JP2011201755A - 単結晶炭化珪素の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大面積を有する高品質の単結晶炭化珪素を、工業的規模で安定に供給し得る結晶製造方法を提供する。
【解決手段】種結晶1を用いた昇華再結晶法により単結晶炭化珪素を成長させる際に、予めCMP処理を施した炭化珪素基板を種結晶1として使用する。また、予めCMP処理及びエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を施した炭化珪素基板を種結晶1として使用してもよい。さらに、予め黒鉛坩堝3の上部蓋4と、種結晶1をグラファイト系接着剤により接着固定し、その後接着された種結晶1の表面にCMP処理、もしくはCMP処理及びエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を施して坩堝3を組み立ててもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶炭化珪素の製造方法に係わり、特に、青色発光ダイオードや電子デバイスなどの基板ウェハとなる良質で大型の単結晶インゴットの成長方法に関するものである。
炭化珪素(SiC)は耐熱性及び機械的強度も優れ、放射線に強いなどの物理的、化学的性質から耐環境性半導体材料として注目されている。6H型の炭化珪素結晶は室温で約3eVの禁制帯幅を持ち、青色発光ダイオード材料として用いられている。また、4H型の単結晶炭化珪素は、高い電子移動度を有し、高周波デバイスや高耐圧電子デバイスへの適用が期待されている。しかしながら、大面積を有する高品質の単結晶炭化珪素を、工業的規模で安定に供給し得る結晶成長技術は、いまだ確立されていない。それゆえ、炭化珪素は、上述のような多くの利点及び可能性を有する半導体材料にもかかわらず、その実用化が阻まれていた。
従来、研究室程度の規模では、例えば昇華再結晶法(レーリー法)で単結晶炭化珪素を成長させ、半導体素子の作製が可能なサイズの単結晶炭化珪素を得ていた。しかしながら、この方法では、得られた単結晶の面積が小さく、その寸法及び形状を高精度に制御することは困難である。また、炭化珪素が有する結晶多形及び不純物キャリア濃度の制御も容易ではない。また、化学気相成長法(CVD法)を用いて珪素(Si)等などの異種基板上にヘテロエピタキシャル成長させることにより立方晶の単結晶炭化珪素を成長させることも行われている。この方法では、大面積の単結晶は得られるが、基板との格子不整合が約20%もあること等により多くの欠陥を含む(〜107cm−2)単結晶炭化珪素しか成長させることができず、高品質の単結晶炭化珪素を得ることは容易でない。
これらの問題点を解決するために、種結晶を用いて昇華再結晶を行う改良型のレーリー法が提案されている。この方法では、種結晶を用いているため結晶の核形成過程が制御でき、また不活性ガスにより雰囲気圧力を数Torrから100Torr程度に制御することにより結晶の成長速度等を再現性良くコントロールできる。さらに、結晶の抵抗率は、不活性ガスからなる雰囲気中に不純物ガスを添加する、あるいは炭化珪素原料粉末中に不純物元素あるいはその化合物を混合することにより、制御可能である。単結晶炭化珪素中の置換型不純物として代表的なものに、窒素(N型)、ホウ素、アルミニウム(P型)がある。この内、窒素は単結晶炭化珪素中で炭素原子位置を、ホウ素、アルミニウムは珪素原子位置を置換する。
このように種結晶を用いた昇華再結晶法を用いれば、結晶多形(ポリタイプ)、形状、及び抵抗率を制御しながら、大型の単結晶炭化珪素を再現性良く成長させることができる。
発明が解決しようとする課題
上記従来方法で単結晶炭化珪素を成長した場合、通常の温度条件(摂氏2200度から2400度)では、W.F.Nippenberg,Philips Research Reports vol.18(1963)pp.161−274に記載されているように、6H型の単結晶炭化珪素が高い確率で形成されてしまい、高周波高耐圧電子デバイスに適した4H型の単結晶炭化珪素を得るのは困難である。また、M.Kanay a et al.,Applied Physics Letters vol.58(1988)pp.56−58に、種結晶の温度を低下させ、さらに雰囲気圧力を低下させることにより結晶成長の過飽和度を上昇させ、4H型単結晶炭化珪素の形成確率を高める方法が記載されているが、一般に過飽和度を高めると欠陥発生の確率も上昇してしまい、やはり好ましくない。また、Yu.M.Tairov et al.,Physica Status Solidi vol.25(1974)p.349、A.Ito et al.,Applied Physics Letters vol.65(1994)pp.1400−1402に、Sc、Ceといった希土類金属を炭化珪素成長表面に供給し、表面エネルギーを変化させ4H型結晶の核発生を促進する方法が記載されているが、半導体デバイスへの応用を考えた場合には、これらの重金属の使用は好ましくない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大型のウェハを切り出せる、欠陥が少なく良質の4H型単結晶インゴットを再現性良く製造し得る単結晶炭化珪素の製造方法を提供するものである。
課題を解決するための手段
本発明の単結晶炭化珪素の製造方法は、種結晶を用いた昇華再結晶法により単結晶炭化珪素を成長させる際に、予めCMP処理を施した炭化珪素基板、または予めエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を施した炭化珪素基板を種結晶として使用することを特徴とするものである。
本発明の製造方法では、種結晶を用いた昇華再結晶法により単結晶炭化珪素を成長させる際に、予めCMP処理を施した炭化珪素基板、または予めエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を施した炭化珪素基板を種結晶として使用することを特徴とするものである。
種結晶を用いて昇華再結晶を行う改良型のレーリー法では、物理研磨により表面を鏡面に磨いた種結晶を使用するのが一般的である。一方、製造された炭化珪素ウエハにエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を形成する場合には、ウエハ表面をCMP処理(化学的物理的研磨)によって平坦かつ均一にしておくのが一般的である。
この違いは、主としてコストによるものである。エピタキシャル成長がクリーンルーム内の清浄な環境で製膜されることに対して、改良型のレーリー法では装置内部がクリーンな環境ではないために、コストが高いCMP処理は研磨として過剰品質であると考えられているためである。
本発明は、高コストであるCMP処理、もしくはCMP処理に加えてエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜付きの炭化珪素基板を種結晶として使用することにより、より高品質な炭化珪素単結晶を歩留まり良く製造するものである。
以下に、本発明の詳細を実施例に基づき述べる。
図1は、本発明の実施に用いられる製造装置であり、種結晶を用いた改良型レーリー法によって単結晶炭化珪素を成長させる装置の一例である。まず、この単結晶成長装置について簡単に説明する。結晶成長は、種結晶として用いた単結晶炭化珪素基板1の上に、原料である炭化珪素粉末2を昇華再結晶させることにより行われる。
種結晶の炭化珪素結晶基板1を、CMP処理を行う前に黒鉛坩堝3の蓋4の内面に接着する。接着は、オーデック社製グラフィボンド551Rを使用し、窒素雰囲気で接着後1200℃で2時間の熱処理を行う。
次に、蓋4の内面に接着された炭化珪素結晶基板1の表面にCMP処理を行う。CMP処理後、更にエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜をCVD(化学的気相成長法)によって製膜しても良い。CMP処理は、炭化珪素単結晶ウエハの製品を製造するのと同じ条件が好ましい。使用する化学薬品と研磨条件は研磨メーカーによりさまざまであるが、Ra(平均表面粗さ)で0.1から0.2nmであり、表面が原子レベルで規則的に平坦になっていることが求められる。
CMP処理もしくはCMP処理に加えてエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を付けた種結晶の炭化珪素結晶基板1を、黒鉛坩堝3の蓋4の内面に取り付ける。その際、基板1の表面に触れないように注意する。原料の炭化珪素粉末2は、黒鉛坩堝3の内部に充填されている。
このような黒鉛坩堝3を、二重石英管5の内部に、黒鉛の支持板6により設置する。黒鉛坩堝3の周囲には、熱シールドのための黒鉛製フェルト7を設置する。二重石英管5を真空排気装置13により10−5Torrまで高真空排気し、内部雰囲気をArガス供給源に接続されている配管9を通じてArガス用マスフローコントローラ10を介して供給されるArガスによって圧力制御しながら石英管内圧力を約300Torrに保持する。
二重石英管5の外周に設置された誘導加熱コイル8に高周波電流を流すことにより黒鉛坩堝3を加熱し、原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた。坩堝温度の計測は、坩堝上部及び下部を覆うフェルトの中央部に直径2〜4mmの光路を設け坩堝上部及び下部からの光を取りだし、二色温度計を用いて行う。坩堝下部の温度を原料温度とする。
図1において、黒鉛坩堝蓋4の位置が誘導加熱コイル8よりも上方に位置しているのは、コイル中央位置の炭化珪素粉末原料2に比べて、単結晶炭化珪素基板1の温度を約100℃低く保持するためである。
炭化珪素粉末原料2の温度を2400℃、単結晶炭化珪素基板1の温度を2300℃に保持するため、単結晶炭化珪素基板1から結晶が成長していく速度に合わせて、支持板6を回転させながら徐々に上方に移動する。本実施例では、結晶の成長速度に合わせて0.5mm/分とした。
48時間後に誘導加熱コイル8をオフにし、室温付近まで自然冷却して黒鉛坩堝3を装置から取り出し、黒鉛坩堝蓋4を開けて蓋内部に成長した単結晶炭化珪素を取り出した。
こうして得られた単結晶炭化珪素をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、CMP処理したものも、CMP処理に加えてエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を付けたものも、共に4H型の単結晶炭化珪素が成長していることを確認できた。成長した結晶は種結晶上より成長最表面まで均一で、高品質の4H型単結晶炭化珪素であった。
比較例
以下に、本発明の比較例を述べる。
比較例として、単結晶炭化珪素基板1に物理的研磨(鏡面研磨)した基板を使用した。
Ra(平均表面粗さ)は0.4nmであった。
単結晶炭化珪素基板1を黒鉛坩堝蓋4に接着し、黒鉛坩堝3に設置した。実施例と全く同じ手順で加熱及び同じ時間の保持を行い単結晶炭化珪素を成長させた。
こうして得られた単結晶炭化珪素をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、4H型の単結晶炭化珪素が成長していることを確認できたが、成長した結晶はその一部が6H型の単結晶炭化珪素に変化しており、高品質な結晶は得られなかった。
発明の効果
以上説明したように、本発明によれば、種結晶を用いた昇華再結晶法による単結晶炭化珪素の製造方法において、CMP処理もしくはCMP処理に加えてエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を付けた種結晶を使用することによって良質の4H型単結晶炭化珪素を再現性良く成長させることができる。このような4H型単結晶炭化珪素を成長用基板として用い、気相エピタキシャル成長法により、この基板上に単結晶炭化珪素薄膜を成長させれば、電気的特性の優れた高耐圧・耐環境性電子デバイスを製作することができる。
本発明の製造方法に用いられる単結晶成長装置の一例を示す構成図である。
1 単結晶炭化珪素基板(種結晶)
2 炭化珪素粉末原料
3 黒鉛坩堝
4 黒鉛坩堝蓋
5 二重石英管
6 支持板
7 黒鉛製フェルト
8 誘導加熱コイル
9 Arガス配管
10 Arガス用マスフローコントローラ
11 真空排気装置

Claims (3)

  1. 種結晶を用いた昇華再結晶法により単結晶炭化珪素を成長させる際に、予めCMP処理を施した炭化珪素基板を種結晶として使用することを特徴とする4H型単結晶炭化珪素の製造方法。
  2. 種結晶を用いた昇華再結晶法により単結晶炭化珪素を成長させる際に、予めCMP処理及びエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を施した炭化珪素基板を種結晶として使用することを特徴とする4H型単結晶炭化珪素の製造方法。
  3. 予め黒鉛坩堝の上部蓋と、種結晶をグラファイト系接着剤により接着固定し、その後接着された種結晶表面にCMP処理、もしくはCMP処理及びエピタキシャル成長による炭化珪素皮膜を施して坩堝を組み立てることを特徴とする4H型単結晶炭化珪素の製造方法。
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