JP2011202194A - 金属充填微細構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】絶縁性基材に設けられた貫通孔101,102等の平均開孔径が10〜5000nmであり、平均深さが10〜1000μmであり、前記貫通孔の密度が1×106〜1×1010個/mm2である絶縁性基材に、前記貫通孔への金属の仮想充填率が100%よりも大きくなるように、電解めっき処理により前記貫通孔へ金属を充填する工程、絶縁性基材の表面に付着した金属を研磨処理により除去する工程を有し、前記貫通孔内部に充填される金属の結晶粒子径と、前記絶縁性基材の表面に付着する金属の結晶粒子径と、の差が20nm以下となるように前記電解めっき処理を実施することを特徴とする金属充填微細構造体の製造方法。
【選択図】図1
Description
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材や機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
そこで、近年になり、絶縁素材の皮膜中に導電部材が貫通林立したタイプや金属球を配置したタイプの異方導電部材が注目されてきている。
即ち、半導体素子等の電子部品を、実装時と同様のポジションで回路基板に異方導電性部材を介して接触させて機能検査を行うことで、電子部品を回路基板上に実装せずに、機能検査を実施でき、上記の問題を回避することができる。
また、特許文献3には、レジストとマスクを用いて導電性の柱を電鋳で作製し、これに絶縁性素材を流し込み硬化させることで異方導電性フィルムを製造する方法が検討されている。
基体と、該基体に積層されて設けられるところの前記保持体となる絶縁層とを有する母材に対し前記絶縁層側から高エネルギビームを照射して、複数の領域において前記絶縁層の全部と前記基体の一部とを除去し、前記母材に複数の穴を形成する第1の工程と、
形成された複数の穴に、前記絶縁層の面と面一またはこの面より突出させて、前記導電部材となる導電材料を充填する第2の工程と、前記基体を除去する第3の工程と、を有することを特徴とする電気的接続部材の製造方法。」が開示されており、絶縁層として、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の種々の材質に関する検討も行なわれている。
そのため、このような電子部品に対応できるよう、異方導電性部材における導通路もその外径(太さ)をより小さくし、かつ、狭ピッチで配列させる必要が生じている。
しかしながら、上記特許文献1〜4等に記載されている異方導電性フィルムや電気的接続部材では、導通路のサイズを小さくすることは非常に困難であり、狭ピッチに対応した導電部材を高密度で充填させる方法が期待されている。
(1)アルミニウム基板を陽極酸化し、マイクロポアを有するアルミナ皮膜を形成する陽極酸化処理工程、
(2)前記陽極酸化処理工程の後に、前記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して前記絶縁性基材を得る貫通化処理工程、および
(3)前記貫通化処理工程の後に、得られた前記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材を充填して前記異方導電性部材を得る導電性部材充填工程、
を具備する、異方導電性部材の製造方法。」を提案している。
特許文献5に記載の方法によれば、本発明によれば、導通路の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の接続部材及び検査用コネクタ等として使用することができる異方導電性部材を提供することができる。
(3−a)導電性部材を有する液中に、上記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、該孔内に導電性部材を充填する処理(浸漬処理)。
(3−b)電解めっきにより、上記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理(電解めっき処理)。
(3−c)蒸着により上記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理(蒸着処理)。
導電性部材が金属の場合、これらの処理のうち、(3−b)、すなわち、電解めっき処理が、孔内への導電性部材の充填率を高くできること、蒸着処理のような真空下での処理が必要でないこと等の理由から好ましい。
上述したように、導電性部材充填工程において、電解めっき処理を実施する場合、絶縁性基材の表面から導電性部材である金属をあふれさせることが孔内への充填率を高めるうえで好ましい。この場合、絶縁性基材の表面からあふれた金属は、該絶縁性部材の表面に付着して金属膜を形成する。このようにして形成される金属膜と、孔内部に充填される金属と、の残留応力の差が原因で反りが発生し、微細構造体の平坦度が低下する。
すなわち、電解めっき処理の際に、絶縁性基材に設けられた孔内に充填された金属と、絶縁性基材の表面に付着して金属膜を形成している金属と、の間で結晶粒子径に差が生じること、このような結晶粒子径の差が原因で、孔内に充填された金属と、絶縁性基材の表面に形成された金属膜と、の間で残留応力に差が生じること、および、このような残留応力の差によって、金属充填微細構造体に反りが生じることを見出した。
本発明者らは、上記の知見に基づいて本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
上記絶縁性基材における、上記貫通孔の平均開孔径が10〜5000nmであり、上記貫通孔の平均深さが10〜1000μmであり、かつ、上記貫通孔の密度が1×106〜1×1010個/mm2であり、
上記金属充填微細構造体の製造方法が、少なくとも、下記式で求められる上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%よりも大きくなるように、電解めっき処理により上記貫通孔へ金属を充填する工程、および、電解めっき処理によって上記絶縁性基材の表面に付着した金属を研磨処理により除去する工程を有し、上記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径と、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径と、の差が20nm以下となるように上記電解めっき処理を実施することを特徴とする、金属充填微細構造体の製造方法。
貫通孔への金属の仮想充填率(%)=電解めっきによる金属析出量から求められる微細構造体における金属の仮想高さ(μm)/貫通孔の平均深さ(μm)×100
(a)定電流電解めっき処理として電解めっき処理を開始する。
(b)上記貫通孔への金属の仮想充填率が75〜125%に達した時点で電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させる。
(c)上記貫通孔への金属の仮想充填率が101%以上となるまで電解めっき処理を実施する。
(d)電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させてから電解めっき処理を終了するまでの上記貫通孔への金属の仮想充填率が1%以上となるように電解めっき処理を実施する。
規則化度(%)=B/A×100 (i)
上記式(i)中、Aは、測定範囲における貫通孔の全数を表す。Bは、一の貫通孔の重心を中心とし、他の貫通孔の縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一の貫通孔以外の貫通孔の重心を6個含むことになる前記一の貫通孔の測定範囲における数を表す。
本発明の金属充填微細構造体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、絶縁性基材に設けられた貫通孔内部に金属が充填されてなる金属充填微細構造体を製造する金属充填微細構造体の製造方法であって、
上記絶縁性基材における、上記貫通孔の平均開孔径が10〜5000nmであり、上記貫通孔の平均深さが10〜1000μmであり、かつ、上記貫通孔の密度が1×106〜1×1010個/mm2であり、
上記金属充填微細構造体の製造方法が、少なくとも、下記式で求められる上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%よりも大きくなるように、電解めっき処理により上記貫通孔へ金属を充填する工程(金属充填処理工程)、および、電解めっき処理によって上記絶縁性基材の表面に付着した金属を研磨処理により除去する工程(研磨除去処理工程)を有し、上記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径と、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径と、の差が20nm以下となるように上記電解めっき処理を実施することを特徴とする。
貫通孔への金属の仮想充填率(%)=電解めっきによる金属析出量から求められる微細構造体における金属の仮想高さ(μm)/貫通孔の平均深さ(μm)×100
電解めっきによる金属析出量と、絶縁性基材の表面積、該絶縁性基材における貫通孔の平均開孔径および貫通孔の密度と、の関係から、該貫通孔における金属の充填高さ(以下、本明細書において、単に「金属の充填高さ」という。)が計算上求められる。この値が貫通孔の平均深さ以下の場合、電解めっきによって析出する金属は、理論上は全て貫通孔に充填されることになるので、貫通孔における金属の充填高さ=微細構造体における金属の仮想高さとなる。
一方、上記の手順で求められる金属の充填高さが貫通孔の平均深さよりも大きい場合、電解めっきにより析出する金属が貫通孔からあふれて絶縁性基材の表面に金属膜を形成することとなる。この場合、電解めっきによる金属析出量のうち、金属の充填高さが貫通孔の平均深さと一致するのに要する量を差し引いた残りの部分については、絶縁性基材の表面積との関係から、絶縁性基材の表面に形成される金属膜の厚さ(以下、本明細書において、単に「金属膜の厚さ」という場合がある。)を求める。そして、金属の充填高さ(=貫通孔の平均深さ)と、金属膜の厚さと、の和が微細構造体における金属の仮想高さとなる。
本発明の製造方法に用いられる絶縁性基体は、平均開孔径が10〜5000nmであり、平均深さが10〜1000μmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010/mm2である貫通孔を有する絶縁性基体である。
ここで、アルミナは、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材(例えば、熱可塑性エラストマー等)と同様、電気抵抗率は1014Ω・cm程度である。
具体的には、上記基体は、アルミニウム基板を陽極酸化してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理(以下、「陽極酸化処理(A)」ともいう。)と、
上記陽極酸化処理後にアルミニウム基板を除去し、上記陽極酸化皮膜をアルミニウム基板から分離する分離処理(以下、「分離処理(B)」ともいう。)と、
上記分離処理により分離された陽極酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる貫通化処理(以下、「貫通化処理(C)」ともいう。)と、を施して得られるものであるのが好ましい。
以下に、アルミニウム基板および各処理について詳述する。
アルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。具体的には、例えば、アルミニウム基板を加熱オーブンに入れる方法等が挙げられる。
このような熱処理を施すことにより、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
また、熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法等が挙げられる。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸、例えば、アルミニウム基板の圧延時に発生した圧延筋等をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
本発明の製造方法において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に例示される。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
陽極酸化処理(A)は、アルミニウム基板を陽極酸化することにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する処理であり、従来公知の方法を用いることができる。
また、上記陽極酸化処理は、後述する金属充填処理工程における電解めっきを施しやすい観点から、下地基板のアルミニウムがマイクロポア底部に露出した特開2002−332578号公報のような形態で施すのが好ましい。
これらの処理は、各特許公報に記載されている処理条件で施すのが好ましい。
例えば、インプリント法(突起を有する基板またはロールをアルミニウム板に圧接し、凹部を形成する、転写法、プレスパターニング法)を用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10−121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、アルミニウム表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとして基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
粒子線法は、アルミニウム表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
粒子線法としては、例えば、特開2001−105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
ブロックコポリマー法は、アルミニウム表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003−129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
レジストパターン・露光・エッチング法は、フォトリソグラフィあるいは電子ビームリソグラフィ法によりアルミニウム板表面のレジストに露光および現像を施し、レジストパターンを形成した後これをエッチングする。レジストを設け、エッチングしてアルミニウム表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
分離処理(B)は、上記陽極酸化処理(A)後にアルミニウム基板を除去し、陽極酸化皮膜をアルミニウム基板から分離する処理である。
したがって、アルミニウム除去処理には、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する処理液を用いる。
濃度としては、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
処理温度としては、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
貫通化処理(C)は、上記分離処理(B)により分離された陽極酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる処理である。
貫通化処理では、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる。これにより、マイクロポア底部の陽極酸化皮膜が除去され、マイクロポアからなる貫通孔(以下、「マイクロポア貫通孔」ともいう。)が形成される。
貫通化処理により、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのうち70%以上が貫通することが好ましく、85%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
貫通化処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
具体的には、陽極酸化皮膜の下方、即ち、陽極酸化皮膜におけるアルミニウム基板側の部分を、レーザー等による切削処理や種々の研磨処理等を用いて物理的に除去し、マイクロポア貫通孔を有する陽極酸化皮膜とする方法が好適に例示される。
本発明の製造方法に用いられる絶縁性基体は、上述したように、平均開孔径が10〜5000nmであり、平均深さが10〜1000μmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010/mm2の貫通孔を有する。
本発明の製造方法においては、後述するように、金属充填処理工程によって上記貫通孔に金属を充填し、研磨除去処理工程によって絶縁性基材の表面に付着した金属を除去することで、異方導電性部材として用いることができる金属充填微細構造体を得ることができる。
同様に、上記貫通孔の平均深さは、50〜1000μmであるのが好ましく、70〜700μmであるのがより好ましく、100〜500μmであるのが更に好ましい。
同様に、上記貫通孔のアスペクト比は、最低でも100以上であるのが好ましく、平均値では500以上であるのが好ましい。
規則化度(%)=B/A×100 (i)
上記式(i)中、Aは、測定範囲における貫通孔の全数を表す。Bは、一の貫通孔の重心を中心とし、他の貫通孔の縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一の貫通孔以外の貫通孔の重心を6個含むことになる上記一の貫通孔の測定範囲における数を表す。
図1(A)に示される貫通孔101は、貫通孔101の重心を中心とし、他の貫通孔の縁に内接する最も半径が短い円103(貫通孔102に内接している。)を描いた場合に、円3の内部に貫通孔101以外の貫通孔の重心を6個含んでいる。したがって、貫通孔101は、Bに算入される。
図1(B)に示される貫通孔104は、貫通孔104の重心を中心とし、他の貫通孔の縁に内接する最も半径が短い円106(貫通孔105に内接している。)を描いた場合に、円106の内部に貫通孔104以外の貫通孔の重心を5個含んでいる。したがって、貫通孔104は、Bに算入されない。
また、図1(B)に示される貫通孔107は、貫通孔107の重心を中心とし、他の貫通孔の縁に内接する最も半径が短い円109(貫通孔108に内接している。)を描いた場合に、円109の内部に貫通孔107以外の貫通孔の重心を7個含んでいる。したがって、貫通孔107は、Bに算入されない。
金属充填処理工程では、電解めっき処理により上記貫通孔へ金属を充填する。但し、金属充填処理工程では、下記(1),(2)を満たすように電解めっき処理を実施する必要がある。
(1)上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%よりも大きくなるように電解めっき処理を実施する。
(2)上記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径と、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径と、の差が20nm以下となるように電解めっき処理を実施する。
しかしながら、現実には、電解めっき処理時における貫通孔への金属の充填の度合い(貫通孔への金属の充填されやすさ)は、絶縁性基材に存在する全ての貫通孔で決して同一ではない。たとえば、絶縁性基材における貫通孔の位置によって、貫通孔への金属の充填の度合いは異なる。この結果、上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%となった時点で電解めっき処理を終了すると、ある貫通孔では金属が完全に充填されていても、他の貫通孔では金属の充填が不十分となる。貫通孔への金属の充填度にこのようなばらつきが生じることは、金属充填微細構造体を異方導電性部材として使用するうえで好ましくない。
上記の観点からは、上記貫通孔への金属の仮想充填率が101%以上となるように電解めっき処理を実施することが好ましく、110%以上となるように電解めっき処理を実施することがより好ましい。
但し、絶縁性基材の表面に形成される金属膜は研磨除去処理工程で除去されるため、電解めっきによる金属析出量が過度に過剰になることは、電解めっき処理で使用する金属原料の無駄が多くなるうえ、電解めっき処理および研磨除去処理に要する時間が長くなり、微細構造体の生産性が低下するので好ましくない。このため、上記貫通孔への金属の仮想充填率が1100%以下となるように電解めっき処理を実施することが好ましく、300%以下となるように電解めっき処理を実施することがより好ましい。
しかしながら、貫通孔内に充填される金属と、貫通孔からあふれて絶縁性基材の表面に付着して金属膜を形成する金属と、では結晶粒子径に差が生じる。この原因としては、電解めっきによって析出した金属はその結晶粒子が経時的に成長することが挙げられる。また、貫通孔内部は結晶粒子の成長に際して貫通孔の孔径による制限がある系であるのに対し、貫通孔からあふれた部分は開放系であるため、結晶粒子の成長性が異なることが挙げられる。
貫通孔内に充填される金属と、貫通孔からあふれて絶縁性基材の表面に付着して金属膜を形成する金属と、で、結晶粒子径に差が生じると、貫通孔内に充填されている金属における残留応力と、絶縁性基材の表面に形成されている金属膜における残留応力と、の間に差が生じる。このような残留応力の差が大きくなると、金属充填微細構造体に反りが生じ、微細構造体の平坦度が低下するので問題である。
上記の観点からは、上記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径と、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径と、の差が20nm以下となるように電解めっき処理を実施することが好ましく、15nm以下となるように電解めっき処理を実施することがより好ましく、10nm以下となるように電解めっき処理を実施することがさらに好ましい。
なお、上記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径、および、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径は、後述する実施例に記載の手順で測定することができる。
また、上記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径、および、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径が、いずれも上記貫通孔の平均開孔径以下となるように電解めっき処理を実施することにより、貫通孔への金属の充填に伴うこれらの残留応力自体を低減することができる。すなわち、貫通孔内に充填されている金属における残留応力、および、絶縁性基材の表面に形成されている金属膜における残留応力を低減することができる。
また、貫通孔内部に充填されている金属における残留応力、および、絶縁性基材の表面に形成されている金属膜における残留応力が、いずれも30MPa以下であることが好ましく、25MPa以下であることが好ましく、15MPa以下であることがさらに好ましい。
(1)定電流電解めっき処理として電解めっき処理を開始する。
(2)上記貫通孔への金属の仮想充填率が75〜125%に達した時点で電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させる。
(3)上記貫通孔への金属の仮想充填率が101%以上となるまで電解めっき処理を実施する。
(4)電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させてから電解めっき処理を終了するまでの上記貫通孔への金属の仮想充填率が1%以上となるように電解めっき処理を実施する。
ここで、「電解めっき時の電流値」とは、単位面積あたりの電流値(mA/dm2)、即ち、電流密度のことである。
「マイナス方向」とは、陰極における金属の析出反応(例えば、銅の場合:Cu2++2e-→Cu)が増加する方向、すなわち、電解槽に流れる電気量としては増大する方向をいい、電流値(電流量)としては減少する方向である。
なお、上記(3)に示すように、上記貫通孔への金属の仮想充填率が101%以上となるまで電解めっき処理を実施するのは、[0076]に記載したように、上記絶縁性基材に存在する全ての貫通孔が金属で完全に充填するためである。
一方、電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させるタイミングが遅すぎると、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の結晶粒子の成長を促進させることができず、貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径と、上記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径と、の差を20nm以下にすることができない。このため、上記(2)に示すように、上記貫通孔への金属の仮想充填率が125%に達した時点、または、それ以前に電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させる必要がある。
この点において、上記(4)に示すように、電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させてから電解めっき処理を終了するまでの上記貫通孔への金属の仮想充填率が、5%以上となるように電解めっき処理を実施することが好ましく、10%以上となるように電解めっき処理を実施することがより好ましい。
但し、電解めっき時の電流値、すなわち、電流密度が大きすぎると局所的にめっき液濃度が低下して部分的にめっき不良が起きるおそれがあることから、上記電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大量は50A/dm2以下であることが好ましく、20A/dm2以下であることがより好ましい。
ここで、「連続的」とは、めっき時間に対して、電解めっき時の電流値を常に変化させることをいい、パルス電解のように周期的に電流密度を変化させる態様は含まない。
また、電解めっき時の金属の析出を促進させる作用を有する添加剤を添加することによっても、電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させることができる。このような添加剤の具体例としては、めっきの光沢剤として用いられるSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム)が挙げられる。
これらの中でも、処理簡便性の観点から、電位を変化させる方法、めっき浴の温度を変化させる方法、または、これらの組み合わせが好ましい。
電極膜の形成方法としては、具体的には、導電性材料(例えば、金、白金、ニッケル、パラジウムなど)の無電解めっき処理、蒸着(PVD、CVD)、直接塗布等が好適に例示される。
これらのうち、電極膜の均一性および操作の簡便性の観点から、無電解めっき処理が好ましい。
具体的には、無電解めっき処理により付与するべき金属と同種の金属もしくは金属化合物または無電解めっき処理により付与するべき金属よりもイオン化傾向の高い金属もしくは金属化合物を、上記絶縁性基体の一方の表面に付与する方法が好ましい。
付与方法としては、金属もしくは金属化合物を蒸着または直接塗布する方法が挙げられるが、特に限定されない。
上記のようにめっき核を付与したのち、無電解めっき処理により電極膜を形成する。処理方法は、温度、時間により電極層の厚さを制御できる観点から、浸漬法が好ましい。
また、形成される電極膜の通電性を高める観点から、金めっき液、銅めっき液、銀めっき液等、貴金属を有するめっき液が好ましく、経時による電極の安定性、すなわち、酸化による劣化を防ぐ観点から、金めっき液がより好ましい。
これらのうち、電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケルが好ましく、銅、金がより好ましい。
具体的には、貫通孔に銅を充填させる場合は硫酸銅水溶液を用いることができ、硫酸銅の濃度は、飽和濃度であるのが好ましく、100〜300g/Lであるのがより好ましい。電解液中に塩酸を添加すると、貫通孔への銅の充填を促進することができる。この場合の塩酸濃度は、10〜20g/Lであるのが好ましい。
また、貫通孔に金を充填させる場合はテトラクロロ金の水溶液または硫酸溶液を用いることができ、ニッケルを充填させる場合は塩化ニッケルの水溶液または硫酸溶液を用いることができる。
一方、めっき液の温度としては、2〜80℃が好ましく、10〜70℃がより好ましい。
親水化処理としては、シリケート処理と称されるSi元素を貫通孔の内表面に付与しておく方法が好適に例示される。
Si元素を貫通孔の内表面に付与する方法は特に限定されないが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す。)と濃度によって保護膜厚の調節が可能である。
ここで、Mとしては、特にナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
また、モル比は、〔SiO2〕/〔M2O〕が0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましい。
更に、SiO2の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
研磨除去処理工程では、電解めっき処理によって上記絶縁性基材の表面に付着した金属、より具体的には、上記絶縁性基材の表面に付着して金属膜を形成している金属を研磨処理により除去する。
研磨除去処理工程において、使用する研磨処理方法は特に限定されず、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理、化学研磨処理、バフ研磨処理等の各種研磨処理を使用することができる。これらの中でも、CMP処理が研磨処理面の平滑性に優れることから好ましい。
CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPLANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
なお、陽極酸化皮膜を研磨したくないので、層間絶縁膜やバリアメタル用のスラリーを用いるのは好ましくない。
電解めっき処理を実施するために絶縁性基体の一方の表面に形成した電極膜も、CMP処理により除去することが好ましい。
そのため、本発明の金属充填微細構造体は、絶縁性基体に設けられた、平均開孔径が10〜5000nmであり、平均深さが10〜1000μmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010/mm2である貫通孔が、金属で充填された構造を有するものである。
したがって、本発明の金属微細構造体は、高設置密度の導通路を達成し、高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の電気的接続部材や検査用コネクタ等として使用することができる。
本発明の金属微細構造体は、絶縁性基材に設けられた微細孔への金属の充填率が高く、かつ、金属充填に伴う残留応力による反りの発生が抑制されているため、平坦度が良好である。
(A)鏡面仕上げ処理(電解研磨処理)
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下組成の電解研磨液を用い、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、特開2007−204802号公報に記載の手順にしたがって自己規則化法による陽極酸化処理を施した。
具体的には、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で、5時間のプレ陽極酸化処理を施した。
その後、プレ陽極酸化処理後のアルミニウム基板を、0.2mol/L無水クロム酸、0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で、16時間の再陽極酸化処理を施し、膜厚130μmの酸化皮膜を得た。
なお、プレ陽極酸化処理および再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
次いで、20質量%塩化水銀水溶液(昇汞)に20℃、3時間浸漬させることによりアルミニウム基板を溶解し、更に、5質量%リン酸に30℃、30分間浸漬させることにより陽極酸化皮膜の底部を除去し、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる微細構造体(絶縁性基材)を作製した。
密度(個/μm2)=(1/2個)/{Pp(μm)×Pp(μm)×√3×(1/2)}
次いで、上記で得られた微細構造体に、温度400℃で1時間の加熱処理を施した。
次いで、上記加熱処理後の微細構造体の一方の表面に電極膜を形成する処理を施した。
具体的には、0.7g/L塩化金酸水溶液を、一方の表面に塗布し、140℃で1分乾燥させ、更に500℃で1時間焼成することにより、金のめっき核を作製した。
その後、無電解めっき液としてプレシャスファブACG2000基本液/還元液(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース社製)を用いて、50℃で1時間浸漬処理し、表面との空隙のない電極膜を形成した。
次いで、上記電極膜を形成した面に銅電極を密着させ、該銅電極を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施すことで、貫通孔に銅が充填された金属充填微細構造体を作製した。
銅めっき液組成
・硫酸銅 100g/L
・硫酸 50g/L
・塩酸 15g/L
・温度 25℃
電解めっき処理は、定電流電解めっき処理として開始した。すなわち、−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始した。その後、上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%となった時点で、電位を−2.0Vから−4.0Vに増加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させて、上記貫通孔への金属の仮想充填率が150%になるまで電解めっき処理を実施して、貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大量は6A/dm2であり、電流値の変化率は1A/dm2・秒であった。
微細構造体(絶縁性基材)の表面積が2500mm2であり、マイクロポアの平均開口径が30nmであり、マイクロポア密度が1.5億個/mm2であるので、金属の充填高さは下記式によって求めることができる。
金属の充填高さ(μm)=電解めっきによる銅の析出量(mm3)/(π×(30nm/2)2×1.5億個/mm2×2500mm2。
上記式によって求まる金属の充填高さが、貫通孔としてのマイクロポアの深さ(微細構造体の膜厚)である130μm以下の場合、金属の充填高さ=微細構造体における金属の仮想高さとなる。この値と貫通孔としてのマイクロポアの深さ(=130μm)とから上記式により貫通孔への金属の仮想充填率を求めることができる。
なお、上記式によって求まる金属の充填高さ=130μmとなる時点の電解めっきによる銅の析出量は35mm3であり、この時点の電解めっきの電気量をファラデー則から計算すると934Cとなる。
一方、電解めっきによる銅の析出量が35mm3よりも大きい場合、銅の析出量から35mm3を差し引いた残りの部分を、絶縁性基材の表面積(=2500mm2)で割ることによって絶縁性基材の表面に形成される金属膜の厚さを求めることができる。この場合、金属の充填高さ(=130μm)と、金属膜の厚さと、の和が微細構造体における金属の仮想高さとなる。
この値と貫通孔としてのマイクロポアの深さ(=130μm)から上記式により貫通孔への金属の仮想充填率を求めることができる。
−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始し、上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%と等しくなった時点で、めっき液の温度を25℃から50℃に増加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させた以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大量は6A/dm2であり、電流値の変化率は1A/dm2・秒であった。
−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始し、上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%となった時点で、めっき液の硫酸銅濃度を150g/Lから300g/Lに増加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させた以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大量は6A/dm2であり、電流値の変化率は1A/dm2・秒であった。
−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始し、上記貫通孔への金属の仮想充填率が100%となった時点で、めっきの光沢剤であるSPS(3,3’−ジチオビス〔1−プロパンスルホン酸〕二ナトリウム)(和光純薬工業株式会社製)を50ppm添加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させた以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大量は6A/dm2であり、電流値の変化率は1A/dm2・秒であった。
銅めっき液の代わりに、以下の組成のニッケルめっき液を使用した点を除いて、実施例1と同様の手順を実施して貫通孔にニッケルが充填された微細構造体を作製した。
なお、ニッケルの析出量が35mm3となる時点の電解めっきの電気量は、1012Cである。
・硫酸ニッケル 300g/L
・塩化ニッケル 60g/L
・ホウ酸 40g/L
・温度 50℃
−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始し、上記貫通孔への金属の仮想充填率が80%となった時点で、電位を−2.0Vから−4.0Vに増加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させた以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始し、上記貫通孔への金属の仮想充填率が110%となった時点で、電位を−2.0Vから−4.0Vに増加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させた以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
上記(C)貫通化処理の時点で30nmであった貫通孔としてのマイクロポアの平均開口径を、40℃, 5%のリン酸に10分浸漬することで、50nmに拡大した以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
ここで、平均開口径は、FE−SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、50点測定した平均値として算出した。
上記(B)陽極酸化処理において、再陽極酸化処理時間を5時間とし、酸化皮膜の膜厚を40μmとした以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
上記処理(F)金属充填処理工程において、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させることなしに、−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を実施した以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
上記処理(F)金属充填処理工程において、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させることなしに、−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を実施した以外は実施例5と同様の手順を実施して貫通孔にニッケルが充填された微細構造体を作製した。
上記処理(F)金属充填処理工程において、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させることなしに、−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を実施した以外は実施例8と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
−2.0Vの一定電位で電解めっき処理を開始し、上記貫通孔への金属の仮想充填率が50%となった時点で、電位を−2.0Vから−4.0Vに増加することにより、電解めっき時の電流値をマイナス方向に増大させた以外は実施例1と同様の手順を実施して貫通孔に銅が充填された微細構造体を作製した。
結晶粒子径(nm)=(D×I)/A (ii)
上記式(ii)中、Dは各配向での結晶粒子径(nm)、Iは各配向での回折強度、Aは配向数を表す。
各配向での結晶粒子径(nm)= Κ×λ/(β×cosθ) (iii)
前記式(iii)中、Κはscherrer定数、λは測定X線波長(nm)、βは半価幅(rad)、θは回折線のブラッグ角度を表す。具体的な数値としては、scherrer定数は0.9、測定X線波長はCr Kα線の22.9nmとして、半価幅と回折線のブラッグ角度は測定により得た。ここで、FIB切削には日立集束イオンビーム加工観察装置FB2200を、X線回折測定にはブルカー製D8 Discover with GADDSをそれぞれ使用した。実施例1〜9および比較例1〜4の微細構造体における測定結果を表1に示す。
特に、貫通孔内部に充填された金属、および、絶縁性基材の表面に形成された金属膜の平均結晶粒子径がいずれも貫通孔の平均開孔径以下の実施例1,4,5,8,9では、残留応力の差がより低減されていた。また、これらの実施例では、貫通孔内部に充填されている金属における残留応力、および、絶縁性基材の表面に形成されている金属膜における残留応力が低減されており、いずれも30MPa以下であった。
なお、金属膜の結晶粒子径が貫通孔の開口径よりも大きい例(実施例2,3,5,6,比較例1〜4)では、金属膜における残留応力よりも貫通孔に充填されている金属における残留応力が大きくなっているが、電解めっき処理の実施後、金属膜における残留応力が増加することによって微細構造体に反りが発生し、この反りの発生により金属膜における残留応力が開放され減少するのに対して、貫通孔内部に充填されている金属における残留応力は反りの発生により増加することによるものと考える。
実施例1〜9の金属充填微細構造体は、反りの発生が抑制されており、平坦度が良好であった。一方、比較例1〜4の金属充填微細構造体は、反りの発生により平坦度が低下していた。
52 マイクロポア
101、102、104、105、107、108 貫通孔
103、106、109 円
Claims (9)
- 絶縁性基材に設けられた貫通孔内部に金属が充填されてなる金属充填微細構造体を製造する金属充填微細構造体の製造方法であって、
前記絶縁性基材における、前記貫通孔の平均開孔径が10〜5000nmであり、前記貫通孔の平均深さが10〜1000μmであり、かつ、前記貫通孔の密度が1×106〜1×1010個/mm2であり、
前記金属充填微細構造体の製造方法が、少なくとも、下記式で求められる前記貫通孔への金属の仮想充填率が100%よりも大きくなるように、電解めっき処理により前記貫通孔へ金属を充填する工程、および、電解めっき処理によって前記絶縁性基材の表面に付着した金属を研磨処理により除去する工程を有し、前記貫通孔内部に充填される金属の平均結晶粒子径と、前記絶縁性基材の表面に付着する金属の平均結晶粒子径と、の差が20nm以下となるように前記電解めっき処理を実施することを特徴とする金属充填微細構造体の製造方法。
貫通孔への金属の仮想充填率(%)=電解めっきによる金属析出量から求められる微細構造体における金属の仮想高さ(μm)/貫通孔の平均深さ(μm)×100 - 前記貫通孔内部に充填された金属の平均結晶粒子径、および、前記絶縁性基材の表面に付着した金属の平均結晶粒子径が、いずれも前記貫通孔の平均開孔径以下となるように前記電解めっき処理を実施する、請求項1に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
- 下記(1)〜(4)を満たすように、前記電解めっき処理を実施する、請求項1または2に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
(1)定電流電解めっき処理として電解めっき処理を開始する。
(2)前記貫通孔への金属の仮想充填率が75%〜125%に達した時点で電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させる。
(3)前記貫通孔への金属の仮想充填率が101%以上となるまで電解めっき処理を実施する。
(4)電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させてから電解めっき処理を終了するまでの前記貫通孔への金属の仮想充填率が1%以上となるように電解めっき処理を実施する。 - 前記電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大量が0.5A/dm2以上である、請求項3に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
- 前記電解めっき時の電流値をマイナス方向へ増大させる際の電流値の変化率が0.1A/dm2・秒以上である、請求項4に記載の電解めっき方法。
- 前記電解めっき時の電流値のマイナス方向への増大が、電位、温度、めっき浴内の金属イオン濃度、および、めっき液の液流速度からなる群から選択される少なくとも1つを変化させることにより行なわれる請求項3〜5のいずれかに記載の金属充填微細構造体の製造方法。
- 前記電解めっき時の電流値をめっき時間に対して連続的にマイナス方向へ増大させる、請求項3〜6のいずれかに記載の金属充填微細構造体の製造方法。
- 前記貫通孔について下記式(i)により定義される規則化度が50%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の金属充填微細構造体の製造方法。
規則化度(%)=B/A×100 (i)
上記式(i)中、Aは、測定範囲における貫通孔の全数を表す。Bは、一の貫通孔の重心を中心とし、他の貫通孔の縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一の貫通孔以外の貫通孔の重心を6個含むことになる前記一の貫通孔の測定範囲における数を表す。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の金属充填微細構造体の製造方法により得られる金属充填微細構造体。
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