点Nを結ぶ線分を主注視線として特定することになる。
(捩り形状)
[実施の形態2]においては内面累進レンズの場合を挙げたため、内面の形状を捩る場合について例示した。その一方、水平方向に眼鏡レンズを断面視した際に主注視線が通過する部分における外面の接線と内面の接線との間の傾きに差が生じていればプリズム効果が奏することになる。そのため、外面の形状を眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩っても構わないし、両面を連続的に捩っても構わない。
また、[実施の形態2]においては遠用度数測定点Fまたはプリズム度数測定点P近傍から下方へと面形状を連続的に捩り、連続的にインプリズムを増加させる例について挙げたが、面形状を連続的に捩っていくのではなく、例えば内面の形状全体を一律に傾けることによって、インプリズムを生じさせても構わない。ただ、輻輳は下方に向けて徐々に鼻の側に曲がっていくこと、側方だと水平方向のプリズムは歪みとして認識されやすいことから、先に挙げた捩り方の方が好ましい。
また、先に挙げた捩り方を、部分αの一部に適用しても構わない。結局のところ、意図せぬアウトプリズムの少なくとも一部を相殺できれば構わない。ただ、眼鏡レンズの形状のバランスを取るためにも、部分αの全体に対して先に挙げた捩り方を適用するのが好ましい。
更に言うと、仮に、度数が変動する部分が眼鏡レンズの一部を占めるにすぎず、当該一部でのみ度数が連続的に変化している場合、当該一部の部分のみ、上記のような形状を適用すればよい。そもそも意図せぬアウトプリズムが生じて装用者に大きな影響を与えるのは眼鏡レンズとしてプラスの度数となる部分である。そのため、当該部分αでさえアウトプリズムの少なくとも一部を相殺できればそれで構わない。
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本項目においては、先にも簡単に述べたように、まず、参照例として比較例を挙げる。以降に述べる各比較例においては、インプリズムを備える前の眼鏡レンズに係る例である。
それに対し、以降に述べる各実施例は、比較例に対し、装用者が近用部を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムを付加した形状の眼鏡レンズに係る例である。
以下、各例について説明する。
<比較例1(参照例)>
本例においては、老眼鏡用の単焦点レンズを一対作製した。各レンズのパラメータとしては、球面度数(S)を+1.50D、乱視度数(C)を0.00Dとした。その他のパラメータとしては、ベースカーブを4.00D、屈折率を1.60、プリズム処方はゼロ、中心肉厚は2.00mmとした。
その上で、先に挙げた図3および図4においてHやW等は[実施の形態1]で述べたのと同様の条件下(H=32mm、W=400mm)、(式8)が成り立つという仮定の基に、β(拡大倍率)を算出した。本例においては水平方向(イン方向もしくはアウト方向)のプリズム量がゼロなので、当然のことながらβ=1.00となった。
<実施例1>
比較例1(参照例)と同様のパラメータで、老眼鏡用の単焦点レンズを一対作製した。但し、本例においては、眼鏡レンズの各々に対して一律にインプリズムを付加した。プリズムの量は1Δとした。
その上で、(式8)によりβ(拡大倍率)を算出した。その結果、β=1.14となり、物体の実像に対して虚像は1.14倍(10%増し)の大きさとなり、装用者にとって物体を拡大して視覚可能であることがわかった。
<比較例2(参照例)>
本例においては、眼鏡レンズの各々として、遠用部および近用部ならびにそれらの間に存在する累進部を内面に備えた内面累進レンズ(外面は球面)を採用した。そのため、以降に示す結果は、内面に係る結果である。球面度数(S)を0.00D、乱視度数(C)を0.00D、加入度数(ADD)を1.50Dとした。その他のパラメータとしては、ベースカーブを4.00D、屈折率を1.60、プリズム処方はゼロ、中心肉厚は2.00mmとした。
本例においては水平方向(イン方向もしくはアウト方向)のプリズム量がゼロなので、当然のことながらβ=1.00となった。
<実施例2>
比較例2(参照例)と同様のパラメータで、内面累進レンズを一対作製した。但し、本例においては、眼鏡レンズの各々に対して一律にインプリズムを付加した。プリズムの量は1Δとした。
その上で、(式8)によりβ(拡大倍率)を算出した。その結果、β=1.14となり、物体の実像に対して虚像は1.14倍(14%増し)の大きさとなり、装用者にとって物体を拡大して視覚可能であることがわかった。
以降の例においては、[実施の形態2]の(3−1.正面視の際の開散への対応)および(3−2.意図せぬアウトプリズムへの対応)を適用させたものについて述べる。
まず、先にも簡単に述べたように、まず、参照例として比較例3が存在する。比較例3は、「意図せぬアウトプリズム」についての対策を講じる前の眼鏡レンズに係る例である。
それに対し、実施例3においては、比較例3に対し、「正面視の際の開散」に対応すべく、プリズム度数測定点Pよりも下方の部分において、インプリズムが備わるように設定した。それに加え、「意図せぬアウトプリズム」に対応すべく、水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの内面形状を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩った。本例は、以上のような手当が行われた眼鏡レンズに係る例である。
更に、実施例6は、実施例3の眼鏡レンズの形状(カーブの形状そのもの)を、部分αの側方において水平方向に変形させた眼鏡レンズに係る例である。
以下、各例について説明する。
<比較例3(参照例)>
本例においては、眼鏡レンズの外面を球面、内面を累進面とし、球面度数(S)を0.00D、乱視度数(C)を0.00D、加入度数(ADD)を2.00Dとした。その他のパラメータとしては、ベースカーブを4.00D、屈折率を1.60、プリズム処方はゼロ、中心肉厚は2.00mmとし、2つの隠しマークを結ぶ線分の中点を原点とした場合、遠用度数測定点Fの座標は(0.0,8.0)とし、近用度数測定点Nの座標は(−2.5,−14.0)とし、プリズム度数測定点の座標は(0.0,0.0)とし、フィッティングポイントは(0.0,4.0)とした。本例においては、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nの両点を結ぶ直線が主注視線に該当する部分であると仮定した。
その結果得られたオリジナル累進面の光学レイアウトに関する事前設計情報が図13である。図13の(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。ここで、図13(c)は、眼鏡レンズ(今回は内面)を平面視した際の位置と、実際に視線が通過する位置との相関関係を示している。なお、図13(c)においてグリッド間隔は2.5mmである(以降、同様である)。
例えば、図13(c)においては、原点から2.5mm鼻の側に移動させた垂直方向の直線(太線)を付与している。度数変化のない単焦点レンズの場合ならば、意図せぬアウトプリズムが発生しないため、眼鏡レンズ上の太線に該当する部分と当該太線に該当するグリッド線とが一致する(すなわち水平方向の視線のずれは無い)はずである。だからこそ、図13(c)は比較例でありながらも、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。
しかしながら、比較例3において、眼鏡レンズの下部においては、図13(d)が示すように、グリッド線が太線よりも鼻の側へと徐々に変位している。これはつまり、眼鏡レンズの下部を装用者が見たときに、意図せぬアウトプリズムが生じていること、すなわち鼻の側へと過剰に輻輳させられることを示す。先に挙げた図7に示すように、意図せぬアウトプリズムが生じることにより、物体を視認するためには、両眼とも眼球を過度に内寄せすることになる。図13(c)および(d)は、その結果を表している。
なお、以降、当該グリッド線が意味するところは同様とする。
ちなみに、本例および後述の実施例では乱視度数を0.00Dと設定している。その一方で、眼鏡レンズに乱視処方が反映されて乱視度数が備わった場合も考えられる。ただ、その場合であっても、乱視処方に対応する乱視度数をベクトル減算したり、累進多焦点レンズの場合だと遠用測定基準点における表面非点収差をベクトル減算すればよい。それにより、図13(b)に対応する面平均度数の分布図が得られる。
<実施例3>
本例においては、比較例3の眼鏡レンズに対し、インプリズムが備わるように、眼鏡レンズの内面において、主注視線上の点の接線が、鼻の側の方だと水平方向の断面視下方、耳の側の方だと水平方向の断面視上方となるように設定した。なお、プリズム度数測定点Pから近用度数測定点Nに至るまで連続的に内面を捩ることにより、連続的にインプリズムを備えさせた。プリズム度数測定点Pにおけるインプリズムの量はゼロとし、近用度数測定点Nにおけるインプリズムの量は0.25Δ(実施例3−1)、および0.50Δ(実施例3−2)とした。そのため、近用度数測定点Nにおいては、β(拡大倍率)は、実施例3−1だと1.03、実施例3−2だと1.07となり、物体を拡大して視覚することができており、本発明の効果を奏していた。
このように内面を連続的に捩った結果を示すのが図14(実施例3−2)である。図14の横軸は、2つの隠しマークを通過する線分と主注視線とが交わる点(一例として、2つの隠しマークの中心)を原点とした場合の主注視線と内面との接点の鉛直方向の位置を表し、正の方向は眼鏡レンズの上方、負の方向は眼鏡レンズの下方を表し、縦軸は内面を連続的に捩った結果として付加されるインプリズム量(符号はマイナス)を表す。
図14に示すように、プリズム度数測定点Pに対応する点(2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、プリズム度数測定点Pを通る直線が主注視線と交わる点)から眼鏡レンズの下方に向けて内面の形状を連続的に捩ることにより、連続的にインプリズムの絶対値が増加するように眼鏡レンズを設計した。
そして、本例において得られた設計情報が図20(実施例3−2)である。図20の(a)は面非点収差の分布図、(b)は面平均度数の分布図、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線に沿った光線のフレ量、すなわちプリズム作用の量を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。
例えば、図20(c)においては、原点から2.5mm鼻の側に移動させた垂直方向の直線(太線)を付与している。本例においては、眼鏡レンズの下部であっても、意図せぬアウトプリズムが発生したとしても眼鏡レンズの内面に対してインプリズムを備えた形状としていることにより、眼鏡レンズ上の太線に該当する部分と当該太線に該当するグリッド線とが一致する(すなわち水平方向の視線のずれは無い)。だからこそ、図20(c)および図20(d)は、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。つまり、本例においては、余分な輻輳を抑制することができている。
なお、先にも述べたように、垂直方向の面屈折力の分布図である図27(b)および垂直方向の面屈折力をプロットした図33に示すように、2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する位置を基準に±15mmにおける面屈折力の差分の絶対値は、実施例3−1だと0.38D、実施例3−2だと0.76Dであり、いずれも規定した0.25D以上となっていた。本例において、主注視線は、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分として特定しているが、上記の主注視線が通過する位置は図28のX座標で言うところの−0.9mmとなっている。
ちなみに、本例および以降の例においては、当該「主注視線が通過する位置」の値は、眼鏡レンズの上方頂点から下方頂点を結ぶ上下直線(鉛直線)または2つの隠しマークの中点を通り、2つの隠しマークを結ぶ線分に垂直な直線からの水平距離(先に述べたいわゆる内寄せ量h)に該当する。先に述べた例においては、眼鏡レンズの水平断面形状における頂点からの水平距離を例示したが、それ以外の場合であっても本発明は適用可能である。
<実施例4>
本例においては、設計条件は実施例3と同じであるが、インプリズムを連続的に付加する形態のみ、図15に示すように変えている。具体的には遠用度数測定点Fとプリズム測定点Pの中間位置を始点として、インプリズムを連続的に付加している。近用度数測定点Nにおけるインプリズムの量は0.25Δ(実施例4−1)、および0.50Δ(実施例4−2)とした。なお、各例におけるβ(拡大倍率)は実施例3と同じ値となる。
本例において得られた設計情報が図21である。図21(c)および図21(d)は、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。つまり、本例においても、余分な輻輳を抑制することができている。
なお、垂直方向の面屈折力の分布図である図28(b)および垂直方向の面屈折力をプロットした図34に示すように、2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する位置を基準に±15mmにおける面屈折力の差分の絶対値は、実施例4−1だと0.41D、実施例4−2だと0.78Dであり、いずれも規定した0.25D以上となっていた。本例において、上記の主注視線が通過する位置は図34のX座標で言うところの−1.25mmとなっている。
<実施例5>
本例においては、設計条件は実施例3と同じであるが、インプリズムを連続的に付加する形態のみ、図16に示すように変えている。具体的にはフィッティングポイントを始点として、インプリズムを連続的に付加している。近用度数測定点Nにおけるインプリズムの量は0.25Δ(実施例5−1)、および0.50Δ(実施例5−2)とした。なお、各例におけるβ(拡大倍率)は実施例3と同じ値となる。
本例において得られた設計情報が図22である。図22(c)および図22(d)は、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。つまり、本例においても、余分な輻輳を抑制することができている。
なお、垂直方向の面屈折力の分布図である図29(b)および垂直方向の面屈折力をプロットした図35に示すように、2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する位置を基準に±15mmにおける面屈折力の差分の絶対値は、実施例5−1だと0.45D、実施例5−2だと0.88Dであり、いずれも規定した0.25D以上となっていた。本例において、上記の主注視線が通過する位置は図35のX座標で言うところの−1.59mmとなっている。
以上、実施例3〜5の結果から、以下の規定を行うことも可能であることがわかった。
・部分αを水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかの形状を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に(徐々に)捩った形状を当該部分αに備えさせる。
その上で、
・眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の間におけるいずれかの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上である。
それに加える形で、
・遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の間におけるいずれかの点は、
遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nの中点を基準に鉛直方向に±3mmの間に位置する。
<実施例6>
本例においては、実施例3の眼鏡レンズの形状(カーブの形状そのもの)を、部分αの側方において変形させた。具体的な変形の手法としては、まず、実施例3と同様に、プリズム度数測定点Pから近用度数測定点Nに至るまで連続的に内面を捩ることにより、連続的にインプリズムを備えさせた。プリズム度数測定点Pにおけるインプリズムの量はゼロとし、近用度数測定点Nにおけるインプリズムの量は0.25Δ(実施例6−1)、および0.50Δ(実施例6−2)とした。なお、各例におけるβ(拡大倍率)は実施例3と同じ値となる。その上で、参照例としての比較例3における図13(a)の面非点収差の分布図に近づくように、部分αの側方において内面の形状を徐々に変形させて、適宜設計を行った。
そして、実施例6−2においては、図23(a)となった状態で変形を終了した。その結果得られた眼鏡レンズの面平均度数の分布図が図23(b)であり、(c)は内面の形状を通して物体を見たときの視線の変動を示す図であり、(d)は(c)の一部の拡大図である。
例えば、図23(c)においては、原点から2.5mm鼻の側に移動させた垂直方向の直線(太線)を付与している。本例においては、眼鏡レンズの下部であっても、意図せぬアウトプリズムが発生したとしても眼鏡レンズの内面に対してインプリズムを備えた形状としていることにより、眼鏡レンズ上の太線に該当する部分と当該太線に該当するグリッド線とが一致する(すなわち水平方向の視線のずれは無い)。だからこそ、図23(c)および(d)は、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。つまり、本例においては、余分な輻輳を抑制することができている。
しかも、本例の面非点収差の分布図(図23(a))においては、意図せぬアウトプリズムを考慮する前の累進面の面非点収差の分布図(比較例3、図13(a))と近似したレイアウトの面非点収差が得られる。
なお、先にも述べたように、水平方向の面屈折力の分布図である図30(a)および水平方向の面屈折力をプロットした図36に示すように、2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する位置を基準に±5mmにおける面屈折力の差分の絶対値は、実施例6−1だと0.22D、実施例6−2だと0.50Dであり、いずれも規定した0.12D以上となっていた。本例において、主注視線は、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分として特定しているが、上記の主注視線が通過する位置は図36のX座標で言うところの−1.59mmとなっている。
<実施例7>
本例においては、設計条件は実施例6と同じであるが、インプリズムを連続的に付加する形態のみ、図18に示すように変えている。具体的には遠用度数測定点とプリズム測定点の中間位置を始点として、インプリズムを連続的に付加している。近用度数測定点Nにおけるインプリズムの量は0.25Δ(実施例7−1)、および0.50Δ(実施例7−2)とした。なお、各例におけるβ(拡大倍率)は実施例3と同じ値となる。
なお、図18においては、遠用度数測定点Fよりも上方(遠用部)においてはプリズム付加量が正(すなわちアウトプリズムが備わる形)となっているけれども、遠用度数測定点Fよりも下方(累進部および近用部)においてはプリズム付加量が負(すなわちインプリズムが備わる形)となっている。そのため、図18のようなプリズム付加を有する例であっても、度数が連続的に変化する部分において生じる意図せぬアウトプリズムをインプリズムにより相殺していることに変わりはない。
本例において得られた設計情報が図24である。図24(c)および図24(d)は、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。つまり、本例においても、余分な輻輳を抑制することができている。
なお、水平方向の面屈折力の分布図である図31(a)および水平方向の面屈折力をプロットした図37に示すように、2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する位置を基準に±5mmにおける面屈折力の差分の絶対値は、実施例7−1だと0.20D、実施例7−2だと0.46Dであり、いずれも規定した0.12D以上となっていた。本例において、上記の主注視線が通過する位置は図37のX座標で言うところの−1.25mmとなっている。
<実施例8>
本例においては、設計条件は実施例6と同じであるが、インプリズムを連続的に付加する形態のみ、図19に示すように変えている。具体的には遠用度数測定点を始点として、インプリズムを連続的に付加している。近用度数測定点Nにおけるインプリズムの量は0.25Δ(実施例8−1)、および0.50Δ(実施例8−2)とした。なお、各例におけるβ(拡大倍率)は実施例3と同じ値となる。
なお、図19においては、遠用度数測定点Fよりも上方(遠用部)においてはプリズム付加量が正(すなわちアウトプリズムが備わる形)となっているけれども、遠用度数測定点Fよりも下方(累進部および近用部)においてはプリズム付加量が負(すなわちインプリズムが備わる形)となっている。そのため、図19のようなプリズム付加を有する例であっても、度数が連続的に変化する部分において生じる意図せぬアウトプリズムをインプリズムにより相殺していることに変わりはない。
本例において得られた設計情報が図25である。図25(c)および図25(d)は、眼鏡レンズの上部では、グリッド線と太線が共に上下方向に延びる形で一致している。つまり、本例においても、余分な輻輳を抑制することができている。
なお、水平方向の面屈折力の分布図である図32(a)および水平方向の面屈折力をプロットした図38に示すように、2つの隠しマークを通る水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する位置を基準に±5mmにおける面屈折力の差分の絶対値は、実施例8−1だと0.24D、実施例8−2だと0.47Dであり、いずれも規定した0.12D以上となっていた。本例において、上記の主注視線が通過する位置は図38のX座標で言うところの−0.90mmとなっている。
以上、実施例6〜8の結果から、以下の規定を行うことも可能であることがわかった。
・部分αを水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかの形状を、眼鏡レンズの下方に向けて連続的に(徐々に)捩った形状を当該部分αに備えさせる。
その上で、
・眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する水平基準線に平行な直線であって、遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の間におけるいずれかの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である。
それに加える形で、
・遠用度数測定点Fと近用度数測定点Nを結ぶ線分の間におけるいずれかの点は、
遠用度数測定点と近用度数測定点の中点を基準に鉛直方向に±3mmの間に位置する。
以上の結果、本実施例によれば、既に上述した諸々の効果に加え、眼鏡レンズを装用することにより物体を拡大して視覚させる技術を提供することができ、好ましくは、それに加え、余分な輻輳を抑制する眼鏡レンズに関する技術を提供することができる。
1…(両眼用の一対の)眼鏡レンズ供給システム
20…眼鏡店側端末
21…情報記憶部
22…送受信部
30…設計メーカー側端末
31…受信部
32…設計部
321…演算手段
33…判定部
34…送信部
4……外部のサーバ・クラウド
5……公衆回線

Claims (17)

  1. 眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
    両眼用の一対の眼鏡レンズの各々には有限距離の物体を見るための部分が備わり、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状が当該部分に備わり、
    両眼用の一対の眼鏡レンズの各々において、度数が連続的に変化する部分αを備え、
    前記眼鏡レンズにおける前記部分αからアウトの水平方向およびインの水平方向へと前記インプリズムの付加量がゼロになるまで連続的に減少した、両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  2. 有限距離の物体を見るための前記部分は近用部である、請求項1に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  3. 前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
    前記インプリズムが備わるのは、前記眼鏡レンズにおける特定距離用度数測定点、プリズム度数測定点、またはフィッティングポイントよりも下方の部分である、請求項1または2に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  4. 前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
    前記眼鏡レンズは、特定距離を見るための部分、当該特定距離よりも近い距離を見るための近用部、および、当該部分と当該近用部との間で度数が変化する累進部を備えており、かつ、以下の式を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
    −P<ADD*h/10
    ここで、Pは、特定距離を見るための部分の度数測定点におけるプリズム量(Δ)を示し、Pは近用度数測定点のプリズム量(Δ)を示す。なお、プリズム量に関しては、アウトプリズムを正、インプリズムを負とする。
    また、ADDは加入度数(D)を示し、hは、前記眼鏡レンズにおける内寄せ量(mm)であり、前記眼鏡レンズの上方頂点から下方頂点を結ぶ上下直線から見て鼻側を正、耳側を負とする。
  5. 前記眼鏡レンズは以下の式を満たす、請求項に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
    |P−P−ADD*h/10|≧0.25
  6. 前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
    前記眼鏡レンズにおける前記部分αの少なくとも一部において、前記インプリズムが前記眼鏡レンズの下方に向けて増加するように、前記部分αを水平方向に断面視した際の眼鏡レンズの物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかの形状を、前記眼鏡レンズの下方に向けて連続的に捩った形状が備わった、請求項のいずれかに記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  7. 前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±15mmの位置における垂直方向の面屈折力の差の絶対値が0.25D以上である、請求項に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  8. 前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点は、前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点の中点を基準に鉛直方向に±3mmの間に位置する、請求項に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  9. 前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である、請求項に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  10. 前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点を結ぶ線分の間におけるいずれかの点は、前記特定距離用度数測定点と前記近用度数測定点の中点を基準に鉛直方向に±3mmの間に位置する、請求項に記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  11. 前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
    前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直下方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  12. 前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  13. 前記眼鏡レンズを装用者が装用したときに前記眼鏡レンズにおいて天地の天の側となる方向を上方、地の側となる方向を下方としたとき、
    前記眼鏡レンズに備わる2つの隠しマークを通過する直線に平行な直線であって、特定距離用度数測定点と近用度数測定点を結ぶ線分の中点から垂直上方3mmの点を通る直線上において、主注視線が通過する点から±5mmの位置における水平方向の面屈折力の差の絶対値が0.12D以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  14. 前記インプリズムの量は2Δ以下である、請求項13のいずれかに記載の両眼用の一対の眼鏡レンズ。
  15. 眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
    両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対して有限距離の物体を見るための部分を備えさせ、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせ、且つ、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々において、度数が連続的に変化する部分αを備えさせ、且つ、前記眼鏡レンズにおける前記部分αからアウトの水平方向およびインの水平方向へと前記インプリズムの付加量をゼロになるまで連続的に減少させる設計工程と、
    前記設計工程の結果に基づいて両眼用の一対の眼鏡レンズを製造する製造工程と、
    を有する、両眼用の一対の眼鏡レンズの製造方法。
  16. 眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
    前記眼鏡レンズに係る情報を受信する受信部と、
    前記眼鏡レンズに係る情報に基づいて、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対して有限距離の物体を見るための部分を備えさせ、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせ、且つ、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々において、度数が連続的に変化する部分αを備えさせ、且つ、前記眼鏡レンズにおける前記部分αからアウトの水平方向およびインの水平方向へと前記インプリズムの付加量をゼロになるまで連続的に減少させる設計部と、
    前記設計部により得られる設計情報を送信する送信部と、
    を備えた、両眼用の一対の眼鏡レンズ供給システム。
  17. 眼鏡レンズを装用者が装用したときに当該眼鏡レンズにおいて装用者の鼻の側となる方
    向をインの水平方向、耳の側となる方向をアウトの水平方向としたとき、
    前記眼鏡レンズに係る情報を受信する受信部、
    前記眼鏡レンズに係る情報に基づいて、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々に対して有限距離の物体を見るための部分を備えさせ、装用者が当該部分を通して当該物体を見ると当該物体とは異なる方向に視線を向かわせるインプリズムの形状を当該部分に備えさせ、且つ、両眼用の一対の眼鏡レンズの各々において、度数が連続的に変化する部分αを備えさせ、且つ、前記眼鏡レンズにおける前記部分αからアウトの水平方向およびインの水平方向へと前記インプリズムの付加量をゼロになるまで連続的に減少させる設計部、および、
    前記設計部により得られる設計情報を送信する送信部、
    としてコンピュータを機能させる、両眼用の一対の眼鏡レンズ供給プログラム。

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