JP2004029223A - 眼鏡レンズ製造方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】左右レンズの倍率色収差の差を低減することで、視力差が大きい場合にも良好な両眼視を可能にする。
【解決手段】度数を含む処方が左右眼で異なる眼鏡を構成する左右の眼鏡レンズを設計製造する場合に、まず、度数を含む処方の情報に基づいて左眼用及び右眼用のレンズの標準設計データを生成する(ステップS3)。次に標準設定データによる左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下か否かを判定する(ステップS4)。倍率色収差の差が所定値以下でない場合は、左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下となるようにレンズ素材等を変更した再設計データを生成する(ステップS5)。そして再設計データを生成した場合はその再設計データに基づいて、また、再設計データを生成しない場合は標準設計データに基づいて、左眼用及び右眼用のレンズを加工する(ステップS7)ことにより、左右レンズの色収差バランスを適正範囲に収める。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、度数を含む処方が左右眼で異なる場合にも、良好な両眼視が可能な眼鏡レンズを作ることのできる眼鏡レンズ製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
眼の屈折異常を矯正するために用いられる眼鏡レンズの第一面の屈折面(装用状態における眼と反対側の面すなわち前方屈折面)には、球面の他に近年は非球面が用いられている。一方、第二面の屈折面(装用状態における眼側の面すなわち後方屈折面)には球面の他に、乱視矯正のためにトーリック面等が採用されている。一般に、レンズの屈折力(度数)はディオプター(以下Dで示す)という単位で表され、レンズの表面における屈折力(面屈折力)はその面の曲率ρ(単位はm−1、曲率半径R=1/ρ)とレンズの素材の屈折率nとにより、以下の式のように定義される。
面屈折力=(n−1)×ρ=(n−1)/R
なお、レンズの第一面の屈折力は特にベースカーブと呼ばれる。ここで、一般に知られている眼鏡レンズの光学性能としては、非点収差、像面湾曲、歪曲収差等が重要視されているが、従来では色収差に対する配慮がなされていないのが実情であった。左右眼のレンズで色収差が異なると、色のにじみが左右眼で異なるめ、違和感を感じ、両眼視がしづらいという現象が起こる。これは左右眼の視力の差が大きくなるほど顕著になる。また、従来、眼鏡レンズの色収差を低減する方法としては、異なった素材を貼り合わせたレンズを使用することが提案されているが、そうした場合、レンズが厚くなって重量が増大するので、装用者が楽に装用できるものとは言い難く、さらに、左右眼の視力に大きな差がある場合に、十分に対応できるものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、被検眼の視力を矯正する眼鏡レンズを処方するに当たって、左右眼がほぼ同じ視力を有する場合には、同じ屈折力(度数)のレンズ及び同じ素材のレンズを用いて処方するのが普通であることから問題は起こらなかったが、左右眼の視力が異なる場合には、異なる屈折力のレンズを用いて処方することになるため、左右眼のレンズの光学性能が必ずしも同じものとはならなかった。
【0004】
上述したように、一般に知られている眼鏡レンズの光学性能としては、非点収差、像面湾曲、歪曲収差等が重要視されているが、従来では色収差に対する配慮がなされていないのが現状であった。左右眼のレンズで色収差が異なると、色のにじみが左右眼で異なるめ、違和感を感じ、両眼視がしづらいという現象が起こる。これは左右眼の視力の差が大きくなるほど顕著になる。
【0005】
従来、眼鏡レンズの色収差を低減する方法としては、異なった素材を貼り合わせたレンズを使用することが提案されているが、そうした場合、レンズが厚くなって重量が増大するので、装用者が楽に装用できるものとは言い難く、また、左右眼の視力に大きな差がある場合に、十分に対応できるものではなかった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、左右レンズの色収差の差を低減することで、良好な両眼視を実現する眼鏡レンズの製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、度数を含む処方が左右眼で異なる眼鏡を構成する左右の眼鏡レンズを設計して製造する眼鏡レンズ製造方法において、前記度数を含む処方の情報に基づいて前記左眼用及び右眼用のレンズの標準設計データを生成する標準設計工程と、前記標準設定データによる左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下か否かを判定する判定工程と、前記倍率色収差の差が所定値以下でないと判定された場合に、左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下となるように、少なくとも前記基準設計の際のレンズ素材を変更して再設計データを生成する再設計工程と、再設計データを生成した場合はその再設計データに基づいて、また、再設計データを生成しない場合は前記標準設計データに基づいて、左眼用及び右眼用のレンズを加工する加工工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記判定工程及び再設計工程において用いる所定値としては、各レンズの回旋角30°において、2′以下とするのが好ましい。更に好ましくは、1′以下とするのがよい。
【0009】
また、左眼用及び右眼用のレンズの少なくとも1つが非球面を有するレンズであってもよい。
【0010】
請求項4の発明は、度数を含む処方が左右眼で異なる眼鏡を構成する左右の眼鏡レンズを設計して製造する眼鏡レンズ製造装置において、前記左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下となるようにレンズの設計を行う光学設計手段と、該手段の設計したデータに基づいてレンズ加工を行う手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の製造方法及び装置によれば、左右の眼鏡レンズの倍率色収差の差を少なくすることができるので、色収差の差が原因で装用者が両眼視しづらくなるという問題を解消することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の眼鏡レンズ製造装置を含んだ眼鏡製造供給システムの全体構成を示す。このシステム1では、発注端末21と眼鏡レンズ設計装置31とが通信回線4を介して接続されている。発注端末21は、発注元としての眼鏡店2に配置されている。眼鏡レンズ設計装置31は、眼鏡の製造メーカ側としての工場3に配置されている。工場3側において、眼鏡レンズ設計装置31には、LAN32を介してレンズ加工装置33が接続されており、眼鏡レンズ設計装置31とレンズ加工装置33とで、眼鏡レンズ製造装置30が構成されている。
【0013】
なお、図には発注元として眼鏡店2を1つのみ示したが、実際には複数の眼鏡店2が工場に接続される。また、発注元しては、眼鏡店の他に眼科医院や個人等が挙げられる。また、通信回線4は、インターネット、その他の公衆回線であってもよいし、WAN等の専用回線であってもよい。また、発注端末21とレンズ設計装置31との間に中継局を設けてもよい。
【0014】
発注端末21は、例えばパーソナルコンピュータよりなり、表示部、入力部、通信制御部等を備える。表示部は、眼鏡レンズを発注する際に必要となる各種のデータの入力を支援する案内画面を表示する。入力部は、案内画面に従って被検眼の処方データ等を入力するためのものである。通信制御部は、眼鏡レンズ設計装置との間におけるデータ通信を制御する。なお、入力部と表示部とでタッチスクリーンを構成してもよい。
【0015】
眼鏡レンズ設計装置31は、発注端末21から眼鏡レンズの処方情報等を取得して、当該処方に適合するように眼鏡レンズの設計を行う。この眼鏡レンズ設計装置31は、記憶部、演算制御部、及び通信部等を備える。記憶部には、設計プログラムや加工データ生成プログラム等が格納されている。
【0016】
設計プログラムは、コンピュータに、左右一対の眼鏡レンズの処方情報を取得させる機能と、取得した処方情報に基づいて各眼鏡レンズの標準設計データを作成する機能と、標準設計データによる各眼鏡レンズ同士の色収差の差を判断する機能と、色収差の差が大きい場合に色収差の差が所定値以下となるように少なくとも標準設計の際のレンズ素材を変更して再設計した再設計データを作成する機能とを実現する。加工データ生成プログラムは、コンピュータに、設計プログラムによって作成された標準設計データまたは再設計データに基づいて、レンズ加工装置33が実際のレンズ加工を行う際に必要となる加工データを生成する機能を実現する。
【0017】
演算制御部は、上記設計プログラム等を実行することにより、標準設計処理、色収差バランス判定、再設計処理等を実行する。また、演算制御部は、上記加工データ生成プログラムを実行することにより、レンズ加工装置33の制御情報としての加工データを生成すると共に、生成した加工データをレンズ加工装置33に送信する制御を行う。通信部は、演算制御部による制御の下、発注端末21とレンズ加工装置33との間でデータの送受信を行う。
【0018】
レンズ加工装置33は、LAN32を介して眼鏡レンズ設計装置31から取得する加工データに基づいて、実際に眼鏡レンズを製造する。図1では便宜上、レンズ加工装置33を1つのブロックで示したが、このレンズ加工装置33としては、カーブジェネレータ、砂掛け・研磨機、レンズメータ、肉厚計、マシニングセンタから成るNC制御のレンズ研削装置、エッジャー、ヤゲン頂点の形状測定器等が挙げられる。
【0019】
次に図2のフローチャートを参照して製品の受注から納品までの流れを説明する。本発明の眼鏡レンズ製造方法は、この流れの中で実行される。
まず、眼鏡店2において発注端末21の表示部には入力画面が表示される。販売員等は、その入力画面の案内に従って、顧客の被検眼の処方データ、フレーム玉型データ、その他のレンズの設計に必要な眼鏡レンズの仕様情報を入力する(ステップS1)。ここで、仕様情報には、ヤゲン種、ヤゲン位置、3次元フレーム形状情報、反射防止膜の種類、レンズカラーの種類、眼鏡レンズの種類を特定する商品コード等が含まれる。また、処方データには、顧客の左右眼の球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸、加入度、瞳孔間距離、裸眼視力等が含まれる。
【0020】
仕様情報等の入力が確定すると、発注端末21の表示部には、色収差バランス選択メニューが表示される。ここで、販売員は、メーカ3に色収差バランス設計を依頼する場合は、入力部を用いてその選択メニューを指定する。
次いで、発注端末21は、入力された仕様情報等を眼鏡レンズ設計装置31に送信する。このとき、発注端末21は、販売員によって選択メニューが指定された場合には、色収差バランス設計を依頼する旨の情報も併せて眼鏡レンズ設計装置31に送信する。なお、それらの情報はファックス等でメーカ側に送信することもできる。
【0021】
眼鏡レンズ設計装置31は、発注端末21から仕様情報等を取得すると、取得した当該情報に基づいて、色収差バランス設計を行うか否かを判定する(ステップS2)。そして、眼鏡レンズ設計装置31は、色収差バランス設計を行わないと判定した場合は(ステップS2;NO)、後述するステップS7に移行し、その仕様情報に基づいて実際の眼鏡の加工を行う。
【0022】
一方、眼鏡レンズ設計装置31は、色収差バランス設計を行うと判定した場合には(ステップS2;YES)、とりあえず基本となる標準設計を行う(ステップS3)。すなわち、眼鏡レンズ設計装置31の演算制御部は、仕様情報に基づいて、左右一対の眼鏡レンズを、それぞれ標準素材や標準形状を用いるものとして標準設計し、標準設計データを作成する。
【0023】
次いで、演算制御部は、標準設計データに従って左右各レンズの色収差を計算し、左右レンズの色収差バランスを判定する。判定は、左右レンズの色収差の差が所定値以下であるか否かをチェックすることで行う(ステップS4)。
【0024】
そして、演算制御部は、各レンズの色収差の差が所定値を上回らないと判定した場合は(ステップS4;YES)、その旨を発注端末21に通知すると共に、後述するステップS7に移行し、予備設計の内容でレンズ加工を行う。
【0025】
ここで所定値とは、装用者が違和感を感じない程度の色収差の差に相当する値をいう。所定値は特に限定されないが、各レンズの回旋角30°において、2′以下とするのが好ましい。更に好ましくは、1′以下とするのがよい。本発明者の研究によれば、上記の所定値以下であれば、装用者が色収差のアンバランスを感じないことが判明している。
【0026】
一方、演算制御部は、色収差の差が所定値を上回ると判定した場合には(ステップS4;NO)、再設計処理を実行することにより、標準設計の内容を変更して、当該変更内容で再設計された再設計データを作成する(ステップS5)。再設計処理では、眼鏡レンズの処方を満足する範囲内において色収差のアンバランスを低減するように標準設計の内容を変更する。具体的には、標準設計の際のレンズ素材を変更する。ステップS4、ステップS5を繰り返すことで、左右レンズの色収差の差が所定値以下の設計データが得られる。
【0027】
ステップS4において、左右レンズの色収差バランスが適正の範囲にあると判定されたら、その設計結果を発注先に返答して表示し(ステップS6)、それで良い場合は、そのままレンズ加工に進む(ステップS7)。そして、レンズを加工したら、眼鏡店あるいは眼科医院に納入し顧客に届ける(ステップS8)。
【0028】
次に、色収差について説明する。一般に、色収差には軸上色収差と倍率色収差がある。軸上色収差は光軸上での色収差であり像の結ばれる位置が色によって異なる場合をいい、一方、倍率色収差は像の大きさ(眼視光学系において視野角)が色によって異なる場合をいう。倍率色収差は像の濃淡の境界部分で色がにじむ現象として認められる。
【0029】
一般に眼視光学系を設計するにあたって色収差を計算する場合は、設計基準波長(本発明においてd線:波長587.6nm)の他にC線:波長656.3nm、F線:486.1nmが用いられ、計算される。
【0030】
軸上色収差は、眼鏡レンズを薄肉レンズとすると、以下の式で求めることができる。まず、各波長での眼鏡レンズのパワーをP、P、P、各波長での屈折率をn、n、nとし、両面の曲率半径をr,rとすると、各波長での眼鏡レンズのパワーは下式のようになる。
【数1】
Figure 2004029223
【0031】
そこで軸上の色収差はC線とF線のパワー差と考えると下式のようになる。
【数2】
Figure 2004029223
【0032】
この式から必要なパワーPが決まれば曲率半径には無関係になる。
色分散値を表すアッベ数(d線基準のアッベ数)
【数3】
Figure 2004029223
であるから(1)式は次のように表すことができる。
【数4】
Figure 2004029223
【0033】
このように軸上色収差は屈折率nにも関係なく、眼鏡レンズのパワー(屈折力)とアッベ数で決まることがわかる。
【0034】
次に倍率色収差の求め方を説明する。この場合、光線追跡を行って求める必要があり、以下に光線追跡について説明する。
眼鏡レンズ設計光学モデルを図3に示す。図3中、符号Lは遠視用レンズであり、物体は有限距離にある例を示している。設計手法は光線追跡法による。すなわち、回旋点CRから光軸Aとθの角度(このθは視野角あるいは回旋角と呼ぶ)をなす光線Iを逆向きに送って、レンズLの第一面Lにおける頂点Oの前方aの距離にある物体平面を貫く点Pの位置を定める。この光線Iを主光線と呼ぶ。次に、P点を発し、上記主光線Iについて、レンズLを屈折後のサジタル方向の像位置s、メリディオナル方向の像位置mを算出し、非点収差(m−s)の量を計算する。(応用物理 第26巻 第5号、1957)
なお、回旋点CRとレンズの第二面頂点Oとの距離bは25mmとして計算したが、欧米では27mmとしている。これが通常の光線追跡のやり方である。この方法を用いて倍率色収差の求め方を説明する。
【0035】
図3において、回旋点CRから光軸Aとθの角度をなす光線IはレンズLを通過した後、光軸Aとθ’の角度をなす光線となってPに向かっている。これは設計基準波長(例えばd線)によるものである。各波長での光軸Aとθの角度をなす光線がレンズLを通過した後、光軸Aとのなす角度を求める。そして基準波長に対する色収差が計算される。C線とF線の差が倍率色収差になる。
なお、眼側から光線を追っているが、逆に物体側から追っても構わない。
【0036】
上記背景のもとで軸上色収差と倍率色収差について計算をしてみる。
軸上色収差を+6Dレンズについて計算すると、アッベ数が30の場合は上記(2)式より0.2D、アッベ数が60の場合は0.1Dになるが、人間の眼の軸上色収差が1D程度であることを考えると問題のない数値であり、装用者は軸上色収差を感じないといえる。従って、解決すべき課題は、倍率色収差であることが分かる。
【0037】
倍率色収差は、軸上色収差と違って、上記の説明よりレンズ素材のアッベ数、レンズの屈折力、視野角(回旋角)などの各要素が絡んでくることが分かる。なお、ここで倍率色収差の計算は、物体が無限遠にある場合を想定している。
【0038】
人間が視野周辺の物体を観察するときには、眼を回旋して見るわけであるが、この回旋角は30°ぐらいまでの角度の頻度が一番多いといえる。従って、ここでは、この回旋角30°における倍率色収差を計算する。また、視力値1.0のランドルト環の切れ目が1′であることを考えると、左右眼鏡レンズの倍率色収差の差は、少なくとも2′以内であることが好ましいといえる。更に好ましくは1′以内であるのがよいといえる。
【0039】
次に具体的に光学計算の実施例に基づいて説明する。
まず、プラス屈折力のレンズの場合について説明する。
例えば、眼鏡装用者の処方が+2D、+4Dであったとする。この処方に見合う左右眼レンズを、屈折率n=1.69895、n=1.569221、n=1.71546、アッベ数νd=30.07のレンズ素材で作ったときのレンズ設計データ及び倍率色収差を計算してみると、その結果は下表1に示すようになる。
【表1】
Figure 2004029223
【0040】
表1から分かるように、このときの左右レンズの倍率色収差の差は3′29″であり、この値は、視力値1.0におけるランドルト環の切れ目の1′を大きく超えている。従って、この場合の左右レンズの組み合せは、色収差バランスが悪いということになる。
【0041】
そこで、倍率色収差の大きい方の+4Dレンズに、屈折率n=1.52257、n=1.51992、n=1.52861、アッベ数νd=60.18のレンズ素材を用いてみる。そのときのレンズ設計データ及び倍率色収差の計算結果を下表2に示す。
【表2】
Figure 2004029223
【0042】
この場合は、左右レンズの倍率色収差の差が4″となり、視力値1.0のランドルト環の切れ目1′より十分に小さくなっている。従って、この設計データの+4Dレンズを、表1の+2Dレンズに組み合わせることにより、両眼視したときの左右眼での色収差を略同等にすることができ、違和感を覚えないようにすることができる。
【0043】
次に、マイナス屈折力のレンズの場合について説明する。
例えば、眼鏡装用者の処方が−2D、−4Dであったとする。この処方に見合う左右眼レンズを、屈折率n=1.69895、n=1.569221、n=1.71546、アッベ数νd=30.07のレンズ素材で作ったときのレンズ設計データ及び倍率色収差を計算してみると、その結果は下表3に示すようになる。
【表3】
Figure 2004029223
【0044】
表3から分かるように、このときの左右レンズの倍率色収差の差は3′46″であり、この値は、視力値1.0におけるランドルト環の切れ目の1′を大きく超えている。従って、この場合の左右レンズの組み合せは、色収差バランスが悪いということになる。
【0045】
そこで、倍率色収差の大きい方の−4Dレンズに、屈折率n=1.52257、n=1.51992、n=1.52861、アッベ数νd=60.18のレンズ素材を用いてみる。そのときのレンズ設計データ及び倍率色収差の計算結果を下表4に示す。
【表4】
Figure 2004029223
【0046】
この場合は、左右レンズの倍率色収差の差が12″となり、視力値1.0のランドルト環の切れ目1′より十分に小さくなっている。従って、この設計データの−4Dレンズを、表1の−2Dレンズに組み合わせることにより、両眼視したときの左右眼での色収差を略同等にすることができ、違和感を覚えないようにすることができる。
【0047】
なお、上記の例においては、2つのレンズ素材を例にあげたが、左右眼鏡レンズの倍率色収差の差が少なくとも2′以内、好ましくは1′以内である条件を満たす素材であれば、どのような素材を用いてもかまわない。
【0048】
また、上記の例においては、レンズ面の形状が球面形状での計算を行ったが、非球面形状のレンズであっても同様の効果を得ることができる。また、非球面レンズを用いて左右のベースカーブをほぼ同等とし、レンズ素材を変えて倍率色収差の差を低減することも可能である。これは、処方度数が異なれば、ベースカーブが異なり見栄えが悪くなるが、ベースカーブをほぼ同等にし、非球面を用いて非点収差等の光学性能の向上を図ると共に、レンズ素材を変えて倍率色収差の差を低減することも可能であるということである。
【0049】
また、本発明は、プリズム処方がなされた眼鏡レンズにも有効である。つまりプリズムによって色収差が発生し、左右の眼鏡レンズでの倍率色収差の差が大きくなるが、本発明を用いればその差を低減できる。さらに、上記の例では、球面度数のレンズについて計算したが、本発明は、乱視の処方のためにトーリック面あるいはアトーリック面を用いる乱視レンズにも適用可能であるのは言うまでもない。さらに本発明の思想は、累進多焦点レンズを含めた多焦点レンズにも十分適用可能である。また、上記の説明においては、設計基準波長としてd線を用いているが、近年提案されているe線を設計基準波長として計算してもよい。
具体的に述べるとe線基準のアッベ数は以下の式で定義される。
【数5】
Figure 2004029223
、n 、n はそれぞれ波長546.1nm、643.9nm、480.0nmに対する屈折率である。これらデータを用いて計算を行い、本発明を適用すればよい。この場合基準波長e線に対する色収差が計算され、C´線とF´線の差が倍率色収差になる。つまり、本発明はこのような設計基準波長に左右されないのは言うまでもない。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、従来では左右の視力差が大きい患者に眼鏡レンズを処方する場合、左右のレンズにおける倍率色収差のアンバランスにより、両眼視時に違和感を覚えさせることがあったが、本発明によれば、左右眼レンズの倍率色収差の差を所定値以下に抑えるようにしたので、両眼視時の違和感を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された眼鏡レンズの供給システムを示す構成図である。
【図2】同供給システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】眼鏡レンズの光学設計モデルを説明するための図である。
【符号の説明】
30 眼鏡レンズ製造装置
31 眼鏡レンズ設計装置
33 眼鏡レンズ加工装置

Claims (4)

  1. 度数を含む処方が左右眼で異なる眼鏡を構成する左右の眼鏡レンズを設計して製造する眼鏡レンズ製造方法において、
    前記度数を含む処方の情報に基づいて前記左眼用及び右眼用のレンズの標準設計データを生成する標準設計工程と、前記標準設定データによる左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下か否かを判定する判定工程と、前記倍率色収差の差が所定値以下でないと判定された場合に、左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下となるように、少なくとも前記基準設計の際のレンズ素材を変更して再設計データを生成する再設計工程と、再設計データを生成した場合はその再設計データに基づいて、また、再設計データを生成しない場合は前記標準設計データに基づいて、左眼用及び右眼用のレンズを加工する加工工程と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  2. 前記所定値を、各レンズの回旋角30°において2′以下とすることを特徴とする請求項1記載の眼鏡レンズの製造方法。
  3. 前記左眼用及び右眼用のレンズの少なくとも1つが非球面を有するレンズであることを特徴とする請求項1または2記載の眼鏡レンズの製造方法。
  4. 度数を含む処方が左右眼で異なる眼鏡を構成する左右の眼鏡レンズを設計して製造する眼鏡レンズ製造装置において、
    前記左眼用及び右眼用のレンズの倍率色収差の差が所定値以下となるようにレンズの設計を行う光学設計手段と、該手段の設計したデータに基づいてレンズ加工を行う手段とを備えることを特徴とする眼鏡レンズの製造装置。
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JP2006119646A (ja) * 2004-10-18 2006-05-11 Franciscus Leonardus Oosterhof 拡大鏡、及び1つ又は2つのこのような拡大鏡が設けられている眼鏡フレーム

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JP2006119646A (ja) * 2004-10-18 2006-05-11 Franciscus Leonardus Oosterhof 拡大鏡、及び1つ又は2つのこのような拡大鏡が設けられている眼鏡フレーム

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