JP2005239496A - 炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料と炭化珪素単結晶及びその製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料と炭化珪素単結晶及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、高純度な炭化珪素単結晶の製造方法及びそれに用いられる原料を提供する。
【解決手段】 昇華再結晶法により成長した炭化珪素単結晶又は炭化珪素多結晶の一方又は双方の粉砕物である炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料、及び、この原料を用いた昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭化珪素単結晶及びその製造方法に係わり、特に、電子デバイスの基板ウェハとなる良質で大型の単結晶インゴット及びその製造方法に関するものである。
炭化珪素(SiC)は、耐熱性及び機械的強度も優れ、放射線に強い等の物理的、化学的性質から耐環境性半導体材料として注目されている。また、近年、青色から紫外にかけての短波長光デバイス、高周波高耐圧電子デバイス等の基板ウェハとしてSiC単結晶ウェハの需要が高まっている。しかしながら、大面積を有する高品質のSiC単結晶を、工業的規模で安定に供給し得る結晶成長技術は、いまだ確立されていない。それゆえ、SiCは、上述のような多くの利点及び可能性を有する半導体材料にもかかわらず、その実用化が阻まれていた。
従来、研究室程度の規模では、例えば、昇華再結晶法(レーリー法)でSiC単結晶を成長させ、半導体素子の作製が可能なサイズのSiC単結晶を得ていた。しかしながら、この方法では、得られた単結晶の面積が小さく、その寸法及び形状を高精度に制御することは困難である。また、SiCが有する結晶多形及び不純物キャリア濃度の制御も容易ではない。また、化学気相成長法(CVD法)を用いて、珪素(Si)等の異種基板上にヘテロエピタキシャル成長させることにより、立方晶のSiC単結晶を成長させることも行われている。この方法では、大面積の単結晶は得られるが、基板との格子不整合が約20%もあること等により、多くの欠陥(〜10cm−2)を含むSiC単結晶しか成長させることができず、高品質のSiC単結晶を得ることは容易でない。これらの問題点を解決するために、SiC単結晶ウェハを種結晶として用いて昇華再結晶を行う、改良型のレーリー法が提案されている(非特許文献1)。この方法では、種結晶を用いているため結晶の核形成過程が制御でき、また、不活性ガスにより雰囲気圧力を100Paから15kPa程度に制御することにより、結晶の成長速度等を再現性良くコントロールできる。図1を用いて、改良レーリー法の原理を説明する。種結晶となるSiC単結晶と原料となるSiC結晶粉末(通常、アチソン法で作製された研磨材を洗浄・前処理したものが使用される)は、坩堝(通常黒鉛)の中に収納され、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中(133Pa〜13.3kPa)、2000〜2400℃に加熱される。この際、原料粉末に比べ、種結晶がやや低温になるように、温度勾配が設定される。原料は、昇華後、濃度勾配(温度勾配により形成される)により、種結晶方向へ拡散、輸送される。単結晶成長は、種結晶に到着した原料ガスが種結晶上で再結晶化することにより実現される。改良レーリー法を用いれば、SiC単結晶の結晶多形(6H型、4H型、15R型等)及び形状、キャリア型及び濃度を制御しながら、SiC単結晶を成長させることができる。
現在、上記の改良レーリー法で作製したSiC単結晶から、口径2インチ(50.8mm)から3インチ(76.2mm)のSiC単結晶ウェハが切り出され、エピタキシャル薄膜成長、デバイス作製に供されている。しかしながら、現在市販されているSiC単結晶は、まだ品質面での問題が多く、今後SiC単結晶及びデバイスを実用化していくためには、結晶品質の改善が必須である。
一般的に言って、良好な結晶品質の単結晶を成長するには、成長環境に可能な限り不純物がないのが好ましい。これは、結晶成長にとって望ましいステップフロー成長等の成長様式を不純物が阻害し、良好な結晶成長が実現できないためである。また、SiC単結晶の高周波デバイス応用では、基板の高抵抗率化(10Ωcm以上)が望まれている。基板の高抵抗率化は、その上に作製される素子の寄生容量低減と素子間分離において不可欠な技術となっている。現在、このような高抵抗率基板は、SiC単結晶にバナジウム元素を添加する方法、あるいは、結晶を高純度化する方法により、工業的に得られている。バナジウムを添加して高抵抗率のSiC単結晶を製造する方法では、上記した昇華再結晶法において、原料となるSiC結晶粉末中に金属バナジウムあるいはバナジウム化合物(珪化物、炭化物等)を含有させ、SiC原料と共に昇華させることにより、成長結晶中に添加している(例えば、非特許文献2)。
Yu.M. Tairov and V.F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, vol. 52 (1981) pp. 146−150 S.A. Reshanov et al., Materials Science Forum, vols. 353−356 (2001) pp. 53−56
しかしながら、この方法では、先に述べたように、不純物として導入したバナジウムが良好な結晶成長を阻害し、一般に結晶品質に多くの問題を残す。一方、結晶を高純度化する方法では、このような不純物に起因した問題は起こらないが、改良レーリー法によるSiC単結晶成長において、結晶の高純度化が極めて難しいという問題がある。この原因は、改良レーリー法によるSiC単結晶成長に適した高純度のSiC原料が存在しないことにある。従来技術の研磨材としてのSiOを原料として製造されたSiC単結晶の純度は低く、結晶成長中の残留不純物によって、結晶の高品質化並びに高抵抗率化が阻害される。高純度のSiC粉末は、CVD法、プラズマ合成法等により製造、市販されているが、結晶多形が立方晶(3C型)タイプであったり、結晶粒径が極めて小さな(1μm以下)微粉末であったり、と改良レーリー法に適したものではない。立方晶タイプや微粉末の原料を使用すると、原料の昇華速度の制御が極めて困難となる。このように、改良レーリー法におけるSiC単結晶の高純度化は、高純度の原料が存在しない、または得られないといった問題により、その実現が阻まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高純度なSiC単結晶の製造方法及びそれに用いられる原料を提供するものである。
本発明は、
(1) 昇華再結晶法により成長したSiC単結晶又はSiC多結晶の一方又は双方の粉砕物であるSiC単結晶育成用SiC原料、
(2) 前記昇華再結晶法を2回以上経てなる(1)記載のSiC単結晶育成用SiC原料、
(3) 前記粉砕物の平均粒径が10μm〜3mmである(1)記載のSiC単結晶育成用SiC原料、
(4) 昇華再結晶法により種結晶上にSiC単結晶を成長させる工程を包含するSiC単結晶の製造方法であって、原料として(1)〜(3)のいずれかに記載のSiC単結晶育成用SiC原料を用いることを特徴とするSiC単結晶の製造方法、
(5) (4)に記載の方法で得られたSiC単結晶であって、該単結晶の口径が50mm以上300mm以下であるSiC単結晶、
(6) (5)記載のSiC単結晶を切断、研磨してなるSiC単結晶基板、
(7) (6)記載のSiC単結晶基板に、SiC薄膜をエピタキシャル成長してなるSiCエピタキシャルウェハ、
(8) (6)記載のSiC単結晶基板に、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)又はこれらの混晶をエピタキシャル成長してなる薄膜エピタキシャルウェハ、
である。
本発明によれば、種結晶を用いた改良型レーリー法により、良質且つ高純度・高抵抗率のSiC単結晶を再現性良く成長させることができる。このような結晶から切り出したSiC単結晶ウェハを用いれば、特性の優れた高周波電子デバイスを作製することができる。
本発明の製造方法では、改良レーリー法自体が持つSiC結晶の高純度化作用を利用して、高純度のSiC原料及び単結晶を製造する。本発明は、改良レーリー法(昇華再結晶法)によりSiC単結晶を成長させる際に、別途昇華再結晶法により成長したSiC単結晶あるいは多結晶を粉砕したものを、原料として用いることを特徴とするSiC単結晶の製造方法である。
昇華再結晶化プロセスの過程で、固相(結晶粉末)→気相→固相(バルク単結晶あるいは多結晶)と、物質は相変態を起こすが、この過程で、不純物は各相変態過程の分配係数に応じて、固体あるいは気体中に取り込まれる。不純物の分配係数Pは、例えば、気相から固相への相変態を考えた場合、固体中の不純物濃度Nを気体中の不純物濃度Nで除した値(N/N)として定義される。すなわち、ある特定の不純物の分配係数が1.0以下であるということは、気相→固相の相変態過程に際して、固体中の不純物濃度Nが、気体中の不純物濃度Nよりも低くなることを意味している。逆に、分配係数が、1.0よりも大きい場合は、固体中の不純物濃度Nが、気体中の不純物濃度Nよりも高くなることを意味する。
また、昇華再結晶プロセスにおいては、固相→気相→固相プロセストータルの不純物分配係数も考えることができる。この分配係数P2は、形成される固体(単結晶)中の不純物濃度NS1を原料となる固体(粉末)中の不純物濃度NS2で除した値(NS1/NS2)として定義される。表1に、SiC単結晶において代表的な不純物の原料中と単結晶中の不純物濃度及び分配係数P2を示す。不純物により程度の差はあるが、原料中の不純物濃度に比べ、単結晶中の不純物濃度は、概ね数百分の1から数分の1程度に減少しており、分配係数P2も0.001〜0.3程度となっている。
Figure 2005239496
本発明では、まず通常の研磨材原料(アチソン法により製造されたもの)を用いて、昇華再結晶法によりSiC単結晶を製造する。これを第1回目の結晶成長とする。その後、このSiC単結晶を粉砕し、第2回目のSiC単結晶成長の原料とする。粉砕は、ダイヤモンド、アルミナ、金属カーバイド等の硬質材料製の工具、あるいは、これらの材料を表面にコーティングした工具を用いて行う。粉砕の程度は、最終粒度が、昇華再結晶化プロセスに適する平均粒径10μm以上3mm以下になるまで行う。粉砕時に不純物が混入されることも考えられるが、これらの不純物は、製造された粉末結晶の中に取り込まれることはなく、その表面に付着している。結晶粒表面に付着した不純物は、有機洗浄、酸・アルカリ洗浄等を十分に行うことにより、除去することが可能である。
発明者らは、上記のプロセスに従って製造された原料を用いて、第2回目の結晶成長を行った場合に、その成長されたSiC単結晶中のほぼ全ての不純物が、第1回目の結晶成長により製造されたSiC単結晶中の不純物濃度に比べて、大幅に低減されることを数多くの実験から見出した。
上記のSiC単結晶成長を利用した原料の高純度化は、その回数を重ねることにより(例えば、第2回目の結晶を原料として第3回目の結晶を製造する)、その効果を最大限に利用できる。ただし、上記高純度化プロセスの回数を重ねると、最終的には、原料以外の部分(例えば、坩堝等)からの不純物混入が主となり、それ以上の原料の高純度化は意味がなくなる。したがって、原料製造のコストも加味して考えると、通常は1回以上5回以下程度の高純度化が行われることになる。
また、最終段の結晶(上記の例では、第2回目に成長した結晶)以外は、粉砕して原料にしてしまうので、特に単結晶として製造する必要がない。従って、その形態は多結晶でも構わない。上記した昇華再結晶法では、種結晶を用いない成長を行えば、容易にバルク状の多結晶も製造できる。
本発明により製造されたSiC粉末原料を用いれば、高純度のSiC単結晶を製造できる。高純度なSiC単結晶は、高い抵抗率を示し、高周波デバイス用途に適している。また、その結晶成長過程で、不純物がステップフロー成長等の望ましい結晶成長様式を阻害することがないために、結晶品質も優れたSiC単結晶が製造できる。
このようにして製造したSiC単結晶を切断、研磨してなるSiC単結晶ウェハは、50mm以上300mm以下の口径を有しているので、このウェハを用いて各種デバイスを製造する際、工業的に確立されている従来の半導体(Si、GaAs等)ウェハ用の製造ラインを使用することができ、量産に適している。特に、このウェハの結晶品質が高く、さらに、抵抗率も高いため、動作周波数の高いデバイスへの適用が可能である。さらに、このSiC単結晶ウェハ上に、CVD法等によりエピタキシャル薄膜を成長して作製されるSiC単結晶エピタキシャルウェハ、あるいは、GaN、AlN、InN及びこれらの混晶薄膜エピタキシャルウェハは、その基板となるSiC単結晶ウェハの品質が優れているために、良好な特性(エピタキシャル薄膜の表面モフォロジー、電気特性等)を有するようになる。
(実施例1)
以下に、図2を用いて本発明の実施例を述べる。まず、この単結晶成長装置について、簡単に説明する。結晶成長は、SiC結晶粉末2を昇華させ、種結晶として用いたSiC単結晶1上で、再結晶化させることによりに行われる。種結晶のSiC単結晶1は、高純度黒鉛製坩堝3の蓋4の内面に取り付けられる。原料のSiC結晶粉末2は、高純度黒鉛製坩堝3の内部に充填されている。このような黒鉛製坩堝3は、二重石英管5の内部に、黒鉛の支持棒6により設置される。黒鉛製坩堝3の周囲には、熱シールドのための黒鉛製フェルト7が設置されている。二重石英管5は、真空排気装置により高真空排気(10−3Pa以下)することができ、かつ内部雰囲気をArガスにより圧力制御することができる。また、二重石英管5の外周には、ワークコイル8が設置されており、高周波電流を流すことにより黒鉛製坩堝3を加熱し、原料及び種結晶を所望の温度に加熱することができる。坩堝温度の計測は、坩堝上部及び下部を覆うフェルトの中央部に直径2〜4mmの光路を設け、坩堝上部及び下部からの光を取りだし、二色温度計を用いて行う。坩堝下部の温度を原料温度、坩堝上部の温度を種温度とする。
次に、この結晶成長装置を用いたSiC単結晶の製造について、実施例を説明する。まず、種結晶として、口径50mmの(0001)面を有し4H型のSiC単結晶ウェハを用意した。次に、種結晶1を黒鉛製坩堝3の蓋4の内面に取り付けた。黒鉛製坩堝3の内部には、アチソン法により製造したSiC結晶原料粉末2を洗浄後、充填した。次いで、原料を充填した黒鉛製坩堝3を、蓋4で閉じ、黒鉛製フェルト7で被覆した後、黒鉛製支持棒6の上に乗せ、二重石英管5の内部に設置した。そして、石英管の内部を真空排気した後、ワークコイルに電流を流し、原料温度を2000℃まで上げた。その後、雰囲気ガスとして高純度Arガスを流入させ、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた。成長圧力である1.3kPaには約30分かけて減圧し、その後約20時間成長を続けた。この際の坩堝内の温度勾配は15℃/cmで、成長速度は約0.8mm/時であった。得られた結晶の口径は51mmで、高さは16mm程度であった。
こうして得られたSiC単結晶をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、4H型のSiC単結晶が成長したことを確認できた。次に、ダイヤモンドスラリーを用いたマルチワイヤーソーにより、この結晶を切断し、厚さ0.4mmの(0001)面方位ウェハを結晶上部から20枚切り出した。これらウェハの内、最上部(結晶端(最も種結晶から離れた位置)に相当)の1枚を除いて、残り全てを洗浄後、アルミナ製の乳鉢、乳棒を用いて粉砕し、1mm弱程度の粉末とした。
同様にして、成長した複数個のSiC単結晶を粉砕することにより、第2回目のSiC単結晶成長に必要な量の粉末原料を準備した。その後、この粉末を有機溶剤洗浄及び酸・アルカリ洗浄することにより、粉砕プロセス中に混入した不純物を除去し、第2回目のSiC単結晶成長の原料とした。
第2回目のSiC単結晶成長も、第1回目と同様な条件の下に行い、第1回目に成長したSiC単結晶から得た粉末原料を用いて、口径51mm、高さ15mmのSiC単結晶を得た。得られたSiC単結晶をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、4H型のSiC単結晶が成長したことを確認できた。次に、この結晶をマルチワイヤーソーにより切断し、厚さ0.4mmのウェハを結晶上部より9枚切り出した。ウェハの面方位は(0001)面から<11−20>方向に8°オフとした。これら9枚のSiC単結晶ウェハを、第1回目に成長した結晶から切り出した最上部のウェハ1枚と共に研磨して、厚さ300μm、口径51mmのSiC単結晶鏡面ウェハを作製した。第1回目及び第2回目の結晶の最上部から切り出したウェハの不純物濃度を調べたところ、第2回目に成長したSiC単結晶中の不純物濃度は、第1回目に成長したSiC単結晶中の不純物濃度に比べ、数千分の1から数十分の1になっていることが分かった。また、この2つのウェハの欠陥密度を、顕微鏡観察により調べたところ、第2回目の結晶成長により製造したウェハの方が、第1回目に製造したものに比べ、マイクロパイプ等の欠陥密度が低いことが分かった。
次に、第2回目に成長したSiC単結晶から切り出した残り8枚のウェハの電気抵抗率を調べたところ、ウェハによって値がばらついていたものの、全てウェハにおいて10〜1010Ωcmという高い抵抗率を示した。
さらに、この51mm口径のSiC単結晶鏡面ウェハを基板として用いて、SiCのエピタキシャル成長を行った。SiCエピタキシャル薄膜の成長条件は、成長温度1500℃、シラン(SiH)、プロパン(C)、水素(H)の流量が、それぞれ5.0×10−9/sec、3.3×10−9/sec、5.0×10−5/secであった。成長圧力は大気圧とした。成長時間は2時間で、膜厚としては約5μm成長した。
エピタキシャル薄膜成長後、ノマルスキー光学顕微鏡により、得られたエピタキシャル薄膜の表面モフォロジーを観察したところ、ウェハ全面に渡って非常に平坦で、ピット等の表面欠陥が少ない良好な表面モフォロジーを有するSiCエピタキシャル薄膜が成長されているのが分かった。
また、同様にして作製した別のSiC単結晶(上記第2回目の結晶成長により製造したSiC単結晶に相当)から、オフ角度が0°の(0001)面ウェハを切り出し、鏡面研磨した後、その上にGaN薄膜を有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりエピタキシャル成長させた。成長条件は、成長温度1050℃、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)をそれぞれ、54×10−6モル/min、4L/min、22×10−11モル/min流した。また、成長圧力は大気圧とした。成長時間は60分間で、n型のGaNを3μmの膜厚で成長させた。
得られたGaN薄膜の表面状態を調べる目的で、成長表面をノマルスキー光学顕微鏡により観察した。ウェハ全面に渡って非常に平坦なモフォロジーが得られ、全面に渡って高品質なGaN薄膜が形成されているのが分かった。
(実施例2)
実施例1と同じく、黒鉛製坩堝3の内部に、研磨材を洗浄処理したSiC結晶原料粉末2を充填した。この原料を充填した黒鉛製坩堝3を、黒鉛製の蓋4(種結晶を内面に取り付けていない)で閉じ、黒鉛製フェルト7で被覆した後、黒鉛製支持棒6の上に乗せ、二重石英管5の内部に設置した。そして、石英管の内部を真空排気した後、ワークコイルに電流を流し、原料温度を2000℃まで上げた。その後、雰囲気ガスとして高純度Arガスを流入させ、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた。成長圧力である1.3kPaには約30分かけて減圧し、その後約20時間成長を続けた。この際の坩堝内の温度勾配は15℃/cmで、成長速度は約1.1mm/時であった。同条件で成長しても、一般に多結晶の成長速度の方が、単結晶の成長速度よりも大きくなる。得られた結晶は、バルク状の多結晶であり、結晶粒の大きさは1〜数mm程度であった。多結晶の口径は51mmで、高さは22mm程度であった。
こうして得られたSiC多結晶をラマン散乱により分析したところ、6H型のSiC多結晶が成長したことを確認できた。次に、ダイヤモンドスラリーを用いたマルチワイヤーソーにより、この多結晶を切断し、厚さ0.4mmのウェハを結晶上部から30枚切り出した。これら全てのウェハを洗浄後、アルミナ製の乳鉢、乳棒を用いて粉砕し、1mm弱程度の粉末とした。
同様にして成長した複数個のバルク状SiC多結晶を粉砕することにより、次に行うSiC単結晶成長に必要な量の粉末原料を準備した。その後、この粉末を有機溶剤洗浄及び酸・アルカリ洗浄することにより、粉砕プロセス中に混入した不純物を除去し、次のSiC単結晶成長の原料とした。
次に行ったSiC単結晶成長は、上記バルク状SiC多結晶から得た粉末原料を用いて、実施例1の第2回目の単結晶成長と同様な条件の下に行った。その結果、口径51mm、高さ16mmのSiC単結晶を得た。得られたSiC単結晶をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、4H型のSiC単結晶が成長したことを確認できた。次に、この結晶をマルチワイヤーソーにより切断し、厚さ0.4mmのウェハを結晶上部より9枚切り出した。ウェハの面方位は(0001)面から<11−20>方向に8度オフとした。これら9枚のSiC単結晶ウェハを研磨して、厚さ300μm、口径51mmのSiC単結晶鏡面ウェハを作製した。この内、結晶最上部から切り出したウェハ中の不純物濃度を測定し、実施例1の第1回目の結晶成長により製造したウェハ中の不純物濃度と比較したところ、ほぼ実施例1と同様な不純物濃度低減効果を確認できた。即ち、実施例2において製造したSiC単結晶ウェハ中の不純物濃度は、実施例1の第1回目の結晶成長により製造したSiC単結晶ウェハ中の不純物濃度と比較して、数千分の1から数十分の1になっていた。また、本実施例2において製造したウェハ中の欠陥密度を、顕微鏡観察により調べたところ、実施例1の第2回目の結晶成長により製造したウェハとほぼ同程度にマイクロパイプ等の欠陥密度が低いウェハが製造できていることが分かった。
次に、本実施例2において製造した成長したSiC単結晶ウェハの電気抵抗率を調べたところ、ウェハによって値がばらついていたものの、単結晶を粉末原料として製造したものとほぼ同様に、全てウェハにおいて10〜1010Ωcmという高い抵抗率を示した。
さらに、この51mm口径のSiC単結晶鏡面ウェハを基板として用いて、SiCのエピタキシャル成長を行った。SiCエピタキシャル薄膜の成長条件は、成長温度1500℃、シラン(SiH)、プロパン(C)、水素(H)の流量が、それぞれ5.0×10−9/sec、3.3×10−9/sec、5.0×10−5/secであった。成長圧力は大気圧とした。成長時間は2時間で、膜厚としては約5μm成長した。
エピタキシャル薄膜成長後、ノマルスキー光学顕微鏡により、得られたエピタキシャル薄膜の表面モフォロジーを観察したところ、表面モフォロジーに優れ、ピット等の表面欠陥の少ない良好なエピタキシャル薄膜が成長しているのが分かった。
また、同様にして作製した別のSiC単結晶インゴットからオフ角度が0°の高抵抗率(0001)面ウェハを切り出し(種結晶近傍の領域から切り出した)、鏡面研磨した後、その上にGaN薄膜を有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりエピタキシャル成長させた。成長条件は、成長温度1050℃、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)をそれぞれ、54×10−6モル/min、4L/min、22×10−11モル/min流した。また、成長圧力は大気圧とした。成長時間は60分間で、n型のGaNを3μmの膜厚で成長させた。
得られたGaN薄膜の表面状態を調べる目的で、成長表面をノマルスキー光学顕微鏡により観察したところ、こちらの場合も、基板ウェハに欠陥が少ないことに対応して、ピット等の表面欠陥が少ない良質なエピタキシャル薄膜が成長できていることが分かった。
改良レーリー法の原理を説明する図面である。 本発明の製造方法に用いられる単結晶成長装置の一例を示す構成図である。
符号の説明
1 種結晶(SiC単結晶)、
2 SiC結晶粉末原料、
3 坩堝(黒鉛あるいはタンタル等の高融点金属)、
4 黒鉛製坩堝蓋、
5 二重石英管、
6 支持棒、
7 黒鉛製フェルト(断熱材)、
8 ワークコイル、
9 高純度Arガス配管、
10 高純度Arガス用マスフローコントローラ、
11 真空排気装置。

Claims (8)

  1. 昇華再結晶法により成長した炭化珪素単結晶又は炭化珪素多結晶の一方又は双方の粉砕物である炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料。
  2. 前記昇華再結晶法を2回以上経てなる請求項1記載の炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料。
  3. 前記粉砕物の平均粒径が10μm〜3mmである請求項1記載の炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料。
  4. 昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法であって、原料として請求項1〜3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶育成用炭化珪素原料を用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 請求項4に記載の方法で得られた炭化珪素単結晶であって、該単結晶の口径が50mm以上300mm以下である炭化珪素単結晶。
  6. 請求項5記載の炭化珪素単結晶を切断、研磨してなる炭化珪素単結晶基板。
  7. 請求項6記載の炭化珪素単結晶基板に、炭化珪素薄膜をエピタキシャル成長してなる炭化珪素エピタキシャルウェハ。
  8. 請求項6記載の炭化珪素単結晶基板に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウム又はこれらの混晶をエピタキシャル成長してなる薄膜エピタキシャルウェハ。
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